(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】歯肉溝の接合上皮を標的とすることによる免疫調節
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240806BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240806BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 33/10 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240806BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240806BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240806BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240806BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/35 20060101ALI20240806BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K45/06
A61P37/04
A61P31/04
A61P31/12
A61P33/02
A61P33/10
A61P35/00
A61P37/08
A61P35/02
A61P15/00
A61P1/18
A61P1/02
A61P1/04
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P43/00 105
A61K39/00 H
A61K39/002
A61K39/00 K
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/35
A61K39/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507010
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022039536
(87)【国際公開番号】W WO2023014950
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510048509
【氏名又は名称】テキサス テック ユニヴァーシティー システム
【氏名又は名称原語表記】TEXAS TECH UNIVERSITY SYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ジル ハービンダー シン
(72)【発明者】
【氏名】シャキャ アキレシュ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】イングロール ロハン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA57
4C084NA14
4C084ZA341
4C084ZA591
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4C084ZA671
4C084ZA811
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4C084ZB331
4C084ZB351
4C084ZB381
4C084ZB391
4C085AA03
4C085AA38
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4C085BA07
4C085BA51
4C085CC07
4C085CC08
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE03
4C085FF01
4C085FF11
4C085FF13
4C085FF14
4C085FF17
4C085FF18
4C085FF19
4C085GG10
(57)【要約】
本発明は、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより、免疫応答を活性化する方法、免疫応答を調節する方法、及び/又は、免疫応答をアネルギー化する方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを歯肉溝に送達するステップを含む、対象において免疫応答を調節する方法であって、前記量が免疫応答を活性化又は調節するのに十分な量である、前記方法。
【請求項2】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、前庭粘膜への送達を標的としていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫応答を調節することが、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を活性化すること、又はアネルギー化することである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、1若しくは2以上の前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせの歯肉溝への送達を最大限に高めるために提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
抗原の歯肉溝(GC)への透過性を高める1又は2以上の作用剤を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの0.001%~100%が、歯肉溝の接合上皮(JE)の貯留所にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、歯肉溝の接合上皮に繰り返し提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの接合上皮への送達が、飲食物の摂取前又は後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、毎日1、2、3、4、5、若しくは6回、又は毎週1、2、3、4、5、6、若しくは7回、又は毎月1、2、3、若しくは4回などの毎日又は毎週又は毎月ベースの頻度で、1回若しくは2回以上適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
2若しくは3以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、歯肉溝の接合上皮(JE)に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、個体を前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減感作する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗原、免疫原、又はこれらの組み合わせが、対象における前記抗原、前記免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせに対する免疫応答を0.1~100%の間で引き起こし、前記対象を前記抗原、前記免疫原、又はこれらの組み合わせから防御する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、あるいはその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、又はそれ以上前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、あるいはその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、又はそれ以上後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
接合上皮へ送達される抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの量が、ピコグラムからミリグラムの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
免疫応答が、活性化免疫応答、調節免疫応答、又はアネルギー化免疫応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
有効量の1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを歯肉溝に提供するステップを含む、対象において免疫応答を引き起こす方法であって、前記量が前記抗原に対する免疫応答を引き起こすのに十分な量であり、
1若しくは2以上の前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、歯肉溝の接合上皮を標的とする送達デバイスに包埋されているか、前記送達デバイスにコーティングされているか、又は前記送達デバイスに付着している、
前記方法。
【請求項18】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、前庭粘膜に送達されない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫応答を引き起こすことが、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を活性化すること、又はアネルギー化することである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
送達デバイスが、5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満の厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
送達デバイスが、天然若しくは合成ポリマー、有機物質、金属、無機物質、又はこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
送達デバイスが、粘膜付着層又は疎水層又は親水層又はこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
送達デバイスが、抗原の歯肉溝への拡散を可能にする微多孔性構造を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
デバイスが、歯肉溝に到達するように設計されたシステム/デバイスである歯間ブラシ又はブリッスルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
接合上皮へ送達される抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの量が、ピコグラムからミリグラムの範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、個体を前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減感作する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
抗原、免疫原、又はこれらの組み合わせが、対象における前記抗原、前記免疫原、又はこれらの組み合わせに対する免疫応答を0.1~100%の間で引き起こす、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、又はそれ以上前に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、又はそれ以上後に行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
免疫応答の増加が、免疫応答の活性化の増加、免疫応答の調節の増加、又は免疫応答のアネルギー化の増加である、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
免疫応答が、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、毒素、がん、アレルギー、又は自己免疫疾患の少なくとも1つを標的とする、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
1若しくは2以上の抗原が、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA)オリゴヌクレオチド、リボ核酸(RNA)オリゴヌクレオチド、壊れた細胞、インタクトな細胞、脂質、毒素バリアント、炭水化物、ウイルス様粒子、リポソーム、弱毒化した生きている微生物若しくは死滅した天然微生物若しくは組換え微生物、ビロソーム、ポリマー/無機/有機マイクロ及びナノ粒子、又は免疫刺激複合体(ISCOMS)の少なくとも1つから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項33】
抗原が、T細胞性及びB細胞性リンパ増殖性疾患、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、消化管がん、乳がん、前立腺がん、又は非小細胞肺がんから選択されるがん細胞若しくはその一部から得られるペプチドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
抗原が、ピーナッツ、貝類、卵タンパク質、乳タンパク質、豆類、ナッツから選択される食物アレルゲン、又はイエダニ若しくは花粉から選択される気道アレルゲンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項35】
抗原が、歯肉溝に配置するのに適切な厚さのデンタルフロス又は薄いデバイス又はストリップ/パッチ又は歯間ブラシに物理的又は化学的に付着している、吸着している、又は固定されている抗原の少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項36】
サイトカイン、ケモカイン、トール様受容体リガンド又は活性化因子、ミョウバン、ムラミルジペプチド、ピリジン、キトサン、サポニン、油、乳剤、細菌細胞壁抽出物、細菌タンパク質、細胞質細菌DNA又は模倣物、ウイルスRNA又は模倣物、合成オリゴヌクレオチド、インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト(2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、pam3CSK4、poly(I:C)、R848、TDB)、天然ポリマー(ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)、及びこれらの組み合わせから選択される1又は2以上のアジュバントをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項37】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、自然免疫応答、適応免疫応答、又はその両方を活性化する、請求項17に記載の方法。
【請求項38】
歯肉溝の接合上皮を標的とする送達デバイス上に有効量の1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを含む免疫処置であって、前記1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの前記量が、免疫応答を活性化又は調節するのに十分である、前記免疫処置。
【請求項39】
抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、前庭粘膜に送達されない、請求項38に記載の免疫処置。
【請求項40】
免疫応答の調節が、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を活性化すること、又はアネルギー化することである、請求項38に記載の免疫処置。
【請求項41】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせが、前記1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの歯肉溝への送達を最大限に高めるために提供される、請求項38に記載の免疫処置。
【請求項42】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの歯肉溝(GC)への透過性を高める1若しくは2以上の作用剤をさらに含む、請求項38に記載の免疫処置。
【請求項43】
1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせの0.001%~100%が、歯肉溝の接合上皮(JE)の貯留所にある、請求項38に記載の免疫処置。
【請求項44】
1若しくは2以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、緩衝剤、又は塩をさらに含む、請求項38に記載の免疫処置。
【請求項45】
フロスを用意するステップ;及び
前記フロス上に、薬理学的に許容される担体中の活性剤の1又は2以上の沈着物を沈着させるステップ;
を含む、所定量の1又は2以上の活性剤を含むフロスを作製する方法であって、各前記沈着物が既知の所定量の上記活性剤を含む、前記方法。
【請求項46】
隣接する各沈着物が、同じ活性剤若しくは異なる活性剤を含む、又は隣接する各沈着物が、同じ活性剤を異なる濃度で含む;又は隣接する各沈着物が、異なる活性剤を異なる濃度で含む;又は隣接する各沈着物が、隣接する沈着物とは異なる面に配置される;又は隣接する各沈着物が、沈着物とはフロスの反対側に配置される;又は隣接する沈着物がそれぞれ、近接する前の沈着物とは異なる活性剤を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
隣接する各沈着物が、水性の溶媒に溶解性を有する活性剤及び有機溶媒に溶解性を有する他の活性剤から選択される異なる溶媒要件を有する異なる活性剤を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
2若しくは3以上の活性剤が、同じ又は異なる距離/長さの沈着物の形態で重なり合って沈着している、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
異なる溶媒要件を有する活性剤が同じ又は異なる距離/長さで反対側に沈着している、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
同じ溶媒要件を有する活性剤が同じ又は異なる距離/長さで重なり合って沈着している、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
異なる溶媒要件を有する活性剤が、同じ又は異なる距離/長さで反対側に沈着している、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
フロスが中実であるか、ほぐれているか、複数のストランドを含むか、接着性を有するように処理されているか、薬理学的に許容される担体に接着するように処理されているか、又は活性剤に接着するように処理されている、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
隣接する各沈着物が、隣接する液滴又はパッチ同士を区別する染料又はしるしを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
フロスが、活性剤、薬理学的に許容される担体又はその両方に浸漬されない、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
