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特表2024-530030非天然核酸リガンドを有効成分として含む三重陰性乳癌の治療のための薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】非天然核酸リガンドを有効成分として含む三重陰性乳癌の治療のための薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K48/00
A61P15/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K31/7088
A61K49/00
A61K51/04 300
A61K51/04 310
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507040
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 KR2022011719
(87)【国際公開番号】W WO2023014193
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104105
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522435595
【氏名又は名称】インターオリゴ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INTEROLIGO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】A-F902,66,Beolmal-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do 14058,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハンスル
(72)【発明者】
【氏名】イ,セナ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085HH01
4C085HH03
4C085KB92
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA65
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示の一側面は、ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin;HSA)と、K-RAS G12D変異タンパク質の両方に結合する新規の非天然核酸リガンドを有効成分として含む、三重陰性乳癌の治療のための薬学的組成物に関するものである。このような薬学的組成物は、治療が困難であった三重陰性乳癌の原発性または転移性癌に対して優れた治療効果を奏する。
一方、本開示の一側面は、ヒト血清アルブミンとK-RAS G12D変異タンパク質の両方に結合する新規の非天然核酸リガンドと、その用途に関するものであり、このような新規核酸リガンドは、配列番号11(GNA6AAG6CCGGA6GGCAGC666A6GC)[ここで、前記2番目の核酸Nはシスチジンまたはゲムシタビンであり、前記6と示された部分は、5-[N-(1-ナフチルメチル)カルボキサミド]-2'-デオキシウリジン(Nap-dU)]の核酸配列を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dに結合する非天然核酸リガンド、またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項2】
前記非天然核酸リガンドは配列番号11(GNA6AAG6CCGGA6GGCAGC666A6GC)の核酸配列を含むものである[ここで、前記2番目の核酸Nはシスチジンまたはゲムシタビンであり、前記6と示された部分は、5-[N-(1-ナフチルメチル)カルボキサミド]-2'-デオキシウリジン(Nap-dU)]、請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記組成物は一つ以上の前記非天然核酸リガンドを含む、請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記配列番号11の核酸配列を含む非天然核酸リガンドが配列番号1~11から選択された核酸配列からなる、請求項2に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記三重陰性乳癌は原発性または転移性の三重陰性乳癌である、
請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記三重陰性乳癌は癌細胞がK-RAS突然変異タンパク質を有する、
請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記三重陰性乳癌は癌細胞がK-RAS G12D突然変異タンパク質を有する、請求項6に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、これを必要とする対象体に静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻内、膣内、膀胱内、皮内、経皮内、局所、または、皮下投与される、請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的組成物は、三重陰性乳癌組織の外科的切除後に投与される、請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的組成物は、三重陰性乳癌組織の外科的切除後に切除部位に投与される、請求項1に記載の三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物。
【請求項11】
ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dに結合する非天然核酸リガンドであって、配列番号8~11から選択された一つの核酸配列を含む、非天然核酸リガンド。
【請求項12】
前記非天然核酸リガンドは、配列番号8~11から選択された一つの核酸配列からなる、請求項11に記載の非天然核酸リガンド。
【請求項13】
請求項11に記載の非天然核酸リガンドを含む、診断用組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の非天然核酸リガンドを含む、造影剤。
【請求項15】
請求項11に記載の非天然核酸リガンドを含む、放射性医薬品。
【請求項16】
請求項11に記載の非天然核酸リガンドを含む、癌診断のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規非天然核酸リガンドを有効成分として含む三重陰性乳癌(「TNBC」)の治療のための薬学的組成物に関するものである。また、本開示は、新規核酸リガンド及びその用途に関するものである。
【0002】
[国家支援研究開発に関する説明]
【0003】
本出願/研究は、科学技術情報通信部、産業通商資源部、保健福祉部の財源で国家新薬開発事業団の国家新薬開発事業支援によって行われたものである(課題番号:HN22C058500)。
【背景技術】
【0004】
乳癌は、米国やヨーロッパなどの先進国において、女性の癌のうち最もありふれた癌であり、40歳~55歳の米国女性の死亡原因第1位となっている。生涯において9人の女性のうちの1人が乳癌に罹患し、乳癌の患者数も毎年約15%ずつ増加する傾向にある。韓国では1995年の女性癌患者のうち、約11.9%を乳癌が占めており、子宮頸がんと胃癌に続き三番目に多い癌となり、胃癌、肝臓癌、子宮癌、肺癌に続き5番目に死亡率が高い癌であり、その頻度は毎年増加傾向にある。
【0005】
乳癌のうち、三重陰性乳癌(triple negative breast cancer ;TNBC)は、乳癌の全証例の10~20%を占める。三重陰性乳癌はエストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)の発現がなく、ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER‐2)が過発現しないか、HER‐2の増幅がない腫瘍と定義され、免疫組織化学を通じて診断される乳癌腫瘍の異種群である。三重陰性乳癌は、多くの化学療法薬品に対する速やかな耐性と適切な標的不足による攻撃的臨床挙動と不良予後を特徴とする。TNBC患者は他の類型の乳癌と比較して全般的に予後が悪く、早期に遠隔臓器で再発する確率と死亡率が高い。現在、利用可能な承認された標的療法はない。パクリタキセル及びこれの半合成誘導体などの、古典的な微小管標的化薬品(MTD)は乳癌新生物の臨床調節において相当な成功を果たした。アントラサイクリン系及びタキサン系の化学療法は、三重陰性乳癌に対する標準療法である。しかし、結局は、ほとんどの三重陰性乳癌患者の初期療法に対する一時的反応後、薬品耐性、腫瘍の再発、及び/または転移が発生する。従って、原発性または転移性三重陰性乳癌を優れた効能で治療したり、三重陰性乳癌から他の臓器(特に肺)への転移を効果的に抑制したりする薬品を開発するのは非常に難しかった。三重陰性乳癌治療に対してより持続的な反応を達成する革新的で、より効果的な治療的アプローチ方法を至急開発する必要がある。
【0006】
一方、本発明者は、ヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin;HSA)とK-RAS G12D変異タンパク質に結合する新たな二重特異性アプタマー(核酸リガンド)を、SELEXを通じて発掘し、最適化し、これを通じて作り出した非天然核酸リガンドが三重陰性乳癌に優れた標的治療効果(腹腔内投与を通した原発性癌の治療)を有することを確認した。
【0007】
また、既存の乳癌切除術では、原発性腫瘍を除去してから周辺組織の奥深くにある微小な癌や残存癌を全て完璧に除去するのは容易ではない。そして、1回目の癌手術後、患者の体力が回復するまで、1~2週間は抗癌治療や放射線治療を試みてない。この時期の残存癌あるいは微小な癌の積極的治療法は、従来は皆無であった。これにより、本発明を通じて開発された医薬品を用いてこの時期に三重陰性乳癌の積極的標的治療を行うことができる世界初の方法を提示しており、これを通じて三重陰性乳癌患者の生存率の最大化及び再発リスクの低減を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
(特許文献1)韓国公開特許第2019-0126356号
【非特許文献】
【0009】
(非特許文献1) Magdalena M. Dailey et al., Nucleic Acids Research, 2010, Vol.38, No.14, pp. 4877-4888
(非特許文献2) YI ZHANG et al. ONCOLOGY LETTERS, 2018, Vol.15, No.5, pp. 6233-6240
(非特許文献3) Park et al., Sci. Transl. Med., 2018, Vol.10, No.433, eaar1916
(非特許文献4) Yoshihisa Tokumaru et al., Am. J. Cancer Res., 2020, Vol.10, No.3, pp. 897-907
【発明の概要】
【技術的課題】
【0010】
本発明は、ヒト血清アルブミン(HSA)とK-RAS G12D変異タンパク質の両方に結合する新規の非天然核酸リガンドを有効成分として含む、三重陰性乳癌の治療のための薬学的組成物を提供することを目的とする。本発明は、体内安定性及び抗癌効果が優れた薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、従来治療が難しかった三重陰性乳癌の原発性または転移性の治療に対して優れた効果を奏する薬学的組成物を提供することを目的とする。三重陰性乳癌は、悪性度が高くて進行速度が速いだけでなく、転移も速く進むという特性を有しており、標的治療剤開発への要求が高いが、乳癌の標的療法の代表的な標的抗原であるエストロゲン受容体、HER-2受容体、及びプロゲステロン受容体が陰性(正常細胞と比較して違いがない)であるという特徴を有するため、相応しい標的療法が存在しなかった。また、三重陰性乳癌の外科的切除後に現れる転移性癌の場合、従来は治療が非常に難しく、このような転移性癌を予防または治療する薬品も皆無であった。
【0012】
本発明は、ヒト血清アルブミンとK-RAS G12D変異タンパク質の両方に結合する新規の非天然核酸リガンドを提供することを目的とする。
【0013】
一方、K-RAS Signaling(サイン)がTNBCと密接な関連があることが最近の文献によって知られている(Yoshihisa Tokumaruなど、Am. J. Cancer Res., 2020, Vol.10, No.3, pp. 897-907)。
【技術的解決方法】
【0014】
1. 本開示の一実施態様は、ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dに結合する非天然核酸リガンド、またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0015】
