(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-15
(54)【発明の名称】部分蒸留による石油試料の蒸留特性を決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/14 20060101AFI20240807BHJP
G01N 5/04 20060101ALI20240807BHJP
C10G 7/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G01N25/14 C
G01N5/04 A
C10G7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501838
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022073646
(87)【国際公開番号】W WO2023288224
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524014949
【氏名又は名称】ペトロリウム アナライザー カンパニー エル.ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルバンソー、ビャチェスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ピニョル、ステファン アンリ レオン
【テーマコード(参考)】
2G040
4H129
【Fターム(参考)】
2G040AB11
2G040BA06
2G040BA24
2G040CA02
2G040CA08
2G040CA10
2G040CA15
2G040CA16
2G040CA22
2G040DA03
2G040DA12
2G040EA02
2G040EC09
2G040HA02
2G040HA11
4H129AA02
4H129CA01
4H129DA02
4H129EA01
4H129NA45
(57)【要約】
装置が、命令を格納するメモリと、命令を実行して、試料の初期質量を決定し、少なくとも熱破壊温度まで試料を蒸留し、蒸留中の時点のセットにおいて、試料に関連する蒸気温度値、液体温度値、および蒸気圧値を記録し、試料の残留質量を決定するように構成された、プロセッサと、を含み得る。プロセッサは、蒸気圧値に基づいて圧力曲線を生成し、生成された圧力曲線の要約積分面を計算し、計算された要約積分面、試料の初期質量、および試料の残留質量に基づいて、蒸気温度値および液体温度値を蒸発した試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成するようにさらに構成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の初期質量を決定するステップと、
少なくとも熱破壊温度まで前記試料を蒸留するステップと、
前記蒸留中の複数の時点において、前記試料に関連する複数の蒸気温度値、複数の液体温度値、および複数の蒸気圧値を記録するステップと、
前記試料の残留質量を決定するステップと、
前記複数の蒸気圧値に基づいて圧力曲線を生成するステップと、
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算するステップと、
前記計算された要約積分面、前記試料の前記初期質量、および前記試料の前記残留質量に基づいて、前記複数の蒸気温度値および前記複数の液体温度値を、蒸発した前記試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算する前記ステップが、
前記試料の沸騰の最初の瞬間を決定するステップと、
前記試料の沸騰の最後の瞬間を決定するステップと、
前記沸騰の最初の瞬間から前記沸騰の最後の瞬間まで前記圧力曲線を生成するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定する前記ステップが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定する前記ステップが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧ノイズ値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定する前記ステップが、
時間に対する蒸気温度の一次導関数の第1の正の極値または時間に対する蒸気温度の二次導関数の第1の正の極値に関連する、前記複数の蒸気温度値のうちの、蒸気温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ、または
時間に対する液体温度の二次導関数の第1の負の極値に関連する、前記複数の液体温度値のうちの、液体温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ
の少なくとも一方を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
変動閾値より大きい温度変動を検出するステップと、
前記変動閾値よりも大きい前記温度変動を検出したことに基づいて、前記熱破壊温度に到達したと決定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸留曲線を生成する前記ステップが、
前記試料の前記初期質量に対する前記試料の前記初期質量と前記試料の前記残留質量との差の比を乗じて、前記複数の時点のうちの特定の時点について、前記生成された圧力曲線の前記計算された要約積分面と、前記特定の時点までの前記生成された圧力曲線の要約積分面との比を計算するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生成された蒸留曲線を外挿して完全蒸留曲線を生成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも熱破壊温度まで前記試料を蒸留する前記ステップが、
前記試料を少なくとも400℃まで加熱するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が原油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
命令を格納するメモリと、
プロセッサと、
を備える装置であって、
前記プロセッサは、前記命令を実行して、
試料の初期質量を決定し、
少なくとも熱破壊温度まで前記試料を蒸留し、
前記蒸留中の複数の時点において、前記試料に関連する複数の蒸気温度値、複数の液体温度値、および複数の蒸気圧値を記録し、
前記試料の残留質量を決定し、
前記複数の蒸気圧値に基づいて圧力曲線を生成し、
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算し、
前記計算された要約積分面、前記試料の前記初期質量、および前記試料の前記残留質量に基づいて、前記複数の蒸気温度値および前記複数の液体温度値を、蒸発した前記試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成する
ように構成される、
装置。
【請求項12】
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算するとき、前記プロセッサが、
前記試料の沸騰の最初の瞬間を決定し、
前記試料の沸騰の最後の瞬間を決定し、
前記沸騰の最初の瞬間から前記沸騰の最後の瞬間まで前記圧力曲線を生成する
ようにさらに構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定するとき、前記プロセッサが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別する
ようにさらに構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定するとき、前記プロセッサが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧ノイズ値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別する
ようにさらに構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定するとき、前記プロセッサが、少なくとも
時間に対する蒸気温度の一次導関数の第1の正の極値または時間に対する蒸気温度の二次導関数の第1の正の極値に関連する、前記複数の蒸気温度値のうちの、蒸気温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するか、または
時間に対する液体温度の二次導関数の第1の負の極値に関連する、前記複数の液体温度値のうちの、液体温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別する
ようにさらに構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記蒸留曲線を生成するとき、前記プロセッサが、
前記試料の前記初期質量に対する前記試料の前記初期質量と前記試料の前記残留質量との差の比を乗じて、前記複数の時点のうちの特定の時点について、前記生成された圧力曲線の前記計算された要約積分面と、前記特定の時点までの前記生成された圧力曲線の要約積分面との比を計算する
ようにさらに構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサが、
前記生成された蒸留曲線を外挿して完全蒸留曲線を生成する
ようにさらに構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記試料の前記初期質量および前記残留質量を決定するための質量センサを備える蒸留フラスコ
をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記蒸留フラスコが、
前記複数の蒸気温度値を取得するための蒸気温度センサと、
前記複数の液圧値を取得するための液体温度センサと、
前記複数の蒸気圧値を取得するための圧力センサと
をさらに含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
コントローラと、
蒸留装置と、
を備えるシステムであって、
前記コントローラは、
試料の初期質量を決定し、
少なくとも熱破壊温度まで前記試料を蒸留し、
前記蒸留中の複数の時点において、前記試料に関連する複数の蒸気温度値、複数の液体温度値、および複数の蒸気圧値を記録し、
前記試料の残留質量を決定し、
前記複数の蒸気圧値に基づいて圧力曲線を生成し、
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算し、
前記計算された要約積分面、前記試料の前記初期質量、および前記試料の前記残留質量に基づいて、前記複数の蒸気温度値および前記複数の液体温度値を、蒸発した前記試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成する
ように構成され、
前記蒸留装置は、
前記試料の前記初期質量および前記残留質量を決定するための質量センサと、
前記複数の蒸気温度値を取得するための蒸気温度センサと、
前記複数の液圧値を取得するための液体温度センサと、
前記複数の蒸気圧値を取得するための圧力センサと、
を備える、
システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
石油生成物は、燃焼機関における燃料源として使用される。異なるタイプの石油生成物は、異なる特徴を示す異なる成分を有する。したがって、異なる成分が石油生成物の性能に影響を及ぼし得る。蒸留プロセスを石油試料に対して実行して、試料の様々な特性を決定し得る。蒸留プロセスを実行し、蒸留プロセスの結果を特徴付けることは、様々な課題を提起し得る。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1A】本明細書に記載の実施態様による蒸留装置を示す図である。
【
図1B】本明細書に記載の別の実施態様による蒸留装置を示す図である。
【
図2】本明細書に記載の実施態様によるコントローラユニットの例示的な構成要素を示す図である。
【
図3】本明細書に記載の実施態様によるコントローラユニットの例示的な機能構成要素を示す図である。
【
図4】本明細書に記載の実施態様による蒸留曲線データベースの例示的な構成要素を示す図である。
【
図5】本明細書に記載の実施態様による蒸留を実行するためのプロセスのフローチャートである。
【
図6】本明細書に記載の実施態様による蒸留の結果を分析するためのプロセスのフローチャートである。
【
図7】本明細書に記載の実施態様による蒸留データの例示的なプロットを示す図である。
【
図8】本明細書に記載の実施態様による例示的な蒸留曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を識別する。
【0004】
蒸留器具は、石油試料の自動蒸留を実行するために使用され得る。石油試料の蒸留中に得られたデータを使用して、石油試料の1つまたは複数の特性を蒸留中の温度に関連付ける蒸留曲線を生成し得る。次いで、蒸留曲線を使用して、輸送および貯蔵の安全で信頼性の高いモードを選択し得、および/または石油試料に関連する製品のための精製プロセスを最適化し得る。
【0005】
石油試料を蒸留フラスコに入れ、初期沸点まで加熱してもよい。センサは、蒸気の温度および圧力ならびに液体の温度を監視し得る。試料の加熱は、試料が沸騰して蒸発するまで、または何らかの他の終点に達するまで継続し得る。そのような終点の1つは、試料の熱破壊であり得る。したがって、終了蒸留温度は、試料の熱破壊温度よりも高くてもよい。石油試料の熱破壊温度は、炭化水素または石油試料の他の成分が、酸化、解重合、鎖切断、側鎖脱離などの化学反応、および/または石油試料の成分組成を変化させる他のタイプの化学反応によって化学分解を受け始める温度に対応し得る。
【0006】
熱破壊温度より高い最終蒸留温度を有する重質石油試料の蒸留特性を分析する1つの方法は、重質石油試料を溶媒と混合し、混合物を蒸留することである。次いで、得られた蒸留曲線を純粋な溶媒の蒸留曲線と比較することによって、重質石油試料の蒸留曲線がデータから抽出され得る。しかしながら、そのような手順は、オペレータが実行するのが困難で時間がかかる。
【0007】
本明細書に記載の実施態様は、熱破壊温度よりも高い最終蒸留温度を有する石油試料の部分蒸留に関する。例えば、石油試料は、約400℃の熱破壊温度を有する原油または別の重質石油生成物を含んでもよい。さらに、蒸留中に収集された測定値を使用して、温度をその温度まで蒸留した試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成してもよい。試料の質量百分率を測定するために、試料の質量に関する情報を取得し、蒸留曲線を生成する際に使用する必要があり得る。
