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特表2024-530052アーク故障を検出及びアイソレーションするためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】アーク故障を検出及びアイソレーションするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20240806BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20240806BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20240806BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
G01R31/08
G01R31/12 A
G01R31/58
G01R31/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508563
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022040187
(87)【国際公開番号】W WO2023018953
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,468
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517077810
【氏名又は名称】アストロニクス アドバンスド エレクトロニック システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワムズガンス ウォーレン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ポッター フレッド ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ パトリック ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
2G033
【Fターム(参考)】
2G014AA15
2G014AB33
2G015AA27
2G015CA01
2G033AA05
2G033AB04
2G033AC05
2G033AC08
2G033AD21
2G033AE04
2G033AF01
2G033AF04
2G033AG11
2G033AG14
(57)【要約】
アーク故障検出システムは、電気システムの電源分岐路と1つ以上の負荷分岐路とにおける電流の流れを感知する。所定数の周波数ビンに分割された周波数範囲にわたって、コントローラは、各周波数ビンについて、パワースペクトル密度の最大の大きさを有している分岐路を記録して集計する。最高の合計数を有する分岐路は、アーク故障が発生した分岐路であると断定されて、当該電気システムから安全にアイソレーションされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷へ電力を供給するように構成された電気回路におけるアーク故障を検出するための方法であって、該方法は、
複数の時点の各々において、前記複数の負荷の各々へ供給されている電流のレベルを監視する工程と、
前記複数の時点の各々について、前記複数の電流レベルの各々を対応する周波数表現に変換する工程と、
各電流レベルの前記周波数表現の各成分について、各周波数成分についてのパワースペクトル密度を測定する工程と、
各パワースペクトル密度を、各周波数成分に対応する所定のリミットと比較する工程と、
所定の最小数のパワースペクトル密度が、所定の最小数の時点についての、それぞれ対応するリミットを超過する場合に、アーク故障が発生したことを示す工程と
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記複数の電流レベルの各々を変換する前記工程は、高速フーリエ変換を実行することを備える、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記周波数表現の各成分は、複数の個別周波数の対応する範囲を備える、方法。
【請求項4】
複数の負荷へ電力を供給するように構成された電気回路におけるアーク故障の発生源を特定するための方法であって、該方法は、
ある時点における、前記複数の負荷の各々へ供給されている電流のレベルを監視する工程と、
前記複数の電流レベルの各々を対応する周波数表現に変換する工程と、
各電流レベルの前記周波数表現の各成分について、各周波数成分についてのパワースペクトル密度を測定する工程と、
