(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】精神活性医薬品ならびに精神医学的および神経学的な病態および障害の治療のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/36 20060101AFI20240806BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240806BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/36
A61P25/18
A61P25/00
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/04
A61K31/137
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506546
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022074369
(87)【国際公開番号】W WO2023015154
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524041495
【氏名又は名称】トランセンド セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】ストグニエフ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ジェニファー ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】シーリグ,マーカス
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA18
(57)【要約】
本発明は、メチロン、2C-B、MBDB、そのそれぞれの代謝産物、異性体、光学異性体、多形体、および類似体(2Cシリーズおよびカチノン類)を含む精神活性医薬品;精神医学的および神経学的な病態および障害のためのそれらの調製、製剤、中間体、投与経路、医学的用途のための投与およびスケジュールに関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象にメチロン(3,4-メチレンジオキシN-メチルカチノン)の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防するおよび/またはその症状を改善する方法。
【請求項2】
メチロンが、50~1,000mgの用量で投与される、請求項1の方法。
【請求項3】
メチロンが、0.8~30mg/kgの用量で投与される、請求項1の方法。
【請求項4】
対象が、自殺傾向である、請求項1の方法。
【請求項5】
メチロンが、神経精神疾患のための追加の療法と組み合わせて用いられる、請求項1の方法。
【請求項6】
追加の療法が、心理療法である、請求項5の方法。
【請求項7】
追加の療法が、対象に1種類以上の追加の精神活性物質を投与することを含む、請求項5の方法。
【請求項8】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、三環系抗鬱薬(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、セロトニン‐ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、セロトニン‐ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(SDNRI)、および抗不安薬から成る群から選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)である、請求項8の方法。
【請求項10】
対象が、メチロンと同時にSSRIを摂取しているまたは摂取を継続している、請求項9の方法。
【請求項11】
神経精神疾患が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である、請求項1の方法。
【請求項12】
PTSDが、治療抵抗性である、請求項11の方法。
【請求項13】
メチロンが、50~1,000mgの用量で投与される、請求項11の方法。
【請求項14】
メチロンが、0.8~30mg/kgの用量で投与される、請求項11の方法。
【請求項15】
対象が、自殺傾向である、請求項11の方法。
【請求項16】
メチロンが、PTSDのための追加の療法と組み合わせて用いられる、請求項11の方法。
【請求項17】
追加の療法が、心理療法である、請求項16の方法。
【請求項18】
追加の療法が、対象に1種類以上の追加の精神活性物質を投与することを含む、請求項16の方法。
【請求項19】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、三環系抗鬱薬(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、セロトニン‐ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、セロトニン-ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(SDNRI)、および抗不安薬から成る群から選択される、請求項18の方法。
【請求項20】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)である、請求項19の方法。
【請求項21】
対象が、メチロンと同時にSSRIを摂取しているまたは摂取を継続している、請求項20の方法。
【請求項22】
メチロンが、毎週投与される、請求項11の方法。
【請求項23】
投与する工程が、メチロンの初期用量を投与することを含み、それは次いで、初期用量の約10%~100%である量で第2のメチロン用量を投与することにより30分~4時間後に増強される、請求項11の方法。
【請求項24】
神経精神疾患が、急性ストレス障害である、請求項1の方法。
【請求項25】
神経精神疾患が、抑鬱障害である、請求項1の方法。
【請求項26】
抑鬱障害が、重篤気分変調症、大鬱病性障害、単一および再発エピソード、持続性抑鬱障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/医薬品誘発性抑鬱障害、他の病態による抑鬱障害、他の特定された抑鬱障害、特定されない抑鬱障害、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項25の方法。
【請求項27】
抑鬱障害が、治療抵抗性である、請求項25の方法。
【請求項28】
神経精神疾患が、パーソナリティ障害(PD)である、請求項1の方法。
【請求項29】
パーソナリティ障害が、境界性パーソナリティ障害(BPD)、回避性パーソナリティ障害(AvPD)、反社会的パーソナリティ障害(AsPD)、統合失調症性パーソナリティ障害、他の不安およびパニック障害、特定のパーソナリティ障害、衝動性障害、性同一性障害、性嗜好の障害、他の性的障害、成人のパーソナリティおよび行動の他の障害、成人のパーソナリティおよび行動の特定されない障害、既知の生理的条件によるパーソナリティおよび行動の障害から成る群から選択される、請求項28の方法。
【請求項30】
対象が、抑鬱障害を有する、請求項28の方法。
【請求項31】
PDが、治療抵抗性である、請求項28の方法。
【請求項32】
神経精神疾患が、不安障害である、請求項1の方法。
【請求項33】
不安障害が、全般性不安障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症性不安障害、病気不安症、解離性、ストレス関連、身体表現性、他の非精神病性精神障害、急性ストレス反応、一過性適応反応症、神経衰弱症、精神生理学的障害、強迫神経症、重度ストレスへの反応および適応の障害、分離不安障害、エピソード性発作性不安、選択的無言症、特定の恐怖症、社会不安障害(社会恐怖症)、広場恐怖症、物質/医薬品誘発性不安障害、他の病態による不安障害、妊娠および出産における不安症、出産前の妊娠中(出産前)の不安症、分娩後不安症、動物型恐怖症、クモ恐怖症、他の動物型恐怖症、自然環境型恐怖症、雷雨恐怖症、血液恐怖症、注射および輸血の恐怖症、他の医療に関する恐怖症、傷害恐怖症、事態恐怖症、閉所恐怖症、高所恐怖症、他の特定不能不安障害、身体醜形障害、ためこみ症、抜毛癖(抜毛症)、皮膚むしり癖(皮膚むしり症)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項32の方法。
【請求項34】
神経精神疾患が、気分障害である、請求項1の方法。
【請求項35】
神経精神疾患が、線維筋痛症である、請求項1の方法。
【請求項36】
神経精神疾患が、摂食障害である、請求項1の方法。
【請求項37】
メチロンが、毎週投与される、請求項1の方法。
【請求項38】
投与する工程が、メチロンの初期用量を投与することを含み、それは次いで、初期用量の約10%~100%である量で第2のメチロン用量を投与することにより30分~4時間後に増強される、請求項1の方法。
【請求項39】
対象に2C-B(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェネチルアミン)の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防するおよび/またはその症状を改善する方法。
【請求項40】
対象が、自殺傾向である、請求項39の方法。
【請求項41】
2C-Bが、神経精神疾患のための追加の療法と組み合わせて用いられる、請求項39の方法。
【請求項42】
追加の療法が、心理療法である、請求項41の方法。
【請求項43】
追加の療法が、対象に1種類以上の追加の精神活性物質を投与することを含む、請求項41の方法。
【請求項44】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、三環系抗鬱薬(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、セロトニン‐ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、セロトニン‐ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(SDNRI)、および抗不安薬から成る群から選択される、請求項43の方法。
【請求項45】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)である、請求項44の方法。
【請求項46】
対象が、2C-Bと同時にSSRIを摂取しているまたは摂取を継続している、請求項45の方法。
【請求項47】
神経精神疾患が、抑鬱障害である、請求項39の方法。
【請求項48】
抑鬱障害が、重篤気分変調症、大鬱病性障害、単一および再発エピソード、持続性抑鬱障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/医薬品誘発性抑鬱障害、他の病態による抑鬱障害、他の特定された抑鬱障害、特定されない抑鬱障害、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項47の方法。
【請求項49】
抑鬱障害が、治療抵抗性である、請求項47の方法。
【請求項50】
神経精神疾患が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である、請求項39の方法。
【請求項51】
PTSDが、治療抵抗性である、請求項50の方法。
【請求項52】
神経精神疾患が、身体症状症である、請求項39の方法。
【請求項53】
身体症状症が、病気不安症、転換性障害(機能性神経症状症)、他の医学的疾患に影響する心理的要因、作為症、他の特定された身体症状症および関連症、特定されない身体症状症および関連症、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
神経精神疾患が、線維筋痛症である、請求項39の方法。
【請求項55】
神経精神疾患が、治療抵抗性である、請求項39の方法。
【請求項56】
2C-Bが、毎週投与される、請求項39の方法。
【請求項57】
投与する工程が、2C-Bの初期用量を投与することを含み、それは次いで、初期用量の約10%~100%である量で第2の2C-B用量を投与することにより30分~4時間後に増強される、請求項39の方法。
【請求項58】
対象にMBDB(N-メチル-1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-アミノブタン)の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防するおよび/またはその症状を改善する方法。
【請求項59】
神経精神疾患が、不安障害である、請求項58の方法。
【請求項60】
不安障害が、全般性不安障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症性不安障害、病気不安症、解離性、ストレス関連、身体表現性、他の非精神病性精神障害、急性ストレス反応、一過性適応反応症、神経衰弱症、精神生理学的障害、強迫神経症、重度ストレスへの反応および適応の障害、分離不安障害、エピソード性発作性不安、選択的無言症、特定の恐怖症、社会不安障害(社会恐怖症)、広場恐怖症、物質/医薬品誘発性不安障害、他の病態による不安障害、妊娠および出産における不安症、出産前の妊娠中(出産前)の不安症、分娩後不安症、動物型恐怖症、クモ恐怖症、他の動物型恐怖症、自然環境型恐怖症、雷雨恐怖症、血液恐怖症、注射および輸血の恐怖症、他の医療に関する恐怖症、傷害恐怖症、事態恐怖症、閉所恐怖症、高所恐怖症、他の特定されない不安障害、身体醜形障害、ためこみ症、抜毛癖(抜毛症)、皮膚むしり癖(皮膚むしり症)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項59の方法。
【請求項61】
対象が、自殺傾向である、請求項58の方法。
【請求項62】
神経精神疾患が、治療抵抗性である、請求項58の方法。
【請求項63】
MBDBが、神経精神疾患のための追加の療法と組み合わせて用いられる、請求項58の方法。
【請求項64】
追加の療法が、心理療法である、請求項63の方法。
【請求項65】
追加の療法が、対象に1種類以上の追加の精神活性物質を投与することを含む、請求項63の方法。
【請求項66】
追加の精神活性物質が、SSRI、TCA、MAOI、SNRI、SDNRI、および抗不安薬から成る群から選択される、請求項65の方法。
【請求項67】
追加の精神活性物質が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)である、請求項66の方法。
【請求項68】
対象が、MBDBと同時にSSRIを摂取しているまたは摂取を継続している、請求項67の方法。
【請求項69】
MBDBが、毎週投与される、請求項58の方法。
【請求項70】
投与する工程が、メチロンの初期用量を投与することを含み、それは次いで、初期用量の約10%~100%である量で第2のメチロン用量を投与することにより30分~4時間後に増強される、請求項58の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチロン、2C-B、MBDB、それらのそれぞれの代謝産物、異性体、光学異性体、多形体、および類似体(2Cシリーズおよびカチノン類)を含む精神活性医薬品;医学的用途のための、および精神医学的および神経学的な病態および障害のためのそれらの調製、製剤、中間体、投与経路、投与およびスケジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
古典的な幻覚剤は、一般的に民族植物学的来歴の、混合されたセロトニン作動性、ノルアドレナリン作動性、およびドーパミン作動性の調節性化合物の部類である。これらの不均一な薬剤は、精神活性であり、認知、気分、および多くの他の認知および生理的プロセスを変えることができる。人類学的研究は、古代中近東、地中海沿岸地方、およびメソアメリカに及ぶ社会におけるそれらの儀式的な使用を示唆する。1943年にアルバート・ホフマンによるトリプタミン類似体リセルグ酸-N,N-ジエチルアミド(LSD)の発見および合成の後、有望な臨床開発および治療剤検索の数十年が続いた。しかし、化合物の種全体は、科学界の主流から制限され、例えば、米国においては1970年の「規制物質法」により、「医学的用途はない」と特徴づけられた。
【0003】
治療抵抗性鬱病、線維筋痛症、および心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの神経精神障害の発症率は増加しており、患者の生活に有意義な影響を与える新しい治療法が不足している。解離性麻酔性ケタミン、すなわちその光学異性体であるエスケタミンは、大鬱病性障害(MDD)および/または自殺傾向に対しスプラバートとして、2019年に初めて承認された。2021年5月の時点で、幻覚作用性医薬品について3つのFDAの画期的治療薬指定がある:PTSDのための3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、ならびに治療抵抗性鬱病(TRD)とMDDの両方のためのサイロシビンである。提供者集約的な安全性およびモニタリングの問題のない新規の精神活性医薬品に対する必要性を伴う、または選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)および他の薬剤クラスなどの既存の治療薬剤の投与を受ける患者において禁忌である、現在の薬理学的介入の限定的な有効性の認識が増大しつつある。
【0004】
重度PTSD患者においてMDMA(3,4-メチレンジオキシN-メチルアンフェタミン)を調査する第3相治験は、許容できる有効性と安全性プロファイルを明らかにした。大鬱病性障害(MDD)におけるサイロシビンの有効性についての最近の証拠が存在する。サイロシビンは、200種類を超えるキノコ種により産生される精神活性アルカロイドであり、即効性抗鬱薬特性のいくつかの証拠がある。サイロシビンを用いた最近の臨床試験では、MDD患者は、単回用量~月用量で治療の必要性において異なったが、同様の有効性および安全性を有した。サイロシビンおよびMDMAは、他の治療選択肢のない患者に希望を与えるが、それらは、必要とする患者の5~10%にしか恩恵をもたらさないであろうと推定される。
【0005】
臨界期を再開する操作の同定は、トランスレーショナル神経科学にとって優先事項であった。多くの神経精神医学的病態は、神経系が適切な回路組織化および学習のために必要とされる健康的な(または有害的な)環境刺激に対してより感受性である場合、生存期間の初期の期間である「臨界期」の閉鎖に発生的に関連すると考えられる。臨界期の閉鎖は、最適条件が回復される場合でさえ脳の適応能力を制限する。MDMA、DMT、およびメスカリンを含む、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)セロトニン受容体ファミリーの作用薬は、オキシトシン-これは、社会的機能に関与し、動物モデルが、皮質機能における臨界期を広げる可能性を示唆する-のレベルを増加させ、新たな行動的応答の学習を可能にする。側坐核(NAc)中のこれらのオキシトシン受容体は、背側縫線核の中型有棘神経細胞中の5-HT1B 受容体を介して活性化され、その阻害は社会的報酬学習を妨げる。
【0006】
メスカリン(3,4,5-トリメトキシフェネチルアミン)は、現代の合成フェネチルアミン2-CB(2,5-ジメトキシ-4-ブロモフェネチルアミン)の古い前駆体であり、メキシコおよびテキサス南西部を原産とするペヨーテサボテンのクラウン部の蕾に由来する。メスカリンは、1つのメチル化段階後にカテコールアミンシグナル伝達分子であるドーパミンおよびノルアドレナリンに非常に類似する;その精神活性特性は、この構造上の類似性に由来すると考えられる。大部分の新規精神活性化合物は依然として従来の神経化学型の種類に属し、それらの古典的前駆物質と重複する薬効薬理を有する。長年の仮説は、これらの薬剤、特にフェニルアルキルアミン類が、50種類を超える神経伝達物質受容体サブクラスのうち、2種類の受容体:5-HT2Aおよび5-HT2Cに最も選択的である、ということである。
【0007】
