IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サミュエル マッカルパインの特許一覧 ▶ スティーヴン ジェピールの特許一覧

特表2024-530056耐食性ステンレス鋼コーティングのためのシステム、方法、および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】耐食性ステンレス鋼コーティングのためのシステム、方法、および組成物
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20240806BHJP
   C23C 4/08 20160101ALI20240806BHJP
   C23C 4/06 20160101ALI20240806BHJP
   C23C 4/123 20160101ALI20240806BHJP
   C23C 4/131 20160101ALI20240806BHJP
   C23C 4/134 20160101ALI20240806BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240806BHJP
   C22C 38/44 20060101ALI20240806BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C23C24/04
C23C4/08
C23C4/06
C23C4/123
C23C4/131
C23C4/134
C22C38/00 302X
C22C38/44
C21D6/00 101K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525191
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022036590
(87)【国際公開番号】W WO2023283467
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,434
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/255,520
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/219,436
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524011616
【氏名又は名称】サミュエル マッカルパイン
【氏名又は名称原語表記】Samuel McAlpine
【住所又は居所原語表記】1915 Dartmouth Drive, Durham, NC 27705, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】524011627
【氏名又は名称】スティーヴン ジェピール
【氏名又は名称原語表記】Steven Jepeal
【住所又は居所原語表記】72 Flint Street, #2309, Salem, MA 01970, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル マッカルパイン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ジェピール
【テーマコード(参考)】
4K031
4K044
【Fターム(参考)】
4K031AA05
4K031AB02
4K031CB11
4K031CB22
4K031CB28
4K031DA01
4K031DA03
4K031DA04
4K031DA07
4K044AA03
4K044AB04
4K044BA01
4K044BA06
4K044BB01
4K044BB11
4K044BC02
4K044CA11
4K044CA21
(57)【要約】
例示的な実施形態において、鋼補強棒材(例えば、鋼補強筋)に適用される、鋼補強筋腐食を低減することによってコンクリート構造物の寿命を大幅に延ばすことができるコーティングが開示される。コーティングは、従来の鋼補強筋の外側に適用される薄い不動態化鋼(例えば、ステンレス鋼)層を含む。このコーティングは、既存の鉄鋼製造工場に組み込むことができる高スループットコーティング技術である金属コールドスプレー製造により、インラインで適用することができる。さらに、塩化物による腐食に対して調整された耐性を持つ新規の高性能フェライト鋼についても記載している。この新しいフェライト鋼は、他の市販鋼および実験鋼とは一線を画し、補強筋のような低コストの鋼製構造物のコーティングにより適している。Cr、Al、およびSiを含む複数の合金元素が各々独立して保護酸化物を形成することから、保護総量が増加し、はるかに広い範囲のpHおよび電位にわたって保護が拡張される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製構成要素であって、
炭素鋼補強棒材と、
前記鋼製構成要素に冶金学的に結合されかつステンレス鋼を含む外層コーティングと
を含み、
前記外層コーティングは、前記鋼製構成要素上に耐食性コーティングを形成し、
前記外層の平均厚さが10μm~300μmである、
鋼製構成要素。
【請求項2】
前記炭素鋼補強棒材と前記外層コーティングとの間に相互拡散領域があり、前記相互拡散領域の組成が、前記コーティングの組成から前記炭素鋼補強棒材の組成まで連続的に変化し、前記相互拡散領域の幅が10nm~10μmである、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項3】
ステンレス鋼コーティングが、コールドスプレーコーティング、溶射コーティング、プラズマ溶射コーティング、レーザー堆積コーティング、ツインワイヤアーク溶射コーティング、またはアーク溶接オーバーレイコーティングのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項4】
ステンレス鋼コーティングが、316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、または304ステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項5】
316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、304ステンレス鋼のうちの前記少なくとも1つが金属炭化物と混合されている、請求項4記載の鋼製構成要素。
【請求項6】
前記金属炭化物が、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、または炭化マンガンのうちの少なくとも1つを含む、請求項5記載の鋼製構成要素。
【請求項7】
ステンレス鋼コーティングが、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項8】
ステンレス鋼コーティングが、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項9】
ステンレス鋼コーティングが面心立方晶構造を含む、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項10】
ステンレス鋼コーティングがフェライト/オーステナイト系二相微細構造を含む、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項11】
ステンレス鋼コーティングがフェライト系ステンレス鋼である、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項12】
ステンレス鋼コーティングが、
前記ステンレス鋼コーティングに目に見えるひび割れが生じることなく、前記補強棒材を、前記補強棒材の直径の3.5倍の直径の物体を中心に180度まで曲げることができるか、または
前記ステンレス鋼コーティングが、破損する前に少なくとも5%の伸びを許容する固有の延性を有するのに
十分な延性を有する、請求項1記載の鋼製構成要素。
【請求項13】
ステンレス鋼でコーティングされた鋼製構成要素であって、
鋼製構成要素と、
前記鋼製構成要素に冶金学的に結合した耐食性フェライト系ステンレス鋼コーティングと
を含む、鋼製構成要素。
【請求項14】
前記ステンレス鋼コーティングが、前記鋼製構成要素を腐食に対して不動態化する、請求項13記載のコーティング。
【請求項15】
前記ステンレス鋼コーティングがコールドスプレーコーティングである、請求項13記載のコーティング。
【請求項16】
前記ステンレス鋼コーティングが溶接オーバーレイコーティングである、請求項13記載のコーティング。
【請求項17】
前記ステンレス鋼コーティングがツインワイヤアーク溶射コーティングである、請求項13記載のコーティング。
【請求項18】
前記ステンレス鋼コーティングの平均粒径が500nm~10μmである、請求項13記載のコーティング。
【請求項19】
前記ステンレス鋼コーティングが、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項10記載のコーティング。
【請求項20】
鋼製構成要素を形成する方法であって、
外面を有する鋼製構成要素を提供するステップと、
前記外面に冶金学的な結合を形成するフェライト系ステンレス鋼の層を含む外層で前記外面の少なくとも一部をコーティングするステップであって、冶金学的に結合した外層コーティングは、前記鋼製構成要素上に耐食性コーティングを形成する、ステップと
を含む、方法。
【請求項21】
前記コーティングするステップが、
第1のガス流路においてキャリアガスを高圧でガスヒーターに提供して、前記第1のガス流路に沿って前記キャリアガスを高温に加熱するステップと、
第2のガス流路において前記キャリアガスを高圧で、前記第2のガス流路に沿って前記キャリアガスによって運ばれるステンレス鋼粒子の粒子フィーダーに提供するステップと、
前記第1および第2の流路に流体連通するスプレーノズルのアレイにおいて、前記第1の流路において加熱された前記キャリアガスと、第2の流路において運ばれた前記ステンレス鋼粒子とを混合するステップと、
前記ノズルのアレイからガスおよびステンレス鋼粒子のプルームを噴出させ、前記鋼製構成要素が前記プルームを通って搬送されるときに、前記鋼製構成要素の前記外面を前記ステンレス鋼のコーティングでコーティングするステップであって、噴出した前記ステンレス鋼粒子は、前記鋼製構成要素の表面に超音速で衝突し、前記鋼製構成要素の前記表面に冶金学的な結合を形成して、フェライト系ステンレス鋼の外側コーティングを形成する、ステップと
を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ノズルのアレイが前記鋼製構成要素を取り囲んで、前記プルームによる前記鋼製構成要素の被覆を提供し、
前記高圧が約700psi~約800psiであり、
加熱ガスの前記高温が約900℃~約1100℃である、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ステンレス鋼粒子が5μm~25μmの平均粒径を有する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
ステンレス鋼コーティングが20μm~300μmの平均厚さを有する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記鋼製構成要素が、鋼ビレット材、鋼条材、鋼梁材、鋼桁材、鋼ロッド材、鋼棒材、または鋼管材である、請求項20記載の方法。
【請求項26】
前記鋼製構成要素が鋼ビレット材を含み、
前記方法が、
コーティングされた前記鋼ビレット材を1000℃~1300℃の温度に加熱するステップと、
コーティングされたステンレス鋼ビレット材を順次圧延して異形補強棒材にするステップと、
前記異形補強棒材を、前記異形補強棒材の外面に冶金学的な結合を形成するフェライト系ステンレス鋼の層を含む外層でコーティングするステップと
をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項27】
コーティングされた前記異形補強棒材を熱処理するステップをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
熱処理するステップが、レーザー加熱するステップを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記鋼製構成要素が鋼ビレット材を含み、
前記鋼ビレット材が直線的な横断面を有し、
前記スプレーノズルのアレイが、ビレット材の前記表面の各領域と前記ノズルのアレイにおける前記ノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線があることを保証するために、前記鋼ビレット材を直線的な構成で取り囲んでおり、
ステンレス鋼コーティングが前記鋼ビレット材の前記外面を覆う、
請求項21記載の方法。
【請求項30】
鋼製構成要素の表面にステンレス鋼のコーティングを適用するためのコーティング堆積システムであって、
1つ以上の流路にガスを高圧で供給するように構成された高圧ガス供給装置に流体接続するためのガス入口と、
ガスヒーターに熱的に連通する加熱ガス流路であって、前記加熱ガス流路は高圧ガス供給装置に流体連通しており、前記ガスヒーターは、前記加熱ガス流路内の高圧流動ガスを加熱するように構成されている、加熱ガス流路と、
ステンレス鋼粒子の供給源を受け入れるためのフィーダー入口に微粒子連通するステンレス鋼粒子フィーダー流路であって、前記ステンレス鋼粒子フィーダー流路は、前記高圧ガス供給装置に流体連通しており、ステンレス鋼粒子フィーダーは、前記ステンレス鋼粒子を前記ステンレス鋼粒子フィーダー流路内の前記高圧流動ガスに供給するように構成されている、ステンレス鋼粒子フィーダー流路と、
前記加熱ガス流路および前記ステンレス鋼粒子フィーダー流路に流体連通するスプレーノズルのアレイであって、前記スプレーノズルのアレイは、前記ステンレス鋼粒子フィーダー流路に微粒子連通している、スプレーノズルのアレイと
を含み、
前記スプレーノズルのアレイは、前記鋼製構成要素の前記表面の各領域と前記ノズルのアレイにおける前記ノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線があるように、前記鋼製構成要素を取り囲むように構成されており、
前記スプレーノズルのアレイは、前記ノズルのアレイにおける前記ノズルの各々から出る加熱ガスの高速度によって与えられる力によって、加熱ガスおよびステンレス鋼粒子のプルームで前記ステンレス鋼粒子を加速させるように構成されており、
前記スプレーノズルのアレイは、さらに、前記ステンレス鋼粒子が高速度で前記構成要素の前記表面に衝突し、前記構成要素の前記表面に冶金学的に結合して、フェライト系、オーステナイト系、または二相系である前記ステンレス鋼コーティングを形成するように構成されており、
前記スプレーノズルの少なくとも1つは、少なくとも部分的に長手方向および少なくとも部分的に半径方向にステンレス鋼粒子の流れを生成する、
システム。
【請求項31】
前記スプレーノズルのアレイが、前記ステンレス鋼粒子フィーダー流路に微粒子連通し、前記ノズルのアレイにおける各ノズルについて、
前記加熱ガスおよび粒子が前記ノズルに入り、
前記加熱ガスが、前記ノズルの収束部を通して圧縮され、
次いで、前記加熱ガスが、前記ノズルの発散部を通って膨張し、
前記ノズルの前記収束部および前記発散部を通過した後、前記加熱ガスおよびステンレス鋼粒子は、前記プルームとなって前記ノズルを出て、超音速で前記鋼製構成要素の前記表面に衝突するように構成されている、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
高温ガスとステンレス鋼粒子との前記プルームを通して前記構成要素を搬送するように構成されたコンベヤをさらに含む、請求項30記載のシステム。
【請求項33】
前記ガスが、窒素(N)、ヘリウム(He)、空気、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、またはフォーミングガス(N中5%H)のうちの少なくとも1つを含む、請求項30記載のシステム。
【請求項34】
前記構成要素が直線的な横断面を有し、
前記スプレーノズルのアレイは、前記スプレーノズルのアレイにおける前記ノズルの各々のヘッドが直線的に配置された状態で、前記直線的な横断面を取り囲むように構成されている、
請求項30記載のシステム。
【請求項35】
前記高圧が約700psi~約800psiであり、
前記加熱ガスの温度が約900℃~約1100℃であり、
前記高速度が超音速である、
請求項30記載のシステム。
【請求項36】
前記ステンレス鋼粒子が5μm~20μmの平均粒径を有する、請求項30記載のシステム。
【請求項37】
前記ステンレス鋼コーティングが10μm~100μmの平均厚さを有する、請求項30記載のシステム。
【請求項38】
前記ステンレス鋼粒子が、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項30記載のシステム。
【請求項39】
前記ステンレス鋼コーティングがBCCフェライト系マトリックスを有する、請求項38記載のシステム。
【請求項40】
鋼製構成要素にステンレス鋼コーティングを適用する方法であって、
第1のガス流路においてキャリアガスを高圧でガスヒーターに提供して、前記第1のガス流路に沿って前記キャリアガスを高温に加熱するステップと、
第2のガス流路において前記キャリアガスを高圧で、前記第2のガス流路に沿って前記キャリアガスによって運ばれるステンレス鋼粒子の粒子フィーダーに提供するステップと、
