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特表2024-530037表面修飾電極、調製方法、および電気化学的使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】表面修飾電極、調製方法、および電気化学的使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240806BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240806BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240806BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240806BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20240806BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240806BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240806BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/66 A
H01M4/136
H01M4/58
H01M4/131
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/133
H01M4/137
H01M4/60
H01M4/36 C
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/134
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507907
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 CA2022051231
(87)【国際公開番号】W WO2023015396
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】3128220
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラポルト, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コラン-マルタン, スティーヴ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH04
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK06
5H029AK16
5H029AK18
5H029AL12
5H029AM12
5H029AM16
5H029HJ01
5H029HJ04
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA14
5H050CA20
5H050CA29
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA01
5H050EA02
5H050EA23
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
本技術は、それぞれが例えば15ミクロンまたはそれ未満である一連の薄層で、電極フィルムの表面を修飾することに関し、この第1の薄層は、溶媒和ポリマー中の無機化合物(セラミックなど)を含み、この無機化合物は、第1の薄層中に、約1:20から約20:1の範囲にある無機化合物対溶媒和ポリマーの質量比で、この第1の薄層中に存在する。これらの修飾電極を含む電気化学セルも、それを含む二次バッテリーと同様に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の薄層および第2の薄層で修飾された電極フィルムを含む電極であって、
- 前記電極フィルムが第1および第2の表面を含み、前記第1の表面が必要に応じて前処理されており、
- 前記第1の薄層が、溶媒和ポリマー中の無機化合物、ならびに必要に応じてイオン性塩および/または可塑剤を含み、前記第1の薄層が、前記電極フィルムの前記第1の表面に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、前記第1の薄層における重量比「無機化合物:溶媒和ポリマー」が、約1:20から約20:1の範囲にあり;
- 前記第2の薄層が、溶媒和ポリマー、イオン性塩、および必要に応じて可塑剤を含み、前記第2の薄層が、前記第1の薄層上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、
前記第1の層の溶媒和ポリマーが、前記第2の層の溶媒和ポリマーと同一でありまたは異なる、電極。
【請求項2】
前記第1の薄層の前記溶媒和ポリマーが架橋され、および/または前記第2の薄層の前記溶媒和ポリマーが架橋されている、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記第1の薄層の前記溶媒和ポリマーが架橋されておらず、および/または前記第2の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されていない、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記電極フィルムが集電体であり、例えば、金属箔もしくはグリッド(銅、ニッケルなど)、炭素もしくは炭素含有フィルム(カーボン紙、自立型グラフェンなど)、または電子伝導層(集電体プリントなど)を含むその他の固体支持体(ポリマー、ガラスなど)などの、電子伝導固体支持体を含む集電体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記電極フィルムが、例えばリチウムまたはリチウムを含む合金を含む、金属フィルムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記金属フィルムが、1000ppm未満(すなわち0.1重量%未満)の不純物を含むリチウムを含む、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記金属フィルムが、リチウムと、リチウム以外のアルカリ金属(Na、K、Rb、およびCsなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、およびBaなど)、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなど)、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、マンガン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、モリブデン、鉄、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、およびゲルマニウム(例えば、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、またはGe)から選択される元素との合金を含む、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
前記合金が、少なくとも75重量%のリチウム、または85%から99.9重量%の間のリチウムを含む、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記電極フィルムが、前記第1の表面に、前記第1の薄層に接触する前処理層をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
前記前処理層が、シラン、ホスホネート、ボレート、有機塩もしくは化合物、炭素(例えば黒鉛、グラフェンなど)、無機塩もしくは化合物(LiF、LiN、LiP、LiNO、LiPOなど)から選択される化合物を含み、または前記電極フィルムの金属とは異なるもしくはそれと前記表面で合金を形成する元素(請求項7で定義された元素など)の薄層を含み、前記前処理層が、5μm未満の平均厚さを有する、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
前記前処理層が、3μm未満、または1μm未満、または500nm未満、または200nm未満、または100nm未満、または50nm未満の平均厚さを有する、請求項9または10に記載の電極。
【請求項12】
前記電極フィルムの前記第1の表面が、スタンピングによって前処理されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の電極。
【請求項13】
前記無機化合物が、粒子形態(例えば、球状、ロッド形状、針形状など)である、請求項1から12のいずれか一項に記載の電極。
【請求項14】
平均粒度が、1μm未満、または500nm未満、または300nm未満、または200nm未満、または1nmから500nmの間、または10nmから500nmの間、または50nmから500nmの間、または100nmから500nmの間、または1nmから300nmの間、または10nmから300nmの間、または50nmから300nmの間、または100nmから300nmの間、または1nmから200nmの間、または10nmから200nmの間、または50nmから200nmの間、または100nmから200nmの間、または1nmから100nmの間、または10nmから100nmの間、または25nmから100nmの間、または50nmから100nmの間であり得る、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記無機化合物が、セラミックを含む、請求項13または14に記載の電極。
【請求項16】
前記無機化合物が、Al、Mg、NaO・2B、xMgO・yB・zHO、TiO、ZrO、ZnO、Ti、SiO、Cr、CeO、B、BO、SrBiTi15、LLTO、LLZO、LAGP、LATP、Fe、BaTiO、γ-LiAlO、金属/炭素混合物(Sn+C、Zn+C、NiP+Cなど)、モレキュラーシーブおよびゼオライト(例えば、アルミノシリケートのもの、メソポーラスシリカのもの)、スルフィドセラミック(Li11のような)、ガラスセラミック(例えばLIPONなど)、およびその他のセラミック、ならびにこれらの組合せから選択される、請求項13または14に記載の電極。
【請求項17】
前記無機化合物の粒子が、その表面に共有結合でグラフト化された有機基をさらに含み、例えば前記基は、架橋可能な基(例えばアクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基などを含む有機基)、アリール基、アルキレンオキシドもしくはポリ(アルキレンオキシド)基、およびその他の有機基、またはこれらの組合せから選択され、必要に応じて、前記有機基と前記無機化合物の粒子との間にスペーサー基を含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の電極。
【請求項18】
前記グラフト化された有機基が、スペーサー基によって前記無機化合物粒子に結合したポリ(アルキレンオキシド)鎖を含む、請求項17に記載の電極。
【請求項19】
前記スペーサー基が、シランまたはハロゲン化シラン、ホスホネート、カルボキシレート、カテコール、(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、アルキレンまたはポリアルキレン基、およびこれらの組合せから選択される、請求項17または18に記載の電極。
【請求項20】
前記無機化合物粒子が、小さい比表面積(例えば、80m/g未満、または40m/g未満)を有する、請求項13から19のいずれか一項に記載の電極。
【請求項21】
前記第1の薄層における前記「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比が、約2:5から約4:1、または約2:5から約2:1、または約1:2から約2:1、または約4:5から約2:1、または約1:1から約2:1、または約4:5から約3:2の範囲にある、請求項13から20のいずれか一項に記載の電極。
【請求項22】
前記無機化合物粒子が、高い比表面積(例えば、80m/gもしくはそれよりも大きい、または120m/gもしくはそれよりも大きい)を有する、請求項13から19のいずれか一項に記載の電極。
【請求項23】
前記第1の薄層における前記「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比が、約1:20から約2:1、または約2:5から約2:1、約2:5から約6:5、または約1:20から約6:5、または約2:5から約1:1、または約1:20から約1:1、または約2:5から約4:5、または約1:20から約4:5の範囲にある、請求項13から19および22のいずれか一項に記載の電極。
【請求項24】
前記第1の薄層の平均厚さが、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である、請求項1から23のいずれか一項に記載の電極。
【請求項25】
前記第2の薄層の平均厚さが、約50nmから約15μmの間、または約0.1μmから約15μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または約2μmから約5μmの間、または約50nmから約5μmの間、または約0.1μmから約2μmの間である、請求項1から24のいずれか一項に記載の電極。
【請求項26】
前記第1および第2の薄層の全平均厚さが、約1μmから約30μm、または約1μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約1μmから約20μm、または約1μmから約16μm、または約2μmから約12μm、または約3μmから約15μm、または約3μmから約12μm、または約4μmから約15μm、または約4μmから約12μmの範囲にある、請求項1から25のいずれか一項に記載の電極。
【請求項27】
前記溶媒和ポリマーが、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーから選択され、必要に応じて、架橋可能な官能基(例えば、アクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基など)から誘導された架橋単位を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の電極。
【請求項28】
前記第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つが、可塑剤をさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の電極。
【請求項29】
前記第1の薄層および前記第2の薄層が、可塑剤をさらに含む、請求項28に記載の電極。
【請求項30】
前記可塑剤が、グリコールジエーテル(テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)など)、炭酸エステル(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなど)、ラクトン(γ-ブチロラクトンなど)、アジポニトリル、およびイオン性液体などのタイプの液体から選択される、請求項28または29に記載の電極。
【請求項31】
前記第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つが、リチウム塩をさらに含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の電極。
【請求項32】
前記第1の薄層および前記第2の薄層が、リチウム塩をさらに含む、請求項31に記載の電極。
【請求項33】
前記リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、およびこれらの組合せから選択される、請求項31または32に記載の電極。
【請求項34】
前記電極フィルムの第2の表面に接触している集電体をさらに含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の電極。
【請求項35】
負極および正極を含む電気化学セルであって、前記負極および前記正極のうちの少なくとも1つが、請求項1から34のいずれか一項に定義された通りである、電気化学セル。
【請求項36】
- 前記負極が、請求項1から34のいずれか一項で定義された通りであり、
- 前記正極が、正極電気化学活性材料、必要に応じて結合材、および必要に応じて導電性材料を含む、正極材料のフィルムを含む、
請求項35に記載の電気化学セル。
【請求項37】
前記正極電気化学活性材料が、金属ホスフェート、リチウム化金属ホスフェート、金属酸化物、およびリチウム化金属酸化物から選択される、請求項36に記載の電気化学セル。
【請求項38】
前記正極電気化学活性材料が、LiM’PO(式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、VF、LiV、LiMn、LiM”O(式中、M”はMn、Co、Ni、またはこれらの組合せである(NMC、LiMnCoNi(式中、x+y+z=1)など))、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素の硫黄、元素のセレン、元素のヨウ素、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、炭素系活性材料、有機カソード活性材料(ポリイミド、ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ-4-イルメタクリレート)(PTMA)、テトラ-リチウムペリレン-3,4,9,10-テトラカルボキシレート(PTCLi)、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、π-共役ジカルボキシレート、およびアントラキノンなど)、または互いに適合性がある場合にはこれらの材料のうちの2種もしくはそれよりも多くの組合せである、請求項36に記載の電気化学セル。
【請求項39】
前記正極電気化学活性材料が、必要に応じて(例えば、ポリマー、セラミック、炭素、またはこれらの2種もしくはそれよりも多くの組合せで)コーティングされた粒子の形態である、請求項36から38のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項40】
