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特表2024-530046生体模倣ペプチド及び骨再生におけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】生体模倣ペプチド及び骨再生におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240806BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240806BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20240806BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C07K7/08
A61K38/10 ZNA
A61P1/02
A61P19/08
A61K8/00
A61K8/64
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/70
A61K9/107
A61K45/00
A61L27/22
C07K14/78
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508108
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022071898
(87)【国際公開番号】W WO2023016904
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021000021557
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】524050947
【氏名又は名称】シルク バイオマテリアルズ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビアジョッティ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】フレディ、ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドリノ、アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】シローニ、マウリッツォ
(72)【発明者】
【氏名】ピエラッチーニ、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ダピアッジ、フェデリコ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA29
4C076AA71
4C076BB22
4C076BB32
4C076CC09
4C081AB02
4C081AB06
4C081BA12
4C081CD112
4C081DA02
4C083AA071
4C083AB291
4C083AC121
4C083AD041
4C083AD091
4C083AD111
4C083AD211
4C083AD261
4C083AD301
4C083AD331
4C083AD341
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD431
4C083AD451
4C083DD08
4C083DD12
4C083DD17
4C083DD31
4C083DD41
4C083DD42
4C083EE32
4C083EE33
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA13
4C084MA27
4C084MA28
4C084MA32
4C084MA43
4C084MA55
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA67
4C084ZA96
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA17
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、ヒドロキシアパタイト(Hap)沈着方法を活性化することによって骨再生を可能にする共通のペンタペプチド配列を有する生体模倣ペプチドに関する。医薬としての、特に骨、歯(象牙質及びエナメル質)及び歯周再生の分野における、ならびに金属、セラミック、又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の機能化におけるそれらの使用も記載される。そのようなペプチドを含む医薬組成物及び化粧品組成物がさらに記載され、骨、歯及び歯周再生における医薬としての使用、その化粧品使用、ならびに金属、セラミック、又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の機能化におけるその使用がさらに記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)からなるペプチド:
Xaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)
ただし、
‐Xaa1がVal-Asn-Gly-Gly-Tyr(配列番号6)である場合、
Xaa2はAla-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であるか、又は
Xaa2はAla-Trpであり;

‐Xaa1が存在しない場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であり、そして

