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特表2024-530031ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/55 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240806BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
A61K38/20
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K47/60
C12N15/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507114
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2022114421
(87)【国際公開番号】W WO2023030118
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111019771.1
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524024074
【氏名又は名称】ノヴォコデックス バイオファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】リャン シュエジュン
(72)【発明者】
【氏名】イェ チェンハオ
(72)【発明者】
【氏名】シア ガン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ロンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】フオ ペンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イン ユエビン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン ズンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヘン シン
(72)【発明者】
【氏名】チュー シャオユー
(72)【発明者】
【氏名】チュー リーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ディン ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ リン
(72)【発明者】
【氏名】チュー ジンジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA07
4C084BA42
4C084CA18
4C084CA53
4C084CA59
4C084DA14
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA04
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明では、ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート及びその使用が提供されている。ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートは、少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2と、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされたPEGと、を含有し、前記非天然アミノ酸は、式(I)で表される構造を有するカルボニル末端基含有化合物又はその鏡像異性体であり、前記カルボニル末端基とヒドロキシルアミン末端基含有PEGとがオキシム結合を形成することにより、PEGが前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされている。ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートは、単剤で用いられてもよいし、他の抗腫瘍薬と併用されてもよく、固形腫瘍、血液腫瘍などの疾患の治療に用いられる。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2と、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされたPEGと、を含有する、ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートであって、
前記非天然アミノ酸は、式(I)で表される構造を有するカルボニル末端基含有化合物又はその鏡像異性体であり、前記カルボニル末端基とヒドロキシルアミン末端基含有PEGとがオキシム結合を形成することにより、PEGが前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされており、
【化1】
式中、X及びZは夫々独立に、置換され若しくは置換されないC0~C20の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-S(O)-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、Yは-C(O)-、-S(O)-又は-CH-を示し、Aは置換され若しくは置換されないC6~C20のアリール基を示し、
前記X、Z及びAが夫々独立に、置換された基を示す場合、置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロ基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である、
ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項2】
前記組換えヒトインターロイキン-2は、SEQ ID NO:3に示されるタンパク質又はその機能活性断片であり、
好ましくは、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2における、少なくとも1つの非天然アミノ酸の位置は、SEQ ID NO:2に対応するP34位、K35位、T37位、R38位、L40位、T41位、F42位、K43位、F44位、Y45位、E61位、E62位、K64位、P65位、E67位、E68位、N71位、L72位、Y107位から選ばれた1つ又は複数の部位である、
請求項1に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項3】
前記置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、C4~C10ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数であり、
好ましくは、前記X及びZは夫々独立にC0~C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、好ましくはC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、より好ましくは、前記XとZは同時にC0アルキレン基ではなく、及び/又は、
前記Aは置換され若しくは置換されないC6~C10のアリール基を示し、より好ましくは、前記Aは置換され若しくは置換されないフェニル基又はナフチル基を示す、
請求項1又は2に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項4】
前記非天然アミノ酸は、式(I-1)で表される構造を有する化合物であり、
【化2】
式中、前記X、Z及びAは夫々独立に請求項1乃至3の何れか一項で定義されたものであり、
好ましくは、前記非天然アミノ酸は、式(I-2)で表される構造を有する化合物であり、
【化3】
式中、前記Xは請求項1乃至3の何れか一項で定義されたものであり、
、Rは夫々独立に、水素、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、又はC4~C10ヘテロアリール基を示す、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項5】
前記非天然アミノ酸は、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)又は式(I-6)で表される構造を有する化合物であり、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
式中、X’はC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、好ましくはC0~C4の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-及び/又は-NH-に置換可能であり、
前記R、Rは夫々独立に請求項4で定義されたものである、
請求項4に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項6】
前記非天然アミノ酸は、下記の何れか1つで表される構造を有する化合物であり、
【化8】
請求項5に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項7】
前記ヒドロキシルアミン末端基含有PEGの分子量は、20~50 KDである、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項8】
前記少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2は、コドン拡張技術または化学合成法によって製造されたものである、
請求項1乃至7の何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項9】
前記コドン拡張技術は、大腸菌中で実現されたものである、
請求項8に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートの、免疫促進用薬物、固形腫瘍及び血液腫瘍の予防及び/又は治療用薬物、及び/又はCD8T細胞増殖用薬物の製造における使用であって、
好ましくは、前記固形腫瘍は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、頭頸癌、腎癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌であり、
好ましくは、前記血液腫瘍は、慢性リンパ球白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外縁帯B細胞リンパ腫、節辺縁帯B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、B細胞幼リンパ球白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、又はリンパ腫様肉芽腫瘍である、前記の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物製薬分野に関し、具体的には、ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-2(Interleukin 2、IL-2)は、活性化されたI型ヘルパーTリンパ球(Th1)から産生される重要な免疫調節因子であり、以前にT細胞成長因子と呼ばれ、その主要な生物学機能は、刺激と抗アポトーシスの二重方式でT細胞(CD4とCD8T細胞を含む)の成長、増殖、分化を促進すること、及び細胞因子の更なる分泌を促進することにある。それに加えて、インターロイキン-2はNK細胞の増殖を刺激し、NK細胞殺傷活性を増強し、細胞因子を産生し、LAK細胞の産生を誘導し、B細胞の増殖と抗体の分泌を促進することもできる。したがって、インターロイキン2は生体の免疫応答や抗ウイルス感染などに重要な役割を果たすものである(Gaffena S.L., Cytokine 28:109e123,2004)。
【0003】
IL-2は、1976年にMorganなどによって初めて発見されて以来、臨床的に広く応用されている。1991年、米国Cetus社製rhIL-2(製品名:Aldesleukin)は、FDAによって発売が承認され、腎細胞癌、悪性メラノーマ、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍に広く応用されており(Proleukinの取扱書)、B型肝炎やC型肝炎感染の補助治療にも潜在的な効果がある(Tomova R.など、Anticancer Research,29:5241-5244,2009)。中国では現在までに10社余りからの組換えヒトインターロイキン-2による生物製品は、製造されて販売されており、腎細胞癌、メラノーマ、乳癌、膀胱癌、肝臓癌、直腸癌、リンパ癌、肺癌などの悪性腫瘍の治療に広く応用され、癌性胸腹水の制御に用いられ、手術、放射線治療及び化学療法後の腫瘍患者の生体免疫機能の増強に用いられ、先天性や後天性免疫不全症患者の細胞免疫機能及び抗感染能力の向上に用いられ、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾燥症候群などのような多種の自己免疫病の治療に用いられ、それに加えて、あるウイルス性、桿菌性疾患、細胞内寄生菌感染症、例えばB型肝炎、ハンセン病、肺結核、モニリア・アルビカンス感染などに対しても一定の治療作用を持つ。
【0004】
ヒトIL-2前駆体は153個のアミノ酸残基からなり、細胞が分泌されたと、そのシグナルペプチド(20個のアミノ酸残基を含む)が切除されて、133個のアミノ酸の成熟IL-2が産生され、その相対分子量が15.4kDであった。IL-2のエフェクター細胞への活性化作用は、細胞表面のIL-2受容体(IL-2R)と結合することにより達成された。現在では発見されたように、IL-2受容体にはIL-2Rα、IL-2Rβ、IL-2Rγの3種が含まれ、三者によれば、高親和性を有するヘテロ多量体糖タンパク質の機能複合体IL-2Rαβγ(Kd=10-11mol/L)を形成することができる。IL-2RβとIL-2Rγによれば、中親和性を有する受容体複合体IL-2Rβγ(Kd=10-9mol/L)を形成することができ、この受容体複合体はIL-2によって活性化された後に生物学的活性を有し、一方、IL-2Rαサブユニットは低親和性を有する受容体形態(Kd=10-8mol/L)であり、IL-2と結合しても細胞内増殖信号を伝達することができず、IL-2RαとIL-2Rβによっても高親和性を有する受容体複合体を形成することができるが、この受容体複合体は生物学的機能を有しておらず、IL-2によって活性化されることもできない。異なる細胞、同種細胞の異なる発育段階及び疾病の異なる状態では、IL-2受容体の種類の発現程度が異なり、それによって異なる受容体複合体が形成されることとなる。例えば、LAK細胞の前駆体は高レベルのIL-2Rβγ複合体を発現しており、IL-2によって活性化された後に癌細胞を攻撃及び分解することができ、マクロファージもIL-2Rβγ複合体を発現しており、IL-2によって活性化されることもでき、単核細胞は大量のIL-2Rγ及び少量のIL-2Rβを発現しており、NK細胞は大量のIL-2Rβ及び少量のIL-2Rγを発現しており、それらはそれぞれ中親和性を有するIL-2Rβγ受容体を形成でき、この受容体は高濃度IL-2と結合して三量体を形成した後に単核細胞又はNK細胞を活性化する。活性化されたT細胞表面はIL-2Rα、IL-2Rβ、IL-2Rγを発現しており、過量のIL-2Rαは先ず最初にIL-2Rβと重合するのに有利であり、IL-2RαβがIL-2と結合してからIL-2Rγと結合して高親和性受容体とIL-2の複合体を形成し、さらにシグナルを伝達して細胞増殖反応を引き起こす。細胞反応後、IL-2Rα、IL-2Rβ、IL-2Rγが解離したため、細胞はIL-2に対して敏感でなくなった。ヒト腫瘍細胞にもIL-2受容体発現があり、IL-2が腫瘍細胞上の受容体複合体と結合したと腫瘍細胞の増殖を抑制することができ、異なる癌細胞がそれぞれ特殊なIL-2受容体複合体を発現するため、IL-2が特異な腫瘍表面の対応する受容体のみに作用するようにその構造を改良すれば、癌細胞のみを攻撃し、正常細胞へのダメージを減少させることができる。
