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特表2024-530059個別化されたがん免疫療法を創出するためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-14
(54)【発明の名称】個別化されたがん免疫療法を創出するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240806BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240806BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240806BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240806BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20240806BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240806BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K35/17
A61K35/15
A61P35/00
C12N5/078
C07K16/30
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532370
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022039694
(87)【国際公開番号】W WO2023015027
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,161
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524048933
【氏名又は名称】アンヤディ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ギリッグ マーク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】オーリ ラチット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AC20
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA25
4C085BB01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA04
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
本開示の発明には、腫瘍関連ネオエピトープを標的とする個別化されたがん免疫療法を創出するために有用な方法および組成物が含まれる。また、その必要がある対象におけるがんの治療方法も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 1つまたは複数の腫瘍特異的エピトープに特異的に結合する、2つ以上の抗体またはその抗原結合断片;および
b. 有効量の2つ以上の細胞傷害性免疫エフェクター細胞
を含む、がんを治療するための組成物。
【請求項2】
a. 前記抗体またはその抗原結合断片の少なくとも1つが、エフェクター細胞上のFcγ受容体と係合することができ;かつ
b. 前記抗体またはその抗原結合断片の少なくとも1つが、二重特異性であり、かつ免疫細胞エピトープに結合する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a. Fcγ受容体発現エフェクター細胞が、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、γδT細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;かつ
b. 前記免疫細胞エピトープが、T細胞、B細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される免疫細胞によって発現される、
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記腫瘍特異的エピトープがネオエピトープである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
個別化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片がヒト化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合断片が完全ヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片が脱フコシル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記腫瘍特異的エピトープがネオエピトープ/HLA複合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
a. 前記細胞傷害性免疫エフェクター細胞の少なくとも1つが、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、γδT細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるFcγ受容体発現エフェクター細胞であり;かつ
b. 前記細胞傷害性免疫エフェクター細胞の少なくとも1つが、T細胞、B細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、
請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記免疫エフェクター細胞が放射線照射される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
a. 1つまたは複数の腫瘍特異的エピトープに特異的に結合する、有効量の1つまたは複数の抗体もしくはその抗原結合断片;および
b. 有効量の1つまたは複数の細胞傷害性免疫エフェクター細胞
を含む、がんを治療するための組成物。
【請求項13】
前記腫瘍特異的エピトープがネオエピトープである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
個別化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合断片がヒト化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合断片が完全ヒトである、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合断片が脱フコシル化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗体またはその抗原結合断片が二重特異性である、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記腫瘍特異的エピトープがネオエピトープ/HLA複合体である、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
前記細胞傷害性免疫エフェクター細胞が、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、γδT細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるFcγ受容体発現エフェクター細胞である、請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
前記細胞傷害性免疫エフェクター細胞が放射線照射される、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月6日に出願された米国仮特許出願第63/230,161号に対する35 U.S.C. §119(e)に基づく優先権を有し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には、患者ごとにカスタマイズすることができる個別化されたがん免疫療法を創出するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、病変細胞の表面上のネオエピトープをターゲティングする抗体に関し、抗体は免疫細胞と協調して機能するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
がん免疫療法は、がんを治療するために免疫細胞、免疫系関連分子、または免疫化法を使用するものである。免疫療法アプローチの例には、チェックポイント阻害、モノクローナル抗体による標的化された(targeted)療法、養子免疫細胞療法、およびがん抗原による治療的免疫化が含まれる。チェックポイント阻害抗体(例えば、イピリムマブ、ペムブロリズマブ)は、天然の抗がん免疫応答を増強または回復させることを目的としており、一方、標的化された抗体療法は、細胞傷害応答を、特定の表面分子を過剰発現しているがん細胞に向けることを目的としている(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的なセツキシマブ)。細胞療法には、自家免疫細胞または同種異系免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)をエクスビボで拡大培養して投与すること、ならびにCD19などの細胞表面分子に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように細胞を遺伝子操作することが含まれる。治療的免疫化の関連分野では、突然変異から生じる「ネオ抗原」に基づいた戦略を開発する研究が進められており、このネオ抗原は、多くの場合、HLA分子によって(「ネオエピトープ」ペプチドとして)がん細胞の表面に提示される。
【0004】
理想的ながん治療は、正常細胞には影響を与えずに、がん性細胞だけを特異的に破壊すべきであり、結果として、高い有効性と低毒性または無毒性をもたらすものである。残念ながら、この構想はまだ実現されていない。チェックポイント阻害は、免疫細胞の非特異的活性化が原因で、しばしば有害事象を引き起こす。ほとんどのCAR-T細胞療法は、最もよく選ばれる標的抗原に基づいて、がん性細胞と正常細胞の両方を標的とするため、真のがん特異性を欠いている。ネオエピトープ免疫化の理論上の利点はその真のがん特異性であるが、このアプローチでは顕著な臨床的成果がまだ達成されていない。大まかに言えば、これまでの免疫療法のアプローチは、特異性の欠如、高い毒性、有効性の欠如、作製における課題、または上記の組み合わせのいずれかを抱えている。
【0005】
したがって、当技術分野では、正常細胞に影響を与えず、かつ有害事象があるとしても最小限に抑えられる、有効ながん特異的療法が必要とされている。本発明は、このニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
以下は、本発明の基本的な理解を与えるために、本発明の局面の簡略化した概要を提示するものである。この概要は、本発明の広範囲に及ぶ全体像ではない。これは、本発明の重要/決定的な要素を特定すること、または本発明の範囲を明確に定めることを意図したものではない。その唯一の目的は、以後に提示されるより詳細な説明の前段階として、本発明のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0007】
本発明の特定の態様では、がんを治療するための組成物が提供され、組成物は、腫瘍特異的エピトープ-HLA複合体に特異的に結合する1つまたは複数の抗体(もしくはその抗原結合断片)と、有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞とを含み、ここで、組成物は、[a]腫瘍特異的エピトープが、HLA(ヒト白血球抗原)系上に表示された患者特異的ネオエピトープであり、かつ[b]細胞傷害性免疫エフェクター細胞が、細胞表面上のFc-ガンマ(Fcγ)受容体を介して抗体(または複数の抗体、もしくは抗体断片)と係合し、続いてADCC(Antibody Dependent Cell-mediated Cytotoxicity(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用))またはADCP(Antibody Dependent Cell-mediated Phagocytosis(抗体依存性細胞媒介性貪食作用))を誘導することができ、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種であることを考慮して、個別化されている。
【0008】
特定の態様では、以下のステップを含む、がんを治療するための組成物の生産方法が提供される:対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的遺伝子変異を配列決定により特定するステップ;特定された腫瘍特異的遺伝子変異に基づいてHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト動物を免疫化するステップ;免疫化した非ヒト動物から、ネオエピトープ特異的抗体またはその抗原結合断片を産生するB細胞を単離するステップ;ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;有効量のネオエピトープ特異的抗体または抗体断片を生産するステップ;および[a]腫瘍特異的エピトープ-HLA複合体に特異的に結合する、有効量の抗体(または複数の抗体、もしくは抗体断片)を、[b]細胞表面上のFc-ガンマ(Fcγ)受容体を介して抗体(または複数の抗体、もしくは抗体断片)と係合し、続いてADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用)またはADCP(抗体依存性細胞媒介性貪食作用)を誘導することができ、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞と組み合わせるステップ。
【0009】
一局面において、本発明は、
a. 1つまたは複数の腫瘍特異的エピトープに特異的に結合する、1つまたは複数の抗体もしくはその抗原結合断片;および
b. 有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞
を含む、がんを治療するための組成物を含む。
【0010】
特定の態様では、組成物は、個別化されている。
【0011】
特定の態様では、腫瘍特異的エピトープは、ネオエピトープである。
【0012】
特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化されている。