前記第1および第2の流路に流体連通するスプレーノズルのアレイにおいて、前記第1の流路において加熱された前記キャリアガスと、第2の流路において運ばれた前記ステンレス鋼粒子とを混合するステップと、
前記ノズルのアレイからガスおよびステンレス鋼粒子のプルームを噴出させ、前記鋼製構成要素が前記プルームを通って搬送されるときに、前記鋼製構成要素の外面をフェライト系ステンレス鋼のコーティングでコーティングするステップであって、噴出した前記ステンレス鋼粒子は、前記鋼製構成要素の表面に高速度で衝突し、前記鋼製構成要素の前記表面に冶金学的な結合を形成して、ステンレス鋼を含む外側コーティングを形成する、ステップと
を含む、方法。
【請求項41】
前記ノズルのアレイにおける前記ノズルの各々が、
各ノズルの収束部を通して、混合された加熱キャリアガスと粒子とを圧縮し、
各ノズルの発散部を通して、混合された前記加熱キャリアガスと粒子とを膨張させ、
混合された前記加熱キャリアガスと粒子とを超音速まで加速させる、
請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記ステンレス鋼粒子が、316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、または304ステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記ステンレス鋼の外側コーティングがフェライト系ステンレス鋼を含む、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記鋼製構成要素が鋼ビレット材であり、
前記鋼ビレット材が直線的な横断面を有し、
前記スプレーノズルのアレイが、ビレット材の表面の各領域と前記スプレーノズルのアレイにおける前記ノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線があることを保証するために、前記鋼ビレット材を直線的な構成で取り囲んでおり、
ステンレス鋼コーティングが前記鋼ビレット材の外面全体を覆い、
前記ステンレス鋼コーティングの厚さが150μm~2000μmである、
請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記方法が、
前記鋼ビレット材上の前記ステンレス鋼コーティングを1200℃で約3時間~約9時間の期間にわたって加熱するステップと、
前記鋼ビレット材上の前記ステンレス鋼コーティングを熱間圧延して、前記ステンレス鋼コーティングを有する補強筋構成要素を形成するステップと
をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記ステンレス鋼コーティングが、316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、または304ステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含む、請求項40記載の方法。
【請求項47】
前記ステンレス鋼粒子が
ガス霧化により製造された球状粒子、
高圧水霧化により製造されたほぼ球状の粒子、または
機械的な破砕により製造された不規則な形状の粒子
のうちの少なくとも1つを含む、請求項40記載の方法。
【請求項48】
前記ステンレス鋼が、前記鋼製構成要素への前記ステンレス鋼コーティングの結合を改善するために、前記ステンレス鋼と合金化されたセラミック材料を有する、請求項40記載の方法。
【請求項49】
前記セラミック材料が、金属炭化物または金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記鋼製構成要素上の前記ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップをさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項51】
前記鋼製構成要素上の前記ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップが、レーザー熱処理を含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記鋼製構成要素上の前記ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップが、
前記鋼製構成要素上の前記ステンレス鋼コーティングを約1100℃に1時間の期間にわたって加熱するステップと、
前記鋼製構成要素上の前記ステンレス鋼コーティングを室温まで焼入れするステップと、
前記鋼製構成要素上の前記ステンレス鋼コーティングを約600℃で1時間の期間にわたって焼戻しするステップと
を含む、請求項50記載の方法。
【請求項53】
BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物であって、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);および
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、耐食性ステンレス鋼合金組成物。
【請求項54】
前記組成物が、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項53記載の合金組成物。
【請求項55】
前記組成物が、
18重量%のクロム(Cr)と、
6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
4重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項54記載の合金組成物。
【請求項56】
前記組成物が、
18重量%のクロム(Cr)と、
3重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
4重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項54記載の合金組成物。
【請求項57】
前記組成物が、
18重量%のクロム(Cr)と、
8重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
5重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項54記載の合金組成物。
【請求項58】
前記組成物が、
18重量%のクロム(Cr)と、
8重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項54記載の合金組成物。
【請求項59】
前記組成物が、
18重量%のクロム(Cr)と、
4重量%のモリブデン(Mo)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、請求項54記載の合金組成物。
【請求項60】
耐食性フェライト系BCCステンレス鋼合金を作製する方法であって、
金属混合物を提供するステップであって、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、金属混合物を提供するステップと、
前記金属混合物を溶融するための炉を提供するステップと、
前記炉内で前記金属混合物を加熱して、液体金属混合溶融物を形成するステップと、
前記液体金属混合溶融物を冷却して、耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を含む固体金属混合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項61】
前記炉が真空誘導溶融炉または真空アーク溶解炉の一方を含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記液体金属混合溶融物を冷却するステップが、前記液体金属混合溶融物を焼入れするステップを含む、請求項60記載の方法。
【請求項63】
前記耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を霧化して、耐食性ステンレス鋼合金粒子を生成するステップと、
前記耐食性ステンレス鋼合金粒子をコールドスプレーシステムに提供するステップと、
前記コールドスプレーシステムから噴出した前記耐食性ステンレス鋼合金粒子で鋼製構成要素をコーティングするステップであって、噴出した前記耐食性ステンレス鋼合金粒子は、鋼製構成要素の外面に冶金学的に結合して、前記鋼製構成要素上にBCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼コーティングを形成するステップと
をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項64】
前記鋼製構成要素上のBCCフェライト系マトリックスを有する前記耐食性ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップをさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
BCCフェライト系マトリックスを有する前記耐食性ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップが、レーザー熱処理を含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
BCCフェライト系マトリックスを有する前記耐食性ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップが、
前記鋼製構成要素上の耐食性コーティングを約1000℃~約1300℃の温度に1時間~24時間の期間にわたって加熱するステップと、
前記鋼製構成要素上の前記耐食性コーティングを焼入れするステップと、
前記鋼製構成要素上の前記耐食性コーティングを400℃~700℃の温度で10分~4時間の期間にわたって焼戻しするステップと
を含む、請求項64記載の方法。
【請求項67】
前記耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を霧化するステップが、
前記耐食性フェライト系ステンレス鋼合金をガス霧化して、前記耐食性ステンレス鋼合金の球状粒子を生成するステップ、
前記耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を高圧水霧化して、前記耐食性ステンレス鋼合金のほぼ球状の粒子を生成するステップ、または
前記耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を機械的に破砕して、前記耐食性ステンレス鋼合金の不規則な形状の粒子を生成するステップ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項65記載の方法。
【請求項68】
前記耐食性ステンレス鋼合金粒子が5μm~45μmの平均粒径を有する、請求項63記載の方法。
【請求項69】
前記ステンレス鋼コーティングが10μm~300μmの平均厚さを有する、請求項63記載のシステム。
【請求項70】
前記構成要素が鋼ビレット材である、請求項63記載の方法。
【請求項71】
前記構成要素が鋼補強筋である、請求項63記載の方法。
【請求項72】
フェライト系ステンレス鋼合金を作製する方法であって
金属混合物を提供するステップであって、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、金属混合物を提供するステップと、
前記金属混合物を溶融するための炉を提供するステップと、
前記金属混合物を前記炉内で約1600℃~約2000℃の温度に加熱して、液体金属混合溶融物を形成するステップと、
前記液体金属混合溶融物を、固化プロセスを開始するために、第1の期間にわたって約1000℃~約1300℃の中間温度まで冷却するステップと、
前記液体金属混合溶融物を、第2の期間にわたって約400℃~約600℃の温度に焼入れするステップであって、前記焼入れするステップは炭化物析出物の形成を制限する、ステップと、
前記金属混合物を、約10分~約60分の期間にわたって約450℃~約600℃の温度で焼戻しするステップと、
前記金属混合物を、積極的な加熱がない状態で冷却するステップであって、前記金属混合物はフェライト系ステンレス鋼合金を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項73】
前記第1の期間が5分~100分であり、
前記第2の期間が0.5秒~10秒である、
請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記フェライト系ステンレス鋼合金が耐食性であり、
前記フェライト系ステンレス鋼合金が体心立方晶構造を有する、
請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記炉がコールドスプレーを含み、
前記方法が、
前記フェライト系ステンレス鋼合金を霧化するステップと、
霧化した前記フェライト系ステンレス鋼合金を鋼製構成要素上にコーティングとして堆積させるステップと
をさらに含み、
前記フェライト系ステンレス鋼合金コーティングは、前記鋼製構成要素の表面に冶金学的に結合され、
前記鋼製構成要素上の前記フェライト系ステンレス鋼合金コーティングは、前記鋼製構成要素の腐食に抵抗する、
請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記フェライト系ステンレス鋼合金がバルク材料である、請求項72記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、2021年10月14日に出願された、「INTEGRATED HIGH THROUGHPUT COLD SPRAY COATING MANUFACTURING SYSTEM」という表題で、発明者としてSamuel McAlpineおよびSteven Jepealを挙げている、米国仮特許出願番号63/255,520号からの優先権を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本特許出願は、また、2021年7月8日に出願された、「CORROSION-RESISTANT FERRITIC STAINLESS STEEL」という表題で、発明者としてSamuel McAlpineおよびSteven Jepealを挙げている、米国仮特許出願番号63/219,436号からの優先権を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本特許出願は、また、2021年7月8日に出願された、「STAINLESS-COATED STEEL REINFORCEMENT BAR」という表題で、発明者としてSamuel McAlpineおよびSteven Jepealを挙げている、米国仮特許出願番号63/219,434号からの優先権を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
背景
鋼補強棒材(steel reinforcement bar)(補強筋(rebar))は、引張および剪断を受けるコンクリートの強度を高めるために使用されるが、コーティングされていない棒材は耐食性がほとんどない。鋼補強材(補強筋)が腐食すると、その体積が膨張し、やがてその周りのコンクリートを押し広げ、ひび割れを起こす。腐食が十分に進むと、コンクリートのブロックが剥がれ落ちるコンクリートスポーリングや、ひび割れの層が広がって補強材がその周囲のコンクリートから切り離される剥離といった構造上の大きな問題が引き起こされる。いずれの場合にも、この腐食はコンクリートに重大な構造的損傷を引き起こし、壊滅的な破損の危険に曝し、大規模な補修または交換が必要になってくる。
【0005】
鋼補強筋に関しては、製造後、棒材は大気中の湿度または雨の存在下で腐食する可能性があり、外面に望ましくない酸化鉄が形成され、これにより補強筋の市場性が低下する。補強筋がコンクリートに含浸された後、腐食が、多くの場合、塩化物イオンの存在による孔食によって重大な構造劣化を引き起こす可能性がある。この腐食のその後の形態は、鋼補強筋を使用したコンクリート構造物の寿命を著しく制限する可能性がある。
【0006】
鋼補強筋の耐食性を向上させる方法は幾つか存在する。これらの選択肢の多くは、鋼補強筋に高い追加コストをもたらし、有効性には本質的な制限がある。例えば、エポキシコーティングは、使用中に補強筋から剥離することが知られており、したがって、非常に限られた耐食性を提供する。亜鉛めっき時に生成される亜鉛層は、コンクリート固化中に液体コンクリート混合物による攻撃を受けやすく、その有効性が低下し、適用層をより厚くする必要があるため、コストがより高くなる。加えて、さらに例を挙げると、溶融めっき適用による亜鉛めっきと、エポキシコーティングとの両方は、鋼補強筋の最新の高スループット製造方法に容易に統合できない追加の製造ステップを提示する。
【0007】
純粋なステンレス鋼補強筋と、ステンレスクラッド鋼補強筋とが存在するが、ほとんどの用途には法外に高価なコストである。
【0008】
様々な実施形態の概要
本発明の実施形態によれば、鋼製構成要素は、炭素鋼補強棒材と、鋼製構成要素に冶金学的に結合されかつフェライト系ステンレス鋼を含む外層コーティングとを含む。外層コーティングは、鋼製構成要素上に耐食性コーティングを形成する。外層の平均厚さは10μm~300μmである。
【0009】