【0005】
この研究理論を基礎とし、多くの研究者はIL-2に対して異なる方面の改良を行い、それに結合される抗腫瘍関連エフェクター細胞表面の特異的受容体複合体(例えばIL-2Rβγ複合体)を増強させ、腫瘍殺傷関連細胞タイプを活性化し、同時に負性免疫調節T細胞(例えばTreg細胞)の表面に高発現されるIL-2Rαβγ複合体との結合をできるだけ減少させ、このようにすれば、薬効を向上させながら、薬物の副作用を低下させることができる。既存のIL-2への改良としては、特異的なIL-2変異タンパク質を設計し(例えば、Aron M.L.など、Nature,484(7395):529-33,2012)、空間構造がIL-2Rαとの相互作用に不利したり、IL-2RβやIL-2Rγとの相互作用を強くしたりするように、IL-2Rα、IL-2Rβ又はIL-2Rγとの結合部位のアミノ酸配列を変化させること、IL-2/抗IL-2抗体(又はIL-2受容体)複合体(例えば、Jared E.L.など、J Immunother Cancer,8(1):e000673,2020)を設計し、抗IL-2抗体の特異性を利用してIL-2Rとの結合部位をマスクし、IL-2機能の変化及び体内半減期の延長を実現すること、IL-2をFc又はヒト血清アルブミン(HSA)と融合発現することでIL-2の体内半減期の延長を実現する(例えば、JianyongLeiなど、Protein Expression and Purification,84(1):154-160,2012)こと、部位特異的突然変異とHAS/Fc融合を組み合わせて機能の変化と半減期の延長を同時に実現する(例えば、CN112724259A)こと、IL-2に対して非部位特異的なカップリングによるPEG化を行うことでIL-2の半減期を延長させる(例えば、Deborah H.C.など、Clin Cancer Res,22(3):680-90,2016)ことが挙げられる。
【0006】
上記のIL-2改良に関する研究は以下の欠点が存在する。
【0007】
1、単純なアミノ酸の部位特異的突然変異は、IL-2Rαとの結合能力を弱くするか、又はIL-2RβやIL-2Rγとの結合能力を強くすることができるが、分子の半減期を有効に延長することができず、それに加えて、その突然変異生成物は、体内で免疫源反応を発生させやすく、生成物の生物学的活性を低下させやすく、毒性リスクが大きい。
【0008】
2、単純な融合発現(例えばFcやHSAとの融合)又はIL-2への修飾は、分子の半減期を延長することができるが、実際の使用効果では未修飾IL-2に比べて明らかなメリットが発見されていない。融合発現は目的タンパク質のN末端やC末端で融合分子を修飾することしかできず、修飾部位の最適化を実現することができない。
【0009】
3、一部の部位特異的突然変異と融合発現が組み合わせられたIL-2は、実際の応用では特別なメリットが発見されない(例えば、Rodrigo Vazquez-Lombardiなど、Nat Commun,8:15373,2017)。
【0010】
4、通常の非部位特異的なカップリングによるPEG化IL-2は、実際の応用では特別なメリットが発見されておらず、IL-2Rα結合能力が弱ったPEG化IL-2と組み合わせたことは、段階的な成功を収めたが、非部位特異的なカップリング技術の特徴によって、その生産技術及び品質での制御が困難で、分子構造が複雑で、作用メカニズムが複雑であるなどの欠点が存在する。
【0011】
上記のIL-2改良の限界性に対して、コドン拡張技術を用いてPEGが部位特異的にカップリングされたIL-2を開発した研究者があり(例えば、WO2019028419A1)、所用した非天然アミノ酸はLys-azidoであり、その構造式は以下の通りであった。
【0012】
【化1】
Lys-azidoの末端にあるアジド構造(-N)は、アルキン含有構造(例えばBCN、即ち
【化2】
)で修飾した担体薬物(例えばPEGなど)と化学的に結合してコンジュゲートを形成することができ(例えば中国特許CN103153927B)、高い特異的選択性を有する。しかしながら、このようなカップリング法と化学修飾法では、高コストのアルキン類構造を導入しなければならず、しかも、使用当量が大きい場合にのみ、許容可能な薬物-抗体カップリング比率が得られるので、該当する生産コストが増やし、生産プロセスも複雑で、生産条件が厳しい。
【0013】
上記のことを踏まえて、現在ではIL-2の改良にまだ多くの不足があり、更なる研究が要する。
【発明の概要】
【0014】
従来の技術に存在するIL-2改良での欠点を解消するために、本発明の1つの目的は、ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートを提供することにあり、具体的には、一連の新規な非天然アミノ酸の部位特異的突然変異による組換えヒトインターロイキン-2のアミノ酸配列中の1つ又は複数の天然アミノ酸を用いて、ポリエチレングリコール(PEG)をオキシム化反応によって上記非天然アミノ酸に部位特異的にカップリングして、本発明のコンジュゲートを形成する。
【0015】
本発明の別の目的は、前記ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートの使用を提供することにあり、本発明で提供されるヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートは、悪性固形腫瘍、血液腫瘍などの病気の治療に用いられることができる。
【0016】
本発明の第一の態様では、少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2と、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされたPEGと、を含有する、ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートが提供されており、
前記非天然アミノ酸は、式(I)で表される構造を有するカルボニル末端基含有化合物又はその鏡像異性体であり、前記カルボニル末端基とヒドロキシルアミン末端基(即ちアミノオキシ基)含有PEGとがオキシム結合を形成することにより、PEGが前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされており、
【化3】
式中、X及びZは夫々独立に、置換され若しくは置換されないC0~C20の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-S(O)-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、Yは-C(O)-、-S(O)-又は-CH-を示し、Aは置換され若しくは置換されないC6~C20のアリール基を示し、
前記X、Z及びAが夫々独立に、置換された基を示す場合、置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基(sulfonyl)、スルフィニル基(sulfinyl)、シクロアルキル基、ヘテロシクロ基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である。
【0017】
実施例9に示すように、本発明の発明者は、コストが暴騰し、生産プロセスが複雑であることに加えて、Lys-azidoの末端にあるアジド構造(-N)は組換えヒトインターロイキン-2に挿入された際にアミノ構造(-NH)に還元されやすい(式(1)に示す通り)ため、カップリング活性が失われやすく、よって、この還元反応によってカップリングタ体の製造過程中の収率が低下してしまうことを見出した。
【0018】
【化4】
本発明に係る非天然アミノ酸は、その末端に活性反応基としてカルボニル基が導入されたものであり、構造が新規で、製造が簡便であるだけでなく、カップリング条件が温和で、生産コストが低く、タンパク質に挿入された場合に構造の変化が発生しにくいため、反応活性が失われにくい。本発明に係る非天然アミノ酸は、カルボニル基に結合されたアリール基も含有したものであり、アリール基の導入によって、得られたコンジュゲートの安定性がより強くなり、低いpH条件下でもコンジュゲートが分解しにくい。また、本発明に係る非天然アミノ酸は、所定の鎖長のアルキレン基も含有したものであり、化合物の柔軟性が良好で、多種のコンジュゲートを形成することがより一層容易になる。
【0019】
本発明で提供されるコンジュゲートでは、組換えヒトインターロイキン-2に含有される非天然アミノ酸はカルボニル末端基を含有したものであり、一方、所用したPEGはヒドロキシルアミン末端基を含有し、式(II)で表される構造を有する。
【0020】
【化5】
非天然アミノ酸中のカルボニル基はPEG中のヒドロキシルアミン基とのオキシム化反応が発生してオキシム結合を形成することができ、その構造は式(III)の通りであり、それによってPEGは非天然アミノ酸にカップリングされている。
【0021】
【化6】
式(III)中、D’は本発明に係る組換えヒトインターロイキン-2から非天然アミノ酸のカルボニル基部分が除去された残基を示し、D”は「NH-O-」末端基が除去されたPEGを示す。
【0022】
野生型IL-2または市販の組換えヒトIL-2に比べ、本発明で提供されるコンジュゲートは、IL-2Rαとの結合能力が低下し、IL-2Rβγとの結合活性が維持され、IL-2Rβγ複合体によるCD8T細胞への活性化によってCD8 T細胞の活性化能力及び増殖能力を維持すると同時に、Treg細胞の増殖を抑制することができ、体内で顕著に延長した半減期を持ち、効果的に免疫を促進し、腫瘍を抑制することができる。また、本発明で提供されるコンジュゲートは、カップリング率がより高く、安定性もより良い。
【0023】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記組換えヒトインターロイキン-2は、SEQ ID NO:3に示されるタンパク質又はその機能活性断片である。
【0024】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2における、少なくとも1つの非天然アミノ酸の位置は、SEQ ID NO:2に対応するP34位、K35位、T37位、R38位、L40位、T41位、F42位、K43位、F44位、Y45位、E61位、E62位、K64位、P65位、E67位、E68位、N71位、L72位、Y107位から選ばれた1つ又は複数の部位である。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2における、少なくとも1つの非天然アミノ酸の位置は、SEQ ID NO:2に対応するK35位、T41位、K43位、Y45位、E61位、K64位、P65位から選ばれた1つ又は複数の部位である。
【0025】
本発明に係る非天然アミノ酸では、「C0~Cn」はC0~C1、C0~C2、…C0~Cnを含み、それがC0を示す場合、この基が存在しないことを意味しており、その両端にあるC原子が直接連結して結合になっている。例を挙げて説明すると、前記「C0~C6」基とは、該当する部分に0~6個の炭素原子を含有し、即ち、基が存在しなく、1個の炭素原子含有、2個の炭素原子含有、3個の炭素原子含有、4個の炭素原子含有、5個の炭素原子含有、又は6個の炭素原子含有を指す。前記「C6~C10」基とは、該当する部分に6~10個の炭素原子を含有し、即ち、6個の炭素原子含有、7個の炭素原子含有、8個の炭素原子含有、9個の炭素原子含有、又は10個の炭素原子含有を指す。
【0026】
本発明に係る非天然アミノ酸では、「アリール基」とは、1個又は2個の環を含有する炭素環式芳香族系を指し、ここでかかる環は縮合様式で一緒に連結され得る。「アリール基」は、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基の芳香族基などの単環式又は二環式のアリール基を含む。アリール基は、好ましくはC6~C10アリール基、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、最も好ましくはフェニル基である。
【0027】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、C4~C10ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である。
【0028】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記X及びZは夫々独立に、C0~C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能である。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、前記X及びZは夫々独立に、C0~C6の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能である。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、前記XとZは同時にC0アルキレン基ではなく、言い換えれば、X基とZ基は共に存在しないことが許可されない。
【0029】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記Aは置換され若しくは置換されないC6~C10のアリール基を示し、より好ましくは、前記Aは置換され若しくは置換されないフェニル基又はナフチル基を示す。
【0030】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記非天然アミノ酸は、式(I-1)で表される構造を有する化合物であり、
【化7】
式中、前記X、Z及びAは夫々独立に上記した技術案のうちの何れか1項で定義されたものである。
【0031】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記非天然アミノ酸は、式(I-2)で表される構造を有する化合物であり、
【化8】
式中、前記Xは上記した技術案のうちの何れか1項で定義されたものであり、
、Rは夫々独立に、水素、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、又はC4~C10ヘテロアリール基を示す。
【0032】
本発明による幾つかの比較的好ましい実施形態では、前記非天然アミノ酸は、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)、又は式(I-6)で表される構造を有する化合物であり、
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
式中、X’はC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、より好ましくはC0~C4の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-及び/又は-NH-に置換可能であり、