‐Xaa1がGly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr(配列番号8)である場合、
Xaa2は存在せず、前記ペプチドは、下記からなる群から選択されるペプチドである:
配列番号1 Val-Asn-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe、
配列番号2 Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe、
配列番号3 Gly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr、及び
配列番号4 Val-Asn-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp。
【請求項2】
医薬としての使用のための、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
骨、歯及び歯周の再生の使用のための、請求項1~2のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項4】
骨、歯及び歯周の再生が、前記骨、歯又は歯周組織の病理の処置におけるものである、請求項3に記載の、使用のためのペプチド。
【請求項5】
骨、歯又は歯周組織の病理が、骨折、骨間隙、肉腫、象牙質知覚過敏、膿漏を含む群から選択される、請求項4に記載の使用のためのペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の1つ又は2つ以上のペプチド、それらの塩、及び、生物医学の分野、化粧品の分野又は製薬の分野で許容され得る賦形剤又は添加剤を含む、組成物。
【請求項7】
ヒアルロン酸及び/又はその塩、キトサン、アルギン酸、絹フィブロイン、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、ポロキサマー、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカプロラクトン(PCL)、バイオガラス、ヒドロキシアパタイト、カルシウム塩、脱細胞化骨マトリックス、ペクチン、セリシン、セルロース、フィブリン及びそれらの組み合わせをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、ゲル、ペースト、フォーム、パテ、粉末、膜、布地、圧縮固体粒もしくはフィルムの形態であるか、又はミセル要素もしくは粒子、中空繊維もしくはナノ繊維、膜、セラミックもしくはナノチューブ、多孔質及び/もしくは小柱金属構造、織物製品、ナノバブル、ゾルゲルもしくはそれらの組み合わせ内に含有/吸着される、請求項6及び7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
医薬としての使用のための、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のペプチドを含む組成物。
【請求項10】
骨、歯及び歯周の再生に使用するための、請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
金属、セラミック又は天然もしくは合成ポリマー材料中のプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の機能化のための、請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物の、化粧品としての使用(cosmetic use)。
【請求項13】
金属、セラミック又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の機能化のための、請求項1に記載のペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシアパタイト(Hap)沈着方法を活性化することによって骨再生を可能にする共通のペンタペプチド配列を有する生体模倣ペプチドに関する。医薬としての、特に骨、歯(象牙質及びエナメル質)及び歯周再生の分野における、ならびに金属、セラミック、又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の機能化におけるそれらの使用も記載される。そのようなペプチドを含む医薬組成物及び化粧品組成物がさらに記載され、骨、歯及び歯周再生における医薬としての使用、その化粧品使用、ならびに金属、セラミック、又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の機能化におけるその使用がさらに記載される。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアパタイト(HAp)及びタンパク質のアセンブリは、脊椎動物における骨及び歯の形成の根底にある重要な方法である。人体は、HAp沈着の調節因子として有機分子を使用して、これらの階層的に構造化された有機-無機ハイブリッド複合体を製造することができる。
【0003】
リン酸カルシウム(CaP)の結晶形態であるHAp[Ca10(PO(OH)]は、骨、象牙質及びエナメル質の主成分である。これらの硬組織では、HApは、様々な種類のタンパク質と組み合わせて、独特の形態学的、構造的及び機械的特性を有する高度に組織化された階層構造を形成する。
【0004】
骨は、65~70%の鉱物成分、主にHAp、及び30~35%の有機分子によって形成される。有機成分は、主にI型コラーゲン、様々な他の非コラーゲン性型タンパク質及びグリコサミノグリカンを含む。
【0005】
