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特表2024-530019ヒト心臓リプログラミングを増強させるための短縮型P63タンパク質ドメイン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ヒト心臓リプログラミングを増強させるための短縮型P63タンパク質ドメイン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240806BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240806BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K48/00 ZNA
A61K35/76
A61K35/761
A61P9/10
A61K9/127
A61K9/51
A61K31/7088
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/713
A61K39/395 D
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/85 Z
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506816
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022074492
(87)【国際公開番号】W WO2023015222
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/228,671
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンガルト、トッド
(72)【発明者】
【氏名】ピンナマネニ、ジャヤプラタプ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヴィヴェク ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チアンチャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076BB11
4C076CC11
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA23
4C084CA18
4C084CA23
4C084CA53
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC751
4C085AA13
4C085CC22
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の実施形態は、心臓細胞の心筋細胞への分化転換を含む、インサイチュ心臓細胞再生のための方法および組成物を含む。具体的な実施形態において、インサイチュ心臓細胞再生は、p63-TID、ならびにHand2およびミオカルディンのうちの一方もしくは両方の送達を含み、特定の実施形態においては、Gata4、Mef2c、およびTbx5のうちの1つもしくは複数、ならびに/またはETV2およびVEGFのうちの1つもしくは複数をさらに含む。本開示の特定の態様において、成体心臓線維芽細胞は、p63-TIDならびに転写因子Hand2およびミオカルディンのうちの一方もしくは両方を有するウイルスベクターを使用して、心筋細胞へとリプログラミングされる。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p63-トランス活性化阻害性ドメイン(p63-TID)ポリペプチドまたはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメントからなるかまたはそれから本質的になる組換えタンパク質および/またはそれをコードする組換え核酸を含む、組成物であって、該p63-TIDポリペプチドが、配列番号1に対して少なくともまたは厳密に70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%同一である配列を含むか、その配列から本質的になるか、その配列からなるか、またはその配列である、組成物。
【請求項2】
前記p63-TIDポリペプチドが、配列番号1の配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、薬学的に許容される担体に含まれる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記その機能性誘導体またはフラグメントが、配列番号1と比較して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、もしくは20個、またはそれ以上のアミノ酸変更を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記その機能性誘導体および/または前記その機能性フラグメントが、配列番号1のN末端トランケーションを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記トランケーションが1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、もしくは60個を上回らないアミノ酸であるか、または前記トランケーションが、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、もしくは60個のアミノ酸である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記その機能性誘導体および/または前記その機能性フラグメントが、配列番号1のC末端トランケーションを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記トランケーションが、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、もしくは60個を上回らないアミノ酸であるか、または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、もしくは60個のアミノ酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記その機能性誘導体および/または前記その機能性フラグメントが、配列番号1における内部欠失を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記内部欠失が、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、もしくは60個を上回らないアミノ酸であるか、または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、もしくは60個のアミノ酸である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記p63-TID機能性誘導体および/または前記そのフラグメントが、配列番号1に対して、少なくともまたは厳密に70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である配列を含み得る、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、標識されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アミノ酸のうちの1つまたは複数が、翻訳後改変を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記翻訳後改変が、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、アシル化、メチル化、またはこれらの組合せを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1つまたは複数の組換え核酸を含む組成物であって、該核酸が、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはその機能性誘導体および/もしくはその機能性フラグメントをコードする、組成物。
【請求項16】
前記核酸が、DNAである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記核酸が、RNAである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記核酸が、1つまたは複数のウイルスベクターに含まれる、請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターである、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記核酸が、非ウイルスベクターに含まれる、請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記核酸が、薬学的に許容される担体に含まれる、請求項15から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
1つまたは複数の核酸ベクターを含む組成物であって、該ベクターが、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物を含み、任意選択で1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含む、組成物。
【請求項25】
請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物を含む前記ベクターが、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含むものと同じベクターである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物を含む前記ベクターが、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含むベクターとは異なるベクターである、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含むベクターをさらに含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物を含む前記ベクターが、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含むものと同じベクターである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物を含み、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含む、前記ベクターが、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含むものと同じベクターである、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物を含み、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含む、前記ベクターが、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含む前記ベクターとは異なるベクターである、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、Hand2をコードする核酸およびミオカルディンをコードする核酸のうちの一方または両方を含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が、Hand2をコードする核酸を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、ミオカルディンをコードする核酸を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物が、Hand2をコードする核酸およびミオカルディンをコードする核酸を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
1つまたは複数の抗線維化剤を含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が、Hand2をコードする核酸、ミオカルディンをコードする核酸、ならびにETV2および/またはVEGFをコードする核酸を含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記ETV2および/またはVEGFが、1つまたは複数のウイルスベクターによって送達可能である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物を含む、キットであって、該組成物が、好適な容器に収容されている、キット。
【請求項41】
インビボでの心臓細胞のリプログラミングの方法であって、治療有効量の1つまたは複数の組成物を、個体の心臓に提供するステップを含み、該1つまたは複数の組成物が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物を含む、方法。
【請求項42】
心臓状態を処置する方法であって、治療有効量の1つまたは複数の組成物を、個体の心臓に提供するステップを含み、該1つまたは複数の組成物が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物を含む、方法。
【請求項43】
前記個体に、有効量の1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を提供するステップをさらに含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が、ポリペプチド、ペプチド、または核酸である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が、Hand2、ミオカルディン、Gata4、Mef2c、Tbx5、中胚葉後方タンパク質1(Mesp1)、miR-133、miR-1、Oct4、Klf4、c-myc、Sox2、ブラキウリ、Nkx2.5、ETS2、ESRRG、Mrtf-A、MyoD、ZFPM2、またはこれらの組合せである、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が、Hand2核酸またはポリペプチドおよびミオカルディン核酸またはポリペプチドのうちの一方または両方である、請求項43から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
Hand2核酸またはポリペプチドおよびミオカルディン核酸および/またはポリペプチドのうちの前記一方または両方が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物と同じ組成物にある、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
Hand2核酸および/またはポリペプチドならびにミオカルディン核酸および/またはポリペプチドのうちの前記一方または両方が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物とは異なる組成物にある、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記1つまたは複数の組成物が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物およびHand2を含む、請求項43から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記1つまたは複数の組成物が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物およびミオカルディンを含む、請求項43から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記1つまたは複数の組成物が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物、Hand2、およびミオカルディンを含む、請求項43から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記1つまたは複数の組成物が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物、Hand2、およびミオカルディン、ならびにVEGFおよび/もしくはETV2を含む、請求項43から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物が、前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子よりも前に提供される、請求項43から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物が、前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子よりも後に提供される、請求項43から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
有効量のVEGFおよび/またはETV2が、請求項1から39の組成物のうちのいずれか1つよりも前に、またはそれと同時に、前記個体に提供される、請求項43から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
有効量の1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、前記個体に提供される、請求項43から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、Oct4、DZNep、Sall4、SOX2、KLF4、MYC、SB431542、PD0325901、Parnate、CHIR99021、A-83-01、NaB、PS48、フォルスコリン(FSK)、2-メチル-5-ヒドロキシトリプタミン(2-Me-5HT)、D4476、VPA、CHIR99021(CHIR)、616452、トラニルシプロミン、プロスタグランジンE2、ロリプラム、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、5-アザシチジン、酪酸ナトリウム、RG108、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物が前記個体に提供されるよりも前に、前記個体に提供される、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物が前記個体に提供されるよりも前に、前記個体に提供され、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物が、前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が前記個体に提供されるよりも前に、前記個体に提供される、請求項56または57に記載の方法。
【請求項60】
前記心臓細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、筋芽細胞、始原細胞、幹細胞、またはこれらの組合せである、請求項41から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物が、核酸を含み、該核酸が、1つまたは複数のベクター上に含まれる、請求項41から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が、核酸を含み、該核酸が、1つまたは複数のベクター上に含まれる、請求項43から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、核酸を含み、該核酸が、1つまたは複数のベクター上に含まれる、請求項56から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物の前記核酸、前記心臓細胞リプログラミング因子の前記核酸、および前記クロマチン不安定化剤の前記核酸が、別個のベクター上に含まれる、請求項61から63に記載の方法。
【請求項65】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物の前記核酸、前記心臓細胞リプログラミング因子の前記核酸、および前記クロマチン不安定化剤の前記核酸が、同じベクター上に含まれる、請求項61から63に記載の方法。
【請求項66】
前記ベクターが、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記非ウイルスベクターが、ナノ粒子、プラスミド、リポソーム、またはこれらの組合せである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、またはアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記ウイルスベクターが、約20、約50、または約100の感染多重度(MOI)である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記ウイルスベクターが、約50のMOIである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物、Hand2、および/またはミオカルディンの核酸が、レンチウイルスベクター上に含まれる、請求項66から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物、Hand2、および/またはミオカルディンの核酸が、アデノウイルスベクター上に含まれる、請求項60から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が、核酸を含み、該核酸が、DNAまたはRNA分子である、請求項41から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、核酸を含み、該核酸が、DNAまたはRNA分子である、請求項56から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記個体に、追加の心臓治療法を送達するステップをさらに含む、請求項41から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記追加の心臓治療法が、薬物療法、外科手術、補助人工心臓(VAD)埋込み、胸腔鏡手術(VAT)冠動脈バイパス、経皮冠動脈治療(PCI)、またはこれらの組合せを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記心臓細胞が、分裂細胞または非分裂細胞である、請求項41から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記ベクター上のプロモーターが、細胞特異的プロモーターである、請求項61から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記ベクター上のプロモーターが、線維芽細胞特異的プロモーターである、請求項61から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記提供するステップが、さらに、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物を心臓に注射することとして定義される、請求項41から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記1つまたは複数の組成物が、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含む場合、前記提供するステップが、さらに、該1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を心臓に注射することとして定義される、請求項43から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記1つまたは複数の組成物が、1つまたは複数のクロマチン安定化剤を含む場合、前記提供するステップが、さらに、該1つまたは複数のクロマチン安定化剤を心臓に注射することとして定義される、請求項43から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
1つまたは複数の抗線維化剤を提供するステップをさらに含む、請求項41から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記1つまたは複数の抗線維化剤が、少なくとも1つの抗Snail剤を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記抗Snail剤が、siRNA、shRNA、抗体、または小分子である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記1つまたは複数の組成物が、心筋瘢痕組織の1つまたは複数の領域に送達される、請求項41から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記1つまたは複数の組成物が、心筋瘢痕組織ではない1つまたは複数の領域に送達される、請求項41から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記1つまたは複数の組成物が、心臓に全体的に送達される、請求項41から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記1つまたは複数の組成物が、瘢痕細胞に局在化する、請求項41から88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記瘢痕細胞が、線維芽細胞である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞が、サルコメアを形成する、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞が、収縮し得る、請求項89から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記1つまたは複数の組成物が、線維芽細胞特異的プロモーターを含む核酸を含む、請求項89から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記線維芽細胞特異的プロモーターが、ペリオスチンである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記送達が、心臓に直接的である、請求項89から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記送達が、心臓特異的ベクターを使用して局在化される、請求項89から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記心臓特異的ベクターが、AAV(9)である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
心臓状態を処置する方法であって、治療有効量の1つまたは複数の組成物を、個体の心臓に提供するステップを含み、該1つまたは複数の組成物が、
A)p63-トランス活性化阻害性ドメイン(p63-TID)ポリペプチドならびに/またその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチドであって、該p63-TIDポリペプチドが、配列番号1に対して、少なくともまたは厳密に、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である配列を含むか、その配列から本質的になるか、その配列からなるか、またはその配列である、ポリペプチドならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、
B)Hand2ポリペプチドならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、
C)ミオカルディンポリペプチドならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、
D)ETV2ポリペプチドならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、ならびに/あるいは
E)VEGFポリペプチドならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、
を含むか、それらから本質的になるか、またはそれからなる、方法。
【請求項99】
A、B、C、およびDを提供するステップを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
A、B、C、およびEを提供するステップを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
Dおよび/またはEが、A、B、およびCと同じ日に提供される、請求項98から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
Dおよび/またはEが、A、B、およびCと同時に提供される、請求項98から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
Dおよび/またはEが、A、B、およびCよりも前に提供される、請求項98から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
Dおよび/またはEが、A、B、およびCよりも、少なくともまたは厳密に1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、もしくは28日、またはその中の誘導可能な任意の範囲の前に、提供される、請求項98から100または103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
A、B、およびCが、Dおよび/またはEよりも前に提供される、請求項98から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
A、B、およびCが、Dおよび/またはEよりも、少なくともまたは厳密に、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、もしくは28日、またはその中の誘導可能な任意の範囲の前に、提供される、請求項98から100または105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
A、B、C、D、および/またはEが、ナノ粒子、プラスミド、リポソーム、ウイルスベクター、またはこれらの任意の組合せで提供される、請求項98から106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
A、B、C、D、および/またはEが、ウイルスベクターで提供され、該ウイルスベクターが、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、またはアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項98から107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項108に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月3日に出願された米国特許仮出願第63/228,671号の優先権を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記述
【0002】
本発明は、National Institutes of Healthにより付与されたHL152280のもとに、政府の支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
配列表
【0003】
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、それは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年8月1日に作成された前記XMLコピーは、BAYM_P0344WO_SequenceListingという名称であり、サイズが51,424バイトである。
【0004】
本開示の実施形態は、少なくとも、分子生物学、細胞生物学、細胞治療法、および心臓医薬を含む医薬の分野を含む。
【背景技術】
【0005】
医学および外科手技の技術革新にもかかわらず、心臓疾患は、世界中で一番多い死因のままである。心筋梗塞後の心臓の再生能力が低いこと、および心筋細胞の不可逆的な消失を考慮すると、人工多能性幹細胞を形成することまたは直接的な細胞リプログラミングを刺激することによる心筋細胞の置き換えは、大きな期待を有する有望な治療戦略である。いずれの技術も、梗塞した心筋内の内因性線維芽細胞が、機能性心筋細胞へとリプログラミングされ得るという考えに基づいている。いくつかの機関が、転写因子、もっとも顕著にはGata4、Mef2c、およびTbx5のカクテルを使用して、インビトロで線維芽細胞を心筋細胞へとリプログラミングすることができることを報告している。いずれにせよ、この治療法の実装における主要な障害は、リプログラミング効率の低さである。
【0006】
本開示は、心臓組織の効率的かつ効果的な修復に関する、当該技術分野における長年の必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、哺乳動物の心臓に関連する任意の医学的状態の処置のための方法および組成物を含む。特定の実施形態において、本開示は、心臓における内因性細胞または組織に影響を及ぼす治療用組成物を用いた、1つまたは複数の心臓の医学的状態の処置に関する。具体的な実施形態において、治療法は、それを必要とする個体に、例えば、個体が、心臓の医学的状態またはそのリスクに起因して、内因性心臓組織のインサイチュまたはインビボ治療が必要である場合に、提供される。特定の実施形態において、個体は、心臓の医学的状態による心臓細胞または心臓組織の損傷を有する。
【0008】
具体的な実施形態において、ある特定の組成物の、個体における細胞へのインサイチュまたはインビボでの送達は、内因性の心筋細胞ではない細胞を心筋細胞になるようにリプログラミングすることを可能にすることによって、心筋細胞の再生を可能にする。治療有効量の1つまたは複数の組成物を個体に送達すると、この組成物は、例えば、心臓組織またはその中の細胞の再生を可能にすることによって、少なくとも部分的に、状態の改善をもたらす。特定の実施形態において、組成物は、1つまたは複数のp63-トランス活性化阻害性ドメイン(p63-TID)ポリペプチド(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに/またはそれをコードする核酸、ならびに/または下方調節することで標的細胞のリプログラミング性もしくは可塑性が増強されるであろう他の因子を含む。ある特定の実施形態において、個体はまた、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子(転写因子であってもよく、または転写因子でなくてもよい)が提供されてもよく、これらは、p63-TIDと同時にまたは同じ組成物で提供されてもよく、またはそうでなくてもよい。具体的な実施形態において、組成物は、Hand2、ミオカルディン、または両方を含む。ある特定の実施形態において、個体はまた、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が提供される。具体的な実施形態において、組成物は、p63-TID、Hand2、ミオカルディン、VEGF、および/またはETV2を含む。具体的な実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、p63-TID、Hand2、および/またはミオカルディンよりも前に、細胞に提供される。具体的な実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、p63-TID、Hand2、および/またはミオカルディンと同時に提供される。ある特定の実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、心臓細胞リプログラミングに関して、p63-TID、Hand2、および/またはミオカルディンと相乗的に機能する。
