IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-530043がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物
<>
  • 特表-がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物 図1
  • 特表-がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物 図2
  • 特表-がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物 図3
  • 特表-がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物 図4
  • 特表-がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】がん療法のためのMDM2アンタゴニストを含む経口医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4162 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/4162
A61K39/395 U
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508030
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2022072213
(87)【国際公開番号】W WO2023016977
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21190294.5
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22156077.4
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22175571.3
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ラマー メディ ムラド
(72)【発明者】
【氏名】ゲン ジュンシャン
(72)【発明者】
【氏名】グレムプラー ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ピタルク アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ロアバッハー マレン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB03
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC02
(57)【要約】
本発明の一態様は、がんの処置に使用するための、式I
のMDM2アンタゴニストを30mg~45mgの用量範囲で含む経口医薬組成物であって、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、この経口医薬組成物に関する。本発明の別の態様は、脱分化型脂肪肉腫の第一選択全身処置(一次処置)に使用するための、式IのMDM2アンタゴニストに関する。本発明のさらなる一態様は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置のための医薬品の製造のための、式IのMDM2アンタゴニストの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置に使用するための、式I
【化1】
のMDM2アンタゴニストを30mg~45mgの用量範囲で含む経口医薬組成物であって、この経口医薬組成物は、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、経口医薬組成物。
【請求項2】
処置されるがんが、p53野生型形態のがんである、請求項1に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項3】
処置されるがんが、軟部組織肉腫である、請求項1又は2に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項4】
処置されるがんが、脂肪肉腫である、請求項1~3に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項5】
処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)又は脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、請求項1~4に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項6】
処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、請求項1~5に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項7】
処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、請求項1~5に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項8】
式IのMDM2アンタゴニストが、45mgの用量で存在する、請求項1~7に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項9】
式IのMDM2アンタゴニストが、30mgの用量で存在する、請求項1~7に記載の使用のための経口医薬組成物。
【請求項10】
3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与される、がんの処置のための経口医薬組成物の製造のための、30mg~45mgの用量範囲の式I
【化2】
の化合物の使用であって、ここで、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、前記使用。
【請求項11】
処置されるがんが、p53野生型形態のがんである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
処置されるがんが、軟部組織肉腫である、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
処置されるがんが、脂肪肉腫である、請求項10~12に記載の使用。
【請求項14】
処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)又は脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、請求項10~13に記載の使用。
【請求項15】
処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、請求項10~14に記載の使用。
【請求項16】
処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、請求項10~14に記載の使用。
【請求項17】
式IのMDM2アンタゴニストが、45mgの用量で存在する、請求項10~16に記載の使用。
【請求項18】
式IのMDM2アンタゴニストが、30mgの用量で存在する、請求項10~16に記載の使用。
【請求項19】
脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置(一次処置)に使用するための、式I
【化3】
のMDM2アンタゴニスト。
【請求項20】
それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与される、請求項19に記載の使用のための式IのMDM2アンタゴニストであって、ここで、この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、前記MDM2アンタゴニスト。
【請求項21】
各処置サイクルにおいて30mg~45mgの用量範囲で患者に投与される、請求項19又は20のいずれか1項に記載の使用のための式IのMDM2アンタゴニスト。
【請求項22】
各処置サイクルにおいて45mgの用量で患者に投与される、請求項19~21のいずれか1項に記載の使用のための式IのMDM2アンタゴニスト。
【請求項23】
各処置サイクルにおいて30mgの用量で患者に投与される、請求項19~21のいずれか1項に記載の使用のための式IのMDM2アンタゴニスト。
【請求項24】
脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身化学療法処置(一次処置)のための医薬品の製造のための、式I
【化4】
のMDM2アンタゴニストの使用。
【請求項25】
それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与される、請求項24に記載の式IのMDM2アンタゴニストの使用であって、ここで、この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、前記使用。
【請求項26】
MDM2アンタゴニストが、各処置サイクルにおいて30mg~45mgの用量範囲で患者に投与される、請求項24又は25のいずれか1項に記載の式IのMDM2アンタゴニストの使用。
【請求項27】
MDM2アンタゴニストが、各処置サイクルにおいて45mgの用量で患者に投与される、請求項24~26のいずれか1項に記載の式IのMDM2アンタゴニストの使用。
【請求項28】
MDM2アンタゴニストが、各処置サイクルにおいて30mgの用量で患者に投与される、請求項24~26のいずれか1項に記載の式IのMDM2アンタゴニストの使用。
【請求項29】
がんの処置に使用するための、式I
【化5】
のMDM2アンタゴニストであって、ここで、式IのMDM2アンタゴニストはエザベンリマブと組み合わせて投与され、且つ、
・前記MDM2アンタゴニスト及びエザベンリマブの両方が、それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、
・前記MDM2アンタゴニストが45mgの用量で投与され、
・エザベンリマブが240mgの用量で投与され、及び
・この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、
MDM2アンタゴニスト。
【請求項30】
がんが、p53野生型形態のがんである、請求項29に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項31】
がんが軟部組織肉腫である、請求項29又は30に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項32】
がんが脂肪肉腫である、請求項29~31のいずれか1項に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項33】
がんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)及び高分化型脂肪肉腫(WDLPS)からなる群から選択される脂肪肉腫である、請求項29~32のいずれか1項に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項34】
がんが脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、請求項29~33のいずれか1項に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項35】
がんが高分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、請求項29~33のいずれか1項に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項36】
がんの処置が、第一選択処置である、請求項29~35のいずれか1項に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項37】
45mgのMDM2アンタゴニストが経口投与されて、240mgのエザベンリマブが静脈内投与される、請求項29~36のいずれか1項に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【請求項38】
p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置のための医薬品の製造のための、式I
【化6】
のMDM2アンタゴニストの使用。
【請求項39】
p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんが、平滑筋肉腫、軟骨肉腫及び黒色腫からなる群から選択される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、式I
【化7】
のMDM2アンタゴニスト。
【請求項41】
p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんが、平滑筋肉腫、軟骨肉腫及び黒色腫からなる群から選択される、請求項40に記載の使用のためのMDM2アンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.背景
1.1 肉腫
肉腫は、間葉由来の悪性腫瘍の稀で異種混交的な一群であり、成人悪性腫瘍全体のうち1%未満及び小児がんの12%を占める。肉腫のおよそ80%は軟部組織由来であり、残りは骨に由来する。100種を上回る組織学的及び生物学的に異なる肉腫のサブタイプが認識されており、その大部分は軟部組織肉腫(STS)である。成人で特によく見られるSTSサブタイプは、未分化/未分類のSTS、未分化多形性肉腫(UPS)、平滑筋肉腫(LMS)、消化管間質腫瘍(GIST)及び脂肪肉腫(LPS)である。米国では毎年13,000人前後の新規STS患者が報告されている(Gamboa et al, CA Cancer J Clin 2020; 70:200-229; Corey et al, Cancer Medicine 2014, Vol. 3 (5), 1404-1415; Bock et al, Int. J. Environ. Res. Public Health 2020, 17, page 2710 ff; Amer et al, J. Clin. Orthopaedics and Trauma 11 (2020) S479-S484)。76種の集団ベースのがん登録を含むRARECAREプロジェクトでは、EUで毎年推定23,574人の新規STS症例が報告されており、10万人当たりの年齢標準化発生率は東欧の3.3人から北欧の4.7人までの範囲であった(Stiller et al, European J. Canc. (2013), Vol. 49, pp. 684-695)。2021年1月にOrphanetによって発表された最近の報告では、欧州におけるSTSの有病率及び発生率は、100,000人当たりそれぞれ30.0人及び4.74人と推定されている(Orphanet Report Series, Prevalence of rare diseases, No. 1, January 2021)。
【0002】
局所STSの処置は依然として外科的管理が中心となっているが、進行/転移性STSではいくつかの異なる化学療法レジメンが使用されている。第一選択の全身療法はこれまでの45年間で大きくは変化しておらず、依然としてドキソルビシンを含む化学療法に基づいている。STS患者を登録した最新の試験では、無増悪生存期間中央値(mPFS)は7か月、全生存(OS)期間は約18か月であった。しかし、患者の予後は組織型によって異なるため、PFS及びOSは具体的なSTSの組織型に応じて大きく異なる可能性がある(Gino et al, Ther Adv Med Oncol. 2017, Vol. 9 (8), pp 533-550; Savina et al, BMC Medicine (2017), 15, pp. 78; Tap et al, JAMA, 2020; Vol. 323 (13): pp. 1266-1276)。
LPSはSTSの20%に相当し、以下の4種の異なるサブタイプを含む:高分化型及び脱分化型(これらの腫瘍の90%超でMDM2が増幅されている)、並びに円形細胞/粘液型及び多形性サブタイプ(MDM2増幅の有症率は10%未満と低い)。
【0003】
脱分化型のLPSサブタイプ(DDLPS)は、全LPS患者の15~20%に相当し、症例の20%超で転移し(肺、肝臓、骨、皮膚又は脳)、ドキソルビシンへの反応性が低い高悪性度腫瘍である。第一選択療法の後に以下の成績が小規模な後ろ向き研究で報告されており、このニッチな適応症における高い医学的需要が満たされていないことの概要を示している:ORR:15%未満/mPFS:2~4か月/mOS:8~12か月(Italiano et al, Ann. Oncol. (2012), Vol.23, No. 6, pp. 1601-1607; Savina et al, BMC Medicine (2017), Vol. 15, pp. 78; Langsman et al, Oncol Res Treat, 2019, Vol. 42, pp. 396-403; Gahvari et al, Curr. Treat. Options in Oncol. (2020), Vol. 21, pp. 15)。
STSに罹患した患者は、日常の機能に強い影響を及ぼす以下の症状を報告する:疼痛(特に腫瘍の位置に関係するもの、すなわち、腹部痛、筋肉痛、骨痛)、疲労、呼吸困難、並びに摂食及び睡眠の障害。これらの症状は疾患の進行とともに増大し、日常活動を制限し、否定的な感情を引き起こし、疾患に関連した苦痛を悪化させる。これらの症状の影響は、他の転移性がんの患者と同程度である。LPS患者の症状の経験は他のSTS患者のものと類似しているが、疼痛の経験は腫瘍の位置に依存する(Winnette et al, Patient (2017), Vol. 10, pp. 153-162; den Hollander et al, ESMO Open Cancer Horizons 2020, 5: e000914)。
【0004】
1.2 TP53及びMDM2
タンパク質TP53(p53)は、いわゆる「ゲノムの守護者」とされ、極めて重要な腫瘍抑制タンパク質であり、身体の細胞の抗がん防御系の中心である(Lane et al, Nature (1992); Vol. 358 (6381): 15-16)。転写因子として、p53は、細胞周期停止又は老化、DNA修復及びアポトーシスに関与する複数の下流標的遺伝子を調節する(Donehower et al, Nature (1992); 356 (6366): 215-221; Olivier et al, Cold Sping Harbor Perspectives in Biology (2010); 2 (1): a001008-a001008; Levine et al, Nature Reviews Cancer 2009, 9 (10): 749-758)。このため、正常な条件下では、p53の細胞内レベルが低い基礎状態に維持されることが重要であり、これはp53の迅速な(プロテアソーム媒介)分解によって達成される(Brooks et al Molecular Cell 2006; 21 (3): 307-315)。ストレスシグナルに曝露された細胞又は損傷を受けた細胞では、TP53は急速に活性化されるが、ストレスシグナルに曝露されていない正常細胞、及びTP53遺伝子が高い頻度で突然変異している腫瘍細胞では、TP53は抑制されたまま保たれる。TP53突然変異の発生率はがんの種類によって大きく異なるが、TP53はヒトのがんにおいて最も高い頻度で突然変異している遺伝子の中の1つであり、がん全体の約50%がこの遺伝子に突然変異又は欠失を有する(Kandoth et al, Nature, 2013, 502 (7471): 333-339; Lawrence et al, Nature, 2014, 505 (7484): 495-501)。残りのヒトがんは、TP53が野生型状態にある腫瘍を有するが、p53の機能は、その重要な負の調節因子であるヒトMDM2の過剰発現又は増幅を含む他の機序によって、しばしば減弱される。
【0005】
MDM2アンタゴニストは、p53とその重要な負の調節因子であるMDM2との相互作用を遮断することから、がんの新たな治療概念となる。MDM2アンタゴニストは、TP53野生型の腫瘍においてp53活性を回復させるように設計されており、現在、いくつかのMDM2アンタゴニストが臨床開発のために評価中である。
Oliner et al, Cold Spring Harb Perspect Med 2015; 6: a026336に記載された分析は、MDM2の増幅が、ヒト腫瘍がMDM2レベルを上昇させてp53を抑止する主要な機序であることを示唆している。このため、MDM2の小分子アンタゴニストが、p53野生型であってさらにMDM2が増幅されている腫瘍、例えば、脂肪肉腫、特に高分化型及び脱分化型の脂肪肉腫において、最良の治療能力を有すると期待されることは驚くには当たらない。
【発明の概要】
【0006】
1.3 式IのMDM2-アンタゴニスト
式I
【化1】
のMDM2-p53アンタゴニスト((2’S,3’S,3a’S,10a’S)-6-クロロ-3’-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)-1’-(シクロプロピルメチル)-6’-メチル-2-オキソ-1,2,3’,3a’,10’,10a’-ヘキサヒドロ-1’H-スピロ[インドール-3,2’-ピロロ[2’,3’:4,5]ピロロ[1,2-b]インダゾール]-7’-カルボン酸)は、腫瘍抑制タンパク質p53(TP53)とその負の調節因子であるマウスダブルマイニュート2(double minute 2)(MDM2)との間の相互作用を阻害する新たな小分子である(WO 2017/060431、例Ia-34を参照)。MDM2は、WT TP53を有する細胞において、有効なTP53アンタゴニストとして機能する。ヒト腫瘍では、MDM2タンパク質の過剰発現は遺伝子増幅によって引き起こされ得る。MDM2遺伝子は、腫瘍の種類を問わず、ヒトのがんの7%で増幅されている。MDM2の遺伝子増幅は、LPSで高頻度(50%超)に起こり、高分化型及び脱分化型のLPSではさらに高頻度(90%超)に起こる。MDM2の増幅は、肺腺がん(4.6%)、尿路上皮がん(9%)及び多形性膠芽腫(9%)でも低頻度で起こる。
