(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20170101AFI20240806BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240806BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240806BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240806BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20240806BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20240806BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240806BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240806BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/24
A61K38/08
A61K31/198
A61K31/343
A61K31/40
A61K45/00
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/40
A61K47/42
A61K47/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506702
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022072148
(87)【国際公開番号】W WO2023012357
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522099205
【氏名又は名称】メドインセルル エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエット セリンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ ロペズ‐ノリエガ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、式:B(A)n(式中、Bはポリエーテルを表し、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、各Aはポリエステルアームを表し、nは1~8の整数である)を有する少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー;少なくとも1種の求核性化合物;少なくとも1種の有機溶媒;及び10%(w/w)までの少なくとも1種の3未満のpKa(H2O)を有する酸性化合物を含むか、又はそれらからなる医薬組成物を提供する。
【選択図】 無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式:
B(A)
n
を有する少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー
(式中、Bはポリエーテルを表し、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、各Aはポリエステルアームを表し、nは1~8の整数である);
b)少なくとも1種の求核性化合物;
c)少なくとも1種の有機溶媒;及び
d)10%(w/w)までの少なくとも1種の3未満のpK
a(H
2O)を有する酸性化合物
を含むか、又はそれらからなる医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、
i.PEGを含むマルチアームポリエーテルである中心核に結合した3~8つのポリエステルアームを有するマルチアームコポリマーであって、各ポリエーテルアームが2~150のエチレンオキシド繰り返し単位を有し、各ポリエステルアームが4~200の繰り返し単位を有するマルチアームコポリマー;及び
ii.式:
Av-Bw-Ax
を有するトリブロックコポリマー(式中、Aはポリエステルであり、BはPEGであり、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、v=x又はv≠x);及び
iii.式:
Cy-Az
を有するジブロックコポリマー(式中、Aはポリエステルであり、CはエンドキャップされたPEGであり、y及びzはyが2~250の範囲でzが1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である);
又はこれらの任意の組合せ
から選択される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の酸性化合物が、それぞれ、-15.00~2.97、任意に約-3.00~約2.90、任意に約0.50~約2.75、任意に約1.40~約2.75のpK
a(H
2O)を有する、請求項1又は請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
室温で液体であり、水性環境中に注射されると半固体又は固体インプラントを形成する、請求項1~3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記酸性化合物d)が、無機酸又はカルボン酸、任意にポリカルボン酸、任意にジ又はトリカルボン酸である、請求項1~4のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記酸性化合物d)が、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸、酒石酸 シトラコン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ニコチン酸、ヨウ化水素酸、クロム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロ酢酸、シアノ酢酸、2-クロロプロパン酸、2-クロロブタン酸、4-シアノブタン酸、過塩素酸、リン酸又はこれらの組合せから選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記酸性化合物d)が、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸もしくは酒石酸又はこれらの組合せ、好ましくはサリチクル酸、シュウ酸、マロン酸、スルファミン酸、パモ酸又はこれらの任意の組合せから選択される、請求項1~6のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)の前記ポリエステルが、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)又はポリ(ε-カプロラクトン-co-乳酸)(PCLA)である、請求項1~7のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記エンドキャップされたポリエチレングリコールが、メトキシ-ポリエチレングリコールである、請求項2~8のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)の前記ポリエステルが、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)である、請求項1~9のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、1~10、好ましくは2~6の前記エチレンオキシド繰り返し単位に対する前記エステル繰り返し単位のモル比を有するマルチアームコポリマーi)である、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、マルチアームコポリマーi)である場合、前記中心核がPEGとポリオールとから得ることができるマルチアームポリエーテルである、請求項1~11のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ポリオールが少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、任意に、該ポリオールが、少なくとも3つのヒドロキシル基、任意に3、4、5、6又は8つのヒドロキシル基により置換されている炭化水素である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリオールが、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン(diTMP) ソルビトール、又はイノシトールである、請求項12又は請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリオールが、1つ以上のエーテル基をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、トリブロックコポリマーii)とジブロックコポリマーiii)との混合物である、請求項2~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記トリブロックコポリマーii)の前記エチレンオキシド繰り返し単位に対する前記エステル繰り返し単位のモル比が、0.5~22、好ましくは0.5~10、最も好ましくは1~6である、請求項2~10及び16のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ジブロックコポリマーiii)の前記エチレンオキシド繰り返し単位に対する前記エステル繰り返し単位のモル比が、0.8~15、好ましくは1~10である、請求項2~10及び15又は16のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記求核性化合物b)が、-SH、-OH、一級アミン、二級アミン、三級アミン、及びこれらの組合せから選択される1つ以上の官能基を含む、請求項1~18のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記求核性化合物b)が、医薬品有効成分である、請求項1~19のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬品有効成分が、遊離塩基であるか、又は3より高いpK
a(H
2O)を有する酸の塩である、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬品有効成分が、オクトレオチド酢酸塩、リオチロニン、エスシタロプラム遊離塩基、アトルバスタチンカルシウム三水和物又はこれらの組合せである、請求項20又は請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記求核性化合物が、医薬品有効成分ではなく、前記組成物が少なくとも1種の医薬品有効成分をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記求核性化合物b)が、アルコール、任意にC
1~C
8アルコール、任意にグリセロール、ソルビトール、メタノール、エタノール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、好ましくはメタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその誘導体もしくは混合物である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記求核性化合物b)が、糖、二糖又は多糖、任意にスクロース、デキストロース、シクロデキストリン、キトサン又はこれらの混合物である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記求核性化合物b)が、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド、任意にリジン、アルギニン、ヒスチジン又はセリンである、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記求核性化合物b)が、水である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記求核性化合物b)が、さらなる有機溶媒、任意にピロリドン-2、グリコフロール、ピリジン、ニトロメタン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-,ジエムチルデカンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、2,4,6-コリジン又はこれらの混合物である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記求核性化合物b)が、溶解度促進剤、ポロゲン又は相交換調節剤である、請求項23~28記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1種の有機溶媒c)が、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール又はこれらの混合物、好ましくはDMSO、NMP及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~29のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記酸性化合物d)が、10より低い、好ましくは8より低いpK
a(DMSO)を有する、請求項1~30のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1種の酸性化合物d)の量が、前記総組成物の0.005%(w/w)~10%(w/w)、任意に0.55%(w/w)~10%(w/w)、又は0.005%(w/w)~0.45%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)~4.0%(w/w)である、請求項1~31のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記酸性化合物d)のモル量が、前記求核性化合物b)のモル量に対して、0.05%~300%、好ましくは0.1%~250%である、請求項1~32のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記求核性化合物b)が、少なくとも1つの-OH基を含有し、前記酸性化合物d)のモル量が、該求核性化合物のモル量に対して100%以下、該求核性化合物のモル量に対して好ましくは0.05%~100%である、請求項1~33のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記求核性化合物b)が、一級又は二級アミンなどの少なくとも1つの窒素含有反応性基を含有し、前記酸性化合物d)のモル量が、該求核性化合物のモル量に対して100%以上、好ましくは該求核性化合物の量に対して100%~300%である、請求項1~34のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)の総量が、前記総組成物の2%(w/w)~80%(w/w)、任意に10~50%(w/w)、任意に20~40%(w/w)である、請求項1~35のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、マルチアームコポリマーi)であり、該マルチアームコポリマーの量が、前記総組成物の20~60%(w/w)、任意に20~50%(w/w)である、請求項2~15又は19~36のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記ジブロックコポリマーの量が、前記総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)であり;前記トリブロックコポリマーの量が、前記総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)である、請求項2~10又は16~36のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記医薬品有効成分の量が、前記総組成物の0.05%(w/w)~60%(w/w)、任意に0.05~20%(w/w)、任意に0.05~10%(w/w)、任意に0.05~5%(w/w)、任意に0.05~2%(w/w)である、請求項20~38のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記有機溶媒の量が、前記総組成物の少なくとも20%(w/w)、任意に20~80%(w/w)、任意に20~60%(w/w)である、請求項1~39のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項41】
