(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-15
(54)【発明の名称】レンズ用の型の製造方法及び対応する型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20240807BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240807BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20240807BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240807BHJP
B29D 11/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B29C33/42
G02C7/04
B29C33/38
B23K26/364
B29D11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501753
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 IT2022050204
(87)【国際公開番号】W WO2023286099
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021000018356
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522283181
【氏名又は名称】レオナルド ビジョン エッセ.エッレ.エッレ.
【氏名又は名称原語表記】LEONARDO VISION S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ペシ レオナルド
【テーマコード(参考)】
2H006
4E168
4F202
4F213
【Fターム(参考)】
2H006BC07
4E168DA47
4E168JA01
4F202AF01
4F202AG05
4F202AG19
4F202AH74
4F202AJ03
4F202AJ08
4F202AP11
4F202CA09
4F202CA30
4F202CB01
4F202CD01
4F202CD14
4F202CD28
4F202CK12
4F202CK42
4F202CK43
4F202CL42
4F213AA11
4F213AG01
4F213AG05
4F213AG21
4F213AH63
4F213WA02
4F213WA62
4F213WA73
(57)【要約】
本発明は、モノマー及び/又はポリマー材料の型を使用して成形する技術を使って、コンタクトレンズ(100)を形成するための型(10)を製造する方法に関し、前記型(10)は、前記レンズ(100)を形成することを意図した液体状態のモノマー及び/又はポリマー材料を収容するのに適したキャビティを協働して画定する、雄要素(11)と雌要素(12)とを含み、前記方法は、前記レンズ(100)のレリーフ(101)の機能要素を形成することを意図した、前記雄要素(11)に複数の溝(23)をレーザー加工によって得ることを提供する。本発明はまた、上記の方法で得ることができるモノマー及び/又はポリマー材料で作られたコンタクトレンズ(100)用の型(10)にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズ(100)を形成するための型(10)を製造する方法であって、
前記型(10)は、前記レンズ(100)を形成することを意図した液体状態のモノマー及び/又はポリマー材料を収容するのに適したキャビティを画定する、それぞれ凸面(18)と凹面(13)とを有する雄要素(11)と雌要素(12)とを含み、
前記方法は、前記レンズ(100)を製造することを提供し、これにより、前記凸面(18)と前記凹面(13)が、1つは内側(19、19’)、もう1つは外側(20、20’)となるように、曲率半径(R1、R2)が互いに異なる、少なくとも2つの同心ゾーンを有することを特徴とし、
前記方法は、レーザー加工によって、前記凸面(18)の外側ゾーン(20)に、前記レンズ(100)の表面に形成されるレリーフ(101)の機能要素と一致する形状及びサイズを有する複数の溝(23)を得ることを提供することを特徴とする方法。
【請求項2】
相関形状を有する金属形成マトリックス内での成形技術によって前記要素(11及び12)を製造することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー加工は、フェムト秒タイプのレーザーを使用する加工であり、前記型(10)の前記雄要素(11)上で直接実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
レーザー加工によって、少なくとも前記凸面(18)の内側ゾーン(19)に複数の凹部要素(24)を得ることを提供し、
前記凹部要素(24)は、前記レンズ(100)の表面に形成されるレリーフの構成要素(102)と嵌合する形状である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
レリーフ(101)の機能要素を備えたコンタクトレンズ(100)を形成するためのモノマー及び/又はポリマー材料で作られた型(10)であって、
前記型は、前記レンズ(100)を形成することを意図した液体状態のモノマー及び/又はポリマー材料を収容するのに適したキャビティを協働して画定する、凸面(18)を備えた雄要素(11)と、凹面(13)を備えた雌要素(12)と、を備え、
前記型は、
前記凸面(18)と前記凹面(13)が、それぞれ、少なくとも内側ゾーン(19、19’)と外側ゾーン(20、20’)とを備え、前記内側ゾーン(19、19’)及び前記外側ゾーン(20、20’)は、同心であり、曲率半径(R1、R2)が互いに異なる
ことを特徴とし、更に、
前記凸面(18)の前記外側ゾーン(20)は、前記レンズ(100)の表面に形成されるレリーフ(101)の機能要素と一致する形状及びサイズを有する複数の溝(23)を備える
ことを特徴とする型(10)。