【0009】
本開示の具体的な実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、心臓細胞(例えば、線維芽細胞)の心筋細胞への分化転換効率を増加させる。本明細書に記載されるように、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)の提供は、線維芽細胞(例えば)の心筋細胞への高い効率でのリプログラミングを可能にする新規な治療介入である。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)の提供は、心不全を含む任意の心臓の医学的状態の処置のための臨床的に関連する治療法である固有な治療介入である。
【0010】
特定の実施形態において、任意のp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに/または1つもしくは複数の心臓細胞リプログラミング因子、ならびに/または1つもしくは複数のクロマチン不安定化剤、ならびに/または1つもしくは複数の抗線維化剤、ならびに/または1つもしくは複数の血管新生因子は、それらが、p63-TIDと同じ組成物に存在するかどうかにも、p63-TIDと同時に提供されるかどうかにも関係なく、互いに相乗的に作用し、それを必要とする個体に提供される。
【0011】
特定の実施形態において、それを必要とする個体は、1つまたは複数の抗線維化剤、例えば、1つまたは複数の抗Snail剤(例えば、siRNA、抗体、小分子、例えば、ITD-1など)を受容する。
【0012】
いくつかの実施形態において、インビボでの心臓細胞のリプログラミングの方法であって、治療有効量の1つまたは複数の組成物を、個体の心臓に提供するステップを含み、前記1つまたは複数の組成物が、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含む、方法が存在する。
【0013】
本開示の実施形態において、方法は、個体に、有効量の1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を提供するステップを含み、これは、ポリペプチド、ペプチド、核酸、またはこれらの混合物であってもよい。特定の実施形態において、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子は、Hand2、ミオカルディン、Gata4、Mef2c、Tbx5、中胚葉後方タンパク質(Mesoderm posterior protein)1(Mesp1)、miR-133、miR-1、Oct4、Klf4、c-myc、Sox2、ブラキウリ、Nkx2.5、etsバリアント2(ETS2、ETV2とも称される)、VEGF、ESRRG、Mrtf-A、MyoD、ZFPM2、miR-590、miR-208、miR-499、またはこれらの組合せである。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子は、Hand2核酸またはポリペプチドおよびミオカルディン核酸またはポリペプチドのうちの一方または両方である。いくつかの事例において、Hand2核酸またはポリペプチドおよびミオカルディン核酸またはポリペプチドのうちの一方または両方は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくはその機能性誘導体)と同じかまたは異なる組成物中にある。特定の実施形態において、1つまたは複数の組成物は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)およびHand2の核酸、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)およびにミオカルディンの核酸、ならびに/あるいはp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、Hand2、およびミオカルディンの核酸を含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子よりも前に提供される。本方法の具体的な実施形態において、有効量の1つまたは複数のクロマチン不安定化剤が、個体に提供される。具体的な実施形態において、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)が個体に提供されるよりも前に、個体に提供される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)が個体に提供されるよりも前に、個体に提供され、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子が個体に提供されるよりも前に、個体に提供される。
【0015】
ある特定の実施形態において、心臓細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、筋芽細胞、始原細胞、幹細胞、筋線維芽細胞、またはこれらの組合せである。心臓細胞は、分裂細胞または非分裂細胞であり得る。
【0016】
具体的な実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、核酸を含み、前記核酸は、1つまたは複数のベクター上に含まれる。1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子は、核酸を含み得、核酸は、1つまたは複数のベクター上に含まれ得る。特定の実施形態において、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤は、核酸を含み、核酸は、1つまたは複数のベクター上に含まれる。いくつかの実施形態において、核酸は、別個のベクター上または同じベクター上に含まれる。ある特定の事例において、ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター、例えば、ナノ粒子、プラスミド、リポソーム、もしくはこれらの組合せである。特定の実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルスベクター、またはエピソーム(非組込み型)ベクターである。具体的な実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、Hand2、および/またはミオカルディン核酸は、レンチウイルスベクター上に含まれるか、またはアデノウイルスベクター上に含まれるか、または改変されたmRNA分子である。本開示によって包含される任意のベクターにおいて、細胞特異的プロモーター、例えば、線維芽細胞特異的プロモーターが存在してもよい。
【0017】
特定の実施形態において、本開示によって包含される任意の方法は、個体に、追加の心臓治療法、例えば、薬物療法、外科手術、補助人工心臓(VAD)埋込み、胸腔鏡手術(VAT)冠動脈バイパス、経皮冠動脈治療(PCI)、またはこれらの組合せを含むものを送達するステップを含む。
【0018】
本開示によって包含される組成物のいずれも、全身または局所送達を含む好適な送達経路で個体に提供され得る。特定の実施形態において、送達は、心臓への局所的なものであり、特定の実施形態において、提供するステップは、さらに、化合物を心臓に注射することとして定義される。
【0019】
ある特定の実施形態において、1つまたは複数の核酸ベクターを含む組成物であって、ベクターが、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含み、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含む、組成物が存在する。いくつかの事例において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含むベクターは、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含むものと同じベクターである。ある特定の実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含むは、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含むベクターとは異なるベクターである。特定の実施形態において、ベクターは、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤をさらに含む。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含むベクターは、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含むものと同じベクターであってもよい。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含み1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含むベクターは、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含むものと同じベクターであってもよい。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含み1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子を含むベクターは、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤を含むものとは異なるベクターであってもよい。ベクターを含む組成物は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびにHand 2核酸およびミオカルディン核酸のうちの一方または両方を含み得る。ある特定の実施形態において、ベクターを含む組成物は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)ならびにHand2核酸を含む。いくつかの実施形態において、ベクターを含む組成物は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)ならびにミオカルディン核酸を含むか、あるいはp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、Hand2、ならびにミオカルディン核酸を含み得る。特定の実施形態において、本開示の任意の組成物は、1つまたは複数の抗線維化剤を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示によって包含される組成物を含むキットであって、前記組成物が、好適な容器に収容されている、キットが存在する。
【0021】
ある特定の実施形態において、心臓状態を処置する方法であって、治療有効量の1つまたは複数の組成物を、個体の心臓に提供するステップを含み、前記1つまたは複数の組成物が、A)p63-トランス活性化阻害性ドメイン(p63-TID)ポリペプチド、ならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド(p63-TIDポリペプチドは、配列番号1に対して、少なくともまたは厳密に、少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である配列を含むか、その配列から本質的になるか、その配列からなるか、またはその配列である)、B)Hand2ポリペプチド、ならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、C)ミオカルディンポリペプチド、ならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、D)ETV2ポリペプチド、ならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチド、ならびに/あるいはE)VEGFポリペプチド、ならびに/またはその機能性誘導体および/もしくは機能性フラグメント、ならびに/またはそれをコードするヌクレオチドを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、A、B、C、およびDを提供することを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、本方法は、A、B、C、およびEを提供することを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、Dおよび/またはEは、A、B、およびCと同じ日に提供される。いくつかの実施形態において、Dおよび/またはEは、A、B、およびCと同時に提供される。いくつかの実施形態において、Dおよび/またはEは、A、B、およびCよりも前に提供される。いくつかの実施形態において、Dおよび/またはEは、A、B、およびCよりも、少なくともまたは厳密に、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、もしくは28日、またはその中の誘導可能な任意の範囲の前に、提供される。いくつかの実施形態において、A、B、およびCは、Dおよび/またはEよりも前に提供される。いくつかの実施形態において、A、B、およびCは、Dおよび/またはEよりも、少なくともまたは厳密に、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、もしくは28日、またはその中の誘導可能な任意の範囲の前に、提供される。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、および/またはEは、ナノ粒子、プラスミド、リポソーム、ウイルスベクター、またはこれらの任意の組合せで提供される。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、および/またはEは、ウイルスベクターで提供され、ウイルスベクターは、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、またはアデノ随伴ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、A、B、C、D、および/またはEを含む1つまたは複数の組成物は、インビトロで細胞に提供される。ある特定の実施形態において、インビトロでA、B、C、D、および/またはEが提供された細胞は、心臓状態を有する個体に提供される。ある特定の実施形態において、インビトロでA、B、C、D、および/またはEが提供された細胞は、心臓状態を有する個体の心臓に直接的に提供される。
【0022】
上記は、以下の本開示の詳細な説明がより良好に理解され得るように、本開示の特性および技術的利点をどちらかといえば広義に概説している。本開示のさらなる特性および利点は、以下に記載され、これらは、本開示の請求の範囲の主題をなす。当業者であれば、開示される概念および特定の実施形態が、本開示の同じ目的を実行するために他の構造を改変または設計するための基礎として容易に利用され得ることを理解すべきである。また、当業者であれば、そのような均等物の構築が、添付の請求の範囲に記載されている本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことも理解すべきである。その構成および操作方法の両方に関して、本開示の特徴であると考えられる新規な特性は、さらなる目的および利点とともに、添付の図面と関連して考慮される場合、以下の説明により、より良好に理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれは、例示および説明の目的で提供されるものにすぎず、本開示の限定に関する定義として解釈されるものではない。
【0023】
本出願全体を通じて、「約」という用語は、値が測定または定量方法の誤差の本質的な変動を含むことを示して使用される。
【0024】
「含む(comprising)」という用語とともに使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という言葉の使用は、「1つ」を意味し得るが、これはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つを上回る」という意味とも一致する。
【0025】
「および/または」という語句は、「および」または「または」を意味する。例示のために、A、B、および/またはCは、A単独、B単独、C単独、AおよびBの組合せ、AおよびCの組合せ、BおよびCの組合せ、またはA、B、およびCの組合せを含む。換言すると、「および/または」は、包含的なまたはとして機能する。
【0026】
「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」など、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」など、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに含む(includes)」および「含む(include)」など、含む(including)の任意の形態)、または「含む(containing)」(ならびに「含む(contains)」および「含む(contain)」など、含む(containing)の任意の形態)は、包括的または拡張可能であり、追加の言及されていない要素または方法ステップを除外するものではない。
【0027】
組成物およびそれらの使用のための方法は、本明細書全体を通じて開示される成分またはステップのうちのいずれかを「含み」得る、それ「から本質的になり」得る、またはそれ「からなり」得る。開示される成分またはステップのうちのいずれか「から本質的になる」組成物および方法は、請求の範囲を、指定された材料またはステップに制限し、これらは請求される本発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない。
【0028】
本明細書において考察されるいずれの実施形態も、本発明の任意の方法または組成物に対して実装することができ、その逆もまた同様であることが、企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0029】
本発明の他の目的、特性、および利点は、以下の詳細な説明から明らかであろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内で様々な変化および改変形態が、詳細な説明から当業者には明らかであろうため、この詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すと同時に、例示のために提供されているにすぎないことを、理解されたい。
【0030】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、本発明のある特定の態様をさらに示すために含まれている。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、より良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A-B】p63アイソフォームΔNp63αおよびヒストンデアセチラーゼ1(HDAC1)が、互いに物理的に相互作用し、p63-TIDが、それらの間の結合を破壊することを示す図である。図1Aは、ΔNp63α-FLAGおよびHDAC1-GFPが、不死化ラット心臓線維芽細胞において、過剰発現(O.E)されていたことを示す図である。抗FLAG抗体を使用したCo-IP、続いて、HDAC1およびp63に対する抗体を用いた免疫ブロッティングを行った。図1Bは、p63-TIDの過剰発現により、p63/HDAC1相互作用が妨害されることを示す図である。HDAC1-GFP、ΔNP63α FLAGを、TIDベクターありまたはなしで、ヒト293T細胞において共発現させ、Co-IPを、示される抗体を使用することによって行った。
【0032】
図2A図2A-Jは、ヒト心臓線維芽細胞の分化のための実験設計およびその結果を示す図である。図2Aは、ヒト心臓線維芽細胞におけるiCMリプログラミングに対するp63-TIDの作用を判定するための実験設計の概略図を示す(リアルタイム定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、免疫蛍光(IF)、蛍光活性化細胞分取(FACS)。
図2B図2Bは、ヒト心臓線維芽細胞における示されるレンチウイルスベクターの形質導入の14日後の心筋トロポニンT陽性(cTnT)細胞のパーセンテージを示すFACSデータである。(n=3、データは、平均±平均の標準誤差として提示、**対shNTでp<0.01、*対GMTでp<0.05)。
図2C図2Cは、qRT-PCRによって評価した上述の処置細胞における心臓および線維芽細胞マーカー遺伝子のmRNA発現レベルを示す(n=3、エラーバーは平均±標準誤差を指す、*対GMTでP<0.05、**対shNTでP<0.001)。
図2D図2Dは、(DAPI)(青色)、(FITC)(緑色)、および(赤色)心筋細胞マーカーcTnTに関する代表的な免疫蛍光染色を示す(バー=100μm、画像は10倍拡大で捕捉した)。
図2E図2Eは、(DAPI)(青色)、(FITC)(緑色)、および(赤色)心筋細胞マーカー、ならびにα-アクチニンに関する代表的な免疫蛍光染色を示す(バー=100μm、画像は10倍拡大で捕捉した)。
図2F図2Fは、示される処置の後にqRT-PCRによって評価した心筋細胞マーカー遺伝子(cTnT、Gja1、およびMyh6)の発現を示す(n=3、****p<0.0001)。
図2G図2Gは、示される処置の後にqRT-PCRによって評価した線維芽細胞マーカー遺伝子(Col1a1およびPostn)の発現を示す(n=3、****p<0.0001)。
図2H図2Hは、Hand2/ミオカルディン(H/M)ありまたはなしでのshp63またはp63-TIDを用いた処置の2週間後の心筋トロポニンT陽性(cTnT +)ヒト心臓線維芽細胞の代表的なフローサイトメトリープロット(左パネル)、ならびにフローサイトメトリーによって評価した、示されるように処置したcTnT+細胞のパーセンテージの定量化(右パネル)を示す(n=3、****p<0.0001)。
図2I図2Iは、免疫蛍光標識化によって評価した、示される処置の2週間後の心筋細胞マーカーcTnT+およびα-アクチニン+を発現する細胞(例えば、図2Eにイメージングされている)の定量化を示す(n=3、***p<0.001、**p<0.01)。
図2J図2Jは、サルコメア構造を示すp63-TIDおよびH/Mで処置した細胞におけるcTnTおよびα-アクチニン染色の代表的な高拡大率画像を示し、これは、α-アクチニン標識化細胞でもっとも明確に見ることができる。スケールバー=25μmであり(左パネル)、shp63+GMT、shp63+H/M、またはp63-TID+H/Mの形質導入の4週間後の、総α-アクチニン+細胞に対するパーセンテージとしての、十分に発達したサルコメアを有する細胞の定量化である(右パネル)(n=3、**p<0.01、***p<0.001)。
【0033】
図3】ラット心臓線維芽細胞におけるp63-TID投与が、より良好なiCMリプログラミング結果をもたらしたことを示す図である。qRT-PCRによって評価した、ラット心臓線維芽細胞における、上記に示されるリプログラミング因子投与の2週間後の示される心臓および線維芽細胞マーカー遺伝子のmRNA発現のmRNA発現レベルが、示されている(n=3、すべてのデータは平均±平均の標準誤差として提示、*対GMTでP<0.05、**対shNTでP<0.001)。
【0034】
図4A図4A-Bは、例示的なp63-TID配列、およびそれを含むベクターの例示的なコンストラクト設計を提供する図である。図4Aは、p63-TID核酸配列(TID pp3018)を含むレンチウイルスベクターマップの1つの例を示す。このような例のベクターを、リプログラミングアッセイ、例えば、qPCR、FACS、および/または免疫蛍光において利用することができる。
図4B図4Bは、TIDヌクレオチド配列をpcDNA3.1ベクター骨格においてクローニングしたco-IP研究において利用されたベクターを示す。
【0035】
図5】新生児ラット心筋細胞との共培養後のヒト心臓線維芽細胞リプログラミングの機能的有効性を示す図である。成体ヒト心臓線維芽細胞を、GMT(左)、Hand2/ミオカルディン(H/M)と組み合わせたshp63(中央)、またはp63-TID+Hand2/ミオカルディン(H/M、p63TID+H/M)(右)を発現するレンチウイルスで処置した。最初の形質導入の1週間後に、これらのヒト心臓線維芽細胞を、(未処置)新生児ラット心筋細胞(GFP[緑色蛍光タンパク質]陰性)と共培養した。上段は、(形質導入されていない)新生児ラット心筋細胞との4週間の共培養の後の、GMT(左)、shp63+H/M(中央)、またはp63-TID+H/M(右)で処置したヒト心臓線維芽細胞による(緑色)GFP発現を示す代表的な免疫蛍光を示す。バー=100μm。中段および下段は、収縮(上段)およびCa2+トランジェント(下段)を反映した、4週間の共培養後のGMT、shp63+H/M、およびp63-TID+H/Mで処置したGFP+ヒト心臓線維芽細胞からの代表的なピークを示す。収縮性パラメーターは、GMT単独で処置した細胞においては観察されなかった。バー=1s。
【0036】
図6A図6A-Dは、shp63に匹敵する、ヒト心臓リプログラミングを増強することにおけるp63-TIDの用量に基づく有効性を示す図である。図6Aは、HDAC1、p63-FLAG、および/または3つの異なるp63-TID投薬量のp63-TIDベクターをトランスフェクトした293T細胞におけるFLAG共免疫沈降アッセイを示し、p63-HDAC1結合の妨害の増加をp63-TID投薬量の関数として示している。ベータ-アクチンを、ローディング対照として使用した。IB=免疫ブロット、IP=免疫沈降。
図6B図6Bは、ヒト心臓線維芽細胞を、p63-TIDを発現する20、50、または100のMOIのレンチウイルスベクターで処置した2週間後における、ヒト心臓線維芽細胞におけるp63-TIDの投薬量スクリーニング、心筋トロポニンT(cTnT)マーカーのqRT-PCR分析が示される(n=3、***p<0.001、**p<0.01)。対照:レンチウイルスGFPベクター、20のMOI。
図6C図6Cは、p63-TIDベクターを50の感染多重度(MOI)で使用した示される処置の2週間後における、qRT-PCRによって評価したヒト心臓線維芽細胞における心筋細胞マーカー遺伝子発現を示す(n=3、H/M=20のMOI、*対shp63+H/Mでp<0.05)。
図6D図6Dは、p63-TIDベクターを50の感染多重度(MOI)で使用した示される処置の2週間後における、qRT-PCRによって評価したヒト心臓線維芽細胞における線維芽細胞マーカー遺伝子発現を示す(n=3、H/M=20のMOI、*対shp63+H/Mでp<0.05)。
【0037】
図7A図7A-Dは、ヒト心臓線維芽細胞の分化のための実験設計およびその結果を示す図である。図7Aは、GFP(adGFP、対照)、Etsバリアント2(ETV2)、または血管内皮成長因子(VEGF)をコードするアデノウイルスベクター、ならびにGFP(GFP、対照)、GMT(Gata4(GATA結合タンパク質4)、Mef2c(筋細胞エンハンサー因子2c)、およびTbx5(t-ボックス転写因子5))、GMTd(Gata4、Mef2c、およびTEAD1(TEAドメインファミリーメンバー1)、またはTIDH/M(p63-TID+H/M)をコードするアデノウイルスベクターの遅延送達(すなわち、逐次的かつ時間的に異なる送達)のための実験設計を示す。
図7B図7Bは、図7Aに概説される実験設計の後のcTnTの相対的mRNA発現を示す(n=3)。
図7C図7Cは、GFP(adGFP、対照)、Etsバリアント2(ETV2)、または血管内皮成長因子(VEGF)をコードするアデノウイルスベクター、ならびにGFP(GFP、対照)、GMT(Gata4、Mef2c、およびTbx5)、GMTd(Gata4、Mef2c、およびTEAD1)、またはTIDH/M(p63-TID+ H/M)をコードするアデノウイルスベクターの同時送達(すなわち、単一または複数の組成物が同じ状況の間に送達される)のための実験設計を示す。
図7D図7Dは、図7Cに概説される実験設計の後のcTnTの相対的mRNA発現を示す(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つまたは複数の要素、方法ステップ、および/または方法からなり得るか、またはそれから本質的になり得る。本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物と関連して実装され得ることが、企図される。
【0039】
「心臓の医学的状態」という用語は、本明細書において使用される場合、心臓機能に影響を及ぼすものを含む、心臓組織に影響を及ぼす任意の医学的状態を指す。
【0040】
「クロマチン不安定化剤」という用語は、1つまたは複数の因子の凝縮されたゲノムDNAへのアクセスを容易にする、1つまたは複数の化合物を指す。
【0041】
「心臓細胞リプログラミング因子」という用語は、本明細書において使用される場合、心臓内の分化した細胞の心筋細胞への分化転換を増強または促進する1つまたは複数の組成物を指す。
【0042】
本開示の実施形態は、心臓における心筋細胞の数を増加させることが治療となるであろう任意の心臓の医学的状態の治療または予防のための方法および組成物を含む。特定の実施形態において、心臓におけるインビボ細胞が、心筋細胞になるようにリプログラミングされる。具体的な実施形態において、これは、有効量のp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を提供することによって、少なくとも部分的に達成される。具体的な実施形態において、核酸および/またはペプチドおよび/またはポリペプチドは、心臓における心筋細胞ではない細胞を心筋細胞になるようにリプログラミングすることを可能にするために、心臓に直接的に送達される。
I. p63-TID組成物
【0043】
本開示の実施形態は、p63-トランス活性化阻害性ドメイン(p63-TID)に関連する方法および組成物を含む。具体的な実施形態において、p63-TID(またはそのフラグメントおよび/もしくは誘導体)は、任意の種類のp63活性のドミナントネガティブ阻害剤として作用する。具体的な実施形態において、p63-TID(またはそのフラグメントおよび/もしくはその誘導体)は、アイソフォームTap63および/またはΔNp63のドミナントネガティブ阻害剤として作用する。具体的な実施形態において、p63-TIDは、p63のエピジェネティック作用を阻害および/もしくはサイレンシングし、かつ/または心臓発生性リプログラミング遺伝子の活性化を増強させるように作用する。具体的な実施形態において、p63-TIDは、心臓分化を妨げることが知られている線維発生性遺伝子の下方調節を促進する。具体的な実施形態において、p63-TIDは、潜在的な癌遺伝子を含むがこれらに限定されない、所望される心臓分化作用とは無関係の遺伝子の活性化および/またはサイレンシングを回避する、HDACに誘導されるリプログラミング戦略を提供する。p63-TID(またはそのフラグメントおよび/もしくは誘導体)ならびに/またはそれをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドベクターを含む組成物が、任意の心臓の医学的状態の有効な処置に利用される。
【0044】
p63-TIDポリペプチドの例は、以下の通りである。
MTTIYQIEHYSMDDLASLKIPEQFRHAIWKGILDHRQLHEFSSPSHLLRTPSSASTVSVGSSETRGERVIDA(配列番号1)
【0045】
p63-TIDをコードし得る核酸配列の例は、以下の通りである。
ATGACCACCATCTATCAGATTGAGCATTACTCCATGGATGATCTGGCAAGTCTGAAAATCCCTGAGCAATTTCGACATGCGATCTGGAAGGGCATCCTGGACCACCGGCAGCTCCACGAATTCTCCTCCCCTTCTCATCTCCTGCGGACCCCAAGCAGTGCCTCTACAGTCAGTGTGGGCTCCAGTGAGACCCGGGGTGAGCGTGTTATTGATGCTTAA(配列番号2)
【0046】
p63-TIDは、ヒト細胞から単離され、したがって、もはや自然界に存在していなくてもよいか、またはある特定の実施形態においては、組換えであってもよい。本明細書に言及されるように、配列番号1の天然の配列が、組換え手段によって生成される場合、結果として得られるポリペプチドは、組換えp63-TIDと称され得る。組換えp63-TIDの別の例は、標識またはタグを含む。p63-TIDの実施形態は、その機能性誘導体および/または機能性フラグメントを含み、誘導体またはフラグメントは、それが、単独で、または1つもしくは複数の心臓細胞リプログラミング因子と組み合わせてのいずれかで、細胞がフラグメントに曝露された場合に細胞のリプログラミングを可能にする能力を有する場合、機能性であると考えることができる。そのような活性は、例えば、qPCR、フローサイトメトリー、免疫蛍光、および/またはビーティングアッセイによるものを含む、任意の好適な手段によって測定することができる。特定の実施形態において、p63-TIDまたはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体は、可溶性である。p63-TIDまたはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体は、融合タンパク質に含まれていてもよく、または含まれていなくてもよい。
【0047】
p63-TIDタンパク質組成物は、標準的な分子生物学技法によるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然の供給源からのタンパク質化合物の単離、またはタンパク質材料の化学合成を含む、当業者に公知の任意の技法によって作製され得る。p63-TIDコーディング領域は、本明細書に開示されるかまたは当業者には公知であろう技法を使用して、増幅および/または発現させることができる。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの様々な市販調製物が、当業者には公知である。
【0048】
ある特定の実施形態において、p63-TID(またはそのフラグメントおよび/もしくは誘導体)タンパク質化合物は、精製されていてもよい。一般に、「精製された」とは、特定のまたはタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド組成物が、様々な他のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを除去するための分画処理に供されたものを指し、その組成物は、例えば、タンパク質アッセイによって評価され得るように、特定のまたは所望されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドについて当業者には公知であろうように、その活性を実質的に保持する。そのような誘導体およびフラグメントを含む、p63-TIDの生物学的機能性同等物を、用いることができる。本発明によるp63-TIDポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質の構造には改変および/または変化が行われてもよいため、類似または改善された特徴を有する分子を得ながら、そのような生物学的機能性同等物もまた、本発明内に包含される。
【0049】