各周波数成分について、前記対応する負荷についての前記電流レベルと関連付けられた最高スペクトル密度を断定することと、
前記アーク故障の前記発生源を、最大数の最高スペクトル密度を有すると断定された前記電流レベルを有する前記負荷として特定する工程と
を備える、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記複数の電流レベルの各々を変換する工程は、高速フーリエ変換を実行することを備える、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記周波数表現の各成分は、複数の個別周波数の対応する範囲を備える、方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、さらに、
前記アーク故障の前記発生源をアイソレーションする工程を備える、方法。
【請求項8】
請求項4に記載の方法であって、さらに、
負荷に対応する前記監視された電流の各々にカウント変数を割り当て、各カウント変数を最初にゼロに設定する工程と、
個別周波数の特定の範囲について前記最高スペクトル密度を有する負荷に対応している前記監視された電流を特定して、前記特定された電流についての前記カウント変数をインクリメントする工程と、
1つ以上の他の周波数範囲について前記特定する前記工程を繰り返す工程と
を備え、
前記アーク故障の前記発生源を特定する前記工程は、最高カウント変数を有する前記監視された電流に基づいて判断される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって
前記周波数範囲は、低い周波数から高い周波数へと配置され、前記最高スペクトル密度を有する前記負荷を特定する前記工程は、前記低い周波数範囲から前記高い周波数範囲へ実行される、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、
前記周波数範囲は、高い周波数から低い周波数へと配置され、前記最高スペクトル密度を有する前記負荷を特定する前記工程は、前記高い周波数範囲から前記低い周波数範囲へ実行される、方法。
【請求項11】
複数の負荷へ電力を供給するように構成された電気回路におけるアーク故障の発生源を検出及び特定するための方法であって、該方法は、
複数の時点の各々において、前記複数の負荷の各々へ供給されている電流のレベルを監視する工程と、
前記複数の時点の各々について、前記複数の電流レベルの各々を対応する周波数表現に変換する工程と、
各電流レベルの前記周波数表現の各成分について、各周波数成分についてのパワースペクトル密度を測定する工程と、
各パワースペクトル密度を、各周波数成分に対応する所定のリミットと比較する工程と、
所定の最小数のパワースペクトル密度が、所定の最小数の時点について、対応するリミットを超過する場合に、アーク故障が発生したことを示す工程と、
各周波数成分について、前記対応する負荷についての前記電流レベルと関連付けられた最高スペクトル密度を断定する工程と、
前記アーク故障の前記発生源を、最大数の最高スペクトル密度を有すると断定された前記電流レベルを有する前記負荷として特定する工程と
を備える、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記複数の電流レベルの各々を変換する工程は、高速フーリエ変換を実行することを備える、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
前記周波数表現の各成分は、複数の個別周波数の対応する範囲を備える、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、さらに、
前記アーク故障の前記発生源をアイソレーションする工程を備える、方法。
【請求項15】
複数の負荷へ電力を供給するように構成された電気回路におけるアーク故障の発生源を検出及び特定するためのシステムであって、該システムは、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行された場合に、前記プロセッサに、
複数の時点の各々において、前記複数の負荷の各々へ供給されている電流のレベルを監視させ、
前記複数の時点の各々について、前記複数の電流レベルの各々を対応する周波数表現に変換させ、
各電流レベルの前記周波数表現の各成分について、各周波数成分についてのパワースペクトル密度を測定させ、
各パワースペクトル密度を、各周波数成分に対応する所定のリミットと比較させ、
所定の最小数のパワースペクトル密度が、所定の最小数の時点について、それぞれ対応するリミットを超過する場合に、アーク故障が発生したことを示させ、
各周波数成分について、前記対応する負荷についての前記電流レベルと関連付けられた最高スペクトル密度を断定させ、