I型コラーゲンの組織化は、骨組織におけるHApの沈着にとって重要である。I型コラーゲンの2つのα-1鎖及び1つのα-2鎖は、コラーゲン原線維の基本単位、すなわちトロポコラーゲンを構成する。トロポコラーゲン単位は高度に整列した構造を形成し、「ホールゾーン」と呼ばれ、高い電荷密度を有するフィブリル間のギャップ領域は、鉱物成分の核生成が起こる重要な部位である。
【0006】
骨シアロタンパク質、オステオネクチン、オステオポンチン、オステオカルシン及び象牙質マトリックスタンパク質などの非コラーゲン型タンパク質は、トロポコラーゲンに結合し、HApのミネラル化を制御する。これらのタンパク質は、それらの配列中に高密度の酸性アミノ酸残基を包含し、これらはCa2+イオンに対して高い親和性を有する。
【0007】
歯のエナメル質は、重量で95%を超え、有機成分で1%未満の鉱物成分で構成される。骨に存在するI型コラーゲンの代わりに、エナメル質におけるHApのミネラル化の最も重要な役割は、他のタンパク質(アメロブラスチン、アメリン、シーテリン、エナメリン、及びマトリックスメタロプロテイナーゼ20)の寄与と共にアメロゲニンによって果たされる。自己集合したアメロゲニン及び鉱物核生成前基のナノスフェアは、複合ナノ粒子を形成し、次いで、これが直鎖及び平行マトリックスに集合し、エナメル質の細長い結晶の束が形成される。
【0008】
骨及び歯の欠損及び/又は間隙の修復は、自家移植片(他の身体部位から採取された患者自身に由来する骨の使用)又は同種移植片(死体由来の骨材料)によって行うことができる。どちらの場合も、採取部位の欠如(自家移植片)又は免疫原性の問題(同種移植片)に起因して、しばしば克服できない問題が生じ得る。
【0009】
これらの理由から、骨及び歯の修復のための新しい材料の研究及び開発は、話題性の高い問題である。組織工学の原理を参照として、組織及び器官の再生は、操作された構築物の移植によって達成することができる。操作された構築物の成功は、足場、刺激因子及び場合によっては細胞の適切な組み合わせの使用に依存する。
【0010】
有機分子を含むHApのミネラル化の根底にある機構の理解は、新しい機能性材料の設計のための着想の源となっている。多くの研究者は、バイオミネラリゼーション方法を模倣する生物学的条件下で、有機分子、主にタンパク質を使用してHApの有機ハイブリッドの形成を研究してきた。
【0011】
タンパク質に関する限り、インビボでのHApのバイオミネラリゼーションに関連するものは、常に、タンパク質-HApハイブリッドの産生の理想的な候補と考えられてきた。実際、骨及び歯におけるHAp沈着を調節する有機成分であるコラーゲン及びアメロゲニンを含むHApのミネラル化は、非常に徹底的に研究されている。骨及びエナメル質におけるHAp沈着の制御を助ける非コラーゲン型タンパク質及びアメロゲニン以外のタンパク質もまた、タンパク質-HApハイブリッドの調製に使用されている。細胞の存在下又は非存在下で骨再生のための足場として使用されるこれらの有機-無機ハイブリッドはすべて、細胞の骨形成分化を促進し、新しい骨の形成及び一体化を改善することによって肯定的な結果を提供した。
【0012】
HApの有機ハイブリッドを生成するために使用されるタンパク質は、骨及び歯のミネラル化に関連するものに限定されない。絹タンパク質は、それらの高い生体適合性ならびに機械的及び構造的特性のために、HApの核生成及び沈着のためのモデルタンパク質として使用されてきた。
【0013】
タンパク質に加えて、多糖類(例えば、キチン、キトサン、コンドロイチン硫酸)などの他の天然高分子は、HAp沈殿を誘導及び調節することができる基質としていくつかの関心を集めている。同様に、細菌セルロースナノファイバーは、コラーゲンに基づく構造を再現してHAp沈着を誘導することができるモデルとして使用されてきた。
【0014】
最近現れた非常に興味深い代替法は、骨再生のための足場内に包含される場合にHAp核生成を活性化することができる基質としての生体模倣ペプチドの使用である。ペプチドは、目的の配列の直接合成及び遺伝子工学的方法の両方によって容易に産生され得る。目的の配列は、インシリコで設計することができ、又は細胞外マトリックスタンパク質の活性ドメイン及びインビボ骨ミネラル化の方法に直接関与するタンパク質の大きなファミリー(例えば、I型コラーゲン、非コラーゲン性タンパク質、アメロゲニンなど)の活性ドメインから誘導することができ、次いで、骨再生のための足場を機能化するために、及び/又はペプチド-HApハイブリッドを調製するために直接使用することができる。
【0015】
これらの生体模倣ペプチドは、骨再生のためにマトリックス内で様々な機能を果たし得る:それらは骨伝導活性を有し、HAp核生成及び沈着に好ましくあり得、骨誘導活性を有し、したがって細胞の接着、骨芽細胞株におけるそれらの増殖及び分化に好ましくあり得、インビボ骨再生のための重要なステップを表す血管新生の方法に関与することもできる。実行される機能に応じて、生体模倣ペプチドは、インプラントを取り囲む環境へのそれらの拡散が必要とされるか否かに応じて、様々な位置(表面上、塊中)及び遊離又は結合形態で足場に組み込むことができる。
【0016】