室温又は2~8℃での少なくとも2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での少なくとも4週間保存の間安定である、請求項1~40のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記組成物中の前記医薬品有効成分の濃度が、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満減少する、請求項1~41のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記組成物の動的粘度が、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、10%未満、好ましくは5%未満減少する、請求項1~42のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項記載の医薬組成物を調製する方法であって、
i.請求項1~43のいずれか一項に定義された前記少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、前記少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程;
ii.工程i)の生成物に、請求項1~43のいずれか一項に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)及び請求項1~43のいずれか一項に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程であって、任意に、該求核性化合物b)が医薬品有効成分である工程;並びに
iii.工程ii)の生成物を均質化して、それにより前記医薬組成物を得る工程
を含むか、又はこれらの工程からなる、前記方法。
【請求項45】
前記少なくとも1種の酸性化合物と前記少なくとも1種の求核性化合物とが、工程ii)の前に塩も錯体も形成しない、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1種の酸性化合物と前記少なくとも1種の求核性化合物とが、工程ii)の前に接触も共に混合もされない、請求項44又は請求項45記載の方法。
【請求項47】
工程ii)が、前記成分を単一の工程で混合することからなる、請求項44~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
請求項1~43のいずれか一項記載の医薬組成物を調製する方法であって、
i.請求項1~47のいずれか一項に定義される前記少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、前記少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程;
ii.工程i)の生成物に、請求項1~47のいずれか一項に定義される少なくとも1種の酸性化合物d)又は請求項1~47のいずれか一項に定義される少なくとも1種の求核性化合物b)を加え、次いで生成物を均質化する工程;
iii.少なくとも1種の酸性化合物d)が工程ii)で加えられる場合、その後に、請求項1~47のいずれか一項に定義される少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程;又は少なくとも1種の求核性化合物b)が工程ii)で加えられる場合、その後に、請求項1~47のいずれか一項に定義される少なくとも1種の酸性化合物d)を加える工程;及び
iv.工程iii)の生成物を均質化して、それにより、医薬組成物を得る工程
を含むか、又はこれらの工程からなり、任意に、該求核性化合物b)が医薬品有効成分である、前記方法。
【請求項49】
前記求核性化合物が、医薬品有効成分ではなく、医薬品有効成分が、工程i)の後に加えられる、請求項44~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
前記医薬品有効成分が、前もって前記有機溶媒c)に溶解されている、請求項44~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記酸性化合物d)が、前もって前記有機溶媒c)に溶解されている、請求項44~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
前記求核性化合物b)が、前もって前記有機溶媒c)に溶解されている、請求項44~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
工程iii.又はiv.で得られた前記医薬組成物が、濾過される、請求項44~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
請求項44~53のいずれか一項記載の方法により得ることができるか、又は得られた医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医薬品有効成分の持続放出に好適である、改善された安定性を有する医薬組成物に関する。医薬組成物は非経口使用に好適であり、持続放出が望まれるあらゆる適応症又は投与計画に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
様々な種類の持続放出製剤が現在使用されている。WO1993/24150及びWO2003/000778は、荷電した原薬と修飾されたコポリマーの塩の形成を開示しており、使用されたブロック(コ)ポリマーは、それらのPLA鎖の末端で負電荷を示すように化学修飾されている。WO2007/084460は、ペプチドの送達のために使用される延長された安定性を有する注射用ポリマー性組成物を記載している。ペプチド活性成分(active)は強酸と塩を形成する。開示されたポリマーはPEGを含まない。
WO2016/061296は、有機溶媒中に求核性生物活性物質を有する直鎖又は分岐鎖のPLA系ポリマーであり得る注射用生分解性ポリマー製剤である医薬組成物を記載している。
【0003】
US 8,173,148は、生分解性生体適合性ポリエステル(直鎖又は分岐鎖)、遊離塩基又は塩形態の少なくとも1つの窒素基を有する求核性生物活性剤、及びポリ炭素環状酸(polycarbocylic acid)である安定化助剤(stabilizing associate)を含む組成物を記載している。US8,173,148の組成物において、酸性化合物は、ポリエステルとの求核的接触の前に求核性生物活性剤と混合されて有効になる。
【0004】
WO2005007122A2及びファミリーメンバーUS 8,343,513は、生体適合性且つ生分解性ポリマー、エステル結合切断を触媒すること及びポリマーの分子量低下を起こすことが可能な少なくとも1種の求核性物質並びに製剤中のポリマーが酸添加剤のない製剤と比べて分子量低下に対して影響を受けにくいような量の酸添加剤を含む持続放出製剤を開示する。酸添加剤は、5.00未満のpKaを有し得る:しかし、開示される具体的な酸化合物の全ては3より高いpKaを有する。低pKaの酸は医薬品安定性を延ばすために使用される。組成物は、典型的には、PEG-PLGA及びPEG-PLAを含むPLA又はPLGA系(コ)ポリマーを含むが、マルチアームコポリマー又はPEG-ポリエステルコポリマーの組合せは開示されていない。さらに、例示される組成物は微粒子を含み、典型的には、最終生成物中に溶媒を含まない。
上述の文書は医薬製剤の安定化を記載しているが、依然として、改善された安定性を有する製剤を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、改善された安定性特性を有する医薬組成物、特に、水性環境中に注入される場合にインサイチュデポ(in situ depot)を生成させるのに好適な、改善された安定性特性を有する液体医薬組成物に関する。
【0006】
本発明による態様は、
a)式:
B(A)n
を有する少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー
(式中、Bはポリエーテルを表し、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、各Aはポリエステルアームを表し、nは1~8の整数である);
b)少なくとも1種の求核性化合物;
c)少なくとも1種の有機溶媒;及び
d)10%(w/w)までの少なくとも1種の3未満のpKa(H2O)を有する酸性化合物
を含むか、又はそれらからなる医薬組成物を提供する。
【0007】
発明者らは、驚くべきことに、上述の医薬組成物が、改善された安定性、すなわちポリエーテル-ポリエステルコポリマーの経時的な分解の減少を有することを見出した。理論に拘束されることなく、本発明者らは、特定の低いpKaを有する特定の量の酸の存在が、求核剤により引き起こされるポリエステル分解を防ぐことを理解している。この効果は、少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーへの添加前の酸性化合物と求核性化合物との先の反応なしでさえ達成され、すなわち、安定化効果は、酸との塩又は錯体の先の形成に依存しない。
【0008】
本発明の好ましい実施態様は、先に定義された医薬組成物であって、少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、
i.PEGを含むマルチアームポリエーテルである中心核に結合した3~8つのポリエステルアームを有するマルチアームコポリマーであって、各ポリエーテルアームが2~150のエチレンオキシド繰り返し単位を有し、各ポリエステルアームが4~200の繰り返し単位を有するマルチアームコポリマー;及び
ii.式:
Av-Bw-Ax
を有するトリブロックコポリマー
(式中、Aはポリエステルであり、BはPEGであり、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、v=x又はv≠x);及び
iii.式:
Cy-Az
を有するジブロックコポリマー
(式中、Aはポリエステルであり、CはエンドキャップされたPEGであり、y及びzは、yが2~250の範囲でzが1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である);
iv.又はこれらの任意の組合せ
から選択される医薬組成物を提供する。
【0009】
各酸性化合物は、3.00未満のpKa(H2O)を有する。各酸性化合物は、好ましくは、-15.00~2.97、より好ましくは約-3.00~約2.90、任意に約0.50~約2.75、任意に約1.40~約2.75のpKa(H2O)を有する。
好ましい実施態様において、組成物は室温で液体であり、水性環境中に注射されると半固体又は固体インプラントを形成する。本発明の組成物は、組成物の対象への注射後に医薬組成物の沈殿により形成された半固体の局所的な塊である「インサイチュデポ」を形成する。医薬組成物は、水溶液に実質的に不溶性であるコポリマーを含む。そのため、医薬組成物がヒト又は動物の体の水性環境と接触すると、相反転が起こって組成物の液体から半固体への変化を起こし、すなわち組成物の沈殿が起こり、「インサイチュデポ」の形成をもたらす。
酸性化合物は、無機酸又はカルボン酸、任意にポリカルボン酸、任意にジ又はトリカルボン酸であり得る。
【0010】
好ましい実施態様において、酸性化合物d)は、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸(phtalic acid)、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸、酒石酸 シトラコン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ニコチン酸、ヨウ化水素酸、クロム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロ酢酸、シアノ酢酸、2-クロロプロパン酸、2-クロロブタン酸、4-シアノブタン酸、過塩素酸、リン酸又はこれらの組合せから選択される。
【0011】
本発明の特に好ましい実施態様において、酸性化合物は、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸(phtalic acid)、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸もしくは酒石酸又はこれらの組合せ、好ましくはサリチクル酸(salicyclic acid)、シュウ酸、マロン酸、スルファミン酸、パモ酸又はこれらの任意の組合せから選択される。
典型的には、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーのポリエステルは、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)又はポリ(ε-カプロラクトン-co-乳酸)(PCLA)である。
【0012】
ジブロックコポリマーのエンドキャップされたポリエチレングリコールは、好ましくはメトキシ-ポリエチレングリコールである。
好ましい実施態様において、ポリエステルはポリ(D,L-乳酸)(PLA)である。
一実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、各ポリエーテルアームが2~150のエチレンオキシド繰り返し単位を有し、各ポリエステルアームが4~200の繰り返し単位を有するマルチアームコポリマーである。
典型的には、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、1~10、好ましくは2~6のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有するマルチアームコポリマーである。
【0013】
好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、3~8つのアームを有するマルチアームコポリマーである。
ポリエーテル-ポリエステルコポリマーがマルチアームコポリマーである場合、中心核は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリオールから得られ得るマルチアームポリエーテルである。好ましくは、ポリオールは少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、任意にポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基、任意に3、4、5、6又は8つのヒドロキシル基により置換されている炭化水素である。典型的には、ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン(diTMP) ソルビトール、又はイノシトールである。一実施態様において、ポリオールは1つ以上のエーテル基をさらに含む。
【0014】
マルチアームコポリマーのいくつかの実施態様において、アームの数は4であり、PEGコアの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は3又は4である。
好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーはジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーとの混合物である。一実施態様において、ジブロックコポリマーのエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は0.8~15、好ましくは1~10である。一実施態様において、トリブロックコポリマーのエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は0.5~22、好ましくは0.5~10、最も好ましくは1~6である。
【0015】
トリブロックコポリマーのいくつかの実施態様において、PEGの分子量は1kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は4又は6であり、ジブロックコポリマーに関して、PEGの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は3である。
トリブロックコポリマーのいくつかの実施態様において、PEGの分子量は1kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は6であり、ジブロックコポリマーに関して、mPEGの分子量は1kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は4である。
トリブロックコポリマーのいくつかの実施態様において、PEGの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は2であり、ジブロックコポリマーに関して、mPEGの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は3である。