いくつかの実施形態において、p63-TIDは、配列番号1としてを含め、タンパク質形態で利用される。p63-TIDの機能性誘導体またはフラグメントが利用される事例において、p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号1と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、もしくは20個、またはそれよりも多くのアミノ酸変更を含み得る。p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号1のN末端トランケーションを含んでもよく、例えば、トランケーションは、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、もしくは60個を上回らないアミノ酸であるか、またはトランケーションは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、もしくは60個のアミノ酸である。p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号1のC末端トランケーションを含んでもよく、例えば、トランケーションは、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、もしくは60個を上回らないアミノ酸であるか、または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、もしくは60個のアミノ酸である。p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号1における内部欠失を含んでもよく、例えば、内部欠失は、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、もしくは60個を上回らないアミノ酸であるか、または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、もしくは60個のアミノ酸である。特定の実施形態において、p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号1に対して、少なくともまたは厳密に、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である配列を含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、p63-TIDは、配列番号2などの核酸形態で利用される。p63-TID核酸の機能性誘導体またはフラグメントが利用される事例において、p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号2と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、もしくは20個、またはそれよりも多くの違いを含んでもよく、これらは、ゆらぎ位置にあってもよく、またはそうでなくてもよい。p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号2の5’末端にトランケーションを含んでもよく、例えば、トランケーションは、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、60個を上回らない、75個を上回らない、90個を上回らない、100個を上回らない、110個を上回らない、125個を上回らない、もしくはそれよりも多くのヌクレオチドであるか、またはトランケーションは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、75個、90個、100個、110個、125個、もしくはそれよりも多くのヌクレオチドである。p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号2の3’末端のトランケーションを含んでもよく、例えば、トランケーションは、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、60個を上回らない、75個を上回らない、90個を上回らない、100個を上回らない、110個を上回らない、125個を上回らない、もしくはそれよりも多くのヌクレオチドであるか、または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、75個、90個、100個、110個、125個、もしくはそれよりも多くのヌクレオチドである。p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号2における内部欠失を含んでもよく、例えば、内部欠失は、1個を上回らない、2個を上回らない、3個を上回らない、4個を上回らない、5個を上回らない、6個を上回らない、7個を上回らない、8個を上回らない、9個を上回らない、10個を上回らない、12個を上回らない、15個を上回らない、20個を上回らない、25個を上回らない、30個を上回らない、35個を上回らない、40個を上回らない、45個を上回らない、50個を上回らない、55個を上回らない、60個を上回らない、75個を上回らない、90個を上回らない、100個を上回らない、110個を上回らない、125個を上回らない、もしくはそれよりも多くのヌクレオチドであるか、または少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、75個、90個、100個、110個、125個、もしくはそれよりも多くのヌクレオチドである。特定の実施形態において、p63-TIDのその機能性誘導体またはフラグメントは、配列番号2に対して、少なくともまたは厳密に、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一である配列を含み得る。任意の機能性フラグメントおよび/または機能性誘導体は、全長配列番号1ポリペプチドの生物学的活性を保持するであろう。
【0051】
具体的な実施形態において、本開示は、ポリペプチドとしてp63-TIDをコードする核酸配列を含む組換えベクターに含まれる核酸として、p63-TIDを利用することを包含する。特定の実施形態において、組換えベクターは、配列番号1をその中のすべての連続したアミノ酸を含めてコードする、核酸配列を含む。具体的な態様において、組換えベクターは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、もしくはレトロウイルス)、または非ウイルスベクター(例えば、プラスミド、トランスポゾンなど)である。
【0052】
p63-TIDの生物学的機能性同等物は、異なる配列を含むように操作されていながら同時に「野生型」または標準的なタンパク質をコードする能力を保持するポリヌクレオチドから産生させることができる。これは、遺伝子コードの縮重、すなわち、同じアミノ酸をコードする複数のコドンの存在により、達成することができる。1つの例において、当業者であれば、ポリヌクレオチドがタンパク質をコードする能力を破壊することなく、そのポリヌクレオチドに制限酵素認識配列を導入することを望む場合がある。
【0053】
別の例において、p63-TIDポリヌクレオチドは、より大きな変化を有する生物学的機能性同等物であり得る(それをコードし得る)。ある特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原結合領域、基質分子上の結合部位、受容体などといった構造体との相互結合能力の明らかな消失を伴うことなく、タンパク質構造体において他のアミノ酸と置換され得る。構造的変化は、タンパク質がその設計された機能を実行する能力に影響するものではないため、いわゆる「保存的」変化は、タンパク質の生物学的活性を破壊しない。したがって、様々な変化が、本発明の目的を依然として満たしながら、本明細書に開示される遺伝子およびタンパク質の配列に行われてもよいことが、本発明者らによって企図される。
【0054】
機能性同等物に関して、「生物学的に機能性の同等な」タンパク質および/またはポリヌクレオチドの定義には、許容されるレベルの同等な生物学的活性を有する分子を保持しながら分子の定義された部分内で行われ得る変化の数には限度があるという概念が内在されることが、当業者には十分に理解される。生物学的機能性同等物は、したがって、選択されたアミノ酸(またはコドン)において置換され得るタンパク質(およびポリヌクレオチド)として、本明細書に定義される。
【0055】
一般に、分子の長さが短いほど、機能を保持しながら分子内で行うことができる変化は少ない。より長いドメインは、中程度の数の変化を有し得る。全長タンパク質は、多数の変化に対してもっとも高い寛容性を有するであろう。しかしながら、構造に高度に依存性であるある特定の分子またはドメインは、改変をほとんどまたはまったく寛容しない場合があることを、理解しなければならない。
【0056】
アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。アミノ酸側鎖置換基のサイズ、形状、および/または種類の分析により、アルギニン、リジン、および/もしくはヒスチジンは、すべてが正に荷電した残基であること、アラニン、グリシン、および/もしくはセリンは、すべてが小さなサイズであること、ならびに/またはフェニルアラニン、トリプトファン、および/もしくはチロシンは、すべてが概して類似の形状を有することがわかる。したがって、これらの考察に基づいて、アルギニン、リジン、および/もしくはヒスチジン、アラニン、グリシン、および/もしくはセリン、ならびに/またはフェニルアラニン、トリプトファン、および/もしくはチロシンは、本明細書において、生物学的機能性同等物として定義される。
【0057】
より定量的な変化を達成するためには、アミノ酸の疎水親水性インデックスが、考慮され得る。それぞれのアミノ酸は、疎水性および/または荷電特徴に基づいて疎水親水性インデックスが割り当てられており、これらの値は、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(0.4)、スレオニン(0.7)、セリン(0.8)、トリプトファン(0.9)、チロシン(1.3)、プロリン(1.6)、ヒスチジン(3.2)、グルタミン酸(3.5)、グルタミン(3.5)、アスパラギン酸(3.5)、アスパラギン(3.5)、リジン(3.9)、および/またはアルギニン(4.5)である。
【0058】
タンパク質に相互の生物学的機能を付与することにおける疎水親水性アミノ酸インデックスの重要性は、一般に、当該技術分野において理解されている(Kyte & Doolittle, 1982、参照により本明細書に組み込まれる)。ある特定のアミノ酸が、類似の疎水親水性インデックスおよび/もしくはスコアを有する他のアミノ酸と置換され得、ならびに/または依然として類似の生物学的活性を保持し得ることは、公知である。疎水親水性インデックスに基づいて変化を行う場合、疎水親水性インデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが、特に好ましく、±0.5以内のものが、さらにより特に考慮される。
【0059】
類似のアミノ酸の置換は、特に、本発明のある特定の実施形態にあるように、それによって作製される生物学的機能性同等物タンパク質および/またはペプチドが免疫学的実施形態における使用を意図する場合に、親水性に基づいて効果的に行われ得ることもまた、当該技術分野において理解される。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性によって決定されるタンパク質のもっとも高い局所平均親水性が、その免疫原性および/または抗原性、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。
【0060】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(0.5)、ヒスチジン(0.5)、システイン(1.0)、メチオニン(1.3)、バリン(1.5)、ロイシン(1.8)、イソロイシン(1.8)、チロシン(2.3)、フェニルアラニン(2.5)、トリプトファン(3.4)。類似の親水性値に基づいて変化を行う場合、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが、特に好ましく、±0.5以内のものが、さらにより特に好ましい。
【0061】
本開示は、多くの態様において、適切なポリヌクレオチドの転写および翻訳を介した細胞内(in cyto)でのペプチドおよびポリペプチドの合成に依存する。これらのペプチドおよびポリペプチドは、20個の「天然の」アミノ酸およびそれらの翻訳後改変形態を含むであろう。しかしながら、インビトロペプチド合成は、改変されたおよび/または通常ではないアミノ酸の使用を許容する。例示であるが限定されない改変されたおよび/または通常ではないアミノ酸は、当該技術分野において公知である。
【0062】
上述の生物学的機能性同等物に加えて、本発明者らはまた、本発明のペプチドまたはポリペプチドの重要な部分を模倣する、構造的または機能的に類似の化合物を製剤化することができることも企図する。ペプチド模倣体と称され得るそのような化合物は、本発明のペプチドと同じ様式で使用することができ、したがって、これもまた、機能性同等物である。
【0063】
タンパク質の二次および三次構造のエレメントを模倣するある特定の模倣体は、Johnson et al. (1993)に記載されている。ペプチド模倣体の使用の背後にある根本的な原理は、タンパク質のペプチド骨格が、主として、アミノ酸側鎖を分子相互作用、例えば、抗体および/または抗原のものを促進するような様式で配向させるために存在することである。ペプチド模倣体は、したがって、天然の分子と類似の分子相互作用を許容するように設計される。そのようなペプチド模倣体には、任意の天然のアミノ酸またはアミノ酸側鎖を組み込まないが、p63-TIDペプチド配列に基づいて設計された、p63-TIDと機能的に置き換わる能力を有する、化合物が含まれる。
II.医薬調製物
【0064】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に溶解または分散された、有効量のp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、適宜、動物、例えば、例としてヒトに投与した場合に、有害、アレルギー、または他の不適切な反応をもたらさない、分子実体および組成物を指す。少なくとも1つのp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含む医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed. Lippincott Williams and Wilkins, 2005によって例証されるように、本開示を踏まえて、当業者には公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与に関して、調製物が、FDA Office of Biological Standardsによって要求される滅菌性、発熱性、全般的な安全性、および純度の標準を満たす必要があることが、理解されるであろう。
【0065】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、当業者には公知であろうように、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素、同様の材料、およびこれらの組合せが含まれる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。任意の従来的な担体は、活性成分と不適合である場合を除いて、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0066】
p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、それが固体、液体、またはエアロゾル形態で投与されるか、およびそれが注射などの投与経路のために滅菌である必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体を含み得る。本発明は、心筋内、心内膜、心外膜、および/もしくは冠動脈内に、直接的、カテーテル、もしくは冠動脈内注射によって、静脈内、皮内、経皮、くも膜内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、腟内、直腸内、局所、筋肉内、皮下、経粘膜、経口、局所、局部、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接的に槽に入れる局所灌流、カテーテルを介して、洗浄液を介して、クリームで、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、または他の方法もしくは前述のものの組合せによって、投与され得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0067】
p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、遊離塩基、中性、または塩の形態で、組成物に製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基を用いて形成されるもの、または例えば塩酸もしくはリン酸など無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸などの有機酸を用いて形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、またはプロカインなどの有機塩基に由来し得る。製剤化された後、溶液は、投薬製剤と適合性のある様式および治療有効性となる量で、投与されるであろう。製剤は、様々な剤形、例えば、非経口投与のために製剤化されるもの、例えば、注射用溶液、または肺への送達のためのエアロゾル、または消化管投与のために製剤化されるもの、例えば、薬物放出カプセルなどで容易に投与される。
【0068】
さらに、本開示によると、投与に好適な本開示の組成物は、不活性希釈剤ありまたはなしで、薬学的に許容される担体中に提供される。担体は、吸収可能であるべきであり、これには、液体、半固体、すなわち、ペースト、または固体担体が含まれる。任意の従来的な媒体、薬剤、希釈剤、または担体が、レシピエントまたは中に含まれる組成物の治療的有効性に対して有害である場合を除き、本発明の方法の実施における使用のための投与可能な組成物におけるその使用は、適切である。担体または希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤など、またはこれらの組合せが挙げられる。組成物はまた、1つまたは複数の成分の酸化を遅延させるための様々な抗酸化剤を含んでもよい。加えて、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されない、保存剤、例えば、様々な抗細菌剤および抗真菌剤によって、微生物の作用の予防を行うことができる。
【0069】
本開示によると、組成物は、任意の従来的かつ実用的な様式で、すなわち、溶液、懸濁化、乳化、混合、カプセル封入、吸収などによって、担体と組み合わされる。そのような手順は、当業者には慣例的である。
【0070】
本開示の特定の実施形態において、組成物は、半固体または固体担体と組み合わされるか、または十分に混合される。混合は、粉砕などの任意の従来的な様式で行うことができる。組成物を治療活性の消失、すなわち、胃内での変性から保護するために、安定化剤もまた、混合プロセスで添加することができる。組成物における使用のための安定化剤の例としては、緩衝化剤、アミノ酸、例えば、グリシンおよびリジン、炭水化物、例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。
【0071】
さらなる実施形態において、本開示は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、1つまたは複数の脂質、および水性溶媒を含む、脂質ビヒクル医薬組成物の使用に関し得る。本明細書において使用される場合、「脂質」という用語は、特徴として水中に不溶性であり、有機溶媒で抽出可能である、広範な物質のうちのいずれかを含むと定義されるであろう。この広範なクラスの化合物は、当業者に周知であり、「脂質」という用語が本明細書において使用される場合、それは、任意の特定の構造に制限されない。例としては、長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含む化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在してもよく、または合成(すなわち、ヒトによって設計もしくは産生されたもの)であってもよい。しかしながら、脂質は、通常、生物学的物質である。生物学的脂質は、当該技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエーテル結合脂肪酸を有する脂質、および重合可能な脂質、ならびにこれらの組合せが挙げられる。当然ながら、本明細書に具体的に記載されたもの以外の当業者によって脂質として理解される化合物もまた、本発明の組成物および方法によって包含される。
【0072】
当業者であれば、脂質ビヒクル中に組成物を分散させるために利用することができる広範な技法に精通しているであろう。例えば、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、当業者に公知の任意の手段によって、脂質を含む溶液中に分散させてもよく、脂質とともに溶解させてもよく、脂質で乳化させてもよく、脂質と混合してもよく、脂質と組み合わせてもよく、脂質と共有結合で結合してもよく、脂質中の懸濁液として含まれてもよく、ミセルもしくはリポソームとともに含まれるかもしくはそれらと複合体を形成してもよく、またはそれ以外では、脂質もしくは脂質構造体と会合してもよい。分散は、リポソームの形成をもたらす場合があるか、またはもたらさない場合もある。
【0073】
動物患者に投与される本開示の組成物の実際の投薬量は、身体的および生理学的因子、例えば、体重、状態の重症度、処置されている疾患の種類、以前または並行する治療介入、患者の特発症、ならびに投与の経路によって決定され得る。投薬量および投与の経路に応じて、好ましい投薬量および/または有効量の投与回数は、対象の応答に応じて変動し得る。投与の責任のある実施者が、いずれの事象においても、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に適切な用量を決定するであろう。
【0074】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の実施形態において、活性化合物は、その単位の重量の約2%~約75%、または例えば約25%~約60%、およびその中の誘導可能な任意の範囲を構成し得る。天然には、それぞれの治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、好適な投薬量が、任意の所与の単位用量の化合物で得られるであろう様式で、調製され得る。可溶性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与の経路、製品の保管寿命、ならびに他の薬理学的検討事項などの因子が、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、そのため、様々な投薬量および処置レジメンが望ましい可能性がある。
【0075】
他の非限定的な例において、用量は、投与1回当たり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重またはそれよりも多くまで、およびその中の誘導可能な任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙される数字から誘導可能な範囲の非限定的な例において、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲が、上述の数字に基づいて、投与され得る。
A.消化管組成物および製剤
【0076】
本開示の実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、消化管経路を介して投与されるように製剤化される。消化管経路は、組成物が消化管と直接的に接触する、すべての可能性のある投与経路を含む。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、心臓に直接的に投与されてもよいが、代替的な実施形態においては、組成物は、経口、頬内、直腸、または舌下に送達される。そのため、これらの組成物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体を用いて製剤化され得るか、またはそれらは、硬もしくは軟シェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、またはそれらは、錠剤に圧縮されてもよく、またはそれらは、食事の食物と直接的に組み込まれてもよい。
【0077】
ある特定の実施形態において、活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウエハなどの形態で使用され得る(Mathiowitz et al., 1997、Hwang et al., 1998、米国特許第5,641,515号、同第5,580,579号、および同第5,792, 451号、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、以下を含み得る:結合剤、例えば、例として、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチン、またはそれらの組合せ、賦形剤、例えば、例として、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、またはこれらの組合せ、崩壊剤、例えば、例として、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、またはこれらの組合せ、滑沢剤、例えば、例として、ステアリン酸マグネシウム、甘味剤、例えば、例として、スクロース、ラクトース、サッカリン、またはこれらの組合せ、香味剤、例えば、例として、ペパーミント、ウインターグリーンの油、チェリー香味剤、オレンジ香味剤など。投薬量単位形態がカプセル剤である場合、それは、上述の種類の材料に加えて、液体担体を含み得る。様々な他の材料が、コーティング剤として、またはそれ以外では投薬量単位の物理的形態を改変するために、存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、糖、または両方でコーティングされてもよい。剤形がカプセル剤である場合、それは、上述の種類の材料に加えて、担体、例えば、液体担体を含み得る。ゼラチンカプセル剤、錠剤、または丸剤は、腸溶コーティングされてもよい。腸溶コーティングは、pHが酸性である胃または上部消化管における組成物の変性を予防する。例えば、米国特許第5,629,001号を参照されたい。小腸に到達すると、そこでの塩基性pHにより、コーティングが溶解され、組成物が放出され、特化した細胞、例えば、上皮腸細胞およびパイエル板M細胞による吸収が可能となる。エリキシル剤のシロップは、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、ならびに香味剤、例えば、チェリーまたはオレンジ味を含み得る。当然ながら、任意の投薬量単位形態を調製する際に使用される任意の材料は、薬学的に純粋、または利用される量で実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性化合物は、持続放出調製物および製剤に組み込まれてもよい。
【0078】
経口投与のために、本開示の組成物は、代替的には、1つまたは複数の賦形剤とともに、洗口液、歯磨剤、バッカル錠、口腔スプレー、または舌下による経口投与製剤の形態で組み込まれ得る。例えば、洗口液は、活性成分を、必要とされる量で、適切な溶媒、例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル溶液)中に組み込んで調製され得る。あるいは、活性成分は、経口溶液、例えば、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、および重炭酸カリウムを含むものに組み込まれてもよく、または歯磨剤に分散させてもよく、または治療有効量で、水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤、および保水剤を含み得る組成物に添加されてもよい。あるいは、組成物は、舌下に置かれ得るか、またはそれ以外では口内で溶解させることができる、錠剤または溶液の形態にしてもよい。
【0079】
他の消化管投与様式に好適である追加の製剤としては、坐剤が挙げられる。坐剤は、直腸内に挿入するための、様々な重量および形状の固体剤形であり、通常、薬用である。挿入後、坐剤は、軟化し、腸内液中に融解または溶解される。一般に、坐剤に関して、従来的な担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリド、またはこれらの組合せを挙げることができる。ある特定の実施形態において、坐剤は、例えば、約0.5%~約10%および好ましくは約1%~約2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成され得る。
B.非経口組成物および製剤
【0080】
さらなる実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、非経口経路を介して投与され得る。本明細書において使用される場合、「非経口」という用語は、消化管をバイパスする経路を含む。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、心筋内、心内膜、心外膜、および/または冠動脈内に、直接的なカテーテルまたは冠動脈内注射によって、静脈内に、皮内に、筋肉内に、動脈内に、くも膜内に、皮下、または腹腔内に、投与され得るが、これらに限定されない。米国特許第6,7537,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号、および同第5,399,363(それぞれ、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。
【0081】
遊離塩基または生理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースと好適に混合した水において調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油において、調製され得る。保管および使用の通常の条件下において、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤を含む。注射での使用に好適な医薬形態としては、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる(米国特許第5,466,468号、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。あらゆる事例において、形態は、滅菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。これは、製造および保管の条件下において安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、ならびに/または植物油を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用からの保護は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの事例において、等張化剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによって、もたらすことができる。
【0082】
水溶液での非経口投与については、例えば、溶液は、必要に応じて、好適に緩衝化し、液体希釈剤は、まず、十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にするべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に好適である。これに関連して、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示を踏まえ、当業者には公知であろう。例えば、1投薬量を、等張NaCl溶液に溶解させ、皮下点滴液を添加するか、または提案された注入部位に注射してもよい(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。投薬量におけるなんらかの変動が、処置されている対象の状態に応じて、必要に応じて生じるであろう。投与の責任者が、いずれの場合であっても、個々の対象に適した用量を判定するであろう。さらに、ヒト投与に関して、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって要求される滅菌性、発熱性、全般的な安全性、および純度の標準を満たす必要がある。
【0083】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、上記に列挙された様々な他の成分とともに、活性化合物を、必要とされる量で、適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌を行うことによって、調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌した活性成分を、基礎分散培地および上述のもの以外の必要とされる他の成分を含む、滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の事例において、調製の好ましい方法は、活性成分に加えて任意の追加の所望される成分の粉末を、事前に滅菌濾過した溶液から得る、真空乾燥および凍結乾燥技法である。粉末組成物は、滅菌剤ありまたはなしで、液体担体、例えば、例として、水または食塩水と混合される。
C.その他の医薬組成物および製剤
【0084】
本開示の他の具体的な実施形態において、活性化合物p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、様々なその他の経路を通じた投与、例えば、局所(すなわち、経皮)投与、経粘膜投与(鼻内、腟内など)、および/または吸入のために製剤化され得る。
【0085】
局所投与のための医薬組成物は、医薬適用、例えば、軟膏、ペースト剤、クリーム、または粉末用に製剤化される活性化合物を含み得る。軟膏には、局所適用のためのすべての油性、吸着、エマルション、および水溶性基剤の組成物が含まれ、一方でクリームおよびローションは、エマルション基剤のみを含む組成物である。局所投与される医薬は、皮膚を通じた活性成分の吸着を促進するための浸透促進剤を含み得る。好適な浸透促進剤としては、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、およびラウロカプラムが挙げられる。局所適用のための組成物の可能性のある基剤としては、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリーム、およびワセリン、ならびに任意の他の好適な吸収、エマルション、または水溶性軟膏基剤が挙げられる。局所調製物はまた、活性成分を保存し、均質な混合物を提供するために必要に応じて乳化剤、ゲル化剤、および抗微生物保存剤を含み得る。本発明の経皮投与はまた、「パッチ」の使用も含み得る。例えば、パッチは、1つまたは複数の活性物質を、所定の速度で、かつ固定期間にわたって連続的な様式で供給することができる。
【0086】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、点眼剤、鼻内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。組成物を鼻内エアロゾルスプレーを介して肺内に直接的に送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号に記載されている(それぞれ、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。同様に、鼻内微粒子樹脂(Takenaga et al., 1998)およびリゾホスファチジル-グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)を使用した薬物の送達もまた、医薬技術分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号に記載されている(参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。
【0087】
エアロゾルという用語は、液体粒子の微粉化した固体が、液状化または加圧ガス噴射剤中に分散されたコロイド系を指す。吸入のための本発明の典型的なエアロゾルは、液体噴射剤または液体噴射剤と好適な溶媒との混合物中の活性成分の懸濁液からなるであろう。好適な噴射剤としては、炭化水素および炭化水素エーテルが挙げられる。好適な容器は、噴射剤の圧力要件に応じて変動するであろう。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、ならびに症状の重症度および応答に応じて変動するであろう。
