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特表2024-530042単一のハードウェアモジュールを含む血液分析器および統合型のワークフロー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】単一のハードウェアモジュールを含む血液分析器および統合型のワークフロー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20240806BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01N33/49 Z
G01N33/72 A
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507989
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 IB2022057301
(87)【国際公開番号】W WO2023017383
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21190254.9
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティヴァダル・マッハ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・パウリカ
(72)【発明者】
【氏名】ラモーナ・ゼリガー
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック・ステリング
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045CA02
2G045DA51
2G058AA05
2G058DA09
2G058GA02
2G058GE09
(57)【要約】
本開示は、特に事前分析(適性)試験、分析試験、事後分析(検証)試験を含む、血液試料を分析するためのデバイスおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、いくつかの実施形態において、1つの特定の励起周波数もしくはそれ以上の特定の励起周波数で、または1つの範囲の周波数もしくはそれ以上の範囲の周波数で駆動される音響トランスデューサによって、ベッセル内で生成される超音波の音響波を用いて、試料ベッセル内の血液細胞を採取し、撮像し、および溶解させるように構成されたデバイスに関する。いくつかの非限定的な実施形態において、単一の音響トランスデューサによって超音波の音響波が生成される。さらに、いくつかの実施形態によれば、デバイスおよびワークフローは、事前分析(適性)試験、分析試験、および事後分析(検証)試験を含む3つの分析工程を単一のデバイスで行うように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料を分析する方法であって、
a-i)患者から取得した血液試料を用意することと;
a-ii)血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することと;
a-iii)流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることと;
a-iv)流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で、血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることと;
a-v)血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることと
を含み、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析すること;
という工程が実行されるか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/もしくは血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合には:
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力すること;
もしくは
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が実行される、前記方法。
【請求項2】
流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞をフォーカシングすることは、音響浮揚を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a-iv)で、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析することは、分光法および/または顕微鏡法を用いて実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも赤血球を溶解させることは、超音波を用いて実行される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも赤血球を溶解させることは、停止フローにおいて実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a-iv)の分析後に、適切な溶媒および/または溶液で流体チャネルを洗うことをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
流体チャネルは、高さが5μmおよび500μmを含む5μmから500μmの間にあり、好ましくは、10μmおよび200μmを含む10μmから200μmの間にあり、さらに好ましくは、50μmおよび100μmを含む50μmから100μmの間にある、マイクロチャネルである請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b1-ii)またはb2-ii b)で導入される血液試料の第2の部分は希釈される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
血液試料を分析するためのデバイスであって、
流体チャネル(10)と;
血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するように構成された、第1の導入要素(11a、11b)と;
流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの所定の領域にフォーカシングするように構成された、フォーカシングユニット(12)と;
血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することを含む、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析するように構成された、少なくとも第1の分析ユニット(13a、13b)と;
血液試料の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力するように構成された、出力インターフェース(14)と、を含み、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれ、
該デバイスはさらに、
血液試料の少なくとも1つの特性wの測定結果を基準値と比較する、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを、それぞれ細胞外ヘモグロビン含有量の基準値150mg/dL、細胞外脂質含有量の基準値600mg/dL、および血餅の最大長さの基準値20μmと比較するように構成された、判定モジュール(15)
を含み、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が基準値150mg/dL以下である、および/もしくは、細胞外脂質含有量yの結果が基準値600mg/dL以下である、および/もしくは、血餅の最大長さzが20μm以下である場合には、判定モジュールは、血液試料の第2の部分を測定できるというインジケーションを出力インターフェースにおいて提供するように構成されているか、もしくはインジケーションを出力インターフェースにおいて提供しないように構成されているか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が基準値150mg/dLを上回る、および/もしくは、細胞外脂質含有量yの結果が基準値600mg/dLを上回る、および/もしくは、血餅の最大長さzが20μmを上回る場合には、判定モジュールは、血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるか、もしくは結果が誤っている可能性があるというインジケーションを出力インターフェースにおいて提供するように構成されており;
さらに、該デバイスは、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するように構成された第2の導入要素を含むか、もしくは第1の導入要素(11a、11b)がさらに、血液試料の第2の部分も流体チャネル中に導入するように構成されており;
さらに、該デバイスは、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成された溶解ユニット(16)を含むか;もしくは、フォーカシングユニット(12)がさらに、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成されている、前記デバイス。
【請求項10】
フォーカシングユニット(12)は音響浮揚デバイスである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
音響浮揚デバイスは、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した血液試料の少なくとも赤血球を溶解させるように構成できる、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
少なくとも第1の分析ユニット(13a、13b)はまた、血液試料の細胞および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物を分析するように構成されている、ならびに/または、血液試料の細胞および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物を分析するように構成された少なくとも第2の分析ユニットをさらに含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
流体チャネル(10)の内側でフローを制御するように構成された、フロー制御ユニットをさらに含む、請求項9~12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
流体チャネル(10)は、高さが5μmおよび500μmを含む5μmから500μmの間にあり、好ましくは、10μmおよび200μmを含む10μmから200μmの間にあり、さらに好ましくは、50μmおよび100μmを含む50μmから100μmの間にある、マイクロチャネル(10’)である、請求項9~13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
血液試料を分析するための請求項9~14のいずれか1項に記載のデバイスで使用されるように構成された、非一時的コンピュータプログラム製品であって:
a-ii)血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することと;
a-iii)流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることと;
a-iv)流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で、血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることと;
a-v)血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることと
という工程を実行し、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析すること;
という工程が実行されるか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/もしくは血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合には:
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力すること;
もしくは
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が実行される、
ように構成される、前記非一時的コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に事前分析(適性)試験、分析試験、事後分析(検証)試験を含む、血液試料を分析するためのデバイスおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、いくつかの実施形態において、1つの特定の励起周波数もしくはそれ以上の特定の励起周波数で、または1つの範囲の周波数もしくはそれ以上の範囲の周波数で駆動される音響トランスデューサによって、ベッセル内で生成される超音波の音響波を用いて、試料ベッセル内の血液細胞を採取し、撮像し、および溶解させるように構成されたデバイスに関する。いくつかの非限定的な実施形態において、単一の音響トランスデューサによって超音波の音響波が生成される。さらに、いくつかの実施形態によれば、デバイスおよびワークフローは、事前分析(適性)試験、分析試験、および事後分析(検証)試験を含む3つの分析工程を単一のデバイスで行うように構成されている。
【背景技術】
【0002】
とりわけ中央検査室環境で血液分析に送られる血液試料の大部分が、試料中の溶血、脂肪血、および凝固から生じる干渉による影響を受ける。それらの干渉のほとんどが、病的状態ではなく、試料の不適正な引出し、保管、輸送、または取扱いから生じる。しかし、試料が病的状態であったとしても、さらなる試験結果の適正な判読のために、それらのインジケータにフラグを立てる必要がある。通常、試料中でとりわけ影響を受けるのは、ヘマトクリット(HCT)、血中血球容積(PCV)、赤血球(RBC)数、ヘモグロビン関連インデックス、および血小板数である。