前記R、Rは夫々独立に上記した技術案のうちの何れか1項で定義されたものである。
【0033】
本発明に係る非天然アミノ酸は、光学的に純粋な鏡像異性体及びラセミ体を含む。
【0034】
本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、本発明に係る非天然アミノ酸は、下記の何れか1つで表される構造を有する化合物であり、
【化13】
【0035】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、本発明に係るヒドロキシルアミン(「NH-O-」)末端基含有PEGの分子量は、10~100KDであり、約10KD、約20KD、約30KD、約40KD、約50KD、約60KD、約70KD、約80KD、約90KD、約100KDなどの分子量値又は任意に組み合わせた分子量範囲を含むが、これらに限定されるものではない。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、「NH-O-」末端基含有PEGの分子量は20~50KDである。
【0036】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、本発明に係る少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2は、コドン拡張技術または化学合成法によって製造されたものである。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、本発明に係る少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2は、コドン拡張技術によって製造されたものであり、ここで、コドン拡張技術は、大腸菌中で実現されたものである。
【0037】
本発明に係るコドン拡張技術は具体的に以下の工程を含む:突然変異型組換えヒトインターロイキン-2の核酸分子を組換えヒトインターロイキン-2をコードする核酸分子に比べ、突然変異後の核酸分子の相違点は、SEQ ID NO:2に対応するP34位、K35位、T37位、R38位、L40位、T41位、F42位、K43位、F44位、Y45位、E61位、E62位、K64位、P65位、E67位、E68位、N71位、L72位及びY107位のうちの少なくとも1つの部位でのアミノ酸のコドンがアンバーコドンUAGに突然変異した点、突然変異後の核酸分子を大腸菌中で発現させながら、直交化tRNA合成酵素/tRNA対によって、本発明に係るカルボニル基含有リジン類似体(例えばNBOK)を、発現される組換えヒトインターロイキン-2に組み込んだ点、にある。上記のコドン拡張システムの作動原理は下記にある:tRNAPylは宿主細胞のリシルtRNA酵素を利用できず、tRNAPyl RSによってアシル化されるしかできず、tRNAPyl RSはtRNAPylしかアシル化できず、他のtRNAをアシル化できず、つまり、tRNAPylとtRNAPyl RSとの間には直交性があり、該当する非天然アミノ酸をこのような直交化tRNAにアシル化できるのはtRNAPyl RSしかなく、しかも、tRNAPyl RSはこのようなtRNAしかアシル化できず、他のtRNAをアシル化できない。当該コドン拡張システムによれば、カルボニル基含有リジン類似体をアンバーコドンUAGに対応させることができ(つまり、tRNAPyl対応コドンはUAGである)、それによってカルボニル基含有リジン類似体をIL-2に部位特異的に導入することができる。
【0038】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記突然変異した組換えヒトインターロイキン-2を大腸菌中で発現する工程の後、タンパク質変性工程、タンパク質再生工程、限外ろ過工程をさらに含む。
【0039】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、組換えヒトインターロイキン-2中の非天然アミノ酸とヒドロキシルアミン基含有PEGとのオキシム化反応は、以下の過程を含む:オキシム化反応前、突然変異した組換えヒトインターロイキン-2溶液のpHを約3.5~4.5に調節し(例えば、2Mの酢酸溶液を用いてpHを約4.0に調節した)、タンパク質濃度を0.5~1.5mg/mlに調節し(例えば、20mM、pH4.0の酢酸ナトリウム緩衝液を使用した)、所定のモル比(例えば、タンパク質:PEG=1:15)で投入し、十分に溶解させ、密封し、恒温振とう台で揺動しながら反応させた(例えば、30~60時間反応させた)。反応後、通常の測定方法(例えば、RP-HPLC)によってカップリング状況を分析することができる。
【0040】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、オキシム化反応(即ちカップリング反応)後の反応溶液には、一部の未反応IL-2、不純タンパク質、未反応PEGが含まれているので、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いてさらに精製することもできる。例えば、精製の過程は以下の通りであった:クロマトグラフィー媒質をCapto MMC、平衡緩衝液を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH=3.0)、溶離緩衝液を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液-1M NaCl(pH=7.8)とし、カップリング反応液を平衡緩衝液でpH 3.0±0.2に調節し、電気伝導率≦5ms/cmになるように調節し、Capto MMCにサンプルローディングし、溶離緩衝液を用いてリニア溶離(0~100%の溶離液、20CV)を行い、目的タンパク質成分を収集した。この精製過程によって、純度が約95%の目的タンパク質サンプルを獲得することができる。
【0041】
本発明の第二の態様では、上記した技術案のうちの何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートの、免疫促進用薬物、固形腫瘍(特に悪性固形腫瘍)及び血液腫瘍の予防及び/又は治療用薬物、及び/又はCD8T細胞増殖用薬物の製造における使用が提供されている。
【0042】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記固形腫瘍は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、頭頸癌、腎癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌である。
【0043】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記血液腫瘍は、慢性リンパ球白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外縁帯B細胞リンパ腫、節辺縁帯B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、B細胞幼リンパ球白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、又はリンパ腫様肉芽腫瘍である。
【0044】
本発明の第三の態様では、上記した技術案のうちの何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートを含む試薬キットが提供されている。
【0045】
本発明の第四の態様では、上記した技術案のうちの何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートを必要とされる患者に治療上有効な量で投与する工程を含む、固形腫瘍(特に悪性固形腫瘍)又は血液腫瘍の予防及び/又は治療方法が提供されている。
【0046】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記固形腫瘍は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、頭頸癌、腎癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌である。
【0047】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記血液腫瘍は、慢性リンパ球白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外縁帯B細胞リンパ腫、節辺縁帯B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、B細胞幼リンパ球白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、又はリンパ腫様肉芽腫瘍である。
【0048】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートは、単独で投与されても良いし、他の1つ又は複数の抗腫瘍薬と併用されても良い。
【0049】
本発明の第五の態様では、上記した技術案のうちの何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートを必要とされる患者に有効な量で投与する工程を含む、免疫機能促進方法が提供されている。
【0050】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記免疫機能促進は、ヒトインターロイキン-2の免疫機能を促進することである。
【0051】
本発明の第六の態様では、上記した技術案のうちの何れか一項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートを必要とされる患者に有効な量で投与する工程を含む、CD8T細胞増殖方法が提供されている。
【0052】
本発明で提供される技術案は、下記の利点を有する。
【0053】
(1)コドン拡張技術により本発明に係る新規な非天然アミノ酸を指定部位に導入することができ、それによってPEGとインターロイキン-2との精確な部位特異的カップリングが実現され、従来のランダムカップリングでは精確にカップリングできないという欠点が克服され、しかも生成物の均一性が高い。
【0054】
(2)本発明に係る非天然アミノ酸は、その構造にカルボニル末端基及びアリール基を含有するリジン類似体であり、一般的なアジド基含有リジン類似体(例えばLys-azido)に比べ、製造がより簡便で、安全性がより良好で、タンパク質に挿入された時に失活しにくく、PEGとの結合率がより高く、得られたコンジュゲートの安定性もより良好であり、組換えタンパク質封入体の変性・再生後であっても95%を超えるカップリング効率を有する。
【0055】
(3)突然変異部位の設計及びスクリーニングにより、本発明では、IL-2Rα結合活性を低減させながら、IL-2Rβ及びIL-2Rγ結合活性が相対的に不変であるように維持することができるインターロイキン-2の突然変異部位が得られ、それによって、この部位特異的に修飾されたヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートは、腫瘍微小環境下でCD8T細胞の増殖を特異的に促進する一方、CD4T細胞の増殖に顕著な作用がないため、腫瘍の免疫治療には有利である。
【0056】
(4)本発明のコンジュゲートは、PEGとのカップリングによりIL-2の体内半減期の延長を達成したため、患者への投与頻度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】発現プラスミドNB1S3-WTの模式図である。
図2】ヘルパープラスミドNB1Wの模式図である。
図3】実施例2で獲得した、突然変異部位の異なるrhIL-2発現菌株に非天然アミノ酸NBOKが添加されて得られた発酵生成物のSDS-PAGE電気泳動図であり(矢印は目的生成物ストリップ位置を示す)、図中の各レーンはそれぞれ下記のことを示す:レーン1:NBOKが投与されたrhIL2-K35-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン2:NBOKが投与されたrhIL2-T41-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン3:NBOKが投与されたrhIL2-K43-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン4:NBOKが投与されたrhIL2-Y45-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン5:NBOKが投与されたrhIL2-E61-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン6:NBOKが投与されたrhIL2-K64-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン7:NBOKが投与されたrhIL2-P65-BL21菌体が破砕、遠心分離後の沈殿物、レーン8:NBOKが投与されたrhIL2-Y45-BL21菌体の沈殿物が洗浄されて得られた封入体。
図4A図4は、それぞれ、実施例3における突然変異型rhIL-2とPEGとのカップリング反応前後のRP-HPLCスペクトルを示し、図4Aではカップリング反応前の各突然変異型rhIL-2が示され、図中、約22.5分を示すところが目的タンパク質の主ピークである。
図4B図4Bではカップリング反応後の各突然変異型rhIL-2が示され(PEGは共に30KD PEGである)、図中、約21分を示すところが目的タンパク質の主ピークである。
図5】実施例4におけるコンジュゲート30KD PEG-rhIL2-Y45のカラムクロマトグラフィーが実施される前後のRP-HPLCスペクトルである。
図6】実施例9におけるrhGH-V91の質量スペクトルを示す図である。
図7】実施例10で獲得した異なる非天然アミノ酸を含有する組換えIL-2菌体のSDS-PAGE電気泳動図である。
図8】実施例10で獲得した異なる非天然アミノ酸を含有する突然変異型IL-2粗タンパク質のSDS-PAGE電気泳動図である。
図9A図9は、それぞれ、実施例11における突然変異型rhIL-2(rhIL2-T41NPAK)とPEGとのカップリング反応前後のRP-HPLCスペクトルを示し、図9Aではカップリング反応前の突然変異型rhIL-2が示され、図中、約22.380分を示すところが目的タンパク質の主ピークである。
図9B図9Bではカップリング反応後の突然変異型rhIL-2が示され(PEGは30KD PEGである)、図中、約21.175分を示すところが目的タンパク質の主ピークである。
図10】実施例12における精製済みコンジュゲートのRP-HPLCスペクトルである。
図11A】実施例13における異なる濃度の参照rhIL2が37℃で10分間刺激された場合におけるCTLL2細胞のpSTAT5及びβ-actinタンパク質のウェスタンブロット実験結果を示す図、及びグレースケール結果に基づいてフィッティングされたEC50グラフである。
図11B】実施例13における異なる濃度のT41NPAK突然変異型IL-2(即ちrhIL2-T41 NPAK)及び30KD PEG-rhIL2-T41NPAKが37℃で10分間刺激された場合におけるCTLL2細胞のpSTAT5及びβ-actinタンパク質のウェスタンブロット実験結果を示す図、及びグレースケール結果に基づいてフィッティングされたEC50グラフである。
図11C】実施例13における異なる濃度の参照rhIL2が37℃で10分間刺激された場合におけるYT細胞のpSTAT5及びβ-actinタンパク質のウェスタンブロット実験結果を示す図、及びグレースケール結果に基づいてフィッティングされたEC50グラフである。