炭素鋼補強棒材と外層コーティングとの間に相互拡散領域が存在する場合があり、この場合、相互拡散領域の組成は、コーティングの組成から炭素鋼補強棒材の組成まで連続的に変化する。相互拡散領域の幅は10nm~10μmであり得る。
【0010】
ステンレス鋼コーティングには、コールドスプレーコーティング、溶射コーティング、プラズマ溶射コーティング、レーザー堆積コーティング、ツインワイヤアーク溶射コーティング、またはアーク溶接オーバーレイコーティングが含まれ得る。ステンレス鋼コーティングは20μm~100μmの平均厚さを有し得る。ステンレス鋼コーティングは、316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、または304ステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含み得る。316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、または304ステンレス鋼のうちの少なくとも1つが、金属炭化物または金属酸化物と混合され得る。金属炭化物には、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化ケイ素、または炭化マンガンのうちの少なくとも1つが含まれ得る。
【0011】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼コーティングは、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼コーティングは、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N):または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0013】
ステンレス鋼コーティングは面心立方晶構造を含み得る。ステンレス鋼コーティングはフェライト/オーステナイト系二相微細構造を含んでよい。ステンレス鋼コーティングはフェライト系ステンレス鋼であってよい。ステンレス鋼コーティングは、ステンレス鋼コーティングに目に見えるひび割れが生じることなく、補強棒材を、該補強棒材の直径の3.5倍の直径の物体を中心に180度まで曲げることができる十分な延性を有していてよい。ステンレス鋼コーティングは、破損する前に少なくとも5%の伸びを許容する固有の延性を有するのに十分な延性を有していてよい。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、ステンレス鋼でコーティングされた鋼製構成要素は、鋼製構成要素と、鋼製構成要素に冶金学的に結合した耐食性フェライト系ステンレス鋼コーティングとを含む。ステンレス鋼コーティングは、鋼製構成要素を腐食に対して不動態化することができる。ステンレス鋼コーティングはコールドスプレーコーティングであってよい。ステンレス鋼コーティングは溶接オーバーレイコーティングであってよい。ステンレス鋼コーティングはツインワイヤアーク溶射コーティングであってよい。ステンレス鋼コーティングはレーザークラッディングであってよい。ステンレス鋼コーティングは溶射コーティングであってよい。ステンレス鋼コーティングの平均粒径は500nm~10μmであってよい。
【0015】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼コーティングは、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N):または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、鋼製構成要素を形成する方法は、外面を有する鋼製構成要素を提供するステップと、外面に冶金学的な結合を形成するフェライト系ステンレス鋼の層を含む外層で外面の少なくとも一部をコーティングするステップとを含む。冶金学的に結合した外層コーティングは、鋼製構成要素上に耐食性コーティングを形成する。
【0017】
幾つかの実施形態において、コーティングするステップは、第1のガス流路においてキャリアガスを高圧でガスヒーターに提供して、第1のガス流路に沿ってキャリアガスを高温に加熱するステップを含んでよい。コーティングするステップは、第2のガス流路においてキャリアガスを高圧で、第2のガス流路に沿ってキャリアガスによって運ばれるステンレス鋼粒子の粒子フィーダーに提供するステップを含んでよい。コーティングするステップは、第1および第2の流路に流体連通するスプレーノズルのアレイにおいて、第1の流路において加熱されたキャリアガスと、第2の流路において運ばれたステンレス鋼粒子とを混合するステップを含んでよい。コーティングするステップは、ノズルのアレイからガスおよびステンレス鋼粒子のプルームを噴出させ、鋼製構成要素がプルームを通って搬送されるときに、鋼製構成要素の外面をステンレス鋼のコーティングでコーティングするステップを含んでよい。噴出したステンレス鋼粒子は、鋼製構成要素の表面に高速度で衝突し、鋼製構成要素の表面に冶金学的な結合を形成して、フェライト系ステンレス鋼の外側コーティングを形成してよい。高速度は超音速であってよい。
【0018】
幾つかの実施形態において、ノズルのアレイは鋼製構成要素を取り囲んで、プルームによる鋼製構成要素の被覆を提供する。高圧は約700psi~約800psiであってよい。加熱ガスの高温は約900℃~約1100℃である。
【0019】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼粒子は5μm~25μmの平均粒径を有してよい。ステンレス鋼コーティングは10μm~300μmの平均厚さを有してよい。さらに、ステンレス鋼コーティングは20μm~100μmの平均厚さを有してよい。
【0020】
幾つかの実施形態において、構成要素は、鋼条材(steel rail)、鋼梁材(steel beam)、鋼桁材(steel girder)、鋼ロッド材、鋼棒材、または鋼管材であってよい。幾つかの実施形態において、構成要素は鋼ビレット材(steel billet)であってよい。
【0021】
幾つかの実施形態において、鋼製構成要素を形成する方法は、コーティングされた鋼ビレット材を1000℃~1300℃の温度に加熱するステップをさらに含み得る。鋼製構成要素を形成する方法は、コーティングされたステンレス鋼ビレット材を順次圧延して異形補強棒材にするステップをさらに含み得る。鋼製構成要素を形成する方法は、異形補強棒材を、異形補強棒材の外面に冶金学的な結合を形成するフェライト系ステンレス鋼の層を含む外層でコーティングするステップをさらに含み得る。鋼製構成要素を形成する方法は、コーティングされた異形補強棒材を熱処理するステップをさらに含み得る。熱処理するステップは、レーザー加熱するステップを含み得る。
【0022】
幾つかの実施形態において、鋼製構成要素は鋼ビレット材を含む。鋼ビレット材は直線的な(rectilinear)横断面を有してよい。スプレーノズルのアレイは、ビレット材の表面の各領域とノズルのアレイにおけるノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線(unobstructed line of sight)があることを保証するために、鋼ビレット材を直線的な構成で取り囲んでよい。ステンレス鋼コーティングは鋼ビレット材の外面を覆ってよい。
【0023】
本発明の実施形態によれば、鋼製構成要素の表面にステンレス鋼のコーティングを適用するためのコーティング堆積システムは、1つ以上の流路にガスを高圧で供給するように構成された高圧ガス供給装置に流体接続するためのガス入口を含む。コーティング堆積システムは、また、ガスヒーターに熱的に連通する加熱ガス流路も含み、加熱ガス流路は高圧ガス供給装置に流体連通している。ガスヒーターは、加熱ガス流路内の高圧流動ガスを加熱するように構成されている。本システムは、また、ステンレス鋼粒子の供給源を受け入れるためのフィーダー入口に微粒子連通するステンレス鋼粒子フィーダー流路を含む。ステンレス鋼粒子フィーダー流路は、高圧ガス供給装置に流体連通している。ステンレス鋼粒子フィーダーは、ステンレス鋼粒子をステンレス鋼粒子フィーダー流路内の高圧流動ガスに供給するように構成されている。
【0024】
本システムは、また、加熱ガス流路およびステンレス鋼粒子フィーダー流路に流体連通するスプレーノズルのアレイも含む。スプレーノズルのアレイは、ステンレス鋼粒子フィーダー流路に微粒子連通している。スプレーノズルのアレイは、鋼製構成要素の表面の各領域とノズルのアレイにおけるノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線があるように、鋼製構成要素を取り囲むように構成されている。スプレーノズルのアレイは、また、ノズルのアレイにおけるノズルの各々から出る加熱ガスの高速度によって与えられる力によって、加熱ガスおよびステンレス鋼粒子のプルームでステンレス鋼粒子を加速させるように構成されている。スプレーノズルのアレイは、さらに、ステンレス鋼粒子が高速度で構成要素の表面に衝突し、構成要素の表面に冶金学的に結合して、ステンレス鋼コーティングを形成するように構成されている。ステンレス鋼コーティングは、フェライト系、オーステナイト系、または二相系である。スプレーノズルの少なくとも1つは、少なくとも部分的に長手方向および少なくとも部分的に半径方向にステンレス鋼粒子の流れを生成する。
【0025】
幾つかの実施形態において、スプレーノズルのアレイは、ステンレス鋼粒子フィーダー流路に微粒子連通し得る。スプレーノズルのアレイは、ノズルのアレイにおける各ノズルについて、加熱ガスおよび粒子がノズルに入ることができるように構成されてよい。加熱ガスは、ノズルの収束部を通して圧縮され得る。次いで、加熱ガスは、ノズルの発散部を通って膨張し得る。ノズルの収束部および発散部を通過した後、加熱ガスおよびステンレス鋼粒子は、プルームとなってノズルを出て、超音速で鋼製構成要素の表面に衝突し得る。
【0026】
幾つかの実施形態において、本システムは、高温ガスとステンレス鋼粒子とのプルームを通して構成要素を搬送するように構成されたコンベヤをさらに含み得る。構成要素は直線的な横断面を有し得る。スプレーノズルのアレイは、スプレーノズルのアレイにおけるノズルの各々のヘッドが直線的に配置された状態で、直線的な横断面を取り囲むように構成されてよい。
【0027】
さらに、構成要素は、円形、卵形、または変形した円形の横断面を有してよい。スプレーノズルのアレイは、スプレーノズルのアレイにおけるノズルの各々のヘッドが、それぞれ円形、卵形、または変形した円形の横断面に配置された状態で、円形、卵形、または変形した円形の横断面を取り囲むように構成されてよい。
【0028】
幾つかの実施形態において、ガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、空気、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、またはフォーミングガス(N中5%H)のうちの少なくとも1つを含み得る。高圧は約700psi~約800psiであってよい。加熱ガスの温度は約900℃~約1100℃であってよい。高速度は超音速であってよい。ステンレス鋼粒子は5μm~20μmの平均粒径を有してよい。ステンレス鋼コーティングは0.5mm~5mmの平均厚さを有してよい。ステンレス鋼コーティングは35μm~350μmの平均厚さを有してよい。ステンレス鋼コーティングは25μm~300μmの平均厚さを有してよい。ステンレス鋼コーティングは10μm~100μmの平均厚さを有してよい。ステンレス鋼コーティングはBCCフェライト系マトリックスを有してよい。
【0029】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼粒子は、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N):または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含んでよい。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、鋼製構成要素にステンレス鋼コーティングを適用する方法は、第1のガス流路においてキャリアガスを高圧でガスヒーターに提供して、第1のガス流路に沿ってキャリアガスを高温に加熱するステップを含む。鋼製構成要素にステンレス鋼コーティングを適用する方法は、第2のガス流路においてキャリアガスを高圧で、第2のガス流路に沿ってキャリアガスによって運ばれるステンレス鋼粒子の粒子フィーダーに提供するステップを含む。本方法は、第1および第2の流路に流体連通するスプレーノズルのアレイにおいて、第1の流路において加熱されたキャリアガスと、第2の流路において運ばれたステンレス鋼粒子とを混合するステップを含む。本方法は、また、ノズルのアレイからガスおよびステンレス鋼粒子のプルームを噴出させ、鋼製構成要素がプルームを通って搬送されるときに、鋼製構成要素の外面をフェライト系ステンレス鋼のコーティングでコーティングするステップを含む。噴出したステンレス鋼粒子は、鋼製構成要素の表面に高速度で衝突し、鋼製構成要素の表面に冶金学的な結合を形成して、フェライト系ステンレス鋼を含む外側コーティングを形成する。
【0031】
ノズルのアレイにおけるノズルの各々は、各ノズルの収束部を通して、混合された加熱キャリアガスと粒子とを圧縮することができる。ノズルのアレイにおける各ノズルは、各ノズルの発散部を通して、混合された加熱キャリアガスと粒子とを膨張させることができる。ノズルのアレイにおける各ノズルは、混合された加熱キャリアガスと粒子とを超音速まで加速させることができる。
【0032】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼粒子は、316ステンレス鋼、2205ステンレス鋼、または304ステンレス鋼のうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
鋼製構成要素は鋼ビレット材であってよい。鋼ビレット材は直線的な横断面を有し得る。スプレーノズルのアレイは、ビレット材の表面の各領域とスプレーノズルのアレイにおけるノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線があることを保証するために、鋼ビレット材を直線的な構成で取り囲んでよい。ステンレス鋼コーティングは鋼ビレット材の外面全体を覆うことができ、ステンレス鋼コーティングの厚さは150μm~500μmであってよい。ステンレス鋼コーティングは150μm~2000μmであってよい。
【0034】
本方法は、鋼ビレット材上のステンレス鋼コーティングを1200℃で約3時間~約9時間の期間にわたって加熱するステップをさらに含み得る。本方法は、鋼ビレット材上のステンレス鋼コーティングを熱間圧延して、ステンレス鋼コーティングを有する補強筋構成要素を形成するステップをさらに含み得る。幾つかの実施形態において、ステンレス鋼コーティングは、鋼製構成要素へのステンレス鋼コーティングの結合を改善するために、ステンレス鋼と合金化されたセラミック材料を有し得る。セラミック材料は、金属炭化物または金属酸化物のうちの少なくとも一方を含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、ステンレス鋼粒子は、ガス霧化により製造された球状粒子、高圧水霧化により製造されたほぼ球状の粒子、または機械的な破砕により製造された不規則な形状の粒子のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0036】
本方法は、鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを熱処理するステップをさらに含み得る。鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを熱処理するステップは、レーザー熱処理を含んでよい。
【0037】
鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを熱処理するステップは、鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを約1100℃に1時間の期間にわたって加熱するステップを含み得る。鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを熱処理するステップは、鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを室温まで焼入れするステップを含んでよい。鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを熱処理するステップは、鋼製構成要素上のステンレス鋼コーティングを約600℃で1時間の期間にわたって焼戻しするステップを含んでよい。
【0038】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);および
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つと、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N):
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含み得る。
【0040】
幾つかの実施形態において、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