MBDB(N-メチル-1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-アミノブタン)は、MDMAのアルファ-エチル類似体であり、それは、1980年代に複数の医薬化学研究グループによって合成された。MBDBは、現在米国でスケジュール1でない、「エンタクトゲン」クラスの原型的なメンバーであり、それは、モノアミン受容体での結合を弱める2種類の構造的特徴:N-メチル化およびアルファエチル化、を合わせ持つ。MBDBはすぐに、MDMAおよび他の合成カチノン類と共に、「エクスタシー」ピルの成分として組み込まれる快楽を得るための麻薬になった。MBDBと関連した多剤過剰摂取による死亡の2つの遡及的報告(ここでアルコールおよびカナビスのレベルも測定された)では、0.435および1.2mg/Lの血液濃度が測定された。MDMA過剰用量による死亡のメタ分析では、MDMAの毒性効果のみに直接的に起因する77件の死亡のうち13件が、0.478~53.9mg/Lの範囲で血液濃度を測定し、これは、推定されるMBDB毒性レベルと同程度である。さらに、動物モデルにおいて、(±)-MBDB・HCl(25mg/kg)が、4日間12時間毎に腹腔内注射され、比較のため(±)-MDMA・HCl(20mg/kg)を有した。5-HT/5-HIAA取り込み部位の消失に基づき、この試験において用いた複数回用量レジメンは明らかに、処置後2週間でカテコールアミン類またはそれらの代謝産物を大幅に変えることなく、皮質および海馬におけるセロトニン作動性終端の55~60%を破壊した。これらの結果は、MBDBの複数回投与後に、セロトニン作動性機能に関する指標の低下が起こったことを示す。この神経毒性効果は、MDMAの行動的に同等な効力の用量により認められるものよりも幾分低かった。
【0008】
メチロン(3,4-メチレンジオキシN-メチルカチノン)などの合成カチノン類は、精神運動刺激剤であり、セロトニン、ドーパミン、およびノルエピネフリンの細胞膜トランスポーターの機能を変えることによってそれらの効果を発揮する。個々のカチノン類は、3種類のモノアミン神経伝達物質経路のそれぞれに対するそれらの効力において異なり得る。構造的にアンフェタミンに類似するアルカロイドである天然のカチノンは、東アフリカおよびアラビア半島において噛んで使用されるアラビアチャノキ植物(カート、Catha edulis)の新鮮な葉から最初に抽出された。カチノンの合成的構造修飾物は、違法な販売により「入浴剤(bath salts)」として一般に販売される多数の「デザイナー」誘導体をもたらした。これらのカチノン誘導体(β-ケトアンフェタミン類として化学的に分類される)は、メチロン、エチロン、ブチロン、フェドロン、および3,4-メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)を含み、ヒトドーパミントランスポーターにて協同的に作用する。カチノン類、ならびにフェネチルアミン他の関連する種はいずれも、中枢神経系(CNS)刺激剤として振る舞うが、カチノン類は通常、β-ケト基が血液脳関門をそれほど越えられないより極性の分子を生み出すため、対応するフェネチルアミン類似体より低い効力を有する。
【0009】
小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)に対するメチロンの親和性は、MDMAのものよりも約13倍低い。しかし、いくつかの複合的証拠が存在する:自発運動のマウスモデルにおける原形質膜および小胞のモノアミントランスポーターのアッセイは、メチロンがMDMAよりも強力な5-HTおよびドーパミン取り込みの阻害剤であると見出した。ラットでの腹腔内投与後に、メチロンは、15~30分で脳内濃度および血清濃度においてピークに達し、約1~2時間の半減期を有した。対照的に、MDMAの半減期は、用いた動物モデルおよび投与条件に応じて5~7時間の範囲である。
【0010】
ヒトでは、SSRIはまた、基質競合によりMDMAの治療効果を弱める、あるいは妨げる;血圧亢進(BP)および異常高熱などの副作用は部分的には、MDMAとセロトニン運搬体の相互作用による。これは、即効性抗鬱薬または強化療法としての用途について考える場合、また別の重要な考慮事項である。以前の研究試験は、MDMAの使用と鬱病または不安の症状の間の関連性を見出している。MDMAと鬱病の間の因果関係または関連性を評価する困難は、すでにある精神障害が、MDMAの使用を選択する人々において現れることを考慮すると、増す。メタ分析は、MDMAの使用と自己申告の鬱病症状の間の関連を検出した。MDMA代謝における薬理遺伝学的変動の範囲もまた、相当数の患者において鬱病のリスクを増大させる。
【0011】
MDMAの心理学的影響を調べる動物試験は、ラットにおいて10日間10mg/kgの用量を試験した;オープンフィールド歩行などの不安様行動の測定は、3か月後に不安表現型の増加を示した。2日連続で、4時間で4回ラットに投与したMDMAの5mg/kgの用量は、強制水泳試験での応答(能動的および受動的な)を低下させ、かつMDMA曝露後最大で12週間不動性を増加させ-おそらく長期の負の行動変化を示している。フルオキセチン処置は、覚醒試験におけるMDMA誘導性不安および強制水泳試験における不動持続時間を逆転させたが、社会相互作用試験では効果を示さなかった。この研究はまた、5-HTおよびその代謝産物である5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)の死後レベルを分析し、両方はMDMAで処置されたラットの皮質領域において低下された。フルオキセチン治療は、MDMA事前処置ラットにおいて5-HTレベルに大きく影響しなかったが、調べた全ての脳の部位で5-HIAAレベルを有意に低下させた。これは、不安または鬱の表現型をもたらす、MDMA誘導性の慢性的な5-HTの枯渇として解釈され得る。
【0012】
他の機構は、5-HT再取り込みの阻害と共に、セロトニン作動性終末からの急性のMDMA誘導性5-HT放出を含み、それは、5-HTおよび5-HIAAの両方の顕著な枯渇をもたらす。これは、ヒトの死後の脳組織で、ならびに脳脊髄液(CSF)測定からインビボで報告されている。研究には少々の混乱があるが、鬱病のモノアミン理論後、このデータは思わしくない;証拠は、MDMAの急性薬理学と慢性薬理学の間にある矛盾を強調する。一方で急性的に、MDMAは、5-HTの可用性を増強するように作用し、即効性の抗鬱薬特性および感情に対する正の変化を示唆し、この一過的な効果は、その後の5-HT枯渇を伴い得る。治療的に用いられる用量において枯渇された5-HT貯蔵を支持するヒトの事例証拠がある。
【0013】
脳組織およびCSFにおける5-HTおよびその代謝産物の低下されたレベルはまた、MDMAが、インビボで評価して、神経毒性であることを示すと解釈されている。偶然に、低いSERT密度もまた、鬱病と関連する。動物の文献での低下されたSERT密度を考慮して、最も単純な解釈は、ヒトにおけるMDMAへの反復される曝露は、わずかな量であっても、皮質を支配する5-HTニューロン終末での損傷をもたらす、ということである。さらに、気分、認知、およびこれらの変化に関連するインパルス制御における変化は、MDMA使用を持続させることに寄与し得る。
【0014】
MDMAの神経毒性データにおけるこれらのおよび他の矛盾は、依然として未解決であり、MDMAが、主流の抗鬱薬として探索される可能性を、特に5-HT神経伝達物質回路が鬱病病態生理学およびMDMAの神経毒性の両方に関与している場合、低くする。最近のPTSD第2相MDMA試験では、125mgおよび150mgの用量において有害事象として記録された鬱病/MDDの症例があり、そのいくつかは、長期の追跡の間継続した。不安および重度の自殺念慮もまた、記録された。および第3相に進める前に、MDMAが即効性抗鬱薬として潜在的有効性を有するという仮説が、調査されている。しかし、MDMA、サイロシビンおよび言及された他の古典的幻覚剤は、治療抵抗性神経精神疾患に罹患する数億の人々に到達するには、少なくとも以下の制限を有する。
(1)安全性
それらの強力なセロトニン作動性を考慮して、それらは、セロトニン症候群リスクのため、SSRIおよび他の多くの精神治療薬を服用する患者において禁忌である。このことは、神経精神疾患に罹患している患者の大部分ではないにしろ、多くが、これらの薬剤にアクセスすることを妨げる。さらに、MDMAは、長期の使用により不整脈および拡張型心筋症の様々な形態を引き起こし、潜在的に心室細動および収縮不全をもたらし、かつすでに存在する律動不整または肺疾患において禁忌である。
(2)組み合わせ
その障害が治療抵抗性である患者はしばしば、SSRI/セロトニン‐ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)/三環系抗鬱薬(TCA)などを試している。患者をSSRIおよび他の抗鬱治療薬剤から断つには最低6週間を要する。したがって、有害な相互作用を最小化し、かつ治療効果を付加する精神活性類似体を開発することは、必要とする患者にとって大きな恩恵であろう。精神活性治療薬剤から最も恩恵を受ける人々が、過去または現在の治療レジメンによって妨害されるのであれば、残念であろう。
(3)医療提供/利用のし易さ
精神活性治療は理想的には、自宅でまたは最小の監視により自分で投与される。MDMAおよびサイロシビンへのアクセスは、各投与が必要とする時間、提供者の時間および安全確保のための付き添いの回数、ならびに訓練および免許付与の要件により制限される。準備および統合的心理療法セッションに加えて、MDMAおよびサイロシビンは、長い投与セッションは(最長8時間)を有する。同様に、静注点滴によるケタミンは、集中心理療法を伴う、医師による投与および監督による3~4時間のクリニック来訪を必要とする。
(4)患者の望ましさ
多くの患者は、サイロシビンおよびMDMAなどの古典的幻覚剤およびエンタクトゲン類による治療を受けたがらない。これらの治療では、臨床転帰は、しばしば困難で、不快で、あるいは恐ろしい、深い主観的体験に依存するであろう。
【0015】
したがって、主流の可能性、よりよい安全性と有効性、より即効性の効果のプロファイル、より少ない薬剤/薬剤相互作用を有し、および/または併用療法においてより有効な、抗鬱薬およびPTSD治療を含む、CNS治療薬剤に対するニーズが存在する。米国成人においてなんらかの精神疾患(AMI)を有する有病率は、5千万人を超え、人口の20%超である。疾病負荷と有効な治療の間のギャップは、広がりつつある。その有害作用にもかかわらず、非定型トリプル再取り込み阻害薬(ノルエピネフリン‐ドーパミン再取り込み阻害剤、ニコチン受容体拮抗薬)であるウェルブトリン(ブプロピオン)は依然として、最も広く処方される抗鬱薬の1つである(2018年に2千4百万の処方)。ブプロピオンはしばしば、SSRIの補助で用いられ、かつそれはまた、セルトラリンおよびフルオキセチンと比較して、鬱病に関連する不安の治療において肯定的な結果を有すると示されている。ブプロピオンは、パニック障害を治療するために、他の治療薬剤に加えて承認適応症外で使用されると報告されている。しかし、ブプロピオンの副作用は、不安、腹痛、振盪、不眠症、頭痛/片頭痛、悪心/嘔吐、便秘、振戦、目まい、発汗過多、かすみ目、頻脈、精神錯乱、発疹、敵意、心不整脈、および難聴などの一連の神経性副作用と共に、妊娠初期における小児での先天性心臓欠陥の可能性の23%を超える増加を含む。
【0016】
したがって、これらおよび他の制限を解消し得る、および/または神経精神病の病態を有するより大きな横断的な患者に届き得る、新規の精神薬理学的薬剤が必要とされる。そのような神経精神病理は、鬱病およびPTSDなどの、多くの治療困難な気分障害、不安障害およびパーソナリティ障害を含むが;線維筋痛症、自殺念慮、物質使用障害(SUD)、摂食障害、境界性パーソナリティ障害(BPD)および他のパーソナリティ障害、強迫神経症(OCD)、緩和ケア/終末期不安、実存的苦痛、慢性疼痛症候群、身体異形症、恐怖症、自閉症の成人の社会不安、およびさらに睡眠調節も含む。
【発明の概要】
【0017】
一局面では、本明細書において提供されるのは、対象にメチロン(3,4-メチレンジオキシN-メチルカチノン)の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防する、および/またはその症状を改善する方法である。いくつかの実施態様においては、メチロン用量は、0.8~5mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、メチロン用量は、0.8~30mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、メチロン用量は、50~350mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、メチロン用量は、50~500mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、メチロン用量は、50~1,000mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、初期用量(例えば、50~500mg)のメチロンが、投与され、それは次いで、第2のメチロン用量(例えば、さらなる25~250mgのメチロン)を投与することにより30分~4時間後に増強される。いくつかの実施態様においては、メチロンは、週当たり1回、または週当たり2回以上(最大で毎日の投与)、あるいは1日当たり2回または3回、例えば、単回用量として、あるいは上記の投与スケジュールにしたがい、投与される。いくつかの実施態様においては、メチロンは、徐放性製剤または持続性放出性製剤として投与されて、例えば、本明細書に開示の投与レジメンを達成し、それらの患者において治療される適応症にしたがい患者に1セットのスケジュールで50mg~1gを放出する。いくつかの実施態様においては、対象は、自殺傾向である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、治療抵抗性である。いくつかの実施態様においては、メチロンは、神経精神疾患の付加的療法と組み合わせて使用される。いくつかの実施態様においては、付加的療法は、心理療法である。いくつかの実施態様においては、付加的療法は、対象に1種類以上のさらなる精神活性物質を投与することを含む。いくつかの実施態様においては、さらなる精神活性物質は、選択的セロトニン再取り込み(SSRI)、三環系抗鬱薬(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、セロトニン‐ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、セロトニン-ノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害剤(SDNRI)、および抗不安薬から成る群から選択される。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、抑鬱障害である。いくつかの実施態様においては、抑鬱障害は、重篤気分変調症、大鬱病性障害、単一および再発エピソード、持続性抑鬱障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/医薬品誘発性抑鬱障害、他の病態による抑鬱障害、他の特定された抑鬱障害、特定されない抑鬱障害、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、急性ストレス障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、線維筋痛症である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、気分障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、不安障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、摂食障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、パーソナリティ障害(PD)である。いくつかの実施態様においては、パーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害(BPD)、回避性パーソナリティ障害(AvPD)、反社会的パーソナリティ障害(AsPD)、統合失調症性パーソナリティ障害、他の不安およびパニック障害、特定されたパーソナリティ障害、衝動性障害、性同一性障害、性嗜好の障害、他の性的障害、成人のパーソナリティおよび行動の他の障害、成人のパーソナリティおよび行動の特定されない障害、既知の生理的条件によるパーソナリティおよび行動の障害から成る群から選択される。いくつかの実施態様においては、PDを有する対象はまた、抑鬱障害を有する。
【0018】
別の一局面では、本明細書において提供されるのは、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防する、および/またはその症状を改善する方法であり、対象に2C-B(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェネチルアミン)の治療的有効量を投与することを含む。いくつかの実施態様においては、2C-B用量は、0.8~5mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、2C-B用量は、0.8~30mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、2C-B用量は、50~350mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、2C-B用量は、50~500mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、2C-B用量は、50~1,000mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、初期用量(例えば、50~500mg)の2C-Bが、投与され、それは次いで、第2の2C-B用量(例えば、さらなる25~250mgの2C-B)を投与することにより30分~4時間後に増強される。いくつかの実施態様においては、2C-Bは、週当たり1回、または週当たり2回以上(最大で毎日の投与)、あるいは1日当たり2回または3回で、例えば、単回用量として、あるいは上記の投与スケジュールにしたがい、投与される。いくつかの実施態様においては、2C-Bは、徐放性製剤または持続性放出性製剤として投与されて、例えば、本明細書に開示の投与レジメンを達成し、それらの患者において治療される適応症にしたがい患者に1セットのスケジュールで50mg~1gを放出する。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、身体症状症である。いくつかの実施態様においては、身体症状症は、病気不安症、転換性障害(機能性神経症状症)、他の医学的疾患に影響する心理的要因、作為症、他の特定された身体症状症および関連症、特定されない身体症状症および関連症、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、線維筋痛症である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、抑鬱障害である。いくつかの実施態様においては、抑鬱障害は、重篤気分変調症、大鬱病性障害、単一および再発エピソード、持続性抑鬱障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/医薬品誘発性抑鬱障害、他の病態による抑鬱障害、他の特定された抑鬱障害、特定されない抑鬱障害、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、急性ストレス障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、気分障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、不安障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、摂食障害である。いくつかの実施態様においては、対象は、自殺傾向である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、治療抵抗性である。いくつかの実施態様においては、2C-Bは、神経精神疾患の付加的療法と組み合わせて使用される。いくつかの実施態様においては、付加的療法は、心理療法である。いくつかの実施態様においては、付加的療法は、対象に1種類以上のさらなる精神活性物質を投与することを含む。いくつかの実施態様においては、さらなる精神活性物質は、SSRI、TCA、MAOI、SNRI、SDNRI、および抗不安薬から成る群から選択される。
【0019】