2. 一実施態様において、前記非天然核酸リガンドは、配列番号11(GNA6AAG6CCGGA6GGCAGC666A6GC)の核酸配列を含むものである[ここで、前記2番目の核酸Nはシスチジンまたはゲムシタビンで、前記6と示された部分は、5-[N-(1-ナフチルメチル)カルボキサミド]-2'-デオキシウリジン(Nap-dU)]、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0016】
3. 一実施態様において、前記組成物は、一つ以上の前記非天然核酸リガンドを含む、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0017】
4. 一実施態様において、前記配列番号11の核酸配列を含む非天然核酸リガンドは、配列番号1~11から選択された核酸配列からなる、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0018】
5. 一実施態様において、前記三重陰性乳癌は、原発性または転移性の三重陰性乳癌である、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0019】
6. 一実施態様において、前記三重陰性乳癌は、癌細胞がK-RAS突然変異タンパク質を有する、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0020】
7. 一実施態様において、前記三重陰性乳癌は、癌細胞がK-RAS G12D突然変異タンパク質を有する、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0021】
8. 一実施態様において、対象体に静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻内、膣内、膀胱内、皮内、経皮内、局所、または、皮下投与される、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0022】
9. 一実施態様において、三重陰性乳癌組織の外科的切除後に投与される、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0023】
10. 一実施態様において、三重陰性乳癌組織の外科的切除後に切除部位に投与される、三重陰性乳癌の予防または治療のための薬学的組成物に関するものであってもよい。
【0024】
11. 本開示の一実施態様は、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びK-RAS G12Dに結合する非天然核酸リガンドであり、配列番号8~11から選択された一つの核酸配列を含む、非天然核酸リガンドに関するものであってもよい。
【0025】
12. 一実施態様において、配列番号8~11から選択された一つの核酸配列からなる、非天然核酸リガンドに関するものであってもよい。
【0026】
13. 本開示の一実施態様は、本開示の一実施態様による非天然核酸リガンドを含む診断用組成物に関するものであってもよい。
【0027】
14. 本開示の一実施態様は、本開示の一実施態様による非天然核酸リガンドを含む造影剤に関するものであってもよい。
【0028】
15. 本開示の一実施態様は、本開示の一実施態様による非天然核酸リガンドを含む放射性医薬品に関するものであってもよい。
【0029】
16. 本開示の一実施態様は、本開示の一実施態様による非天然核酸リガンドを含む、癌診断のための組成物に関するものであってもよい。
【0030】
17. 本開示の一実施態様は、本開示の一実施態様によるヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dに結合する非天然核酸リガンド、またはこれの薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を対象体に投与する段階を含む、三重陰性乳癌の予防または治療方法に関するものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の薬学的組成物は、互いに異なる2個以上のターゲットに対する特異的結合親和性を有する核酸リガンドを含み、原発性または転移性の三重陰性乳癌(TNBC)に対して効果的かつ優れた予防または治療をすることができる。
【0032】
本発明の薬学的組成物として、ヒト血清アルブミン(HSA)とK-RAS G12D変異タンパク質に対する特異的結合親和性を有する核酸リガンドを含む薬学的組成物は、TNBC腫瘍の成長を効果的に抑制することができる。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、TNBCの外科的切除後、転移性癌または腫瘍を抑制したり、癌または腫瘍の転移を効果的に抑制したりすることができる。
【0034】
本発明の核酸リガンドは、ヒト血清アルブミン(HSA)とK-RAS G12D変異タンパク質に対する特異的結合親和性を有し、TNBC腫瘍組織及び/または細胞を効果的にターゲティングすることができる。
【0035】
本発明の核酸リガンドは、癌細胞の成長を抑制したり、癌細胞を死滅させたりすることができる。
【0036】
本発明の核酸リガンドは、特定の配列のオリゴヌクレオチドに変形ヌクレオチドを結合させることで、体内の酵素による分解速度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、一実施態様により、第1ターゲットタンパク質を血漿タンパク質とし、第2ターゲットタンパク質を癌細胞の特異的タンパク質とする単一の核酸リガンドを得るための概ねのフローチャートを示す。
図2図2は、一実施態様による核酸リガンドを製造する方法である選別方法の概括的な模式図の一例を示す。
図3図3は、1次SELEXを通じて得られた核酸ライブラリープール(pool)の血漿タンパク質(ヒト血清アルブミン)に対する結合力を分析した、ビーズベースのELISA結合アッセイ(ELISA binding assay)の結果を示す。
図4図4は、1次SELEXを通じて得られた核酸ライブラリープール(pool)の血漿タンパク質(アルブミン)に対する結合力を分析した、フィルタ結合アッセイ(filter binding assay)の結果を示す。
図5図5は、2次SELEXを通じて得られた核酸ライブラリープール(pool)のK-RAS G12D変異タンパク質に対する結合力を分析した結果を示す。
図6a図6aは、2次SELEX核酸ライブラリープール(pool)から選抜されたクローン核酸リガンドのヒト血清アルブミン(HSA)に対する結合親和度を分析した結果を示す。
図6b図6bは、2次SELEX核酸ライブラリープール(pool)から選抜されたクローン核酸リガンドのK-RAS G12Dタンパク質に対する結合親和度を分析した結果を示す。
図7図7a~図7cは、一実施態様によるヒト血清アルブミン(HSA)、及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンドのヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dタンパク質に対するDnase安定性実験の結果、及び各核酸リガンドの2D構造予測を示す。Dnase安定性実験の結果において、(-)はターゲットタンパク質と核酸分解酵素を添加していない陰性対照群、(+)は核酸分解酵素のみを添加した陽性対照群、1はヒト血清アルブミンと核酸分解酵素を添加した実験群、2はK-RAS G12Dタンパク質と核酸分解酵素を添加した実験群の結果を示す。
図8図8は、一実施態様による核酸リガンドAD005の精製前後のUPLC分析結果を示す。
図9図9は、一実施態様による核酸リガンドの精製後の質量分析結果を示す。具体的には、図9aは、核酸リガンドAD005、図9bは、核酸リガンドAD089、図9cは、核酸リガンドAD210、図9dは、核酸リガンドAD211、図9eは、核酸リガンドAD212の質量分析結果を示す。
図10図10は、一実施態様による核酸リガンドAD005を含む薬学組成物の三重陰性乳癌モデル(4T1 TNBCマウスモデル)の抗癌効能を評価する実験の概括を図式化した図面である。
図11図11は、三重陰性乳癌モデル(4T1TNBCマウスモデル)の一実施態様による核酸リガンドAD005を含む薬学組成物の抗癌効能を確認するために用量別に投与した後、腫瘍の大きさを測定した実験結果を示す。
図12図12は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の一実施態様による、核酸リガンドAD005を含む薬学組成物の転移及び再発抑制効果を確認する実験の概括を図式化した図面である。
図13図13は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の核酸リガンドAD005を含む薬学組成物の腫瘍切除モデル実験における、転移及び再発抑制効果を確認した実験結果を示す。
図14図14は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の核酸リガンドAD005(300μgまたは600μg)及びAD0089(300μgまたは600μg)を含む薬学組成物の転移、及び再発抑制効果を確認する実験の概括を図式化した図面である。
図15図15は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の核酸リガンドAD005(300μgまたは600μg)及びAD0089(300μgまたは600μg)を含む薬学組成物の転移及び再発抑制効果を確認した実験結果を示す。
図16図16は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の核酸リガンドAD005(300μgまたは600μg)、及びAD0089(300μgまたは600μg)を含む薬学組成物の転移及び再発抑制効果を確認した実験結果を生存グラフで示したものである。図16Aは、核酸リガンドAD005(300μgまたは600μg)投与時の生存グラフを示し、図16Bは、AD0089(300μgまたは600μg)投与時の生存グラフを示す。一方、これは手術時完全に除去されず、原発性腫瘍(primary tumor)が残っている個体は除いたデータである。
図17図17は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の一実施態様による、核酸リガンドAD210~AD212を含む、薬学組成物の転移及び再発抑制効果を確認する実験の概括を図式化した図面である。
図18図18は、三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の核酸リガンドAD210~AD212(それぞれ100μg)を含む、薬学組成物の転移及び再発抑制効果を確認した実験結果を示す。
【発明の実施のための最善の形態】
【0038】
本文書に記載された多様な実施様態または実施例は、本開示の技術的思想を明確に説明するための目的で例示されたものであり、これを特定の実施形態で限定するためのものではない。本開示の技術的思想は、本文書に記載された各実施様態または実施例の多様な変更(modifications)、均等物(equivalents)、代替物(alternatives)及び各実施様態または実施例の全部または一部から選択的に組み合わせられた実施様態または実施例を含む。また、本開示の技術的思想の権利範囲は以下に提示される多様な実施様態または実施例や、これに関する具体的説明に限定されない。
【0039】
技術的または科学的な用語を含む本文書で用いられる用語は、異なって定義されない限り、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有し得る。一般に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されるべきで、本開示で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味とは解釈されない。
【0040】
本文書で用いられる単数形の表現は、文脈上異なって意味しない限り複数型の意味を含み得、これは請求項に記載された単数形の表現にも同様に適用される。
【0041】
本文書で用いられる「第1」、「第2」、または「最初」、「二番目」などの表現は、文脈上異なって意味しない限り、複数の対象を指すときに、ある対象を他の対象と区分するために用いられ、当該対象間の順序または重要度を限定するものではない。
【0042】
本文書で用いられる「A、B、及びC」、「A、B、またはC」、「A、B、及び/またはC」、または「A、B、及びCの少なくとも一つ」、「A、B、または、Cの少なくとも一つ」、「A、B、及び/またはCの少なくとも一つ」、「A、B、及びCのうちから選択された少なくとも一つ」、「A、B、または、Cのうちから選択された少なくとも一つ」、「A、B、及び/またはCのうちから選択された少なくとも一つ」などの表現は、それぞれ羅列された項目、または羅列された項目の可能な限り全ての組み合わせを意味し得る。例えば、「A及びBのうちから選択された少なくとも一つ」は、(1) A、(2) Aの少なくとも一つ、(3) B、(4) Bの少なくとも一つ、(5) Aの少なくとも一つ及びBの少なくとも一つ、(6) Aの少なくとも一つ及びB、(7) Bの少なくとも一つ及びA、(8) A及びBをいずれも指すことができる。
【0043】