III.処置の方法の実施形態
【0088】
本開示の実施形態は、1つまたは複数の心臓関連の医学的状態の治療および/または予防に関連する方法および/または組成物を対象としている。本開示の実施形態は、心臓に存在する心筋細胞ではない細胞のリプログラミングを通じた、筋肉組織、例えば、心筋組織を含む組織の再生に関する。ある特定の実施形態は、少なくとも、例えば心臓疾患、心筋症、心臓毒性、うっ血性心不全、虚血性心臓疾患、心筋梗塞、冠動脈疾患、肺性心、炎症性心臓疾患、炎症性心臓肥大、心筋炎、先天性心臓疾患、リウマチ性心臓疾患、心臓収縮機能障害、心臓拡張機能障害、狭心症、拡張型心筋症、特発性心筋症、または心臓線維化をもたらす他の状態を含む、心臓の医学的状態の逆転(またはその少なくとも1つの症状の改善)に関する。
【0089】
本開示の具体的な態様において、心筋症が、処置しようとする心臓の医学的状態である。心臓の医学的状態(例えば、心筋症を含む)は、例えば、長期間の高血圧、心臓弁の問題、心臓組織損傷(例えば、1回もしくは複数回の以前の心臓発作または慢性もしくは急性および/もしくは再発性の虚血性心臓疾患のエピソードもしくは後遺症)、慢性的な心拍数の高さ、代謝障害、例えば、甲状腺疾患または糖尿病、必須ビタミンまたはミネラル、例えば、チアミン(ビタミンB-1)、セレン、カルシウムおよび/またはマグネシウムの栄養的欠乏、妊娠、アルコール乱用、麻薬または処方薬、例えば、コカインまたは抗うつ薬、例えば、三環系抗うつ薬のものを含む、薬物乱用、がんを処置するための一部の化学療法薬の使用(アドリアマイシンを含む)、ある特定のウイルス感染症、ヘモクロマトーシス、ならびに/あるいは未知の原因または検出されていない原因、すなわち、特発性心筋症を含む、様々な特徴のうちの1つまたは複数によって引き起こされ得る。
【0090】
いくつかの事例において、本開示の方法および組成物は、1つもしくは複数の心臓の医学的状態の処置もしくは予防、または1つもしくは複数の心臓の医学的状態の発症の遅延、または1つもしくは複数の心臓の医学的状態の1つもしくは複数の症状の程度の低減のために、用いられる。具体的な事例において、1つまたは複数の症状のそのような予防、遅延もしくは発症、または程度の低減は、心臓の医学的状態に対するリスクにある個体において、生じる。例示的なリスク因子としては、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:年齢、性別(男性であるが、女性においても生じる)、高血圧、高血清コレステロールレベル、喫煙、過剰なアルコール消費、糖消費、家族もしくは個人の病歴、肥満、身体活動の欠如、心理社会的因子、真性糖尿病、体重超過、遺伝的素因、ならびに/または大気汚染への曝露。
【0091】
本開示の具体的な態様は、心臓組織内のある特定の細胞の分化転換のための、少なくとも1つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドのその組織への送達に関する。特定の実施形態において、核酸が活性剤であり、一方で、いくつかの実施形態においては、核酸から産生されたポリペプチドが、活性剤である。組織は、任意の種類のものであり得るが、特定の事例において、それは、心筋および/または瘢痕組織である。具体的な実施形態において、本開示の方法および組成物は、心筋細胞への、成体に存在する心臓始原細胞の分化、および/または心筋細胞ではない分化細胞、例えば、線維芽細胞の分化転換を可能にする。
【0092】
本開示の実施形態は、分化転換を刺激するか、または細胞(例えば、心筋細胞を含む、筋肉細胞)および/もしくは組織(心臓組織を含む)のリプログラミングを誘導する、1つまたは複数のポリヌクレオチド(本明細書において核酸とも称され得る)またはそこから産生されたポリペプチドの送達を含む。そのような実施形態の具体的な態様は、1つまたは複数の心臓の医学的状態の逆転をもたらす。そのような実施形態に関するある特定の態様は、心臓の医学的状態の少なくとも1つの症状の改善をもたらす。例示的な実施形態において、心臓の医学的状態は、心不全である。心不全は、冠動脈疾患および心臓発作、高血圧、心臓弁不全、心筋症(例えば、疾患、感染症、アルコール乱用、および薬物、例えば、コカインもしくは化学療法に使用されるいくつかの薬物の毒性作用によって引き起こされる)、特発性心筋症、ならびに/または遺伝的因子を含む、1つまたは複数の原因の結果であり得る。
【0093】
ある特定の実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、ウイルスベクターに含まれる。ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、少なくともまたは厳密に、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、もしくは150、またはその中の誘導可能な任意の範囲の感染多重度で提供される。ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、20、50、または100の感染多重度で提供される。ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、50の感染多重度で提供される。
【0094】
本開示の実施形態の具体的であるが例示的な適応症としては、少なくとも、1)うっ血性心不全を含む心不全、2)心室リモデリングの予防、および/または3)心筋症への適用が挙げられる。他の適応症としては、冠動脈疾患、虚血性心臓疾患、心臓弁疾患なども挙げることができる。特定の実施形態において、本開示の方法および組成物は、確立されている心筋症、うっ血性心不全を逆転させること、および心室リモデリングの予防に十分である、心筋細胞再生を提供する。
【0095】
個体が、心筋症を有する事例において、心筋症は、虚血性または非虚血性心筋症であり得る。心筋症は、長期間の高血圧、心臓弁の問題、以前の心臓発作による心臓組織損傷、慢性的な心拍数の高さ、代謝障害、栄養欠乏、妊娠、アルコール乱用、薬物乱用、化学療法薬、ウイルス感染症、ヘモクロマトーシス、遺伝的状態、コレステロールレベルの上昇、またはこれらの組合せによって引き起こされ得る。心筋症はまた、原因が特定されていない、すなわち、特発性心筋症であってもよい。
【0096】
ある特定の実施形態において、個体における所望される位置で細胞を再生させる方法であって、その位置に、有効量の、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)の少なくとも1つの分子を送達するステップを含む、方法が存在する。いくつかの事例において、本方法は、p63-TIDと、例えば、HDACとの機械的相互作用を含む。特定の実施形態において、分子は、核酸形態で送達されるが、特定の実施形態においては、本開示のp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)の組成物のうちの1つまたは複数は、ポリペプチドである。具体的な実施形態において、組成物の送達位置は、心臓の領域である。送達ステップは、例えば、損傷した組織の領域内へ直接的に、静脈内灌流、冠動脈内心筋灌流、カテーテルによる動脈内器官灌流、または冠静脈洞灌流カテーテルを含め、心臓への直接的な注射を含み得る。
【0097】
本開示の実施形態は、例えば、心筋の再生および心筋性虚血傷害の逆転のための、方法および/または組成物を含む。具体的な実施形態において、心臓の医学的状態、例えば、例として、急性または慢性虚血傷害を有していた個体における哺乳動物心臓内の心臓瘢痕細胞(線維芽細胞)の成体心筋細胞へのリプログラミングのための方法が、存在する。ある特定の実施形態において、そのような方法は、少なくともp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびにいくつかの事例においては、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子、例えば、例として、Hand2および/もしくはミオカルディンを含む、組成物を用いて達成される。
【0098】
具体的な実施形態において、個体は、インビボまたはインサイチュ様式で処置されるが、代替的な実施形態においては、個体は、エキソビボ様式で、本開示によって包含される組成物で処置される。そのような実施形態において、本開示の核酸組成物に供そうとする細胞は、個体から得られたものまたは別の個体から得られたもののいずれかである。そのような細胞は、核酸組成物が細胞によって取り込まれるように、インビトロで核酸組成物に供され、細胞は、次いで、処置しようとする個体に送達される。
【0099】
具体的な態様において、個体には、追加の心臓の医学的状態の治療法が提供される。
IV.心臓細胞リプログラミング因子およびクロマチン不安定化剤の実施形態
【0100】
本開示のある特定の実施形態は、核酸に関し、いくつかの実施形態は、ポリペプチドまたはペプチドに関する。ある特定の態様において、核酸は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を含む。具体的な実施形態において、いずれの形態のp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)も、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子とともに利用される場合もされない場合もあり、また、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤とともに使用される場合もされない場合もある。
A.心臓細胞リプログラミング因子
【0101】
特定の実施形態において、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子は、本開示の方法において用いられ、これらの因子は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)と同時に提供されてもよく、または同時に提供されなくてもよい。特定の実施形態において、これらの因子は、個体が、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を受容した後に提供されるが、いくつかの事例においては、それらは、薬剤の前またはそれと同時に提供される。
【0102】
心臓細胞リプログラミング因子は、転写因子であってもよく、またはそうでなくてもよい。ある特定の化合物が、心臓細胞リプログラミング因子として有効であるかどうかを試験するために、標準的な方法を使用することができるが、特定の実施形態においては、この因子は、Hand2、ミオカルディン、Gata4、Mef2c、Tbx5、中胚葉後方タンパク質1(Mesp1)、miR-133、miR-1、Oct4、Klf4、c-myc、Sox2、ブラキウリ、Nkx2.5、ETS2、ESRRG、Mrtf-A、MyoD、ZFPM2、またはこれらの組合せである。化合物が、心臓細胞リプログラミング因子として作用するどうかを、それを線維芽細胞に投与し(例えば、レンチウイルスを使用して)、本明細書の他の箇所に例示されるようにcTnTに関してFACSを行うことによって、試験することができる。この因子は、この因子の特定のドメインの核酸、ポリペプチド、ペプチド、またはそれらの組合せとして、用いることができる。特定の実施形態において、Hand2および/またはミオカルディンが、核酸としてを含め、用いられる。具体的な態様において、少なくともHand2および/またはミオカルディンについては、核酸は、転写された核酸をコードするか、またはそれを含む。他の態様において、Hand2および/またはミオカルディン核酸は、それぞれ、Hand2および/またはミオカルディンの核酸セグメント、またはその生物学的機能性同等物を含む。具体的な態様において、Hand2および/またはミオカルディン核酸は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする。例示的なヒトHand2核酸は、National Center for Biotechnology InformationのGENBANK(登録商標)データベース、受託番号NM_021973にあり、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例示的なヒトミオカルディン核酸は、GENBANK(登録商標)受託番号AY764180にあり、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0103】
特定の実施形態において、心臓細胞リプログラミング因子の核酸またはポリペプチドの機能性フラグメントが、因子全体の核酸またはポリペプチドの代わりに利用される。Hand2またはミオカルディンの機能性フラグメント(例として)は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)単独で、またはHand2もしくはミオカルディンおよびp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)との併用のいずれかで、細胞がフラグメントに曝露され場合に細胞のリプログラミングを可能にするのに十分なものである。特定の実施形態において、Hand2核酸の機能性フラグメントは、Hand2ポリペプチドの少なくとも200個、180個、175個、160個、150個、140個、125個、110個、100個、90個、80個、75個、70個、60個、55個、50個、40個、30個、25個、または19個のアミノ酸をコードする。特定の実施形態において、ミオカルディン核酸の機能性フラグメントは、ミオカルディンポリペプチドの少なくとも900個、800個、700個、600個、500個、400個、300個、200個、100個、または50個のアミノ酸をコードする。いくつかの実施形態において、Hand2ポリペプチドおよびミオカルディンポリペプチドは、同じ核酸コンストラクトおよび/またはベクター上でコードされる。いくつかの実施形態において、Hand2ポリペプチドおよびミオカルディンポリペプチドは、2Aエレメントによって分離される。ある特定の実施形態において、Hand2ポリペプチドおよびミオカルディンポリペプチドは、P2Aエレメントによって分離される。ある特定の実施形態において、例示的なHand2ポリヌクレオチド配列は、配列番号3である、および/またはそれに含まれる。ある特定の実施形態において、例示的なミオカルディンポリヌクレオチド配列は、配列番号4である、および/またはそれに含まれる。
ATGTCTCTCGTGGGCGGATTTCCTCACCACCCTGTGGTGCACCATGAGGGCTATCCTTTTGCTGCCGCTGCCGCAGCCGCCGCTGCTGCTGCAGCTAGTAGATGTAGCCACGAGGAAAACCCCTACTTCCACGGCTGGCTGATCGGCCACCCTGAGATGAGCCCTCCAGATTACAGCATGGCCCTGAGCTACAGCCCTGAGTATGCTTCTGGAGCCGCTGGACTGGATCACTCTCATTATGGCGGAGTGCCTCCAGGCGCTGGACCTCCTGGACTGGGAGGACCTAGACCTGTGAAGAGAAGAGGCACCGCCAACCGGAAAGAGCGGAGAAGAACCCAGAGCATCAATAGCGCCTTCGCCGAGCTGAGAGAATGCATCCCTAATGTGCCCGCCGACACCAAGCTGAGCAAGATCAAAACCCTGCGGCTGGCCACCAGCTATATCGCCTATCTGATGGACCTGCTGGCCAAGGACGATCAGAATGGCGAGGCCGAGGCCTTCAAGGCCGAGATCAAGAAAACCGACGTGAAAGAGGAAAAGCGCAAGAAAGAGCTGAACGAGATCCTGAAGTCCACCGTGTCCAGCAACGACAAAAAGACCAAGGGCAGAACCGGCTGGCCTCAGCATGTGTGGGCTCTGGAACTGAAACAGGGCAGCGGC(配列番号3)
ATGACCCTGCTGGGCAGCGAGCACAGCCTGCTGATCAGATCCAAGTTCAGAAGCGTGCTGCAGCTGAGACTGCAGCAGAGAAGAACACAGGAACAGCTGGCCAACCAGGGCATCATCCCCCCACTGAAAAGACCTGCCGAGTTCCACGAGCAGAGAAAGCACCTGGACAGCGACAAGGCCAAGAACAGCCTGAAGCGGAAGGCCCGGAATAGATGCAATAGCGCCGACCTGGTGAACATGCACATCCTGCAGGCTTCCACCGCCGAGAGATCTATCCCTACAGCCCAGATGAAGCTGAAGAGAGCCAGACTGGCCGACGACCTGAATGAGAAGATTGCCCTGAGGCCTGGCCCCCTGGAACTGGTGGAAAAGAACATCCTGCCTGTGGACAGCGCCGTGAAAGAGGCCATCAAGGGCAATCAGGTGTCCTTCAGCAAGAGCACCGACGCCTTCGCCTTCGAGGAAGATTCTAGCTCTGACGGCCTGTCTCCTGATCAGACCAGATCTGAAGATCCTCAGAATAGCGCCGGCAGCCCTCCTGATGCCAAAGCCTCTGATACACCTTCTACCGGCAGCCTGGGCACCAATCAGGATCTGGCCTCTGGCAGCGAGAACGACAGAAATGATAGCGCCAGCCAGCCTAGCCACCAGTCTGATGCTGGAAAACAGGGCCTGGGCCCTCCTTCTACACCTATTGCTGTGCACGCCGCCGTGAAGTCTAAGAGCCTGGGCGACAGCAAGAACCGGCACAAGAAGCCTAAGGACCCCAAGCCCAAAGTGAAGAAGCTGAAGTACCACCAGTACATCCCCCCCGACCAGAAGGCCGAAAAGTCCCCTCCTCCTATGGATTCCGCCTACGCTAGACTGCTGCAACAGCAGCAGCTGTTCCTGCAGCTCCAGATCCTGTCTCAACAACAGCAACAGCAGCAGCACCGGTTCAGCTATCTGGGAATGCACCAGGCCCAGCTGAAAGAACCCAATGAGCAGATGGTCCGCAACCCCAATAGCAGCTCCACCCCTCTGAGCAATACCCCCCTGAGCCCTGTGAAGAATAGCTTTTCTGGCCAGACCGGCGTGTCCAGCTTTAAGCCTGGACCTCTGCCCCCCAACCTGGACGATCTGAAAGTGTCTGAACTGCGGCAGCAGCTGAGAATCAGAGGACTGCCTGTGTCTGGCACCAAGACCGCCCTGATGGATAGACTGAGGCCCTTTCAGGACTGCAGCGGCAACCCTGTGCCCAACTTTGGCGATATCACCACCGTGACCTTCCCCGTGACACCCAACACCCTGCCTAATTACCAGAGCAGCAGCTCTACCAGCGCCCTGAGCAATGGCTTCTACCACTTTGGCAGCACAAGCAGCAGCCCTCCAATCAGCCCTGCCTCTTCTGATCTGTCTGTGGCCGGAAGCCTGCCCGACACCTTTAATGATGCCAGCCCTAGCTTTGGCCTGCACCCTTCTCCAGTGCACGTGTGCACAGAGGAATCCCTGATGTCTAGCCTGAATGGCGGCTCTGTGCCTTCTGAGCTGGATGGCCTGGATTCCGAGAAGGACAAGATGCTGGTGGAAAAACAGAAAGTGATCAACGAGCTGACCTGGAAGCTGCAGCAGGAACAGAGACAGGTGGAAGAACTGCGGATGCAGCTGCAGAAGCAGAAGCGGAACAACTGCTCCGAGAAGAAGCCTCTGCCATTCCTGGCCGCCAGCATTAAGCAGGAAGAGGCCGTGTCAAGCTGCCCATTCGCCAGTCAGGTGCCAGTGAAGAGACAGAGCAGCTCCTCTGAATGTCACCCTCCTGCTTGTGAAGCTGCCCAGCTGCAGCCTCTGGGAAATGCCCATTGTGTGGAAAGCAGCGACCAGACCAATGTGCTGAGCAGCACCTTCCTGAGCCCTCAGTGTTCTCCTCAGCATTCTCCCCTGGGCGCTGTGAAGTCTCCACAGCACATTTCTCTGCCCCCTAGCCCCAACAACCCTCACTTTCTGCCATCTAGTTCTGGCGCCCAGGGCGAGGGACATAGAGTGTCTAGTCCTATCAGCAGCCAGGTCTGCACCGCTCAGAACTCTGGCGCTCATGATGGCCACCCTCCAAGCTTTAGCCCTCACTCTTCTAGCCTGCACCCACCTTTTAGCGGAGCCCAGGCTGATTCTTCTCATGGCGCTGGCGGCAATCCTTGCCCTAAGTCTCCTTGCGTGCAGCAGAAAATGGCCGGCCTGCACAGCTCTGACAAAGTGGGCCCTAAGTTCAGCATCCCCAGCCCCACCTTTAGCAAGTCTAGCAGCGCCATCAGCGAAGTGACCCAGCCTCCATCTTACGAGGATGCCGTGAAGCAGCAGATGACCAGATCCCAGCAGATGGACGAGCTGCTGGATGTGCTGATCGAGTCTGGCGAAATGCCTGCCGATGCCAGAGAGGATCACAGCTGTCTGCAGAAGGTGCCCAAGATCCCCAGAAGCTCCAGATCTCCTACCGCCGTGCTGACAAAGCCTAGCGCCTCTTTTGAGCAGGCCAGCAGCGGCAGCCAGATCCCTTTTGATCCTTACGCCACCGACAGCGACGAGCACCTGGAAGTGCTGCTGAATAGCCAGAGCCCTCTGGGCAAGATGAGCGACGTGACACTGCTGAAGATCGGCAGCGAGGAACCCCACTTCGATGGCATCATGGATGGCTTTTCTGGAAAGGCCGCCGAGGACCTGTTCAACGCCCACGAAATTCTGCCTGGCCCTCTGAGCCCTATGCAGACCCAGTTTAGCCCTAGCAGCGTGGACTCTAATGGCCTGCAGCTGTCCTTTACCGAGAGCCCCTGGGAGACAATGGAATGGCTGGACCTGACCCCCCCTAATAGCACACCTGGATTTTCTGCCCTGACCACCAGCAGCCCCTCTATCTTCAATATCGACTTCCTGGACGTGACCGACCTGAACCTGAACAGCAGCATGGACCTGCATCTGCAGCAGTGGTGA(配列番号4)
【0104】
具体的な実施形態において、配列番号3および/または4の一部またはすべては、本開示の方法において利用される。特定の実施形態において、配列番号3および/または4に対して特定の配列同一性を有するポリヌクレオチドが、本開示の方法において利用される。特定の事例において、配列番号3および/または4の機能性フラグメントが用いられ、「機能性」フラグメントという用語は、本明細書において使用される場合、線維芽細胞を内皮細胞または内皮様細胞に変換することができる活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。特定の事例において、フラグメントは、配列番号3および/または4の少なくとも約2900個もしくはそれを上回らない、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1375、1350、1325、1300、1275、1250、1225、1200、1175、1150、1125、1100、1075、1050、1025、1000、975、950、925、900、875、850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225、200、175、150、125個もしくはそれを上回らない、または100個もしくはそれを上回らない、連続したヌクレオチドの長さを有する。加えて、フラグメントは、少なくともまたは厳密に、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、80、75、または70%の同一性の、配列番号3および/または4における対応する領域との配列同一性を有し得る。配列番号3および/または4に対して、少なくともまたは厳密に、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、80、75、または70%の同一性を含む、配列番号3および/または4に対してある特定の配列同一性を有するポリヌクレオチドが、使用され得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、Hand2および/またはミオカルディンポリペプチドは、ベクター上にある、担体と会合している、細胞内にある(ベクター上の細胞内を含む)など、どの形態にあるかに関係なく、それを必要とする個体に送達される。特定の実施形態において、Hand2および/またはミオカルディンポリペプチドは、ヒト、マウス、ラットなどを含む、哺乳動物Hand2および/またはミオカルディンポリペプチドである。具体的な実施形態において、Hand2ポリペプチド配列の1つの例は、配列番号5である、および/またはそれに含まれる。具体的な実施形態において、ミオカルディンポリペプチド配列の1つの例は、配列番号6である、および/またはそれに含まれる。
MSLVGGFPHHPVVHHEGYPFAAAAAAAAAAAASRCSHEENPYFHGWLIGHPEMSPPDYSMALSYSPEYASGAAGLDHSHYGGVPPGAGPPGLGGPRPVKRRGTANRKERRRTQSINSAFAELRECIPNVPADTKLSKIKTLRLATSYIAYLMDLLAKDDQNGEAEAFKAEIKKTDVKEEKRKKELNEILKSTVSSNDKKTKGRTGWPQHVWALELKQGSG(配列番号5)
MTLLGSEHSLLIRSKFRSVLQLRLQQRRTQEQLANQGIIPPLKRPAEFHEQRKHLDSDKAKNSLKRKARNRCNSADLVNMHILQASTAERSIPTAQMKLKRARLADDLNEKIALRPGPLELVEKNILPVDSAVKEAIKGNQVSFSKSTDAFAFEEDSSSDGLSPDQTRSEDPQNSAGSPPDAKASDTPSTGSLGTNQDLASGSENDRNDSASQPSHQSDAGKQGLGPPSTPIAVHAAVKSKSLGDSKNRHKKPKDPKPKVKKLKYHQYIPPDQKAEKSPPPMDSAYARLLQQQQLFLQLQILSQQQQQQQHRFSYLGMHQAQLKEPNEQMVRNPNSSSTPLSNTPLSPVKNSFSGQTGVSSFKPGPLPPNLDDLKVSELRQQLRIRGLPVSGTKTALMDRLRPFQDCSGNPVPNFGDITTVTFPVTPNTLPNYQSSSSTSALSNGFYHFGSTSSSPPISPASSDLSVAGSLPDTFNDASPSFGLHPSPVHVCTEESLMSSLNGGSVPSELDGLDSEKDKMLVEKQKVINELTWKLQQEQRQVEELRMQLQKQKRNNCSEKKPLPFLAASIKQEEAVSSCPFASQVPVKRQSSSSECHPPACEAAQLQPLGNAHCVESSDQTNVLSSTFLSPQCSPQHSPLGAVKSPQHISLPPSPNNPHFLPSSSGAQGEGHRVSSPISSQVCTAQNSGAHDGHPPSFSPHSSSLHPPFSGAQADSSHGAGGNPCPKSPCVQQKMAGLHSSDKVGPKFSIPSPTFSKSSSAISEVTQPPSYEDAVKQQMTRSQQMDELLDVLIESGEMPADAREDHSCLQKVPKIPRSSRSPTAVLTKPSASFEQASSGSQIPFDPYATDSDEHLEVLLNSQSPLGKMSDVTLLKIGSEEPHFDGIMDGFSGKAAEDLFNAHEILPGPLSPMQTQFSPSSVDSNGLQLSFTESPWETMEWLDLTPPNSTPGFSALTTSSPSIFNIDFLDVTDLNLNSSMDLHLQQW(配列番号6)
【0106】
具体的な実施形態において、配列番号5および/または6の一部またはすべては、本開示の方法において利用される。特定の実施形態において、配列番号5および/または6に対して特定の配列同一性を有するポリペプチドが、本開示の方法において利用される。特定の事例において、配列番号5および/または6の機能性フラグメントが用いられ、「機能性」フラグメントという用語は、本明細書において使用される場合、線維芽細胞を内皮細胞または内皮様細胞に変換することができる活性を有するポリペプチドを指す。特定の事例において、フラグメントは、配列番号5および/または6の少なくとも約975個もしくはそれを上回らない、950、925、900、875、850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、240、235、230、225、220、215、210、205、200、195、190、185、180、175、170、165、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25個もしくはそれを上回らない、または20個もしくはそれを上回らない、連続したヌクレオチドの長さを有する。
B.クロマチン不安定化剤
【0107】
具体的な実施形態において、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)とともに利用される。1つまたは複数のクロマチン不安定化剤は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)と同時に個体に提供され得るが、特定の実施形態においては、1つまたは複数のクロマチン不安定化剤は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)よりも前または後に利用される。
【0108】
ある特定の化合物が、クロマチン不安定化剤として有効であろうかどうかを試験するために、標準的な方法を使用することができるが、特定の実施形態においては、クロマチン不安定化剤は、Oct4、DZNep、Sall4、SOX2、KLF4、MYC、SB431542、PD0325901、Parnate、CHIR99021、A-83-01、NaB、PS48、フォルスコリン(FSK)、2-メチル-5-ヒドロキシトリプタミン(2-Me-5HT)、D4476、VPA、CHIR99021(CHIR)、616452、トラニルシプロミン、プロスタグランジンE2、ロリプラム、3-デアザネプラノシンA(DZNep)、5-アザシチジン、酪酸ナトリウム、RG108、またはこれらの組合せである。
V.一般的な核酸
【0109】
「核酸」という用語は、当該技術分野において周知である。「核酸」は、本明細書において使用される場合、一般に、核酸塩基を含む、DNA、RNA、またはその誘導体もしくはアナログの分子(すなわち、鎖)を指す。核酸塩基には、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」、もしくはシトシン「C」)またはRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」、もしくはC)において見出される天然に存在するプリンまたはピリミジン塩基が含まれる。「核酸」という用語は、それぞれ、「核酸」という用語の亜属として「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語を包含する。「オリゴヌクレオチド」という用語は、約3~約100個の核酸塩基の長さの分子を指す。「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくともいくつかの事例において、約100個を上回る核酸塩基の長さの少なくとも1つの分子を指す。
【0110】
これらの定義は、一般に、一本鎖分子を指すが、特定の実施形態においては、一本鎖分子に部分的に、実質的に、または完全に相補的である追加の鎖も包含するであろう。したがって、核酸は、分子を構成する特定の配列の1つまたは複数の相補鎖または「相補体」を含む、二本鎖分子または三本鎖分子を包含し得る。本明細書において使用される場合、一本鎖核酸は接頭辞「ss」によって示され、二本鎖核酸は接頭辞「ds」によって示され、三本鎖核酸は接頭辞「ts」によって示されてもよい。
【0111】
本明細書において使用される場合、「野生型」とは、生物のゲノムの遺伝子座における核酸の天然に存在する配列、またはそのような核酸から転写もしくは翻訳された配列を指す。したがって、「野生型」という用語はまた、核酸によってコードされるアミノ酸配列を指し得る。遺伝子座は、個体集団において1つを上回る配列または対立遺伝子を有し得るため、「野生型」という用語は、すべてのそのような天然に存在する遺伝子座を包含する。本明細書において使用される場合、「多型」という用語は、集団内の個体における遺伝子座に変動性が存在する(すなわち、2つまたはそれよりも多くの対立遺伝子が存在する)ことを意味する。本明細書において使用される場合、「突然変異体」という用語は、ヒトの手が加わった結果である、核酸またはそのコードされるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの配列における変化を指す。
【0112】
本開示は、当業者に公知であるかまたは本明細書に記載される組換え核酸技術の適用を通じた組換えコンストラクトまたは組換え宿主細胞の単離または作製にも関する。組換えコンストラクトまたは宿主細胞は、核酸を含み得、タンパク質、ペプチド、もしくはペプチド、またはそれらの少なくとも1つの生物学的機能性同等物を発現し得る。
【0113】
本明細書では、ある特定の実施形態において、「遺伝子」は、転写される核酸を指す。ある特定の態様において、遺伝子は、転写、またはメッセージ産生もしくは組成に関与する調節配列を含む。具体的な実施形態において、遺伝子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする転写された配列を含む。当業者によって理解されるように、この機能的用語「遺伝子」には、ゲノム配列、RNA、もしくはcDNA配列、または遺伝子の転写されないプロモーターもしくはエンハンサー領域が含まれるがこれらに限定されない遺伝子の転写されない部分の核酸セグメントを含む、より小さな操作された核酸セグメントの両方が、含まれる。より小さな操作された遺伝子核酸セグメントは、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、突然変異体、および/または同様のものを発現し得るか、または核酸操作技術を使用して発現するように適合され得る。
【0114】
「他のコーディング配列から実質的に単離された」とは、目的の遺伝子もしくはそのフラグメントが、核酸のコーディング領域の大部分を形成するか、または核酸が、天然に存在するコーディング核酸の大部分、例えば、大きな染色体フラグメント、他の機能性遺伝子、RNA、もしくはcDNAコーディング領域を含まないことを意味する。当然ながら、これは、もともと単離された核酸を指し、ヒトの手によって核酸に後で付加される遺伝子またはコーディング領域を排除しない。
【0115】
本開示の核酸は、配列そのものの長さに関係なく、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、制限酵素部位、多重クローニング部位、コーディングセグメントなどを含むがこれらに限定されない、他の核酸配列と組み合わされて、1つまたは複数の核酸コンストラクトを作製し得る。本明細書において使用される場合、「核酸コンストラクト」という用語は、ヒトの手によって操作または変更された核酸であり、一般に、ヒトの手によって組織化された1つまたは複数の核酸配列を含む。
【0116】
非限定的な例において、p63に対して同一または相補的である(少なくとも部分的に)ヌクレオチドの連続したストレッチを含む、1つまたは複数の核酸コンストラクトを調製することができる。核酸コンストラクトは、約3個、約5個、約8個、約10~約14個、または約15個、約20個、約30個、約40個、約50個、約100個、約115個、約200個、約500個、約600個、または約650個のヌクレオチドの長さ、ならびに最大でベクターサイズまでのより大きなサイズのコンストラクト(すべての中間の長さおよび中間の範囲を含む)であり得る。「中間の長さ」および「中間の範囲」は、本明細書において使用される場合、言及された値を含むかまたはその間の任意の長さまたは範囲(すなわち、そのような値を含めたそれらの間のすべての整数)を意味する。中間の長さの非限定的な例としては、約11、約12、約13、約16、約17、約18、約19など、約21、約22、約23など、約31、約32など、約51、約52、約53など、約101、約102、約103など、約151、約152、約153など、約600、約601、約605、約610が挙げられる。中間の範囲の非限定的な例としては、約3~約32、約150~約750などが挙げられる。