【0013】
特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、完全ヒトである。
【0014】
特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、脱フコシル化されている。
【0015】
特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、二重特異性である。
【0016】
特定の態様では、腫瘍特異的エピトープは、ネオエピトープ/HLA複合体である。
【0017】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である。
【0018】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、放射線照射される。
【0019】
別の局面において、本発明は、
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的遺伝子変異を配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的遺伝子変異に基づいてHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体を産生するかまたはその抗原結合断片の生成を促進するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体を生産するステップ;および
g. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体を、有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞と組み合わせるステップ
を含む、がんを治療するための組成物の生産方法を含む。
【0020】
特定の態様では、配列決定は、次世代シーケンシングである。
【0021】
特定の態様では、非ヒト動物は、ヒト化されている。
【0022】
特定の態様では、非ヒト動物は、完全ヒト抗体を産生する。
【0023】
特定の態様では、ヒト化された非ヒト動物は、ラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される。
【0024】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ特異的抗体は、非動物的方法を用いて作製される。
【0025】
特定の態様では、非動物的方法は、ファージディスプレイである。
【0026】
特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、脱フコシル化されている。
【0027】
特定の態様では、抗体のアイソタイプは、ADCCまたはADCPを支持する。
【0028】
特定の態様では、抗体のアイソタイプは、ADCCまたはADCPを支持しないアイソタイプから、ADCCまたはADCPを支持するアイソタイプにさらに改変される。
【0029】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ複合体は、単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0030】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である。
【0031】
別の局面において、本発明は、
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的遺伝子変異を配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的遺伝子変異に基づいてHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体を産生するかまたはその抗原結合断片の生成を促進するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. HLA/ネオエピトープ特異的抗体からの抗原結合ドメインを含む1つまたは複数のキメラ抗原受容体(CAR)を作製するステップ;および
g. 細胞傷害性免疫エフェクター細胞においてCARを発現させるステップ
を含む、がんを治療するための組成物の生産方法を含む。
【0032】
特定の態様では、配列決定は、次世代シーケンシングである。
【0033】
特定の態様では、非ヒト動物は、ヒト化されている。
【0034】
特定の態様では、非ヒト動物は、完全ヒト抗体を産生する。
【0035】
特定の態様では、ヒト化された非ヒト動物は、ラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される。
【0036】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ特異的抗体は、非動物的方法を用いて作製される。
【0037】
特定の態様では、非動物的方法は、ファージディスプレイである。
【0038】
特定の態様では、CARを作製するステップは、抗体の抗原結合ドメインに基づいてscFvを作製するステップをさらに含む。
【0039】
特定の態様では、CARは、膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン、および共刺激ドメインをさらに含む。
【0040】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ複合体は、単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0041】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞、T細胞、NK T細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である。
【0042】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞である。
【0043】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、CD8+ T細胞である。
【0044】
別の局面において、本発明はその必要がある対象におけるがんの治療方法を含み、方法は以下のステップを含む:
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的ネオエピトープを配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的ネオエピトープからHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト哺乳動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト哺乳動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体またはその抗原結合断片を産生するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体を生産するステップ;および
g. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体と有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞を対象に投与し、それによってがんを治療するステップ。
【0045】
特定の態様では、配列決定は、次世代シーケンシングである。
【0046】
特定の態様では、非ヒト動物は、ヒト化されている。
【0047】
特定の態様では、非ヒト動物は、完全ヒト抗体を産生する。
【0048】
特定の態様では、ヒト化された非ヒト動物は、ラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される。
【0049】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ特異的抗体は、非動物的方法を用いて作製される。
【0050】
特定の態様では、非動物的方法は、ファージディスプレイである。
【0051】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ特異的抗体は、脱フコシル化されている。
【0052】
特定の態様では、抗体のアイソタイプは、ADCCまたはADCPを支持する。
【0053】
特定の態様では、抗体のアイソタイプは、ADCCまたはADCPを支持しないアイソタイプから、ADCCまたはADCPを支持するアイソタイプにさらに改変される。
【0054】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ複合体は、単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0055】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である。
【0056】
別の局面において、本発明はその必要がある対象におけるがんの治療方法を含み、方法は以下のステップを含む:
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的ネオエピトープを配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的ネオエピトープからHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト哺乳動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト哺乳動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体またはその抗原結合断片を産生するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. HLA/ネオエピトープ特異的抗体からの抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を作製するステップ;
g. 細胞傷害性免疫エフェクター細胞においてCARを発現させるステップ;および
h. 有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞を対象に投与し、それによってがんを治療するステップ。
【0057】
特定の態様では、配列決定は、次世代シーケンシングである。
【0058】
特定の態様では、非ヒト動物は、ヒト化されている。
【0059】
特定の態様では、ヒト化された非ヒト動物は、ラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される。
【0060】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ特異的抗体は、非動物的方法を用いて作製される。
【0061】
特定の態様では、非動物的方法は、ファージディスプレイである。
【0062】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ複合体は、単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0063】
特定の態様では、CARを作製するステップは、抗体の抗原結合ドメインに基づいてscFvを作製するステップをさらに含む。
【0064】
特定の態様では、CARは、膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン、および共刺激ドメインをさらに含む。
【0065】
特定の態様では、HLA/ネオエピトープ複合体は、単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0066】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞、T細胞、NK T細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である。
【0067】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、NK細胞である。
【0068】
特定の態様では、細胞傷害性免疫エフェクター細胞は、CD8+ T細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明の具体的な態様に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとき、より良く理解されるであろう。本発明を説明する目的で、例示的な態様が図面に示されている。しかしながら、本発明は、図面に示された態様の正確な配置および手段に限定されるものではないことを理解されたい。
【0070】
図1図1は、提案された個別化されたがん免疫療法を創出するプロセスの簡略化したフローチャートである。
図2図2は、本発明の作用メカニズムである。図2には、エフェクター免疫細胞の表面上のCD16が、その代わりに、CD16、CD32、またはCD64を含むがこれらに限定されない任意のFcγ受容体であるシナリオが暗示されている。図2の凡例は以下のように対応する:201 変異が非自己アミノ酸配列の翻訳をもたらす;202 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;203 ネオエピトープ-HLA複合体に対する個別化されたTCR様抗体が、高い特異性でがん細胞に結合する;204 エフェクター細胞上のCD16(FcγRIII)が高い親和性でFc領域に結合し、細胞傷害性エフェクター機能を活性化する;205 細胞傷害活性が、がん細胞を特異的に死滅させる。
図3図3は、好ましい態様での、提案された個別化されたがん免疫療法を創出するプロセスの簡略化したフローチャートである。
図4図4は、好ましい態様での、提案された免疫療法の作用メカニズムである。図4の凡例は以下のように対応する:401 フレームシフト変異が非自己アミノ酸配列の翻訳をもたらす;402 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;403 ネオエピトープ-HLA複合体に対する個別化されたTCR様抗体が、高い特異性でがん細胞に結合する;404 NK細胞上のCD16(FcγRIII)が高い親和性で脱フコシル化Fc領域に結合し、細胞傷害性エフェクター機能を活性化する;405 細胞傷害性顆粒の脱顆粒および/またはサイトカインの分泌が、がん細胞を特異的に死滅させる。