前記正極材料のフィルムが第1および第2の表面を含み、前記第1の表面が、前記負極に面しており、かつ溶媒和ポリマーおよびイオン性塩を含む第3の薄層を保持しており、前記第3の薄層が、約50μmもしくはそれ未満、約40μmもしくはそれ未満、または約30μmもしくはそれ未満、または約15μmもしくはそれ未満の平均厚さを有し、または約0.5μmから約50μmの間、または約5μmから約50μmの間、または約5μmから約40μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である、請求項36から39のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項41】
前記溶媒和ポリマーが、請求項27で定義された通りである、請求項40に記載の電気化学セル。
【請求項42】
前記塩が、例えば請求項33で定義されたような、リチウム塩である、請求項40または41に記載の電気化学セル。
【請求項43】
前記第3の薄層が、例えば請求項30で定義されたような、可塑剤をさらに含む、請求項40から42のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項44】
前記電気化学セルが、固体ポリマー電解質層の存在を除外する、請求項35から43のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項45】
前記電気化学セルが、ポリマーおよびリチウム塩を含む固体電解質層をさらに含む、請求項35から43のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項46】
前記電解質ポリマーが、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)であって、必要に応じて架橋可能な単位を含むもの)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーから選択され、前記溶媒和ポリマーが必要に応じて架橋されている、請求項45に記載の電気化学セル。
【請求項47】
前記リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、およびこれらの組合せから選択される、請求項45または46に記載の電気化学セル。
【請求項48】
前記固体電解質が、セラミックをさらに含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項49】
負極および正極を含む電気化学セルであって、
(a)前記負極が第1および第2の表面を含む負極フィルムを含み、前記第1の表面が必要に応じて前処理されており、前記負極が、溶媒和ポリマー中の無機化合物、および必要に応じてイオン性塩および/または可塑剤を含む第1の薄層を含み、前記第1の薄層が、前記負極フィルムの第1の表面に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、前記第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比が約1:20から約20:1の範囲にあり、
(b)前記負極が、溶媒和ポリマー、イオン性塩、および必要に応じて可塑剤を含む第2の薄層を含み、前記第2の薄層が、前記第1の薄層上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、前記第1の層の溶媒和ポリマーが、前記第2の層の溶媒和ポリマーと同じであるかまたは異なり、および/または
前記正極が、正極電気化学活性材料、必要に応じて結合材、および必要に応じて導電性材料を含む正極材料フィルムを含み、前記正極材料フィルムが第1および第2の表面を含み、前記第1の表面が、前記負極に面しており、かつ溶媒和ポリマー、イオン性塩を含む第3の薄層を保持しており、前記第3の薄層が約50μmもしくはそれ未満または約15μmもしくはそれ未満の平均厚さを有し、
前記電気化学セルが、追加の固体ポリマー電解質層の存在を除外する、
電気化学セル。
【請求項50】
前記第2の薄層を含む、請求項49に記載の電気化学セル。
【請求項51】
前記第2の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されている、請求項50に記載の電気化学セル。
【請求項52】
前記第2の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されていない、請求項50に記載の電気化学セル。
【請求項53】
前記第3の薄層を含む、請求項49または50に記載の電気化学セル。
【請求項54】
前記第3の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されている、請求項53に記載の電気化学セル。
【請求項55】
前記第3の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されていない、請求項53に記載の電気化学セル。
【請求項56】
前記第1の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されている、請求項49から55のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項57】
前記第1の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されていない、請求項49から55のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項58】
前記負極フィルムが集電体であり、例えば、金属箔もしくはグリッド(例えば、銅、ニッケルなど)、炭素もしくは炭素含有フィルム(例えばカーボン紙、自立型グラフェンなど)、または電子伝導層(集電体プリントなど)を含むその他の固体支持体(ポリマー、ガラスなど)などの、電子伝導固体支持体を含む集電体である、請求項49から57のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項59】
前記負極フィルムが、例えばリチウムまたはリチウムを含む合金を含む、金属フィルムを含む、請求項49から57のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項60】
前記金属フィルムが、1000ppm未満(すなわち0.1重量%未満)の不純物を含むリチウムを含む、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項61】
前記金属フィルムが、リチウムと、リチウム以外のアルカリ金属(Na、K、Rb、およびCsなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、およびBaなど)、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなど)、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、マンガン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、モリブデン、鉄、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、およびゲルマニウム(例えば、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、またはGe)から選択される元素との合金を含む、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項62】
前記合金が、少なくとも75重量%のリチウム、または85%から99.9重量%の間のリチウムを含む、請求項61に記載の電気化学セル。
【請求項63】
前記負極フィルムが、前記第1の表面に、前記第1の薄層に接触する前処理層をさらに含む、請求項49から62のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項64】
前記前処理層が、シラン、ホスホネート、ボレート、有機塩もしくは化合物、炭素(例えば黒鉛、グラフェンなど)、無機塩もしくは化合物(例えばLiF、LiN、LiP、LiNO、LiPOなど)から選択される化合物を含み、または前記負極フィルムの金属とは異なるもしくはそれと前記表面で合金を形成する元素(請求項55で定義された元素など)の薄層を含み、前記前処理層が、5μm未満の平均厚さを有する、請求項63に記載の電気化学セル。
【請求項65】
前記前処理層が、3μm未満、または1μm未満、または500nm未満、または200nm未満、または100nm未満、または50nm未満の平均厚さを有する、請求項57または58に記載の電気化学セル。
【請求項66】
前記負極フィルムの第1の表面が、スタンピングによって前処理されている、請求項49から65のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項67】
前記無機化合物が、粒子形態(例えば、球状、ロッド形状、針形状など)である、請求項49から66のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項68】
前記粒子の平均サイズが、1μm未満、500nm未満、もしくは300nm未満、もしくは200nm未満、または1nmから500nmの間、もしくは10nmから500nmの間、もしくは50nmから500nmの間、もしくは100nmから500nmの間、もしくは1nmから300nmの間、もしくは10nmから300nmの間、もしくは50nmから300nmの間、もしくは100nmから300nmの間、もしくは1nmから200nmの間、もしくは10nmから200nmの間、もしくは50nmから200nmの間、もしくは100nmから200nmの間、もしくは1nmから100nmの間、もしくは10nmから100nmの間、もしくは25nmから100nmの間、もしくは50nmから100nmの間のものである、請求項67に記載の電気化学セル。
【請求項69】
前記無機化合物がセラミックを含む、請求項67または68に記載の電気化学セル。
【請求項70】
前記無機化合物が、Al、Mg、NaO・2B、xMgO・yB・zHO、TiO、ZrO、ZnO、Ti、SiO、Cr、CeO、B、BO、SrBiTi15、LLTO、LLZO、LAGP、LATP、Fe、BaTiO、γ-LiAlO、金属/炭素混合物(Sn+C、Zn+C、NiP+Cなど)、モレキュラーシーブおよびゼオライト(例えば、アルミノシリケートのもの、メソポーラスシリカのもの)、スルフィドセラミック、(Li11のような)、ガラス-セラミック(例えばLIPONなど)、およびその他のセラミック、ならびにこれらの組合せから選択される、請求項67または68に記載の電気化学セル。
【請求項71】
前記無機化合物の粒子が、その表面に共有結合によりグラフト化された有機基をさらに含み、例えば前記基は、架橋可能な基(例えばアクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基などを含む有機基)、アリール基、アルキレンオキシドもしくはポリ(アルキレンオキシド)基、およびその他の有機基、またはこれらの組合せから選択され、必要に応じて、前記有機基と前記無機化合物の粒子との間にスペーサー基を含む、請求項67から70のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項72】
前記グラフト化された有機基が、スペーサー基によって前記無機化合物粒子に結合したポリ(アルキレンオキシド)鎖を含む、請求項71に記載の電気化学セル。
【請求項73】
前記スペーサー基が、シランまたはハロゲン化シラン、ホスホネート、カルボキシレート、カテコール、(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、アルキレンまたはポリアルキレン基、およびこれらの組合せから選択される、請求項71または72に記載の電気化学セル。
【請求項74】
前記無機化合物粒子が、小さい比表面積(例えば、80m/g未満、または40m/g未満)を有する、請求項67から73のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項75】
前記第1の薄層における前記「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比が、約2:5から約4:1、または約2:5から約2:1、または約1:2から約2:1、または約4:5から約2:1、または約1:1から約2:1、または約4:5から約3:2の範囲にある、請求項67から74のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項76】
前記無機化合物粒子が、高い比表面積(例えば、80m/gおよびそれよりも大きい、または120m/gおよびそれよりも大きい)を有する、請求項67から73のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項77】
前記第1の薄層における前記「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比が、約1:20から約2:1、または約2:5から約2:1、約2:5から約6:5、または約1:20から約6:5、または約2:5から約1:1、または約1:20から約1:1、または約2:5から約4:5、または約1:20から約4:5の範囲にある、請求項67から73および76のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項78】
前記第1の薄層の平均厚さが、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である、請求項49から77のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項79】
前記第2の薄層の平均厚さが、約50nmから約15μmの間、または約0.1μmから約15μmの間、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間、または50nmから約5μmの間、または約0.1μmから約2μmの間である、請求項49から78のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項80】
前記第2の薄層が存在し、前記第1および第2の薄層の全平均厚さが、約1μmから約30μm、または約1μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約1μmから約20μm、または約1μmから約16μm、または約2μmから約12μm、または約3μmから約15μm、または約3μmから約12μm、または約4μmから約15μm、または約4μmから約12μmの範囲にある、請求項49から79のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項81】
前記第3の薄層の平均厚さが、約40μmもしくはそれ未満、または約30μmもしくはそれ未満、または約15μmもしくはそれ未満であり、または約0.5μmから約50μmの間、または約5μmから約50μmの間、または約5μmから約40μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である、請求項49から80のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項82】
前記第2の薄層および前記第3の薄層が存在し、前記第1、第2、および第3の薄層の全平均厚さが、約3μmから約60μm、または約10μmから約50μm、または約15μmから約30μm、または約3μmから約30μm、または約3μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約5μmから約20μm、または約8μmから約15μm、または約8μmから約12μm、または約5μmから約15μm、または約5μmから約12μm、または約5μmから約15μm、または約9μmから約15μmの範囲にある、請求項49から81のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項83】
前記溶媒和ポリマーが、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーから独立して選択され、必要に応じて、架橋可能な官能基(例えばアクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基など)から誘導された架橋単位を含む、請求項49から82のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項84】
前記第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つが、可塑剤をさらに含む、請求項49から83のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項85】
前記第1の薄層および前記第2の薄層が、可塑剤をさらに含む、請求項84に記載の電気化学セル。
【請求項86】
前記第3の薄層が、可塑剤をさらに含む、請求項49から85のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項87】
前記可塑剤が、グリコールジエーテル(テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)など)、炭酸エステル(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなど)、ラクトン(γ-ブチロラクトンなど)、アジポニトリル、およびイオン性液体などの液体から選択される、請求項84から86のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項88】
前記第1、第2、および第3の薄層のうちの少なくとも1つが、リチウム塩をさらに含む、請求項49から87のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項89】
前記第1、第2、および第3の薄層が、リチウム塩をさらに含む、請求項88に記載の電気化学セル。
【請求項90】
前記リチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、およびこれらの組合せから選択される、請求項88または89に記載の電気化学セル。
【請求項91】
前記負極が、前記負極フィルムの第2の表面に接触している集電体をさらに含む、請求項49から90のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項92】
