(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】配位的模倣による金属有機構造体の形態の制御
(51)【国際特許分類】
C07C 65/05 20060101AFI20240806BHJP
C07C 65/10 20060101ALI20240806BHJP
C07C 65/03 20060101ALI20240806BHJP
C07C 235/46 20060101ALI20240806BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07C65/05
C07C65/10
C07C65/03 D
C07C235/46
C07F15/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506649
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022037901
(87)【国際公開番号】W WO2023014513
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(71)【出願人】
【識別番号】524043455
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,ミーガン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ジェフリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム.
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC00
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC16
4H006BC31
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BS30
4H006BV51
4H050AA02
4H050BB14
4H050BB31
4H050BC16
4H050BC31
4H050WB13
4H050WB14
(57)【要約】
ポリトピック有機リンカーとカチオンとを有し、それぞれのリンカーは、2つ以上のカチオンに結合する、結晶性金属有機構造体(MOF)の合成方法が提供される。開示される方法では、リンカーは、式MnXmの1つ以上の化合物と反応し、それぞれのMは、独立してカチオン性のBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、又はHfであり、Xはアニオン性であり、n及びmは整数である。反応は、サリチレート、サリチルアミド、1,3-フタレート、又はヒドロキシベンゾエートをベースとするモジュレーターの存在下で行われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体の合成方法であって、前記複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、前記複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合し、前記方法は、
前記複数のポリトピック有機リンカーを、式M
nX
mの1つ以上の化合物と溶液中で反応させること
を含み、
それぞれのMは、独立して、カチオン性のBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、又はHfであり、
Xは塩基性アニオンであり、
nは正の整数であり、
mは正の整数であり、
前記反応は、式:
【化1】
を有するモジュレーター、若しくはそれらの塩、又はそれらの混合物の存在下で行われ、
R
1、R
2、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルから選択され、
R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択され、
R
10及びR
11は、それぞれ水素ではない、方法。
【請求項2】
R
3、R
4、R
5、及びR
6が、それぞれ独立して、1~10個の間の炭素原子を有する置換又は非置換で線状又は分岐のアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
3、R
4、R
5、及びR
6がそれぞれ水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モジュレーターが式IVを有し、R
1及びR
2がそれぞれ水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モジュレーターが式IIを有し、R
2、R
7、及びR
8がそれぞれ水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モジュレーターが式III又はVを有し、R
1及びR
9がそれぞれ水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化2】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化3】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化4】
を有し、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、及びR
19は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化5】
を有し、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc
4-)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式M
nX
mの前記1つ以上の化合物の中の化合物が、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、カドミウム(II)金属塩である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式M
nX
mの前記1つ以上の化合物の中の化合物が、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酸化コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、水酸化コバルト(II)、ヒドロキシ炭酸コバルト(II)、混合ハロゲン化コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトネート、ギ酸コバルト(II)、又はそれらのハロゲン化誘導体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基性アニオンが、ホルメート、アセテート、サルフェート、臭化物、ヨウ化物、又はトリフルロスルホネートである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
nが1であり、mが1又は2のいずれかであり、前記溶液のpHが7.0~8.0の間である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
mが2以上であり、前記溶液のpHが7.0~8.0の間である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが、前記複数の金属カチオンの中の2つの金属カチオンに結合する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応前の前記溶液中、0.5~20当量の間の前記モジュレーターに対して、1当量の前記ポリトピック有機リンカーが存在する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応前の前記溶液中、1~15当量の間の前記モジュレーターに対して、1当量の前記ポリトピック有機リンカーが存在する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のポリトピック有機リンカーが、前記反応前に1mM~50mMの間の濃度で前記溶液中に存在し、
式M
nX
mの前記1つ以上の化合物が、前記反応前に5nM~100nMの間の濃度で前記溶液中に存在し、
前記モジュレーターが、前記反応前に15nM~100nMの間の濃度で前記溶液中に存在する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本開示は、その全体が参照により本明細書に援用される2021年8月2日に出願された米国仮特許出願第63/228,503号の優先権を主張する。
【0002】
本開示の分野
[0002] 本出願は、有利な結晶形態が得られ、それによってこのように結晶化したMOFのバルク性能が改善される条件下での金属有機構造体(MOF)結晶の合成に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 多孔性材料は、特に化学的分離、エネルギー貯蔵、触媒作用、薬物送達、及び検知などの広範囲の技術における吸着剤及び触媒としての応用範囲を有する。多孔性材料の特定の種類の1つである金属有機構造体の潜在的な工業用途としては、メタン変換、炭化水素の分離及び触媒作用、貴ガスの分離、並びに煙道ガスからの二酸化炭素の捕捉が挙げられる。例えば、Li et al.,2011,“Metal-Organic Frameworks for Separations,”Chem.Rev.112,869;Sumida et al.,2012,“Carbon Dioxide Capture in Metal-Organic Frameworks,”Chem.Rev.112,724;McDonald et al.,2015,“Cooperative Insertion of CO2in Diamine-Appended Metal-Organic Frameworks,”Nature 519,303;Milner et al.,2018,“Overcoming double-step CO2 adsorption and minimizing water co-adsorption in bulky diamine-appended variants of Mg2(4,4’-dioxidobiphenyl-3,3’-dicarboxylate),”Chem.Sci.9,160;及びBachman et al.,2016,“Enhanced ethylene separation and plasticization resistance in polymer membranes incorporating metal-organic framework nanocrystals,”Nature Mater.15,845を参照されたい。
【0004】
[0004] このような化学的分離に関与するプロセスは、現在、世界のエネルギー利用の10~15%を占める。2005,Oak Ridge National Laboratory.Materials for Separation Technologies:Energy and Emission Reduction Opportunities;及びHumphrey and Keller,1997,Separation Process Technology,McGraw-Hillを参照されたい。充填床用途などにおける分離性能は、微結晶のサイズ及び形状に大きく依存することがあり、これらによって、金属有機構造体などの多孔性材料の表面積対体積比及び物質移動抵抗が調整される。Rousseau,1987,“Handbook of Separation Process Technology,”John Wiley and Sons,pp.669-671を参照されたい。金属有機構造体などの不均一触媒の触媒性能は、材料相及び物質移動抵抗などの要因に由来する場合があり、この後者は微結晶のサイズ及び形状の関数となる場合がある。Fogler,2016,Elements of Chemical Reaction Engineering,Fifth Ed.,Prentice Hallを参照されたい。
【0005】
[0005] M
2(dobdc)(M=Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd;dobdc
4-=2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート、
図20)、及び関連の拡張された種類の材料のM
2(dobpdc)(M=Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Zn;dobpdc=4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート、
図21)(McDonald et al.,2015,Nature 519,p.303;Siegelman,2017,J.Am.Chem.Soc.,139,p.10526)などの吸着剤は、分離、触媒用途、及びガス貯蔵に使用するための多孔性固体吸着材料として興味が持たれている。このような金属有機構造体は、細孔に沿った配位不飽和金属部位を特徴とする構造のために興味が持たれている。Rosi et al.,2005,J.Am.Chem.Soc.127(5),1504;Rowsell et al.,2006,Am.Chem.Soc.128,p.1304;Caskey et al.,2008,J.Am.Chem.Soc.130,p.10870;McDonald et al.,2012,J.Am.Chem.Soc.134,p.7056;及び2013年4月25日の日付の“Alkylamine functionalized metal-organic frameworks for composite gas separations”と題されるLongらの国際公開第2013059527 A1号を参照されたい。
【0006】
[0006] これらの材料の欠点の1つは、従来の合成スキームでは、典型的には結晶性金属有機構造体が得られ、これには延長された異方性成長が存在し、結果として棒状結晶性生成物が得られることである。
図1中に示されるように、金属有機構造体の合成には、典型的には、金属イオン又はクラスターの供給源と、及び部分的から完全に脱プロトンした配位子とが必要である。一般に、これは高温において溶液中で行われ、溶媒の分解により塩基が形成されることで脱プロトンが起こる。溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミドなどの毒性である及び/又は費用のかかる溶媒であることが多い。
【0007】