【0003】
干渉および病的状態による問題を避けるために、主な解決策は、臨床スタッフによる試料採取および取扱いに関するプロトコルの厳守である。さらに、関係するパラメータのための独立型の分析器が存在するが、結果に対するコストおよび時間のせいで、概して、魅力的ではない。また、熟練技術者による血液分析器に示された分析結果の全体の評価は、通常でないパターンを強調することがあり、その結果として試料が再測定され、やはり時間および(人的)資源が必要になる。さらに、熟練技術者による血液チューブの視覚検査によって、明らかな凝固および不適正な取扱いにフラグを立てることがあるが、これは慣例的に実行されるものでもなく、すべての事例で可能というものでもない。
【0004】
要するに、血液分析結果と、検査室技術者の経験または別個のカートリッジとを用いて、事前分析を別個の工程として行うことができる。実際には、両方とも、莫大な費用がかかるか、または試料が全試験を受けることを排除せず、その結果、試験の時間および/またはコストが削減されない。
【0005】
さらに、以下の方法も血液分析のために企図されている。
【0006】
特許文献1は、医学的試料、たとえば血液試料、たとえばヒトの血液試料を分析するための分析器、たとえば血液分析器に関し、その分析器は、対象物領域から光照射野を取り込むために提供され、顕微鏡上に配置されるライトフィールドカメラを含む。
【0007】
特許文献2は、白血病などの病理検体の診断に使用するための、血液などの生体試料において標識せずに白血球の細胞の種類を決定するための体外の方法を開示しており、白血球の細胞の種類を決定することを含む。
【0008】
特許文献3は、所望の領域を貫通する軸に沿って線形に配置される圧力ノードを有する音響定在波を生成する音響トランスデューサを用いて、第1の生物学的実体を第2の生物学的実体から同時に分取するためのフローセルを開示している。
【0009】
試料を血液分析器にかける前に事前試験として、特に、溶血(細胞外ヘモグロビン含有量)、脂肪血(細胞外脂質含有量、とりわけ細胞外トリグリセリド/リポタンパク質)、および少量の血餅に関して、試料をスクリーニングするか、または少なくとも分析データに伴うそれらの値にフラグを提供して信頼性の低い結果をより目立たせることが有利になる場合がある。
【0010】
影響を受けた試料が分析段階を回避するようルート設定される場合、そのことが分析時間およびコストを削減することになり、影響を受けた試料にフラグが立てられる場合、そのことが、最終的に誤診を防ぐことができるかまたは新たな血液の引込みの必要を強調することができる。
【0011】
ワークフローの検証のためには、それらの値のためのある対照を用意して、たとえば、測定デバイスまたは試料の任意の差異に関して被分析物の細胞外濃度、細胞内濃度、および総濃度をその対照と比較し、さらなる精密な調査のために差異にフラグを立てることがやはり有利になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP3575848
【特許文献2】EP3540631
【特許文献3】WO2017/157445A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、血液分析ワークフローのための時間効率およびコスト効率の高い事前分析試験、分析、事後分析制御を実現する、単一の流体チャネルにおける統合型ワークフローを見出した。
【0014】
本発明の第1の態様は、血液試料を分析する方法に関し、方法は、
a-i)患者から取得した血液試料を用意することと;
a-ii)血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することと;
a-iii)流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることと;
a-iv)流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で、血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることと;
a-v)血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることと
を含み、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析すること;
という工程が実行されるか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/もしくは血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合には:
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力すること;
もしくは
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が実行される。
【0015】
用意されている患者からの血液試料は、患者から取得された。つまり、血液試料は、血液試料を分析するための方法を行う前に、患者から取得された。したがって、患者から血液試料を取得する実際のプロセスは、血液試料を分析するための本方法の一部ではない。
【0016】
第2の態様において、本発明は、血液試料を分析するためのデバイスに関し、デバイスは、
- 流体チャネルと;
- 血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するように構成された、第1の導入要素と;
- 流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの所定の領域にフォーカシングするように構成された、フォーカシングユニットと;
- 血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することを含む、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析するように構成された、少なくとも第1の分析ユニットと;
- 血液試料の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力するように構成された、出力インターフェースと、を含み、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれ、
デバイスはさらに、
- 血液試料の少なくとも1つの特性wの測定結果を基準値と比較する、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを、それぞれ細胞外ヘモグロビン含有量の基準値150mg/dL、細胞外脂質含有量の基準値600mg/dL、および血餅の最大長さの基準値20μmと比較するように構成された、判定モジュール
を含み、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が基準値150mg/dL以下である、および/もしくは、細胞外脂質含有量yの結果が基準値600mg/dL以下である、および/もしくは、血餅の最大長さzが20μm以下である場合には、判定モジュールは、血液試料の第2の部分を測定できるというインジケーションを出力インターフェースにおいて提供するように構成されているか、もしくはインジケーションを出力インターフェースにおいて提供しないように構成されているか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が基準値150mg/dLを上回る、および/もしくは、細胞外脂質含有量yの結果が基準値600mg/dLを上回る、および/もしくは、血餅の最大長さzが20μmを上回る場合には、判定モジュールは、血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるか、もしくは結果が誤っている可能性があるというインジケーションを出力インターフェースにおいて提供するように構成されており;
さらに、デバイスは、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するように構成された第2の導入要素を含むか、もしくは第1の導入要素がさらに、血液試料の第2の部分も流体チャネル中に導入するように構成されており;
さらに、デバイスは、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成された溶解ユニットを含むか;もしくは、フォーカシングユニットがさらに、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成されている。
【0017】
本発明の第3の態様は、血液試料を分析するための本発明のデバイスで使用されるように構成された非一時的コンピュータプログラム製品を対象とし、非一時的コンピュータプログラム製品は:
a-ii)血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することと;
a-iii)流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることと;
a-iv)流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で、血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることと;
a-v)血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることと
という工程を実行し、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析すること;
という工程が実行されるか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/もしくは血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合には:
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力すること;
もしくは
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が実行されるように構成される。
【0018】
本発明のさらなる態様および実施形態は、従属請求項に開示されており、以下の説明、図および例から、それらに限定されることなく得ることができる。
【0019】
添付の図面は、本発明の実施形態を示し、そのさらなる理解を促すはずである。図面は、説明と関連付けることで、本発明の概念および原理の説明として働く。他の実施形態および言及されている利点の多くは、図面に関連して導き出すことができる。図面の要素は互いに対して必ずしも縮尺が正確というわけではない。機能的に等価であり同等に作用する同一の構成および構成要素は、別段の明示がない限り、図面の図中で同じ参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明またはそのいくつかの態様の、血液試料を分析する方法を概略的に示す図である。
図2】本発明またはそのいくつかの態様の、血液試料を分析する方法を概略的に示す図である。
図3】本発明またはそのいくつかの態様の、血液試料を分析する方法を概略的に示す図である。
図4】本発明またはそのいくつかの態様の、血液試料を分析する方法を概略的に示す図である。
図5】本発明による血液試料を分析するためのデバイスを概略的に示す図である。
図6】本発明による血液試料を分析するためのデバイスを概略的に示す図である。
図7】本発明の血液試料を分析するための方法およびデバイスのいくつかの態様の細部を概略的に示す図である。
図8】本発明の血液試料を分析するための方法およびデバイスのいくつかの態様の細部を概略的に示す図である。
図9】本発明の血液試料を分析するための方法およびデバイスのいくつかの態様の細部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0022】
本発明の文脈において、血液試料は、患者から提供される試料であり、特に未処置である。特に、血液試料は全血試料である。
【0023】
本発明の範囲内の患者は、特に限定されていない。いくつかの実施形態によれば、本方法における患者は、脊椎動物であり、より好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトの患者である。
【0024】
本発明の範囲内の脊椎動物は、ヒトを含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類を含む、脊椎を有する動物を指す。したがって、本発明は、人間医学だけでなく、獣医学にも適している。
【0025】
本発明を例示的に詳細に説明する前に、本明細書に記載されている方法は変更できるため、本発明は本方法の処理工程の特定の構成部分に限定されないことを理解されたい。本明細書で用いられている用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定する意図はないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそれ以外を指示しない限り、単数および/または複数の指示対象を含むことを留意しなければならない。たとえば、本明細書で用いられているように「a」という用語は、唯一の実体としてまたは「1つまたはそれ以上」の実体の意味で理解することができる。複数形は、文脈が明確にそれ以外を指示しない限り、単数および/または複数の指示対象を含むことも理解されたい。さらに、数値によって定められたパラメータ範囲が与えられる場合、その範囲は、それらの限界値を含むと見なされることを理解されたい。
【0026】
本明細書で用いられているように、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、またはその任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。たとえば、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明確に列挙されていないかまたはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含む場合がある。さらに、明示的に反対の記述がない限り、「または」は、排他的ORではなく、包含的ORを指す。たとえば、条件AまたはBは、以下のうちのいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在し)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)かつBが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0027】