【0007】
TP53とMDM2との間の相互作用の阻害は、TP53の安定化及びそれに続く標的遺伝子の誘導をもたらし、その結果、TP53が野生型状態にある腫瘍細胞において細胞周期の停止又はアポトーシスをもたらす。非臨床データから、野生型TP53を保有する腫瘍における式IのMDM2アンタゴニストの抗腫瘍効果は、2種類の作用様式(MoA)に基づくことが示唆されている:すなわち、がん細胞における野生型TP53機能の活性化及びアポトーシスの誘導を介した直接的な抗腫瘍活性(MoA1)、並びに免疫チェックポイントアンタゴニスト、例えば、PD-1を標的とする免疫チェックポイントアンタゴニストと組み合わせた場合に相乗効果を伴う免疫調節活性(MoA2)である。
【0008】
1.4 エザベンリマブ及び他のPD-1軸阻害薬
エザベンリマブは、ヒトプログラム細胞死-1(programmed cell death-1)(PD-1)免疫チェックポイントアンタゴニストを標的とするマウス由来のモノクローナルIgG4Pro抗体(mAb)である。PD-1リガンドであるPD-L1及びPD-L2の、T細胞上に存在するPD-1受容体への結合により、T細胞増殖及びサイトカイン産生が阻害される。PD-1リガンドのアップレギュレーションは一部の腫瘍で起こり、この経路を介したシグナル伝達は、腫瘍の能動的T細胞免疫監視機構の阻害に寄与する可能性がある。エザベンリマブは、ヒト(PD-1)タンパク質を標的とするマウス由来のヒト化モノクローナルIgG4Pro mAbであり、インビトロでPD-1/PD-L1及びPD-1/PD-L2の相互作用を強力に遮断する。
【0009】
式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブとを組み合わせることにより、免疫調節活性を介した相乗効果、及び同系マウス腫瘍モデルにおける非臨床データに基づく抗腫瘍免疫の誘導が提唱される(WO 2018/185135を参照)。
当技術分野で公知の他のPD-1軸阻害剤には、ペムブロリズマブ(抗PD-1)、ニボルマブ(抗PD-1)、ピディリズマブ(抗PD-1)、チスレリズマブ(抗PD-1)、スパルタリズマブ(抗PD-1)、デュルバルマブ(抗PD-L1/L2)、アテゾリズマブ(抗PD-L1/L2)、アベルマブ(抗PD-L1/L2)、トリパリマブ(抗PD-L1/L2)、セミプリマブ(抗PD-L1/L2)、カムレリズマブ(抗PD-L1/L2)、ドスタルリマブ(抗PD-L1/L2)及びセトレリマブ(抗PD-L1/L2)がある。
2.発明の詳細
図面
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験1403-0001における脂肪肉腫患者のみについての、患者のMDM2増幅状態に応じた式IのMDM2アンタゴニストによる処置に対する腫瘍反応のスイマープロットである(WDLPS=高分化型脂肪肉腫、DDLPS=脱分化型脂肪肉腫)。各列は、1人ずつの個々の患者の処置を表す。
図2】試験1403-0001のアームAで処置された全患者におけるBLRM感度分析(全処置サイクルを通じての有害事象に基づく)を示す:45mgの用量は、EWOC基準を満たす最大用量である。
図3】患者のMDM2増幅状態に応じた、試験1403-0001及び1403-0002における全患者についての、試験の式IのMDM2アンタゴニスト単独又はエザベンリマブ及び抗LAG-3との組合せによる処置に反応した腫瘍縮小のウォーターフォールプロットである。各列は、1人ずつの個々の患者の処置を表す。
図4】患者のMDM2増幅状態に応じた、試験1403-0001の全患者についての、式IのMDM2アンタゴニストによる処置に対する腫瘍反応のスイマープロットである。各列は、1人ずつの個々の患者の処置を表す。
図5】試験1403-0002について、式IのMDM2アンタゴニストとPD-1抗体エザベンリマブとの組合せ(2剤組合せを「D」の印で示す)、及びPD-1抗体エザベンリマブと抗LAG3抗体BI 754111との組合せ(3剤組合せを「T」の印で示す)による処置に対する腫瘍反応を示すプロットである。二重組合せについては、式IのMDM2阻害剤を用量30mg/45mg D1/q3w(患者10人/患者5人)で経口投与し、エザベンリマブを240mg D1/q3wで静脈内投与した。 下のパネルは処置に反応した腫瘍縮小に関するウォーターフォールプロットであり、上のパネルは処置に反応した腫瘍の持続期間に関するスイマープロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3図4及び図5における略語は、以下のものを意味する:
【表1】

【0012】
式IのMDM2アンタゴニストは、多くの他の構造的に類似したMDM2アンタゴニストの中から、多種多様な異なるがんにおける新しい処置選択肢として、WO 2017/060431に最初に記載された。しかし、WO 2017/060431は、いかなる臨床データも示しておらず、特に、ヒトにおける臨床試験からの安全性データ、有効性データ及び薬理学的データを示していない。さらに、WO 2017/060431は、特定のヒトがんを処置するための有効用量及び投薬レジメンについても触れていない。
したがって、本発明の目的は、がん患者、好ましくは軟部組織肉腫患者、特に脂肪肉腫患者において、満足のいく処置効果を導き、その一方で許容される患者安全性を示す、式Iの特定のMDM2アンタゴニストの用量及び投薬レジメンを提供することであった。
【0013】
セクション3におけるヒト第Ia/Ib相試験の結果は、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で経口投与される、30mg~45mgの用量範囲の式I
【化2】
のMDM2アンタゴニストであって、ここで、この3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、前記MDM2アンタゴニストが、脂肪肉腫患者において許容される安全性、及び治療効果に関して確かな結果を導くことを示す。
上記の用量及び投与レジメンの安全性が許容されることは、用量30mg及び用量45mgの両方がアームAに関するEWOC基準を満たすことを示したBLRMの感度分析から結論付けることができる。45mgの用量は、アームAに関するEWOC基準を満たす最大用量であった。
【0014】
さらに、式IのMDM2アンタゴニストの45mgの用量は、臨床試験1403-0001において、病勢の安定している2人の脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)患者において活性の明らかな徴候も示した:
・第三選択療法として式IのMDM2アンタゴニストにより処置された第1のDDLPS患者では、353日間で約10%の腫瘍縮小が認められ(表4参照)、及び
・第二選択療法として式IのMDM2アンタゴニストにより処置された第2のDDLPS患者では、709日間で約5%の腫瘍縮小が認められた(表4参照)。
これとは対照的に、ドキソルビシンによる第一選択療法では、2~4か月の無増悪生存期間中央値(mPFS)しか得られないことが報告されている(Italiano et al, Ann. Oncol. (2012), Vol. 23, No. 6, pp. 1601-1607, Savina et al, BMC Medicine (2017), Vol. 15, pp. 78, Langmans et al, Oncol. Res. Treat. (2019), Vol. 42, pp. 396-403)。
【0015】
さらに、臨床試験1403-0001の結果は、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)患者における式IのMDM2アンタゴニストの確かな治療効果も示している。試験1403-0001における7人の高分化型脂肪肉腫患者のうち、3人は式IのMDM2アンタゴニストによる処置後に部分奏効を示した(図1及び図4に示されているように)。
さらに、臨床試験1403-0001の結果は、他のp53野生型及びMDM2増幅性の非肉腫がん形態においても、式IのMDM2アンタゴニストの確かな治療効果を示している。例えば、p53野生型及びMDM2増幅性の腺がんを有する1人の患者は、54%の腫瘍縮小を伴う部分奏効を示し(図3の試験1403-0001による「Biliary AdCA」の最後の患者を参照)、p53野生型及びMDM2増幅性の膵腺がん(PAC)を有する別の1人の患者は、41%の腫瘍縮小を伴う部分奏効を示した(図3の試験1403-0001による「PAC」の最後から3番目の患者を参照)。
【0016】
組合せ試験1403-0002(式IのMDM2阻害剤とエザベンリマブ及び抗LAG-3との組合せ)に関する治療効果の予備的徴候は、MDM2増幅性の高分化型脂肪肉腫(WDLPS)を有し、部分奏効を示した1人の患者(図3の1403-0002試験による最後から4番目の患者を参照)及びMDM2増幅性の尿路上皮がんを有し、部分奏効を示した1人の患者(図3の1403-0002試験による「Uroth Ca」の最後から6番目の患者を参照)についても観察された。
さらに、いずれも過去の全身療法を受けていなかった2人の脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)患者(試験1403-0001のD1 q3w投与レジメンを受けたアームAのDDLPS1人の患者(表4参照)及び試験1403-0001の28日間のD1、D8投与レジメンを受けたアームBの別のDDLPS患者(表5参照))は、長期の病勢安定を経験し、それぞれ342日及び542日にわたって処置を継続した。このことは、式IのMDM2アンタゴニストによる処置が、脱分化型脂肪肉腫患者の「第一選択処置」又は「一次処置」にも好適であることを示す。
【0017】
さらに、P53野生型及び「MDM2非増幅性」(図4参照)であると判定されたがんを有する試験1403-0001の3人の患者は、驚いたことに、7か月以上にわたって病勢の安定化(SD)を示し、例えば、
・「MDM2非増幅性の平滑筋肉腫」を有する1人の患者は、式IのMDM2アンタゴニスト(図4)による処置により、14か月以上にわたって病勢の安定化を示し、
・「MDM2非増幅性の平滑筋肉腫」を有する1人の患者は、式IのMDM2アンタゴニスト(図4)による処置により、10か月以上にわたって病勢の安定化を示し、及び
・「MDM2非増幅性の黒色腫」を有する1人の患者は、式IのMDM2アンタゴニスト(図4)による処置により、7か月以上にわたって病勢の安定化を示した。
このことは、式IのMDM2アンタゴニストが、p53野生型及び「MDM2非増幅性のがん形態」の処置にも好適であることを示す。MDM2増幅は、科学界において、ヒト腫瘍がMDM2レベルを上昇させてp53野生型の機能を抑止主要なメカニズムとして広く受け入れられているため(Oliner et al, Cold Spring Harb Perspect Med, 2015M 6:a026336を参照)、この知見はかなり驚くべきものである。