[0007] サイズ及び形状などの金属有機構造体のマクロスケールでの結晶特性は、吸着性能に大きな影響があるので、従来の金属有機構造体のスキームで生じるこのような異方性結晶構造では、例えばM2(dobdc)及びM2(dobpdc)化合物中など、ab面の方向の顕著な拡散が妨げられることが多い。例えば、Colwell et al.,“Buffered Coordination Modulation as a Means of Controlling Crystal Morphology and Molecular Diffusion in an Anisotropic Metal-Organic Framework,”J.Am.Chem.Soc.2021,143,13,5044-5052;及びForse et al.,“Influence of Pore Size on Carbon Dioxide Diffusion in Two Isoreticular Metal-Organic Frameworks,”Chem.Mater.2020,32,8,3570-3576を参照されたい。別の場合では、拡散方向は、それぞれの金属有機構造体に依存する。このため、それぞれの結晶の最終金属有機構造体のスキームは、結晶を通過する拡散速度に大きな影響を与える。
【0008】
[0008] そのため、MOF合成の目標の1つは、有機リンカーを分解させることなく結晶性金属有機構造体が得られる合成条件を確立することである。同時に、結晶化の動力学は、核形成及び所望の相の成長が起こるのに適切となるべきである。これらの複雑な関係のため、適切なサイズ及び形状のMOF微結晶が得られるMOFの合成反応条件を決定することは困難となる。
【0009】
[0009] MOFの基礎に関する以前の研究では、金属有機構造体合成中の反応pHを独立して制御するために、非配位バッファーを利用する合成が使用されており、これによって、結晶成長に対する配位種の役割を直接調べることが可能となった。この研究では、金属源としてコバルト(II)カルボン酸塩を用いたpH7緩衝溶液中のCo2(dobdc)のフレームワークの低分散性単結晶の合成における緩衝反応条件の有効性が示されている。この研究では、Co2(dobdc)結晶のアスペクト比が、合成中に使用されるカルボキシレートモジュレーターのpKaと逆相関を有することが分かった。“Metal-Organic Framework Phase and Crystallite Shape Control”と題される国際公開第2020/068996号を参照されたい。
【0010】
[0010]
図2~4中に示されるように、金属有機構造体微結晶の特定のサイズ又は形状に影響を与えるために文献で用いられている別の戦略は、配位モジュレーターと呼ばれる、確立された合成を有する添加剤を使用することである。Stock and Biswas, 2012, Chem. Rev. 112, 933; Hermes et al., 2007 J. Am. Chem. Soc. 129, 5324;Cho et al., 2008, J. Am. Chem. Soc. 130, 16943; Diring et al., 2010, Chem. Mater. 22, 4531;及びPachfule et al., 2016, Nature Chem. 8, 718を参照されたい。これらの添加剤のほとんどは、有機リンカーと同じ又は同様の官能基を有し、成長中に競合的に結合すると考えられる。しかしながら、これらの添加剤のすべては、酸又は塩基でもあり、配位平衡に加えて成長中のpH平衡に関与しうる。M
2(dobdc)の制御の唯一の例は、モジュレーターとしてサリチル酸を使用するが、その酸/塩基平衡への関与には対処していない。Pachfule et al.,2016,Nature Chem.8,718を参照されたい。別の公開されたM
2(dobdc)又はM
2(dobpdc)の合成では、微結晶の単分散試料は形成されず、それらは高アスペクト比であるか、又は多結晶塊を形成する。Rosi et al.,2005,J.Am.Chem.Soc.127(5),1504,Rowsell and Yaghi,2006,Am. Chem.Soc.128,1304;及びCaskey et al.,2008,J.Am.Chem.Soc.130,10870を参照されたい。置換カルボキシレートモジュレーターの制限の1つは、これらは結晶のc軸に沿った結晶形態のみを調節することである。ゼロ長さクロマトグラフィー(zero-length chromatography)及びNMR拡散係数の研究に基づくと、M
2(dobdc)結晶のc軸に沿った細孔は、ab面に沿った細孔よりも速くガスを拡散させ(Forse et al.,2020,“Influence of Pore Size on Carbon Dioxide Diffusion in Two Isoreticular Metal-Organic Frameworks,”Chem.Mater.2020,32(8),3570-3576を参照されたい)、これは、速いガス拡散のためにはより短いディスク形状が理想的であり、遅いガス拡散のためには長い針状が理想的となることを示唆している。さらに、
図5は、従来技術により使用される塩基性アニオンによってどのようにMOFの結晶形態が決定されるかを示している。
図6は、従来技術によりMOF結晶を合成するための、pH制御と結びついた異なる塩基性アニオンの使用を示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
[0011] したがって、上記背景から、当技術分野において必要とされることは、制御された微結晶寸法を有する結晶性生成物が得られる、改善された金属有機構造体の合成スキームである。例えば、当技術分野において必要とされることは、c軸を超えて、M2(dobdc)の結晶などのMOFの結晶の形態を制御するための新規合成方法である。
【0012】
[0012] まさにc軸を超えて、金属有機構造体(MOF)の結晶の形状を、そのような金属有機構造体の合成中に存在するモジュレーターの適切な選択によって制御するための、合成スキームが本明細書に開示される。本開示は、一連の新しいMOF結晶形態を得るためにサリチレート、サリチルアミド、1,3-フタレート、及び3-ヒドロキシベンゾエートなどのモジュレーターを利用する。本開示は、針、ディスク、又は米粒の形状を有するMOF結晶を合成する合成条件を提供する。特に、針及びディスクの形状は、それらによってMOF結晶を通過するガス拡散速度を調整する新規方法が可能となるので、注目される。
【0013】
[0013] 本開示の一態様は、複数のカチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体の合成方法を提供する。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合する。方法では、複数のポリトピック有機リンカーは、式M
nX
mの1つ以上の化合物と溶液中で反応し、ここでそれぞれのMは、独立して、カチオン性のBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、Hfであり、Xは塩基性アニオンであり、nは正の整数であり、mは正の整数である。反応は、式:
【化1】
を有するモジュレーター、若しくはそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム セシウム)、又はそれらの混合物の存在下で行われ、R
1、R
2、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルから選択され、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択され、R
10及びR
11は、それぞれ水素ではない。
【0014】
[0014] 本開示の開示される合成スキーム、及びそれらの有利な用途、及び/又は使用の、これら及びその他の特徴及び特性は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
[0015] 本明細書における主題の製造及び使用において関連技術分野の当業者を支援するため、添付の図面が参照される。
【0016】
【
図1】[0016]金属カチオンと配位子との組み合わせから金属有機構造体がどのように形成されるかを示している。
【
図2】[0017]モジュレーターがどのように金属有機構造体結晶の成長を阻害するかを示している。
【
図3】[0018]モジュレーターがどのように金属有機構造体結晶のサイズ及び形状を制御できるかを示している。
【
図4】[0019]モジュレーターが金属有機構造体結晶のサイズ及び形状を制御可能にする機構を示している。
【
図5】[0020]使用される塩基性アニオンがどのように従来技術によるMOF結晶形態を制御するかを示している。
【
図6】[0021]金属有機構造体結晶中のモジュレーター及びpHの異なる役割を示している。
【
図7】[0022]本開示の実施形態による金属有機構造体のより大きな等方性ナノ結晶を得るための合成の調節を示している。
【
図8A】[0023]本開示の実施形態によるCo
2(dobdc)の制御された成長のためのさらなるモジュレーターを示している。
【
図8B】[0023]本開示の実施形態によるCo
2(dobdc)の制御された成長のためのさらなるモジュレーターを示している。
【
図8C】[0023]本開示の実施形態によるCo
2(dobdc)の制御された成長のためのさらなるモジュレーターを示している。
【
図9】[0024]本開示の一実施形態によるCo
2(dobdc)結晶の合成条件を示している。
【
図10】[0025]時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を350倍の倍率で示している。
【
図11】[0026]時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を3500倍の倍率で示している。
【
図12】[0027]時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を5000倍の倍率で示している。
【
図13】[0028]時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を8000倍の倍率で示している。
【
図14】[0029]時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を10000倍の倍率で示している。
【
図15】[0030]時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を12000倍の倍率で示している。
【
図16】[0031]本開示の一実施形態により、モジュレーターのサリチレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を1504倍の倍率で示しており(上)、3-ヒドロキシベンゾエートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を2000倍の倍率(下)で示している。
【
図17】[0032]本開示の一実施形態により、10当量の3-ヒドロキシベンゾエートにおいて1当量よりも一貫して小さい結晶を示しているが、結晶サイズはモジュレーター濃度とともに単調減少するわけではなく、サリチルアミド、フタレート、及びブロモサリチルアミドの場合にも同じ傾向が確認される。
【
図18】[0033]本開示の一実施形態により、より高いpHによって、どのようにより小さいアスペクト比の結晶が得られるかを示している。
【
図19】[0034]本開示の一実施形態による、トリクロロアセテートで調節された金属有機構造体結晶化の場合に、金属有機構造体中へのモジュレーターの混入がどのように非常に少なくなるかを示しており、これは元素分析により83ppmであり(左図)、これはエネルギー分散型X線分光法によっては見ることができない。
【
図20】[0035]従来技術による二価の金属カチオンと配位子H
4dobdcとからなる金属有機構造体M
2(dobdc)の構造を示している。
【
図21】[0036]従来技術による二価の金属カチオンと配位子H
4dobpdcとからなる金属有機構造体M
2(dobpdc)の構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
[0037] I.導入
[0038] 従来のMOF結晶合成スキームの欠点の1つは、これらによって、典型的には、延長された異方性成長が存在する結晶性MOFが得られ、結果として棒状結晶性生成物が得られることである。サイズ及び形状などのMOFのマクロスケールの結晶特性は、吸着性能に大きな影響があるので、従来の金属有機構造体のスキームで生じるこのような異方性結晶構造では、ab面の方向の顕著な拡散が妨げられることが多い。したがって、高アスペクト比の微結晶の外面の大部分は、ガス拡散に利用できないと推測される。そのため、MOF合成には、有機リンカーが分解することなく結晶性MOFが得られ、同時に、核形成及び所望の相の成長が起こることができる結晶化の動力学を促進する合成条件が必要とされる。これらの複雑な関係のため、適切なサイズ及び形状のMOF微結晶が得られるMOFの合成反応条件を決定することは困難となる。
【0018】
[0039] 本開示は、結晶性金属有機構造体(MOF)の合成を提供する。これらのMOFは、ポリトピック有機リンカーと金属カチオンとを含み、それぞれのポリトピック有機リンカーは、2つ以上の金属カチオンに結合する。開示される方法では、リンカーは、式M
nX
mの1つ以上の化合物と反応し、それぞれのMは、独立して、カチオン性のBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、又はHfであり、Xは塩基性アニオンであり、nは正の整数(例えば、1、2など)であり、mは正の整数(例えば、1、2など)である。幾つかの実施形態では、反応は、サリチレート、サリチルアミド、1,3-フタレート、3-ヒドロキシベンゾエート、若しくはそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウムセシウム)、又はそれらの混合物などのモジュレーターの存在下で行われる。
図7中に示されるように、それぞれのモジュレーターの種類は、特定の軸若しくは面、又はMOF結晶の全体のサイズに影響を与える。さらに、
図8A、8B、及び8C中に示されるように、これによって、それぞれのモジュレーターは、MOF結晶形態に対して別個の影響を有する。
【0019】