本開示で用いられる用語「略」、または「概ね」は、技術分野の熟練した技術者に広く知られているとおり、それぞれの値に対する通常の誤差範囲を示し得る。これは本明細書に記載された数値または範囲の脈絡で、一実施様態で言及されるか、または請求された数値または範囲の±20%、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%であることを意味し得る。
【0044】
本開示で用いられる用語「SELEX」、「SELEX技術」、「SELEX法」、「SELEX工程」は相互交換的に用いられ得、望ましい方法(例:タンパク質に結合)によってターゲットと相互作用する核酸を選別する過程と、選別された核酸を増幅する過程を組み合わせた方法を意味し得る。このようなSELEX法は、標的分子に高い特異性で結合することができる核酸分子を選別するための試験管内(in vitro)方法であり、米国特許第5、475、096号(「Nucleic Acid Ligands」)と米国特許第5、270、163号(WO 91/19813号、「Nucleic Acid Ligands」)に記載されている。
【0045】
本開示は、前述した核酸リガンドまたはこれの薬学的に許容可能な塩を含む三重陰性乳癌の治療のための薬学的組成物を提供する。
【0046】
本開示は一実態様において、従来は存在不可能であるとされていた新たな部類(class)の核酸化合物である、新規非天然核酸リガンドに関するものである。
【0047】
本開示で用いられる用語「新規核酸リガンド」、「核酸リガンド」、「非天然核酸リガンド」、「新規非天然核酸リガンド」は互いに相互交換的に用いられ得る。
これは互いに異なる2個以上のターゲットに対して特異的結合親和性を有する核酸分子を意味し得る。
【0048】
本開示で用いられる用語「非天然(syntheticまたはunnatural)」は、自然界では発生しないことを意味し、このような側面から本開示の一実施例による新規核酸リガンドは、標的に結合される公知の生理学的機能を有する核酸でなくてもよい。
【0049】
一実施態様において、新規核酸リガンドは、互いに異なる2個以上のターゲットに対して特異的結合親和性を有し得る。例えば、新規核酸リガンドは互いに異なる2個、3個、4個、5個、6個、または、それ以上のターゲットに対して特異的結合親和性を有し得る。
【0050】
一実施態様において、新規核酸リガンドは、互いに異なる2個のターゲットに対して特異的結合親和性を有し得る。
【0051】
本開示で用いられる用語「特異的結合親和性」は、核酸リガンドが混合物またはサンプル内に存在するターゲットではない他の構成要素、または成分に結合することより、一般にはるかに高い親和度でそのターゲットに結合することを意味し得る。
一実施態様において、複数の核酸リガンド候補配列は、互いに異なる2個以上のターゲットに特異的結合親和性を有する核酸ライブラリー、または核酸混合物から選別されたものであってもよく、一実施態様による新規核酸リガンドは、このように選別された複数の核酸リガンドの候補配列のうち、互いに異なる2個以上のターゲットに特異的結合親和性を有すると確認されて選別されたものであってもよい。
【0052】
一実施態様において、ターゲットは3次元構造を有するものであってもよい。一実施態様において、ターゲットはワトソン‐クリック型塩基対形成または三重らせん結合(triple helix binding)に主に依存するメカニズムを通じて核酸と結合するポリヌクレオチドは含まない。
【0053】
一実態様において、新規核酸リガンドは、ターゲットと3次元的に結合したり、ターゲットの3次元的構造を認識したり、または、自ら3次元的構造を形成してターゲットと相互作用したりすることができる。新規核酸リガンドは、ターゲットと結合したり、ターゲットの3次元的構造を認識したり、または、ターゲットと相互作用してそれぞれのターゲットの特性を調節したりすることができる。例えば一実施例による新規核酸リガンドは、ターゲットタンパク質に結合してタンパク質の活性を阻害したり、シグナル伝達経路を遮断したり、シグナル伝達経路の下流のタンパク質の活性を抑制したりすることができる。
【0054】
本開示で用いられる、用語「結合」、または「相互作用」は、生理条件下で、例えば、パイスタッキング(pi‐stacking)、静電気的相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用、及び/または水素結合相互作用などによる、二つの分子間の会合(association)を意味し得る(例:核酸リガンドとターゲット間の安定した会合)。
【0055】
本開示で用いられる、用語「調節」は、ターゲットの機能的特性、生物学的活性、及び/または生物学的機作(または経路)を変化させることを意味し得る。例えば、ターゲットの特性、活性、及び/または機作を上方調節したり(例:活性化または刺激させる場合)、下方調節したり(例:阻害または抑制する場合)、または、それ以外に変化させたりすることもできる。例えば、ターゲットが細胞の場合、調節される細胞の特性は、細胞生存率、細胞増殖、遺伝子の発現、細胞形態学、細胞活性化、リン酸化、カルシウム動員(mobilization)、脱顆粒化、細胞移動、及び/または細胞分化であり得る。
【0056】
一実施態様において、新規核酸リガンドは一つの特定ターゲットにのみ結合する既存のアプタマー(aptamer)ではなく、また、互いに異なる個別の複数のアプタマーを互いに連結または結合させたものである二重特異性アプタマー(bispecific aptamer)ではない。
【0057】
一実施態様において、新規核酸リガンドは複数のアプタマーの連結体ではない(non-coupling)。
【0058】
本開示で用いられる用語「連結体」は、2個以上の個別のアプタマーを互いに結びつけるか、融合させるか、結合させるか、接合させたものを意味し得る。例えば、連結体は任意の単量体アプタマーの二量体、三量体、四量体、または、それ以上の多量体を意味してもよく、互いに異なる2個以上のアプタマーを連結または結合させた二重特異性アプタマーを意味してもよく、その他の複数のアプタマーからなる複合体/接合体/結合体を意味してもよい。
【0059】
一実施態様において、新規核酸リガンドは一つのターゲットに対する結合部位を形成する核酸配列の全て、または一部が異なるターゲットに対する結合部位を形成する核酸配列の全て、または一部を形成するものであってもよい。一実施態様において、ターゲットに対する結合部位を形成する核酸配列は、核酸リガンドの増幅のための5'または3'プライマーの配列、またはその一部を含み得る。
【0060】
一実施態様において、前記ターゲットに対する結合部位を形成する核酸配列の一部は、核酸リガンド全体配列の約1%~約99%、約5%~約95%、約10%~約90%、約20%~約80%、約30%~約70%、または、約40%~約60%であってもよいが、これに制限されない。一実施態様において、前記ターゲットに対する結合部位を形成する核酸配列の一部は、核酸リガンドを構成する一つ以上のヌクレオチドを含み得、これに制限されない。
【0061】
一実施態様において、新規核酸リガンドは、核酸リガンド中の2個以上のターゲットに対する結合部位が互いに個別に分離されて存在しないものであってもよい。例えば、ターゲットに対する結合部位が互いに個別に分離されて存在するものは、アプタマー多量体、二重特異性アプタマー、またはその他の複数のアプタマーからなる複合体/接合体/結合体を意味し得る。
【0062】
一実施態様において、新規核酸リガンドは2個以上のターゲットに対する結合部位が一つの単一核酸リガンドで形成されるか、または一つの単一核酸リガンドから形成されるものであってもよい。これは、ターゲットと結合するために形成される核酸リガンドの三次構造が互いに個別の配列でそれぞれ形成されるか、個別の配列でそれぞれ形成されたものを結合させて形成されるのではなく、一つの核酸リガンドまたは単一核酸リガンドの配列で形成されることを意味し得る。これにより、新規核酸リガンドは、二重特異性アプタマーとは互いに異なり、区別される物質に該当する。
【0063】
一実施態様において、新規核酸リガンドは、約100個以下のヌクレオチドからなってもよい。具体的には、新規核酸リガンドは、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、または、40個以下のヌクレオチドからなるものであってもよい。一実施態様において、新規核酸リガンドは10個~105個、15個~100個、20個~95個、25個~90個、30個~85個、35個~80個、40個~75個、45個~70個、50個~65個、または、55個~60個のヌクレオチドからなるものであってもよい。
【0064】
一実態様において、ヌクレオチドは、DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド、これらの変形したヌクレオチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0065】
本発明のオリゴヌクレオチドは、癌細胞にさらに選択的に結合することができ、細胞内での様々なメカニズムを通じて癌細胞の成長を妨げることができる。
【0066】
本発明のオリゴヌクレオチドに1個以上の変形ヌクレオチドを結合させ、変形ヌクレオチドを安定化させたり、体内で変形ヌクレオチドの非活性化を防止したりすることができる。
【0067】
さらに、オリゴヌクレオチド配列のうち、任意の位置に変形ヌクレオチドが挿入されるか、置換、または結合され得、該変形ヌクレオチドは抗癌効果を奏する変形ヌクレオチド(例えば、ゲムシタビン)を意味し得、変形ヌクレオチドは化学的に変形されたヌクレオシドまたはヌクレオチドであり得る。
【0068】
変形したヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5'方向、3'方向、またはオリゴヌクレオチド配列内に位置する任意のヌクレオチドの少なくとも一つに連結され得、好ましくはオリゴヌクレオチドの5'方向に連結される。
【0069】
本開示で用いられる「変形したヌクレオチド」は、天然発生ヌクレオチド(A、G、T/U、及びC)の類似体、置換体またはエステルを意味し得、通常の技術者が容易に用いることができる変形ヌクレオチドを包括する広範囲な概念を意味し得る。例えば、変形したヌクレオチドはC‐5位での置換を有するか(例:C‐5変形したピリミジン)ヌクレオチドを構成する糖類(リボースまたはデオキシリボース)が変形するか、または、このような変形をいずれも有するヌクレオチドを意味し得る。
【0070】
一実態様において、C‐5変形したピリミジンは、C‐5変形したアミノカルボニルピリミジンを意味し得、例えば、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Bz‐dU)、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(iBu‐dU)、5‐(N‐フェネチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Pe‐dU)、5‐(N‐チオフェニルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Th‐dU)、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3-イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Trp‐dU)、5‐(N‐[1‐(3‐トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジンクロリド、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)、5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン)、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Bz‐dC)、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(iBu‐dC)、5‐(N‐フェネチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Pe‐dC)、5‐(N‐チオフェニルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Th‐dC)、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3-イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Trp‐dC)、5‐(N‐[1‐(3‐トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジンクロリド、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジン(Nap‐dC)、及び/または5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐デオキシシチジンを含み得るが、これに制限されない。
【0071】
一実態様において、リボース糖(Ribose sugar)の2'位変形を有する変形したヌクレオチドは、2'‐デオキシ‐2'‐フルオロウリジン(Uf)、2'‐デオキシ‐2'‐フルオロシチジン(Cf)、2'‐ヒドロキシアデノシン(Ar)、2'‐メトキシアデノシン(Am)、2'‐メトキシグアノシン(Gm)を含み得るが、これに制限されない。
【0072】