1又は2以上の活性剤が、前庭粘膜には送達されない、抗原、免疫原、アレルゲン、アミノ酸若しくはそのポリマー、ヌクレオチド若しくはそのポリマー、脂質、炭水化物、天然物質、薬、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
1又は2以上の活性剤が歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより、免疫応答を活性化する、又はアネルギー化する免疫応答を引き起こす、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
フロスが、5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満の厚さを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
フロスが、天然若しくは合成ポリマー、有機物質、金属、無機物質、又はこれらの組み合わせを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
フロスが、粘膜付着層又は疎水層又は親水層又はこれらの組み合わせを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
フロスが、抗原の歯肉溝への拡散を可能にする微多孔性構造を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
1又は2以上の活性剤が、ピコグラムからミリグラムに及ぶ接合上皮へ送達される量の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項62】
1若しくは2以上の活性剤が、抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを含み、個体を前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減感作する、請求項45に記載の方法。
【請求項63】
1若しくは2以上の活性剤が、抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを含み、対象を前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせに対して0.1~100%の間で減感作する、請求項45に記載の方法。
【請求項64】
フロスによる抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、又はそれ以上前に行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項65】
フロスによる抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、又はそれ以上後に行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項66】
1若しくは2以上の活性剤が、免疫応答を活性化、調節、又はアネルギー化する、請求項45に記載の方法。
【請求項67】
1若しくは2以上の活性剤が、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、毒素、がん、アレルギー、又は自己免疫疾患の少なくとも1つを標的とする免疫反応を引き起こす、請求項45に記載の方法。
【請求項68】
1若しくは2以上の活性剤が、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA)オリゴヌクレオチド、リボ核酸(RNA)オリゴヌクレオチド、壊れた細胞、インタクトな細胞、脂質、毒素バリアント、炭水化物、ウイルス様粒子、リポソーム、弱毒化した生きている微生物若しくは死滅し天然微生物若しくは組換え微生物、ビロソーム、ポリマー/無機/有機マイクロ及びナノ粒子、又は免疫刺激複合体(ISCOMS)の少なくとも1つから選択される1又は2以上の抗原を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項69】
1若しくは2以上の活性剤が、T細胞性及びB細胞性リンパ増殖性疾患、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、消化管がん、乳がん、前立腺がん、又は非小細胞肺がんから選択されるがん細胞若しくはその一部から得られるペプチドを含む抗原を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項70】
1若しくは2以上の活性剤が、ピーナッツ、貝類、卵タンパク質、乳タンパク質、豆類、ナッツから選択される食物アレルゲン、又はイエダニ若しくは花粉から選択される気道アレルゲンである抗原を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項71】
1又は2以上の活性剤が、インスリン、エピネフリン、ステロイド、刺激剤などの薬物を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項72】
1若しくは2以上の活性剤が、歯肉溝に配置するのに適切な厚さのデンタルフロス又は薄いデバイス又はストリップ/パッチ又は歯間ブラシに物理的又は化学的に付着している、吸着している、又は固定されている抗原の少なくとも1つである抗原を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項73】
サイトカイン、ケモカイン、トール様受容体リガンド又は活性化因子、ミョウバン、ムラミルジペプチド、ピリジン、キトサン、サポニン、油、乳剤、細菌細胞壁抽出物、細菌タンパク質、細胞質細菌DNA又はミミック、ウイルスRNA又は模倣物、合成オリゴヌクレオチド、インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト(2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、pam3CSK4、poly(I:C)、R848、TDB)、天然ポリマー(ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)、及びこれらの組み合わせから選択される1又は2以上のアジュバントをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項74】
沈着物の粘度が、0.01センチポアズ(cp)、1cp、10cp、100cp、1000cp、10000cp、100000cp、200000cp、300000cp、500000cp、1000000、又は100000000cpである、請求項45に記載の方法。
【請求項75】
フロス;及び
薬理学的に許容される担体中の活性剤の1又は2以上の貯留所である、前記フロス上の沈着物;
を含む、所定量の1又は2以上の活性剤を含むフロスであって、各液滴又はパッチが既知の所定量の前記活性剤を含む、
前記フロス。
【請求項76】
隣接する各沈着物が、同じ活性剤若しくは異なる活性剤を含む、又は隣接する各沈着物が、同じ活性剤を異なる濃度で含む;又は隣接する各沈着物が、異なる活性剤を異なる濃度で含む;又は、隣接する各沈着物が、隣接する沈着物とは異なる面に配置される;又は隣接する各沈着物が、フロスの隣接する沈着物とは反対側に配置される;又は隣接する沈着物がそれぞれ、隣接する前の沈着とは異なる活性剤を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項77】
隣接する各沈着物が、水性の溶媒に溶解性を有する1つの活性剤及び有機溶媒に溶解性を有する他の活性剤から選択される異なる溶媒要件を有する異なる活性剤を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項78】
2若しくは3以上の活性剤が、同じ又は異なる距離/長さで、液滴又はパッチの形態で重なり合って沈着している、請求項75に記載のフロス。
【請求項79】
異なる溶媒要件を有する活性剤が、同じ又は異なる距離/長さで反対側に沈着している、請求項77に記載のフロス。
【請求項80】
同じ溶媒要件を有する活性剤が、同じ又は異なる距離/長さで重なり合って沈着している、請求項78に記載のフロス。
【請求項81】
異なる溶媒要件を有する活性剤が、同じ又は異なる距離/長さで反対側に沈着している、請求項75に記載のフロス。
【請求項82】
フロスが、中実であるか、ほぐれているか、複数のストランドを含むか、接着性を有するように処理されているか、薬理学的に許容される担体に接着するように処理されているか、又は活性剤に接着するように処理されている、請求項75に記載のフロス。
【請求項83】
隣接する各液滴又はパッチが、隣接する沈着物同士を区別する染料又はしるしを含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項84】
活性剤、薬理学的に許容される担体又はその両方に浸漬されない、請求項75に記載のフロス。
【請求項85】
1又は2以上の活性剤が、前庭粘膜には送達されない、抗原、免疫原、アレルゲン、アミノ酸若しくはそのポリマー、ヌクレオチド若しくはそのポリマー、脂質、炭水化物、天然物質、薬、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項75に記載のフロス。
【請求項86】
1若しくは2以上の活性剤が歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより、免疫応答を活性化する又はアネルギー化する免疫応答を引き起こす、請求項75に記載のフロス。
【請求項87】
5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満の厚さを有する、請求項75に記載のフロス。
【請求項88】
天然若しくは合成ポリマー、有機物質、金属、無機物質、又はこれらの組み合わせを含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項89】
粘膜付着層又は疎水層又は親水層又は組み合わせを含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項90】
抗原の歯肉溝への拡散を可能にする微多孔性構造を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項91】
1若しくは2以上の活性剤が、ピコグラムからミリグラムの範囲で接合上皮へ送達される量の抗原、免疫原、アレルゲン、薬、小分子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項92】
1若しくは2以上の活性剤が、抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを含み、個体を前記抗原、前記免疫原、前記アレルゲン、又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減感作する、請求項75に記載のフロス。
【請求項93】
1若しくは2以上の活性剤が、対象に抗原、免疫原、又はこれらの組み合わせに対して0.1~100%の間で免疫応答を引き起こす抗原、免疫原、又はこれらの組み合わせを含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項94】
フロスによる抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、又はそれ以上前に行われる、請求項75に記載のフロス。
【請求項95】
フロスによる抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせのJEへの送達が、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、又はそれ以上後に行われる、請求項75に記載のフロス。
【請求項96】
1若しくは2以上の活性剤が、免疫応答を活性化、調節、又はアネルギー化する、請求項75に記載のフロス。
【請求項97】
1若しくは2以上の活性剤が、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、毒素、がん、アレルギー、又は自己免疫疾患の少なくとも1つを標的とする免疫反応を引き起こす、請求項75に記載のフロス。
【請求項98】
1若しくは2以上の活性剤が、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA)オリゴヌクレオチド、リボ核酸(RNA)オリゴヌクレオチド、壊れた細胞、インタクトな細胞、脂質、毒素バリアント、炭水化物、ウイルス様粒子、リポソーム、弱毒化した生きている微生物若しくは死滅した天然微生物若しくは組換え微生物、ビロソーム、ポリマー/無機/有機マイクロ及びナノ粒子、又は免疫刺激複合体(ISCOMS):の少なくとも1つから選択される1又は2以上の抗原を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項99】
1若しくは2以上の活性剤が、T細胞性及びB細胞性リンパ増殖性疾患、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、消化管がん、乳がん、前立腺がん、又は非小細胞肺がんから選択されるがん細胞若しくはその一部から得られるペプチドを含む抗原を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項100】
1若しくは2以上の活性剤が、ピーナッツ、貝類、卵タンパク質、乳タンパク質、豆類、ナッツから選択される食物アレルゲン、又はイエダニ若しくは花粉から選択される気道アレルゲンである抗原を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項101】
1若しくは2以上の活性剤が、インスリン、エピネフリン、ステロイド、刺激剤などの薬物を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項102】
1若しくは2以上の活性剤が、歯肉溝に配置するのに適切な厚さのデンタルフロス又は薄いデバイス又はストリップ/パッチ又は歯間ブラシに物理的又は化学的に付着している、吸着している、又は固定されている抗原の少なくとも1つである抗原を含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項103】
サイトカイン、ケモカイン、トール様受容体リガンド又は活性化因子、ミョウバン、ムラミルジペプチド、ピリジン、キトサン、サポニン、油、乳剤、細菌細胞壁抽出物、細菌タンパク質、細胞質細菌DNA又は模倣物、ウイルスRNA又は模倣物、合成オリゴヌクレオチド、インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト(2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、pam3CSK4、poly(I:C)、R848、TDB)、天然ポリマー(ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)、及びこれらの組み合わせから選択される1又は2以上のアジュバントをさらに含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項104】
1若しくは2以上の活性剤が、自然免疫応答、適応免疫応答、又はその両方を活性化する1若しくは2以上の抗原、免疫原、アレルゲン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項75に記載のフロス。
【請求項105】
沈着物の粘度が、0.01センチポアズ(cp)、1cp、10cp、100cp、1000cp、10000cp、100000cp、200000cp、300000cp、500000cp、1000000、又は100000000cpである、請求項75に記載のフロス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれている2021年8月5日に出願した米国仮出願第63/229,784号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、概して、免疫応答を標的とする分野に関し、より具体的には、感染性病原体に対するワクチン接種、アレルゲン免疫療法及び自己免疫疾患に対する免疫調節のために歯肉溝の接合上皮(JE, junctional epithelium)を標的とすることに関する。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、国立衛生研究所/NSF/DARPAにより与えられたR01AI135197及びR01AI137846による政府支援を受けてなされた。政府は、発明について一定の権利を有する。
【0004】
コンパクトディスクにファイルされた資料の参照による援用
なし。
【背景技術】
【0005】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の背景を免疫処置及びアレルゲン免疫療法に関連して説明する。
【0006】
歯肉を貫く歯の萌出は、それが起こらない限りは連続的で途切れることのないヒトの粘膜表面に亀裂を生じさせる。この不連続性を塞ぐために、歯肉組織は接合上皮を介して各歯に付着する。接合上皮は歯に付着し、口腔とその下の組織の間にシールを形成する。接合上皮シールは、細胞層の厚さが数層しかなく、細胞の間に広い細胞間空間があるため、漏れやすく、高い透過性を有する。この付着領域を越えた歯肉組織が歯肉溝を形成する。接合上皮の高い透過性は、粘膜系の他の場所では見られない特性であり、共生細菌、潜在的病原体及び食物アレルゲンが容易に通過できる。歯肉の隙間には、好中球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞、CD4+/CD8+T細胞、B細胞及び自然リンパ球等の自然免疫細胞並びに適応免疫細胞の両方を含む免疫細胞の広範なネットワークがある。このネットワークは、微生物、アレルゲン及び食物タンパク質による絶え間ない刺激から防護し、免疫応答を作り出すのに役立っている。
【0007】
粘膜表面は環境との最初の接触点であるため、当然のことながら、大多数の病原体やアレルゲンの侵入門戸としての役割を果たす。例えば、現在のパンデミックの原因となるコロナウイルスは主に呼吸器粘膜を介して伝染し、HIVは主に生殖器及び胃腸の粘膜を介して伝染し、呼吸器アレルギーの原因となる花粉は呼吸器粘膜で接触を開始し、食物アレルゲンであるピーナッツは口腔粘膜で最初の接触を開始する。強力な粘膜及び全身性免疫応答は、単なる全身性免疫応答と比較して、感染症と戦う上でより効果的であることが認識されており、文献で広く報告されている。しかし、注射によるワクチン送達は強力な粘膜免疫を刺激せず、強力な全身免疫を刺激するのみである。強力な粘膜免疫及び強力な全身免疫を生み出すためには、ワクチンは粘膜表面を介して送達されなければならない。しかし、粘膜表面は物質を中に入れないように設計されているため、単に粘膜表面の上にワクチンを置くだけでは効率的な取り込みにはつながらない。例えば、アレルギーの治療には舌下免疫療法(SLIT, sublingual immunotherapy)と呼ばれる、アレルゲンを患者の舌の下に約1分間置き、口腔粘膜を刺激する粘膜送達アプローチが注目されている。イネ科植物(grass)及び花粉アレルギーによって引き起こされるアレルギー性鼻炎を治療するために、最近、SLITアプローチを利用したイネ科植物及び花粉のアレルゲンを含む錠剤がFDAによって承認された。舌下の粘膜を介した取り込みは非効率であるため、SLITでは注射に比べて約50~100倍多くのアレルゲン量が必要となり、また患者の応答のばらつきが大きい。別の例として、ワクチンを摂取することによる経口ワクチン接種は、本質的にワクチンを胃腸粘膜の上に置くのには役立つが、胃の高酸性環境と酵素が豊富な環境がワクチンに損傷を与える可能性があり、また胃腸粘膜が提供する強固なバリアが、粘膜内層を通過して下層組織層へのワクチンの効率的な輸送を妨げるため、有効性が低い。したがって、効率的な免疫応答を得るには、粘膜表面を通して分子を下層の組織に送達するために粘膜バリアを突破する必要があり、単に粘膜表面の上に分子を置くだけでは、効率的な免疫応答にはつながらないことが理解されている。分子の取り込みと輸送の向上を達成するには、分子をマイクロ粒子及びナノ粒子にカプセル化し、細胞を介した粒子の取り込みに依拠する方法、輸送の改善を目的とした粘膜バリアを破壊する化学物質の使用、感染性ウイルス及び細菌の使用、pHの変化や、機械的方法等の様々なアプローチが用いられる。