[0040] 本発明をより詳細に説明する前に、実施形態は変動しうるので、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、用語は限定を意図するものではないことも理解すべきである。本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。特に定義されなければ、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者による通常の理解と同じ意味を有する。ある範囲の値が提供される場合、文脈に明確に示されるのでなければ、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までのそれぞれの介在する値、並びにその記載の範囲内のあらゆる他の記載の又は介在する値が、本発明の範囲内に含まれることを理解されよう。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して、より小さな範囲内に含まれてよく、記載の範囲内で特に除外される制限を条件として、これも本発明の範囲内に含まれる。記載の範囲が限度値の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限度値のいずれか又は両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。ある範囲は、「約」という用語が前に付けられる数値範囲を用いて本明細書に示される。「約」という用語は、それが前に付けられる厳密な数、並びにその用語が前に付けられる数に近い又はほぼ同じである数を文字で表すために本明細書において用いられる。記載される特定の数に近い又はほぼ同じ数かどうかの決定において、近い又はほぼ同じである記載されない数は、それが示される状況において、特定の記載される数に実質的に等しい数であってよい。本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により援用されると明確に及び個別に示される場合と同程度で参照により本明細書に援用される。さらに、それぞれの引用される刊行物、特許、又は特許出願は、刊行物が引用されることと関連して主題を開示し説明するために、参照により本明細書に援用される。あらゆる刊行物の引用は、出願日前のその開示のために行われるのであり、先行発明が公開に先行するために、本明細書に記載の本発明の権利が与えられないことを認めるものと解釈すべきではない。さらに、提供される公開の日付は、独立して確認する必要が生じうる実際の公開日とは異なる場合がある。
【0020】
[0041] 請求項は、あらゆる任意選択の要素を排除するように作成できることに留意される。そのためこの言明は、請求項の要素の記載と関連した「単独」、「のみ」などの排他的用語を使用するための、又は「消去的な」限定を使用するための先行詞として機能することが意図される。本開示を読めば当業者には明らかとなるように、本明細書に記載され説明される個別の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は意図から逸脱することなく、別の幾つかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離したり組み合わせたりすることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載されるあらゆる方法は、記載される事象の順序、又は論理的に可能なあらゆる別の順序で行うことができる。本明細書に記載のものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することもできるが、代表的で説明的な方法及び材料をこれより説明する。
【0021】
[0042] 本発明の説明において、以下の用語が使用され、以下に示されるように定義される。
【0022】
[0043] II.定義
[0044] 置換基が、それらの従来の化学式によって左から右に書かれて明記される場合、それらの構造は、構造が右から左に書かれて得られる化学的に同一の置換基も場合により含み、例えば、-CH2O-は、場合により-OCH2-と記載されることも意図される。
【0023】
[0045] 「アルキル」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、特に記載がなければ、直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状の炭化水素基、又はそれらの組み合わせを意味し、これらは、完全に飽和していても、一不飽和又は多価不飽和であってもよく、指定の炭素原子数を有し(すなわちC1-C10は1~10個の炭素を意味する)、二価、三価、及び多価の基を含むことができる。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロプロピルメチルなどの基、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体及び異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合又は三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、並びにより高次の同族体及び異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「アルキル」という用語は、特に記載がなければ、「ヘテロアルキル」などの以下により詳細に定義されるアルキルの誘導体を場合により含むことも意味する。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と呼ばれる。代表的なアルキル基としては、一不飽和C9-10オレオイル鎖、又は二不飽和C9-10,12-13リノエイル(linoeyl)鎖が挙げられる。
【0024】
[0046] 「アルキレン」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、アルカンから誘導される二価の基を意味し、限定するものではないが-CH2CH2CH2CH2-が例として挙げられ、以下に「ヘテロアルキレン」と記載される基をさらに含む。典型的には、アルキル(又はアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基が、本発明において好ましい。「低級アルキル」又は「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短い鎖のアルキル又はアルキレン基である。
【0025】
[0047] 「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ酸素原子、アミノ基、又は硫黄原子を介して分子の残りの部分に結合するアルキル基を意味する。
【0026】
[0048] 「アリールオキシ」及び「ヘテロアリールオキシ」という用語は、それらの従来の意味で使用され、酸素原子を介して分子の残りの部分に結合するアリール基又はヘテロアリール基を意味する。
【0027】
[0049] 「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体又は別の用語との組み合わせで、特に記載がなければ、記載の数の炭素原子と、O、N、Si、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる安定な直鎖若しくは分岐鎖、若しくは環状の炭化水素基、又はそれらの組み合わせを意味し、上記の窒素原子及び硫黄原子は、場合により酸化されてよく、窒素ヘテロ原子は場合により第4級化されてよい。ヘテロ原子のO、N、S、及びSiは、ヘテロアルキル基のあらゆる内部の位置、又はアルキル基が分子の残りの部分に結合する位置に配置することができる。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、及び-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3のように、最大2つのヘテロ原子が連続することができる。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体又は別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味し、限定するものではないが-CH2-CH2-S-CH2-CH2-及び-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-が例として挙げられる。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は、いずれか又は両方の鎖末端を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン結合基の場合、結合基の向きは、結合基の式が書かれる方向によっては示されない。例えば、式-CO2R’-は、-C(O)OR’及び-OC(O)R’の両方を表す。
【0028】
[0050] 「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それら自体又は別の用語との組み合わせで、特に記載がなければ、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環状の種類のものを表す。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りの部分に結合する位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらなる代表的なシクロアルキル基としては、ステロイド、例えば、コレステロール及びその誘導体が挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
[0051] 「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、それら自体又は別の置換基の一部として、特に記載がなければ、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハルアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C1-C4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0030】
[0052] 「アリール」という用語は、特に記載がなければ、1つの環、又は互いに縮合しているか共有結合している複数の環(好ましくは1~3個の環)であってよい多価不飽和の芳香族置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、S、Si、及びBから選択される1~4個のヘテロ原子を含むアリール置換基(又は環)を意味し、ここで窒素原子及び硫黄原子は場合により酸化され、窒素原子は場合により第4級化される。代表的なヘテロアリール基は、六員のアジン、例えば、ピリジニル、ジアジニル、及びトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、及び6-キノリルが挙げられる。上に挙げたアリール及びヘテロアリールの環系それぞれの置換基は、後述の許容できる置換基の群から選択される。
【0031】
[0053] 簡潔にするため、別の用語と組み合わせて使用される場合の「アリール」(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)という用語は、前述の定義のアリール環、ヘテロアリール環、及びヘテロアレーン環を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば、酸素原子で置換されているアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)にアリール基が結合している基を含むことを意味する。
【0032】
[0054] 上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール、及び「ヘテロアリール」)のそれぞれは、示される種の置換された形態及び非置換の形態の両方を場合により含むことを意味する。これらの種の代表的な置換基は以下に示される。
【0033】
[0055] アルキル基及びヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルと呼ばれることが多い基を含む)の置換基は、「アルキル基置換基」と一般に呼ばれ、それらは、限定するものではないが、0から(2m’+1)個の範囲の数(ここでm’は、このような基の炭素原子の総数である)の、H、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、ハロゲン、-SiR’R”R”’、OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NRC(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、NRSO2R’、-CN、及び-NO2から選択される種々の基の1つ以上であってよい。R’、R”、R”’及びR””のそれぞれは、好ましくは独立して、水素、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、例えば、1~3個のハロゲンで置換されたアリール、置換若しくは非置換のアルキル、アルコキシ、又はチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を意味する。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、それぞれのR基は、R’基、R”基、R’”基、及びR””基のそれぞれで、これらの基の2つ以上が存在する場合のように、独立して選択される。R’及びR”が同じ窒素原子に結合する場合、これらと窒素原子とを合わせたものが5、6、又は7員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は、限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意味する。置換基の上記議論から、「アルキル」という用語は、ハロアルキル(例えば、-CF3及び-CH2CF3)及びアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)などの、水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを当業者は理解されるであろう。これらの用語は、代表的な「置換アルキル」及び「置換ヘテロアルキル」部分の構成要素である代表的な「アルキル基置換基」と見なされる基を含む。
【0034】
[0056] アルキルに関して説明した置換基と同様に、アリールヘテロアリール基及びヘテロアレーン基の置換基は一般に「アリール基置換基」と呼ばれる。これらの置換基は、0から芳香環系上の空原子価の総数までの範囲の数の、例えば、炭素又はヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、又はB)を介してヘテロアリール核又はヘテロアレーン核に結合する基、例えば、限定するものではないが、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R”’、OC(O)R’、-C(O)R’、CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R”’、-NR”C(O)2R’、NR-C(NR’R”R’”)=NR””、NRC(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、NRSO2R’、-CN及び-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、及びフルオロ(C1-C4)アルキルから選択される。上記名称の基のそれぞれは、ヘテロアレーン核又はヘテロアリール核に、直接又はヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、又はB)を介して結合し;ここでR’、R”、R”’、及びR””は、好ましくは独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、及び置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、それぞれのR基は、R’基、R”基、R’”基、及びR””基のそれぞれで、これらの基の2つ以上が存在する場合のように、独立して選択される。