「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」という用語の使用は、1つならびに2つ以上の任意の量を含むと理解される。追加的に、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という句の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、Y、およびZの任意の組合せを含むと理解される。
【0028】
序数詞(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、専ら2つ以上の物体を差別化する目的であり、別段の明示的な記述がない限り、任意の序列、または順序、またはある物体の別の物体に対する重要度、または任意の追加順序を示唆するものではない。
【0029】
本発明の第1の態様は、血液試料を分析する方法に関し、方法は、
a-i)患者から取得した血液試料を用意することと;
a-ii)血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することと;
a-iii)流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることと;
a-iv)流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で、血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることと;
a-v)血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることと
を含み、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析すること;
という工程が実行されるか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/もしくは血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合には:
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力すること;
もしくは
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が実行される。
【0030】
本方法において、工程a-i)からa-v)は、特に、この順序で実行される。その後、血液試料の第1の部分の分析の予備結果に応じて、3つの異なる変形形態のうちの1つが続く。その予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれる。
【0031】
第1の変形例において、血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析することと
という工程が、特に、この順序で実行される。
【0032】
細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下であり、特に値120mg/dL以下である、および/または細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下であり、特に値480mg/dL以下である、および/または血餅の最大長さzが20μm以下であり、特に15μm以下である場合に、特に良好な結果が得られる。
【0033】
第1の変形例の例示的な方法が、図1に概略的に示されている。患者から取得した血液試料を用意する1という工程a-i)の後に、血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入する2という工程a-ii)が続く。その後、流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングする3という工程a-iii)が実行され、その後に、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析する4という工程a-iv)と、血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力する5という工程a-v)が続く。
【0034】
その後に、流体チャネルから血液試料の第1の部分を流す6という工程b1-i)と、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入する7という工程b1-ii)と、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させる8という工程b1-iii)と、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析する8aという任意選択の工程b1-iv)と、沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させる9という工程b1-v)と、少なくとも溶解した赤血球を分析する9aという工程b1-vi)とが続く。
【0035】
第2の変形例において、血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値、たとえばw1を上回る場合、特に、結果が基準値の2倍、たとえば2×w1を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回り、さらに特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値200mg/dLを上回り、特に300mg/dLを上回る場合、および/または、細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回り、さらに特に、細胞外脂質含有量yの結果が値800mg/dLを上回り、特に1200mg/dLを上回る場合、および/または、血餅の最大長さzが20μmよりも大きく、さらに特に、血餅の最大長さが25μmよりも大きく、特に40μmを上回る場合には、
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力することと
という工程が特にこの順序で実行される。
【0036】
図2は、第2の変形例の例示的な方法を概略的に示し、工程1から5は図1に示す通りである。その後、流体チャネルから血液試料の第1の部分を流す6という工程b2-i a)と、血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力する7’という工程b2-ii a)とが実行される。
【0037】
第3の変形例において、血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値、たとえばw1を上回る場合、特に、結果が基準値、たとえばw1を上回りかつ基準値の2倍、たとえば2×w1以下である場合に、
特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回り、さらに特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回りかつ300mg/dL以下である、特に、200mg/dL以下である場合、および/または
細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回り、さらに特に、細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回りかつ1200mg/dL以下であり、特に、800mg/dL以下である場合、および/または
血餅の最大長さzが20μmよりも大きく、さらに特に、血餅の最大長さが20μmよりも大きくかつ40μm以下であり、特に、25μm以下である場合には:
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が特にこの順序で実行される。
【0038】
図3は、第3の変形例の例示的な方法を概略的に示し、やはり工程1から5は図1の通りである。その後、流体チャネルから血液試料の第1の部分を流す6という工程b2-i b)と、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入する7という工程b2-ii b)と、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させる8という工程b2-iii b)と、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析する8aという任意選択の工程b2-iv b)と、沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させる9という工程b2-v b)と、少なくとも溶解した赤血球を分析する9aという工程b2-vi b)と、結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力する7’’という工程b2-vii b)とが続く。
【0039】
好ましい実施形態によれば、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することという任意選択の工程が実行される、すなわち、工程b1-iv)またはb2-iv b)が実行される。
【0040】
本方法から分かるように、工程a-i)からa-v)は必ず実行される。それらの工程は、本方法の事前分析の部分を表し、血液試料の何らかの分析も既に含んでいる。本方法の事前分析段階において、後続の(さらなる)分析工程において試験する、すなわち、工程b1-i)からb1-vi)を実行するために、その血液試料が実際に適切であるかどうかが判定される;おそらく適切であり、それでもさらなる血液試料が必要か否かを示すさらなるインジケータを有するために分析が実行される場合は、すなわち、工程b2-i b)からb2-vii b)を実行する;または、適切ではなく、新たな血液試料が必要とされる可能性がある場合は、すなわち、工程b2-i a)およびb2-ii a)を実行する。
【0041】
血液試料が適切であるかまたはおそらく適切である方法において、第1の部分を流した後に、血液試料の第2の部分が導入される。第2の部分は、細胞の種類について分析でき、その分析は、好ましくは実行されるさらなる分析工程を表す。いずれにしても、血液試料の第2の部分の赤血球は溶解され、溶解した赤血球は分析される。そのことは、もちろん、さらなる分析データを提供するが、溶解した赤血球の分析による結果は、他の分析データを検証するためにも使用できるため、事後分析工程も表す。したがって、溶解が実行される場合は、適切なまたは少なくともおそらく適切な試料に事前分析工程、分析工程、および事後分析工程を実行できる。
【0042】
本方法において、患者からの血液試料を用意するという工程a-i)は、特に限定されていない。特に、血液試料は、患者に対して侵襲性の行為が取られないようにして用意され、すなわち、血液試料は非侵襲的に用意される。
【0043】
血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するという工程a-ii)も、特に限定されていない。いくつかの実施形態によれば、血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することは、自動的に行われる。いくつかの実施形態によれば、血液試料の第1の部分は、シリンジまたは同様のデバイス、リザーバから、たとえば、やはりチップ上、たとえば、やはり流体チャネルを含むマイクロチップ上などに、チューブ、別個のチャネルなどを介して、ポンプ、シリンジを押圧するための自動デバイスなどを用いて導入される。そのときに、チューブを有するシリンジ、たとえばチューブおよびポンプを内部に有するリザーバなどが、第1の導入要素を形成することができる。
【0044】
代替的に、もちろん、同じ第1の導入要素を用いて血液試料の第1および第2の部分を導入することも可能である。そのような場合に、血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するという工程で、第1の導入要素、たとえばシリンジまたはリザーバの少なくとも一部分に少なくとも第2の部分を維持しながら、第1の部分を第1の導入要素によって導入できる。次いで、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するという工程で、たとえば、第1の部分を導入するために使用されたものと同じ機構、たとえば、シリンジに対する圧力、リザーバからのポンプ輸送などを用いて、血液試料の第2の部分を後から導入できる。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、血液試料は、チャネル中に、好ましくは光学読出し装置を用いてポンプ輸送される。光学読出し装置によって、適切な量の血液試料だけを導入することが可能になる。たとえば、流体チャネルがマイクロチャネルである場合に、第1および/または第2の血液試料が少量で十分なことがある。いくつかの実施形態によれば、200μL未満、100μL未満、もしくはそれどころか70μL未満、たとえば50μL未満の、血液試料の第1の部分が導入され、および/または200μL未満、100μL未満、もしくはそれどころか70μL未満、たとえば50μL未満の、血液試料の第2の部分が導入され、そうすることで、患者から用意する血液試料を非常に少量にすることが可能になる。
【0046】