【0117】
ある特定の実施形態において、核酸コンストラクトは、組換えベクターである。具体的な実施形態において、本開示は、Hand2およびミオカルディンタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む、1つまたは複数の組換えベクターに関する。具体的な態様において、組換えベクターは、DNAベクターである。
【0118】
「生物学的機能性同等物」という用語は、当該技術分野において十分に理解されており、さらに、本明細書において詳細に定義されている。したがって、それぞれ、Hand2およびミオカルディン核酸によってコードされるアミノ酸に対して、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸が同一または機能的に同等である配列は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの生物学的活性が維持される。
【0119】
ある特定の他の実施形態において、本開示は、配列内にp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を発現する核酸配列を含む、少なくとも1つの組換えベクターに関する。特定の実施形態において、本開示は、配列内にHand2核酸を発現する核酸配列を含む、少なくとも1つの組換えベクターに関する。別の実施形態において、配列内にミオカルディン核酸を発現する核酸配列を含む、少なくとも1つの組換えベクターが存在する。
【0120】
「機能的に同等なコドン」という用語は、アルギニンおよびセリンに関する6つのコドンなど、同じアミノ酸をコードするコドンを指し、また、生物学的に同等なアミノ酸をコードするコドンも指す。様々な生物およびオルガネラのコドン使用頻度は、文献において見出すことができる。したがって、コドン使用頻度は、当業者には公知のように、好ましいコドン使用頻度に基づいて、他の動物、ならびに他の生物、例えば、原核生物(例えば、真正細菌、古細菌)、真核生物(例えば、原生生物、植物、真菌、動物)、ウイルスなど、ならびに核酸を含むオルガネラ、例えば、ミトコンドリア、葉緑体などに、最適化され得ることが、企図される。
【0121】
アミノ酸配列または核酸配列には、追加の残基、例えば、追加のNもしくはC末端アミノ酸、または5’もしくは3’配列、またはそれらの様々な組合せが含まれ得るが、なおも依然として、本質的には、本明細書に開示される配列のうちの1つに記載される通りであることが理解されるが、これは、配列が、タンパク質組成物の発現が関係する生物学的タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド活性の維持を含め、上述の基準を満たす場合に限る。末端配列の付加は、具体的には、例えば、コーディング領域の5’および/もしくは3’部分のいずれかに隣接する様々な非コーディング配列を含み得るか、または遺伝子内に生じることが知られている様々な内部配列、すなわち、イントロンを含み得る、核酸配列に適用される。
【0122】
イントロンおよび隣接する領域を除き、また、遺伝子コードの縮重を許容して、本明細書に開示される記載されたGENBANK(登録商標)配列のヌクレオチドに対して同一である約70%~約79%、またはより好ましくは約80%~約89%、またはさらにより具体的には約90%~約99%のヌクレオチドを有する核酸配列は、本開示に包含される。
【0123】
組換えベクターおよび単離された核酸セグメントは、したがって、様々に、Hand2またはミオカルディンコーディング領域そのもの、基本的なコーディング領域内に選択された変更または改変を有するコーディング領域を含み得、それらは、いずれにせよそのようなコーディング領域を含むより大きなポリペプチドもしくはペプチドをコードし得るか、またはバリアントアミノ酸配列を有する生物学的に機能性の同等なタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードし得る。
【0124】
本開示の核酸は、Hand2またはミオカルディンタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの生物学的に機能性の同等なコーディング配列を包含し得る。そのような配列は、核酸配列、またはコードされるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド内に天然に存在することが知られているコドン冗長性または機能的同等性の結果として生じ得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの構造における変化を、交換されているアミノ酸の特性の考察に基づいて操作することができる、組換えDNA技術の適用を通じて、機能的に同等なタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを作製してもよい。ヒトによって設計される変化は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの抗原性に改善もしくは変更を導入するため、またはタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの活性を分子レベルで調べるために突然変異体を試験するために、例えば、本明細書において以下に考察されている部位特異的突然変異生成技法の適用を通じて、導入され得る。
A.核酸塩基
【0125】
本明細書において使用される場合、「核酸塩基」は、複素環式塩基、例えば、例として、少なくとも1つの天然に存在する核酸(すなわち、DNAおよびRNA)において見出される天然に存在する核酸塩基(すなわち、A、T、G、C、またはU)、ならびにそのような核酸塩基の天然に存在するまたは天然に存在しない誘導体およびアナログを指す。核酸塩基は、一般に、天然に存在する核酸塩基対合と置き換わることができる様式で、少なくとも1つの天然に存在する核酸塩基と1つまたは複数の水素結合を形成する(「アニーリングする」または「ハイブリダイズする」)(例えば、AとT、GとC、およびAとUとの間の水素結合)。
【0126】
「プリン」および/または「ピリミジン」核酸塩基は、天然に存在するプリンおよび/またはピリミジン核酸塩基、ならびにそれらの誘導体およびアナログを包含し、これには、アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨード)、チオール、またはアルキルチオール部分のうちの1つまたは複数によって置換された、プリンまたはピリミジンが含まれるが、これらに限定されない。好ましいアルキル(例えば、アルキル、カルボキシアルキルなど)部分は、約1個、約2個、約3個、約4個、約5個から、約6個の炭素原子から構成される。プリンまたはピリミジンの他の非限定的な例としては、デアザプリン、2,6-ジアミノプリン、5-フルオロウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、8-ブロモグアニン、8-クロログアニン、ブロモチミン、8-アミノグアニン、8-ヒドロキシグアニン、8-メチルグアニン、8-チオグアニン、アザグアニン、2-アミノプリン、5-エチルシトシン、5-メチルシトシン、5-ブロモウラシル、5-エチルウラシル、5-ヨードウラシル、5-クロロウラシル、5-プロピルウラシル、チオウラシル、2-メチルアデニン、メチルチオアデニン、N,N-ジメチルアデニン、アザアデニン、8-ブロモアデニン、8-ヒドロキシアデニン、6-ヒドロキシアミノプリン、6-チオプリン、4-(6-アミノヘキシル/シトシン)などが挙げられる。
【0127】
核酸塩基は、本明細書に記載されるか、または当業者に公知である、任意の化学的または天然の合成方法を使用して、ヌクレオシドまたはヌクレオチドに含まれ得る。
B.ヌクレオシド
【0128】
本明細書において使用される場合、「ヌクレオシド」とは、核酸塩基が核酸塩基リンカー部分に共有結合で結合したものを含む、個々の化学的単位を指す。「核酸塩基リンカー部分」の非限定的な例は、5個の炭素原子を含む糖(すなわち、「五炭糖」)であり、これには、デオキシリボース、リボース、アラビノース、または五炭糖の誘導体もしくはアナログが含まれるが、これらに限定されない。五炭糖の誘導体またはアナログの非限定的な例としては、2’-フルオロ-2’-デオキシリボース、または炭素が糖環の酸素と置換された炭素環式糖が挙げられる。
【0129】
核酸塩基の核酸塩基リンカー部分への共有結合による結合の別の種類は、当該技術分野において公知である。非限定的な例として、プリン(すなわち、AもしくはG)または7-デアザプリン核酸塩基を含むヌクレオシドは、典型的に、プリンまたは7-デアザプリンの9位で、五炭糖の1’位に共有結合で結合する。別の非限定的な実施例において、ピリミジン核酸塩基(すなわち、C、TまたはU)を含むヌクレオシドは、典型的に、ピリミジンの1位で、五炭糖の1’位に共有結合で結合する(Kornberg and Baker, 1992)。
C.ヌクレオチド
【0130】
本明細書において使用される場合、「ヌクレオチド」は、「骨格部分」をさらに含むヌクレオシドを指す。骨格部分は、一般に、ヌクレオチドを、ヌクレオチドを含む別の分子に、または別のヌクレオチドに、共有結合で結合させて、核酸を形成する。天然に存在するヌクレオチドにおける「骨格部分」は、典型的に、リン部分を含み、これが、五炭糖に共有結合で結合する。骨格部分の結合は、典型的に、五炭糖の3’位または5’位のいずれかで生じる。しかしながら、特に、ヌクレオチドが天然に存在する五炭糖またはリン部分の誘導体またはアナログを含む場合には、他の種類の結合が、当該技術分野において公知である。
D.核酸アナログ
【0131】
核酸は、天然に存在する核酸に存在し得る、核酸塩基の誘導体もしくはアナログ、核酸塩基リンカー部分、および/または骨格部分を含み得るか、または全体としてそれらから構成され得る。本明細書において使用される場合、「誘導体」とは、天然に存在する分子の化学的に改変または変更された形態を指し、一方で「模倣体」または「アナログ」という用語は、天然に存在する分子または部分に構造的に近似する場合もしない場合もあるが、類似の機能を有する分子を指す。本明細書において使用される場合、「部分」は、一般に、より大きな化学構造または分子構造の中のより小さな化学成分または分子成分を指す。核酸塩基、ヌクレオシド、およびヌクレオチドアナログまたは誘導体は、当該技術分野において周知であり、説明されている(例えば、Scheit, 1980を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0132】
五炭糖および/または骨格部分誘導体またはアナログを含む、ヌクレオシド、ヌクレオチド、または核酸の追加の非限定的な例としては、トリプルヘリックスを形成するプリン誘導体を含み、かつ/もしくはdsDNAの発現を予防するオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,681,947号におけるもの、DNAもしくはRNAにおいて見出されるヌクレオシドの蛍光性アナログを組み込んだ核酸、特に、蛍光性核酸プローブとしての使用のための核酸について記載している米国特許第5,652,099号および同第5,763,167号におけるもの、増強されたヌクレアーゼ安定性を有するピリミジン環に置換を有するオリゴヌクレオチドアナログについて記載している米国特許第5,614,617号におけるもの、核酸検出において使用される改変された五炭糖(すなわち、改変された2’-デオキシフラノシル部分)を有するオリゴヌクレオチドアナログについて記載している米国特許第5,670,663号、同第5,872,232号、および同第5,859,221号におけるもの、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用することができる、4’位において水素以外の置換基で置換された少なくとも1つの五炭糖部分を含むオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,446,137号におけるもの、3’-5’ヌクレオチド間連結を有するデオキシリボヌクレオチドおよび2’-5’ヌクレオチド間連結を有するリボヌクレオチドの両方を有するオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,886,165号におけるもの、ヌクレオチド間連結の3’位の酸素が核酸のヌクレアーゼ耐性を増強させるために炭素によって置き換えられている、改変されたヌクレオチド間連結について記載している米国特許第5,714,606号におけるもの、ヌクレアーゼ耐性を増強させる1つまたは複数の5’メチレンホスホネートヌクレオチド間連結を含むオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,672,697号におけるもの、増強されたヌクレアーゼ安定性および薬物もしくは検出部分を送達する能力を提供するための、オリゴヌクレオチドの2’炭素への薬物または標識を含み得る置換基部分の連結について記載している米国特許第5,466,786号および同第5,792,847号におけるもの、増強された細胞取り込み、ヌクレアーゼに対する耐性、および標的RNAへのハイブリダイゼーションのために隣接する五炭糖部分の4’位および3’位に結合する2または3個の炭素骨格連結を有するオリゴヌクレオチドアナログについて記載している米国特許第5,223,618号におけるもの、核酸ハイブリダイゼーションプローブとして有用である少なくとも1つのスルファメートまたはスルファミドヌクレオチド間連結を含むオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,470,967号におけるもの、改善されたヌクレアーゼ耐性、細胞取り込み、およびRNA発現の調節のために使用される、ホスホジエステル骨格部分を置き換える3または4原子のリンカー部分を有するオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,378,825号、同第5,777,092号、同第5,623,070号、同第5,610,289号、および同第5,602,240号におけるもの、増強された膜透過性および安定性のためにオリゴヌクレオチドの2’-O位に結合した疎水性担体剤について記載している米国特許第5,858,988号におけるもの、増強されたDNAまたはRNAへのハイブリダイゼーションを有する、5’末端でアントラキノンにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,214,136号におけるもの、増強されたヌクレアーゼ耐性、結合親和性、およびRNase Hを活性化する能力のために、DNAが2’-デオキシ-エリスロ-ペントフラノシルヌクレオチドを含むPNA-DNA-PNAキメラについて記載している米国特許第5,700,922号におけるもの、ならびにDNA-RNAハイブリッドを形成するようにDNAに連結されたRNAについて記載している米国特許第5,708,154号におけるものが挙げられる。
E.ポリエーテルおよびペプチド核酸
【0133】
ある特定の実施形態において、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの誘導体またはアナログを含む核酸が、本開示の方法および組成物において使用され得ることが、企図される。非限定的な例は、米国特許第5,908,845号に記載されている「ポリエーテル核酸」であり、これは、参照により本明細書に組み込まれる。ポリエーテル核酸において、1つまたは複数の核酸塩基は、ポリエーテル骨格内の不斉炭素原子に連結されている。
【0134】
別の非限定的な例は、米国特許第5,786,461号、同第5891,625号、同第5,773,571号、同第5,766,855号、同第5,736,336号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、同第5,539,082号、および国際公開第WO 92/20702号に記載されている、「PNA」、「ペプチドに基づく核酸アナログ」、または「PENAM」としても知られている「ペプチド核酸」であり、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。ペプチド核酸は、一般に、DNAおよびRNAなどの分子と比較して、増強された配列特異性、結合特性、および酵素分解に対する耐性を有する(例えば、Egholm et al., 1993、PCT/EP/01219を参照されたい)。ペプチド核酸は、一般に、核酸塩基部分、五炭糖ではない核酸塩基リンカー部分、および/またはリン酸骨格部分ではない骨格部分を含む、1つまたは複数のヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。PNAについて記載される核酸塩基リンカー部分の例としては、アザ窒素原子、アミド、および/またはウレイドテザーが挙げられる(例えば、米国特許第5,539,082号を参照されたい)。PNAについて記載される骨格部分の例としては、アミノエチルグリシン、ポリアミド、ポリエチル、ポリチオアミド、ポリスルフィンアミド、またはポリスルホンアミド骨格部分が挙げられる。
【0135】
ある特定の実施形態において、核酸アナログ、例えば、ペプチド核酸を使用して、PCRなどにおける核酸増幅を阻害して、米国特許第5,891,625号に記載されるように、偽陽性を低減させ、単一塩基突然変異体間を区別することができる。核酸アナログの他の改変および使用は、当該技術分野において公知であり、本明細書に包含される。非限定的な例において、米国特許第5,786,461号は、分子の可溶性を増強させるために、PNA骨格に結合したアミノ酸側鎖を有するPNAについて記載している。別の例において、PNAの細胞取り込み特性は、親油性基の結合によって増加する。米国出願第117,363号は、PNAの細胞取り込みを増強させるために使用されるいくつかのアルキルアミノ部分について記載している。別の例は、米国特許第5,766,855号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、および同第5,736,336号に記載されており、これらは、天然に存在する核酸と比べて、配列特異性、可溶性、および/または結合親和性の改善を提供する、天然に存在するおよび天然に存在しない核酸塩基およびアルキルアミン側鎖を含むPNAについて記載している。
F.核酸の調製
【0136】
核酸は、当業者に公知の任意の技法、例えば、例として、化学合成、酵素的産生、または生物学的産生によって作製することができる。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の非限定的な例としては、ホスホトリエステル、ホスファイト、もしくはホスホロアミダイト化学反応および固相技法を使用したインビトロ化学合成、例えば、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第EP 266,032号に記載されるものによって作製された核酸、またはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれるFroehler et al., 1986および米国特許第5,705,629号によって記載されるデオキシヌクレオシドH-ホスホネート中間体を介して作製された核酸が、挙げられる。本開示の方法において、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドが、使用され得る。オリゴヌクレオチド合成の様々な異なる機序は、例えば、米国特許第4,659,774号、同第4,816,571号、同第5,141,813号、同第5,264,566号、同第4,959,463号、同第5,428,148号、同第5,554,744号、同第5,574,146号、同第5,602,244号において開示されており、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
酵素的に産生される核酸の非限定的な例としては、PCR(商標)などの増幅反応において酵素によって産生されるもの(例えば、米国特許第4,683,202号および米国特許第4,682,195号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)、または参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,645,897号に記載されているオリゴヌクレオチドの合成が挙げられる。生物学的に産生される核酸の非限定的な例としては、生細胞において産生される(すなわち、複製される)組換え核酸、例えば、細菌において複製される組換えDNAベクターが挙げられる(例えば、Sambrook et al. 1989を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
G.核酸の精製
【0138】
核酸は、ポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム遠心分離勾配、または当業者に公知の任意の他の手段によって、精製され得る(例えば、Sambrook et al., 1989を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0139】
ある特定の態様において、本開示は、単離された核酸である核酸に関する。本明細書において使用される場合、「単離された核酸」という用語は、1つまたは複数の細胞の全ゲノム核酸および転写された核酸の大部分を含まずに単離されているか、またはそれ以外では含まない状態である、核酸分子(例えば、RNAまたはDNA分子)を指す。ある特定の実施形態において、「単離された核酸」は、細胞成分またはインビトロ反応成分、例えば、例として、巨大分子、例えば、脂質またはタンパク質、生物学的小分子の大部分を含まずに単離されているか、またはそれ以外では含まない状態である、核酸を指す。
H.核酸セグメント
【0140】
ある特定の実施形態において、核酸は、核酸セグメントである。本明細書において使用される場合、「核酸セグメント」という用語は、核酸の小さなフラグメント、例えば、非限定的な例として、ペプチドまたはポリペプチド配列の一部のみをコードするものである。したがって、「核酸セグメント」は、ペプチドまたはポリペプチドコーディング領域の約2個のヌクレオチドから全長までの、遺伝子配列の任意の部分を含み得る。
【0141】
様々な核酸セグメントが、特定の核酸配列に基づいて設計され得、また、任意の長さのものであり得る。例えば、最初の残基を1とし、2番目の残基を2とするなど、配列に数値を割り当てることによって、すべての核酸セグメントを定義するアルゴリズムを作製することができ、
【0142】
nから、n+yまで
【0143】
ここで、nは、1から、配列の最後の番号までの整数であり、yは、核酸セグメントから1を差し引いた長さであり、n+yは、配列の最後の番号を超えることはない。したがって、10量体については、核酸セグメントは、塩基1から10、2から11、3から12などに対応する。15量体については、核酸セグメントは、塩基1から15、2から16、3から17などに対応する。20量体については、核酸セグメントは、塩基1から20、2から21、3から22などに対応する。ある特定の実施形態において、核酸セグメントは、プローブまたはプライマーであり得る。本明細書において使用される場合、「プローブ」は、一般に、検出方法または組成物において使用される核酸を指す。本明細書において使用される場合、「プライマー」は、一般に、伸長または増幅方法または組成物において使用される核酸を指す。
VI.核酸に基づく発現系
【0144】
本開示の具体的な実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)(例えば、ポリペプチドまたは核酸)、いくつかの事例においては、1つまたは複数の心臓細胞リプログラミング因子(例えば、Hand2および/またはミオカルディン)、ならびにいくつかの事例においては、1つまたは複数の不安定化剤および/または抗線維化剤および/または血管新生因子は、核酸の形態で、それを必要とする個体に提供される。いくつかの事例において、核酸は、ベクター上に含まれないが、具体的な実施形態においては、核酸は、1つまたは複数のベクター上に存在する。具体的な実施形態において、異なる核酸が、同じベクター上に存在し、一方で他の事例においては、それらは、2つまたは3つの別個のベクター上に存在する。ベクターは、ウイルス性であっても非ウイルス性であってもよい。図4A~Bは、本開示の方法における使用のためのベクターの実施形態の例示を提供する。
【0145】
本開示の実施形態において利用されるベクターは、心臓組織への標的化送達および/またはある特定の細胞における標的化発現のための1つまたは複数の手段を有し得る。いくつかの事例において、ベクターは、心臓への局所的送達を用いて個体に提供され、一方で他の事例においては、ベクターは、心臓組織への標的化送達および/またはある特定の細胞、例えば、例として心臓線維芽細胞における標的化発現のための手段を用いて、個体に全身的に提供される。ある特定の実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに心臓細胞リプログラミング因子(例えば、Hand2およびミオカルディン)ポリヌクレオチドのうちの一方または両方は、同じ分子上にあるが、いくつかの実施形態においては、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに心臓細胞リプログラミング因子ポリヌクレオチドのうちの一方または両方は、異なる分子上にある。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに心臓細胞リプログラミング因子のうちの一方または両方が、同じポリヌクレオチドから発現される場合、それらは、それらの発現に関して、同じかまたは異なる調節領域を有し得る。特定の実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに1つまたは複数のクロマチン不安定化剤ポリヌクレオチドは、同じかまたは異なる分子上にある。
【0146】
具体的な実施形態において、本開示における使用のための発現ベクターは、1つまたは複数の好適な制限酵素消化配列、開始コドン、終止コドン、核局在化シグナル、プロテアーゼ切断コドン、選択可能なマーカー、複製起点、調節領域、多重クローニング部位、ならびにこれらの組合せを含み得る。そのような部分は、発現ベクターにおいて、任意の好適な順序で位置付けられ得る。
A.ベクター
【0147】
「ベクター」という用語は、細胞への導入のために核酸配列を挿入することができ、そこでそれが複製され得る、担体核酸分子を指して使用される。核酸配列は、「外因性」であってもよく、これは、それが、ベクターが導入される細胞に対して外来であること、または配列が、細胞内の配列に対して同種であるが、配列が本来見出されない宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者であれば、標準的な組換え技法を通じてベクターを構築する知識を十分に身につけているであろう(例えば、Maniatis et al., 1988およびAusubel et al., 1994を参照されたく、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)。
【0148】
「発現ベクター」という用語は、転写されることができるRNAをコードする核酸を含む、任意の種類の遺伝子コンストラクトを指す。いくつかの事例において、RNA分子は、次いで、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の事例において、これらの配列は、アンチセンス分子またはリボザイムの産生の場合、翻訳されない。発現ベクターは、様々な「制御配列」を含み得、これは、特定の宿主細胞において作動可能に連結されたコーディング配列の転写および可能性としては翻訳のために必要な核酸配列を指す。転写および翻訳を左右する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能を同様に行う、以下に記載される核酸配列を含み得る。
1.プロモーターおよびエンハンサー
【0149】
「プロモーター」は、転写の開始および速度が制御される、核酸配列の領域である制御配列である。それは、核酸配列の特定の転写を開始するために、調節性タンパク質および分子、例えば、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子が結合する、遺伝子エレメントを含み得る。「作動可能に位置付けられた」、「作動可能に連結された」、「制御下にある」、および「転写制御下にある」という語句は、プロモーターが、核酸配列の転写開始および/または発現を制御するように、その配列に対して正しい機能的位置および/または配向にあることを意味する。
【0150】
本開示の実施形態において、CMVプロモーターまたは組織特異的プロモーターが、用いられ得る。組織特異的プロモーターは、心臓組織特異的プロモーターであり得る。心臓組織特異的プロモーターの例としては、心室特異的ミオシン軽鎖-2(mlc-2v)および/またはアルファ-ミオシン重鎖(α-MHC)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、線維芽細胞特異的プロモーターが、利用される。線維芽細胞特異的プロモーターの例としては、Fsp1および/またはペリオスチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
プロモーターは、一般に、RNA合成の開始部位を位置付けるように機能する配列を含む。これのもっともよく知られた例は、TATAボックスであるが、TATAボックスが欠如したいくつかのプロモーター、例えば、例として、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターでは、開始部位そのものに重なる別個のエレメントが、開始場所を固定するのを補助する。追加のプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を調節する。典型的に、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも同様に機能性エレメントを含むことが示されている。コーディング配列をプロモーターの「制御下」にするために、転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端を、選択したプロモーターの「下流」(すなわち、3’)に位置付ける。「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0152】
多くの場合、プロモーターエレメント間の間隔には、柔軟性があり、そのため、プロモーター機能は、エレメントが互いに逆転した場合または移動した場合にも、保持される。tkプロモーターの場合、プロモーターエレメント間の間隔は、50bp間隔まで増加させることができ、その後は活性が低下し始める。プロモーターに応じて、個々のエレメントは、協働してまたは独立してのいずれかで転写を活性化するように機能し得るとみられる。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列を指す「エンハンサー」とともに使用されてもよく、またはともに使用されなくてもよい。
【0153】
プロモーターは、コーディングセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5’非コーディング配列を単離することによって得ることができるような、核酸配列と天然に会合しているものであってもよい。そのようなプロモーターは、「内因性」と称され得る。同様に、エンハンサーは、核酸配列の下流または上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然に会合しているものであってもよい。あるいは、コーディング核酸セグメントを、その天然の環境において通常は核酸配列と会合していないプロモーターを指す組換えまたは異種プロモーターの制御下に位置付けることによって、ある特定の利点が得られるであろう。組換えまたは異種エンハンサーもまた、その天然の環境において通常は核酸配列と会合していないエンハンサーを指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーとしては、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、ならびに任意の他のウイルスもしくは原核生物もしくは真核生物細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに「天然に存在」しない、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変更する突然変異を含む、プロモーターまたはエンハンサーを挙げることができる。例えば、組換えDNA構築においてもっとも一般的に使用されるプロモーターとしては、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、およびトリプトファン(trp)プロモーター系が挙げられる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成で産生させることに加えて、配列は、PCR(商標)を含む組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を本明細書に開示される組成物とともに使用して産生させてもよい(米国特許第4,683,202号および同第5,928,906号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核オルガネラ内の配列の転写および/または発現を誘導する制御配列を、同様に用いることができることが、企図される。
【0154】
天然には、発現のために選択されたオルガネラ、細胞型、組織、器官、または生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に誘導するプロモーターおよび/またはエンハンサーを用いることが重要であろう。分子生物学の当業者であれば、一般に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組合せの使用について把握している(例えば、Sambrook et al. 1989を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。用いられるプロモーターは、構成的であり得る、組織特異的であり得る、誘導性であり得る、および/または適切な条件下において、導入されたDNAセグメントの高レベルな発現を誘導するのに有用であり得、例えば、組換えタンパク質および/またはペプチドの大規模産生において有益である。プロモーターは、異種であってもよく、または内因性であってもよい。
【0155】
加えて、任意のプロモーター/エンハンサーの組合せ(例えば、真核生物プロモーターデータベースEPDB、http://www.epd.isb-sib.ch/にあるような)もまた、発現を作動させるために使用することができる。T3、T7、またはSP6細胞質発現系の使用は、別の可能性のある実施形態である。真核生物細胞は、適切な細菌性ポリメラーゼが、送達複合体の一部として、または追加の遺伝子発現コンストラクトとしてのいずれかで提供された場合、ある特定の細菌性プロモーターからの細胞質転写を補助し得る。
2.開始シグナルおよび内部リボソーム結合部位
【0156】
特定の開始シグナルもまた、コーディング配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接する配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが、提供される必要がある場合がある。当業者であれば、容易にこれを判定し、必要なシグナルを提供することが可能であろう。開始コドンは、インサート全体の翻訳を確実にするために、所望されるコーディング配列のリーディングフレームとインフレームでなければならないことは、周知である。外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然または合成のいずれであってもよい。発現の効率性は、適切な転写エンハンサーエレメントの包含によって増強させることができる。
【0157】