【0035】
[0057] アリール、ヘテロアレーン、又はヘテロアリールの環の隣接する原子上の2つの置換基は、式-T-C(O)-(CRR’)q-U-(T及びUは独立して、-NR-、-O-、-CRR’-、又は単結合であり、qは0~3の整数である)の置換基で場合により置き換えることができる。或いは、アリール又はヘテロアリールの環の隣接原子上の2つの置換基は、式-A-(CH2)r-B-(A及びBは独立して、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-、又は単結合であり、rは1~4の整数である)の置換基で場合により置き換えることができる。こうして形成された新しい環の単結合の1つは、二重結合で場合により置き換えることができる。或いは、アリール、ヘテロアレーン、又はヘテロアリールの環の隣接原子上の2つの置換基は、式-(CRR’)s-X-(CR”R’”)d-(s及びdは独立して0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、又は-S(O)2NR’-である)の置換基で場合により置き換えることができる。置換基R、R’、R”、及びR’”は、好ましくは独立して、水素又は置換若しくは非置換の(C1-C6)アルキルから選択される。これらの用語は、代表的な「置換アリール」「置換ヘテロアレーン」、及び「置換ヘテロアリール」部分の構成要素である代表的な「アリール基置換基」とみなされる基を含む。
【0036】
[0058] 本明細書において使用される場合、「アシル」という用語は、カルボニル残基を含む置換基C(O)Rを表す。Rの代表的な種としては、H、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、及び置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルが挙げられる。
【0037】
[0059] 本明細書において使用される場合、「縮合環系」という用語は、それぞれの環が別の環と共通の少なくとも2つの原子を有する少なくとも2つの環を意味する。「縮合環系は、芳香環及び非芳香環を含むことができる。「縮合環系」の例は、ナフタレン、インドール、キノリン、クロメンなどである。
【0038】
[0060] 本明細書において使用される場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びケイ素(Si)、ホウ素(B)及びリン(P)を含む。
【0039】
[0061] 「R」という記号は、H、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、及び置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す一般的な略記である。
【0040】
[0062] 本明細書に開示される化合物は、そのような化合物を構成する1つ以上の原子の原子同位体を不自然な比率で含むこともできる。例えば、化合物は、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射標識することができる。放射性であろうとなかろうと、本発明の化合物の全ての同位体の種類が、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0041】
[0063] 「塩」という用語は、本明細書に記載の化合物上に見られる特定の配位子又は置換基に依存して、酸又は塩基の中和によって調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が、比較的酸性の官能基を含む場合、このような化合物の中性形態と、ニート又は適切な不活性溶媒中のいずれかの十分な量の所望の塩基とを接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、若しくはマグネシウム塩、又は類似の塩が挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導されるもの、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。本発明のある特定の化合物は、塩基性官能基と酸性官能基との両方を含み、それによってそれらの化合物は塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも変換可能となる。塩の水和物も含まれる。
【0042】
[0064] この用語が使用される場合の「-COOH」は、-C(O)O-及び-C(O)O-X+を場合により含むことを意味し、ここでX+はカチオン性対イオンである。同様に、式-N(R)(R)を有する置換基は、-N+H(R)(R)及び-N+H(R)(R)Y-を場合により含むことを意味し、ここでY-はアニオン性対イオンを表す。本発明の代表的なポリマーは、プロトン化されたカルボキシル部分(COOH)を含む。発明の代表的なポリマーは、脱プロトンしたカルボキシル部分(COO-)を含む。本発明の種々のポリマーは、プロトン化されたカルボキシル部分と、脱プロトンしたカルボキシル部分との両方を含む。
【0043】
[0065] 1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載のいずれかの化合物において、絶対立体化学が明記されない場合は、それぞれの中心が、独立してR配置又はS配置又はそれらの混合物であってよいことを理解されよう。したがって、本明細書に提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であってよいし、鏡像異性体混合物であってもよい。さらに、E又はZとして定義できる幾何異性体が得られる1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載のいずれかの化合物において、それぞれの二重結合は、独立してE又はZそれらの混合物であってよいことを理解されよう。同様に、記載のいずれかの化合物において、全ての互変異性型が含まれることも意図されることを理解されよう。
【0044】
[0066] 以下は、本開示の特定の実施形態の例である。これらの例は、単に説明を目的として提供され、本発明の範囲の限定を意図するものでは決してない。
【0045】
[0067] III.組成物
[0068] 本開示の一態様は結晶性材料を提供する。この結晶性材料は、複数の金属イオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む金属有機構造体を含む。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の少なくとも2つのカチオンに結合する。幾つかの実施形態では、吸着材料は、複数の配位子をさらに含む。幾つかのこのような実施形態では、複数の配位子の中のそれぞれの配位子は、金属有機構造体の複数の金属イオンの中の金属イオンに結合する。幾つかの実施形態では、結晶性材料は、針、ディスク、又は米粒の形状を有する個別の結晶の形態である。
【0046】
[0069] 幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、又はジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも呼ばれる)である。
【0047】
[0070] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化2】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態では、R
12及びR
13は、それぞれ水素である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、溶液中で、示されるようにプロトン化されないか、部分的にプロトン化されるか、又は完全にプロトン化される。
【0048】
[0071] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化3】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態では、R
12及びR
13は、それぞれ水素である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、溶液中で、示されるようにプロトン化されないか、部分的にプロトン化されるか、又は完全にプロトン化される。
【0049】
[0072] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化4】
を有し、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、及びR
19は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態では、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、及びR
19は、それぞれ水素である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、溶液中で、示されるようにプロトン化されないか、部分的にプロトン化されるか、又は完全にプロトン化される。
【0050】
[0073] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化5】
を有し、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態では、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は、それぞれ水素である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、溶液中で、示されるようにプロトン化されないか、部分的にプロトン化されるか、又は完全にプロトン化される。
【0051】
[0074] 幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも呼ばれる)、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、1,3,5-ベンゼントリステトラゾレート(BTT)、1,3,5-ベンゼントリストリアゾレート(BTTri)、1,3,5-ベンゼントリスピラゾレート(BTP)、又は1,3,5-ベンゼントリスカルボキシレート(BTC)である。
【0052】
[0075] 幾つかの実施形態では、式MnXmの化合物は、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、又はカドミウム(II)金属塩である。幾つかの実施形態では、金属塩は、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酸化コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、水酸化コバルト(II)、ヒドロキシ炭酸コバルト(II)、混合ハロゲン化コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトネート、ギ酸コバルト(II)、過塩素酸コバルト(II)、又はそれらのハロゲン化誘導体である。幾つかの実施形態では、塩基性アニオンは、ホルメート又はアセテートである。幾つかの実施形態では、塩基性アニオンは、サルフェート、臭化物、ヨウ化物、又はトリフルロスルホネートであり、反応は、金属配位性官能基のない緩衝剤の存在下で行われる。
【0053】
[0076] IV.代表的な合成スキーム
[0077] 本開示では、複数の金属カチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体が合成され、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数の金属カチオンの中の2つ以上の金属カチオンに結合し、結晶性金属有機構造体は1つ以上の細孔チャネルを特徴とする。幾つかのこのような実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、式M
nX
mの1つ以上の化合物と反応し、それぞれのMは、独立して、カチオン性のBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、又はHfであり、Xは塩基性アニオン(例えば、ホルメート、アセテート、サルフェート、臭化物、ヨウ化物、又はトリフルロスルホネートなど)であり、nは正の整数(例えば、1、2など)であり、mは正の整数(例えば、1、2など)である。反応は、サリチレート、サリチルアミド、1,3-フタレート、3-ヒドロキシベンゾエート、又はそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム セシウム)、又はそれらの混合物などのモジュレーターの存在下で行われる。この方法で、得られる金属有機構造体結晶の結晶形態(例えば、1つ以上の結晶学的方向又はそれらの一次結合)が制御される。例えば、幾つかの実施形態では、金属有機構造体の結晶成長によって、針、ディスク、又は米粒の形状を有する結晶が得られる。
図9は、Co
2(dobdc)結晶を生成するために本開示により使用される金属カチオン、ポリトピック有機リンカー、及びモジュレーターの濃度の例、並びに緩衝液、並びにpH、溶媒、及び反応温度の例を示している。
【0054】
[0078] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、反応前に1mM~50mMの間の濃度で溶液中に存在し、式MnXmの1つ以上の化合物は、反応前に5nM~100nMの間の濃度で溶液中に存在し、モジュレーターは、反応前に15nM~100nMの間の濃度で溶液中に存在する。
【0055】
[0079] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、溶液中に、少なくとも0.1mM、少なくとも0.5mM、少なくとも1mM、少なくとも5mM、少なくとも10mM、少なくとも15mM、少なくとも20mM、少なくとも25mM、少なくとも30mM、少なくとも35mM、少なくとも40mM、少なくとも45mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも150mM、少なくとも200mM、少なくとも300mM、少なくとも400mM、少なくとも500mM、少なくとも600mM、少なくとも700mM、少なくとも800mM、又は少なくとも900mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、溶液中に、少なくとも1M、少なくとも2M、少なくとも3M、少なくとも4M、少なくとも5M、少なくとも6M、少なくとも7M、少なくとも8M、少なくとも9M、少なくとも10M、少なくとも15M、少なくとも20M、少なくとも30M、少なくとも40M、少なくとも50M、少なくとも60M、少なくとも70M、少なくとも80M、少なくとも90M、少なくとも100M、少なくとも200M、又は少なくとも500Mの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、溶液中に、800M以下、500M以下、100M以下、80M以下、50M以下、20M以下、10M以下、5M以下、又は1M以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、溶液中に、800mM以下、500mM以下、100mM以下、80mM以下、50mM以下、20mM以下、10mM以下、5mM以下、又は1mM以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、溶液中に、0.5mM~10mM、1mM~200mM、50mM~500mM、200mM~1M、1M~50M、10M~200M、又は50mM~10Mの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、溶液中に、0.1mM以上から始まり800M以下で終わる別の範囲内の濃度で存在する。