【0016】
典型的には、求核性化合物は、-SH、-OH、一級アミン、二級アミン、三級アミン、複素環基及びこれらの組合せから選択される1つ以上の官能基を含む。
一実施態様において、求核性化合物は医薬品有効成分である。
一実施態様において、医薬品有効成分は、遊離塩基であるか、又は3より高いpKa(H2O)を有する酸の塩である。一実施態様において、医薬品有効成分は、オクトレオチド酢酸塩、リオチロニン、エスシタロプラム遊離塩基、アトルバスタチンカルシウム三水和物又はこれらの組合せである。
別の実施態様において、求核性化合物は医薬品有効成分ではなく、組成物は少なくとも1種の医薬品有効成分をさらに含む。
【0017】
一実施態様において、求核性化合物は、アルコール、任意にC1~C8アルコール、任意にグリセロール、ソルビトール、メタノール、エタノール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、好ましくはメタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその誘導体もしくは混合物である。
一実施態様において、求核性化合物は、糖、二糖又は多糖、任意にスクロース、デキストロース、シクロデキストリン、キトサン又はこれらの混合物である。
一実施態様において、求核性化合物は、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド、任意にリジン、アルギニン、ヒスチジン又はセリンである。
一実施態様において、求核性化合物は水である。
【0018】
一実施態様において、求核性化合物は、さらなる有機溶媒、すなわち上記c)で定義された少なくとも1種の有機溶媒に追加する溶媒であり、任意に、ピロリドン-2、グリコフロール、ピリジン、ニトロメタン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-,ジメチルデカンアミド(diemthyldecanamide)、N,N-ジメチルオクタンアミド、2,4,6-コリジン又はこれらの混合物である。
一実施態様において、組成物は少なくとも1種の医薬品有効成分を含み、求核性化合物は、溶解度促進剤(solubility enhancer)、ポロゲン又は相交換調節剤(phase exchange modifier)である。
【0019】
溶解度促進剤は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、ピリジン、ニトロメタン、トリメチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルデカンアミド、M,N-ジメチルオクタンアミド、2,4,6-コリジン及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなる有機溶媒であり得る。
或いは、溶解度促進剤は少なくとも1種の有機溶媒c)に可溶性である固体化合物であり得る。
【0020】
一実施態様において、溶解度促進剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、シクロデキストリン及びこれらの混合物からなるリストから選択される。
一実施態様において、求核性化合物はポロゲン又は相交換調節剤である。
ポロゲン及び/又は相交換調節剤の例は、スクロースもしくはデキストロースなどの糖、二糖もしくは多糖、又はトリグリセリドなどの脂肪酸、又は植物油、又はC1~C8アルコールもしくはポリエチレングリコールなどのアルコールである。
一実施態様において、ポロゲン又は相交換調節剤は、糖、多糖又はアルコールからなるリストから選択される。
【0021】
典型的には、少なくとも1種の有機溶媒c)は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール又はこれらの混合物、好ましくはDMSO、NMP及びこれらの混合物からなる群から選択される。
好ましい実施態様において、酸性化合物は、10より低い、好ましくは8より低いpKa(DMSO)を有する。
【0022】
いくつかの実施態様において、少なくとも1種の酸性化合物の量は、総組成物の0.005%(w/w)~10%(w/w)、任意に0.55%(w/w)~10%(w/w)、又は0.005%(w/w)~0.45%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)~4.0%(w/w)である。
酸性化合物のモル量は、求核性化合物のモル量に対して0.05%~300%、好ましくは0.1%~250%であり得る。一実施態様において、求核性化合物は少なくとも1つの-OH基を含有し、酸性化合物のモル量は、求核剤量のモル量に対して100%以下、好ましくは求核性化合物のモル量に対して0.05%~100%である。一実施態様において、求核性化合物は一級アミン又は二級アミンなどの少なくとも1つの窒素含有反応性基を含有し、酸性化合物のモル量は、求核性化合物のモル量に対して100%以上であり、好ましくは求核性化合物のモル量に対して100%~300%である。
【0023】
好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーの総量は、総組成物の2%(w/w)~80%(w/w)、任意に10~50%(w/w)、任意に20~40%(w/w)である。
一実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーはマルチアームコポリマーi)であり、マルチアームコポリマーの量は、総組成物の20~60%(w/w)、任意に20~50%(w/w)である。
組成物がジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーを含む場合、典型的には、ジブロックコポリマーの量は、総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)であり;トリブロックコポリマーの量は、総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)である。
【0024】
典型的には、医薬品有効成分の量は、総組成物の0.05%(w/w)~60%(w/w)、任意に0.05~20%(w/w)、任意に0.05~10%(w/w)、任意に0.05~5%(w/w)、任意に0.05~2%(w/w)である。
典型的には、有機溶媒の量は、総組成物の少なくとも20%(w/w)、任意に20~80%(w/w)、任意に20~60%(w/w)である。
好ましい実施態様において、組成物は、室温又は2~8℃での少なくとも2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での少なくとも4週間保存の間安定である。
【0025】
一実施態様において、組成物中の医薬品有効成分の濃度は、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満減少する。
一実施態様において、組成物の動的粘度は、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、10%未満、好ましくは5%未満減少する。
【0026】
本発明のさらなる態様において、上述の医薬組成物を調製する方法であって、
i.先に定義された少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程;
ii.工程i)の生成物に、先に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)及び先に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程であって、任意に求核性化合物b)が医薬品有効成分である工程;並びに
iii.工程ii)の生成物を均質化して、それにより医薬組成物を得る工程
を含むか、又はこれらの工程からなる方法が提供される。
【0027】
好ましい実施態様において、少なくとも1種の酸性化合物と少なくとも1種の求核性化合物とは、工程ii)の前に、塩も錯体も形成しない。本発明の一実施態様において、少なくとも1種の酸性化合物と少なくとも1種の求核性化合物とは、工程ii)の前に、接触も共に混合もされない。従来技術の方法に対する本発明の大きな利点は、求核性化合物が組成物の他の成分、特にコポリマーと混合される前に、酸性化合物を求核性化合物(APIであり得る)と反応させる初期工程が必要でないことである。本発明の一実施態様において、反応物の全てを単一の工程で共に混合でき、酸は、最初に求核性化合物と反応する必要なく、その安定化効果を達成できる。
好ましい実施態様において、工程ii)は、成分を単一の工程で混合することからなる。
【0028】
別の態様において、本発明は、上述の医薬組成物を調製する方法であって、
i.いずれかの前述の請求項に定義された少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程;
ii.工程i)の生成物に、先に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)又は先に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加え、次いで生成物を均質化する工程;
iii.少なくとも1種の酸性化合物d)が工程ii)で加えられる場合、その後に、先に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程;又は少なくとも1種の求核性化合物b)が工程ii)で加えられる場合、その後に、先に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)を加える工程;及び
iv.工程iii)の生成物を均質化して、それにより医薬組成物を得る工程;
を含むか、又はこれらの工程からなり、任意に、求核性化合物b)が医薬品有効成分である方法を提供する。
【0029】
本発明の実施態様において、求核性化合物は医薬品有効成分ではなく、医薬品有効成分は工程i)の後に加えられる。
一実施態様において、医薬品有効成分は前もって有機溶媒に溶解されている。一実施態様において、酸性化合物は前もって有機溶媒に溶解されている。一実施態様において、求核性化合物は前もって有機溶媒に溶解されている。一実施態様において、工程iii.又はiv.で得られた医薬組成物は濾過される。
さらなる態様において、先に定義された方法により得ることが可能な、又は得られた医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本発明による一態様は、
a)式:
B(A)n
を有する少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー
(式中、Bはポリエーテルを表し、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、各Aはポリエステルアームを表し、nは1~8の整数である);
b)少なくとも1種の求核性化合物;
c)少なくとも1種の有機溶媒;及び
d)10%(w/w)までの少なくとも1種の3未満のpKa(H2O)を有する酸性化合物
を含むか、又はそれらからなる医薬組成物を提供する。
【0031】
好ましい実施態様において、組成物は室温で液体であり、水性環境中に注射されると半固体又は固体インプラントを形成する。上述の組成物は、典型的には、体内に注射されるとデポ、すなわち「インサイチュデポ」を形成するのに好適である。
本発明の組成物は、デポ注射により投与される。用語「デポ注射」は、「デポ」と呼ばれる固体又は半固体の塊などの局所的な塊中に薬物を堆積させる流動性の医薬組成物の、通常皮下、皮内又は筋肉内の注射である。本明細書に定義されるデポは、注射時にインサイチュで形成する。そのため、製剤は溶液又は懸濁液として調製でき、体内に注射できる。
【0032】
「インサイチュデポ」は、組成物の対象への注射後に医薬組成物の沈殿により形成される固体又は半固体の局所的な塊である。医薬組成物は、水溶液に実質的に不溶性であるコポリマーを含む。そのため、医薬組成物がヒト又は動物の体の水性環境と接触すると、相反転が起こり組成物の液体から固体への変化を起こし、すなわち組成物の沈殿が起こり、「インサイチュデポ」の形成をもたらす。
【0033】
「インサイチュデポ」は、従来技術に記載されるハイドロゲル医薬製剤から明らかに区別できる。ハイドロゲルは、多量の水を吸収することが可能な三次元ネットワークを有する。ハイドロゲルを構成するポリマーは水溶液に可溶性である。対照的に、本発明に使用されるポリマーは水溶液に実質的に不溶性である。本発明の医薬組成物は、典型的には、低濃度の水を含有するか、又は水は存在しない。例えば、本発明の医薬組成物は、0.5%(w/w)未満の水を含み得る。
【0034】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は、先に定義された少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー、医薬品有効成分であり得る先に定義された少なくとも1種の求核性化合物、先に定義された少なくとも1種の有機溶媒及び先に定義された少なくとも1種の酸性化合物を含む。
別の実施態様において、本発明の医薬組成物は、先に定義された少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー、先に定義された少なくとも1種の求核性化合物、少なくとも1種の医薬品有効成分、少なくとも1種の有機溶媒及び先に定義された少なくとも1種の酸性化合物を含む。
【0035】
そのため、求核性化合物がAPIであり得るか、又は求核性化合物はAPIではなく、APIが別な化合物として提供されることが分かる。
本発明の組成物は少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーを含む。
上述の通り、Bはポリエーテルを表し、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはエンドキャップされたPEGを含むか、又はポリエチレングリコール(PEG)もしくはエンドキャップされたPEGである。マルチアームコポリマーi)では、これは、典型的には、Bが、PEGとポリオールとの反応から、又はより典型的には、エチレンオキシドであるPEGの前駆体とポリオールとの反応から得ることができるマルチアームポリエーテルであることを意味する。ポリエーテル-ポリエステルコポリマーがトリブロックコポリマーである場合、BはPEGである。ポリエーテル-ポリエステルコポリマーがジブロックコポリマーである場合、Bはメトキシ-PEGなどのエンドキャップされたPEGである。
【0036】
好ましい実施態様において、医薬組成物は、
i.PEGを含むマルチアームポリエーテルである中心核に結合した3~8つのポリエステルアームを有するマルチアームコポリマーであって、各ポリエーテルアームが2~150のエチレンオキシド繰り返し単位を含み、各ポリエステルアームが4~200の繰り返し単位を有するマルチアームコポリマー;及び
ii.式:
Av-Bw-Ax
を有するトリブロックコポリマー
(式中、Aはポリエステルであり、BはPEGであり、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、v=x又はv≠x);及び
iii.式:
Cy-Az
を有するジブロックコポリマー
(式中、Aはポリエステルであり、CはエンドキャップされたPEGであり、y及びzは、yが2~250の範囲でzが1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である);
iv.又はこれらの任意の組合せ
から選択される少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を含む。
【0037】
本発明に使用されるコポリマーは、ブロックコポリマーがインビボで加水分解を受けて、それらの構成要素(m)PEG及びオリゴマー又はモノマー又はポリエステルブロックから誘導された繰り返し単位が形成されることを意味する「生体吸収性」又は「生分解性(biodegradeable)」と記載できる。例えば、ポリ(ε-カプロラクトン-co-乳酸)(PCLA)は加水分解を受けて、6-ヒドロキシカプロン酸(6-ヒドロキシヘキサン酸)及び乳酸が形成される。加水分解プロセスの結果は、デポの進行性の質量喪失及び最終的にその消失をもたらす。
【0038】
各コポリマーの分子量は数平均分子量である。数平均分子量は、典型的には、ポリスチレン標準から得られた較正曲線を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される。
本発明の好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーのポリエーテルはポリ(エチレングリコール)(PEG)を含むか、又はPEGもしくはメトキシ-PEGなどのエンドキャップされたPEGである。
【0039】