前記アーク故障の前記発生源を、最大数の最高スペクトル密度を有すると断定された前記電流レベルを有する前記負荷として特定させる
指示を格納しているメモリと
を備える、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、さらに、高速フーリエ変換を実行することによって前記複数の電流レベルの各々を変換するようにプログラムされている、システム。
【請求項17】
請求項15に記載のシステムであって、
前記周波数表現の各成分は、複数の個別周波数の対応する範囲を備える、システム。
【請求項18】
請求項15に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、さらに、前記アーク故障の前記発生源をアイソレーションするようにプログラムされている、システム。
【請求項19】
複数の負荷へ電力を供給するように構成された電気回路におけるアーク故障の発生源を検出及び特定するためのシステムであって、該システムは、
複数の電流センサであって、各電流センサは、複数の時点の各々において、前記複数の負荷のうちの対応する1つへ供給されている電流のレベルを監視可能な、複数の電流センサと、
前記複数の時点の各々について、前記複数の電流レベルの各々を対応する周波数表現に変換するように動作可能な信号プロセッサであって、
該信号プロセッサは、さらに、各電流レベルの前記周波数表現の各成分について、各周波数成分についてのパワースペクトル密度を測定するように動作可能な、信号プロセッサと、
各パワースペクトル密度を、各周波数成分に対応する所定のリミットと比較するように動作可能な第1のコンパレータと、
所定の最小数のパワースペクトル密度が、所定の最小数の時点についての、対応するリミットを超過する場合に、アーク故障が発生したことを示すことが可能なインジケータと、
各周波数成分について、前記対応する負荷についての前記電流レベルと関連付けられた最高スペクトル密度を断定するように動作可能な第2のコンパレータであって、
該第2のコンパレータは、さらに、前記アーク故障の前記発生源を、最大数の最高スペクトル密度を有すると断定された前記電流レベルを有する前記負荷として特定するように動作可能な第2のコンパレータと
を備える、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、さらに、
前記アーク故障の前記発生源をアイソレーションするように動作可能なアイソレータを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年8月12日に出願された米国仮出願第63/232,468号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
[技術分野]
本開示は、アーク故障信号の発生元を検出するためのシステム及び方法に関する。本開示は、より具体的には、単一負荷に対するアーク故障をアイソレーションするためのシステム及び方法に関する。
[背景]
アーキングは、電気配線において電位の異なる露出した導体間に十分に低い抵抗の経路または空隙が存在する場合に電気配線に発生する深刻かつ潜在的に危険な現象であり、当該経路または空隙を渡る電気エネルギーの跳躍、すなわちアーク、が生じる。アーキングは、電気回路構成を劣化または損傷させ得るし、無線周波数ノイズを発生し得るし、また、周辺の可燃物を発火させ得る。アーキングの危険性は、電線絶縁材が劣化していたかもしれない、または、振動によって時間の経過とともに端子の接続が緩んでいたかもしれない、老朽化した航空機において特に深刻である。空間的な制約に起因して配線を束ねることは、航空機におけるアーキングの危険性をより増大させる。
【0002】
航空機の電動化(MEA)への動きの高まりや、航空機上で270VDC及びより高いDC配電電圧を使用することに伴い、これら高電力システムの安全性についての懸念が増大している。AC電力とは異なり、DC電力には、元来、電圧及び電流におけるゼロクロスがない。このため、一旦、電気アークが短い空隙を渡って発生すると、当該アーク中の空気は、電離され導電性を有するままとなり、該アークの消弧を妨げる。電気負荷と直列な持続したアーク、すなわち直列アーク故障は、電気配線を損傷し、発煙及び発火を生じ、航空機を危険にさらすことになる、著しい熱量を発生することになる。このため、DC電力システムにおける直列アーク故障を検出及びアイソレーションする技術を得る著しい動機がある。その検出は、典型的には、最も確実に検出される電流シグネチャを用いて、アークシグネチャの電圧及びまたは電流の波形を分析することによって行われる。大規模なシステムにおける電気アーク故障の電流シグネチャを検出する場合には、例えば、様々な通常のノイズ源から生じる周辺の高電気ノイズや、複雑なシステムインピーダンス、低レベルのアーク故障シグネチャに対処することなどの、通常の課題に直面する。しかしながら、最も重要な課題は、システム中のアーク故障を含まない部分を不必要に停止することなく、アーク故障をアイソレーションするための適切な対応を調整できるように、アーク故障シグネチャの発生源を確定することである。本開示は、1つの負荷のみが停止されるように、単一の電気負荷に対するアーク故障シグネチャをアイソレーションするための技術を明らかにする。