【0056】
[0080] 幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物は、溶液中に、少なくとも0.1nM、少なくとも0.5nM、少なくとも1nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも15nM、少なくとも20nM、少なくとも25nM、少なくとも30nM、少なくとも35nM、少なくとも40nM、少なくとも45nM、少なくとも50nM、少なくとも60nM、少なくとも70nM、少なくとも80nM、少なくとも90nM、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、又は少なくとも900nMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物は、溶液中に、少なくとも1mM、少なくとも2mM、少なくとも3mM、少なくとも4mM、少なくとも5mM、少なくとも6mM、少なくとも7mM、少なくとも8mM、少なくとも9mM、少なくとも10mM、少なくとも15mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも200mM、又は少なくとも500mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物は、溶液中に、1000mM以下、500mM以下、100mM以下、80mM以下、50mM以下、20mM以下、10mM以下、5mM以下、又は1mM以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物は、溶液中に、800nM以下、500nM以下、100nM以下、80nM以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、又は1nM以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物は、溶液中に、0.5nM~10nM、1nM~200nM、50nM~500nM、200nM~1mM、1mM~50mM、10mM~200mM、又は50nM~10mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物は、溶液中に、0.1nM以上から始まり1M以下で終わる別の範囲内の濃度で存在する。
【0057】
[0081] 幾つかの実施形態では、モジュレーターは、溶液中に、少なくとも0.1nM、少なくとも0.5nM、少なくとも1nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも15nM、少なくとも20nM、少なくとも25nM、少なくとも30nM、少なくとも35nM、少なくとも40nM、少なくとも45nM、少なくとも50nM、少なくとも60nM、少なくとも70nM、少なくとも80nM、少なくとも90nM、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、又は少なくとも900nMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、モジュレーターは、溶液中に、少なくとも1mM、少なくとも2mM、少なくとも3mM、少なくとも4mM、少なくとも5mM、少なくとも6mM、少なくとも7mM、少なくとも8mM、少なくとも9mM、少なくとも10mM、少なくとも15mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも200mM、又は少なくとも500mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、モジュレーターは、溶液中に、1000mM以下、500mM以下、100mM以下、80mM以下、50mM以下、20mM以下、10mM以下、5mM以下、又は1mM以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、モジュレーターは、溶液中に、800nM以下、500nM以下、100nM以下、80nM以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、又は1nM以下の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、モジュレーターは、溶液中に、0.5nM~10nM、1nM~200nM、50nM~500nM、200nM~1mM、1mM~50mM、10mM~200mM、又は50nM~10mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、モジュレーターは、溶液中に、0.1nM以上から始まり1M以下で終わる別の範囲内の濃度で存在する。
【0058】
[0082] 幾つかの実施形態では、nは1又は2であり、mは1又は2である。幾つかの実施形態では、nは1であり、mは1又は2のいずれかである。幾つかの実施形態では、mは2以上である。
【0059】
[0083] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数の金属カチオンの中の2つの金属カチオンに結合する。
【0060】
[0084]
図17は、本開示の一実施形態により、10当量の3-ヒドロキシベンゾエートにおいて1当量よりも一貫して小さい結晶を示しているが、結晶サイズはモジュレーター濃度とともに単調減少するわけではなく、サリチルアミド、フタレート、及びブロモサリチルアミドの場合にも同じ傾向が確認される。したがって、幾つかの実施形態では、MOF結晶のサイズ及び形態を最適化するために、モジュレーターの当量数に対するポリトピック有機リンカーの当量数は変動する。例えば、幾つかの実施形態では、反応前の溶液中、0.5~20当量の間のモジュレーターに対して、1当量のポリトピック有機リンカーが存在する。幾つかの実施形態では、反応前の溶液中、1~15当量の間のモジュレーターに対して、1当量のポリトピック有機リンカーが存在する。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーの当量数の、モジュレーターの当量数に対する比は、1:0.001以下、1:0.01以下、1:0.1以下、1:0.5以下、1:1以下、1:2以下、1:3以下、1:4以下、1:5以下、1:6以下、1:7以下、1:8以下、1:9以下、1:10以下、1:15以下、1:20以下、1:30以下、1:40以下、1:50以下、1:60以下、1:70以下、1:80以下、1:90以下、又は1:100以下である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーの当量数の、モジュレーターの当量数に対する比は、少なくとも1:200、少なくとも1:100、少なくとも1:80、少なくとも1:50、少なくとも1:40、少なくとも1:20、少なくとも1:10、少なくとも1:5、少なくとも1:2、又は少なくとも1:1である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーの当量数の、モジュレーターの当量数に対する比は、1:5~1:0.1、1:50~1:1、又は1:30~1:2である。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーの当量数の、モジュレーターの当量数に対する比は、1:200以上から始まり1:0.001以下で終わる別の範囲内となる。
【0061】
[0085] 幾つかの実施形態では、モジュレーターは、式:
【化6】
を有する、又はそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム セシウム)、又はそれらの混合物(例えば、それぞれ独立して式I、II、III、IV、又はVを有する、いずれか2、3、4、5、6、7、8、9.又は10のモジュレーターの混合物)であり、R
1、R
2、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルから選択され、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択され、R
10及びR
11は、それぞれ水素ではない。例えば、
図10は、時計回りに、本開示の実施形態によるモジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を350倍の倍率で示している。
図11から15は、時計回りに、モジュレーターの3-ヒドロキシベンゾエート、アセテート、サリチレート、及びフタレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を種々の倍率で示している。
図16は、モジュレーターのサリチレートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を1504倍の倍率で示しており(上)、3-ヒドロキシベンゾエートの存在下で成長させたCo
2(dobdc)結晶を2000倍の倍率(下)で示している。
図19は、本開示の一実施形態による、トリクロロアセテートで調節された金属有機構造体結晶化の場合に、金属有機構造体中へのモジュレーターの混入がどのように非常に少なくなるかを示しており、これは元素分析により83ppmであり(左図)、これはエネルギー分散型X線分光法によっては見ることができない。
【0062】
[0086] 幾つかのこのような実施形態では、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立して、1~10個の間の炭素原子を有する置換又は非置換で線状又は分岐のアルキルである。
【0063】
[0087] 幾つかのこのような実施形態では、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ水素である。
【0064】
[0088] 幾つかの実施形態では、溶液は1つのモジュレーターを含み、この1つのモジュレーターは、R1及びR2がそれぞれ水素である式IVを有する。幾つかのこのような実施形態では、R3、R4、R5、及びR6がそれぞれ水素である。
【0065】
[0089] 幾つかの実施形態では、溶液は1つのモジュレーターを含み、この1つのモジュレーターは、R2、R7、及びR8がそれぞれ水素である式IIを有する。幾つかのこのような実施形態では、R3、R4、R5、及びR6がそれぞれ水素である。
【0066】
[0090] 幾つかの実施形態では、溶液は1つのモジュレーターを含み、この1つのモジュレーターは、R1及びR9がそれぞれ水素である式III又はVを有する。幾つかのこのような実施形態では、R3、R4、R5、及びR6がそれぞれ水素である。
【0067】
[0091] 幾つかの実施形態では、式MnXmの1つ以上の化合物の中の1つの化合物は、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、又はカドミウム(II)金属塩である。
【0068】
[0092] 幾つかの実施形態では、1つ以上の化合物は、1つの化合物であり、この1つの化合物は、式MnXmの化合物であり、ここでMnXmは、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、又はカドミウム(II)金属塩である。
【0069】
[0093] 幾つかの実施形態では、反応は、金属配位性官能基のない緩衝剤(非配位性緩衝剤)を用いて行われる。開示される非配位性緩衝剤は、Good et al.,1966,Biochem.5(2),467の研究によって始まり、Kandegedara and Rorabacher,1999,Anal.Chem.71,3140によってさらに開発されたものである(それぞれが参照により本明細書に援用される)。幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤は、PIPES、PIPPS、PIPBS、DEPP、DESPEN、MES、TEEN、PIPES、MOBS、DESPEN、又はTEMNである。Kandegedara and Rorabacher,1999,Anal.Chem.71,3140を参照されたい。幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤はは、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、又はメチレンジアミンのアルキル又はアルキルスルホネート誘導体である。
【0070】
[0094] 表面成長又はエピタキシャル成長された金属有機構造体の報告が存在する。参照により本明細書に援用されるHeinke et al., 2016,SURMOFs: Liquid-Phase Epitaxy of Metal-Organic Frameworks on Surfaces, in The Chemistry of Metal-Organic Frameworks:Synthesis,Characterization,and Applications(ed S.Kaskel),Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim,Germany.doi:10.1002/9783527693078,ch17を参照されたい。一般に、表面成長又はエピタキシャル成長された金属有機構造体の合成手順では、表面を官能化し、表面上に直接核形成を引き起こし、一般に層ごとの成長が行われることが探求される。この計画は、通常、溶液中高温で生成物が形成されるソルボサーマル又は水熱合成と対比される。表面は、エピタキシャル成長された金属有機構造体に関連するが、ソルボサーマル及び水熱反応における表面の役割に対してあまり注意が払われていない。シラン処理のプロセスは、ガラス器具の表面に官能基又は疎水性を付与するための十分に確立された技術である。Seed,2001,“Silanizing Glassware”,Current Protocols in Cell Biology 8:3E:A.3E.1-A.3E.2、及びPlueddemann,1991,“Chemistry of Silane Coupling Agents,”In:Silane Coupling Agents, Springer,Boston,MAが参照され、これらのそれぞれが参照により援用される。しかしながら、金属有機構造体のソルボサーマル又は水熱合成中に異なる疎水性表面を使用する影響は、相選択及び形態制御に関しては研究されていない。