【請求項6】
前記外側ゾーン(20、20’)の前記曲率半径(R2)は、前記内側ゾーン(19、19’)の前記曲率半径(R1)よりも大きいことを特徴とし、
前記曲率半径(R2、R1)間の差は、1mmと6mmとの間に含まれ、好ましくは3mmに等しい
ことを特徴とする請求項5に記載の型(10)。
【請求項7】
前記凸面(18)及び前記凹面(13)は、3つのゾーン(19、19’、20、20’、21、21’)を含み、それぞれが前記型(10)の中心軸(X)に関して互いに同心であり、それぞれが互いに異なる曲率半径(R1、Ri、R2)を有し、
前記ゾーンは、前記内側ゾーン(19、19’)と前記外側ゾーン(20、20’)との間の遷移の曲率半径(Ri)を有する中間ゾーン(21、21’)を備え、
前記中間ゾーン(21、21’)の前記曲率半径(Ri)は、前記内側ゾーン(19、19’)の前記曲率半径(R1)よりも大きいことを特徴とし、
前記曲率半径(Ri、R1)間の差は、2mmと7mmとの間に含まれ、好ましくは5mmに等しい
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の型(10)。
【請求項8】
前記溝(23)は、350μmと1000μmとの間に含まれる長さ(L1)と、80μmと450μmとの間に含まれる幅(L2)と、5μmと25μmとの間に含まれる一定の高さ(H1)と、を備え、前記溝(23)の数は、2と340との間に含まれる
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の型(10)。
【請求項9】
前記溝(23)は、前記凸面(18)の前記外側ゾーン(20)全体にそれぞれ均一に分布しており、特に、前記型(10)の中心軸(X)から放射状に延びる複数の列によって画定される規則的な幾何学的パターンに従って分布している
ことを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の型(10)。
【請求項10】
前記溝(23)は、1つの平行六面体部分、又は2つの別個の平行六面体部分、又は2つの別個の円形部分の形状である
ことを特徴とする請求項5~9のいずれか1項に記載の型(10)。
【請求項11】
前記型は、前記凹面(13)の前記外側ゾーン(20’)に対応して、前記レンズ(100)の前面に形成される少なくとも1つの凹部要素(103)と一致する形状及びサイズを有し、前記レリーフ(101)の機能要素の2つの別個の部分(101a、101b)への分離ゾーンに対応して配置される少なくとも1つの突出要素(25)を備える
ことを特徴とする請求項5~10のいずれか1項に記載の型(10)。
【請求項12】
前記型(10)は、前記雄要素(11)又は前記雌要素(12)のいずれかの周囲に挿入され、前記雄要素(11)又は前記雌要素(12)のうちの他方の内壁(34、111)の少なくとも一部と干渉するように構成される管状の支持要素(40)を備える
ことを特徴とする請求項5~11のいずれか1項に記載の型(10)。
【請求項13】
前記支持要素(40)は、円錐台形状の外側面(40c)を有し、
前記円錐台形状は、前記外側面(40c)が干渉するように構成された前記内壁(34、111)に向かって収束する
ことを特徴とする請求項12に記載の型(10)。
【請求項14】
前記支持要素(40)が干渉するように構成されている前記内壁(34、111)は、前記支持要素(40)の前記外面(40c)と結合するように傾斜部分(34a)を有する
ことを特徴とする請求項13に記載の型(10)。
【請求項15】
前記支持要素(40)は、ポリプロピレンで作られている
ことを特徴とする請求項12、13、又は14に記載の型(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで説明される実施形態は、機能要素を備えたレンズ用の型(mold)を製造する方法、及びこの方法によって製造されたモノマー又はポリマー材料の対応する型に関する。本発明の成形型(forming mold)成形技術によりコンタクトレンズを製造するために使用するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、適切な形状の型内でレンズを成形することによってレンズを製造することはよく知られている。
【0003】
型を製造するステップには、通常、非常に費用と労力がかかるエンジニアリング及び開発ステップが必要である。
【0004】
コンタクトレンズは、その材料に応じて実質的にソフトレンズとハードレンズに分けられることも知られている。
【0005】
コンタクトレンズは形状に基づいて分類でき、これによりレンズの様々な機能が得られることも知られている。例えば、レンズは、両方の表面が固定曲率を持っている場合は、球面にすることができ、一方又は両方の表面が異なる曲率中心を持っている場合は、非球面又は球面-非球面(spherical-aspherical)にすることができ、2つの主要なメリディアン(main meridians)の曲率半径が異なる場合、トーリックにすることができ、又は、その他の場合がある。
【0006】
成形によるソフトコンタクトレンズの製造では、専門用語で「雄」(male)と「雌」(female)と呼ばれる2つの部分で形成された型を使用する。液体材料をキャビティに入れて重合させ、型から取り外すことができる完全なレンズを形成する。この成形技術は対象物の再現性が高く、限られた厚さでも滑らかな表面を得ることができ、高含水率及び中含水率のレンズを製造することもできる。
【0007】
既知の型は一般に使い捨てで、経済的で、寸法レベルで安定しており、とりわけ、その製造プロセスは再現可能であり、型の良好な寸法精度を得ることができる。
【0008】
しかしながら、既知の方法は、非常に複雑な形状又は特定の形状を有するレンズを得ることができる型を作成することを提供していない。
【0009】
特に、視覚障害を補うだけでなく、他の機能をレンズに持たせる機能要素を一体化したレンズが急速に普及しつつある。
【0010】