【0003】
典型的なアーク検出器は、参照によりその全体が本明細書に援用されている、Scottらによる“Arc Fault Detection For Aircraft”という名称で、2003年9月23日に発行された米国特許第6,625,550号に開示されている。しかしながら、この検出器は、検出のみに限定されており、アーク故障の発生元を突き止め、アーク故障が検出された回路分岐路のみをアイソレーションする能力に欠ける。
【0004】
別のアーク検出器は、これもまた参照によりその全体が本明細書に援用されている、Kojoriらによる“Method and Apparatus for Generalized AC and DC Arc Fault Detection and Protection”という名称で、2010年11月16日に発行された米国特許第7,834,637号に開示されている。アーク故障を検出するための開示された方法は、電流の基本成分の大きさにおける変化を感知するランニング離散フーリエ級数(RFDS)プロセッサと、過負荷状態を感知するitプロセッサとを使用する。上述のように、この方法もまた、アーク故障の発生元を突き止め、アーク故障が検出された回路分岐路のみをアイソレーションする能力に欠ける。
【0005】
配線におけるアーキングは、既存の方法を用いて確実に検出及びアイソレーションすることが困難であると証明された潜在的に破壊的な状況である。電気回路におけるアーキングを簡易で迅速かつ正確に検出するための方法が必要とされている。さらに、当該方法は、故障していない電気的接続を切断することなく、単一の故障がアイソレーションされ得るように、アーク故障シグネチャの発生源を健全に断定しなければならない。
【0006】
本開示の主題は、アーク故障信号の発生元を検出することに向けられている。本開示は、より具体的には、電力システムの単一負荷または単一の分岐路に対するアーク故障をアイソレーションするためのシステム及び方法に関する。
[概要]
大規模な電力システムの単一の分岐路に対するアーク故障をアイソレーションする能力は、電子式ブレーカのアレイを使用してアーク故障の検出及び軽減を提供するシステムにおいて、特に重要である。直列アーク故障が発生した場合、その故障は、検出され、単一負荷に対してアイソレーションされなければならず、また、航空機への電気的な故障及び/または損傷の伝播を防ぐために、典型的には200ミリ秒未満で、当該負荷から電力が除去されなければならない。アーク故障の存在を検出することは容易であり、関連技術において可能であることが示されてきた。しかしながら、引き続き困難であるのは、アーク故障が存在する単一の電気分岐路に対する電気的な故障をアイソレーションすることである。この能力は、遮断器のアレイがアーク故障の検出及び軽減を実行する場合に、特に重要である。アーク故障の存在に起因して電力システムの単一の分岐路に誘起された電流は、故障した分岐路に接続された全ての他の電気分岐路をも通ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の特徴及び利点は、添付の図面とともに、以下のより詳細な説明を参照して、より完全に理解されるであろう。
図1】電子式サーキットブレーカコントローラ(ECBU)の実施形態の回路図である。
図2】分流器の一般的な回路図である。
図3】本開示に係るコンデンサが追加されたECBUの実施形態に関する回路図である。
図4】例示的な電気システムにおける各負荷分岐路毎のカウント合計を示す棒グラフであって、各カウント合計は、全測定周波数範囲にわたり、対応する負荷分岐路にて感知された電流の相対的な大きさが最大であった、周波数ビンの数を表す。 種々の図面中の同じ参照番号及び指定は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[詳細な説明]
ここで、詳細に参照して、添付の図面に図示されている本開示の例示的な実施形態を説明する。本明細書に開示された具体的な詳細は、限定として解釈されるべきではなく、むしろ、請求項の基礎として解釈されるべきであり、また、適切に詳細化されたあらゆるシステム、構造、あるいは方法において、本発明をどのように採用し得るかを当業者に教示しているものと解釈されるべきである。同一または同様の構成要素、回路、あるいは機能を参照するために、同一の参照符号を図面を通じて使用する。