図11D】実施例13における異なる濃度のT41NPAK突然変異型IL-2(即ちrhIL2-T41NPAK)及び30KD PEG-rhIL2-T41NPAKが37℃で10分間刺激された場合におけるYT細胞のpSTAT5及びβ-actinタンパク質のウェスタンブロット実験結果を示す図、及びグレースケール結果に基づいてフィッティングされたEC50グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の技術案について具体的な実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0059】
本発明の製造例及び実施例で使用される試薬又は原料は、特に説明しない限り、市販品であり、本発明に使用される実験方法は、特に説明しない限り、本分野における通常の方法である。
【0060】
ヒトYT細胞は、文献「Yodoi,J.など.(1985).TCGF(IL2)-receptor inducing factor(s).I.Regulation of IL2 receptor on a natural killer-like cell line (YT cells).Journal of Immunology,134(3),1623-1630」に披露されたものであり、公衆が浙江新碼生物医薬有限公司から入手できる。
【0061】
製造例1:非天然アミノ酸NBOKの製造
NBOKの構造式は、以下に示す通りであった。
【化14】
【0062】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化15】
【0063】
製造過程は、次の工程を含む。
【0064】
a)反応フラスコに、p-メチルアセトフェノン(4.0mL、30.0mmol)を加え、溶媒DCM(50.0mL)を加え、NBS(6.41g、36.0mmol)及びBPO(0.05g、0.3mmol)を加え、得られた混合物を80℃で24時間還流した後、容器を氷水に入れて冷却し、固体を析出させ、固体をろ過除去し、飽和NaCOで3回洗浄し、DCMで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物1-1(5.46g、収率85%)を獲得し、粗生成物1-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0065】
b)反応フラスコに、生成物1-1(2.73g、12.80mmol)を加え、溶媒ジオキサン(40mL)及び水(40mL)を加え、さらに炭酸カルシウム(7.68g、76.8mmol)を加え、得られた混合物を105℃で24時間還流した後、室温に冷却させ、固体をろ過除去し、DCMで3回抽出し、有機相を合併し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=3:1)により精製した後、生成物1-2(1.80g、収率94%)を獲得した。
【0066】
c)二口型反応フラスコに、p-ニトロフェニルクロロホルメート(2.90g、14.4mmol)を加え、溶媒DCM(10.0mL)を加え、0℃に降温し、生成物1-2(1.80g、12.0mmol)及びピリジン(1.2mL、14.4mmol)を加え、室温で18時間撹拌した後、反応液に飽和炭酸ナトリウム溶液(10mL)を加え、DCM(50mL)で3回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=5:1)により精製した後、生成物1-3(3.14g、収率83%)を獲得した。
【0067】
d)反応フラスコに、生成物1-3(1.26g、4.0mmol)及びFmoc-Lys-OH塩酸塩(1.40g、3.33mmol)を加え、溶媒ジオキサン(15mL)及び水(5mL)を加え、さらにトリエチルアミン(1.2mL、8.3mmol)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた後、1M HCl溶液を適量で加え、DCMで抽出し、減圧濃縮した後、粗生成物1-4を獲得し、粗生成物1-4を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0068】
e)反応フラスコ中で、生成物1-4(1.10g、0.19mmol)をDCM(10mL)に溶解させ、ジエチルアミン(5.0mL)を加え、室温で6時間反応させ、生成物を析出させ、ろ過後にDCMで3回叩解したと、目的生成物1-5(817mg、2段階収率63%)を獲得した。
【0069】
H-NMR(400MHz,重水)δ8.04(d,J=8.4Hz,2H),7.55(d,J=8.0Hz,2H),5.21(s,2H),3.74(t,J=6.0Hz,1H),3.17(t,J=6.4Hz,2H),2.70(s,3H),1.95-1.83(m,2H),1.62-1.52(m,2H),1.47-1.35(m,2H).
【0070】
製造例2:非天然アミノ酸NPAKの製造
NPAKの構造式は、以下に示す通りであった。
【化16】
【0071】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化17】
【0072】
製造過程は、次の工程を含む。
【0073】
a)反応フラスコに、p-クロロアセトフェノン(1.00g、6.47mmol)を加え、窒素雰囲気下、マロン酸ジエチル(6.84g、47.70mmol)、KHCO(0.97g、9.70mmol)及びKCO(1.34g、9.70mmol)を加え、さらにPd(dba)(0.019g、0.030mmol)及びP(t-Bu)HBF(0.021g、0.071mmol)を加え、加えが完了した後、窒素保護を置換し、160℃に昇温して40時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、反応液に水(30mL)を加え、EAで3回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、0~5℃で減圧濃縮し、無色透明液体を獲得し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=10:1)により精製した後、生成物2-1(0.80g、収率60%)を獲得した。
【0074】
b)反応フラスコに、LiOH(0.30g、11.64mmol)及び水(5.0mL)を加え、エタノール(10mL)を加え、生成物2-1(0.80g、3.88mmol)を加え、室温で2時間撹拌した後、TLC検査で反応が完全になったら、反応液に2M HCl溶液を加えてpHを1~2に調節し、EAで3回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、生成物2-2(0.5g、収率72%)を獲得した。
【0075】
c)反応フラスコに、生成物2-2(0.20g、1.12mmol)を加え、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS、0.19g、1.68mmol)、DIPEA(0.07g、0.56mmol)、DCM(2.0mL)をこの順に加えた。0~5℃に降温した後、DCC(0.23g、1.12mmol)とDCM(2.0mL)の溶液を加え、2時間保温しながら反応させた。室温に昇温して一晩撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、ろ過し、DCMで洗浄し、母液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=5:1)により精製した後、生成物2-3(0.19 g、収率62%)を獲得した。
【0076】
d)反応フラスコに、生成物2-3(0.10g、0.36mmol)を加え、トリエチルアミン(0.04g、0.36mmol)、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(0.13g、0.36mmol)、ジオキサン(2.0mL)及び水(2.0mL)をこの順に加え、室温で18時間撹拌しながら反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、EAで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH=15:1)により精製した後、油状の液体生成物2-4(0.03g、収率61%)を獲得した。
【0077】
e)反応フラスコに、生成物2-4(0.08g、0.15mmol)、DCM(1.0mL)及びピペリジン(0.04g、0.47mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、石油エーテル(5mL)で1時間叩解し、ろ過し、得られたろ過ケーキを石油エーテル(5mL)で1時間叩解し、ろ過し、得られたろ過ケーキをエタノールで4回繰り返し叩解して残留ピペリジンを除去し、最終的にオフホワイト固体2-5(0.02g、収率43%)を獲得した。
【0078】
H-NMR(400MHz,重水)δ7.85(d,J=8.2Hz,2H),7.33(d,J=8.2Hz,2H),3.94(t,J=6.3Hz,1H),3.56(s,2H),3.12(t,J=6.8Hz,2H),2.54(s,3H),1.80-1.70(m,2H),1.54-1.45(m,2H),1.40-1.224(m,2H).
【0079】
製造例3:非天然アミノ酸NBPKの製造
NBPKの構造式は、以下に示す通りであった。
【化18】
【0080】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化19】
【0081】
製造過程は、次の工程を含む。
【0082】
a)反応フラスコに、p-メチルアセトフェノン(4.0mL、30.0mmol)を加え、溶媒DCM(50.0mL)を加え、NBS(6.41g、36.0mmol)及びBPO(0.05g、0.3mmol)を加え、得られた混合物を80℃で24時間還流した。TLC検査で反応が完全になったら、容器を氷水に入れて冷却し、固体を析出させ、固体をろ過除去し、飽和NaCOで3回洗浄し、DCMで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物3-1(5.46g、収率85%)を獲得し、粗生成物3-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0083】
b)反応フラスコに、NaH(0.58g、14.64mmol、60%)を加え、乾燥溶媒THF(20mL)を加え、氷浴冷却下、エチレングリコール(6.7mL、122.0mmol)をゆっくり加え、室温条件下で1時間撹拌した。次いで、生成物3-1(2.60g、12.2mmol)を加え、70℃で48時間加熱還流して完全に反応させた。氷浴冷却下、飽和NHClをゆっくり滴下してNaHをクエンチし、水で洗浄し、EtOAcで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=2:1)により精製した後、生成物3-2(1.39g、収率59%)を獲得した。
【0084】
c)反応フラスコに、生成物3-2(1.39g、7.2mmol)を加え、溶媒DCM(10mL)を加え、氷浴冷却下、p-ニトロフェニルクロロホルメート(1.74g、8.64mmol)及びピリジン(0.7mL、8.64mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、水を加えて洗浄し、EtOAcで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=3:1)により精製した後、生成物3-3(2.27g、収率88%)を獲得した。
【0085】
d)反応フラスコに、生成物3-3(2.27g、6.32mmol)を加え、溶媒ジオキサン(16mL)及び水(4mL)を加え、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(2.13g、5.27mmol)を加え、さらにトリエチルアミン(1.85mL、13.2mmol)を加え、室温で18時間撹拌して完全に反応させた。1M HClを適量で加えてpHを2程度に調節し、酢酸エチルで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物3-4を獲得し、粗生成物3-4をそのまま次の工程に使用した。
【0086】
e)反応フラスコ中で、前の工程で獲得した生成物3-4をDCM(10mL)に溶解させ、ジエチルアミン(5mL)を加え、室温で6時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:HO=40:10:1)により精製した後、白色固体生成物3-5(0.95g、2段階収率49%)を獲得した。
【0087】
H-NMR(400MHz,重水)δ8.04(d,J=8.0Hz,2H),7.56(d,J=8.0Hz,2H),4.72(s,2H),4.25(s,2H),3.81(s,2H),3.74(t,J=6.0Hz,1H),3.16-3.08(m,2H),2.70(s,3H),1.97-1.79(m,2H),1.60-1.48(m,2H),1.48-1.35(m,2H).
【0088】
製造例4:非天然アミノ酸NPOKの製造
NPOKの構造式は、以下に示す通りであった。
【化20】
【0089】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化21】
【0090】
製造過程は、次の工程を含む。
【0091】
a)反応フラスコに、トリホスゲン(Triphosgene)(BTC、2.18g、7.35mmol)を加え、溶媒THF(10.0mL)を加え、氷浴冷却下、p-ヒドロキシアセトフェノン(2.0g、14.7mmol)及びピリジン(1.5mL、17.64mmol)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、水を適量で加え、EtOAcで3回抽出し、有機相を合併した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物4-1(1.20g)を獲得し、粗生成物4-1をそのまま次の工程に使用した。
【0092】
b)反応フラスコに、Boc-リジン(1.1g、5.0mmol)を加え、溶媒DCM(10.0mL)を加え、生成物4-1(1.20g)及びトリエチルアミン(2mL、15mmol)を加えた。室温で24時間撹拌し、TLC検査で反応が完全になったら、1M HClを適量で加えてpHを弱酸性に調節し、DCMで3回抽出し、有機相を合併した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH=5:1)により、生成物4-2(1.70g、収率84%)を獲得した。
【0093】
c)反応フラスコに、生成物4-2(1.70g、4.2mmol)を加え、溶媒DCM(5mL)を加え、トリフルオロ酢酸(5mL)を加え、得られた混合物を室温で1時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、そのまま減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:HO=40:10:1)により、生成物4-3(1.19g、収率92%)を獲得した。
【0094】
H-NMR(400MHz,重水)δ8.09(d,J=8.6Hz,2H),7.31(d,J=8.6Hz,2H),3.78(t,J=6.0Hz,1H),3.27(t,J=6.8Hz,2H),2.70(s,3H),1.98-1.87(m,2H),1.72-1.60(m,2H),1.55-1.43(m,2H).