この目的を達成するために、これらのレンズの機能要素は、例えばセンサー、データ送信部材などの電気/電子コンポーネントを備えることができる。実際、血糖値、心拍数、pHなどの生物学的パラメータの継続的なモニタリング、及び薬剤の継続的投与又は制御された間隔による病状の継続的治療の可能性への関心が高まっている。これは、涙液層の分析や眼表面との接触によっても達成でき、また、特定の薬剤は眼経路を介して投与できるためでもある。
【0011】
欧州特許出願公開第2458427号明細書には、レンズを製造するための型を製造する方法が記載されており、この型は雄要素と雌要素とを備える。雄要素及び雌要素の両方は、レンズ上に周期的なパターン、例えば同心円状の溝又は直線を形成するなどの溝を形成するために、幾つかの所定のゾーンでレーザーによって加工することができる。これらの周期的パターンは、生物学的パラメーターを継続的に監視するための電気/電子コンポーネントを収容するのには適していない。更に、記載された型では、雄要素の凸部と雌要素の対応する凹部は単一の曲率半径を有する。
【0012】
従って、従来技術よりもクリーンな、成形型及び対応する再利用可能な型を製造する方法を完成させる必要があり、これは、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服することができ、非常に複雑な形状や特定の形状のレンズの型を作成でき、機能要素を収容するのにも適している。
【0013】
本発明の1つの目的は、機能要素を収容できるような形状でコンタクトレンズを作製するための再利用可能な型の構築を可能にする方法を完成させることである。
【0014】
本発明の1つの目的は、例えば数十マイクロメートル程度の非常に小さなサイズであっても、レンズ上に構造又は製造の詳細を作成できるようにすることである。
【0015】
本発明の別の目的は、非常に正確で再現性の高い方法を完成させることである。
【0016】
更に、別の目的は、モノマー又はポリマー材料の型の製造を、レンズの異なる形状及びサイズに迅速且つ簡単に適合させることを可能にすることである。
【0017】
別の目的は、再利用可能な型を迅速且つ効率的に製造する方法を完成させることである。
【0018】
出願人は、従来技術の欠点を克服し、これら及び他の目的及び利点を得るために、本発明を作り、テストし、具体化した。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、独立請求項に記載され、特徴付けられる。従属請求項は、本発明の他の特徴又は主要な発明のアイデアの変形例を説明する。
【0020】
上記の目的に従って、また、上記に開示した技術的問題を新規且つ独創的な方法で解決し、従来技術と比較してかなりの利点を達成するために、本発明による機能要素を備えたコンタクトレンズを形成するための型を製造する方法は、雄要素と雌要素とを製造することを提供する。
【0021】
ここで説明される幾つかの実施形態は、成形技術を使用してコンタクトレンズを製造するためのモノマー又はポリマー材料で作られた型にも関する。型は、レンズを形成する予定の液体状態のモノマー又はポリマー材料を収容するのに適したキャビティを画定する、それぞれ凸面及び凹面を有する雄要素及び雌要素を備える。
【0022】
特に、当該型は、磨耗により交換が必要になるまで、数百回の成形サイクルでも再利用するのに適している。
【0023】
凸面と凹面には、曲率半径が異なる少なくとも2つの同心ゾーンがあり、1つは内側、もう1つは外側である。内側ゾーンは実質的に円形の形状であることが有利であり、外側ゾーンは実質的に環状の形状であることが有利である。
【0024】
より大きな直径を有する凸面の外側ゾーンは、レンズの表面上に形成されるレリーフの機能要素と形状及びサイズが一致する複数の溝を含む。これらの要素は、生理学的パラメータを監視するのに適した機能要素を少なくとも部分的に収容するように、又は例えば経時的に薬物の制御された放出による投与(controlled release administration)を作動させるように構成されることが好ましい。
【0025】
従って、有利なことに、特に、例えば数十マイクロメートル程度の非常に小さいサイズを有する機能要素を統合するだけではなく、レンズ上に構造又は製造の詳細を作成することが可能である。
【0026】
複雑な形状や特殊な形状であっても、機能要素を収容できる形状のコンタクトレンズを製造することも可能である。
【0027】
型の溝は、生理学的パラメータを監視したり、例えば経時的に薬物の制御放出投与を作動させたりするのに適した機能要素を収容することができる。有利には、溝は平行六面体又は円形の形状とすることができる。溝は、対応する機能要素に対応してレンズの一定の柔軟性を維持するために、2つの別個の部分に分割することができる。
【0028】
幾つかの実施形態によれば、型は、雌要素の凹面の外側ゾーンに対応して、レンズの前面に形成される少なくとも1つの凹部要素と形状及びサイズが一致する少なくとも1つの突出要素を備える。
【0029】
有利には、このようにして、レンズの前面、すなわち眼球上に置かれないレンズの表面上に少なくとも1つの凹部要素を製造することが可能である。この凹部要素は、レリーフの機能要素の2つの異なる部分を分離するのに適しており、レンズの柔軟性が向上し、眼の表面によりよく適合することができる。
【0030】
型の雄要素と雌要素は、金属材料で作られた成形マトリックスを使用して成形することによって、又は高精度の数値制御旋盤を使用して得ることができる。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、型は、また、雄要素又は雌要素のいずれかの周囲に挿入され、他の要素つまり雄要素又は雌要素のいずれかの他方の要素の内壁の少なくとも一部と干渉するように構成される管状支持要素を提供する。
【0032】
有利には、支持要素は円錐台形の外側面を有する。より有利には、円錐台形の外側面は、支持要素が干渉するように構成された内壁を有する要素に面する収束面を有する。更により有利には、この内壁は、好ましくは干渉又は同形状結合によって支持要素の外面と結合するように、少なくとも1つの傾斜部分を有する。
【0033】
好ましくは、支持要素は、型を作製する材料よりも大きな変形能を有するプラスチック材料で作製される。より好ましくは、支持要素はポリプロピレンで作られる。型は、PEEK、テフロン(登録商標)、又はRADELポリフェニルスルホンで作ることができる。