4重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含み得る。
【0041】
幾つかの実施形態において、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
3重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
4重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含み得る。
【0042】
幾つかの実施形態において、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
8重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
5重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
残部の鉄(Fe)と
を含み得る。
【0043】
幾つかの実施形態において、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
8重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含み得る。
【0044】
幾つかの実施形態において、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
4重量%のモリブデン(Mo)と、
残部の鉄(Fe)と
を含み得る。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、耐食性フェライト系BCCステンレス鋼合金を作製する方法は、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、金属混合物を提供するステップを含む。
【0046】
耐食性フェライト系BCCステンレス鋼合金を作製する方法は、また、金属混合物を溶融するための炉を提供するステップと、炉内で金属混合物を加熱して、液体金属混合溶融物を形成するステップと、液体金属混合溶融物を冷却して、固体金属混合物を形成するステップとを含む。固体金属混合物は耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を含む。炉は真空誘導溶融炉であってよい。炉は真空アーク溶解炉であってよい。液体金属混合溶融物を冷却するステップは、液体金属混合溶融物を焼入れするステップを含み得る。
【0047】
耐食性フェライト系BCCステンレス鋼合金を作製する方法は、耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を霧化して、耐食性ステンレス鋼合金粒子を生成するステップをさらに含み得る。本方法は、耐食性ステンレス鋼合金粒子をコールドスプレーシステムに提供するステップを含み得る。本方法は、コールドスプレーシステムから噴出した耐食性ステンレス鋼合金粒子で鋼製構成要素をコーティングするステップを含み得る。噴出した耐食性ステンレス鋼合金粒子は、鋼製構成要素の外面に冶金学的に結合して、鋼製構成要素上にBCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼コーティングを形成することができる。
【0048】
耐食性フェライト系BCCステンレス鋼合金を作製する方法は、鋼製構成要素上にBCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップをさらに含み得る。BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップは、レーザー熱処理を含んでよい。
【0049】
BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼コーティングを熱処理するステップは、構成要素上の耐食性コーティングを約1000℃~約1300℃の温度に1時間~24時間の期間にわたって加熱するステップを含み得る。熱処理するステップは、鋼製構成要素上の耐食性コーティングを焼入れするステップを含んでよい。熱処理するステップは、鋼製構成要素上の耐食性コーティングを400℃~700℃の温度で10分~4時間の期間にわたって焼戻しするステップを含んでよい。
【0050】
耐食性ステンレス鋼合金を霧化するステップは、耐食性フェライト系ステンレス鋼合金をガス霧化して、耐食性ステンレス鋼合金の球状粒子を生成するステップ、耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を霧化して、耐食性ステンレス鋼合金のほぼ球状の粒子を生成するステップ、または耐食性フェライト系ステンレス鋼合金を機械的に破砕して、耐食性ステンレス鋼合金の不規則な形状の粒子を生成するステップのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0051】
耐食性ステンレス鋼合金粒子は5μm~20μmの平均粒径を有し得る。ステンレス鋼コーティングの平均厚さは10μm~500μmであり得る。
【0052】
構成要素は鋼ビレット材であってよい。構成要素は、鋼補強筋、鋼梁材、鋼軌道材、または鋼管材であってよい。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、フェライト系ステンレス鋼合金を作製する方法は、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);または
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む、金属混合物を提供するステップを含む。
【0054】
フェライト系ステンレス鋼合金を作製する方法は、また、金属混合物を溶融するための炉を提供するステップを含む。金属混合物は、炉内で約1600℃~約2000℃の温度に加熱されて、液体金属混合溶融物を形成する。液体金属混合溶融物は、固化プロセスを開始するために、第1の期間にわたって約1000℃~約1300℃の中間温度まで冷却される。液体金属混合溶融物は、第2の期間にわたって約1000℃~約1300℃の中間温度に保持される。液体金属混合溶融物は、第3の期間にわたって約400℃~約600℃の温度に焼入れされる。第1の期間は5分~100分であってよい。第2の期間は0.5秒~10.0秒であってよい。
【0055】
焼入れするステップは、炭化物析出物の形成を制限する。金属混合物は、約10分~約60分の期間にわたって約450℃~約600℃の温度で焼戻しされる。金属混合物は、積極的な加熱がない状態で冷却される。金属混合物はフェライト系ステンレス鋼合金を含む。フェライト系ステンレス鋼合金は耐食性であり得る。フェライト系ステンレス鋼合金は体心立方晶構造を有してよい。
【0056】
炉はコールドスプレーヤーを含み得る。本方法は、フェライト系ステンレス鋼合金を霧化するステップをさらに含み得る。本方法は、霧化したフェライト系ステンレス鋼合金を鋼製構成要素上にコーティングとして堆積させるステップをさらに含み得る。フェライト系ステンレス鋼合金コーティングは、鋼製構成要素の表面に冶金学的に結合することができる。鋼製構成要素上のフェライト系ステンレス鋼合金コーティングは、鋼製構成要素の腐食に抵抗し得る。フェライト系ステンレス鋼合金はバルク材であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
当業者は、直後に要約される図面を参照して論じられる以下の「例示的な実施形態の説明」から、本発明の様々な実施形態の利点をより十分に理解するはずである。
図1】例示的な実施形態による、ステンレス鋼コーティングを有する鋼補強筋の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図2】例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図3】例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図4】例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図5】例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図6】腐食抜けおよび孔食を概略的に示す図である。
図7】例示的な実施形態による、コールドスプレー適用の場合のコーティング界面の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図8】結合不良で多孔質のコーティングを概略的に示す図である。
図9】例示的な実施形態による、コールドスプレー堆積システムの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図10A】例示的な実施形態による、コールドスプレー堆積システムの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図10B】例示的な実施形態による、コールドスプレー堆積システムの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図11】例示的な実施形態による、ノズル設計の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図12A】例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図12B】例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図13図13の左側は、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図であり、図13の右側は、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図14図14の左側は、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図であり、図14の右側は、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図15】例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図16】例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図17A】例示的な実施形態による、製造ラインへのスプレーシステムの統合の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図17B】例示的な実施形態による、製造ラインへのスプレーシステムの統合の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図18】例示的な実施形態による、耐食性ステンレス鋼合金の本開示の様々な実施形態を概略的に示す図である。
図19】本発明における構成元素間の酸化物形成の相対的な駆動力を提示するエリンガムダイアグラムを示す図である。
図20】鉄、クロム、およびモリブデンのステンレス鋼合金におけるCrおよびMo含有量の範囲に対する平衡相組成を示す図である。
図21】Fe-Cr-Mo-Al-Si組成の一例の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を明示する図である。
図22】Fe-Cr-Mo-Al-Si組成の一例の時間-温度-変態曲線を示す図である。
図23】Fe-18Cr-3Mo-4Al-2Siの相組成マップを示し、低温での有害な二次相の存在を示す図である。
図24】Fe-18Cr-3Mo-4Al-2Siの時間-温度-変態図を示す図である。
図25】Fe-Cr-Mo-Al組成の一例の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を明示する図である。
図26】Fe-18Cr-8Mo-5Alの時間-温度-変態図を示す図である。
図27】Fe-Cr-Mo-Si合金の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を明示する図である。
図28】Fe-18Cr-8Mo-2Siの時間-温度-変態図を示す図である。
図29】Fe-Cr-Mo合金の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を明示する図である。
図30】Fe-18Cr-4Moの時間-温度-変態図を示す図である。
【0058】
例示的な実施形態の説明
例示的な実施形態において、鋼補強棒材(例えば、鋼補強筋)に、鋼補強筋腐食を低減することによってコンクリート構造物の寿命を大幅に延ばすことができるコーティングが適用される。コーティングは、従来の鋼補強筋の外側に適用される薄い不動態化鋼(例えば、ステンレス鋼)層を含む。このコーティングは、既存の鉄鋼製造工場に組み込むことができる高スループットコーティング技術である金属コールドスプレー製造により、インラインで適用することができる。この技術は、橋梁、道路、および海洋構造物をはじめとする多くのコンクリート構造物の耐用年数を制限する、水および塩化物(塩)の存在下での補強筋腐食という課題を解決する。コーティングされた補強筋は、エポキシコーティングのような従来のコーティングよりも寿命が長く、低コストである。インラインコーティング適用法は、鉄鋼製造工場に直接組み込むことができる。
【0059】
例示的な実施形態において、塩化物による腐食に対する耐性が調整された高性能フェライト鋼について説明する。この新しいフェライト鋼は、他の市販鋼および実験鋼とは一線を画し、補強筋のような低コストの鋼製構造物のコーティングにより適している。この新しい鋼材は、塩化物の存在下で腐食を完全に防止する。この新しいフェライト鋼コーティングは、既存のステンレス鋼よりも広範な腐食保護を与えるために、複数の保護酸化物層を生成するように設計された薄いコーティングとして機能するように配合されているため、従来の鋼材とは別物である。Cr、Al、およびSiを含む複数の合金元素が各々独立して保護酸化物を形成することから、保護総量が増加し、はるかに広い範囲のpHおよび電位にわたって保護が拡張される。高濃度のMoは、新たに形成されたピットを再不動態化することで、塩化物によって引き起こされる任意の孔食を逆転させるために含まれている。こうしてできた鋼材は、従来のステンレス鋼または亜鉛めっき鋼よりも、特に高濃度の塩化物イオンに対する耐食性が高い。この新規の高性能フェライト鋼は、補強筋への腐食に抵抗するため、金属コールドスプレー製造を通してインラインで適用することもできる。
【0060】
しかしながら、鋼補強棒材について説明したが、様々な実施形態が、I形鋼、条材、パイプ材、ビレット材、管材などの他の種類の鋼製品にも適用されることに留意すべきである。したがって、鋼補強棒材についての説明は、例示を目的としたものであり、すべての実施形態に適用されることを意図したものではない。
【0061】
耐食性
補強筋の腐食は、少なくとも2つの経路で発生する。1つの経路は、水に曝されることにより生じる鋼材表面の酸化である。もう1つの経路は、塩化物イオンが補強筋の表面に形成されたピット内で鋼材の表面を攻撃する孔食経路である。孔食によって引き起こされる腐食は、塩化物イオン(例えば、Cl)による腐食の結果で、塩化ナトリウム(例えば、NaCl)などの塩に曝されることが原因である。塩化物イオンは、鋼材の表面鉄に接近することができる。
【0062】
酸化経路は、不動態化層(例えば、不動態化コーティング)を形成する鋼材の表面に酸化バリアを形成することによって遮断することができる。鋼材の表面上の特定の金属酸化物、例えば酸化クロムCr(例えば、クロミア)、二酸化ケイ素SiO(例えば、シリカ)、酸化アルミニウムAl(例えば、アルミナ)の不動態化層は、鋼材を酸化腐食から保護することができる。特に孔食は、塩化物イオン攻撃(例えば、腐食)に耐性を持つ酸化モリブデンMoOなどの特定の金属酸化物によって遮断することができる。
【0063】
不動態化層が腐食防止に効果的であるためには、それらが鋼材表面に強く結合し、表面を完全に覆い、堅牢なコーティングを提供するために十分な厚さを有していなければならない。不動態化層を作るには、金属コーティングを適用することで、自然に所望の酸化物層ができあがる。金属コーティングと下地構成要素との間の強固な結合は、冶金学的な結合(例えば、金属結合)によって得ることができる。コールドスプレーおよび溶接オーバーレイなどの特定の技術により、冶金学的に結合(例えば、金属的に結合)された鋼材に金属コーティングを適用することができる。さらに、これらの技術により、補強筋またはビレット材などの鋼製構成要素の表面全体にコーティングを堆積させることもできる。さらに、これらの技術(コールドスプレーおよび溶接オーバーレイ)により、堅牢な耐食性を提供するのに十分な厚さ、多くの場合、50~300μmの金属コーティングを鋼材に適用することができる。
【0064】
実施形態において、ステンレス鋼などの金属コーティングが鋼製構成要素に適用され、金属コーティングは、不動態化層として機能するネイティブな酸化コーティングを形成する。ネイティブな酸化コーティングとは、金属酸化物形成の発熱駆動力により、水中または空気中で金属表面に自発的に形成される1つ以上の金属酸化物の層である。水または空気中の酸素が金属の表面原子を酸化させて、熱力学的に安定した酸化コーティングを形成する。この表面酸化物は、新たに堆積されたり、保護された酸化物層に引っ掻き傷がついたり、別様に浸透したりすることによって、むきだしとなった金属原子が曝されるたびに形成される。