【0018】
したがって、本発明は、がんの処置に使用するための、式I
【化3】
のMDM2アンタゴニストを30mg~45mgの用量範囲で含む経口医薬組成物であって、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、この経口医薬組成物に関する。
【0019】
例えば、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30回、又はさらに多くの回数にわたって繰り返してもよい。3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)の繰り返し回数は、処置が副作用に関して忍容性を保ち、処置が少なくとも病勢の安定化(及び病勢の進行がないこと)を導くことを意味する有効性を保つ限り、医学的観点から患者にとって有益であると一般に考えられる。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、p53野生型形態のがんである、上記の経口医薬組成物に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが軟部肉腫である、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが脂肪肉腫である、上記の経口医薬組成物に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)又は脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の経口医薬組成物に関する。
【0020】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、腺肉腫、皮膚線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、未分化多形性肉腫(UPS)、軟骨肉腫、粘液性軟骨肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫及び子宮腺肉腫からなる群から選択される、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、胆管腺がん、膵臓腺がん、尿路上皮がん、肝内胆管がん、胃腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜がん、結腸直腸がん、神経膠芽細胞腫及び黒色腫からなる群から選択される、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん及び膨大部がんからなる群から選択される、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん及び胆管腺がんからなる群から選択される、上記の経口医薬組成物に関する。
【0021】
別の好ましい一実施形態では、本発明は、式IのMDM2アンタゴニストが45mgの用量で存在する、上記の経口医薬組成物に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、式IのMDM2アンタゴニストが30mgの用量で存在する、上記の経口医薬組成物に関する。
本発明は、さらなる一実施形態では、式I
【化4】
のMDM2アンタゴニストの治療有効量を、そのような処置を必要とする患者に対して投与することを含む、がんの処置のための方法であって、MDM2アンタゴニストが、30mg~45mgの用量範囲で3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、方法に関する。
【0022】
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、p53野生型形態のがんである、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが軟部組織肉腫である、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが脂肪肉腫である、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)又は脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、上記の方法に関する。
【0023】
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、腺肉腫、皮膚線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、未分化多形性肉腫(UPS)、軟骨肉腫、粘液性軟骨肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫及び子宮腺肉腫からなる群から選択される、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、胆管腺がん、膵臓腺がん、尿路上皮がん、肝内胆管がん、胃腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜がん、結腸直腸がん、神経膠芽細胞腫及び黒色腫からなる群から選択される、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん及び膨大部がんからなる群から選択される、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん及び胆管腺がんからなる群から選択される、上記の方法に関する。
【0024】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、式IのMDM2アンタゴニストが45mgの用量で存在する、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、式IのMDM2アンタゴニストが30mgの用量で存在する、上記の方法に関する。
本発明は、さらなる一実施形態では、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与される、がんの処置のための経口医薬組成物の製造のための、式I
【化5】
の化合物の30mg~45mgの用量範囲での使用であって、ここで、3週間に1回のこの処置サイクル(D1 q3w)は、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、使用に関する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、p53野生型形態のがんである、上記の使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが軟部組織肉腫である、上記の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが脂肪肉腫である、上記の使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)又は脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、上記の使用に関する。
【0026】
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、腺肉腫、皮膚線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、未分化多形性肉腫(UPS)、軟骨肉腫、粘液性軟骨肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫及び子宮腺肉腫からなる群から選択される、上記の使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、胆道がん、胆管腺がん、膵臓腺がん、尿路上皮がん、肝内胆管がん、胃腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜がん、結腸直腸がん、神経膠芽細胞腫及び黒色腫からなる群から選択される、上記の使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん及び膨大部がんからなる群から選択される、上記の使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん及び胆管腺がんからなる群から選択される、上記の使用に関する。
【0027】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、式IのMDM2アンタゴニストが45mgの用量で存在する、上記の使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、式IのMDM2アンタゴニストが30mgの用量で存在する、上記の使用に関する。
本発明は、別の実施形態では、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置(一次処置)に使用するための、式I
【化6】
のMDM2アンタゴニストに関する。
【0028】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置におけるその使用のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、MDM2アンタゴニストは、それを必要とする患者に対して3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、式IのMDM2アンタゴニストに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置におけるその使用のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、各処置サイクルにおいて30mg~45mgの用量範囲で患者に投与される、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置におけるその使用のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、各処置サイクルにおいて45mgの用量で患者に投与される、MDM2アンタゴニストに関する。
【0029】
別の好ましい実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置におけるその使用のための、式Iの上記MDM2アンタゴニストであって、各処置サイクルにおいて30mgの用量で患者に投与される、MDM2アンタゴニストに関する。
本発明は、さらなる一実施形態では、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身化学療法処置(一次処置)のための医薬品の製造のための、式I
【化7】
のMDM2アンタゴニストの使用に関する。
【0030】