【0034】
従って、雄要素及び雌要素を製造する方法は、迅速且つ効率的であることが有利である。
【0035】
本発明によれば、この方法は、雄要素上に複数の溝を形成するためのレーザー加工を提供し、これは、上述のレリーフの機能要素を得るために必要である。1つの例示的な実施形態によれば、溝は、レンズの表面に形成されるレリーフの機能要素と一致する形状及びサイズ、又は相補的な形状及びサイズ、を有することができる。
【0036】
レーザー加工では、材料の加熱と変形を軽減できるフェムト秒タイプ(femtosecond laser)のレーザーを使用することが好ましく、これにより方法が非常に正確で再現性が高くなる。
【0037】
実際、レーザー加工により、雄要素の表面、特に凸面、又はそのような表面の一部に均一に分布した多数の溝を生成することができる。更に、得られる溝のサイズは、例えば1ミクロン程度に縮小される。
【0038】
好ましくは、溝は雄要素の表面に対して横方向に、より好ましくは垂直に形成される。
【0039】
また、レーザー加工では、材料を除去する機械加工で通常発生する微細な塵や粒子の発生を回避することもできる。
【0040】
実際、粉塵は人間の健康だけでなく、プラント自体、特に精密機構にとっても有害である。例えば、長期的には粉塵の堆積によって損傷する可能性があり、一般に生産プロセスの計測パラメータのばらつきが大きくなる。
【0041】
有利なことに、この処理により、複雑な幾何学的形状を有するレンズを製造するための型を得ることができる。
【0042】
例えば、レーザー加工により、数マイクロメートルのサイズのレリーフに機能要素を一体化したレンズを製造できる型を得ることができる。
【0043】
この型により、例えば球面レンズ及び/又はトーリックレンズ及び/又は多焦点レンズなど、任意の既知のタイプのレンズを製造することもできる。
【0044】
レーザー加工では、レーザー加工装置の制御システムの設定を変更することで、ポリマー材料の型の製造を様々な形状やサイズに迅速かつ簡単に適応させることができる。
【0045】
この方法はまた、レーザー加工によって、凸面の内側ゾーン、すなわちより小さい直径を有するゾーンの少なくとも一部に複数の凹部要素を取得することを提供することもできる。凹部要素は、レンズの表面に作成されるレリーフの構成要素と形状を合わせることができる。
【0046】
従って、この型を使用して、レリーフの構成要素に対応してのみ眼球の表面に接触することによって、涙液が目の表面とレンズの内面の間で最適に移動できるようにするレンズを製造できる。このようにして、涙液はより容易にレンズの機能要素に到達し、眼の構造に栄養を与えて水分を与える機能を果たすことができる。
【0047】
機能要素に含まれる薬物は目の、中心部と周辺部の両方の全てのゾーンに容易に到達し、例えばセンサーが含まれている場合、涙液に含まれるあらゆる物質は、同様に、生理学的パラメータを検出できる機能要素に到達することができる。
【0048】
本発明のこれら及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる幾つかの実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本明細書で説明される一実施形態による本発明による型の三次元図である。
【
図3a】
図3aは、本明細書で説明される実施形態による、本発明による型の溝の上面図である。
【
図3b】
図3bは、本明細書で説明される実施形態による、本発明による型の溝の上面図である。
【
図3c】
図3cは、本明細書で説明される実施形態による、本発明による型の溝の上面図である。
【
図4】
図4は、本明細書で説明する別の実施形態による、本発明による型の断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の実施形態による機能要素を有するコンタクトレンズを形成するためのポリマー型を用いて得られたコンタクトレンズの背面図である。
【
図6】
図6は、
図5のコンタクトレンズの、
図5の輪郭VI-VIの断面に従って切り取った断面図である。
【
図6a】
図6aは、
図6のコンタクトレンズの断面の一部の拡大図である。
【
図8a】
図8aは、型の別の変形例の正面図であり、
図8aは断面図である。
【
図8b】
図8bは、型の別の変形例の正面図であり、
図8bは分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書において使用される表現及び用語、並びに同様に説明される添付図面の図は、本発明をより良く図示し説明するという唯一の機能を有し、それらの機能は、本発明自体の非限定的な例を提供することであり、これは、なぜなら、保護範囲は特許請求の範囲によって定義されるためであるということを明確にしなければならない。
【0051】
理解を容易にするために、図面において同一の共通要素を識別するために可能な限り同じ参照番号が使用されている。一実施形態の要素及び特徴は、更に明確にすることなく、他の実施形態に都合よく組み合わせることができる、又は他の実施形態に組み込むことができることが理解される。
【0052】
添付の図面を参照すると、成形技術を使用してコンタクトレンズ100を製造するためのモノマー及び/又はポリマー材料の型10が記載されている。
【0053】
幾つかの実施形態によれば、公知の方法で、型10は雄要素11と雌要素12を備える。
【0054】
雄要素11と雌要素12とは、中心軸Xを中心として軸対称に延びている。
【0055】
雌要素12は、液体状態のモノマー及び/又はポリマー材料を収容し、雄要素11と協働して材料をレンズ100に望ましい形状に形成するのに適している。
【0056】
幾つかの実施形態によれば、雌要素12は凹面13を有し、また、外壁14及び位置決め手段15を備えることもできる。
【0057】
凹面13は、液体状態のモノマー材料及び/又はポリマー材料を収容するのに適しており、また、前面の曲率つまりレンズ100の眼球上に置かれない表面を画定する、レンズ100の前面を形成することに適している。
【0058】