骨、歯周及び歯の修復のための新しい材料の開発における特定の関心は、自家移植片又は同種移植片の場合に遭遇する困難と共に、骨再生の分野における欠陥の修復のための新しいアプローチを特定する必要性の基礎となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、HAp核生成現象を活性化及び加速することによって骨再生を可能にする新規な生体模倣ペプチドを提供することであり、これは同じ用途で知られている異なるペプチド又はタンパク質に見られる欠点を示さない。特に、BMP(骨形態形成タンパク質)のファミリーに属するタンパク質は、極端なインビボ反応性及び高い製造コストに関連するいくつかの欠点を有する。このファミリーの2つの異なるメンバー:BMP-2及びBMP-7が商業的に利用されている。BMP-7を含有する製品は、非常に限られた領域での使用についてのみ規制上の承認を受けた後、それらの安全性についての深刻な疑念の発生後に市場から撤退した。実際、単純な刺激から修復手術介入を必要とする重篤な感染症に至るまで、様々な副作用の症例が報告されている。BMP-2に基づく製品(特に、その組換えバージョンrH-BMP-2)が現在代わりに市販されており、特定の数の用途のための標準的なケアを表し、しばしば自家骨の使用と競合している。しかしながら、時間の経過とともに、かなり多数の研究が、このペプチドの使用と直接相関する可能性があり最初の臨床試験では特定されない多くの副作用(さらにはかなり深刻なものもある)を強調している。主なものの中でも、骨溶解、泌尿器系の問題、疼痛の出現、及びより高い投与量の場合、腫瘍を発症するリスクの増加を挙げることができる[E.J.Carragee et al.The Spine Journal 11(2011)471-491]。また、rH-BMP-2を含有する製品は、コストが非常に高い。ペプチドに関する限り、代わりに、1型コラーゲンに由来する配列が現在臨床で使用されており;P-15として知られるこの配列は、細胞接着を刺激する非常に高い能力を有する[H.Nguyen et al.Biochemical and Biophysical Research Communications 311(2003)179-186];しかしながら、骨組織形成を促進するのに有効であるためには、発達及び分化するのに好ましい環境を誘引された細胞に提供する予め形成された支持体、通常は骨マトリックスに結合されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、一般式(I)からなる生体模倣ペプチドに関する:
Xaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)
式中、
-Xaa1がVal-Asn-Gly-Gly-Tyr(配列番号6)である場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であるか、
又は
Xaa2は、Ala-Trpであり;
-Xaa1が存在しない場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であり、
及び
-Xaa1がGly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr(配列番号8)である場合、
Xaa2は、存在しない。
【0019】
記載される生体模倣ペプチドは合成的性質のものである。
【0020】
別の態様では、本発明は、医薬としてのペプチドの使用を記載する。
【0021】
別の態様では、本発明は、骨、歯(象牙質及びエナメル質)及び歯周再生における本発明のペプチドの使用に関する。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、互いに同じ又は異なる1つ又は2つ以上のペプチド、それらの塩、及び、生物医学、化粧品又は製薬の分野で許容され得る賦形剤又は添加剤を含む組成物を記載する。
【0023】
医薬としての本発明による組成物の使用も記載される。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、骨、歯(象牙質及びエナメル質)及び歯周再生における組成物の使用を記載する。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載のペプチドを含む医薬組成物又は化粧品組成物の使用、又は金属、セラミック又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の表面機能化のための同ペプチドの使用を記載する。
【0026】
さらなる実施形態では、一般式(I):
本発明によって記載されるXaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)を有するペプチドを含む、組成物の化粧品使用が記載される。
【0027】
従属請求項は、本発明のさらなる実施形態を記載する。
【0028】
ここで、以下の添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】フィブロインフォームのSEM画像。A:SBF中で14日間インキュベートしたペプチドフリーのフィブロインフォーム。B:SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号3)で機能化されたフィブロインフォーム。C:鉱物沈着物の形態を示す、画像Bの高倍率詳細。D:SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号4)で機能化されたフィブロインフォーム。E:SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号2)で機能化されたフィブロインフォーム。F:鉱物沈着物の蓄積を示す、画像Eの高倍率詳細。