前記正極が、前記正極材料フィルムの第2の表面に接触している集電体をさらに含む、請求項49から91のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項93】
前記正極電気化学活性材料が、金属ホスフェート、リチウム化金属ホスフェート、金属酸化物、およびリチウム化金属酸化物から選択される、請求項49から92のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項94】
前記正極電気化学活性材料が、LiM’PO(式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、VF、LiV、LiMn、LiM”O(式中、M”はMn、Co、Ni、またはこれらの組合せである(NMC、LiMnCoNi(式中、x+y+z=1)など))、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素の硫黄、元素のセレン、元素のヨウ素、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、炭素系活性材料、有機カソード活性材料(ポリイミド、ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ-4-イルメタクリレート)(PTMA)、テトラ-リチウムペリレン-3,4,9,10-テトラカルボキシレート(PTCLi)、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、π-共役ジカルボキシレート、およびアントラキノン)、または互いに適合性がある場合にはこれらの材料のうちの2種もしくはそれよりも多くの組合せである、請求項49から92のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項95】
前記正極電気化学活性材料が、必要に応じて(例えば、ポリマー、セラミック、炭素、またはこれらの2種もしくはそれよりも多くの組合せで)コーティングされた粒子の形態である、請求項49から94のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項96】
請求項34から95のいずれか一項で定義された少なくとも1つの電気化学セルを含む、電気化学的蓄電池。
【請求項97】
前記電気化学的蓄電池が、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである、請求項96に記載の電気化学的蓄電池。
【請求項98】
モバイルデバイス、電気自動車もしくはハイブリッド自動車における、または再生可能エネルギーの貯蔵における、請求項96または97で定義された電気化学的蓄電池の使用。
【請求項99】
前記モバイルデバイスが、携帯電話、カメラ、タブレット、およびラップトップから選択される、請求項98に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年8月13日に出願されたカナダ特許出願第3,128,220号に基づく優先権を、適用可能な法の下で主張するものであり、その内容は参照により全体としてかつ全ての目的で組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、少なくとも1つの修飾面を有する電極材料フィルムを含む電極、それらの製造プロセス、およびそれらを含む電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0003】
技術背景
リチウムイオンバッテリーに使用される液体電解質は、可燃性であり、ゆっくりと分解して、リチウムフィルムの表面または固体電解質の界面(「固体電解質界面(solid electrolyte interface)」または「solid electrolyte interphase」を略してSEI)に不動態層を形成し、これはリチウムを不可逆的に消費するものであり、バッテリーのクーロン効率を低減させる。さらにリチウムアノードは、バッテリーのサイクル動作中に著しい形態変化を受け、リチウムデンドライトが形成される。これらは通常、電解質を通して移行するので、最終的には短絡を引き起こし得る。安全性の懸念およびより高いエネルギー密度に関する要求が、ポリマーまたはセラミック電解質のいずれかを持つ全固体リチウム再充電可能バッテリーの開発の研究に拍車をかけている。なぜなら、ポリマーおよびセラミック電解質の両方はリチウム金属に対してさらに安定であり、リチウムデンドライトの成長を低減させるからである。しかしながら、これらの全固体バッテリーにおける反応性の損失および固体界面間の不十分な接触は、依然として問題である。
【0004】
リチウム表面を保護するための、簡単でより工業的に適用可能な方法は、その表面を、ポリマーまたはポリマー/リチウム塩混合物で、噴霧、浸漬、遠心分離によりまたはいわゆるドクターブレード法を使用して、コーティングすることである(N. Delaporte, et al., Front. Mater., 2019, 6, 267)。選択されるポリマーは、リチウムおよびイオン伝導体に対して、低温で安定でなければならない。ある意味、リチウム表面に堆積されるポリマー層は、室温でゴム状のままであるためにおよび液体電解質の場合と類似したリチウム伝導度を維持するために、文献で一般に報告されている固体ポリマー電解質(SPE)と同等であるべきであり、低いガラス転移(T)を有する。サイクル動作中のリチウムの変形に順応するため、特にリチウムデンドライトの形成を回避するため、ポリマーは、良好な柔軟性を持たなければならず、高いヤング率を特徴としなければならない。
【0005】
このタイプの保護層で使用されるポリマーの少数の例は、ポリアクリル酸(PAA)(N.-W. Li, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2018, 57, 1505-1509)、ポリ(ビニリデンカーボネート-co-アクリロニトリル)(S. M. Choi et al., J. Power Sources, 2013, 244, 363-368)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(Y. M. Lee, et al., J. Power Sources, 2003, 119-121, 964-972)、PEDOT-co-PEGコポリマー(G. Ma, et al., J. Mater. Chem. A, 2014, 2, 19355-19359およびI. S. Kang, et al., J. Electrochem. Soc., 2014, 161 (1), A53-A57)、リチウム上でのアセチレンの直接的な重合から得られるポリマー(D. G. Belov, et al., Synth. Met., 2006, 156, 745-751)、in situ重合されたα-シアノアクリル酸エチル(Z. Hu, et al., Chem. Mater., 2017, 29, 4682-4689)、およびコポリマーKynar(商標)2801および硬化性モノマー1,6-ヘキサンジオールジアクリレートから形成されたポリマー(N.-S. Choi, et al., Solid State Ion., 2004, 172, 19-24)を含む。後者のグループは、ポリマー混合物へのイオン性受容体の組込みも研究した(N.-S. Choi, et al., Electrochem. Commun., 2004, 6, 1238-1242)。
【0006】
一部の研究は、リチウム表面修飾のため、固体充填材、典型的にはセラミックの、ポリマーへの組込みに関して行われた。例えば無機充填材(例えば、Al、TiO、BaTiO)は、混成有機-無機複合電解質が得られるようにポリマーと混合された。
【0007】
サイズが100nm未満の新たに合成された球状CuN粒子、およびスチレンブタジエンゴム(SBR)コポリマーの混合物を、ドクターブレードによりリチウム表面に付着させた(Y. Liu, et al., Adv. Mater., 2017, 29, 1605531)。リチウムと接触すると、CuNは高いリチウム伝導性のLiNに変換される。LiTi12/Li(LTO/Li)セルを液体電解質で組み立て、より良好な電気化学性能が、CuNおよびSBRの混合物により保護されたリチウムを使用して得られた。
【0008】
リチウム表面上に堆積された、Al粒子(1.7μmの平均直径)およびポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)で構成された20μmの保護層は、リチウム-酸素バッテリーの寿命を改善することが提示されてきた(D.J. Lee, et al., Electrochem. Commun., 2014, 40, 45-48)。Co-スーパーP/Liバッテリーはこの保護層および液体電解質を持つ。同様に修飾されたリチウムの効果は、Gaoおよび彼の同僚によっても研究されてきたが(H.K. Jing et al., J. Mater. Chem. A, 2015, 3, 12213-12219)、その焦点は、リチウム-硫黄バッテリーを改善することにあった。この例では、100nmのAl球を、結合材としてのPVDFと共に使用し、DMF溶媒中で調製された混合物をリチウム箔上にスピンコーティングした。次いでバッテリーの組み立てを、液体電解質を用いて実施した。
【0009】
リチウムの成長を制限するために、充填材としてAl(粒度は約10nm)を含むポリイミドの25μmの多孔質層も、提示されている(Z. Peng et al., J. Mater. Chem. A, 2016, 4, 2427-2432参照)。この方法は、リチウムを、液体電解質中に存在する添加剤と接触させることによる(フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)など)、「スキン層」と呼ばれるフィルムの形成を含む。この液体電解質を含むCu/LiFePO電気化学セルを、デンドライトの形成および電解質の分解を阻止する際のポリイミド/Al層の有用性を実証するために試験した。
3つのこれまでの段落に記載される保護層は、多孔質であり、そこに浸透することができる液体電解質と共に使用するのに適している。したがってこのタイプの層は固体電解質との使用に適していない。なぜなら、固体電解質は、電極の表面(またはその保護層)と密接に接触することおよび電解質から活性電極材料へのイオンの伝導を可能にすることができなければならないからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】N. Delaporte, et al., Front. Mater., 2019, 6, 267
【非特許文献2】N.-W. Li, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2018, 57, 1505-1509
【非特許文献3】S. M. Choi et al., J. Power Sources, 2013, 244, 363-368
【非特許文献4】Y. M. Lee, et al., J. Power Sources, 2003, 119-121, 964-972
【非特許文献5】G. Ma, et al., J. Mater. Chem. A, 2014, 2, 19355-19359
【非特許文献6】I. S. Kang, et al., J. Electrochem. Soc., 2014, 161 (1), A53-A57
【非特許文献7】D. G. Belov, et al., Synth. Met., 2006, 156, 745-751
【非特許文献8】Z. Hu, et al., Chem. Mater., 2017, 29, 4682-4689
【非特許文献9】N.-S. Choi, et al., Solid State Ion., 2004, 172, 19-24
【非特許文献10】N.-S. Choi, et al., Electrochem. Commun., 2004, 6, 1238-1242
【非特許文献11】Y. Liu, et al., Adv. Mater., 2017, 29, 1605531
【非特許文献12】D.J. Lee, et al., Electrochem. Commun., 2014, 40, 45-48
【非特許文献13】H.K. Jing et al., J. Mater. Chem. A, 2015, 3, 12213-12219
【非特許文献14】Z. Peng et al., J. Mater. Chem. A, 2016, 4, 2427-2432
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
第1の態様によれば、本発明の技術は、第1の薄層および第2の薄層で修飾された電極フィルムを含む電極であって:
- 電極フィルムが第1および第2の表面を含み、第1の表面が必要に応じて前処理され;
- 第1の薄層が、溶媒和ポリマー中の無機化合物、ならびに必要に応じてイオン性塩および/または可塑剤を含み、第1の薄層は、電極フィルムの第1の表面上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、第1の薄層における重量比「無機化合物:溶媒和ポリマー」が約1:20から約20:1の範囲にあり;
- 第2の薄層が、溶媒和ポリマー、イオン性塩、および必要に応じて可塑剤を含み、第2の薄層は、第1の薄層上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し;
第1の層の溶媒和ポリマーが、第2の層の溶媒和ポリマーと同一でありまたは異なる、
電極に関する。
【0012】
一実施形態では、第1の薄層の溶媒和ポリマーは架橋され、および/または第2の薄層の溶媒和ポリマーは架橋されている。別の実施形態では、第1の薄層の溶媒和ポリマーは架橋されておらず、および/または第2の薄層の溶媒和ポリマーは架橋されていない。
【0013】
一実施形態によれば、電極フィルムは集電体であり、例えば、金属箔もしくはグリッド(銅、ニッケルなど)、炭素もしくは炭素含有フィルム(カーボン紙、自立型グラフェンなど)、または電子伝導層(集電体プリントなど)を含むその他の固体支持体(ポリマー、ガラスなど)などの、電子伝導固体支持体を含む集電体である。
【0014】
別の実施形態によれば、電極フィルムは、例えばリチウム(例えば、1000ppm未満(すなわち0.1重量%未満)の不純物を含む)またはリチウムを含む合金を含む、金属フィルムを含む。一実施形態では、金属フィルムは、リチウムと、リチウム以外のアルカリ金属(Na、K、Rb、およびCsなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、およびBaなど)、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなど)、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、マンガン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、モリブデン、鉄、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、およびゲルマニウム(例えば、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、またはGe)から選択される元素との合金を含む。一実施形態によれば、合金は、少なくとも75重量%のリチウム、または85%から99.9重量%の間のリチウムを含む。
【0015】
さらなる実施形態によれば、電極フィルムはさらに、第1の表面上に前処理層を含み、これは第1の薄層に接触している。一実施形態では、前処理層は、シラン、ホスホネート、ボレート、有機塩または化合物、炭素(例えば黒鉛、グラフェンなど)、無機塩または化合物(例えばLiF、LiN、LiP、LiNO、LiPOなど)から選択される化合物を含み、あるいは電極フィルムの金属とは異なるもしくはそれと表面で合金を形成する元素(合金に関して上記にて定められた元素など)の薄層を含み、前記前処理層は、5μm未満、または3μm未満、または1μm未満、または500nm未満、または200nm未満、または100nm未満、または50nm未満の平均厚さを有する。一実施形態では、電極フィルムの第1の表面は、スタンピングによって前処理されている。
【0016】
一実施形態によれば、無機化合物は、粒子形態(例えば、球状、ロッド形状、針形状など)である。例えば平均粒度は、1μm未満、または500nm未満、または300nm未満、または200nm未満、または1nmから500nmの間、または10nmから500nmの間、または50nmから500nmの間、または100nmから500nmの間、または1nmから300nmの間、または10nmから300nmの間、または50nmから300nmの間、または100nmから300nmの間、または1nmから200nmの間、または10nmから200nmの間、または50nmから200nmの間、または100nmから200nmの間、または1nmから100nmの間、または10nmから100nmの間、または25nmから100nmの間、または50nmから100nmの間であり得る。
【0017】
別の実施形態では、無機化合物はセラミックを含む。一実施形態では、無機化合物は、Al、Mg、NaO・2B、xMgO・yB・zHO、TiO、ZrO、ZnO、Ti、SiO、Cr、CeO、B、BO、SrBiTi15、LLTO、LLZO、LAGP、LATP、Fe、BaTiO、γ-LiAlO、金属/炭素混合物(Sn+C、Zn+C、NiP+Cなど)、モレキュラーシーブおよびゼオライト(例えば、アルミノシリケートのもの、メソポーラスシリカのもの)、スルフィドセラミック(Li11のような)、ガラスセラミック(例えば、LIPONなど)、およびその他のセラミック、ならびにこれらの組合せから選択される。
【0018】
追加の実施形態によれば、無機化合物の粒子はさらに、その表面に共有結合でグラフト化された有機基を含み、例えば前記基は、架橋可能な基(例えばアクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基などを含む有機基)、アリール基、アルキレンオキシドもしくはポリ(アルキレンオキシド)基、およびその他の有機基、またはこれらの組合せから選択され、必要に応じて、有機基と無機化合物の粒子との間にスペーサー基を含む。一実施形態では、グラフト化された有機基は、スペーサー基によって無機化合物粒子に結合したポリ(アルキレンオキシド)鎖を含む。別の実施形態では、スペーサー基は、シランまたはハロゲン化シラン、ホスホネート、カルボキシレート、カテコール、(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、アルキレンまたはポリアルキレン基、およびこれらの組合せから選択される。