【0008】
本明細書に記載の実施態様は、蒸留中に石油試料の質量を決定するための質量センサを含む蒸留装置に関する。いくつかの実施態様では、質量センサは蒸留装置の内壁に取り付けられてもよい。他の実施態様では、質量センサは、例えば蒸留装置の外壁に取り付けられるなど、蒸留装置のエンクロージャの外部にあってもよい。
【0009】
本明細書に記載の実施態様はさらに、蒸留中の石油試料の初期質量および残留質量を決定し、初期質量および残留質量を使用して蒸留中の特定の時点における試料の質量百分率を決定する方法に関する。本方法は、試料の初期質量を決定するステップと、少なくとも熱破壊温度まで試料を蒸留するステップと、蒸留中の時点のセットにおいて、試料に関連する蒸気温度値のセット、液体温度値のセット、および蒸気圧値のセットを記録するステップと、試料の残留質量を決定するステップと、を含み得る。温度および圧力の値は、例えば、液体の密度および/または蒸気の密度などの試料の物理的特性を決定するために使用され得る。本方法は、蒸気圧値のセットに基づいて圧力曲線を生成するステップと、生成された圧力曲線の要約積分面を計算するステップと、計算された要約積分面、試料の初期質量、および試料の残留質量に基づいて、蒸気温度値のセットおよび液体温度値のセットを試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成するステップと、をさらに含んでもよい。
【0010】
正確な圧力曲線を生成するために、沸騰の最初の瞬間の決定が必要とされる場合がある。本明細書に記載の実施態様はさらに、石油試料の蒸留中の沸騰の最初の瞬間を決定すること、石油試料の沸騰の最後の瞬間を決定すること、および沸騰の最初の瞬間から沸騰の最後の瞬間までの圧力曲線を生成することに関する。いくつかの実施態様では、沸騰の最初の瞬間を決定するステップは、例えば、蒸気圧値がゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットの最高値よりも少なくとも閾値量だけ大きい時点を識別することによって、蒸気圧値がゼロ線に典型的な蒸気圧値よりも増加する蒸留中の時点を識別するステップを含んでもよい。
【0011】
他の実施態様では、沸騰の最初の瞬間を決定するステップは、例えば、蒸気圧ノイズ値がゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットの最高値よりも少なくとも閾値量だけ大きい時点を識別することによって、蒸気圧ノイズ値がゼロ線に典型的な蒸気圧値よりも増加する蒸留中の時点を識別するステップを含んでもよい。さらに他の実施態様では、沸騰の最初の瞬間を決定するステップは、時間に対する蒸気温度の一次導関数の第1の正の極値もしくは時間に対する蒸気温度の二次導関数の第1の正の極値に関連する時点を識別するステップ、または、時間に対する液体温度の二次導関数の第1の負の極値に関連する時点を識別するステップを含む。
【0012】
いくつかの実施態様では、沸騰の最後の瞬間を決定するステップは、変動閾値よりも大きい温度変動を検出するステップと、変動閾値よりも大きい温度変動を検出することに基づいて熱破壊に達したと決定するステップとを含んでもよい。
【0013】
蒸留曲線を生成するステップは、試料の初期質量に対する試料の初期質量と試料の残留質量との差の比を乗じて、各時点について、生成された圧力曲線の計算された要約積分面と、その時点までの生成された圧力曲線の要約積分面との比を計算するステップを含んでもよい。いくつかの実施態様では、蒸留曲線は、完全蒸留曲線を生成するために外挿法を使用して外挿されてもよい。
【0014】
図1Aは、本明細書に記載の実施態様による蒸留装置101を示す。蒸留装置101は、蒸留装置101の側壁に取り付けられた質量センサ125を有する実施態様を示す。
図1Aに示すように、蒸留装置101は、蒸留容器110と、支持体120と、質量センサ125と、加熱要素130と、凝縮器145と、蒸気温度センサ150と、液体温度センサ160と、圧力センサ170と、コントローラユニット180と、ファン185とを含み得る。
【0015】
蒸留容器110は、例えば液体石油試料などの試料112を受け入れるための球形を有するガラスフラスコを含み得る。蒸留容器は、側方出口管114を有する円筒形ネックと、出口管114の内側にあり、凝縮器145に取り付けるように構成された毛細管115と、蒸留容器110を密封するように構成されたキャップ116とを含み得る。いくつかの実施態様では、蒸留容器110は、蒸留によって分析される試料112を5から15ミリリットル(ml)受け入れるようなサイズであってもよい。他の実施態様では、蒸留容器110は、異なる体積の試料を受け入れるようなサイズであってもよい。
【0016】