凹面13は、レンズの形状に相関した形状を有し、例えば球面、非球面、トーリック形状などを有する。
【0059】
位置決め手段15により、雄要素11を雌要素12に対して正確に位置決めすることができ、それらは、雄要素11上に存在する1つ又は複数の位置決め要素16の形状と少なくとも部分的に一致する形状を有することができ、要素11、12間に同じ形状の結合を有利に作り出すことができる。位置決め手段15は、凹面13と外壁14との間の空間によって画定されるレストエッジ(rest edge)を備えることができる。位置決め要素16は、レストエッジに当接することができる。
【0060】
代替実施形態では、位置決め手段15は、例えば、1つ又は複数の位置決め要素16に閉じるのに適した連結要素を備えることができ、これは、例えば、雄要素11の全周に沿って円周方向に延びる単一の環状突起と適合することができる。位置決め要素16は、位置決め手段15に当接するのに適した当接エッジ(abutment edge)17を備えることができる。
【0061】
位置決め要素16は直線状又は凹状、及び/又は垂直状又は傾斜状であり得ることが理解される。当接エッジ17は、水平であっても傾斜していてもよい。
【0062】
雄要素11は、後部の曲率つまり眼球上に載置されるように意図されているレンズ100の表面を画定する、レンズ100の後面を画定するのに適した凸面18を有する。ここで示した例では、凸面18は凹面13と形状が一致している。例えば、凸面18と凹面13は全く同じ形状であってもよく、これにより、展開全体を通じて(throughout its entire development)均一な厚さのレンズが得られる。
【0063】
幾つかの変形例では、形成されるレンズが異なる厚さのゾーンを提供する場合、凸面18と凹面13は、少なくとも部分的に異なるプロファイルを有することができる。
【0064】
図1及び
図2に示される実施形態では、雄要素11の凸面18は、内側ゾーン19及び外側ゾーン20を備える。
【0065】
図4に示す実施形態では、内側ゾーン19及び外側ゾーン20に加えて、雄要素11の凸面18は、内側ゾーン19と外側ゾーン20との間の移行部の中間ゾーン21を備える。
【0066】
内側及び外側ゾーン19、20のそれぞれ、並びに、(設けられている場合には)中間ゾーン21は、中心軸Xの周りに対称的に延びる。内側ゾーン19は円形の周囲を有し、ゾーン20及び21は円形のクラウンとして形成されている。
【0067】
内側ゾーン19は、瞳孔及び虹彩に対応して配置されるのに適したレンズ100の表面を形成することを目的としている。
【0068】
非限定的な例として、内側ゾーン19の直径D1は11.50mmと12.50mmとの間に含まれ、好ましくは11.80mmにほぼ等しく、一方、内側ゾーン19の曲率半径R1は、6.50mmと9.50mmとの間に含まれる。
【0069】
外側ゾーン20は、強膜に対応して配置されるのに適したレンズ100の表面を形成することが意図されている。
【0070】
例えば、外側ゾーン20の最大直径D2は、13.50mmと16.00mmとの間に含まれ、好ましくは15.00mmにほぼ等しい。
【0071】
中間ゾーン21が存在する実施形態では、これは、直径D1と一致する下側の直径と、添付図面ではDiで示されており外側ゾーン20の最小直径と一致する上側の直径と、の間で広がる。非限定的な例として、上側の直径Di(すなわち外側ゾーン20の最小直径)は、11.50mmと13.50mmとの間に含まれ、好ましくは約12.80mmに等しい。
【0072】
尚、下側の直径(D1と一致)と上側の直径Diが一致する場合、
図1及び2の実施形態が得られ、その実施形態においては、中間ゾーン21が存在せず、内側ゾーン19と外側ゾーン20は、円周線(circumferential line)によってのみ分離されている。
【0073】
外側ゾーン20は、内側ゾーン19の曲率半径R1よりも大きい曲率半径R2を有する。
【0074】
レンズ100の離心率は0.40である一実施形態においては、曲率半径R2とR1との差は1mmと6mmとの間であり、好ましくは4mmに等しい。
【0075】
中間ゾーン21が存在する場合、外側ゾーン20の曲率半径R2よりも大きい曲率半径Riを有し、従って、それは内側ゾーン19の曲率半径R1よりも大きい。レンズ100の離心率が0.40である一実施形態では、曲率半径R1とR1との間の差は2と8mmとの間に含まれ、好ましくは6mmに等しい。
【0076】
同様に、
図1及び2に示される実施形態では、雌要素12の凹面13は、内側ゾーン19’と外側ゾーン20’とを備える。
図4に示す実施形態では、内側ゾーン19’と外側ゾーン20’に加えて、雌要素12の凹面13は、内側ゾーン19’と外側ゾーン20’との間の移行部の中間ゾーン21’を含む。
【0077】
凸面18は、複数の溝23を備え、これは、分かりやすくするために誇張して拡大して示されている
図1に概略的に見ることができ、また、
図2a及び4aの拡大図にも見ることができる。
【0078】
溝23は、凸面18の外側ゾーン20に配置されており、それらは、レンズ100の後面にレリーフ101の機能要素を形成することを意図している。
【0079】
溝23は、凸面18上に均一に分布していても、そうでなくてもよい。溝23は、例えば、中心軸Xから出るそれぞれの半径方向の準線に沿ってそれぞれが配置されるように、例えば、外側ゾーン20全体に均一に分布している。
【0080】
溝23は、好ましくはマイクロメートルサイズの止まり穴又は同様の空洞として構成することができる。
【0081】
溝23は、成形レンズ100の表面に、溝23と形状的に一致するレリーフ101の機能要素を形成するのに適しており、これは、分かりやすくするために誇張して拡大して示されている
図6に概略的に見ることができ、また、
図5及び5aにも見ることができる。レリーフ101の機能要素は、様々な様態で構成することができ、例えば、特に、グルコース、pH、又はその他の生物学的に興味深いパラメータなど、涙液中の決定的な生理学的パラメータの存在を検出するように構成されたセンサーとして構成することができ、又は、提供される徐放性治療(slow-release treatment)を実行するために目に徐々に放出される、例えば、人工涙液、薬液、点眼薬などの対象の液体を含むリザーバーとして構成することができる。