【0019】
一実施形態によれば、無機化合物粒子は、小さい比表面積(例えば、80m/g未満、または40m/g未満)を有する。別の実施形態によれば、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は、約2:5から約4:1、または約2:5から約2:1、または約1:2から約2:1、または約4:5から約2:1、または約1:1から約2:1、または約4:5から約3:2の範囲にある。さらに別の実施形態では、無機化合物粒子は、高い比表面積(例えば、80m/gもしくはそれよりも大きい、または120m/gもしくはそれよりも大きい)を有する。さらに別の実施形態では、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は、約1:20から約2:1、または約2:5から約2:1、約2:5から約6:5、または約1:20から約6:5、または約2:5から約1:1、または約1:20から約1:1、または約2:5から約4:5、または約1:20から約4:5の範囲にある。
【0020】
追加の実施形態によれば、第1の薄層の平均厚さは、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である。別の実施形態によれば、第2の薄層の平均厚さは、約50nmから約15μmの間、または約0.1μmから約15μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または約2μmから約5μmの間、または約50nmから約5μmの間、または約0.1μmから約2μmの間である。さらに別の実施形態では、第1および第2の薄層の全平均厚さは、約1μmから約30μm、または約1μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約1μmから約20μm、または約1μmから約16μm、または約2μmから約12μm、または約3μmから約15μm、または約3μmから約12μm、または約4μmから約15μm、または約4μmから約12μmの範囲にある。
【0021】
別の実施形態によれば、溶媒和ポリマーは、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーから独立して選択され、必要に応じて、架橋可能な官能基(例えばアクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基など)から誘導された架橋単位を含む。
【0022】
好ましい実施形態によれば、第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つはさらに可塑剤を含み、例えば第1の薄層および第2の薄層はさらに可塑剤を含む。一実施形態では、可塑剤は、グリコールジエーテル(テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)など)、炭酸エステル(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなど)、ラクトン(γ-ブチロラクトンなど)、アジポニトリル、およびイオン性液体などのタイプの液体から選択される。
【0023】
さらなる実施形態によれば、第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つはさらに、リチウム塩を含む。一実施形態では、第1の薄層および第2の薄層はさらに、リチウム塩を含む。別の実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、およびこれらの組合せから選択される。
【0024】
第1の態様の別の実施形態によれば、電極はさらに、電極フィルムの第2の表面に接触している集電体を含む。
【0025】
第2の態様によれば、本発明の技術は、負極および正極を含む電気化学セルであって、負極および正極のうちの少なくとも1つが上記にて定義された通りであるものに関する。一実施形態では、負極は上記にて定義された通りであり、正極は、正極電気化学活性材料、必要に応じて結合材、および必要に応じて導電性材料を含む、正極材料のフィルムを含む。
【0026】
一実施形態によれば、正極電気化学活性材料は、金属ホスフェート、リチウム化金属ホスフェート、金属酸化物、およびリチウム化金属酸化物から選択される。別の実施形態では、正極電気化学活性材料は、LiM’PO(式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、VF、LiV、LiMn、LiM”O(式中、M”はMn、Co、Ni、またはこれらの組合せである(NMC、LiMnCoNi(式中、x+y+z=1)など))、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素の硫黄、元素のセレン、元素のヨウ素、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、炭素系活性材料、有機カソード活性材料(例えばポリイミド、ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ-4-イルメタクリレート)(PTMA)、テトラ-リチウムペリレン-3,4,9,10-テトラカルボキシレート(PTCLi)、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、π-共役ジカルボキシレート、およびアントラキノン)、または互いに適合性がある場合にはこれらの材料のうちの2種もしくはそれよりも多くの組合せである。
【0027】
別の実施形態では、正極電気化学活性材料は、必要に応じて(例えば、ポリマー、セラミック、炭素、またはこれらの2種もしくはそれよりも多くの組合せで)コーティングされた粒子の形態である。
【0028】
さらなる実施形態では、正極材料のフィルムは第1および第2の表面を含み、第1の表面は負極に面しており、かつ溶媒和ポリマーおよびイオン性塩を含む第3の薄層を保持しており、第3の薄層は、約50μmもしくはそれ未満、約40μmもしくはそれ未満、または約30μmもしくはそれ未満、または約15μmもしくはそれ未満の平均厚さを有するか、あるいは約0.5μmから約50μmの間、または約5μmから約50μmの間、または約5μmから約40μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である。一実施形態では、溶媒和ポリマーは、上記にて定義された通りである。別の実施形態では、塩は、例えば上記にて定義されたリチウム塩である。別の実施形態によれば、第3の薄層はさらに、例えば上記にて定義された可塑剤を含む。
【0029】
第2の態様の一実施形態によれば、電気化学セルは、固体ポリマー電解質層の存在を除外する。
【0030】
第2の態様の代替の実施形態によれば、電気化学セルはさらに、ポリマーおよびリチウム塩を含む固体電解質層を含む。一実施形態では、電解質ポリマーは、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)から選択され、必要に応じて架橋可能な単位)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーを含み、溶媒和ポリマーは必要に応じて架橋されている。
【0031】
別の実施形態では、固体電解質層のリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、およびこれらの組合せから選択される。
【0032】
別の実施形態によれば、固体電解質はさらに、セラミックを含む。
【0033】
第3の態様によれば、本発明の技術は、負極および正極を含む電気化学セルであって:
(a)負極が、第1および第2の表面を含む負極フィルムを含み、第1の表面が必要に応じて前処理されており、前記負極は、溶媒和ポリマー中の無機化合物、および必要に応じてイオン性塩および/または可塑剤を含む第1の薄層を含み、第1の薄層は、負極フィルムの第1の表面に配置されておりかつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比が約1:20から約20:1の範囲であり;
(b)負極が、溶媒和ポリマー、イオン性塩、および必要に応じて可塑剤を含む第2の薄層を含み、第2の薄層は、第1の薄層上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、第1の層の溶媒和ポリマーは、第2の層の溶媒和ポリマーと同じであるかまたは異なり;および/または
正極が、正極電気化学活性材料、必要に応じて結合材、および必要に応じて導電性材料を含む正極材料フィルムを含み、正極材料フィルムが第1および第2の表面を含み、第1の表面は負極に面しており、かつ溶媒和ポリマー、イオン性塩を含む第3の薄層を保持しており、第3の薄層は約50μmまたはそれ未満の平均厚さを有し;
電気化学セルは、追加の固体ポリマー電解質層の存在を除外する、
電気化学セルに関する。
【0034】
一実施形態によれば、電気化学セルは第2の薄層を含み、第2の薄層の溶媒和ポリマーが架橋されているかまたは架橋されていない。別の実施形態によれば、電気化学セルは第3の薄層を含み、第3の薄層の溶媒和ポリマーは架橋されているかまたは架橋されていない。一例によれば、電気化学セルは、第2の薄層および第3の薄層を含む。
【0035】
一実施形態では、第1の薄層の溶媒和ポリマーは架橋されている。代替の実施形態では、第1の薄層の溶媒和ポリマーは架橋されていない。
【0036】
一実施形態によれば、負極フィルムは集電体であり、例えば、金属箔もしくはグリッド(銅、ニッケルなど)、炭素もしくは炭素含有フィルム(カーボン紙、自立型グラフェンなど)、または電子伝導層(集電体プリントなど)を含むその他の固体支持体(ポリマー、ガラスなど)などの、電子伝導固体支持体を含む集電体である。
【0037】
別の実施形態によれば、負極フィルムは、例えばリチウムまたはリチウムを含む合金を含む金属フィルムを含む。一実施形態によれば、金属フィルムは、1000ppm未満(すなわち0.1重量%未満)の不純物を含むリチウムを含む。別の実施形態によれば、金属フィルムは、リチウムと、リチウム以外のアルカリ金属(Na、K、Rb、およびCsなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、およびBaなど)、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなど)、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、マンガン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、モリブデン、鉄、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、およびゲルマニウム(例えば、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、またはGe)から選択される元素との、合金を含み、例えば合金は、少なくとも75重量%のリチウム、または85%から99.9重量%の間のリチウムを含んでいてもよい。
【0038】
一実施形態では、負極フィルムはさらに、第1の表面上に、第1の薄層と接触する前処理層を含む。一実施形態によれば、前処理層は、シラン、ホスホネート、ボレート、有機塩または化合物、炭素(例えば黒鉛、グラフェンなど)、無機塩または化合物(例えば、LiF、LiN、LiP、LiNO、LiPOなど)から選択される化合物を含み、あるいは金属フィルムの金属とは異なるもしくはそれと表面で合金を形成する元素(上記にて定義された元素など)の薄層を含み、前記前処理層は、5μm未満、または3μm未満、または1μm未満、または500nm未満、または200nm未満、または100nm未満、または50nm未満の平均厚さを有する。別の実施形態では、負極フィルムの第1の表面は、スタンピングによって前処理されている。
【0039】
別の実施形態では、無機化合物は、粒子形態(例えば、球状、ロッド形状、針形状など)であり、例えばその平均サイズは1μm未満、500nm未満、または300nm未満、または200nm未満、または1nmから500nmの間、または10nmから500nmの間、または50nmから500nmの間、または100nmから500nmの間、または1nmから300nmの間、または10nmから300nmの間、または50nmから300nmの間、または100nmから300nmの間、または1nmから200nmの間、または10nmから200nmの間、または50nmから200nmの間、または100nmから200nmの間、または1nmから100nmの間、または10nmから100nmの間、または25nmから100nmの間、または50nmから100nmの間である。
【0040】
一実施形態によれば、無機化合物はセラミックを含む。別の実施形態によれば、無機化合物は、Al、Mg、NaO・2B、xMgO・yB・zHO、TiO、ZrO、ZnO、Ti、SiO、Cr、CeO、B、BO、SrBiTi15、LLTO、LLZO、LAGP、LATP、Fe、BaTiO、γ-LiAlO、金属/炭素混合物(例えば、Sn+C、Zn+C、NiP+C)、モレキュラーシーブおよびゼオライト(例えば、アルミノシリケートのもの、メソポーラスシリカのもの)、スルフィドセラミック(Li11のような)、ガラス-セラミック(例えばLIPONなど)、およびその他のセラミック、ならびにそれらの組合せから選択される。
【0041】
別の実施形態では、無機化合物の粒子はさらに、その表面上に共有結合によりグラフト化された有機基を含み、例えば前記基は、架橋可能な基(例えば、アクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基などを含む有機基)、アリール基、アルキレンオキシドもしくはポリ(アルキレンオキシド)基、およびその他の有機基、またはこれらの組合せから選択され、必要に応じて、有機基と無機化合物の粒子との間にスペーサー基を含む。一実施形態では、グラフト化された有機基は、スペーサー基によって無機化合物粒子に結合したポリ(アルキレンオキシド)鎖を含む。例えばスペーサー基は、シランまたはハロゲン化シラン、ホスホネート、カルボキシレート、カテコール、(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、アルキレンまたはポリアルキレン基、およびこれらの組合せから選択されてもよい。
【0042】
一実施形態によれば、無機化合物粒子は、小さい比表面積(例えば、80m/g未満、または40m/g未満)を有する。別の実施形態によれば、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は、約2:5から約4:1、または約2:5から約2:1、または約1:2から約2:1、または約4:5から約2:1、または約1:1から約2:1、または約4:5から約3:2の範囲にある。別の実施形態では、無機化合物粒子は、高い比表面積(例えば、80m/gおよびそれよりも大きい、または120m/gおよびそれよりも大きい)を有する。さらに別の実施形態では、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は、約1:20から約2:1、または約2:5から約2:1、約2:5から約6:5、または約1:20から約6:5、または約2:5から約1:1、または約1:20から約1:1、または約2:5から約4:5、または約1:20から約4:5の範囲にある。
【0043】
一実施形態によれば、第1の薄層の平均厚さは、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である。
【0044】
別の実施形態によれば、第2の薄層の平均厚さは、約50nmから約15μmの間、または約0.1μmから約15μmの間、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間、または50nmから約5μm、または約0.1μmから約2μmの間である。
【0045】
さらに別の実施形態によれば、第2の薄層が存在し、第1および第2の薄層の全平均厚さは、約1μmから約30μm、または約1μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約1μmから約20μm、または約1μmから約16μm、または約2μmから約12μm、または約3μmから約15μm、または約3μmから約12μm、または約4μmから約15μm、または約4μmから約12μmの範囲にある。
【0046】
一実施形態では、第3の薄層の平均厚さは、約40μmもしくはそれ未満、または約30μmもしくはそれ未満、または約15μmもしくはそれ未満、または約0.5μmから約50μmの間、または約5μmから約50μmの間、または約5μmから約40μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である。
【0047】
さらに別の実施形態では、第2の薄層および第3の薄層が存在し、第1、第2、および第3の薄層の全平均厚さは、約3μmから約60μm、または約10μmから約50μm、または約15μmから約30μm、または約3μmから約30μm、または約3μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約5μmから約20μm、または約8μmから約15μm、または約8μmから約12μm、または約5μmから約15μm、または約5μmから約12μm、または約5μmから約15μm、または約9μmから約15μmの範囲にある。
【0048】
一実施形態によれば、溶媒和ポリマーは、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーから独立して選択され、必要に応じて、架橋可能な官能基(例えば、アクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基など)から誘導された架橋単位を含む。
【0049】
別の実施形態によれば、第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つはさらに可塑剤を含み、または第1の薄層および第2の薄層はさらに可塑剤を含み、および/または第3の薄層はさらに可塑剤を含む。一実施形態では、可塑剤は、グリコールジエーテル(テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)など)、炭酸エステル(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなど)、ラクトン(γ-ブチロラクトンなど)、アジポニトリル、およびイオン性液体などのタイプの液体から選択される。