本開示のある特定の実施形態において、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用は、多重遺伝子またはポリシストロニックメッセージを作製するために使用される。IRESエレメントは、5’メチル化Capに依存する翻訳のリボソームスキャニングモデルをバイパスし、内部部位で翻訳を開始させることが可能である(例えば、Pelletier and Sonenberg, 1988を参照されたい)。ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)に由来するIRESエレメントが説明されており(Pelletier and Sonenberg, 1988)、同様に、哺乳動物メッセージに由来するIRESも説明されている(例えば、Macejak and Sarnow, 1991を参照されたい)。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに連結させることができる。それぞれがIRESによって分離された状態で複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写し、ポリシストロニックメッセージを作製することができる。IRESエレメントを利用することで、それぞれのオープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームがアクセスすることが可能である。複数の遺伝子を、単一のプロモーター/エンハンサーを使用して単一のメッセージを転写して、効率的に発現させることができる(米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)。
3.多重クローニング部位
【0158】
ベクターは、複数の制限酵素部位を含む核酸領域である多重クローニング部位(MCS)を含み得、それらのいずれも、ベクターを消化させるための標準的な組換え技術とともに使用することができる(例えば、Carbonelli et al., 1999、Levenson et al., 1998、およびCocea, 1997を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。「制限酵素消化」とは、核酸分子内の特定の位置においてのみ機能する酵素を用いた核酸分子の触媒切断を指す。これらの制限酵素の多くは、市販入手可能である。そのような酵素の使用は、当業者に広く理解されている。多くの場合、ベクターは、外因性配列をベクターにライゲーションすることができるように、MCS内で切断を行う制限酵素を使用して線形化またはフラグメント化される。「ライゲーション」とは、2つの核酸フラグメント間でホスホジエステル結合を形成するプロセスを指し、これは、互いに連続的であってもよく、または連続的でなくてもよい。制限酵素およびライゲーション反応を含む技法は、組換え技術の当業者に周知である。
4.スプライシング部位
【0159】
ほとんどの転写された真核生物RNA分子は、一次転写産物からイントロンを除去するためのRNAスプライシングを受けるであろう。ゲノム真核生物配列を含むベクターは、タンパク質発現のために転写産物を適正にプロセシングするのを確実にするために、ドナーおよび/またはアクセプタースプライシング部位を必要とし得る(例えば、Chandler et al., 1997を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
5.終結シグナル
【0160】
本開示のベクターまたはコンストラクトは、一般に、少なくとも1つの終結シグナルを含むであろう。「終結シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写産物の特異的な終結に関与するDNA配列から構成される。したがって、ある特定の実施形態において、RNA転写産物の産生を終了させる終結シグナルが、企図される。ターミネーターは、望ましいメッセージレベルを達成するために、インビボで必要とされ得る。
【0161】
真核生物系において、ターミネーター領域はまた、ポリアデニル化部位を曝露するように新しい転写産物の部位特異的切断を可能にする、特定のDNA配列を含み得る。これは、約200個のA残基(ポリA)のストレッチを転写産物の3’末端に付加するように、特化した内因性ポリメラーゼにシグナルを送る。このポリA尾部で改変されたRNA分子は、より安定であり、より効率的に翻訳されると考えられる。したがって、真核生物が関与する他の実施形態において、そのターミネーターが、RNAの切断のためのシグナルを含むことが好ましく、ターミネーターシグナルが、メッセージのポリアデニル化を促進することが、より好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位エレメントは、メッセージレベルを増強させ、カセットから他の配列へのリードスルーを最小限に抑えるように機能し得る。
【0162】
本開示における使用が企図されるターミネーターとしては、本明細書に記載されるかまたは当業者に公知である任意の公知のターミネーターが挙げられ、これには、例えば、遺伝子の終結配列、例えば、例として、ウシ成長ホルモンターミネーターまたはウイルス修正配列、例えば、例として、SV40ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、終結シグナルは、配列トランケーションに起因するものなど、転写可能な配列または翻訳可能な配列が欠如していてもよい。
6.ポリアデニル化シグナル
【0163】
発現の際、特に、真核生物発現の際、典型的には、転写産物の適正なポリアデニル化を達成するために、ポリアデニル化シグナルが含まれるであろう。ポリアデニル化シグナルの性質は、本開示の実施の成功に重要であるとは考えられておらず、任意のそのような配列を用いることができる。好ましい実施形態には、従来的であり、様々な標的細胞において良好に機能することが知られている、SV40ポリアデニル化部シグナルまたはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが含まれる。ポリアデニル化は、転写産物の安定性を増加させ得るか、または細胞質輸送を促進し得る。
7.複製起点
【0164】
ベクターを宿主細胞において拡大させるために、それは、1つまたは複数の複製起点部位(「ori」と称されることが多い)を含んでもよく、これは、複製が開始される特定の核酸配列である。あるいは、宿主細胞が酵母である場合には、自律的複製配列(ARS)を、用いることができる。
8.選択可能なマーカーおよびスクリーニング可能なマーカー
【0165】
本開示のある特定の実施形態において、本開示の核酸コンストラクトを含む細胞は、発現ベクターにマーカーを含めることによって、インビトロまたはインビボで特定することができる。そのようなマーカーは、特定可能な変化を細胞に付与し、発現ベクターを含む細胞の容易な特定を可能にするであろう。一般に、選択可能なマーカーは、選択を可能にする特性を付与するものである。陽性選択可能なマーカーは、マーカーの存在によりその選択が可能となるものであり、一方で陰性選択可能なマーカーは、その存在がその選択を防止するものである。陽性選択可能なマーカーの例は、薬物耐性マーカーである。
【0166】
通常、薬物選択マーカーを含めることは、形質転換体のクローニングおよび特定を補助し、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択可能なマーカーである。状態の実装に基づいて形質転換体の区別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、比色分析による分析に基づくGFPなどのスクリーニング可能なマーカーを含む、他の種類のマーカーもまた企図される。あるいは、スクリーニング可能な酵素、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を、利用してもよい。当業者であれば、可能性としてFACS分析とともに、免疫原性マーカーを用いる法についても把握しているであろう。使用されるマーカーは、それを遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現させることが可能である限り、重要であるとは考えられない。選択可能なマーカーおよびスクリーニング可能なマーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
9.追加の特性
【0167】
いくつかの実施形態において、本開示のベクターおよび/または核酸コンストラクトは、2Aエレメントまたは配列を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示のベクターおよび/または核酸コンストラクトは、1つまたは複数のクローニング部位を含み得る。いくつかのそのような実施形態において、クローニング部位は、対象への投与のために製造する前に、完全に除外されない場合がある。いくつかの実施形態において、クローニング部位は、リンカー配列として、またはコザック部位の部分としてを含む、機能的役割を有し得る。当業者には理解されるように、クローニング部位は、一次配列が非常に有意に変動し得るが、それらの所望される機能は保持し得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、2Aエレメントは、T2A、P2A、E2A、および/またはF2Aエレメントである。いくつかの実施形態において、2A配列は、GSG(グリシン、セリン、グリシン)などであるがこれらに限定されない、任意選択の5’リンカー配列を含み得る。
配列番号7-例示的なT2Aアミノ酸配列
EGRGSLLTCGDVEENPGP
配列番号8-例示的なP2Aアミノ酸配列
ATNFSLLKQAGDVEENPGP
配列番号9-例示的なE2Aアミノ酸配列
QCTNYALLKLAGDVESNPGP
配列番号10-例示的なF2Aアミノ酸配列
VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP
配列番号11-例示的なP2Aヌクレオチド配列
GCCACAAACTTCAGCCTGCTGAAACAGGCTGGCGACGTGGAAGAGAACCCTGGCCCTTCTAGA
B.プラスミドベクター
【0169】
ある特定の実施形態において、プラスミドベクターは、宿主細胞を形質転換させるための使用が企図される。一般に、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換される細胞における表現型選択を提供することができるマーキング配列を有する。非限定的な例において、大腸菌は、多くの場合、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322の誘導体を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含み、したがって、形質転換された細胞を特定するための容易な手段を提供する。pBRプラスミドまたは他の微生物プラスミドもしくはファージは、例えば、微生物がその独自のタンパク質の発現のために使用することができるプロモーターも含まなければならないか、または含むように改変されていなければならない。
【0170】
加えて、宿主微生物と適合性のあるレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターを、これらの宿主に関連する形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、ファージラムダGEM(商標)-11は、例えば、大腸菌LE392などの宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えファージベクターの作製において利用され得る。
【0171】
ゲノム組込み型プラスミド、例えば、ピギーバックまたはスリーピングビューティートランスポゾン遺伝子送達プラスミドは、心臓または他の器官における核酸の長期的なトランスジェニック発現に用いられ得る。
【0172】
さらなる有用なプラスミドベクターとしては、pINベクター(Inouye et al., 1985)、ならびに後での精製および分離または切断のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質の生成における使用のためのpGEXベクターが挙げられる。他の好適な融合タンパク質は、β-ガラクトシダーゼ、ユビキチンなどを有するものである。
【0173】
発現ベクターを含む、細菌宿主細胞、例えば、大腸菌を、いくつかの好適な培地のうちのいずれか、例えば、LBにおいて、成長させる。ある特定のベクター内の組換えタンパク質の発現は、当業者には理解されるように、宿主細胞を、ある特定のプロモーターに特異的な薬剤と接触させることによって、例えば、IPTGを培地に添加するか、またはインキュベーションを高温に切り替えることによって、誘導することができる。細菌を、さらなる期間、一般には2~24時間にわたり培養した後、細胞を、遠心分離によって回収し、洗浄して、残留培地を除去する。
C.ウイルスベクター
【0174】
ある特定のウイルスが、受容体に媒介されるエンドサイトーシスによって細胞に感染するかまたは細胞に進入する能力、ならびに宿主細胞ゲノムに組み込まれ、ウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現させる能力により、それらは、外来核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)に移入するための有力な候補となっている。本開示の核酸を送達するために使用することができるウイルスベクターの非限定的な例は、以下に記載される。
1.アデノウイルスベクター
【0175】
核酸の送達のための具体的な方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAへの組込みの能力が低いことが知られているが、この特性は、これらのベクターによって得られる遺伝子移入の効率が高いことによって釣り合いが取れている。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)コンストラクトのパッケージングを補助し、(b)そこでクローニングされた組織または細胞特異的コンストラクトを最終的に発現させるのに十分な、アデノウイルス配列を含むコンストラクトを含むことを意味する。36kbの線形二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの遺伝子構成に関する知識により、大きなアデノウイルスDNA片の最大7kbまでの外来配列との置換が可能となる(Grunhaus and Horwitz, 1992)。
2. AAVベクター
【0176】
核酸は、アデノウイルス補助トランスフェクションを使用して、細胞に導入されてもよい。アデノウイルス連結系を使用した細胞系において、トランスフェクション効率の増加が報告されている(Kelleher and Vos, 1994、Cotten et al., 1992、Curiel, 1994)。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、高い組込み頻度を有し、非分裂細胞に感染することができ、したがって、例えば、組織培養物(Muzyczka, 1992)またはインビボでの哺乳動物細胞への遺伝子の送達に有用となっているため、本開示の実施形態における使用のための有望なベクター系である。AAVは、感染に関して広い宿主範囲を有する(Tratschin et al., 1984、Laughlin et al., 1986、Lebkowski et al., 1988、McLaughlin et al., 1988)。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および同第4,797,368号に記載されており、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、AAVベクター(例えば、rAAVベクターを含む)は、適切な対照ベクターと比較して、筋肉細胞および/または心筋細胞に特異的である、および/またはそれに対して増加した特異性を有する。
3.レトロウイルスベクター
【0177】
レトロウイルスは、遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、多量の外来遺伝子材料を移入し、広範な種および細胞型に感染し、特別な細胞系にパッケージングされるその能力に起因して、送達ベクターとして有望である(Miller, 1992)。
【0178】
レトロウイルスベクターを構築するために、核酸を、ある特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入して、複製欠損であるウイルスを産生させる。ビリオンを産生させるために、gag、pol、およびenv遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を有さないパッケージング細胞系を、構築する(Mann et al., 1983)。cDNAを含む組換えプラスミドを、レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と一緒に、特別な細胞系に導入すると(例えば、例として、リン酸カルシウム沈降によって)、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子にパッケージングされるのを可能にし、これが、次いで、培養培地に分泌される(Nicolas and Rubenstein, 1988、Temin, 1986、Mann et al., 1983)。組換えレトロウイルスを含む培地を、次いで、回収し、任意選択で濃縮し、遺伝子移入に使用する。レトロウイルスベクターは、広範な細胞型に感染することができる。しかしながら、組込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskind et al., 1975)。
【0179】
レンチウイルスは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、pol、およびenvに加えて、調節性または構造上の機能を有する他の遺伝子を含む、複雑なレトロウイルスである。レンチウイルスベクターは、当該技術分野において周知である(例えば、Naldini et al., 1996、Zufferey et al., 1997、Blomer et al., 1997、米国特許第6,013,516号、および同第5,994,136号を参照されたい)。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1、HIV-2、およびサル免疫不全ウイルスSIVが挙げられる。レンチウイルスベクターは、HIV毒性遺伝子を多重に減弱させることによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu、およびnefが、欠失されて、ベクターが生物学的に安全となっている。
【0180】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができ、インビボおよびエキソビボの両方の遺伝子移入および核酸配列の発現に使用することができる。例えば、好適な宿主細胞にパッケージング機能、すなわち、gag、pol、およびenv、ならびにrevおよびtatを有する2つまたはそれよりも多くのベクターをトランスフェクトした、非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルスは、例えば、米国特許第5,994,136号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。特定の細胞型の受容体への標的化のために、エンベロープタンパク質を抗体または特定のリガンドと連結させることによって、組換えウイルスを標的化することができる。例えば、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードする別の遺伝子とともに、目的とされる配列(調節領域を含む)をウイルスベクターに挿入することよって、ベクターは、標的特異的となる。
4.他のウイルスベクター
【0181】
他のウイルスベクターは、本開示において、ワクチンコンストラクトとして用いられ得る。ウイルス、例えば、ワクシニアウイルス(例えば、Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Coupar et al., 1988を参照されたい)、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルスに由来するベクターが、用いられ得る。それらは、様々な哺乳動物細胞にとって魅力的ないくつかの特性を提供する(例えば、Friedmann, 1989、Ridgeway, 1988、Baichwal and Sugden, 1986、Coupar et al., 1988、Horwich et al., 1990を参照されたい)。
D.改変されたウイルスを使用した送達
【0182】
送達しようとする核酸は、特定の結合リガンドを発現するように操作されている感染性ウイルス内に収容されてもよい。ウイルス粒子は、したがって、標的細胞の同種受容体に特異的に結合し、内容物を細胞に送達するであろう。レトロウイルスベクターの特異的標的化を可能にするように設計された新規なアプローチは、ウイルスエンベロープへのラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学的改変に基づいて開発された。この改変は、シアロ糖タンパク質受容体を介した肝細胞の特異的感染を可能にし得る。
【0183】
レトロウイルスエンベロープタンパク質および特定の細胞受容体に対するビオチン化抗体を使用する、組換えレトロウイルスの標的化のための別のアプローチが、設計されている。抗体は、ストレプトアビジンを使用することによって、ビオチン成分を介して連結された(例えば、Roux et al., 1989を参照されたい)。主要組織適合複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を使用して、それらは、インビトロで同種指向性ウイルスによるこれらの表面抗原を有する様々なヒト細胞の感染を示した(例えば、Roux et al., 1989を参照されたい)。
E.ベクター送達および細胞形質転換
【0184】
本開示での使用のためのオルガネラ、細胞、組織、または生物の形質転換のための核酸送達に好適な方法は、本明細書に記載されるように、または当業者に公知のように、核酸(例えば、DNA)を、オルガネラ、細胞、組織、または生物に導入することができる実質的にあらゆる方法を含むと考えられる。そのような方法としては、DNAの直接的な送達、例えば、エキソビボトランスフェクションによるもの(例えば、Wilson et al., 1989、Nabel et al, 1989を参照されたい)、マイクロインジェクション(例えば、Harlan and Weintraub, 1985、米国特許第5,789,215号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)を含む注射によるもの(例えば、米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)、エレクトロポレーションによるもの(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,384,253号、Tur-Kaspa et al., 1986、Potter et al., 1984を参照されたい)、リン酸カルシウム沈降によるもの(例えば、Graham and Van Der Eb, 1973、Chen and Okayama, 1987、Rippe et al., 1990を参照されたい)、DEAE-デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用するもの(例えば、Gopal, 1985を参照されたい)、直接的な超音波ローディング(direct sonic loading)によるもの(例えば、Fechheimer et al., 1987を参照されたい)、リポソームに媒介されるトランスフェクションによるもの(例えば、Nicolau and Sene, 1982、Fraley et al., 1979、Nicolau et al., 1987、Wong et al., 1980、Kaneda et al., 1989、Kato et al., 1991を参照されたい)および受容体に媒介されるトランスフェクションによるもの(例えば、Wu and Wu, 1987、Wu and Wu, 1988を参照されたい)、微粒子銃によるもの(例えば、PCT出願第WO 94/09699号および同第95/06128号、米国特許第5,610,042号、同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号、および同第5,538,880号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)、炭化ケイ素線維を用いた撹拌によるもの(例えば、Kaeppler et al., 1990、米国特許第5,302,523号および同第5,464,765号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)、アグロバクテリウムに媒介される形質転換によるもの(例えば、米国特許第5,591,616号および同第5,563,055号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)、PEGに媒介されるプロトプラストの形質転換によるもの(例えば、Omirulleh et al., 1993、米国特許第4,684,611号および同第4,952,500号を参照されたく、これらはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)、乾燥/阻害に媒介されるDNA取り込みによるもの(例えば、Potrykus et al., 1985を参照されたい)、ならびにこのような方法の任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。これらのような技法の適用を通じて、オルガネラ、細胞、組織、または生物は、安定にまたは一過的に形質転換され得る。
1.エキソビボ形質転換
【0185】
エキソビボ環境で生物から摘出した血管細胞および組織をトランスフェクトするための方法は、当業者に公知である。例えば、イヌ内皮細胞は、インビトロでレトロウイルス遺伝子移入によって遺伝子変更されており、イヌに移植されている(例えば、Wilson et al., 1989を参照されたい)。別の例において、ユカタンミニブタ内皮細胞は、インビトロでレトロウイルスによってトランスフェクトされ、二重バルーンカテーテルを使用して動脈に移植されている(例えば、Nabel et al., 1989を参照されたい)。したがって、細胞または組織を摘出し、本開示の核酸を使用してエキソビボでトランスフェクトしてもよいことが、企図される。具体的な態様において、移植した細胞または組織を、生物に入れてもよい。好ましい側面において、核酸は、移植した細胞または組織において発現される。
2.注射
【0186】
ある特定の実施形態において、核酸は、1回または複数回の注射(すなわち、ニードル注射)によって、例えば、例として、心筋内、心内膜、心外膜、冠動脈内に、直接的な注射または冠動脈内注射によって、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内などで、オルガネラ、細胞、組織、または生物に送達され得る。特定の実施形態において、p63-TIDは、注射によって心臓に直接的に送達される。注射の方法は、当業者に周知である(例えば、生理食塩水を含む組成物の注射)。本開示のさらなる実施形態は、直接的なマイクロインジェクションによる核酸の導入を含む。
3.エレクトロポレーション
【0187】
本開示のある特定の実施形態において、核酸は、エレクトロポレーションによって、オルガネラ、細胞、組織、または生物に導入される。エレクトロポレーションは、細胞およびDNAの懸濁液の高電圧放電への曝露を伴う。この方法のいくつかの変化形においては、ある特定の細胞壁分解酵素、例えば、ペクチン分解酵素を用いて、標的レシピエント細胞を、未処置細胞よりも、エレクトロポレーションによる形質転換により感受性にする(例えば、米国特許第5,384,253号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。あるいは、レシピエント細胞は、機械的損傷によって形質転換により感受性にすることができる。
【0188】
エレクトロポレーションを使用した真核生物細胞のトランスフェクションは、極めて成功している。この様式で、マウス前Bリンパ球に、ヒトカッパ免疫グロブリン遺伝子がトランスフェクトされており(例えば、Potter et al., 1984を参照されたい)、ラット肝細胞に、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼがトランスフェクトされている(例えば、Tur-Kaspa et al., 1986を参照されたい)。
【0189】
細胞、例えば、例として、植物細胞においてエレクトロポレーションによる形質転換を達成するために、砕けやすい組織、例えば、細胞の懸濁培養液、もしくは胚性カルスのいずれかを利用してもよく、または代替的には、未成熟胚もしくは他の組織化された組織を直接的に形質転換してもよい。この技法では、選択された細胞の細胞壁を、それらをペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)に曝露するか、または制御された様式での機械的に損傷させることによって、部分的に分解する。インタクトな細胞のエレクトロポレーションによって形質転換されているいくつかの種の例としては、トウモロコシ(例えば、米国特許第5,384,253号、Rhodes et al., 1995、D’Halluin et al., 1992を参照されたい)、コムギ(例えば、Zhou et al., 1993を参照されたい)、トマト(例えば、Hou and Lin, 1996を参照されたい)、ダイズ(例えば、Christou et al., 1987を参照されたい)、およびタバコ(例えば、Lee et al., 1989を参照されたい)が挙げられる。
【0190】
また、植物細胞のエレクトロポレーションによる形質転換に、プロトプラストを利用してもよい(例えば、Bates, 1994、Lazzeri, 1995を参照されたい)。例えば、子葉由来のプロトプラストのエレクトロポレーションによるトランスジェニックダイズ植物の生成は、国際特許出願第WO 9217598号においてDhirおよびWidholmによって記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。プロトプラスト形質転換について記載されている種の他の例としては、オオムギ(例えば、Lazerri, 1995を参照されたい)、ソルガム(例えば、Battraw et al., 1991を参照されたい)、トウモロコシ(例えば、Bhattacharjee et al., 1997を参照されたい)、コムギ(例えば、He et al., 1994を参照されたい)、およびトマト(例えば、Tsukada, 1989を参照されたい)が挙げられる。
4.リン酸カルシウム
【0191】
本開示の他の実施形態において、核酸は、リン酸カルシウム沈降を使用して細胞に導入される。この技法を使用して、ヒトKB細胞に、アデノウイルス5 DNAがトランスフェクトされている(例えば、Graham and Van Der Eb, 1973を参照されたい)。また、この様式で、マウスL(A9)、マウスC127、CHO、CV-1、BHK、NIH3T3、およびHeLa細胞に、ネオマイシンマーカー遺伝子がトランスフェクトされており(例えば、Chen and Okayama, 1987を参照されたい)、ラット肝細胞に、様々なマーカー遺伝子がトランスフェクトされている(例えば、Rippe et al., 1990を参照されたい)。
5. DEAE-デキストラン
【0192】
別の実施形態において、核酸は、DEAE-デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用して、細胞に送達される。この様式で、レポータープラスミドが、マウス骨髄腫および赤白血病細胞に導入されている(例えば、Gopal, 1985を参照されたい)。
6.超音波処理ローディング
【0193】
本開示の追加の実施形態は、直接的な超音波ローディングによる核酸の導入を含む。LTK-線維芽細胞に、超音波処理ローディングによってチミジンキナーゼ遺伝子がトランスフェクトされている(例えば、Fechheimer et al., 1987を参照されたい)。
7.リポソームに媒介されるトランスフェクション
【0194】
本開示のさらなる実施形態において、核酸は、脂質複合体、例えば、例として、リポソームに封入されてもよい。リポソームは、リン脂質の二重層膜および内部の水性媒体によって特徴付けられる小胞構造体である。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質を過剰量の水溶液中に懸濁させると自発的に形成される。脂質成分に自己再配置が起こり、その後、閉じた構造の形成が生じ、脂質二重層間に水および溶解した溶質が封入される(例えば、Ghosh and Bachhawat, 1991を参照されたい)。Lipofectamine(Gibco BRL)またはSuperfect(Qiagen)と複合体を形成した核酸もまた、企図される。
【0195】
インビトロでのリポソームに媒介される核酸送達および外来DNAの発現は、非常に成功している(例えば、Nicolau and Sene, 1982、Fraley et al., 1979、Nicolau et al., 1987を参照されたい)。培養したニワトリ胚、HeLa、およびヘパトーマ細胞におけるリポソームに媒介される送達および外来DNAの発現の実現可能性もまた、示されている(例えば、Wong et al., 1980を参照されたい)。
【0196】
本開示のある特定の実施形態において、リポソームは、赤血球凝集性ウイルス(HVJ)と複合体を形成してもよい。これは、細胞膜との融合を促進し、リポソームに封入されたDNAの細胞進入を促進することが示されている(例えば、Kaneda et al., 1989を参照されたい)。他の実施形態において、リポソームは、核内非ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)と複合体を形成してもよく、またはそれとともに用いてもよい(例えば、Kato et al., 1991を参照されたい)。なおもさらなる実施形態において、リポソームは、HVJおよびHMG-1の両方と複合体を形成してもよく、またはそれらとともに用いてもよい。他の実施形態において、送達ビヒクルは、リガンドおよびリポソームを含み得る。
8.受容体に媒介されるトランスフェクション
【0197】
なおもさらに、核酸は、受容体に媒介される送達ビヒクルを介して、標的細胞に送達されてもよい。これらは、標的細胞において生じるであろう受容体に媒介されるエンドサイトーシスによる巨大分子の選択的取り込みを利用する。様々な受容体の細胞型特異的分布を踏まえると、この送達方法により、本開示にさらなる程度の特異性が加わる。
【0198】
ある特定の受容体に媒介される遺伝子標的化ビヒクルは、細胞受容体特異的リガンドおよび核酸結合剤を含む。その他のものは、送達しようとする核酸が作動可能に結合されている細胞受容体特異的リガンドを含む。いくつかのリガンドが、受容体に媒介される遺伝子移入に使用されており(例えば、Wu and Wu, 1987、Wagner et al., 1990、Perales et al., 1994、Myers, EPO 0273085を参照されたい)、これはこの技法の操作性を確立している。別の哺乳動物細胞型の文脈における特異的送達が、説明されている(例えば、Wu and Wu, 1993を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。本開示のある特定の態様において、リガンドは、標的細胞集団で特異的に発現される受容体に対応するように選択されるであろう。
【0199】
他の実施形態において、細胞特異的核酸標的化ビヒクルの核酸送達ビヒクル成分は、リポソームと組み合わせて特異的結合リガンドを含み得る。送達しようとする核酸は、リポソーム内に収容され、特異的結合リガンドは、リポソーム膜に機能的に組み込まれる。リポソームは、したがって、標的細胞の受容体に特異的に結合し、内容物を細胞に送達するであろう。