別の好ましい実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身化学療法処置(一次処置)のための医薬品の製造のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストの使用であって、式IのMDM2アンタゴニストが、それを必要とする患者に対して3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置(一次処置)のための医薬品の製造のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストの使用であって、MDM2アンタゴニストが、各処置サイクルにおいて30mg~45mgの用量範囲で患者に投与される、使用に関する。
【0031】
別の好ましい一実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置(一次処置)のための医薬品の製造のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストの使用であって、MDM2アンタゴニストが、各処置サイクルにおいて45mgの用量で患者に投与される、使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の第一選択全身処置(一次処置)のための医薬品の製造のための、上記の式IのMDM2アンタゴニストの使用であって、MDM2アンタゴニストが、各処置サイクルにおいて30mgの用量で患者に投与される、使用に関する。
本発明は、さらなる一実施形態では、がんの処置のための、45mgの式I
【化8】
のMDM2アンタゴニストと、240mgのエザベンリマブとの組合せの使用であって、式IのMDM2アンタゴニスト及びエザベンリマブの両方が、それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、ここで、この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、使用に関する。
【0032】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置のための45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用であって、がんが、p53野生型形態のがんである、組合せ使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんの処置のための45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用であって、がんが軟部肉腫である、組合せ使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置のための45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用であって、がんが脂肪肉腫である、組合せ使用に関する。
【0033】
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんの処置のための45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用であって、がんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)及び高分化型脂肪肉腫(WDLPS)からなる群から選択される脂肪肉腫である、組合せ使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置のための45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用であって、がんが脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、組合せ使用に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんの第一選択処置のための45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用に関する。
【0034】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がん、好ましくは脂肪肉腫、より好ましくは脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)の処置のための、45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの上記の組合せ使用であって、45mgの式IのMDM2アンタゴニストが経口投与されて、240mgのエザベンリマブが静脈内投与される、組合せ使用に関する。
本発明は、さらなる一実施形態では、がんの処置に使用するための、式I
【化9】
のMDM2アンタゴニストであって、MDM2アンタゴニストはエザベンリマブと組み合わせて投与され、
・MDM2アンタゴニスト及びエザベンリマブの両方が、それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、
・MDM2アンタゴニストが45mgの用量で投与され、
・エザベンリマブが240mgの用量で投与され、及び
・この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、
MDM2アンタゴニストに関する。
【0035】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんが、p53野生型形態のがんである、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんが軟部組織肉腫である、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんが脂肪肉腫である、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)及び高分化型脂肪肉腫(WDLPS)からなる群から選択される脂肪肉腫である、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストに関する。
【0036】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんが脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんが脱分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、がんが、高分化型平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、腺肉腫、皮膚線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、未分化多形性肉腫(UPS)、軟骨肉腫、粘液性軟骨肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫及び子宮腺肉腫からなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、処置されるがんが、胆道がん、胆管腺がん、膵臓腺がん、尿路上皮がん、肝内胆管がん、胃腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜がん、結腸直腸がん、神経膠芽細胞腫及び黒色腫からなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
【0037】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、処置されるがんが、胆道がん、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん及び膨大部がんからなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、処置されるがんが、胆道がん及び胆管腺がんからなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、がんの処置が第一選択処置である、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、がんの処置に使用するための上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、45mgの式IのMDM2アンタゴニストが経口投与されて、240mgのエザベンリマブが静脈内投与される、MDM2アンタゴニストに関する。
【0038】
本発明は、さらなる一実施形態では、式I
【化10】
のMDM2アンタゴニストの治療有効量を、そのような処置を必要とする患者に投与することを含む、がんの処置のための方法であって、式IのMDM2アンタゴニストがエザベンリマブと組み合わせて投与され、
・MDM2アンタゴニスト及びエザベンリマブの両方が、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で患者に投与され、
・MDM2アンタゴニストが45mgの用量で投与され、
・エザベンリマブが240mgの用量で投与され、及び
・この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、
方法に関する。
【0039】
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、p53野生型形態のがんである、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが軟部組織肉腫である、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが脂肪肉腫である、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型脂肪肉腫(WDLPS)又は脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の方法に関する。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)である、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、脱分化型脂肪肉腫(WDLPS)である、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、処置されるがんが、高分化型平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、腺肉腫、皮膚線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、未分化多形性肉腫(UPS)、軟骨肉腫、粘液性軟骨肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫及び子宮腺肉腫からなる群から選択される、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、胆管腺がん、膵臓腺がん、尿路上皮がん、肝内胆管がん、胃腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜がん、結腸直腸がん、神経膠芽細胞腫及び黒色腫からなる群から選択される、上記の方法に関する。