支持体120は、蒸留容器110、質量センサ125、および加熱要素130の構造的支持体を含み得る。いくつかの実施態様では、質量センサ1125は、例えば、歪みゲージロードセル、圧電ロードセル、容量性ロードセル、および/または機械的圧縮を電気信号に変換する別のタイプのロードセルなどのロードセルを含んでもよい。他の実施態様では、質量センサ125は、例えばマイクロバランスなどの異なるタイプの質量センサを含んでもよい。加熱要素130は、試料112に制御可能な熱源を印加するための抵抗加熱要素(または、例えばガス源および火炎などの別のタイプの加熱要素)を含んでもよい。いくつかの実施態様では、質量センサ125は、試料112およびキャップ116、ならびに加熱要素130を有する蒸留容器110の質量を測定するように構成されてもよい。他の実施態様では、蒸留容器110は、加熱要素130とは別個に支持され、質量センサ125を介して支持体120(例えば、蒸留装置101の壁)に取り付けられてもよい。したがって、蒸留容器110の加熱は、蒸留装置101の内部密閉空間を加熱することによって実行されてもよく、質量センサ125は、測定に加熱要素130の質量を含まずに試料112を有する蒸留容器110の質量を測定してもよい。
【0017】
毛細管115は、蒸留中に蒸気を受け入れるために出口管114の内側に管(例えば、ステンレス鋼管など)を含んでもよい。毛細管115は、ガス流140による蒸留中に蒸留容器110内に過圧を生成することを可能にし得る。凝縮器145は、試料112からの蒸留蒸気を回収レセプタクル(
図1には示されていない)に凝縮するために、空気冷却、液体冷却、熱電冷却(例えば、ペルチェモジュールなどを使用する)、および/または蒸留中の別のタイプの冷却プロセスによって冷却された管を含み得る。
【0018】
蒸気温度センサ150は、例えば、熱電対、抵抗温度センサ、サーミスタ温度センサ、半導体温度センサ、および/または別のタイプの温度センサなどの不活性温度センサを含み得る。蒸気温度センサ150は、蒸留中の試料112の蒸気温度を測定するために、キャップ116の開口部を通して蒸留容器110のネックに挿入される。
【0019】
液体温度センサ160は、例えば、熱電対、抵抗温度センサ、サーミスタ温度センサ、半導体温度センサ、および/または別のタイプの温度センサなどの不活性温度センサを含み得る。液体温度センサ160は、蒸留容器110の球状部分の下部までキャップ116の開口部を通して蒸留容器110に挿入され、蒸留中に試料112の液体温度を測定するために試料112に浸漬されてもよい。
【0020】
圧力センサ170は、蒸留中に蒸留容器110内の蒸気圧を測定するための圧力センサを含み得る。圧力センサ170は、蒸留容器110内の蒸気の平衡圧力ではなく、出口管114を通る蒸気の通過に起因する蒸留中の蒸留容器110内の過圧を測定し得る。いくつかの実施態様では、圧力センサ170は、例えば、ピエゾ抵抗、圧電、および/または容量性歪みゲージを有するダイヤフラムなどの差圧センサを含み得る。他の実施態様では、圧力センサ170は、絶対圧力センサなどの別のタイプの圧力センサを含み得る。蒸留中、ガス流140は、圧力センサ170を高温蒸気から保護するために、蒸留中に蒸留容器110のネックに加えられる。ガス流140は、コントローラユニット180によって制御されるマイクロ圧縮機(
図1には示されていない)を介して供給されてもよく、周囲空気、不活性ガス、および/または別の種類のガスを含んでもよい。例えば、不活性ガスの使用は、蒸留容器110内の蒸気の酸化の減少に起因して、熱破壊が起こる前に可能な最大測定温度を上昇させてもよい。ガス流140は、蒸気の実際の圧力を決定するために考慮する必要がある蒸留中の一定の圧力を提供する。蒸留容器110内の圧力は、蒸気が毛細管115の狭窄開口部を通過することに起因する周囲圧力に対する過圧に対応し得る。したがって、測定された蒸気圧は、特定の温度における蒸発試料112の平衡蒸気圧だけでなく、加熱の強度および毛細管115を通る制限された流れにも依存し得る。したがって、蒸気の実際の圧力は、測定された圧力からゼロ線圧力値を減算することによって決定される。
【0021】
コントローラユニット180は、蒸留容器110の動作を制御し、蒸留中に測定値を収集し、収集した測定値に基づいて蒸留曲線を生成するプロセッサ、マイクロコントローラ、および/またはコンピュータ装置を含み得る。以下、
図2および
図3を参照して、コントローラユニット180の構成例について説明する。ファン185は、試料112の蒸留が完了した後に蒸留容器110を冷却するために蒸留の最後に操作されてもよい。
【0022】
図1Bは、本明細書に記載の別の実施態様による蒸留装置102を示す。蒸留装置102は、質量センサ125が蒸留装置122のエンクロージャ122の外部にある実施態様を示す。例えば、質量センサ125は、エンクロージャ122の外壁に取り付けられてもよい。
【0023】