【0071】
[0095] 異なる金属有機構造体の形態を得るために、非常に異なる合成方法が見出されている。例えば、マイクロ波加熱によって、ソルボサーマル成長とは異なる微結晶が得られることが分かった。参照により本明細書に援用されるStock and Biswas,2012,Chem.Rev.112,933を参照されたい。しかしながら、水熱合成の範囲内で、オーブン加熱に対する油浴加熱の影響は、フレームワークのUiO-66及びIn-MIL-68の場合の限定された条件のみで研究されており、フレームワークのM2(dobdc)又はM2(dobpdc)の合成に関しては全く研究されていない。参照により本明細書に援用されるLee et al.,2017,Cryst.Eng.Comm.19,426が参照される。
【0072】
[0096]
図18は、より高いpHによって、どのようにより小さいアスペクト比の結晶が得られるかを示している。したがって、幾つかの実施形態では、溶液のpHは6.5~8.5の間である。幾つかの実施形態では、溶液のpHは7.0~8.0の間である。幾つかの実施形態では、溶液のpHは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも4.5、少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、又は少なくとも9.5である。幾つかの実施形態では、溶液のpHは、13以下、12以下、11以下、10.5以下、10以下、9.5以下、9以下、8.5以下、8以下、7.5以下、7以下、又は6.5以下である。幾つかの実施形態では、溶液のpHは、6~9、6~10、5~8、7~9、又は6~8である。幾つかの実施形態では、溶液のpHは、1以上から始まり14以下で終わる別の範囲内となる。
【0073】
[0097] 本開示の一態様は、非配位性緩衝剤又は非配位性塩基の存在下で、制御された加熱及び/又は反応容器の官能化を用いた、金属有機構造体の合成を提供する。非配位性緩衝剤、酸、又は塩基を使用する計画によって、特定の結晶形態を得るのに望ましい配位平衡を妨害することなく、広範囲のpH値において、配位子の制御された脱プロトンが可能となる。これらのツールを使用することで、成長中に溶媒/配位子/対イオン配位とは独立してpHを設定することができる。さらに、溶媒の分解に依拠することなくpHを制御することによって、どの配位剤が溶媒中で利用可能かが精密に制御される。添加剤又は金属対イオンの適切な選択によって、幾つかの結晶ファセットへの成長中に優先的な配位が可能となり、その方向での成長を遅らせることができる。調節は粒度及び安定性に影響することが知られているが、結晶構造の一方の端部への選択的結合は明らかではない。より強い配位剤を使用することで、細孔チャネルの方向に沿った成長が選択的に遅くなる。参照により本明細書に援用される、“Metal-Organic Framework Phase and Crystallite Shape Control”と題される国際公開第2020/068996号を参照されたい。
【0074】
[0098] 幾つかの実施形態では、Mは、カチオン性のFe、Co、又はZnである。幾つかの実施形態では、nは、2、3、又は4である。幾つかの実施形態では、nは2である。幾つかの実施形態では、nは5又は6である。
【0075】
[0099] 幾つかの実施形態では、塩基性アニオンのpKa値は3.5未満である。幾つかの実施形態では、塩基性アニオンのpKa値は3.5を超える。幾つかの実施形態では、アニオンのpKaは、ポリトピック有機リンカーの最低pKa値を超える。
【0076】
[0100] 一例として、結晶性MOF材料は、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酸化コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、水酸化コバルト(II)、ヒドロキシ炭酸コバルト(II)、混合ハロゲン化コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトネート、ギ酸コバルト(II)、過塩素酸コバルト(II)、又はそれらのハロゲン化誘導体などの種々のコバルト(II)塩から本開示の合成方法により形成することができる。
【0077】
[0101] 幾つかの実施形態では、反応開始前の溶液中に、複数のポリトピック有機リンカーは、1mM~1Mの間の濃度、3mM~0.5Mの間の濃度、又は4mM~250mMの間の濃度で存在する。
【0078】
[0102] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化7】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態では、R
13及びR
13はそれぞれ水素である。
【0079】
[0103] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化8】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態では、R
12及びR
13はそれぞれ水素である。
【0080】
[0104] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化9】
を有し、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、及びR
19は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかの実施形態ではR
14、R
15、R
16、R
17、R
18、及びR
19はそれぞれ水素である。
【0081】
[0105] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは式:
【化10】
を有し、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される。幾つかのこのような実施形態では、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25はそれぞれ水素である。
【0082】
[0106] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも呼ばれる)、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、1,3,5-ベンゼントリステトラゾレート(BTT)、1,3,5-ベンゼントリストリアゾレート(BTTri)、1,3,5-ベンゼントリスピラゾレート(BTP)、又は1,3,5-ベンゼントリスカルボキシレート(BTC)である。
【0083】
[0107] 幾つかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)である。
【0084】
[0108] 幾つかの実施形態では、反応は60℃を超える温度で行われる。幾つかの実施形態では、反応は70℃~80℃の間の温度で行われる。
【0085】
[0109] 幾つかの実施形態では、モジュレーターの塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、又はセシウム塩である。
【0086】
[0110] 幾つかの実施形態では、反応は、30℃未満の温度で2~3日間、40℃未満の温度で1又は2日未満、45℃未満の温度で10~25時間の間、50℃未満の温度で少なくとも11時間、60℃未満の温度で少なくとも8時間、70℃未満の温度で少なくとも2時間、80℃未満の温度で少なくとも30分間、又は90℃未満の温度で少なくとも10分間行われる。
【0087】
[0111] 幾つかの実施形態では、反応は、30℃~50℃の間の温度で2~3日間、35℃~55℃の間の温度で1~3日の間、40℃~60℃の間の温度で10~25時間の間、45℃~70℃の間の温度で少なくとも11時間、45℃~70℃の間の温度で少なくとも8時間、60℃~80℃の間の温度で少なくとも2時間、70℃~90℃の間の温度で少なくとも30分間、又は80℃~100℃の間の温度少なくとも10分間行われる。
【0088】
[0112] 幾つかの実施形態では、反応は、60℃を超える温度で少なくとも8時間、60℃を超える温度で少なくとも9時間、60℃を超える温度で少なくとも10時間、60℃を超える温度で少なくとも11時間、60℃を超える温度で少なくとも12時間、60℃を超える温度で少なくとも13時間、60℃を超える温度で少なくとも14時間、又は60℃を超える温度で少なくとも15時間行われる。
【0089】
[0113] 反応の幾つかの実施形態では、62℃を超える温度で少なくとも8時間、62℃を超える温度で少なくとも9時間、62℃を超える温度で少なくとも10時間、62℃を超える温度で少なくとも11時間、62℃を超える温度で少なくとも12時間、62℃を超える温度で少なくとも13時間、62℃を超える温度で少なくとも14時間、又は62℃を超える温度で少なくとも15時間行われる。
【0090】
[0114] 幾つかの実施形態では、反応は、64℃を超える温度で少なくとも8時間、64℃を超える温度で少なくとも9時間、64℃を超える温度で少なくとも10時間、64℃を超える温度で少なくとも11時間、64℃を超える温度で少なくとも12時間、64℃を超える温度で少なくとも13時間、64℃を超える温度で少なくとも14時間、又は64℃を超える温度で少なくとも15時間行われる。
【0091】
[0115] 幾つかの実施形態では、反応は、66℃を超える温度で少なくとも8時間、66℃を超える温度で少なくとも9時間、66℃を超える温度で少なくとも10時間、66℃を超える温度で少なくとも11時間、66℃を超える温度で少なくとも12時間、66℃を超える温度で少なくとも13時間、66℃を超える温度で少なくとも14時間、又は66℃を超える温度で少なくとも20時間行われる。
【0092】
[0116] 幾つかの実施形態では、反応は、68℃を超える温度で少なくとも8時間、68℃を超える温度で少なくとも9時間、68℃を超える温度で少なくとも10時間、68℃を超える温度で少なくとも11時間、68℃を超える温度で少なくとも12時間、68℃を超える温度で少なくとも13時間、68℃を超える温度で少なくとも14時間、又は68℃を超える温度で少なくとも20時間行われる。
【0093】
[0117] 幾つかの実施形態では、反応は、70℃を超える温度で少なくとも8時間、70℃を超える温度で少なくとも9時間、70℃を超える温度で少なくとも10時間、70℃を超える温度で少なくとも11時間、70℃を超える温度で少なくとも12時間、70℃を超える温度で少なくとも13時間、70℃を超える温度で少なくとも14時間、又は70℃を超える温度で少なくとも20時間行われる。
【0094】
[0118] 幾つかの実施形態では、反応は、72℃を超える温度で少なくとも8時間、72℃を超える温度で少なくとも9時間、72℃を超える温度で少なくとも10時間、72℃を超える温度で少なくとも11時間、72℃を超える温度で少なくとも12時間、72℃を超える温度で少なくとも13時間、72℃を超える温度で少なくとも14時間、又は72℃を超える温度で少なくとも20時間行われる。
【0095】
[0119] 幾つかの実施形態では、反応は、74℃を超える温度で少なくとも8時間、74℃を超える温度で少なくとも9時間、74℃を超える温度で少なくとも10時間、74℃を超える温度で少なくとも11時間、74℃を超える温度で少なくとも12時間、74℃を超える温度で少なくとも13時間、74℃を超える温度で少なくとも14時間、又は74℃を超える温度で少なくとも20時間行われる。
【0096】
[0120] 幾つかの実施形態では、反応は、25℃を超える温度で少なくとも1時間行われる。幾つかの実施形態では、反応は、25℃を超える温度で少なくとも8時間行われる。
【0097】
[0121] 幾つかの実施形態では、式MnXmの化合物は、反応前の溶液中に、5mM~1Mの間、10mM~0.5Mの間、又は15mM~250mMの間の濃度で存在する。
【0098】
[0122] 幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤が反応中に使用される。幾つかの実施形態では、この緩衝剤は、PIPES、PIPPS、PIPBS、DEPP、DESPEN、MES、TEEN、PIPES、MOBS、DESPEN、又はTEMNである。幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤が使用され、この緩衝剤は、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、又はメチレンジアミンのアルキル又はアルキルスルホネート誘導体である。参照により本明細書に援用されるKandegedara and Rorabacher, 1999,Anal.Chem.71,3140を参照されたい。
【0099】
[0123] 幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤は、反応前の溶液中で0.05M~0.5Mの間、0.10M~0.4Mの間、0.15M~0.30Mの間、又は0.18M~0.22Mの間の濃度に緩衝される。幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤は、溶液中で使用され、5.0未満、5.0~6.0の間、6.0~7.0の間、7.0~8.0の間、又は8.0を超えるpHに緩衝される。
【0100】
[0124] 幾つかの実施形態では、金属配位性官能基のない緩衝剤は、溶液中に存在し、この緩衝剤は、結晶性金属有機構造体の金属カチオンと、測定可能な相互作用が起こらない、又は結合しない。
【0101】
[0125] 幾つかの実施形態では、溶液は、極性プロトン性溶媒、又は極性プロトン性溶媒の混合物を含む。幾つかの実施形態では、溶液は、エタノール:水の溶媒混合物を含む。幾つかの実施形態では、溶液は、エタノール及び水のx:y混合物を含み、ここでx及びyは独立して別々の正の整数である。幾つかの実施形態では、xは1であり、yは1である。幾つかの実施形態では、xは2であり、yは1である。幾つかの実施形態では、yは2であり、xは1である。幾つかの実施形態では、xは0.5~5の間の範囲であり、yは5~0.5の間の範囲である。幾つかの実施形態では、反応は、1:1のエタノール:H2O溶媒中で行われる。幾つかの実施形態では、反応は、t-ブタノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、N,N-ジメチルホルムアミド、又はそれらの混合物の中で行われる。
【0102】