一実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーのポリエステルは、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、又はポリ(ε-カプロラクトン-co-乳酸)(PCLA)、好ましくはポリ(D,L-乳酸)である。ポリエステルは、ヒドロキシル(-OH)末端基で終わっている。本発明によるポリマーは、好ましくは、15より低い、又は好ましくは5より低い酸価を有する。酸価は、通常1グラムの物質を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のミリグラムの数として表される、物質中の遊離酸の量の尺度である。
【0040】
PEG-PLAコポリマーは、PEGをD,L-ラクチドと反応させることにより、好ましくはPEGにより開始されるD,L-ラクチドの開環重合により得ることができる。ポリエーテル-PLGAコポリマーは、PEGをD,L-ラクチド及びグリコリドと反応させることにより、好ましくはPEGにより開始されるD,L-ラクチド及びグリコリドの開環重合により得ることができる。ポリエーテル-PCLAコポリマーは、PEGを、ε-カプロラクトン及びD,L-ラクチドと反応させることにより、好ましくはPEGにより開始されるε-カプロラクトン及びD,L-ラクチドの開環により得ることができる。
ジブロックコポリマーのエンドキャップされたポリエチレングリコールは、好ましくは、メトキシ-ポリエチレングリコールである。
【0041】
一実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーはマルチアームコポリマーである。用語「マルチアームコポリマー」は、中心核に結合した少なくとも3つのポリエステルアームを有するポリマーを意味し、本発明の中心核はポリエーテルを含む。ポリエステルアームは、「枝」、「アーム」又は「鎖」と称され得る。用語「マルチアームコポリマー」は、用語「スターコポリマー」又は「星状コポリマー」又は「多分岐コポリマー」と同じ意味を有し、これらの用語は、全体を通して互換的に使用される。
一実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、各ポリエーテルアームが2~150のエチレンオキシド繰り返し単位を有し、各ポリエステルアームが4~200の繰り返し単位を有するマルチアームコポリマーである。
【0042】
典型的には、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、1~10、好ましくは2~6のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有するマルチアームコポリマーである。
好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、3~8つのアームを有するマルチアームコポリマーである。
ポリエーテル-ポリエステルコポリマーがマルチアームコポリマーである場合、中心核は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)とポリオールから得られ得るマルチアームポリエーテルである。マルチアームポリエーテルは、エチレンオキシドとポリオールとの反応により形成され得る。マルチアームポリエーテルは、エチレンオキシドとポリオールとの反応により得ることができる。
【0043】
ポリオールは、複数のヒドロキシル基を含む有機化合物である。好ましくは、ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、任意に、ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基、任意に3、4、5、6又は8つのヒドロキシル基により置換されている炭化水素である。典型的には、ポリオールは、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン(diTMP) ソルビトール、又はイノシトールである。一実施態様において、ポリオールは、1つ以上のエーテル基をさらに含む。
【0044】
マルチアームポリエーテルの例は式1~4に提示される:
【化1】
(式中、R
1は
【化2】
、H又はアルキルであり、xは、0又は1であり、mは2~76の整数である)
式1
【化3】
(式中、mは5~40の整数である)
式2
【化4】
(式中、mは5~40の整数である)
式3
【化5】
(式中、mは25~30の整数であり、vは6である)
【0045】
式4
マルチアームコポリマーのいくつかの実施態様において、アームの数は4であり、PEGコアの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は3又は4である。
好ましくは、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーはB(A)nであり、ここで、BはPEGを含むポリエーテルを表し、Aはポリエステルアームを表し、nは、1、2、3、4、5、6、7又は8である整数である。nが1である場合、コポリマーはジブロックであり、nが2である場合、コポリマーはトリブロックであり、nが3以上である場合、コポリマーはマルチアームコポリマーである。
ジブロックの場合、コポリマーは直鎖であり、mPEG-PLAなどのポリエーテル及びポリエステル(A-B)からなり、mはメトキシなどのエンドキャップ基を表す。
トリブロックの場合、コポリマーは直鎖であり、PLA-PEG-PLAなどのポリエステルが両側にある中心ポリエーテル(A-B-A)からなる。
【0046】
PEG繰り返し単位とも称されるPEG鎖、すなわち-(CH
2CH
2O)
n-(式中、nは整数である)の分子量は、ポリスチレン標準から得られた較正曲線を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される。測定された分子量は数平均分子量(Mn)である。
ジブロック及びトリブロックコポリマーの一般式は以下に提示される:
ジブロックコポリマー(DB)
【化6】
トリブロックコポリマー(TB)
【化7】
【0047】
好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーの総量は、総組成物の2%(w/w)~80%(w/w)、任意に10~50%(w/w)、任意に20~40%(w/w)である。
一実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーはマルチアームコポリマーであり、マルチアームコポリマーの量は、総組成物の20~60%(w/w)、任意に20~50%(w/w)である。
【0048】
好ましい実施態様において、ポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、ジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーとの混合物である。一実施態様において、ジブロックコポリマーのエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.8~15、好ましくは1~10である。一実施態様において、トリブロックコポリマーのエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比は、0.5~22、好ましくは0.5~10、最も好ましくは1~6である。
いくつかの実施態様において、トリブロック及び/又はジブロックコポリマーに関して、PEG繰り返し単位の分子量は1~2kDaであり、乳酸/エチレンモル比は2~6である。いくつかの実施態様において、トリブロックコポリマーに関して、PEG繰り返し単位の分子量は1~2kDaであり、乳酸/エチレン比は2~6であり、ジブロックコポリマーに関して、mPEGの分子量は1~2kDaであり、乳酸/エチレンオキシド比は3~4である。
【0049】
いくつかの実施態様において、トリブロックコポリマーに関して、PEG繰り返し単位の分子量は1kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は4又は6であり、ジブロックコポリマーに関して、PEG繰り返し単位の分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は3である。
いくつかの実施態様において、トリブロックコポリマーに関して、PEGの分子量は1kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は6であり、ジブロックコポリマーに関して、mPEGの分子量は1kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は4である。
【0050】
いくつかの実施態様において、トリブロックコポリマーに関して、PEGの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は2であり、ジブロックコポリマーに関して、mPEGの分子量は2kDaであり、乳酸/エチレンオキシドモル比は3である。
典型的には、ジブロックコポリマーの量は、総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)であり;トリブロックコポリマーの量は、総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)である。
【0051】
好ましくは:
-コポリマーがマルチアームコポリマーB(A)nである場合、各ポリエーテルアームは2~150のエチレンオキシド繰り返し単位から構成され、各ポリエステルアームAは4~200のエステル繰り返し単位から構成され、マルチアームコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位の好ましいモル比は、1~10、より好ましくは2~6の範囲であり;
-コポリマーがトリブロックコポリマーA-B-Aである場合、Bは3~300のエチレンオキシド繰り返し単位から構成されており、各Aアームは1~3,000のエステル繰り返し単位から構成され、トリブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位の好ましいモル比は、0.5~22、好ましくは0.5~10、より好ましくは1~6の範囲であり;及び
-コポリマーがジブロックコポリマーA-Bである場合、Bは2~250のエチレンオキシド繰り返し単位から構成され、Aは1~3,000のエステル繰り返し単位から構成され、ジブロックコポリマー中のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位の好ましいモル比は、0.8~15、より好ましくは1~10の範囲である。
【0052】
本発明に使用されるコポリマーに関するさらなる詳細は、引用により本明細書中に組み込まれているWO2012/090070A1、WO2019016233A1、WO2019016234A1、WO2019016236A1及びWO2020/144239A1に見出すことができる。
本明細書に記載されるトリブロックPLA-PEG-PLAポリマーはPxRyと呼ばれ、ここで、xはPEG鎖のkDaでのサイズ(数平均分子量)を表し、yはLA/EOモル比である。本明細書に記載されるジブロックmPEG-PLAポリマーはdPxRyと呼ばれ、ここで、xはPEG鎖のkDaでのサイズ(数平均分子量)を表し、yはLA/EOモル比である。本明細書に記載される星状sPEG-PLAポリマーはszPxRyと呼ばれ、ここで、xはPEG鎖のkDaでのサイズ(数平均分子量)を表し、yはLA/EOモル比であり、zはアーム数である。
【0053】
酸性化合物は、3.00未満の水中のpKa(pKa(H2O))を有する。各酸性化合物は、好ましくは、-15.00~2.97、より好ましくは約-3.00~約2.90、任意に約0.50~約2.75、任意に約1.40~約2.75のpKa(H2O)を有する。
pKaは、酸解離定数又はKa値の負の対数である。pKaは、一定の温度、典型的には25℃で決定される。化合物のpKaは、所与の溶液中の酸の強度の尺度、すなわち溶解状態で遊離プロトンを放出するその能力であり、そのため溶液に特異的である。それは、化学反応:
HA<==>A-+H+
に従って定義できる(式中、HAは酸であり、A-は脱プロトン化された酸であり、H+は遊離プロトンである)。
【0054】
それは、以下の式により計算される:
【数1】
ここで、[X]は平衡にある溶解状態の化合物Xの濃度である。
そのため、pK
aが低いほど、溶液中の遊離プロトンの濃度が高い。
【0055】
3より低いpKa(H2O)を有する酸の例は、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸、酒石酸 シトラコン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ニコチン酸、ヨウ化水素酸、クロム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロ酢酸、シアノ酢酸、2-クロロプロパン酸、2-クロロブタン酸、4-シアノブタン酸、過塩素酸、リン酸又はこれらの組合せである。
【0056】
好ましい酸は、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸又は酒石酸である。
別の実施態様において、酸性化合物は、10より低い、好ましくは8より低いジメチルスルホキシド(DMSO)中のpKa(pKa(DMSO))を有する酸である。最近の計算化学研究により、種々の溶媒中の酸のpKaが計算できる(E. Rossini, D. Bocherarov及びE.W. Knappの文献「異なる溶媒間のpKa値の経験による変換及びパラメーターの解釈:水、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、及びメタノールへの応用(Empirical conversion of pKa values between different solvents and interpretation of the parameters: application to water, acetonitrile, dimethyl sulfoxide, and methanol)」(ACS Omega;2018); E. Rossini及びE.W. Knappの文献「静電変換による異なる溶媒中のpKa値の計算(Computing pKa values in different solvents by electrostatic transformation)」(Journal of Chemical Theory and Computation;2016))。
【0057】
10より低いpKa(DMSO)を有する酸の例は、ゲンチジン酸、塩化水素酸、シュウ酸、スルファミン酸又はスルホン酸である。
一実施態様において、保護性酸性化合物は、カルボン酸、任意にポリカルボン酸、任意にジ又はトリカルボン酸である。
別の実施態様において、保護性酸性化合物は無機酸である。
一実施態様において、保護性酸性化合物は、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、スルファミン酸、パモ酸又はこれらの組合せからなるリストから選択される。
【0058】
酸性化合物は、求核剤により引き起こされるポリエステル分解を防ぐのに充分であるが、酸により触媒されるポリマー分解の促進を避けるのに充分に低い量で存在すべきである。酸性化合物は、コポリマーを分解から保護するため保護性酸性化合物と称される。多くの研究が、コポリマー分解に対するpHの影響を示したが、低いpHはポリエステルのプロトン化を促進し、求核攻撃の発生を増加させる(L.N. Woodard及びM. A. Grunlanの文献「ポリエステル生体材料の加水分解による分解及び浸食(Hydrolytic degradation and erosion of polyester biomaterials)」(ACS Macro Letters;2018)、「生分解性ポリマー:原理及び応用(Degradable Polymers: Principles and Application)」, Kluwer academic publishers; 2002中のS. Li及びM. Vertの文献「脂肪族ポリエステルの生分解(Biodegradation of aliphatic polyesters)」)。
【0059】
いくつかの実施態様において、少なくとも1種の酸性化合物の量は、総組成物の0.005%(w/w)~10%(w/w)、任意に0.55%(w/w)~10%(w/w)、又は0.005%(w/w)~0.45%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)~4.0%(w/w)である。
本明細書で使用される通り、求核性化合物という用語は、ポリエステルのエステル結合を切断して、ポリマー断片化を、そのためポリマー及び製剤の分解を起こすことが可能な少なくとも1種の求核基を含む分子を指す。ポリマーを攻撃することが可能な求核基は、求電子剤又は求電子中心と反応できる1対の電子を提示する基である。求電子中心は、通常、最も電子不足である極性化合物の元素として定義される。典型的な求核基は、移動性水素原子を有する基を含む。