【0065】
このプロセスの一例は、クロム含有ステンレス鋼を鋼製構成要素に堆積させることである。この例では、堆積されたステンレス鋼コーティングはクロム金属を含み、その一部はコーティング表面にある。水または空気中の酸素は、自発的にクロムの表面酸化物(例えば、酸化クロム、Cr)を形成し、水または空気中の酸素と反応して自発的に形成される酸化クロム層の表面層が、酸化および孔食からの保護を提供する。
【0066】
ステンレス鋼の表面の原子から表面酸化物が形成されるこのプロセスは、自発的に起こる。さらに、金属と酸素との結合の熱力学的強度が、表面原子の再配列を引き起こして、特定の金属酸化物の層を形成することもある。クロム酸化物の形成について説明した上記の例では、Crの形成の熱力学的な原動力により、ステンレス鋼コーティングの表面の金属原子が再配列(例えば、拡散)して、クロミア層の形成が可能になり得る。すなわち、合金の表面に近い金属原子は、合金の表面にネイティブな金属酸化物を形成する熱力学的ポテンシャルの下で、合金の表面の下の位置から表面に拡散する可能性がある。
【0067】
ステンレス鋼コーティングを構成する各原子の酸化物形成の熱力学的駆動力により、金属酸化物層が分離し、予測可能な順序で互いに積み重なり、自発的に多層構造を形成することがある。多層構造の金属酸化物層の積み重なりの順序は、金属酸化物の各々の形成自由エネルギー(ΔG)によって決定される。ΔGが(絶対値で)最も大きい金属酸化物は、鋼製構成要素に最も近いところに形成される傾向があり、ΔGの絶対値が最も小さい金属酸化物は、コーティングの表面に形成される。すなわち、金属原子は合金構造中の位置から金属合金を通って表面まで拡散して各金属酸化物層を形成し、多層構造中の特定の金属酸化物の位置は各金属酸化物のΔGによって決定される。
【0068】
幾つかの実施形態において、鉄を母材とするステンレス鋼コーティングに、クロムおよびモリブデンなどの特定の金属を一次合金として組み込むことで、耐食性だけでなく、構造的な利点も得られる可能性がある。ここでは、一次合金元素(例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、および/またはマンガン(Mn)など)、二次合金元素および三次合金元素(例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、炭素(C)、窒素(N)、および/または硫黄(S)など)として異なる元素を用い、合金の組成が異なる様々なステンレス鋼コーティングが開示されている。幾つかの実施形態において、一次合金元素は一次酸化物形成剤である場合があり、二次合金元素は二次酸化物形成剤である場合がある。
【0069】
バイメタル鋼複合材
低コストで鋼製構成要素(例えば、鋼補強棒材(補強筋))に堅牢な耐食性を付与するために、例示的な実施形態において、従来の炭素鋼補強筋にステンレス鋼の薄い外側コーティングを利用している。この薄いコーティングは、純粋なステンレス鋼補強筋と同じ方法で鋼補強筋を不動態化することができ、コンクリート構造物における消費の前後に耐食性を提供する。その結果、コンクリート構造物は腐食により強くなり、したがって、運用寿命が延びる。
【0070】
図1は、ステンレスコーティング100を施した鋼補強筋を概略的に示す。図1(左)は、耐食性ステンレス鋼でコーティングされた棒材の横断面図を概略的に示し、図1(右)は、表面耐食性ステンレス鋼でコーティングされた棒材の一部の平面図を概略的に示す。鋼補強筋110はリブ120を有し、補強筋はステンレス鋼コーティング130で示される。ステンレス鋼コーティング130は、リブ120を含む鋼補強筋110を完全に覆っている。リブ120を有する補強筋110をステンレス鋼コーティング130で完全に覆うことは、包括的な耐食性のために必要である。
【0071】
幾つかの実施形態において、モリブデン含有コーティング(例えば、外層)の使用により、塩化物攻撃に対する耐性が付与される。これにより、海洋用途および凍結防止塩を使用する場所などの塩含有環境に対する耐性が提供される。幾つかの実施形態において、アルミニウムおよびケイ素を含む二次酸化物形成剤を使用することで、より幅広い環境での耐食性が強化される。
【0072】
図2は、例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の実施形態を概略的に示す。図2(左)は、コーティングされた鋼補強筋上のコーティング220とコンクリート230との間の界面210を概略的に示す。界面領域210の境目ははっきりしており、不動態化層の形成が開始されていないことを示す。図2(右)は、コーティングされた鋼補強筋250上のコーティング220とコンクリート230との界面240を概略的に示す。コンクリート中の酸化性成分の結果、コーティングされた補強筋220の表面には、ネイティブな保護酸化物層260(例えば、不動態化層)が成長している。保護酸化物層260は、下層の補強筋250の腐食に対する耐性を提供する。外側の酸化物層260は、腐食から保護する不動態化化合物(例えば、CrおよびMoOなど)を含有し、潜在的に腐食性の種が補強筋と接触するのを防ぐ。これらの化合物は、コーティング220とコンクリート230との間の界面において、コーティングの外側にネイティブな保護酸化物層を形成し、それによって下層の炭素鋼補強筋の腐食を防止する。
【0073】
図3は、例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の実施形態を概略的に示す。図3の300は、Fe-Cr合金上に形成されたCrの保護酸化物層360を概略的に示す。Crのネイティブな保護酸化物層360は、酸化性元素(例えば、酸素)が金属元素(例えば、クロム、モリブデンなど)と接触するときに酸化物化合物を形成する熱力学的な力により、Fe-Cr合金の表面に形成される。Crの保護酸化物層360は、コンクリート330から鋼製構成要素(例えば、補強筋、鋼ビレット材など)の金属表面への酸素の拡散を制限するバリアを提供する不動態化層である。不動態化Cr層は、このようにして腐食速度を制限する。図3は、外側コーティング320中のクロムがどのようにクロミア(Cr)360外側層を形成し、鋼製構成要素コア内の鉄の腐食を防止および/または実質的に緩和するのかを概略的に示す。
【0074】
幾つかの実施形態において、ケイ素およびアルミニウムなどの二次酸化物形成剤をステンレス鋼合金に添加して、酸化クロムおよび/または酸化モリブデン層を追加の保護酸化物で強化することができる。これらの二次酸化物形成剤の機能を図4に概略的に示す。
【0075】
図4は、例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の実施形態を概略的に示す。図4の400は、Fe-Cr-Si-Al合金上に形成されたCr/Al/SiOの保護酸化物460を概略的に示す。Cr/Al/SiOの保護酸化物460は、コンクリート430から鉄心金属表面への酸素の拡散を制限するバリアを提供する不動態化多層(多層構造は図4に示されていない)を形成する。不動態化Cr/Al/SiO多層膜は腐食速度を制限する。図4は、外側コーティング420中のクロム、ケイ素、およびアルミニウムがどのようにCr/Al/SiO 360多酸化物層バリアを形成し、コーティングまたは補強筋コア内の鉄の腐食を防止および/または実質的に緩和するのかを概略的に示す。
【0076】
空気およびコンクリート中の酸素に加え、多くの塩に存在する塩化物イオン(例えば、Cl)は、鋼鉄構成要素の腐食につながる。塩化物イオンは、鋼製構成要素を腐食させる金属塩化物を形成するだけでなく、補強筋などの構造用鋼を腐食して弱体化させるのに非常に効果的な酸素と金属オキシ塩化物を形成することもある。
【0077】
酸化モリブデン(例えばMoO)は、塩化物イオンが鋼を腐食させるのを防ぐ効果的なバリア酸化物である。金属モリブデンは、モリブデンを含有するステンレス鋼合金上に、ネイティブな酸化物バリア層である酸化モリブデン(例えば、MoO)を形成する。幾つかの実施形態において、コーティング中のモリブデンは、コーティングのピットまで二硫化し、酸化モリブデンを形成することがある。このMoOは、形成されたピットを再び不動態化し、孔食タイプの腐食の進行を防ぐ。これは、孔食タイプの腐食が保護酸化物層を破り、下層の鋼製構成要素(例えば、補強筋など)を損傷する可能性のある塩化物環境において特に重要である。モリブデンによる孔食の再不動態化を図5-1に示す。
【0078】
図5は、例示的な実施形態による、保護コーティングとコンクリートとの間の界面領域の実施形態を概略的に示す。図5の500は、Fe-Cr-Mo合金上に形成されたCrの保護酸化物層560を概略的に示す。Crのネイティブな保護酸化物層560は、酸化性元素(例えば、酸素)が金属元素(例えば、クロム)と接触するときにクロム酸化化合物を形成する熱力学的な力により、Fe-Cr-Mo合金の表面に形成される。Crの保護酸化物層560は、コンクリート530から鋼製構成要素(例えば、補強筋、鋼ビレット材など)の金属表面への酸素の拡散を制限するバリアを提供する不動態化層である。したがって、不動態化Cr層は、少なくとも酸素による腐食速度を制限する。
【0079】
図5は、また、Fe-Cr-Mo合金の表面に酸化物を形成することで、合金コーティングのピット/隙間形成による腐食をどのように低減できるかを概略的に示す。隙間/ピット570は、酸化物不動態化コーティングCr 560を通ってFe-Cr-Mo合金コーティング520に形成される可能性がある。概略的に示されるように、ステンレス鋼合金中の酸化モリブデン(例えば、MoO)は、Clイオンからの下層の鋼製構成要素の腐食を防止および/または実質的に低減する再不動態化層580を形成することができる。すなわち、ステンレス鋼合金中のMoの存在は、塩化物イオンの存在下で耐食性を高める可能性のあるMoOの効果的な酸化物層を形成するために、ピット/隙間の表面に拡散する可能性のある金属(Mo)を提供する。
【0080】
このように、鋼製構成要素にピットおよび/または隙間が形成されると、鋼製構成要素の腐食が大幅に増加する可能性があるが、複数の実施形態で本明細書に開示されているように、鋼製構成要素にステンレス鋼バリアを適用すると、ピット/隙間が存在する場合の鋼製構成要素の腐食を大幅に低減、または防止することさえできる。冶金学的な結合に成功すれば、ステンレス鋼コーティングは、曲げなどの棒材の変形を通して棒材に付着したままとなる。完全なコーティングは、ステンレス鋼の割合は大幅に低くなっているが(例えば、5%以下)、完全にステンレス鋼のみで作られた棒材と同等(または同様に)機能することが期待される。冶金学的な結合に成功すれば、ステンレス鋼コーティングの強靭で堅牢な性質と固有の耐食性とにより、コーティングは最新のエポキシコーティングされた補強棒材よりもはるかに優れた性能を発揮することが期待される。
【0081】
一般的な製造方法
例示的な実施形態において本明細書に開示されるコーティングされた鋼製構成要素を製造するための少なくとも2つの一般的なアプローチには、スプレー堆積技術および溶接オーバーレイ堆積技術が含まれる。第1のアプローチでは、コールドスプレーなどのスプレー技術が、補強筋などの完成済みまたはほぼ完成済みの鋼製構成要素に使用される。第2のアプローチでは、溶接オーバーレイ堆積技法を使用して、完成品の厚みよりも大きな厚みで耐食性コーティングを堆積させる。これら2つの技法に関する以下の議論は、決して限定的なものではなく、当業者であれば、本明細書に開示されるステンレス鋼コーティングを形成するために、他のアプローチを使用することができる。これら2つのアプローチは、例示のみを目的として議論されている。
【0082】
第1のアプローチは、コールドスプレーを使用して完成済みの棒材にコーティングを堆積させるもので、構成要素の製造に必要なスループットが高い場合に最適な選択である。
【0083】
溶接オーバーレイ、または他の幾つかのコーティング堆積方法/技術を使用し、その後に順次圧延する第2のアプローチは、コーティングの品質が重要だが、スループットが低くても許容され得る場合に適している。一般に、溶接オーバーレイプロセスは、コールドスプレーよりもコーティングの堆積に時間が大幅にかかる。
【0084】
コールドスプレー堆積の第1のアプローチを採用する場合、堆積した粒子は、衝突時に断熱剪断不安定性を達成するのに十分な速度で推進され、これにより塑性変形を起こさせる。こうして、金属コーティングとその下層の鋼製構成要素との間に冷間溶接(例えば、冶金学的な結合)が生じる。
【0085】
オーバーレイ溶接という第2のアプローチを採用する場合、耐食性コーティングの熱影響ゾーンと炭化物形成の可能性とに特別な注意が払われる。炭化物の形成は、その後の圧延プロセスでコーティングのひび割れにつながる可能性がある。炭化物形成が発生した場合は、オーバーレイされたビレット材の熱処理(例えば、摂氏1200度で1時間)を採用することができる。熱処理後、数回の順次圧延ステップを経て、棒材の総厚さとコーティングの厚さとを減らすことができる。
【0086】
コーティングの要件
耐食性金属コーティングは、棒材の表面を完全に覆っていなければならない。コーティングが完全でない場合、小さな開口部または「適用抜け(holidays)」が孔食攻撃の原因となり得る。ピット(例えば、隙間)は、特に塩化物(例えば、塩化物イオン、Cl)の存在下で、著しい腐食につながる可能性がある。コーティング抜けによるこの孔食プロセスの一例を図6に示す。
【0087】
図6は、コーティングの欠陥から孔食が発生する可能性を示す、コーティング抜け600を概略的に示す。鋼製構成要素650上の耐食性ステンレス鋼コーティング620にコーティング抜け690がある場合、孔食695が発生する可能性がある。塩化物イオンおよび/または酸素による鋼製構成要素の構造的完全性への攻撃は、孔食695を生じさせるように進行する可能性がある。そのようなコーティング抜けは、コーティングの被覆が不完全である場合、および/またはコーティングの結合が不十分である場合、またはコーティングが多孔質である場合に発生する可能性がある。
【0088】
図7は、例示的な実施形態による、コールドスプレー適用の場合のコーティング界面の本開示の様々な実施形態を概略的に示す。コールドスプレー適用の場合のコーティング界面715の概略断面図700を示す。コールドスプレー堆積では、粒子705と基材(例えば、鋼製構成要素)750の表面との間に完全接触表面界面715が形成される。コーティングされた粒子705は平坦化され、平坦化は塑性変形および衝撃を受けた粒子705の基材750への冷間溶接を示し、その結果、良好に結合されたコーティング720が得られる。
【0089】
幾つかの実施形態において、粒子705の平均粒径は、5μm~20μmであってよい。耐食性ステンレス鋼コーティング720は、10μm~100μmの平均厚さを有してよい。耐食性ステンレス鋼コーティング720は、コーティング720とその下層の鋼棒材(例えば、構成要素)750との間の界面で冶金学的な結合により、棒材750に完全に接着している。
【0090】
図8の800は、結合が不十分な多孔質のコーティング820を概略的に示す。結合が不十分な多孔質のコーティング820は好ましくなく、コーティング820の剥離または腐食環境中の液体によるコーティング820の浸透につながる可能性がある。結合に失敗した場合、コーティングは鋼製構成要素の表面850を覆わず、かつ/または界面815において下層の基材に接着しない。腐食性の液体および/またはガスが、結合が不十分なコーティング820に浸透し、下層の鋼製構成要素850を腐食させる孔825が存在する可能性がある。
【0091】
コーティング材料
幾つかの実施形態において、様々なコーティング金属が耐食性を提供できる。例えば、グレード430鋼を含むフェライト系ステンレス鋼、鉄-クロム-アルミニウム合金、鉄-クロム-モリブデン-アルミニウム合金、鉄-クロム-モリブデン-アルミニウム-ケイ素合金などは、本明細書に記載されるように、鋼製構成要素に有効な耐食性を提供する。さらに、(例えば、最低14重量%のCrを含む)合金鉄は、補強棒材の耐食性を大幅に向上させる。海水環境または道路などの高塩化物環境では、塩化物攻撃に耐えるために、最低2重量%のMoを含む耐塩化物コーティング合金を使用することができる。
【0092】
さらに、体心立方(例えば、BCC)構造を持つ新しいフェライト系ステンレス鋼合金を下記に開示する。他の実施形態において、グレード4130鋼などのマルテンサイト鋼を利用する。さらに他の実施形態は、グレード304およびグレード316鋼などのオーステナイト系ステンレス鋼を利用する。さらに他の実施形態において、アルミニウム、チタン、およびクロムベースの金属などの非鉄金属および合金を利用する。上記のコーティング金属および下記の実施例で説明する金属は、例示のみを目的としたものである。当業者であれば、ここに記載されていない他のコーティング材料を使用することもできる。
【0093】
コールドスプレーシステム
例示的な実施形態は、連続コールドスプレー積層造形による金属構成要素の高スループット金属コーティングのためのプロセスに関する。例示的な実施形態は、また、このプロセスに関連する構成要素に関する。
【0094】
多くの低コスト鋼製構造物は、構造完全性に対する腐食の影響により、運用寿命の短縮に悩まされている。多くの場合、性能寿命を延ばすために耐食性外層を適用することが有益であり得る。エポキシコーティング、塗装、亜鉛めっきなどの既存の方法では、耐食性に限界があり、最新の高スループットの鋼材製造方法に容易に統合することができないため、コストが高くつく。
【0095】