一実態様において、C‐5変形及びリボース糖(Ribose sugar)の2'位変形をいずれも有する変形したヌクレオチドは、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロウリジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロウリジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3-イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3-イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロウリジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロウリジン、5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルウリジン、及び/または5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロウリジンを含み得るが、これに制限されない。
【0073】
一実態様において、C‐5変形及びリボース糖(Ribose sugar)の2'位変形をいずれも有する変形したヌクレオチドは、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロシチジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐イソブチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロシチジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3-イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐[2‐(1H‐インドール‐3-イル)エチル]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロシチジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐フルオロシチジン、5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐メチルシチジン、及び/または5‐(N‐[1‐(2、3‐ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)‐2'‐O‐フルオロシチジンを含み得るが、これに制限されない。
【0074】
一実態様において、変形したヌクレオチドは、5‐(N‐ベンジルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Bz‐dU)、または5‐(N‐ナフチルメチルカルボキシアミド)‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)であってもよく、これにより新規核酸リガンドをなすヌクレオチドの少なくとも一つはこのような変形したヌクレオチドであり得る。
【0075】
変形ヌクレオチドがオリゴヌクレオチドの3’方向に連結される場合、変形ヌクレオチドの3'方向にidT(inverted dT)、LNA(locked nucleic acid)、PEGまたは2'OMeNu(2'-Methoxy Nucleosides)をさらに結合させることができる。
【0076】
変形ヌクレオチドの3'方向にidT、LNA、PEGまたは2'OMeNuをさらに結合させることによって、ヌクレアーゼの攻撃からオリゴヌクレオチドの3'末端を保護することができ、これによってオリゴヌクレオチドが体内で分解(degradation)されるスピードを下げ、変形ヌクレオチドがより長い間オリゴヌクレオチドに結合されるようにし、変形ヌクレオチドの抗癌効能を増加させることができるはずである。
【0077】
一実態様において、新規核酸リガンドは、配列番号1~配列番号8からなる群から選択された、一つの核酸配列を有するものであってもよい。
【0078】
一実態様において、新規核酸リガンドは、一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖DNA及び二本鎖DNAからなる群から選択されたものであってもよい。
【0079】
一実態様において、新規核酸リガンドは必要に応じて5'末端前方または3'末端後方にビオチン(biotin)を結合して用いられてもよい。
【0080】
一実態様において、新規核酸リガンドは必要に応じて5'末端前方または3'末端後方に蛍光物質(例:FAM、VIC、HEX、BHQ‐1、Cy5、Cy3、Rodamine、またはTeXas Redなど)を結合して用いられてもよい。
【0081】
本開示は一実施態様において、一実施態様による方法を含む方法で製造された非天然核酸リガンドに関するものであってもよい。
【0082】
オリゴヌクレオチドと変形ヌクレオチドを連結するための一方法は、前述したオリゴヌクレオチドの配列の任意の位置に前述した変形ヌクレオチドを挿入、置換、または結合させる段階、またはオリゴヌクレオチドの5’末端及び3’末端の少なくとも一つに、前述した変形ヌクレオチドを結合させる段階を含み得る。
【0083】
本開示のオリゴヌクレオチド配列に含まれたそれぞれの核酸ヌクレオチドは、変形核酸または変形ヌクレオチドに置換され得、オリゴヌクレオチド配列はその配列内に1個以上の変形核酸または変形ヌクレオチドを含み得る。
【0084】
本開示のオリゴヌクレオチドは、互いに異なる2個以上のターゲットに対する特異的結合親和性を有する核酸リガンドであり得る。このような核酸リガンドは、本出願人の韓国特許出願第10-2021-0059607号に具体的に記載されている。本開示の核酸リガンドは、表1に示されたものであってもよい。表1の核酸塩基配列の6と示された部分は、5‐[N‐(1‐ナフチルメチル)カルボキサミド‐2'‐デオキシウリジン(Nap‐dU)を意味し、9と示された部分はゲムシタビン(Gemcitabine)を意味し、Nはシスチジンまたはゲムシタビンである。また、下記の核酸リガンドはDNAで構成され、デオキシリボース基盤の核酸からなり、具体的に、Gは2'‐デオキシグアノシン(2'‐deoxyGuanosine)、Cは2'‐デオキシシチジン(2'‐deoxyCytidine)、Aは2'‐デオキシアデノシン(2'‐deoxyadenosine)、及びTはチミジン(Thymidine)を意味する。
【0085】
【表1】
【0086】
本開示の一実施例による薬学的組成物において、新規核酸リガンドは、エンドサイトーシスなどの経路によって治療的ターゲットが存在する癌細胞内に伝達され得る。ここで前記新規核酸リガンドは、薬学的組成物が投与される対象体の体内に存在する血漿タンパク質に結合し得る。これにより、新規核酸リガンドを含む薬学的組成物は、優れた生体内安定性及び緩やかな腎クリアランス(優れた体内残留時間)を示すことができ、新規核酸リガンドは癌組織に到達した後、前記エンドサイトーシスなどの経路によって癌細胞内に入ることができる。
【0087】
本開示で用いられる用語「対象体」は、ターゲットまたはその作用により誘発される疾患、または病気を有したり疾患または病気を発症したりし得るヒトを含む馬、羊、豚、ヤギ、犬などの哺乳類などを意味するが、好ましくはヒトを意味する。
【0088】
本開示で用いられる用語「エンドサイトーシス(endocytosis;内包作用)」は、細胞が細胞膜外部の物質を細胞膜内部に運ぶ細胞作用を指す。エンドサイトーシスは、外部物質を細胞膜で取り囲んで細胞内へ入れた後、細胞内に小胞を形成して取り込んだ物質を分解した後、再利用したり、外部に排出したりすることができる。エンドサイトーシスは活性化方法や関与するタンパク質の種類によって、マクロピノサイトーシス、クラスリン(clathrin)タンパク質が関与する受容体媒介内包作用、カベオラ(caveolae)内包作用などに区分され得る。
【0089】
一実態様において、薬学的組成物は血漿タンパク質をさらに含み得る。この場合、薬学的組成物は血漿タンパク質と新規核酸リガンドが結合された形態や新規核酸リガンド単独の形態であってもよく、前記血漿タンパク質は治療対象の体外に存在するタンパク質であってもよい。
【0090】
本開示の一実施例による薬学的組成物において新規核酸リガンドは、マクロピノサイトーシス経路によって治療的ターゲットが存在する癌細胞内に伝達され得る。
【0091】
本開示で用いられる用語「マクロピノサイトーシス(macropinocytosis)」は、エンドサイトーシスのうちの一種であり、細胞骨格タンパク質であるアクチンによって細胞膜が細胞外部に突出して再び収縮する過程中に小袋が形成され得、形成された小袋が細胞内に入って分離され、約0.2μmの~5μmの直径を有する小胞(マクロピノソーム)を形成し得る。
【0092】
マクロピノサイトーシスは、最近注目されている腫瘍代謝の一翼を担う。マクロピノサイトーシスを通じて腫瘍細胞の速やかな成長に必要な栄養分(例えば、グルタミン、アルブミンなど)を癌細胞内に供給して代謝に用いることができる。即ち、マクロピノサイトーシスによって形成された小胞内には細胞外液、細胞外分子などが含まれ得る。マクロピノサイトーシスは、癌細胞の腫瘍遺伝子、またはタンパク質の突然変異によって活性化されたものであってもよい。例えば、腫瘍遺伝子は、SRC遺伝子またはK-RAS遺伝子であり得る。例えば、マクロピノサイトーシスは、癌細胞のK-RAS遺伝子またはタンパク質の突然変異によって活性化されたものであってもよい。K-RASタンパク質の突然変異は野生型K-RASタンパク質の12番目、13番目、61番目のアミノ酸に突然変異が生じたものであってもよく、例えば、K-RAS G12D、K-RAS G12V、K-RAS G12C、K-RAS G12A、K-RAS G12S、K-RAS G12R、K-RAS G13D、またはK-RAS Q61Hであってもよい。
【0093】
一実態様において、核酸リガンドは、血漿タンパク質と結合することによって、マクロピノサイトーシスによって細胞内に伝達される効率が高くなり得る。即ち、血漿タンパク質と結合された核酸リガンドは、血漿タンパク質と結合していない核酸リガンドと比べて細胞内に伝達される効果が優れ得る。
【0094】
本開示の一実施例による核酸リガンドは、エンドサイトーシスの多様なメカニズムを通じて細胞質内に伝達され得る。癌細胞の急激な増殖に必要な必須栄養分を供給する主な経路として注目されているマクロピノサイトーシスだけでなく、その他のエンドサイトーシス経路が核酸リガンドの伝達に関与し得る。細胞質内部に伝達された核酸リガンドは、治療標的タンパク質と結合してシグナル伝達経路をかく乱させ、癌細胞の増殖を抑制することができる。
【0095】
一実施態様において、細胞内部に伝達された核酸リガンドは、癌細胞内部のK-RAS突然変異タンパク質(例えば、K-RAS G12D)に結合し、K-RASシグナル伝達経路の下流にあるタンパク質(ERKなど)のリン酸化を抑制することによって、過度な細胞成長、増殖、分裂などを抑制することができる。従って、本開示の一実施態様による核酸リガンドは、K-RAS突然変異タンパク質を発現する癌(例えば、肺癌、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膀胱癌、胆嚢癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、腎臓癌、または、急性骨髄性白血病など)の予防または治療効果を示すことができる。
【0096】
本開示で用いられる用語「治療」は、病気が発生した対象の症状が好転またはよくなる全ての行為を意味し得る。
【0097】
本開示で用いられる用語「予防」は、病気を抑制または遅延させる全ての行為を意味し得る。
【0098】
一実施態様において、新規核酸リガンドは薬学的に有効な量で投与され得る。
【0099】
一実施態様において、新規核酸リガンドは、約1μg~約100μg、約5μg~約80μg、約10μg~約70μg、約15μg~約60μg、約20μg~約50μg、または、約30μg~約40μgの用量で投与され、前記投与は1日に1回、または数回に分けて投与され得る。
【0100】
本開示で用いられる用語「投与」は、ある適切な方法で対象体に一実施例による薬学的組成物を導入することを意味する。投与経路は目的組織に到達できる限り、いかなる一般的な経路を通じて経口または非経口投与されてもよい。具体的には、本開示の一実施例による薬学的組成物は、任意の経路によって、経口、直腸、舌下、及び非経口投与で投与され得、非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻内、膣内、膀胱内、皮内、経皮内、局所、または、皮下投与が含まれる。また、本開示の範囲内で薬品の全身または局所放出が後で生じるように制御された製剤として、薬品を対象体の身体に注入することが考慮される。例えば、薬学的組成物は循環系への制御された放出を通じて、または腫瘍成長の局所部位への放出のために局所化され得る。
【0101】
一実施態様において、薬学的組成物は吸入によって鼻内、気道内、または、気管支内に投与され得る。吸入投与は核酸リガンドを含有する呼吸可能な粒子または液滴を含み、気道、鼻腔などを通じて吸入可能な薬学的製剤を用いた投与であってもよいが、これに制限されるわけではない。例えば、吸入投与には乾燥粉末吸入器(DPI)、または加圧定量噴霧式吸入器(pressurized metered dose inhaler、pMDI)などが用いられるが、これに制限されるわけではない。