流体チャネルは、血液試料がその中を通って流れ得る内面を有する構造を含む限り、特に限定されておらず、その構造は、導入される血液試料を収容するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、流体チャネルは、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析し、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析し、および/または少なくとも溶解した赤血球を分析するために、たとえば、分光分析および/または顕微鏡分析のために適切な透過率を有する、血液試料の分析のための適切な材料、たとえばガラスおよび/または適切なポリマー樹脂から作られた、特に、適切な試料ベッセル内のマイクロチャネルである。代替的に、パイプなどとすることもできるが、好ましくは、細胞をフォーカシングするおよび/もしくは沈殿させるための、ならびに/または分析を簡単にするための、少なくとも2つの平行な内面および外面を含む。好ましい実施形態によれば、流体チャネルは、適切な試料ベッセル内の、たとえばガラス、プラスチックなどから作られた、たとえばチップの内側の、マイクロチャネルである。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、適切な試料ベッセルは、第1のポートを通して血液試料の一部分をマイクロチャネル中に導入でき、それを第2のポートから流すことができるように、外面と、外面の範囲内の流体チャネル、たとえばマイクロチャネルと、外面を通ってマイクロチャネルまで延びる第1のポートと、外面を通ってマイクロチャネルまで延びる第2のポートとを有する。いくつかの実施形態によれば、流体チャネル、特にマイクロチャネルは、ある長さ、ある幅、およびある高さを有し、好ましくは、幅と高さのアスペクト比が約0.04から約0.175の範囲にあり、および/または試料ベッセルは、ある幅およびある高さを有し、試料ベッセルの幅と高さのアスペクト比が約0.5から約3.0の範囲にある。いくつかの実施形態によれば、流体チャネルは、高さが5μmおよび500μmを含む5μmから500μmの間にあり、好ましくは、10μmおよび200μmを含む10μmから200μmの間にあり、さらに好ましくは、50μmおよび100μmを含む50μmから100μmの間にある、マイクロチャネルである。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、血液試料は、少なくとも第1の部分と第2の部分とに分離され、その後、第1の部分が流体チャネル中に導入される。少なくとも第1の部分と第2の部分とに血液試料を分離することは、特に限定されていない。このような場合には、血液試料の第1の部分および第2の部分は、第1の導入要素および第2の導入要素によって流体チャネルに導入でき、第2の導入要素は、たとえば、シリンジおよびチューブ、チューブおよびポンプを有するリザーバなどとして、第1の導入要素と同じようにして構成できる。ただし、血液試料を用意し、次いで、それを専ら部分ごとに導入する、たとえば、同じ導入要素、すなわち、第1の導入要素および第2の導入要素、たとえばシリンジなどから、工程a-ii)で第1の部分を導入し、工程b1-ii)または工程b2-ii b)で第2の部分を導入することも可能である。いくつかの実施形態によれば、血液試料の一部分は、工程b1-i)、b2-i a)、もしくはb2-i b)で血液試料の第1の部分を流すために、および/あるいは、たとえば工程b1-vi)の後、または工程b2-vi b)もしくはb2-vii b)の後の、任意選択の流す工程で血液試料の第2の部分を流すために使用することもできる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、血液試料または血液試料の第1の部分および/もしくは第2の部分は、導入前に希釈できる。したがって、血液試料が希釈され、次いで、第1および第3の変形例では、血液試料の第1の部分および血液試料の第2の部分が、希釈された形態で、すなわち同じ希釈剤を用いて導入されることが可能である。代替的に、血液試料を少なくとも第1の部分と第2の部分とに分離し、次いで、第1および第2の部分のいずれかまたは両方でさえ、流体チャネル中への導入の前に希釈できることも可能である。このような例において、血液試料の第1および第2の部分のための希釈剤は、同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、工程b1-ii)または工程b2-ii b)で導入される血液試料の少なくとも第2の部分は希釈される。工程b1-ii)および工程b2-ii b)の場合、希釈は、工程b1-iii)またはb2-iii b)で、沈殿した細胞の単層が実現される程度であることが特に好ましい。
【0051】
血液試料の、または血液試料の少なくとも第1および/または第2の部分の希釈は、特に限定されておらず、希釈は、血液試料を希釈するために一般に使用される希釈液/希釈剤、たとえばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を用いて実行することができる。ただし、他の溶液、たとえば、細胞と、希釈された試料のさらなる成分との間の光学的「コントラスト」を上げるために、一方で細胞間の、他方でさらなる血液試料と媒体との間の、回折指数の変化、特に上昇につながる媒体も、希釈のために使用できる。一例には、たとえば、溶液へのファストグリーンFCFの使用があり、その適切な濃度は、たとえば、20mmolから30mmolでよく、この濃度はたとえば、適切に適合されたPBS溶液に利用でき、特に、希釈溶液、たとえば緩衝溶液のオスモル濃度を考慮しなければならない(たとえば、成人および小児:275~296mosmol/kg HO;乳幼児260~275mosmol/kgHO)。
【0052】
血液試料の希釈は、当業者によって、たとえば流体チャネルの寸法に応じて適切に実行でき、当業者は、単純な計算に基づいて希釈度を適切に選択できる。たとえば、長さ10から40mm、断面100μm×2000μmの矩形の流体チャネルの場合、単層を実現するために、たとえば、やはりヘマトクリットまたは患者の症状にそれぞれ応じて、PBS溶液による1:100から1:400の希釈度が適切である可能性がある。単層の形成が主にチャネルの高さに左右されるマイクロチャネルについて簡単に推定すると、単層は、単に、チャネルの高さ(μm)に1から4を乗じることで:計算できる希釈度を用いて適切に実現することもできる。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、工程b1-ii)または工程b2-ii b)で導入される血液試料の第1および/または第2の部分の希釈度は、水溶液で、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で、特に、蒸留水にNaCl濃度137mmol/L、KCl濃度2.7mmol/L、NaHPO濃度10mmol/L、KHPO濃度1.8mmol/Lを有する溶液で、少なくとも1:40、たとえば少なくとも1:50、たとえば少なくとも1:70、たとえば少なくとも1:100、たとえば少なくとも1:400である。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、工程a-ii)で導入される血液試料の第1の部分も、たとえば、水溶液、特にPBS溶液で希釈される。いくつかの実施形態によれば、工程a-ii)で導入される血液試料の第1の部分に関する希釈度は、水溶液で、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で、特に、蒸留水にNaCl濃度137mmol/L、KCl濃度2.7mmol/L、NaHPO濃度10mmol/L、KHPO濃度1.8mmol/Lを有する溶液で、少なくとも1:40、たとえば少なくとも1:50、たとえば少なくとも1:70、たとえば1:100、たとえば少なくとも1:400である。
【0055】
希釈が実行される場合、いくつかの実施形態によれば、分析工程で純粋な希釈液を用いて基準測定も行われ、そのため、希釈液の影響を考慮でき、分析において適切な計算を用いて取り除くことができる。
【0056】
さらに、工程a-iii)で、流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることは特に限定されていない。これは、フローによって、たとえば、混合要素などを用いたシースフローもしくは平行フローをたとえば使用するか、もしくは停止フローにおいて、および/または、たとえば音響浮揚(acoustophoresis)のような細胞フォーカシング手段を用いた、フローによって、好ましくは停止フローにおいて、たとえば、さらなる血漿などから細胞を適切に分離することによって行うことができる。フローが提供される場合、フローは、たとえば、それぞれの導入要素、たとえば第1の導入要素によって提供できる。フォーカシングするために、適切なフォーカシングユニット、たとえば、別個の平行導入要素および混合要素、たとえば構造、サイドフローなどを有する平行な進入ポートおよび退出ポートを含む、たとえば、シースフローもしくは平行フローを提供するためのユニット、または、たとえば、血液試料の内側で超音波の音響定在波を生成するように構成された、たとえば流体チャネルの外面に適切に接合された音響トランスデューサを含む音響浮揚デバイスを提供することができる。特に、音響浮揚を用いると、適切なフォーカシングが可能になり、工程a-iv)で細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域への細胞の出現を最小限に抑えることができる。その場合の適切なフォーカシングレベルは、たとえば流体チャネルの寸法に応じて当業者が設定できる。一定のエネルギー入力を超過しているか、または一定の周波数からそれぞれ開始するときは、細胞は溶解し始め、動くだけではなくなる。たとえば、断面が100μm×2000μmのマイクロ流体チャネルでは、細胞のフォーカシングは、341kHzおよび25Vpp(ピークツーピーク電圧)の正弦波励起で実現され、361kHzおよび50Vppの正弦波励起で、細胞の溶解が始まる。
【0057】
ただし、流体チャネルの内側でフォーカシング領域の外側の領域に細胞が存在することは除外されないが、好ましくは、流体チャネルの内側で、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域に少なくとも1つの無細胞領域が生成される。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞をフォーカシングすることは、音響浮揚を用いて実行される。そのために、たとえば、特にモノリシック構造を形成するように試料ベッセルの外面に接合された、音響トランスデューサを含む音響デバイスを使用でき、音響トランスデューサは、たとえば20kHzから20MHzの周波数を含む、たとえば超音波、マイクロチャネル内の血液試料の内側で音響定在波を生成するように構成されている。そこでは、たとえば、Grenvall,C.(2014)、Acoustic Forces in Cytometry and Biomedical Applications:Multidimensional Acoustophoresis、Department of Biomedical Engineering、Lund university;Petersson,C.ら、Acoustofluidic hematocrit determination、Analytica Chimica Acta、Volume 1000、2018、199~204頁によって記載されているように、音響浮揚は、細胞サイズの対象物を動かして、超音波に生成された定在波の節に入れることを実現できる。それらの文献は、音響浮揚を用いて対象物、特に細胞を動かすことに関して、両方とも本明細書に組み入れる。
【0059】
流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞がフォーカシングされる領域は、特に限定されていないが、工程a-iii)が停止フローにおいて実行されるか否かに関係なく、好ましくは、工程a-ii)で導入されるフローに対して、工程a-iv)での分析に使用される細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域の上流にあり、すなわち、血液試料の第1の部分が流体チャネル中に導入される注入領域のより近くにある。
【0060】
たとえば、流体チャネルの内側で定在波を用いた音響浮揚によって実行できるような、流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞がフォーカシングされる領域が、流体チャネルの内側で2つ以上作成されることは除外されない。
【0061】
音響トランスデューサは、流体チャネルの内側で音響力を選択的に生成することができ、音響力は、たとえばその表面、たとえば適切な試料ベッセルの内側の壁に向けられる。音響トランスデューサは、血液試料のさらなる成分、特に血漿、および損傷した血液細胞から、好ましくは損傷していない血液細胞の分離を容易にするような音響力の振幅および/または周波数を提供するように調整できる。音響トランスデューサによって生成される音響力の振幅および/または周波数は、適切に選択でき、たとえば、流体チャネルのサイズ形状および/または血液試料の組成に応じて変わる。音響トランスデューサは、特に限定されておらず、たとえば、圧電素子とすることができ、たとえば、音響トランスデューサは、圧電超音波トランスデューサでよい。
【0062】
音響トランスデューサを含む音響浮揚デバイスが使用される場合は、試料ベッセルのうちの少なくとも流体チャネルの周囲の部分が、音響トランスデューサによって生成される音響波が伝搬できる材料、たとえば、ガラス、結晶性材料などから構成されることが好ましい。他の領域では、試料ベッセルに他の材料を使用できる。
【0063】
流体チャネルの内側で定在波が生成されるときは、定在波によって、血液細胞が内側で、音響定在波の節が形成される流体チャネルの少なくとも1つの領域に動く。もちろん、音響定在波によっては、血液細胞は、たとえば音響定在波の節の数に応じて2つ以上の領域に集中することもできる。そのときに、血液細胞が集中している領域の外側の他の領域では、血液細胞が実質的にないか、または血液細胞をなくすことができ、すなわち無細胞領域を形成することができる。次いで、そのような領域において、血液試料の第1の部分のさらなる成分の分析が可能になる。
【0064】
流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングするという例示的な工程a-iii)が図7に示されている。この工程は事前分析工程である。その工程において、図7に例示的に示されているように、血液試料11cの導入される第1の部分の内側で血液細胞のフローを音響定在波12aによって流体チャネルの1つの領域12bにフォーカシングすることによって、流体チャネル10のあるエリアが赤血球なしで作成される。その結果、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、つまり、図7に示されている分析のための適切なスポット13cが生じ、そこで、工程a-iv)の分析を実行できる。図7から分かるように、流体チャネルにおける血液試料の第1の部分の分析が、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で実行される限り、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域全体が工程a-iv)の分析のために使用される必要はない(細胞がフォーカシングされていない、工程a-iv)の分析も実行されていない領域の可能性が残される)。
【0065】