図5図5は、好ましい態様での、提案された個別化されたがん免疫療法を創出して投与するプロセスの詳細なフローチャートである。図5の凡例は以下のように対応する:502 血液試料;504 腫瘍試料;506 次世代DNAシーケンシング;508 RNAシーケンシング;510 腫瘍において発現されたフレームシフト変異を特定する;512 HLAハプロタイプに基づいてフレームシフト由来の高親和性ネオエピトープを予測する;514 HLAネオエピトープ4量体を作製する;516 HLA-ネオエピトープ4量体でOmniRatを免疫化する;518 HLA-ネオエピトープ4量体でOmniRatに2回目の免疫化を行う;520 脾臓およびリンパ節からB細胞を濃縮する;522 HLA-ネオエピトープ4量体でB細胞を染色する;524 ネオエピトープ特異的B細胞の単一細胞ソーティング;526 ELISA524でAb:Agを試験する;528 陽性抗体のRT-PCRおよび配列決定;530 (ヒト)可変領域配列をヒト抗体ベクターにクローン化する;532 プロデューサー細胞株を用いて候補抗ネオエピトープ抗体の少量の試験バッチを作製する;534 患者の腫瘍細胞の単一細胞懸濁液を作る;536 凍結保存;538 患者の腫瘍細胞を融解する;540 ELISAで候補抗ネオエピトープ抗体により腫瘍細胞を染色する;542 細胞傷害性増強培地で(CD16を発現する)NK細胞株を培養する;544 脱フコシル化抗体を産生するように操作されたプロデューサー細胞を用いて、成功した抗体をより大規模にGMP生産する;546 成功した腫瘍結合性のHLA-ネオエピトープ特異的抗体を選択する;548 NK細胞に放射線照射する;550 NK細胞注入;および552 抗体注入。
図6図6は、SNV由来のネオエピトープがターゲティングされる態様の詳細なフローチャートである。図6の凡例は以下のように対応する:601 腫瘍において発現されたフレームシフト変異を特定する;602 HLAハプロタイプに基づいてフレームシフト由来の高親和性ネオエピトープを予測する;603 ELISAでAb:Ag結合を試験する;604 候補抗ネオエピトープ抗体で腫瘍細胞を染色する;605 成功した腫瘍結合性のHLA-ネオエピトープ特異的抗体を選択する。
図7図7は、SNV由来のネオエピトープがターゲティングされる態様の作用メカニズムである。図7の凡例は以下のように対応する:701 SNV変異が単一アミノ酸変化を含むアミノ酸配列の翻訳をもたらす;702 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;703 ネオエピトープ-HLA複合体に対する個別化されたTCR様抗体が、高い特異性でがん細胞に結合する;704 NK細胞上のCD16(FcγRIII)が高い親和性で脱フコシル化Fc領域に結合し、細胞傷害性エフェクター機能を活性化する;705 細胞傷害性顆粒の脱顆粒および/またはサイトカインの分泌が、がん細胞を特異的に死滅させる。
図8図8は、HLA-ネオエピトープ複合体の単量体、または4量体以外の他の多量体を免疫化および/または試験に使用する態様の詳細なフローチャートである。図8の凡例は以下のように対応する:801 HLA-ネオエピトープの単量体または多量体を作製する;802 HLA-ネオエピトープ単量体または多量体でOmniRatを免疫化する;803 HLA-ネオエピトープ単量体または多量体でOmniRatに2回目の免疫化を行う;804 HLA-ネオエピトープ単量体または多量体でB細胞を染色する。
図9図9は、エフェクター機能を最適化するために、TCR様抗体を何らかの方法、例えば二重特異性または改変されたFc領域で操作する態様の詳細なフローチャートである。図9の凡例は以下のように対応する:901 抗体を二重特異性になるように、かつ/または改変されたFc領域を有するように操作する。
図10図10は、エフェクター機能を最適化するために、TCR様抗体を何らかの方法、例えば二重特異性または改変されたFc領域で操作する態様の作用メカニズムである。図9の凡例は以下のように対応する:1001 フレームシフト変異が非自己アミノ酸配列の翻訳をもたらす;1002 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;1003 ネオエピトープ-HLA複合体に対する個別化されたTCR様抗体および/または二重特異性抗体が、高い特異性でがん細胞に結合する;1004 NK細胞上のCD16(FcγRIII)が操作されたFc領域に高い親和性で結合し、細胞傷害性エフェクター機能を活性化する;1005 細胞傷害性顆粒の脱顆粒および/またはサイトカインの分泌が、がん細胞を特異的に死滅させる。
図11図11は、マクロファージ、好中球、単球、または樹状細胞など、異なる細胞種を患者に投与する態様の詳細なフローチャートである。図11の凡例は以下のように対応する:1101 マクロファージ、好中球、単球、または樹状細胞を細胞傷害性増強培地で培養する;1102 細胞に放射線照射する(不死化細胞株の場合のみ必要)。
図12図12は、マクロファージ、好中球、単球、または樹状細胞など、異なる細胞種を患者に投与する態様の作用メカニズムである。図12の凡例は以下のように対応する:1201 フレームシフト変異が非自己アミノ酸配列の翻訳をもたらす;1202 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;1203 ネオエピトープ-HLA複合体に対する個別化されたTCR様抗体が、高い特異性でがん細胞に結合する;1204 エフェクター細胞上のCD16(FcγRIII)またはCD32(FcγRII)が高い親和性で脱フコシル化Fc領域に結合し、細胞傷害性エフェクター機能(ADCCまたはADCP)を活性化する;1205 抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)または他の細胞傷害メカニズム。
図13図13は、患者に投与される細胞が遺伝子操作される態様の詳細なフローチャートである。図13の凡例は以下のように対応する:1301 細胞傷害性エフェクター細胞を遺伝子操作する(例えば、特定の遺伝子をノックアウトする);1302 操作された細胞に放射線照射する。
図14図14は、患者に投与される細胞が遺伝子操作される態様の作用メカニズムである。図14の凡例は以下のように対応する:1401 フレームシフト変異が非自己アミノ酸配列の翻訳をもたらす;1402 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;1403 ネオエピトープ-HLA複合体に対する個別化されたTCR様抗体が、高い特異性でがん細胞に結合する;1404 操作されたエフェクター細胞上のFcγ受容体が高い親和性で脱フコシル化Fc領域に結合し、細胞傷害性エフェクター機能を活性化する;1405 細胞傷害性顆粒の脱顆粒および/またはサイトカインの分泌が、がん細胞を特異的に死滅させる。
図15図15は、患者に投与されるNK細胞が自家細胞、あるいは、血液ドナーまたは臍帯血からの同種異系細胞である態様の詳細なフローチャートである。図15の凡例は以下のように対応する:1501 自家NK細胞、または臍帯血もしくはドナー血液から供給される同種異系NK細胞を、細胞傷害性増強培地で培養する。
図16図16は、投与された細胞傷害性エフェクター細胞がCAR構築物を発現し、ネオエピトープ特異性が抗体ではなくCARのscFv部分によって付与される態様の詳細なフローチャートである。図16には、ネオエピトープ-HLA複合体に対して作製されたTCR様抗体の投与を含める選択肢が暗示されている。図16の凡例は以下のように対応する:1601 成功した腫瘍結合性のHLA-ネオエピトープ特異的抗体をscFv配列に変換して、CAR構築物にクローン化する;1602 細胞傷害性エフェクター細胞にCAR構築物を形質導入する;1603 CAR発現エフェクター細胞の注入。
図17図17は、投与された細胞傷害性エフェクター細胞がCAR構築物を発現し、ネオエピトープ特異性が抗体ではなくCARのscFv部分によって付与される態様の作用メカニズムである。図17には、ネオエピトープ-HLA複合体に対して作製されたTCR様抗体の投与を含める選択肢が暗示されている。図17の凡例は以下のように対応する:1701 フレームシフト変異が非自己アミノ酸配列の翻訳をもたらす;1702 抗原プロセシング経路により、ネオエピトープがHLA分子上に提示される;1703 ネオエピトープ-HLA複合体に対するキメラ抗原受容体(CAR)に組み込まれた個別化されたTCR様単鎖可変断片(scFv)が、高い特異性でがん細胞に結合する;1704 細胞傷害性エフェクター細胞がネオエピトープ特異的CARを発現するように操作され、細胞傷害性顆粒の脱顆粒および/またはサイトカインの分泌が、がん細胞を特異的に死滅させる。
図18図18は、フローサイトメトリー解析のゲーティング戦略を示す。フローサイトメトリーを用いて標的細胞に対するNK細胞の細胞傷害活性を評価するために、以下のゲーティング戦略を採用した:エフェクター細胞と標的細胞の両方を捕捉する大きな前方散乱/側方散乱ゲートを使用して、細片を除外した。CFSE染色に基づいて、標的(EL4)細胞をエフェクター(NK)細胞から区別した。アポトーシスおよび標的細胞の死は、それぞれ、ホスファチジルセリンのアネキシンV染色およびDNAのSYTOXブルー染色を用いて定量化した。NK細胞の脱顆粒、すなわち細胞傷害活性は、CD107aに対する抗体を用いて定量化した。実証のために、いくつかの異なる共培養物からの代表的なドットプロットが示される。
図19図19A~19Bは、標的細胞により表示されたネオエピトープに対するTCR様抗体を介した、NK細胞による標的細胞死滅のADCC媒介のブーストを示す。EL4細胞をSIINFEKLペプチドとインキュベートして、細胞表面MHC分子(H2Kb)にこの特定のペプチドをロードした。図19A:抗SIINFEKL-H2Kb IgG2a抗体の存在下または非存在下で4時間単独培養した後、EL4細胞をSYTOXブルーで染色して、死細胞を定量化した。図19B:Aと同じ実験エンドポイントを表しているが、共培養実験グループに関するものである。新鮮単離した初代マウスNK細胞を3つの異なるエフェクター:標的比で添加し、抗体の存在下または非存在下に4時間共培養した。EL4単独培養物は、(NK細胞なしで)統計学的に有意な、抗体の直接的細胞傷害効果を実証したため、この細胞傷害効果の寄与分(抗体単独による)を、抗体を添加した共培養実験グループの結果から差し引いた;それは、NK細胞の[図19A]天然の細胞傷害作用と[図19B]ADCC細胞傷害作用の合計を、抗体の存在下または非存在下で、正確に定量化して、比較するためであった。抗体の存在下で定量化された(y軸に沿った)測定細胞傷害性と、抗体の非存在下で定量化された測定細胞傷害性の差は、所定のE:T比におけるADCCメカニズム自体の定量化を表している。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。統計は、対応のないt検定から得られるp値を示す。* p<0.05;** p<0.01
図20図20は、乳酸脱水素酵素(LDH)の放出が、フローサイトメトリーによって定量化された死細胞の染色を裏付けることを示す。4時間のインキュベーション後、図19に記載した抗体の存在下または非存在下での共培養物(および単独培養物)からの上清を、LDHの存在について、LDH酵素活性の比色アッセイを用いて定量化した。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。統計は、対応のないt検定から得られるp値を示す。* p<0.05;** p<0.01
図21図21A~21Bは、TCR様抗体を介したADCCが、ネクローシスによって起こるよりも多くアポトーシスによって起こり、ADCC-アポトーシスとADCC-ネクローシスがいずれも、E:T比の増加によって促進されることを示す。図19に示したデータをアネキシンV染色に基づいてさらに分析し、以下を定量化した:[図21A]アポトーシスによる標的細胞死(アネキシンV陽性染色)、および[図21B]非アポトーシス性ネクローシスによる標的細胞死(アネキシンV陰性染色)。SIINFEKLペプチドをロードしたEL4細胞を、先の図と同様に、抗SIINFEKL-H2Kb IgG2a抗体の存在下または非存在下で培養した。同じ実験で、細胞をアネキシンVでも染色し、アポトーシスを起こしている細胞を定量化した。死細胞のSYTOX染色とアポトーシス性細胞のアネキシンV染色とを組み合わせることで、ADCCにより媒介される標的細胞死の増加に関して、(図21A)後期アポトーシスと(図21B)ネクローシスを区別することが可能であった。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。統計は、対応のないt検定から得られるp値を示す。* p<0.05;** p<0.01
図22図22は、NK細胞の脱顆粒が、CD107a染色により測定されるように、抗体の存在下で増加することを示す。SIINFEKLペプチドをロードしたEL4細胞を、先の図と同様に、抗SIINFEKL-H2Kb IgG2a抗体の存在下または非存在下で培養した。同じ実験で、4時間のインキュベーションを通して、細胞をCD107aに対する抗体でも染色した。CD107aはNK細胞による脱顆粒のマーカーであり、脱顆粒は、NK細胞が標的細胞の死滅を誘導するために用いるメカニズムである。標的細胞の非存在下でのCD107a染色のベースラインレベルを確立するために、NK細胞を単独でも培養した(NK単独培養)。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。統計は、対応のないt検定から得られるp値を示す。*** p<0.001;**** p<0.0001
図23A図23A~23Bは、抗SIINFEKL-H2Kb抗体がSIINFEKLでパルスしたEL4細胞に特異的に結合することを示す。図18~22に対応する実験とは別の実験で、EL4細胞を、細胞表面MHC分子にロードさせるためにSIINFEKLペプチドとインキュベートするか、またはペプチドを含まない同様の条件下でインキュベートした。次に、ペプチドでパルスした細胞とパルスしていない細胞の両方を、抗SIINFEKL-H2Kb抗体の存在下または非存在下でインキュベートした。続いて、これら4つ全ての実験グループを、フローサイトメトリーによる解析のために、マウスIgGに特異的なPE結合二次抗体で染色した。4つの条件のそれぞれについて、4つの複製物を使用した。
図23B図23Aの説明を参照のこと。
図24図24は、AMLによく見られる「パブリック」フレームシフト由来ネオ抗原に対するいくつかの新規TCR様抗体を作製するためのワークフローを示すダイヤグラムである。凡例は以下のように対応する:2401 HLA-ネオエピトープ複合体を作製する;2402 HLA-ネオエピトープ複合体でOmniRatを免疫化する;2403 HLA-ネオエピトープ複合体でOmniRatに2回目の免疫化を行う;2404 脾臓およびリンパ節からB細胞を濃縮する;2405 HLA-ネオエピトープ複合体でB細胞を染色する;2406 ネオエピトープ特異的B細胞の単一細胞ソーティング;2407 RT-PCRおよび配列決定;2408 (ヒト)可変領域配列をヒト抗体ベクターにクローン化する;2409 CHO細胞にトランスフェクトし、候補抗体の試験バッチを作製する;2410 ELISAでAb:Agを試験する;2411 自家NK細胞;2412 同種異系NK細胞(例えば、ドナーからの臍帯血由来、iPSC由来);2413 放射線照射されたNK細胞株。