【0102】
本開示で用いられる用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なメリット/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効な用量の水準は患者の体重、性別、年齢、健康状態、重症度、適応症、薬品の活性、薬品に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比、治療期間、同時に用いられる薬品を含む要素、及びその他の医学分野で周知の要素によって決定され得る。
【0103】
本開示は一実態様において、一実態様による新規リガンドを、これを必要とする対象体に薬学的に有効な量で投与する段階を含む、癌を予防または治療する方法に関するものであってもよい。
【0104】
また、本開示は、一実施態様において、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びK-RAS G12D突然変異体に結合する核酸リガンドに関するものであってもよい。核酸リガンドは上述した通りであり得る。
【0105】
一実施態様において、核酸リガンドは配列番号8~11のうちのいずれか一つの核酸配列を含むか有するものであってもよい。本開示は、一実施態様において、癌を予防または治療するための薬剤の製造のための一実施例による新規核酸リガンドの用途に関するものであってもよい。
【0106】
本開示は、一実施態様において、癌の予防または治療に用いるための一実施例による新規核酸リガンドの用途に関するものであってもよい。
【0107】
本開示は、一実施態様において、一実施例による新規核酸リガンドを含む癌診断のための組成物に関するものであってもよい。
【0108】
本開示は、一実施態様において、一実施例による新規核酸リガンドを含む癌診断用キットに関するものであってもよい。
【0109】
本開示は、一実施態様において、一実施例による新規核酸リガンドを、これを必要とする対象体に投与する段階を含む、癌を診断する方法に関するものであってもよい。
【0110】
本開示は、一実施態様において、三重陰性乳癌を診断するための薬剤製造のための一実施例による新規核酸リガンドの用途に関するものであってもよい。
【0111】
本開示は、一実施態様において、三重陰性乳癌を診断するのに用いるための一実施例による新規核酸リガンドに関するものであってもよい。
【0112】
本開示は、一実施態様において、一実施例による新規核酸リガンドを含む診断用組成物に関するものであってもよい。
【0113】
本開示は、一実施態様において、一実施例による新規核酸リガンドは診断試薬、分析試薬、有害物質検出などに用いられる。一実施例による新規核酸リガンドを用いてサンプルでターゲットを検出する方法として、(a)前記サンプルからのターゲットを、一実施例による新規核酸リガンドと接触させる段階を含む方法に関するものであってもよい。一実施態様において、前記検出方法は、段階(a)の後に(b)前記標的と核酸リガンドの結合が形成されるかどうかを決定してサンプル内の標的の存否を検出する段階をさらに含み得る。
【0114】
本開示は、一実施態様において、一実施例による新規核酸リガンドを含む造影剤または診断用の放射性医薬品に関するものであってもよい。ここで、新規核酸リガンドは、造影剤または診断用の放射性医薬品として作用するために通常用いられる物質と結合され得、例えば、ラジオアイソトープと結合され得る。
【0115】
本開示の薬剤学的組成物、用途、治療方法に記載された事項は、互いに矛盾しない限り同一に適用され得る。
【0116】
本開示は、前述した実施様態及び後述する実施例を通じてより一層明確になるはずである。以下では、本開示の添付の表を参照して記述される実施例を通じ、該業界の通常の技術者が容易に理解して実現することができるように詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本開示を例示的に説明するためのものであり、本開示の範囲はこれら実施例に限定されない。
【0117】
図1に示されたように、本開示の一実態様による核酸リガンドを得るために下記の実施例を行った。
【0118】
実施例1. 新規核酸リガンドの選別
SELEX技術を用いて、核酸ライブラリープール(pool)から第1ターゲットへの結合力を有する核酸ライブラリープール(pool)を選別した後(1次SELEX)、選別された核酸ライブラリープール(pool)を用いてすぐに第2ターゲットに対する2次SELEXを行い、最終的に複数のターゲットに結合できる核酸リガンドを得た(図2参照)。具体的な新規核酸リガンドの選別方法は下記に記載した。
【0119】
1. SELEXのための変形ヌクレオチドを含むライブラリーの製作
中央部に40個の連続的な任意の配列、前記任意の配列の5'末端と3'末端のそれぞれに、核酸増幅のためのプライマーの結合部位、そして5'末端のプライマー結合部位の前にはビオチンが結合された一本鎖核酸のライブラリーの鋳型[Biotin-GCTGGTGGTGTGGCTG-N(40)-CAGGCAGACGGTCACTCA(配列番号:12)]を準備した。準備された核酸ライブラリーの鋳型は、理論上1x1024個の互いに異なる塩基配列を有するDNAの混合物である。このような一本鎖核酸のライブラリーの鋳型は、DNA自動合成機を用いて合成し、PAGE精製後に実験に用いた(トライリンク、米国)。
【0120】
変形核酸5-(N-ベンジルカルボキサミド)-2'-デオキシウリジン(5-(N-benzylcarboxamide)-2'-deoxyuridine;Bz-dU)、または5-[N-(1-ナフチルメチル)カルボキサミド]-2'-デオキシウリジン(5-[N-(1-naphthylmethyl)carboxamide]-2'-deoxyuridine;Nap-dU)が含まれた核酸ライブラリーを製作するために、前記のビオチンと結合されているライブラリーの鋳型をストレプトアビジンで表面改質されたレジンに固定した。具体的には、5M NaCl溶液にライブラリーの鋳型と500μLのレジン(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を混ぜて室温で1時間反応して固定化した。NaClで洗浄したレジンに20μMの5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG(配列番号:13))と、0.5mMのdNTP(dATP、dGTP、dCTP、Nap-dUTPまたはBz-dUTP)、0.25U/μLのKOD XL DNA polymerase(Merck、米国)、120mMのTris-HClをpH 7.8で、1X KOD buffer(Merck、米国)を添加し、70℃で2時間酵素反応を行って変形ヌクレオチドが含まれた二本鎖DNAを製造した。ここに20mMのNaOHを用いて二本鎖DNAを変成させてレジンと一本鎖DNAを分離した後、分離した上澄液をNeutralization buffer(700mMのHCl、180mMのHEPES、0.45%(v/v)のTween 20)溶液で中和した。分離が終わったライブラリーはAmicon ultra-15(メルクミリポア、米国)を用いて濃縮した後、UV分光光度計(spectrophotometer)で定量し、最終的に変形核酸が含まれた一本鎖ライブラリーを製作した。
【0121】
2. 第1ターゲットタンパク質(血漿タンパク質)に特異的な核酸ライブラリープール(pool)の選抜
2-1. 血漿タンパク質に特異的な核酸ライブラリープール(pool)の選抜(1次SELEX)
SELEX用のターゲットタンパク質は、組換えタンパク質のうちヒスチジンタグ(6xHis-tag)が含まれたタンパク質を用いた。コバルトに表面改質されてタンパク質のHis-tagと結合する磁性ビーズ(magnetic bead)のDynabead(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を用いてターゲットタンパク質をビーズに固定した。具体的には、バッファSB18(40mMのHEPES、102mMのNaCl、5mMのKCl、5mMのMgCl、及び0.05%(v/v)のTween 20;以下同一)に溶けているターゲットタンパク質と、50μlのHis-tag磁性ビーズをサーモミキサー(ThermomiXer;エッペンドルフ、ドイツ)で25℃、1200rpm、30分間反応させた後、磁石を用いてバッファSB18で3回洗浄し、ビーズに固定された第1ターゲットタンパク質を準備した。ここで、第1ターゲットタンパク質は、血漿タンパク質に該当するヒト血清アルブミン(HSA;Abcam、英国、製品名:Recombinant human serum albumin Protein(His tag)、カタログナンバー:ab217817)である。以下の実施例では、いずれも前記血漿タンパク質を用いた。
【0122】
合成された核酸ライブラリープール(pool)をバッファSB18に入れて95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ反応させつつ徐々に温度を下げ、核酸ライブラリーの三次構造の形成を誘導した。非特異的陰性選別のために前記反応液にタンパク質競争緩衝液(protein competition buffer)(1μMのプロトロンビン、1μMのカゼイン)を混合した後、磁性ビーズ10μgに添加してサーモミキサーを用いて37℃、1200rpm、10分間反応させた後、上澄液を血漿タンパク質が固定されたDynabeadに移して血漿タンパク質と結合する核酸ライブラリープール(pool)の選抜を実施した。具体的には、非特異的陰性選別を終えた変形核酸ライブラリーを、血漿タンパク質が固定された磁性ビーズとサーモミキサーで37℃、1200rpm、1時間反応させた。バッファSB18で核酸ライブラリーとターゲットタンパク質-磁性ビーズ結合体を5回洗浄した後、2mMのNaOH溶液を添加してターゲットタンパク質に結合した核酸ライブラリープール(pool)を回収した後、8mMのHCl溶液で中和した。
【0123】
血漿タンパク質に結合したライブラリーを次のラウンドのSELEXに用いるために、QPCR(quantitative PCR、CFX real time PCR detection system;バイオ・ラッド、米国)を用いて増幅した。前記SELEX過程で回収した核酸ライブラリーにQPCR buffer[5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG(配列番号:13))、3'プライマー(Biotin-GCTGGTGGTGTGGCTG(配列番号:14))、1X KOD buffer、KOD XL DNA polymerase、1mMのdNTP]を混合して、96℃で15秒、55℃で10秒、及び68℃で30分の条件で1サイクル(cycle)、そして96℃で15秒、及び72℃で1分の条件で30サイクル繰り返し、血漿タンパク質に結合された核酸ライブラリーを増幅した二本鎖オリゴDNAを製造した。
【0124】
QPCRを通じて作られた二本鎖オリゴDNAを25μlのMyoneTMストレプトアビジン磁性ビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国;以下同一)と常温で10分間混合して固定し、20mMのNaOH溶液を添加してanti-sense鎖を除去した後、前記変形ヌクレオチドを含むライブラリー製造と同一の方法で変形された核酸を含む核酸ライブラリープール(pool)を、酵素を用いて合成し、次のラウンドに用いた。前記SELEXラウンドは計8回繰り返し行った。
【0125】
4回目~8回目のSELEXラウンドの場合、核酸ライブラリープール(pool)と標的タンパク質を結合させた後、10mMのデキストランサルフェート(dextran sulfate)と反応させる動的誘発(kinetic challenge)を行い、その後の過程は、1回目のラウンドのqPCR増幅過程、及びanti-sense回収過程と同一である。
【0126】
2-2. 1次SELEXの核酸ライブラリープール(pool)の血漿タンパク質に対する結合力測定
2-2-1. ビーズ基盤ELISA結合アッセイ(Bead based ELISA binding assay):アルブミン
SELEXラウンドが行われた核酸ライブラリープール(pool)の血漿タンパク質に対する結合力を確認するために、ビーズ基盤ELISA結合アッセイを行った。
【0127】