コールドスプレー積層造形は、構成要素の表面に金属コーティングを適用する比較的スループットの高い方法である。コールドスプレーでは、金属粒子がスプレーコーターのノズルから高速度で、金属の融点よりもかなり低い温度で基材上に噴射される。これらの粒子は、基材に衝突する前に、超音速キャリアガスによって高速度に加速させられる。次いで、コーティング粒子は、その運動エネルギーが激しい塑性変形および冷間溶接を起こすときに、衝撃により基材に結合する。コーティング粒子は基材と冶金学的な結合(例えば、金属結合)を形成する。
【0096】
図9は、例示的な実施形態による、コールドスプレー堆積システム900の本開示の様々な実施形態を概略的に示す。幾つかの実施形態において、コールドスプレー堆積システム900は、スプレーガン910を含む。スプレーガン910は、スプレーガン910へのガス源の接続を可能にするガス入口912を含む。ガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、空気、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、またはフォーミングガス(N中5%H)のうちの少なくとも1つを含み得る。ガスは、約700psi~約800psiの高圧であってよい。ガスは、エネルギー源914によって約900℃~約1100℃の温度に加熱され得る。
【0097】
スプレーガン910は、粒子フィーダーからステンレス鋼粒子の供給源を受け入れるためのフィーダー入口918を含む。粒子フィーダーは、ステンレス鋼粒子をスプレーガン910に供給するためのホッパーであってよい。ステンレス鋼粒子は、5μm~20μmの平均粒径を有し得る。フィーダーは、粒子のキャリアガスである高圧ガスを有するフローラインにステンレス鋼粒子を供給する。
【0098】
スプレーガン910は、鋼製構成要素の表面の各領域とノズルのアレイにおけるノズルの少なくとも1つとの間に遮られていない直線があるように鋼製構成要素を取り囲むように構成されたスプレーノズルのアレイ(図示せず)を含む。
【0099】
粒子を運ぶ高圧の加熱ガスは、ノズルのアレイに供給される。スプレーノズルのアレイは、加熱ガスおよびステンレス鋼粒子920のプルーム内で各ノズルから出る加熱ガスの高速度によって与えられる力によってステンレス鋼粒子を加速させるように構成されている。ステンレス鋼粒子は高速度で構成要素930の表面に衝突し、構成要素930の表面に冶金学的に結合して、ステンレス鋼コーティング940を形成する。幾つかの実施形態において、高速度は超音速である。
【0100】
構成要素930は、構成要素運動950を伴って噴霧プルーム920内を移動する。構成要素運動950は、金属構成要素930を噴霧プルーム920を通して移動させるコンベヤまたは他の機構によって提供され得る。
【0101】
スプレー堆積システム900の実施形態の拡大図960は、矢印で示すように、構成要素930に向かって移動する粒子925を示す。耐食性コーティング940は、構成要素930上に粒子925の構成要素上の増成として堆積される様子が示される。粒子925は、超音速で構成要素930に到達するため、平坦化された外観を有する。平坦化された外観は、塑性変形および衝撃を受けた粒子925の構成要素(例えば、基材)930への冷間溶接を示しており、その結果、良好に結合されたコーティング940が得られる。
【0102】
スプレーヤー構成要素
図10Aおよび図10Bは、例示的な実施形態による、コールドスプレー堆積システムの本開示の様々な実施形態を概略的に示す。図10Aおよび図10Bに示すように、それぞれ1000および1010のスプレーシステムは、ガス供給1012、粒子(例えば、粉末)フィーダー1018、ガスヒーター1014、およびスプレーノズルのアレイ1024を含む複数の構成要素を含む。10Aのスプレーシステム1000は、並列配置で構成されている。10Bのスプレーシステム1010は、インライン配置で構成されている。幾つかの実施形態において、スプレーシステムは、並列配置またはインライン配置を利用することができる。幾つかの実施形態において、前述の構成要素を各々1つだけ利用する。他の実施形態において、1つ以上の前述の構成要素の複数、例えば1つのシステムに接続されたノズルの複数のアレイ、または1つの中央ガス供給を共有するガスヒーターおよびノズルアレイの複数の個別システムを利用する。
【0103】
金属粒子
例示的な実施形態において、消耗入力として金属粒子(例えば粉末)を利用する。これらの粒子はキャリアガス中に供給され、高速度で基材に運ばれる。次いで、粒子は基材(例えば、金属構成要素)に衝突し、基材表面に冶金学的な結合を形成し、そうすることでコーティングを形成する。粒子は、ガス霧化、水噴霧化、および機械的な破砕を含む複数の方法で製造することができる。
【0104】
幾つかの実施形態において、適用された粒子は、ガス霧化によって作製された球状粒子である。幾つかの実施形態において、適用された粒子は、高圧水霧化によって作製されたほぼ球形の粒子である。幾つかの実施形態において、適用された粒子は、機械的な破砕を通して作製された不規則な形状の粒子である。
【0105】
幾つかの実施形態において、粒子は、5~20μmの範囲の平均粒径を有する。幾つかの実施形態において、適用されたコーティングは、10~100μmの範囲の平均厚さを有する。
【0106】
幾つかの実施形態において、適用された粒子は、鋼製構成要素に耐食性を付与するための300シリーズまたは400シリーズ鋼などのステンレス鋼である。他の実施形態において、アルミニウムなどの他の耐食性材料がコーティングに使用される。他の実施形態において、亜鉛などの犠牲金属が、腐食に対するカソード保護を提供するために使用される。
【0107】
幾つかの実施形態において、硬度を増加させたり、他の表面特性を変更したりするために、セラミック粒子または他の非金属材料が金属コーティングに組み込まれる。
【0108】
キャリアガス
例示的な実施形態において、高圧キャリアガスを利用して、コーティング粒子を搬送し、運動エネルギーを付与する。幾つかの実施形態において、キャリアガスは、定期的に充填または交換される加圧ガスタンクによって供給される。幾つかの実施形態において、キャリアガスはガス圧縮機によって供給される。幾つかの実施形態において、キャリアガスの圧力は、500ポンド/平方インチ(例えば、psi)~1000psiであってよく、または圧力は、600psi~900psiであってよく、または圧力は、700psi~800psiであってよく、または圧力は、約725psiであってよい。
【0109】
キャリアガス(例えば、ガス)は、コールドスプレーヤーに組み込まれたガスヒーターで予熱することができる。キャリアガスは、コールドスプレーヤーに供給される前に加熱することもできる。幾つかの実施形態において、ガスの温度は700℃~1300℃であってよく、またはガスの温度は850℃~1150℃であってよく、またはガスの温度は900℃~1100℃であってよく、またはガスの温度は、約1000℃であってよい。
【0110】
幾つかの実施形態において、窒素(N)、ヘリウム(He)、窒素(N)とヘリウム(He)の混合物、空気、およびアルゴン(Ar)を含む、様々なキャリアガスが使用され得る。幾つかの実施形態において、フォーミングガス(例えば、N中5%H)などの反応性ガスを使用することができる。他の実施形態において、他のキャリアガスまたは混合ガスを利用する。
【0111】
ノズル
図11は、例示的な実施形態による、ノズル設計の本開示の様々な実施形態を概略的に示す。例示的な実施形態において、収束-発散ノズル設計1100が、キャリアガスおよびコーティング粒子を超音速まで加速させるために利用される。高圧高温のキャリアガスがコーティング粉末と混合され、ノズル1110に供給される。ガスおよび粒子がノズルに入ると、ガスは高圧、高温、および亜音速1110になる。このガスはノズルの収束部1120を通って圧縮され、ガスの圧力および温度が低下するが、同時にノズルののど1125で音速に達する。次いで、ガスはノズル1130の発散部を通って膨張し、圧力および温度はさらに低下し、ガスの速度は音速を超えて上昇する。コーティング粒子は、ノズルの収束部と発散部との両方を通してガスによって運ばれ、ガスの高速度によって与えられる力によって加速させられる。キャリアガスおよび粉末がノズルから出て、スプレープルームを形成する。そのスプレープルームは基材上に向けられ、そこでコーティング粒子が高速度で衝突し、表面に結合する。幾つかの実施形態において、収束-発散ノズル設計は、対象の構成要素を取り囲む複数のこのようなノズルで利用され、完全なコーティングを実現する。
【0112】
例示的な実施形態は、鋼および他の金属の既存の製造プロセスに統合される方法で耐食性コーティングを適用するための高スループット、低コストの方法として、コールドスプレー堆積プロセスの適応を利用する。本明細書に開示される幾つかの実施形態において、自動化された製造ラインを通過する際には、製造された鋼材を完全にコーティングするように配向された複数の定置収束-発散スプレーノズルが。さらに、本明細書に開示される他の実施形態において、自動化された製造ラインを通過する際に、製造された鋼材を完全にコーティングするように移動する複数の可動収束-発散スプレーノズルを利用する。
【0113】
鋼製構成要素について説明したが、様々な実施形態が、アルミニウム、銅、および/またはニッケルベースの合金を含む他の金属にも適用されることに留意すべきである。さらに、様々な実施形態が、パイプ、管、梁、桁を含む他の形状にも適用される。腐食防止について議論したが、様々な実施形態が、硬度、粗さ、耐摩耗性、および外観を含む他の表面特性を変更する。したがって、鋼棒材および腐食に関する議論は例示を目的としたものであり、すべての実施形態に適用することを意図したものではない。
【0114】
幾つかの実施形態は、製造プロセスを大幅に変更することなく、既存の鋼材および/または他の金属製品に耐食性コーティングを適用する。そのようなコーティングは、製品に耐食性を付与し、製品の貯蔵寿命および運用寿命を延ばし、ユーザに対する製品の価値を高める。
【0115】
様々な実施形態は、製品への視線アクセスを可能にする任意のステップで、既存の金属製造プロセスに組み込むことができる。幾つかの実施形態は、鉄鋼製造プロセスで予想される全範囲の温度にわたって基材にコーティングを適用することができる。適用されたコーティングは、好ましくは、下層の金属の形状または構造特性に大きな影響を与えない。
【0116】
ノズルアレイ
図12Aおよび図12Bは、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す。図12Aは、鋼ビレット材などの矩形鋼製構成要素1250(例えば、基材)の外側をコーティングするように配向されたコールドスプレーノズル1220の矩形ノズルアレイ1210の実施形態1200を示す。コーティングスプレー1230は、矩形鋼製構成要素1250上に堆積されて、適用されたコーティング1240を形成する。ノズルのアレイ1210におけるノズル1220は、矩形鋼製構成要素1250の表面全体を覆うように構成されている。すなわち、スプレーノズルのアレイ1210は、矩形鋼製構成要素1250の表面の各領域とスプレーノズルのアレイ1210におけるノズル1220の少なくとも1つとの間に遮られていない直線があることを保証するために、矩形鋼製構成要素1250を直線的な構成で取り囲む。
【0117】
図12Bは、補強筋などの円形鋼製構成要素1250(例えば、基材)の外側をコーティングするように配向されたコールドスプレーノズル1270の円形ノズルアレイ1260の実施形態1255を示す。コーティングスプレー1280は、円形鋼製構成要素1295上に堆積され、適用されたコーティング1290を形成する。ノズルのアレイ1260におけるノズル1270は、円形鋼製構成要素1295の表面全体を覆うように構成されている。すなわち、スプレーノズル1270のアレイは、円形鋼製構成要素1295の表面の各領域とスプレーノズル1270のアレイにおけるノズル1260の少なくとも1つとの間に遮られていない直線があることを保証するために、円形鋼製構成要素1250を円形構成で取り囲む。他の実施形態において、ノズルの複雑なアレイが、桁および梁を含む複雑な形状をコーティングするために使用される。
【0118】
ノズルの配置
例示的な実施形態において、ノズルアレイにおけるノズルは、コーティングされた製品の完全な被覆を保証するように配向される。幾つかの実施形態において、ノズルは、各ノズルのスプレートラックが隣接するスプレートラックと重なり、被覆にギャップが存在しないことを保証するように配向される。幾つかの実施形態において、スプレーノズルの幾つかは、少なくとも部分的に長手方向および少なくとも部分的に半径方向に配向され得る。これにより、ノズルのアレイは、単一平面内にのみ位置決めされたスプレーノズルのアレイではカバーされない可能性のある構成要素の部分をカバーすることができる可能性がある。すなわち、スプレーノズルのアレイにおける少なくとも幾つかのスプレーノズルは、少なくとも部分的に長手方向および少なくとも部分的に半径方向に粒子の流れを生成することができる。また、1つ以上のノズルは、構成要素を通って投影される半径方向の線から外れた方向を向くこともある。半径方向から外れた線の方向は、半径方向線の集まりによって形成される平面から外れた傾きであってもよい。
【0119】
図13は、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す。図13(左)は、単一平面内にスプレーノズル1310を有する平坦な外接アレイ1300を有するノズルアレイの実施形態の例示的な例を提供する。基材(例えば、金属構成要素)1320は、コーティング1330でコーティングされる。
【0120】
図13(右)は、コーティングノズル1360の平坦な千鳥状アレイ1350を有するノズルアレイの実施形態の例示を提供する。この実施形態において、アレイ1350は、螺旋状アレイにおけるスプレーノズル1360を有する。基材(例えば、金属構成要素)1370は、コーティング1330でコーティングされる。
【0121】
幾つかの実施形態において、隆起または陥没した特徴を持つ製品のコーティングを伴うため、完全な被覆を達成するためにノズルを表面に対して相対的に回転させる。そのような一実施形態において、鋼補強筋のコーティングは、補強筋の表面の隆起のコーティングを必要とする。
【0122】
図14は、例示的な実施形態による、ノズルアレイの本開示の様々な実施形態を概略的に示す。図14(左)は、ノズル1310が、補強筋の表面上の隆起部1320を覆うために粒子1330を噴霧するように構成される実施形態を示す。図14(左)において、ノズル1310は、隆起部の片側に位置し、コーティング1340が隆起部の側面を覆うことを保証するために、隆起部に向かって向けられている。
【0123】
図14(右)は、ノズル1360が(図14(左)に対して)補強筋の他方の側面の隆起部1320を覆うように構成される実施形態1350を示す。図14(右)において、ノズル1360は、(図14(左)に対して)隆起部1320の他方の側に位置し、コーティング1380が表面と同様に隆起部の側面を覆うことを保証するために、隆起部および表面に向かって向けられている。
【0124】
図15は、後のスプレーノズルが前のノズルからのコーティングトラックと重なるように配向される例示的な実施形態を概略的に示す。第1のスプレーノズル1510は、第1のスプレーノズル1510に対して方向1515に移動している構成要素1505上に第1のコーティングスプレートラック1520をスプレーする。第2のスプレーノズル1530は、第2のコーティングスプレートラック1540をスプレーする。重なり合ったスプレーノズル1510および1540によって、コーティングの重なり1550が生じる。
【0125】
図16は、スプレーノズル1604の連続するアレイが所望のコーティング厚さに達するように構成される例示的な実施形態1600を概略的に示す。そのような実施形態において、各アレイは、コーティング厚さの一部に寄与し、後続の各アレイは、前のアレイの厚さの上に構築される。図16に概略的に示すように、第1のアレイ1610は、鋼基材1608(例えば、鋼製構成要素)上の第1のコーティング1620にスプレーする。第2のアレイ1630は第2のコーティング1640にスプレーし、第3のアレイ1650は第3のコーティング1660にスプレーする。このようにして、適用されたコーティング1606は必要な厚さを達成することができる。
【0126】
幾つかの実施形態において、スプレーノズルのアレイは同一であり、交換可能である。他の実施形態において、アレイは、コーティング厚さの局所的なばらつきを最小限に抑えるために、異なるように配置され、方向付けられる。幾つかの実施形態において、必要なコーティング厚さを達成するために、多数のアレイが直列に組み立てられる。幾つかの実施形態において、ノズルは、任意の隆起部または他の幾何学的特徴の被覆を含む棒材の全周を被覆するように方向付けられる。
【0127】
コーティングシステムの統合
例示的な実施形態において、スプレーコーティングシステムは、視線アクセスが可能な多くの潜在的なステップで、従来の金属製造プロセスに組み込むことができる。幾つかの実施形態において、コーティングは、製品が最終形状に処理された後、製造プロセスの終了間際に実施される。他の実施形態において、コーティングステップは、圧延ステップの前、または圧延ステップ間に行うことができ、コーティング製品の結合は圧延プロセスを通して維持される。他の実施形態において、コーティングは加熱の前に行うことができる。他の実施形態において、コーティングは製品の切断後に行うことができる。
【0128】