【0008】
そのような先行技術特許の1つは、フランソワに発行された「口腔粘膜を介したアレルギー減感作療法のための方法、物品及びキット」と題された米国特許第9,271,899号明細書であり、これは口腔粘膜の領域を介して対象をアレルゲンに対して減感作するための組成物及び使用方法を提供する、具体的には、前庭粘膜を標的として口腔免疫寛容を引き起こすことを教示していると言われている。
【0009】
これらの進歩にもかかわらず、強固な免疫応答を引き起こすために抗原の投薬を最大限に高める新規の免疫標的戦略の必要性が依然として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第9,271,899号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に具体化され広範に説明されるように、本開示の1つの側面は:有効量の1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを歯肉溝に送達する、具体的には接合上皮(JE)を標的として送達することを含み、上記量は免疫応答を活性化又は調節するのに十分な量である、対象(例えば、ヒト及びイヌ、ネコ、ウシ、ブタ又はその他の家畜等のペット)において免疫応答を調節する方法に関する。1つの側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは前庭粘膜に送達されない。別の側面では、免疫応答の調節とは、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を活性化する、又はアネルギー化することである。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは、1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせの歯肉溝への送達を最大限に高めるために提供される。別の側面では、上記方法は1又は2以上の抗原の歯肉溝(GC)への透過性を高める1又は2以上の作用剤(agent)を添加することをさらに含む。別の側面では、0.001%~100%の間の1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは歯肉溝の接合上皮(JE)の貯留所(depot)にある。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは歯肉溝の接合上皮(JE)に繰り返し提供される。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、飲食の前又は後に行われる。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは毎日又は毎週1、2、3、4、5又は6回与えられる。別の側面では、2又は3以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせが歯肉溝の接合上皮(JE)に送達される。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは、個体を1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減感作する。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは、対象を1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して0.1~100%の間で減感作する。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前又はそれ以上前に行われる。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後又はそれ以上後に行われる。別の側面では、接合上皮へ送達される抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせの量はピコグラムからミリグラムの範囲である。別の側面では、免疫応答とは、活性化している、調節されている又はアネルギー化されている免疫応答のことである。
【0012】
本明細書に具体化され広範に説明されるように、本開示の1つの側面は:有効量の1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを歯肉溝、具体的には接合上皮(JE)を標的として提供することであり、ここで、上記量は1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対する免疫応答を引き起こすのに十分な量である;を含み、ここで、1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせは歯肉溝の接合上皮を標的とする送達デバイスに埋め込まれているか、上記送達デバイスにコーティングされているか、又は上記送達デバイスに付着している、対象において免疫応答を引き起こす方法に関する。1つの側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは前庭粘膜に送達されない。別の側面では、免疫応答を引き起こすとは、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を活性化する、又はアネルギー化することである。別の側面では、送達デバイスの厚さは5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満である。別の側面では、送達デバイスは天然又は合成ポリマー、有機物質、金属、無機物質又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、送達デバイスは粘膜付着層又は疎水層又は親水層又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、送達デバイスは抗原の歯肉溝への拡散を可能にする微多孔性構造を含む。別の側面では、デバイスは、歯肉溝に到達するように設計されたシステム/デバイスである歯間ブラシ又はブリッスルを含む。別の側面では、接合上皮へ送達される抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせの量はピコグラムからミリグラムの範囲である。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは、個体を1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減感作する。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは、個体を1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して0.1~100%の間で減感作する。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前又はそれ以上前に行われる。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後又はそれ以上後に行われる。別の側面では、免疫応答の増加とは免疫応答がより活性化されること、より調節されること又はよりアネルギー化されることである。別の側面では、免疫応答は、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、毒素、がん、アレルギー又は自己免疫疾患:の少なくとも1つを標的とする。別の側面では、1又は2以上の抗原は、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA, deoxyribonucleic acid)オリゴヌクレオチド、リボ核酸(RNA, ribonucleic acid)オリゴヌクレオチド、壊れた細胞、インタクトな細胞、脂質、毒素バリアント、炭水化物、ウイルス様粒子、リポソーム、弱毒化した生きている微生物若しくは死滅した天然微生物若しくは組換え微生物、ビロソーム、ポリマー/無機/有機マイクロ及びナノ粒子又は免疫刺激複合体(ISCOMS, immune stimulating complexes):の少なくとも1つから選択される。別の側面では、1又は2以上の抗原は、T細胞性及びB細胞性リンパ増殖性疾患、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、消化管がん、乳がん、前立腺がん、又は非小細胞肺がんから選択されるがん細胞若しくはその一部から得られるペプチドを含む。別の側面では、1又は2以上の抗原は、ピーナッツ、貝類、卵タンパク質、乳タンパク質、豆類、ナッツから選択される食物アレルゲン又はイエダニ若しくは花粉から選択される気道アレルゲンを含む。別の側面では、1又は2以上の抗原は、歯肉溝に配置するのに適切な厚さのデンタルフロス又は薄いデバイス又はストリップ/パッチ又は歯間ブラシに物理的又は化学的に付着している、吸着している、又は固定されている抗原の少なくとも1つである。別の側面では、組成物は、サイトカイン、ケモカイン、トール様受容体リガンド又は活性化因子、ミョウバン、ムラミルジペプチド、ピリジン、キトサン、サポニン、油、乳剤、細菌細胞壁抽出物、細菌タンパク質、細胞質細菌DNA又は模倣物、ウイルスRNA又は模倣物、合成オリゴヌクレオチド、インターフェロン(IFN, interferon)遺伝子刺激因子(STING, stimulator of interferon gene)アゴニスト(2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、pam3CSK4、poly(I:C)、R848、TDB)、天然ポリマー(ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)及びこれらの組み合わせから選択される1又は2以上のアジュバントをさらに含む。別の側面では、1又は2以上の抗原は、自然免疫応答、適応免疫応答又はその両方を活性化する。
【0013】
本明細書に具体化され広範に説明されるように、本開示の1つの側面は歯肉溝の接合上皮を標的とする送達デバイス上にある有効量の1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含む免疫処置に関し、ここで、1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせの量は免疫応答を活性化又は調節するのに十分である。1つの側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは前庭粘膜に送達されない。別の側面では、免疫応答の調節とは、歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を活性化する、又はアネルギー化することである。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせは、1又は2以上の上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせの歯肉溝への送達を最大限にするために提供される。別の側面では、免疫処置は1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせの歯肉溝(GC)への透過性を高める1又は2以上の作用剤をさらに含む。別の側面では、1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせの0.001%~100%が歯肉溝の接合上皮(JE)の貯留所にある。別の側面では、免疫処置は薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、緩衝剤、又は塩をさらに含む。
【0014】
別の側面では、1又は2以上の活性剤(1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせ)は歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより活性剤の薬力学/薬物動態を強化することにより健康状態を向上させる。
【0015】
本明細書に具体化され広範に説明されるように、本開示の1つの側面は:フロスを用意すること;及び所定量の活性剤を含有する薬理学的に許容される担体中の活性剤をフロス上に沈着させること、を含む、所定量の1又は2以上の活性剤を含むフロスを作製する方法に関する。1つの側面では、沈着方法では、フロスの単一の隣接した部分又はフロスの2又は3以上の別個の部分に、各沈着領域間に同じ又は異なる間隔を置いて沈着させる。1つの側面では、沈着方法は、フロス上に液滴を置くこと若しくはピペットを用いてフロス上で液滴を引きずって伸ばしてフロス上で一定の距離/長さに広げること又はスプレー沈着すること又はインクジェット沈着すること又はピペットに基づいて沈着させること又はカートリッジ沈着すること又はこれらの組み合わせを含む。1つの側面では、沈着した物質の粘度は0.01センチポアズ(cp, centipoise)、1cp、10cp、100cp、1000cp、10000cp、100000cp、200000cp、300000cp、500000cp、1000000又は100000000cpである。1つの側面では、沈着方法は、手動又は自動又は半自動又はこれらの組み合わせである。別の側面では、沈着はフロスの片側又はフロスの両側に行われる。1つの側面では、隣接する各沈着物は同じ活性剤若しくは異なる活性剤を含む、又は隣接する各沈着物は同じ活性剤を異なる濃度/量で含む;又は、ここで、隣接する各沈着物は、異なる活性剤を異なる濃度で含む;又は隣接する各沈着物は、隣接する沈着物とは異なる側/面に配置される;又は隣接する各沈着物は、隣接する沈着物とはフロスの反対側に配置される;又は隣接する沈着物はそれぞれ、隣接する前の沈着物とは異なる活性剤を含む。別の側面では、異なる活性剤の沈着はフロスの片側又はフロスの両側に行われる。別の側面では、活性剤の沈着はフロスの片側又はフロスの両側で行われ、各側は同じ又は異なる濃度/量の活性剤を含む。1つの側面では、隣接する各沈着物は、互いに重なり合って沈着した同じ活性剤又は異なる活性剤を含む。別の側面では、活性剤は同じ又は異なる距離/長さでそれぞれ反対側に沈着している。別の側面では、隣接する各沈着物は溶解度に対して必要な溶媒が異なる活性剤を含む(例えば、1つの活性剤は溶媒として水を必要とする一方で、もう1つの活性剤は有機溶媒を必要とする);又は隣接する各沈着物は、隣接する沈着物とは異なる側/面に配置される;又は隣接する各沈着物は、隣接する沈着物とはフロスの反対側に配置される;又は隣接する沈着物はそれぞれ、異なる溶媒要件を有する隣接する前の沈着物とは異なる溶媒要件を有する異なる活性剤を含む。別の側面では、異なる溶媒要件を有する活性剤は同じ又は異なる距離/長さでそれぞれ反対側に沈着している。別の側面では、同じ溶媒要件を有する活性剤は同じ又は異なる距離/長さで重なり合って沈着している。別の側面では、異なる溶媒要件を有する活性剤は同じ又は異なる距離/長さで重なり合って沈着している。別の側面では、フロスは固く、ほぐれていて、複数のストランドを含み、接着性を有するように処理されているか、薬理学的に許容される担体に接着するように処理されているか、活性剤に接着するように処理されているか、活性剤及び薬理学的に許容される担体に接着するように処理されている。別の側面では、沈着方法においてその過程を容易にするために、又は均一な沈着物の形成を促進するために、フロスにその表面エネルギーを変化させる処理がされている。別の側面では、隣接する各沈着物は隣接する沈着物同士を区別する染料又はしるしを含む。別の側面では、フロスは活性剤、薬理学的に許容される担体又はその両方に浸漬されない。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、前庭粘膜には送達されない、抗原、免疫原、アレルゲン、これらの組み合わせから選択される。別の側面では、1又は2以上の活性剤は歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を引き起こす、すなわち、免疫応答を活性化する、又はアネルギー化する。別の側面では、フロスの厚さは5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満である。別の側面では、フロスは天然又は合成ポリマー、有機物質、金属、無機物質又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、フロスは粘膜付着層又は疎水層又は親水層又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、フロスは抗原の歯肉溝への拡散を可能にする微多孔性構造を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、ピコグラムからミリグラムの範囲で接合上皮へ送達される量の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含み、個体を上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減感作する。別の側面では、1又は2以上の活性剤は抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含み、対象を上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して0.1~100%の間で減感作する。別の側面では、フロスは抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせをJEに送達し、フロスによる上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後又はそれ以上後に行われる。別の側面では、1又は2以上の活性剤は免疫応答を活性化、調節又はアネルギー化する。別の側面では、1又は2以上の活性剤は:細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、毒素、がん、アレルギー又は自己免疫疾患の少なくとも1つを標的とする免疫反応を引き起こす。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA)オリゴヌクレオチド、リボ核酸(RNA)オリゴヌクレオチド、壊れた細胞、インタクトな細胞、脂質、毒素バリアント、炭水化物、ウイルス様粒子、リポソーム、弱毒化した生きている微生物若しくは死滅した天然微生物若しくは組換え微生物、ビロソーム、ポリマー/無機/有機マイクロ及びナノ粒子又は免疫刺激複合体(ISCOMS):の少なくとも1つから選択される1又は2以上の抗原を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、T細胞性及びB細胞性リンパ増殖性疾患、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、消化管がん、乳がん、前立腺がん又は非小細胞肺がんから選択されるがん細胞から得られるペプチド又は上記がん細胞の一部を含む抗原を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤はピーナッツ、貝類、卵タンパク質、乳タンパク質、豆類、ナッツから選択される食物アレルゲン又はイエダニ若しくは花粉から選択される気道アレルゲンである抗原を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、歯肉溝に配置するのに適切な厚さのデンタルフロス又は薄いデバイス又はストリップ/パッチ又は歯間ブラシに物理的又は化学的に付着している、吸着している、又は固定されている抗原の少なくとも1つである抗原を含む。別の側面では、フロスは、サイトカイン、ケモカイン、トール様受容体リガンド又は活性化因子、ミョウバン、ムラミルジペプチド、ピリジン、キトサン、サポニン、油、乳剤、細菌細胞壁抽出物、細菌タンパク質、細胞質細菌DNA又は模倣物、ウイルスRNA又は模倣物、合成オリゴヌクレオチド、インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト(2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、pam3CSK4、poly(I:C)、R848、TDB)、天然ポリマー(ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)及びこれらの組み合わせから選択される1又は2以上のアジュバントをさらに含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、自然免疫応答、適応免疫応答又はその両方を活性化する1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含む。