図1Bに示すように、蒸留装置102は、蒸留容器110と、エンクロージャ122と、質量センサ125と、加熱要素130と、凝縮器145と、蒸気温度センサ150と、液体温度センサ160と、圧力センサ170と、コントローラユニット180と、ファン185とを含み得る。エンクロージャ122は、加熱要素130および支持体を囲んでもよく、および/または蒸留容器110を部分的に囲んでもよい。加熱要素130、凝縮器145、蒸気温度センサ150、液体温度センサ160、圧力センサ170、コントローラユニット180、および/またはファン185は、
図1Aを参照して上述したように機能し得る。
【0024】
質量センサ125は、試料112の質量が測定されている間に蒸留容器110を支持するための容器支持体126を含み得る。試料112の質量は、初期質量を測定するために蒸留前に試料112を有する蒸留容器110を容器支持体126に配置し、蒸留を実行するために加熱要素130に配置し、次いで蒸留後に容器支持体126に戻して蒸留後の試料112の残留質量を測定することによって測定され得る。
【0025】
図1Aの蒸留装置101は、蒸留容器110が蒸留のための位置にある間に試料112の質量の測定を可能にし得、試料112の初期質量および残留質量を測定するために蒸留容器110の移動を必要としない場合があるが、蒸留装置101は、より複雑な構造を必要とする場合がある。
図1Bの蒸留装置102は、試料112の質量を測定するために蒸留の前および/または後に蒸留容器110の移動を必要とし得るが、蒸留装置102のより容易な構築を可能にし得る。
図1Aおよび
図1Bは、蒸留装置101および102の例示的な構成要素を示しており、他の実施態様では、蒸留装置101および/または102は、
図1Aおよび
図1Bに示すよりも少ない構成要素、異なる構成要素、異なる配置の構成要素、または追加の構成要素を含んでもよい。追加的または代替的に、蒸留装置101および/または102の1つまたは複数の構成要素は、蒸留装置101および/または102の1つまたは複数の他の構成要素によって実行されるものとして説明される機能を実行してもよい。
【0026】
図2は、本明細書に記載の実施態様によるコントローラユニット180の例示的な構成要素を示す図である。
図2に示すように、コントローラユニット180は、バス210と、プロセッサ220と、メモリ230と、入力装置240と、出力装置250と、通信インターフェース260とを含み得る。
【0027】
バス210は、装置200の構成要素間の通信を可能にする経路を含み得る。プロセッサ220は、命令を解釈して実行する任意のタイプのシングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、マイクロプロセッサ、ラッチベースのプロセッサ、および/または処理ロジック(またはプロセッサ、マイクロプロセッサ、および/または処理ロジックのファミリ)を含み得る。他の実施形態では、プロセッサ220は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または別のタイプの集積回路もしくは処理ロジックを含んでもよい。
【0028】
メモリ230は、プロセッサ220による実行のための情報および/または命令を格納し得る任意のタイプの動的記憶装置、および/またはプロセッサ220による使用のための情報を格納し得る任意のタイプの不揮発性記憶装置を含み得る。例えば、メモリ230は、ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくは別のタイプの動的記憶装置、読み出し専用メモリ(ROM)装置もしくは別のタイプの静的記憶装置、連想メモリ(CAM)、磁気および/もしくは光記録メモリ装置とその対応するドライブ(例えば、ハードディスクドライブ、光学ドライブなど)、ならびに/またはフラッシュメモリなどの取り外し可能な形態のメモリを含んでもよい。
【0029】
入力装置240は、オペレータが装置200に情報を入力することを可能にし得る。入力装置240は、例えば、キーボード、マウス、ペン、マイクロフォン、リモコン、音声キャプチャ装置、画像および/もしくは映像キャプチャ装置、タッチスクリーンディスプレイ、ならびに/または別のタイプの入力装置を含み得る。いくつかの実施形態では、装置200は、リモートで管理されてもよく、入力装置240を含まなくてもよい。言い換えれば、装置200は、「ヘッドレス」であってもよく、例えば、キーボードを含まなくてもよい。
【0030】
出力装置250は、装置200のオペレータに情報を出力し得る。出力装置250は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、および/または別のタイプの出力装置を含み得る。例えば、装置200は、オペレータにコンテンツを表示するための液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイなどを含み得るディスプレイを含み得る。いくつかの実施形態では、装置200は、リモートで管理されてもよく、出力装置250を含まなくてもよい。言い換えれば、装置200は、「ヘッドレス」であってもよく、例えば、ディスプレイを含まなくてもよい。