【0050】
さらなる実施形態によれば、第1、第2、および第3の薄層のうちの少なくとも1つはさらにリチウム塩を含み、または第1、第2、および第3の薄層はさらにリチウム塩を含む。一実施形態では、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、およびこれらの組合せから選択される。
【0051】
さらに別の実施形態によれば、負極はさらに、負極フィルムの第2の表面に接触している集電体を含む。一実施形態では、正極はさらに、正極材料フィルムの第2の表面に接触している集電体を含む。
【0052】
一実施形態によれば、正極電気化学活性材料は、金属ホスフェート、リチウム化金属ホスフェート、金属酸化物、およびリチウム化金属酸化物から選択される。別の実施形態では、正極電気化学活性材料は、LiM’PO(式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、VF、LiV、LiMn、LiM”O(式中、M”はMn、Co、Ni、またはこれらの組合せである(NMC、LiMnCoNi(式中、x+y+z=1)など))、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素の硫黄、元素のセレン、元素のヨウ素、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、炭素系活性材料、有機カソード活性材料(例えば、ポリイミド、ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ-4-イルメタクリレート)(PTMA)、テトラ-リチウムペリレン-3,4,9,10-テトラカルボキシレート(PTCLi)、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、π-共役ジカルボキシレート、およびアントラキノン)、または互いに適合性がある場合にはこれらの材料のうちの2種もしくはそれよりも多くの組合せである。別の実施形態では、正極電気化学活性材料は、必要に応じて(例えば、ポリマー、セラミック、炭素、またはこれらの2種もしくはそれより多くの組合せで)コーティングされた粒子の形態である。
【0053】
第4の態様によれば、本発明の技術は、上記にて定義された少なくとも1つの電気化学セルを含む電気化学的蓄電池に関する。一実施形態によれば、電気化学的蓄電池は、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである。
【0054】
第5の態様によれば、本発明の技術は、モバイルデバイス、電気自動車もしくはハイブリッド自動車における、または再生可能エネルギーの貯蔵における、上記にて定義された電気化学的蓄電池の使用に関する。一実施形態によれば、モバイルデバイスは、携帯電話、カメラ、タブレット、およびラップトップから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、実施例1(a)により得られたNiP粉末(Ni12相)の(a)R線回折図および(b)走査型顕微鏡画像を示す。
【0056】
図2図2は、実施例1(b)による、(a)Al(実線)およびAl-ポリマー(破線)に関する熱重量曲線、ならびに(b)ポリマー1+Alセラミック-ポリマーの1μmの薄層を持つリチウムストリップの写真を示す。
【0057】
図3図3は、実施例2(a)に記載されるポリマーフィルムA1からA5のステンレス鋼での20℃から80℃の間の伝導度測定値を示す。
【0058】
図4図4は、アノード上のポリマー+無機化合物層と、(a)ポリマー電解質;(b)カソード上のポリマー層およびポリマー電解質;(c)ポリマー上の無機化合物のない第2の層+無機化合物層およびポリマー電解質;(d)ポリマー上の無機化合物を含まない第2の層+無機化合物層(ポリマー電解質のない);(e)カソード上のポリマー層(ポリマー電解質のない);ならびに(f)ポリマー上の無機化合物のない第2の層+無機化合物層、カソード上のポリマー層(ポリマー電解質のない)とを含む、様々なセル構成を概略的に示す。
【0059】
図5図5は、(a)修飾なしのリチウム(参照)、および実施例3(a)による層B1(i)からB3(i)を有するリチウムで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関する、50℃およびC/6で得られた定電流サイクル動作(C/6で20サイクルごとに、C/12で2サイクル);ならびに(b)同じバッテリーに関するサイクル動作中の容量降下の表示の結果を示す。
【0060】
図6図6は、(a)修飾なしのリチウム(参照)、および実施例3(b)による層B1からB3を有するリチウムで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/6で得られた定電流サイクル動作(C/6で20サイクルごとに、C/12で2サイクル);ならびに(b)同じバッテリーに関するサイクル動作中の容量降下の表示の結果を示す。
【0061】
図7図7は、(a)修飾なしのリチウム(参照)、および実施例3(c)による層B1からB3を有するリチウム(固体パーセンテージが17、21、および24%)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/6(C/6で20サイクルごとにC/12で2サイクル)で得られた定電流サイクル動作;ならびに(b)同じバッテリーに関するサイクル動作中の容量降下の表示の結果を示す。
【0062】
図8図8は、修飾なしのリチウム(参照)、および130%Al-ポリマーを持つポリマー1の4μm層を有するリチウム(実施例3(d)によるC1セル)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/3で得られた(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率に関するデータを示す。スキームは、C1バッテリーのアセンブリを示す。
【0063】
図9図9は、修飾なしのリチウム(参照)、ならびに130%Al-ポリマーを持つポリマー1の4μm層を有するリチウム、ならびにポリマーの2または4μm層を有するLFPカソードで組み立てられた(実施例3(d)によるC2-aおよびC2-bセル)LFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/3で得られた(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率に関するデータを示す。スキームは、C2-aおよびC2-bセルのアセンブリを示す。
【0064】
図10図10は、修飾なしのリチウム(参照)、ならびに130%Al-ポリマーを持つポリマー1の4μm層およびポリマー1の第2の4μm層を有するリチウム(実施例3(d)によるC3セル)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/3で得られた(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率に関するデータを示す。スキームは、C3バッテリーのアセンブリを示す。
【0065】
図11図11は、非修飾リチウム(参照)、ならびに130%Al-ポリマーを持つポリマー1の4μm層、ポリマー1の第2の9または12μm層を有するリチウム(実施例3(d)によるC4-aおよびC4-bバッテリー)で、ポリマー電解質なしで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/3で得られた、(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率に関するデータを示す。スキームは、C4-aおよびC4-bセルのアセンブリを示す。
【0066】
図12図12は、非修飾リチウム(参照)、および130%Al-ポリマーを含むポリマー1の4μm層を有するリチウム、および5、8または11μmのポリマー層を有するLFPカソードで、ポリマー電解質なしで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して(実施例3(d)によるC5-a、C5-b、およびC-5-cセル)、50℃およびC/3で得られた(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率に関するデータを示す。スキームは、C5-a、C5-b、およびC-5-cセルのアセンブリを示す。
【0067】
図13図13は、非修飾リチウム(参照)、ならびに130%Al-ポリマーを含むポリマー1の4μm層およびポリマー1の第2の3または4μm層を有するリチウム、ならびに4μmポリマー層を有するLFPカソードで組み立てられた、ポリマー電解質のないLFP/ポリマー電解質/Liバッテリー(実施例3(d)によるC6-aおよびC6-bセル)に関して、50℃およびC/3で得られた(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率に関するデータを示す。スキームは、C6-aおよびC6-bセルのアセンブリを示す。
【0068】
図14図14は、修飾なしのリチウム(参照)、次いで実施例3(e)による30%NiPおよび17%炭素を含むポリマー1の5μm層を有するリチウムで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/3で得られた定電流サイクル動作を示す。
【0069】
図15-1】図15は、非修飾リチウム(参照)で組み立てられた2つのLFP/ポリマー電解質/Liバッテリー、および実施例4に記載される2つのC7バッテリーに関して、50℃およびC/3で定電流サイクル動作中に得られた(a)サイクル動作安定性(放電容量)、(b)平均電圧、および(c)クーロン効率に関するデータを示す。
図15-2】同上。
【0070】
図16図16は、非修飾リチウム(参照)で組み立てられた2つのLFP/ポリマー電解質/Liバッテリー、および実施例4に記載される3つのC8バッテリーに関して、50℃およびC/3で定電流サイクル動作中に得られた(a)サイクル動作安定性(放電容量)および(b)クーロン効率に関するデータを示す。
【0071】
図17図17は、非修飾リチウム(参照)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリー、および実施例4に記載される2つのC9セルに関し、50℃でC/6から1Cに及ぶ速度のサイクル動作中に得られた(a)放電容量および(b)クーロン効率に関するデータを示す。
【0072】
図18図18は、実施例5による、修飾なしのリチウム(参照)、ならびに(a)無機分子(PCl)および(b)薄い金属層(Zn)で修飾されたリチウムで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関し、50℃でC/3(a)およびC/6(b)で得られた定電流サイクル動作を示す。
【0073】
図19図19は、(a)PCl処理、ならびに(b)実施例5による、PCl処理およびその後のポリマー1+Al-ポリマー堆積を受けて処理されたリチウムストリップの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
詳細な説明
本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語および表現は、この技術の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。それにも関わらず、使用される用語および表現のいくつかの定義を、以下に提示する。
【0075】
「約」という用語が本明細書で使用されるとき、凡そ、範囲内、および周辺を意味する。「約」という用語が数値に関連して使用されるとき、それは数値を、例えばその額面通りの値の上および下に10%のばらつきであるように修飾し得る。この用語は、例えば測定デバイスに特徴的な実験誤差、または値の四捨五入を考慮に入れることもできる。
【0076】
ある範囲の値を本出願で指すとき、その範囲の下限および上限は、他に指定しない限り、その定義に常に含まれる。例えば「xからyの間」または「xからy」は、他に指示されない限り、xおよびyという限界が含まれる範囲を意味する。例えば「1から50の間」の範囲は、即ち値1と50を含む。
【0077】
本明細書に記載される化学構造は、その技術分野の慣例に従い描かれる。また、描かれる炭素原子などの原子が不完全な原子価を含むように見えるとき、原子価は、明示的に描かれていない場合であっても1個または複数の水素原子により満たされることが想定される。
【0078】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐状アルキル基を含む、1から20個の炭素原子を有する飽和炭化水素基を指す。アルキルの非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、および類似する基が含まれ得る。同様に、「アルキレン」基は、2個のその他の基の間に位置付けられたアルキル基を指す。アルキレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレンなどが含まれる。「C~Cアルキル」および「C~Cアルキレン」という用語は、1から「n」個の炭素原子を有するアルキルまたはアルキレン基を指す。
【0079】
したがって本文書は、電極フィルムの表面修飾およびこの修飾された電極フィルムを含む電極について記載する。より詳細には、電極フィルムの表面は、それぞれが約15μmの厚さまたはそれ未満である少なくとも2つの薄層の積層体によって修飾される。
【0080】
一例によれば、この電極フィルムは金属フィルムからなることができ、例えばアルカリ金属(リチウムなど)、またはアルカリ金属(リチウムなど)を主として含む合金を、含むものである。
【0081】
別の実施例によれば、電極フィルムは集電体であり、例えば金属箔もしくはグリッド(例えば銅、ニッケルなど)、炭素もしくは炭素含有フィルム(例えばカーボン紙、自立型グラフェンなど)、または電子伝導層(集電体プリントなど)を含むその他の固体支持体(ポリマー、ガラスなど)などの、電子伝導固体支持体を含むものである。これは例えば、第1の充放電サイクル中にリチウム化されることができる。次いでこのリチウム化プロセスは、電子伝導固体支持体の表面で、またはグリッドに関してはメッシュの内側でまたは前処理層の内側で一般に生じ、いずれの場合もリチウム化は、第1の薄層に接触している電子伝導固体支持体の表面で生じる。
【0082】
この場合、表面修飾は、デンドライト形成の障壁として作用するが電極フィルムの表面と事実上反応しない、一連の2つのイオン伝導薄膜の付着を意味し、この薄膜要素は主に未反応である。
【0083】
電極フィルムの表面は、その表面の1つに、溶媒和ポリマー中の無機化合物を含み、必要に応じてイオン性塩および/または可塑剤を含む、第1の薄層を付着させることによって修飾される。第1の薄層は、約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有する。無機化合物は、約1:20から約20:1の範囲の第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比で第1の薄層に存在する。第1の層における溶媒和ポリマーは、架橋されていても架橋されなくてもよい。第2の薄層は、溶媒和ポリマー、イオン性塩、および必要に応じて可塑剤を含み、第2の薄層は、第1の薄層上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有する。第1の層の溶媒和ポリマーは、第2の層の溶媒和ポリマーと同じであるかまたは異なる。
【0084】
無機化合物は、好ましくは粒子形態(例えば、球状、ロッド形状、針形状など)である。平均粒度は好ましくはナノメートル規模であり、例えば1μm未満、500nm未満、または300nm未満、または200nm未満、または1nmから500nmの間、または10nmから500nmの間、または50nmから500nmの間、または100nmから500nmの間、または1nmから300nmの間、または10nmから300nmの間、または50nmから300nmの間、または100nmから300nmの間、または1nmから200nmの間、または10nmから200nmの間、または50nmから200nmの間、または100nmから200nmの間、または1nmから100nmの間、または10nmから100nmの間、または25nmから100nmの間、または50nmから100nmの間である。
【0085】
無機化合物の非限定的な例には、化合物Al、Mg、NaO・2B、xMgO・yB・zHO、TiO、ZrO、ZnO、Ti、SiO、Cr、CeO、B、BO、SrBiTi15、LLTO、LLZO、LAGP、LATP、Fe、BaTiO、γ-LiAlO、金属/炭素混合物(Sn+C、Zn+C、NiP+Cなど)、モレキュラーシーブまたはゼオライト(例えば、アルミノシリケートのもの、メソポーラスシリカのもの)、スルフィドセラミック(Li11のような)、ガラスセラミック(例えばLIPONなど)、およびその他のセラミック、およびそれらの組合せが含まれる。
【0086】
無機化合物の粒子の表面は、その表面に共有結合でグラフト化された有機基によって修飾することもできる。例えば基は、架橋可能な基(例えば、アクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基などを含む有機基)、アリール基、アルキレンオキシドもしくはポリ(アルキレンオキシド)基、およびその他の有機基、またはこれらの組合せの1つから選択され得、必要に応じて有機基と無機化合物の粒子との間にスペーサー基を含んでもよい。
【0087】
その他の実施例によれば、架橋可能な基は、シランまたはハロゲン化シラン、ホスホネート、カルボキシレート、カテコール、(メタ)アクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、アルキレンまたはポリアルキレン官能基、およびこれらの組合せを含んでいてもよい。スキーム1は、メタクリル酸プロピル基を含むシランに関するグラフト化方法の例を示す。
スキーム1
【化1】
【0088】
次いでこの例では、プロピルシラン官能基上に存在するメタクリレート基は、適合性がある基と反応して、例えばポリエーテルなどのポリマー鎖を形成することができる。このタイプの反応の例を、以下のスキーム3に示す。
【0089】