【発明を実施するための形態】
【0071】
詳細な説明
定義
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料はどれも、本発明の試験の実施に際して使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書に記載される。本発明の説明および特許請求の範囲では、以下の用語が使用される。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0072】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、その冠詞の文法的対象物の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例を挙げると、「要素」(an element)は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0073】
本明細書で使用される「約」は、量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合、規定値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する;したがって、このような変動は、開示された方法を実施するために適切である。
【0074】
本明細書で使用される抗原結合断片は、同種抗原への結合を促進する抗体の部分を意味し、F(ab')2断片、Fab断片、単鎖可変領域断片(scFv)、および単一ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用される免疫グロブリンヒト化(immunoglobulin-humanized)とは、その内因性免疫グロブリン遺伝子がもはや発現されず、代わりにヒト免疫グロブリン遺伝子が発現されるように、遺伝子改変を受けている動物を意味するものとする。これらの動物は、「ヒト化」抗体ではなく、「完全ヒト」抗体を産生する。
【0076】
本明細書で使用されるネオ抗原とは、体細胞変異の結果として、その変異を欠く細胞により産生される正常なタンパク質と比較して、そのアミノ酸配列に1つまたは複数の変化を含むタンパク質を意味するものとする。
【0077】
本明細書で使用されるネオエピトープとは、ネオ抗原に由来し、かつその変化したアミノ酸残基を1個以上含む、細胞表面MHC分子上に提示されるペプチドを意味するものとする。
【0078】
本明細書で使用される個別化されたとは、患者ごとに個別に開発されたことを意味する。
【0079】
ネオ抗原-HLA(ヒト白血球抗原)複合体は、本発明ではヒト患者を治療するために言及されているが、ネオ抗原-MHC(主要組織適合性複合体)の関連性も暗示されている(例えば、非ヒト対象を治療するため)。
【0080】
範囲:本開示を通じて、本発明の様々な局面は、範囲形式で提示され得る。範囲形式による記述は、単に便宜上のもので、簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する変更できない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能性のある全ての部分範囲を具体的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、その範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6だけでなく、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲を具体的に開示していると考えるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0081】
説明
本明細書に記載される発明は、腫瘍特異的なネオエピトープ-HLA複合体(各患者のがんに特異的)に対するモノクローナル抗体を使用して、Fcガンマ(Fcγ)受容体発現細胞傷害性エフェクター細胞(内因性および/または細胞注入により外因的に導入)を誘導し、がん性細胞を高度に特異的な方法で死滅させる、個別化されたがん免疫療法への新規アプローチである。本発明は、患者自身の免疫系からの天然の抗ネオ抗原T細胞応答に従来通りに依存するのではなく、Fcγ受容体発現細胞傷害性エフェクター細胞による抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)または抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)を活用することによって、患者の腫瘍特異的ネオ抗原をターゲティングすることを含む。本発明は、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの異なる概念をユニークに組み合わせて活用することによって、既存の免疫療法アプローチの限界と課題を克服する:(1)ネオエピトープ-HLA複合体のターゲティング;(2)特異的抗原に対するモノクローナル抗体と、細胞傷害性エフェクター免疫細胞との組み合わせ;および(3)内因性免疫細胞または養子免疫細胞療法によってもたらされるADCC(またはADCP、またはADCCとADCPの組み合わせ)の特異的メカニズム。抗体は、がん細胞上のHLA分子によって提示される変異ペプチドに対して、患者ごとに、または患者のグループ間で共有されるネオエピトープに基づいて、開発することが可能である(これらのHLA-ペプチド複合体は通常、T細胞受容体(TCR)によってターゲティングされる;したがって、抗体は「TCR様」である)(Dahan, R. & Reiter, Y. (2012) Expert Rev. Mol. Med. 14, e6)。注入されたFcγ受容体発現細胞傷害性エフェクター細胞(例えば、CD16発現NK細胞、CD32発現マクロファージ)は、これらのTCR様抗体によって、主にADCCまたはADCP(またはADCCとADCPの両方)のメカニズムを活用して、個々の患者のがん細胞を特異的に攻撃するように誘導される。本発明は、以下の実施例において可能な限り詳細に説明されるが、これらの実施例は、本発明の複数の態様を表すことができる。
【0082】
図1は、本発明のある態様の図解表示である。手術または生検後に新鮮単離された腫瘍組織から開始して、腫瘍組織と正常組織(血液)のDNA配列を比較することによって変異を特定し得る。Illuminaおよび/またはIon Torrentなどの次世代シーケンシングプラットフォームを、個別に、または組み合わせて使用することができる;2つの異なるプラットフォームでシーケンシングを行い、両方で検出された変異のみを使用することによって、特定された変異の確実性が高くなる(Sherafat, et al. (2020) BMC Bioinformatics 21: 498)。HLA分子と複合体を形成した変異ペプチドを用いて、ラットを免疫化することができる。ネオエピトープ-HLA複合体に特異的なTCR様抗体を産生するラットB細胞を単離し、抗体を腫瘍細胞への結合について試験し得る(Ouisse, (2017) BMC Biotechnol. 17, 3)。腫瘍特異的結合が陽性であった抗体は、プロデューサー細胞(例えば、CHO、HEK-293)によって大量に生産することが可能である。得られた腫瘍特異的変異をターゲティングするモノクローナル抗体は、単独で、またはFcγ受容体発現細胞傷害性エフェクター細胞の注入と共に、患者に投与され得る。
【0083】
腫瘍特異的ネオエピトープをターゲティングするTCR様抗体は、Fcγ受容体発現細胞傷害性エフェクター細胞と共に投与することができるので、注入された細胞の細胞傷害作用は腫瘍細胞に対して特異的に向けられる。本発明のこの態様のメカニズムは、図2に示されている。
【0084】
好ましい態様である、一態様では、TCR様抗体によりターゲティングされるネオエピトープの特定のカテゴリーは、フレームシフトをもたらす挿入/欠失(InDel)変異に由来するものである。フレームシフト変異から生じるネオエピトープは、完全に外来性である;一塩基バリアント(SNV)変異から生じるネオエピトープとは異なり、関連する「自己」の対応エピトープが存在しない。したがって、フレームシフト由来のネオエピトープをターゲティングすることにより、通常提示される「自己」エピトープと抗体との交差反応性のリスクが回避される。好ましい態様では、免疫グロブリンヒト化ラット(「OmniRat」)が、ネオエピトープ特異的B細胞を作製するための免疫化に使用される。これは「完全ヒト」抗体の生産につながり、患者における有害事象のリスクが最小限に抑えられる。好ましい態様では、患者に送達される最終的な抗体は、脱フコシル化抗体を生成するように遺伝子操作されたプロデューサー細胞によって産生され、これはエフェクター細胞による細胞傷害活性の増強につながる。好ましい態様では、エフェクター細胞はナチュラルキラー(NK)細胞であり、その細胞傷害活性を増強する培地中で培養され、また、患者に投与する前に放射線照射される。図3では、好ましい態様のこれらの局面が、図1に見られるのと同じフローチャートに組み込まれている。
【0085】
本発明のこの好ましい態様は、全く異なる研究手段と治療アプローチの最も有望な側面 -- 変異ペプチドのネオエピトープ、モノクローナル抗体を用いる標的化された療法、および養子NK細胞療法 -- をユニークかつ最適に組み合わせて、細胞療法と協調して作用しかつ全体としてより効果的で毒性が少ない個別化された抗体療法による新規アプローチを開発することを目的としている。
【0086】
図3に示した好ましい態様である、一態様の作用メカニズムは、図4に示されている。ある種のがん(例えば、腎細胞がん)は、平均して、多数のInDel変異を有する傾向がある -- したがって、これらの高InDelがんは、タンパク質をコードする遺伝子にフレームシフトを有する可能性が最も高い(Bailey, et al.(2018) Cell 173: 371-385.e18)(Turajlic, et al. (2017) Lancet Oncol. 18: 1009-1021)。フレームシフトは、多くの場合、完全に新しい、伸長したアミノ酸の配列をもたらす -- つまり、それらは正常なヒト細胞に見られるアミノ酸配列とは異なっている。こうした新しい配列が抗原プロセシング(例えば、プロテアソーム分解)を受け、細胞表面HLA分子上に提示されると、それらは、HLAに提示される「自己」エピトープとは完全に異なる、真にがん特異的なエピトープ(「ネオエピトープ」)を構成し、したがって治療の個別化のためのユニークな標的となる(Linnebacher, et al. (2001) Int. J. Cancer. 93: 6-11)。好ましい態様では、高InDelがんのタイプは免疫療法の主な候補であり、フレームシフト由来のネオエピトープはモノクローナルTCR様抗体の開発のための好ましい標的である。これは、フレームシフト由来のネオエピトープが、SNV由来のネオエピトープとは異なって、正常細胞により提示されることのある類似の「自己」ペプチドの対応配列を欠いている、という事実によるものである;したがって、フレームシフト由来のネオエピトープは、正常細胞には影響を与えずに、がん細胞に対する特異性がより高い治療法の見通しを提供する。抗体の可変領域はネオエピトープ-HLA複合体に結合し、定常領域(すなわちFc領域)はCD16、CD32、またはCD64などのFc受容体による結合に利用可能である。好ましい態様では、Fc領域は脱フコシル化されており、脱フコシル化抗体を生成するように操作されたプロデューサー細胞によって産生される。(この修飾は、エフェクター細胞による細胞傷害活性を大幅に増加させる。)注入されたNK細胞の表面上のCD16分子は、サイトカインの分泌および/または細胞傷害性顆粒の放出からなる細胞傷害活性を誘発し、腫瘍細胞を死滅させる。細胞傷害活性は、好ましい態様では、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)である。
【0087】
個別化された治療プロトコルを創出するプロセスの一連のステップは、以下に概説される。これは、図5に詳細なフローチャートとして示される。図5の凡例は以下のように対応する:502 血液試料;504 腫瘍試料;506 次世代DNAシーケンシング;508 RNAシーケンシング;510 腫瘍に発現されたフレームシフト変異を特定する;512 HLAハプロタイプに基づいてフレームシフト由来の高親和性ネオエピトープを予測する;514 HLA-ネオエピトープ4量体を生産する;516 HLA-ネオエピトープ4量体でOmniRatを免疫化する;518 HLA-ネオエピトープ4量体でOmniRatに2回目の免疫化を行う;520 脾臓およびリンパ節からB細胞を濃縮する;522 HLA-ネオエピトープ4量体でB細胞を染色する;524 ネオエピトープ特異的B細胞の単一細胞ソーティング;526 ELISA524でAb:Agを試験する;528 陽性抗体のRT-PCRおよび配列決定;530 (ヒト)可変領域配列をヒト抗体ベクターにクローン化する;532 プロデューサー細胞株を用いて候補抗ネオエピトープ抗体の少量の試験バッチを作製する;534 患者の腫瘍細胞の単一細胞懸濁液を作る;536 凍結保存;538 患者の腫瘍細胞を融解する;540 ELISAで候補抗ネオエピトープ抗体により腫瘍細胞を染色する;542 細胞傷害性増強培地で(CD16を発現する)NK細胞株を培養する;544 脱フコシル化抗体を産生するように操作されたプロデューサー細胞を用いて、成功した抗体をより大規模にGMP生産する;546 成功した腫瘍結合性のHLA-ネオエピトープ特異的抗体を選択する;548 NK細胞に放射線照射する;550 NK細胞注入;および552 抗体注入。
【0088】
(1)原発腫瘍の外科的切除または生検、単細胞懸濁液への解離、および凍結保存(ステップ8で使用するため)。
(2)フレームシフトを引き起こす発現された腫瘍特異的InDel変異を特定するための、血液および腫瘍組織の配列決定。Illuminaおよび/またはIon Torrentなどの次世代シーケンシングプラットフォームを、個別に、または組み合わせて使用することができる。
(3)患者のHLAクラスI分子に高い親和性を示すネオエピトープのアルゴリズムによる予測。例えば、オープンソースのNetMHC予測アルゴリズムは、人工ニューラルネットワークを用いて、全12種類のHLA-Aおよび-BスーパータイプのHLAクラスIエピトープを正確に予測する。
(4)HLA-ネオエピトープ4量体の生産(ステップ5および6のため)。数社(例えば、GenScript社、JPT社)はカスタムペプチドを合成している。数社(例えば、MBL International社、ProImmune社)はカスタムHLA-ペプチド4量体を生産しており、かつ/またはキットを提供している。