【0009】
図1は、4つの負荷(負荷1、負荷2、負荷3、及び、負荷4)Z1、Z2、Z3、Z4に接続された、アーク検出能力を有する従来のECBU100を示す。第1の負荷(負荷1)Z1と直列に発生しているアークは、DC電力バスに接続された他の電気回路のいずれにも導通し得るAC電流アークシグネチャを生成する。この電流が取る経路は、電気システムで利用可能な種々の電路の相対的なACインピーダンスに依存する。例えば、第2の負荷(負荷2)Z2が、残りの負荷及び電源と比較して非常に低いAC入力インピーダンスを有する場合、第1の負荷Z1によって生じたアーク故障電流のほとんどは、第2の負荷Z2を通過することになる。このため、第1の負荷Z1及び第2の負荷Z2にて測定された電流シグネチャは、非常に類似することとなる。実際には、この電流は、種々の電気分岐路の全ての間で分流されることになるが、均等には分流されないことになり、そのシグネチャは、典型的には、監視されている残りの1つ以上の負荷のトリップ閾値を超過することになり、それは、単一のアーク故障が発生した場合に複数の負荷がオフされることになることを意味する。あるいは、電気システムの全く異なる部分に起因しているアーク故障もまた、そのシグネチャをこれら負荷へと伝導させ、これら負荷が誤ってオフされることになり得る。
【0010】
しかしながら、図1に示される構成では、アーク故障ノイズが、元来、確率的かつ広帯域であるため、このノイズの位相関係を検出することは可能ではないことはないことになる。ランダムなノイズの位相を得るためのどのような試みも、使用できない位相情報を得ることになる。故障がない電気的接続を切断することなく単一の故障をアイソレーションし得るように、アーク故障シグネチャの発生源を健全に断定する方法が開発されなければならない。
【0011】
アーク故障シグネチャの主な特徴は、広帯域ノイズの存在である。アーク故障シグネチャを検出するために、はじめに、抽出された電流データのブロックが、高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数領域に変換される。FFTの実行後、全測定周波数範囲にわたって、小さな周波数間隔、すなわちビン、に対してパワースペクトル密度(PSD)が算出される。各周波数ビンのPSDは、当該ビンについて予め決められたリミットと比較される。ビンリミットのかなり大部分が、十分長時間にわたって超過されている場合に、アーク故障が存在すると判断される。実際の電力システムでは、常にある程度のノイズが存在することになるので、どの時点においても少数のビンがPSDリミットを超過することになるが、アーク故障に関連する真の広帯域ノイズだけが、長時間にわたって大多数のビンを超過することになると考えられる。
【0012】
本開示は、アーク故障電流の発生元が1つであるが、当該電流の帰路が、分岐している電力システムにおける複数の電路に分かれることになるという事実を利用する。キルヒホッフの電流則は、ある接続点に流入している電流は、その接続点から流出している電流に等しくなければならないと述べている。その結果、図1の第1の負荷Z1によって生成されたアーク故障シグネチャ電流は、接続された残りの負荷のインピーダンスと電源のインピーダンスとによって、帰路において分割されることになる。図示された電気分岐路の各々は、周波数に対して異なるインピーダンスを有し、また、電流信号は、該インピーダンスの相対比によって残りの分岐路間で分割されることになる。
【0013】
図2は、例示的な分流回路を示し、下記の方程式1は、図2に従ってキルヒホッフの電流則を表したものであって、Nは、接続点J1に接続された電気分岐路の総数であり、I(f)は、周波数に対して、直列アーク故障を含む電気分岐路によって生成された電流である。
【0014】
【数1】
【0015】
また、下記の方程式2は、周波数に対して、接続点J1に接続された各電気分岐路に含まれた電流を表す。各電気分岐路のインピーダンスは、測定周波数範囲にわたって変化するので、各電気分岐路の電流比も同様に、周波数にわたって変化することになることを認識することが重要である。
【0016】
【数2】
【0017】
アーク故障電流の発生源が単一の場合に、接続点J1に接続された3つ以上の電気分岐路があると、該電流の発生源は、接続点J1に接続された最も高い振幅を有する電流であると断定され得る。信号発生源のほかに、電流が流れ得る2つ以上の他の分岐路があると、該電流は、その2つ以上の潜在的な帰路間で各帰路のインピーダンスの比で分けられることになる。信号発生源は、常に、最も高い振幅を有する電気分岐路であることになる。
【0018】