別の一局面においては、本明細書において提供されるのは、対象にMBDB(N-メチル-1-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-アミノブタン)の治療的有効量を投与することを含む、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防する、および/またはその症状を改善する方法である。いくつかの実施態様においては、MBDB用量は、0.8~5mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、MBDB用量は、0.8~30mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、MBDB用量は、50~350mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、MBDB用量は、50~500mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、MBDB用量は、50~1,000mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、MBDBの初期用量(例えば、50~500mg)が、投与され、それは次いで、第2のMBDB用量(例えば、さらなる25~250mgのメチロン)を投与することにより30分~4時間後に増強される。いくつかの実施態様においては、MBDBは、例えば、週当たり1回、または週当たり2回以上(最大で毎日の投与)、あるいは1日当たり2回または3回で、単回用量として、あるいは上記の投与スケジュールにしたがい、投与される。いくつかの実施態様においては、MBDBは、徐放性製剤または持続性放出性製剤として投与されて、例えば、本明細書に開示の投与レジメンを達成し、それらの患者において治療される適応症にしたがい患者に1セットのスケジュールで50mg~1gを放出する。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、不安障害である。いくつかの実施態様においては、不安障害は、全般性不安障害、パニック障害、パニック発作、恐怖症性不安障害、病気不安症、解離性、ストレス関連、身体表現性、他の非精神病性精神障害、急性ストレス反応、一過性適応反応症、神経衰弱症、精神生理学的障害、強迫神経症、重度ストレスへの反応および適応の障害、分離不安障害、エピソード性発作性不安、選択的無言症、特定恐怖症、社会不安障害(社会恐怖症)、広場恐怖症、物質/医薬品誘発性不安障害、他の病態による不安障害、妊娠および出産における不安症、出産前の妊娠中(出産前)の不安症、分娩後不安症、動物型恐怖症、クモ恐怖症、他の動物型恐怖症、自然環境型恐怖症、雷雨恐怖症、血液恐怖症、注射および輸血の恐怖症、他の医療に関する恐怖症、傷害恐怖症、事態恐怖症、閉所恐怖症、高所恐怖症、他の特定されない不安障害、身体醜形障害、ためこみ症、抜毛癖(抜毛症)、皮膚むしり癖(皮膚むしり症)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施態様においては、対象は、自殺傾向である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、治療抵抗性である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、急性ストレス障害である。いくつかの実施態様においては、神経精神疾患は、線維筋痛症である。いくつかの実施態様においては、MBDBは、神経精神疾患の付加的療法と組み合わせて使用される。いくつかの実施態様においては、付加的療法は、心理療法である。いくつかの実施態様においては、付加的療法は、対象に1種類以上のさらなる精神活性物質を投与することを含む。いくつかの実施態様においては、さらなる精神活性物質は、SSRI、TCA、MAOI、SNRI、SDNRI、および抗不安薬から成る群から選択される。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、実施例、および図面から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的実施例は、様々な変形および変更がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、好ましい実施態様を示しつつ例示としてのみ与えられることを、理解されたい。
【0021】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の局面をさらに示すために含まれ、本発明は、本明細書に示される特定の実施態様の詳細な説明と組み合わせてこれら図面の1つ以上を参照することによりよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例4のコホート2に含まれた28名の患者のうち2名以上に起こる症状に関するベースライン症状一覧を示す。
【
図2】実施例4のコホート2における基礎疾患重症度を示す。
【
図3】(
図3A)MDDサブセットおよび(
図3B)PTSDサブセット中の対象についてのコホート2での改善度を示す。
【
図4】実施例5の患者についての(
図4A)基礎疾患重症度および(
図4B)改善度を示す。
【
図5】メチロンは、強制水泳試験において安定な抗鬱薬様効果を有する。5分間のラット強制水泳試験経過中の、(
図5A)不動であった(F
(5、34)=59.05、p<0.0001)、(
図5B)泳いでいた(F
(5、34)=28.72、p<0.0001)、または(
図5C)登っていた(climbing)(F
(5、34)=3.195、p<0.05)時間の測定。ラットを、試験の24時間前に15分間の水泳に供した。フルオキセチン(10mg/kg、IP)を、試験の1時間前、5時間前、および23.5時間前に投与した。メチロン(5、15、30mg/kg、IP)を、試験の30分前に投与した。全データを、平均値±標準誤差として表す。一元配置分散分析およびTukeyの事後検定。*p<0.05 対ビヒクル1X群 ****p<0.0001 対ビヒクル1X群;
++++p<0.0001 対ビヒクル3X群; 群当たりN=6~8。
【
図6】メチロンは、強制水泳試験において他の抗鬱薬よりも優れている。
【
図7】2C-Bは、強制水泳試験において即効性の抗鬱薬様効果を有する。5分間のラット強制水泳試験経過中に、(
図7A)不動であった(F
(5、34)=17.73、p<0.0001)、(
図7B)泳いでいた(F
(5、34)=16.49、p<0.0001)、または(
図7C)登っていた(climbing)(F
(5、34)=4.984、p<0.001)時間の測定。ラットを、試験の24時間前に15分間の水泳に供した。フルオキセチンを、試験の1時間前、5時間前、および23.5時間前に投与した(10mg/kg、IP)。2C-B(2.5、10、20mg/kg、IP)を、試験の30分前に投与した。全データを、平均値±標準誤差として表す。一元配置分散分析およびTukeyの事後検定。**p<0.01 対ビヒクル1X群; ****p<0.0001 対ビヒクル1X群;
++++p<0.0001 対ビヒクル3X群;
+++p<0.001 対ビヒクル3X群; 群当たりN=6~8。
【
図8】メチロンは、強制水泳試験において安定な抗鬱薬様効果を有する。(
図8A)実験設計のスキーム。5分間のラット強制水泳試験経過中に、(
図8B)不動であった(F
(4,31)=17.05、p<0.0001)、(
図8C)登っていた(climbing)F
(4,31)=5.786、p<0.01)、または(D)泳いでいた(F
(4,31)=6.063、p<0.01)時間の測定。ラットを、試験の24時間前に、15分間の水泳に供した。フルオキセチン(10mg/kg、IP)を、試験の1時間前、5時間前、および23.5時間前に投与した。メチロン(5または15mg/kg、IP)を、試験の30分前に投与した。全データを、平均値±標準誤差として表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 対ビヒクル対照群;
+p<0.05、
++p<0.01 対フルオキセチン処置群;
ap=0.06 対フルオキセチン処置群;
bp=0.08 対ビヒクル対照群; 群当たりN=6~8。
【
図9】メチロンは、PTSDマウスモデルにおいて恐怖消去リコールを改善する。(
図9A)実験設計のスキーム。第1日目の単一CS-US(音-ショック)の対の後に、新規文脈で6回のCS提示(文脈B)。メチロンまたは食塩水ビヒクルを、第2日目に、消去訓練の30分前に注射した。第3日目に、CSに対しフリーズしていた時間を測定した。(
図9B)第3日目の第1のキュー(cue)(消去リコール)の間のフリーズしていた時間は、食塩水と比較してメチロンにより有意に短縮された(t
(26)=2.350、p<0.05)。(
図9C)自発運動の変化は、第3日目に観察されなかった(t
(26)=1.073、p>0.05)。データを、平均値±標準誤差として表す。メチロン群(30mg/kg、IP)ではN=12;および食塩水対照群ではN=16。*p<0.05。
【
図10】MBDBは、PTSDマウスモデルにおいて恐怖消去を改善する。第1日目の単一CS-US(音-ショック)の対の後に、新規文脈で6回のCS提示(文脈B)。MBDBまたは食塩水ビヒクルを、第2日目に、消去訓練の30分前に注射した。第3日目に、CSに対しフリーズしていた時間を測定した。(
図10A)第2日目の第1の消去訓練試験の間のフリーズしていた時間は、食塩水対照と比較してMBDBにより有意に短縮された(t(24)=3.095、p<0.01)。(
図10B)少しではあるが有意な自発運動の増加がまた、第2日目にMBDBにより誘導された(t(24)=2.874、p<0.01)。データを、平均値±標準誤差として表す。MBDB群(5mg/kg、IP)ではN=10;および食塩水対照群ではN=16。**p<0.01 対ビヒクル対照群。
【
図11】メチロンは、オープンフィールド試験において不安を低減し自発運動を増加させる。ラットは、オープンフィールドにおける30分間の試験の30分前にメチロンの単回注射を受けた。(
図11A)中央部で過ごした時間は、ビヒクル処置対照と比較したメチロンの抗不安効果を明らかにした(F
(3、20)=7.139、p<0.01)。(
図11B)総移動距離は、メチロンの中用量および高用量の後の増加された自発運動を示した(F
(3,20)=6.209、p<0.01)。データを、平均値±標準誤差として表す。群当たりN=6。* p<0.05; **p<0.01 対ビヒクル対照群。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、CNS障害治療に好適な薬剤としてメチロンを同定する。メチロン(3,4-メチレンジオキシN-メチルカチノン;「βk-MDMA」としても知られる)は、合成共感誘導性カチノンであり、MDMAのよく似た構造類似体であるが、50%超短い半減期を有する。2010年の米国DEAによるスケジュール1規制ステータスに指定された後、その効力または安全性プロファイルのFDA登録臨床試験はない。メチロンおよびMDMAは、アンフェタミン類に類似し、セロトニン受容体5-HT2ファミリーの作用薬である。ラットの脳シナプトソームを用いたインビトロ放出アッセイは、メチロンが細胞膜モノアミントランスポーターおよび受容体に対する非選択的基質であることを明らかにする。
【0024】
メチロンは、混合再取り込み阻害/放出剤として作用し、MDMAと比較して、セロトニントランスポーターに対し3倍低い親和性を有するが、ノルエピネフリンおよびドーパミントランスポーターに対し類似の親和性を有する。この低下されたセロトニン作動性経路の優位性が、抗鬱薬としてのその効力が期待されない理由である。さらに、MDMAまたはメチロンのような合成カチノン類を含む、アンフェタミン類からの「落ち込み」効果は、強度の鬱および疲労感を含む。メチロンは、抑制された神経学的状態に類似する、ラットにおける5-HTとセロトニントランスポーター5-HTTレベルの広範な枯渇を生じた。鬱はまた、メチロンを用いてヒトでも報告されている。他の有害作用としては、不安、食欲不振、現実感喪失/離人症、短期記憶障害、精神病、幻覚症状、自殺念慮、易刺激性、動機付け抑制、精神緩慢、覚醒状態、不随意性振戦、歯ぎしり、顎のクレンチング(jaw clenching)、開口障害、および上肢および歩行の不安定が挙げられる。
【0025】
総合すれば、動物およびヒトのデータは、鬱病およびPTSDを含む、CNS障害のための治療としてメチロンの潜在的医学用途を示唆しない。メチロン(そのクラスの合成カチノン類において(最も)低い5-HT作動性を有する)が、現在の標準治療に対して無応答、治療抵抗性、禁忌である、または異論のある患者において、本発明者らにより同定された適応症に対して有用であることは予想外である。これは、単独で、あるいはSSRI、TCA、MAOI、SNRI、SDNRI、または抗不安薬(ベンゾジアゼピン類、βブロッカー、αブロッカー、およびブスピロンなど)との組み合わせでのいずれかで、メチロンの投与を含み得る。
【0026】
本発明者らは、メチロンがCNS治療薬剤として(抗鬱薬として、またはPTSD治療薬として、または抗不安薬として、を含む)主流の潜在性を有することを見出す。他の治療と比較して、メチロンは、現在の治療剤および開発中の治療剤よりも有利な点を有する:より良好な有効性:安全比、より即効性の有効性プロファイル、より少ない薬剤/薬剤相互作用、より有効な併用療法、個人の集団の心理療法におけるより頻繁な補助。メチロンはまた、患者の大部分で効力が漸減するSSRI耐性の症状とは異なり、より長いセッションまたは慢性的な使用の後により少ない副作用を起こす。SSRI耐性の症状としては、疲労、意欲喪失、倦怠、睡眠障害、レストレスレッグス症候群、易刺激性、および憂鬱気分が挙げられる。
【0027】
本発明者らはさらに、身体症状症(SSD)、抑鬱障害、PTSD、および他の中枢神経系(CNS)疾患(特に、線維筋痛症、すなわち疲労、睡障害、記憶障害および気分障害の症状を伴う広範な筋骨格痛症候群)の治療および症状緩和に好適な薬剤として2C-B(2,5-ジメトキシ-4-ブロモフェネチルアミン)を同定する。SNRI(デュロキセチンおよびミルナシプラン)などの、線維筋痛症の治療はしばしば、それらの潜在的な害が上回り、ごく僅かの線維筋痛症患者のみが、有害事象なしに実質的な症状緩和を経験する。
【0028】
2C-Bは、5-HT2A受容体部分的作用薬として限定的な効力を有すると報告された精神活性フェネチルアミンであるが、本発明者らは、それは、5-HT2Aが関与する病態生理学において有用であると仮定する。インビトロおよびインビボのモデルは、それが、混合された5-HT2A拮抗薬、および5-HT2Bならびに5-HT2Cの部分的作用薬として作用することを示唆する(これらの受容体は特に、第5層の新皮質錐体細胞の先端樹状突起で発現される)。それは、多くの入院事例が毒性研究により2C-B摂取と関連づけられているので、その好ましくない特性および潜在的な乱用の可能性によりスケジュール1薬剤である。
【0029】
2C-Bを自己投与した(10~20mgの様々な用量で)経験を積んだ薬物使用者におけるヒト非盲検研究は、重大な有害作用を認めなかった。20mgよりも高い用量では、2C-B使用者は、より大きな高揚感、万華鏡視覚(kaleidoscope vision)、および歪んだ認知を報告している。
【0030】
慢性精神障害はしばしば、心理療法によってさらに調節され得る複合的な薬理効果により、精神活性医薬品に良好に応答する治療抵抗性症状の共通コアを共有する。患者は、互いに関連のある複数の共起症状を経験し、独立的または同時的な時間変化および重症度評価を有し、共通の根本的な機序を有することもある。クラスターはまた、脳回路および神経伝達物質の神経生物学的相関により複数の症候群および障害にまたがる、「症状中間表現型」とみなされ得る。
【0031】
理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、2C-Bが、急性の、身体的な変化の現象学および永続的な精神活性の薬理学的および生理学的な効果プロファイルにより、SSD、鬱病、不安、PTSD、および合併病態を治療する説得力のある神経生物学的根拠を有すると仮定する。線維筋痛症を含むSSDはしばしば、不明瞭な生物学的または医学的原因による慢性の身体症状により、除外の診断である。SSDに含まれるDSM-5での固有表現は、「さもなければ特定されない」病気不安症/心気症、機能的神経学的/転換性障害、疼痛性障害(線維筋痛症はこの中に分類される)、身体醜形障害、および身体表現性障害である。これらはしばしば、気分障害および情動障害と併存し、それらは気分障害クラスターおよび神経心理学的不快感クラスターを含み得る。線維筋痛症患者は、1~24mgのより低用量範囲にて、かつCNS障害の他の精神活性治療薬剤と組みわせて、2C-Bにより良好に治療され得る。
【0032】
本発明者らはさらに、広範な不安障害を治療するおよびその症状緩和を提供する好適な薬剤として、あるいは抗鬱薬としてMBDB(N-メチル-1-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-アミノブタン)を同定する。動物およびヒトのデータは、CNS障害、または他の治療としてのMBDBの潜在的な医学用途を示唆しない。100~300mgの様々な用量で、管理された環境において監督下でMBDBを自己投与した治験薬剤使用者は、重大な有害作用を認めなかった。まとめると、MBDBは、抗不安薬として利用することが可能であり、この治療効果は、GAD-7または全般性不安障害重症度尺度(GADSS)などの尺度を用いて確実に評価できる。
【0033】
本明細書において列挙される疾患、病態、および障害は、精神障害米国精神医学会により出版された精神疾患の診断統計マニュアル(DSM-5)、あるいは世界保健機関により出版された国際疾病分類(ICD)に記載されている。
【0034】
精神病、精神病態、精神疾患、または精神障害は、定義された範囲で以下の、および全ての中間のICD-10コードを、限定なしに、含む:
F01~F09:既知の生理的状態による精神障害。
F01:血管性認知症、F02:他のどこかで分類された他の疾患の認知症、F03:特定されない認知症、F04:既知の生理的状態による器質性健忘症候群、F05:既知の生理的状態によるせん妄、F06:既知の生理的状態による他の精神障害、F07:既知の生理的状態による人格および行動の障害、F09:既知の生理的状態による特定されない精神障害。
F10~F19:精神活性物質の使用による精神および行動の障害
F10:アルコール関連障害、F11:オピオイド関連障害、F12:カナビス関連障害、F13:鎮静薬、催眠薬または抗不安薬に関連する障害、F14:コカイン関連障害、F15:他の刺激剤関連障害、F16:幻覚剤関連障害、F17:ニコチン依存症、F18:吸入剤関連障害、F19:他の精神活性物質関連障害。カフェイン関連障害、カフェイン中毒、カフェイン離脱症、他のカフェイン誘発性障害、物質関連障害、非物質関連障害、ギャンブル障害、神経認知障害、せん妄、他の特定されたせん妄、特定されないせん妄、重度および軽度の神経認知障害、重度の神経認知障害、軽度の神経認知障害、アルツハイマー病による重度または軽度の神経認知障害、重度または軽度の前頭側頭型神経認知障害、レヴィー小体病に伴う重度または軽度の神経認知障害、重度または軽度の血管性神経認知障害、外傷性脳損傷による重度または軽度の神経認知障害、物質/医薬品誘発性の重度または軽度の神経認知障害、HIV感染症による重度または軽度の神経認知障害、プリオン病による重度または軽度の神経認知障害、パーキンソン病による重度または軽度の神経認知障害、ハンチントン病による重度または軽度の神経認知障害、他の医学的疾患による重度または軽度の神経認知障害、複数病因による重度または軽度の神経認知障害、特定されない神経認知障害。
F20~F29:統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害、および他の非気分性精神病性障害
F20:統合失調症、F21:統合失調症型障害、F22:妄想性障害、F23:一過性精神病性障害、F24:感応性妄想性障害、F25:統合失調感情障害、F28:物質または既知の生理学的状態によるものではない他の精神病性障害、F29:物質または既知の生理学的状態によるものではない特定されない精神病。
F30~F39:気分[感情]障害
F30:躁病エピソード、F31:双極性障害、F32:大鬱病性障害、単一エピソード、F33:大鬱病性障害、反復性、F34:持続的気分[感情]障害、F39:特定されない気分[感情]障害。
重篤気分変調症、持続性抑鬱障害(気分変調症)、月経前不快気分障害、物質/医薬品誘発性抑鬱障害、他の病態による抑鬱障害、他の特定された抑鬱障害、特定されない抑鬱障害、治療抵抗性欝病。
F40~F48:不安、解離性、ストレス関連、身体表現性、他の非精神病性精神障害
F40:恐怖症性不安障害、F41:他の不安障害、F42:強迫神経症、F43:重度ストレスへの反応および適応の障害、F44:解離性および転換性障害、F45:身体表現性障害、F48他の非精神病性精神障害。
不安障害:分離不安障害、場面緘黙症、限局性恐怖症、社会不安障害(社会恐怖症)、パニック障害、パニック発作(特定用語)、広場恐怖症、全般性不安障害、物質/医薬品誘発性不安障害、他の病態による不安障害、他の特定された不安障害、強迫神経症、醜形恐怖症、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症、物質/医薬品誘発性強迫神経症および関連障害、他の医学的疾患による強迫神経症および関連障害、他の特定された強迫神経症および関連障害、適応障害、他の特定された心的外傷およびストレス因関連障害;
特定されない心的外傷およびストレス因関連障害群:反応性アタッチメント障害、脱抑制型対人交流障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害;
身体症状症および関連症群:身体症状症、病気不安症、転換性障害(機能性神経症状症)、他の医学的疾患に影響する心理的要因、作為症、他の特定された身体症状症および関連症、特定されない身体症状症および関連症;