【0016】
本明細書に具体化され広範に説明されるように、本開示の1つの側面は:フロス;及び薬理学的に許容される担体中の活性剤の1又は2以上の沈着物のフロス上の不連続的な沈着、ここで、各沈着物は既知の所定量の活性剤を含むものである、所定量の1又は2以上の活性剤を含むフロスを作製する方法に関する。1つの側面では、隣接する各沈着物は同じ活性剤若しくは異なる活性剤を含む、又は隣接する各沈着物は同じ活性剤を異なる濃度で含む;又は、ここで、隣接する各沈着物は、異なる活性剤を異なる濃度で含む;又は隣接する各沈着物は、隣接する沈着物とは異なる面に配置される;又は隣接する各沈着物は、隣接する沈着物とはフロスの反対側に配置される;又は隣接する沈着物はそれぞれ、隣接する前の沈着とは異なる活性剤を含む。別の側面では、フロスは固く、ほぐれていて、複数のストランドを含み、接着性を有するように処理されており、薬理学的に許容される担体に接着するように処理されており、又は活性剤に接着するように処理されている。別の側面では、隣接する各液滴又はパッチは隣接する沈着物同士を区別する染料又はしるしを含む。別の側面では、フロスは活性剤、薬理学的に許容される担体又はその両方に浸漬されない。別の側面では、1又は2以上の活性剤は前庭粘膜に送達されない、抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせから選択される。別の側面では、1又は2以上の活性剤は歯肉溝の接合上皮を標的とすることにより免疫応答を引き起こす、すなわち、免疫応答を活性化する、又はアネルギー化する。別の側面では、フロスの厚さは5mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは1mm未満である。別の側面では、フロスは天然又は合成ポリマー、有機物質、金属、無機物質又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、フロスは粘膜付着層又は疎水層又は親水層又は組み合わせを含む。別の側面では、フロスは抗原の歯肉溝への拡散を可能にする微多孔性構造を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、ピコグラムからミリグラムの範囲で接合上皮へ送達される量の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含み、個体を上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減感作する。別の側面では、1又は2以上の活性剤は抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含み、対象を上記抗原、上記免疫原、上記アレルゲン又はこれらの組み合わせに対して0.1~100%の間で減感作する。別の側面では、フロスによる抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間前、0.1時間前、0.2時間前、0.3時間前、0.4時間前、0.5時間前、0.6時間前、0.7時間前、0.8時間前、0.9時間前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前又はそれ以上前に行われる。別の側面では、フロスの沈着物による抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせのJEへの送達は、対象が食べ物を食べる、水を飲む、又はその両方を行う0時間後、0.1時間後、0.2時間後、0.3時間後、0.4時間後、0.5時間後、0.6時間後、0.7時間後、0.8時間後、0.9時間後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後又はそれ以上後に行われる。別の側面では、1又は2以上の活性剤は免疫応答を活性化、調節又はアネルギー化する。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫、プリオン、毒素、がん、アレルギー又は自己免疫疾患:の少なくとも1つを標的とする免疫応答を引き起こす。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、タンパク質、ペプチド、デオキシリボ核酸(DNA)オリゴヌクレオチド、リボ核酸(RNA)オリゴヌクレオチド、壊れた細胞、インタクトな細胞、脂質、毒素バリアント、炭水化物、ウイルス様粒子、リポソーム、弱毒化した生きている微生物若しくは死滅した天然微生物若しくは組換え微生物、ビロソーム、ポリマー/無機/有機マイクロ及びナノ粒子又は免疫刺激複合体(ISCOMS)の少なくとも1つから選択される1又は2以上の抗原を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、T細胞性及びB細胞性リンパ増殖性疾患、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、扁平上皮がん、消化管がん、乳がん、前立腺がん又は非小細胞肺がんから選択されるがん細胞若しくはその一部から得られるペプチドを含む抗原を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤はピーナッツ、貝類、卵タンパク質、乳タンパク質、豆類、ナッツから選択される食物アレルゲン又はイエダニ若しくは花粉から選択される気道アレルゲンである抗原を含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、歯肉溝に配置するのに適切な厚さのデンタルフロス又は薄いデバイス又はストリップ/パッチ又は歯間ブラシに物理的又は化学的に付着している、吸着している、又は固定されている抗原の少なくとも1つである抗原を含む。別の側面では、フロスは、サイトカイン、ケモカイン、トール様受容体リガンド又は活性化因子、ミョウバン、ムラミルジペプチド、ピリジン、キトサン、サポニン、油、乳剤、細菌細胞壁抽出物、細菌タンパク質、細胞質細菌DNA又は模倣物、ウイルスRNA又は模倣物、合成オリゴヌクレオチド、インターフェロン(IFN)遺伝子刺激因子(STING)アゴニスト(2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、pam3CSK4、poly(I:C)、R848、TDB)、天然ポリマー(ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)及びこれらの組み合わせから選択される1又は2以上のアジュバントをさらに含む。別の側面では、1又は2以上の活性剤は、自然免疫応答、適応免疫応答又はその両方を活性化する1又は2以上の抗原、免疫原、アレルゲン又はこれらの組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の特徴色及び利点をより完全に理解するために、添付図面とともに本発明の詳細な説明に言及する、ここで:
【
図1-3】
図1A~
図1Fは歯肉溝及び接合上皮を示す:(
図1A)ヒトの口。(
図1B)歯肉溝及び接合上皮(JE)の構造。(
図1C)歯肉溝の接合上皮への活性剤の送達及び時間の経過に伴う接合上皮及び隣接組織への活性剤の拡散、(
図1D)フロスにコーティングされた抗原分子の送達及びマウス歯茎組織に対するフロッシングの効果並びに(
図1E)ローダミン結合オボアルブミン(Ova, ovalbumin)の歯茎組織内での拡散(ex-vivo)。フロッシングは、各門歯に対し、抗原を沈着させたフロスを歯の周囲に置き、コーティングされた抗原が歯茎縁に沈着するように約10~15回フロッシングすることにより行う。(
図1F)フルオレセインイソチオシアネート(FITC, fluorescein isothiocyanate)結合オボアルブミン(Ova)でコーティングされたフロスの送達効率。
【
図2-3】
図2A~
図2Gはフロスを介したワクチン送達及び免疫応答の特徴付けを示す。(
図2A)(1)コーティングされたフロスの実体顕微鏡写真、及び
図2A(2)マウスにおけるフロッシング手順。(
図2B)ワクチン接種スケジュール:歯茎を抗原(オボアルブミン(Ova)、モデル抗原)を沈着させたフロスでフロッシングすることによってBalb/cマウス(n=5)にワクチン接種した。フロスはOva25μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)25μgの沈着物を含んでおり、マウスを毎週、合計で最大4週間ワクチン接種した。いかなるコーティングもされていないフロスで処置したマウスをコントロールとして扱った。全身性免疫応答:28日目及び56日目にマウスから採血し、血清抗Ova抗体応答(1:12500又は1:2500希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA, enzyme-linked immunosorbent assay)で分析した。
図2(C)(1)~(3)56日目の抗Ova抗体応答-
図2(C)(1)IgG、
図2(C)(2)IgG1及び
図2(C)(3)IgG2a。個々のマウス血清を分析に使用した。
図2(D)(1)~(3)は記憶免疫応答を示す:ワクチン接種したマウスを安楽死させ、骨髄細胞を採取した。細胞を、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を補充したRPMI培地を用いて、1ウェル当たり1×10
6細胞の濃度で3連で培養した。培養細胞の上清を96時間後に回収し、抗Ova応答を分析した。
図2(D)(1)~(3)骨髄細胞における抗Ova応答-
図2(D)(1)IgG、
図2(D)(2)IgG1、
図2(D)(3)IgG2a。この結果は、応答は局所的及び全身的であるだけでなく、個体が同じ抗原(Ag, antigen)への将来の曝露に対してより適切に備えられるように記憶応答を誘発できたことを示唆している。
図2(E)(1)~(4)は粘膜免疫応答を示す。56日目に、ワクチン接種したマウスとフロスのみで処置したマウスから糞便、鼻洗浄液及び肺洗浄液を採取した。抗Ova
図2(E)(1)糞便中IgG(1:5希釈)、
図2(E)(2)糞便中IgA(1:5希釈)、
図2(E)(3)鼻洗浄液中IgG(無希釈)及び
図2(E)(4)肺洗浄液中IgG(無希釈)。
図2(F)(1)~(2)フロスを介してワクチン接種したマウスの(1)血清中にも(2)骨髄中にも有意な量のIgEが検出されなかったことは、標的部位であるJEは送達されたAgに対して個体を感作しないことを示している。
図2(G)ワクチン接種したマウスを安楽死させ、脾細胞を採取した。10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を補充したRPMI培地中、1ウェル当たり1×10
6細胞の濃度で細胞を3連で培養し、Ova(200μg/ml)で再刺激した。培養細胞の上清を96時間後に回収し、サイトカイン値を分析した。
図2(G)は脾細胞培養におけるサイトカイン値を示し、
図2(G)(1)はIFN-ガンマ、そして
図2(G)(2)はIL-4を示す。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて血清希釈が異なる群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001。
【
図3】
図3A~
図3Cはインフルエンザワクチン接種のためのフロスを示す。
図3(A)ワクチン接種スケジュール:Balb/cマウス(n=10)に、フロスにコーティングされた10μg又は25μgの不活化(Inac., inactivated)ウイルスを、0、14及び28日目にそれぞれ1回ずつ、計3回ワクチン接種した。56日目にマウスから採血し、抗不活化ウイルス免疫応答(1:800又は1:50希釈)をELISAで分析した。
図3(B)(1)~(3)56日目の血清抗不活化ウイルス
図3(B)(1)IgG、
図3(B)(2)IgG1、
図3(B)(3)IgG2a抗体応答。ウイルスチャレンジ:56日目に、マウスに3×LD
50(50%致死量)のA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスをチャレンジした。個々のマウスサンプルを分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001。
図3(C)(1)~(2)マウスの体重の変化と感染の重症度を毎日観察した。
図3(C)(1)体重の変化率、
図3(C)(2)ワクチン接種したマウスの感染後のパーセント生存率。各群においてn=5マウスである。
【
図4-2】
図4A~
図4Dはフロスを介した、金ナノ粒子(AuNP’s, gold nanoparticles)結合ペプチド(M2e)にさらにアジュバント(CpG)を加えたものからなるワクチン製剤であるM2e-AuNP+CpG(MAC)ワクチンの送達及び免疫応答の特徴付けを示す。
図4(A)(1)AuNP’s56μg、M2e8.1μg及びCpG20μg(1回分の用量)を含有するM2e-AuNP+CpGでコーティングされたフロスの実顕微鏡写真及び
図4(A)(2)マウスのフロッシング手順。
図4(B)ワクチン接種スケジュール:歯茎をワクチン製剤[M2e-AuNP+CpG(MAC)]でコーティングされたフロスでフロッシングするか、ワクチン製剤[M2e-AuNP+CpG(MAC)]を舌下に置く[舌下免疫療法(SLIT)]ことにより、Balb/cマウス(n=10)にワクチン接種した。フロスにコーティングされたか、SLITを介して送達されたワクチン製剤(MAC)は、AuNP’s56μg、M2e8.1μg及びCpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)20μgからなり、0日目と21日目にマウスにワクチン接種した。治療を受けなかった無感作マウスをコントロールとして扱った。全身性免疫応答:21日目及び42日目にマウスから採血し、血清抗M2e抗体応答(1:6400希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。
図4C(1)~(3)42日目の血清抗M2e抗体応答-
図4C(1)IgG、
図4C(2)IgG1及び
図4C(3)IgG2a。個々のマウス血清を分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001。ウイルスチャレンジ。(
図4D(1)~(2))43日目に、マウスに3×LD
50(50%致死量)のA/California/07/2009 H1N1ウイルスをチャレンジした。マウスの体重の変化と感染の重症度を毎日観察した。
図4D(1)体重の変化率、
図4D(2)ワクチン接種したマウスの感染後のパーセント生存率。各群においてn=5マウスである。
【
図5-2】
図5A~
図5Eはフロスを介したワクチン送達及び免疫応答の特徴付けを示す。(
図5A)ワクチン接種スケジュール:歯茎を抗原(ピーナッツ抽出物(PE, peanut extract))を沈着させたフロスでフロッシングすることによってBalb/cマウス(n=5)にワクチン接種を行った。フロスにはPE25μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)25μgが沈着しており、マウスに毎週、合計で最大4週間ワクチン接種した。いかなるコーティングもされておらず、沈着物も含んでいないフロスで処置したマウスをコントロールとして扱った。全身性免疫応答:28日目及び56日目にマウスから採血し、血清抗PE抗体応答(1:12500希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。
図5B(1)~(3)56日目の血清抗PE抗体応答-
図5B(1)IgG、
図5B(2)IgG1及び
図5B(3)IgG2a。個々のマウス血清を分析に使用した。(
図5C(1)~(3))記憶免疫応答:ワクチン接種したマウスを安楽死させ、骨髄細胞を採取した。細胞を、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を補充したRPMI培地を用いて、1ウェル当たり1×10
6細胞の濃度で3連で培養した。培養細胞の上清を96時間後に回収し、抗PE応答を分析した。抗PE
図5C(1)IgG、
図5C(2)IgG1、
図5C(3)IgG2a。この結果は、応答は局所的及び全身的であるだけでなく、個体が同じ抗原(Ag)への将来の曝露に対してより適切に備えられるように記憶応答を誘発できたことを示唆している。(
図5D)粘膜免疫応答。56日目に、ワクチン接種したマウスと無感作マウスから糞便、鼻洗浄液及び肺洗浄液を採取した。抗PE
図5D(1)糞便中IgG(1:5希釈)、
図5D(2)糞便中IgA(1:5希釈)、
図5D(3)鼻洗浄液中IgG(無希釈)及び
図5D(4)肺洗浄液中IgG(無希釈)。(
図5E(1)~(2))フロスを介してワクチン接種したマウスの
図5E(1)血清中にも
図5E(2)骨髄中にも有意な量のIgEが検出されなかったことは、標的部位である接合上皮は、送達されたAgに対して個体を感作しないことを示している。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて血清希釈が異なる群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001。
【
図6-2】
図6A~
図6Dはピーナッツアレルゲン免疫療法のスケジュールを示す。(
図6A)免疫療法スケジュール:Balb/cマウス(n=5)を経口経路で、1週間の間隔を設け、5週間連続で感作した[ピーナッツ抽出物(PE)1mg+コレラ毒素(CT, cholera toxin)15μg]。次いで、抗原でコーティングされたフロスでフロッシングすることによりマウスにワクチン接種した。フロスはPE5μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)5μgでコーティングされており、マウスを週3回、合計で最大3週間ワクチン接種した。感作後いかなる治療も受けなかったマウスをコントロールとした(無治療)。ワクチン接種後(PV, post-vaccination)10日目にマウスから採血した。ワクチン接種から8週間後、マウスにPEアレルゲン(500μg)を腹腔内経路(IP, intraperitoneal route)でチャレンジし、次いでマウスを安楽死させ、種々の組織を採取した。(