ある場合には、無機化合物粒子は、小さい比表面積(例えば、80m/g未満、または40m/g未満)を有する。この場合、無機化合物中の第1の薄層の濃度は、比較的高くてもよい。例えば、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は、約2:5から約4:1、または約2:5から約2:1、または約1:2から約2:1、または約4:5から約2:1、または約1:1から約2:1、または約4:5から約3:2の範囲にあってもよい。
【0090】
他の場合には、無機化合物粒子は、高い比表面積(例えば、80m/gもしくはそれよりも大きい、または120m/gもしくはそれよりも大きい)を有する。この場合、無機化合物のより大きい多孔度は、より多くの量のポリマーを必要とする可能性があり、第1の薄層中の無機化合物の濃度は、より低くなる。次いで例えば、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は、約1:20から約2:1、または約2:5から約2:1、約2:5から約6:5、または約1:20から約6:5、または約2:5から約1:1、または約1:20から約1:1、または約2:5から約4:5、または約1:20から約4:5の範囲にあってもよい。
【0091】
上述のように、第1および第2の薄層の平均厚さは、後者が電解質層ではなく電極表面の修飾と見なされるようなものである。上述のように、第1および第2の薄層の平均厚さは、それぞれ15μm未満である。
【0092】
例えば、第1の薄層では、平均厚さは約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間であり得る。
【0093】
第2の薄層に関し、その平均厚さは、約50nmから約15μmの間、または約0.1μmから約15μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間、または約50nmから約5μmの間、または約0.1μmから約2μmの間であり得る。
【0094】
例えば、第1および第2の薄層の全平均厚さは、約1μmから約30μm、または約1μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約1μmから約20μm、または約1μmから約16μm、または約2μmから約12μm、または約3μmから約15μm、または約3μmから約12μm、または約4μmから約15μm、または約4μmから約12μmの範囲にあってもよい。
【0095】
第1および/または第2の層に存在するポリマーは、イオン溶媒和単位、特にリチウムイオンを含むポリマーから独立して選択される。溶媒和ポリマーの例には、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーが含まれ、必要に応じて、架橋可能な官能基(例えば、アクリレート官能基、メタクリレート官能基、ビニル官能基、グリシジル官能基、メルカプト官能基など)から誘導された架橋単位を含んでいる。
【0096】
一部の実施例によれば、第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つはさらに、可塑剤を含む。第1の薄層および第2の薄層はそれぞれ、可塑剤を含んでいてもよい。一部の代替例では、第1の薄層のみがさらに可塑剤を含む。使用される可塑剤は、電気化学セルおよびサイクル動作条件に適合性があることが、一般に公知のものである。それらは一般に、比較的高い沸点を有する有機液体を含む。可塑剤の非限定的な例には、グリコールジエーテル(テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)など)、炭酸エステル(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなど)、ラクトン(γ-ブチロラクトンなど)、アジポニトリル、イオン性液体、および同様のタイプの液体が含まれる。
【0097】
好ましい例によれば、第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つはさらにリチウム塩を含み、例えば両方の層がリチウム塩を含んでいてもよい。リチウム塩の非限定的な例には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C](LBBB)、またはこれらの2種もしくはそれよりも多くの組合せが含まれる。
【0098】
上述のように、電極フィルムは、金属フィルム、好ましくはリチウムのまたはリチウムを含む合金の金属フィルムを、必要に応じて集電体上に、含むことができる。金属フィルムがリチウムフィルムであるとき、1000ppm未満(すなわち0.1重量%未満)の不純物を含有するリチウムから構成される。あるいは、リチウム合金は、少なくとも75重量%のリチウム、または85%から99.9重量%の間のリチウムを含んでいてもよい。合金は、リチウム以外のアルカリ金属(Na、K、Rb、およびCsなど)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、およびBaなど)、希土類金属(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなど)、ジルコニウム、銅、銀、ビスマス、コバルト、マンガン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、スズ、アンチモン、カドミウム、水銀、鉛、モリブデン、鉄、ホウ素、インジウム、タリウム、ニッケル、およびゲルマニウム(例えば、Zr、Cu、Ag、Bi、Co、Zn、Al、Si、Sn、Sb、Cd、Hg、Pb、Mn、B、In、Tl、Ni、またはGe)から選択される元素をさらに含んでいてもよい。
【0099】
電極フィルムは、第1の表面に、第1の薄層に接触する前処理層をさらに含んでいてもよい。例えば前処理層は、シラン、ホスホネート、ボレート、有機塩または化合物、炭素(例えば、黒鉛、グラフェンなど)、無機塩または化合物(例えば、LiF、LiN、LiP、LiNO、LiPOなど)から選択される化合物、あるいは電極フィルムの金属と異なるまたは表面でそれらと合金を形成する元素(例えば、合金を参照して上記にて定義された元素)の薄層を含み、前記前処理層は、1μm未満、または500nm未満、または200nm未満、または100nm未満、または50nm未満の平均厚さを有する。前処理層は一般に、電極フィルムの第1の表面を、公知のプロセスを使用して有機または無機化合物と接触させることによって生成される。例えば、リチウムフィルムとPClとの接触は一般に、LiPおよび/またはLiPOを生成する。同様に、例えば上記にて定義された元素から選択される、電極フィルムの金属とは異なる金属元素の粉末または非常に薄いフィルムの付着は、薄い合金層を生成することができる。
【0100】
例えば、前処理層は、第1の薄層が付加される前に電極フィルム上に形成される。電極フィルムの表面は、例えばスタンピングによって、第1の薄層が付着される前に処理することもできる。
【0101】
別の実施例では、電極は、電極フィルムの第2の表面に接触している集電体を含む。
【0102】
本発明の表面修飾電極を含む電気化学セルも企図される。例えばそのような電気化学セルは、負極および正極を含み、負極および正極のうちの少なくとも1つは本明細書で定義される通りであり、例えば図4(c)、(d)、および(f)に図示することができる。好ましい実施例によれば、負極は本明細書で定義される通りであり、上記にて定義された電極フィルムを含み;正極は、正極電気化学活性材料、必要に応じて結合材、および必要に応じて導電性材料を含む、正極材料のフィルムを含む。
【0103】
例えば正極電気化学活性材料は、金属ホスフェート、リチウム化金属ホスフェート、金属酸化物、およびリチウム化金属酸化物からだけでなく、元素の硫黄、セレンまたはヨウ素、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、炭素系活性材料などのその他の材料から選択されてもよい。正極電気化学活性材料の例には、LiM’PO(式中、M’はFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、LiV、VF、LiV、LiMn、LiM”O(式中、M”はMn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)(NMC、LiMnCoNi(式中、x+y+z=1である)など)、Li(NiM’’’)O(式中、M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素の硫黄、元素のセレン、元素のヨウ素、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、炭素系活性材料、有機カソード活性材料、例えばポリイミド、ポリ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシ-4-イルメタクリレート)(PTMA)、テトラ-リチウムペリレン-3,4,9,10-テトラカルボキシレート(PTCLi)、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、π-共役ジカルボキシレート、およびアントラキノン、または互いにおよび負極と、例えばリチウム電極と適合性がある場合にはこれらの材料のうちの2種もしくはそれよりも多くの組合せが含まれる。正極電気化学活性材料は、好ましくは粒子の形態であり、これは必要に応じて例えばポリマー、セラミック、炭素、またはこれらの2種もしくはそれよりも多くの組合せでコーティングされていてもよい。
【0104】
電極材料に含めることができる導電性材料の例には、カーボンブラック(例えばKetjen(商標)、Denka(商標)、Shawinigan、アセチレンブラックなど)、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維(カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維(VGCF)などを含む)、有機前駆体の炭素化によって得られた非粉末状炭素(例えば、粒子のコーティングとして)、またはこれらの少なくとも2種の組合せが含まれる。
【0105】
電極材料結合材の非限定的な例には、薄層に関連して上に記載したまたは電解質ついて下に記載するポリマー結合材だけでなく、ゴム型の結合材、例えばSBR(スチレン-ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、およびACM(アクリレートゴム)、またはフッ素化ポリマー型結合材、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、およびこれらの組合せも含まれる。一部の結合材、例えばゴム型結合材は、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの添加剤を含んでいてもよい。
【0106】
リチウム塩、またはセラミックもしくはガラスのような無機粒子、またはその他の適合性がある活性材料(例えば、硫黄)など、その他の添加剤が、電極材料中に存在していてもよい。
【0107】
一例によれば、正極材料のフィルムは第1および第2の表面を含み、第1の表面は負極に面しており、かつ溶媒和ポリマー(例えば、上記にて定義されたような)、イオン性塩(例えば、上記にて定義されたような)を含む第3の薄層を保持しており、第3の薄層は、約50μmもしくはそれ未満、約40μmもしくはそれ未満、または約30μmもしくはそれ未満、または約15μmもしくはそれ未満、または約10μmもしくはそれ未満の平均厚さを有するか、または約0.5μmから約50μmの間、または約5μmから約50μmの間、または約5μmから約40μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である。第3の薄層は、例えば上記にて定義された可塑剤を含んでいてもよい。
【0108】
正極材料は、集電体(例えば、アルミニウム、銅)に付着させることができる。一例によれば、集電体は、炭素がコーティングされたアルミニウムである。
【0109】
一例によれば、電気化学セルは、固体ポリマー電解質層の存在を除外し、例えば厚さが15μmよりも厚い、または20μmもしくはそれよりも厚い電解質層を除外する。セルはまた、その他のいかなるタイプの電解質も、例えばセパレーターを含浸する液体またはゲルを含まないことが理解される。
【0110】
あるいは電気化学セルはさらに、ポリマーおよびリチウム塩を含む固体電解質層を含む。例えば電解質からのポリマーは、線状または分岐状ポリエーテルポリマー(例えば、PEO、PPO、またはEO/POコポリマー)、および必要に応じて架橋可能な単位を含むもの)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリ(アルキレンスルホン)、ポリ(アルキレンスルファミド)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、およびこれらのコポリマーから選択されてもよく、溶媒和ポリマーは必要に応じて架橋されている。リチウム塩は、薄層に関連して上記にて定義された通りとすることができる。固体電解質はさらに、セラミックを含むことができる。
【0111】
代替の実施形態によれば、本文書は、負極および正極を含む電気化学セルであって、負極が負極フィルムを含み、正極が、正極電気化学活性材料、必要に応じて結合材、および必要に応じて導電性材料を含む、正極材料フィルムを含む電気化学セルにも関し:
【0112】
(a)負極フィルムは第1および第2の表面を含み、第1の表面は必要に応じて前処理されており、前記負極は、溶媒和ポリマー中の無機化合物、および必要に応じてイオン性塩および/または可塑剤を含む第1の薄層を含み、第1の薄層は、負極フィルムの第1の表面に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、第1の薄層における「無機化合物:溶媒和ポリマー」の重量比は約1:20から約20:1の範囲にあり;
(b)負極は、溶媒和ポリマー、イオン性塩、および必要に応じて可塑剤を含む第2の薄層を含み、第2の薄層は、第1の薄層上に配置されており、かつ約15μmまたはそれ未満の平均厚さを有し、第1の層の溶媒和ポリマーは、第2の層の溶媒和ポリマーと同じであるかまたは異なり;および/または
正極材料フィルムは第1および第2の表面を含み、第1の表面は負極に面し、かつ溶媒和ポリマーおよびイオン性塩を含む第3の薄層を保持しており、第3の薄層は約50μmもしくはそれ未満の、または約15μmもしくはそれ未満の平均厚さを有し;
電気化学セルは、追加の固体ポリマー電解質層の存在を除外する。電気化学セルは、任意のその他のタイプの追加の電解質も除外し、それによって、例えばセパレーターに含浸される液体またはゲル型電解質の使用が排除される。そのようなセルの例を、図4(d)、(e)、および(f)に示す。
【0113】
一例によれば、電気化学セルは第2の薄層を含む。別の実施例では、電気化学セルは第3の薄層を含む。さらに別の実施例では、電気化学セルは第2および第3の薄層を含む。
【0114】
薄層のそれぞれの溶媒和ポリマーは、独立して、本明細書で定義される通りであり、独立して架橋されても架橋されなくてもよい。一例によれば、第1、第2、および第3の層のうちの少なくとも1つの溶媒和ポリマーは、架橋されていない。一例によれば、第1の層の溶媒和ポリマーは架橋されていない。別の実施例によれば、第2の層の溶媒和ポリマーは架橋されていない。第1、第2、および第3の層のそれぞれにおける溶媒和ポリマーは、架橋されていない場合もある。または第3の層におけるポリマーは架橋されており、第1および第2の層では架橋されていない。あるいは、第1、第2、および第3の層のそれぞれにおける溶媒和ポリマーは、架橋されていてもよい。
【0115】
上記電極フィルムの場合のように、本発明の電気化学セルの負極フィルムは集電体であり、例えば、金属箔もしくはグリッド(例えば銅、ニッケルなど)、炭素もしくは炭素含有フィルム(例えばカーボン紙、自立型グラフェンなど)、または電子伝導層(集電体プリントなど)を含むその他の固体支持体(ポリマー、ガラスなど)などの、電子伝導固体支持体を含む集電体とすることができる。あるいは負極フィルムは、例えばリチウムまたはリチウムを含む合金を含む、金属フィルムを含んでいてもよく、リチウムおよびその合金のフィルムも、上記にて定義されているものであってもよい。本発明の負極フィルムは、上述の前処理層を含んでいてもよい。
【0116】
第1の薄層の無機材料は、上記にて定義された通りであり、上述の同じ重量比で含めることができる。
【0117】
第1の薄層の平均厚さは、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間とすることができる。
【0118】
第2の薄層の平均厚さは、約50nmから約15μmの間、または約0.1μmから約15μmの間、約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または約2μmから約5μmの間、または約50nmから約5μmの間、または約0.1μmから約2μmの間であり得る。
【0119】
事実、第2の薄層が存在するとき、第1および第2の薄層の全平均厚さは好ましくは約1μmから約30μm、または約1μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約1μmから約20μm、または約1μmから約16μm、または約2μmから約12μm、または約3μmから約15μm、または約3μmから約12μm、または約4μmから約15μm、または約4μmから約12μmの範囲にある。
【0120】
第3の薄層の平均厚さは、約40μmもしくはそれ未満、または約30μmもしくはそれ未満、または約15μmもしくはそれ未満、または約0.5μmから約50μmの間、または約5μmから約50μmの間、または約5μmから約40μmの間、または約0.5μmから約15μmの間、または約1μmから約15μmの間、または約1μmから約12μmの間、または約0.5μmから約10μmの間、または約1μmから約10μmの間、または約2μmから約8μmの間、または約2μmから約7μmの間、または2μmから約5μmの間である。
【0121】
第2および第3の薄層の1つのみが存在するとき、存在する層は僅かに大きい厚さを有していてもよいことが留意され得る。第2の薄層および第3の薄層が共に存在するとき、これらはより薄くなり、第1、第2、および第3の薄層の全平均厚さは約3μmから約60μm、または約10μmから約50μm、または約15μmから約30μm、または約3μmから約30μm、または約3μmから約25μm、または約5μmから約25μm、または約5μmから約20μm、または約8μmから約15μm、または約8μmから約12μm、または約5μmから約15μm、または約5μmから約12μm、または約5μmから約15μm、または約9μmから約15μmの範囲にあってもよい。
【0122】