【0082】
溝23は、2~340本存在し、溝23の数は、溝23のサイズ及びレンズ100のサイズと相関している。
図3a、3b、及び3cを参照すると、溝23の可能な異なる実施形態が示されている。
【0083】
第1実施形態(
図3a)では、溝23は平行六面体の形状を有し、これは、例として、700μmと2000μmとの間に含まれ、好ましくは約1400μmに等しい長さL1、160μmと900μmとの間、好ましくは約500μmに等しい幅L2、5μmと25μmとの間に含まれ、好ましくは約15μmに等しい高さH1(
図2a及び4a)を有する。
【0084】
第2実施形態(
図3b)では、溝23は2つの別個の部分23a及び23bに分割されており、両方とも平行六面体の形状である。この実施形態では、これらの2つの部分は、例えばセンサー要素によって動作可能に接続されているため、レリーフ101内の単一の機能要素を形成するように構成されている。この実施形態では、各部分23a又は23bは、例として、350μmと1000μmとの間に含まれ、好ましくは約700μmに等しい長さL1、80μmと450μmとの間、好ましくは約250μmに等しい幅L2、5μmから25μmとの間に含まれ、例えば約15μmに等しい高さH1(
図2a及び4a)を有する。
【0085】
溝23を2つの別個の部分に分割することにより、レリーフ101の機能要素に対応してレンズ100の一定の柔軟性を維持することが可能になり、これにより、外側ゾーン20が眼球によりよく付着することが可能になる。
【0086】
第3の実施形態(
図3c)では、溝23は常に2つの部分に分割されており、これらの部分は別個であるが、例えば、
図3bに示すように、センサ要素32によって互いに動作可能に接続されているが、各部分は円形である。
【0087】
上述の3つの実施形態では、溝23はレンズ上に突起を形成するように構成されており、これは、機能要素を少なくとも部分的に収容でき、機能要素は、例えば、センサー要素又は液体物質の制御放出のための要素であってもよい。特に、機能素子を1つの直方体状の突起に安定的に挿入したり、2つの別個の直方体状又は円状の突起に部分的に挿入したりすることができる。
【0088】
尚、図示されない他の変形例では、各溝23は、少なくとも1つの要素によって、又は少なくとも2つの部分によって形成されてよく、そのような要素/部分は、要件に応じて任意の形状を有することができる。当業者は、本発明の教示に基づいて、全体としてのレンズ100のサイズ及び外側ゾーン20のサイズも考慮して、各要素/部分のサイズを適切に決定することが完全に可能である。
【0089】
幾つかの実施形態によれば、
図2bの拡大図でよくわかるように、型は、雌要素12の凹面13の外側ゾーン20’に対応して、少なくとも1つの突出要素25を備える。
【0090】
突出要素25は、凹面13上に連続したリングを形成する単一の要素であることが好ましい。幾つかの実施形態によれば、図面には示されていないが、突出要素25は複数の扇形として構成され、それぞれは凹面13上の円弧として一致した。
【0091】
一例として、突出要素25は、60μmと300μmとの間、例えば約150μmである、半径方向に測定された幅、及び、5μmと60μmとの間であり、例えば30μmである高さ、を有することができる。
【0092】
突出要素25は、
図5及び
図6aに示すように、レンズ100の表面上に形成される少なくとも1つの凹部要素103と適合する形状及びサイズを有することができる。特に、少なくとも1つの凹部要素103は、レンズ10の前面に作製される。
【0093】
好ましくは、突出要素25がリングを形成する単一の要素である場合、溝23は、2つの別個の部分23a及び23bに分割された、
図3bを参照して上述した実施形態の形態をとる。
【0094】
この場合、レンズ100は、
図5及び
図6aに示されるように、凹部要素103に対応して互いに分離されている、2つの別個の部分101a及び101bに分割されたレリーフ101の機能要素を有する。
【0095】
凸面18はまた、分かりやすくするために誇張して拡大して示されている
図1に概略的に示されるように、また、
図2a及び4aの拡大図に示されるように、その表面上に複数の凹部要素24を有する。
【0096】
凹部要素24は、凸面18上に均一に分布していても、そうでなくてもよい。好ましい実施形態では、凹部要素24は内側ゾーン19全体にわたって均一に分布しており、例えば、中心軸Xから放射状に広がる複数の列によって画定される幾何学模様に従って分布している。
【0097】
凹部要素24は、好ましくはマイクロメートルサイズの止まり穴又は同様のキャビティとして構成することができ、それらは、分かりやすくするために誇張して拡大して示されている
図6に概略的に示されるように、また、
図5及び
図5aに示されるように、成形レンズ100の表面に、凹部要素24と形状的に適合する構造要素102を形成するのに適している。
【0098】
ここで説明する例では、要素102はマイクロメートルサイズを有し、コンタクトレンズを角膜表面からわずかに浮かせた状態に保つために使用中に目の方向を向くように、レンズ100の内面から突出する「ピラー」又は「マイクロピラー」とも呼ばれるマイクロ突起として形成される。
【0099】
例えば、角膜表面に対してレンズを持ち上げると、その全体、又は少なくともその一部に関して、有利なことに、目の酸素供給が向上し、涙液を循環させるためのマイクロチャネルの形成を可能にする、及び/又は、特に、厚さが薄いレンズ100の場合に、目の上のレンズの動きが良くなる。
【0100】
凹部要素24は、1μm~500μm、好ましくは20μm~300μmの横サイズ(すなわち、円筒形の場合は直径、又は最大全体サイズ)を有することができる。
【0101】
凹部要素24は、一定の高さ又は可変の高さを有することができる。更に、異なる高さの凹部要素24を型の異なるゾーンに設けることができる。
【0102】
例えば、凹部要素24の最大高さH2は、5μmと25μmとの間に含まれることができ、好ましくは10μmに等しい。これらの高さにより、同じ高さの微小突起を得ることができ、これは、通常は8.5μmから9.5μmとの間に含まれる涙液層の厚さに実質的に相当する。