(5)TCR様ネオエピトープ特異性を有するB細胞を作製するための、HLA-ネオエピトープ4量体による免疫グロブリンヒト化ラット(「OmniRat」)の免疫化。完全フロイントアジュバント中の100μgのHLA-ペプチド複合体で免疫化し、その16日後にPBS中の100μgのHLA-ペプチド複合体で免疫化するプロトコルは、2回目の免疫化7の5日後に、ラットにおいて高親和性の抗HLA-ペプチド抗体を生成することが示された。
(6)HLA-ネオエピトープ特異的なラットB細胞の単離(4量体染色とセルソーティングを使用)および抗体遺伝子(重鎖と軽鎖)の配列決定。
(7)ELISAを用いた候補抗体のHLA-ネオエピトープ複合体への結合の初期試験(カスタムELISAのキットが市販されている)。
(8)成功した抗体可変配列のヒト抗体プラスミドバックボーン(InvivoGen社など数社から市販されている)へのクローニング、プロデューサー細胞(例えば、CHO、HEK-293)のトランスフェクション、および試験される数種の候補抗ネオエピトープ抗体の小規模生産。
(9)凍結保存した腫瘍細胞の融解、および腫瘍特異的結合を試験するための候補抗体による染色。
(10)脱フコシル化(ADCC最適化)抗体を産生するように操作されたプロデューサー細胞を用いた、腫瘍細胞結合抗体のより大規模な生産(GMP)。
(11)患者に投与される治療:抗ネオエピトープTCR様抗体の注入と共に、NK細胞(細胞傷害活性を最大にする条件下で増殖させたもの)の注入。
【0089】
この好ましい態様には、いくつかの潜在的な改変が存在しており、これらは本発明の他の態様を構成している。一態様では、腫瘍においてSNV由来のネオエピトープが特定される。これらのネオエピトープは、アミノ酸残基が1個しか違わない「自己」対応エピトープを有するため、正常組織に対するTCR様抗体の交差反応性の可能性が出てくるが、この課題は、このプロセスに特異性試験をさらに追加することによって克服される(図6図7参照)。さらに、他のタイプの突然変異(例えば、転座)から、または機能を果たしていないRNAスプライシングから、または腫瘍特異的である他のメカニズムから生じるネオエピトープも、この治療の候補標的となる。
【0090】
別の態様では、クラスI以外のHLAクラス(例えば、HLAクラスII)により提示されるネオエピトープが治療の標的となる。
【0091】
別の態様では、HLAにより提示されるネオエピトープペプチドの代わりに、治療によりターゲティングされる腫瘍特異的分子は、変異した細胞表面分子(例えば、受容体、接着分子)であり、その変異は、抗体によって未変異の対応分子と区別できる程度に、分子の細胞外部分の構造に実質的な腫瘍特異的変化を引き起こしている。
【0092】
本発明の態様には、あらゆる種類/起源の変異、例えば、体細胞変異、パッセンジャー変異などが含まれる。
【0093】
別の態様では、治療の腫瘍特異的分子標的は、アミノ酸配列自体の変化ではなく、代わりにグリコシル化パターンおよびアセチル化を含むがこれらに限定されない翻訳後修飾の変化である。アミノ酸配列の変化と翻訳後修飾の組み合わせによって生じるネオ抗原も含まれる。
【0094】
別の態様では、ラットの免疫化に使用されるHLA-エピトープ複合体、および/または特異的ラットB細胞の単離に使用されるもの、および/または抗体結合の試験に使用されるものは、4量体型の代わりに、単量体型、5量体型、またはデキストラン結合型のいずれかである(図8参照)。
【0095】
別の態様では、免疫化されるラットは、OmniRat以外の系統のラットである。
【0096】
別の態様では、免疫化される動物は、ラット以外の動物、例えば、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメを含むがこれらに限定されない動物である。
【0097】
別の態様では、腫瘍特異的抗体は、動物を免疫化して、その抗原特異的B細胞を選別する以外の手段、例えば、ファージディスプレイライブラリーの使用、および抗体をコードする核酸(例えばDNA)の患者への注入による抗体遺伝子導入を含むがこれらに限定されない手段によって作製される。
【0098】
別の態様では、TCR様抗体は、好ましい態様とは異なる方法で操作または生産される。ADCC活性を高める手段として単に脱フコシル化を利用するのではなく、抗体のFc領域を他の方法(例えば、抗体構造内のジスルフィド結合の操作;Hagihara, Y. and Saerens, D., (2014). Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Proteins and Proteomics, 1844(11), pp.2016-2023)で改変することが可能である。同時に、可変領域も様々な方法で操作することができ、例えば、抗体は二重特異性であってよく(図9図10参照)、二重特異性抗体は、2つの異なるネオエピトープに対して、またはネオエピトープと通常のエピトープ(すなわち、ネオエピトープではないエピトープ)の組み合わせに対して指向性であり得る。あるいは、またはさらに、抗体は抗がん剤などの薬物にコンジュゲートさせる、すなわち、抗体-薬物コンジュゲートとすることができる。他の態様には、抗体を改変/操作する方法(例えば、分子的方法)が含まれる。
【0099】
別の態様では、治療に使用されるネオエピトープ特異的抗体は、モノクローナルの代わりに、ポリクローナルである。
【0100】
別の態様では、ネオエピトープ特異的抗体は、完全抗体ではなく、代わりにF(ab')2断片、Fab断片、単鎖可変断片(scFv)、および単一ドメイン抗体を含むがこれらに限定されない、抗原結合断片である。
【0101】
本発明の特定の態様では、ネオエピトープをターゲティングする抗体と協調して、NK細胞以外の細胞種を活用(内因性または外因的に投与)することができる。この治療は、TCR様抗体のFc領域と、エフェクター細胞の表面上のFcγ受容体との相互作用に依存している。マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞などの自然免疫系の細胞を含むがこれらに限定されない特定の細胞種は、Fcγ受容体CD16、CD32、およびCD64のうちの1つ、またはその組み合わせを発現する;これらの細胞種は、この治療においてエフェクター細胞として代替的に機能し得る(図11図12参照)。これらの代替態様には、これらの細胞種のサブセットまたはサブ集団、例えばメモリーNK細胞を使用する選択肢が暗示されている。
【0102】
特定の態様では、自然免疫系の細胞以外の細胞種、例えば、やはりFcγ受容体を発現することが知られている以下の細胞種を(ネオエピトープをターゲティングする抗体と協調して)使用することができる:活性化T細胞、内皮細胞、ミクログリア細胞、破骨細胞、およびメサンギウム細胞。
【0103】
本発明の特定の態様では、標的病変細胞は、自己免疫疾患を含むがこれに限定されない、がん以外の疾患の状況下で、ネオエピトープを発現することができる。
【0104】
この詳細な説明には、治療に使用されるネオエピトープ特異的抗体は、アイソタイプIgGであることが暗示されているが、それはFcγ受容体がIgG抗体の定常領域に結合するためである。治療用に選択されるIgGの特定のサブクラス(例えば、IgG1、IgG3など)は、意図される作用メカニズム(例えば、ADCC、ADCP)および治療に利用される細胞種に依存すると考えられる。特定の治療では、いくつかの異なるアイソタイプまたはアイソタイプのサブクラスを個別に、または組み合わせて使用することができる。
【0105】
別の態様では、抗体のアイソタイプ(またはサブクラス)は、不活性のまたは望ましくないアイソタイプ(もしくはサブクラス)から、所望の特性を有するものに切り替えられる。
【0106】
本発明の特定の態様では、以下のシナリオが含まれる:同じ抗体と、さらには同じエフェクター細胞(例えば単球)が、ADCCとADCPの両方を誘導することができる(Strohl, W. and Strohl, L., 2012. 8-Monoclonal antibody targets and mechanisms of action. Thera Antibody Eng, 9, pp.163-196)。また、同じ標的に対する異なる抗体が、ADCCとADCPを含む様々なメカニズムを誘導することができる(Cleary, K.L., Chan, H.C., James, S., Glennie, M.J. and Cragg, M.S., 2017. Antibody distance from the cell membrane regulates antibody effector mechanisms. The Journal of Immunology, 198(10), pp.3999-4011)。さらに、異なる抗体アイソタイプは、ADCCおよびADCPのメカニズムを異なって呼び起こし、引き出すことができる(Tipton, T.R., Roghanian, A., Oldham, R.J., Carter, M.J., Cox, K.L., Mockridge, C.I., French, R.R., Dahal, L.N., Duriez, P.J., Hargreaves, P.G. and Cragg, M.S., 2015. Antigenic modulation limits the effector cell mechanisms employed by type I anti-CD20 monoclonal antibodies. Blood, The Journal of the American Society of Hematology, 125(12), pp.1901-1909)。
【0107】
本発明の特定の態様では、抗体(抗体ライブラリーからであるか否かを問わない)のセットが所定のネオエピトープに対して作製され得る。
【0108】
別の態様では、注入されるエフェクター細胞が遺伝子操作される。これらの操作には、特定の遺伝子のノックアウトもしくはノックダウン、特定の遺伝子の過剰発現、または外因性遺伝子の発現が含まれるが、これらに限定されない(図13図14参照)。
【0109】
別の態様では、注入されるエフェクター細胞が、いくつかの可能性のある供給源の1つから取得される。NK細胞は、同種異系ドナー、臍帯血、または患者自身の血液から入手することができる;あるいは、いくつかのNK細胞株を使用することも可能であるが、ただし、それらがCD16を発現し、かつ患者への投与前に放射線照射されることを条件とする(図15参照)。
【0110】
別の態様では、全抗体の生産が、対応するscFv配列の作製と、それに続くキメラ抗原受容体(CAR)構築物へのクローニングに取って代わられる。その後、エフェクター細胞は、注入前に、CAR構築物を発現するように操作される。この態様では、ネオエピトープに対するTCR様抗体の投与を、CARエフェクター細胞と組み合わせて使用してもよいし、あるいは、TCR様抗体が治療プロトコルの一部ではなく、抗原特異性が膜結合型CARによって提供されてもよい(図16図17参照)。図16図17には、ネオエピトープ-HLA複合体に対して作製されたTCR様抗体の投与を含む選択肢が暗示されている。
【0111】
本発明の特定の態様では、ADCCまたはADCPとは無関係の抗体の治療メカニズム、例えばCDC(補体依存性細胞傷害作用)を活用することができる。
【0112】
本発明の特定の態様には、同じ患者を、患者の体内に経時的に現れるより新しいネオエピトープ、例えばがんの転移過程で異なる腫瘍に現れる異なるネオエピトープに対して作製された複数の抗体で治療することが含まれる。
【0113】
この詳細な説明のセクションに記載される態様のそれぞれは、2人以上の患者間で共有される変異、およびその結果として生じるネオエピトープ(「パブリックネオ抗原」および「パブリックネオエピトープ」とも呼ばれる)にも適用可能である。
【0114】
例示的な使用方法:本発明は、生検または手術試料を得ることができる任意のがんの治療に使用できる可能性がある。最も有望な治療候補は、平均して、多数のInDel変異を含むがんである。InDel変異から生じるフレームシフト由来のネオエピトープは、「自己」エピトープとの交差反応性がない、成功した腫瘍特異的抗体をもたらす可能性が最も高い。それゆえ、一連の態様は、高InDelがんおよびその関連するフレームシフト由来ネオエピトープに焦点を当てている。しかし、特定の態様は、他のタイプの変異、例えば一塩基バリアント(SNV)をも標的とする。
【0115】
一連の態様は、多数のInDelを含む傾向のあるがんに焦点を当てており、こうしたがんには、腎臓癌、メラノーマ、膀胱尿路上皮がん、肺腺がん、子宮がん肉腫、子宮体部子宮内膜がん、乳がん、頭頸部がん、および胃腺がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
SNVを代わりに標的とする態様では、エクソーム内に発現されたSNV変異を有するがんはどれも、この免疫療法の候補となるだろう。これには大半のがんが含まれる。
【0117】
概説:本発明は、従来のように患者自身の免疫系からの天然の抗ネオ抗原T細胞応答に依存するのではなく、Fcγ受容体発現細胞傷害性エフェクター細胞による抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)または抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)を活用することによって、患者の腫瘍特異的ネオ抗原をターゲティングすることを含む。したがって、既存の免疫療法アプローチと比較して、本発明には重要な相違点がある:
・ モノクローナル抗体を用いる他の標的化された療法とは異なり、本発明では、腫瘍細胞にのみ結合する抗体が生産される:既存の標的化されたモノクローナル抗体治療は、細胞表面分子、例えば、CD20(例:リツキシマブ)、EGFR(例:セツキシマブ)、HER2(例:トラスツズマブ)、その他のいくつかの分子を標的としている。多くの場合、ターゲティングされた抗原はがん細胞上に過剰発現しているが、それはがん細胞にだけ発現しているわけではない。がん細胞の変異に由来するネオエピトープはがん細胞上にのみ提示されており、そのネオエピトープに特異的なTCR様抗体はがん細胞にのみ高い親和性で結合するということになる。
・ 他のNK細胞ベース(またはマクロファージベース、または好中球ベース)の免疫療法とは異なり、本発明では、注入された細胞を、がん細胞へと高度に腫瘍特異的に標的とする:数多くの細胞ベースの治療法が臨床試験中であるが、これらのアプローチのいずれも、エフェクター細胞をがん細胞へと高度に特異的にターゲティングすることに基づいたものではない。本発明は、がん細胞にのみ結合する抗体を架け橋(bridge)として用いてエフェクター細胞をがん細胞へと標的とするため、はるかに高いレベルのエフェクター特異性が達成される。