図6B(1)~(3))血清抗PE抗体(1:12500希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で確認した。抗PE 6B(1)IgG、
図6B(2)IgG1及び
図6B(3)IgG2a ワクチン接種後10日目の抗体応答。個々のマウス血清を分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて血清希釈が異なる群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001及びns:有意差なし(not significant)。PEはアナフィラキシーを誘発した。(
図6C)(1)PEによるIPチャレンジ後の血漿MCPT-1値。腸組織の組織学的分析。(
図6D)ワクチン接種から8週間後、マウスにPEアレルゲン(500μg)を腹腔内経路でチャレンジした。次いでマウスを安楽死させ、小腸を近位、中間及び遠位端から採取し、固定し、脱水し、切断のためにパラフィンワックスに包埋した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E, hematoxylin and eosin)染色で染色し、組織診断のために切片化した。
図6D(1)異なる処置群のマウスから得られたそれぞれの切片でカウントされた好酸球の数。
図6D(2)好酸球浸潤を示す矢印が付いた、H&E染色された腸の明視野像。個々のマウスサンプルを分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析を用いて群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及びns:有意差なし。
【
図7-2】
図7A~
図7Dは気道アレルゲン免疫療法を示す。(
図7A)免疫療法スケジュール:Balb/cマウス(n=5)を、1週間の間隔を設け、2回腹腔内(IP)注射(Ova25μg+ミョウバン2mg(アジュバント))することにより感作した。感作後(PS, post sensitization)10日目に、マウスに鼻腔内経路(IN, intranasal route)でOva(50μg)を3日間連続でチャレンジし、気道炎症を発症させた。次いで、抗原を沈着させたフロスでフロッシングすることによりマウスにワクチン接種した。フロスはOva25μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)25μgでコーティングされており、マウスに週3回、合計で最大3週間ワクチン接種した。感作後いかなる治療も受けなかったマウスをコントロールとした(無治療)。ワクチン接種後10日目にマウスから採血した。ワクチン接種後28日目に、マウスに鼻腔内経路(IN)でOvaアレルゲン(50μg)を3日間連続でチャレンジし、次いでマウスを安楽死させ、種々の組織を採取した。全身性免疫応答:(
図7B(1)~(4))酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析したワクチン接種後10日目の血清抗Ova
図7B(1)IgG、
図7B(2)IgG1、
図7B(3)IgG2a及び
図7B(4)IgE抗体応答(1:12500又は1:500又は1:20希釈)。(
図7C)チャレンジ後の肺洗浄液分析。次いでマウスを安楽死させ、肺洗浄液の粘膜分泌物を採取した。肺洗浄液中の
図7C(1)好酸球及び
図7C(2)好中球の細胞数-細胞をディフ-染色キットで染色し、共焦点顕微鏡で細胞を観察することによりカウントした。肺の組織学的分析:(
図7D)次いでマウスを安楽死させ、肺を摘出し、固定し、洗浄し、組織診断のために切片化した。組織切片を、粘液沈着を染色するために過ヨウ素酸-シッフ(PAS, periodic acid-Schiff)で染色するか、コラーゲン沈着を染色するためにトリクロームブルー(TCB, trichrome blue)で染色した。PAS染色肺(上のパネル)とTCB染色肺(下のパネル)の代表的な明視野像。上のパネルの矢印は粘液沈着、下のパネルの矢印はコラーゲン沈着を指し示している。
【
図8】
図8は沈着能力を示し、フロスの片側のみになされた、短い長さ又はより長い長さの、単一領域への沈着又は複数の別個の領域への沈着としての、異なるパターンでのペプチド、ナノ粒子、タンパク質、オリゴヌクレオチド、微粒子のフロスへの沈着である。
【
図9】
図9は花粉粒微粒子を含む沈着している水溶性物質及び非水溶性物質の沈着能力を示す。
【
図10】
図10は沈着能力及び例として2つの異なる化合物の異なる沈着パターンを示す。製剤の1つは水中のNHS-ローダミン(蛍光試薬)結合オボアルブミン(タンパク質)であり(「A」と呼ぶ)、2つ目は水中の金ナノ粒子及びCpG(一本鎖DNA)結合M2eペプチドである(「B」と呼ぶ)。
【
図11】
図11は複数の物質の沈着能力を示しており、ここでは、4つの明確に異なる部分として沈着した4つの異なる食品着色料(青、緑、黄、赤)を示す。
【
図12】
図12はフロスの両側を異なる製剤でコーティングできるコーティング能力を示す。
【
図13】
図13はフロスをコーティングする自動コーティング装置の例を示す。
【
図14】
図14はフロッサーシステムの設計の2つの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用について以下に詳細に論じるが、本発明は、多種多様な特定の状況で具体化することができる多くの適用可能な発明概念を提供することを理解されたい。ここで論じる特定の実施形態は本発明を作製及び使用するための特定の方法を単に例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。ここで定義する用語は本発明に関連する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。「a」、「an」及び「the」等の用語は、一つのもののみを指すことを意図したものではなく、説明のために特定の例が使用され得る一般的なクラスを含む。ここで使用される用語は本発明の特定の実施形態を説明するために使用されるが、その使用法は、請求項に概説される場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0020】
米国特許第9,271,899号明細書(‘899特許)は、「口腔粘膜を介したアレルギー減感作のための方法、物品及びキット」と題され、口腔粘膜の、マスト細胞に対する樹状細胞の比率が高い領域、特に前庭粘膜を標的とすることにより、個体にアレルギー免疫療法を実施することを主張している。具体的には、発明の説明の最初の段落で、「本発明は、マスト細胞に対する樹状細胞の比率が高い領域等の口腔粘膜の領域、特に前庭粘膜を標的とするアレルギー免疫療法に関する。」と述べている。口腔前庭は、口の、内側が歯茎及び歯、外側が頬及び唇で囲まれた狭いスリット状の部分である。上記特許は特に前庭粘膜に焦点を当てているが、アレルゲンは歯肉/頬等の他の口腔粘膜部位と接触する可能性があることに言及している。‘899特許は、マスト細胞に対する樹上細胞の望ましい比率、具体的には、口腔粘膜の、マスト細胞に対する樹状細胞の比率が高い部分へのアレルゲンの送達を強化し、アレルゲンと口腔の前庭組織間の接触時間を最大化する方法を提供する必要性を主張している。アレルゲンの送達の方法には、歯磨き粉、パウチ、歯科用クリーム、マウスウォッシュ、マウススプレー等が含まれる。‘899特許は、パウチ又はその他の歯科用製品を介して投与され得る1ピコグラム~15mgの間のアレルゲンタンパク質を含む製剤について論じている。‘899特許は、製剤を、アレルゲンを含む歯磨き粉の形で作製することについて論じている。‘899特許は歯磨き粉2gにアレルゲンが1~10%含まれる可能性がある例について述べている。したがって、この方法によれば、個体は2~200mgのアレルゲンを与えられることになる。一方で、‘899特許はマスト細胞に対する樹状細胞の比率が高いことが重要であると主張し、前庭粘膜がそのような望ましい粘膜の1つであることを提案しているが、‘899特許に説明されている方法にはどのようにこれらの粘膜、具体的には前庭粘膜が主に標的とされるか教示がなく、さらに前庭組織の細胞に到達する用量についても言及がない。
【0021】
これに対し、本発明の技術は、具体的に、接合上皮(JE)を標的とし、ピコグラム~マイクログラムのアレルゲン/ワクチン分子をJEに送達し、免疫応答を生み出す。JEは、歯肉溝(時として歯肉溝(gingival sulcus)又は歯肉溝(gingival groove)又は歯茎ポケットとも呼ばれる)の最も深い窪みの最下部に位置している。JEは自由に露出しているのではなく、JEはその片側では硬い歯の表面に付着し、もう一方の側ではその下にある柔らかい結合組織に付着している。このようにして、JEは歯の周りを包み込み、付着バンドを形成している。JEの細胞は角質化されておらず、広い細胞間隙を有する。JEのこの広い細胞間隙は、頬、唇、付着している歯肉及び前庭の粘膜をも含む口腔粘膜の他の場所では見られない高い透過性という特有の性質をJEに与えている。JEのこの高い透過性の程度は、現時点で最も透過性の高い口腔粘膜部位と考えられている舌下粘膜よりもさらに高い。本発明の発明者らはJEのこの特有性を認識し、マイクログラム量の抗原分子がJEを速やかに透過し、マウスにおいて強固な免疫応答を誘導することができたことをここに示している。そのため、本発明の技術は、透過性が高く、下層の組織への分子の効率的な取り込みを可能にし、強力な免疫応答を生み出すのに役立つことから、JEを標的とする。本発明はまた、免疫原(ワクチン/アレルゲン)が接合部を標的とすることと舌下免疫療法(SLIT)を直接比較し、SLITとの比較における接合上皮を標的とすることによる有意に高い免疫応答を実証している。これに対し、‘899特許は透過性に焦点を当てておらず、実際、前庭粘膜の透過性はJEの透過性よりも低い。‘899特許はさらに、アレルゲンを送達するためのフロスの使用について論じている。‘899特許はアレルゲンをコーティング層に包埋することができ、又はアレルゲンをコーティング層としてフロスに直接コーティングすることもできると述べている。次いで、アレルゲンはフロスから脱着し、又は放出され、抗原性物質を前庭粘膜に送達する。しかし、‘899特許はフロスで送達されたアレルゲンがどこに送達されるかについては言及していない。さらに‘899特許は接合上皮についても、その特有に高い透過性についても教示しておらず、また‘899特許はワクチン接種についても語っていない。これに対し、本発明は歯肉溝の接合上皮、すなわち、前庭粘膜よりも樹状細胞の数が少ない領域を標的としており、このことは‘899特許の教示に反している。ヒトの口腔粘膜の樹状細胞数は、前庭、頬、口蓋及び舌の組織と比較して、歯肉において数が少ないことが文書に記されている。実際、前庭、頬、口蓋及び舌の組織で最多数のLCが見られた一方で、舌下領域及び歯肉ではより少ない数が観察された(参考資料:“Dendritic cells of the oral mucosa”, A-H Hovav, Mucosal Immunology, 7, 27-37, 2014)。‘899特許の教示の根拠となる上記特許からの参考資料文献であるAllam et al. Allergy 2008: 63: 720-727はまた、歯肉が最も多くのマスト細胞を有することも確認しており、したがって、‘899特許の教示によれば、接合上皮はアレルゲン免疫療法にはあまり好ましくない/都合が良くないはずである。さらに、本発明は前庭粘膜を標的としていない。
【0022】
口腔粘膜に関して、単に粘膜表面に分子を置くだけでは効率的な免疫調節につながらないという定説に反して、本発明において、実際に接合上皮の上に物質を置くと、強力な免疫調節的な応答が達成されることが実証されている。接合上皮の粘膜バリアを弱めたり破壊したりするために追加のアプローチは必要なく、デオキシリボ核酸(DNA)等の小分子又はタンパク質等の大分子及びナノ粒子やウイルスまでも、接合上皮に置くだけで、結果として強力な免疫応答を得ることができる。実際に、接合上皮にはリンパ管が豊富に存在している。
【0023】
本発明は、強力な全身性及び粘膜性免疫応答を入手するために、歯肉溝の接合上皮を介して抗原及びアレルゲンを投与することを目的とする。接合上皮の長さはわずか2mmで歯肉溝の深さは1~2mmであるため、接合上皮を介した取り込みのために歯肉溝を標的として沈着させるために、本発明者らは抗原及び/又はアレルゲンをデンタルフロス上に沈着させた。本発明者らは接合上皮を標的とするためにフロスを使用したが、接合上皮を標的とし得るその他のアプローチを使用することもできる。例えば、歯肉溝と同様の大きさの薄い平面を使用することができる。免疫調節を引き起こすためにこの平面を使用し得る物質でコーティングすることも、物質をこの平面上にカプセル化することもできる。本発明者らは、マウスモデルを用いて、フロスを抗原/アレルゲン溶液でコーティングできることを示し、マウスの歯をフロッシングできることを示し、そしてこの方法が抗原/アレルゲン送達の有効な形態であることを示している。この新しいアプローチは、免疫調節のためにアレルゲン及び抗原を投与する非侵襲的で無痛の簡単な方法としての役割を果たす。アレルギーの場合、本発明の免疫処置はアレルギー免疫応答を弱める、及び/又はアレルゲンに対する防御免疫応答を誘導する役割を果たす。逆に、本発明は、感染症及びその他の病原体に対する免疫応答を生じさせるために使用することもできる。
【0024】
本発明は、当技術分野で周知のデンタルフロスと共に使用することができる。例えば、デンタルフロスは、ナイロンを重合してポリマーとし、それを形成、圧送又は押し出してモノフィラメント又はマルチフィラメントを形成したナイロンデンタルフロスとして製造され得る。ポリマーを硬化させ、モノフィラメント又はマルチフィラメントを組み合わせてデンタルフロスの1本又は複数本のストランドを形成する。デンタルフロスは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE, polytetrafluoroethylene又はTEFLON(登録商標))、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン・ブタジエン共重合体及びこれらの組み合わせから製造され得る。ポリマー形成後、溶融して細いストランドに押し出すことができる。例えば、関連部分は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,270,890号明細書を参照されたい。
【0025】
非限定的な1例では、ナイロン又はPTFEを塩基性アミノ酸(又はその塩)と混合し、形成して、又は押し出して、1又は2以上のフィラメントを形成する。マルチフィラメントの場合、通常、これらを撚ってデンタルフロスを形成する。あるいは、PTFE等の1本の細長いひも状のフロスを形成することも可能である。多くの場合、デンタルフロスのデニールは約450~約1350であり、その他の例では、フロスのデニールは約100~約900である。
【0026】
次いで、当業者には公知であるように、デンタルフロスに本発明の免疫原及び/又はアレルゲン及び/又は抗原を沈着させる。例えば、デンタルフロスを、抗原及び/又はアレルゲンを含む槽中で処理する。槽は、フロスに接着させる1又は2以上のワックスを含むことができ、それによって抗原及び/又はアレルゲンがフロスに接着する。1例として、ナイロン又はPTFE繊維を含むデンタルフロスが抗原及び/又はアレルゲンでコーティングされている。ワックス又はポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等を使用して、デンタルフロスの内部、表面、又は周囲を抗原及び/又はアレルゲンでコーティングすることができる。例えば、関連部分は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,289,904号明細書を参照されたい。
【0027】
フィラメント状デンタルフロスの場合、抗原及び/又はアレルゲンは、束が形成される前、束が形成されている間、又は束が形成された後であっても、細いフィラメント、例えばナイロンフィラメントの束の中に包埋することができる。次いで、束はまた、任意にワックス又はポリマーでコーティングされてもよい。フィラメントの数は、デンタルフロスのフィラメントのデニールに応じて、約2~約500、例えば、約2~約250であり得る。多くの場合、デンタルフロスのフィラメントを1インチ当たり約1~5回ねじって撚ることによりフロスを形成する。撚ることにより、デンタルフロスをスプールに置くとき及び/又はその後の取り扱いにおいて一体性が提供される。予防注射では、デンタルフロスのフィラメントが展開し、歯肉の接合上皮で歯の表面に広がり、それによって抗原及び/又はアレルゲン免疫処置を送達する。フロスはまた、インターロック繊維から形成され得る。デンタルフロス製品は、歯と歯の間にフィットするだけでなく、歯肉の接合上皮にまで届く厚さであることが好ましい。マルチフィラメントを使用する場合、コーティングは撚る前及び/又は後、そして通常は抗原及び/又はアレルゲンの塗布後に塗布することができる。抗原及び/又はアレルゲンを保存するため、又はコーティングの過程を助けるため、又は抗原及び/又はアレルゲンの徐放を達成するために、他の添加剤をデンタルフロスに塗布することができる。
【0028】
加えて、デンタルフロスには液体又は固体の香味料を塗布することができる。香味料は液体又は固体の形で噴霧乾燥することができる。液体の香味料を塗布する場合、通常、フロスをスプールに巻き取る前に乾燥させる。乾燥は自然乾燥又は熱くなるまで乾燥し、その後フロスをスプールに巻き取る。
【0029】
本明細書で用いるとき、「抗原」の語は、抗原のレシピエントにおいて液性及び/又は細胞性免疫応答を開始することができる分子のことをいう。抗原は、本発明において異なる文脈で使用される場合があり、例えば:(1)ワクチン接種が有利な治療となる疾患又は状態を予防又は治療するために免疫応答を生み出す作用剤として、及び/又は(2)免疫応答をアネルギー化する作用剤として、つまり、作用剤は活性化された免疫細胞の活性化レベルを低下させる、及び/又は(3)対象において有益な治療効果を達成するために免疫応答を調節する作用剤として使用され得るが、これらに限定されない。抗原には、例えば、単純な中間代謝産物、糖類、脂質及びホルモン並びにペプチド、ポリペプチド、複合炭水化物、リン脂質、核酸及び/又は糖タンパク質等の巨大分子又はこれらの組み合わせを含む、いかなる種類の生体分子もが含まれる。一般的な抗原のカテゴリーには、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫抗原及びその他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、そして逆に、自己免疫疾患、アレルギー及び移植片拒絶に関与する抗原並びにその他の様々な抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書に開示されるウイルス抗原の例としては、例えば、gag、pol及びenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素及びその他のヒト免疫不全ウイルス(HIV, human immunodeficiency virus)成分等のHIV抗原からのレトロウイルス抗原等のレトロウイルス抗原;スパイクタンパク質、核タンパク質、メッセンジャーRNA(mRNA, messenger RNA)等のコロナウイルス抗原;B型肝炎ウイルスのS、M、及びLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレS抗原並びにC型肝炎ウイルスRNA等のその他の肝炎、例えば、A、B及びC型肝炎、のウイルス成分等の肝炎ウイルス抗原;ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ等のインフルエンザウイルス抗原並びにその他のインフルエンザウイルス成分;麻疹ウイルス融合タンパク質等の麻疹ウイルス抗原及びその他の麻疹ウイルス成分;タンパク質E1及びE2等の風疹ウイルス抗原及びその他の風疹ウイルス成分;ロタウイルス抗原及びその他のロタウイルス成分;エンベロープ糖タンパク質B等のサイトメガロウイルス抗原及びその他のサイトメガロウイルス抗原成分;RSV融合タンパク質、M2タンパク質等の呼吸器合胞体ウイルス抗原及びその他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分;最初期タンパク質、糖タンパク質D等の単純ヘルペスウイルス抗原及びその他の単純ヘルペスウイルス抗原成分;gpI、gpII等の水痘帯状疱疹ウイルス抗原成分及びその他の水痘帯状疱疹ウイルス抗原成分;E、M-E、M-E-NS1、NS1、NS1-NS2A、80%Eタンパク質等の日本脳炎ウイルス抗原及びその他の日本脳炎ウイルス抗原成分;狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質等の狂犬病ウイルス抗原及びその他の狂犬病ウイルス抗原成分、ウエストナイルウイルス;黄熱病;野兎病;肝炎(ウイルス性;細菌性);呼吸器合胞体ウイルス(RSV, respiratory syncytial virus);HPIV1及びHPIV3;アデノウイルス;天然痘が挙げられるが、追加のウイルス抗原の例については、関連部分は参照により本明細書に組み込まれるFundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M. (Raven Press, New York,1991)を参照されたい。