まず行われた5回目~7回目のラウンドの核酸ライブラリープール(pool)を増幅した。各ラウンドの核酸ライブラリープール(pool)にbuffer[(5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG(配列番号:13))、3'プライマー(Biotin-GCTGGTGGTGTGGCTG(配列番号:14))、1X KOD buffer、KOD XL DNA polymerase、0.2mMのdNTP]を混合し、96℃で15秒、及び72℃で1分の条件で20サイクル繰り返して核酸ライブラリープール(pool)を増幅し、二本鎖オリゴDNAを製造した。二本鎖オリゴDNAを25μlのMyoneTMストレプトアビジン磁性ビーズと常温で10分間混合して固定し、20mMのNaOH溶液を添加して溶液中のsense鎖を除去した後、磁性ビーズ-anti-sense結合体をバッファSB17(40mMのHEPES、102mMのNaCl、5mMのKCl、5mMのMgCl、1mMのEDTA、及び0.05%(v/v)のTween 20;以下同一)を用いて2回洗浄した後、16mMのNaClを用いて追加洗浄した。洗浄が完了した磁性ビーズ-anti sense結合体に2.5μMの5'プライマー(Biotin-GAGTGACCGTCTGCCTG(配列番号:15))と0.5mMのdNTP(dATP、dGTP、dCTP、Nap-dUTPまたはBz-dUTP)、0.25U/μlのKOD XL DNA polymerase、120mMのTris-HCl(pH7.8)、1X KOD bufferを添加して68℃で1時間酵素反応を行って変形ヌクレオチドとビオチンが含まれた核酸ライブラリープール(pool)を製造した。磁石を用いて上澄み液を除去して、バッファSB17で3回洗浄した。新たに合成されたbiotin-anti-sense鎖を回収するために20mMのNaOHを添加して、その後80mMのHClで中和した。
【0128】
準備した1 pmoleのビオチン結合核酸ライブラリープール(pool)をバッファSB18に入れて95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ反応させ、徐々に温度を下げてDNAの三次構造の形成を誘導した。血漿タンパク質(HSA)を200nMから4倍ずつ薄めて準備し、構造が安定化した核酸ライブラリープール(pool)と37℃で30分間結合させた後、10μlのヒスチジンプルダウンビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を入れて30分間25℃で結合させた。磁石を用いてバッファSB18でビオチン核酸ライブラリープール(pool)-血漿タンパク質-ビーズ複合体を3回洗浄後、1:3,000に薄めた100μlのストレプトアビジン‐ホースラディッシュ酸化酵素(streptavidin- horseradish peroxidase;HRP)の試薬をサンプルに添加し、25℃で30分間反応させた。再びHRP-核酸ライブラリープール(pool)-血漿タンパク質-ビーズ複合体をバッファSB18で3回洗浄した後、100μlの化学発光溶液(chemiluminescence solution)を添加して磁石を用いて上澄み液のみ分離した。上澄み液は白のプレートに移してGloMaxプレート測定機(プロメガ、米国)のルミネッセンスプロトコル(luminescence protocol)を用いて蛍光値を測定した後、各実験群の結果値からタンパク質のない陰性対照群の値を差し引いた後、グラフを描いて結果を分析した(図3参照)。
【0129】
図3は、第1ターゲットタンパク質であるアルブミンに対し、Bz-dU(図面の上段)及びNap-dU(図面の下段)をそれぞれ含む核酸ライブラリープール(pool;5R、6R、7Rは、それぞれ5回目、6回目、7回目のラウンドの核酸ライブラリープール)から得られたターゲット結合力の結果である。図3によると、ライブラリー製作に用いた変形核酸の種類や、ターゲットタンパク質の種類に関係なく、すべての1次SELEXの段階で、ターゲットタンパク質への結合力を示す核酸ライブラリープール(pool)の存在が確認された。
【0130】
2-2-2. フィルタ結合アッセイ(Filter binding assay):ヒト血清アルブミン
【0131】
ターゲットタンパク質とSELEXラウンドが行われた核酸ライブラリープール(pool)の結合力を測定する、また他の方法として、フィルタ結合アッセイを行った。
【0132】
先に行われた6回目のラウンドと8回目のラウンドの核酸ライブラリープール(pool)の末端を、α-32P ATP(パーキンエルマー、米国)とTdT(Terminal deoxynucleotidyl transferase;New England Biolabs、米国)で標識した。
【0133】
具体的に、SELEX過程を通じて得た核酸ライブラリープール(pool)を、前記2-2-1と同一の方法で増幅した後、sense一本鎖核酸ライブラリープール(pool)を製造した。そして核酸ライブラリープール(pool)を1pmole、0.25μlのα-32P ATP、0.25μlのTdT、及びNEBufferTM 4(New England Biolabs、米国)を混合した後、37℃で30分間反応させ、70℃で10分間処理してTdT酵素を不活性化させた。標識された核酸ライブラリープール(pool)はMicro spin G50 column(GEヘルスケア、米国)を用いて精製した後、ベータカウンター機を用いて定量した。核酸ライブラリープール(pool)20,000cpmを100μLのバッファSB18に入れ、95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ反応させて徐々に温度を下げ、核酸ライブラリープール(pool)の三次構造の形成を誘導した。バッファSB18を用いてターゲットタンパク質を段階希釈(serial dilution)した後、構造を安定化させた標識された核酸ライブラリープール(pool)を30μLそれぞれ添加し、37℃で30分間反応させた。核酸ライブラリープール(pool)とターゲットタンパク質の混合物にゾルバックスレジン(zorbax resin;アジレント、米国)を5.5μL添加して5分間さらに反応させた。反応が終了したサンプルを予めバッファSB18 50μLで濡らしておいたMultiScreen-HV Filter Plate(メルクミリポア、米国)に移した後、真空で溶液を除去し、メンブレンフィルターを100μLのバッファSB18で洗浄した。フィルタープレート(Filter plate)をイメージプレート(image plate)に16時間露出させた後、FLA-5100(富士フイルム、日本)でイメージを定量化した。結合親和力は、フィルタ結合アッセイを通じて得られた値をシグマプロット11という分析ソフトウェア(シスタット・ソフトウエア、米国)を用いて求め、BmaXはインプット(input)対比結合したオリゴDNAの比率を示したものであり、Kd(dissociation constant)は親和力を示し、Nap libはSELEXを行っていない核酸ライブラリープール(pool)を意味するものであり、陰性対照群として用いた(図4参照)。
【0134】
また別の第1ターゲットタンパク質であるHSAに特異的に結合する核酸ライブラリープール(pool)を選抜するためのSELEXを行った後、6回目及び8回目のラウンドの核酸ライブラリープール(pool)のターゲット結合力を前記フィルタ結合アッセイ法で測定して図4に示した。図4によると、両ラウンドいずれにおいても、アルブミンタンパク質への結合力を示す核酸ライブラリープール(pool)の存在が確認された。一方SELEXを行っていない核酸ライブラリープール(pool)では、アルブミンタンパク質への結合力が示されなかった。
【0135】
3. 第2ターゲットタンパク質(治療標的タンパク質)に特異的な核酸ライブラリープール(pool)の選抜
前述した1次SELEXと結合アッセイを通じて血漿タンパク質への結合力が確認されたラウンドの核酸ライブラリープール(pool)を用い、治療標的タンパク質を対象に2次SELEXを実施した。2次SELEX法は1次SELEX法と同一であるが、治療標的タンパク質の結合特異性の増加に必要な場合、カウント選別(count selection)過程を追加した。
【0136】
以下の実施例で用いた治療標的タンパク質は、K-RAS G12Dタンパク質(Signal chem社、製品名:K-RAS(G12D) Protein(R06-32BH)、カタログナンバー:R06-32BH)である。
【0137】
2次SELEXを行うためには、結合力が確認された特定のラウンドの核酸ライブラリープール(pool)に対する十分な量が必要なので、これを、qPCRを用いて増幅した。qPCR以降の過程は1次SELEXと同一である。治療的ターゲットであるK-RAS突然変異タンパク質に結合する核酸ライブラリープール(pool)を選別する場合、K-RAS野生型タンパク質に対してカウント選別を行った。具体的には、K-RAS野生型タンパク質を磁性ビーズ20μgに添加してサーモミキサーを用いて37℃、1200rpm、10分間反応させた後、磁石とバッファSB18を用いて野生型タンパク質-磁性ビーズ複合体を3回洗浄した。このように準備した複合体に、準備された核酸ライブラリープール(pool)とタンパク質競争緩衝液(protein competition buffer)の混合液を添加して37℃、1200rpm、10分間反応させた後、野生型タンパク質に結合していない上澄液の核酸ライブラリープール(pool)を突然変異型ターゲットタンパク質が固定されたビーズに移し、治療標的タンパク質と結合する核酸ライブラリープール(pool)を選抜した。治療標的タンパク質に対する2次SELEXも同一の方法で5~8ラウンド実施し、デキストランサルフェートを用いた動的誘発は行わなかった。
【0138】
前述したELISA結合アッセイ方法と同一に、各ラウンドの核酸ライブラリープール(pool)サンプルを用いて治療標的タンパク質に対する結合力を確認した(図5参照)。
【0139】
例えば、第2ターゲットタンパク質としてK-RAS G12Dを用いた。これに対する結果を図5に示した。図5によれば、第1ターゲットタンパク質の種類及び第2ターゲットタンパク質の種類に関係なく、第2ターゲットタンパク質に対する結合力を示す核酸ライブラリープール(pool)の存在が確認された。
【0140】
4. SELEX核酸ライブラリープール(pool)の塩基配列の分析
結合力が確認されたSELEXラウンドの核酸ライブラリープール(pool)サンプルを、5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG(配列番号:13))と3'プライマー(GCTGGTGGTGTGGCTG(配列番号16))を用いてPCR過程を通じて増幅した後、TOPO TA Cloning kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を用いてクローニングし、E.coli TOP10細胞に形質転換させた。寒天培地で育った単一コロニーのプラスミド核酸をRCA(rolling circle amplification)キット(エンジノミクス、韓国)を用いて増幅し、クローニングしたPCR産物の挿入有無を確認した後、単一配列が挿入されたクローンのRCAサンプルを用いてBigDye terminator cycle sequencing kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)と毛細血管電気泳動法で塩基配列分析(ソルジェント、韓国)を実施した。例えば、各サンプル当たり最少で略50個の程度のクローン配列分析を実施して、SELEXを通じて選抜された核酸ライブラリープール(pool)に存在するそれぞれの核酸配列を最終確認した。
【0141】
分析が完了した核酸配列をMultalinのウェブサイトまたは当社製作ソフトウェアを用いて分析し、発現頻度が最も多い配列(例:略5個~略10個)を選抜した。
【0142】
5. DNAポリメラーゼ(DNA polymerase)を利用したクローン核酸リガンドの合成及び結合力測定
前記で選抜された核酸配列に対し、塩基配列分析に用いられた二本鎖DNAを鋳型とし、5'プライマー(GAGTGACCGTCTGCCTG(配列番号:13))、ビオチン結合の3'プライマー(Biotin-GCTGGTGGTGTGGCTG(配列番号:14))及び、DNAポリメラーゼを用いて合成した。これはクローン核酸リガンドに該当する。前述した実施例1の項目2-2-1.のビーズ基盤ELISA結合アッセイと同一の方法でクローン核酸リガンドのターゲットタンパク質に対する結合力を測定した(例:図6a及び図6b参照)。
【0143】
即ち、核酸リガンドのHSAタンパク質とK-RASタンパク質に対する結合親和度をそれぞれ分析した結果、結合力が確認されたS016-E2の#1クローンを選抜した。このようなクローンを用いて配列番号1の核酸リガンドを合成し、以下の実施例で用いた(図6a及び図6b参照)。
【0144】
このように、第1ターゲットタンパク質及び第2ターゲットタンパク質に対する結合親和度が確認された配列を選抜し、このように選抜された全長核酸リガンドを、DNA自動合成機を用いて変形核酸が含まれた形態に合成し、以下の実施例において全長核酸リガンドとして用いた。
【0145】
例えば、実施例1の方法で選別された全長核酸リガンドは、表2に記載された核酸リガンドAD003である。
【0146】
実施例1の方法で選別した全長核酸リガンドAD003を、Waters Prep150(Waters、米国)とWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio PLUS System(Waters、米国)に逆相のC18カラムで分析して精製した。また、精製された核酸リガンドの質量分析をWaters Xevo G2-XS Q-TOF System(Waters、米国)で行った。質量分析結果は表3に記載した。
【0147】
以下の表に記載された核酸塩基配列の6と示された部分は、5-[N-(1-ナフチルメチル)カルボキサミド]-2'-デオキシウリジン(Nap-dU)を意味する。
【0148】
【表2】
【0149】
実施例2. 全長核酸リガンドの最適化(Truncation)及び製造
実施例1の方法で選別された全長核酸リガンドを用いて最適化のための切断(truncation)過程を行った。