【0103】
2つの隣接する凹部要素24のそれぞれの中心間の距離は、30μmと500μmとの間、好ましくは60μmと140μmとの間、より好ましくは100μmに等しいことができる。この距離は、凹部要素24の最大高さH2の1倍から4倍の間で構成することができ、好ましくは高さH2の1倍から3倍の間で構成することができる。
【0104】
一実施形態では、凹部要素24は、レンズ100の表面から最も遠い部分に、面取りされた形状又は丸みを帯びた形状を有する対応する要素をレンズ内に生成するために、面取りされた形状を有することができる。別の実施形態では、凹部要素24はテーパ形状を有することができる。
【0105】
凸面18に対して80°と100°との間、好ましくは85°と95°との間、更により好ましくは実質的に90°の角度を形成するような様態で、凹部要素24の側壁は凸面18に関して配向されている。
【0106】
有利なことに、凹部要素24の数は、300と65,000との間、好ましくは2,000と20,000との間、より好ましくは5,000と8,000との間で変化することができ、これにより、レンズ100の下の目の部分の良好な酸素化(good oxygenation)を保証するような数で、対応する数の構成要素102を備えたレンズ100を製造することが可能になる。
【0107】
凹部要素24は、円筒形、円錐台形又は放物面形、対称又は非対称の形状を有することが好ましい。特に、凹部要素24は、基部と底部を有することが好ましい。基部と底部の直径は、5~255μmの範囲に含まれる。有利には、凹部要素24の底部は曲率、好ましくは凹面を有し、その曲率半径は30μmと5000μmとの間に含まれる。このようにして、構成要素102は、目の表面上に載置するのに特に適した凸面を有する上部を備えて形成される。
【0108】
他の実施形態では、雄要素11は外側ゾーン20に溝23のみを有し得るが、内側ゾーン19には凹部要素24を有さなくてもよいことが理解される。
【0109】
図7a及び7bは、型10の変形例を示し、これは、雄要素11と雌要素12に加えて、環状支持要素(annular support element)40も備える。それは、好ましくは互いに平行な前エッジ40a及び後エッジ40bを提供する。前エッジ40aは、使用中、雌要素12の方向に向けられる。
【0110】
支持要素40は、好ましくは、プラスチック材料、例えばポリプロピレンで作られる。しかしながら、型10の材料よりも弾性変形可能である限り、プラスチック又はその他の他の材料を提供することもできる。このようにして、支持要素40は、雄要素11と雌要素12との間の結合をより良くするために、雄要素11と雌要素12との間のパッキンとして何らかの形で機能する。このような支持要素40の別の利点は、結合及び結合解除操作が繰り返される間、雄要素11及び雌要素12を長期にわたって保護することである。実際、これらの操作中、支持要素40と、より硬くてより抵抗力のある材料で作られた雌要素12との間に摩擦が作用する。これにより、型10自体ではなく、支持要素が磨耗する。
【0111】
支持要素40は、雄要素11の周囲、特にその後部11aの周囲に挿入されるように構成されている。後部11aとは、形成されるレンズ100の内面にその形状を与える凸面が設けられていない雄要素11の部分を意味する。
【0112】
上述したように、支持要素40は環状であり、締り嵌めによる結合を形成するために、雄要素11の後部11aの外径と適切に等しい内径D3を有する。
【0113】
有利なことに、特に、それが隆起壁として形成されている場合、位置決め要素16はまた、当接エッジ17の反対側に第2当接エッジ27を提供し、これは雌要素12の位置決め手段15と相互作用する。第2当接エッジ27は、雄本体11の後部11aに対して有利に突出する。このようにして、支持要素40は、その前エッジ40aが第2当接エッジ27に当接するまで、後部11aの周りに挿入される(
図7a)。
【0114】
支持要素40は、雌要素12の内側で雄要素11の支持体として機能するように構成されている。特に、支持要素40は、雌要素12の内壁の少なくとも一部と干渉するように構成されており、これにより、雄要素11の位置が安定する。
【0115】
この目的のために、支持要素40が円錐台形状の外側面40cを有するようにすることが好ましく、これにより、前エッジ40aに対応する直径D4は、後エッジ40bに対応する直径D5よりも小さくなる。円錐部分の収束は、支持要素が干渉する内壁34を有する雌要素12に向けて配向されていると推測できる。
【0116】
この場合、外壁14の反対側の雌要素12の内面34は、(つまり、その開口部に対応して、凹面13の反対側において)後部34aを有し、これも支持要素40の外壁40cと結合するような様態で傾いている。
【0117】
明らかに、直径D4及びD5が互いに等しいこと、又は支持要素40の外壁40cの形状が円筒形であることを提供することが可能である。
【0118】
図7aには、雌要素12の内側に部分的に挿入された支持要素40が示されているが、雌要素12の内側に完全に挿入することも可能である。より好ましくは、支持要素40の高さは、第2当接エッジ27と雌要素12の後エッジとの間の距離に等しく、これにより、支持要素40が雌要素12の内側に挿入されると、その後エッジ40bは雌要素12の後エッジ12aと実質的に整列している。尚、雌要素12の後エッジ12aには、グリップ要素及び/又は強化部分26として機能することができる横方向フランジが設けられている。
【0119】
示されている例では、雄要素11から長手方向に延びるハンドルとして形成されたハンドグリップ36が設けられている。このようにして、雄要素11の後部の周囲に支持要素40を容易に挿入することが可能になる。しかしながら、ハンドグリップ36はオプションである。従って、この変形例では、支持要素40は、雄要素11の周囲及び雌要素12の内側に挿入される。
【0120】