【0031】
通信インターフェース260は、装置200が無線通信(例えば、無線周波数、赤外線、および/または視覚光学など)、有線通信(例えば、導線、ツイストペアケーブル、同軸ケーブル、伝送線路、光ファイバケーブル、および/または導波管など)、または無線通信と有線通信との組み合わせを介して他の装置および/またはシステムと通信することを可能にするトランシーバを含み得る。通信インターフェース260は、ベースバンド信号を無線周波数(RF)信号に変換する送信機および/またはRF信号をベースバンド信号に変換する受信機を含み得る。通信インターフェース260は、RF信号を送受信するためのアンテナに結合され得る。
【0032】
通信インターフェース260は、入力および/または出力ポート、入力および/または出力システム、ならびに/あるいは他の装置へのデータの伝送を容易にする他の入力および出力構成要素を含む論理構成要素を含み得る。例えば、通信インターフェース260は、有線通信のためのネットワークインターフェースカード(例えば、イーサネットカード)および/または無線通信のための無線ネットワークインターフェース(例えば、WiFi)カードを含み得る。通信インターフェース260はまた、ケーブルを介した通信のためのユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、Bluetooth(商標)無線インターフェース、無線周波数識別(RFID)インターフェース、近距離無線通信(NFC)無線インターフェース、および/またはある形態から別の形態にデータを変換する任意の他のタイプのインターフェースを含み得る。
【0033】
以下で詳細に説明するように、装置200は、蒸留プロセスを実行し、蒸留プロセスの結果に基づいて蒸留曲線を生成することに関する特定の動作を実行し得る。装置200は、メモリ230などのコンピュータ可読媒体に含まれるソフトウェア命令を実行するプロセッサ220に応答してこれらの動作を実行し得る。コンピュータ可読媒体は、非一時的メモリ装置として定義されてもよい。メモリ装置は、単一の物理メモリ装置内に実装されてもよく、または複数の物理メモリ装置にわたって分散されてもよい。ソフトウェア命令は、別のコンピュータ可読媒体または別の装置からメモリ230に読み込まれてもよい。メモリ230に含まれるソフトウェア命令は、プロセッサ220に本明細書に記載のプロセスを実行させ得る。あるいは、本明細書で説明するプロセスを実施するために、ハードウェア回路が、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用されてもよい。したがって、本明細書で説明される実施態様は、ハードウェア回路およびソフトウェアの特定の組み合わせに限定されない。
【0034】
図2は、コントローラユニット180の例示的な構成要素を示しているが、他の実施態様では、コントローラユニット180は、
図2に示すよりも少ない構成要素、異なる構成要素、追加の構成要素、または異なる配置の構成要素を含んでもよい。追加的または代替的に、コントローラユニット180の1つまたは複数の構成要素は、コントローラユニット180の1つまたは複数の他の構成要素によって実行されるものとして説明された1つまたは複数のタスクを実行してもよい。
【0035】
図3は、コントローラユニット180の例示的な機能構成要素を示す。コントローラユニット180の機能構成要素は、例えば、メモリ230からの命令を実行するプロセッサ220を介して実装されてもよい。
図3に示すように、コントローラユニット180は、蒸留マネージャ310、加熱要素コントローラ320、データ収集器330、蒸留曲線生成器340、蒸留曲線データベース(DB)350、およびユーザインターフェース360を含み得る。
【0036】
蒸留マネージャ310は、蒸留装置101または102の蒸留プロセスを管理し得る。例えば、蒸留マネージャ310は、加熱要素コントローラ320を介してユーザインターフェース360を介して受信したユーザからの要求に基づいて蒸留を開始し得る。加熱要素コントローラ320は、加熱要素130を制御し得る。蒸留マネージャ310は、データ収集器330を使用して蒸留データを取得し、蒸留曲線生成器340を使用して蒸留曲線を生成し、生成された蒸留曲線を、ユーザインターフェース360を介してユーザに提供し得る。
【0037】
データ収集器330は、蒸留中のデータの収集を管理し得る。データ収集器330は、質量センサコントローラ332、蒸気温度センサコントローラ334、液体温度センサコントローラ336、および圧力センサコントローラ338を含み得る。質量センサコントローラ332は、質量センサ125を制御し得る。蒸気温度センサコントローラ334は、蒸気温度センサ150を制御し得る。液体温度センサコントローラ336は、液体温度センサ160を制御し得る。圧力センサコントローラ338は、圧力センサ170を制御し得る。