【0095】
製造例5:非天然アミノ酸NBGKの製造
NBGKの構造式は、以下に示す通りであった。
【化22】
【0096】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化23】
【0097】
製造過程は、次の工程を含む。
【0098】
a)反応フラスコに、p-メチルアセトフェノン(8.0mL、60.0mmol)を加え、溶媒DCM(80.0mL)を加え、NBS(12.82g、72.0mmol)及びBPO(145mg、0.6mmol)を加え、得られた混合物を90℃で24時間還流した。TLC検査で反応が完全になったら、容器を氷水に入れて冷却し、固体を析出させ、固体をろ過除去し、飽和NaCOで3回洗浄し、DCMで3回抽出し、有機相を合併した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物5-1(11.12g、収率87%)を獲得し、粗生成物5-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0099】
b)反応フラスコ中で、4ÅのMS(14g)及びLiOH(1.45g、34.54mmol)をDMF(70mL)で溶解させ、室温で20分間撹拌した後、グリシンメチルエステル塩酸塩(2.0g、15.7mmol)を加え、さらに45分間撹拌した後、生成物5-1(4.0g、18.8mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、固体をろ過除去し、得られたろ過ケーキをEAで洗浄し、得られた濾液を水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した後に、粗生成物5-2を獲得し、そのまま次の工程に使用した。
【0100】
c)反応フラスコ中で、前の工程で獲得した生成物5-2をジオキサン(20mL)に溶解させ、1M NaOHをゆっくり滴下し、2時間反応させた後、TLC検査で加水分解反応が完了して生成物5-3が得られた。飽和NaHCOを20mL加えた後、ジオキサン(10mL)に溶解したFmoc-OSuをゆっくり加え、室温で一晩撹拌し、TLC検査で反応が完全になったら、1M HClで弱酸性に調節し、EAで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH=10:1)により、生成物5-4(3.60g、収率89%)を獲得した。
【0101】
d)反応フラスコに、生成物5-3(3.60g、8.0mmol)、NBS(1.10 g、9.6mmol)、EDCI(1.85g、9.6mmol)を加え、溶媒DCM(50mL)を加え、得られた混合物を室温で18時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した後、生成物5-5(3.20g、収率75%)を獲得した。
【0102】
e)反応フラスコに、生成物5-5(3.20g、6.0mmol)を加え、溶媒ジオキサン(40mL)及び水(10mL)を加え、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(3.0g、7.2mmol)を加え、さらにトリエチルアミン(2.0mL、15.0mmol)を加え、室温で18時間撹拌して完全に反応させた。1M HClを適量で加えてpHを2程度に調節し、EAで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:AcOH=20:1:0.5)により、生成物5-5(3.50g、収率75%)を獲得した。
【0103】
f)反応フラスコ中で、生成物5-5をDCM(20mL)に溶解させ、ジエチルアミン(20mL)を加え、室温で6時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:HO=30:10:1)により、最終生成物として白色粉末5-7(0.55g、収率37%)を獲得した。
【0104】
H-NMR(400MHz,重水)δ7.98(d,J=8.2Hz,2H),7.50(d,J=8.2Hz,2H),3.84(s,2H),3.71(s,1H),3.31(s,2H),3.17(t,J=6.9Hz,2H),2.67(s,3H),1.97-1.73(m,2H),1.58-1.45(m,2H),1.44-1.27(m,2H).
【0105】
製造例6:非天然アミノ酸NPOK-2の製造
NPOK-2の構造式は、以下に示す通りであった。
【化24】
【0106】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化25】
【0107】
製造過程は、次の工程を含む。
【0108】
a)反応フラスコに、p-アセチルフェノール(2.05g、15.0mmol)及びブロモ酢酸(2.50g、18.0mmol)を加え、さらにNaOH(1.20g、30mmol)の水溶液(6mL)を加えた。得られた混合物を100℃で24時間還流して完全に反応させた。反応を室温に冷却し、1M塩酸を加えて酸性に調整し、固体を析出させ、ろ過した後、白色粗生成物6-1(3.32g、収率113%)を獲得し、粗生成物6-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0109】
b)反応フラスコ中で、前の工程で獲得した粗生成物6-1(3.32g、17.0mmol)をDCM(50mL)に溶解させ、NHS(2.35g、20.4mmol)及びEDCI(3.90g、20.4mmol)を加えた。得られた混合物を常温で18時間撹拌して完全に反応させた。DCMで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。さらにカラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:AcOH=20:1:0.5)により精製した後、生成物6-2(1.67g、収率38%)を獲得した。
【0110】
c)反応フラスコに、生成物6-2(1.67g、5.7mmol)を加え、溶媒ジオキサン(20mL)及び水(50mL)を加え、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(1.9g、4.8mmol)を加え、さらにトリエチルアミン(1.7mL、12.0mmol)を加え、室温で18時間撹拌して完全に反応させ、1M HClを適量で加えてpHを2程度に調節し、EAで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。得られた粗生成物6-3をDCM(10mL)に直接溶解させ、ジエチルアミン(5mL)を加えた。得られた混合物を常温で18時間撹拌して完全に反応させた。減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:HO=40:10:1)により精製した後、最終生成物6-4(709mg、2段階収率39%)を獲得した。
【0111】
H-NMR(400MHz,重水)δ7.91(d,J=8.8Hz,2H),6.98(d,J=8.8Hz,2H),4.60(s,2H),3.59(t,J=6.4Hz,1H),3.19(t,J=6.8Hz,2H),2.52(s,3H),1.87-1.65(m,2H),1.56-1.40(m,2H),1.35-1.15(m,2H).
【0112】
製造例7:非天然アミノ酸NBGK-2の製造
NBGK-2の構造式は、以下に示す通りであった。
【化26】
【0113】
反応過程は、以下に示す通りであった。
【化27】
【0114】
製造過程は、次の工程を含む。
【0115】
a)反応フラスコに、ブロモ酢酸(2.10g、15.0mmol)とNaOH(0.80g、20mmol)の水溶液(10mL)を加え、10分間撹拌した。次いで、p-アセトアニリド(1.40g、10.0mmol)を加え、得られた混合物を100℃で18時間還流して完全に反応させた。反応を室温に冷却し、ろ過し、水で洗浄し、白色粗生成物7-1(1.30g、収率67%)を獲得し、粗生成物7-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0116】
b)反応フラスコに、生成物7-1(1.30g、6.7mmol)とNaHCO(1.70g、20.1mmol)の水溶液(20mL)を加えた。さらにFmoc-OSu(2.80g、8.1mmol)とDMF(20mL)を加えた。得られた混合物を60℃で18時間撹拌して完全に反応させた。室温に冷却し、EAで抽出した。1M塩酸で残留水相のpHを2程度に調節してから、EAで抽出し、有機相を獲得した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。生成物7-2を獲得し、粗生成物7-2を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0117】
c)反応フラスコに、前の工程で獲得した生成物7-2(約6.7mmol)、NHS(0.90g、8.0mmol)及びEDCI(1.50g、8.0mmol)をDMF(50mL)に溶解させた。反応混合物を室温で24時間撹拌して完全に反応させた。水を加え、DCMで抽出し、有機相を獲得した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。生成物7-3を獲得し、粗生成物7-3を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0118】
d)反応フラスコに、前の工程で獲得した生成物7-3(約6.7mmol)、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(2.30g、5.6mmol)及びトリエチルアミン(2.0mL、14.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌して完全に反応させた。続いて、1M塩酸でpHを2程度に調節し、EAで抽出した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。生成物7-4を獲得し、粗生成物7-4を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0119】
e)反応フラスコに、前の工程で獲得した生成物7-4を加えた。溶媒DCM(20mL)及びジエチルアミン(10mL)を加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌して完全に反応させた。先ず減圧濃縮し、アセトニトリル(50mL)を加えて再び溶解させ、その後に減圧濃縮し、操作を3回繰り返して余分なジエチルアミンを除去した。DCMを加えて2回叩解した後、最終生成物7-5(1.65g、総収率51%)を獲得した。
【0120】
H-NMR(400MHz,重水)δ7.71(d,J=8.8Hz,2H),6.51(d,J=8.8Hz,2H),3.80(s,2H),3.53(t,J=6.8Hz,1H),3.09(t,J=6.8Hz,2H),2.39(s,3H),1.73-1.60(m,2H),1.42-1.33(m,2H),1.25-1.14(m,2H).