図8a及び8bは、代わりに別の変形例を示し、これは支持要素40も提供するが、雄要素11の周囲に挿入する代わりに、支持要素40は雌要素12の周囲に挿入され、雌要素12の本体には、凹面13を越えて延びる外側側壁120が備えられている。換言すれば、凹面13は、基部122から延びる円筒体121内に形成されている。外側側壁120は、円筒体121の外側の側壁である。
【0121】
外側側壁120は、支持要素40の内径D3に等しい直径を有する実質的に円形の断面を有する。
【0122】
尚、この変形例では、支持要素40の前エッジ40aに対応する支持要素40の直径D4は、前エッジ40aの反対側の後エッジ40bに対応する直径D5よりも大きく(
図8a及び8b)、前エッジ40aは、使用中、常に雌要素12の方向を向いている。従って、この変形例では、円錐部分の収束は雄要素11に向かう方向を向いている。
【0123】
支持要素40によって支持されるために、雄要素11には周囲壁110が設けられており、これは、凸面18の周りに延びる、つまり、支持要素40の周りに挿入できるような様態で使用中に雌要素12の方向に向けられる(
図8a)。
【0124】
周囲壁110は、凸面18に向けて配向され支持要素40と接触するように意図されている内面111を有し、これは、上向きに、つまり雌要素12とは反対方向に、収束する円錐台形状となっている。このようにして、周囲壁110の内面111は支持要素40(
図8a)の外形によく適合し、最適化された支持を保証する。
【0125】
周囲壁110は、当接エッジ17に対して所定の距離、特に後エッジ40bに対応する支持要素40の厚さに実質的に等しい距離で雄要素11の本体から延びる。このようにして、内面111は支持要素の外面40cと接触し、同形状のカップリングを作成し、そして同時に当接エッジ17は、凹面13の周囲に位置し外壁120に対して実質的に垂直に配向される雌要素12のエッジ123と接触する。従って、この変形例では、支持要素40は雌要素12の周囲及び雄要素11の内側に挿入される。
【0126】
ここで説明される幾つかの実施形態は、コンタクトレンズ100を形成するための再利用可能な型10を製造する方法にも関する。この方法は、雄要素11の凸面18の外側ゾーン20に溝23を形成することを提供する。溝23は、レンズ100の表面に形成されるレリーフ101の機能要素と嵌合する、つまり、実質的に同じ形状とサイズを持っている。
【0127】
一実施形態によれば、この方法は、型10の雌要素12の凹面13の外側ゾーン20’に対応して、少なくとも1つの突出要素25を作製することを提供する。この方法は、突出要素25が、レンズ100の前面に作製される少なくとも1つの凹部要素103(
図6a)と一致する形状及びサイズを有することを提供することができる。この方法はまた、雄要素11の凸面18の内側ゾーン19上に凹部要素24を作製することを提供する。凹部要素24は、レンズ100の表面上に作製される構成要素102と嵌合する、すなわち、それらと実質的に同じ形状及びサイズを有する。
【0128】
要素11及び12は協働して、レンズ100を形成することを目的とした液体状態のモノマー及び/又はポリマー材料を収容するのに適したキャビティを画定する。
【0129】
好ましくは、この方法は、レーザー加工、特にフェムト秒レーザー(femtosecond laser)によって溝23及び凹部要素24を作製することを提供できる。
【0130】
可能な実施形態によれば、この方法は、得られる型の形状及びサイズと相補的な形状及びサイズを有する金属材料の成形マトリックス内で成形技術によって雄要素11及び雌要素12を得る方法を提供する。
【0131】
この場合、母材の少なくとも一方の内面、特に、雄要素11に特定の所望の形状を与える1つ以上の表面にレーザー加工を施すことが好ましく、例えば、溝23と凹部要素24を取得する。
【0132】
この目的のために、雄要素11の溝23と凹部要素24の両方を形成する多数の突起を形成マトリックスで作成することができる。これらの突起は、溝23及び凹部要素24に関してすでに示したものと同じ形状及びサイズを有し、同数存在することが有利である。
【0133】
同様に、突出要素25が設けられている場合には、それを形成する雌要素12の形成マトリックスに凹部を形成するために設けることもできる。あるいは、突出要素25は、精密機械加工、例えば旋削によって製造することもできる。
【0134】
幾つかの変形例によれば、この方法は、付加印刷技術により、又は、例えば旋削、フライス加工、又はそれらの組み合わせなどの精密な機械加工によって、ポリマー材料の型10の要素11及び12を取得することを提供する。
【0135】
雄要素11及び雌要素12を製造する技術に関係なく、雄要素11又はこの要素の形成マトリックスに直接レーザ加工を実行することが提供される。
【0136】
幾つかの実施形態によれば、この方法は、ポリマー材料の型10をレーザー、高温、及び摩耗に対して耐性のあるものにすることを提供し、ここで、レーザーに対して耐性のある材料とは、レーザーを使用して加工するのに適した材料を意味する。
【0137】
例えば、ポリマー材料は、PEEK、テフロン(登録商標)、又はRADELポリフェニルスルホンであってよい。PEEK及びテフロン(登録商標)は、非常に剛性が高く、磨耗しにくいため、特に好ましい。
【0138】
この方法は、材料が溝23及び凹部要素24を均一かつ完全に充填できるようにするのに適した、ポリマー又はモノマーの材料を型10内に適切な回数挿入することを提供する。
【0139】
特許請求の範囲によって定義される本発明の分野及び範囲から逸脱することなく、これまで説明した、コンタクトレンズ100用のポリマー材料の型10、型10の製造方法に対して、部品の変更及び/又は追加が行われてもよいことは明らかである。
【0140】
また、本発明を幾つかの特定の例を参照して説明してきたが、当業者であれば、他の多くの同等の形態の型10及び製造方法を確実に実現できるはずであり、これらは特許請求の範囲に記載されているような特徴を有しており、従って全ては特許請求の範囲によって定義される保護分野に含まれることは明らかである。
【0141】
以下の特許請求の範囲において、括弧内の参照の唯一の目的は、読みやすさを目的とするものであり、同じ特許請求の範囲によって定義される保護分野に関する制限要素として考慮されてはならない。
【国際調査報告】