食行動障害および摂食障害群:異食症、反芻症、回避/制限性食物摂取症、神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害、他の特定された食行動障害および摂食障害、特定されない食行動障害および摂食障害;
睡眠/覚醒障害群:不眠障害、過眠障害、ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害群、閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸、中枢性睡眠時無呼吸、睡眠関連低換気、概日リズム睡眠‐覚醒障害群、睡眠時随伴症群、ノンレム睡眠からの覚醒障害、睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症、悪夢障害、レム睡眠行動障害、むずむず脚症候群、物質/医薬品誘発性睡眠障害、他の特定される不眠障害、特定不能の不眠障害、他の特定された過眠障害、特定されない過眠障害、他の特定された睡眠‐覚醒障害、特定されない睡眠‐覚醒障害;
性機能不全群:射精遅延、勃起障害、女性オルガズム障害、女性の性的関心/興奮障害、性器‐骨盤痛/挿入障害、男性の性欲低下障害、早漏、物質/医薬品誘発性性機能不全、他の特定された性機能不全、特定されない性機能不全、性別違和、性別違和、他の特定された性別違和、特定されない性別違和。
F50~F59:生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
F50:摂食障害、F51:物質または既知の生理学的状態によるものではない非器質性睡眠障害、F52:物質または既知の生理学的状態によるものではない性機能不全、F53:産褥に関連する精神および行動の障害、どこか他で分類されていないもの、F54:どこか他で分類された障害または疾患に関連する心理的または行動的要因、F55:非精神活性物質の乱用、F59:生理的障害および身体的要因に関連する特定されない行動症候群。
F60~F69:成人のパーソナリティおよび行動の障害
F60:特定のパーソナリティ障害、F63:衝動性障害、F64:性同一性障害、F65:性嗜好の障害、F66:他の性的障害、F68:成人のパーソナリティおよび行動の他の障害、F69:成人のパーソナリティおよび行動の特定されない障害。
破壊的な、衝動制御、および素行症群:反抗挑発症、間欠爆発症、素行症、反社会的パーソナリティ障害、放火症、窃盗症、他の特定された破壊的な、衝動制御、および素行症、特定されない破壊的な、衝動制御、および素行症、
パーソナリティ障害群、パーソナリティ障害全般、クラスターAパーソナリティ障害、猜疑性パーソナリティ障害、シゾイドパーソナリティ障害、統合失調症性パーソナリティ障害、クラスターBパーソナリティ障害、反社会的パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、クラスターCパーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫神経パーソナリティ障害、他のパーソナリティ障害、他の医学的疾患によるパーソナリティ変化、他の特定されたパーソナリティ障害、特定されないパーソナリティ障害、さらなる研究のための病態、減弱精神病症候群、短期間の軽躁病を伴う抑鬱エピソード、持続性複雑死別障害、ゲーム障害、出生前のアルコール曝露に関連する神経行動障害、自殺行動障害、非自殺的な自傷行為。
F70~F79:知的障害
F70:軽度の知的障害、F71:中等度の知的障害、F72:重度の知的障害、F73:最重度の知的障害、F78:他の知的障害、F79:特定されない知的障害。
F80~F89:広汎性のおよび特定の発達障害
F80:会話および言語の特定の発達障害、F81:学習能力の特定の発達障害、F82:運動機能の特定の発達障害、F84:広汎性発達障害、F88:他の心理的発達障害、F89:特定されない心理的発達障害。神経発達症群、知的能力障害群、知的能力障害(知的発達障害)、全般的発達遅延、特定されない知的能力障害(特定されない知的発達障害)、コミュニケーション障害群、言語障害、語音障害(以前は、音韻障害)、小児期発症流暢障害(吃音)、社会的(語用論的)コミュニケーション障害、特定されないコミュニケーション障害、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠如/多動性障害、注意欠如/多動性障害、他の特定された注意欠如/多動性障害、特定されない注意欠如/多動性障害、限局性学習障害、限局性学習障害、運動障害群、発達性協調運動障害、常同運動障害、チック障害群、トゥレット障害、持続性(慢性)運動または音声チック障害、暫定的チック障害、他の特定されたチック障害、特定されないチック障害、他の神経発達障害群、他の特定された神経発達障害群、特定されない神経発達障害群。
F90~F98:小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
F90:多動性障害、F91:行為障害、F93:小児期に特異的に発症する情緒障害、F94:小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害、F95:チック障害、F98:小児期および青年期に特異的に発症する他の行動および情緒の障害。
【0035】
本明細書で使用される、神経系の病気、神経系の病態、神経疾患、または神経障害は、限定なしに、以下の、および定義された範囲で全ての中間のICD-10コードを含む:
G00~G09:中枢神経系の炎症性疾患
G00:どこか他で分類されていない、細菌性髄膜炎、G01:どこか他で分類された細菌性疾患における髄膜炎、G02:どこか他で分類された他の感染性および寄生性の疾患における髄膜炎、G03:他の原因および特定されない原因による髄膜炎、G04:脳炎、脊髄炎、および脳脊髄炎、G05:どこか他で分類された疾患における脳炎、脊髄炎、および脳脊髄炎;G06:頭蓋内および髄腔内の膿瘍および肉芽腫、G07:どこか他で分類された疾患における頭蓋内および髄腔内の膿瘍および肉芽腫;G08:頭蓋内および髄腔内の静脈炎および血栓性静脈炎、G09:中枢神経系の炎症性疾患の続発症。以下の例外を付け加える:
周産期に由来する特定の病態(P04~P96);感染性および寄生性の特定疾患(A00~B99);妊娠、出産、および産褥期の合併症(O00~O9A);先天性形成異常、先天性奇形、および染色体異常(Q00~Q99);内分泌、栄養、および代謝性疾患(E00~E88);傷害、中毒および外因による特定の他の結果(S00~T88);腫瘍(C00~D49);症状、症候、および臨床および検査による異常所見、どこか他で分類されていないもの(R00~R94)。
G10~G14:主に中枢神経系に影響する系統萎縮症
G10:ハンチントン病、G11:遺伝性運動失調症、G12:脊髄性筋萎縮症および関連症候群、G13:どこか他で分類された疾患における主に中枢神経系に影響する系統萎縮症、G14:ポリオ後症候群。
G20~G26:錐体外路障害および運動障害
G20:パーキンソン病、G21:続発性パーキンソン症候群、G23:大脳基底核の他の変性疾患、G24:筋失調症、G25:他の錐体外路障害および運動障害、G26:どこか他で分類された疾患における錐体外路障害および運動障害。
G30~G32:他の神経系変性疾患
G30:アルツハイマー病、G31:神経系の他の変性疾患、どこか他で分類されていないもの、G32:どこか他で分類された疾患における神経系の他の変性障害。
G35~G37:中枢神経系の脱髄疾患
G35:多発性硬化症、G36:他の急性播種性脱髄疾患、G37:中枢神経系の他の脱髄疾患。
G40~G47:エピソード性および発作性の障害
G40:てんかんおよび反復発作、G43:片頭痛、G44:他の頭痛症候群、G45:一過性脳虚血発作および関連症候群、G46:脳血管疾患における脳の血管性症候群、G47:睡眠障害。
G50~G59:神経、神経根および神経叢の障害
G50:三叉神経障害、G51:顔面神経障害、G52:他の脳神経障害、G53:どこか他で分類された疾患における脳神経障害、G54:神経根および神経叢の障害、G55:どこか他で分類された疾患における神経根および神経叢の圧迫、G56:上肢の単ニューロパシー、G57:下肢の単ニューロパシー、G58:他の単ニューロパシー、G59:どこか他で分類された疾患における単ニューロパシー。以下の例外を付け加える:
神経、神経根、および神経叢の現在の外傷性障害、身体領域の神経、神経痛NOS(M79.2);神経炎NOS(M79.2);妊娠時の末梢神経炎(O26.82);神経根炎NOS(M54.1)。
G60~G65:多発性ニューロパシーおよび他の末梢神経系の障害
G60:遺伝性および特発性ニューロパシー、G61:炎症性多発性ニューロパシー、G62:他のおよび特定されない多発性ニューロパシー、G63:どこか他で分類された疾患における多発性ニューロパシー、G64:末梢神経系の他の障害、G65:炎症性および中毒性の多発性ニューロパシーの続発症。
G70~G73:神経筋接合部および筋の疾患
G70:重症筋無力症および他の神経筋障害、G71:原発性筋障害、G72:他のおよび特定されないミオパシー、G73:どこか他で分類された疾患における神経筋接合部および筋の障害。
G80~G83:脳性麻痺および他の麻痺性症候群
G80:脳性麻痺、G81:片麻痺および片側不全麻痺、G82:対麻痺(不全対麻痺)および四肢麻痺(四肢不全麻痺)、G83:他の麻痺性症候群。
G89~G99:神経系の他の障害
G89:疼痛、どこか他で分類されていないもの、G90:自律神経系の障害、G91:水頭症;G92:中毒性脳症、G93:他の脳障害、G94:どこか他で分類された疾患における他の脳障害、G95:他のおよび特定されない脊髄疾患、G96:他の中枢神経系障害、G97:神経系の手術中および処置後の合併症および障害、どこか他で分類されていないもの、G98:神経系の他の障害、どこか他で分類されていないもの、G99:どこか他で分類された疾患における神経系の他の障害。
【0036】
本明細書で使用される、「治療抵抗性鬱病」(TRD)は、非応答者鬱病、難治性鬱病、部分反応性鬱病、最適化方略、切り替え方略、併用方略、強化方略、ブプロピオン、ミルタザピン、ミアンセリン、リチウム、甲状腺ホルモン、第2世代抗精神病薬(SGA)、ドーパミン作用薬、ラモトリギン、精神刺激薬、デキストロメトルファン、デキストロファン、ケタミン、オメガ-3脂肪酸、ピンドロール、性ステロイド、およびグルココルチコイド剤を含むがこれらに限定されないとして本明細書中で定義される、管理のためのアプローチなどの、全ての関連する用語の省略表記(shorthand signifier)である。管理のためのアプローチは、(1)非効果的な抗鬱薬から、類似のまたは異なるクラスからの新規抗鬱薬へ切り替えること;(2)現在の抗鬱薬レジメンを異なるクラスからの第2の抗鬱薬と組み合わせること;および(3)それ自体が抗鬱薬とは考えられない第2の薬剤により現在の抗鬱薬レジメンを増強すること、などの治療方略を含む。
【0037】
本明細書で使用される、用語「低下させる」、「減少させる」、「減じる」および類似の用語は、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約35%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%の、またはそれより多い減少を意味する。
【0038】
本明細書で使用される、用語「改善する」、「増加させる」、「増強する」および類似の用語は、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約50%、約75%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%の、またはそれより多い増加を指す。
【0039】
本明細書で使用される、用語「結合する」または「結合」または文法的にそれと同等な用語は、互いに親和性を有する組成物を指す。「特異的結合」は、結合が2種類の分子間で選択的である。特異的結合の具体的な例は、それが抗体と抗原の間で起こるものである。典型的には、特異的結合は、解離定数(KD)が約1×10-5M未満または約1×10-6M未満または1×10-7M未満である場合、非特異的結合と区別され得る。特異的結合は、ELISA、免疫沈降、共沈、化学的架橋の有無で、2ハイブリッドアッセイなどにより検出可能である。適切な対照を用いて、「特異的な」結合と「非特異的な」結合を識別できる。
【0040】
一実施態様においては、様々な他の治療薬を、本明細書において提供される組成物および方法による投与のために使用できる。
【0041】
本明細書において提供される精神活性化合物は、様々な治療目的で利用され得る。一実施態様においては、化合物は、神経精神疾患を治療するために対象に投与される。本明細書において提供される組成物および方法のための「対象」は、ヒトおよび他の動物、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトを含む。したがって、本明細書で提供される化合物は、ヒトの治療のおよび獣医学的な適用の両方を有する。別の一実施態様においては、対象は、哺乳動物であり、またさらに別の一実施態様においては、対象は、ヒトである。本明細書において、「病態」または「疾患」は、本明細書で提供される化合物を含む医薬組成物の投与により改善され得る障害を意味する。
【0042】
本明細書に記載の方法および組成物は、神経精神疾患の予防ならびにその兆候および/または症状の改善のために用いることができる。対象における神経精神疾患の治療を指すために用いられる用語「治療する」および「治療」は、対象における神経精神疾患を予防すること、防ぐこと、または改善すること、ならびに神経精神疾患の兆候または症状を低減することまたは改善することを含む。治療目標は、正の認知的数価システムおよび負の数価における対応する減少の関与と共に、回復力および生活の質が向上されたかどうかを測るために、DSM-5重症度評価尺度における改善などのエンドポイントを組み込んでよい。
【0043】
本明細書に記載されるような1種類以上の適応症の治療および/または予防のために本明細書で提供される精神活性化合物を投与することを含む治療および/または予防の方法はまた、本明細書に記載されるような1種類以上の適応症の治療および/または予防のための治療薬剤の製造における本明細書で提供される精神活性化合物の使用;および本明細書に記載されるような1種類以上の適応症の治療および/または予防のための本明細書で提供される精神活性化合物の使用を含むということを、当業者は理解するであろう。
【0044】
いくつかの実施態様では、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防する、および/またはその症状を改善する方法は、本明細書で提供される精神活性化合物の治療的有効用量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、それを必要とする対象において神経精神疾患を治療するおよび/または予防する、および/またはその症状を改善する方法は、管理された環境で本明細書で提供される精神活性化合物の治療的有効用量を対象に投与することを含み、対象は、心理学的サポートを提供される。
【0045】
用語「約」または「おおよそ」は、当業者によって決定されるような特定値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、それは部分には、どのようにその値が測定されるまたは決定されるか、すなわち、測定システムの限界に依存するであろう。例えば、「約」は、当該技術の慣例による、1または1より大きい標準偏差内を意味し得る。あるいは、量、時間的経過、濃度などの測定可能値に言及する場合、特定される値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%または±0.5%、またさらにより好ましくは±0.1%の変動を含んでよく、したがって変動は開示される方法を実施するために適切である。
【0046】
医薬組成物が、本明細書で提供される精神活性化合物および方法のために意図される。本明細書で提供される組成物および方法の製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望される程度の純度を有する上記化合物を任意選択で薬学的に許容可能な担体、添加剤または安定化剤と混合することにより保存用に調製される。許容可能な担体、添加剤、または安定化剤は、用いる用量および濃度においてレシピエントに対し非毒性であり、以下を含む:
緩衝液(リン酸、クエン酸、酢酸、および他の有機酸など);アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメソニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;蛋白質、(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー類(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなど);単糖類、二糖類、およびグルコースを含む他の炭水化物、マンノース、またはデキストリン類;キレート剤(EDTAなど);糖類(スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなど);甘味料および他の香味剤;充填剤(微小結晶セルロース、乳糖、コーンスターチおよび他のでんぷん類など);結合剤;添加剤;着色剤;塩形成対イオン(ナトリウムなど);金属複合体(例えば、Zn蛋白質複合体);および/または非イオン性界面活性剤またはポリエチレングリコール(PEG)。別の一実施態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容可能な塩として存在するなどの、水溶性形態であり、それは、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含むことを意味する。「薬学的に許容可能な酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、かつ生物学的にもそれ以外でも望ましくないものではない、塩を指し、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸と形成される。「薬学的に許容可能な塩基付加塩」としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などの無機塩基に由来するものが挙げられる。とくに好ましいものは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。薬学的に許容可能な有機非毒性塩基類に由来する塩としては、第1級、第2級、および第3級アミン類、天然の置換アミン類を含む置換アミン類、環状アミン類および塩基性イオン交換樹脂(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンなど)の塩が挙げられる。インビボ投与に用いられる製剤は好ましくは、無菌である。これは、無菌濾過フィルターによる濾過または他の方法により容易に達成される。
【0047】
本明細書で提供される精神活性化合物の製剤化のための薬学的に許容可能な添加剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
希釈剤、例えば、微小結晶セルロース、でんぷん、マンニトール、無水リン酸水素カルシウムまたは二酸化ケイ素の共混合物、炭酸カルシウム、微小結晶セルロースおよびタルク;崩壊剤、例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたはクロスカルメロースナトリウム;結合剤、例えば、ポビドン、コポビドンまたはヒドロキシルプロピルセルロース;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリルフマル酸ナトリウム;流動促進剤、例えば、コロイド二酸化ケイ素;およびフィルムコーティング剤、例えば、オパドライII白色またはPVAを基盤とする褐色オパドライII。
【0048】
本明細書で提供される精神活性化合物はまた、液滴形成技術、界面重合(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、またはゼラチン-マイクロカプセル類、またはポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル類を用いて)、コロイド薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)、およびマクロエマルジョンを含むが、これらに限定されない方法により調製されるマイクロカプセル中に封入されてよい。持続性放出調製剤が、調製されてよい。持続放出調製剤の好適な例としては、マトリックスが成形品形態(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)である、固体疎水性ポリマー半透過性マトリックスが挙げられる。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートの共重合体、非分解性エチレンビニル酢酸、分解性乳酸グリコール酸コポリマー(乳酸グリコール酸コポリマーおよびリュープロリド酢酸塩で構成される注射可能ミクロスフェア)、およびポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)のマトリックス中に組み込まれた所望の生物活性分子で構成されるミクロスフェアを基盤とする送達システムであるポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸)が挙げられる。