【0041】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん及び膨大部がんからなる群から選択される、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、処置されるがんが、胆道がん及び胆管腺がんからなる群から選択される、上記の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、がんの処置が第一選択処置である、上記の方法に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、45mgの式IのMDM2アンタゴニストが経口投与されて、240mgのエザベンリマブが静脈内投与される、上記の方法に関する。
本発明のさらなる好ましい実施形態では、本明細書で上記に開示されるエザベンリマブは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、チレリズマブ、スパルタリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、トリパリマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、ドスタルリマブ及びセトレリマブからなる群から選択される代替的なPD-1軸阻害剤に置き換えられる。最も好ましいエザベンリマブは、これらの実施形態において、ペムブロリズマブ又はニボルマブに置き換えられる。
【0042】
式IのMDM2アンタゴニスト及び本明細書中に開示されるようなエザベンリマブ又は別のPD-1軸阻害剤は、通常、処置サイクルの同じ第1日に投与され、すなわち、同じ日に同時に又は並行して投与されることが理解されるべきである。しかし、両方の薬物を異なる第1日に別々に又は連続して又は交互に投与することも可能である。また、諸実施形態において、両方とも本明細書で上記に開示されるようなエザベンリマブが代替的なPD-1軸阻害剤によって置き換えられる場合には、代替的なPD-1軸阻害剤は、通常、単剤療法又は他の組合せ処置において投与され、承認されているのと同じ量で投与されることも理解されるべきである。
本発明は、さらなる一実施形態では、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんを処置するための医薬品の製造のための、式I
【化11】
のMDM2アンタゴニストの使用に関する。
【0043】
別の好ましい実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置のための医薬品の製造のための、式IのMDM2アンタゴニストの上記の使用であって、このp53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんが、平滑筋肉腫、軟骨肉腫及び黒色腫からなる群から選択される、使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置のための医薬品の製造のための、式IのMDM2アンタゴニストの上記の使用であって、45mgの式IのMDM2アンタゴニストが、それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1q3w)で投与され、ここで、この処置サイクルを、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、使用に関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置のための医薬品の製造のための、式IのMDM2アンタゴニストの上記の使用であって、
・MDM2アンタゴニストが、それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、
・MDM2アンタゴニストが45mgの用量で投与され、
・この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、
使用に関する。
【0044】
本発明は、さらなる一実施形態では、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、式I
【化12】
のMDM2アンタゴニストに関する。
【0045】
別の好ましい実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、このp53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんが、平滑筋肉腫、軟骨肉腫及び黒色腫からなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、処置されるがんが、高分化型平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、腺肉腫、皮膚線維肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、未分化多形性肉腫(UPS)、軟骨肉腫、粘液性軟骨肉腫、粘液性脂肪肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫及び子宮腺肉腫からなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
【0046】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、処置されるがんが、胆道がん、胆管腺がん、膵臓腺がん、尿路上皮がん、肝内胆管がん、胃腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮内膜がん、結腸直腸がん、神経膠芽細胞腫及び黒色腫からなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、処置されるがんが、胆道がん、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん及び膨大部がんからなる群から選択される、MDM2アンタゴニストに関する。
さらなる好ましい一実施形態では、本発明は、p53野生型及びMDM2非増幅性形態のがんの処置に使用するための、上記の式IのMDM2アンタゴニストであって、
・MDM2アンタゴニストが、それを必要とする患者に対して、3週間に1回の処置サイクル(D1 q3w)で投与され、
・MDM2アンタゴニストが45mgの用量で投与され、
・この処置サイクルは、医学的観点から患者にとって有益であると考えられる回数にわたって繰り返されてもよい、
MDM2アンタゴニストに関する。
【0047】
3.結果
3.1 試験
3.1.1 試験1403-0001
試験1403-0001は、進行性又は転移性固形腫瘍の患者を対象とする、式IのMDM2アンタゴニストのヒトにおける第Ia/Ib相、非盲検、多施設共同、用量漸増試験としては初めてのものであった。第Ia相用量漸増パートでは、安全性及び忍容性、薬物動態、薬力学及び予備的な有効性に基づいて、式IのMDM2アンタゴニストの最大耐量(MTD)及び用量拡大時の推奨用量(RDE)を決定することを目的とした。RDEについては、本試験の第Ib相拡大パートでさらに検討する。
【0048】
臨床試験1403-0001の第Ia相用量漸増パートでは、54人の患者が式IのMDM2アンタゴニストによる処置を受けた。アームAでは29人の患者が処置を受け(投与レジメン:21日サイクルの第1日に投与、D1 q3w)、アームBでは25人の患者が処置を受けた(投与レジメン:28日サイクルの第1日及び第8日に投与、D1 D8 q4w)。アームAで評価された用量は、10、20、30、45、50、60及び80mgであった。アームBで評価された用量レベル(第1日及び第8日に投与された用量を指す)は、5、10、15、20、30、45及び60mgであった。
アームB(第1日及び第8日に投与された用量を指す)は、5、10、15、20、30、45及び60mgであった。
探索的な安全性及び有効性の分析に基づいて、アームAについては60mg q3wがMTDとして選択され、45mg D1 q3wがRDEとして選択された。アームBについては45mg D1 D8 q4wがMTDとして選択された。予備的な薬物動態(PK)データも、用量決定のための裏付け情報として使用した。
拡大相(PhIb)でも45mgのアームAのスケジュールを継続することが決定されたが、これはこの用量が、ベイズロジスティック回帰モデル(BLRM)解析からの過量投与管理による漸増基準(EWOC基準)を満たす最大用量であったためであり、以下の対応するセクションで概説するように、全処置期間(MTD評価期間だけでなく)を通じて目的の有害事象を考慮に入れた。加えて、長期的に安全であると考えられるこの45mgの用量で、式IのMDM2アンタゴニストは、特に、病勢が安定した2人の脱分化型脂肪肉腫患者において、それぞれ353日間及び709日間にわたって活性の明らかな徴候を示した。
【0049】
3.1.2 試験1403-0002
式IのMDM2アンタゴニストの漸増用量(10mgの用量レベルから開始)を、WO2018/185135に記載されているように、抗PD-1モノクローナル抗体であるエザベンリマブ(固定した240mg用量)及び抗LAG-3モノクローナル抗体であるLAG3-1(固定した600mg用量)の固定した一定用量と組み合わせて21日毎に第1日(D1q3w)に投与し、その安全性及び忍容性を評価するために、第2の第Ia/Ib相試験(1403-0002)を開始した。上記の3剤組合せによるこの用量漸増は早期に中止され、2剤組合せ(式IのMDM2アンタゴニスト+抗PD-1 mAbであるエザベンリマブ)に置き換えられた。
【0050】
3.1.3 試験1403-0001の結果によって裏付けられた、式IのMDM2アンタゴニストの単剤療法に関する用量設定
3.1.3.1 1403-0001に関する安全性の概要-アームA
処置期間中、29人の患者全員が有害事象(AE)を報告した。特に頻度の高いAE(20%超の患者で報告)は、悪心(82.8%)、疲労(51.7%)、嘔吐(48.3%)、貧血及び食欲減退(各41.4%)、血小板数減少(37.9%)、下痢(34.5%)並びに背部痛(20.7%)であった。治験担当医によって式IのMDM2アンタゴニストと関連があると判断されたAEが少なくとも1種報告された患者は合計27人(93.1%)であった。特に頻度が高かった薬剤関連AE(患者の20%超が報告)は、悪心(72.4%)、疲労及び嘔吐(各41.1%)、血小板数減少(37.9%)、食欲減退(34.5%)、下痢及び白血球数減少(各27.6%)、並びに貧血(24.1%)であった。
グレード3以上のAEが認められたのは15人の患者(51.7%)であった。最も高い頻度で報告されたグレード3のAEは血小板数減少(13.8%)であり、5人の患者(17.2%)はグレード4のAEを有していた。最も高い頻度で報告されたグレード4のAEは好中球数減少(10.3%)であった。致死的なAEは報告されなかった。
【0051】
処置中の重篤なAE(SAE)が認められたのは9人の患者(31.0%)であった。2人以上の患者が報告したSAEは、血小板数減少(6.9%)であった。