【0031】
抗原のその他の例としては、ピコルナウイルス、コロナウイルス、トガウイルス、フラビルウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、ブニヤウイルス、アレナウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、海綿状ウイルス、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、麻疹、デング、天然痘、ポリオ又はHIVが含まれ、これらの全体、加熱殺菌されたもの又は一部が挙げられる。その他の抗原は、トリパノソーマ、サナダムシ、回虫、蠕虫、マラリア等の病原体に対するものであり得る。本発明でベクターで使用され、最終的に抗原として使用される生物、アレルゲン並びに核酸配列及びアミノ配列の具体例は、関連部分は参照により本明細書に組み込まれ、特に、生物が一致する表及び特定の配列が本発明で使用され得る米国特許第6,541,011号明細書に見ることができる。
【0032】
本明細書に開示される細菌抗原の例としては、例えば、百日咳毒素、糸状ヘマグルチニン、パータクチン、アデニル酸シクラーゼ及びその他の百日咳細菌抗原成分;ジフテリア毒素又はトキソイド等のジフテリア細菌抗原及びその他のジフテリア細菌抗原成分;破傷風毒素又はトキソイド等の破傷風細菌抗原及びその他の破傷風細菌抗原成分;Mタンパク質等の連鎖球菌抗原及びその他の連鎖球菌抗原成分;リポ多糖類等のグラム陰性桿菌細菌抗原及びその他のグラム陰性細菌抗原成分、ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65, heat shock protein65)、30kDa主要分泌タンパク質、抗原85A等の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)細菌抗原及びその他の結核菌抗原成分;ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)の抗原成分;ニューモリシン、肺炎球菌莢膜多糖等の肺炎球菌細菌抗原及びその他の肺炎球菌細菌抗原成分;莢膜多糖類等のインフルエンザ菌(haemophilus influenza)細菌抗原及びその他のインフルエンザ菌細菌抗原成分;炭疽菌防御抗原及びその他の炭疽菌抗原成分等の炭疽菌抗原;rompA等のリケッチア細菌抗原及びその他のリケッチア細菌抗原成分等の細菌抗原が挙げられる。本明細書に記載の細菌抗原には、髄膜炎菌(neisseria meningitidis);肺炎球菌(streptococcus pneumoniae);淋菌(neisseria gonorrhoeae);サルモネラ血清型チフス;赤痢菌;コレラ菌(vibrio cholerae);デング熱;脳炎;日本脳炎;ライム病;ペスト菌(yersinia pestis)等のその他のいかなる細菌抗原、マイコバクテリア抗原、マイコプラズマ抗原、リケッチア抗原又はクラミジア抗原も含まれる。
【0033】
本発明で使用する真菌抗原の例としては、例えば、カンジダ真菌抗原成分;熱ショックプロテイン60(HSP60)等のヒストプラズマ真菌抗原及びその他のヒストプラズマ真菌抗原成分;莢膜多糖類等のクリプトコッカス真菌抗原及びその他のクリプトコッカス真菌抗原成分;スフェルール抗原等のコクシジオデス真菌抗原及びその他のコクシジオデス真菌抗原成分;及びトリコフィチン等の白癬菌抗原及び他のコクシジオイデス真菌抗原成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明で使用する原虫抗原及びその他の寄生虫抗原の例としては、例えば、メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母細胞/配偶子表面抗原、血液期抗原pf155/RESA等の熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)抗原及びその他のマラリア原虫抗原成分;SAG-1、p30等のトキソプラズマ抗原及びその他のトキソプラズマ抗原成分;グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、パラミオシン等の住血吸虫抗原及びその他の住血吸虫抗原成分;gp63、リポホスホグリカン及びその関連タンパク質等の森林型熱帯リーシュマニア(leishmania major)及びその他のリーシュマニアの抗原並びにその他のリーシュマニア抗原成分;並びに75~77kDa抗原、56kDa抗原等のクルーズトリパノソーマ(trypanosoma cruzi)抗原及びその他のトリパノソーマ抗原成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明で使用する腫瘍抗原の例としては、例えば、CEA、前立腺特異抗原(PSA, prostate specific antigen)、HER-2/neu、BAGE、GAGE、MAGE1~4、6及び12、MUC(Mucin)(例えば、MUC-1、MUC-2等)、GM2及びGD2ガングリオシド、ras、myc、チロシナーゼ、MART(メラノーマ抗原)、Pmel17(gp100)、GnT-VイントロンV配列(N-アセチルグルコアミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺 Ca psm、PRAME(メラノーマ抗原)、ベータカテニン、MUM-1-B(メラノーマ遍在性変異型遺伝子産物)、GAGE(メラノーマ抗原)1、BAGE(メラノーマ抗原)2~10、c-ERB2(Her2/neu)、エプスタイン・バーウイルス由来核抗原(EBNA, Epstein-Barr Virus nuclear antigen)1~6、gp75、ヒトパピローマウイルス(HPV, human papilloma virus)E6及びE7、p53、肺抵抗性タンパク質(LRP, lung resistance protein)、Bcl-2及びKi-67が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、免疫原性分子は、自己免疫疾患の開始及び/又は伝播に関与する自己抗原であり得、その病態は主に、関連する標的とする器官、組織又は細胞が発現しているCII、SLE又はMG等の分子に特異的な抗体の活性によるものである。そのような疾患では、関連する自己抗原に対する進行中の抗体媒介性(すなわち、Th1/Th17型)免疫応答を、細胞性(すなわち、Th2型)免疫応答に向けることが望ましい場合がある。あるいは、関連する自己免疫疾患を持たないが、それに対して感受性があると疑われる対象において、適切な自己抗原に対するTh2応答を予防的に誘導することによって、自己抗原に対するTh1/17応答の立ち上がりを予防したり、自己抗原に対するTh1/17応答のレベルを低下させたりすることが望ましい場合がある。使用し得る自己抗原には、(a)SLEに関しては、スミスタンパク質、RNPリボ核タンパク質並びにSS-Aタンパク質及びSS-Bタンパク質;及び(b)MGに関しては、アセチルコリン受容体が含まれるが、これらに限定されない。1又は2種類以上の自己免疫応答に関与するその他の抗原の例としては、例えば、II型コラーゲンタンパク質/ペプチド、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG, myelin oligodendrocyte glycoprotein)、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、テストステロン、成長ホルモン、プロラクチン等の内因性ホルモン及びその他のホルモンが挙げられる。
【0036】
本発明で使用する自己免疫疾患、アレルギー及び移植片拒絶に関与する抗原の例としては、例えば、糖尿病、真性糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷反応によるアレルギー応答、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、らい病反転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音性難聴、再生不良性貧血、純赤血球貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンスジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、クローン病、バセドウ病眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎及び間質性肺線維症が挙げられるが、これらに限定されない。自己免疫疾患に関与する抗原の例としては、II型コラーゲン、II型コラーゲンペプチド(CII250-270)、プロテオグリカン、シトルリン化ペプチド抗原、ビメンチン、フィブリノーゲン、α-エノラーゼ、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ-4、インスリン、膵島抗原2(IA2, islet antigen 2)、亜鉛トランスポーター8(ZnT8)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP, islet specific glucose-6-phosphatase catalytic subunit related protein)、クロモグラニンA(ChgA)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP, islet amyloid polypeptide)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65, glutamic acid decarboxylase65)、天然DNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体成分、サイログロブリン及び甲状腺刺激ホルモン(TSH, thyroid stimulating hormone)受容体が挙げられる。アレルギーに関与する抗原の例としては、スギ花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ライグラス花粉抗原等の花粉抗原、イエダニ等の昆虫由来抗原(すなわち、Der p1、Der p2、LTN-DP2-1、LTN-DPE-1)、ゴキブリ抗原(すなわち、Bla g2)、ネコ抗原(すなわち、Fel d1)、イヌ抗原(すなわち、Can f1)等の動物由来抗原、組織適合性抗原、ピーナッツ抗原(Ar1 h1、Ara h2、Ara h3、Ara h6)、乳抗原(すなわち、Bos d11、Bos d4、Bos d6、Bos d8)、卵タンパク質(すなわち、Gal d2、Gal d3、Gal d4)、エビ抗原(すなわち、トロポミオシン)、ナッツ類(すなわち、ヘーゼルナッツCor a 9、アーモンドPru du6)、マメ類(すなわち、大豆 Gly m6)等の食物アレルゲン及びペニシリン、セファロスポリン等の抗生物質並びにその他の治療薬(インスリン、エピネフリン等)が挙げられる。移植片拒絶に関与する抗原の例としては、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓及び神経移植片成分等の、移植片のレシピエントに移植される移植片の抗原成分が挙げられる。抗原は、自己免疫疾患の治療に有用な改変されたペプチドリガンドであってもよい。抗原は、呼吸器アレルゲン(花粉、イエダニ、昆虫等及びその他のもの)、食物アレルゲン(ピーナッツ、カシューナッツ、クルミ、大豆、貝類等及びその他のもの)、毒(蜂毒等)及びその他のアレルゲンからの抽出物等のアレルギー原因物質からの粗抽出物又は精製した抽出物であり得る。
【0037】
本明細書で用いるとき、「沈着する、沈着物(deposit)」、「貯留所(depot)」、「沈着物、沈着(deposition)」の語は、活性剤が、隣接する沈着物から間隔を置いて分離された1又は2以上の沈着物の形態でフロス上に配置されることをいう。
【0038】
本明細書で用いるとき、「エピトープ」の語は、病原体のDNA又はRNAによってコードされる多数の病原体ポリペプチドのうちのいずれかの中に位置するエピトープに類似した1次、2次又は3次構造を含むペプチド又はタンパク質抗原及び/又は免疫原性のあるアレルゲンのことをいう。
【0039】
抗原及び/又はエピトープはペプチド、タンパク質及びこれらの一部に限定されず、遺伝子、プラスミド、ベクター(ウイルス性、細菌性及び非ウイルス性)、DNA、RNA、CRISPR分子、mRNA、siRNA又はその他のヌクレオチドを個別に又は組み合わせて含み得る。薬学的に許容される担体及び製剤は、これらの分子を安定化するか、これらの分子の機能を強化するか、又は徐放を提供するために使用され得る。
【0040】
本明細書で用いるとき、「薬学的に許容される担体」の語は、それが投与される対象(例えば、ヒト及びペット(イヌ、ネコ、ウシ、ブタ又はその他の家畜、さらには非家畜化動物等))に悪影響を引き起こさない担体のことをいう。適切な薬学的に許容される担体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド等及びこれらの組み合わせの1又は2以上が挙げられる。加えて、所望により、予防注射/ワクチンは、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤及び/又はワクチンの有効性を強化するアジュバント等の補助物質を少量含有することができる。
【0041】
効果的であり得るアジュバントの非限定的な例としては、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、MTP-PE及び細菌から抽出された3つの成分を含有するRIBI、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート及び、例えば2%スクアレン/Tween80エマルション中の細胞壁骨格が挙げられるが、これらに限定されない。STINGアゴニスト(例えば、2’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2 (Rp,RP)、c-di-GMP、CL401、CL413、CL429、Flagellin、Imiquimod、LPS-EB、MPLA、ODN 1585、ODN 1826、ODN2006、ODN2395、ODN 1018、pam3CSK4、poly(I:C) 、R848、TDB)。アジュバントのその他の例としては、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA, dimethyldioctadecylammonium bromide)、完全、不完全フロイントアジュバント、QuilA、天然ポリマー(すなわち、ポリ-γ-グルタミン酸、キトサン、マンナン、リポマンナン、レンチナン、デキストラン)、合成ポリマー(すなわち、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、コポリマー、ブロックポリマー、ポリホスファゼン、高分子電解質、ポリ無水物、ポリメタクリレート、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン、カチオンポリマー)が挙げられる。加えて、リンホカイン(例えば、IFN-ガンマ、IL-2及びIL-12)等の免疫調節物質又はpolyI:C等の合成IFN-ガンマインデューサーを本明細書に説明されたアジュバントと組み合わせて使用することができる。
【0042】
本明細書で用いるとき、「対象」の語はヒト、ペット(イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ若しくはブタ等)又はその他の家畜又はシカ、バッファロー若しくは野生のウマ等の非家畜化動物のことをいう。
【0043】
接合上皮は歯肉溝の底にあり、健康な歯茎では深さ1~2mmである。さらに、歯頸部窩洞の根尖組織は歯を堅く抱えているため、1mm未満、及び好ましくは500μm未満の薄い器具のみが窩洞内に入ることができる。したがって、歯肉溝への物質の投与は簡単ではない。この課題を克服するために、本発明は、デンタルフロス上に沈着させた抗原及び/又はアレルゲンを使用する。デンタルフロスは毎日何百万もの人々が歯肉溝を掃除するために使用しており、本発明は、接合上皮を介した取り込みのために歯肉溝を標的として沈着させるために、デンタルフロスを抗原/アレルゲンでコーティングできることを説明している。デンタルフロスは、非侵襲的で、無痛で、そして自宅で快適に自己投与し得るというさらなる利点を提供する。デンタルフロスは、接合上皮に物質を送達するという最終目標を持つシステムの非限定的な例として解釈されるべきである。テープ、フィルム、ストリップ、紐、糸、縫合糸、ゲル、ヒドロゲル、ポリマー、粘性物質、粒子又はこれらの組み合わせ等の、接合上皮を標的とするのを助けるためにデバイスを歯肉溝に進入させるのを可能にし、許可するという原理に基づくその他のアプローチは本発明に含まれる。これらのシステム及びデバイスを歯肉溝に挿入させることができるが、これらを溝の中に進入させるよりもむしろ歯肉溝の根尖側に配置することもでき、その後、目的の分子はシステム及びデバイスから歯肉溝に拡散し、最終的には接合上皮に到達して組織に浸透する。歯肉溝の根尖側に配置されるこれらのシステムは、歯肉溝への分子の拡散を最大化しながら、外に出てしまう分子の損失や、口腔内全体への分子の損失を最小限に抑えるように設計され得る。そのようなアプローチの1つでは、送達システムは、歯肉溝の反対側に面する側を不透過性層でコーティングすることができる。
【0044】
フロスをコーティングするために、本発明者らは、ピペットを使用してフロス上に物質を塗布する単純な手動コーティング方法を開発した。彼らは、予備的なコーティング実現可能性調査の後、5種類のフロスの中からOral-B(登録商標)グライドプロヘルスオリジナルフロスを選択した。この方法を使用して、本発明者らは、タンパク質、小分子、ペプチド、ナノ粒子、一本鎖DNAオリゴヌクレオチド及びインフルエンザウイルスを含む種々の分子でフロス上をコーティングすることができた。次に、本発明者らは、マウスの歯をフロッシングすることの実現可能性を確立した。本発明者らは、アクセスが容易であることから、下の前門歯をフロッシングすることを選択した。フロッシングはマウスを麻酔下に置いたまま行った。図はフロッシング前、中、後の門歯を示す。蛍光実体顕微鏡による画像化により、コーティングされた蛍光オボアルブミン(Ova)が接合上皮内へ入り、そこを通過して30分以内に歯肉組織に進入することが確認された。本発明者らは、フロス上にコーティングされたOva(M1)及びフロッシング後にフロス上に残ったOva(M2)を定量することによって、歯肉溝に送達されたOvaの割合を決定した。n=4のマウスについて、送達効率([M1-M2]/M1×100)は約75%であった。