【0060】
当業者であれば求核性化合物を特定する方法を知っているだろうから、本発明は、引用された例にも、特定の求核剤にも限定されない。
典型的には、求核性化合物は、-SH、-OH、一級アミン(-NH2)、二級アミン(-NRH)、三級アミン(-NRR’)、複素環基、及びこれらの組合せから選択される1つ以上の官能基を含む。
一実施態様において、求核性化合物は医薬品有効成分である。代替実施態様において、組成物は、医薬品有効成分及び別な求核性化合物を含む。求核性化合物は、溶媒、共溶媒、溶解度促進剤、ポロゲン、又は相交換調節剤であり得る。
【0061】
本発明の組成物がAPIを含有する場合、それらはAPIの持続放出を提供する。用語「持続放出」は、医薬品有効成分が徐々に長期間にわたり放出され得ることを意味する。この持続放出は、線形的でも非線形的でもあり得て、典型的には、医薬組成物及び投与されるその量に応じて数日から1年以上続き得る。
【0062】
「医薬として活性な成分」は、病状、病気又は疾患又はその症状を治療し、予防し、及び/又は改善するための薬物又は医薬品を意味する。本願の目的には、用語「有効成分(active principle)」は「有効成分(active ingredient)」と同じ意味を有する。そのため、有効成分(active principle)、有効成分(active ingredient)、薬物、又は医薬品という用語は互換的に使用される。医薬品有効成分という用語又は「API」も使用される。本明細書で使用される薬物又は有効成分という用語は、非限定的に、動物の体又は植物において局所的又は全身に作用する生理的に又は薬理的に活性のある物質を含む。
【0063】
医薬として活性な成分の医薬として有効な量は、医薬として活性な成分、動物又は植物の病状の程度、及び医薬として活性な成分を送達するのに要する時間に応じて変わり得る。ポリマー溶液又は懸濁液が、ニードルと連結したシリンジによる注射に許容できる粘度を有する限り、及び動物又は植物に過量摂取させないでそれが効果的に病状を治療できる限り、ポリマー溶液に組み込まれる医薬として活性な成分の量に重大な上限はない。送達系に組み込まれる医薬として活性な成分の下限は、単純に、医薬として活性な成分の活性及び治療に必要な時間の長さに依存する。
【0064】
一実施態様において、医薬品有効成分は遊離塩基であるか、又は3より高いpKa(H2O)を有する酸の塩である。一実施態様において、医薬品有効成分は、オクトレオチド酢酸塩、リオチロニン、エスシタロプラム遊離塩基、アトルバスタチンカルシウム三水和物又はこれらの組合せである。
医薬品有効成分は、SH、-OH、一級アミン(-NH2)、-NRH(二級アミン)、-NRR’(三級アミン)、複素環基(式中、各R及び各R’は、独立に、C1~C10ヒドロカルビル基である)又はこれらの組合せなどの少なくとも1つの求核基を含む他の有効成分でもあり得る。
医薬品有効成分は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質であり得る。
【0065】
一実施態様において、求核性化合物は、アルコール、任意にC1~C8アルコール、任意にグリセロール、ソルビトール、メタノール、エタノール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、好ましくはメタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はこれらの混合物である。
一実施態様において、求核性化合物は、糖、二糖又は多糖、任意にスクロース、デキストロース、シクロデキストリン、キトサン又はこれらの混合物である。
一実施態様において、求核性化合物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、任意にリジン、アルギニン、ヒスチジン又はセリンである。
一実施態様において、求核性化合物は水である。
【0066】
一実施態様において、求核性化合物は、さらなる有機溶媒、すなわち上記のc)に定義された少なくとも1種の有機溶媒に加える溶媒、任意にピロリドン-2、グリコフロール、ピリジン、ニトロメタン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-,ジエムチルデカンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、2,4,6-コリジン又はこれらの混合物である。
一実施態様において、組成物は少なくとも1種の医薬品有効成分を含み、求核性化合物は、溶解度促進剤、ポロゲン又は相交換調節剤である。
溶解度促進剤は、組成物内の医薬品有効成分の溶解度を改善する。
溶解度促進剤は、生分解性有機溶媒c)と共に共溶媒であり得るか、又はそれに可溶性である固体化合物であり得る。
【0067】
溶解度促進剤は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール、ピリジン、ニトロメタン、トリメチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルデカンアミド、M,N-ジメチルオクタンアミド、2,4,6-コリジン及びこれらの混合物からなる群から選択されるさらなる有機溶媒又は共溶媒であり得る。
【0068】
一実施態様において、溶解度促進剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、シクロデキストリン及びこれらの混合物からなるリストから選択される。
別の実施態様において、求核性化合物はポロゲンとして作用して、インサイチュで形成するデポ内のポアの形成を調節する。
ポロゲンは、デポ内のポアのサイズ及び/又は数に影響を与えることにより、インサイチュで形成するデポからの医薬品有効成分及び/又は溶媒放出に作用できる。典型的には、ポロゲンは、デポ形成と同時に溶解してデポ内にポアを残し、デポからの拡散、典型的にはAPIの拡散を促進する、懸濁状態の化合物である。医薬品有効成分の放出プロファイルは、組成物内のそのような化合物の組込みにより調節され得る。
【0069】
別の実施態様において、求核性化合物は相交換調節剤であり、インサイチュで形成するデポと周囲の媒体の間の有機溶媒の交換を調節する。相交換調節剤は、周囲の媒体との溶媒交換及びそのためデポの生じた微細構造を調節することにより、インサイチュで形成されたデポからの活性医薬放出に影響を与え得る。
【0070】
ポロゲン又は相交換調節剤の例は、スクロースもしくはデキストロースなどの糖、二糖もしくは多糖、又はトリグリセリドなどの脂肪酸、又は植物油、又はC1~C8アルコールもしくはポリエチレングリコールなどのアルコールである。
一実施態様において、ポロゲン又は相交換調節剤は、糖、多糖又はアルコールからなるリストから選択される。
求核性化合物は、オクトレオチド酢酸塩、リオチロニン、エスシタロプラム遊離塩基、アトルバスタチンカルシウム三水和物、PEG1000、メタノール、プロピレングリコール又はこれらの混合物からなるリストから選択され得る。
【0071】
本発明の組成物は少なくとも1種の有機溶媒を含む。有機溶媒は、医薬として許容し得る溶媒又は生体適合性溶媒である。溶媒は、ヒト又は非ヒト動物への投与に好適である。典型的には、少なくとも1種の有機溶媒c)は、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール又はこれらの混合物、好ましくはDMSO、NMP及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0072】
酸性化合物のモル量は、求核性化合物のモル量に対して0.05%~300%、好ましくは0.1%~250%であり得る。一実施態様において、求核性化合物は少なくとも1つの-OH基を含有し、酸性化合物のモル量は、求核性化合物のモル量に対して100%以下、好ましくは求核性化合物のモル量に対して0.05%~100%である。一実施態様において、求核性化合物は、一級アミン又は二級アミンなどの少なくとも1つの窒素含有反応性基を含有し、酸性化合物のモル量は、求核性化合物のモル量に対して100%以上、好ましくは求核性化合物のモル量に対して100%~300%である。酸性化合物と求核性化合物との相対量は、実施例に述べられるモル比としても表すことができる。
【0073】
典型的には、医薬品有効成分の量は、総組成物の0.05%(w/w)~60%(w/w)、任意に0.05~20%(w/w)、任意に0.05~10%(w/w)、任意に0.05~5%(w/w)、任意に0.05~2%(w/w)である。
典型的には、有機溶媒の量は、総組成物の少なくとも20%(w/w)、任意に20~80%(w/w)、任意に20~60%(w/w)である。
本発明の組成物は非経口投与に好適である。用語「非経口投与」は、筋肉内、腹腔内、腹部内、皮下、静脈内及び動脈内を包含する。それは、皮内、空洞内、硝子体内、脳内、髄腔内、硬膜外、関節内、及び骨内投与も包含する。医薬組成物は、好ましくは、非経口投与に好適である。
【0074】
好ましい実施態様において、組成物は、ニードル及びシリンジを使用して、任意に注射装置を使用して注射される。対象に投与される組成物の注射の典型的な体積は、0.05mL~5mL又は0.1~1.5mLである。
対象は動物でも植物でもあり得る。用語「動物」は動物界の全メンバーを包含する。動物はヒト又は非ヒト動物であり得る。
本明細書で使用される通り、用語「植物」は植物界の全メンバーを包含する。
好ましい実施態様において、組成物は、室温又は2~8℃での少なくとも2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での少なくとも4週間保存の間安定である。
【0075】
組成物の安定性は、組成物の動的粘度を経時的に決定することにより測定できるが、その理由は、コポリマーの分解がより小さいコポリマー断片をもたらし、それが全体的な組成物粘度に影響し得るからである。
組成物の安定性は、APIの濃度を経時的に決定することにより測定できるが、その理由は、APIとコポリマー又はコポリマー分解副生成物との相互作用が、天然のAPIの減少を引き起こし得るからである。
組成物の経時的な安定性は、目視観察によっても、例えば組成物の色を標準に対して観察することによっても測定できる。
【0076】
或いは、組成物の安定性は、組成物のGPC分析を経時的に実施することによっても測定できるが、その理由は、コポリマーの分解がより小さいコポリマー断片をもたらし、コポリマー分子量分布に影響するからである。
一実施態様において、組成物中の医薬品有効成分の濃度は、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満低下する。
一実施態様において、組成物の動的粘度は、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、10%未満、好ましくは5%未満減少する。
【0077】
本発明のさらなる態様において、上述の医薬組成物を調製する方法であって、
i.先に定義された少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程;
ii.工程i)の生成物に、先に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)及び先に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程であって、任意に、求核性化合物b)が医薬品有効成分である工程;並びに
iii.工程ii)の生成物を均質化して、それにより医薬組成物を得る工程
を含むか、又はこれらの工程からなる方法が提供される。
【0078】
好ましい実施態様において、少なくとも1種の酸性化合物と少なくとも1種の求核性化合物とは、工程ii)の前に、塩も錯体も形成しない。本発明の一実施態様において、少なくとも1種の酸性化合物と少なくとも1種の求核性化合物とは、工程ii)の前に、接触も共に混合もされない。従来技術の方法に対する本発明の大きな利点は、求核性化合物が組成物の他の成分、特にコポリマーと混合される前に、酸性化合物を求核性化合物(APIであり得る)と反応させる初期の工程が必要とされないことである。本発明の一実施態様において、反応物の全ては単一工程で共に混合でき、酸は、最初に求核性化合物と反応する必要なく、その安定化効果を達成できる。
好ましい実施態様において、工程ii)は、成分を単一工程で混合する工程からなる。
【0079】
別の態様において、本発明は、上述の医薬組成物を調製する方法であって、
i.いずれかの前述の請求項に定義された少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程;
ii.工程i)の生成物に、先に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)又は先に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加え、次いで生成物を均質化する工程;
iii.少なくとも1種の酸性化合物d)が工程ii)に加えられる場合、その後に、先に定義された少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程;又は少なくとも1種の求核性化合物b)が工程ii)に加えられる場合、その後に、先に定義された少なくとも1種の酸性化合物d)を加える工程;及び
iv.工程iii)の生成物を均質化して、それにより医薬組成物を得る工程
を含むか、又はこれらの工程からなり、任意に、求核性化合物b)が医薬品有効成分である方法を提供する。
【0080】
換言すると、工程ii)において、少なくとも1種の酸性化合物d)は工程i)の生成物に加えられ、均質化後に、求核性化合物b)が組成物に加えられるか、又は化合物b)が加えられ、次いで化合物d)が加えられる逆の工程が起こる。これも、求核性化合物の塩又は錯体の初期の形成を限定又は回避する。
本発明の実施態様において、求核性化合物は医薬品有効成分ではなく、医薬品有効成分は工程i)の後に加えられる。
【0081】
一実施態様において、医薬品有効成分は前もって、有機溶媒に溶解されている。一実施態様において、酸性化合物は、前もって、有機溶媒に溶解されている。一実施態様において、求核性化合物は、前もって、有機溶媒に溶解されている。
医薬品有効成分、酸性化合物又は求核性化合物の目標濃度が低すぎるので薬剤の正確な秤量が可能でない可能性があるので、これらの実施態様は有益である。したがって、より高い濃度の濃縮液が調製される。或いは、又は加えて、工程i)のビヒクルの粘度が、組成物を均質化する難しさをもたらした可能性がある。最初に、ある量の医薬品有効成分、酸性化合物又は求核性化合物を溶媒に溶解させることにより、発明者らは、それによって、第1の均質溶液又は懸濁液を得て、次いで、それをより容易に工程i)のビヒクルと混合することができる。
【0082】
一実施態様において、工程iii.又はiv.に得られた医薬組成物は濾過される。
さらなる態様において、先に定義された方法により得ることができるか、又は得られた医薬組成物が提供される。
製剤の均質化は、容器をローラーミキサー上又はマグネティックスターラー上に配置することにより得られ得る。
ポリマー性ビヒクル又は医薬組成物は、濾過され得て、好ましくは濾過により滅菌され得る。滅菌の代替方法は、当業者により使用され得る。
さらなる態様において、先に定義された方法により得ることができるか、又は得られた医薬組成物が提供される。
【0083】
定義によれば、及び本明細書で使用される通り、「粘度」は、流動に対する流体の抵抗及びせん断応力又は引張強度による段階的な変形の尺度である。それは、動いている流体の内部摩擦を説明する。流体に関して、それは「厚さ」の非公式な概念に相当する。「動的粘度」とは、力を加えられた状態の流体の流動に対する抵抗の尺度を意味する。当業者であれば、本発明の医薬組成物内のポリエステル部分の分解がその動的粘度の変化を引き起こすだろうことを理解するだろう。特に、より小さなポリエステル鎖の生成は、典型的には、医薬組成物の動的粘度の減少を引き起こすだろう。
【0084】
動的粘度は、コーンプレート測定系を備えたAnton Paar Rheometerを使用して決定される。典型的には、およそ700μLの試験される製剤が測定プレート上に配置される。温度は+25℃に制御される。使用される測定系は、50mmの直径及び1度の円錐角度(CP50-1)を有するコーンプレートである。動作範囲は10~1000s-1である。製剤は、ポジティブディスプレイスメントピペットを使用して、熱制御された測定プレートの中心に配置される。測定系が下ろされ、0.104mmの間隙が測定系と測定プレートの間に残される。21の粘度測定点が、10~1000s--1せん断速度範囲にわたり決定される。与えられる値は、曲線のプラトーの中央で得られた値であり、粘度プロファイル、典型的には100s-1を表す。
【0085】
最初に製剤された組成物の、25℃で測定された動的粘度は、典型的には1~5000mPa.s、好ましくは1~2000mPa.s、より好ましくは10~500mPa.s又は500~2000mPa.sである。