【0150】
最適化のためにMfoldウェブサーバー(http://www.unafold.org/mfold/applications/dna-folding-form.php)を用いて全長核酸リガンドの2D構造を予測し、これに基づいて選抜された全長核酸リガンドの両末端から長さを縮め、最小の長さでクローン配列(母体になる全長核酸リガンド)と類似の最適化核酸リガンド候補を合成した。例えば、核酸リガンドAD003~AD008の2D予測構造を図7a~図7cに示した。
【0151】
核酸リガンドはMermade 12またはMermade 48(バイオオートメーション、米国)を用いて一般的なDNA自動合成法で合成した。[Deblocking→Coupling→Capping→Oxidation]の4段階工程を1サイクルとして1merずつ(1個のヌクレオチドずつ)3'末端から5'末端に順次合成した。必要に応じて核酸リガンドの5'末端の前方にビオチンや蛍光物質(FAMまたはCy5)を結合した。ビオチンとFAMは自動合成機で合成し、Cy5は5'-アミン核酸リガンド合成後、アミンカップリング(Amide Coupling)を行って合成した。合成された核酸リガンドまたはビオチンか蛍光物質(FAMまたはCy5)が結合された核酸リガンドは、HPLC精製を経て以下の実施例で用いた。
【0152】
実施例2により製造された核酸リガンドを、全長核酸リガンドAD003(太字及び下線で表示)とともに下の表3に記載した。該表3の最適化核酸リガンドはいずれも同一の全長核酸リガンドAD003を用いたものである。
【0153】
このように製造された核酸リガンドをWaters Prep150(Waters、米国)とWaters ACQUITY UPLC H-Class Bio PLUS System(Waters、米国)に逆像C18カラムで分析して精製した。また精製された核酸リガンドの質量分析をWaters Xevo G2-XS Q-TOF System(Waters、米国)で行った。質量分析の結果は表3に記載した。
【0154】
例えば、本開示の一実施態様による核酸リガンドAD005の精製前後のUPLC分析結果を図8に示して質量分析の結果を図9に示した。
【0155】
【表3-1】
【表3-2】
【0156】
*前記表3の質量分析では5'末端にビオチンが結合された核酸リガンドを用いた。以下では実施例1~2により製造された核酸リガンドを対象に、実際の薬品で用いたときに効能を発揮できる核酸リガンドを選別するための過程を行った。
【0157】
実施例3. 選別された全長核酸リガンドの複数のターゲットに対するDnase安定性実験
血清には種々の核酸分解酵素が存在するところ、オリゴ核酸物質を血清と反応させると数時間内にオリゴ核酸分子が分解されることは十分に知られている。しかし、アルブミンのような血漿タンパク質と結合した核酸リガンドは、核酸分解酵素の分解作用に抵抗性を示して分解されないと報告されている。また、核酸リガンドは、血漿タンパク質以外の他のターゲットタンパク質と結合した場合にも核酸分解酵素の分解作用に抵抗性を示し得る。従って、選抜された全長核酸リガンドを核酸分解酵素に露出させる条件下で反応させ、核酸リガンドの分解程度を把握して第1及び第2ターゲットタンパク質との結合有無を評価し、さらに血清内で核酸リガンドの安定性を評価した。このような評価によって、血液内のターゲットタンパク質に対する結合により、ターゲットに結合して所望の効果を奏する核酸リガンドの構造、または核酸リガンドのターゲットに対する結合部位が維持されて有効な効能を示し得る核酸リガンドなのかどうかを予め確認することができる。
【0158】
まずバッファSB18に溶かした0.5pmoleの核酸リガンド(実施例1及び2の方法で選別)、DMEM培地、核酸分解酵素反応用緩衝溶液(DNaseI RNase-free、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)及び滅菌DWを混合する。このように製造した核酸リガンド混合物を95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ反応させながら、徐々に温度を下げて核酸リガンドの三次構造の形成を誘導した。安定化した核酸リガンドに第1ターゲットタンパク質(血漿タンパク質)、または第2ターゲットタンパク質(治療標的タンパク質)を20pmole添加した後、4℃で30分間反応させて核酸リガンドとターゲットタンパク質を結合させた。この時、陽性対照群及び陰性対照群にはターゲットタンパク質を添加しなかった。この反応液に核酸分解酵素(DNaseI、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)1ユニット(unit)を添加して37℃で16時間、核酸分解酵素作用を活性化した。この時、陰性対照群には核酸分解酵素を添加しなかった。反応の16時間後に85℃で加熱して核酸分解酵素を不活性化させ、10%の尿素-ポリアクリルアミドゲル(Urea-Polyacrylamide gel)で電気泳動を実施した。各対照群と各実験群のバンド強度(band intensity)を比較して核酸分解酵素に対する核酸リガンドの安定性を確認した。このような結果から核酸リガンドがターゲットタンパク質に効果的に結合するかどうかを確認でき、核酸分解酵素に対する優れた安定性を示す核酸リガンド候補を選別することができる。
【0159】
実施例1の方法で選別した全長核酸リガンドを用いて前記実験を行った。バンド強度が血漿タンパク質及び治療標的タンパク質のいずれに対しても有意味な核酸リガンドは、血漿タンパク質及び治療標的タンパク質にいずれも優れるように結合する特性を有するだろう。電気泳動結果で核酸分解酵素を添加していない陰性対照群のバンドと比較して、バンド強度が10%を以上の場合を各ターゲットタンパク質と有意味に結合することで評価した。血漿タンパク質及び治療標的タンパク質いずれに対しても結合する結果を示す全長核酸リガンドを表4に記載した。ただし、全長核酸リガンドに対するDnase電気泳動結果が有意味でなくても、これの最適化配列では電気泳動結果が有意味に出て、結合力(Kd)が確認される場合が存在し得る。
【0160】
例えば、AD003~AD008核酸リガンドに対するDnase安定性電気泳動の結果を図7a~図7cに示した。
【0161】
各ターゲットタンパク質に結合する結果を示す、核酸リガンドのターゲットに対する結合親和度を追加で確認するために結合力(Kd)を測定した。
【0162】
実施例4. 全長核酸リガンドの複数のターゲットに対する結合力(Kd)の測定
ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent assay)法を用いて核酸リガンドの結合力を測定した。まず5'ビオチンが結合された核酸リガンドをバッファSB18内で95℃から37℃まで1℃ごとに10秒ずつ反応させて徐々に温度を下げ、核酸リガンドの三次構造の形成を誘導した。
【0163】
実験方法は次のような段階で行われる。
【0164】
1)マイクロプレートにターゲットタンパク質を低温で16時間コーティングする。
【0165】
2)Blocking Buffer(PierceTM Protein-Free(PBS) Blocking Buffer、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を用いて常温で1時間反応してマイクロプレート表面をブロックさせる。
【0166】
3)マイクロプレートに核酸リガンドを処理して37℃で1時間反応させる。
【0167】
4)酵素接合(Enzyme Conjugation)のためにHRP(Streptavidin-Horseradish Peroxidase(HRP)Conjugate、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)を処理して常温で1時間反応させる。
【0168】
5)TMB(TMB Substrate Solution、サーモフィッシャーサイエンティフィック、米国)基質を処理して常温で30分反応させる。
【0169】
6)反応終結液(2Mの硫酸)を処理する。
【0170】
7)GloMaXプレート測定機(プロメガ、米国)を用いて450nmで吸光を測定する。
【0171】
ターゲットタンパク質は500nM、核酸リガンドは500nMから4倍ずつ薄めて用いた。測定された核酸リガンドの各ターゲットタンパク質に対する結合親和度を表4に示した。ターゲットタンパク質にいずれも結合する電気泳動結果を示す核酸リガンドは、各ターゲットタンパク質に対する結合親和度を示すことを確認することができる。
【0172】
実施例5. 全長核酸リガンドの血清内の半減期の実験
まず、バッファSB18に溶かした2pmoleの核酸リガンドを95℃から37℃まで、1℃ごとに10秒ずつ反応させながら徐々に温度を下げ、核酸リガンドの三次構造の形成を誘導した。安定化した核酸リガンドを96%ヒト血清に添加した後、37℃で0、3、6、9、12、15、18時間反応させて核酸リガンドの分解を誘導した。各反応時間が終わった後に85℃で加熱して核酸分解酵素を不活性化させ、10%尿素-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動を実施した。ヒト血清を添加していない対照群をローディングコントロール(loading control)に含んで対照群と実験群のバンド強度を測定した。測定された値を用いて時間別の強度傾向線を確認し、傾向式に強度値を代入して半減期を確認した。傾向線を逸脱する場合、0、24、48、72、96時間の条件で追加実験を行った。
【0173】
例えば、AD003~AD008核酸リガンドに対する時間に応じた電気泳動結果(血清安定性実験結果)を図7a~図7cに示した。また、このように測定した各ターゲットタンパク質に対する血清半減期(hr)を表4に示した。表4によれば、本開示の一実施態様による核酸リガンドは血清中半減期が高く示されるのが確認でき、これは本開示の一実施態様による核酸リガンドが血漿タンパク質に対して優れた結合力を有し、これにより優れた体内安定性を示し得ることを意味する。
【0174】
実施例6. 最適化核酸リガンドの結合力(Kd)、血清中半減期、及びDnase安定性の実験
実施例2から製造された最適化された核酸リガンドのうちの一部に対して実施例3と同一の方法でターゲットタンパク質に対するDnase安定性実験を行った。代表的な最適化された核酸リガンドの結果を表4に記載した。
【0175】
Dnase安定性実験によりターゲットタンパク質に対する結合が確認された最適化核酸リガンドに対し、実施例4と同一の方法でターゲットタンパク質に対する結合親和度(Kd)を測定し、実施例5と同一の方法で血清中半減期を確認した。このように得られた結果を表4に示した。
【0176】
表4に記載された太字及び下線で示された核酸リガンドは、最適化の基礎となったオリジナル全長核酸リガンド(Full length sequence)であり、その下の核酸リガンドは最適化された切断核酸リガンド(Truncated sequence)に該当する。
【0177】
【表4】
【0178】
*表4に記載された実験では、5'末端にビオチンが結合された核酸リガンドを用いた。その後、前記のように製造した配列番号1~10の核酸リガンドのうち、最適化されたAD005(配列番号3)、AD0089(配列番号7)、AD210(配列番号8)、AD211(配列番号9)、及びAD212(配列番号10)を用いて核酸リガンドの三重陰性乳癌に対する抗癌効能を確認した。
【0179】
実施例7. ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンドの三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(Triple Negative Breast cancer orthotopic model)における抗癌効能の評価
三重陰性乳癌(TNBC)に対する抗癌効能を評価するにあたっては、どのようなin-vivo実験モデルを選択して用いるかが重要である。人体内の免疫学的及び生理学的作用は複雑に作用するので、動物における非臨床実験の結果がヒトへの抗癌効能として信頼を有するためにはヒトの体内環境と類似のモデルを用いることが必要なためである。特にTNBCの場合、侵襲性、転移性及び再発性があり、早期に遠隔臓器で再発する確率と死亡率が高いので、モデルの選定がより一層重要となり得る。
【0180】