図17Aは、例示的な実施形態による、製造ラインへのスプレーシステムの統合の様々な実施形態を概略的に示す。図17Aは、鋼棒材製造プロセス1700に設置されたコーティングシステムを概略的に示す。この実施形態において、コーティングシステムは、大部分の処理ステップの後に配置される。簡単に説明すると、棒材の加熱1710、圧延1720、および焼入れ1730の製造プロセスは、コーティング1740が適用される前に行われる。コーティング1740では、コーティングシステムは、この実施形態において、円形アレイの幾つかの段階を通してステンレス鋼コーティングを適用する。コーティング1740の後、コーティングされた鋼棒材は長さに合わせて切断され、冷却され、流通のために束ねられる。
【0129】
図17Bは、鋼棒材製造プロセス1700に設置されたコーティングシステムを概略的に示す。この実施形態において、コーティングシステムは、大部分の処理ステップの前に配置される。簡単に説明すると、コーティング1770は、鋼製造ステップの前に鋼ビレット材に対して実行される。この実施形態において、コーティングシステムは、円形アレイの幾つかの段階を通してステンレス鋼コーティングを適用する。鋼ビレット材へのステンレス鋼コーティングの後、コーティングされた鋼ビレット材は、棒材の加熱1775、圧延1780、焼入れ1785の処理ステップを経る。焼入れ後、コーティングされた鋼ビレット材は長さに合わせて切断され、冷却され、流通のために束ねられる。
【0130】
他の実施形態には、鋳造、押出、延伸を含む他の処理ステップとの製造プロセスへの統合がある。コーティングシステムは、そのような処理ステップの前または後に組み込むことができる。
【0131】
幾つかの例示的な実施形態は、適用されたコーティングの汚染を制限するために、製品が最小量の酸化スケールを有する段階にコーティングを統合する。そのような場所の例としては、高圧水焼入れ直後、圧延、延伸、他の変形プロセスの直後などが挙げられる。他の実施形態において、追加の処理ステップを使用して、コーティングの前に製品から任意の酸化スケールを除去する。
【0132】
コーティングシステムのサイズおよび向き
ノズルの数およびコーティングスループットを含む例示的な実施形態のサイズは様々であり、既存の製造プロセスの詳細に依存する。
【0133】
幾つかの実施形態において、最小コーティング厚さは、適用の要件によって決定される。例えば、ある用途では、最大腐食速度が既知であり、構成要素がその耐用年数の全期間にわたって保護されることを保証するために、特定のコーティング厚さが必要となる。他の用途では、耐摩耗性または耐傷性をはじめとする、コーティングの機械的な耐久性に関する要件があり、特定の厚さのコーティングを満たす必要がある。他の実施形態において、最小コーティング厚さは、構成要素を完全に覆う必要性によって決定される。前述の実施形態において、コーティング厚さは、完全な被覆を可能にするために、コーティング粉末の平均直径の少なくとも2~4倍となる。
【0134】
実施形態の必要なコーティングスループットは、所望のコーティング厚さ、既存の製造プロセスのスループット、およびコーティングされる製品の表面積によって決定することができる。次いで、必要なスループットは、各ノズルの最大コーティング堆積速度に基づいて、最小ノズル数を決定することができる。次いで、コーティングシステムは、最小ノズル数を満たし、かつ各ノズルのコーティング面積を考慮して、コーティングされる構成要素の表面を完全に覆うことができるようなサイズにすることができる。
【0135】
大型鋼ビレット材のコールドスプレー
大型鋼ビレット材(およそ7インチ×7インチ×25フィート)をコーティングし、圧延し、納品される補強筋がすでにコーティングを有しているように処理することができる。幾つかの実施形態において、図17Bについて上述したのと同様のプロセスを使用して、ビレット材が鋼棒材へと処理される前に大型ビレット材をコーティングすることができる。図17Bについて説明したように、加熱、圧延、および焼入れステップの前にステンレス鋼コーティングを大型ビレット材に適用することによって、プレコーティングされた補強筋の製造コストは、図17Aに図示したように、加熱、圧延、および焼入れステップの後に補強筋をコーティングするよりも低くなり、スループットは高くなる可能性がある。
【0136】
鋼製構成要素上に耐食性フェライト系ステンレス鋼マトリックスのコーティングを形成するという驚くべき結果は、コールドスプレープロセスでスプレーノズルのアレイを使用することで、耐食性鋼製構成要素を製造できることを示している。
【0137】
新しい鋼合金組成(Fe-Cr-Si-Al-Mo合金)(3)
鋼材の大気腐食および水腐食は、効果的で耐久性のある構造物を設計する上での大きな課題である。腐食を抑制するために鋼材の組成を変更することで、ステンレス鋼の場合と同様に、維持費を削減し、性能を向上させることができる。鋼材の耐食性は通常、14~20重量%のクロムを添加し、鋼材を腐食から保護するCr(クロミア)の表面層を形成することで達成される。しかしながら、このクロミア層は、様々な腐食環境、酸性度(pH)、および温度をはじめとする、幅広い環境下で攻撃を受けやすい。特に、塩化物イオン(例えば、Cl)およびフッ化物イオン(例えば、F)を含むハロゲン化物による攻撃は、保護酸化物層を除去し、攻撃的な孔食タイプの腐食を引き起こす可能性がある。
【0138】
フェライト鋼における一般的な耐食性および耐ハロゲン化物性を可能にするために、例示的な実施形態において、クロム、アルミニウム、およびケイ素などの不動態化酸化物形成剤と並んで、高濃度のモリブデン(例えば、Mo)を使用する。フェライト鋼は通常、体心立方(例えば、BCC)構造を有する。これらの高濃度のモリブデンは通常、酸化物層がハロゲン化物攻撃によって損傷した領域を迅速に再不動態化する。この結果、既存のフェライト鋼よりもはるかに優れた耐ハロゲン化物攻撃性を有する耐食ステンレス鋼が得られる。さらに、316ステンレス鋼は、塩化物環境での耐食性を提供するために2重量%のMoを含む。
【0139】
幾つかの実施形態において、ケイ素およびアルミニウムが二次および三次酸化物形成剤として組み込まれ、より広範な環境において更なる耐食性を可能にしている。ニッケルおよびマンガンなどのオーステナイト系安定化元素の存在は、フェライト相を保持するために制限される。Fe-Cr-SiおよびFe-Cr-Alなどの合金は、二次保護酸化物層の概念を利用している。
【0140】
例示的な実施形態において、フェライト系ステンレス鋼は、炭素鋼を含む他の物質組成への耐食性コーティングとして利用することができる。この外側コーティングは、コールドスプレー、溶接オーバーレイ、および共押出しをはじめとする、様々な方法で適用することができる。
【0141】
Fe-Cr-Mo-Al-Si合金の耐食性への応用
図18は、鋼製構成要素への耐食性コーティングとしてのFe-Cr-Mo-Al-Si系ステンレス鋼合金の実施形態を概略的に示す。図18は、合金中の金属原子がどのように合金表面の個々の酸化物層に拡散しているかを示す多層酸化物層の概略的な実施形態を示す。図18の一番下の材料は鋼製構成要素1810である。Fe-Cr-Mo-Al-Si合金コーティングが鋼製構成要素上に堆積され、アルミニウム、ケイ素、およびクロム元素が拡散して、金属酸化物層1870の多層コーティングを形成している。酸化アルミニウム層1820は鋼製構成要素1810に最も近い。酸化アルミニウム層の次の層は二酸化ケイ素層1830である。酸化クロム層1840は多層酸化コーティング1870の表面にある。
【0142】
塩化物イオン(Cl)による腐食が多層酸化コーティングを貫通し、鋼製構成要素内部まで進展することで、ピット(例えば、隙間)が形成されている。多層酸化コーティングの酸化物層は、酸素による酸化腐食を防止する効果はあるが、Clによる孔食を防止する効果は低い。しかしながら、ステンレス鋼中のモリブデン原子は、Cl孔食によって生じた孔食表面に拡散し、腐食表面にMoO不動態化ナイーブ酸化物層1860を形成する。MoO不動態化層は、塩化物イオンによる更なる腐食を防止し、かつ/またはそれに抵抗する。
【0143】
図19は、本発明における構成元素間の酸化物形成の相対的な駆動力を示すエリンガムダイアグラムである。エリンガムダイアグラムは、化合物の安定性の温度依存性を示すグラフである。エリンガムダイアグラムは、各酸化反応のギブス自由エネルギー変化(ΔG)を温度の関数としてプロットしたものである。このダイアグラムは、多層酸化コーティング中のどの金属酸化物層が最も安定な酸化物を形成しそうであるか(ΔGの絶対値が最も大きいか)を特定し、酸化物層の積み重なりの順序を決定するのに特に有用である。なぜなら、より安定な酸化物層は、鋼製構成要素の近くに形成される傾向にあるからである。
【0144】
図19に示すように、AlはΔGの絶対値が最も大きく、鋼層に最も近い層である。SiOは、ΔGの絶対値が次に大きく、Al層の上にある層である。CrはΔGの絶対値が最も小さく、多層酸化コーティングの上にある層である。
【0145】
一次、二次、三次耐食性ステンレス鋼合金金属としてのクロム、モリブデン、アルミニウム、およびケイ素の選択は、合金の構造および耐薬品性の最適化に基づいている。構造は、体心立方(例えば、BCC)フェライト系マトリックスを形成するように最適化され、耐薬品性は、酸素および塩化物の両方による鋼の腐食に耐えるように最適化される。
【0146】
図20は、鉄、クロム、およびモリブデンのステンレス鋼合金のCrおよびMo含有量の範囲に対する平衡相組成を示す。例示的な物質組成の元素範囲は、以下の考察を用いて選択することができる。鉄(Fe)は、その豊富さ、手頃な価格、強度、延性から、合金の主要元素として選択される。クロム(Cr)は、合金の全体的な耐食性を達成するために、主な合金元素として選択される。この耐食性は、安定した保護Cr層を形成するために最低16重量%のCrを有する一方で、シグマ(sigma)相およびラーベス(laves)相などの有害な金属相の形成を制限または防止するために20重量%以下のCrを有することによって達成される。モリブデン(Mo)は、濃ハロゲン化物媒体、特に高塩化物水溶液環境中での耐食性を向上させるため、最低3重量%含まれ、カイ(chi)相、シグマ相、およびラーベス相の金属間化合物の生成を抑制するため、4~8重量%以下に制限される。アルミニウム(Al)は、追加のAl保護酸化物層を形成するために含有させることができ、脆いFeAl析出物の形成を避けるために4重量%以下に制限される。ケイ素(Si)も、脆いCrSi析出物の形成を避けるため、2重量%以下を限度として、追加のSiO保護酸化物層を形成するために含有させることができる。マンガン(Mn)は、少量(0.1~0.5重量%)添加し、小さなMnS析出物の形成を通じて溶鉄中の硫黄不純物を消費する。炭素(C)および窒素(N)は、材料中の炭化物相および窒化物相の形成を制限するため、0.1重量%に制限される。硫黄(S)は、硫黄が鋼材に引き起こす可能性のある深刻な脆化を避けるため、0.05重量%に制限される。
【0147】
潜在的組成物の範囲
【0148】
本発明の様々な実施形態は、下記に説明する微細構造および有用性を達成するために、指定された範囲内で以下の元素を有する。
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
12~25重量パーセントのクロム(Cr)と、
2~10重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~10重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~5重量パーセントのケイ素(Si);
0~5重量パーセントのニッケル(Ni);
0~1.0重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);および
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0149】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
16~20重量パーセントのクロム(Cr)と、
3~6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、以下:
0~4重量パーセントのアルミニウム(Al);
0~2重量パーセントのケイ素(Si);
0~0.1重量パーセントのニッケル(Ni);
0.1~0.5重量パーセントのマンガン(Mn);
0.0~0.1重量パーセントの炭素(C);
0.0~0.1重量パーセントの窒素(N);
0.0~0.05重量パーセントの硫黄(S)のうちの少なくとも1つ以上と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0150】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
6重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
4重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0151】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
3重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
4重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0152】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
8重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
5重量パーセントのアルミニウム(Al)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0153】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
8重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
2重量パーセントのケイ素(Si)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0154】
本発明の実施形態によれば、BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物は、
18重量%のクロム(Cr)と、
4重量%のモリブデン(Mo)と、
残部の鉄(Fe)と
を含む。
【0155】
一般的な製造方法
形成ステップ
合金を合成するために、当業者は以下のステップを採用することができる。この方法は、合金を合成するために通常使用されるであろう長いプロセスを実質的に簡略化したものであることに留意すべきである。したがって、合金を合成するプロセスは、当業者が使用するであろう多くのステップを有することが予想される。加えて、ステップの幾つかは、図示した順序とは異なる順序で、または同時に実行することができる。
【0156】
したがって、当業者はこのプロセスを適宜変更することができる。さらに、上述および後述するように、記載した材料および構造は、使用することができる多種多様な材料および構造の1つにすぎない。当業者は、用途および他の制約に応じて適切な材料および構造を選択することができる。したがって、特定の材料および構造に関する議論は、すべての実施形態を限定することを意図するものではない。
【0157】
様々な実施形態の1つのプロセスは、以下のステップを有する。
【0158】
・ BCCフェライト系マトリックスを有する耐食性ステンレス鋼合金組成物について上述したように、適切な重量分率で原料の混合物を提供するステップ。
・ 金属混合物を溶融するための炉を提供するステップ。
・ 金属混合物を炉内で約1600℃~約2000℃の温度に加熱し、液体金属混合溶融物を形成するステップ。
・ 液体金属混合溶融物を、固化プロセスを開始するために、第1の期間にわたって約1000℃~約1300℃の中間温度まで冷却するステップ。
・ 焼入れにより炭化物析出物の形成が制限されるため、液体金属混合溶融物を、第2の期間にわたって約400℃~約600℃の温度に焼入れするステップ。
・ 金属混合物を、約10分~約60分の期間にわたって約450℃~約600℃の温度で焼戻しするステップ。
・ 金属混合物を、積極的な加熱がない状態で冷却するステップであって、金属混合物はフェライト系ステンレス鋼合金を含む、ステップ。
【0159】
第1の期間は5分~100分であってよい。第2の期間は0.5秒~10秒であってよい。
【0160】
実施例
以下の実施例は、本開示およびその好ましい実施形態をさらに説明するためのものである。
【0161】
実施例1:費用効果の高いオプション
グレード304SSコーティング、コーティング厚さ20~40μm、コールドスプレー堆積
実施例1は、コスト削減を最も指向する本発明の実施形態を示す。この実施例では、耐食性コーティング層として304SSを採用しているが、これは、その優れた一般耐食性と、他の適切な耐食性コーティング材料と比較して、このコーティング材料が安価なためである。
【0162】
比較的低コストで高スループットであることから、炭素鋼棒にコーティングを適用する方法としてコールドスプレー堆積を採用した。コーティングの厚さは20~40μmを選択する。この厚さ範囲にすれば、耐食性コーティングが材料の表面を完全に覆っているという確信が得られると同時に、コーティングの全体的なコストを削減するためにコーティング材料の使用を制限できるからである。コールドスプレー堆積は、製造プロセスの終了間際に、完成品または完成品に近い棒材に対して行うことが望ましい。
【0163】
実施例2.