【0049】
好ましくは無菌の水溶液形態で、本明細書で提供される精神活性剤を含む医薬組成物の投与は、経口で、皮下で、静脈内で、鼻腔内で、耳内で(intraotically)、経皮的、局所で(例えば、ゲル、軟膏、ローション、クリームなど)、腹腔内で、筋肉内で、肺内、腟内で、非経口、直腸で、または眼内でを含むが、これらに限定されない、様々な方法で実施され得る。当該技術分野において公知であるように、医薬組成物は、導入方法に応じて適切に製剤化されてよい。
【0050】
いくつかの実施態様においては、医薬製剤は、経口剤形である。いくつかの実施態様においては、医薬製剤は、非経口剤形である。いくつかの実施態様においては、医薬製剤は、錠剤を含む。いくつかの実施態様においては、医薬製剤は、カプセルを含む。いくつかの実施態様においては、医薬製剤は、乾燥粉末を含む。いくつかの実施態様においては、医薬製剤は、溶液を含む。いくつかの実施態様においては、2以上の剤形が、実質的に同時に対象に投与される。いくつかの実施態様においては、対象は、1つの錠剤またはカプセルで総治療用量を投与されてよい。いくつかの実施態様においては、治療用量は、複数の錠剤またはカプセル中で分割されてよい。
【0051】
いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約1mg~約100mgの範囲であってよい。例えば、用量は、約1mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mgであってよい。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約0.1mg~約100mg、約1mg~約50mg、または約5mg~約30mgである。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約1mg、約10mg、または約25mgである。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約0.001mg~約1gの範囲である。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約100mg~約250mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約25mgである。
【0052】
いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物は、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物は、1日2回投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、1日3回投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、2日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、3日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、4日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、5日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、毎週投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、2週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、3週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、精神活性化合物は、毎月投与される。
【0053】
いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、1日2回投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、1日3回投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、2日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、3日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、4日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、5日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、毎週投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、2週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、3週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約50mgの精神活性化合物が、毎月投与される。
【0054】
いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、1日2回投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、1日3回投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、2日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、3日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、4日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、5日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、毎週投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、2週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、3週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約100mgの精神活性化合物が、毎月投与される。
【0055】
いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、1日2回投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、1日3回投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、2日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、3日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、4日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、5日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、毎週投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、2週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、3週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約150mgの精神活性化合物が、毎月投与される。
【0056】
いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、1日2回投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、1日3回投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、2日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、3日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、4日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、5日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、毎週投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、2週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、3週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約200mgの精神活性化合物が、毎月投与される。
【0057】
いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、1日2回投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、1日3回投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、2日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、3日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、4日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、5日毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、毎日投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、毎週投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、2週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、3週毎に投与される。いくつかの実施態様においては、約250mgの精神活性化合物が、毎月投与される。
【0058】
いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の初期用量が、投与され、それは次いで、精神活性化合物の第2の用量を投与することにより30分~4時間後に増強される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約30分に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約60分に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約90分後に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約120分に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約150分に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約180分に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約210分に投与される。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量後の約240分に投与される。
【0059】
いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量の量の10%~100%である。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量と同じ量である。いくつかの実施態様においては、増強用量は、初期用量の約半分の量である。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、毎日実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、1日2回実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、1日3回実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、1日おきに実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、3日毎に実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、4日毎に実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、5日毎に実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、毎週実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、2週毎に実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、3週毎に実施される。いくつかの実施態様においては、この投与スケジュールは、毎月実施される。
【0060】
いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約1mg/kg~約100mg/kgの範囲であってよい。例えば、用量は、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kgであってよい。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約0.1mg/kg~約100mg/kg、約1mg/kg~約50mg/kg、または約5mg/kg~約30mg/kgである。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約1mg/kg、約10mg/kg、または約25mg/kgである。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約0.001mg/kg~約1g/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約100mg/kg~約250mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物の用量は、約25mg/kgである。
【0061】
いくつかの実施態様においては、いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物は、例えば、単回用量として、または1週当たり1回以上(最大で毎日2回または1日3回)投与される。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物は、本明細書で提供される投与スケジュールにしたがい投与される。いくつかの実施態様においては、本明細書で提供される精神活性化合物は、徐放製剤または持続性放出性製剤として投与されて、例えば、本明細書で開示される投与レジメンを達成し、かつ患者において治療される適応症に応じて患者に設定されるスケジュールで50mg~1gを放出する。
【0062】
用語「対象」は、一実施態様において病態またはその続発症の治療を必要とする、あるいは病態またはその続発症に対して感受性のヒトを含む哺乳動物を指す。対象は、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウス、ならびにヒトを含んでよい。用語「対象」は、全ての点で正常である個体を除外しない。
【0063】
いくつかの実施態様においては、対象は、雄(男性)である。いくつかの実施態様においては、対象は、雌(女性)である。いくつかの実施態様においては、雌(女性)の対象は、妊娠している、あるいは分娩後である。対象は、高齢対象、小児対象、10代の対象、若年成人対象、または中高年対象であってよい。いくつかの実施態様においては、対象は、年齢約18歳未満である。いくつかの実施態様においては、対象は、少なくとも年齢約18歳である。いくつかの実施態様においては、対象は、約5~10歳、約10~15歳、約15~20歳、約20~25歳、約25~30歳、約30~35歳、約35~40歳、約40~45歳、約45~50歳、約50~55歳、約55~60歳、約60~65歳、約65~70歳、約70~75歳、約75~80歳、約85~90歳、約90~95歳、または約95~100歳である。
【0064】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうではないことを明確に示すのでない限り、複数形を含む。例えば、用語「分子(a molecule)」はまた、複数の分子を含み得る。
【0065】
特定の数値の言及は、文脈がそうではないことを明確に示すのでない限り、少なくともその特定の値を含む。値の範囲が表される場合、別の実施態様は、1つの特定の値から、および/または他の1つの特定の値までを含む。さらに、範囲で述べられる値への言及は、その範囲内の全ての値を含む。全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。
【0066】
本明細書で使用される語句「および/または」は、それによって結合される要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には同時に存在し他の場合には分離的に存在する要素を意味するものと理解されたい。「および/または」で列挙される複数要素は、同じ様式、すなわち、そのように結合される要素の「1つ以上」と見なすべきである。別の要素が、「および/または」という節により具体的に特定される要素の他に、具体的に特定されるそれらの要素に関連するか無関係であるかにかかわらず、任意選択で存在してもよい。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「を含む(comprising)」などのオープンエンド表現と共に用いられる場合、一実施態様において、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し;別の一実施態様において、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し得;さらに別の一実施態様において、AおよびBの両方(任意選択的に他の要素を含むのであってもよい)を指し得る、等々である。
【0067】
本明細書で使用される、「または(or)」は、上で定義される「および/または」と同じ意味を有することを理解されたい。例えば、リストにおいて項目を分ける場合、「または(or)」または「および/または」は、包括的である、すなわち、複数の要素または一連の要素の少なくとも1種類の包含が、2種類以上も含む包含であり、かつ任意選択で、さらなる非列挙の項目を含む包含、と解釈される。「~の1種類のみ(only one of)」または「~の正に1種類(exactly one of)」などの、それとは反対に明らかに示される用語のみが、、または実施態様において用いられる場合の「から成る」は、複数または一連の要素の正確に1種類の要素の包含を指す。一般に、本明細書で用いられる用語「または(or)」は、「いずれか(either)」、「の1種類(one of)」、「の1種類のみ(only one of)」または「の正確に1種類(exactly one of)」などの、排他性の用語が先行する場合、排他的な代替を示す(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)としてのみ解釈される。
【0068】