【0045】
抗原又はアレルゲンが接合上皮に投与されたときに生み出される免疫応答。本発明者らはフロスをOva(Ova25μg+/-CpG25μg)、ピーナッツ抽出タンパク質(PE)(PE25μg+/-CpG25μg)又は不活化インフルエンザウイルス(A/PR/8/34(H1N1))(PR8 25/10μg)でコーティングし、Ova及びPEについては週1回で5回、インフルエンザウイルスについては隔週で3回投与した。56日目(0日目は初回投与日を意味する)に採取された血清サンプルは、Ova、PE及びPR8に対する全身性IgG応答への強い刺激を明らかに示し、糞便分析では粘膜IgA及びIgGの立ち上がりが示された。CpGの使用による応答、特にIgG2aが有意に高かったことより、CpGの明らかなアジュバント効果が見られた。
【0046】
接合上皮への投与が、アレルギー反応を示す可能性があるIgE産生を引き起こすかどうかを判定する。Ova及びPEに特異的な血清IgE抗体は有意ではなく、フロスのみ(コーティングされていない)を与えられたマウスと同等であり、フロスに基づいて接合上皮を標的とすることはアレルギーを誘発しないことを示唆した。
【0047】
接合上皮に投与されたインフルエンザワクチンには防御効果がある。ワクチンとして不活化PR8が与えられたマウスを、50%致死量×3でチャレンジした。図は、マウスが防御され、最小限の体重減少が見られたことを示す。
【0048】
本発明を用いて、食物アレルギーモデルとしてピーナッツ又は気道アレルギーモデルにおいてOvaに感作したマウスの治療におけるピーナッツ抽出物(PE)又はOvaを含むフロスの有効性を判定することができる。どちらのアレルギーモデルでも、舌下免疫療法(SLIT)をポジティブコントロールとして使用できる。最近、FDAは花粉アレルギーSLIT用の舌下錠剤も承認した。舌下の上皮の透過性はあまり高くないため、SLITでは舌下に大量のアレルゲンを配置する必要がある。ピーナッツ免疫療法では、ピーナッツ感作マウスに、PE5μgを、CpGなし(Floss:PE)又はCpG5μgあり(Floss:PE+CpG)で3週間にわたって9回与えた。2つのコントロール群を追加した:1つ目の群は治療を受けなかった感作マウス(無治療)で、2つ目の群は経口ピーナッツチャレンジを与えた無感作マウス(チャレンジのみを行った無感作マウス)であった。マウスにPE500μgを腹腔内投与してチャレンジし、治療の有効性を評価した。アレルギー症状の臨床スコアがより低かったこと、MCPT-1マーカーによる定量化によるとマスト細胞脱顆粒がより低減していたこと、そしてチャレンジ後のマウス腸組織への好酸球浸潤がより低下していたことによって示されるように、フロスは無治療のマウスと比べてより優れた減感作を実現し、必要な投与回数はより少なく(9)、必要な用量はより低かった。予想通り、無治療のピーナッツ感作マウスでは、腸組織内のMCPT-1及び好酸球が有意に増加した。チャレンジのみを行った無感作マウスは、チャレンジ後に異常な測定値を示さなかった。同様に、Ova気道アレルギーモデルについては、Ova感作マウスに、OVA25μgをCpGなし(Floss:Ova)又はCpG25μgあり(Floss:Ova+CpG)で3週間で9回投与した。コントロール群を追加した:治療を受けなかった感作マウス(無治療)。マウスに1日当たりOva50μgを3回鼻腔内投与することによりチャレンジした。フロス群は炎症細胞(好酸球及び好中球)がより少なく、肺の粘液もより少なかった。コントロールの無治療群は、有意な炎症細胞及び粘液産生を示した。気道アレルギー応答の顕著な特徴である粘液は、フロス群ではより低かったが、これは、より低い用量でより良い応答が刺激されたことを示唆している。
【0049】
細胞応答についての洞察を得るために、Ovaを投与されたマウスの脾細胞をインビトロでOvaで再刺激した(注:これらのマウスは気道アレルギーではなくワクチン接種研究に属していた)。サイトカインプロファイルは、Ova+CpGを与えられたマウスでTH1及びTH2の両方のエフェクター応答が生まれていることを示した。再刺激なしのこれらの同じマウスの骨髄細胞は、Ova特異的IgGを産生し、PE+CpGを与えられたマウスも同様であった(食物・気道アレルギーではなくワクチン研究)。これは、応答が全身的であり局所的なだけではないことを示しており、記憶応答の生成を示唆しているが、それを確認するにはさらなる研究が必要である。
【0050】
これらの研究は、フロスをコーティングすることができ、全身性及び粘膜性の免疫応答を生み出す接合上皮を標的とするためにコーティングされたフロスを使用することができることを実証している。この投与方法はまた、マウスを致死性のインフルエンザウイルスチャレンジから防御し、気道アレルギー及びピーナッツ食物アレルギーのマウスモデルにおいて減感作を示した。
【0051】
本発明者らは、ピペットチップを使用して、抗原/アレルゲンを含有する溶液を用いてフロスを手動でコーティングした。コーティングの再現性を高め、送達効率を高めるために、コンピュータ制御されたリニアステージ及び液体吐出システムを使用した自動コーティングアプローチを使用することができる。フロスコーティング機を使用すると、コーティング液バイアルを交換するだけで、フロスの特定の長さをいかなる抗原又はアレルゲンでもコーティングすることができる。コーティングのその他の選択肢としては、浸漬コーティング又はスプレーコーティング又はインクジェット印刷又はピペットに基づくコーティング又はカートリッジ印刷又はこれらの組み合わせが挙げられる。コーティングには、コーティング及び送達効率を向上させるために増粘剤又は表面張力低下剤等の賦形剤が必要な場合がある。その上、分子の安定性を向上させるために、分子を乾燥力から防御することで知られるトレハロース及びその他の物質を使用することができる。本明細書に示すように、ウイルス粒子でコーティングすることができ、したがって、免疫応答を強化する可能性があることから、ナノ粒子及びマイクロ粒子でコーティングすることも可能である。送達効率を評価したり、イメージングを使用してコーティングを特徴付けたりすることができる。
【0052】
ピーナッツアレルゲン免疫療法の新しいパラダイムを発展させる。口は食物が体と最初に接触する場所であり、咀嚼された食物の粒子が歯肉溝に進入し、その後接合上皮を通過して組織に進入する可能性がある。したがって、歯肉の免疫ネットワークが寛容性の維持に主要な役割を果たしている可能性があることは驚くべきことではない。実際、ピーナッツアレルゲン免疫療法にコーティングされたフロスを使用した概念実証研究では、感作が減少した。このアプローチは、ピーナッツ及びその他の食物アレルゲンに対するアレルゲン免疫療法の迅速な開発を実現する。フロスは、例えば、接合上皮を標的とすることによりピーナッツアレルゲン免疫療法にも使用できる。ピーナッツアレルゲンの用量、フロッシングの頻度、アジュバントの使用、食作用及び抗原処理を強化するための粒子の使用及び遅延放出コーティングの影響が免疫療法の観点から研究される予定である。
【0053】
歯肉溝への投与は、歯の萌出後にのみ行うことができ、ヒトの場合、萌出は6~12か月で起こる。提案されているパラダイムは乳児が約1歳になるまで小児用ワクチンの主流にはならないかもしれないが、新しいパラダイムによってもたらされる増幅された免疫応答は、確実にワクチン開発に影響を与え、情報を提供し、それががん及びHIVワクチンを助け、そして安全のために後年に治療されるアレルギー及び高齢期に現れることが多い自己免疫疾患に対してより優れた治療を提供する。
【0054】
図1A~
図1Fは免疫処置の口腔経路を示す:(
図1A)ヒトの口。(
図1B)歯肉溝及び接合上皮(JE)の構造。(
図1C)歯肉溝の接合上皮への活性剤の送達及び時間の経過に伴う接合上皮及び隣接組織への活性剤の拡散、(
図1D)フロスにコーティングされた抗原分子の送達及びマウス歯茎組織に対するフロッシングの効果並びに(
図1E)ローダミン結合オボアルブミン(Ova)の歯茎組織内での拡散。フロッシングは、各門歯に対し、抗原を沈着させたフロスを歯の周囲に置き、コーティングされた抗原が歯茎縁に沈着するように10回フロッシングすることで行う。(
図1F)フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合オボアルブミン(Ova)でコーティングされたフロスの送達効率。
【0055】
感染性病原体に対するワクチン接種のために歯肉溝の接合上皮を標的とする。
【実施例1】
【0056】
フロスを介したオボアルブミン(Ova)の接合上皮(JE)への送達はマウスにおいて強力な全身性及び粘膜性の抗体応答を誘導する(ワクチンの観点から見る)。
【0057】
図2A~
図2Gはフロスを介したワクチン送達及び免疫応答の特徴付けを示す。(
図2A)(1)コーティングされたフロスの実体顕微鏡写真及び
図2A(2)マウスにおけるフロッシング手順。(
図2B)ワクチン接種スケジュール:歯茎を抗原(オボアルブミン(Ova)、モデル抗原)を沈着させたフロスでフロッシングすることによってBalb/cマウス(n=5)をワクチン接種した。フロスはOva25μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)25μgの沈着物を含んでおり、マウスを毎週、合計で最大4週間ワクチン接種した。いかなるコーティングもされていないフロスで処置したマウスをコントロールとして扱った。全身性免疫応答:28日目及び56日目にマウスから採血し、血清抗Ova抗体応答(1:12500又は1:2500希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。
図2(C)(1)~(3)56日目の抗Ova抗体応答-
図2(C)(1)IgG、
図2(C)(2)IgG1及び
図2(C)(3)IgG2a。個々のマウス血清を分析に使用した。
図2(D)(1)~(3)は記憶免疫応答を示す:ワクチン接種したマウスを安楽死させ、骨髄細胞を採取した。細胞を、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を補充したRPMI培地を用いて、1ウェル当たり1×10
6細胞の濃度で3連で培養した。培養細胞の上清を96時間後に回収し、抗Ova応答を分析した。
図2(D)(1)~(3)骨髄細胞における抗Ova応答-
図2(D)(1)IgG、
図2(D)(2)IgG1、
図2(D)(3)IgG2a。この結果は、応答は局所的及び全身的であるだけでなく、個体が同じ抗原(Ag)への将来の曝露に対してより適切に備えられるように記憶応答を誘発できたことを示唆している。
図2(E)(1)~(4)は粘膜免疫応答を示す。56日目に、ワクチン接種したマウスとフロスのみで処置したマウスから糞便、鼻洗浄液及び肺洗浄液を採取した。抗Ova
図2(E)(1)糞便中IgG(1:5希釈)、
図2(E)(2)糞便中IgA(1:5希釈)、
図2(E)(3)鼻洗浄液中IgG(無希釈)及び
図2(E)(4)肺洗浄液中IgG(無希釈)。
図2(F)(1)~(2)フロスを介してワクチン接種したマウスの(1)血清中にも(2)骨髄中にも有意な量のIgEが検出されなかったことは、標的部位であるJEは送達されたAgに対して個体を感作しないことを示している。
図2(G)ワクチン接種したマウスを安楽死させ、脾細胞を採取した。10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を補充したRPMI培地中、1ウェル当たり1×10
6細胞の濃度で細胞を3連で培養し、Ova(200μg/ml)で再刺激した。培養細胞の上清を96時間後に回収し、サイトカイン値を分析した。
図2(G)は脾細胞培養におけるサイトカイン値を示し、
図2(G)(1)はIFN-ガンマ、そして
図2(G)(2)はIL-4を示す。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて血清希釈が異なる群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【実施例2】
【0058】
フロスを介した不活化(Inac.)インフルエンザウイルスの接合上皮(JE)への送達は強力な全身性抗体応答を誘導し、マウスを致死的チャレンジから防御する。
【0059】
図3A~
図3Cはインフルエンザワクチン接種のために沈着させたフロスを示す。
図3(A)ワクチン接種スケジュール:Balb/cマウス(n=10)に、フロスにコーティングされた10μg又は25μgの不活化(Inac.)ウイルスを、0、14及び28日目にそれぞれ1回ずつ、計3回ワクチン接種した。56日目にマウスから採血し、抗不活化ウイルス免疫応答(1:800又は1:50希釈)をELISAで分析した。
図3(B)(1)~(3)56日目の血清抗不活化ウイルス
図3(B)(1)IgG、
図3(B)(2)IgG1、
図3(B)(3)IgG2a抗体応答。ウイルスチャレンジ:56日目に、マウスに3×LD
50(50%致死量)のA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスをチャレンジした。個々のマウス血清を分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001.
図3(C)(1)~(2)マウスの体重の変化と感染の重症度を毎日観察した。
図3(C)(1)体重の変化率、
図3(C)(2)ワクチン接種したマウスの感染後のパーセント生存率。各群においてn=5マウスである。
【実施例3】
【0060】
フロスを介したM2e金ナノ粒子(AuNP)結合体に基づく普遍的なインフルエンザワクチンの接合上皮(JE)への送達は強力な全身性抗体応答を誘導し、マウスを致死的チャレンジから防御する。
【0061】
図4A~
図4Dはフロスを介した、金ナノ粒子(AuNP’s)結合ペプチド(M2e)にさらにアジュバント(CpG)を加えたものからなるワクチン製剤であるM2e-AuNP+CpG(MAC)ワクチンの送達及び免疫応答の特徴付けを示す。
図4(A)(1)AuNP’s56μg、M2e8.1μg及びCpG20μg(1回分の用量)を含有するM2e-AuNP+CpGでコーティングされたフロスの実顕微鏡写真及び
図4(A)(2)マウスのフロッシング手順。
図4(B)ワクチン接種スケジュール:歯茎をワクチン製剤[M2e-AuNP+CpG(MAC)]でコーティングされたフロスでフロッシングするか、ワクチン製剤[M2e-AuNP+CpG(MAC)]を舌下に置く[舌下免疫療法(SLIT)]ことにより、Balb/cマウス(n=10)にワクチン接種した。フロスにコーティングさたか、SLITを介して送達されたワクチン製剤(MAC)は、AuNP’s56μg、M2e8.1μg及びCpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)20μgからなり、0日目と21日目にマウスにワクチン接種した。治療を受けなかった無感作マウスをコントロールとして扱った。全身性免疫応答:21日目及び42日目にマウスから採血し、血清抗M2e抗体応答(1:6400希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。
図4C(1)~(3)42日目の血清抗M2e抗体応答-
図4C(1)IgG、
図4C(2)IgG1及び
図4C(3)IgG2a。個々のマウス血清を分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001。ウイルスチャレンジ。(
図4D(1)~(2))43日目に、マウスに3×LD
50(50%致死量)のA/California/07/2009 H1N1ウイルスをチャレンジした。マウスの体重の変化と感染の重症度を毎日観察した。
図4D(1)体重の変化率、
図4D(2)ワクチン接種したマウスの感染後のパーセント生存率。各群においてn=5マウスである。
【0062】
アレルゲン特異的免疫療法のために歯肉溝の接合上皮を標的とする。
【実施例4】
【0063】
フロスを介したピーナッツ抽出物(PE)の接合上皮(JE)への送達はマウスにおいて強力な全身性及び粘膜性の抗体応答を誘導する(ワクチンの観点から見る)。
【0064】
図5A~
図5Eはフロスを介したワクチン送達及び免疫応答の特徴付けを示す。(
図5A)ワクチン接種スケジュール:歯茎を抗原(ピーナッツ抽出物(PE))を沈着させたフロスでフロッシングすることによってBalb/cマウス(n=5)にワクチン接種を行った。フロスにはPE25μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)25μgが沈着しており、マウスに毎週、合計で最大4週間ワクチン接種した。いかなるコーティングもされておらず、沈着物も含んでいないフロスで処置したマウスをコントロールとして扱った。全身性免疫応答:28日目及び56日目にマウスから採血し、血清抗PE抗体応答(1:12500希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析した。
図5B(1)~(3)56日目の血清抗PE抗体応答-
図5B(1)IgG、
図5B(2)IgG1及び
図5B(3)IgG2a。個々のマウス血清を分析に使用した。(
図5C(1)~(3))記憶免疫応答:ワクチン接種したマウスを安楽死させ、骨髄細胞を採取した。細胞を、10%ウシ胎児血清及びペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を補充したRPMI培地を用いて、1ウェル当たり1×10
6細胞の濃度で3連で培養した。培養細胞の上清を96時間後に回収し、抗PE応答を分析した。抗PE
図5C(1)IgG、
図5C(2)IgG1、
図5C(3)IgG2a。この結果は、応答は局所的及び全身的であるだけでなく、個体が同じ抗原(Ag)への将来の曝露に対してより適切に備えられるように記憶応答を誘発できたことを示唆している。(
図5D)粘膜免疫応答。56日目に、ワクチン接種したマウスと無感作マウスから糞便、鼻洗浄液及び肺洗浄液を採取した。抗PE
図5D(1)糞便中IgG(1:5希釈)、
図5D(2)糞便中IgA(1:5希釈)、
図5D(3)鼻洗浄液中IgG(無希釈)及び
図5D(4)肺洗浄液中IgG(無希釈)。(
図5E(1)~(2))フロスを介してワクチン接種したマウスの
図5E(1)血清中にも
図5E(2)骨髄中にも有意な量のIgEが検出されなかったことは、標的部位である接合上皮は、送達されたAgに対して個体を感作しないことを示している。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて血清希釈が異なる群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及び****p<0.0001。
【実施例5】
【0065】
フロスを介したピーナッツ抽出物(PE)の接合上皮(JE)への送達はマウスにおいて強力な全身性抗体応答を誘導する(治療計画)。「食物アレルギー」の免疫療法のためにJEを標的とする。
【0066】
図6A~
図6Dはピーナッツアレルゲン免疫療法のスケジュールを示す。(
図6A)免疫療法スケジュール:Balb/cマウス(n=5)を経口経路で、1週間の間隔を設け、5週間連続で感作した[ピーナッツ抽出物(PE)1mg+コレラ毒素(CT)15μg]。次いで、抗原でコーティングされたフロスでフロッシングすることによりマウスにワクチン接種した。フロスはPE5μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)5μgでコーティングされており、マウスを週3回、合計で最大3週間ワクチン接種した。感作後いかなる治療も受けなかったマウスをコントロールとした(無治療)。ワクチン接種後(PV)10日目にマウスから採血した。ワクチン接種から8週間後、マウスにPEアレルゲン(500μg)を腹腔内経路(IP)でチャレンジし、次いでマウスを安楽死させ、種々の組織を採取した。(