図2】フィブロインフォームのIRスペクトル。(a)SBF中でインキュベートしなかったペプチドフリーのフィブロインフォーム。(b)SBF中で14日間インキュベートしたペプチドフリーのフィブロインフォーム。(c)SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号3)で機能化されたフィブロインフォーム。(d)SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号4)で機能化されたフィブロインフォーム。(e)SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号2)で機能化されたフィブロインフォーム。破線の長方形で囲まれた領域は、リン酸基及び炭酸基の伸縮振動に特徴的なスペクトル領域1100~900cm-1を特定する。
図3】SBF中で14日間インキュベートした、生体模倣ペプチド(配列番号4)で機能化されたフィブロインフォームのSEM/EDXスペクトル。上部のSEM画像は、2つの結晶形態が存在する試料の領域を示しており、右側には大きなサイズの規則的な形状の結晶が支配的であり(オブジェクト10438)、左側には小さなサイズの結晶の結合からなる結晶凝集体が明らかである(オブジェクト10437)。結晶「オブジェクト10438」の化学組成は、ナトリウム(Na)及び塩素(Cl)の元素の存在によって支配され、カルシウム(Ca)及びリン(P)は完全に存在しない。対照的に、凝集体「オブジェクト10437」は、カルシウム(Ca)及びリン(P)の強いシグナルを有する。両方のスペクトルに共通する炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、金(Au)及びパラジウム(Pd)の元素に関するシグナルは、フィブロインフォームの有機的性質(C、O、N)及び試料調製方法(Au/Pdスパッタリング)を反映する。
図4】ヒト間葉系幹細胞の非存在下(MSCなし)又は存在下(+MSC)でインキュベートした、非機能化(SF)及び生体模倣ペプチド(配列番号2;配列番号3;配列番号4)で機能化されたフィブロインフォームを完全培地中で7日間維持した。その後、フォームを脱細胞化し、von Kossa染色で染色して、カルシウム沈着物を強調した(A)。von Kossa染色によってカバーされる面積のパーセンテージをImageJソフトウェアを使用して計算し、グラフB及びCに報告した。沈着カルシウムの量は、MSC細胞の非存在下(B)及び存在下(C)の両方において、生体模倣ペプチドで機能化されたフィブロインフォームでは非機能化フォームよりも常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、HAp核生成及び沈着の方法を活性化及び加速することによって骨再生を可能にするという特徴を有する、合成的性質の新規な生体模倣ペプチドの同定に関する。
【0031】
生体模倣ペプチドは、一般式(I)からなる:
Xaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)
式中、
-Xaa1がVal-Asn-Gly-Gly-Tyr(配列番号6)である場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であるか、
又は
Xaa2は、Ala-Trpであり;
-Xaa1が存在しない場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であり、
及び
-Xaa1がGly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr(配列番号8)である場合、
Xaa2は、存在しない。
【0032】
本明細書に記載されるすべてのペプチドは、共通して配列番号5のペンタペプチド配列を有する。
【0033】
有利には、好ましい実施形態では、ペプチドは、以下:
配列番号1 Val-Asn-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe、
配列番号2 Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe、
配列番号3 Gly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr、及び
配列番号4 Val-Asn-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trpからなる群から選択される。
【0034】
配列番号1~4のすべてのペプチドは、共通して配列番号5のアミノ酸コアを有する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、HAp沈着方法の核生成現象を活性化及び加速することによってペプチドに骨再生の能力を可能にするのは、まさにこの5つのアミノ酸のコア(ペンタペプチド)であると思われる。
【0035】
これらのペプチドは、細胞接着及び増殖を促進することが知られている米国特許第7193038号に記載されているペプチドが絹フィブロインマトリックスに添加される試験を通して本発明者らによって同定された。
【0036】
本発明によるペプチドが添加されたマトリックス(特に電界紡糸表面、ゲル、ペースト及びフォーム)は、細胞の存在下及び完全非存在下の両方で骨成長に好ましい環境でインキュベートされた機能化マトリックス上であっても、好ましい細胞増殖及びヒドロキシアパタイト前駆体の沈着を伴うミネラル化方法の迅速な開始を促進した。
【0037】
この結果が機能化に使用されたペプチドの存在に起因することを確認するために、同じ環境であるが機能化されていないマトリックスで実験を行ったところ、予想通り、鉱物成分の(有意な)核生成はなかった。
【0038】
本発明の第2の態様は、一般式(I)を有するペプチドの医薬としての使用に関する:
Xaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)
式中、