医薬品有効成分量又は濃度は、「薬物含量」、又は「アッセイ」とも称され、医薬組成物内の医薬品有効成分の濃度であり、総組成物の重量パーセンテージ(%w/w)として表される。それは、組成物調製の間に記録された質量に基づく理論的な医薬品有効成分の回収パーセンテージとして計算できる。それはまた、製剤再構成後に測定された含量に対して正規化できる。
【0086】
医薬品有効成分の量又は濃度は、液体クロマトグラフィーシステムを使用して測定できる。使用される溶離条件及びカラムは医薬品有効成分に適合しなければならないが、当業者には周知だろう。典型的には、Watersから得られたUV検出器及び分析カラムを有するWaters Acquity UPLCシステムを使用できる。
安定な医薬組成物は、初期の分析と比べて、10%未満の変動、好ましくは、5%未満の変動を有する薬物含量及び動的粘度値を提示しなければならない。
一実施態様において、本発明の医薬組成物は、保存条件下でその調製後少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間安定である。
典型的には、本発明の組成物は、調製後、室温で(20~25℃)又は冷蔵条件下で(2~8℃、典型的には4℃)保存される。
【0087】
実施態様が言葉「含む(comprising)」と共に記載される場合はいつでも、「からなる(consisting of)」及び/又は「から基本的になる(consisting essentially of)」に関して記載される他の面で類似の実施態様は含まれる。
本開示に引用される参考文献の全ては、引用により全体として本明細書中に組み込まれている。さらに、本明細書で引用又は言及されるあらゆる製品のあらゆる製造業者の説明書又はカタログは引用により組み込まれる。引用により本文に組み込まれた文書又はその中のあらゆる教示は本発明の実施において使用できる。引用により本文に組み込まれた文書は、従来技術であると認められない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】室温で2日後の製剤F19、F20、F21、F22、F23及びF24のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。結果は、コポリマー含量が結果変動性のみに影響し、経時的な薬物回収率には影響しないことを示す。パモ酸はAPI分解を著しく減少させる。この期間にわたり検査された2つの酸含量の間に差異は観察されない。
【
図2】室温で10日後の製剤F22、F30、F31、F34及びF35のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。結果は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドクサート、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)又はブチレンヒドロキシトルエン(BHT)の添加が、経時的な薬物回収率に全く影響しないことを示す。
【
図3】室温で10日後の製剤F22、F23、F32、F33、F37、F38及びF53のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。データは、製剤への酸の添加が、対照製剤と比べて薬物回収率を増加させることを指摘する。一定の等モルのオクトレオチド/酸比で、選択された酸に応じて異なるレベルの回収率が得られ、パモ酸及びシュウ酸が時間と共に最高の薬物回収率を提示する。
【
図4】室温で10日後の製剤F22、F23、F33、F37、F49、F50及びF51のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。データは、3種の検査された酸(パモ酸、ギ酸及びシュウ酸)で、酸含量がオクトレオチド回収率に影響することを実証する。より高いペプチド回収率が、より高い酸添加量と共に測定される。
【
図5】室温で10日後の製剤F22、F23及びF52のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。結果は、酸のプロトン化状態が経時的なオクトレオチド回収率に非常に影響し、パモ酸塩が対照製剤と同じ薬物回収率レベルを引き起こすことを実証する。
【
図6】40℃で1か月及び2か月後の製剤F17、F18、F25、F26、F27及びF39の粘度の展開。強制分解試験は実施例3に記載される通り実施された。結果は、対照オクトレオチド製剤(F39)の粘度が、40℃で1か月後にその初期のレベルの半分から低下し、プロピレングリコールの存在下(F27)でさらに低下したが、パモ酸の存在下で粘度低下が減少することを示す。
【
図7】40℃で1か月及び2か月後の製剤F17、F18、F25、F26、F27及びF39のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。データは、天然のペプチドを、40℃で1か月後に、対照製剤(F39)又はプロピレングリコールのみを含有する製剤(F27)では検出できなかったが、1.5又は5%のパモ酸の存在下でプロピレングリコールの有無にかかわらず80及び90%超が2か月後に回収されることを指摘する。
【
図8】4℃で2及び4週間後の製剤F122、F123及びF124のオクトレオチド含量の展開。薬物回収率は実施例3に記載される通り決定された。結果は、シュウ酸を有する製剤では、薬物回収率が、試験の長さ全体の間、安定であり100%に近いが、対照製剤F123では、薬物含量がわずか2週間後に30%未満であることを示す。
【
図9】試験開始時並びに4℃で2及び4週間後の製剤F123のインビトロ放出プロファイル。安定性試験及びIVR検査は実施例3に記載される通り実施された。API放出は、対応する時点で測定された薬物含量に従って正規化された。異なるプロファイルが各時点で得られる。2及び4週間保存の後、残存APIは製剤分解のためデポからより速く放出される。
【
図10】室温で24時間にわたる製剤F32、F46、F47及びF48のリオチロニン含量の展開。薬物含量は実施例4に開示される通り測定された。結果は、対照製剤F32又はCaCl
2を有する製剤F48に関して、薬物回収率が、製剤再構成3時間後で減少し始めることを示す。酸(シュウ酸又はパモ酸、それぞれF46及びF47)の存在下で、薬物回収率は、少なくとも24時間まで安定である。
【
図11】室温で7日後の製剤F39、F50、F51、F52、F53 F54、F55及びF56のリオチロニン含量の展開。薬物含量は実施例4に開示される通り測定された。データは、0.025~0.50%のシュウ酸含量が、対照製剤F39と比べて薬物回収率レベルに影響を有することを示す。特に0.25及び0.50%のシュウ酸で(F55及びF56)、API含量は、少なくとも7日までその初期値の95%に近いままである。
【
図12】室温又は4℃での2週間までの保存後の製剤F57、F58及びF59のリオチロニン含量の展開。安定性試験は実施例4に開示される通り実施された。結果は、室温で又は4℃で保存された対照製剤F57で薬物回収率の減少が観察されるが、製剤F58及びF59のAPI含量が、0.10又は0.25%のシュウ酸の存在下でその初期値の95%に近いままであることを指摘する。
【
図13】50℃で2及び4週間後のビヒクルV55、V56、V58、V59、V61、V62、V64及びV65の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。結果は、コポリマーの構造(直鎖又は星状、それぞれV58及びV59)が何であれ、プロピレングリコールの存在下で粘度の低下が時間と共に観察されることを示す。しかし、パモ酸をビヒクルにさらに加える場合(V64及びV65)、粘度低下は減少する。軽微な粘度低下が酸のみの存在下で観察される(V61及びV62)。
【
図14】50℃で2及び4週間後のビヒクルV54、V57、V60及びV63の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。
図13に関して、より低いコポリマー含量で、プロピレングリコールにより引き起こされる粘度低下(V57)は、パモ酸(V63)の添加により著しく減少する。軽微な粘度低下がパモ酸のみ(V60)の存在下で認められる。
【
図15】50℃で2及び4週間後のビヒクルV55、V58、V61、V64、V66、V67、V71、V72、V86、V87、V92及びV93の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。結果は、0.26%(w/w%)以下の濃度のパモ酸のみの存在下で、ビヒクルが安定であることを実証する。さらに、プロピレングリコールとパモ酸が同時に存在する場合、プロピレングリコールにより引き起こされるポリマー分解は、低いパモ酸含量でさえも著しく減少する。
【
図16】50℃で2及び4週間後のビヒクルV55、V58、V68、V69、V70、V73、V74、V75、V88、V89、V94及びV95の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。結果は、0.1%(w/w%)以下の濃度のシュウ酸のみの存在下で、ビヒクルが安定であることを実証する。さらに、プロピレングリコールとシュウ酸が同時に存在する場合、プロピレングリコールにより引き起こされるポリマー分解は、組成物が安定である0.01%(w/w%)(V95)などの低いシュウ酸含量でさえも著しく減少する。
【
図17】50℃で2及び4週間後のビヒクルV55、V58、V78、V82、V90、V91、V96及びV97の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。結果は、0.18w/w%以下の濃度のサリチル酸のみの存在下で、ビヒクルが安定であることを実証する。さらに、プロピレングリコールとサリチル酸が同時に存在する場合、プロピレングリコールにより引き起こされる分解は非常に減少する。
【
図18】50℃で2及び4週間後のビヒクルV68、V73、V76、V77、V78、V79、V80、V81、V82、V83、V84及びV85の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。データは、近い重量濃度で、異なるpK
aの酸がビヒクル粘度に対して類似の影響を有することを指摘する。しかし、一定の酸/プロピレングリコールモル比でプロピレングリコールをさらに加える場合、酸は、ビヒクル粘度に対して異なる影響を有する。pK
aが低いほど(表1に開示される通り)、プロピレングリコールの存在下での粘度低下は小さい。
【
図19】50℃で2及び4週間後のビヒクルV66、V68、V71、V73、V77、V78、V80、V82、V83及びV85の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。データは、一定の酸/プロピレングリコールモル比で、類似の結果がパモ酸、サリチル酸、スルファミン酸及びシュウ酸により得られることを指摘する。より高い粘度低下がプロピレングリコール及びマロン酸の存在下で観察され、後者はこれらの酸から最高の公知のpK
a(DMSO)を有する。
【
図20】それぞれ0;0.1/100;1/100又は5/100の酸/PEG1000モル比に等しいシュウ酸含量で添加されたビヒクルV103、V105、V106及びV107の、50℃で2及び4週間後の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。データは、PEG1000により引き起こされるポリマー分解がシュウ酸の存在下で減少し、0.01%(w/w%)のシュウ酸を有するビヒクルが試験終了時に分解の証拠を全く提示しないことを指摘する。
【
図21】それぞれ0;0.1/100;1/100又は5/100の酸/MeOHモル比に等しいシュウ酸含量で添加されたビヒクルV104、V108、V109及びV110の、50℃で2及び4週間後の粘度の展開。強制分解試験は実施例5に開示される通り実施された。データは、MeOHにより引き起こされるポリマー分解がシュウ酸の存在下で、注目すべきことに0.03%(w/w%)の酸を含有する製剤において非常に減少することを指摘する。より多量のシュウ酸により、より高い粘度低下が測定される。
【
図22】80℃で1及び2週間後の製剤F111、F112、F114、F115、F116、F117、F118及びF119の粘度の展開。強制分解試験は実施例6に開示される通り実施され、粘度は試験開始時の値に対して正規化された。データは、全製剤が、エスシタロプラム形態又はシュウ酸含量が何であれ、粘度の強い低下を提示することを指摘する。対照エスシタロプラム遊離塩基製剤F111と比較すると、0.5/1~2/1のモル比での酸の添加は、粘度低下を減少させる。特に、1.5/1のモル比でシュウ酸を有する製剤F118は最低の粘度低下を提示する。
【
図23】室温で2及び4週間又は4℃で4週間後の製剤F111、F112及びF118の粘度の展開。安定性試験は実施例6に開示される通り実施された。結果は、シュウ酸の添加がエスシタロプラムにより引き起こされる分解を減少させており、製剤F112(エスシタロプラムシュウ酸塩を有する)及びF118の粘度低下が類似であることを示す。さらに、保存温度の低下により粘度低下が減速される。
【
図24】試験開始時及び室温での2又は4週間保存後の製剤F111のインビトロ放出プロファイル。IVR検査は実施例6に開示される通り実施された。API放出は、対応する時点で測定された薬物含量に従って正規化された。データは、わずかな加速が、F111の2及び4週間保存後の2日から観察されることを示す。
【
図25】50℃で1及び2週間保存後の製剤F125、F126、F127、F128、F129及びF130のアトルバスタチン含量の展開。強制分解試験は実施例7に詳述される通り実施された。結果は、0.70~1.40%のシュウ酸の添加が時間と共にアトルバスタチン回収を増加させたことを指摘する。それどころか、より低い又はより高い含量はアトルバスタチン回収率を減少させた。
【
図26】50℃で1及び2週間保存後の製剤F125、F128、F129、F132、F133、F134及びF135のアトルバスタチン含量の展開。強制分解試験は実施例7に詳述される通り実施された。結果は、シュウ酸/アトルバスタチンモル比を90/100(1.26%シュウ酸)まで増加させることにより、API回収の増加が観察されることを指摘する。この閾値を超えると、より低いAPI含量が時間と共に測定される。
【
図27】50℃で1及び2週間保存後の製剤F125、F131、F134、F136、F137、F138、F143及びF144のアトルバスタチン含量の展開。強制分解試験は実施例7に詳述される通り実施された。結果は、アトルバスタチンとPEG-PLAコポリマーの同時の存在がAPI分解を引き起こしており、初期API含量の30%より低い回収率であることを指摘する。一定量のシュウ酸の存在下で、ポリマータイプ及び/又は構造が何であれ、薬物回収率の増加が観察され、60%に近い回収率である。
【
図28】50℃で1及び2週間保存後の製剤F125、F134、F139及びF140のアトルバスタチン含量の展開。強制分解試験は実施例7に詳述される通り実施された。結果は、異なるレベルの分解が溶媒の種類に応じて得られるが、シュウ酸がアトルバスタチン分解をDMSO及びNMPの両方の中で減少させることを指摘する。
【
図29】50℃で1及び2週間保存後の製剤F125、F135、F141及びF142のアトルバスタチン含量の展開。強制分解試験は実施例7に詳述される通り実施された。結果は、API分解速度が初期API添加量により影響されること、及びシュウ酸/API比が初期API含量に応じて調整される必要があることを指摘する。
【
図30】室温で2及び4週間保存後の製剤F125、F134及びF135のアトルバスタチン含量の展開。安定性試験は実施例7に記載される通り実施された。結果は、製剤内のシュウ酸の添加が95%を超える薬物回収率をもたらす一方で、65%未満のAPIが対照製剤中で回収されたことを指摘する。
【
図31】室温で2及び4週間保存後の製剤F125、F134及びF135の粘度の展開。安定性試験は実施例7に記載される通り実施された。結果は、シュウ酸の添加が時間と共により少ない粘度低下を引き起こすことを指摘する。興味深いことに、組成が0.14%のシュウ酸だけ異なるF134とF135との間に明らかな違いが観察できる。
【
図32】室温で2及び4週間保存後の製剤F125の放出プロファイルの展開。安定性試験は実施例7に記載される通り実施された。API放出は、対応する時点で測定された薬物含量に従って正規化された。異なるプロファイルが各時点で得られる。4週間保存後に、分解した製剤から作られたデポの脆さのため、残存APIはより速く放出され、より高い変動性が観察される。
【
図33】オクトレオチド製剤F162及びF165の皮下投与後のラット血漿濃度プロファイル。インビボPK試験は実施例8に記載される通り実施された。結果は、類似のオクトレオチド持続放出プロファイルが、検査された2種の製剤により、336時間にわたりラットで得られたことを指摘する。
【