本方法において、さらに、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることという工程a-iv)は、特に限定されていない。細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域は、特に限定されていないが、好ましくは、導入位置から見たときに、細胞がフォーカシングされている領域よりも下流である。特に、その領域は、赤血球、特に血液細胞が血液試料の少なくとも1つの特性wの測定に影響し得るため、それらが存在しないように選択される。たとえば、幅2000μmのマイクロチャネルにおいて、そのようなエリアは、設定に応じて、両側で最大500μmの幅を含むことができる。ただし、測定に悪影響を及ぼさない場合には、その領域に数個の細胞、たとえば、10個未満の細胞、好ましくは、5個未満の細胞、特に、2個以下の細胞、もしくはそれどころか細胞1個だけが存在すること、および/または少なくとも赤血球が存在しないことは除外されない。測定領域に離れた細胞が存在する場合は、当業者に知られている適切な計算を用いてそれらを適切に差し引くことができる。
【0066】
工程a-iv)の分析において、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つ、好ましくは、それらのうちの少なくとも2つ、たとえば、細胞外ヘモグロビン含有量xおよび細胞外脂質含有量y、特に、3つすべて、すなわち、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzを測定することが好ましい。ただし、血液試料の第1の部分のさらなる特性、たとえば、ビリルビン含有量および/または尿素が、UV領域における測定を用いて測定されることは除外されない。
【0067】
血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの測定は、任意の適切な測定方法を用いて行うことができる。たとえば、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xおよび細胞外脂質含有量yのうちの少なくとも1つだけでなく、たとえばビリルビン含有量も、分光法を用いて行うことができ、その分光法は、特に限定されるものではないが、たとえばUV-Vis分光法である。たとえば、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、およびビリルビンに関する値は、それぞれ約410nm、約630nm、および約450nmで、吸収測定を用いて取得でき、次いで、それぞれの含有量を適切に計算することができる。血餅の最大長さzの測定も特に限定されておらず、たとえば、撮像、たとえば顕微鏡法を用いて行うことができる。いくつかの実施形態によれば、工程a-iv)で、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析することは、分光法および/または顕微鏡法を用いて実行される。測定は、いくつかの実施形態によれば、工程a-iv)で、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析するように構成された第1の分析ユニット、たとえば、顕微鏡および/または分光計、たとえばUV-Vis分光計を用いる、本発明の血液試料を分析するためのデバイスにおいて実行することができる。
【0068】
この点において、同じ分析方法が、後続の工程で、たとえば、b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと、b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと、b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、という工程のうちの1つまたはそれ以上でも使用されることも除外されないが、これらの工程については、異なる分析方法および/または分析構成要素を使用することもできる。流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域での血液試料の第1の部分の分析は、上記で説明したように図7にも、分析のための適切なスポット13cに例示的に示されている。
【0069】
したがって、特に、細胞がない、特に赤血球がない領域において、脂質、ヘモグロビン、および他の血漿成分の異なる吸光係数を考慮した異なる波長の光の透過率の測定、ならびに/または血餅のような血液成分の顕微鏡撮像を実行でき、細胞外ヘモグロビンおよび/または脂質濃度および/または血餅の最大長さを導き出すことができる。
【0070】
本発明の血液試料を分析する方法において、血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることという工程a-v)も、特に限定されておらず、自動的に出力することは、どの位置でも、たとえば、血液試料を分析するためのデバイス、特に、本発明によるデバイスの上および/もしくは近くで、ならびに/または遠隔位置で、たとえば、医療従事者のモニタなどで行うことができる。
【0071】
自動的に出力することは、本明細書では、血液試料の少なくとも1つの特性wが基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/または細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/または血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合に、適切なマーカ、たとえば任意の色のフラグを用いて、血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を提供することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることも含む。
【0072】
やはり異なるマーカ、たとえば、測定結果に応じて異なるフラグおよび/または異なる色を使用すること、たとえば、血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値、たとえばw1を上回り、かつ基準値の2倍、たとえば2×w1以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回り、かつ300mg/dL以下であり、特に、200mg/dL以下である、および/または、細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回り、かつ1200mg/dL以下であり、特に、800mg/dL以下である、および/または、血餅の最大長さzが20μmよりも大きく、かつ40μm以下であり、特に、25μm以下である場合には、黄色のマーカ、たとえば黄色のフラグを使用し、血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値の2倍、たとえば2×w1を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値300mg/dLを上回る、および/または細胞外脂質含有量yの結果が値1200mg/dLを上回る、および/または血餅の最大長さzが40μmを上回る場合には、異なるマーカ、たとえば赤色のマーカ、たとえば赤色のフラグを使用することは除外されない。そのような場合、中間の値に関しては、たとえば、血液試料の少なくとも1つの特性wの値が値w2(w2>w1)以上かつ基準値の2倍、たとえば2×w1未満である場合に、たとえば、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値200mg/dLを上回り、かつ値300mg/dL以下である、および/または、細胞外脂質含有量yの結果が値800mg/dLを上回り、かつ値1200mg/dL以下である、および/または、血餅の最大長さzが25μmよりも大きく、かつ40μm以下である場合には、たとえば、橙色のマーカ、たとえば橙色のフラグを使用できる。血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には、マーカ、たとえばフラグを示す必要はないが、マーカ、たとえば緑色のマーカ、たとえば緑色のフラグを示すことも除外されない。
【0073】
マーカ、たとえばフラグが示される場合、いくつかの場合には、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析するという工程a-iv)のときに、またはそのすぐ後に、血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果をすぐに示す必要もなく、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれる。そのような場合の予備結果は、後工程、たとえば、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析するという工程b1-iv)および/もしくは少なくとも溶解した赤血球を分析するという工程b1-vi)の結果を好ましくは自動的に出力するという任意選択の工程b1-vii);ならびに/または、結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力するという工程b2-vii b)に含むこともできる、および/もしくはそれと同時に実行できる、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析するという工程b2-iv b)および/もしくは少なくとも溶解した赤血球を分析するという工程b2-vi b)の結果を好ましくは自動的に出力するという任意選択の工程b2-viii b)におけるさらなる結果と一緒に示してもよく;ならびに/または、予備結果は、血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力するという工程b2-ii a)、もしくは結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力するという工程b2-vii b)で示してよい。
【0074】
記載されているように、工程a-v)の後に、工程b1-i)からb1-vi)および場合によりさらなる工程、たとえば工程b1-vii);工程b2-i a)およびb2-ii a)ならびに場合によりさらなる工程;または工程b2-i b)からb2-vii b)および場合によりさらなる工程、たとえば工程b2-viii b)、のいずれかが実行される。
【0075】
これらの工程のすべてにおいて、最初の工程、すなわち工程b1-i)、b2-i a)、およびb2-i b)は、血液試料の第1の部分を流体チャネルから流すことを伴う。それらの工程のいずれかにおける流すこととは、同じであっても異なっていてもよく、特に限定されていない。流すことは、任意の適切な液体および/または気体、特に液体、たとえば蒸留水;血液試料を希釈するために一般に使用される希釈液/希釈剤、たとえばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、またはたとえば上記で言及したそれ以外のもの;たとえば上記のように希釈することもできる血液試料のさらなる部分、または別の適切な液体を用いて行うことができる。血液試料のさらなる部分を用いて流すことが特に好ましく、そのさらなる部分は、希釈することもでき、血液試料の第1および/または第2の部分と同じ組成を有し、そのため、たとえば希釈の影響による不確実性の発生源をさらに最小限に抑えることができる。いくつかの実施形態によれば、流すことは、たとえば、血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するように構成されており、そのうえチャネルを流すようにも構成されている、第1の導入要素;流体チャネル中に血液試料の第2の部分を導入するように構成されており、そのうえチャネルを流すようにも構成されている、第2の導入要素;または流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すように構成されている、さらなる別個のフラッシング要素を用いて実行でき、それらはすべて、本発明の血液試料を分析するためのデバイスの一部分とすることができる。
【0076】
流す量は特に限定されていない。通常、流体チャネルの体積の少なくとも5倍の量、および/または特にマイクロチャネルの場合は流体チャネルの体積の最大20倍もしくは少なくとも最大10倍が使用される。
【0077】
次いで、結果によっては、第1の変形例と第3の変形例とは、以下で詳細に論じる以下の工程において非常に似ている。
【0078】
第1の変形例における、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するという工程b1-ii)と、第3の変形例における、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するという工程b2-ii b)は、同じであっても異なっていてもよく、特に限定されていない。血液試料の第2の部分は、血液試料の第1の部分と同様に、希釈しても希釈していなくてもよく、好ましくは、希釈される。血液試料の第2の部分の希釈は、第1の血液試料の希釈と同じとすることができ、すなわち、希釈は、血液試料を希釈するために一般に使用される希釈液/希釈剤、たとえばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を用いて実行でき、やはり他の溶液、たとえば、細胞と、希釈された試料のさらなる成分との間の光学的「コントラスト」を上げるために、一方で細胞間の、他方でさらなる血液試料と媒体との間の、回折指数の変化、特に上昇につながる媒体も、希釈のために使用できる。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、工程b1-ii)または工程b2-ii b)で導入される血液試料の第2の部分に関する希釈度は、水溶液で、特にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液で、特に、蒸留水にNaCl濃度137mmol/L、KCl濃度2.7mmol/L、NaHPO濃度10mmol/L、KHPO濃度1.8mmol/Lを有する溶液で、少なくとも1:40、たとえば少なくとも1:50、たとえば少なくとも1:70、たとえば1:100である。
【0080】