-Xaa1がVal-Asn-Gly-Gly-Tyr(配列番号6)である場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であるか、
又は
Xaa2は、Ala-Trpであり;
-Xaa1が存在しない場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であり、
及び
-Xaa1がGly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr(配列番号8)である場合、
Xaa2は、存在しない。
【0039】
さらに別の態様では、本発明による一般式(I)を有するペプチドの、HAp核生成のための基質としての骨、歯(象牙質及びエナメル質)及び歯周の再生における使用が記載される。
【0040】
好ましい実施形態では、前記骨、歯及び歯周の再生が、骨、歯又は歯周組織の病理の処置におけるものであるか、又は特定の外科技術によって必要とされる。
【0041】
さらにより好ましい実施形態では、骨、歯又は歯周組織の前記病理は、骨折、骨間隙、肉腫、象牙質知覚過敏、膿漏を含む群から選択され、外科技術は、後外側脊椎固定術、固定術を伴う前頸部椎間板切除術、後腰椎椎間固定術、経椎間腰椎椎間固定術、整形外科用体内プロテーゼ埋め込み術、上顎洞リフト、整形外科用体内プロテーゼの修正、椎骨形成術、歯の埋め込みを含み得る。
【0042】
第4の態様では、本発明は、互いに同じ又は異なる1つ又は2つ以上のペプチド、それらの塩、及び、生物医学、化粧品又は製薬の分野で許容され得る賦形剤又は添加剤を含む組成物を記載する。
【0043】
本発明の組成物は、ヒアルロン酸及び/又はそれら塩、キトサン、アルギン酸、絹フィブロイン、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、ポロキサマー、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカプロラクトン(PCL)、バイオガラス、ヒドロキシアパタイト及び相関化合物、カルシウム塩、脱細胞化骨マトリックス、ペクチン、セリシン、セルロース及びそれらの誘導体、フィブリンならびにそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0044】
好ましい実施形態では、互いに同じ又は異なる1つ又は2つ以上のペプチド、それらの塩及び薬理学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物は、ゲル、ペースト、膜、布地、フォーム、パテ、粉末、粒、圧縮固体、フィルムの形態であるか、又はミセル要素もしくは粒子要素、繊維、ナノ繊維、中空繊維、中空ナノ繊維、膜、セラミック、ナノチューブ、多孔質及び/もしくは小柱金属構造、織物製品、ナノバブル、ゾルゲル、これらのシステムの組み合わせ、ならびにこれらのシステム及びそれらの組み合わせを含有する複合材料内に含有/吸着される。ゲル又はペーストの形態のこの組成物は、練り歯磨きであり得る。
【0045】
さらに好ましい実施形態では、互いに同じ又は異なる1つ又は2つ以上のペプチド、それらの塩及び化粧品製剤に許容され得る賦形剤を含む化粧品組成物は、ゲル、ペースト、膜、布地、フォーム、パテ、粉末、粒、圧縮固体、フィルムの形態であるか、又はミセル要素もしくは粒子要素、繊維、ナノ繊維、中空繊維、中空ナノ繊維、膜、セラミック、ナノチューブ、多孔質及び/もしくは小柱金属構造、織物製品、ナノバブル、ゾルゲル、これらのシステムの組み合わせ、ならびにこれらのシステム及びそれらの組み合わせを含有する複合材料内に含有/吸着される。ゲル又はペーストの形態のこの組成物は、練り歯磨きであり得る。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、骨、歯及び歯周再生における組成物の使用を記載する。
【0047】
一般式(I)のペプチド:
Xaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)
式中、
-Xaa1がVal-Asn-Gly-Gly-Tyr(配列番号6)である場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であるか、
又は
Xaa2は、Ala-Trpであり;
-Xaa1が存在しない場合、
Xaa2は、Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe(配列番号7)であり、
及び
-Xaa1がGly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr(配列番号8)である場合、
Xaa2は、存在せず、
配列番号1~4の配列によって記載され、上記の絹フィブロインマトリックスの機能化に使用される。
【0048】
医薬としての本発明による組成物の使用も記載される。
【0049】
さらに別の態様では、本発明は、金属、セラミック又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の表面機能化のための、本明細書に記載のペプチドを含む医薬組成物又は化粧品組成物の使用を記載する。
【0050】
本発明はさらに、金属、セラミック又は天然もしくは合成ポリマー材料で作られたプロテーゼ、スクリュー、固定具、インサート又は支持体の表面機能化のための、本発明のペプチドの仕様を記載する。さらなる実施形態では、一般式(I):
本発明によって記載されるXaa1-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Xaa2(配列番号5)を有するペプチドを含む、組成物の化粧品使用が記載される。
【0051】
本発明の実施形態の以下の例を例示として以下に報告する。