一部の実施例によれば、第1および第2の薄層のうちの少なくとも1つはさらに可塑剤を含み、好ましくは第1の薄層および第2の薄層はさらに可塑剤を含む。第3の薄層も、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤もまた、上記にて定義された通りである。同様に、第1、第2、および第3の薄層のうちの少なくとも1つは、リチウム塩をさらに含んでいてもよく、好ましくは3つの層のそれぞれが含んでいてもよい。リチウム塩もまた、上記にて定義した通りである。
【0123】
負極は、負極フィルムの第2の表面に接触している集電体をさらに含んでいてもよい。同様に正極は、正極材料フィルムの第2の表面に接触している集電体をさらに含んでいてもよい。正極材料は、先行する電気化学セルを参照しつつ定義された通りでもある。
【0124】
本文書は、本明細書に定義される少なくとも1つの電気化学セルを含む電気化学的蓄電池に関する。例えば電気化学的蓄電池は、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである。
【0125】
別の態様によれば、本出願の電気化学的蓄電池は、モバイルデバイス、例えば携帯電話、カメラ、タブレットまたはラップトップ、電気自動車もしくはハイブリッド自動車で、または再生可能エネルギー貯蔵での使用が意図される。
【0126】
本文書は、本明細書に記載される表面修飾電極を調製するためのプロセスにも関する。このプロセスは、(i)無機化合物および溶媒和ポリマーを、必要に応じて塩および/または可塑剤を含む溶媒中で混合すること;(ii)(i)で得られた混合物を、電極表面に塗り拡げること;(iii)溶媒を除去して、第1の薄層を得ること;(iv)溶媒和ポリマーおよび塩を、必要に応じて可塑剤を含む溶媒中に混合すること;(v)(iv)で得られた混合物を、(iii)で得られた第1の薄層上に塗り拡げること;および(vi)溶媒を除去することを含む。
【0127】
ステップ(i)および/または(iv)がさらに架橋剤を含むとき、プロセスはさらに、ステップ(iii)および/または(vi)の前、後、または間にそれぞれポリマー架橋ステップ(例えば、イオン的に、熱的に、または照射によって)を含んでいてもよい。
【0128】
電極が、リチウムなどの金属フィルムであるとき、ステップ(ii)、(iii)、(v)、および/または(vi)は、好ましくは、真空下で、またはアルゴンなどの不活性ガスで満たすことができる無水チャンバー内で実施される。
【0129】
あるいは、ポリマーが架橋可能でありかつ架橋前に十分に液体であるとき、プロセスは、溶媒の存在を除外することができ、ステップ(iii)および/または(vi)を回避することができる。
【0130】
混合ステップは、本発明の技術の分野で使用される様々な方法により実施することができる。例えばそのような方法は、プラネタリーミキサー、ボールミキサー、ディスクミキサー、超音波ミキサー(例えば、ソノトロードミキサー)、ホモジナイザー(ローター-ステーターホモジナイザーなど)などを含んでいてもよい。
【0131】
塗り拡げることは、例えば、混合物でコーティングされたローリングミルローラーなどのローラー(連続ロールツーロール処理法を含む)、ドクターブレード、噴霧コーティング、遠心分離、印刷などを使用する従来の方法により、実施することができる。
【0132】
使用される有機溶媒は、電極フィルムと反応しない、例えば電極フィルムがリチウム金属を含むときにはリチウムと反応しない、任意の溶媒とすることができる。例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘプタン、トルエン、またはこれらの組合せが含まれる。
【実施例
【0133】
下記の非限定的な実施例は、例示的な実施形態であり、本発明の範囲をさらに限定すると解釈すべきではない。これらの実施例は、添付される図を参照することによって、より良く理解されよう。
【0134】
他に指定しない限り、本明細書で使用される成分の量、調製条件、濃度、性質などを表す数値は、「約」という用語によりそれぞれの場合に修飾されると解釈するものとする。少なくとも、各数値パラメーターは、報告される有効数字に照らしてかつ通常の四捨五入の技法の適用により、解釈されるべきである。したがって他に指示しない限り、本明細書で述べられる数値パラメーターは、求められる性質に応じて様々になり得る近似値である。それにも関わらず、最も広範な実現を定義するパラメーターは近似値であるが、以下の実施例で提示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら任意の数値は、実験、測定、統計分析などにおけるばらつきから得られるある特定の誤差範囲を、元々、含有する。
(実施例1)
セラミックの合成および特徴付け
(a)NiPの合成および特徴付け
【0135】
NiPナノ粒子は、真空ランプ(「Schlenkライン」)を使用する液体経路によって合成されるが、その他の公知の手段によって、例えばオートクレーブを使用する、加圧されたソルボサーマル条件下で合成することもできる。
【0136】
Ni(acac) 0.9962gおよび1-オクタデセン20mLを、磁気撹拌棒が入っている250mLの三つ口フラスコに添加する。混合物を穏やかに撹拌し(500RPM)、混合物の温度を120℃に上昇させる。次いで反応混合物をこの温度で、真空下で30分間撹拌して、揮発性不純物および微量の水を除去する。次いで系をアルゴンでパージし、液体中で少なくとも5分間、バブリングする。次にトリ-n-オクチルホスフィン8mLを、シリンジを使用して、セプタムを通して導入する。次いで混合物を320℃に加熱し、20時間反応させる。
【0137】
次いで混合物をゆっくりと室温に冷まし、10,000RPMで30分間、小さい25mLの遠心分離管内で遠心分離する。粉末は、界面活性剤が存在しないことにより回収するのがより容易である。薄茶色の上澄みを除去し、粉末をエタノール中に再分散させ、得られた黒色の液体を再び遠心分離する。このステップをさらに3回繰り返す。黒色粉末が、ほぼ90%の収率で得られる。
【0138】
図1(a)は、得られた材料の粉末のX線回折図を示す。得られたピークは比較的広く、それほど強くはなく、NiP粒子のナノメートルサイズが確認される。ただ1つの相が得られ、これは実際に、Ni12相である。図1(b)は、Ni12粉末の走査型顕微鏡画像を示す。単相が明らかに目に見え、約20nmの直径を有する小さい球状粒子から構成されている。
(b)修飾Al(Al-ポリマー)の合成および特徴付け
【0139】
セラミック表面へのポリマーの結合は、2つのステップで行われる。実証のため、Al粉末(針様、約164m/g)を使用した。最初に、シラン化反応をAl粒子の表面で実施して、架橋可能な基を結合する。スキーム2は、この最初の表面修飾ステップを示す。
スキーム2
【化2】
【0140】
Al粉末約10gを、トルエン100mL中で、超音波ロッドを使用して分散させる。混合物を、空気コンデンサーを備えた250mLのガラスの丸底フラスコ内に注ぐ。混合物を撹拌しながら保持し、システムを窒素で10分間パージする。次に3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート約1gを添加し、液体を90℃で17時間維持する。液体が室温に戻ったら、250mLの遠心分離管を使用して遠心分離する(5000RPM、20分)。得られた粉末を、遠心分離によってアセトンで3回清浄化し、次いで真空下、140℃で少なくとも24時間乾燥する。
【0141】
第2のステップは、Al粒子の表面での、ポリエチレングリコール単位の重合にある。スキーム3は、反応プロトコールを示す。
スキーム3
【化3】
【0142】
上で調製した修飾粉末を、同じ分散方法を使用してトルエン中に再び分散させる。窒素を液体中にバブリングして、微量の酸素を除去する。ポリエチレングリコールメタクリレート(Mn=500g/mol)を、アルミナに対して15重量%の割合で添加し、その後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.5重量%添加する。
【0143】
アセンブリには空気コンデンサーを備え、窒素の流れを、反応全体を通して維持する。温度を、17時間にわたり80℃に設定する。液体が室温に戻ったら、250mLの遠心分離管を使用して遠心分離する(5000RPM、20分)。得られた粉末を、遠心分離によりアセトンで3回清浄化し、次いで120℃で、真空下で少なくとも24時間乾燥する。この粉末を、Al-ポリマーと呼ぶ。
【0144】
図2(a)は、Al(実線)およびAl-ポリマー(破線)粉末に関する熱重量曲線を示す。修飾粉末に関する200から600℃の間の連続質量損失は、約10%のポリマーが最終複合体にあることを意味する。図2(b)は、ポリマー1+Al-ポリマーから構成されたインクでリチウムストリップ上に作製されたコーティング(1μmの薄層)の例を示す。ポリマー1は、架橋可能な基を含む、米国特許第6,903,174号に詳述されたポリマーを指す。
(実施例2)
電極表面修飾用のインクの配合
(a)ポリマーインク(無機化合物なし)
i. ポリマーインクA1~A5(無機化合物なし)および伝導度試験
【0145】
リチウム堆積物のイオン伝導度を増大させるため、可塑剤、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)を使用する。インクを、ポリマー1とリチウム塩(LiTFSI)とを、O:Li=20:1のモル比で、および種々の量のTEGDME(ポリマー1の8から40重量%に及ぶ)と混合することによって、表1に示される割合に従い調製した。架橋剤、Irgacure-651(商標)も、ポリマー1の重量に対して0.5重量%で添加した。
【0146】
付着は、コーティングテーブル上で、50μmの厚さのステンレス鋼ストリップ上でのドクターブレードによって実施した。ストリップを換気フード内で5分間静置し、その後、窒素流の下で、紫外線(UV)ランプを備えたボックス内に挿入した。5分の窒素パージ後、フィルムをUV光の下で2分間、架橋させる。
【0147】
次いでこれらのフィルムをボタン型セルに組み立て、伝導度測定値を、20から80℃の間の様々な温度で得る。図3は、ステンレス鋼上に堆積された様々なフィルムA1からA5に関し、種々の温度で記録された伝導度測定値を示す。ポリマー1を持つおよびTEGDMEのないフィルムA1と比較して、ほぼ一桁高い伝導度が、僅か8%のTEGDMEを添加した後に得られる。50℃で、非常に良好な伝導度1.02×10-3S/cmが、40%のTEGDMEを含むフィルムA5に関して得られる。フィルムの機械的強度も、40%の液体(TEGDME)の存在に関わらず、非常に良好である。
ii. ポリマーインクA6(カソードコーティング用)
【0148】
Thinky型プラネタリーミキサーと適合性のあるプラスチック容器において、適切な量のポリマー1を、20:1のO:Liモル比を得るように調節された量のLiTFSI塩と共に導入する。無水溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を、混合後に18.5%の固体溶液(ポリマー+塩)を得るのに十分な量で添加する。溶液をプラネタリーミキサーで、2000RPMで3分間混合する。この混合ステップを7回繰り返す。
iii. ポリマーインクA7(カソードコーティング用)
【0149】
Thinky型プラネタリーミキサーに適合性のあるプラスチック容器において、適切な量のポリマー1を、25:1のO:Liモル比を得るように調節された量のLiTFSI塩と共に導入する。ポリマー重量の40%に等しい量の可塑剤(TEGDME)を添加する。第2の無水溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を、混合後、21%の固体(ポリマー+塩+TEGDME)溶液を得るのに十分な量で添加する。この計算では、TEGDMEは、固形分に含まれる。最後に、ポリマーに対して0.5重量%のIrgacure(商標)を、架橋剤として添加する。溶液を、プラネタリーミキサーで、2000RPMで10分間、3回混合する。
iv. 可塑剤を含むポリマーインクA8(第2の層コーティング用)
【0150】
リチウム上のコーティングに関し、44%の僅かに高い濃度のTEGDMEを、ポリマー-無機化合物フィルムおよびポリマーフィルムに選択して、セラミック粒子の混合、堆積された層の接着および良好な伝導度を促進させた。
【0151】
セラミックを含有しない第2のリチウムコーティングでは、ポリマー溶液を下記の通り調製する。Thinky型プラネタリーミキサーに適合性のあるプラスチック容器において、適切な量のポリマー1を、20:1のO:Liモル比で得られるような量のLiTFSI塩と共に導入する。次にポリマーに対して44重量%のTEGDMEを添加し、全てをプラネタリーミキサーで、2000RPMで3分間、混合する。THFを、混合後に、18.1%の固体(ポリマー+塩)を含む溶液を与えるのに十分な量で添加する。溶液を、プラネタリーミキサーで、2000RPMで3分間混合する。この混合ステップを6回繰り返す。
v. ポリマーインクA9(第2の層の噴霧付着用)
【0152】
正確な量のポリマー2を、ガラス瓶に添加する。ポリマー2は、架橋可能な基を含有しないこと以外は米国特許第6,903,174号に詳述されるポリマーを指す。20:1のO:Liモル比を与えるような量のLiTFSI塩を、添加する。THF溶媒を、塩を含むポリマーの非常に希薄な溶液を得るために添加する。典型的には、4%の固形分を含む溶液が得られる(塩+ポリマー)。溶液を、単に手で混合することによって、素早く均質化させる。
【表1】
a.パーセンテージは、ポリマー1の重量に対する重量による。
(b)ポリマー-無機化合物インクB1~B5(アノードコーティング用)
i. 手順1(Al-ポリマーセラミックを含むB1~B3)
【0153】
Thinky型プラネタリーミキサーに適合性のあるプラスチック容器内で、適切な量のポリマー1を、20:1のO:Liモル比を得るように調節された量のLiTFSI塩と共に導入する。次に、ポリマーに対して44重量%のTEGDMEを添加し、全てをプラネタリーミキサーで、2000RPMで3分間混合する。2分間静置した後、ポリマー重量の56%から130%の比に相当する量のAl-ポリマーセラミックを添加し、全てを再び、2000RPMで3分間混合する。この混合ステップを、4回繰り返す。得られた、均質で凝集物を含まないインクを、無水THFで希釈して、17%の固体(ポリマー+塩+セラミック)を含む溶液を得る。溶液を2回、2000RPMで3分間混合する。
【0154】
インクB1からB3の組成(溶媒を除く)を、表2に記載する。一部の実験では、Irgacure(商標)(ポリマーに対して0.5重量%)も架橋剤として添加した。次いでこれらの組成物を、B1(i)からB3(i)と示すことができ、(i)はIrgacure(商標)の追加の存在を示す。
ii. 手順2(金属/炭素混合物を含むB4)
【0155】
さらなる試験を、ナノメートル規模のSnまたはZn金属粒子で、ならびに金属リン化物NiPで実施した。直径が約75nmおよび比表面積が約45m/gの球状粒子を持つカーボンブラックを使用した。プラスチック容器内で、適切な量のポリマー1に、20:1のO:Liモル比を得るのに十分な量のLiTFSI塩を導入する。次に、ポリマーに対して44重量%のTEGDMEを添加し、全てを、ディスクミキサー(Ultra-Turrax(登録商標)タイプ)を使用して、1000RPMで2分間、均一な液体が得られるまで混合する。次いでポリマーに対して30から90重量%の間の、ある量のSn、Zn、またはNiP(実施例1(a)により調製されたNi12相の)を、プラスチック容器内に導入する。次に10重量%から20重量%の炭素を添加する。全含量を、ディスクミキサーで、2500RPMで8分間混合する。十分な量のTHFを添加して、混合後に17%の固体(ポリマー+塩+炭素+金属)を含む溶液を得る。最後に、THFを導入した後、溶液を最後にもう一度、ディスクミキサーで、2500RPMで2分間混合する。
【0156】
表2に示されるインクB4は、NiPおよび炭素の混合物を含むインクの例である。
iii. 手順3(Alを含むB5-aおよびB5-b)
【0157】
プラスチック容器内で、ある量の非修飾アルミナ(タイプAKPG15、篩い分けせず)を、THFと、ソノトロード(50%出力)を使用して4分間(インクB5-a)、またはIKA型ローター-ステーターホモジナイザーを使用して最大出力で10分間(インクB5-b)、混合する。その間、ポリマー溶液を調製する。これはアルミナと重量が等しい量のポリマー1を含有し、LiTFSI塩が添加されて、20:1のO:Liモル比を得る。ポリマー重量の100%に等しい質量の可塑剤(TEGDME)を、架橋剤の添加なしに、添加する。ポリマー溶液を、2000RPMで3回、10分間にわたりプラネタリーミキサーで混合する。最後に溶液を、セラミックおよびTHF溶媒を含有するプラスチック容器に注ぐ。最終溶液は、約21%の固形分(ポリマー+塩+セラミック+TEGDME)を含有する。これを最後にもう一度、コニカルチューブ内で撹拌し、その後、リチウムにコーティングする。
【表2】
a.パーセンテージは、ポリマー1の重量に対する重量による。
b.混合方法によるB5-aとB5-bとの間のばらつき(実施例2(b)(iii)参照)
(実施例3)
表面修飾電極および電気化学特性
【0158】
研究されたセル構成(本発明によるおよび比較として)の例を、図4(a)から4(f)に示す。4(a)から4(c)のセルはポリマー電解質を含み、それに対して図4(d)から4(f)のセルはポリマー電解質を含まない。使用される全てのリチウムは、ポリマー中の無機化合物の少なくとも第1の薄層を含有する(ポリマー1+Al-ポリマーと示される)。図4(c)、4(d)、および4(f)のセルは、第1の層の表面に付着された、ポリマー1の、第2のセラミックを含まない層を含む。図4(b)、4(e)、および4(f)のセルは、カソード表面にリチウム塩を含むポリマー1の層を含むが、セラミックまたは可塑剤を含まない。
(a)修飾電極(架橋された1つの層)(図4(a)型セル)
【0159】
コインセルを、LFPカソード(8mg/cm、組成:炭素でコーティングされたLFP:カーボンブラック:ポリマー1:LiTFSIが、約73:1:19:7の割合にある)、ポリマー1+Al-ポリマーの層を持つリチウム、およびアリルエーテル型官能基を持つ分岐状ポリエチレンオキシドをベースにした自立型電解質(以後、SPEと呼ぶ)フィルム(25μmの厚さ)で組み立てた。ポリマー1+Al-ポリマーインクB1(i)、B2(i)、およびB3(i)を調製した(実施例2(b)および表2参照)。この実施例では、リチウム上に堆積されたフィルムは架橋されている(0.5重量%のIrgacure(商標)で)ことに留意されたい。
【0160】