【0200】
なおもさらなる実施形態において、標的化送達ビヒクルの核酸送達ビヒクル成分は、リポソームそのものであってもよく、これは、好ましくは、細胞特異的結合を誘導する1つまたは複数の脂質または糖タンパク質を含むであろう。例えば、ラクトシル-セラミド、ガラクトース末端アシアルガングリオシドが、リポソームに組み込まれており、肝細胞によるインスリン遺伝子の取り込みの増加が観察されている(例えば、Nicolau et al., 1987を参照されたい)。本開示の組織特異的形質転換コンストラクトは、類似の様式で、標的細胞に特異的に送達することができることが、企図される。
9.微粒子銃
【0201】
微粒子銃技法を使用して、核酸を、少なくとも1つのオルガネラ、細胞、組織、または生物に導入することができる(例えば、米国特許第5,550,318号、米国特許第5,538,880号、米国特許第5,610,042号、およびPCT出願第WO 94/09699号を参照されたく、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)。この方法は、DNAがコーティングされた微粒子発射体を、高速度に加速させて細胞を殺滅することなくそれらが細胞膜を穿刺して細胞に進入することを可能にする能力に依存する(例えば、Klein et al., 1987を参照されたい)。当該技術分野において公知の広範な微粒子銃技法が、存在し、これらの多くは、本開示に適用可能である。
【0202】
微粒子銃を使用して、様々な細胞、組織、または生物、例えば、例として、任意の植物種を、形質転換することができる。微粒子銃によって形質転換されている種の例としては、単子葉植物種、例えば、トウモロコシ(例えば、PCT出願第WO 95/06128号を参照されたい)、オオムギ(例えば、Ritala et al., 1994、Hensgens et al., 1993を参照されたい)、コムギ(例えば、米国特許第5,563,055号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)、コメ(例えば、Hensgens et al., 1993を参照されたい)、オーツムギ(例えば、Torbet et al., 1995、Torbet et al., 1998を参照されたい)、ライムギ(例えば、Hensgens et al., 1993を参照されたい)、サトウキビ(例えば、Bower et al., 1992を参照されたい)、およびソルガム(例えば、Casas et al., 1993、Hagio et al., 1991を参照されたい)、ならびにタバコ(例えば、Tomes et al., 1990、Buising and Benbow, 1994を参照されたい)、ダイズ(例えば、米国特許第5,322,783号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)、ヒマワリ(例えば、Knittel et al. 1994を参照されたい)、ラッカセイ(例えば、Singsit et al., 1997を参照されたい)、綿(例えば、McCabe and Martinell, 1993を参照されたい)、トマト(例えば、VanEck et al. 1995を参照されたい)、および一般的なマメ科植物(例えば、米国特許第5,563,055号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)を含むいくつかの双子葉植物が挙げられる。
【0203】
この微粒子銃において、1つまたは複数の粒子は、少なくとも1つの核酸でコーティングされていてもよく、噴射力によって細胞へと送達され得る。小さな粒子を加速させるためのいくつかのデバイスが、開発されている。1つのそのようなデバイスは、高電圧放電に依存して電流を生成し、電流が原動力を提供する(例えば、Yang et al., 1990を参照されたい)。使用される微粒子発射体は、生物学的に不活性な物質、例えば、タングステンまたは金粒子またはビーズからなっている。例示的な粒子としては、タングステン、白金、および好ましくは金から構成されるものが挙げられる。いくつかの場合において、金属粒子上へのDNA沈降は、微粒子銃を使用したレシピエント細胞へのDNA送達には必要ないであろうことが企図される。しかしながら、粒子は、DNAでコーティングするのではなく、DNAを含んでもよいことが、企図される。DNAでコーティングされた粒子は、微粒子銃によるDNA送達のレベルを増加させ得るが、それ自体は必要ではない。
【0204】
撃ち込みのために、懸濁液中の細胞は、フィルターまたは固体培養培地で濃縮される。あるいは、未成熟胚または他の標的細胞を、固体培養培地上に配置してもよい。撃ち込みを行おうとする細胞は、微粒子発射体停止プレートの下に適切な距離で配置される。
【0205】
加速によってDNAを細胞(例えば、植物細胞)に送達するための方法の例示的な実施形態は、Biolistics粒子送達システムであり、これを使用して、DNAまたは細胞でコーティングした粒子を、スクリーン、例えば、ステンレス鋼またはNytexスクリーンを通して、細胞、例えば、懸濁液中で培養した単子葉植物細胞で被覆されたフィルター表面に噴射することができる。スクリーンは、粒子が大きな凝集体でレシピエント細胞に送達されないように、粒子を分散させる。発射装置と撃ち込もうとする細胞との間に介在するスクリーンは、発射体の凝集物のサイズを低減させ、大きすぎる発射体がレシピエント細胞に与える損傷を低減させることにより形質転換の頻度がより高くなることに寄与し得ると考えられている。
VII.タンパク質、ポリペプチド、およびペプチド
【0206】
いくつかの事例において、実施形態は、p63-TIDをポリペプチドとして利用してもよく、任意選択で、1つもしくは複数の精製された心臓細胞プログラミング因子、例えば、Hand2、ミオカルディン、Gata4、Mef2c、もしくはTbx5タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド、または1つもしくは複数のクロマチン不安定化剤タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチド、または他のタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドを利用してもよく、これは、それぞれの核酸形態を利用することに加えて、またはその代替として、行われてもよい。「精製されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物細胞または組換え宿主細胞から単離可能なタンパク質組成物を指し、ここで、少なくとも1つのタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、その天然に入手可能な状態と比べて、すなわち、細胞抽出物内でのその純度と比べて、任意の程度まで精製されている。精製されたタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、したがって、それが天然に存在する環境から離れた野生型または突然変異体タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドも指す。
【0207】
様々な遺伝子のヌクレオチド、ならびにタンパク質、ポリペプチド、およびペプチド配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースで見出すことができる。1つのそのようなデータベースは、National Center for Biotechnology InformationのGENBANK(登録商標)およびGENPEPT(登録商標)データベースである。これらの公知の遺伝子のコーディング領域は、本明細書に開示される技法を使用して、または当業者には公知であろう任意の技法によって、増幅および/または発現させることができる。加えて、ペプチド配列は、当業者に公知の方法、例えば、自動化ペプチド合成機、例えば、Applied Biosystems(Foster City、CA)から入手可能なものを使用したペプチド合成によって、合成することができる。
【0208】
一般に、「精製された」とは、特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド組成物が、様々な他のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを除去するための分画処理に供されたものを指し、その組成物は、例えば、タンパク質アッセイによって評価され得るように、以下に記載されるように、または所望されるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドについて当業者には公知のように、その活性を実質的に保持する。
【0209】
「実質的に精製された」という用語が使用される場合、これは、特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが、組成物の主要な成分を形成している、例えば、組成物中のタンパク質の約50%またはそれよりも多くを構成している、組成物を指すであろう。好ましい実施形態において、実質的に精製されたタンパク質は、組成物中のタンパク質の60%よりも多く、70%よりも多く、80%よりも多く、90%よりも多く、95%よりも多く、99%よりも多く、またはさらに多くを構成するであろう。
【0210】
本開示に適用される場合、「均質性まで精製された」ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質とは、そのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が他のタンパク質および生物学的成分を実質的に含まない純度レベルを有することを意味する。例えば、精製されたペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、多くの場合、分解シーケンシングの実行が成功し得るのに十分なほど、他のタンパク質成分を含まないであろう。
【0211】
タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの精製の程度を定量するための様々な方法が、本開示を踏まえ、当業者には公知であろう。これらとしては、例えば、画分の具体的なタンパク質活性を判定すること、またはゲル電気泳動によって画分内のポリペプチドの数を評価することが挙げられる。
【0212】
所望されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを精製するために、少なくともいくつかの特定のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含む天然または組換え組成物を、分画化に供して、様々な他の成分を組成物から除去する。本明細書において以下に詳細に記載される技法に加えて、タンパク質精製における使用に好適な様々な他の技法が、当業者には周知であろう。これらとしては、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などでの沈降、または熱変性、続いて遠心分離、クロマトグラフィーステップ、例えば、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、レクチン親和性、および他の親和性クロマトグラフィーステップ、等電点電気泳動法、ゲル電気泳動、ならびにそれらおよび他の技法の組合せが挙げられる。
【0213】
別の例は、特異的結合パートナーを使用した特定の融合タンパク質の精製である。そのような精製方法は、当該技術分野において慣例的である。本開示は特定のタンパク質のDNA配列を提供するため、任意の融合タンパク質精製方法を、ここで実施することができる。これは、特定のタンパク質-グルタチオンS-トランスフェラーゼ融合タンパク質の生成、大腸菌における発現、およびグルタチオン-アガロースでの親和性クロマトグラフィーを使用した均質性までの単離、またはタンパク質のNもしくはC末端上でのポリヒスチジンタグの生成、およびその後のNi親和性クロマトグラフィーを使用した精製によって例証される。しかしながら、多数のDNAおよびタンパク質が公知であるか、または本明細書に記載される方法を使用して特定および増幅され得ることを踏まえると、任意の精製方法を、ここで利用することができる。
【0214】
ある特定の実施形態における使用が考慮されるが、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが、常にもっとも精製された状態で提供されるという一般要件は存在しない。実際に、天然の状態と比べてあまり実質的に精製されていないが、それにもかかわらず所望されるタンパク質組成物において濃縮されているタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、ある特定の実施形態において、有用性を有するであろうことが、企図される。
【0215】
低い程度の相対的純度を示す方法は、タンパク質産物の総回収率、または発現されたタンパク質の活性の維持において、利点を有し得る。不活性産物もまた、ある特定の実施形態において、例えば、抗体生成を介して抗原性を判定する場合に、有用性を有する。
VIII.宿主細胞
【0216】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、心臓組織に直接的に提供され、組織内の細胞によって取り込まれるが、いくつかの実施形態においては、核酸は、まず、例えば、慣例的な組換え技術方法を利用することによって、エキソビボで細胞において生成および操作される。
【0217】
本明細書において使用される場合、「細胞」、「細胞系」、および「細胞培養物」という用語は、互換可能に使用され得る。これらの用語のすべては、ありとあらゆる後続の世代であるそれらの子孫も含む。すべての子孫は、意図的または偶発的な突然変異起因して、同一ではない場合があることを理解されたい。異種核酸配列を発現させる文脈において、「宿主細胞」は、原核生物または真核生物細胞を指し、これには、ベクターを複製することおよび/またはベクターによってコードされる異種遺伝子を発現することができる任意の形質転換可能な生物が含まれる。宿主細胞は、ベクターのレシピエントとして使用することができ、また使用されている。宿主細胞は、「トランスフェクト」または「形質転換」することができ、これは、外因性核酸を宿主細胞に移入または導入するプロセスを指す。形質転換された細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。本明細書において使用される場合、「操作された」および「組換え」細胞または宿主細胞という用語は、外因性核酸配列、例えば、例としてベクターが導入されている細胞を指すことが意図される。したがって、組換え細胞は、組換えで導入された核酸を含まない天然に存在する細胞とは区別することができる。
【0218】
ある特定の実施形態において、RNAまたはタンパク質配列は、他の選択されたRNAまたはタンパク質配列と、同じ宿主細胞において共発現させることができる。共発現は、宿主細胞に、2つまたはそれよりも多くの異なる組換えベクターをコトランスフェクトすることによって達成することができる。あるいは、単一の組換えベクターを、RNAもしくはDNA(活性剤として)またはポリペプチド(活性剤として)の複数の異なるコーディング領域を含むように構築することができ、これを、次いで、単一のベクターをトランスフェクトした宿主細胞において発現させることができる。
【0219】
組織は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、1つもしくは複数の心臓細胞リプログラミング因子、ならびに/または1つもしくは複数のクロマチン不安定化剤をコードするポリヌクレオチドまたは核酸が形質転換された宿主細胞または細胞を含み得る。特定の実施形態において、細胞は、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、Hand2、および/またはミオカルディンをコードするポリヌクレオチドを有し得る。組織は、生物の一部であってもよく、またはそれから分離されていてもよい。ある特定の実施形態において、組織は、筋細胞、脂肪細胞、肺胞、エナメル芽細胞、軸索、基底細胞、血液(例えば、リンパ球)、血管、骨、骨髄、脳、乳房、心臓、軟骨、子宮頸、結腸、角膜、胚、子宮内膜、内皮、上皮、食道、筋膜(facia)、線維芽細胞、濾胞、神経節細胞、神経膠細胞、杯細胞、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、ニューロン、卵巣、膵臓、末梢血、前立腺、皮膚、皮膚、小腸、脾臓、幹細胞、胃、精巣などを含み得るが、これらに限定されない。
【0220】
ある特定の実施形態において、宿主細胞または組織は、少なくとも1つの生物に含まれ得る。ある特定の実施形態において、生物は、当業者には理解されるように、原核生物(例えば、真正細菌、古細菌)であってもよく、または真核生物であってもよい(例えば、ウェブページhttp://phylogeny.arizona.edu/tree/phylogeny.htmlを参照されたい)。
【0221】
多数の細胞系および培養物が、宿主細胞としての使用に利用可能であり、それらは、American Type Culture Collection(ATCC)を通じて入手することができ、これは、生きた培養物および遺伝子材料の記録としての機能を果たす組織である。適切な宿主は、ベクター骨格および所望される結果に基づいて、当業者によって判定され得る。プラスミドまたはコスミドは、例えば、多数のベクターの複製のために、原核生物宿主細胞に導入され得る。ベクターの複製および/または発現に利用可能な細胞型としては、細菌、例えば、大腸菌(例えば、大腸菌株RR1、大腸菌LE392、大腸菌B、大腸菌X 1776(ATCC番号31537)、ならびに大腸菌W3110(F-、ラムダ-、原栄養性、ATCC番号273325)、DH5α、JM109、およびKC8、桿菌、例えば、バチルス・スブチリス、ならび他のエンテロバクター属、例えば、サルモネラ・チフィムリウム、セラチア・マルセッセンス、様々なシュードモナス種、ならびにいくつかの市販入手可能な細菌宿主、例えば、SURE(登録商標)コンピテント細胞およびSOLOPACK(商標)ゴールド細胞(STRATAGENE(登録商標)、La Jolla)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、細菌細胞、例えば、大腸菌LE392が、ファージウイルスのための宿主細胞として特に企図される。
【0222】
ベクターの複製および/または発現のための真核生物宿主細胞の例としては、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、Cos、CHO、Saos、およびPC12が挙げられるが、これらに限定されない。様々な細胞型および生物に由来する多数の宿主細胞が利用可能であり、当業者に公知であろう。同様に、ウイルスベクターは、真核生物もしくは原核生物のいずれかの宿主細胞、特に、ベクターの複製または発現を許容するものとともに使用してもよい。
【0223】
いくつかのベクターは、原核生物および真核生物の両方の細胞におけるその複製および/または発現を可能にする、制御配列を利用し得る。当業者であれば、上述の宿主細胞のすべてをインキュベートして、それらを維持し、ベクターの複製を可能にするための条件を、さらに理解するであろう。ベクターの大規模産生、ならびにベクターによってコードされる核酸、それらの同種ポリペプチド、タンパク質、もしくはペプチドの産生を可能にするであろう技法および条件もまた、理解され、知られている。
IX.組合せ療法
【0224】
ある特定の事例において、本開示の治療法は、心臓の医学的状態のための1つまたは複数の他の治療法とともに利用される。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、1つもしくは複数の心臓細胞リプログラミング因子とともに、ならびに/または1つもしくは複数のクロマチン不安定化剤および/または1つもしくは複数の抗線維化剤もしくは血管新生因子とともに、使用され得る。特定の実施形態において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)は、Hand2およびまたはミオカルディン遺伝子療法と組み合わせて使用されるが、それはまた、Gata4、Mef2c、Tbx5、miR-133、miR-1、Oct4、Klf4、c-myc、Sox2、Mesp1、ブラキウリ、Nkx2.5、ETS2、ESRRG、Mrtf-A、MyoD、および/またはZFPM2を含む(特定の実施形態において、核酸またはポリペプチドまたはペプチドの形態で)他の遺伝子または遺伝子産物と組み合わせて使用してもよい。1つまたは複数の他の治療法は、心臓の医学的状態と直接的または間接的に関連し得る(間接的に関連する治療法の例としては、疼痛または感染に対するものが挙げられる)。特定の実施形態において、心臓の医学的状態に関連する追加の治療法は、薬物療法、外科手術、補助人工心臓(VAD)埋め込み、胸腔鏡手術(VAT)、冠動脈バイパス、またはこれらの組合せである。
【0225】
特定の実施形態において、線維化を防止する、および/または血管新生を増強もしくは促進する、1つまたは複数の薬剤を、本開示の実施形態に対する補助剤として使用してもよい。それらは、組織損傷、心筋細胞の消失、瘢痕組織などを有する領域を含む、心臓の局所化された領域において個体に提供されてもよく、または全身的に提供されてもよい。1つまたは複数の薬剤は、所望される領域において血管新生を促進するのに好適な任意の組成物であり得る。特定の実施形態において、薬剤は、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸などであり得る。米国出願第US2003/0103943号または同第US2001/0041679号に記載されるものなどの実施形態を、本開示の方法とともに用いてもよい。米国出願第US2018/0066252A1号および同第US2022/0143142A1号(これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的でそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどの実施形態を、本開示の方法とともに用いてもよい。特定の実施形態としては、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、Etsバリアント2(ETV2)、アンジオポエチン、Ang1およびAng2、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、デルタ様リガンド4(DII4)、またはこれらのペプチド、またはこれらの組合せが挙げられる。ITD-1は、TGF-ベータを阻害し、したがって、線維症および心臓リモデリングを阻害する、小分子であり(Willems E, Cabral-Teixeira J, Schade D, et al. Cell Stem Cell. 2012. pp. 242-252.)、これを利用してもよい。
【0226】
特定の実施形態において、血管新生を増強させる薬剤は、VEGFである。特定の実施形態において、血管新生を増強させる薬剤は、ETV2である。ある特定の実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、タンパク質/ペプチド、ベクター、プラスミドベクター、および/またはウイルスベクターなどであるがこれらに限定されない、本明細書に記載される任意の方法を使用して投与される。ある特定の実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、アデノウイルスベクターを使用して投与される。ある特定の実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、p63-TIDおよびH/Mと同時に投与される。ある特定の実施形態において、VEGFおよび/またはETV2は、p63-TIDおよびH/Mの投与よりも前に投与される。ある特定の実施形態において、VEGFおよび/またはETV2のp63-TIDおよびH/Mとの投与は、VEGFおよび/またはETV2の対照、GMT、および/またはGMTd処置との投与と比較すると、優れた心臓細胞リプログラミングをもたらす。
【0227】
ある特定の実施形態において、例示的なETV2ポリヌクレオチド配列は、GENBANK(登録商標)受託番号NM_001300974(配列番号12)
TTCCTGTTGCAGATAAGCCCAGCTTAGCCCAGCTGACCCCAGACCCTCTCCCCTCACTCCCCCCATGTCGCAGGATCGAGACCCTGAGGCAGACAGCCCGTTCACCAAGCCCCCCGCCCCGCCCCCATCACCCCGTAAACTTCTCCCAGCCTCCGCCCTGCCCTCACCCAGCCCGCTGTTCCCCAAGCCTCGCTCCAAGCCCACGCCACCCCTGCAGCAGGGCAGCCCCAGAGGCCAGCACCTATCCCCGAGGCTGGGGTCGAGGCTCGGCCCCGCCCCTGCCTCTGCAACTTGAGCCTGGCTGCGACCCCTGCTCTGACGTCTCGGAAAATTCCCCCTTGCCCAGGCCCTTGGGGGAGGGGGTGCATGGTATGAAATGGGGCTGAGACCCCCGGCTGGGGGCAGAGGAACCCGCCAGAGAAGGAGCCAAATTAGGCTTCTGTTTCCCTGATCTGGCACTCCAAGGGGACACGCCGACAGCGACAGCAGAGACATGCTGGAAAGGTACAAGCTCATCCCTGGCAAGCTTCCCACAGCTGGACTGGGGCTCCGCGTTACTGCACCCAGAAGTTCCATGGGGGGCGGAGCCCGACTCTCAGGCTCTTCCGTGGTCCGGGGACTGGACAGACATGGCGTGCACAGCCTGGGACTCTTGGAGCGGCGCCTCGCAGACCCTGGGCCCCGCCCCTCTCGGCCCGGGCCCCATCCCCGCCGCCGGCTCCGAAGGCGCCGCGGGCCAGAACTGCGTCCCCGTGGCGGGAGAGGCCACCTCGTGGTCGCGCGCCCAGGCCGCCGGGAGCAACACCAGCTGGGACTGTTCTGTGGGGCCCGACGGCGATACCTACTGGGGCAGTGGCCTGGGCGGGGAGCCGCGCACGGACTGTACCATTTCGTGGGGCGGGCCCGCGGGCCCGGACTGTACCACCTCCTGGAACCCGGGGCTGCATGCGGGTGGCACCACCTCTTTGAAGCGGTACCAGAGCTCAGCTCTCACCGTTTGCTCCGAACCGAGCCCGCAGTCGGACCGTGCCAGTTTGGCTCGATGCCCCAAAACTAACCACCGAGGTCCCATTCAGCTGTGGCAGTTCCTCCTGGAGCTGCTCCACGACGGGGCGCGTAGCAGCTGCATCCGTTGGACTGGCAACAGCCGCGAGTTCCAGCTGTGCGACCCCAAAGAGGTGGCTCGGCTGTGGGGCGAGCGCAAGAGAAAGCCGGGCATGAATTACGAGAAGCTGAGCCGGGGCCTTCGCTACTACTATCGCCGCGACATCGTGCGCAAGAGCGGGGGGCGAAAGTACACGTACCGCTTCGGGGGCCGCGTGCCCAGCCTAGCCTATCCGGACTGTGCGGGAGGCGGACGGGGAGCAGAGACACAATAAAAATTCCCGGTCAAACCTCAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号12)
である、および/またはそこに含まれる。
【0228】
ある特定の実施形態において、例示的なVEGFポリヌクレオチド配列は、GENBANK(登録商標)受託番号AY047581(配列番号13)
TCGGGCCTCCGAAACCATGAACTTTCTGCTGTCTTGGGTGCATTGGAGCCTTGCCTTGCTGCTCTACCTCCACCATGCCAAGTGGTCCCAGGCTGCACCCATGGCAGAAGGAGGGGGGCAGAATCATCACGAAGTGGTGAAGTTCATGGATGTCTATCAGCGCAGCTACTGCCATCCAATCGAGACCCTGGTGGACATCTTCCAGGAGTACCCTGATGAGATCGAGTACATCTTCAAGCCATCCTGTGTGCCCCTGATGCGATGCGGGGGCTGCTGCAATGACGAGGGCCTGGAGTGTGTGCCCACTGAGGAGTCCAACATCACCATGCAGATTATGCGGATCAAACCTCACCAAGGCCAGCACATAGGAGAGATGAGCTTCCTACAGCACAACAAATGTGAATGCAGACCAAAGAAAGATAGAGCAAGACAAGAAAATCCCTGTGGGCCTTGCTCAGAGCGGAGAAAGCATTTGTTTGTACAAGATCCGCAGACGTGTAAATGTTCCTGCAAAAACACAGACTCGCGTTGCAAGGCGAGGCAGCTTGAGTTAAACGAACGTACTTGCAGATGTGACAAGCCGAGGCGGTGAGCCGGGCAGGAGGAAGGAGCCTCCCTCAGGGTTTCGGGAACCAGATCT(配列番号13)
である、および/またはそこに含まれる。
【0229】
具体的な実施形態において、配列番号12および/または13の一部またはすべては、本開示の方法において利用される。特定の実施形態において、配列番号12および/または13に対して特定の配列同一性を有するポリヌクレオチドが、本開示の方法において利用される。特定の事例において、配列番号12および/または13の機能性フラグメントが用いられ、「機能性」フラグメントという用語は、本明細書において使用される場合、線維芽細胞を内皮細胞または内皮様細胞に変換することができる活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。特定の事例において、フラグメントは、配列番号12および/または13の少なくとも約1375個もしくはそれを上回らない、1350、1325、1300、1275、1250、1225、1200、1175、1150、1125、1100、1075、1050、1025、1000、975、950、925、900、875、850、825、800、775、750、725、700、675、650、625、600、575、550、525、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225、200、175、150、125個もしくはそれを上回らない、または100個もしくはそれを上回らない、連続したヌクレオチドの長さを有する。加えて、フラグメントは、少なくともまたは厳密に、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、80、75、または70%の同一性の、配列番号12および/または13における対応する領域との配列同一性を有し得る。配列番号12および/または13に対して、少なくともまたは厳密に、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、80、75、または70%の同一性を含む、配列番号12および/または13に対してある特定の配列同一性を有するポリヌクレオチドが、使用され得る。
【0230】
いくつかの実施形態において、ETV2および/またはVEGFポリペプチドは、ベクター上にある、担体と会合している、細胞内にある(ベクター上の細胞内を含む)など、どの形態にあるかに関係なく、それを必要とする個体に送達される。特定の実施形態において、ETV2および/またはVEGFポリペプチドは、ヒト、マウス、ラットなどを含む、哺乳動物ETV2および/またはVEGFポリペプチドである。具体的な実施形態において、ETV2ポリペプチド配列の1つの例は、GENBANK(登録商標)受託番号NP_001287903(配列番号14)
ACTAWDSWSGASQTLGPAPLGPGPIPAAGSEGAAGQNCVPVAGEATSWSRAQAAGSNTSWDCSVGPDGDTYWGSGLGGEPRTDCTISWGGPAGPDCTTSWNPGLHAGGTTSLKRYQSSALTVCSEPSPQSDRASLARCPKTNHRGPIQLWQFLLELLHDGARSSCIRWTGNSREFQLCDPKEVARLWGERKRKPGMNYEKLSRGLRYYYRRDIVRKSGGRKYTYRFGGRVPSLAYPDCAGGGRGAETQ(配列番号14)
である、および/またはそこに含まれる。
【0231】
具体的な実施形態において、VEGFポリペプチド配列の1つの例は、GENBANK(登録商標)受託番号AAK95847(配列番号15)
MNFLLSWVHWSLALLLYLHHAKWSQAAPMAEGGGQNHHEVVKFMDVYQRSYCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGLECVPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKCECRPKKDRARQENPCGPCSERRKHLFVQDPQTCKCSCKNTDSRCKARQLELNERTCRCDKPRR(配列番号15)
である、および/またはそこに含まれる。
【0232】
具体的な実施形態において、配列番号14および/または15の一部またはすべては、本開示の方法において利用される。特定の実施形態において、配列番号14および/または15に対して特定の配列同一性を有するポリペプチドが、本開示の方法において利用される。特定の事例において、配列番号14および/または15の機能性フラグメントが用いられ、「機能性」フラグメントという用語は、本明細書において使用される場合、線維芽細胞を内皮細胞または内皮様細胞に変換することができる活性を有するポリペプチドを指す。特定の事例において、フラグメントは、配列番号14および/または15の少なくとも約245個もしくはそれを上回らない、240、235、230、225、220、215、210、205、200、195、190、185、180、175、170、165、160、155、150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25個もしくはそれを上回らない、または20個もしくはそれを上回らない、連続したアミノ酸の長さを有する。
【0233】
血管新生を増強させる薬剤は、血管新生因子と称され得る。この薬剤は、固体がp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を受容する前、および/または心臓細胞リプログラミング因子よりも前、および/またはクロマチン不安定化剤よりも前に、個体に提供され得る。ある特定の実施形態において、1つを上回る薬剤が利用される。
【0234】
本開示の治療法は、数分間から、数時間、数日間、数週間、または数ヶ月までの範囲の間隔で、他の薬剤の処置に先行し得るか、またはその後に続き得る。他の薬剤および本治療法が別個に個体に適用される実施形態において、一般に、本開示の治療法および追加の治療法が、依然として、有益に組み合わせた作用を個体に対して発揮することができるように、それぞれの送達時間の間で相当な期間が経過しないことを確実にするであろう。そのような事例において、個体を、両方のモダリティと同時に、または互いに数分間以内に、または互いに約1~12、6~12、もしくは12~24時間以内に、接触させることができることが、企図される。いくつかの状況において、しかしながら、処置の期間を大幅に延長させることが望ましい場合があり、その場合、それぞれの投与の間に数日間(2、3、4、5、6、または7日間)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8週間)が経過する。
【0235】
特定の実施形態において、本開示の治療法および追加の治療法は、同時または異なる時点で提供される。別個の実体が、同じ組成物内にあってもよく、またはそれらは別個の組成物に含まれてもよい。本開示の治療法および第2の治療法が異なる時点で提供される事例において、それらは、数分間、数時間、数日間、または数週間などの任意の好適な時間範囲で、分離していてもよい。それらが別個に提供される実施形態において、2つ(またはそれよりも多く)の治療法の順序は、別の治療法よりも前または後にHand2および/またはミオカルディンとともにp63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を送達することを含む、任意の好適な順序であり得る。
【0236】