【0052】

例1:
生体模倣ペプチドの合成
配列番号5のペンタペプチドが存在するいくつかのペプチドが合成された。ヒドロキシアパタイト前駆体の沈着により高度のミネラル化を誘導する能力を示した最も有望な配列は、以下の通りである:
配列番号1 Val-Asn-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe、
配列番号2 Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp-Ser-Ser-Glu-Ser-Asp-Phe、
配列番号3 Gly-Pro-Tyr-Val-Ala-His-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr、及び
配列番号4 Val-Asn-Gly-Gly-Tyr-Ser-Gly-Tyr-Glu-Tyr-Ala-Trp。
【0053】
ペプチドは、マイクロ波を用いて固相ペプチド合成プロトコルに従って合成した。支持体としては、Wang樹脂を用いた。各カップリングは、樹脂の初期充填量の5倍を超えて作業することによって行い、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(ジメチルホルムアミド(DMF)中0.5M)及びカップリング剤Oxyma Pure(登録商標)(DMF中1M)をカップリング剤として使用した。樹脂からの開裂は、フェノール、トリイソプロピルシラン(TIS)、チオアニソール(TAN)、HO及びトリフルオロ酢酸(TFA)の混合物(4/4/4/2/86)を用いて行った。配列を半分取RP-HPLCによって精製した。
【0054】
例2:
生体模倣ペプチドで機能化されたフィブロインフォームの調製
以下の手順を採用して、生体模倣ペプチドで機能化されたフィブロインのマトリックスを凍結乾燥フォームの形態で調製した:
a)フィブロイン水溶液を調製するために、5gの脱ガムした絹に50mlの臭化リチウム9.3M水溶液を加えた。60℃の恒温槽で3時間インキュベートした。インキュベーション期間の終わりに、溶液を濾過し、100mlの蒸留水で希釈し、透析バッグに移し、塩が完全に除去されるまで蒸留水に対して2日間透析した。このようにして得られたフィブロインの水溶液を透析バッグから回収し、濾過した後、生体模倣ペプチドを添加した;
b)生体模倣ペプチドの水溶液を調製するために、50mgのペプチドを2.5mlの蒸留水で可溶化した。
c)生体模倣ペプチドを含有するフィブロイン溶液を調製するために、10mlのフィブロイン水溶液に2.5mlの生体模倣ペプチド水溶液を加えた。生体模倣ペプチドを含まないフィブロイン溶液を調製するために(ブランク)、10mlのフィブロイン水溶液に2.5mlの水を添加した。
d)凍結乾燥フォームを調製するために、0.1mlの溶液(c)をマイクロピペットで取り、対応する容積の容器に移し、-20℃で24時間凍結した。その後、容器を凍結乾燥機に入れ、氷が昇華によって完全に除去されるまで48時間凍結乾燥させた。凍結乾燥後、フォームをメタノールに浸漬することによって固化させ、室温で乾燥させた。
【0055】
このようにして得られたフィブロインフォーム試料を、その後の使用まで室温でデシケーター内に保存した。
【0056】
例3:
骨成長のための好ましい環境(細胞の非存在下)における生体模倣ペプチドで機能化されたフィブロインフォームのインキュベーション
生体模倣ペプチド機能化フォームをインキュベートした溶液は、Kokubo and Takadamaの方法に従って調製した(Kokubo T.,Takadama H.How useful is SBF in predicting in vivo bone bioactivity?Biomaterials 2006 27(15):2907-2915)。この溶液は、以後、頭字語SBF(Simulated Body Fluid:模擬体液)によって識別される。
【0057】
SBF中のフォームのインキュベーションを、以下の実験条件下で行った:
-フォーム重量:4mg
-SBF溶液の容積:40ml
-温度:37℃
-最大インキュベーション期間:14日間
-SBF溶液の交換:3日毎
【0058】
インキュベーション期間の終わりに、フォームを取り出し、蒸留水で穏やかにすすぎ、その後の分析の前に室温で乾燥させた。
【0059】
例4:
SBF中でインキュベートしたフィブロインフォームの走査型電子顕微鏡(SEM)による形態学的特性評価
フィブロインフォーム試料を、両面接着テープを用いて直径1cmのSEM検体ホルダ(スタブ)に固定した。次いで、スタブを金/パラジウムプラズマ(スパッタコーターDesk IV、Denton Vacuum,LLC)中での曝露によってスパッタコーティングし、走査型電子顕微鏡(Zeiss EVO MA10)で分析した。得られた結果を図1に報告する。
【0060】
試験したすべての試料、非機能化フィブロインフォーム(ブランク)及び生体模倣ペプチドで機能化されたフィブロインフォームは、多面体結晶様構造を有する材料の表面沈着を有し、これはフォームを構成するバックグラウンドのポリマー材料よりもはるかに明るく見える。これらの特性(規則的な構造及び電子ビームへの曝露時の高い応答強度)は、無機材料に典型的である。
【0061】
無機沈着物の密度は、機能化フィブロインフォーム試料ではブランク(非機能化フィブロインフォーム)よりも有意に高い。
【0062】
例5:
SBF中でインキュベートしたフィブロインフォームの赤外分光法(ATR-FTIR)による特性評価
フィブロインフォーム試料を、ATR Platinum Diamondアクセサリを備えたALPHA FTIR分光計(Bruker)を用いて、波長数範囲4000~400cm-1において、4cm-1の分解能で、赤外分光法によって分析した。得られたスペクトルを図2に報告する。