現在利用可能な前臨床自発転移性TNBCの同所マウスモデル(preclinical spontaneously metastatic TNBC orthotopic murine model)には、免疫不全ヒトMDA‐モデルMB‐231と、免疫適格マウスのモデル4T1が存在する。ここで、ヒト由来の癌細胞である、細胞株MDA‐MB‐231の場合、マウスに対する移植は異種移植に該当するため、NOD/SCID(Non Obese Diabetic‐Severe Combined Immunodeficiency)マウス、またはヌード(nude)マウスを用いらなければならないという限界がある。このような点で、異種移植された癌細胞(Xenografted cancer cell)は宿主がヒトではないので、基本的にマウス実験のように侵襲的または攻撃的ではない。従って、一般に異種移植を行う際はマトリゲルを用いるが、これはヒト由来の癌細胞がマウス体内で十分に生着がなされないためである。MDA‐MB‐231モデルはヒトの細胞株をマウスに移植する異種移植モデルなので、4T1、CT26、MC38、B16F10等のマウス細胞のように、マウス内で早く育たない。侵襲性/攻撃性(Aggressive)が相対的に低いので、マウスモデルでも転移があまり発生せず、異種移植で用いなければならないNOD/SCIDマウス、またはヌードマウスの場合、免疫細胞が一部または全て存在しないため、免疫体系が除去されるか正しく作動しないので、ヒトへの抗癌効能として信頼するには限界があり得、特にTNBCのような侵襲性及び転移性癌の場合、癌発生と抗癌機作を十分に実現して評価できないため限界が存在し得る。また、癌転移のメカニズムで免疫細胞が寄与する部分もあるので、免疫不全マウスを用いらざるを得ないMDA‐MB‐231モデルは、4T1モデルと比べてTNBCに対する効能を評価するのに限界があるため、正しい評価結果を導き出すのが難しい。これに対し、本実験では、4T1のマウスモデルを用いて原発性TNBCと転移性TNBC(即ち、他の臓器への癌の転移、または外科的手術除去後にも他の臓器で発生する転移性癌)に対する本発明の核酸リガンドの予防または治療効果を評価しようとした。即ち、モデル4T1はマウスの脂肪パッド(4th Fat pad)に4T1腫瘍細胞を注入した後に育った原発腫瘍を標的治療するための原発性TNBCモデルであるのみならず、転移性乳癌モデルであり、前記のように育った原発腫瘍を外科的に完全に除去すれば、残存する腫瘍細胞が異なる臓器、特に肺に自発的転移され、乳癌の自発的転移モデルが生まれる。このとき、4T1細胞にルシフェラーゼレポーター遺伝子(Luciferase reporter gene)がタグ(tagging)された細胞を用いると、注入した腫瘍細胞をルシフェリン(Luciferin)及び生物発光イメージングシステム(In Vivo Imaging System; IVIS)を用いて多様な視点からイメージングできるので、抗癌剤による原発腫瘍の治療効果及び乳癌の転移の治療効果を観察できる有用なモデルである。
【0181】
細胞培養
4T1-Luc2三重陰性乳癌細胞株はATCC(米国)から分譲を受けて実験に用い、10%のFBSと1%の抗生剤が含まれた培地を用いて、37℃、5%CO条件のインキュベーターで培養した。継代培養は細胞が培養容器の80%以上増殖した際に行った。その方法は次のとおりである。PBSで洗浄した細胞に0.05%のトリプシン-EDTAを添加して3分間反応させ、新たな培地を添加してトリプシンを不活性化させる。遠心分離機を用いて細胞を得た後、新しい培養容器に1:5の比率で薄めて培養した。すべての細胞はマイコプラズマの汚染の有無を、kit(バイオマックス、韓国)を用いてPCR方法で確認し、汚染が検出されていない細胞のみを用いて実験を進めた。
【0182】
動物の準備
雌マウスのBalb/c(7週齢)は、ORIENT BIO(ソンナム、韓国)から購入し、すべての動物実験は成均館大学動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)の規定に従って行われた。
【0183】
実施例7-1. ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンドの三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍未切除モデル)の抗癌効能の評価
7-1-1. 三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍未切除モデル)の製作、及び試験物質の投与(図10参考)
【0184】
前記記載した方法で培養された細胞株4T1-Luc2(5X10cell)を1X PBS(Hyclone)溶液30μlに薄め(一匹当たり5X10cells/30μl)、準備された雌マウスBalb/cの脂肪パッド(4th fat pad)に同所移植(orthotopic injection)した。細胞注入から(平均60mmサイズの腫瘍形成時点)6日目、対照群薬品及び試験物質を腹腔内注射(Intraperitoneal injection、IP injection)して腫瘍の抑制効能を比較した。
【0185】
各実験群の動物数は5匹であった。陽性対照群薬品であるゲムシタビン(1mg)及び試験薬品であるAL005(30μg、100μg、300μg)を2日に1回ずつ、計6回腹腔内注射した。
【0186】
7-1-2. 試験物質投与後、マウス観察及び結果の測定
約30日ほどはマウスの生存率及び重さの変化を観察し、腫瘍の体積測定は方程式[腫瘍の長軸X(腫瘍の短軸)X0.5]を用いて2日ごとに測定した。
【0187】
7-1-3. 実験結果
腫瘍未切除実験における腫瘍抑制効能の確認結果は図11のとおりである。
【0188】
薬品未処理群は時間が経過するほど腫瘍の大きさが急激に増加した。一方、本発明の核酸リガンドを投与した場合、腫瘍の大きさの増加が大幅に減少するのを確認でき、薬品未処理群と比較して試験物質AD005は投与用量が増加するほど優れた腫瘍抑制効果を奏した。特に、AD005の300μg処理群は陽性対照群薬品であるゲムシタビン処理群より投与用量が約3分の1ほど少なかったにもかかわらず、陽性対照群と類似の腫瘍抑制効能を確認した(図11)。
【0189】
実施例7-2. ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンドの三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)における抗癌効能の評価
7-2-1. 三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の製作及び試験物質の投与(図12参考)
前記に記載した方法で培養された4T1-Luc2細胞株(5X10cell)を1X PBS(Hyclone)溶液30μlに薄めて(一匹当たり5X10cells/30μl、準備されたBalb/c雌マウスの脂肪パッド(4th fat pad)に同所移植(orthotopic injection)した。細胞注入から(平均60mmサイズの腫瘍が形成された時点)10日目に腫瘍を手術的に除去した後、試験物質を腹腔内注射して腫瘍の転移抑制効能を比較した。
【0190】
試験群の構成は表5のとおりである。試験物質であるAD005を30μg、2日に一回ずつ計6回(Day0、2、4、6、8、10)腹腔内注射し、各試験群の転移(metastasis)状態をIVIS(IVIS Lumina XRMS、Perkin Elmer)で確認した。
【0191】
【表5】
【0192】
7-2-2. 試験物質投与後、マウス観察及び結果測定
薬品の腹腔内投与後、約7日間隔で50日が経過するまでIVIS(in vivo imaging system)撮影した。マウス一匹当たり150mg/kgの濃度でルシフェリンを注射し、10分の反応後、IVIS撮影した。
【0193】
7-2-3. 試験結果
腫瘍切除モデル実験における転移及び再発抑制効果の結果は図13のとおりである。薬品未処理群は腫瘍切除後32日目、4匹のうち2匹が斃死し、50%の生存率を示したが、試験物質AD005を30μg投与した実験群は32日目に7匹のうち2匹のみ斃死して約70%の生存率を示した。
【0194】
実施例7-3. ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンド、及びその切断核酸リガンド(AD005 Truncated sequence)の三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)における抗癌効能の評価
7-3-1. 三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の製作及び試験物質の投与
三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の製作方法及び試験物質の投与経路は7-2-1.で記載した内容と同一である。
【0195】
試験群の構成は表6のとおりである。陽性対照群薬品であるゲムシタビン(1mg)、陰性対照群薬品(ERBB2標的核酸リガンド)のControl aptamer(配列番号17)(300μg)及び試験物質であるAD005(300μg、600μg)、AD089(300μg、600μg)を2日に一回ずつ15回(Day0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28)腹腔内注射し、各試験群の転移状態をIVIS(IVIS Lumina XRMS、Perkin Elmer)で確認した。本実験の計画概括は図14に示したとおりである。
【0196】
【表6】
【0197】
7-3-2. 試験物質投与後、マウス観察及び結果測定
薬品の腹腔内投与後、約7日間隔で59日が経過するまでIVIS(in vivo imaging system)撮影した。マウス一匹当たり150mg/kgの濃度でルシフェリンを注射し、10分反応後、IVIS撮影した。
【0198】
約60日程度までマウス生存率及び重さの変化を観察し、腫瘍の体積測定は方程式[腫瘍の長軸X(腫瘍の短軸)X0.5]を用いた。
【0199】
7-3-3. 試験結果
腫瘍切除モデル実験における転移及び再発抑制効果の結果は図15及び16のとおりである。薬品未処理群は腫瘍切除から35日が経過するまで全て斃死し、陽性対照群薬品であるゲムシタビン投与群と陰性対照群薬品(HER2標的核酸リガンド)のControl aptamer投与群は、42日以前に全て転移によって斃死したが、試験物質であるAD005及びAD089投与群は59日が経過するまで一部の個体が生存した。
【0200】
59日経過するまでAD005 300μg投与群は5匹のうち4匹が斃死して20%の生存率を、AD005 600μg投与群は4匹のうち1匹が斃死して75%の生存率を示した。また、AD089 300μg投与群は4匹のうち3匹が斃死して25%の生存率を、AD089 600μg投与群は4匹のうちの2匹が斃死して50%の生存率を示した。
【0201】
薬品未処理軍及び対照群と比較して試験物質AD005及びAD089は、投与用量が増加するほど優れた腫瘍の転移及び再発抑制効果を奏した。
【0202】
実施例7-4. 薬品結合ヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンド内の任意の位置にゲムシタビン結合、または置換した新規物質の三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)における抗癌効能の評価
7-4-1. 三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の製作及び試験物質の投与
三重陰性乳癌の同所移植動物モデル(腫瘍切除モデル)の製作方法は、7-2-1.で記載した内容と同一である。
【0203】
各実験群の動物数は5匹であった。陽性対照群薬品であるゲムシタビン(1mg)を2日に一回ずつ10回(Day0、2、4、6、8、10、12、14、16、18)静脈注射(Intravenous Injection、IV injection)し、試験物質であるAD210(100μg)、AD211(100μg)及びAD212(100μg)を2日に一回ずつ15回(Day0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28)腹腔内注射した。各試験群の転移状態はIVIS(IVIS Lumina XRMS、Perkin Elmer)で確認した。本実験の計画概括は図17に図式化した通りである。
【0204】
7-4-2. 試験物質投与後、マウス観察及び結果測定
腹腔内投与後、約7日間隔で40日が経過するまでIVIS(in vivo imaging system)撮影した。マウス一匹当たり150mg/kgの濃度でルシフェリンを注射し、10分反応後、IVIS撮影した。
【0205】
7-4-3. 試験結果
腫瘍切除モデル実験における転移及び再発抑制効果の結果は図18のとおりである。薬品未処理群は腫瘍切除後35日が経過する前に全て斃死し、陽性対照群薬品であるゲムシタビン投与群は42日以前に全て転移によって斃死した。
【0206】
試験物質であるAD210、AD211及びAD0212は、本発明のヒト血清アルブミン(HSA)及びK-RAS G12Dターゲット核酸リガンド配列にゲムシタビン(Gemcitabine)結合または核酸リガンド配列のうちの一部をゲムシタビンに置換したものであり、それぞれの投与群は42日が経過するまで一部の個体が生存した。
【0207】
腫瘍切除後42日が経過するまで、AD210 100μg投与群は、5匹のうち3匹が斃死して40%の生存率を、AD211 100μg投与群とAD211 100μg投与群は5匹のうち4匹が斃死して20%の生存率を示した。
【0208】
特に、腫瘍切除後42日目の基準で、AD210 100μg投与群は7-3-3. 試験結果のAD005 300μg処理群より投与用量が約3分の1ほど少なかったにもかかわらず、優れた腫瘍の転移及び再発抑制効果が確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024530030000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
本出願/研究は、科学技術情報通信部、産業通商資源部、保健福祉部の財源で国家新薬開発事業団の国家新薬開発事業支援によって行われたものである(課題番号:RS-2022-DD128903)。
【国際調査報告】