血液試料の第2の部分の導入は、血液試料の第1の部分と同じ導入要素でまたは異なる導入要素で行うことができ、たとえば、血液試料の第2の部分も流体チャネル中に導入するように構成された、本発明のデバイスの第1の導入要素によって、または血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するように構成された第2の導入要素によって行うことができる。上記で論じたように、血液試料の第2の部分は、シリンジまたは同様のデバイス、リザーバから、たとえば、やはりチップ上、たとえば、やはり流体チャネルを含むマイクロチップ上などに、チューブ、別個のチャネルなどを介して、ポンプ、シリンジを押圧するための自動デバイスなどを用いて導入することができる。そのときに、チューブを有するシリンジ、たとえばチューブおよびポンプを内部に有するリザーバなどが、第2の導入要素を形成することができる。
【0081】
第1の変形例における、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させるという工程b1-iii)と、第3の変形例における、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させるという工程b2-iii b)とは、同じであっても異なっていてもよく、特に限定されていない。特に、少なくとも赤血球は沈殿する。細胞の沈殿は、たとえば、停止フローにおいて、すなわち、フローを停止して、流体チャネルの少なくとも1つの表面に細胞を沈殿させることによって実行できる。しかし、沈殿は、任意の他の手法で、たとえば、工程a-iii)にあるように細胞をフォーカシングすることによって行うこともできる。
【0082】
さらに、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析するという、第1の変形例の工程b1-iv)と、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析するという、第3の変形例の工程b2-iv b)とは、特に限定されておらず、両方の工程が、同じであっても異なっていてもよい。第1の変形例において、好ましくは工程b1-iv)が実行され、第3の変形例において、好ましくは工程b2-iv b)が実行される。沈殿した細胞を分析することは、適切な測定方法、たとえば分光法および/または顕微鏡法を用いて行うことができる。第1の変形例の工程b1-iv)および第3の変形例の工程b2-iv b)は、いくつかの実施形態によれば、本発明の血液試料を分析するためのデバイスにおいて血液試料の細胞および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物を分析するように構成され、工程a-iv)で細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分も分析するように構成されている、少なくとも第1の分析ユニット、ならびに/または、血液試料の細胞および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物を分析するように構成されている、少なくとも第2の分析ユニットによって実行することができる。少なくとも第1の分析ユニットおよび少なくとも第2の分析ユニットの両方が存在する場合、それらは、同じタイプのものおよび/または異なるタイプのものとすることができ、流体チャネルの同じ位置で、または異なる位置で、血液試料の第1および第2の部分をそれぞれ分析することができる。
【0083】
沈殿した細胞を分析することは、特に限定されておらず、たとえば細胞の種類、細胞の体積、特に赤血球(RBC)の体積、および/または細胞内ヘモグロビンを判定するために、細胞分析のための通常の方法、たとえば顕微鏡法および/または分光法を用いて行うことができる。したがって、たとえば、第1および/または第2の分析ユニットは、顕微鏡および/または分光器、たとえばUV-Vis分光器を含むことができる。
【0084】
それらの分析工程b1-iv)およびb2-iv b)では、チューブを動かすことまたは新たな試料の吸引の必要なしに同じ流体チャネルにおいて、血液パラメータを任意の顕微鏡法または好適な局在分光法による血液細胞の光学的読取り値によって判定することができる。細胞内の定量値は、たとえば、細胞内ヘモグロビンおよびヘマトクリット/RBC数(標準的血液分析の一部をなす)を判定することができる。
【0085】
それらの工程のための例示的な設定が、例示的なマイクロチャネル10’を進入ポート10’aおよび退出ポート10’bを有する流体チャネルとして示す図8に示されている。図では、顕微鏡によって観測される血液細胞分析のためのスポット13dが示されており、これは適切な出力インターフェース、たとえばコンピュータのスクリーン14’を用いて視覚化できる。
【0086】
沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させるという第1の変形例の工程b1-v)と、沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させるという第3の変形例の工程b2-v b)とは、やはり同じであっても異なっていてもよく、特に限定されていない。そこでは、他の細胞も同様に溶解されることは除外されないが、たとえば血液試料中の総ヘモグロビンの分析を実現できるため、少なくとも赤血球は溶解される。
【0087】
溶解させることは、たとえば適切なせん断力を細胞に加えることによって、および/または細胞溶解に適切な薬剤、たとえば、塩化アンモニウム緩衝溶液をかけ、たとえば、細胞を沈殿させる際に加えられるさらなるフローを用いることによって行うことができる。たとえば、沈殿した細胞が何らかの形で、たとえば流体チャネルの内側の構造を用いて、または他の手法で、流体チャネルに固定されている場合に、フローを通してせん断力を加えることもでき得、いくつかの実施形態によれば、少なくとも赤血球を溶解させることは、超音波を用いて実行される。そのために、特にモノリシック構造を形成するように試料ベッセルの外面に接合された、たとえば音響トランスデューサを含む音響浮揚デバイスを使用でき、音響トランスデューサは、流体チャネル、たとえばマイクロチャネル内で、血液試料の内側で超音波音響定在波を生成するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、音響トランスデューサは圧電超音波トランスデューサである。
【0088】
第1の変形例の工程b1-v)および第3の変形例の工程b2-v b)については、いくつかの実施形態によれば、たとえば音響トランスデューサを含む、工程a-iii)と同じ音響浮揚デバイスを使用できるが、細胞を溶解させるために使用される周波数が異なり、その周波数は、当業者が適切に選択できる、および/または当業者が利用できるソフトウェアと接続されたハードウェアから自動的に取得できる。上記で述べたように、たとえば、断面が100μm×2000μmのマイクロ流体チャネルでは、細胞をフォーカシングすることは、341kHzおよび25Vppの正弦波励起で実現され、361kHzおよび50Vppの正弦波励起で、細胞の溶解が始まる。
【0089】
そのために、デバイスはコントローラを含んでもよく、コントローラは、適切な音響波、たとえば超音波が、第1の変形例の工程a-iii)および工程b1-v)ならびに第3の変形例の工程b2-v b)で利用されるように、音響浮揚デバイスを制御するように構成されている。ただし、第1の変形例の工程b1-v)および第3の変形例の工程b2-v b)において、工程a-iii)とは異なるさらなる(第2の)音響浮揚デバイスが使用されることは除外されない。
【0090】
たとえば音響トランスデューサを含む、音響浮揚デバイスは、試料ベッセルを曲げ、そうすることで、流体チャネル、たとえばマイクロチャネル内でせん断力が誘発され、音響定在波およびせん断力が血液試料にキャビテーションを引き起こし、その結果、血液試料の細胞壁が破られるように構成できる。たとえば、流体チャネル、たとえばマイクロチャネルを含む試料ベッセルがガラスから作られ、マイクロチャネルが幅約2ミリメートル、アスペクト比0.05から0.125であり、試料ベッセルが幅約12ミリメートル、アスペクト比1.4から1.9であるときに、音響トランスデューサは、マイクロチャネル内のピーク圧力が5MPa、ピーク速度が最大8m/sの、330kHzから350kHzの範囲の超音波を生成するように構成することができる。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも赤血球を溶解させることは、停止フローにおいて実行される。これは、後の分析のために溶解ならびに溶解生成物の良好な制御を可能にする。追加的に、結果に影響を及ぼす、たとえばヘモグロビン値(Hb値)を上昇させる可能性がある、さらなる細胞の流込みも避けることができる。
【0092】
工程a-iii)で事前分析において細胞の分離ために使用されるものと同じ音響浮揚デバイスに対して異なる設定を利用する、たとえば超音波振動を用いる例示的な細胞溶解が図9に示されており、血液試料11cの第2の部分を流体チャネル10に導入し、細胞が沈殿したとき(図示せず)に、溶解ユニット16、たとえば、少なくとも赤血球を溶解させるための音響浮揚デバイスによって、音響定在波が生成される。
【0093】
少なくとも溶解した赤血球を分析するという、第1の変形例の工程b1-vi)と、少なくとも溶解した赤血球を分析するという、第3の変形例の工程b2-vi b)とは、同じであっても異なっていてもよく、特に限定されていない。分析は、たとえば波長約410nmで、たとえば総ヘモグロビン含有量を測定する、工程a-iv)のものと同じデバイス、たとえば分光計、たとえばUV-Vis分光計、または異なるデバイス、たとえば異なる分光計を用いて実行することができる。したがって、たとえば、工程a-iv)の事前分析のものと同じ光透過法を用いて、判定を行うことができる。溶解の後に、特に、適切な計算を用いて、たとえば総ヘモグロビンを判定することができる。
【0094】
工程b1-vi)およびb2-vi b)は、以前の結果の検証も可能にするため、事後分析工程と見なすことができる。分析工程および事後分析工程において、関係するパラメータに関する合計値(細胞内および細胞外)は、同じ試料の連続した流入において、または分析工程で利用される停止フローにおいて細胞を使用して、チューブのようなさらなる手段を動かすことまたは新たな試料の吸引の必要なしに、同じ流体チャネル内で、たとえば同じ試料ベッセル、たとえば流体セルの内側で、溶解の前および/または後に判定することができる。
【0095】
したがって、いくつかの実施形態によれば、血液試料の第1の部分および血液試料の第2の部分は、たとえば、流体チャネルを流すためにそれらの間で流される血液試料のさらなる部分も用いて連続して流すことができる。ただし、少なくとも血液試料の第2の部分について、ある瞬間に、たとえば少なくとも赤血球の沈殿中には、少なくとも停止フローが好ましい。
【0096】
第1の変形例の工程b1-vi)の後に、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析するという工程b1-iv)および/または少なくとも溶解した赤血球を分析するという工程b1-vi)の結果を、好ましくは自動的に出力するという任意選択の工程b1-vii)が続くことができる。このような結果を出力することは、特に限定されておらず、出力することは、たとえば、工程a-v)と一緒に、すなわち、工程a-v)を工程b1-vi)の後にして、または別々に行うこともできる。
【0097】
結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力するという、第3の変形例の工程b2-vii b)は、特に限定されておらず、工程a-v)に関して既に論じたように、任意の手法で、たとえば適切なマーカ、たとえばフラグ、たとえば黄色または橙色のフラグを用いて、インジケーションを行うことができる。第3の変形例の結果が必ずしも誤っていると考えられるわけではなく、血液試料の少なくとも1つの特性wの値が高いこと、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xおよび/または細胞外脂質含有量yおよび/または血餅の最大長さzが大き過ぎる血餅の存在の結果のうちの少なくとも1つが高いことは、血液試料にいくつかの問題が少なくとも存在する可能性があることと、異なる試料を用いて少なくとも検証することが有利であることとを示している。いずれにしても、第3の変形例において、血液試料の第2の部分の分析結果と共に、血液試料の第1の部分を分析する値を保存し提供することができ、試料が誤っている、たとえば、干渉が高過ぎる可能性があること示す。第3の変形例(変形例3)において、工程b2-vii b)と一緒にまたはその後に、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析するという工程b2-iv b)および/または少なくとも溶解した赤血球を分析するという工程b2-vi b)の結果を、好ましくは自動的に出力するという任意選択の工程b2-viii b)を実行することもでき、そのことは特に限定されていない。やはり、この出力することは、工程a-v)と一緒に実行することもでき、すなわち、工程a-v)が工程b2-vi b)の後に実行される。
【0098】
第2の変形例(変形例2)において、血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力するという工程b2-ii a)は、特に限定されていない。第2の変形例において、血液試料の第1の部分の分析結果、たとえば、所与の一定の調節可能な設定パラメータは、試料の試験を終了できることを示し、干渉が高過ぎるときに試料を戻すことができる。
【0099】
第1の変形例(変形例1)では、工程b1-v)の後に、たとえば、工程b1-vi)および/もしくは工程b1-vii)と一緒にもしくはその後に;または
第2の変形例では、工程b2-ii a)の後に;または
第3の変形例では、工程b2-v b)の後に、たとえば、工程b2-vi b)および/もしくは工程b2-vii b)と一緒にもしくはその後に、いくつかの実施形態によれば、流体チャネルから血液試料の第2の部分を流すという工程が少なくとも続くことができ、この流すことは特に限定されていない。新たな測定に備えて流体チャネルを準備するために、中性の液体、たとえば蒸留水、および/またはクリーニングガス、たとえば空気またはさらに好ましくは窒素のような不活性ガスで、流体チャネルを流すことが好ましい。いくつかの実施形態によれば、損傷などによる汚損後に使用不能と考えられる場合には、たとえば、フォーカシングする、分析する、および/または溶解させるためのユニットならびにたとえば導入要素を着脱した後に、流体チャネル、たとえば適切な試料ベッセル内の流体チャネルを廃棄することもできる。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、本方法はさらに、上記で論じたように、適切な溶媒および/または溶液で、たとえば血液試料のさらなる部分で、工程a-iv)の分析の後に流体チャネルを洗うことを含む。これは、図4に概略的に示されており、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析する4という工程a-iv)の後に、流体チャネルを洗う工程4’が続く。その工程は、工程5と同時にまたはその後に実行することもできるが、好ましくは、工程5の前に実行される。