【0121】
実施例1:非天然アミノ酸が部位特異的に挿入された組換えヒトIL-2(rhIL-2)を発現する発現菌株の構築
1、野生型組換えヒトIL-2の発現プラスミドNB1S3-WTの獲得
米国国立生物工学情報センター(NCBI)から、SEQ ID NO:1に示すようなホモ・サピエンスIL-2の前駆体タンパク質配列(GenBank ID:CAA25292.1)を獲得した。この前駆体配列のN末端には20個のアミノ酸からなるシグナルペプチド配列が含まれており、IL-2タンパク質分子が加工されて成熟していく過程中で切除され、このシグナルペプチド配列が切除された後、成熟したホモ・サピエンスIL-2のタンパク質配列(SEQ ID NO:2)が得られた。文献報道(Liang S.Mなど. Journal of Biological Chemistry,261(1):334-337,1986)により、成熟したホモ・サピエンスIL-2のタンパク質配列には3個のシステインCysが含まれ、そのうち58位と105位の2個のCysによってジスルフィド結合が形成され、それらはホモ・サピエンスIL-2の生物活性に非常に重要である。125位のCysはジスルフィド結合の形成に関与しないばかりでなく、かえって組換えホモ・サピエンスIL-2のタンパク質封入体の再生過程における正常なジスルフィド結合の形成を障害するため、125位のCysをセリンSerに突然変異させることで、その活性に顕著な影響を与えずに再生の効率を向上させることができる。それと同時に、大腸菌中で組換えタンパク質を発現するために、タンパク質配列のN末端に開始タンパク質を翻訳するためのメチオニンMetを添加する必要があり、それによって成熟した組換えヒトIL-2のタンパク質配列(SEQ ID NO:3)が得られる。アミノ酸とコドンの逆翻訳過程及びコドンの最適化によって、組換えヒトIL-2をコードする遺伝子配列(SEQ ID NO:4)が得られ、全遺伝子合成によってこの組換えヒトIL-2のコード遺伝子が得られる。次いで、サブクローニングによってそれをNB1S3発現ベクターに連結して(この発現ベクターは市販ベクターpET-21aから改造されたものであり、そのアンピシリン耐性遺伝子スクリーニングマーカーは市販ベクターpCDF-duet1からPCRにより増幅したスペクチノマイシン耐性遺伝子に置換された)、野生型組換えヒトIL-2の発現プラスミドNB1S3-WT(図1を参照)が得られ、その配列はSEQ ID NO:5に示す通りであった。
【0122】
【化28(1)】
【化28(2)】
【化28(3)】
【0123】
2、部位特異的突然変異部位の選択
特定の部位としてSEQ ID NO:2のP34位、K35位、T37位、R38位、L40位、T41位、F42位、K43位、F44位、Y45位、E61位、E62位、K64位、P65位、E67位、E68位、N71位、L72位、及びY107位を選択して点突然変異を行い、この突然変異型IL-2を原料として部位特異的修飾を行った。
【0124】
3、部位特異的突然変異のプライマー設計及び突然変異ベクターの構築
SEQ ID NO:2の下記の部位:P34位、K35位、T37位、R38位、L40位、T41位、F42位、K43位、F44位、Y45位、E61位、E62位、K64位、P65位、E67位、E68位、N71位、L72位、及びY107位のそれぞれに対して、前記アミノ酸をコードするコドンをアンバーコドンに突然変異させることのできるプライマーを設計し、具体的なプライマーを表1に示した。
【0125】
【表1(1)】
【表1(2)】
【0126】
DNA制限エンドヌクレアーゼXbaIとXhoIの両酵素でプラスミドNB1S3-WTを切断して得られた線形化DNAプラスミドをテンプレートとし、高忠実度DNAポリメラーゼ(Takara社より購入、品番R045A)を利用し、表1のプライマーXbaI-Fで各部位のプライマーRとペアリングし、表1のプライマーXhoI-Rで各部位のプライマーFとペアリングし、PCR増幅とオーバーラップPCR法によって、IL-2の下記部位:K35、T41、K43、Y45、E61、K64、及びP65のアミノ酸コドンがアンバー終止コドンに突然変異した突然変異遺伝子を獲得し(例えば、線形化プラスミドNB1S3-WTをテンプレートとし、XbaI-FとT41-RをプライマーペアとしてPCR増幅を行うことで、部位T41が突然変異した上流断片を獲得し、線形化プラスミドNB1S3-WTをテンプレートとし、XhoI-RとT41-FをプライマーペアとしてPCR増幅を行うことで、部位T41が突然変異した下流断片を獲得し、続いて、上記のように獲得した部位T41が突然変異した上流断片及び部位T41が突然変異した下流断片をテンプレートとし、XbaI-FとXhoI-RをプライマーペアとしてオーバーラップPCR増幅を行うことで、部位T41が突然変異した全長遺伝子を獲得した)、さらに高忠実度DNA組み込み型クローン試薬キット(NEB社より購入、品番E5520S)を利用し、その取扱書に従って、獲得した突然変異遺伝子でプラスミドNB1S3-WTのXbaIとXhoIとの2つの酵素切断部位間の断片のそれぞれを置き換えることで、7種の発現プラスミドNB1S3-K35、NB1S3-T41、NB1S3-K43、NB1S3-Y45、NB1S3-E61、NB1S3-K64、及びNB1S3-P65を構築し、配列を測定した結果、突然変異に成功したことが判明した。
【0127】
4、部位特異的に突然変異したrhIL-2発現株の構築
文献(Chatterjee,A.など、Biochemistry,52(10),1828-1837,2013)に記載されたプラスミドpUltraの構造を参考にし、遺伝子全合成によって、本発明の式(I)で表れる構造のようなカルボニル末端基含有リジン類似体を特異的に識別するtRNAとtRNA合成酵素のコード遺伝子(野生型メタン古細菌ピロリシン合成酵素とそれに対応するtRNAのコード遺伝子)とクロラムフェニコール耐性遺伝子(SEQ ID NO:46)を獲得し、PCR増幅法によって市販ベクターpCDF-duet1からCloDF13複製開始部位を含むDNA断片(SEQ ID NO:47)を増幅し、高忠実度DNA組み込み型クローン試薬キットによるサブクローンによって2つのDNA断片を連結し、それによってヘルパープラスミドNB1W(図2を参照でき、以下、このプラスミドをヘルパープラスミドと略称する)が得られ、このプラスミドのスクリーニングマーカーがクロラムフェニコール耐性であった。ヘルパープラスミドと工程3で得られた発現プラスミド(スペクチノマイシン耐性)をそれぞれ大腸菌BL21(DE3)に同時形質転換し、スペクチノマイシン耐性とクロラムフェニコール耐性プレートに通過させて二重陽性菌株(二重陽性菌株はスペクチノマイシン耐性とクロラムフェニコール耐性を同時に獲得した菌株を示す):rhIL2-K35-BL21、rhIL2-T41-BL21、rhIL2-K43-BL21、rhIL2-Y45-BL21、rhIL2-E61-BL21、rhIL2-K64-BL21、rhIL2-P65-BL21を獲得した。
【0128】
野生型メタン古細菌ピロリシン合成酵素のコード遺伝子、それに対応するtRNAのコード遺伝子、及びクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むDNA断片(SEQ ID NO:46)は、以下に示す通りであった。
【0129】
【化29(1)】
【化29(2)】
【0130】
CloDF13複製開始部位を含むDNA断片(SEQ ID NO:47)は、以下に示す通りであった。
【0131】
【化30】
【0132】
実施例2:部位特異的突然変異によって非天然アミノ酸が挿入されたrhIL-2の発現及び精製
1、突然変異型rhIL-2への非天然アミノ酸の組み込み発現
実施例1で獲得した7種の発現菌株rhIL2-K35-BL21、rhIL2-T41-BL21、rhIL2-K43-BL21、rhIL2-Y45-BL21、rhIL2-E61-BL21、rhIL2-K64-BL21、rhIL2-P65-BL21のそれぞれを、LB培地(5g/L酵母抽出物、10g/Lトリプトン、10g/L NaCl、100mg/Lスペクチノマイシン及び37.5mg/Lクロラムフェニコールを含有するもの)に接種し、37℃で5~8時間培養した後、菌液のOD600が2.0±0.2に達するまで二次拡種を行って(培地の組成は上記と同じである)、二次種液を獲得した。
【0133】
上記の二次種液を発酵培地に接種して発酵培養を行い、5L発酵タンク中で実施し、培養体積を2L、培地を2×YT培地(16g/L酵母抽出物、10g/Lトリプトン、5g/L NaCl)、接種量を5%(v/v)、培養温度を37℃とし、pHを6.90±0.05に制御し、必要に応じてアンモニア水又はHPOを自動的に流動添加し、DO関連回転速度を設定して、DOを30%に制御した。菌液のOD600が20.0±2.0に達した場合、IPTG及び製造例1で獲得した非天然アミノ酸NBOKを添加し、終濃度を共に1mMとし、それと同時に0.6±0.1mL/minの補給速度で50%グリセリンの補給を開始し、5~6時間誘導発現後に菌体を収集した。各菌株のSDS-PAGE電気泳動図を図3に示した。
【0134】
2、突然変異型rhIL-2の分離抽出
上記のように収集した菌体のそれぞれを、緩衝液(25mM Tris、6mM EDTA、1mM DTT、pH8.0)で再懸濁させ、1%DNA酵素(1mg/mL)、0.5%PMSFを加え、均一に混合し、超高圧ホモジナイザを用いて50~80MPa圧力でホモジェネート処理を3回行った。ホモジェネート液を10,000rpmで20分間遠心分離した後、下層にある封入体粗体を収集した。
【0135】
獲得した封入体粗体を洗浄緩衝液(20mM Tris-HCl、100mM NaCl、2% TritonX-100、pH8.0)で2回洗浄した後、超純水で1回洗浄して精製済み封入体を獲得した。
【0136】
精製済み封入体を変性緩衝液(20mM Tris-HCl、100mM NaCl、6M塩酸グアニジン、1mM DTT、pH8.0)で溶解させ、30分間経過後に10,000rpmで遠心分離して収集した上清は即ち変性タンパク質溶液であった。4倍体積の再生緩衝液(20mM Tris-HCl、100mM NaCl、pH8.0)を、収集した変性タンパク質溶液に加え、十分に撹拌した後に12時間静置し、10,000 rpmで遠心分離して収集した上清は即ち再生タンパク質溶液であった。
【0137】
再生タンパク質溶液を、分画分子量5kDaの限外ろ過膜バッグ(Millipore社製、Biomax-5)で原体積の1/4に濃縮させ、電気伝導率が約2ms/cmに達するまで置換緩衝液(20mM Tris-HCl、pH8.0)を用いて液交換し、さらにタンパク質濃度が約0.5~1mg/mLになるまで濃縮させ、10,000rpmで遠心分離して収集した上清は即ち突然変異型rhIL-2粗タンパク質:rhIL2-K35、rhIL2-T41、rhIL2-K43、rhIL2-Y45、rhIL2-E61、rhIL2-K64、rhIL2-P65であり、それらはそのままで以降のPEGカップリングに使用できる。
【0138】
実施例3:PEGと部位特異的突然変異によって非天然アミノ酸NBOKが挿入されたrhIL-2との部位特異的なカップリング
【化31】
PEGと部位特異的突然変異によって非天然アミノ酸が挿入されたrhIL-2との部位特異的なカップリングの合成ルートは、式2に示す通りであった(但し、PからPへの方向はアミノ酸配列のN末端からC末端への方向である)。
【0139】
30KDのアミノオキシPEG(即ちヒドロキシアミンPEG)がオキシム化反応によってカップリングされたrhIL-2を例とすると、カップリング反応の操作は以下の通りであった:カップリング反応前、2M酢酸溶液で上記のように獲得した目的タンパク質をpH4.0に調節し、20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)でタンパク質濃度が約1mg/mlになるように調節し、1:15(タンパク質とアミノオキシPEGのモル比)で30KDのアミノオキシPEG固体(北京鍵凱科技有限公司より購入)を加え、十分に揺動して溶解させ、澄明な透明溶液を獲得し、さらに反応液を密封し、恒温振とう台(25℃、100rpm)で揺動しながら反応させた。48時間経過後にRP-HPLCによってカップリング状況を分析し、図4A及び図4Bを参照できる。その結果から明らかなように、図4Bでは微小なrhIL-2ピークしか見られないため、7種の目的タンパク質の何れにもPEGがカップリングされたことが判明し、なお、カップリング率(100%-カップリング終了後に残ったrhIL-2濃度/カップリング反応ゼロ時間のときのrhIL-2濃度×100%)が共に95%を超えたため、上記の非天然アミノ酸NBOKが目的タンパク質に挿入されたことがさらに判明した。