本開示の治療法とともに用いようとする他の処置の例としては、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:ACE阻害剤、アルドステロン阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、ベータ遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、コレステロール低下薬、ジゴキシン、利尿剤、変力療法、カリウムもしくはマグネシウム、血管拡張薬、抗凝血薬、アスピリン、外科手術、VAD埋め込み、VAT、冠動脈バイパス、経皮冠動脈治療(PCI)、またはこれらの組合せ。
X.本開示のキット
【0237】
本明細書に記載される組成物のいずれかを、キットに含めることができる。非限定的な例において、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、1つもしくは複数の心臓細胞リプログラミング因子、ならびに/または1つもしくは複数のクロマチン不安定化剤、またはその増幅のための他のポリヌクレオチドもしくはプライマーは、キットに含まれ得る。特定の実施形態において、キットは、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)を、Hand2および/またはミオカルディンポリペプチドまたはペプチドありまたはなしで含む。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)または他の言及された因子のうちの1つもしくは複数を生成するための1つまたは複数の試薬、例えば、所望される配列を増幅させるための特定のプライマーが、キットに含まれ得る。そのような事例において、キットは、そのような方法のための標準的な試薬、例えば、ヌクレオチド、緩衝液などを含んでもよく、または含まなくてもよい。キットは、追加として、心臓の医学的状態の治療のための追加の薬剤を含み得る。
【0238】
キットの構成要素は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかでパッケージングされてもよい。キットの容器手段には、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段が含まれ、その中に、構成要素が配置され、好ましくは、好適にアリコートされ得る。キット内に1つを上回る構成要素が存在する場合、キットはまた、一般に、追加の構成要素が別個に配置され得る第2、第3、またはその他の追加の容器を含むことになる。しかしながら、様々な組合せの構成要素が、1つのバイアルに含まれてもよい。本開示のキットはまた、典型的には、p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)、ならびに1つまたは複数の組成物を、商用販売のために緊密に封止した状態で収容するための手段を含むであろう。そのような容器としては、所望されるバイアルが中に保持される、射出成形または吹込み成形された容器を挙げることができる。
【0239】
キットの構成要素が、1つおよび/または複数の溶液中に提供される場合、その溶液は、水溶液であり、滅菌水溶液が、特に考慮される。p63-TID(またはその機能性フラグメントおよび/もしくは機能性誘導体)組成物はまた、シリンジ注射可能な組成物に製剤化されてもよい。その事例において、容器手段は、それ自体が、シリンジ、ピペット、および/またはそのような同様の装置であり得、そこから、製剤が、身体の感染した領域に適用され得る、動物に注射され得る、ならびに/またはさらにはキットの他の構成要素に適用され得る、および/もしくはそれと混合され得る。しかしながら、キットの構成要素は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬および/または構成要素が、乾燥粉末として提供される場合、この粉末は、好適な溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒はまた、別の容器手段で提供されてもよいことが、想定される。
【0240】
本開示のキットはまた、典型的には、バイアルを商用販売のために緊密に封止された状態で収容するための手段、例えば、例として、所望されるバイアルが中に保持される、射出成形または吹込み成形されたプラスチック容器を含むであろう。
【0241】
具体的な実施形態において、キットは、個体が心臓の医学的状態を有することを判定するための試薬および/またはツールを含む。いくつかの実施形態において、キットは、心臓関連の医学的状態のための1つまたは複数の追加の治療法、例えば、ACE阻害剤、アルドステロン阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、ベータ遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、コレステロール低下薬、ジゴキシン、利尿剤、変力治療、カリウム、マグネシウム、血管拡張薬、抗凝血薬、アスピリン、TGF-ベータ阻害剤、およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む。特定の実施形態において、個体は、本開示の治療法よりも前、その間、またはその後に、血管新生治療薬を受容する。血管新生治療薬の例としては、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、Etsバリアント2(ETV2)、アンジオポエチン、Ang1およびAng2、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、デルタ様リガンド4(DII4)、またはこれらのペプチド、またはこれらの組合せが挙げられる。
【実施例
【0242】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の例において開示されている技法が、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって発見された技法を表すものであり、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることが、当業者には理解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示を踏まえて、開示されている特定の実施形態において、多数の変化が行われてもよく、依然として本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
方法
【0243】
別途示されない限り、本明細書に記載される実験および手順を、以下の通り実行した。
組織の回収および心臓線維芽細胞の単離
【0244】
新生児および成体の心臓線維芽細胞を、それぞれ、0~3日齢から6~8週齢のラットから、標準的な細胞単離技法を使用して採取した(Harlan Sprague Dawley Inc、Indianapolis、IN)(例えば、引用文献9、10、および27を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。すべての実験動物は、Baylor College of MedicineにおいてInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認を受けており、すべての方法は、NIHガイドライン(研究室動物の扱いおよび使用に関する案内)に従い、プロトコールAN-6223下において実行した。これらの研究は、ARRIVEガイドラインの関連する要素を遵守して行い、報告するものである。
【0245】
成体ヒト心臓線維芽細胞を、Baylor St. Luke’s Medical Centerにおいて機械的補助デバイスの設置または心臓移植を受ける心不全患者の外植片から得た心室心筋組織から、標準的な単離技法を使用して単離した(例えば、引用文献9および10を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。組織を得る前に、書面での告知に基づく同意を、すべての対象および/またはそれらの法的後見人から得た。すべての実験方法は、関連するガイドラインおよび規制に従い、Baylor College of Medicine Institutional Review Board(IRB H-33421)によって承認されているプロトコール下において実行した。簡単に述べると、外植した組織を、粉砕し、次いで、DMEM、10%ウシ胎児血清(FBS)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンにおいて培養した。線維芽細胞を、それによって、2週間に期間にわたって、これらの外植片から遊走させ、その後、それらを、M106培地(M106500、Thermo Fisher Scientific)、10% FBS、およびLSGSキット補充物質(S-003-K、Thermo Fisher Scientific)において3回継代させた。
細胞リプログラミング
【0246】
それぞれがGata4、Mef2、またはTbx5(GMT)、Hand2/ミオカルディン(H/M)、非標的化(NT)shRNA、p63短いヘアピンRNA(Origene、Rockville、MD)、緑色蛍光タンパク質(GFP)でタグ付けしたp63-トランス活性化阻害性ドメイン(Vectorbuilder、Chicago、IL)をコードするレンチウイルスベクター、またはGFP対照ベクターを、前述のように、Baylor College Of Medicine Gene Vector Coreによって関連するプラスミドから調製した(例えば、引用文献9、10、27、および28を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0247】
上述のように単離したラットおよびヒト心臓線維芽細胞を、蛍光活性化細胞分取[FACS]分析のために6cmもしくは10cmの培養皿に、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応[qRT-PCR]分析のために6ウェルプレートに、または免疫細胞化学分析のためにSurecoat(SC-9035、Cellutron Life Technologies)を事前コーティングした24ウェルの皿に、播種した。細胞が70%~80%コンフルエントになった24時間後に、20の感染多重度(MOI)(別途示されない限り)のレンチウイルスベクターを、5μg/μLの最終濃度のポリブレンとの混合物で、細胞培養プレートに添加した。関連するリプログラミング因子での細胞培養処置の2日後に、最初の移入培地(DMEM/199[4:1]、10% FBS、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を、前述のように、誘導培地(iCM培地)と置き換えた。この培地を、細胞を採取するまで、2日ごとに新しい誘導培地と置き換えた(例えば、引用文献9および10を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0248】
細胞収縮性共培養研究のために、心筋細胞を、0~3日齢の仔ラットから、前述のように、プロトコールAN-6223下で単離した(例えば、引用文献28~30を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。ヒト心臓線維芽細胞を、GFP標識化リプログラミング因子(例えば、GMT、shp63+ H/M、p63-TID+ H/M)で処置し、上述のように処置の1週間後に、細胞を採取し、新生児ラット心筋細胞に、1:10の比率で再播種し、DMEM/M-199/10% FBS培地において培養した(例えば、引用文献31を参照されたく、これは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。
フローサイトメトリー
【0249】
蛍光活性化細胞分取(FACS)を、前述のように行った(例えば、引用文献8~10、27、および28を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。簡単に述べると、培養皿に付着した細胞を、まず、DPBSで洗浄し、0.25%トリプシン/EDTAでトリプシン処理した。細胞を、次いで、固定化緩衝液(BD Biosciences)で固定化し、Perm/Wash緩衝液(BD Biosciences)で洗浄し、次いで、Perm/Wash緩衝液において、マウスモノクローナル抗心筋トロポニンT(cTnT)抗体(ab8295、Abcam)とともにインキュベートした。これらの細胞を、次いで、ロバ抗マウスAlexa Fluor 647(ab150107、INVITROGEN(商標))とともにインキュベートし、再度Perm/Wash緩衝液で3回洗浄し、LSR Fortessa細胞分取装置(BD Biosciences)をFlowJoソフトウェア(FlowJo, LLC、Ashland、Ore)およびDivaソフトウェア(バージョン6.0)とともに使用して、cTnT発現についてさらに分析した。
免疫細胞化学法
【0250】
以前に説明されているように、4%パラホルムアルデヒド中に固定化し、0.5% Triton-X溶液で透過処理した細胞を使用して、免疫蛍光(IF)染色を行った(例えば、引用文献8~10および28を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。これらの細胞を、10%ヤギ血清で遮断した後、それらを、cTnTに対する一次抗体(1:300希釈、Thermo Fisher Scientific)またはα-アクチニン(1:300希釈、Sigma-Aldrich)とともにインキュベートし、続いて、適切なAlexa発光性二次抗体(INVITROGEN(商標))とともにインキュベートした。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、INVITROGEN(商標))を使用して、核を染色した。cTnTおよびα-アクチニン陽性細胞の定量化のために、DAPIによってマークされた総細胞に対する関連するIFマーカーを発現する細胞の比率を、処置群に対して盲検化された検査者が選択した5つのランダムな画像において計算した。
qRT-PCR
【0251】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)分析を、まず、前述のように、TRIzol方法(INVITROGEN(商標))を使用して総RNAを抽出することによって行った(例えば、8~10、28、32を参照されたい)。RNAの相対的定量化を、ABI ViiA 7(Applied Biosystems Inc)を用いてリアルタイムでPCR産物のSYBRグリーン検出を使用して行った。この研究において使用したqRT-PCRのプライマーを、表1に示す(トロポニンTの心筋アイソフォーム(cTnT)、リアノジン受容体(RyR)、ホスホランバン(Pln)、アクチンアルファ心筋1(Actc1)、1型コラーゲンアルファ1鎖(Col1a1)、ペリオスチン(Postn)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(Gapdh)、腫瘍タンパク質p63のデルタNアイソフォーム(ΔNp63)、腫瘍タンパク質p63のトランス活性化(TA)アイソフォーム(TAp63)、ミオシン重鎖6(Myh6)、Gapジャンクションアルファ-1(Gja1))。mRNAレベルを、比較可能なΔΔCT方法によって、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)との比較で、正規化した。
【表1】
【0252】
共免疫沈降(Co-IP)およびウエスタン分析
ウエスタン分析およびCo-IPのために、293T細胞に、LIPOFECTAMINE(商標)3000トランスフェクション試薬(L3000008、Thermo Fisher Scientific)においてプラスミドベクターpcDNA3.1、ΔNp63 α-FLAG(p63-FLAG、#26979、Addgene)、HDAC1-GFP(#11054、Addgene)、またはp63-TID-HA(GenScriptR)をトランスフェクトした。細胞ライセートを回収し、細胞溶解緩衝液中でホモジナイズした。タンパク質を、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(23227、Thermo Fisher Scientific)を使用して定量し、Co-IPを、免疫沈降キット(10007D、INVITROGEN(商標))を製造業者のプロトコールに従って使用して、定量したタンパク質に行った。最終ステップとして、サンプルを、SDS-PAGEにロードし、分離した後、タンパク質バンドを、ニトロセルロース膜(IB301001、INVITROGEN(商標))に移した。
【0253】
免疫検出を、以下の一次抗体:FLAGタグ(F1804-200UG、Sigma-Aldrich)、HDAC1(sc-7872、Santa Cruz Biotechnology, Inc)、β-アクチン(sc-47778、Sigma-Aldrich)、HAタグ(sc-57592、Santa Cruz Biotechnology, Inc,)、またはTP63(GTX 102425、GeneTex)を用いて、続いて、適切なHRPコンジュゲート二次抗体(Millipore、Billerica、MA)を用いて行った。膜を、次いで、Tween 20を含む1倍トリス緩衝化食塩水で洗浄し、化学発光検出(WBLUF0500、Millipore Sigma)によって視覚化した。
収縮性およびカルシウムトランジェントの測定
【0254】
共培養研究における細胞収縮性(細胞短縮)およびカルシウムトランジェントを、室温(22~23℃)で測定した。これらの研究を行うために、細胞を、プレキシガラスチャンバに入れ、これを倒立落射蛍光顕微鏡(Nikon Diaphot 2000)のステージに配置し、これに、(mmol/L単位で)NaCl 140、KCl 5.4、MgCl 1、CaCl 1.8、HEPES 5、およびグルコース10、pH7.4を含む1.8mmol/LのCa2+-タイロード溶液を灌流させた。リプログラミング因子で事前に処置されている細胞を、GFP蛍光によって特定した。
【0255】
1.8mMのCa2+を含む細胞培養槽に沿って設置された白金電極を使用して、Grass S5刺激装置によって場刺激を提供し、両極性パルスを筋細胞刺激閾値を50%上回る電圧で送達した。ランダム場からのiCMの収縮を、録画し、コンピュータでデジタル処理した。Ca2+シグナル測定のために、細胞に、3μmol/LのFura-2/AM(Life Technologies)をロードし、Delta Scanデュアルビーム分光蛍光光度計(Photon Technology International、Edison、NJ)の使用によって、0.5Hzで340および380nmにおいて交互に励起した。Ca2+トランジェントは、結果として得られる510nm放出に対する340/380nmの比として表した。データを、Felixソフトウェア(Photon Technology International)を使用して分析した(例えば、引用文献8、9、および28~30を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。
統計学的分析
【0256】
少なくとも3つの独立した生物学的複製物の技術的三連物におけるそれぞれの測定を、すべての研究に行った。すべてのデータは、平均±標準誤差(SEM)として表す。統計学的分析は、SAS、バージョン9.4を使用して行った。スチューデントt検定を使用して、2つの群間の有意差を判定した。一方向ANOVAを使用して、2つを上回る群を比較した場合の有意差を判定した。
【0257】
実施例1
短縮型p63タンパク質ドメインは、ヒト心臓リプログラミングを増強させた
直接的なリプログラミングは、心臓線維芽細胞の機能性心筋細胞様細胞(iCM)へのインサイチュ分化転換を引き起こすことによる、心不全を処置するための有望な新しい戦略を表す。注目すべきことに、3つの心臓転写因子Gata4、Mef2c、およびTbx5の組合せにより、線維芽細胞をiCMに変換することができる。近年の発見は、しかしながら、ヒト細胞が、可能性としてはリプログラミング遺伝子活性化に対するエピジェネティックな制限に起因して、げっ歯動物細胞と比較して、リプログラミングに対して耐性であることを示唆している。本開示は、多能性幹細胞分化を増強させることが示されているエピジェネティック調節遺伝子p63のモジュレーション(例えば、阻害、例えば、エピジェネティック作用のサイレンシング)による、心臓リプログラミング効率性の増強およびiCMの成熟に関する。データは、p63トランス活性化阻害性ドメイン(TID、p63-TID)が、リプログラミング利益を発揮することを示す。
【0258】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のファミリーは、アセチル化基を除去し、心臓分化転換遺伝子において、凝縮され、転写的がよりサイレンシングされたクロマチンの形成をもたらす。実際に、HDAC阻害剤が、心臓リプログラミングを増強させるという根拠がある。本開示において、p63-HDAC1複合体が、心臓転写因子の遺伝子転写に影響を及ぼすことにおいて主要な役割を果たすかどうかを、考察した。
【0259】
図1Aに示されるように、本発明者らは、共免疫沈降(co-IP)アッセイによってp63-HDAC1相互作用を検証した。さらに、過剰発現するp63-TIDが、p63とHDAC1との間のタンパク質-タンパク質相互作用と競合するように作用し、p63-TIDを使用することによって、結果として生じるそれらのエピジェネティック相互作用を特異的に標的化することができるかどうかについて、検討した。図1Bにおいて見られるように、p63-TIDフラグメントの過剰発現は、HDAC1への競合的な結合によって、ΔNP63αとHDAC1との間の結合を低減させることが、co-IPプルダウンアッセイによって示された。
【0260】
任意選択的なタグ(例えば、HAタグ)を含む例示的なp63-TIDペプチド(例えば、配列番号1)ヌクレオチドコーディング配列(配列番号2)およびそれを含むヌクレオチドベクターを得たが、これらを図4A~Bに示す。
【0261】
本発明者らは、次いで、ヒト心臓線維芽細胞を、p63-TID±Hand2/ミオカルディンをコードするレンチウイルスで処置することによって、心臓リプログラミングに対するp63-TIDの作用を実証した。14日間の培養の後、細胞を、qRT-PCR、フローサイトメトリー、および免疫蛍光アッセイを使用して、心筋細胞特異的な特性の変化について評価した。ヒト心臓線維芽細胞へのHand2/ミオカルディン投与と組み合わせたレンチウイルスに媒介されるp63-TID過剰発現は、p63 shRNA+Hand2/ミオカルディンで見られたように、同じ心臓遺伝子パネルを上方調節し((+H/M)、図2A~J)、p63-TID過剰発現が、cTnTおよびα-アクチニンを発現するヒト心臓線維芽細胞のパーセンテージを同様に増加させたことが観察された(図2A~J)。p63-TID+H/Mで処置した細胞は、shp63+H/Mによって誘導されるものと類似して、心筋細胞マーカー遺伝子パネル(cTnT、Gja1、Myh6)の発現の増加(図2I)、およびshp63+H/M処置で達成されたものに匹敵する線維芽細胞マーカー遺伝子(col1a1、Postn)の発現の低減(図2G)を示した。興味深いことに、p63-TID過剰発現単独で、心臓分化に好ましい遺伝子パネル(例えば、CTnT、Gja1、α-アクチニン、およびMyh6)の発現が上方調節され、同様に、線維芽細胞シグネチャーと関連する遺伝子(例えば、col1a1およびPostn)が下方調節された。
【0262】
また、例示的なp63-TID(例えば、配列番号1)を、ラット心臓線維芽細胞に投与し、対照と比較して良好なiCMリプログラミング結果が得られた。図3に示されるように、リプログラミング因子の投与の2週間後における示される心臓マーカー(例えば、cTnT、RyR、Pln、およびActc1)のmRNA発現レベル、ならびに線維芽細胞マーカー遺伝子(例えば、col1a1)のmRNA発現を、qRT-PCRによって判定した。心臓発生性遺伝子発現レベルの有意な増加が、p63-TID+H/M投与で観察され、同時に線維芽細胞マーカーcol1a1の減少もまた、観察された。
【0263】
加えて、FACS分析により、同様に、cTnTを発現するヒト心臓線維芽細胞のパーセンテージが、p63-TID+H/Mでの処置の後に、shp63+H/M処置と比較して同様に増加していたことが、示された(12.5%±0.9%および15.2%±1.1%、図2H)。免疫蛍光研究でもまた、p63-TID+ H/Mまたはshp63+H/Mでの処置の後に、shp63+GMTで処置した細胞と比べて、心筋細胞マーカーcTnTおよびα-アクチニンを発現する細胞数に、同様の3倍の増加が示された(p<0.001、図2D、E、およびI)。リプログラミング因子処置の4週間後に、shp63およびGMTで処置した細胞と比較して、3倍多くのp63-TID+H/Mで処置した細胞がα-サルコメア性アクチニン+の発現を示し、p63-TID+H/Mで処置した細胞は、進行したサルコメア組織化を示した(図2J)。
【0264】
本発明者らは、次いで、p63サイレンシングがiCM収縮性を誘導したことを判定した。shp63+H/Mまたはp63-TID+H/Mで処置したヒト心臓線維芽細胞は、独立して収縮することは観察されていないが、shp63+H/MまたはTID+H/Mで処置したヒト心臓線維芽細胞のうちのおよそ5%が、4週間の共培養後に、それらのGFP発現によって検証した場合に、周囲の新生児ラット心筋細胞と同期的に収縮した(図5)。比較として、shp63ありまたはなしでGMTで処置したヒト心臓線維芽細胞は、共培養実験において収縮することができなかった(例えば、Pinnamaneni et al., p63 silencing induces epigenetic modulation to enhance human cardiac fibroblast to cardiomyocyte-like differentiation. Scientific Reports (2022)12:11416、Supplemental Videos S1, S2, and/or S3を参照されたく、これは、本明細書に記載される目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。shp63+H/Mまたはp63-TID+H/Mで処置した細胞はまた、収縮機能と同期的な電気刺激を行うと、カルシウムトランジェントを示し、一方で、shp63ありまたはなしでGMTで処置した細胞の刺激後にはカルシウムトランジェントは観察されなかった(図5、中央および下の段、およびPinnamaneni et al., 2022, Supplemental Video S1, S2, S3、これらは、本明細書に記載される目的のために、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0265】
本発明者らは、次いで、p63-TID用量応答を判定し、ヒト心臓分化を増強させることにおける、shp63と比較して増強されたp63-TIDの効力を特定した。p63-TIDが、心臓分化を増強させることにおいて、shp63よりも強力であったかどうかを判定するために、本発明者らは、Co-IP分析を利用して、p63のHDAC1への結合の用量応答分析を、p63-TID過剰発現の関数として生成した(図6A)。20、50、または100MOIのMOIのp63-TIDで処置したヒト心臓線維芽細胞のqRT-PCR分析は、用量依存性様式でcTnT発現の増加を示し、50のMOIが、細胞毒性を伴うことなくもっとも高いcTnT発現をもたらした(p<0.001、図6B)。本発明者らは、したがって、50のMOIで処置したヒト心臓線維芽細胞のqRT-PCRを使用して、p63-TID+H/M処置の後に、心臓発生性および線維発生性遺伝子の発現に、shp63+ H/M処置と比べて有意に大きな変化を示すことができた(p<0.05、図6C~D)。
【0266】
本明細書およびPinnamaneni et al., 2022に示されるように、本発明者らは、p63のエピジェネティック作用をサイレンシングすることによって媒介されるリプログラミング戦略を通じて、げっ歯動物ならびにヒト心臓線維芽細胞が収縮性iCMに変換され得ることを示した。特に、本発明者らは、心臓分化因子Hand2およびミオカルディン(H/M)と組み合わせたshp63が、標準的なリプログラミングカクテル(すなわち、Gata4、Mef2c、およびTbx5[GMT])単独での処置と比較して、新生児、成体ラット、および成体ヒト心臓線維芽細胞分化の増強をもたらしたことを示した(例えば、引用文献5、10、および34を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。比較として、shp63もH/Mも、単独では、有意なリプログラミング作用を発揮しなかった。
【0267】
これらの研究に記載されているp63への焦点は、エピジェネティック調節因子タンパク質のp53ファミリーが、人工多能性幹細胞(iPSC)リプログラミングを妨害することにおいて重要な役割を果たすという観察を元にしていた(例えば、引用文献18~20、23、35、および36を参照されたく、これらは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明者らは、iPSCリプログラミングをその発癌作用を伴うことなく抑制することにおいてp53と同様の役割を果たすとみられるp63のサイレンシングが、心臓細胞の分化転換およびiCM生成の増強のための理想的なリプログラミング剤であり得るという仮説を立てた(例えば、引用文献24、37~43<これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書およびPinnamaneni et al., 2022に記載されている結果により、本発明者らの仮説が確認され、特に、この作用の根底にある可能性のある作用機序として、p63のエピジェネティックリプレッサーHDAC1との相互作用が特定された。p63がHDAC1と相互作用して、エピジェネティックリパターニングを開始させ、心臓分化遺伝子プロモーターをモジュレートするという発見により、ヒト細胞心臓リプログラミングの重要な調節因子としてのエピジェネティックモジュレーションの役割が確認された(例えば、引用文献44および45を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0268】
p63の2つの主要なアイソフォーム(TAp63、ΔNp63)の両方のC末端には、HDAC1とのその相互作用を介して遺伝子調節において重要な役割を果たすことが報告されているトランス活性化阻害性ドメイン(TID)が含まれる(例えば、引用文献26を参照されたく、これは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。本発明者らは、続いて、TIDの過剰発現が、p63のエピジェネティック作用および関連する細胞リプログラミングの阻害を阻害するためのshRNAの使用と置き換わり得るという仮説を立てた。本明細書に提供される結果は、p63-TIDをこの様式で使用することができ、心臓発生性リプログラミング遺伝子活性化を増強させることができることを示した。理論によって制限されるものではないが、標準的なリプログラミングカクテルの使用と比較した収縮性iCMを誘導することにおけるp63サイレンシング戦略の効力は、多様な関連する心臓発生性および線維発生性遺伝子パネルの調節に影響を及ぼすことにおけるその観察された作用に関連している可能性があった。比較として、標準的なリプログラミングカクテルは、有効性を達成するために、これらの構成的リプログラミング因子のそれぞれの投与を必要としていた(例えば、引用文献11、31、34、および46~48を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。この文脈において、理論によって制限されるものではないが、p63サイレンシグへの補助としてのH/Mの追加は、説明されたp63サイレンシング戦略によって本来上方調節されていた重要な心臓分化因子、例えばGMTを補う、「失われたエレメント」としてのH/Mのステータスに関連する可能性が高い。p63サイレンシングが、追加の可能性として望ましくない抗線維発生性因子をリプログラミングカクテルに追加することによって対処されていた、心臓分化を妨害することが知られている線維発生性遺伝子の下方調節をもたらしたことも、同様に興味深い(例えば、引用文献9、10、および46~48を参照されたく、これらのそれぞれは、本明細書に記載される目的のために、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0269】
まとめると、本明細書に記載され提示される結果は、エピジェネティック調節因子であるヒストンデアセチラーゼ1(HDAC1)への結合を担うp63モチーフであるp63-トランス活性化阻害性ドメイン(TID)の過剰発現が、ヒト心臓分化を増強させることにおいて、shp63の強力な代替物であったことを示した。さらに、本明細書に提示される結果は、p63が、ヒト心臓リプログラミングに対するエピジェネティック障壁として作用すること、ならびにp63-TIDが、ヒト心臓リプログラミングを増強させるためおよび/または本明細書に記載される疾患(例えば、心臓関連適応症であるがこれらに限定されない)を処置および/もしくは予防するための手段として、心臓発生性遺伝子の活性化のエピジェネティック調節を標的するための新しい有望な戦略を提供することを、示唆している。
【0270】
実施例2
p63-TIDのHand2/ミオカルディンおよびETV2またはVEGFとの併用は、ヒト心臓リプログラミングを増強させた
図7A~Bに示されるように、ヒト心臓線維芽細胞を、GFP(adGFP)、ETV2(adETV2)、またはVEGF(adVEGF)をコードするアデノウイルスで処置し、7日後に、細胞を、GFP、GMT、GMTd、またはTIDH/Mをコードするアデノウイルスで14日間処置した。結果は、cTnTマーカー遺伝子発現が、示される処置の後にqRT-PCRによって評価した場合、TIDH/M処置群において、対照と比較して有意に増加していたことを示した(n=3)。データは、倍数変化として表し、内部対照は、GAPDHであった。
【0271】
図7C~Dに示されるように、ヒト心臓線維芽細胞を、GFP(adGFP)、ETV2(adETV2)、またはVEGF(adVEGF)をコードするアデノウイルスで処置したが、これは、GFP、GMT、GMTd、またはTIDH/Mをコードするアデノウイルスでの同時処置ありまたはなしで行った。2週間後に、cTnTマーカー遺伝子発現を、示される処置の後にqRT-PCRによって評価し(n=3)、結果は、cTnTマーカー遺伝子発現が、TIDH/M処置群において、対照と比較して有意に増加していたことを示した。データは、倍数変化として表し、内部対照は、GAPDHであった。
【0272】
これらの結果をまとめると、ETV2またはVEGFとともにTIDH/Mを同時および/または遅延して投与することにより、心筋リプログラミングが顕著に改善されたことが示された。
参考文献
【0273】
以下の参考文献は、それらが、本明細書に記載されるものに補助的な例示的な手順または他の詳細を提供する程度で、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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* * *
【0274】
本明細書に開示され請求される方法のすべては、本開示を踏まえれば、不必要な実験を行うことなく作製および実施することができる。本発明の組成物および方法を、好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載される方法、ならびに方法のステップもしくはステップの順序に、変化形が適用され得ることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関連するある特定の薬剤を、同じかまたは類似の結果を達成しながら、本明細書に記載される薬剤と置き換えてもよいことが、明らかであろう。当業者には明らかなすべてのそのような類似の代替形および修正形は、添付の請求の範囲によって定められる本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であると考えられる。
図1A-B】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
【配列表】
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【国際調査報告】