【0101】
本明細書で提示されている、特に本方法の第1および第3の変形例に関する、本方法の統合型のワークフローは、大幅な追加費用を投入せずに、試験に余分にかかる時間は比較的短く抑えて、分析にフラグを立てる(第3の変形例)か、または分析を終了する(第2の変形例)という選択肢を有する事前分析パラメータと、値を検証し、さらなる試料情報を提供するための事後分析制御とを提供することができる。
【0102】
第2の態様では、本発明は、血液試料を分析するためのデバイスに関し、デバイスは、
- 流体チャネルと;
- 血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するように構成された、第1の導入要素と;
- 流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの所定の領域にフォーカシングするように構成された、フォーカシングユニットと;
- 血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することを含む、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析するように構成された、少なくとも第1の分析ユニットと;
- 血液試料の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力するように構成された、出力インターフェースとを含み、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれ、
デバイスはさらに、
- 血液試料の少なくとも1つの特性wの測定結果を基準値と比較する、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを、それぞれ細胞外ヘモグロビン含有量の基準値150mg/dL、細胞外脂質含有量の基準値600mg/dL、および血餅の最大長さの基準値20μmと比較するように構成された、判定モジュール
を含み、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が基準値150mg/dL以下である、および/もしくは、細胞外脂質含有量yの結果が基準値600mg/dL以下である、および/もしくは、血餅の最大長さzが20μm以下である場合には、判定モジュールは、血液試料の第2の部分を測定できるというインジケーションを出力インターフェースにおいて提供するように構成されているか、もしくはインジケーションを出力インターフェースにおいて提供しないように構成されているか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が基準値150mg/dLを上回る、および/もしくは、細胞外脂質含有量yの結果が基準値600mg/dLを上回る、および/もしくは、血餅の最大長さzが20μmを上回る場合には、判定モジュールは、血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるか、もしくは結果が誤っている可能性があるというインジケーションを出力インターフェースにおいて提供するように構成されており;
さらに、デバイスは、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するように構成された第2の導入要素を含むか、もしくは第1の導入要素がさらに、血液試料の第2の部分も流体チャネル中に導入するように構成されており;
さらに、デバイスは、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成された溶解ユニットを含むか;もしくは、フォーカシングユニットがさらに、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成されている。
【0103】
第2の態様の血液試料を分析するためのデバイスを用いて、特に、第1の態様の血液試料を分析する方法を実行することができる。したがって、上記で第1の態様の方法に関して説明した実施形態および実装形態も、第2の態様のデバイスに適用可能でよく、その逆も同様である。
【0104】
デバイスにおいて、流体チャネルは、本方法に関して記載されているように設定することができる。流体チャネルは、血液試料がその中を通って流れ得る内面を有する構造を含む限り、特に限定されておらず、その構造は、導入される血液試料を収容するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、流体チャネルは、流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析し、場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析し、および/または少なくとも溶解した赤血球を分析するために、たとえば分光分析および/または顕微鏡分析のために適切な透過率を有する、血液試料の分析のための適切な材料、たとえばガラスおよび/または適切なポリマー樹脂から作られた、特に、適切な試料ベッセル内のマイクロチャネルである。代替的に、流体チャネルは、パイプなどとすることもできるが、好ましくは、細胞をフォーカシングするおよび/もしくは沈殿させるための、ならびに/または分析を簡単にするための、少なくとも2つの平行な内面および外面を含む。好ましい実施形態によれば、流体チャネルは、適切な試料ベッセル内の、たとえばガラス、プラスチックなどから作られた、たとえばチップの内側の、マイクロチャネルである。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、適切な試料ベッセルは、第1のポートを通して血液試料の一部分をマイクロチャネル中に導入でき、それを第2のポートから流すことができるように、外面と、外面の範囲内の流体チャネル、たとえばマイクロチャネルと、外面を通ってマイクロチャネルまで延びる第1のポートと、外面を通ってマイクロチャネルまで延びる第2のポートとを有する。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、流体チャネル、特にマイクロチャネルは、ある長さ、ある幅、およびある高さを有し、好ましくは、幅と高さのアスペクト比が約0.04から約0.175の範囲にあり、および/または試料ベッセルは、ある幅およびある高さを有し、試料ベッセルの幅と高さのアスペクト比が約0.5から約3.0の範囲にある。いくつかの実施形態によれば、流体チャネルは、高さが5μmおよび500μmを含む5μmから500μmの間にあり、好ましくは、10μmおよび200μmを含む10μmから200μmの間にあり、さらに好ましくは、50μmおよび100μmを含む50μmから100μmの間にある、マイクロチャネルである。
【0107】
さらに、血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するように構成された第1の導入要素も、特に限定されておらず、たとえば、シリンジもしくは同様のデバイス、リザーバ、たとえば、やはりチップ、たとえば、やはり流体チャネルを含むマイクロチップなど、チューブ、別個のチャネルなど、ポンプ、シリンジを押圧するための自動デバイスなど、またはそれらの組合せを含むことができる。たとえば、チューブを有するシリンジ、たとえばチューブおよびポンプを有するリザーバなどが、第1の導入要素を形成することができる。
【0108】
さらに、存在する場合は、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するように構成された第2の導入要素も、特に限定されておらず、たとえば、シリンジもしくは同様のデバイス、リザーバ、たとえば、やはりチップ、たとえば、やはり流体チャネルを含むマイクロチップなど、チューブ、別個のチャネルなど、ポンプ、シリンジを押圧するための自動デバイスなど、またはそれらの組合せを含むこともできる。たとえば、チューブを有するシリンジ、たとえばチューブおよびポンプを有するリザーバなどが、第2の導入要素を形成することができる。
【0109】
代替的に、もちろん、同じ第1の導入要素を用いて血液試料の第1および第2の部分を導入する、すなわち、第1の導入要素がさらに、やはり血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するように構成されることも可能であり、いくつかの実施形態によれば好ましい。そのような場合に、血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入するという工程で、第1の導入要素、たとえばシリンジまたはリザーバの少なくとも一部分に少なくとも第2の部分を維持しながら、第1の部分を第1の導入要素によって導入できる。次いで、血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入するという工程で、たとえば、第1の部分を導入するために使用されたものと同じ機構、たとえば、シリンジに対する圧力、リザーバからのポンプ輸送などを用いて、血液試料の第2の部分が後から導入される。
【0110】
いくつかの実施形態によれば、血液試料は、チャネル中に、好ましくは光学読出し装置を用いてポンプ輸送される。光学読出し装置によって、適切な量の血液試料だけを導入することが可能になる。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、流体チャネルは、少なくとも出口を含み、その出口を通して、血液試料の第1の部分、および場合により第2の部分、ならびに場合により流す、洗うなどのためのさらなる媒体が流体チャネルから退出でき、その少なくとも1つの出口は特に限定されていない。
【0112】
デバイスにおいて、流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの所定の領域にフォーカシングするように構成されたフォーカシングユニットも、特に限定されておらず、たとえば、第2の導入チャネルなどのような、たとえばシースフローを確立するさらなる流体手段、血液試料の第1の部分のフローを分離するような、流体チャネルの内側の工夫、および/または、たとえば音響波を用いる外部ユニットを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、フォーカシングユニットは、特に音響トランスデューサを含む、音響浮揚デバイスである。いくつかの実施形態によれば、音響トランスデューサは、圧電超音波トランスデューサであり、好ましい実施形態のさらなる詳細もやはり上記で本方法に関連して示されている。
【0113】
さらに、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することを含む、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析するように構成された、少なくとも第1の分析ユニットは、特に限定されておらず、血液成分の定量的な測定を可能にする任意の分析デバイスとすることができる。
【0114】
上記で説明したように、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xおよび細胞外脂質含有量yのうちの少なくとも1つだけではなく、たとえばビリルビン含有量も、分光法を用いて、特に限定されていないが、たとえばUV-Vis分光法を用いて測定でき、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、およびビリルビンに関する値は、それぞれ約410nm、約630nm、および約450nmで、吸収測定を用いて取得できる。したがって、少なくとも第1の分析ユニットは、特に400から700nmの波長の範囲にある、UV-Visの範囲(波長200~800nm)で測定を行うように構成された、分光計、たとえばUV-Vis分光計を含んでよい。いくつかの実施形態によれば、例示的な第1および/または第2の分析ユニットは、分光計、たとえば吸光分光計、たとえば分光光度計を含んでよく、分光計は、流体チャネルまたは流体チャネルを含む試料ベッセルに隣接して位置する送信機および受信機を含み、送信機は、流体チャネル、たとえばマイクロチャネルを通して光媒体を発生させるように位置し、受信機は、光媒体の一部分がマイクロチャネルを通った後に、光媒体の少なくとも一部分を受信するように位置する。
【0115】
血餅の最大長さzの測定は、たとえば、撮像法、たとえば顕微鏡法を用いて行うことができ、そのため、少なくとも第1の分析ユニットは、撮像デバイス、たとえば顕微鏡、適切なカメラ、および/またはリニアフォトダイオードアレイを含んでよい。第1の分析ユニットは、統合型のデバイス、たとえば、測定を異なる波長で実行できるような適切なフィルタおよび/またはLEDなどを含む顕微鏡とすることもできる。
【0116】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも第1の分析ユニットは、血液試料の細胞および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物も分析するように構成され、ならびに/またはデバイスはさらに、血液試料の細胞および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物を分析するように構成された、少なくとも第2の分析ユニットを含む。
【0117】
少なくとも第1の分析ユニットは、特に、デバイスにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で血液試料の第1の部分を分析するようにして、したがって、フォーカシングユニットから離間して、好ましくは、流体チャネル中で導入される血液のフローにおいて下流に配置されている。
【0118】
さらに、血液試料の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力するように構成された出力インターフェースは、特に限定されておらず、スクリーン、モニタ、ディスプレイなどを含んでよく、出力インターフェース上には、上記の本方法の第2および第3の変形例に関連して記載されているような、血液試料の分析の予備結果、場合により、マーカなどのインジケーション、たとえばフラグも表示でき、ならびに/または、血液試料の少なくとも赤血球の分析結果および/もしくは血液試料の少なくとも赤血球の細胞溶解生成物を表示できる。そのために、出力インターフェースは、少なくとも第1の分析ユニットに、場合により、判定モジュールおよび/または少なくとも第2の分析ユニットに、さらに、分析データを記憶および/またはさらにコンパイルおよび/または処理するための適切な処理ユニットにも接続してよい。