[0126] 加熱装置。水熱合成中、同一の合成反応に熱を供給する方法によって、金属有機構造体試料のサイズ、形態、及び分散性に影響が生じる。MOF結晶の分散性及びサイズは、油浴、オーブン、又は金属ビーズ浴などの加熱装置の変化によって制御することができる。別の点が同一である合成条件の場合、幾つかの実施形態では、シラン処理されていないガラス器具中で行われた合成の場合に、油浴によって、微結晶の分散性が改善されることが分かっている。金属ビーズ浴の例は、Lab Armor(Cornelius,Oregon)の金属ビーズ浴の製品系列、例えばLab Armor 74300-714 Waterless Bead Bath(容量14L)である。本開示の幾つかの実施形態は、開示される反応が、以下に開示される特殊な形態又は熱源を用いて行われることがさらに指定される。
【0103】
[0127] 油浴の使用。幾つかの実施形態では、開示される反応ステップは、シラン処理されないガラス器具中で油浴を用いて行われる。
【0104】
[0128] 本開示の一例の実施形態では、結晶性金属有機構造体は、ポリトピック有機リンカーを第1の極性プロトン性溶媒中に可溶化させることによる開示される合成スキームにより形成される。別に、式MnXmの化合物を第2の極性プロトン性溶媒中に溶解させる。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは同じである。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは異なる。反応は、例えば、ジムロート冷却器を取り付けた250mLの3口丸底フラスコ中15℃で2つの溶液を混合することで開始される。幾つかの実施形態では、混合された溶液は、高温(例えば、60℃を超える)の油浴中に入れられた丸底フラスコの内部で、ある時間(例えば、10時間を超える)、撹拌下(例えば、300rpm)で還流させる。反応時間の終了後、溶液は、(例えば、油浴から取り出すことによって、又は油浴を冷却することによって)室温まで冷却される。
【0105】
[0129] 本開示の別の一実施形態では、結晶性金属有機構造体は、ポリトピック有機リンカーを第1の極性プロトン性溶媒中に可溶化させることによって形成される。別に、式MnXmの化合物を第2の極性プロトン性溶媒中に溶解させる。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは同じである。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは異なる。反応は、例えば、ジムロート冷却器を取り付けた250mLの3口丸底フラスコ中15℃で2つの溶液を即時混合することで開始される。幾つかの実施形態では、混合された溶液は、高温(例えば、60℃を超える)の油浴中に入れられた丸底フラスコの内部で、ある時間(例えば、10時間を超える)、撹拌下(例えば、300rpm)で還流させる。反応時間の終了後、溶液は、(例えば、油浴から取り出すことによって、又は油浴を冷却することによって)室温まで冷却される。
【0106】
[0130] オーブンの使用。本開示の一実施形態では、結晶性金属有機構造体は、ポリトピック有機リンカーを第1の極性プロトン性溶媒中に可溶化させることによる本開示の合成方法により形成される。別に、式MnXmの化合物を第2の極性プロトン性溶媒中に溶解させる。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは同じである。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは異なる。幾つかの実施形態では、ポリトピック有機リンカー溶液又はMnXm溶液は、金属配位性官能基のない緩衝剤で緩衝される。さらに別の実施形態では、ポリトピック有機リンカー溶液とMnXm溶液との両方が、金属配位性官能基のない緩衝剤で緩衝される。2つの溶液は、例えば、撹拌なしの気密封止されたオートクレーブ(例えば、200mLのサイズのTeflonカップオートクレーブ)のオーブン中、室温で互いに混合される。これを、あらかじめ加熱されたもの(例えば、60℃を超える温度)の中に、ある時間(例えば、10時間を超える)静的に配置することによって、この封止されたオートクレーブ中で反応を進行させることができる。反応時間の終了後、溶液は、(例えば、オーブンから取り出すことによって、又はオーブンを環境で冷却することによって)室温まで冷却される。
【0107】
[0131] 本開示の別の一実施形態では、結晶性金属有機構造体は、ポリトピック有機リンカーを第1の極性プロトン性溶媒中に可溶化させることによる本開示の合成方法により形成される。別に、式MnXmの化合物を第2の極性プロトン性溶媒中に溶解させる。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは同じである。幾つかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒とは異なる。2つの溶液は、例えば、撹拌なしの気密封止されたオートクレーブ(例えば、200mLのサイズのTeflonカップオートクレーブ)中、室温で互いに混合される。これを、あらかじめ加熱された(例えば、60℃を超える温度)オーブン中に、ある時間(例えば、10時間を超える)静的に配置することによって、この封止されたオートクレーブ中で反応を進行させることができる。反応時間の終了後、オーブンとともにオートクレーブを室温まで冷却する。
【0108】
[0132] シラン処理。幾つかの実施形態では、開示される反応は、官能化されたガラス器具中で行われる。
【0109】
[0133] 反応容器の異なる表面官能性によって、得られる結晶のサイズ及び分散性を制御することもできる。文献のシラン処理手順をホウケイ酸ガラス器具に対して用いることで、表面に疎水性が付与される。どちらも参照により本明細書に援用される、Seed,2001,“Silanizing Glassware,”Current Protocols in Cell Biology.8:3E:A.3E.1-A.3E.2、及びPlueddemann,1992,“Chemistry of Silane Coupling Agents,”In:Silane Coupling Agents,Springer,Boston,MAを参照されたい。これらのシラン処理されたガラス器具中で行われる水性エタノール合成によって、非常に低い結晶多分散性が得られる。さらに、シラン処理されたガラス器具によって、異なる加熱方式によって生じる形態の差がなくなったが、このことは、加熱の変化により生じる合成の不一致を緩和するためにこれを使用できることを示している。
【0110】
[0134] 幾つかの実施形態では、本開示の合成スキームによるMOF結晶を形成するための反応は、シラン処理剤を用いてシラン処理されたガラス器具中で行われる。幾つかの実施形態では、シラン処理剤は、クロロトリメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、又はそれらの混合物を含む。
【0111】
[0135] 幾つかの実施形態では、使用されるシラン処理剤は、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)-ジエトキシ-メチルシラン、(3-アミノプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)-メチル-ジメトキシシラン、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、使用されるシラン処理剤は、長い炭化水素鎖を含むもの、例えばオクタデシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、表面は、疎水性ではなく、より親水性となるように官能化される。幾つかのこのような実施形態では、シラン処理剤によって、表面に特殊な官能性が付与される。幾つかの実施形態では、これは、パーフルオロアルカン又は別のアルカンの官能化、例えばアルコール、カルボン酸、アミド、アミン、若しくはそれらの混合物を含む。
【0112】
[0136] 幾つかの実施形態では、開示される反応は、良性(benign)表面の存在下で行われる。
【0113】
[0137] プラスチック又は鋼などの良性表面の使用によって、低分散性の結晶を得ることもできる。例えば、これらの良性表面中で行われる水性エタノール合成によって、第2の反応スキームにより形成されたCo2(dobdc)伸び結晶などのシラン処理されない表面よりも顕著に低い結晶多分散性が得られる。
【0114】
[0138] さらに、異なる表面官能性の使用によって、相選択を決定することができる。例えば、反応容器の表面官能性に依存して、同一の反応条件で2つの異なる生成物を得ることができる。ガラス器具上の異なる官能性、例えばシラン処理された表面又はシラン処理されていない表面を用いることで、第3の反応スキームにより形成されるZn(dobpdc)・2H2Oなどの新しい相の発見につなげることもできる。
【0115】
[0139] さらに、異なる表面官能性の使用によって、微結晶サイズを決定することができる。例えば、反応容器の表面官能性に依存して、同一の反応条件で2つの異なる微結晶サイズを得ることができる。
【0116】
[0140] V.技術的用途
[0141] 本開示の一態様では、開示される吸着材料の多数の技術的用途が提供される。
【0117】
[0142] このような用途の1つは、石炭煙道ガス又は天然ガス煙道ガスからの炭素の捕捉である。地球の気候変化に寄与する二酸化炭素(CO2)の大気中の量の増加は、発電所などの点排出源からのCO2排出を減少させるための新しい計画の根拠となっている。特に、石炭燃料の発電所は、世界のCO2排出の30~40%に関与している。参照により本明細書に援用されるQuadrelli et al.,2007,“The energy-climate challenge:Recent trends in CO2 emissions from fuel combustion,”Energy Policy 35,pp.5938-5952を参照されたい。したがって、周囲圧力及び40℃においてCO2(15~16%)、O2(3~4%)、H2O(5~7%)、N2(70~75%)、及び微量の不純物(例えばSO2、NOx)からなるガスストリームである石炭煙道ガスから炭素を捕捉するための新しい吸着剤の開発が引き続き必要とされている。参照により本明細書に援用されるPlanas et al.,2013,“The Mechanism of Carbon Dioxide Adsorption in an Alkylamine-Functionalized Metal-organic Framework,”J.Am.Chem.Soc.135,pp.7402-7405を参照されたい。同様に、燃料源としての天然ガスの使用の増加により、天然ガスを使用する発電所の煙道ガスからのCO2捕捉が可能な吸着剤が必要とされている。天然ガスの燃焼によって生成される煙道ガスは、約4~10%のCO2のより低いCO2濃度を有し、ストリームの残りの部分はH2O(飽和)、O2(4~12%)、及びN2(残部)からなる。特に、温度スイング吸着プロセスの場合、吸着剤は、以下の性質を有するべきである:(a)再生エネルギーコストを最小限にするために最小限の温度スイングで高い作業効率;(b)石炭煙道ガスの別の構成要素に対するCO2の高い選択性;(c)煙道ガス条件下で煙道ガス条件下でCO2の90%の捕捉;(d)高湿度条件下での有効な性能;及び(d)高湿度条件下での吸着/脱着サイクルに対する長期安定性。
【0118】
[0143] 別のこのような用途は、粗バイオガスからの炭素の捕捉である。有機物の分解によって生成されるCO2/CH4混合物であるバイオガスは、従来の化石燃料源に取って代わる可能性がある再生可能な燃料源である。粗バイオガス混合物からのCO2の除去は、この有望な燃料源をパイプライン品質のメタンにアップグレードすることの最も困難な側面の1つである。したがって、高い作業効率及び最小限の再生エネルギーで、CO2/CH4混合物からCO2を選択的に除去するために吸着剤を使用することは、エネルギー部門における用途に天然ガスの代わりにバイオガスを使用することのコストを大幅に減少させる可能性がある。
【0119】
[0144] 開示される組成物(吸着材料)は、CO2に富むガスストリームからCO2の大部分を除去するために使用することができ、CO2に富む吸着材料は、温度スイング吸着方法、圧力スイング吸着方法、真空スイング吸着方法、濃度スイング吸着方法、又はそれらの組み合わせを用いてCO2を除去することができる。温度スイング吸着方法及び真空スイング吸着方法の例は、参照により本明細書に援用される国際公開第2013/059527A1号に開示されている。
【0120】
[0145] 幾つかの実施形態では、開示される組成物(吸着材料)は、特に、エタン/エチレン、プロパン/プロピレン、及びC6アルカン混合物などの炭化水素混合物の分離に使用される。これらの炭化水素の工業的製造では、オレフィン/パラフィン型又は別の異性体の混合物が生成され、それらは市場の需要には適合しておらず、分離する必要がある。現行技術の一部は、蒸留などの非常にエネルギー集約的なプロセスであり、一部は結晶化又は吸着に基づいている。より良好な吸着に基づく材料の実現は、工業的分離におけるエネルギーコストを大幅に減少させる可能性がある。
【0121】
[0146] 幾つかの実施形態では、開示される組成物は、特にプロセスの中でもメタンの変換など、低級アルカンを付加価値のある化学物質に変換するための不均一触媒として使用される。天然ガス埋蔵量が最近世界規模で増加していることから、このプロセスは、非常に経済的で環境に影響のあるプロセスとなる。したがって、メタンを高級炭化水素に変換するための材料及び経路が非常に望まれている。
【実施例】
【0122】
[0147] VI.実施例
[0148] 実施例1。複数のカチオンと複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体を合成し、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合した。これらのポリトピック有機リンカーは式:
【化11】
を有する。これらのポリトピック有機リンカーを、式Co(NO
3)
2・6H
2Oの化合物と、0.2mMのMOPSで緩衝させpH7に調整した1:1のH
2O/EtOH溶液中で反応させた。溶液中のポリトピック有機リンカーの濃度は5mMであり、溶液中のCo(NO
3)
2・6H
2Oの濃度は17.5mMであった。溶液中には式:
【化12】
のモジュレーターが存在した。
【0123】
[0149] 溶液中のモジュレーターの濃度は35mMであった。反応中、溶液を75℃の温度に維持し、これによって、
図8Aの上図の下の図に示すCo
2(dobdc)結晶を得た。
【0124】
[0150] 実施例2。複数のカチオンと複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体を合成し、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合した。これらのポリトピック有機リンカーは式:
【化13】
を有した。これらのポリトピック有機リンカーを、式Co(NO
3)
2・6H
2Oの化合物と、0.2mMのMOPSで緩衝させpH7に調整した1:1のH
2O/EtOH溶液中で反応させた。溶液中のポリトピック有機リンカーの濃度は5mMであり、溶液中のCo(NO
3)
2・6H
2Oの濃度は17.5mMであった。溶液中には式:
【化14】
のモジュレーターが存在した。
【0125】