【0063】
SBF中でインキュベートしたサンプル(ブランク及び生体模倣ペプチドで機能化したフォーム)のスペクトルを参照試料(SBF中でインキュベートしていないフィブロインフォーム)と比較することにより、インキュベートした試料が、参照には存在しないスペクトル範囲1100~900cm-1のIRバンドを示すことを観察することができる。これらのバンドは、ホスファートやカルボナートなどの基の伸縮振動に起因する。したがって、これらのIRバンドの存在は、SBF中のインキュベーション方法に起因する。ブランク及び生体模倣ペプチドで機能化されたものの両方の、SBF中でインキュベートされたスポンジ試料はすべて、これらのIRバンドを示す。しかし、例4で報告された形態学的観察によれば、バンドの強度が生体模倣ペプチドで機能化された試料で明らかにより高く、ブランクではベースラインレベルのままであることを観察することは興味深い。
【0064】
例6:
SBF中でインキュベートしたフィブロインフォームのX線検出器を有する走査型電子顕微鏡(SEM/EDX)による化学的特性評価
カルシウム塩及びリン酸塩によって構成される鉱物構成を形態学的及び組成的に特定するために、フィブロインフォーム試料をSEM/EDXで分析した。得られた結果を図3に報告する。
【0065】
図1(画像C及びF)で既に強調されているように、2種類の鉱物沈着物があり、1つは単結晶からなり、1つは可変寸法の結晶性凝集体からなる。単結晶は主にナトリウム(Na)及び塩素(Cl)から構成されるが、凝集体は主にカルシウム(Ca)及びリン(P)のシグナル、ならびにより低い強度のマグネシウム(Mg)によって特徴付けられる。炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、金(Au)及びパラジウム(Pd)のシグナルは、フィブロインフォームの有機的性質(C、O、N)及び試料調製モード(Au/Pdスパッタリング)を反映するので、すべてのスペクトルに共通であることに留意されたい。
【0066】
例7:
ヒト間葉系幹細胞の非存在下及び存在下でインキュベートしたフィブロインフォームのミネラル化試験
ヒト間葉系幹細胞(MSC)をLonzaから購入し、10% MSC Stimulatory Supplement、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び非必須アミノ酸を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃で、5% COの完全に加湿した雰囲気下で培養した。フィブロインフォームを96ウェルプレートに入れ、70%エタノールに30分間浸漬し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシンに一晩浸漬し、PBSで3回洗浄した。MSC(10/50μL)を、フォーム内の細胞の分布を改善するためにフォームの異なる点にピペッティングすることによって播種し、30分間接着させた。その後、150μLの完全培地を各ウェルに添加した。陰性対照として、フィブロインフォームを完全無細胞培地中に保持した。培地を2日毎に交換した。
【0067】
脱細胞化されたフィブロインフォーム上のカルシウム沈着は、von Kossa染色によって明らかにされた。細胞溶解及びタンパク質抽出の前に、フォームをPBS(マグネシウム/カルシウムイオン非含有)で2回洗浄した。細胞溶解は、100mM NaF、1mM NaVO、1μg/mLロイペプチン及び1μg/mLアプロチニンを含有するHEPES緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、10%(v/v)グリセロール、1%(v/v)Triton X-100、1.5mM MgCl、1mM EGTA)を用いて行った。氷上で30分後、抽出物を細胞溶解物として13,000gで10分間遠心分離し、-20℃で保存した。残りの沈着マトリックスをPBS(マグネシウム/カルシウムイオン非含有)で2回洗浄した。マトリックスをフィブロインフォーム上に固定するために、25%ホルムアルデヒドを超純水中に室温で10分間添加し、次いで、超純水で2回洗浄した。フィブロインフォームを含有するウェルに2.5%硝酸銀溶液を添加し、次いで、それらを紫外線下に30分間置いた。最後に、5%チオ硫酸ナトリウムを使用して過剰の未反応銀を除去した。
【0068】
ヒト間葉系幹細胞(MSC)を、生体模倣ペプチドで機能化したフィブロインフォーム中で、非機能化フィブロインフォームを参照として用いて7日間培養した。無細胞フォームを同様の時間インキュベートした。カルシウム沈着の程度をvon Kossa染色によって研究し、ImageJソフトウェアを用いた画像解析によって定量化した。簡潔には、画像を16ビットのグレースケール画像に変換した。閾値を手動で調整し、閾値を超えるシグナルによってカバーされる面積のパーセンテージを測定した。
【0069】
図4に示すように、生体模倣ペプチドで機能化されたフィブロインフォームは、非機能化フォームよりも多量のカルシウム沈着を示す。生体模倣ペプチドの作用によって沈着したカルシウムの量は、MSCの存在下でインキュベートした試料では、MSCなしでインキュベートした試料よりも多い。
【0070】
詳細な説明及び上記の例から、本発明のペプチドによって達成される利点は明らかである。特に、これらのペプチドは、骨、歯及び歯周の再生における使用に驚くべきかつ有利に適しており、迅速かつ効果的なミネラル化に好ましいことが示されている。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】