本明細書で使用される、語句「少なくとも1つの」は、1種類以上の要素のリストへの言及において、要素のリスト中任意の1種類以上から選択される少なくとも1種類の要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に列挙される全要素の少なくとも1種類を必ずしも含まなくてよく、かつ要素リスト中の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義はまた、要素が、語句「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内の具体的に同定される要素以外に、それらの具体的に同定される要素に関連するか無関係であるかにかかわらず、任意選択で存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施態様において、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含む、Aを指し、Bは存在せず(および任意選択でB以外の要素を含む);別の一実施態様において、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含む、Bを指し、Aは存在せず(および任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の一実施態様において、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含む、A、および少なくとも1つの、任意選択で2つ以上を含む、B(および任意選択で他の要素を含む)を指得る、等々である。
【0069】
文脈がそうではないことを示すのでない限り、本明細書に記載される様々な特徴は、任意の組み合わせで用い得ることが、特に意図される。
【0070】
本明細書で引用される任意の特許文書、特許出願公開文書、または科学的出版物は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0071】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様をより詳細に説明するために示される。それらは、本発明の広い範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0072】
実施例
実施例1:マウスにおける恐怖消去可塑性および樹状突起構造に対するメチロン、2C-B、およびMBDBの影響
実験的研究における主要な疑問は、どのように化合物の短い半減期が長期の行動変化をもたらすかということである。可能な1機序は、神経可塑性である。実際に、精神活性化合物の投与は、シナプス結合を強めることにより、またはシナプス結合の数を増加させることにより、脳の神経構築において持続的な変化を起こすことがある。しかし、この見解を支持する現在の証拠は、ほとんど培養ニューロンの研究に由来する。依然として不明なのは、神経可塑性が哺乳動物の脳において精神活性化合物により誘導される度合い、およびシナプス再構築が神経精神障害に関連する脳領域において起こるかどうかである。
【0073】
本試験では、複数の精神活性医薬品の効果を、齧歯類インビボモデルにおいて比較する。複数の条件を、持続的曝露対治療ナイーブ群の両方(例えば、イミプラミン、または他の抗鬱薬/抗不安薬)、陽性対照(例えば、別の抗鬱薬/抗不安薬)、およびビヒクル対照(食塩水)において、目的の3種類の精神活性化合物(メチロン、2C-B、およびMBDB)を含んで、試験する。精神活性化合物の用量応答曲線を、マウスで頭部収縮応答を測定することにより特徴付ける。恐怖消去行動に対する各化合物の単回用量投与の可塑性増強効果もまた、決定する。次いで、樹状突起棘の密度およびターンオーバーに対する各化合物の単回用量投与の長期にわたる影響を、2光子撮像顕微鏡法(Shao LXら、 Neuron.2021 Jun 25:S0896-6273(21)00423-2.doi:10.1016/j.neuron.2021.06.008)を用いて決定する。
【0074】
C57BL/6Jマウスにおける用量応答曲線を決定する
マウスにとって行動的に妥当である用量範囲を決定することは重要である。用量応答曲線を作成するために、頭部収縮(head-twitch)応答を、条件当たり40匹のマウスを試験して、6~8週齢の成獣C57BL/6Jマウスにおいて3種類の精神活性化合物(メチロン、2C-B、MBDB)について用量範囲を定量する。簡単に説明すると、動物を、防音スペース内のアリーナに入れる。アリーナを、近赤外線で照明する。全てのアリーナ内のマウスの動きを、天井に取り付けた高速度カメラにより同時に捕捉する。各動物は、文献に基づき選択される用量範囲で、化合物の1種類の5回用量の1つの腹腔内注射を受ける。マウスを、群に無作為に割り当てる。ビデオを、投与後約10分間記録する。試験のサブセットでは、ビデオを、時間経過を図表にするために最長で2時間記録する。分析のために、頭部収縮を、実験条件を知らされていない実験者によりカウントする。これらの実験を、さらなる試験に用いる用量の情報を与えるために使用する。
【0075】
恐怖消去可塑性に対するメチロン、MBDB、および2C-Bの効果を決定する
神経可塑性は、感情学習において変化を促進することがある。恐怖消去は、関連する恐怖学習刺激への反復曝露が、恐怖応答の強度を低下し得る行動であり、それは、不安または恐怖を低減することにおけるこれらの化合物の作用機序に関連し得る。どの程度の新規フェネチルアミン類が恐怖消去を促進するかは、未知である。ここで、恐怖消去の割合を、条件当たり10匹のマウスを試験して、成獣マウスにおいて4種類の条件(食塩水、メチロン、2C-B、MBDB)で、薬剤投与後に決定する。簡単に説明すると、各マウスは、音/ショックの対を受け(第1日目);次いで翌日に、恐怖関連刺激への再曝露の30分前に化合物の単回投与(先行試験により情報提供される用量で)を受ける(第2日目)。第3日目に、恐怖消去学習を、恐怖条件付け器具で関連する音に再びマウスを再曝露することにより試験する。恐怖消去は、精神障害における不安および恐怖に関連する行動を改善するためのモデルとして働き、幻覚効果から分離可能な行動効果を識別するのに役立つ。潜在的可塑性増強の回路機構を次いで、二光子撮像実験により調べる。
【0076】
神経突起リモデリングに対する長期効果を決定する
精神活性化合物が神経可塑性を強化し得ることが明らかにされているが、これらの実験は、どのように異なる化合物が異なる度合いの構造リモデリングを誘導するのかを調べる。ここで、内側前頭皮質における樹状突起棘ターンオーバーを、1条件当たり5匹のマウスで試験して、成獣マウスにおいて5種類の条件(食塩水、ケタミン、メチロン、2C-B、MBDB)について決定する。簡単に説明すると、Thy1-GFP-Mトランスジェニックマウスを用いる、なぜなら皮質錐体神経細胞の小サブセットが増強された緑色蛍光蛋白質を発現し、それらの樹枝状構造の可視化を可能にするからである。各マウスは、化合物の単回投与(上記のように決定された用量で;ケタミンでは10mg/kg)を受ける。二光子顕微鏡法を用いて、遠位頂毛枝での樹状突起棘を、画像化し、投与の日から-3日目、-1日目、1日目、3日目、5日目、7日目、および約30日目で7セッションについてて追跡する。同じセットの突起棘を長期にわたり画像化することは、樹状突起棘の数の密度、かつまた突起棘の形成と消失の速度を含むターンオーバー動態、ならびに依然として持続する新しく形成される突起棘(新しい機能的シナプスの成熟を示唆する)の割合の決定を可能にする。これらの結果は、神経精神疾患を治療するそれらの好適性を実証するために複数の精神活性化合物についてのデータを提供する。
【0077】
実施例2:神経精神疾患のゼブラフィッシュモデル
哺乳動物に対するそれらの生理的な(神経解剖学的、神経内分泌的、神経化学的な)および遺伝的な類似性、安定な表現型、およびハイスループットの遺伝学的および化学遺伝学的スクリーニングにおける有用性のため、ゼブラフィッシュは、新規治療薬を発見するための、大鬱、不安、および疼痛性障害の適正な実験的モデルの開発にとって理想的である。接近回避、認知、および社会的パラダイムなどの、行動試験アプローチが、ゼブラフィッシュにおいて利用可能であり、生理的、遺伝的、環境的、および/または精神薬理学的変化に応答するゼブラフィッシュにおいて鬱病様指標を同定するために有用である。さらに、一般的に処方される精神活性薬剤に対するゼブラフィッシュの高感受性は、薬理学的研究および薬剤スクリーニングのツールとしてのこのモデルの使用を支持する。完全に特徴付けされたゲノムを有し、ゼブラフィッシュの成魚および幼魚の両方は、各種の精神活性医薬品のインビボスクリーニングに現在広く用いられている。
【0078】
ゼブラフィッシュのレセルピン誘導性抑鬱モデル
モノアミントランスポーターの特異的阻害剤として、レセルピンは、モノアミン神経伝達物質を枯渇させ(液体クロマトグラフ-質量分析計分析により確認される、かつスイミングの距離および平均速度を減少させ(自発運動抑制)、かつ視覚刺激および音刺激の両方に対する応答を低下させることが知られている。レセルピンは、ゼブラフィッシュの成魚および幼魚の両方において鬱病様行動を誘起する;これは、メチロン、2C-BおよびMBDBなどの、これらの絶望様状態に影響する薬剤についてのアッセイとして用いられる。カメラアルゴリズムである勾配方向ヒストグラム(HOG)は、群れる(shoaling)ゼブラフィッシュの鬱病および自発運動抑制的行動を分析して、人間の観察者には不可能な精度を達成する。
【0079】
ゼブラフィッシュの不安障害モデル
不安、恐怖、および刺激依存学習を含む多くの行動は、自由に泳ぐ幼魚ステージほどの早期に評価でき、一方で群れること(shoaling)および方向性のある攻撃のような社会的行動は、年齢と共に発達する。複数種類の不安試験を、高架式十字迷路、新規水槽、明暗箱、およびオープンフィールド試験を含み、逐次的にまたは組み合わせて、実施する。ベンゾジアゼピン類などの公知の抗不安薬剤を、潜水および探索行動、接触走性、過剰活動性スイミング(hyperactive swimming)、不規則スイミング、フリーズ、または成魚の明領域忌避(暗所嗜好)および幼魚の暗所忌避のレベルに対する薬剤の効果を評価する陽性対照として用いる。
【0080】
実施例3:神経精神疾患の齧歯類モデル
本実施例は、本明細書に記載される精神活性化合物の有効性を示すために用いられる、複数の神経学的および精神医学的な病態のための齧歯類モデルを提示する。霊長類および齧歯類のモデルが、幻覚誘発性薬剤の作用の細胞機構および神経回路を研究するために従来から用いられている。
【0081】
鬱病:強制水泳試験(FST)
強制水泳試験(FST)は、古典的であり、抗鬱薬様活性を有する化合物をスクリーニングするために最もよく利用される前臨床行動アッセイであり、かつ高い予測的かつ表面的妥当性を有する(Porsoltら、(1977) Nature 266:730-732;BorsiniおよびMeli、(1988)Psychopharmacology 94:147-160)。FSTの前提は、ラットが水を満たした円筒内に置かれると、最初は逃げようとするが、時間が経つにつれて不動になることである。この増大される不動性は、行動的絶望を反映し、鬱様の状態を形成する。多様な抗鬱薬治療は、スイミングまたはクライミングの増加が、それぞれ、セロトニン作動性またはノルアドレナリン作動性と相関するという観察により、不動時間を一致して減らすことが示されている(Detkeら、(1995) Psychopharmacology 121:66-72)。
【0082】
不安:オープンフィールド試験(中央部対周辺部で過ごした時間)
この行動アッセイもまた、不安パラダイムとして広く用いられ、恐怖または不安を誘起すると見なされる、明るく照らされた開放スペースの齧歯類の本能的な恐怖を利用する。齧歯類は、試験の間オープンフィールドの壁にしがみついてより多くの時間を過ごし、これらの効果は、根底にある脳領域および機構に相関する。
【0083】
方法:オープンフィールドの中央部対周辺部で過ごした時間の連続的ビーム遮断および/またはビデオ追跡を、測定する。また測定されるのは、試験セッションの期間の移動距離および歩行活動(水平のおよび垂直の)などのパラメータである。
【0084】
結果:これらのパラメータに対する薬剤効果を評価するために陽性対照として用いた、ジアゼパムなどの抗不安薬は、運動における変化とは独立して、オープンフィールドの中央部で過ごした時間(および/または移動距離)を増加させる。
【0085】
不安:高架式十字迷路
この行動アッセイは、不安パラダイムとして広く用いられ、潜在的に危険な環境に対する齧歯類の無条件応答に基づき;迷路の高さ、明るさ、および開放スペースは、恐怖または不安を誘起し、かつ根底にある脳領域および機構に相関すると見なされる。
【0086】
方法:境界部からスタートして5分間、閉鎖アームへの迷路の開放アームで過ごした時間のビデオ追跡。他の動物行動学的パラメータは、後ろ脚立ち、頭部を下げる、体長の伸展姿勢を含む。
【0087】
結果:これらのパラメータに対する薬剤効果を評価するための陽性対照として用いた、ジアゼパムなどの抗不安薬は、運動を低下させることなく開放アーム活動で過ごした時間(継続時間および/または進入)を増加させる。
【0088】
修正Geller-Seifter型コンフリクト試験
ラットを、複数の可変の間隔固定された比(食物;食物+ショック)の強化のスケジュール下で、食餌に対しレバー押しをするように訓練する。このタスクは一般的に、罰応答を増強する(すなわち、罰せられる期間における応答抑制に拮抗する)、ジアゼパムなどの抗不安薬様化合物について良好な予測信頼性を示す。これはまた、抗不安薬に対する選択性も示し、他の薬剤クラスでは明らかに効果がなく、ブプロピオンなどの陽性対照でMBDBの抗不安効果を評価できる。
【0089】
線維筋痛症:レセルピン誘導性筋肉痛モデル
レセルピン(1mg/kg/皮下)を、広汎性慢性痛および複合症状を模倣するために、3日間投与する。
【0090】
方法:デュロキセチン(30mg/kg、経口)を、強制水泳試験(FST)の60分前に投与し、次いでラットを、FSTの1日前にLDI:単回線量のγ-放射線(0.5Gy)に曝露する。
【0091】
結果:レセルピンは有意に、FSTにおいて不動時間を増加させ、大脳皮質において5-ヒドロキシトリプタミン、ドーパミン、およびノルエピネフリンの量を低下させる。それはまた、脳組織においてマロンジアルデヒドおよび酸化窒素を増加させかつグルタチオン含量を低下させる。単独でまたはデュロキセチンと組み合わせたLDIは、測定されたパラメータにより評価されるように、レセルピン誘導性線維筋痛症に完全に拮抗する。
【0092】
線維筋痛症:酸-食塩水モデル
異痛症、痛覚過敏症、および他の関連する線維筋痛症様症候は、酸注射(pH4.0)により迅速に誘導される。一旦誘導されると、動物は、機械的刺激および内臓刺激に対し過敏性を示す。症状は、最短で誘導から最低14日継続し、経時的評価、ならびにビヒクルおよび陽性対照(例えば、ブプレノルフィン)との比較を可能にする。
【0093】
実施例4:メチロン症例シリーズ
本実施例は、外来治療環境において臨床心理士により単回または複数回の投与セッションで経口投与されたメチロンについて32の談話の症例シリーズに基づく。この症例シリーズは、2つのデータセット(コホート1およびコホート2)で構成される:
・ コホート1:単回投与セッションで投与されたメチロンの安全性および認容性に関する情報を提供する健康な集団における4症例の談話。
・ コホート2:ベースライン評価を有し、対象の疾患(PTSDまたはMDD)の診断を有する一連の患者からの有効性および安全情報を提供する28症例の談話。コホート2を、第1メチロン投与前に確立されたベースラインCGI-Sと比較して、下にさらに詳述するように、ベースラインでの臨床全般印象重症度(CGI-S)および臨床全般印象改善度(CGI-I)を用いて、投与後に有効性について評価した。CGI-Sスケールをまた、治療後にコホート2からの患者サブセットで評価した。コホート2を、単回投与セッション後に任意の観察されたまたは報告された安全性事象について評価した。
【0094】
臨床全般改善尺度
臨床全般印象(CGI)尺度は、2成分:CGI-S(「重症度」)およびCGI-I(「改善」)を含む。
CGI-S指針
1 = 正常 - 全く病気でない、障害の症状が過去7日間ない。
2 = 境界性の精神疾患 - 潜行性または疑いのある病理
3 = 軽度の疾患 - 明確に確立された症状、あるとすれば、最小の、社会的および職業的機能における苦痛または困難を伴う
4 = 中等度の疾患 - 容易に気付くが、軽度の機能障害または苦痛を引き起こす明確な症状;症状レベルは薬物治療を正当化し得る
5 = 顕著な疾患 - 社会的/職業的機能を明らかに損なう、または侵襲的なレベルの苦痛を引き起こす侵襲的症状
6 = 重度の疾患 - 破壊的な病理、行動および機能が頻繁に症状により影響され、他者の支援を必要とすることもある
7 = とりわけ最も重症な患者 - 病理が多くの生活機能を大幅に妨げる;入院させられることがある
CGI-I指針
1 = 大幅に改善される - ほぼ全て良好;良好な機能レベル;最小の症状;かなり実質的な変化を示す
2 = かなり改善される - 症状の大幅な低減を有しかなり良好;機能レベルは上昇するが、いくつかの症状が残る
3 = 最小限に改善される - 臨床的に意味のある症状の低減はほとんどあるいは全くなくわずかに良好。基礎臨床状態、ケアレベル、または機能的能力においてほとんど変化を認めない
4 = 変化なし - 症状は本質的に変化しないままである
5 = 最少の悪化 - わずかに悪化しているが臨床的に意味はないかもしれない;基礎臨床状態または機能的能力においてほとんど変化を認めない
6 = かなり悪化 - 症状における臨床的に有意な悪化および機能低下
7 = 大幅に悪化 - 症状の重度の悪化および機能の消失
【0095】
結果
ベースライン人口構成:コホート1および2の人口構成を表1に示す。
【0096】
【0097】
コホート1は、グループで(3対象)または個別に(1対象)のいずれかでメチロンを単回投与された、年齢28歳から60歳の範囲の4名の健康な成人対象(3名の男性および1名の女性)で構成される。コホート1は、より若い男性対象の割合が高い傾向があり、かつ全員が白色人種であった。以前のメチロンの使用は、2対象では不明であり、他の2対象(1名の男性および1名の女性)では確認された。
【0098】
コホート2は、通院で治療されるPTSDまたはMDDの28患者で構成される。MDD集団に含まれた患者の1人は、I型双極性障害の一次診断を有したことに留意されたい。全体として、男性と女性はコホート2内で十分に同等であり、かつPTSDおよびMDDのサブセット内で同様の割合を示した。
【0099】
年齢集団は、全体でおよびPTSDのサブセットとMDDのサブセットで、年齢18歳から65歳未満が85%を超え、全データセットならびにPTSDのサブセットおよびMDDのサブセットで、高齢患者(年齢65歳以上)の小サブセットを含んだ。コホート2の全体的な年齢範囲は、広く、22歳~78歳の範囲(平均45.9歳)であり、PTSDのサブセットおよびMDDのサブセット中で類似の分布を有した。
【0100】
コホート2の基礎疾患の特徴
一次診断
全体として、コホート2に含まれた患者の大部分[28患者のうちの20名、(71%)]は、PTSDの一次診断を有し、29%は、一MDDまたは双極性障害の一次診断を有した(7MDD;1双極性)。しかし、20名のPTSD患者の10名(50%)はまた、MDDまたは鬱病(6MDD;4鬱病)の二次診断を有し、全体で64.2%がMDDまたは鬱病の一次診断および二次診断を有した。
【0101】
以前の療法/併用療法
コホート2のPTSDサブセットでは、2名以上の患者について報告された最も一般的な前治療/併用治療は、降順でSSRI(14患者)、トークセラピー(7患者)、呼吸法(4患者)、認知療法および行動療法ならびに不特定の抗鬱薬(それぞれ4患者)であった。患者の大部分は、初期メチロン投与セッション前にそれぞれの治療を中止した。PTSDサブセット内で、5名の患者が、SSRIまた他の抗鬱薬クラスを用いる併用療法を有し、かつこれらの患者のうち4名が、改善度CGI 1または2を有した。治療レジメンは、以下のようであった:
・ フルオキセチン20~40mg
・ フルオキセチン(特定されない用量)
・ フルオキセチンおよびブプロピオン(特定されない用量)
・ エスシタロプラム(特定されない用量)
・ ブプロピオン(特定されない用量)
* ラモトリジン(特定されない用量);最初の6セッション後に中止。
* 患者は、さらに詳細に後述するように、準幻覚的体験を有したが、どのセッションでそれが起きかは特定されなかった。
【0102】
コホート2のMDDサブセットでは、2名以上の患者について報告された最も一般的な前治療/併用治療は、降順でSSRI(3患者)、トークセラピー(各3患者)、心理療法(2患者)、および抗てんかん薬(2患者)であった。患者の大部分は、初期メチロン投与セッション前にそれぞれの治療を中止した。一患者のみが、メチロン投与時に、特定されない用量のエスシタロプラム、クロナゼパム、ラモトリギンおよびプロプラノロールを用いる併用療法を有し、これらは、メチロン10セッションの第5セッション後に漸減された。改善の度合いは、CGI-I 2であり、安全性事象は報告されなかった。
【0103】
基礎疾患重症度
コホート2についての基礎疾患重症度(CGI-S)を、表2および
図2に示す。ベースラインCGI-Sは、4~7の範囲であり、患者の85.7%は、ベースラインCGI-S 5または6を有し、PTSDサブセットおよびMDDサブセットの両方において同様の割合であった。
【0104】
【0105】
ベースライン症状一覧
図1は、コホート2に含まれた28名の患者の2名以上において起こる症状についてのベースライン症状一覧を示す。その最も一般的な症状は、不眠症(12患者)、快感消失症(10患者)、怒り(9患者)、および悪夢/夜驚症(7患者)を含んだ。
【0106】
メチロン用量およびレジメン
コホート1