・ ネオエピトープの高い腫瘍特異性を利用する他の試みとは異なり、本発明では、患者の天然のT細胞免疫応答を当てにしていない:他のグループによる研究努力は、がん性細胞により提示されたネオエピトープに対するT細胞応答を開始させる(または「再活性化」させる)ことを目的とした、患者ごとの、治療的免疫化を開発することを目指している。こうした努力はいくつかの難題に直面しており、臨床的に大きな成功を収めるには至っていない。本発明では、患者のT細胞応答を当てにしない方法でがん細胞をターゲティングすることによって、これらの難題が回避される。代わりに、本発明は、ネオエピトープを標的とする外部で作製された抗体を、外部で作製された(すなわち、外部で培養し、遺伝子改変し、拡大培養し、かつ活性化した)エフェクター細胞と組み合わせて使用する。したがって、ネオエピトープとネオ抗原を用いた免疫化に基づく治療努力とは対照的に、本発明は、ネオエピトープの抗体認識と、ADCCまたはADCP(またはADCCとADCPの組み合わせ)の自然免疫エフェクター細胞機能との両方を当てにしていることから、治療の結果をより予測可能で、的を絞ったものにする。
・ 他のいくつかのグループによる研究とは異なり、本発明は、特定のネオエピトープに重点を置いたものではないので、すでに知られているネオエピトープにも、将来発見されることになるネオエピトープにも、(例えば個別化された方法で)適用することができる。
・ ネオエピトープを標的とするトランスジェニックTCRまたはCARを作製する一部のグループによる研究とは異なり、本発明では、真に個別化された治療法を創出するための患者ごとの開発がより容易にできる:他の研究・開発グループも、ネオエピトープの優れたがん特異性を利用しようとしており、トランスジェニックネオエピトープ特異的TCRおよび/またはネオエピトープ特異的CARを開発してきた。これらのいずれの場合にも、細胞傷害性エフェクター細胞(NK細胞であるか否かにかかわらず)は、ネオエピトープの抗体による認識に依存しない場合、ネオエピトープ特異的構築物で形質導入される必要があるだろう。対照的に、本発明は、ネオエピトープの抗体による認識を当てにすると同時に、Fcγ受容体(例えば、ADCCおよびADCPでは、それぞれCD16受容体およびCD32受容体)を介してADCCまたはADCPを支持できる免疫エフェクター細胞のADCCまたはADCPメカニズムをも特異的に活用する。個別化は、個別化された遺伝子改変免疫エフェクター細胞ではなく、個別化された抗体の作製に依存するため、本発明は、個別化された治療を創出する上でもより優れた効率性を提供する。本発明は、[a]より時間効率的で資源効率的な抗体ベースの治療の個別化と、[b]抗体と協調して機能し、正常細胞よりもがん細胞を選択的に標的とする免疫エフェクター細胞の有効性との、ユニークな組み合わせを提供する(これらは、がん細胞を標的とするように、養子移入された免疫エフェクター細胞を橋渡しする抗体によるネオエピトープ-HLA複合体のターゲティングによる)。
【0118】
本発明の個別化されたがん免疫療法は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、前述の特徴および構成要素の一部または全部を用いて提供され得ることが、当業者には明らかであろう。また、上述した態様は、教示された単一の説明よりも広い範囲を有し得る単一のより広範な発明の具体的な例であることも、当業者には明らかであろう。この説明には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更を加えることが可能である。
【実施例
【0119】
実験例
ここで、本発明は、以下の実施例を参照して説明される。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されるのではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかな全ての変形を包含する。
【0120】
実施例1:ネオエピトープに対する抗体は、ネオエピトープを提示する標的細胞を死滅させるためのナチュラルキラー(NK)細胞のADCC[抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用]メカニズムを誘導する
ネオエピトープはがん免疫療法の魅力的な標的であるが(Brennick et al. (2017) Immunotherapy, 9(4), pp.361-371)、ネオエピトープに対する抗体治療薬を創出するための本明細書に開示された新規な方法論は、がん細胞の表面上のネオエピトープへの架け橋として抗体を活用する、主に自然免疫系の細胞によって発現される2つの特異的な細胞メカニズム、すなわちADCCとADCP[抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用と抗体依存性細胞媒介性貧食作用]のメカニズムに重点を置いている(Gogesch et al. (2021) International Journal of Molecular Sciences, 22(16), p.8947)。概念実証または原理実証として、この実験的研究は、ネオエピトープに対して作製されたTCR様抗体が、特定のネオエピトープを提示している標的細胞に対してナチュラルキラー(NK)エフェクター細胞のADCC細胞傷害活性を誘導し得ることを示している。以下にまとめた実験データでは、モデルペプチドエピトープSIINFEKLが「モデルネオエピトープ」または「代理ネオエピトープ」(surrogate neoepitope)として機能した。すなわち、概念実証実験の目的では、代理ネオエピトープSIINFEKLに対する抗体媒介性NK細胞応答は、病変細胞(がん細胞など)のネオエピトープ、特にフレームシフト変異に由来しかつ完全に新しいまたは外来のペプチド配列をもたらすネオエピトープに対する想定された抗体媒介性NK細胞応答とメカニズム的に同等であると考えられる。
【0121】
実験方法:抗SIINFEKL-H2Kb抗体(クローン25.D1-16)は、市販されている「TCR様抗体」である(すなわち、TCRと同じようにペプチド-MHC複合体に結合する)。この抗体は、予備的な概念実証実験で、SIINFEKL-H2Kb複合体(SIINFEKLはモデルネオ抗原またはネオエピトープを表す)を検出する際のその十分に確立された使用のために選択された。しかし、このマウス抗体のアイソタイプはIgG1(ADCC活性を誘導しない)であるため、これらの実験では、そのアイソタイプをADCC活性のあるマウスIgG2aアイソタイプに切り替える必要があった。IgG2aへの切り替えは、元の25.D1-16抗体の重鎖と軽鎖の両方の可変領域配列を、Invivogen社(San Diego, CA)から市販されているマウスIgG2aプラスミド(pTRIOZ-mIgG2a)にクローニングすることによって行った。プラスミドの作製と、それに続くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞での抗体タンパク質の組換え発現は、Azenta社(Chelmsford, MA)で実施した。タンパク質の精製は、プロテインAアガロースを用いて行った。
【0122】
抗SIINFEKL-H2Kb TCR様抗体を介したマウスNK細胞によるADCCの誘導を試験するために、初代マウスNKエフェクター細胞とEL4標的細胞(H2Kbを発現する非接着性C57BL/6マウス細胞株)を用いて、3つの異なるエフェクター:標的(E:T)比で4時間の共培養物をセットアップした。共培養物のセットアップ前に、>95%の生存率を示すEL4細胞を、染色濃度0.25μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)染色で標識し(標的をエフェクターから区別する明確な手段を提供するため)、25μMのSIINFEKLペプチドと37℃で1時間、15分ごとに穏やかに撹拌しながら、インキュベートした(すなわち、ペプチドで「パルスした」)。次に、これらのCFSEで染色し、SIINFEKLでパルスしたEL4細胞を、丸底96ウェルプレートにウェルあたり50,000個ずつプレーティングした。ADCCを誘導するために、精製済みの抗SIINFEKL-H2Kb IgG2a抗体を最終濃度3.5μg/mLで添加した;あるいは、「天然」の細胞傷害性を試験するために抗体を添加しなかった。一方、StemCell Technologies社(Vancouver, カナダ)からの免疫磁気ネガティブセレクションキットを用いて、5匹のマウスの脾臓からNK細胞を濃縮した。初代NK細胞を、E:T比が0.5:1、1.5:1、および5:1になるようにウェルに添加した。さらに、標的(EL4細胞)とエフェクター(NK細胞)の両方について、単独培養ウェルをセットアップした。CD107aに対するフィコエリトリン(PE)結合抗体を各ウェルに加えた。このプレートを37℃で4時間培養した後、SYTOXブルー死細胞染色、アロフィコシアニン(APC)結合アネキシンV、およびAPC/Fire(商標)750結合抗NKp46抗体で染色した。Bio-Rad ZE5フローサイトメーター(CT大学)でデータを取得した。解析に使用したゲーティング戦略を図18に示す。
【0123】
このゲーティング戦略(図18)に基づいて、「結果」のセクションに示されるように、これらの実験のフローサイトメトリーに基づく結果を作成した。さらに、4時間の共培養の終了時に細胞培養上清の試料を回収し、Abcam社(Cambridge, UK)からのキットを用いて乳酸脱水素酵素(LDH)活性についてアッセイした。
【0124】
主な結果:マウスアイソタイプIgG2aを伴う抗SIINFEKL-H2Kb抗体は、ADCCメカニズムを介して、SIINFEKLでパルスしたEL4細胞を死滅させるようにマウスNK細胞を誘導する;これは、図19にまとめた結果から明確に立証される。図19Bは、NK細胞傷害活性が3つ全てのE:T比において抗体の存在下で増加することを示している。E:T比の増加につれてますます顕著になる、この標的細胞死滅の高まりは、添加されたTCR様抗体によって媒介されるADCC活性を表している。非常に低いE:T比の0.5:1では、抗体が存在しない場合のNK細胞のバックグラウンドの「天然」の細胞傷害活性と比較して、ADCCは標的細胞死滅の10.4%増加に寄与した。より高い比の1.5:1および5:1では、ADCCの寄与率はそれぞれ17.7%および38.1%でより高く、いずれの場合も統計的に有意であった。重要なことは、これらの共培養ADCC値が、図19Aに示される、ペプチドでパルスしたEL4細胞に対する抗体の直接的な細胞傷害効果を差し引いた後に計算されたことである。
【0125】
細胞死を測定するフローサイトメトリーベースの方法に加えて、その結果を裏付けるために酵素ベースの比色アッセイが使用された。細胞が死んだ時だけ培地中に放出される細胞質内酵素である乳酸脱水素酵素(LDH)を、4時間のインキュベーションの終了時に、全ての単独培養物と共培養物からの上清試料において定量化した。フローサイトメトリーの結果と完全に一致して、TCR様抗体の添加は、E:T比に依存する方法でNK細胞の細胞傷害活性の増加を引き起こした(図20)。最も低い比では、LDHの放出は、有意に達することなく上向き傾向にあった。より高い比の1.5:1および5:1では、ADCC活性による細胞死の高まりは、それぞれ54.2%および80%であり、いずれの場合も統計的に有意であった。このアッセイでは、抗体を添加した単独培養ウェルにおいてLDHがそれほど検出されなかったため、直接的な細胞傷害効果の寄与分を差し引く必要がなかった。
【0126】
図20は、フローサイトメトリーにより観察された標的細胞死の定量化(図2)のさらなる裏付け(LDHの定量化による)を提供する。さらに、フローサイトメトリーにより観察された、増加するE:T比の関数としての抗体誘導性ADCC細胞傷害作用の高まり(図2)は、LDHの定量化(図20)により再確認され、この場合にも、増加するE:T比の関数としての抗体誘導性ADCC細胞傷害作用の高まりが確認された。
【0127】
図21は、図2で観察されたADCC定量化が、アポトーシスに基づくADCC細胞傷害作用(図21A)と、非アポトーシス性であるネクローシスに基づくADCC細胞傷害作用(図21B)の両方の累積結果であることを立証している。さらに、図19Bに観察されるような、増加するE:T比の関数としての抗体誘導性ADCC細胞傷害作用の高まりは、ADCC-アポトーシスとADCC-ネクローシスの両方にも当てはまり、抗体誘導性ADCC-アポトーシスはE:T比が増加するにつれて高まり(図21A、それぞれ18.8%、26.0%、および49.8%の高まり)、抗体誘導性ADCC-ネクローシスもE:T比が増加するにつれて高まる(図21B、最も高い比では20.9%の高まり)。図19と同様に、これらの値は、ペプチドでパルスしたEL4細胞に対する抗体の直接効果を差し引いた後に、これらの特定の細胞死メカニズムのそれぞれについて計算したものである。
【0128】
図22は、病変細胞をターゲティングするその自然免疫機能の中心であるNK細胞の脱顆粒過程が、SIINFEKL-H2Kb複合体を表示する標的細胞に対して向けられた、NK細胞のADCCメカニズムの抗体ベースの(ペプチド-MHC複合体に対するTCR様抗体による)誘導中に増強されることを明確に立証している。この測定基準によると、抗体の存在によるNK細胞の細胞傷害活性の高まりは、3つ全てのE:T比で非常に有意であり、それぞれ35.3、39.2、および18.2の増加であった。
【0129】
図23により表される実験結果は、ADCC誘導の補足実験(図18~22により表される)で得られた結果が、標的EL4細胞の表面上のSIINFEKL-H2Kb複合体の抗SIINFEKL-H2Kb抗体による特異的結合に基づくこと、およびこの抗体結合が図19~21により表されるADCCの定量化の基礎となることを立証している。
【0130】
抗SIINFEKL-H2Kb抗体が標的EL4細胞の表面上のSIINFEKL-H2Kb複合体に結合することによるNK細胞ADCC誘導の観察は、標的細胞死を定量化する全く異なる方法[フローサイトメトリーによるSYTOX染色(図19)およびLDHアッセイ(図20)]の間で一貫しており、また、ADCCに基づく細胞傷害作用の基礎となる両方のメカニズム(アポトーシスとネクローシス)についても当てはまった(図21)。
【0131】
まとめると、SIINFEKLを「代理ネオエピトープ」として使用して、図18~23に要約した実験結果は、ネオエピトープに対するTCR様抗体が、ネオエピトープを表示する標的細胞に対して選択的にNK細胞による細胞傷害性のADCCメカニズムを誘導できるという概念実証を立証している。
【0132】
考察、結論およびNK細胞療法への暗示:図19図20に概略を示すように、有意に高い細胞傷害作用が、標的細胞において、抗体とエフェクター細胞の両方の存在下でエフェクターNK細胞により誘導され、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)メカニズムの測定可能な発現が示された。さらに、ADCCによる標的細胞死滅の用量依存的増加が見られ、エフェクター:標的(E:T)比が高いほど、ADCCによる死滅は高くなる。言い換えれば、これらのデータは、抗体がネオエピトープに対して作製されて、ネオエピトープを表示する病変細胞のNK細胞による死滅を目的として、NK細胞でADCCメカニズムを誘導することができることを示している。
【0133】