一方が電気負荷であり、他方が電源である2つの分岐路のみが、接続点J1に接続されているという特殊な状況の場合には、アークからの電流信号と電源とが一致することになり、アークシグネチャの発生源についての結論に達しない可能性がある。それゆえ、この場合にアークシグネチャの発生源を特定できるようにするためには、もう1つの意図的な電路を該接続点に追加しなければならない。図3は、小型のコンデンサCが追加されたECBUの構成の実施形態を示す。給電線のインダクタンス及び発電機のインダクタンスによって、Zソースは、特に高い周波数で、インピーダンスが比較的高くなる。追加されたコンデンサCは、アーク誘導電流の一部のための帰路として機能する。ここで、負荷1用電流センサLS1とソース用電流センサSSとの間で、電流の大きさを比較することで、アーク故障電流の発生元は、負荷1の接続部であると断定でき、電力システムにおける他の箇所のアーク故障に起因するものではない。
【0019】
典型的な電力システムには、通常の運転によって、当該電力システム内に狭帯域電流を送る個別の負荷が存在することになる。また、例えばモーター駆動装置やスイッチモード電力変換器などの、ある特定の種類の機器は、非常に高い振幅で狭帯域の放射を生じ得る。アーク故障シグネチャの発生源を断定する場合に、アーク故障検出アルゴリズムは、個別の電気負荷からの通常の放射に影響されてはならないので、例えばRMS電流などのような、全体的な電流振幅の測定は、アーク電流シグネチャの発生源を断定するためには有用ではない。アーク故障の発生源を検出するには、全測定周波数範囲にわたって、電気回路の各分岐路における電流振幅を比較する必要がある。全周波数にわたって、個別の負荷用及び電源用の電流センサの全ての間で相対振幅を比較するというこの比較は、アーク故障シグネチャの真の発生源を検出するのに重要である。アーク故障シグネチャの発生源を断定するのに以下のアルゴリズムが用いられ得る。
【0020】
1)監視された電流の各々に、カウント変数(CNTn)を割り当てる。始めに、全てのカウント変数を0に設定する。
2)電力システムの何処かにアーク故障が存在すると判断されると、感知された電流の全ての間で、最低周波数ビンについてのPSDの大きさを比較する。アークが存在するという判断をもたらした最後に抽出されたデータセットが本目的のために用いられるべきである。
【0021】
3)最低周波数ビンについて最高のPSDの大きさを有する監視された電流のカウントをインクリメントする。
4)その次に高い周波数ビンについて、ステップ2及びステップ3を繰り返す。最高周波数ビンに到達して相対的な大きさが比較されるまで、このプロセスを繰り返す。
【0022】
5)感知された電流の全ての間で、カウント変数の大きさを比較する。最高カウントを有する監視された電流は、アーク故障シグネチャの発生源であると判断される。
【0023】
6)アーク故障シグネチャの発生源が、接続された負荷の1つである場合には、当該負荷を遮断して、直列アーク故障をアイソレーションする。アーク故障シグネチャの発生源が電源である場合には、そのアーク検出を無視して、監視を継続する。
【0024】
最低周波数から最高周波数へ、最高周波数から最低周波数へ、または、あらゆる他の順といったどの順序が使用されるのかは重要ではないが、その意図は、全周波数範囲にわたって、どの感知された電流が最も強くアークシグネチャを含むのかを断定することである。全周波数範囲にわたって最も高い大きさを含む感知された電流は、アークシグネチャの発生源であると断定される。
【0025】
図4は、例示的なシステムのカウント合計を示す。CNTは、最高カウントを有するので、CNTに対応している感知された電流は、アーク電流シグネチャの発生源として割り当てられることとなる。残りの監視された電流は、狭い周波数範囲に対してより高いPSDを有するノイズの多い負荷を含んでいる可能性があるが、当該電流がアークシグネチャを含まない場合には、最高カウント値を有さないことになる。
【0026】
図3は、4つの負荷分岐路を有する実施形態を示しているものの、異なる数の負荷分岐路を有する他の実施形態が考えられる。
開示された主題は、その実施形態に関して説明されて示されてきたが、開示された実施形態の特徴が組み合わされ、再構成される等して本発明の範囲内で追加の実施形態を創作可能であること、また、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本実施形態に対する種々の他の変更、省略、及び、追加がなされ得ることを当業者は理解すべきである。例えば、説明された実施形態は、航空機や、特定のECBU及び負荷の種類に関するものであるものの、他の環境的な設定における、また、他の数や種類の負荷を用いる、種々の実施形態が、本開示の範囲内であることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】