図34】オクトレオチド製剤F122及びF123の皮下投与後のラット血漿濃度プロファイル。インビボPK試験は実施例9に記載される通り実施された。結果は、オクトレオチドの持続放出が、検査された2種の製剤により、240時間にわたりラットで得られたことを指摘する。
【0089】
本発明は、ここで、以下の項を参照してさらに説明されるだろう。
1.a)式:
B(A)n
を有する少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマー
(式中、Bはポリエーテルを表し、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、各Aはポリエステルアームを表し、nは1~8の整数である);
b)少なくとも1種の求核性化合物;
c)少なくとも1種の有機溶媒;及び
d)10%(w/w)までの少なくとも1種の3未満のpKa(H2O)を有する酸性化合物
を含むか、又はそれらからなる医薬組成物。
【0090】
2.少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が
i.PEGを含むマルチアームポリエーテルである中心核に結合した3~8つのポリエステルアームを有するマルチアームコポリマーであって、各ポリエーテルアームが2~150のエチレンオキシド繰り返し単位を有し、各ポリエステルアームが4~200の繰り返し単位を有するマルチアームコポリマー;及び
ii.式:
Av-Bw-Ax
を有するトリブロックコポリマー(式中、Aはポリエステルであり、BはPEGであり、v及びxは1~3,000の範囲の繰り返し単位の数であり、wは3~300の範囲の繰り返し単位の数であり、v=x又はv≠x);及び
iii.式:
Cy-Az
を有するジブロックコポリマー(式中、Aはポリエステルであり、CはエンドキャップされたPEGであり、y及びzはyが2~250の範囲でzが1~3,000の範囲の繰り返し単位の数である);
iv.又はこれらの任意の組合せ
から選択される、項1に記載の医薬組成物。
【0091】
3.室温で液体であり、水性環境中に注射されると半固体又は固体インプラントを形成する、項1又は2に記載の医薬組成物。
4.酸性化合物d)が、無機酸又はカルボン酸、任意にポリカルボン酸、任意にジ又はトリカルボン酸である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0092】
5.酸性化合物d)が、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、ジヒドロキシフマル酸、塩化水素酸、臭化水素酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、パモ酸、リン酸、フタル酸、ピルビン酸、スルホン酸、硫酸もしくは酒石酸又はこれらの組合せ、好ましくはサリチクル酸、シュウ酸、マロン酸、スルファミン酸、パモ酸又はこれらの任意の組合せから選択される、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0093】
6.ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)のポリエステルが、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)又はポリ(ε-カプロラクトン-co-乳酸)(PCLA)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
7.エンドキャップされたポリエチレングリコールがメトキシ-ポリエチレングリコールである、項2~6のいずれかに記載の医薬組成物。
8.ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)のポリエステルがポリ(D,L-乳酸)(PLA)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0094】
9.ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、1~10、好ましくは2~6のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比を有するマルチアームコポリマーi)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
10.ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、中心核が、PEGとポリオールから得ることができるマルチアームポリエーテルであるマルチアームコポリマーi)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
11.ポリオールが少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、任意に、ポリオールが、少なくとも3つのヒドロキシル基、任意に3、4、5、6又は8つのヒドロキシル基により置換されている炭化水素である、項10に記載の組成物。
【0095】
12.ポリオールが、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ジ(トリメチロールプロパン(diTMP) ソルビトール、又はイノシトールである、項10又は項11に記載の組成物。
13.ポリオールが1つ以上のエーテル基をさらに含む、項10~12のいずれかに記載の組成物。
14.少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)が、トリブロックコポリマーii)とジブロックコポリマーiii)との混合物である、項2~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【0096】
15.トリブロックコポリマーii)のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比が、0.5~22、好ましくは0.5~10、最も好ましくは1~6である、項2~8及び14のいずれかに記載の医薬組成物。
16.ジブロックコポリマーiii)のエチレンオキシド繰り返し単位に対するエステル繰り返し単位のモル比が、0.8~15、好ましくは1~10である、項2~8及び14のいずれかに記載の医薬組成物。
17.求核性化合物b)が、-SH、-OH、-NH2、-N=H、三級アミン、複素環基及びこれらの組合せから選択される1つ以上の官能基を含む、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0097】
18.求核性化合物b)が医薬品有効成分である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
19.医薬品有効成分が、オクトレオチド酢酸塩、リオチロニン、エスシタロプラム遊離塩基、アトルバスタチンカルシウム三水和物又はこれらの組合せからなる群から選択される、項18に記載の医薬組成物。
20.求核性化合物が医薬品有効成分ではなく、組成物が少なくとも1種の医薬品有効成分をさらに含む、項1~17のいずれかに記載の医薬組成物。
【0098】
21.求核性化合物b)が、アルコール、任意にC1~C8アルコール、任意にグリセロール、ソルビトール、メタノール、エタノール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、好ましくはメタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はその誘導体もしくは混合物である、項20に記載の医薬組成物。
22.求核性化合物b)が、糖、二糖又は多糖、任意にスクロース、デキストロース、シクロデキストリン、キトサン又はこれらの混合物である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
23.求核性化合物b)が、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド、任意にリジン、アルギニン、ヒスチジン又はセリンである、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0099】
24.求核性化合物b)が水である、項20に記載の医薬組成物。
25.求核性化合物b)が、さらなる有機溶媒、任意にピロリドン-2、グリコフロール、ピリジン、ニトロメタン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-,ジエムチルデカンアミド、N,N-ジメチルオクタンアミド、2,4,6-コリジン又はこれらの混合物である、項20に記載の医薬組成物。
26.求核性化合物b)が、溶解度促進剤、ポロゲン又は相交換調節剤である、項20~25に記載の医薬組成物。
【0100】
27.少なくとも1種の有機溶媒c)が、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ジメチルイソソルビド(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、安息香酸エチル、乳酸エチル、グリセロールホルマール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ピロリドン-2、トリアセチン、トリブチリン、トリプロピオニン、グリコフロール又はこれらの混合物、好ましくはDMSO、NMP及びこれらの混合物からなる群から選択される、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0101】
28.酸性化合物d)が、10より低い、好ましくは8より低いpKa(DMSO)を有する、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
29.少なくとも1種の酸性化合物d)の量が、総組成物の0.005%(w/w)~10%(w/w)、任意に0.55%(w/w)~10%(w/w)、又は0.005%(w/w)~0.45%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)~4.0%(w/w)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
30.酸性化合物d)のモル量が、求核性化合物b)のモル量に対して0.05%~300%、好ましくは0.1%~250%である、前述の項のいずれかに記載の医薬組成物。
【0102】
31.求核性化合物b)が少なくとも1つの-OH基を含有し、酸性化合物d)のモル量が、求核性化合物のモル量に対して0.05%~100%である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
32.求核性化合物b)が-NH2又は=NHなどの少なくとも1つの窒素含有反応性基を含有し、酸性化合物d)のモル量が、求核性化合物のモル量に対して100%より高く、好ましくは求核性化合物の量に対して100%~300%である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
33.ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)の総量が、総組成物の2%(w/w)~80%(w/w)、任意に10~50%(w/w)、任意に20~40%(w/w)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0103】
34.ポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)がマルチアームコポリマーi)であり、マルチアームコポリマーの量が、総組成物の20~60%(w/w)、任意に20~50%(w/w)である、項2~13又は17~33のいずれかに記載の医薬組成物。
35.ジブロックコポリマーの量が、総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)であり;トリブロックコポリマーの量が、総組成物の2~30%(w/w)、任意に10~30%(w/w)、任意に10~20%(w/w)である、項2~8又は14~33のいずれかに記載の医薬組成物。
【0104】
36.医薬品有効成分の量が、総組成物の0.05%(w/w)~60%(w/w)、任意に0.05~20%(w/w)、任意に0.05~10%(w/w)、任意に0.05~5%(w/w)、任意に0.05~2%(w/w)である、項18~35のいずれかに記載の医薬組成物。
37.有機溶媒の量が、総組成物の少なくとも20%(w/w)、任意に20~80%(w/w)、任意に20~60%(w/w)である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0105】
38.室温又は2~8℃での少なくとも2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での少なくとも4週間保存の間安定である、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
39.組成物中の医薬品有効成分の濃度が、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満減少する、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0106】
40.組成物の動的粘度が、室温又は2~8℃での2週間保存、好ましくは室温又は2~8℃での4週間保存後に、最初に製剤された組成物に対して、10%未満、好ましくは5%未満低下する、前述のいずれかの項に記載の医薬組成物。
【0107】
41.前述のいずれかの項に記載される医薬組成物を調製する方法であって、
i.前述のいずれかの項に定義される少なくとも1種のポリエーテル-ポリエステルコポリマーa)を、少なくとも1種の有機溶媒c)に溶解させる工程、それに続いて
ii.工程i)の生成物に、前述のいずれかの項に定義される少なくとも1種の酸性化合物d)及び前述のいずれかの項に定義される少なくとも1種の求核性化合物b)を加える工程であって、任意に、求核性化合物b)が医薬品有効成分である工程、それに続いて
iii.製剤を均質化して、それにより医薬組成物を得る工程
からなる方法。
【0108】
42.求核性化合物が医薬品有効成分ではなく、工程ii)が医薬品有効成分を加えることをさらに含む、項41に記載の方法。
43.医薬品有効成分が、前もって、有機溶媒c)に溶解されている、項41又は42に記載の方法。
44.酸性化合物d)が、前もって、有機溶媒c)に溶解されている、項41~43に記載の方法。
45.求核性化合物b)が、前もって、有機溶媒c)に溶解されている、項41~44のいずれかに記載の方法。
46.工程iii.で得られた医薬組成物が濾過される、項41~45のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0109】
(実施例1:材料)
コポリマーを、引用により本明細書中に組み込まれているUS 6,350,812に記載される方法に従い、わずかな改変を加えて合成した。典型的には、必要な量のPEG(トリブロックコポリマーを与える)又はメトキシ-PEG(ジブロックコポリマーを与える)又は4-アームPEG(4-アーム星状コポリマーを与える)を65℃に加熱し、反応器中で、2時間真空下で乾燥させた。DL-ラクチド(目標とするLA/EOモル比に相当する)及び触媒(ラクチドの量の1/1000など)を加えた。反応混合物を、最初に、数回の短い真空/N2サイクルにより脱水した。反応混合物を140℃で加熱して、真空下で迅速に脱気した。反応を数時間140℃で一定の窒素流(0.2bar)下で実施した。反応物を室温に冷却し、その内容物をアセトンに溶解させ、次いでエタノールによる沈殿に付した。その後に、得られた生成物を減圧下で乾燥させた。
【0110】
本明細書に記載されるトリブロックPLA-PEG-PLAポリマーはPxRyと呼ばれ、xはPEG鎖のkDaでのサイズ(数平均分子量)を表し、yはLA/EOモル比である。本明細書に記載されるジブロックmPEG-PLAポリマーはdPxRyと呼ばれ、xはPEG鎖のkDaでのサイズ(数平均分子量)を表し、yはLA/EOモル比である。本明細書に記載される星状sPEG-PLAポリマーはszPxRyと呼ばれ、xはPEG鎖のkDaでのサイズ(数平均分子量)を表し、yはLA/EOモル比であり、zはアーム数である。
【0111】
得られた生成物を、1H NMRにより、その残留ラクチド含量に関して、及びR比の決定に関して特性化した。1H NMR分光法はBrucker Advance 300 MHz分光計を使用して実施した。全ての1H NMRスペクトログラムで、topspinソフトウェアを、ピークの分析及びそれらの分析のために使用した。ケミカルシフトは、CDCl3のδ=7.26ppm溶媒値を基準とした。
【0112】