これらのインクでのコーティングを、10mm/秒の速度で、コーティングテーブル上でドクターブレードを使用してリチウム表面で実施した。リチウムを、換気フード内に5分間放置し、その後、5分間、50℃の炉内に放置して、残りのTHFを蒸発させた。次いでフィルムを、UVランプを備えた窒素流下のボックスに入れる。5分間の窒素パージ後、フィルムを、UV光の下で2分間架橋する。堆積物の厚さは、乾燥および架橋後に約4μmである。
【0161】
典型的なアセンブリを図4(a)に例示する(インクB1(i)からB3(i)の場合による様々なAl-ポリマー含量)。アセンブリは、種々のポリマー修飾セラミック含量を有する層でコーティングされた3種のリチウムでこのように作製される。図5(a)は、種々のバッテリーに関しおよび参照に関し(LFPカソードおよびリチウムアノードであって修飾のないものおよび自立型ポリマー電解質)、50℃で、C/6で行われた定電流サイクル動作を示す。図5(b)は、同じバッテリーに関するサイクル動作中の容量の降下を示す。2つのバッテリーをリチウムごとにサイクル動作させ、サイクル動作は比較的再現可能である。参照バッテリーに関するサイクル動作と比較すると、ポリマー+セラミック層を有するバッテリーに関するものは、より高い放電容量を与える。セラミックの量が増えるにつれ、容量はより高くなりかつサイクル動作はより安定する。
(b)修飾電極(架橋のない1つの層)(図4(a)型セル)
【0162】
架橋剤の添加がない(インクB1、B2、およびB3)、以前のもの(上記実施例3(a)の場合)と同じ堆積をリチウム上で実施したが、このとき架橋はなされなかった。電気化学性能に関し(図6参照)、結論は同様である。ポリマー層組成物がより多くのセラミックを含有するほど、放電容量はより高くなり(図6(a))、サイクル動作が進むにつれサイクル動作はより安定する(図6(b))。したがって、リチウム上のコーティングの以下の実施例では、セラミックのパーセンテージを130%に設定した。また、以下の実施例でのポリマー層は、架橋されていない。130%よりも上では、このセラミックの場合、層は、「セラミック中ポリマー」型の層に近付くにつれ、機械的性質を失い始める。したがって、リチウム上でのポリマー層の二重堆積を含むコーティング試験も実施した。
(c)修飾電極(架橋のない1つの層)(図4(a)型セル)
【0163】
さらなるコーティング試験を、Al-ポリマー含量を130%に固定したまま(実施例3(b)によるインクB3)、インク中の固形分のパーセンテージを、インクに添加されるTHF溶媒の量に応じて17から24%の間で変化させて、実施した。50℃およびC/6で得られた対応する定電流サイクル動作を図7(a)に示し、サイクル動作の安定性を図7(b)に示す。固体のパーセンテージが高くなるにつれ、放電容量がより良くなるのは明らかと考えられる。21から24%の固体の間のごく僅かな相違しかない。容量損失(図7(b))は、修飾リチウムのそれぞれの場合に非常に類似しており、容量保持率は、インク組成物中の21%の固体で僅かに良好である。しかしながら、インク中のセラミックのより良好な分散を可能にするため、約17%の固体含量を使用することが好ましい。したがって以下の実施例では(修飾されたAl、Sn+炭素、Zn+炭素など、様々な充填剤を含むリチウム上の第1の層)、種々のセラミックを持つ固体含量が、約17%に設定される。
(d)図4(a)から4(f)からの典型的なセルおよび比較サイクル動作(C/3で)
【0164】
図4(a)から4(f)の表示に対応するセルを、表3に記載される要素で調製した。
【表3】
a.「-」 要素の不在を示し、層A6、A8およびB3は実施例2で定義される。
b.実施例3(a)で定義されたLFPカソードの組成。
【0165】
図8は、非修飾リチウムで(参照)、および130%のAl-ポリマーを含むポリマー1の4μm層を有するリチウムで(セルC1)組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して50℃およびC/3で得られた、(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率を示す。ポリマーフィルムは架橋されていない。3つの参照セルと比較して、修飾リチウムを持つ2つのC1セルは、より良好な再現性を有し、最初の2サイクルにわたり漸進的な容量利得を示さない。比放電容量も、修飾リチウムを含むセルに関して僅かに高い。さらに、より良好なクーロン効率(約99%)が、セラミック層を含有するリチウムで組み立てられたセルに関して第2のサイクルから得られ、それに対しておよそ91~92%のクーロン効率が参照セルに関して得られる。
【0166】
図9は、リチウムおよび非修飾LFPカソード(参照)で、次いで130%Al-ポリマーを持つポリマー1の4μm層を有するリチウムおよび2または4μmのポリマー層を有するLFPカソード(それぞれC2-aおよびC2-bセル)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して50℃およびC/3で得られた、(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率を示す。ポリマーフィルムは架橋されていない。リチウム修飾セルアセンブリに関する構成を、図9(b)の挿入図として示す。C1セルアセンブリと比較して、薄いポリマー層を持つLFPカソードが、図9のセルに使用された(参照を除く)。全体的なセル抵抗は、4および2μm層がカソード表面に堆積されたときにそれぞれ約112および115mAh/gの放電容量が実現されたので、LFPカソード上へのこのポリマー層の付加により低減した。この層がカソードに付加されない場合、放電容量は約100mAh/gであった(図8(a)参照)。再び、再現性は、4μmポリマー層を有するカソードでサイクル動作させた2つのセルによって示されるように、リチウムおよびカソードの両方でポリマー層を使用して、非常に良好である。クーロン効率も、修飾カソードおよびアノードを持つセルに関して良好である。約77%のクーロン効率は、参照セルに関する僅か62から66%の場合と比較して、2または4μmのポリマー層で修飾されたカソードが使用されるときに最初のサイクルで得られる。この実験は、電極(アノードおよびカソード)の表面の薄いポリマー層が、自立型ポリマー電解質とのより良好な結合を可能にし、したがって界面抵抗が低減されることを実証する。
【0167】
上述のように、リチウム表面に堆積されたポリマー層中のセラミックの量は、130%に設定されており、この値を超えると層は機械性を失うだけでなく接着性も失う。したがってセラミックを含有せずにポリマー、塩、およびTEGDMEのみ含有する第2の接着層は、第1のポリマー1+Al-ポリマー層の表面に堆積されて、アノードとポリマー電解質との間の界面抵抗を低減させる。ポリマーフィルムは架橋されない。図10は、非修飾リチウムで(参照)、次いで130%Al-ポリマーを持つポリマー1の第1の4μm層、およびポリマー1の第2の4μm層を有するリチウムで(セルC3)組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して50℃およびC/3で得られた、(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率を示す。挿入画像(図10(b))は、リチウム表面に堆積された2層のより良好な図を提供する。自立型ポリマー電解質とアノードとの間の界面の改善は、121mAh/gの初期放電容量が実現されたので、明らかに目に見えており、それに対して約100mAh/gが、Al-ポリマー層のみがリチウム上に堆積されたときにC1セルで得られた(図8(a)のサイクル動作を参照)。しかしながら漸進的な容量損失が観察された。層は、この場合、最適ではない可能性がある。クーロン効率は、サイクル動作された、両方のポリマー層を含有するリチウムを有するC3セルに関しては、第1のサイクルで80%に達する(参照セルの場合には62から66%)。
【0168】
リチウム表面の第2の接着層を有することの妥当性を確実にするため、特定のセルアセンブリを、自立型電解質を追加することなく使用した。図11(b)の挿入スキームは、試験されるアセンブリを示す。TEGDMEを持つポリマー1の第2の層を、9および12μmの比較的大きい厚さでリチウム表面に堆積した(それぞれ、表3のC4-aおよびC4-bセル)。図11は、修飾なし(参照)のリチウムで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリー、次いでC4-aおよびC4-bバッテリーに関して50℃およびC/3で得られた、(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率を示す。ポリマーフィルムは架橋されない。容量の差は、自立型ポリマー電解質が除去されるときに相当であり、バッテリーにおける多くの抵抗および界面の問題を引き起こす。第1のサイクルの放電容量は、参照バッテリーに関する85~90mAh/gと比較して、ポリマー電解質のないバッテリーに関しては約145~149mAh/gである。しかしながら、この場合、表面欠陥を有するカソードと、リチウム表面に堆積されたポリマー1の第2の層との間の界面は、最適ではない。事実、放電容量の小さいばらつき(図11(a))を観察することができるが、主に、より重要なばらつきはクーロン効率であり(図11(b))、界面の問題の典型である。この段階で、電気化学的結果は、より厚い第2のポリマー層(12μm対9μm)でより安定に見えるが、決定因子は、このポリマー層の表面とカソード表面との間の界面の最適化のままである。
【0169】
アノード上のポリマー層とカソード表面との間の界面が最適ではなく、クーロン効率のばらつきの原因であることを確認するため、TEGDMEを含まないポリマー1の層をカソード表面に堆積した。図12(b)の挿入スキームは、試験されるアセンブリを示す。3つの異なるポリマー層の厚さ、5、8および11μmを使用した(それぞれ、表3のC5-a、C5-b、およびC5-cセル)。これらのセルに関し、リチウム表面にはポリマー1+Al-ポリマーのただ1つの層があることに留意すべきである。ポリマーフィルムは架橋されない。図12は、これらのバッテリーに関してならびに比較のための参照に関して50℃およびC/3で得られた、(a)定電流サイクル動作および(b)クーロン効率を示す。電気化学的結果は顕著であり:3つのセルは再現可能であるので、それらのサイクル動作には事実上差がない(図12(a))。初期放電比容量は、約145mAh/gである。容量の緩やかな降下が観察されるが、サイクル動作が進行するにつれて安定化するようである。99%に近いクーロン効率は、第1のサイクルで実現され、これは参照セルの場合の62%から66%よりもさらに良好である。カソード堆積物の厚さ(5、8または11μm)は、試験条件下での電気化学的サイクル動作に影響を及ぼさないことに留意することが重要である。
【0170】
最後に、試験の最終シリーズは、カソード上のポリマー層の厚さはサイクル動作の安定性に対してほとんど影響がないように見えるので、カソード上のポリマー層の厚さを低減することによって実施した。さらに、カソードとリチウムアノードとの間の密着を促進するため、3または4μmのポリマー1+TEGDMEの第2の層をリチウム上に堆積した(それぞれ、表3のセルC6-aおよびC6-b)。ポリマーフィルムは架橋されない。これらのセルの構成は、図13(b)の挿入図に示される通りである。これらのバッテリーに関しておよび参照に関して50℃およびC/3で得られる定電流サイクル動作およびクーロン効率を、図13(a)および13(b)に示す。サイクル動作は、図12で得られたものと非常に類似しており、自立型ポリマー電解質を回避するためカソードおよびアノードの表面に直接薄層を堆積する有用性を、完全に実証する。さらに、このセル構成では、リチウムは、リチウムの安定化を可能にするAl-ポリマーに富む層を保有する。
(e)修飾電極(架橋なしの1つの層)(図4(a)型セル)
【0171】
実施例2(b)(iii)の手順2で既に述べたように、Al-ポリマーとは異なる無機化合物の投入も使用した。炭素/金属(M)混合物を、カソードからリチウムアノードへのリチウムめっき中にLi-M合金を形成する目的で試験した。炭素は、ポリマー層における電子伝導のためにも使用する。例として、2種の金属を試験し(即ち、SnおよびZn)、ならびにリン化ニッケルNiPも試験した。1つのタイプの炭素のみ試験したが、その他を使用することもできる。図14は、修飾なしのリチウム(参照)で、次いで30%NiPおよび17%炭素を持つポリマー1の5μm層を有するリチウム(表2の層B4)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃およびC/3で得られた定電流サイクル動作を示す。ポリマーフィルムは架橋されない。これは第1の結果であるが、概念が作用することを確認する。参照バッテリーと比較して、初期容量の増加を見ることができる。しかしながら容量の漸進的な降下は、サイクル動作が進行するにつれて観察され得る。このタイプの層は、図4(d)から4(f)に示されるものなど、セル構成から利益を得ることができ、特に上記にて示されるC6(aまたはb)セルに相当する図4(f)におけるものから利益を得ることができ、ここでAl-ポリマーを本炭素/金属混合物により置き換えることができる。
(実施例4)
噴霧付着された第2の層を持つ表面修飾電極および電気化学的性質
【0172】
本発明によるその他のセルは、図4(f)に示されるような構成である。しかしながらポリマー中の無機化合物の第1の薄層は、ポリマー1および非修飾アルミナ(Al)からなる。リチウム上の第2の薄層は、非常に薄い層で噴霧によって付着され、ポリマー1ではなくポリマー2を含み、可塑剤は含まない。セルは、カソード表面にリチウム塩および可塑剤を含むがセラミックを持たない、ポリマー1の種々の厚さの層も含む。いくつかのバッテリーを、並列で試験されるようにそれぞれに関して調製した。
(a)セルC7からC9の製造
セルC7に関し、手順は下記の通りである:
【0173】
カソード: 実施例2で調製されたインクA7を、実施例3(a)に記載したようにLFPカソードの表面にドクターブレードによって付着させて、架橋後に40μmの厚さが実現されるようにする。コーティングしたら、カソードを換気フード内に5分間放置し、次いで窒素下の気密ボックスに5分間放置し、次いでUV光の下で10分間架橋させる。
【0174】
アノード(第1の層): 実施例2で得られたインクB5-aを、リチウムフィルムの表面にドクターブレードによって付着させる。コーティングを換気フード内で5分間乾燥させ、次いで炉内で、次のステップの前に50℃で5分間乾燥させる。乾燥堆積物の厚さは約8~9μmである。
【0175】
アノード(第2の層): 実施例2で調製されたインクA9に関して得られた溶液を、60psiのアルゴン圧力で、約30cmの距離で、Liの表面上の2回の通過によって、リチウム上の第1の層の表面上に換気フード下で噴霧する。最後に、修飾リチウム箔を、50℃の換気フード内で5分間乾燥する。得られた層は非常に薄いが(1μmに近い)、正確に測定できなかった。
【0176】
次いでカソード上のポリマーの自由表面を、アノード上の第2の層のポリマー表面に付着させる。得られた多層材料を一緒に加圧し、この材料からパウチ型バッテリーを形成する。
【0177】
セルC8は、カソード上に40μmではなく30μm層を付着させることにより、セルC7の場合のように調製する。インクB5-aもまた、約7~8μmの層の厚さをもたらすインクB5-bによって置き換えられる。
【0178】
セルC9をセルC7と同じ手法で調製し、カソード上には40μmではなく20μm層がある。
【表4】
a.層A7、A9ならびにB5(aおよびb)の組成は、実施例2で定義される。
b.LFPカソードの組成は、実施例3(a)で定義される。
c.超薄層(厚さは測定せず)
(b)セルC7からC9に関する電気化学的結果
【0179】
図15から17は、修飾なしのリチウム(参照)で組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liセルと比較した、セルC7からC9のサイクル動作中に得られた電気化学的結果を示す。
【0180】
図15(a)は、セルC7が、参照セルよりもサイクル動作中にさらに安定であることを示す。この態様は、図15(c)でさらにより明らかであり、クーロン効率の顕著な降下が、参照セルに関して約20サイクル目に観察され、それに対してC7セルに関しては安定なままである。図15(b)は、参照セルと比較して、C7セルに関してより高い平均電圧も示す。
【0181】
図16(a)および16(b)は、C8セルに関するサイクル動作の安定性およびクーロン効率の結果を示し、これらはC7セルに関して得られたものと比較的類似している。
【0182】
図17は、サイクル動作速度C/6、C/4、C/3、C/2、および1Cのそれぞれでの5サイクルにわたりC9セルで得られた、容量レートの結果を示す。より大きい安定性は、特に増大したサイクル動作速度で、参照セルと比較してC9セルで観察することができる。
(実施例5)
修飾表面を持つ前処理された電極および電気化学的性質
【0183】
金属電極フィルム(この場合はリチウム)の表面の有機、無機、または金属前処理は、前処理層を形成するのに実施することもでき、不動態層の形成、化合物、有機もしくは無機塩、または電極フィルムの場合とは異なる金属との合金の堆積物の形成または堆積からなることができる。
【0184】
ポリマー1+Al-ポリマー層(インクB3)の堆積の例は、前処理を受けた様々なリチウムフィルムで実施した。図18は、修飾なしのリチウム(参照)で、ならびに(a)無機分子(PCl)および(b)薄い金属層(Zn)で前処理されたリチウムで組み立てられたLFP/ポリマー電解質/Liバッテリーに関して、50℃、C/3(a)およびC/6(b)で得られた定電流サイクル動作を示す。これらのリチウムは、サイクル動作の安定化を助けることができることを示した。目的は、ポリマー+無機化合物層との、およびおそらくは第2の層との蓄積効果を発揮することである。したがって、リチウム表面を不動態化しかつその表面でのリチウム拡散を増大させ、その後、抗デンドライトポリマーを堆積し固体電解質(ポリマーまたはセラミック型)との接着を可能にする第1の前処理が、推奨される。図19は、(a)PClによる処理および(b)PClによる処理の後にポリマー1+Al-ポリマーの堆積を受けたリチウムストリップの写真を示す。第1のPCl堆積物は、非常に均一であり、薄茶色を与える(図19(a)参照)。この第1の堆積物の一体性および品質は、図19(b)に示されるように、ポリマー1+Al-ポリマー層の堆積の影響を受けない。
【0185】
いくつかの修正を、企図される本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態のいずれかに行うことができる。本明細書で言及される参考文献、特許、または科学文献の文書は、その全体が全ての目的で参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】