これらの実験結果の生物学的意義は、下記の事項の概念実証または原理実証を実験的に証明し確立することである:モデルネオ抗原(すなわち、SIINFEKL-H2Kb複合体)に対して特異的に作製されたTCR様抗体は、ネオ抗原を表示する標的細胞に対してナチュラルキラー(NK)エフェクター細胞の細胞傷害性のADCCメカニズムを誘導することができる。この実験的証明は、がん治療のための新規治療法を創出する際に本発明によってもたらされる利点の一例を示している:
【0134】
がん細胞などの、病変細胞をターゲティングする際の高い特異性、それと同時に、病変細胞上に現れるが健常細胞上には現れないネオエピトープをターゲティングすることによって、健常細胞に対する毒性を最小化または回避する(de Sousa et al. (2021) Frontiers in Immunology, p.1938)。
治療の個別化、個々の患者のレベルで発現されるか、またはネオエピトープを共有する患者グループ間で発現されるネオエピトープを特異的に標的とする抗体の作製に基づく(Saini et al, (2017) Annals of Oncology, 28, pp.xii3-xii10)。
・ ネオエピトープの発現が個々の患者内の様々な腫瘍間で異なる場合、個別化は個々の腫瘍のレベルでも促進される。
治療の個別化における効率性、時間の効率性、または治療を生み出すための資源の効率性、または治療の選択肢もしくは効能の効率性の観点から見たものであり、以下でさらに詳しく説明される:
〇 本発明のいくつかの態様では抗体が個別化の基礎となり、細胞療法が個別化の基礎となるのではない。抗体は、細胞療法と比較して、その作製と使用においてより高い効率性を提供し、例えば、生産するのがより速く、より安価である。
〇 抗体は、(単一のネオエピトープに対する)単一の抗体として、または(2つ以上の異なるエピトープに対する)2つ以上の抗体の組み合わせとして患者に投与することができるため、治療の効率性がもたらされる。
〇 本発明のいくつかの態様は、患者の体内の内因性免疫細胞を当てにして、外部から加えられる細胞療法を当てにせず、患者への抗体投与のみを必要とすることを考慮すると、外因性細胞療法、すなわち養子免疫細胞療法は任意選択であって、必須要件ではない。
〇 本発明の態様は、治療の効率性をもたらす。外因性細胞療法がネオエピトープをターゲティングする抗体療法と協調して投与される場合、様々な細胞(例えば、NK細胞、マクロファージ、好中球など)から選択することができる。さらに、生物学的効果の相乗作用を目的として、1つまたは複数のタイプの細胞療法を投与することもでき、例えば、疾患と戦うためのADCCメカニズム(NK細胞上のCD16を介する)とADCPメカニズム(マクロファージ上のCD32を介する)の両方を誘導するために、外因性NK細胞を外因性マクロファージと組み合わせて投与することができる。
〇 治療の過程での疾患発現のさらなる変異(例えば、がんの転移に伴って異なるネオエピトープが現れるシナリオ)に対応して、より新しい抗体を作製し続けることができる。この治療の柔軟性の機会は、細胞療法の創出と対比して抗体の作製に固有の資源効率性によってもたらされる。言い換えれば、その治療法はその疾患に適応可能なのである。
【0135】
要約すると、このセクションにまとめられた実験結果は、病変細胞上のネオエピトープを選択的に標的とする抗体を作製し、かつADCC、ADCP、またはADCCとADCPの組み合わせの細胞メカニズムを活用することによって、本発明が個別化された療法を創出するための新規なプロセスを生み出すという証拠を提供する。
【0136】
計画的実験
本明細書に開示された実験例は、特定のペプチド-MHC複合体(この場合には、「代理ネオエピトープ」として機能するモデル抗原)に特異的なTCR様抗体が、NK細胞によるADCC活性を誘導できることを実証している。さらなる実験は、[a]このADCC活性がインビボで抗腫瘍活性をもたらすことを実証し、[b]新しいTCR様抗体が、詳細な説明に記載された方法を用いて、ヒトにおいて既知のネオエピトープに対して作製され得ることを実証し、かつ[c]その新しい抗ネオエピトープTCR様抗体がADCC活性を誘導することを実証するために計画される。
【0137】
計画的実験戦略および方法論:
抗SIINFEKL-H2Kb IgG2a抗体によって誘導されたADCC活性から生じる抗腫瘍活性のインビボでの試験:インビボでのADCC誘導の実証では、マウス腫瘍細胞株EL4を使用し、このEL4細胞をSIINFEKLペプチドで処理または「パルス」した(実施例1参照)。別の細胞株E.G7はEL4に由来するが、EL4細胞とは異なり、E.G7は鶏卵オボアルブミン(OVA)で安定的にトランスフェクトされている;OVAがアミノ酸配列SIINFEKLを持っていることを考慮すると、E.G7細胞は、SIINFEKLペプチドに別に曝露しなくても、細胞表面のH2Kb分子上に「代理」ネオエピトープSIINFEKLを結果として提示する。これらの腫瘍細胞株はいずれもC57BL/6マウスにおいて腫瘍形成性であり、すなわち、皮内移植が進行性の腫瘍成長につながり、これを経時的にモニタリングすることができる。抗SIINFEKL抗体(クローン25-D1.16)のアイソタイプスイッチIgG2aバージョンを用いる計画的実験では、マウスに[a]EL4腫瘍(EL4細胞がSIINFEKLペプチドに曝露されていない(陰性対照))、または[b]E.G7腫瘍(その表面に抗体の標的を有する)のいずれかを移植し、様々な用量の抗体でマウスを治療する。いくつかの実験では、ヒトでのNK細胞免疫療法のモデルとして、ADCCに基づく抗腫瘍活性に利用可能なNK細胞の数を増やすために、初代NK細胞(他のC57BL/6マウスから新鮮単離したもの)の養子移入が同時に実施されるだろう。エンドポイントには、腫瘍サイズの経時的変化とマウスの生存率が含まれる。
【0138】
ヒトにおける既知の「パブリック」ネオエピトープに対する新しい抗ネオエピトープ抗体の作製:初期の抗体開発の取り組みは、別の短いリーディングフレーム翻訳をもたらすNPM1への4塩基対挿入から生じるHLA-A*02:01結合ネオエピトープ(アミノ酸配列 CLAVEEVSL)に焦点を当てている(Van der Lee, et al. (2019) J. Clin. Invest. 129(2):774-85)。このフレームシフト変異はAML患者の30%に存在しており、「パブリック」ネオ抗原となっている。また、HLA-A*02:01は高頻度に見られるHLAの対立遺伝子である。このプロジェクトの第1段階は、以下のような目標を掲げている:(1)AMLによく見られるこのフレームシフト由来の「パブリック」ネオ抗原に対する新規なTCR様抗体を数種類作製する;および(2)AML細胞に対するヒトNK細胞によるADCC活性を誘導する能力を評価するために、候補抗体をインビトロで試験する。上位の成績を示した候補抗体(約3~5種類の抗体)が、このプロジェクトの第2段階で前臨床的に試験されるショートリストを構成する。
【0139】
最初の目標を追求するには、図24にグレーで強調表示したステップをたどることになる。最初のステップでは、「パブリック」ネオエピトープペプチドCLAVEEVSLを合成する。重要なことに、このペプチドの実際の提示形態は、N末端のシステイン残基のシステイニル化(cysteinylation)を含むことが示されている(Van der Lee 2019)。したがって、これらの実験用に合成されたペプチドもシステイニル化する必要がある。ペプチドの合成後、組換えHLA-A*02:01とβ2-ミクログロブリン(β2m)タンパク質を用いてHLA-ペプチド複合体を作製する。動物を免疫化しかつELISAを行う目的で(後述)、ビオチン化されていない、または蛍光分子が結合されていない単量体型複合体を作製する;さらに、蛍光活性化セルソーティングの目的で、蛍光分子が結合されたHLA-ペプチド4量体を作製する。
【0140】
HLA-ペプチド複合体に特異的な高親和性抗体(すなわち「TCR様」抗体)を迅速に作製するためのプロトコルが2017年に発表された(Ouisse, et al. (2017) BMC Biotechnol. 17(1):3)。このプロトコルでは、天然のラット抗体遺伝子の代わりにヒト抗体遺伝子で遺伝子操作されたラットであるOmniRatを利用する。これらのラットを抗原で免疫化すると、得られた抗体は完全にヒトの配列を有する。OmniRatをHLA-A*02:01-CLAVEEVSL複合体(非結合型単量体)で2回免疫化するが、これらの免疫化を16日の間隔で行う。2回目の免疫化の5日後に、脾臓とリンパ節を採取し、単一細胞懸濁液へと解離させる。
【0141】
免疫磁気ネガティブセレクションキットを用いて、解離したリンパ系組織に存在するT細胞と他の細胞の大部分を除去することによって、B細胞を濃縮する。得られた、90%超のB細胞からなる細胞懸濁液を、次のステップである蛍光活性化セルソーティングのために準備する。このステップの目的は、B細胞受容体がHLA-A*02:01-CLAVEEVSL複合体と特異的に結合する個々のB細胞を単離することである。細胞を、ラットIgGに対する抗体(B細胞を選別するため)およびT細胞受容体に対する抗体(T細胞を除外するため)、ならびに数種類の蛍光標識HLA-ペプチド4量体複合体で染色する。参照番号に示されるように、特定のHLA-ペプチド複合体に対する特異性を有するB細胞は、以下の染色とゲーティング戦略を用いて首尾よく単離される:(1)細胞を関心対象のHLA-ペプチドの4量体で染色するが、2つの異なる蛍光分子を使用する。例えば、細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に結合させた4量体で染色し、同時にフィコエリトリン(PE)に結合させた同じ4量体で染色する。一方、異なる蛍光分子(例えばAPC)に結合させた無関係のHLA-ペプチド複合体の別の4量体でも細胞を染色する。(2)セルソーティングの間、関心対象の4量体に関連する蛍光分子の両方(この場合はFITCとPE)に対して陽性のB細胞、すなわち二重陽性細胞を選別するためのゲートを設定する。これらの二重陽性細胞については、無関係の4量体に関連する蛍光分子(この場合はAPC)に対して陰性の細胞を選別するための追加のゲートを設定する。関心対象の4量体の陽性選択に2つの異なる蛍光分子を使用することは、これらの蛍光分子に特異的なB細胞を排除する;一方、無関係の4量体の陰性ゲートは、(HLA分子と結合している抗原ペプチドではなく)HLA分子そのものに特異的なB細胞を排除し、β2mに特異的なB細胞をも排除する。その結果、収集された個々のB細胞の数は少ない(100個未満)が、その一部は免疫化に使用されるHLA-ペプチド複合体に対して高い特異性と高い親和性を示す(約12%)。
【0142】
個々の単一のB細胞を別々のPCRチューブに振り分ける。cDNAへの逆転写と、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子のPCRベースの増幅に続いて、DNA配列決定を行って、可変領域のユニーク配列を得る。その可変領域配列を、IgG1アイソタイプのヒト抗体をコードする真核細胞発現ベクターにクローニングする。抗HLA-ネオエピトープ抗体を産生させるために、CHO細胞を一過性にトランスフェクトする。トランスフェクトしたCHO細胞培養物から上清を回収し、ヒトIgG単離キットを用いて抗体精製を行う。免疫化した1匹のOmniRatから20~80個のB細胞クローンが単離されると予想される;したがって、1匹の動物を用いてこのプロセスに従うと、2~9種の完全ヒトCLAVEEVSL特異的候補抗体が得られると予想される。このプロセスに従うが、抗原特異性を試験するための30~50種の候補抗体を産生させるには、多くのOmniRatの免疫化が必要である。
【0143】
候補抗体の特異性を試験するため、動物を免疫化するために使用したものと同じHLA-A*02:01-CLAVEEVSL複合体(単量体)を使用する。標準的なELISAプレートを用いて、ウェルにこれらのHLA-ペプチド複合体または無関係のHLA-ペプチド複合体をコーティングする。これらのHLA-ペプチド複合体への結合について各抗体を個別に試験する。HLA-A*02:01-CLAVEEVSLと弱い結合しか示さないもの、または無関係の複合体との結合がバックグラウンドより有意に高いものは、廃棄される。HLA-A*02:01-CLAVEEVSLに強く結合するが、無関係のHLA-ペプチド複合体には結合しないものを、ADCCアッセイ(2番目の目標)でさらに試験するための候補抗体として取っておく。
【0144】
新しい抗ネオエピトープTCR様抗体のADCC活性の試験:
2番目の目標を追求するために、これらの抗ネオエピトープ「TCR様」候補抗体がNK細胞の細胞傷害性のADCCメカニズムを誘導する能力を試験する実験を、インビトロで行う。予備的実験は、SIINFEKL-H2Kb複合体(「代理ネオエピトープ」として機能するモデル抗原)に特異的なTCR様抗体が、NK細胞によるADCC活性を誘導する能力があることを実証した。
【0145】
候補抗HLA-A*02:01-CLAVEEVSL抗体の試験は、本明細書に開示した予備的実験と同様の実験デザインに従う。しかし、標的細胞として細胞株を使用するのではなく、AML患者から供給されたがん細胞を使用する。これらのがん細胞は、UConn Healthまたはミネソタ大学などの大学の教育病院から調達される。候補抗体はHLA-A*02:01により提示されるネオエピトープに特異的であるため、大部分のAML試料はそのHLA対立遺伝子を持つ患者から取得される。しかし、その対立遺伝子を持たない少数のAML試料も陰性対照として役立つように取得される。AML試料をSanger法で配列決定して、NPM1への特定の4塩基対挿入の存在について試験する;この挿入は、試料の30%に存在するはずであり、HLA-A*02:01上の「パブリック」ネオエピトープCLAVEEVSLの提示につながる。HLA-A*02:01陽性でありかつ正しい変異を持つ全ての試料が、ADCC実験で使用するために選択される。ただし、陰性対照として役立つ、正しい変異を持たないHLA-A*02:01陽性試料もいくつか選択される。
【0146】
ADCCアッセイにおけるエフェクター細胞には、健康なドナーからの初代ヒトNK細胞を使用する。新鮮なバフィーコートをResearch Blood Components(Watertown, MA)から入手し、密度勾配遠心分離によりPBMCを取得する。NK細胞を免疫磁気ネガティブセレクションで濃縮する。
【0147】
各候補抗体は、HLA-A*02:01対立遺伝子があるまたはない、およびCLAVEEVSLの提示をもたらすフレームシフト変異があるまたはないAML細胞に対して、NK細胞によるADCCを誘導するその能力について試験する。具体的には、正しい対立遺伝子と正しい変異を持つ少なくとも4つのAML試料、正しい対立遺伝子を欠く少なくとも1つのAML試料、および正しい変異を欠く少なくとも1つのAML試料が各実験に含まれる。各抗体について、複数のエフェクター:標的比(例えば、1:1、4:1、10:1)および複数の抗体濃度(例えば、0μg/mL、0.02μg/mL、0.2μg/mL、2μg/mL)で共培養物をセットアップする。アイソタイプ対照抗体も陰性対照として加える。共培養を4~6時間実施する。エフェクター(NK)細胞の非存在下でのAML細胞の培養も同様に処理して、これらの条件下でのAML細胞のベースライン死を確立する。AML細胞の死は、膜不透過性の核染色(例えば、ヨウ化プロピジウム)とアポトーシスマーカー(例えば、アネキシンV)で染色した後、フローサイトメトリーを用いて定量化する。グループごとに4回の技術的反復を行う。