乳酸単位とエチレンオキシド単位の間の比(LA/EO)を説明するR比の決定のために、全てのピークを別々に積分した。シグナルの強度(積分値)は、シグナルを構成する水素の数に直接比例する。R比(LA/EO比)を決定するために、積分値は、均質で同じ数のプロトンを表す必要がある(例えば、全てのシグナル値は1Hに関して決定する)。次いで、PLAの1つの特性ピーク及びPEGの特性ピークを使用して、LA/EO比を決定する。この方法は、ポリマー末端官能基に関して得られるシグナルが無視できる1000g/molを超えるPEGの分子量に関して有効である。
【0113】
(実施例2:ビヒクル及び製剤調製)
典型的には、パスツールピペットを使用して、DMSOを、前もって秤量したコポリマーの上に加えることにより、ビヒクル(APIが存在しない医薬組成物)を調製した。混合物を、ローラーミキサー上で、室温で、均質な溶液が得られるまで撹拌した。
製剤のために、APIを、別の空のタールを塗られた(tarred)ガラスバイアルに量り入れた。実験の開始の30分前に、必要な量のビヒクルをその上に加えた。バイアルをおよそ30秒間ボルテックスにかけて、ローラーミキサー上に、室温で、最初の分析まで配置した。
【0114】
必要な場合、追加の賦形剤(アルコール又は酸)を、試験開始日に、製剤再構成の前に直接ビヒクルバイアルに加えるか、又は、最初に、それらを、DMSOを含有する溶液に溶解させることにより加えた。
リオチロニン系製剤の場合、ローラーミキサー上に配置する前に、バイアルに窒素を流した。
アトルバスタチン系製剤の場合、より高いAPI含量のため、ビヒクル添加の後、検査される製剤を1分間ボルテックスにかけ、ローラーミキサー上のおよそ1時間のより長い均質化時間が必要であった。
検査された酸を表1に列記する。
【0115】
【0116】
(実施例3:オクトレオチド製剤分解及び安定性試験)
オクトレオチド酢酸塩製剤内の酸添加の影響を、表2に詳述される分解及び安定性試験により評価した。
【0117】
【0118】
検査物品は、実施例2に記載される通り調製した。10日より長い試験では、ビヒクル及び製剤を、時点の数に従ってさらに小分けした。
分析の詳細な説明を以下に与える。
API含量決定
薬物含量決定を、ビヒクル添加の30分後及び表2に開示された異なる所定の時点で製剤に対して実施した。
【0119】
アッセイを以下に記載の通り実施した。
・およそ120μLの製剤を23G *1”のニードルを有する0.5mLシリンジ内に引き抜き、全ての気泡を除いた。
・製剤を収容するシリンジをはかりに置き、はかりで風袋計量した。
・40μLの製剤をラベル付き50mLの空のfalconチューブに注入した。
・シリンジを再び秤量し、falconチューブに注入された正確な製剤質量を記録した。
・製剤を4mLのHPLCグレードのアセトニトリルに溶解させ、完全な溶解まで溶液をボルテックスにかけた。
・16mLのH2O+0.1%TFAを、各Falconチューブにさらに加えた。
・完全な均質化まで、溶液をボルテックスにかけた。
・1mLの各試料を抜き取り、1.5mL Eppendorfチューブに入れた。
・Eppendorfチューブを5分間3,500rpmで遠心分離し、次いで、800μLの透明な上清を1mL HPLCガラスバイアルに移した。
・バックアップ試料を実験の最後まで+4℃で保存した。
【0120】
API含量は、適切なLC方法を使用して決定した。薬物含量分析を三連で実施した。結果を回収率%として表し、製剤調製の間に秤量した質量から計算された実験薬含量を基準とする。
目視観察:
ビヒクル及び製剤を各時点で目視観察し、着色標準と比較した。
【0121】
粘度分析:
動的粘度は、50mmの直径及び1度の円錐角度を有するコーンプレート測定系を備えたAnton Paar Rheometerを使用して決定した。ボルテックスにかけた後、製剤を熱制御された測定ペルチェプレートの中心に配置した。測定系を下げ、測定系と測定プレートの間に0.104mmの間隙を残した。次いで、21の粘度測定ポイントを、10~1,000s-1せん断速度範囲にわたって決定した。所与の粘度データは、曲線プラトーの平均値に相当する100s-1のせん断速度で計算されたものである。分析は、三連又は二連で実施した。
【0122】
IVR:
100μLの検査物品を、前もってボルテックスにかけた対応するガラスバイアルから抜き取り、18Gニードルを有する0.5mL Codanシリンジに入れた。シリンジを洗浄し、風袋計量し、ニードルを除去して、製剤を、20mLのKRT-1Xを事前に充填してあるバイアルに直接注入した。ポリマー沈殿が起こると、デポをシリンジから分離して、シリンジを再度秤量した。試料質量を記録した。IVR検査を三連で実施し、全てのデポが形成されると、ガラスバイアルをスターラー上に37℃で配置した。
【0123】
各所望の時点で、およそ2mLの緩衝液を、全体的緩衝液交換の前にガラスバイアルから抜き取った。試料を0.2μm親水性(hydrophilic)に通して濾過して1.5mL HPLCガラスバイアルに入れ、次いで適切なLC方法を使用して分析した。
表3は、検査されたオクトレオチド酢酸塩製剤の組成を開示する。
【0124】
【0125】
図2~5は、室温で(RT)10日後の検査された製剤の経時的な薬物回収率を提示する。データは、酸の添加だけによりペプチドアシル化を効率よく経時的に減少できたことを示す。特に、
図2は他の共賦形剤により得られた結果を提示するが、ペプチド回収率は対照製剤に類似である。一定の等モル酸/ペプチド比での
図3に示される通り、水中の酸pK
aは、経時的な薬物回収率に影響する。3より高いpK
a(H
2O)を有する酸(安息香酸及びギ酸)は乏しいペプチド回収率を得た。さらに、
図4に説明される通り、製剤内の酸濃度も薬物回収レベルに影響する:検査される濃度では、製剤内の酸添加量が高いほど、ペプチド回収率も高い。
図5に説明される通り、共賦形剤のプロトン化状態は重大であるが、その理由は、パモ酸塩を含有する製剤で薬物回収率の改善が観察されなかったためである。
【0126】
40℃での2か月の強制分解試験の結果を
図6及び7に開示する。酸を含まない対照製剤において天然のペプチドが1か月後に検出されなかったが、パモ酸を含有する全ての製剤は、試験終了時に80%より高い薬物回収率を提示した。2種の求核剤(プロピレングリコール及びオクトレオチド)が同時に存在する状態で、パモ酸はまた製剤安定性を非常に改善する。対照製剤のより高い分解が、それらの粘度低下により確認される。
【0127】
図8及び9は、4℃での4週間安定性試験の結果を提示する。薬物回収率の減少は、シュウ酸を含有する製剤F122及びF124に関して試験終了時に観察できない。20%未満の天然のペプチドが酸を含まない対照製剤F123で回収される。2か月分解試験に関して、対照製剤の粘度が時間と共に低下すること及び
図9に示される天然のペプチド累積放出の減少と一致する。シュウ酸を含有する製剤が、試験開始時に、又は4℃での2及び4週間後に再現性のある放出プロファイルを提示する一方で、対照製剤から放出された天然のペプチド累積のパーセンテージは2及び4週間保存後に減少する。
【0128】
(実施例4:リオチロニン製剤の安定性試験。)
リオチロニン製剤に対する酸添加の影響も評価した。薬物含量分析を、わずかな改変を加えて実施例3に開示された通り実施した:200mg試料を20mLメスフラスコ中でACN/H2O 80/20混合物により溶解させた。
表4は、検査されたリオチロニン(Lyothyronine)製剤の組成を開示する。
【0129】
【0130】
第1の検査を室温で開始して、製剤再構成後並びに3、6及び24時間後に、異なる共賦形剤のAPI回収率に対する影響を比較した。共賦形剤及びリオチロニン含量は1%(w/w)で一定にした。アッセイを二連で実施した。結果を
図10に提示する。オクトレオチド製剤に関して、パモ酸又はシュウ酸の添加は、対照製剤又は分子アシル化を減少させるために通常使用される二価カチオンであるCaCl
2を含有する製剤F48と比較して、より高い薬物回収率を経時的にもたらした。
次いで、0.2%のリオチロニン(Liotyronine)を充填した製剤に対して、シュウ酸含量の影響を7日にわたりさらに評価した。結果を
図11に提示する。0.005~0.50%シュウ酸の存在下で、より高いリオチロニン含量が時間と共に測定された。特に、0.25及び0.50%シュウ酸を含有する製剤F55及びF56により、95%を超えるAPIが全時点で回収された。
【0131】
室温及び4℃での2週間短期安定性試験を、0.10及び0.25%シュウ酸を含有する製剤で開始した。薬物含量、レオロジー及び目視観察を、選択した製剤で、試験開始時(t0)並びに3;7及び14日後に(t3D;t7D及びt14D)、実施例3及び上記に開示された通り実施した。薬物含量を三連で実施し、レオロジー分析を二連で実施した。薬物含量結果を回収率%として表し、試験開始時に計算され測定された薬物含量を基準する。
【0132】
全製剤の粘度値は、試験全体を通して安定であり、全時点で初期値から5%未満の変動であった。シュウ酸を含まない対照製剤F57の着色が室温で3日後に認められた。しかし、酸の存在下又は4℃で保存される場合、着色は観察されなかった。
図12は、室温又は4℃での最長2週間後に得られた薬物回収率を提示している。初期API含量の95%近くが、室温又は4℃で保存されたシュウ酸を含有する製剤F58及びF59から回収されたが、薬物回収率の減少が、時間と共に対照製剤F57に認められる。4℃で保存された場合の改善にもかかわらず、F57初期API投与量のほぼ20%が2週間後に回収されなかった。検査された2つの酸含量、0.10及び0.25%の間に違いは観察されなかった。
【0133】
(実施例5:アルコールを含有するビヒクルの分解試験)
アルコールを含有するビヒクルに対する酸添加の影響を、50℃での4週間分解試験により評価した。ビヒクル外観及びレオロジーを、実施例3に記載される通り、試験開始時(t0)並びに2及び4週間後(t2w及びt4w)に決定した。
表5は、アルコールを有する検査されたビヒクルの組成物及びそれらのそれぞれの対照を提示する。
【0134】
【0135】
検査されたビヒクルの着色は観察されなかった。
図13~21は、レオロジー分析から得られた結果を提示する。アルコールの添加が、ビヒクル粘度に対して、そのためポリマー安定性に対して強い影響を有することが分かる。しかし、酸の添加により、酸/アルコールモル比が5/100以下であるのにもかかわらず、この粘度低下が限定される。0.01%(w/w%)のシュウ酸など、非常に少量の酸が、アルコールにより引き起こされる粘度低下を効率よく減少させた。分解に対する著しい保護を達成するために、酸の量は、
図20及び21中のPEG1000及びメタノールにより説明される通り、アルコールに応じて調整されなければならない。
【0136】
図18は、詳細に、酸特性の影響を説明する:類似の分子量を有するがpK
a(H
2O)が異なる酸を比較する場合、pK
a(H
2O)が低いほど、ポリマー分解が低いことが結論付けられ得る。より精密に言うと、サリチル酸(salycilic)、パモ酸、シュウ酸及びスルファミン酸が、2.79から0.99に変化するpK
a(H
2O)にもかかわらず類似の結果を提示する
図19に見られる通り、pK
a(DMSO)は、分解減少をもたらすパラメーターであるようである。
【0137】
(実施例6:エスシタロプラム製剤の分解及び安定性試験。)
強制分解及び安定性試験を、表6に詳述される通り、及びわずかな改変を加えて実施例3に従って、エスシタロプラム遊離塩基又はエスシタロプラムシュウ酸塩製剤で実施した。薬物含量を、20mLの70/30 ACN/H2O混合物に溶解させた試料から決定し、インビトロデポをサイズ-00のゼラチンカプセル(caspules)中で形成してから、20mLのPBS-1Xが事前充填されたバイアルに移した(transfered)。
【0138】
【0139】
表7は、検査されたエスシタロプラム製剤の組成を開示する。
表7
【表7】
NA: 非該当
【0140】
80℃で2週間後又は室温で4週間後に対照エスシタロプラム遊離塩基製剤F111と比較すると強い着色が観察されたが、過剰なシュウ酸の添加(F117及びF118)により製剤着色の減少が生じた。
検査された条件が何であれ、薬物回収率は安定なままであり、試験開始時に測定された値から5%未満の逸脱であった。全製剤に関して、粘度低下が観察された。最低の粘度低下は、エスシタロプラムシュウ酸塩対照製剤及びエスシタロプラムとの1.5/1のモル比でシュウ酸を有する製剤(F118)で得られた。
図22及び23は、それぞれ80℃及び室温のレオロジー分析の結果を提示する。
【0141】
酸を含まない対照エスシタロプラム遊離塩基製剤F111は、室温又は4℃で4週間後にその初期値のおよそ25%の強い粘度低下を提示するが、シュウ酸の存在下で、分解は非常に減少し、エスシタロプラムシュウ酸塩対照製剤(F112)のものに類似である。
2又は4週間保存後のF112及びF118のインビトロ放出プロファイルは試験開始時に得られたものに類似である。それどころか、
図24に示される通り、F111の放出プロファイルは、時間と共にわずかに加速し、早い時点で反復実験の間でより高い変動性(variablity)を提示する。
【0142】
(実施例7:アトルバスタチン製剤の分解及び安定性試験。)
強制分解及び安定性試験を、表8に詳述される通り、及びわずかな改変を加えて実施例3に従って、アトルバスタチンカルシウム三水和物製剤で実施した。薬物含量は、40mLの50/50 ACN/H2O混合物に溶解させた試料から決定し、インビトロデポをサイズ-00のゼラチンカプセル中に形成してから、40mLのPBS-1X+1%Tween 80が事前充填されたバイアルに移した。
【0143】
【0144】
表9は、検査されたアトルバスタチン製剤の組成を開示する。
【0145】
【0146】
図25~29は、50℃での2週間強制分解から得られた結果を提示する。50/100から100/100までのシュウ酸/アトルバスタチンモル比のシュウ酸の添加が、時間と共にAPI回収率を増加させることが観察できる。PEG-PLAコポリマー種類及び/又は構造は分解レベルに全く影響を有さなかったが、溶媒種類並びに初期API含量は異なる回収レベルをもたらした。
【0147】
図30~32は、室温での4週間安定性試験から得られた結果を提示する。製剤安定性の明らかな改善がシュウ酸の存在下で観察される。わずか0.14%シュウ酸の差も影響を有し、より高い薬物回収率及びより低い粘度低下が、より多くのシュウ酸を含む製剤で測定された。シュウ酸を含有する製剤F134及びF135のインビトロ放出プロファイルは経時的に類似であった。それどころか、
図32に説明される通り、対照製剤F125の分解は、2又は4週間保存後に残存APIの放出の加速につながった。
【0148】
(実施例8:オクトレオチド酢酸塩製剤の薬物動態(PK)試験)
選択されたオクトレオチド酢酸塩製剤を、雄の成体ラットでの薬物動態試験において検査した。2mgのオクトレオチドを含有する医薬品を、1mL Soft Jectシリンジ及び23G(1”0.6×25mm)Terumo(登録商標)ニードルを使用して、ラットの肩甲骨間領域に皮下投与した。注射される製剤体積を90μLに固定した。血液試料を、注射前並びに異なる時点:投与後0.5h、1h、3h、8h、24h、48h、96h、168h、240h、336h、504h及び672hでEDTAチューブに収集した。血液試料を遠心分離し、各時点の血漿を保管した。血漿試料を、API含量を定量化するために、LC/MS/MSにより分析した。
【0149】
表10は製剤組成を開示する。
【0150】
【0151】
計算されたPKパラメーターを表11に詳述する。
図33は、インビボで得られた放出プロファイルを説明する。データは、パモ酸又はCaCl
2を含有する製剤から類似のプロファイルが得られ、2つの曲線がほとんどの時点で重なり合うことを指摘する。
【0152】
【0153】
(実施例9:オクトレオチド酢酸塩製剤のPK及び局所毒性試験)
10日間の第2の薬物動態試験を、雄の成体ラットで、製剤F122及びF123(実施例3中の詳述された組成物参照)により実施した。およそ4.5mgのオクトレオチドを含有する医薬品を、1mL Soft Jectシリンジ及び23G(5/8” 0.6×16mm)Terumo(登録商標)ニードルを使用して、ラットの肩甲骨間領域に皮下投与した。注射される製剤体積を100μLに固定した。血液試料を、注射前並びに異なる時点:投与後0.5h、1h、3h、8h、24h、48h、96h、168h及び240hで、EDTAチューブに収集した。それぞれの群の2匹の動物を、注射の3日後に犠死させ、72h(D3)での特別の採血を安楽死前に実施した。血液試料を遠心分離して、各時点の血漿を保存した。血漿試料を、API含量を定量化するためにLC/MS/MSにより分析した。
【0154】
安楽死の後、注射部位を摘出して、ホルマリンで固定した。外植片の切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、組織病理学的分析を、専門の生理病理学者による顕微鏡観察により実施した。
対照製剤F123とシュウ酸を含有する製剤F122の間の組織病理学分析で明らかな違いは全く観察されず、製剤に使用した酸の量の良好な忍容性を示唆した。
図34は、インビボで得られた放出プロファイルを説明する。データは、制御放出が両製剤から得られ、製剤内のシュウ酸の存在がより高い初期バーストを引き起こし、それに続いてより低い放出レベルがあったことを指摘する。
【国際調査報告】