【0140】
PEGがカップリングされた突然変異型rhIL-2タンパク質のそれぞれを、30KD PEG-rhIL2-K35、30KD PEG-rhIL2-T41、30KD PEG-rhIL2-K43、30KD PEG-rhIL2-Y45、30 KD PEG-rhIL2-E61、30KD PEG-rhIL2-K64、30KD PEG-rhIL2-P65と記する。
【0141】
RP-HPLCの分析条件は以下の通りであった。
【0142】
移動相A(0.1% TFA-HO)、
移動相B(0.1% TFA-ACN)。
【0143】
【表2】
【0144】
実施例4:部位特異的に修飾された30KD PEG-rhIL2の精製
クロマトグラフィー媒質をCapto MMC、平衡緩衝液を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH=3.0)、溶離緩衝液を20mMクエン酸ナトリウム緩衝液-1M NaCl(pH=7.8)とした。
【0145】
精製の過程は具体的に以下のことを含む:実施例3で獲得した30KD PEG-rhIL2-K35、30KD PEG-rhIL2-T41、30KD PEG-rhIL2-K43、30KD PEG-rhIL2-Y45、30KD PEG-rhIL2-E61、30KD PEG-rhIL2-K64、30KD PEG-rhIL2-P65のカップリング反応液のそれぞれを、平衡緩衝液でpH3.0±0.2、電気伝導率≦5ms/cmになるように調節し、Capto MMCにサンプルローディングし、溶離緩衝液を用いてリニア溶離(0~100%の溶離液、20CV)を行い、目的タンパク質成分を収集し、このようにずれば、純度が約95%の目的タンパク質サンプルが得られた。30KD PEG-rhIL2-Y45を例とすると、精製済みコンジュゲートである30KD PEG-rhIL2-Y45及びカップリング反応前のrhIL2-Y45の典型的なRP-HPLCスペクトルを図5に示した。他のタンパク質サンプルの精製結果はこれと類似している。
【0146】
実施例5:部位特異的に修飾された30KD PEG-rhIL2の体外活性の評価(STAT5リン酸化実験)
本方法では2種の細胞株が用いられており、マウスCTLL-2細胞はIL-2Rαβγを含有する細胞株、ヒトYT細胞はIL-2Rβγを含有する細胞株であり、rhIL-2は細胞表面のIL-2Rと結合して、JAK-STAT信号経路を活性化させた。各サンプルは、修飾された部位が異なり、2種の細胞への相対活性が異なり、YT細胞/CTLL-2細胞のEC50比の変化率(パーセント)が低いほど、サンプルによる免疫機能促進効果が高くなり、逆にならば、免疫機能抑制効果が高くなる。
【0147】
具体的な過程は以下の通りであった:マウスCTLL-2細胞(American Type Culture Collectionより購入)とヒトYT細胞を、それぞれの培地(CTLL-2細胞培地:RPMI 1640+10% FBS+400 IU/mL rhIL-2、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム;YT細胞培地:RPMI 1640+10% FBS+1mM Non-Essential Amino Acids Solution(Gibco社より購入、カタログ番号11140050))で37°C、5% CO条件下で十分な量まで培養し、測定前に4時間飢餓させ、続いて、細胞密度を1×10細胞/mLに調整してスタンドバイ状態に進んだ。30KD PEG-rhIL2-K35、30KD PEG-rhIL2-T41、30KD PEG-rhIL2-Y45、30KD PEG-rhIL2-E61、30KD PEG-rhIL2-P65、カップリング反応前のrhIL2-K35、rhIL2-T41、rhIL2-Y45、rhIL2-E61、rhIL2-P65サンプル、及び参照rhIL-2(北京索莱宝科学技術有限公司より購入、品番P00020)のそれぞれに対して勾配希釈を行い、各サンプルごとに合計6段階の濃度が設定され(CTLL-2細胞実験では、参照は濃度範囲が0.004~4ng/mLで、4倍勾配希釈され、一方、YT細胞実験では、参照は濃度範囲が2.1~510ng/mLで、3倍勾配希釈され、他のサンプルの濃度範囲は予備実験でスクリーニングして得られ、表2中の該当するEC50値に対応する)、37°Cで細胞を10分間刺激した後、細胞を溶解し、ウェスタンブロット実験を行い、pSTAT5抗体(CST社より購入、カタログ番号9359L)とβ-actin(CST社より購入、カタログ番号8457S)をハイブリダイゼーションさせ、細胞溶解液中のpSTAT5とβ-actinタンパク量を測定し、pSTAT5/β-actinのグレースケール結果及びサンプル濃度に基づいてEC50を算出した。その結果を表2に示した。その結果から明らかなように、部位K35、T41、Y45、E61、P65に非天然アミノ酸NBOKが挿入されたとともに、30KD PEGがカップリングされたrhIL2は共に、最初の設計要求に達したものであった(参照を対照とすると、EC50比の変化率は参照よりも低くなった)。
【0148】
【表3】
【0149】
実施例6:マウス体内での薬物動態学研究
実験では、雌性C57マウス(SPF級、浙江維通利華実験動物技術有限公司より購入)が用いられており、泉奇rhIL-2(山東泉港薬業有限公司より購入)を陽性対照薬物とし、被験物30KD PEG-rhIL2-Y45のマウス体内での代謝状況を考察した。30KD PEG-rhIL2-Y45と泉奇rhIL-2のそれぞれを1mg/kgで単回静脈注射投与し、それぞれ以下の採血時刻:投与前、投与後の0.0833時間、0.5時間、1時間、4時間、8時間、16時間、24時間で採血し、各時刻ごとに0.5mL(n=5)を採血し、なお、30KD PEG-rhIL2-Y45については上記よりも5個多い採血時刻:48時間、72時間、96時間、120時間、144時間を設定した。血液サンプルを室温で15分間置き、6800g/minで6分間遠心分離して血清を獲得した。血清に対して以下の方法によって薬物血中濃度の分析を行った。
【0150】
(1)コーティング:高吸着96ウェルプレートに、1μg/mLのAnti-IL-2抗体(abcam社より購入、カタログ番号ab9618)作動液を1ウェル当たり50μL加え、2~8℃で一晩培養した。(2)洗浄:ウェル内の液体を捨て、1×PBST(0.05% Tween-20)を利用して300μL/ウェルで3回洗浄した。(3)封止:カゼイン封止液(Thermo社より購入、カタログ番号37528)を200 μL/ウェルで加え、室温条件下で90分間静置した。(4)洗浄:ウェル内の液体を捨て、1×PBSTを利用して300μL/ウェルで3回洗浄した。(5)サンプル添加:泉奇rhIL-2、30KD PEG-rhIL2-Y45、測定対象血清サンプルに対してマウス血清で勾配希釈を行い、50μL/ウェルでマイクロウェルプレートに移し、室温で120分間静置した。(6)洗浄:ウェル内の液体を捨て、1×PBSTを利用して300μL/ウェルで3回洗浄した。(7)一次抗体:0.25μg/mLのIL-2 Monoclonal Antibody(BG5)とBiotin(Invitrogen社より購入、カタログ番号M600B)作動液を1ウェル当たり50μL加え、室温で60分間静置した。(8)洗浄:ウェル内の液体を捨て、1×PBSTを利用して300μL/ウェルで3回洗浄した。(9)二次抗体:PierceTM High Sensitivity Streptavidin-HRP(Thermo社より購入、カタログ番号21130)をカゼイン封止液で4000倍希釈させたものを、1ウェル当たり50μL加え、室温で60分間静置した。(10)洗浄:ウェル内の液体を捨て、1×PBSTを利用して300μL/ウェルで4回洗浄した。(11)基質:1-StepTM Turbo TMB-ELISA Substrate Solution(Thermo社より購入、カタログ番号34022)を1ウェル当たり50μL加えた。(12)停止・値読み取り:25分間経過後、2M硫酸停止液を加え、酵素標識器(Perkin Elmer社より購入、型番EnSight)の450nmと650nmでの吸光値を読み取った。(13)分析:Dazdaq Ltd. WorkOut 1.5分析ソフトウェアにより4パラメータフィッティングを行い、泉奇rhIL-2と30KD PEG-rhIL2-Y45に対応する濃度と単位を入力し、両者のそれぞれについて1本の曲線をフィッティングし、測定対象血清の薬物血中濃度を算出した。DASソフトウェアの非房室モデル(統計モーメントパラメータ)から算出した泉奇rhIL-2と30KD PEG-rhIL2-Y45の平均半減期t1/2はそれぞれ0.83時間と19.83時間であった。泉奇rhIL-2と30KD PEG-rhIL2-Y45の薬物動態学的パラメータを表3に示した。
【0151】
【表4】
【0152】
実施例7:マウス体内での薬効学的研究-抗腫瘍活性
実験では、雌性Balb/cマウス(SPF級、浙江維通利華実験動物技術有限公司より購入)が用いられており、CT26.WT(ATCCより購入、カタログ番号CRL-2638)細胞懸濁液を2×10/0.1mL/マウス、H22(CCTCCより購入、カタログ番号GDC0091)細胞懸濁液を4×10/0.1mL/マウスでマウス右背部皮下に接種し、腫瘍体積が50mm程度に達した時、1グループ7匹のマウスでランダムにグループ化し、溶媒(1×PBS)、0.7mg/kgの30KD PEG-rhIL2-T41、5.0mg/kgの30KD PEG-rhIL2-T41、0.7mg/kgの30KD PEG-rhIL2-Y45、5.0mg/kgの30KD PEG-rhIL2-Y45をそれぞれ投与した(投与体積は共に10mL/kgである)。実験中に動物体重及び腫瘍体積を週3回測定し、投与方法及び実験結果を表4に示した。相対抑制率TGITW(%)の計算式は(TWC-TWT)/TWC×100%で、式中、TWCは溶媒対照群の平均腫瘍重量、TWTは治療群の平均腫瘍重量であった。
【0153】
その結果から明らかなように、溶媒群に比べ、2種の被験物の高、低用量群は共に、マウス結腸癌CT26.WT及びマウス肝癌H22の同種移植腫瘍に対して顕著な抑制作用を奏した。
【0154】
【表5】
【0155】
実施例8:マウス体内での薬効学的研究-免疫細胞群の発現
実験では、雌性Balb/cマウス(SPF級、浙江維通利華実験動物技術有限公司より購入)が用いられており、CT26.WT細胞懸濁液を2×10/0.1mL/マウスでマウス右背部皮下に接種し、腫瘍体積が100mm程度に達した時、1グループ3匹のマウスでランダムにグループ化し、表5に従って各被験物(その泉奇(登録商標)は市販の組換えヒトIL-2注射剤である)のそれぞれを10mL/kgの投与体積で投与した。5日目に各群の腫瘍組織サンプルを取ってCD8T細胞とCD4 Treg細胞群の割合の変化をフロー検出で獲得し、その結果を表5に示した。
【0156】
【表6】
【0157】
泉奇対照に比べ、30KD PEG-rhIL2-T41と30KD PEG-rhIL2-Y45では、CD8T細胞の割合が顕著に増加し、CD4 Treg細胞の割合が顕著に減少し、CD8T/CD4 Tregの比率が顕著に増加し、優れた免疫増強薬効が発見された。
【0158】
実施例9:Lys-azidoの活性基還元現象
実施例1における方法を参考にして、91位のアミノ酸(バリン)コドンがアンバーコドンに突然変異したrhIL-2(略称:rhGH-V91)発現菌株を構築し、構築過程で用いたプライマーを以下に示した。
【0159】
V91-F:5’-GATTTCCAATATCAACTAGATTGTTCTGGAACTGA-3’(SEQ ID NO:48)、
V91-R:5’-TCAGTTCCAGAACAATCTAGTTGATATTGGAAATC-3’(SEQ ID NO:49)。
【0160】
実施例2を参考にし、上記のrhGH-V91発現菌株を用いて、発酵過程中にLys-azidoを添加することで、91位がLys-azidoに突然変異したrhGH-2を発現し、そして実施例2における精製手段によって精製を行った。このような91位がLys-azidoに突然変異したrhGH-2について、図6に示すように、液体クロマトグラフィーと質量分析法(高分解能質量分析計:XevoG2-XS Q-Tof、Waters社製;超高速液体クロマトグラフィー:UPLC(Acquity UPLC I-Class)、Waters社製)によって完全な分子量の分析を行った。その結果から明らかなように、サンプルには理論分子量(15672.75 Da)よりも約26 Da小さい成分が現れ、この成分は推断によりLys-azidoの末端にあるアジド構造(-N)が(-NH)に還元された生成物であった。