減量に至ったAEは9人の患者(31.0%)で認められた。6人の患者(20.7%)は好中球減少症及び/又は血小板数減少症のために、2人(6.9%)は悪心のために、1人(3.4%)は腸炎のために減量が必要とされた。
永続的な処置中止に至ったAEは2人の患者(6.9%)に認められ、うち1人の患者ではグレード3の悪心が治験担当医によって薬剤と関連があると判断され、1人の患者ではグレード3の動脈塞栓症が治験担当医によって薬剤と関連があると判断された。いずれの患者にも減量は行われなかった。
用量制限毒性(DLT)は、全サイクルを通じて全用量レベルで、全体で9人の患者(31.0%)について報告された。このうち、5人の患者(17.2%)で、MTD評価期間(第1サイクル)中にDLTが生じた。用量レベル45mgでは、1人の患者でグレード3の悪心のDLTが生じて(第8日)、減量及び治療を必要とし(転帰は回復)、1人の患者でグレード3の血小板数減少のDLTが生じて(第30日)、第2サイクルの投与開始の延期を必要とした(転帰は回復)。用量レベル60mgでは、1人の患者でグレード3の腸炎のDLTが生じて(第3日)、減量及び治療を必要とした(転帰は回復)。用量レベル80mgでは、1人の患者でグレード4の好中球数減少及びグレード4の血小板数減少症という2種のDLTが生じて(いずれも第12日)、第2サイクルの投与開始の延期、減量及び治療を必要とし(転帰はいずれのDLTも回復せず)、1人の患者でグレード4の血小板数減少症のDLTが生じて(第35日)、投与延期及び治療を必要とした(転帰は回復せず)。
【0052】
表1は、試験1403-0001のアームAで処置された患者の用量別の安全性の概要を示す。
【表2】

対象は、複数の重篤度基準による重篤なAEを有する可能性がある。
割合は、処置当たりの対象の総数を分母として算出した。
報告のために使用したMedDRAバージョン:23.1
CTCAE v5.0を報告に使用する
【0053】
3.1.3.2 1403-0001に関する安全性の概要-アームB
処置期間中、25人の患者全員が有害事象(AE)を報告した。特に頻度の高いAE(20%超の患者で報告)は、悪心(92.0%)、疲労(52.0%)、嘔吐(64,0%)、食欲減退(各40.0%)、血小板数減少(28.0%)、下痢(44.0%)及び脱毛(24.0%)であった。治験担当医によって式IのMDM2アンタゴニストと関連があると判断されたAEが少なくとも1種報告された患者は合計23人(92.0%)であった。特に頻度が高かった薬剤関連AE(患者の20%超が報告)は、悪心(76.0%)、嘔吐(60.0%)、疲労(40.0%)、下痢(32.0%)、血小板数減少及び食欲減退(各28.0%)、並びに脱毛症(24.0%)であった。
【0054】
CTCAEグレード3以上に類別されたAEは、7人の患者(28.0%)に認められた。最も高い頻度で報告されたグレード3のAEは貧血及び血小板数減少(各8.0%)であり、グレード4のAEは4人の患者(16.0%)に認められた。最も高い頻度で認められたグレード4のAEは、好中球数減少及び血小板数減少(各8.0%)であった。致死的なAEは報告されなかった。
処置中の重篤なAE(SAE)が認められたのは9人の患者(36.0%)であった。2人以上の患者が報告したSAEは、血小板数減少(8.0%)であった。
【0055】
減量に至ったAEは6人の患者(24%)で認められた。5人の患者(20.0%)は好中球減少症及び/又は血小板数減少症のために、1人(4.0%)は下痢のために減量が必要とされた。
1人の患者(4.0%)にグレード1のAEの嘔吐(治験担当医により薬剤と関連があると判断された)が1件認められ、永続的な処置中止に至った。この患者に対して減量は行われず、第8サイクルではこの事象のために投与が延期された。
全体として、全サイクルで45mg及び60mgの最大用量レジメンで3人の患者(12.0%)でDLTが報告された。MTD評価期間(第1サイクル)中に、用量45mgの1人の患者でグレード4の血小板数減少のDLTが生じて(第36日)、第2サイクルの投与開始の延期を必要とした(転帰は回復)。用量レベル60mgでは、1人の患者でグレード4の好中球数減少(第31日)及びグレード4の血小板数減少症(第29日)という2種のDLTが生じて、第2サイクルの投与開始の延期、減量及び治療を必要とし(転帰はいずれのDLTも回復せず)、1人の患者でグレード3の好中球数減少のDLTが1件認められ、投与延期、減量及び治療を必要とした(転帰は回復せず)。
【0056】
表2は、試験1403-0001のアームBで処置された患者の用量別の安全性の概要を示す。
【表3】


対象は、複数の重篤度基準による重篤なAEを有する可能性がある。
割合は、処置当たりの対象の総数を分母として算出した。
報告に使用したMedDRAバージョン:23.1
CTCAE v5.0を報告に使用する。
【0057】
3.1.3.3 有効性
予備的な有効性シグナルが、両方の投与スケジュール(アームA及びアームB)で観察された:
・アームAでは部分奏効(PR)が3人(全被験患者の10.3%に相当):1人はMDM2増幅性の胆管腺がん患者で腫瘍縮小率54%であり、2人はMDM2増幅性の高分化型脂肪肉腫(WDLPS)患者(図3参照)。アームAの1人の患者は2年を上回る奏効期間さえも示し(表4参照)、アームAでは19人の患者が病勢安定を経験した(処置された全患者の65.5%に相当)。
・アームBでは部分奏効(PR)が2人(全被験患者の8%に相当):1人はMDM2増幅性の高分化型脂肪肉腫患者で(表5参照)、1人はMDM2増幅性の膵腺がん患者で腫瘍縮小率が41%(図3参照)。アームBでは15人の患者が病勢安定を経験した(処置された全患者の60%に相当)。
【0058】
さらなる詳細については表3に概要が示されている。2種の投与スケジュール(アームA対アームB)の間に明らかな差は認められなかった。
【表4】

【0059】
全体として、患者の9%が部分奏効(PR)を経験し、63%が病勢安定化/病勢安定(SD)を示した。
「部分奏効(PR)」に至った薬剤候補(本明細書では式IのMDM2アンタゴニスト)による処置は、RECIST1.1基準(Eisenhauer et al, Eur. J. Canc. (2009), Vol. 45, pp. 228-247)に従って、処置前の標的病変の径和(=ベースラインの径和)を基準として、標的病変の径の合計が30%以上減少することと定義される。
「病勢進行(PD)」に至った薬剤候補(本明細書では式IのMDM2アンタゴニスト)による処置は、RECIST1.1基準(Eisenhauer et al, Eur. J. Canc. (2009), Vol. 45, pp. 228-247)に従って、試験中の標的病変の最小の径和(それが試験中の標的病変の最小の径和である場合はベースラインの径和を含む)を基準として、標的病変の径和の20%以上の増加と定義される。
「病勢安定(SD)」に至った薬剤候補(本明細書では式IのMDM2アンタゴニスト)による処置は、RECIST1.1基準(Eisenhauer et al, Eur. J. Canc. (2009), Vol. 45, pp. 228-247)に従って、試験中の標的病変の最小の径和(それが試験中の最小の径和である場合はベースラインの径和を含む)を基準として、PRに該当する十分な縮小もPDに該当する十分な増加も認められないことと定義される。
【0060】
脂肪肉腫患者のみ、より具体的には11人の患者の脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)患者をより詳細に分析したところ、PFS中央値の概算値は10.8か月前後と推定され、図1のスイマープロットに示されるように、かなりの数の患者が9か月を超えて無増悪生存を示した。DDLPS患者は、脂肪肉腫サブタイプの中で最も予後不良なサブタイプの1つであり、SOCドキソルビシンによる第一選択療法後の無増悪生存期間中央値(mPFS)は2~4か月の間と報告されていることから、早期の用量レベル(20mg D1 q3w及び15/15mg D1 D8 q4w)から始まるこれらの持続的な病勢の安定化は顕著であった(Italiano et, Ann. Oncol. (2012), Vol. 23, No. 6, pp. 1601-1607; Savina et al, BMC Medicine (2017), Vol. 15, pp. 78, Langmans et al, Onco. Res. Treat. (2019), Vol. 42, pp. 396-403)。
これらのデータは、個々の患者のプロファイルを検討する場合、さらに興味深いものである。実際に、表4に示されるように、式IのMDM2アンタゴニストの投与下で持続的な病勢安定を経験した患者の大半は、第一選択、第二選択、及び時にはさらなる段階の選択療法における以前の全身療法下で実際に進行していた。
【0061】
以下の表4は、アームAにおいて式IのMDM2アンタゴニストにより処置された脂肪肉腫患者の特徴を示す。
【表5】
【0062】
アームAと同様に、アームBの患者の特徴を表5に概要で示しており、これは、患者の大部分が式IのMDM2アンタゴニストの投与下で持続的に安定していたが、過去の第一選択、第二選択及びさらなる段階の選択療法下で進行していたことを示す。
【表6】
【0063】
3.1.3.4 ベイズロジスティック回帰モデル(BLRM)解析
アームA及びアームBにおける用量漸増は、過量投与管理によるBLRM("R13-4803 Neuenschwander B, Branson M, Gsponer T. Critical aspects of the Bayesian approach to phase 1 cancer trials. Stat Med 2008. 27: 2420-2439")によって決定され、導かれた。最大耐量(MTD)評価期間(第1サイクル)中に報告された用量制限毒性(DLT)に基づき、アームAにおける60mg及びアームBにおける45mgは、BLRMの主解析(DLT率が33%を超える事後確率が25%未満)からの過量投与管理による漸増(EWOC)基準並びにプロトコールに規定されたMTD基準を満たす最大用量であったことから、それぞれMTDとして提唱された。
【0064】
アームAについては、全サイクルにおける血液学的DLT、グレード4の血液学的AE、投与延期/減量/中止に至った血液学的AE、21日よりも長い血小板数回復(100.000 10^9/L超に)までの期間、及び21日よりも長い好中球数回復(1.5 10^9/L超に)までの期間を含む、全処置期間を通じてのさらなる目的の事象を考慮して、追加のBLRM解析を実施した。その結果、アームAにおける45mgは、対応する表6及び図2のBLRM感度分析において概要が示されているように、この追加のBLRM解析(40%を超える事象率の事後確率が25%未満)からのEWOC基準を満たす最大用量レベルであった。それ故に、第Ib相試験の用量拡大時の推奨用量(RDE)として45mgが提唱された。45mgの式Iの化合物(EWOC基準を満たす最大用量)のほかに、30mgの式Iの化合物も2番目に高い用量としてEWOC基準を満たす。
【0065】
【表7】


BLRM感度分析の結果を図2に示しており、45mg D1 q3wが第1サイクル以降も患者にとって安全な用量であることが確認された。