図6B(1)~(3))血清抗PE抗体(1:12500希釈)を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で確認した。抗PE 6B(1)IgG、
図6B(2)IgG1及び
図6B(3)IgG2a ワクチン接種後10日目の抗体応答。個々のマウス血清を分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析検定を用いて血清希釈が異なる群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001及びns:有意差なし。PEはアナフィラキシーを誘発した。(
図6C)(1)PEによるIPチャレンジ後の血漿MCPT-1値。腸組織の組織学的分析。(
図6D)ワクチン接種から8週間後、マウスにPEアレルゲン(500μg)を腹腔内経路でチャレンジした。次いでマウスを安楽死させ、小腸を近位、中間及び遠位端から採取し、固定し、脱水し、切断のためにパラフィンワックスに包埋した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色で染色し、組織診断のために切片化した。
図6D(1)異なる処置群のマウスから得られたそれぞれの切片でカウントされた好酸球の数。
図6D(2)好酸球浸潤を示す矢印が付いた、H&E染色された腸の明視野像。個々のマウスサンプルを分析に使用した。データを平均±SDとして表す。1元配置分散分析を用いて群間を比較した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001及びns:有意差なし。
【実施例6】
【0067】
フロスを介したオボアルブミン(Ova)の接合上皮(JE)への送達はマウスにおいて強力な全身性抗体応答を誘導する(治療計画)。「気道アレルギー」の免疫療法のためにJEを標的とする。
【0068】
図7A~
図7Dは気道アレルゲン免疫療法を示す。(
図7A)免疫療法スケジュール:Balb/cマウス(n=5)を、1週間の間隔を設け、2回腹腔内(IP)注射(Ova25μg+ミョウバン2mg(アジュバント))することにより感作した。感作後(PS)10日目に、マウスに鼻腔内経路(IN)でOva(50μg)を3日間連続でチャレンジし、気道炎症を発症させた。次いで、抗原を沈着させたフロスでフロッシングすることによりマウスにワクチン接種した。フロスはOva25μg+/-CpG(一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドアジュバント)25μgでコーティングされており、マウスに週3回、合計で最大3週間ワクチン接種した。感作後いかなる治療も受けなかったマウスをコントロールとした(無治療)。ワクチン接種後10日目にマウスから採血した。ワクチン接種後28日目に、マウスに鼻腔内経路(IN)でOvaアレルゲン(50μg)を3日間連続でチャレンジし、次いでマウスを安楽死させ、種々の組織を採取した。全身性免疫応答:(
図7B(1)~(4))酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で分析したワクチン接種後10日目の血清抗Ova
図7B(1)IgG、
図7B(2)IgG1、
図7B(3)IgG2a及び
図7B(4)IgE抗体応答(1:12500又は1:500又は1:20希釈)。(
図7C)チャレンジ後の肺洗浄液分析。次いでマウスを安楽死させ、肺洗浄液の粘膜分泌物を採取した。肺洗浄液中の
図7C(1)好酸球及び
図7C(2)好中球の細胞数-細胞をディフ-染色キットで染色し、共焦点顕微鏡で細胞を観察することによりカウントした。肺の組織学的分析:(
図7D)次いでマウスを安楽死させ、肺を摘出し、固定し、洗浄し、組織診断のために切片化した。組織切片を、粘液沈着を染色するために過ヨウ素酸-シッフ(PAS)で染色するか、コラーゲン沈着を染色するためにトリクロームブルー(TCB)で染色した。PAS染色肺(上のパネル)とTCB染色肺(下のパネル)の代表的な明視野像。上のパネルの矢印は粘液沈着、下のパネルの矢印はコラーゲン沈着を指し示している。
【実施例7】
【0069】
デンタルフロスに沈着させる方法。
【0070】
市場で入手可能なフロスの大多数は、物質(ワックス、香味料等)の連続的なコーティングでコーティングされている。現在、フロスの全長(フロスカートリッジ中で数百フィート)がコーティングされている。これらのコーティングは適切には特徴付けられておらず、推奨用量からの逸脱が有害となったり、副作用を引き起こしたりする可能性があるワクチン又は薬/治療用分子の送達の場合などは、既知の量の薬剤を送達することが重要であるため、医療用途には使用できない。
【0071】
本発明の組成物及び方法は、流体の吐出による簡単な様式を介していかなる分子のコーティングにも対処する。この方法は、フロスの特定の長さを、フロスの特定の表面を、及び別個の位置にさえ、1又は2以上の活性剤/分子でコーティングするために使用することができる。また、必要に応じてこの方法を使用して両側をコーティングすることもできる。
【0072】
本発明は、デンタルフロスをコーティングする新規な方法を提供する。物質(例えば、合成分子又はポリマー、アミノ酸又はそのポリマー、ヌクレオチド又はそのポリマー、脂質、炭水化物、天然物質、抗原/アレルゲン/アジュバント/薬/これらの組み合わせ)を歯茎組織へ送達するために、フロスの表面にコーティングすることができる。送達は、例えば免疫応答、全身的効果又は局所的効果を調節するため等の使用目的を有し得る。フロスの表面は、フロスのより短い距離/長さ又はより長い距離/長さにわたって生物製剤を沈着させ(沈着方法では、フロスの単一の隣接した部分又はフロスの2又は3以上の別個の部分に、各沈着領域間に同じ又は異なる間隔を置いて沈着させる)(沈着方法は、フロス上に液滴を置くこと又はピペットを用いてフロス上で液滴を引きずって伸ばしてフロス上で一定の距離/長さに広げること又はスプレーコーティングすること又はインクジェット印刷すること又はピペットに基づいてコーティングすること又はカートリッジ印刷すること又はこれらの組み合わせを含む)、コーティングを乾かすことによってコーティングすることができる。本発明を実証するために、我々は、抗原/アレルゲン/ペプチド/マイクロ粒子/ナノ粒子/一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)を使用して有効性と概念実証を示した。様々な量の生物製剤をフロスの表面にコーティングすることができる。コーティングされた物質は、フロッシングという単純な動作によって歯茎組織内に容易に送達される。
【0073】
コーティングされたフロスを使用した医療用途の目的では、次の性質を有することが重要である:(a)ユーザーによる歯茎ポケットへの一貫した送達を可能にするために、コーティングはコーティングされたフロスの短い長さにわたって一貫している必要がある;(b)既知の量の製剤がフロス上にコーティングされている必要がある;及び/又は(c)コーティングは、意図した目的に使用されるまで表面に接着した状態でいるべきである。
【0074】
フロスは疎水性の素材(TEFLON(登録商標)又はNYLON(登録商標)等)で作製されていることが多く、コーティング溶液を使用してこれらの表面を濡らすのは困難である。難濡れ性のため、フロス上で連続的かつ均一なコーティングを達成することは困難である。コーティング溶液の作製には多くの異なる溶媒を使用することができるが、フロスにコーティングする必要がある生物学的物質には水が好ましく、水性のコーティング溶液をフロスにコーティングするのはさらに困難である。しかし、非水溶液も本発明で使用することができ、この場合、活性剤は水に溶けない(又は部分的に溶ける)溶媒中にあり、活性剤がフロス上に沈着し、溶媒は活性剤を残して蒸発する。
【0075】
連続的なコーティングを作製するのではなく、別個の液滴をフロス表面に沈着させることができる。そうすることで、コーティングを長さ全体に均一に広げる必要が少なくなり、再現可能なコーティング及びパターンを達成することができる。(1)液体吐出システム(手動又は自動又はこれらの組み合わせ)を使用してフロス上に滴下することができる。概念実証のために、手動による吐出を行った。(2)フロスの表面を(例えば、親水性ポリマーでコーティングすることによって、又は、例えば、酸素プラズマ処理によって、又はフロス表面の表面エネルギーを変化させてコーティング液をより広げやすくすることができるその他の従来の表面処理アプローチによって)親水性にすることができる。(3)フロスの表面にコーティング液を置く。一定の時間が経過し、十分な溶媒が蒸発した後、フロス上の液体を機械的に広げることができる。溶媒が幾分蒸発するとコーティング液の粘度が上がり、フロス上で広がる能力が向上する。
【0076】
フロスに沈着させるために吐出システム(手動、自動又はこれらの組み合わせ)を使用する利点:(1)スプレー/浸漬コーティングと比較して、沈着させる製剤の損失が少ない;(2)的確な量を沈着させられる;(3)複数の沈着用製剤を沈着させられる;及び/又は(4)水性の溶液であっても液滴として沈着させて均一なパターンを形成できるため、フロス表面の改変を回避できる。
【0077】
スプレーコーティング又は浸漬コーティングは物質の無駄な消費につながる可能性がある。対照的に、フロスの表面に別個に沈着させる方法を用いると、物質の損失がほとんどないか、最小限になる。フロス上に沈着させる場合、的確な制御(例えば、フロスの、長さ/直径が1mm未満等の小さなスポットに沈着させることが目標の場合)を達成するのは困難である。しかし、流体を吐出させれば、ナノリットル~ピコリットルの量であっても、フロスの既知の的確な位置に簡単に沈着させることができる。流体を吐出させれば、異なる沈着スポット間に小さな間隙を設けて異なる物質を沈着させることも簡単である。このレベルの正確さ及び的確さは、スプレー/浸漬コーティングでは難しい。このアプローチは、薬局、家庭又は臨床医のオフィスに設置することができる沈着デバイスの開発及び構築に使用できる可能性がある。さらに、提案した発明を使用すると、溶解度に対して必要な溶媒が異なる活性剤(例えば、1つの活性剤である抗原は溶媒として水を必要とする一方で、もう1つの活性剤であるアジュバントは有機溶媒を必要とする)をフロス上に沈着させることができる。
【0078】
図8は沈着能力を示し、フロスの片側のみになされた、短い長さ又はより長い長さの、単一領域への沈着又は複数の別個の領域への沈着としての、異なるパターンでのペプチド、ナノ粒子、タンパク質、オリゴヌクレオチド、微粒子のフロスへの沈着である。
【0079】
図9は花粉粒微粒子を含む沈着している水溶性物質及び非水溶性物質の沈着能力を示す。
【0080】
図10は沈着能力及び例として2つの異なる化合物の異なる沈着パターンを示す。製剤の1つは水中のNHS-ローダミン(蛍光試薬)結合オボアルブミン(タンパク質)であり(「A」と呼ぶ)、2つ目は水中の金ナノ粒子及びCpG(一本鎖DNA)結合M2eペプチドである(「B」と呼ぶ)。
【0081】
図11は複数の物質の沈着能力を示しており、ここでは、4つの明確に異なる部分として沈着した4つの異なる食品着色料(青、緑、黄、赤)を示す。
【0082】
図12はフロスの両側を異なる製剤でコーティングできるコーティング能力を示す。
【0083】
図13はフロスをコーティングする自動コーティング装置10の例を示す。自動コーティング装置10は、一次元又は二次元での移動を可能にする制御された直線運動ステージ14を含むスタンド12を含み、この実施形態では、フロス22上への液滴20の送達を制御するシリンジアセンブリ18が取り付けられた背面16を備えた二次元ステージを備えた状態を示す。
【0084】
図14はフロッサーシステムの設計の2つの例を示す。
【0085】
本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明のいかなる方法、キット、試薬又は組成物に関しても実施することができると考えられ、逆もまた然りである。さらに、本発明の組成物を使用して本発明の方法を成し遂げることができる。
【0086】
本明細書に説明される特定の実施形態は、本発明を限定するものとしてではなく、例として示されるものであると理解される。本発明の主要な特色は、本発明の範囲から逸脱することなく様々な実施形態において用いることができる。当業者は、本明細書に説明された特定の手順に対する数多くの同等物を認識し、又は日常的な実験以下のことを用いて上記同等物を確認することができる。そのような同等物は本発明の範囲に含まれると考えられ、請求項に含まれる。
【0087】
本明細書で言及された全ての出版物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者の技術水準を示すものである。全ての出版物及び特許出願は、個々の出版物又は特許出願がそれぞれ引用によって組み込まれるよう具体的に及び個別に示されているのと同じ程度まで、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0088】
請求項及び/又は明細書において「含む(comprising)」の語と共に使用されるとき、単語「a」又は「an」の使用は「1つ」を意味し得るが、「1又は2以上」、「少なくとも1つ」及び「1又は1を超える」の意味とも一致している。本開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持するものであるが、請求項における「又は」の語の使用は、代替物のみを指すように明確に示されない限り、又はその代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するように使用される。本出願全体を通じて、「約」の語は、値がデバイスの誤差の固有の変動、値を決定するために用いられる方法又は研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
【0089】
本明細書及び請求項で使用されるとき、単語「含む(comprising)」(並びに「comprise」及び「comprises」等のcomprisingのあらゆる形)、単語「有する(having)」(並びに「have」及び「has」等のhavingのあらゆる形)、単語「含む(including)」(並びに「includes」及び「include」等のincludingのあらゆる形)又は単語「含有する(containing)」(並びに「contains」及び「contain」等のcontainingのあらゆる形)は包括的である、又は制限がなく、追加の引用されていない要素又は方法工程を除外しない。本明細書で提供される組成物及び方法のいかなる実施形態でも、「含む(comprising)」は、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」と置き換えられもよい。本明細書で使用されるとき、「本質的に~からなる」という句は、指定された整数又は工程並びに請求に係る発明の個性又は機能に実質的に影響を与えないものを必要とする。本明細書で使用されるとき、「consisting」の語は、引用された整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/過程工程又は限定)又は整数群(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/過程工程又は限定)のみの存在を示すために使用される。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「又はこれらの組み合わせ」の語は、その語の前に列挙された項目の全ての順列と組み合わせのことをいう。例えば、「A、B、C又はこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABC:の少なくとも1つ、及び特定の文脈で順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCAB、の少なくとも1つを含むことを意図する。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等、1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含有する組み合わせが明示的に含まれる。当業者は、文脈から明らかでない限り、典型的に、いかなる組み合わせにおいても、項目又は用語の数は限定されないことを理解するであろう。
【0091】
本明細書で使用されるとき、限定なく、「約」、「実質的」又は「実質的に」等の近似値の単語は、そのように修飾した場合、必ずしも絶対的又は完全ではないと理解される状態をいうが、当業者にとっては、その状態が存在すると指定することを保証するのに十分近いものであると考えられる。どの程度まで記載が異なるかは、どの程度大きな変更を起こせるかにより、当業者であれば、変更後の特徴が、変更前の特徴の必要な特性及び能力を依然として有していると認識する。一般的に、しかし、前述の議論に従うと、「約」等の近似値の単語によって修飾された本明細書の数値は、記載された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動する可能性がある。
【0092】
その上、本明細書におけるセクションの見出しは、米国特許規則1.77の提言に従って、又はそれ以外では、本明細書の構成を分かりやすくするべく設けたものである。これらの見出しは、本開示から生じ得る請求項に定める発明を限定したり特徴付けたりするものではない。具体的には、例としてではあるが、見出しとして「技術分野」が設けられているが、本願の請求項は、いわゆる技術分野を説明するべくこの見出し以下に記載された言葉によって限定されるべきではない。さらに、「背景技術」のセクションにおける技術の説明は、当該技術を本開示におけるいかなる発明に対しても先行技術と自認したものと解されるべきではない。「発明の概要」もここに生じた請求項に定めた発明を特徴付けるものとして解釈されるべきではない。さらに、本開示において、単数形の「発明」に対するいかなる言及も、本開示において新規な点は1つのみであると議論するために用いられるべきではない。本開示から生じた複数の請求項の限定に基づき複数の発明が定められていてもよく、したがって、これらの請求項が発明及びその同等物を定義し、それにより、発明及びその同等物が保護される。全ての場合において、これら請求項の範囲は本開示に照らしてこれら自体の利点に基づいて考察されるべきであり、本明細書に定められた見出しによって限定されるべきではない。
【0093】
本明細書において開示及び請求された全ての組成物及び/又は方法は、本開示に照らして過度の実験を行わずに作製及び実行され得る。本発明の組成物及び方法を、好ましい実施形態の観点から説明したが、本発明の概念、主旨及び範囲を逸脱することなく、本明細書に説明された組成物及び/又は方法並びに方法の工程又は方法の一連の工程に変更を適用し得ることは、当業者にとって明白であろう。当業者に明白なそのような類似の代替品及び改変は、添付の請求項に定義された本発明の主旨、範囲及び概念に含まれると考えられる。
【0094】
特許庁及び本出願に基づいて発行された任意の特許の任意の読者が本明細書に添付の請求項を解釈するのを助けるために、出願人は、特定の請求項で「~するための手段」又は「~するための工程」という言葉が明示的に使用されていない限り、合衆国法典第35巻112条第6項、合衆国法典巻112条パラグラフ(f)又は同等物が本願の出願日に存在していることから、添付された請求項のいずれもが、これを行使する意図はないことを付記することを望んでいる。
【0095】
各請求項について、各従属項は、前の請求項が請求項の用語又は要素のための適切な先行詞を提供する限り、各それぞれの請求項について、独立請求項及び各先行する従属項の両方に従属することができる。
【国際調査報告】