【0119】
デバイスにおいて、やはり、血液試料の少なくとも1つの特性wの測定結果を基準値と比較するように構成された判定モジュールは、測定結果を基準値と比較し、測定値が基準値以下であるか、または基準値を上回るかを判定し、判定に応じて、測定結果が基準値以下であったか、もしくは基準値を上回ったかを示す出力インターフェースに入力を提供できる限り、特に限定されていない。いくつかの実施形態によれば、判定モジュールはまた、特に自動測定設定において、本方法の第1の変形例、第2の変形例、または第3の変形例を実行するように測定に応じてデバイスを構成し、すなわち、場合により、少なくとも第1の分析ユニットおよび/または少なくとも第2の分析ユニットおよび/または溶解ユニットまたはフォーカシングユニット、ならびに、フォーカシングユニットが血液試料の第1の部分の細胞をフォーカシングし、また血液試料の第2の部分の少なくとも赤血球を溶解させるように構成できる場合は、たとえばフォーカシングユニットを制御するコントローラに入力を与えるように構成されている。判定モジュールは、基準値を含むデータベースを含んでよく、または外部供給源から基準値を受信するように構成してよい。
【0120】
デバイスが、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成された溶解ユニットを含む場合に、溶解ユニットは、特に限定されておらず、音響浮揚デバイス、入口、および溶解剤を導入するように構成された導入要素などを含んでよい。好ましくは、溶解ユニットは、存在する場合、音響浮揚デバイスを含む。
【0121】
好ましい実施形態によれば、フォーカシングユニットはさらに、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成されている。そのような場合は、フォーカシングユニットは、好ましくは、音響浮揚デバイスであり、さらに好ましくは、音響浮揚デバイスは、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した血液試料の少なくとも赤血球を溶解させるように構成できる。これは、フォーカシングユニットが、流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの所定の領域にフォーカシングするように構成でき、たとえば本方法の上記の第1および第3の変形例ではその後の時点で、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した少なくとも赤血球を溶解させるように構成することもできることを意味する。いくつかの実施形態によれば、音響浮揚デバイスは、流体チャネルの少なくとも一部分の内側で沈殿した血液試料の少なくとも赤血球を溶解させるように構成されている。
【0122】
いくつかの実施形態によれば、デバイスは、フォーカシングユニット、特に音響トランスデューサに電気的に接続されたコントローラを含み、コントローラは、音響トランスデューサに電気信号を提供するように構成されており、音響トランスデューサによって電気信号が受信されると、音響トランスデューサがたとえば超音波の音響波を発し、および/または音響トランスデューサが伸縮する。コントローラは、適切な回路構成から構築でき、特に限定されていない。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、デバイスはさらに、流体チャネルの内側でフローを制御するように構成されたフロー制御ユニットを含む。フローユニットは、特に、継続または停止されるようにフローを制御するように構成されている。
【0124】
本発明の第1の例示的なデバイスが図5に概略的に示されている。たとえばポンプ11aおよびチューブ11bを含む第1の導入要素11a/bから、流体チャネル10に血液試料の第1および第2の部分を導入でき、フォーカシングユニット12を用いて血液試料の第1の部分の細胞をフォーカシングすることができる。フォーカシングユニット12は、例示的な本実施形態において、血液試料の第2の部分の少なくとも赤血球を溶解させるように構成することもできる。血液試料の第1の部分のさらなる成分、血液試料の第2の部分の沈殿した細胞、および少なくとも赤血球の溶解生成物は、本実施形態において送信機13aおよび受信機13bを含む第1の分析ユニット13a/bを用いて分析することができる。結果は、出力インターフェース14に示され、判定モジュール15が、試料が誤っている可能性があるか否かを分析し、場合により、それを示すことができる。
【0125】
図6に概略的に示されている第2の例示的なデバイスにおいて、追加的に溶解ユニット16が存在し、フォーカシングユニット12は、少なくとも赤血球を溶解させるように構成されない。それ以外は、設定は図5のものと同じである。
【0126】
本発明の第3の態様は、血液試料を分析するための本発明のデバイスで使用されるように構成された非一時的コンピュータプログラム製品を対象とし、非一時的コンピュータプログラム製品は:
a-ii)血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入することと;
a-iii)流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングすることと;
a-iv)流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域、特に、無細胞領域で、血液試料の第1の部分を分析することであって、分析には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つを測定することが含まれることと;
a-v)血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力することであって、予備結果には、血液試料の少なくとも1つの特性w、特に、細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、および血餅の最大長さzのうちの少なくとも1つの結果が含まれることと
という工程を実行し、
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値以下である場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dL以下である、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dL以下である、および/もしくは血餅の最大長さzが20μm以下である場合には:
b1-i)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b1-ii)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b1-iii)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b1-iv)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b1-v)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b1-vi)少なくとも溶解した赤血球を分析すること;
という工程が実行されるか、または
血液試料の少なくとも1つの特性wの結果が基準値を上回る場合、特に、細胞外ヘモグロビン含有量xに関する結果が値150mg/dLを上回る、および/もしくは細胞外脂質含有量yの結果が値600mg/dLを上回る、および/もしくは血餅の最大長さzが20μmよりも大きい場合には:
b2-i a)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii a)血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力すること;
もしくは
b2-i b)流体チャネルから血液試料の第1の部分を流すことと;
b2-ii b)血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入することと;
b2-iii b)流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させることと;
b2-iv b)場合により、少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析することと;
b2-v b)沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させることと;
b2-vi b)少なくとも溶解した赤血球を分析することと、
b2-vii b)結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力すること
という工程が実行される、
ように構成される。
【0127】
非一時的コンピュータプログラム製品によって実行される工程は、特に、本方法において対応する工程であり、したがって、上記で第1の態様の方法に関して説明した実施形態および実装形態も、特に、本発明の非一時的コンピュータプログラム製品に当てはまり、その逆も同様である。
【0128】
非一時的コンピュータプログラム製品は、特に限定されておらず、適切なストレージユニット、たとえば、実施時に、対応する工程を実行するコードを含む、ディスク、USBユニット、処理ユニットなどでよい。
【実施例
【0129】
ここで、本発明をそのいくつかの実施例を参照しながら詳細に説明する。ただし、それらの実施例は、例示的であり、本発明の範囲を限定しない。
【0130】
患者からの血液試料を用意した。さらに、流体チャネルとしてマイクロチャネルを含む流体システムも用意し、マイクロチャネルには入口を通して試料を別々の部分に分けて提供した。
【0131】
事前分析試験では、細胞外ヘモグロビンおよび脂質濃度ならびに詰まりの検出のために血餅の最大長さを測定した。そのために、流体チャネルおよびシステムの他の部材も、上記で説明したように緩衝液、たとえばPBS緩衝液で洗い、バックグラウンド測定を対照として行った。血液試料の第1の部分として、全血試料100μlをマイクロチャネル中に流体試料ポートを通してポンプ輸送し、フローを止めた。マイクロチャネルを含むマイクロチップに取り付けられた圧電トランスデューサを通して、音響力をオンにして、既定の「フォーカシング」レベルである341kHz、25Vppの正弦波にした。マイクロチャネルは幅2000μm、高さ100μm、長さ17mm(外寸22mm×12mm×1.8mm)であった。UV-Vis分光計を用いて、血液試料の第1の部分の細胞をチャネルの中央にフォーカシングし、無細胞の血漿濃縮領域を側壁に生成した。細胞外ヘモグロビン含有量x、細胞外脂質含有量y、およびビリルビンに関する透過率値を、無細胞領域において、それぞれ波長410nm、630nm、および450nmで、吸収測定を用いて取得し、顕微鏡を用いて血餅の最大長さを判定した。音響力をオフにし、マイクロチャネルを含む流体システムを緩衝液で洗った。取得した結果を基準値と比較した。その基準値は、細胞外ヘモグロビン含有量xが150mg/dL、細胞外脂質含有量yが600mg/dL、血餅の最大長さzが20μmという値であった。血液試料に関して、測定値はそれらの値x、y、およびzを下回った。
【0132】
主な分析では、細胞レベルのヘモグロビン/赤血球(RBC)体積およびRBC数の測定を実行し、ヘマトクリット測定を実行した。緩衝液への血液試料の適切な希釈度(たとえば1:200)で100μlの血液試料の第2の部分を用意し、流体試料ポートを通してマイクロチャネルにポンプ輸送した。やはり、フローを止め、血液細胞がマイクロチャネルの底に沈降するまで待った。顕微鏡の最適な照明コントラストで、沈降した細胞の適切な領域を撮像し、局部領域で分光読取りを行った。
【0133】
事後分析試験では、総ヘモグロビンおよび酸素添加状態を測定した。そのために、圧電トランスデューサを、所与のチャネルにおいて既定の「溶解」レベルの361kHz、50Vppの正弦波に設定し、沈降した赤血球が溶解し均質化するようにした。溶解後に、音響力をオフにし、適切な波長で透過率を測定した。最後に、流体システムを次の試料のために緩衝液で洗った。
【0134】
本方法およびデバイスでは、血液試料の一回の試料引込みで、迅速かつ正確な事前分析を含む、事前分析、分析、および制御を可能にできる。デバイスは、統合型の自動化可能なワークフロー、およびすべての工程に対する単一の検出器技術および試料取扱いを可能にし、したがって、ハードウェアが合理化される。さらに、必要な試料の体積は少しだけであり、特に好ましい実施形態において、一般に採用される希釈剤以外に追加的な試薬も必要とされない。
【0135】
本方法およびデバイスでは、血漿からの大部分の血液細胞のインライン分離、血漿および全血の読取りが同じ光学系を用いて可能であり、特に、体積要件の低いマイクロ流体システムをすべての工程に対して使用でき、分離および溶解に同じハードウェアコンポーネントおよび音響浮揚デバイスを使用できる。
【符号の説明】
【0136】
1 患者から取得した血液試料を用意する
2 血液試料の第1の部分を流体チャネル中に導入する
3 流体チャネルの内側で血液試料の第1の部分の細胞を流体チャネルの1つの領域にフォーカシングする
4 流体チャネルにおいて、細胞がフォーカシングされている領域とは異なる領域で、血液試料の第1の部分を分析する
4’ 流体チャネルを洗う
5 血液試料の第1の部分の分析の少なくとも予備結果を自動的に出力する
6 流体チャネルから血液試料の第1の部分を流す
7 血液試料の第2の部分を流体チャネル中に導入する
7’ 血液試料を廃棄するべきであり、新たな血液試料を用意する必要がある可能性があるという結果を、自動的に出力する
7’’ 結果が誤っている可能性があることが示されているという結果を出力する
8 流体チャネルの少なくとも一部分の内側で血液試料の第2の部分の細胞を沈殿させる
8a 少なくとも細胞の種類について沈殿した細胞を分析する
9 沈殿した細胞の少なくとも赤血球を溶解させる
9a 少なくとも溶解した赤血球を分析する
10 流体チャネル
10’ マイクロチャネル
10’a 進入ポート
10’’b 退出ポート
11a ポンプ
11b チューブ
11c 血液試料
12 フォーカシングユニット
12a 音響定在波
12b 流体チャネルの1つの領域
13a 送信機
13b 受信機
13c 分析のためのスポット
13d 血液細胞分析のためのスポット
14 出力インターフェース
14’ スクリーン
15 判定モジュール
16 溶解ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】