コホート1の3名の男性は、単一セッションの間にグループで投与された;790mgの総メチロン用量が、メチロン280mgの後に190mg、190mg、および130mgのブースター用量のレジメンとして投与された。健康な女性のボランティア1名に対し、総用量が、メチロン250mgの後に220mg、200mg、および200mgのブースター用量として870mg投与された。
【0107】
コホート2
メチロン投与を含んだセッションのみを、投与セッションとしてカウントした。いくらかの患者は、記載したセッション以外にメチロンによるグループ療法を継続するよう記されたが、ベースラインと比較したCGI-Iによる改善度は、メチロン投与セッション後に評価された。
【0108】
2つのケース、すなわち最初のセッションとして1つ、ならびに第2のセッションとして1つ、において、MDMAを、単剤として投与した。反復メチロン投与セッションによる1つのケース、すなわち最初のセッションでは、メチロン投与後30分3グラムのマッシュルームの共投与を含んだ。
【0109】
単一セッションを28症例のうち8症例で実施し、これらの症例の2症例ではブースターを行わなかった。残りの症例では、複数回のセッションを実施し、ブースター用量を、残りの患者(26症例報告)の全部または一部において用い、15名の患者でセッションの一部または全部において複数のブースター用量を用いた。各セッションでのメチロン総用量は、100mg~690mgの最小範囲および180mg~1020mgの最大範囲であった。各セッションでの最大総用量は、3名の患者における4セッションでのみ、500mg[メチロン用量+ブースター用量]を超えた。メチロン用量は、100~270mgの範囲であり、ブースター用量は、50mg~880mgの範囲であったが2名の患者の2セッションにおいてのみ370mgを超えた、総累積投与量であった。個々のメチロンブースター用量は、50mg~240mgの最小範囲がおよび80mg~250mgの最大範囲であった。
【0110】
安全性
コホート1
コホート1の4名の対象全員について、有害作用または後遺症は、観察または報告されなかった。全ての男性3名は、歩行でき、お茶をいれることでき、かつ酩酊の徴候はないと認められた。
【0111】
コホート2
コホート2に含まれた症例の大部分(28症例のうち25症例;89.3%)において、メチロン投与は良好に許容され、安全性事象は報告されなかった。1症例の報告は、最初のセッションで投与された117mgのMDMAの後で増加された不安の有害事象を含んだが、最初のセッションはメチロンを含まず、以降のセッションでのメチロン投与よりも前に実施され130mgの総用量(80mg+50mgのブースター)でのメチロン投与では再発しなかった。3名の患者(全て年齢65歳以上)において、有害事象が、以下のようにメチロン投与後に報告された:
[I]症例報告A
年齢75歳の男性;一次診断でPTSDと診断され、心房性細動の病歴ありおよびペースメーカーを使用、薬物療法からもたらされる、メチロン150mgおよび150mgブースター(投与された最高用量)を用いる第5のセッションの間にめまいを生じた。この事象は重篤とはみなされず、介入を必要としなかった。それまでの総用量は、100~250mgの範囲であった。自宅での不明な用量の投与による負の再投薬(すなわち、反復メチロン投与)はなかった。
[II]症例報告B
年齢70歳の男性;一次診断でPTSDと診断され、二次診断で鬱病と診断された;単一セッションの間にメチロン690mg(200mgの後に、ブースター用量250mgおよび240mg)を投与され、セッションの間にはいかなる有害事象も経験しなかったが、セッション後に不眠症および食欲減退の有害事象を報告し、これはメチロンの模倣効果によるものと思われる。
[III]症例報告C
年齢78歳の男性;一次診断でPTSDと診断され、二次診断で不安症と診断された;「良好に管理された心臓血管の問題」の病歴あり、5回を超えるセッションで各セッションにおいて総用量100~300mgの範囲(メチロン100~150mg、0~150mgのブースター)でメチロンを投与され、準幻覚体験を報告したが、用量およびさらなる詳細は不明である。介入は必要とされなかった。
【0112】
有効性
コホート1は健康なボランティアから成ったので、有効性を、PTSDおよびMDDの患者から成るコホート2について報告する。
【0113】
改善の度合い
CGI-Iおよび最初の改善までの時間
全ての患者は、メチロンでの治療後に少なくとも最小限の改善(CGI-3またはそれよりも良い)を達成した。コホート2に含まれた28症例について観察された最大の改善度を、表3および
図3に示す。CGI-I 1または2が、患者の86%[PTSDサブセットについて16/20患者(80%)、およびMDDサブセットについて8/8患者(100%)]において達成され;これはベースラインCGI-Sと比較して、「大きく改善された」または「非常に改善された」に対応する。さらに、最初の改善が、患者のほぼ90%(28患者のうちの25患者)において第1メチロンセッションで認められた。2つのさらなる症例は、それぞれ、第2セッションおよび第3セッションの後で最初の改善を経験し、また1症例は、最初の改善のために10+セッションを必要とした。
【0114】
【0115】
応答の持続性
コホート2のPTSDサブセット内で、16の症例の談話は、持続性についての情報を含んだ。1症例は、持続的効果がないと報告し、15症例の談話は、持続的効果を報告した(症例の12で6か月以上;1症例では3か月に限定され;2症例では不明)。持続的応答の期間が不明な症例の1例では、談話は、第4回目のメチロン投与セッション後に「対象は、もはや疾患に罹っているとはいえない」と述べた。。
【0116】
コホート2のMDDサブセット内で、8症例の談話の6つは、持続性についての情報を含んだ。1症例は、持続的効果がないと報告し、残りの5症例は、持続的効果を報告し、それは2名の患者で2年間、1名の患者で5年間、および2名の患者で不明であると認められたが、1名の患者で「13セッション後に安定である」および別の患者で「持続される」と報告された。
【0117】
CGI-Sにおける変化
治療後CGI-Sを、安定なCGI-S 1を達成したと認められた1名の患者を含み表4で示すように5症例においてのみ報告した。1症例は、CGI-S 1を時々達成すると認められた。治療後CGI-Sスコアを含まなかったさらなる5症例の談話では、患者は治療後にもはや疾患とは診断されず、これらの症例のうち5症例がCGI-I 1を達成したことが報告された。
【0118】
【0119】
結論
全般的に、単回投与によりおよび/またはブースター投与により単回または複数回のセッションで投与されたメチロンは、良好に許容された。安全性事象は、健康なボランティアまたは年齢18歳または65歳未満の成人患者において報告されなかった。一過性の安全性事象が、3名の高齢患者で報告され、それらは、高用量で発生したまたは再投薬では再発しなかった。これらの事象の1事象は、2,000メチロン投与毎に約5~6件起こる、準幻覚体験を含んだ。
【0120】
PTSDサブセット(90%)およびMDDサブセット(88%)の患者の大部分は、5以上のベースラインCGI-S(病状が「顕著」または「重病」である)を有し、CGI-S 7の最も重篤なカテゴリー(すなわち、「最も重症の患者」の範疇)のPTSD患者2名を含んだ。それにもかかわらず、コホート2は、患者全体の86%[PTSDサブセットについて16/20患者(80%)、およびMDDサブセットについて8/8患者(100%)]で1または2の改善度を有した;これらの改善度は、ベースラインCGI-Sと比較して「大きく改善された」または「非常に改善された」に対応する。
【0121】
実施例5:PTSDの治療におけるメチロンの利用についての臨床的証拠:長期の経過観察を伴う症例シリーズ
PTSDは、消耗性で、しばしば慢性の精神障害であり、以下を含む一連の症状を特徴とする:侵襲的な記憶、怖い夢、解離反応、心的外傷関連刺激に対する生理的反応性および忌避、否定的な認知および気分、倦怠感、覚醒の増加、睡眠障害、認知機能障害、易刺激性、リスクを負う行動、および臨床的に著明な苦痛または機能障害。世界人口の70%が心的外傷に晒されたことがあり、回復力は例外ではなくむしろ普通であるが、心的外傷に晒された人々のおおよそ6%がPTSDを発症すると、推定されている。PTSDの推定有病率は、個人間の暴力後に20%、戦闘に晒された退役軍人で25%、性的暴行の被害者で50%、および特定の難民グループにおいて86%に及ぶ高さである。PTSDは、自殺についての公知のリスク因子であり、一般的集団よりも6~29倍自殺リスクを増大させる。
【0122】
利用可能な薬物療法の選択肢は、限定的である。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、第一選択の薬物学的治療であり、パロキセチンおよびセルトラリンは、唯一のFDAに承認されたPTSD治療のための薬剤である。しかし、それらの確立された効力にもかかわらず、これらの治療は、最適とは言えない。これらは、作用の始まりが遅い遅効性の抗鬱薬(SAAD)であり、ほとんどの患者は、継続的な治療の少なくとも4週間(および最長で8週間)まで顕著な効果を示さない。この潜期は、それが自殺および自傷のリスクならびに他の潜在的破壊行動のリスクを顕著に増加させるので、明らかに厄介である。最適に送達されたとしても、患者の40%はSSRIに応答せず、わずか約20%~30%のみが、寛解に至り、プラセボからの差の程度は、10%~20%の範囲である。退役軍人などの慢性のおよび複雑なPTSDを有する個体の間のこれらの治療薬剤に対する非応答または部分的応答の割合は、一般市民の患者集団のものと同等であるか、またはそれより悪い。さらに、「治療応答者」として分類される多くの患者は、依然として症状を示し、制限された生活を送り続ける。
【0123】
心的外傷に焦点を当てた心理療法もまた、PTSDの治療においていくらかの有効性を示し、それはしばしば、薬物療法における既知の制限を考慮すると、選択される最良の介入である。持続的暴露(PE)および認知処理療法(CPT)は、絶対的基準の治療法であるが、適切に訓練されたセラピストへのアクセスは、限定され、かつ有効な治療法は、心的外傷に関連した記憶に自分自身を晒すという、および付随する苦痛を経験するという、患者の側の積極的な意志を必要とする。絶対的基準の心理療法の転帰の研究における減少率は、17%~55.8%の範囲であり、非応答は、50%の高率であり得る。治療モダリティにかかわらず、厄介な症状はしばしば、治療応答者として分類される患者においてさえ持続する。有効性ギャップはまた、退役軍人局(VA)医療センターで治療される退役軍人の間で特に顕著であり、これはおそらく、少なくとも部分的には、重大な精神医学的なおよび内科の併存疾患ならびに反復される慢性の外傷曝露をしばしば有する、これらの患者の複雑さに起因するのであろう。したがって、PTSDを治療し、治療効果の基礎となる機序を説明し、および、臨床的に、治療応答を予測できるベースラインマーカーを確立するための、即効性の新規方略を同定する緊急の必要性がある。
【0124】
最近、複数のプラセボ対照臨床試験は、マニュアル化された心理療法と共にメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の2回~3回の投与後に、DSM-5のPTSD臨床診断面接尺度(CAPS-5)で評価される、PTSDにおける急性で永続的な有益な臨床効果を実証した。これらの安定な持続する臨床効果は最近、大型の第3相臨床治験で再現された。第2の第3相臨床試験が目下進行中であり、好ましい臨床結果は、MDMA支援型心理療法をFDA承認に進め得るであろう。
【0125】
3,4-メチレンジオキシN-メチルカチノン(メチロン;MDMC、βk-MDMA、およびM1としても知られる)は、MDMAに構造的に関連する即効性エンパソーゲン(RAE)である。最近の観察的自然的研究は、メチロンおよびMDMAの両方への以前の暴露の経歴のある健康な参加者において、経口投与された両化合物の急性の薬理学的および生理的効果を比較した。これらの化合物はおそらく機構的に類似している一方で、メチロンは、高揚感の低下、酩酊、刺激剤様効果、ならびに認知および身体知覚の変化を含む、原型的な精神刺激薬効果および共感を誘発する効果をさほど強く生じず、MDMAに比べて増大した社交性が認められた。急性の薬理効果における顕著な差異は、セロトニン(5-HT)受容体親和性におけるそれらの差により部分的には説明できるであろう。メチロンは、MDMAよりも5-HT2Aに対する顕著に低い親和性を有し、かつ5-HT1A受容体で部分的アゴニスト活性を有し、これは、MDMAにはない。メチロンはまた、MDMAに比較して、5-HT2Cに対しより弱い拮抗作用を有し、MDMAは部分的アゴニスト活性を有する。メチロンはまた、ドーパミン、ノルエピネフリン、およびセロトニンに関してモノアミン再取り込みトランスポーターを阻害しまたは逆転させ、これは、これらの神経伝達物質の細胞外濃度を増加させる。
【0126】
本実施例は、、通院の状況でメチロンにより臨床的に治療された、PTSDの一次診断を有し、様々な精神併存症を有する、以前の実施例からの21名の患者(前の実施例で考察したPTSDサブセットからの20名の患者+誤って特徴づけられかつPTSDの一次診断を有すると次いで決定された、その実施例からの1名の患者)のより詳細な分析を示す。患者は、メチロン治療と併用して構造化心理療法を受けず、これは、マニュアル化された幻覚剤支援心理療法モデルの重要性を強調するMDMAの最近の研究とは異なる。これらの特性は、メチロンの短い作用持続時間およびあまり劇的ではない急性の薬理学的および生理学的効果と共に、メチロンを、PTSDの治療における臨床利用のための魅力的な薬剤にする。
【0127】
材料と方法
臨床記録データを、通院の精神科の状況で特殊医療の一部として1回以上の経口メチロン投与を受けた、PTSDの一次診断を有する21名の患者から取得した。保護された健康情報は、開示されず、同意は、彼らの記録データの利用について患者から得なかった。症例の談話を、日常的な臨床作業の一部として収集されたデータから系統的に蓄積した。診断を、半構造化面接を用いて経験豊富な臨床医により確認した。ベースライン症状重症度を、臨床全般印象重症度(CGI-S)を用いて評価した。症状の改善を、投与後に臨床全般改善度(CGI-I)を用いて評価した。患者を、彼らのメチロン投与セッション後に観察されたまたは報告された安全性事象について評価した。これらの症例談話は日常的な臨床診療記録から遡及的に調べられ、かつ研究試験において前向きに集められなかったため、PTSD症状を評価するためのより特異的な検証済み評定尺度は、利用できなかった。さらに、経過観察は様々であり、1週間(症例2)~15年間(症例16)の範囲の経過観察の期間を有した。
【0128】
【0129】
結果
メチロンは、顕著な持続する有害作用なしに、PTSDおよび鬱病症状の両方において急性でかつ永続的な改善をもたらした。臨床データを表5に示す。12名の患者(57%)が女性であり、19名(90%)が白人であった。平均年齢は47.6歳(範囲:25歳から78歳)であった。ベースラインCGI-Sスコアは、全21名の患者について4~7の範囲(すなわち、中程度~重症;
図4を参照のこと)であった。6名の患者(28.6%)は、メチロン投与時にSSRIまたは他の向精神療法を併用した。これは特記すべきことである;その理由は、PTSDにおけるMDMAの最近の治験は、SSRI抗鬱薬は基質競合によりMDMAの治療効果を減弱させることが示されているので、患者が他の向精神性治療薬剤を使用しないことを必要としているからである。全患者は、過去および/または進行中の心理学的および薬理学的な治療にもかかわらず、衰弱性症状を経験していた。以前の治療は、SSRI/SNRI(n=14;66.7%)、非構造化支援療法(supportive unstructured therapy)(n=8;38%)、構造化認知および行動療法(n=4;19%)、および特定されない抗鬱薬療法(n=3;14.3%)を含んだ。
【0130】
全ての21名の患者は、メチロン治療後に少なくとも最小の改善(CGI-I 1、2、または3)を達成し、17名は1(非常に改善された;9患者)または2(大きく改善された;8患者;
図4を参照のこと)のCGI-Iを達成した。この傾向は、メチロンの単回投与のみを受けた患者(n=9)においても観察され、8名の患者(89%)が1または2のCGI-Iスコアを達成した。複数回のメチロン投与セッションを受けた患者(n=12)では、最初の改善が、患者の83%(n=10)で最初のセッション後に認められ、もう1人の患者が第2のセッション後に改善を経験した。
【0131】
臨床効果の持続性に関する情報を、21名の患者の17名について得た。1個人は、持続的効果はないと報告し(すなわち、症状重症度はほぼ直ぐにベースラインに戻った)、かつ16名は、持続的効果を報告し(11名の患者で6か月超)、各1名の患者が、それぞれ、3か月、2か月、および1週間の持続性効果を報告した。持続性の情報を含まなかった4症例の談話の1例において、患者は、治療チームにより決定されるように、第4回目のメチロン投与セッション後(ベースライン評価からか10か月後)に「もはや疾患(すなわち、PTSD)とは診断されない」とされた。
【0132】
投与の概要
メチロンを、経口投与した。他の治療薬剤は、メチロン治療の間変えなかった。多くの場合、メチロンの付加的なブースター用量を、治療域を拡大しかつ臨床応答を最適化するために、最初の投与後1時間に投与した。複数の症例において、治療を継続し、いくつかの場合では、用量を、後のセッションでさらに段階的に増やした(表5を参照のこと)。ブースター用量を、19名の患者では複数セッションの1回以上において含めた。出発用量は100~270mgであり、これらの出発用量ならびにブースター用量を、臨床的判断に基づき選択した。
【0133】
安全性
メチロンは一般的に、良好に許容され、有害事象により治療を中止した患者はなかった。全部で4例の有害事象が、21名の患者の3名においてが認められ(1名の患者では2つの事象)、重度とみなされたものはなく、また医学的介入を必要としたものもなかった。安定な心房性細動(ペースメーカーあり)およびパーキンソン病の病歴を有する年齢75歳の男性は、300mgの総用量で(150mgの後に、150mgのブースター用量;これは、この患者に投与した最高用量であった)、メチロンを用いる第5セッションの終わり頃に、めまいを起こした。この症状は急速に消失し、この患者は、退院時に気分が良く、他の有害作用はなかった。単回投与セッションの間にメチロン690mg(200mgの後に、250mgおよび240mgのブースター用量)を投与された70歳の男性は、セッションの間にはいかなる有害事象も経験しなかったが、セッション後の夜に不眠症と食欲減退を報告した。これらの症状は翌日までに消失した。78歳の男性は、1治療セッションの間にフラッシュバック様の経験を報告した。この患者は、各セッションでの総メチロン用量が100~300mgの範囲である5投与セッションに参加した。
【0134】
患者の報告
進行中のSSRIによる治療との併用でメチロンを受けた、治療抵抗性のPTSDを有する62歳の男性患者(ID=表5中の症例2)は、「[彼の]問題は見たところ消失しているようであり、多分、実際よりも頭の中であり、・・・・[および]メチロンによる治療は、自殺の考えは馬鹿げていて不必要であると思わせる新しい「希望への窓」のようだ」と、第1投与セッション後に言及した。単回メチロンセッション後のPTSD症状の急速かつ持続的な低減の後で、彼は、それはもう必要ないのでSSRIを漸減することに関心を示した。別の患者である、治療抵抗性PTSDおよび合併全般性不安障害を有する52歳の女性患者(ID=表5の症例7)は、「内なる少女の治癒」と1セッションを言い表した。彼女は、「もうPTSDは[彼女の]生活を支配しないだろう;[彼女は]その内なる子どものためにそこにおり、かつ彼女は[彼女]と共感し合っていた;そして[彼女らは][彼女らのPTSD]を治した」という認識を述べた。
【0135】
考察
一次診断でPTSDと診断され、併存疾患および以前に成された治療試行の高い率を有する、患者のこの症例シリーズにおいて、メチロンは、CGI-Iにより評価される、急速な症状の改善をもたらした。大部分(90%)は、5以上のベースラインCGI-S(病状が「顕著」または「重病」)を有し、7のCGI-S(すなわち、「最も重症の患者」の範疇に入る)のカテゴリーの3名の患者を含んだ。患者の大部分(81%)は、「大きく改善された」または「非常に改善された」に対応するCGI-Iスコアを達成した(
図4)。これらの効果は、急速で安定な改善が重症で、複雑で、および治療抵抗性である患者において観察された、マニュアル化されたPTSD心理療法との併用でのMDMAの最近の比較臨床試験において認められた効果に類似している。
【0136】
メチロンは、1~10回の投与による、広い用量範囲(100~1,020mg)において良好に許容された。数件の有害事象が、年齢70歳以上の3名の高齢患者において報告され;これらは軽微で介入を必要としなかった。有害事象のためにメチロン治療を中止した患者はいなかった。特記すべきは、これらの有害事象はいずれも、併用SSRI療法を受ける患者では起こらなかったことである。
【0137】
長所と制限