【0161】
Lys-azidoの還元により、Lys-azidoに突然変異したrhIL-2がBCN-PEGとカップリングできなくなるため、カップリング率が低下してしまった。本発明の非天然アミノ酸を含有するrhIL-2がPEGとカップリングした場合、カップリング効率が明らかに向上したため、反応効率が著しく向上した。
【0162】
実施例10:部位特異的突然変異によって異なる非天然アミノ酸が挿入されたrhIL-2の発現及び精製
1、突然変異型rhIL-2への非天然アミノ酸の組み込み発現
実施例1で獲得した発現菌株rhIL2-T41-BL21を、LB培地(5g/L酵母抽出物、10g/Lトリプトン、10g/L NaCl、100mg/Lスペクチノマイシンを含有するもの)に接種し、37℃で4~6時間培養した後、菌液のOD600が2.0±0.2に達するまで二次拡種を行って(培地はLB培地である)、二次種液を獲得した。
【0163】
上記の二次種液を発酵培地に接種して発酵培養を行い、3 Lの4連発酵タンク中で実施し、培養体積を1L、培地を2×YT培地(16g/L酵母抽出物、10g/Lトリプトン、5g/L NaCl)、接種量を5%(v/v)、培養温度を37℃とし、pHを6.90±0.05に制御し、必要に応じてアンモニア水又はHPOを自動的に流動添加し、DO関連回転速度を設定して、DOを30%に制御した。菌液のOD600が20.0±2.0に達した場合、IPTGと製造例2(NPAK)、製造例3(NBPK)、製造例4(NPOK)、製造例5(NBGK)、製造例6(NPOK-2)、製造例7(NBGK-2)で獲得した非天然アミノ酸をそれぞれ添加し、終濃度を共に1mMとし、それと同時に0.5±0.1mL/minの補給速度で50%グリセリンの補給を開始し、5~6時間誘導発現後に菌体を収集した。異なる非天然アミノ酸が組み込まれた組換えIL-2のSDS-PAGE電気泳動図を図7に示した。
【0164】
2、突然変異型rhIL-2の分離抽出
上記のように収集した菌体のそれぞれについて実施例2に記載された分離抽出方法により分離抽出を行うことで獲得した、異なる非天然アミノ酸が組み込まれた突然変異型rhIL-2粗タンパク質(図8を参照)をそれぞれ、rhIL2-T41NPAK、rhIL2-T41NBPK、rhIL2-T41NPOK、rhIL2-T41NBGK、rhIL2-T41NPOK-2、rhIL2-T41NBGK-2と命名し、それらはそのままで以降のPEGカップリングに使用できる。
【0165】
実施例11:PEGと部位特異的突然変異によって非天然アミノ酸NPAKが挿入されたrhIL-2との部位特異的なカップリング
【化32】
PEGと部位特異的突然変異によってNPAKが挿入されたrhIL-2(rhIL2-T41NPAK)との部位特異的なカップリングの合成ルートは、式3に示す通りであった(但し、PからPへの方向はアミノ酸配列のN末端からC末端への方向である)。
【0166】
30KDのアミノオキシPEG(即ちヒドロキシアミンPEG)がオキシム化反応によってカップリングされたrhIL-2を例とすると、カップリング反応の操作は実施例3と同じであった。カップリング反応後にRP-HPLCを用いてカップリング状況を分析し、そのRP-HPLC分析条件は実施例3と同じとし、その分析結果は図9A及び図9Bに示す通りであった。その結果から明らかなように、図9BではrhIL-2ピークが反応前に比べ大幅に低下し、それに応じて生成物ピーク(21.175分のところ)が大幅に上昇したため、目的タンパク質にはPEGがカップリングされたことが判明し、なお、カップリング率(100%-カップリング終了後に残ったrhIL-2濃度/カップリング反応ゼロ時間のときのrhIL-2濃度×100%)が80%に近い。
【0167】
PEGがカップリングされた突然変異型rhIL-2タンパク質を、30KD PEG-rhIL2-T41NPAKと命名した。
【0168】
実施例12:部位特異的に修飾された30KD PEG-rhIL2-T41NPAKの精製
実施例11で獲得した30KD PEG-rhIL2-T41NPAKを実施例4に記載された精製方法によって精製した後、純度が約95%の目的タンパク質サンプルを獲得した。精製済みコンジュゲートの典型的なRP-HPLCスペクトルを図10に示した。
【0169】
実施例13:部位特異的に修飾された30KD PEG-rhIL2-T41NPAKの体外活性の評価(STAT5リン酸化実験)
実施例12で獲得した30KD PEG-rhIL2-T41NPAKに対して実施例5に記載された評価方法によって体外活性の評価を行い、実施例5の評価方法に比べ、YT細胞実験では参照の濃度範囲が6.3~1530ng/mLである点のみで違った。
【0170】
その結果を図11A図11D及び表6に示した。その結果から分かるように、30KD PEG-rhIL2-T41NPAKは、最初の設計要求に達したものであった(参照を対照とすると、EC50比の変化率は参照よりも低くなった)。
【0171】
【表7】
【0172】
特に限定されない限り、本発明で使用される用語は何れも、当業者が一般的に理解する意味を持つものである。
【0173】
本発明で記述される実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではなく、当業者であれば、本発明の範囲内で種々の他の代替、変更、改良を行うことができ、それ故、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、請求項のみによって限定されるものとする。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
【配列表】
2024530031000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2と、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされたPEGと、を含有する、ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートであって、
前記非天然アミノ酸は、式(I)で表される構造を有するカルボニル末端基含有化合物又はその鏡像異性体であり、前記カルボニル末端基とヒドロキシルアミン末端基含有PEGとがオキシム結合を形成することにより、PEGが前記少なくとも1つの非天然アミノ酸にカップリングされており、
【化1】
式中、X及びZは夫々独立に、置換され若しくは置換されないC0~C20の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-S(O)-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、Yは-C(O)-、-S(O)-又は-CH-を示し、Aは置換され若しくは置換されないC6~C20のアリール基を示し、
前記X、Z及びAが夫々独立に、置換された基を示す場合、置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロ基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である、
ヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項2】
前記組換えヒトインターロイキン-2は、SEQ ID NO:3に示されるタンパク質又はその機能活性断片であり、
好ましくは、前記少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2における、少なくとも1つの非天然アミノ酸の位置は、SEQ ID NO:2に対応するP34位、K35位、T37位、R38位、L40位、T41位、F42位、K43位、F44位、Y45位、E61位、E62位、K64位、P65位、E67位、E68位、N71位、L72位、Y107位から選ばれた1つ又は複数の部位である、
請求項1に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項3】
前記置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、C4~C10ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数であり、
好ましくは、前記X及びZは夫々独立にC0~C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、好ましくはC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、より好ましくは、前記XとZは同時にC0アルキレン基ではなく、及び/又は、
前記Aは置換され若しくは置換されないC6~C10のアリール基を示し、より好ましくは、前記Aは置換され若しくは置換されないフェニル基又はナフチル基を示す、
請求項1又は2に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項4】
前記非天然アミノ酸は、式(I-1)で表される構造を有する化合物であり、
【化2】
式中、前記X、Z及びAは夫々独立に請求項で定義されたものであり、
好ましくは、前記非天然アミノ酸は、式(I-2)で表される構造を有する化合物であり、
【化3】
式中、前記Xは請求項で定義されたものであり、
、Rは夫々独立に、水素、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、又はC4~C10ヘテロアリール基を示す、
請求項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項5】
前記非天然アミノ酸は、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)又は式(I-6)で表される構造を有する化合物であり、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
式中、X’はC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、好ましくはC0~C4の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH-は任意的に-O-及び/又は-NH-に置換可能であり、
前記R、Rは夫々独立に請求項4で定義されたものである、
請求項4に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項6】
前記非天然アミノ酸は、下記の何れか1つで表される構造を有する化合物であり、
【化8】
請求項5に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項7】
前記ヒドロキシルアミン末端基含有PEGの分子量は、20~50 KDである、
請求項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項8】
前記少なくとも1つの非天然アミノ酸を含有する組換えヒトインターロイキン-2は、コドン拡張技術または化学合成法によって製造されたものである、
請求項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項9】
前記コドン拡張技術は、大腸菌中で実現されたものである、
請求項8に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲート。
【請求項10】
請求項に記載のヒトインターロイキン-2とポリエチレングリコールのコンジュゲートの、免疫促進用薬物、固形腫瘍及び血液腫瘍の予防及び/又は治療用薬物、及び/又はCD8T細胞増殖用薬物の製造における使用であって、
好ましくは、前記固形腫瘍は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、頭頸癌、腎癌、肺癌、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌、又は前立腺癌であり、
好ましくは、前記血液腫瘍は、慢性リンパ球白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外縁帯B細胞リンパ腫、節辺縁帯B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、B細胞幼リンパ球白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、又はリンパ腫様肉芽腫瘍である使用。
【国際調査報告】