[0151] 溶液中のモジュレーターの濃度は35mMであった。反応中、溶液を75℃の温度に維持し、これによって、
図8Aの下図の下の図で示されるCo
2(dobdc)結晶を得た。
【0126】
[0152] 実施例3。複数のカチオンと複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体を合成し、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合した。これらのポリトピック有機リンカーは式:
【化15】
を有した。これらのポリトピック有機リンカーを、式Co(NO
3)
2・6H
2Oの化合物と、0.2mMのMOPSで緩衝させpH7に調整した1:1のH
2O/EtOH溶液中で反応させた。溶液中のポリトピック有機リンカーの濃度は5mMであり、溶液中のCo(NO
3)
2・6H
2Oの濃度は17.5mMであった。溶液中には式:
【化16】
のモジュレーターが存在した。
【0127】
[0153] 溶液中のモジュレーターの濃度は35mMであった。反応中、溶液を75℃の温度に維持し、これによって、
図8Bの上図の下の図に示されるCo
2(dobdc)結晶を得た。
【0128】
[0154] 実施例4。複数のカチオンと複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体を合成し、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合した。これらのポリトピック有機リンカーは式:
【化17】
を有した。これらのポリトピック有機リンカーを、式Co(NO
3)
2・6H
2Oの化合物と、0.2mMのMOPSで緩衝させpH7に調整した1:1のH
2O/EtOH溶液中で反応させた。溶液中のポリトピック有機リンカーの濃度は5mMであり、溶液中のCo(NO
3)
2・6H
2Oの濃度は17.5mMであった。溶液中には式:
【化18】
のモジュレーターが存在した。
【0129】
[0155] 溶液中のモジュレーターの濃度は35mMであった。反応中、溶液を75℃の温度に維持し、これによって、
図8Bの下図の下の図に示すCo
2(dobdc)結晶を得た。
【0130】
[0156] 実施例5。複数のカチオンと複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体を合成し、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合した。これらのポリトピック有機リンカーは式:
【化19】
を有した。これらのポリトピック有機リンカーを、式Co(NO
3)
2・6H
2Oの化合物と、0.2mMのMOPSで緩衝させpH7に調整した1:1のH
2O/EtOH溶液中で反応させた。溶液中のポリトピック有機リンカーの濃度は5mMであり、溶液中のCo(NO
3)
2・6H
2Oの濃度は17.5mMであった。溶液中には式:
【化20】
のモジュレーターが存在した。
【0131】
[0157] 溶液中のモジュレーターの濃度は35mMであった。反応中、溶液を75℃の温度に維持し、これによって、
図8Cの下図に示すCo
2(dobdc)結晶を得た。
【0132】
[0158] VII.さらなる実施形態
[0159] 実施形態1。複数のカチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体の合成方法であって、複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーは、複数のカチオンの中の2つ以上のカチオンに結合し、方法は、複数のポリトピック有機リンカーを、式M
nX
mの1つ以上の化合物と溶液中で反応させることを含み、ここでそれぞれのMは、独立して、カチオン性のBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、Hfであり、Xは塩基性アニオンであり、nは正の整数であり、mは正の整数であり、反応は、式:
【化21】
を有するモジュレーター、若しくはそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム セシウム)、又はそれらの混合物の存在下で行われ、R
1、R
2、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルから選択され、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択され、R
10及びR
11は、それぞれ水素ではない、方法。
【0133】
[0160] 実施形態2。R3、R4、R5、及びR6が、それぞれ独立して、1~10個の間の炭素原子を有する置換又は非置換で線状又は分岐のアルキルである、実施形態1の方法。
【0134】
[0161] 実施形態3。R3、R4、R5、及びR6がそれぞれ水素である、実施形態1の方法。
【0135】
[0162] 実施形態4。モジュレーターが式IVを有し、R1及びR2がそれぞれ水素である、実施形態1又は3の方法。
【0136】
[0163] 実施形態5。モジュレーターが式IIを有し、R2、R7、及びR8がそれぞれ水素である、実施形態1又は3の方法。
【0137】
[0164] 実施形態6。モジュレーターが式III又はVを有し、R1及びR9がそれぞれ水素である、実施形態1又は3の方法。
【0138】
[0165] 実施形態7。反応が、金属配位性官能基のない緩衝剤を用いて行われる、実施形態1~6のいずれか1つの方法。
【0139】
[0166] 実施形態8。金属配位性官能基のない緩衝剤が、PIPES、PIPPS、PIPBS、DEPP、DESPEN、MES、TEEN、PIPES、MOBS、DESPEN、又はTEMNである、実施形態7の方法。
【0140】
[0167] 実施形態9。金属配位性官能基のない緩衝剤が、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、又はメチレンジアミンのアルキル又はアルキルスルホネート誘導体である、実施形態7の方法。
【0141】
[0168] 実施形態10。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化22】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0142】
[0169] 実施形態11。R12及びR13がそれぞれ水素である、実施形態10の方法。
【0143】
[0170] 実施形態12。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化23】
を有し、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0144】
[0171] 実施形態13。R12及びR13がそれぞれ水素である、実施形態12の方法。
【0145】
[0172] 実施形態14。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化24】
を有し、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、及びR
19は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0146】
[0173] 実施形態15。R14、R15、R16、R17、R18、及びR19がそれぞれ水素である、実施形態14の方法。
【0147】
[0174] 実施形態16。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが式:
【化25】
を有し、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、又はハロゲン置換メチルから選択される、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0148】
[0175] 実施形態17。R20、R21、R22、R23、R24、及びR25がそれぞれ水素である、実施形態16の方法。
【0149】
[0176] 実施形態18。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、
[0177] ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも呼ばれる)、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、1,3,5-ベンゼントリステトラゾレート(BTT)、1,3,5-ベンゼントリストリアゾレート(BTTri)、1,3,5-ベンゼントリスピラゾレート(BTP)、又は1,3,5-ベンゼントリスカルボキシレート(BTC)である、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0150】
[0178] 実施形態19。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)である、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0151】
[0179] 実施形態20。式MnXmの1つ以上の化合物の中の化合物が、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、又はカドミウム(II)金属塩である、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
【0152】
[0180] 実施形態21。式MnXmの1つ以上の化合物の中の化合物が、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酸化コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、水酸化コバルト(II)、ヒドロキシ炭酸コバルト(II)、混合ハロゲン化コバルト(II)、コバルト(II)アセチルアセトネート、ギ酸コバルト(II)、又はそれらのハロゲン化誘導体である、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
【0153】
[0181] 実施形態22。アニオンのpKaが、ポリトピック有機リンカーの最低pKa値を超える、実施形態1の方法。
【0154】
[0182] 実施形態23。塩基性アニオンが、ホルメート、アセテート、サルフェート、臭化物、ヨウ化物、又はトリフルロスルホネートである、実施形態1~22のいずれか1つの方法。
【0155】
[0183] 実施形態24。反応が、シラン処理されないガラス器具中で油浴を用いて行われる、実施形態1~23のいずれか1つの方法。
【0156】
[0184] 実施形態25。反応が、官能化されたガラス器具中で行われる、実施形態1~23のいずれか1つの方法。
【0157】
[0185] 実施形態26。反応が、良性表面の存在下で行われる、実施形態1~23のいずれか1つの方法。
【0158】
[0186] 実施形態27。反応が、シラン処理剤を用いてシラン処理されたガラス器具中で行われる、実施形態1~23のいずれか1つの方法。
【0159】
[0187] 実施形態28。シラン処理剤が、クロロトリメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、又はそれらの混合物を含む、実施形態27の方法。
【0160】
[0188] 実施形態29。反応が、1:1のエタノール:H2O溶媒中で行われる、実施形態1~28のいずれか1つの方法。
【0161】
[0189] 実施形態30。反応が、25℃を超える温度で少なくとも1時間行われる、実施形態1~29のいずれか1つの方法。
【0162】
[0190] 実施形態31。反応が、25℃を超える温度で少なくとも8時間行われる、実施形態1~29のいずれか1つの方法。
【0163】
[0191] 実施形態32。nが1であり、mが1又は2のいずれかである、実施形態1~31のいずれか1つの方法。
【0164】
[0192] 実施形態33。mが2以上である、実施形態1~31のいずれか1つの方法。
【0165】
[0193] 実施形態34。複数のポリトピック有機リンカーの中のそれぞれのポリトピック有機リンカーが、複数の金属カチオンの中の2つの金属カチオンに結合する、実施形態1~33のいずれか1つの方法。
【0166】
[0194] 実施形態35。反応前の溶液中、0.5~20当量の間のモジュレーターに対して、1当量のポリトピック有機リンカーが存在する、実施形態1~34のいずれか1つの方法。
【0167】
[0195] 実施形態36。反応前の溶液中、1~15当量の間のモジュレーターに対して、1当量のポリトピック有機リンカーが存在する、実施形態1~34のいずれか1つの方法。
【0168】
[0196] 実施形態37。溶液のpHが6.5~8.5の間である、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
【0169】
[0197] 実施形態38。溶液のpHが7.0~8.0の間である、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
【0170】
[0198] 実施形態39。溶液が、t-ブタノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、N,N-ジメチルホルムアミド、又はそれらの混合物を含む、実施形態1の方法。
【0171】
[0199] 実施形態40。複数のポリトピック有機リンカーが、反応前に1mM~50mMの間の濃度で溶液中に存在し、式MnXmの1つ以上の化合物が、反応前に5nM~100nMの間の濃度で溶液中に存在し、モジュレーターが、反応前に15nM~100nMの間の濃度で溶液中に存在する、実施形態1~39のいずれか1つの方法。
【0172】
[0200] 実施形態41。反応が60℃を超える温度で行われる、実施形態1~40のいずれか1つの方法。
【0173】
[0201] 実施形態42。反応が70℃~80℃の間の温度で行われる、実施形態1~40のいずれか1つの方法。
【0174】
[0202] 実施形態43。モジュレーターの塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、又はセシウム塩である、実施形態1~42のいずれか1つの方法。
【0175】
結論
[0203] 本開示の意図及び版から逸脱することなく以上の説明を考慮すれば、多くの変更、修正、及び変形は、当業者には明らかであろうし、数値の下限及び数値の上限が本明細書に列挙される場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が考慮される。
【0176】
[0204] 本明細書に記載の実施例及び実施形態は、単に説明を目的としており、それらを考慮した種々の修正又は変更が、当業者によって示唆されるであろうし、それらは本出願の意図及び範囲の中に含まれ、添付の請求項の範囲内に含まれることを理解されよう。本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的でそれら全体が参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】