【0066】
3.1.3.5 結論
第Ia相用量漸増臨床試験(1403-0001)において、アームA(投与レジメン:D1 q3週;用量範囲:10~80mg)の29人の患者及びアームB(D1 D8 q4週;用量範囲:5~60mg)の25人の患者を含む54人の患者が、式IのMDM2アンタゴニストの単剤療法により処置された。安全性、BLRM、有効性並びに探索的PK及びPD分析に基づいて、単剤療法での式IのMDM2アンタゴニストの最大耐量(MTD)は、投与レジメンD1 q3w(アームA)では60mg、投与レジメンD1 D8 q4w(アームB)では45mgであると判定された。投与レジメンD1 q3wでの単剤療法における式IのMDM2アンタゴニストの用量拡大時の推奨用量(RDE)は45mgと決定された。
【0067】
3.1.4 試験1403-0002の結果によって裏付けられた、エザベンリマブと組み合わせた式IのMDM2アンタゴニストの用量設定
3.1.4.1 安全性
式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブ(抗PD-1 mAb)及び抗LAG3 mAbである抗LAG3-1との初期の3剤組合せを評価した試験1403-0002の用量漸増部分は、45mgの式IのMDM2アンタゴニストという用量レベルに達し、その用量レベルで登録された2人の患者にDLTは認められなかった(表7参照)。
【表8】

【0068】
さらに、15人の患者が、D1 q3wで投与された240mgのエザベンリマブと組み合わせた、式IのMDM2アンタゴニストの2剤組合せを投与された(10人の患者では30mg用量、5人の患者では45mg用量)。
・1人の患者でサイクル1中にDLTが生じた(グレード2):好中球減少症(45mgの式IのMDM2アンタゴニスト)
・サイクル1の後に4件のDLTが報告された:グレード3の貧血(30mgの式IのMDM2アンタゴニスト)、グレード2の血小板数減少症(45mgの式IのMDM2アンタゴニスト)、グレード3の好中球減少症(45mgの式IのMDM2アンタゴニスト)、グレード4の血小板数減少症(45mgの式IのMDM2アンタゴニスト)。
グレード3以上の有害事象は8人の患者で生じ、特に多かったのは貧血(6人の患者)、血小板数減少症(4人の患者)及びリンパ球減少症(3人の患者)であった。
したがって、30mg又は45mgの式IのMDM2アンタゴニストを単独でD1 q3w投与レジメンで処置した場合と同様に、30mg又は45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブ(D1 q3w)とを組み合わせた2剤組合せも、管理可能な安全性プロファイルを示した。
【0069】
3.1.4.2 1403-0002に関する有効性の概要
11人の患者に対して、式IのMDM2アンタゴニスト、エザベンリマブ(抗PD-1 mAb)及び抗LAG3 mAbである抗LAG3-1の3剤組合せを、式IのMDM2アンタゴニストの10mg D1 q3wから開始して45mg D1 q3wまで、この3剤組合せについての追跡を中止するまで投与した。
有効性の予備的徴候は、MDM2増幅性の脂肪肉腫の1人の患者及びMDM2増幅性の尿路上皮がんの1人の患者において2件の部分奏効(PR)が観察された。加えて、7人の患者が病勢安定化を経験した(全被験患者の63.6%に相当する)。表8に患者の転帰をまとめている。
【0070】
【表9】


3剤組合せ療法の追跡が中止された後、試験1403-0002は、式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブとの2剤組合せで再開された。式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブとの間に重複する毒性は予想されず、45mgの用量レベルを超える用量漸増は計画されなかったため、45mgの式IのMDM2アンタゴニストは、240mgのエザベンリマブq3wとの組合せ療法についても同じく推奨用量となった。
【0071】
要約すると、26人の患者(11人の患者が式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブ及び抗LAG3抗体である抗LAG3-1との3剤組合せの投与を受け、15人の患者が式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブのみとの2剤組合せの投与を受けた)が、試験1403-0002に登録された(10人の患者では30mg用量の式IのMDM2アンタゴニスト、5人の患者では45mg用量の式IのMDM2アンタゴニストが、D1 q3wで投与された240mgのエザベンリマブとそれぞれ組み合わされた)。
2剤療法(式IのMDM2アンタゴニストとエザベンリマブとの組合せ)を受けた15人の患者中9人が、腫瘍反応について評価可能であった(図5参照):
・4人の患者で、確定した部分奏効(PR)が認められた:1人の患者は30mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの組合せ投与(D1 q3w)を受け、3人の患者は45mgの式IのMDM2アンタゴニストと240mgのエザベンリマブとの組合せ投与(D1 q3w)を受けていた(胆道がんの2人の患者、尿路上皮がんの1人の患者、及び粘液型脂肪肉腫の1人の患者を含む)。
・腺がんの1人の患者で、未確定のPR(30mgの式IのMDM2阻害剤と240mgのエザベンリマブとの組合せ、D1 q3w)が認められた。
・様々な腫瘍タイプの4人の患者で、病勢安定が認められた(図5参照)。
以上を総合すると、図4及び図5に示されているように、単剤療法試験及び組合せ療法試験の両方で、その大多数がMDM2増幅性の腫瘍タイプである種々の腫瘍タイプにおいて、PRを伴う抗腫瘍活性の初期徴候が示された。
【0072】
3.1.5 MDM2非増幅性のがんの患者でも病勢安定化が認められた
試験1403-0001(両アーム、表3参照)で認められたように、患者のうち全体で9%が部分奏効(PR、少なくとも30%の腫瘍縮小)を経験し、被験患者のうち全体で63%が病勢安定化(SD、+20%~-30%の間の腫瘍増殖の変化)を示した。
図4に概要が示されているように、持続的な病勢安定化は、予想通り、主にMDM2増幅性腫瘍で認められ、これらの大半は脂肪肉腫患者で認められた。しかし、驚いたことに、p53 WT及び「MDM2非増幅性のがん」の患者(例えば、FISH(Song et al, Appl Immunohistochem Mol Morphol, 2017, vol. 25(10), pp. 712-719に記載されている蛍光インサイチューハイブリダイゼーション)によって決定されるコピー数(CN)=1の患者)でも、持続的な病勢安定化の症例が数例観察された:
・「MDM2非増幅性の平滑筋肉腫」の1人の患者は、式IのMDM2アンタゴニストによる処置により、14か月以上にわたって病勢安定を経験した
・「MDM2非増幅性の平滑筋肉腫」の1人の患者は、式IのMDM2アンタゴニストによる処置により、10か月以上にわたって病勢安定を経験した
・「MDM2非増幅性の平滑筋肉腫」の1人の患者は、式IのMDM2アンタゴニストによる処置により、7か月以上にわたって病勢安定を経験した。
したがって、驚いたことに、この臨床データは、式IのMDM2アンタゴニストによる処置が、p53野生型であるがMDM2非増幅性である腫瘍においても有効であることを示している。
【0073】
3.1.6 薬物動態及びヒトでの用量予測
予備的な薬物動態(PK)データを、用量決定のための裏付け情報として使用した。ヒトでの治療用量は、マウスSJSA-1異種移植実験で決定された最小有効AUC0-168が30,700nM*h(QW)であることに基づいて予測された。このために、ヒトとマウスとの間での血漿中タンパク質結合の差を考慮に入れたところ、ヒトにおけるQW投与の有効AUC0-168は11,350nM*hと換算された。ヒトでの治療用量は、QW投与で64mg(遊離酸)と予測された。対応するCmaxは680nMと予測された。
【0074】
試験1403-0001において最初に処置された45人の患者から、予備的なPKデータが得られた。探索的PK分析は計画された採血時点に基づいており、これらの患者からのすべての試料がまだ分析されたわけではないため、結果が変わる可能性がある。したがって、AUCは不完全である可能性がある。加えて、現時点で得られている探索的PKの結果が限られていることから、式IのMDM2アンタゴニストの吸収、分布及び排出に関する情報は記述的なものである。
【0075】
得られたPKの結果は、式IのMDM2アンタゴニストの血漿中曝露量は用量増加とともに増加すること、及び15mg以上の用量レベルでは曝露量(Cmax及びAUC0-inf)が予測された治療曝露量を上回ることを示している(表9及び表10参照)。特に、表9は、30mg又は45mgの式IのMDM2阻害剤を3週間に1回(D1q3w)投与された患者では、曝露量(Cmax及びAUC0-inf)が、予測された治療曝露量を明らかに上回ったことを示している。したがって、予備的なPKの結果は、45mg(あるいは30mgであっても)を3週間に1回(D1q3w)の投与レジメンと組み合わせる用量選択を裏付けるものである。式IのMDM2アンタゴニストのtmaxは、一般に、錠剤摂取後4~6時間の間である。半減期は27.9~60.9時間の範囲である。予備的なPKデータに基づくと、式IのMDM2アンタゴニストはヒトにおけるクリアランスが低く、分布容積も非常に小さい。
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】

【0078】
3.1.7 第一選択療法
「第一選択処置又は第一選択療法」という用語は、通常、腫瘍学については、切除不能/手術不能な進行性又は/及び転移性のがんを有する患者に対して、緩和目的(すなわち、非治癒目的/延命目的)での初期処置として、全身的な抗がん療法を施すことを意味する(Saini et al, Brit. J. Canc. (2021), Vol. 125 pp. 155-163; Judson et al, Lancet Oncology (2014), Vol. 15, pp. 415-423)。
【0079】
試験1403-0001では、アームAの1人のDDLPS患者(表4参照)及びアームBの1人のDDLPS患者(表5参照)は、いずれも全身療法を過去に受けておらず、長期の病勢安定を経験し、それぞれ342日及び542日にわたって処置を首尾良く継続した。DDLPS患者は、ドキソルビシンによる標準治療(SOC)第一選択療法の後であっても無増悪生存期間中央値(mPFS)が2~4か月と報告されており、脂肪肉腫のサブタイプの中で最も予後不良なものの1つであることから、全身療法歴のないDDLPS患者におけるこれらの持続的な病勢安定は注目に値するものであった。このことは、式IのMDM2アンタゴニストによる処置が、脱分化型脂肪肉腫患者の「第一選択処置」又は「一次処置」のためにも好適であり、ドキソルビシンによる十分に確立されたSOC処置よりも、脱分化型脂肪肉腫患者においてさらに優れた治療効果を示すように思われることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】