これは、PTSD患者におけるメチロン投与の最初の報告である。この症例シリーズは、PTSDの薬理学的治療においてメチロンが実用性を有するという証拠を提供する。しかし、これらのデータにはある種の限定がある。これらの参加者は、臨床的に治療された;この報告についてのデータは、臨床記録の再調査から遡及的に収集された。投与と経過観察は、様々であり、治療条件に対する無作為化、対照、または盲検はない。さらに、サンプルは多様性を欠き、様々な経過観察期間において進行する心理療法および薬剤治療の調整が、臨床経過に影響した可能性がある。この報告の長所は、サンプルの複雑性であり、それは、一般化の可能性を助ける。これらの制限にもかかわらず、複雑な患者集団におけるこれらの症例談話は、PTSDの治療のためのメチロンの有効性に関する最初の臨床的証拠を構成する。
【0138】
メチロンは、おそらくそのより軽度で短い精神薬理効果(例えば、高揚感、共感状態誘発効果)のため、MDMAと同じ文化的および臨床的な注目を受けていない。しかし、これらの「より穏やかな」効果は、MDMAのより強度の強い急激な心理学的および生理的効果による治療に適さない、いくらかの患者にとって特に有用である可能性がある。
【0139】
実施例6:FSTにおけるメチロン:鬱病、不安、およびPTSDに対する影響
本実施例では、メチロンがラットFSTにおいて即効性の抗鬱薬様効果を生じるか否かを調べ、原型的な選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)フルオキセチンを、抗鬱薬対照として用いた。
【0140】
方法
動物
到着時に体重が180~200gの雄のSprague Dawleyラット(Charles River Laboratories)を、この試験に用い、試験は、Melior Discovery社(エクストン、ペンシルベニア州)で行ったた。試験前の少なくとも1週間ホームケージに馴化されたラットを、ケージ当たり2匹以下のラットで、12時間の明暗サイクルで管理された環境下で維持した。動物は、食餌と水への不断給餌を受け、処置群へ無作為に割付された。動物の利用と方法は、IACUC委員会、Melior標準作業方法(Standard Operation Procedures (SOP))、およびTranscend Therapeuticsにより承認された確立されたプロトコルにしたがった。
【0141】
強制水泳試験(FST)
FST試験では、ラットを、逃避手段のない、水で満たされた円形のプレキシガラス容器に入れた。水温を、22~25℃で維持し、動物毎に変えた。馴化期間後に、ラットを、不動性(もがくのを止める)、活動、スイミング時間およびクライミング(climbing)時間について測定した。第1日目は、15分間の順応トライアルから成り、第2日目(24時間後)は、5分の試験から成った。時間サンプリング法を用い、動物を、5秒毎に観察し、不動、スイミング、またはクライミング(climbing)についてスコアづけたた。フルオキセチン(10mg/kg、IP、Sigma Aldrich)または0.9%滅菌生理食塩水ビヒクル(ビヒクル3X群)を、FST試験の23.5時間前、5時間前、および1時間前に投与した。メチロン(5、15、または30mg/kg、IP;Cayman Chemical)または0.9%食塩水ビヒクル(ビヒクル1X群)を、FST試験の30分前に投与した。実験者は、治療に対して盲検化された。
【0142】
結合試験
放射性リガンド結合を、それぞれ、セロトニン(5HT)、ドーパミン(DA)、およびノルエピネフリン(NE)トランスポーターに対して、[3H]シタロプラム、[3H]WIN35428、および[3H]ニソキセチンを用いる標準プロトコルを用いて実施した。ラット脳シナプトソームにおける放射性標識5HT、NE、およびDAの取り込みおよび放出の試験を、標準プロトコルを用いて実施した。
【0143】
統計分析
試験(不動、スイミング、またはクライミング(climbing))の各パラメータに関するデータを、平均値±標準誤差で表す。群間差を、統計的有意差を示す0.05未満のp値で一元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。
【0144】
結果および結論
単回用量のメチロンは、ラットFSTにおいて、安定で用量依存的および即効性の抗鬱薬様応答を生じた(
図5)。特に、SSRI抗鬱薬の2~3回の注射が、試験前に3回用量のフルオキセチンを受けた本試験でのフルオキセチン対照群により示されるように、FSTで行動的応答を引き起こすために一般的に必要とされる(
図5)。しかし、FSTにおいて試験の30分前に単回用量のメチロンで処置されたラットは、不動性において非常に大幅な低減を示した(
図5A)。特に、試験の30分前に投与されたメチロンの単回用量(5、15、または30mg/kg、IP)は、食塩水ビヒクルを受けるラットと比較して、それぞれ、54%、99%、または96%不動性を低減した(p<0.0001)。中用量および高用量のメチロンは、スイミングを有意に増加させた(
図5B)。クライミングは、最少用量のメチロンでのみ増加され、この用量レベルでのノルアドレナリン作動性受容体活性の動員を反映する(
図5C)。
【0145】
中用量および高用量のメチロンの効果の程度(99%および96%の低減)は、フルオキセチン(56%、
図5A)よりも特に大きかった。これらのデータもまた、メチロンが他の幻覚作用性薬剤よりも優れていることを実証する。ケタミン投与の既報は、不動性(Westonら、(2021)Frontiers in Psychiatry 12:659052による総論)における30%の(Hibickeら、(2020)ACS Chem。Neurosci 11:864-871)、25~55%(のYangら、(2013)Ups J Med Sci 118:3-8)、または60%の(Tizabiら、(2012)Neuroscience 213:72-80)低減を示す。LSDおよびサイロシビンは、それぞれ、38%および67%FSTにおける不動性を低減することが示されている(Hibickeら、2020)。MDMA(5または10mg/kg)は、それぞれ、Sprague Dawleyラットにおいて45%および78%、不動性を低減することが報告されている(Majumderら、(2011)Behav Pharmacol 22:758-65)が、鬱病の遺伝的モデルであるFlinders感受性系統ラットでより安定な効果を有した(それぞれ、45%および93%、同上)。結合試験は、5HT、NE、およびDAトランスポーターでのメチロン結合を確認した。
【0146】
まとめると、メチロンは、FST(抗鬱薬に対しよく確立された特異性および選択性を有する標準的行動アッセイ)において、SSRIフルオキセチンよりもさらに安定な抗鬱薬様応答を生じた。この試験におけるメチロンの効果の程度はまた、文献で野生型ラットにおいて試験された他の幻覚剤および抗鬱薬のものを上回った(
図6)。MDMAに対するその構造的類似性にもかかわらず、メチロンは、モノアミントランスポーター結合、取り込みおよび放出で異なる効果を示す。
【0147】
まとめると、これらの結果は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、気分障害、不安障害、強迫神経症(OCD)、および線維筋痛症を含むがこれらに限定されない、抗鬱薬が有効である鬱病および他の中枢神経系の障害の治療におけるメチロンの実用性を示す。
【0148】
実施例7:FSTにおける2C-B:鬱病、不安、およびPTSDに対する影響
本実施例では、2C-Bがラット強制水泳試験(FST)において、即効性の抗鬱薬様効果を生じるか否かを調べ、原型的な選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)フルオキセチンを、抗鬱薬対照として用いた。
【0149】
方法
動物
到着時に体重が180~200gの雄のSprague Dawleyラット(Charles River Laboratories)を、この試験に用い、試験は、Melior Discovery社(エクストン、ペンシルベニア州)で行ったた。試験前の少なくとも1週間ホームケージに馴化されたラットを、ケージ当たり2匹以下のラットで、12時間の明暗サイクルで管理された環境下で維持した。動物は、食餌と水への不断給餌を受け、処置群へ無作為に割付された。動物の利用と方法は、IACUC委員会、Melior標準作業方法(Standard Operation Procedures(SOP))、およびTranscend Therapeuticsにより承認された確立されたプロトコルにしたがった。
【0150】
強制水泳試験
FST試験では、ラットを、逃避手段のない、水で満たされた円形のプレキシガラス容器に入れた。水温を、22~25℃で維持し、動物毎に変えた。馴化期間後に、ラットを、不動性(もがくのを止める)、活動、スイミング時間およびクライミング(climbing)時間について測定した。第1日目は、15分間の順応トライアルから成り、第2日目(24時間後)は、5分の試験から成った。時間サンプリング法を用い、動物を、5秒毎に観察し、不動、スイミング、またはクライミング(climbing)についてスコアづけた。フルオキセチン(10mg/kg、IP、Sigma Aldrich)または0.9%滅菌生理食塩水ビヒクル(ビヒクル3X群)を、FST試験の23.5時間前、5時間前、および1時間前に投与した。2C-B(2.5、10、または20mg/kg、IP、Cayman Chemical)または0.9%食塩水ビヒクル(ビヒクル1X群)を、FST試験の30分前に投与した。実験者は、治療に対して盲検化された。
【0151】
統計分析
試験(不動、スイミング、またはクライミング(climbing))の各パラメータに関するデータを、平均値±標準誤差で表す。群間差を、統計的有意差を示す0.05未満のp値で一元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。
【0152】
結果および結論
中用量または高用量の2C-B単回注射は、ラットFSTにおいて即効性の抗鬱薬様応答を生じ、一方で最少用量では効果がなかった(
図7)。典型的には、SSRI抗鬱薬の2~3回の注射が、試験前に3回用量のフルオキセチンを受けた本試験でのフルオキセチン対照群により示されるように、FSTにおいて行動的応答を引き起こすために必要とされる(
図7)。とくに顕著なのは、FSTにおいて試験の30分前に単回用量の2C-Bを受けるラットが、不動性において統計的に有意な低減を示した(
図7A)ことであり、スイミングにおける有意な増加を伴い(
図7B)、セロトニン作動性活性と一致する。中用量または高用量の2C-Bの両方の効果の程度(それぞれ、50%および53%)は、フルオキセチン対照群(56%)とほぼ同一であった。クライミングは、高用量2C-Bを受ける群においてのみ有意に低下したが(
図7C)、この結果の解釈は不明である。
【0153】
まとめると、2C-Bは、FST(抗鬱薬に対しよく確立された特異性および選択性を有する標準的行動アッセイ)において、SSRIフルオキセチンと同程度である即効性の抗鬱薬様応答を生じた。これらの結果は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安障害、強迫神経症(OCD)、および線維筋痛症を含むがこれらに限定されない、抗鬱薬が有効である鬱病および他の中枢神経系の障害の治療における2C-Bの実用性を示す。
【0154】
実施例8:選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)前処置は、ラット強制水泳試験においてメチロンの効力を阻害しない
実施例6は、メチロンが、このモデルで試験した任意の他の抗鬱薬よりも程度において大きな、強制水泳試験(FST)における迅速で安定な用量依存性の抗鬱薬様効果を生じることを、示す。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、外傷後ストレス障害(PTSD)、大鬱病性障害(MDD)、不安障害、強迫神経症(OCD)、および線維筋痛症を含む様々な中枢神経系(CNS)障害の第一選択治療である。MDMA支援型心理療法は、PTSDの治療に関して臨床試験中であり、SSRIがMDMA支援型療法の効力を阻害すること(Feducciaら、(2021) Psychopharmacology 238:581-588)を留意すべきである。患者がMDMA支援療法を必要とする場合、SSRI治療を停止する必要がある。なぜならSSRIは何週間にもわたる漸減的中止の期間を必要とするので、患者がMDMA治療を開始できるまでに、薬剤を離脱する長い期間がかかり得る。これは、重篤なPTSDに罹患している個体に治療実施上のリスクおよび安全性リスクの両方を課す。SSRIはMDMA支援型心理療法の臨床的有効性を妨げるので、本実施例では、原型的なSSRIフルオキセチンの事前投与がFSTにおいてメチロンに対する行動反応に影響するか否かを調べた。
【0155】
方法
動物
到着時に体重が180~200gの雄のSprague Dawleyラット(Charles River Laboratories)を、この試験に用い、試験は、Melior Discovery社(エクストン、ペンシルベニア州)で行った。試験前の少なくとも1週間ホームケージに馴化されたラットを、ケージ当たりの2匹以下のラットで、12時間の明暗サイクルで管理された環境下で維持した。動物は、食餌と水への不断給餌を受け、処置群へ無作為に割付された。動物の利用と方法は、IACUC委員会、Melior標準作業方法(Standard Operation Procedures(SOP))、およびTranscend Therapeuticsにより承認された確立されたプロトコルにしたがった。
【0156】
薬剤処置
フルオキセチン(10mg/kg、IP、Sigma Aldrich)または0.9%滅菌生理食塩水ビヒクルを、FST試験の23.5時間前、5時間前、および1時間前に投与した。メチロン(5または15mg/kg、IP;Cayman Chemical)または0.9%食塩水ビヒクルを、FST試験の30分前に投与した(
図8A)。対照動物は、フルオキセチン単独、メチロン単独、または食塩水ビヒクルを受けた。より低用量のメチロン(5mg/kg)に焦点を当てた;なぜなら、それは、FSTにおいて最大よりも低い応答を生じたので、いずれかの方向で起こり得る不動性における変化の潜在的な検出を可能にするからである。
【0157】
強制水泳試験
FST試験では、ラットを、逃避手段のない、水で満たされた円形のプレキシガラス容器に入れた。水温を、22~25℃で維持し、動物毎に変えた。馴化期間後に、ラットを、不動性(もがくのを止める)、活動、スイミング時間およびクライミング(climbing)時間について測定した。実験者およびスコアラーは、治療群に対し盲検化された。第1日目は、15分間の順応トライアルから成り、第2日目(24時間後)は、5分の試験から成った。時間サンプリング法を用い、動物を、5秒毎に観察し、不動、スイミング、またはクライミング(climbing)についてスコアづけた。
【0158】
統計分析
試験(不動、スイミング、またはクライミング(climbing))の各パラメータに関するデータを、平均値±標準誤差で表す。群間差を、統計的有意差を示す0.05未満のp値で一元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。
【0159】
結果および結論
3回の事前投与のフルオキセチンは、単回用量のメチロンに応答する不動(ビヒクルに対し62%の低下された不動性;
図8B;F
(4,31)=17.05、p<0.0001)に影響しなかった。実施例6の結果と一致して、フルオキセチンおよびメチロン(5mg/kg)の両方は、ビヒクルと比較して、それぞれ、60%(p<0.001)および71%(p<0.0001)不動を低減した。特に、より高用量のメチロン(15mg/kg)との組み合わせた処置は、ビヒクルと比較して95%不動を低減し(p<0.0001)、これは、実施例6と一致した。
【0160】
メチロンは、クライミング行動を有意に増強し(
図8C;F
(4,31)=5.786、p<0.01)、フルオキセチンは、スイミング行動を有意に増強し(
図8D;F
(4,31)=6.063、p<0.01)、それぞれ、ノルアドレナリン作動性およびセロトニン作動性活性と一致する。
【0161】
まとめると、SSRI(フルオキセチン)による事前処置を調べ、それは、ラットFSTにおいてメチロンに対する行動的応答に影響しない。これらの知見は、メチロンとMDMAを差別化し、MDMAとは異なり、SSRIは、メチロンの行動に関する効力に干渉しないことを示唆する。SSRIは、PTSDを含む多くの中枢神経系の障害のための第一選択治療であるため、これらの知見は特に有望である。なぜならそれらは、患者が、おそらく効力の低下を懸念することなくメチロンを摂取しながら、SSRIを継続的に摂取できることを示唆するからである。
【0162】
実施例9:心的外傷後ストレス障害(PTSD)のマウスモデルにおけるメチロン、2-CBおよびMBDBの効果
恐怖消去メモリーの不全は、患者におけるPTSDの特徴である(Wickingら、(2016) Neurobiology of Learning and Memory 136:116)。PTSD治療に承認された2種類(すなわち、パロキセチンおよびセルトラリン)に類似のSSRI抗鬱薬は、恐怖記憶汎化を防ぎ消去を促進する(Pedrazaら、(2019) Transl Psychiatry 9:53)。恐怖消去の強化はまた、PTSD治療としてのMDMAの有益な効果の根底となり得る(Feduccia & Mithoefer(2018)神経生理薬理学および生物学的精神医学における進歩84(パートA)(Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry 84(Part A))、221‐228)。
【0163】
有効なPTSD治療は、心的外傷記憶と患者の恐怖応答の解離を促進し、心的外傷記憶のキューがより少ない恐怖応答を惹起するようにする。これは、3日間かけて実施されるマウス恐怖消去パラダイムでモデル化される(
図9Aを参照のこと)。第1日目(恐怖条件付け)に、マウスを、「心的外傷記憶」を獲得するように訓練する;すなわち、条件刺激(CS、音)を無条件刺激(US、フットショック)に関連付ける。第2日目(消去訓練)に、マウスを、新規の環境でCSを6回提示すること(USなしに)により心的外傷記憶の関連を忘却するように訓練する。第3日目(消去リコール(extinction recall))に、マウスは、上記の音が提示されたときにフリーズしている時間により測定されるように、その音(CS)が恐怖応答を依然として惹起するか否かを「問われ」る。より少ないフリーズしている時間は、よりよい消去リコールを意味する。消去リコールを改善する薬剤は、第3日目のフリーズ時間を短縮し、したがって、PTSD治療としての可能性を示す。
【0164】
MDMAを用いた研究は、恐怖条件付け後に、消去訓練の30分前にMDMA(7.5mg/kg)を投与することが、食塩水注射対照と比較してを35%低下されたフリーズとして測定される消去リコールを増強することを示す(Youngら、(2015) Transl Psychiatry 5:e634)。
【0165】
図9Aに示すような実験設計を用いて、結果は、メチロン(30mg/kg)が、食塩水対照と比較してほぼ60%恐怖消去リコールを有意に増強することを示す(
図9B)。自発運動に対する効果はこれらの結果の解釈を混乱させることがあるので、試験セッションの間に記録された自発運動において、群間差がなかったことは、特記すべきである(
図9C)。
【0166】
図9Aに概要を示したものに類似の実験設計を用いて、MBDBをまた、PTSDの恐怖消去モデルにおいて試験した。MBDB(5mg/kg、IP)を単回注射したマウスは、第2日目の消去訓練の第1トライアルで改善された消去獲得(
図10A)、および第2日目に、自発運動において付随する僅かであるが有意な増加(
図10B)を示した。
【0167】
実施例10:選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による事前処置は、ラット強制水泳試験においてメチロンの効力を妨げない
オープンフィールド試験(OFT)は、不安様行動を評価するために、開放スペースの齧歯類の本能的な恐怖を利用する。オープンフィールドの中央部で過ごすより多くの時間は、不安を軽減する(抗不安)効果を反映するる。
【0168】
試験の30分前に投与した単回メチロン用量(5または15mg/kg、IP)は、ビヒクル処置された対照と比較して、オープンフィールドの中央部で過ごす時間を有意に増加した(
図11A)。自発運動の活動性もまた、OFTにおいて測定した。ビヒクル対照と比較して、5mg/kgメチロン用量の効果はなかったが、15または30mg/kgのメチロン用量で自発運動における有意な増加があった(
図11B)。
【0169】
本発明の広範な発明概念から逸脱することなく、上記の実施態様に対して変更を加え得ることは、当業者であれば理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施態様のみに限定されるものではなく、付属の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨および範囲内にある変更を含むと意図されることが、理解されるであろう。
【国際調査報告】