【0148】
これらのアッセイでは、抗体の添加がない場合でも、標的AML細胞に対するある程度の細胞傷害活性が観察されると予想される。それは、NK細胞による認識と死滅の非抗原特異的メカニズムに起因する。ADCCを試験するときの重要な読み出し情報は、NK細胞媒介性死滅が抗体の存在下ではこのベースラインを超えて増強されることである。死滅(ADCC活性)の増加が抗体の存在下で期待されるのは、(1)AML試料が「パブリック」ネオエピトープCLAVEEVSLの提示につながるNPM1フレームシフト変異を含み、かつ(2)AML試料がHLA-A*02:01を発現している場合のみである。最大のADCC活性を誘導する3~5種類の抗体を、今後の動物実験のために選択する。
【0149】
列挙された態様
以下に列挙された態様が提供されるが、その番号付けは重要度のレベルを指定するものとして解釈されるべきではない。
【0150】
態様1は、
a. 1つまたは複数の腫瘍特異的エピトープに特異的に結合する、1つまたは複数の抗体もしくはその抗原結合断片;および
b. 有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞
を含む、がんを治療するための組成物を提供する。
態様2は、個別化されている、態様1に記載の組成物を提供する。
態様3は、腫瘍特異的エピトープがネオエピトープである、態様1に記載の組成物を提供する。
態様4は、抗体またはその抗原結合断片がヒト化されている、態様1に記載の組成物を提供する。
態様5は、抗体またはその抗原結合断片が完全ヒトである、態様1に記載の組成物を提供する。
態様6は、抗体またはその抗原結合断片が脱フコシル化されている、態様1に記載の組成物を提供する。
態様7は、抗体またはその抗原結合断片が二重特異性である、態様1に記載の組成物を提供する。
態様8は、腫瘍特異的エピトープがネオエピトープ/HLA複合体である、態様1に記載の組成物を提供する。
態様9は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である、態様1に記載の組成物を提供する。
態様10は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞が放射線照射される、態様1に記載の組成物を提供する。
態様11は、
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的遺伝子変異を配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的遺伝子変異に基づいてHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体を産生するかまたはその抗原結合断片の生成を促進するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体を生産するステップ;および
g. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体を、有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞と組み合わせるステップ
を含む、がんを治療するための組成物の生産方法を提供する。
態様12は、配列決定が次世代シーケンシングである、態様11に記載の方法を提供する。
態様13は、非ヒト動物がヒト化されている、態様11に記載の方法を提供する。
態様14は、非ヒト動物が完全ヒト抗体を産生する、態様11に記載の方法を提供する。
態様15は、ヒト化された非ヒト動物がラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される、態様13に記載の方法を提供する。
態様16は、HLA/ネオエピトープ特異的抗体が非動物的方法を用いて作製される、態様11に記載の方法を提供する。
態様17は、非動物的方法がファージディスプレイである、態様16に記載の方法を提供する。
態様18は、抗体またはその抗原結合断片が脱フコシル化されている、態様11に記載の方法を提供する。
態様19は、抗体のアイソタイプがADCCまたはADCPを支持する、態様11に記載の方法を提供する。
態様20は、抗体のアイソタイプが、ADCCまたはADCPを支持しないアイソタイプから、ADCCまたはADCPを支持するアイソタイプにさらに改変される、態様11に記載の方法を提供する。
態様21は、HLA/ネオエピトープ複合体が単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、態様11に記載の方法を提供する。
態様22は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である、態様11に記載の方法を提供する。
態様23は、
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的遺伝子変異を配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的遺伝子変異に基づいてHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体を産生するかまたはその抗原結合断片の生成を促進するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. HLA/ネオエピトープ特異的抗体からの抗原結合ドメインを含む1つまたは複数のキメラ抗原受容体(CAR)を作製するステップ;および
g. 細胞傷害性免疫エフェクター細胞においてCARを発現させるステップ
を含む、がんを治療するための組成物の生産方法を提供する。
態様24は、配列決定が次世代シーケンシングである、態様23に記載の方法を提供する。
態様25は、非ヒト動物がヒト化されている、態様23に記載の方法を提供する。
態様26は、非ヒト動物が完全ヒト抗体を産生する、態様23に記載の方法を提供する。
態様27は、ヒト化された非ヒト動物がラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される、態様23に記載の方法を提供する。
態様28は、HLA/ネオエピトープ特異的抗体が非動物的方法を用いて作製される、態様23に記載の方法を提供する。
態様29は、非動物的方法がファージディスプレイである、態様23に記載の方法を提供する。
態様30は、CARを作製するステップが、抗体の抗原結合ドメインに基づいてscFvを作製するステップをさらに含む、態様23に記載の方法を提供する。
態様31は、CARが膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン、および共刺激ドメインをさらに含む、態様23に記載の方法を提供する。
態様32は、HLA/ネオエピトープ複合体が単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、態様23に記載の方法を提供する。
態様33は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞、T細胞、NK T細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である、態様23に記載の方法を提供する。
態様34は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞である、態様23に記載の方法を提供する。
態様35は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がCD8+ T細胞である、態様23に記載の方法を提供する。
態様36は、その必要がある対象におけるがんの治療方法を提供し、方法は以下のステップを含む:
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的ネオエピトープを配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的ネオエピトープからHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト哺乳動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト哺乳動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体またはその抗原結合断片を産生するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体を生産するステップ;および
g. 有効量のHLA/ネオエピトープ特異的抗体と有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞を対象に投与し、それによってがんを治療するステップ。
態様37は、配列決定が次世代シーケンシングである、態様36に記載の方法を提供する。
態様38は、非ヒト動物がヒト化されている、態様36に記載の方法を提供する。
態様39は、非ヒト動物が完全ヒト抗体を産生する、態様36に記載の方法を提供する。
態様40は、ヒト化された非ヒト動物がラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される、態様36に記載の方法を提供する。
態様41は、HLA/ネオエピトープ特異的抗体が非動物的方法を用いて作製される、態様36に記載の方法を提供する。
態様42は、非動物的方法がファージディスプレイである、態様36に記載の方法を提供する。
態様43は、HLA/ネオエピトープ特異的抗体が脱フコシル化されている、態様36に記載の方法を提供する。
態様44は、抗体のアイソタイプがADCCまたはADCPを支持する、態様36に記載の方法を提供する。
態様45は、抗体のアイソタイプが、ADCCまたはADCPを支持しないアイソタイプから、ADCCまたはADCPを支持するアイソタイプにさらに改変される、態様36に記載の方法を提供する。
態様46は、HLA/ネオエピトープ複合体が単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、態様36に記載の方法を提供する。
態様47は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞、マクロファージ、単球、好中球、樹状細胞、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である、態様36に記載の方法を提供する。
態様48は、その必要がある対象におけるがんの治療方法を提供し、方法は以下のステップを含む:
a. 対象から腫瘍標本を取得し、腫瘍により発現された腫瘍特異的ネオエピトープを配列決定により特定するステップ;
b. 特定された腫瘍特異的ネオエピトープからHLA/ネオエピトープ複合体を作製するステップ;
c. HLA/ネオエピトープ複合体で非ヒト哺乳動物を免疫化するステップ;
d. 免疫化した非ヒト哺乳動物から、HLA/ネオエピトープ特異的抗体またはその抗原結合断片を産生するB細胞を単離するステップ;
e. HLA/ネオエピトープ特異的抗体が腫瘍に結合することを検証するステップ;
f. HLA/ネオエピトープ特異的抗体からの抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を作製するステップ;
g. 細胞傷害性免疫エフェクター細胞においてCARを発現させるステップ;および
h. 有効量の細胞傷害性免疫エフェクター細胞を対象に投与し、それによってがんを治療するステップ。
態様49は、配列決定が次世代シーケンシングである、態様48に記載の方法を提供する。
態様50は、非ヒト動物がヒト化されている、態様48に記載の方法を提供する。
態様51は、非ヒト動物が完全ヒト抗体を産生する、態様48に記載の方法を提供する。
態様52は、ヒト化された非ヒト動物がラット、マウス、ウサギ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ、およびサメからなる群より選択される、態様48に記載の方法を提供する。
態様53は、HLA/ネオエピトープ特異的抗体が非動物的方法を用いて作製される、態様48に記載の方法を提供する。
態様54は、非動物的方法がファージディスプレイである、態様48に記載の方法を提供する。
態様55は、HLA/ネオエピトープ複合体が単量体型複合体、5量体型複合体、4量体型複合体、デキストラン結合型複合体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、態様48に記載の方法を提供する。
態様56は、CARを作製するステップが、抗体の抗原結合ドメインに基づいてscFvを作製するステップをさらに含む、態様48に記載の方法を提供する。
態様57は、CARが膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン、および共刺激ドメインをさらに含む、態様48に記載の方法を提供する。
態様58は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞、T細胞、NK T細胞、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される細胞種である、態様48に記載の方法を提供する。
態様59は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がNK細胞である、態様48に記載の方法を提供する。
態様60は、細胞傷害性免疫エフェクター細胞がCD8+ T細胞である、態様48に記載の方法を提供する。
【0151】
その他の態様
本明細書中の可変要素の任意の定義における要素のリストの記載は、任意の単一の要素としての、またはリストされた要素の組み合わせ(もしくは部分的組み合わせ)としての、その可変要素の定義を含む。本明細書中の態様の記載は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその一部との組み合わせとしての、その態様を含む。
【0152】
本明細書で引用された各特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明5は特定の態様に関して開示されてきたが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形を考案し得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような全ての態様および同等の変形を含むと解釈されることが意図されている。
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【国際調査報告】