グレード316SSコーティング、コーティング厚さ25~50μm、コールドスプレー堆積
実施例2は、コストを抑えつつ比較的薄いコーティング層を使用して、一般的な耐酸化性に加えて実質的な塩化物耐食性が達成される本発明の実施形態を表す。この実施例では、耐食性コーティング層として316SSを使用し、モリブデン含有量の増加により、従来のステンレス鋼の保護とともに塩化物攻撃に対する実質的な耐食性が追加されている。
【0164】
この実施例では、適切な厚さのコーティングを高スループットで安価に製造できることから、コールドスプレー堆積を選択した。コスト上昇を抑えつつ堅牢な耐食性を得るために、25~50μmのコーティング厚さを選択した。コールドスプレー堆積は、製造プロセスの終了間際に、完成品または完成品に近い棒材に対して行うことが望ましい。
【0165】
実施例3.
グレード316SSコーティング、コーティング厚さ40~80μm、溶接オーバーレイ
実施例3は、実質的な耐塩化物腐食性を有すると同時に、曲げ、引っ掻き、または表面コーティングを損傷する可能性のある他のプロセスに対してより堅牢な本発明の実施形態を示す。この実施例でも、耐食性コーティング層としてグレード316SSを使用することで、塩化物環境における腐食に対して顕著な耐性が提供される。
【0166】
この実施例では、コーティング材料を棒材に堆積させるために溶接オーバーレイを使用する。この実施例では、40~80μmのコーティング厚さにより、より堅牢で、機械的に健全なコーティングが得られ、耐食性を維持しながら、棒材の変形に、より容易に耐えることができる。そのため、溶接オーバーレイプロセスは、棒材製造プロセスの初期に行うことが望ましい。例えば、溶接オーバーレイプロセスは、棒材の完成寸法まで圧延された大きなビレット材をコーティングするために適用することができる。
【0167】
実施例4.
Fe-18Cr-6Mo-4Al-2Si SS、コーティング厚さ25~50μm、コールドスプレー堆積
実施例4は、高耐食性コーティング材料Fe-18Cr-6Mo-4Al-2Siを使用した実施形態である。この合金は、Moによる塩化物攻撃耐性に加えて、保護的な不動態化酸化膜を形成する複数の元素を採用することで、卓越した全体的な耐食性を提供する。このコーティング材は一般的に高価だが、この実施例で選択した25~50μmのコーティング厚さは、性能とコストとのバランスを可能にする。
【0168】
この実施例では、高スループットで適切な厚さのコーティングを作ることができることから、コールドスプレー堆積が選択されている。コールドスプレー堆積は、製造プロセスの終了間際に、完成品または完成品に近い棒材に対して行うことが望ましい。
【0169】
実施例5.
Fe-18Cr-6Mo-4Al-2Si SS、コーティング厚さ40~80μm、溶接オーバーレイ堆積
実施例5は、Fe-18Cr-6Mo-4Al-2Si合金を利用し、堅牢な棒材保護および性能を提供する。40~80μmの比較的厚いコーティングは、コーティングの性能を低下させる可能性のある、著しい変形、引っ掻き、その他の損傷に耐えることができる。
【0170】
この実施例では、保護コーティング材料を棒材に堆積させるために、溶接オーバーレイを使用している。そのため、溶接オーバーレイプロセスは、棒材製造プロセスの初期に行うことが望ましく、溶接オーバーレイは棒材の完成寸法まで圧延された大きなビレット材に適用される。
【0171】
実施例6.
最大耐食性組成物;Fe-18Cr-6Mo-4Al-2Si-0.1C
この実施例は、保護酸化物形成剤であるCr、Al、およびSiに加えて、ハロゲン化物腐食攻撃に対する耐性をさらに高めるためにMoの含有量を最大にすることで可能となる最高の耐食性を得るための組成物の最適化を示す。
【0172】
図21は、例示的なFe-Cr-Mo-Al-Si組成物の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を示している。例示的なFe-Cr-Mo-Al-Si組成物の時間-温度-変態曲線は、二次相の形成を制限/回避するために温度プロフィルをどのように制御できるかを示している。
【0173】
図22は、例示的なFe-Cr-Mo-Al-Si組成物の時間-温度-変態曲線を示し、二次相の形成を制限/回避するために温度プロフィルをどのように制御できるかを示している。
【0174】
この組成物ではMo含有量が多いため、M6C相の炭化物形成が特に速く、炭化物析出物全体の体積分率を制限するためには、900K(約625℃)までの急速な焼入れが重要であり、焼入れ後に室温までより緩やかに冷却する。Mo含有量が多いことの利点は、塩化物腐食攻撃に対する耐性が優れていることである。
【0175】
実施例7.
バランスのとれた多酸化物組成物;Fe-18Cr-3Mo-4Al-2Si
この実施例では、材料のコストを低減し、二次相、特に炭化物析出物およびラーベス相析出物を形成する可能性を低減するために、Mo濃度を低減した組成物を示す。この組成物は、全体的には依然として優れた耐食性を有するが、塩化物攻撃に対する耐性は実施例1と比べて低い。しかしながら、Mo含有量の低減によりコストが削減され、熱処理要件もいくらか緩和される。
【0176】
図23は、Fe-18Cr-3Mo-4Al-2Siの相組成物マップを示し、低温での有害な二次相、特にCrSiの存在を示しており、これらの相は、熱プロセス制御によって最終的な微細構造が制限される。
【0177】
図24は、Fe-18Cr-3Mo-4Al-2Siの時間-温度-変態図を示し、この実施例における二次相形成の速度論を示している。
【0178】
図7で示した速度論的情報を考慮すると、炭化物析出物の形成を最小限に抑えるために、材料の焼入れを急速に行って1200Kから900Kまでできるだけ急速に温度を下げることが望ましい。焼入れ後、900Kから700Kまで徐々に冷却し、700Kから常温まで空冷する。
【0179】
実施例8.
二重酸化物-クロムおよびアルミニウム;Fe-18Cr-8Mo-5Al
この実施例は、ケイ素を使用せずにクロミア層とアルミナ層とで保護された組成物を示す。モリブデンは、ハロゲン化物/孔食防止のために含まれている。
【0180】
実施例8は、Crを含めることで耐食性を達成し、さらにMo含有量が多いため、耐ハロゲン化物腐食性が大幅に向上している。Alの存在は、この組成物の耐食性をさらに高める二次的な保護アルミナ不動態層の形成を可能にする。この組成物からSiを除くと、この組成物の耐酸化性は他の例示的な組成物と比較して、いくらか低下すると予想されるが、CrSiの形成ももはや熱力学的に有利ではなく、これは材料の微細構造にとって有益である。
【0181】
図25は、例示的なFe-Cr-Mo-Al組成物の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を示している。
【0182】
図26は、Fe-18Cr-8Mo-5Alの時間-温度-変態図であり、この実施例における二次相の形成の速度論を示している。
【0183】
実施例8では、懸念される主な有害相はラーベス相であり、これは1000K未満で熱力学的に有利になり始め、900K付近で速度論的に有利になる(著しく核生成と成長が始まる)。この材料の合成中、材料を脆化させる傾向のあるラーベス相析出物の形成を制限するために、焼入れを急速に行って950Kから750Kまで材料を急速に冷却することが望ましい。750Kまで焼入れした後、徐々に常温まで冷却することができる。
【0184】
実施例9.
二重酸化物;Fe-18Cr-8Mo-2Si
実施例9は、Crを含めることにより耐食性を達成し、さらにMo含有量が多いためハロゲン化物耐食性も大幅に向上している。Siの存在は、二次的な保護シリカ(SiO)不動態層の形成を可能にし、この組成物の耐食性をさらに高める。この組成物からAlを除くと、他の例示的な組成物に比べてこの組成物の耐酸化性はいくらか低下するが、窒化物および炭化物の析出の可能性は減少すると予想される。潜在的に形成される可能性のある特に注目すべき相はカイ相およびシグマ相であり、これらの析出物の体積分率が大きくなりすぎると、材料が脆化する可能性がある。これらの相の体積分率を制限するためには、材料を焼入れして1200Kから900Kまで急速に冷却し、その後、徐々に常温まで冷却することが望ましい。
【0185】
図27は、Fe-Cr-Mo-Si合金の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を示している。
【0186】
図28は、Fe-18Cr-8Mo-2Siの時間-温度-変態図を示し、この実施例における二次相の形成の速度論を示す。
【0187】
実施例10.
単一酸化物-Fe-18Cr-4Mo
実施例10は単純な例で、Feへの合金添加はCrおよびMoのみである。高いCr濃度によって全体的に良好な耐食性が得られ、4重量%のMoを添加することで、塩化物腐食攻撃に対する耐食性が大幅に向上する。Cr濃度およびMo濃度は十分に低いため、シグマ相の形成は熱力学的に有利ではないが、材料合成プロセス中にカイ相が形成される可能性があるため、カイ相の形成とその結果として生じる材料の脆化を回避するために特定の処理ステップを実行することが望ましい。
【0188】
図29は、Fe-Cr-Mo合金の平衡相分率プロットを示し、制限されるべき、または完全に回避されるべき二次相を示している。
【0189】
図30は、Fe-18Cr-4Moの時間-温度-変態図を示し、この実施例における二次相形成の速度論を示している。
【0190】
実施例10の合成においてカイ相の形成を最小限に抑えるために、焼入れを行って材料の温度を1100Kから850Kまで急速に下げ、その後、材料を800Kで10分間保持し、固化プロセス中に形成された可能性のある任意の欠陥およびカイ相を短時間でアニールして除去する必要がある。この短時間のアニーリングステップの後、材料を800Kから常温まで空冷することができる。
【0191】
実施例11.
様々な量の合金元素を有する組成物の更なる例
実施形態には、様々な量の合金元素を有する組成物が含まれ、ここに列挙されていない他の元素を有する組成物も含まれる。本発明の範囲内の組成物の更なる例には、以下が含まれる:
【化1】
【0192】
上述した本発明の実施形態は、単なる例示を意図したものであり、多数の変形および修正が当業者には明らかであろう。そのような変形および修正は、添付の特許請求の範囲のいずれかによって定義される本発明の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【国際調査報告】