【0038】
蒸留曲線生成器340は、データ収集器330から取得して蒸留曲線DB350に格納したデータに基づいて蒸留曲線を生成し得る。以下、
図4を参照して、蒸留曲線DB350に格納され得る情報の一例について説明する。蒸留曲線生成器340は、蒸留データから沸騰の最初の瞬間および沸騰の最後の瞬間を決定し得、蒸留データに含まれる圧力値のセットを使用して、沸騰の最初の瞬間から沸騰の最後の瞬間までの圧力曲線を生成し得る。次に、蒸留曲線生成器340は、生成された圧力曲線の全要約積分面を計算し、試料の初期質量に対する試料の初期質量と試料の残留質量との差の比を乗じて、各時点について、全要約積分面に対するその時点までの要約積分面の比を計算し、その時点まで蒸留された試料の質量百分率を生成し得る。次いで、蒸留曲線生成器340は、温度を質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成し得る。いくつかの実施態様では、蒸留曲線生成器340は、外挿法を使用して蒸留曲線を外挿して完全蒸留曲線を生成し得る。
【0039】
ユーザインターフェース360は、ユーザが蒸留装置101または102を制御すること、および/または生成された蒸留曲線、完了したまたは進行中の蒸留プロセスに関するメッセージ、および/または他のタイプのメッセージなど、コントローラユニット180によって生成された情報を受信することを可能にするユーザインターフェースを含み得る。ユーザインターフェース360は、入力装置240および/または出力装置250と対話するように構成され得る。
【0040】
図3は、コントローラユニット180の例示的な構成要素を示しているが、他の実施態様では、コントローラユニット180は、
図3に示すよりも少ない構成要素、異なる構成要素、追加の構成要素、または異なる配置の構成要素を含んでもよい。追加的または代替的に、コントローラユニット180の1つまたは複数の構成要素は、コントローラユニット180の1つまたは複数の他の構成要素によって実行されるものとして説明された1つまたは複数のタスクを実行してもよい。
【0041】
図4は、蒸留曲線DB350の例示的な構成要素を示す。
図4に示すように、蒸留曲線DB350は、1つまたは複数の蒸留記録400を含み得る。各蒸留記録400は、蒸留装置101または102を使用して実行される特定の蒸留に関する情報を格納し得る。蒸留記録400は、試料識別(ID)フィールド410、初期質量フィールド420、残留質量フィールド430、および蒸留データテーブル440を含み得る。
【0042】
試料IDフィールド410は、蒸留に関連するIDを格納し得る。初期質量フィールド420は、蒸留試料(例えば、試料112)に関連する初期質量を格納し得る。残留質量フィールド430は、蒸留試料に関連する残留質量を格納し得る。蒸留データテーブル440は、試料の蒸留に関連する蒸留データを格納し得る。蒸留データテーブル440は、時点エントリ440のセットを含み得る。各時点エントリ440は、蒸留中の特定の時点に関する情報を格納し得る。
【0043】
例えば、時点エントリ440は、時間フィールド442、蒸気温度フィールド444、液体温度フィールド446、測定圧力フィールド448、実際の圧力フィールド450、密度フィールド452、要約面フィールド454、および質量百分率フィールド456を含み得る。時間フィールド442は、特定の時点を識別する情報を格納し得る。蒸気温度フィールド444は、特定の時点に関連する蒸気温度値を格納し得る。液体温度フィールド446は、特定の時点に関連する液体温度値を格納し得る。測定圧力フィールド448は、特定の時点に関連する測定蒸気圧値を格納し得る。測定蒸気圧値は、蒸気が出口管114を通過することによる蒸留中の蒸留容器110内の過圧に対応し得る。実際の圧力フィールド450は、特定の時点に関連し、特定の時点に関連する測定された圧力フィールドとガス流140を有する蒸留容器110内の周囲圧力との間の差をとることによって計算された実際の蒸気圧力フィールドを格納し得る。
【0044】
密度フィールド452は、特定の時点に関連する計算された蒸気密度値を含み得る。要約面フィールド454は、特定の時点について計算された要約積分面値を格納し得る。質量百分率フィールド456は、特定の時点について計算された質量百分率値を格納し得る。
【0045】
図4は蒸留曲線DB350の例示的な構成要素を示しているが、他の実施態様では、蒸留曲線DB350は、
図4に示すよりも少ない構成要素、異なる構成要素、追加の構成要素、または異なる配置の構成要素を含んでもよい。
【0046】
図5は、本明細書に記載の実施態様による蒸留を実行するためのプロセス500のフローチャートである。いくつかの実施態様では、
図5のプロセスは、蒸留装置101もしくは102によって、および/または蒸留装置101もしくは102を使用して実行され得る。他の実施態様では、
図5のプロセスの一部またはすべては、蒸留装置101および/または102とは別個の別の装置または装置のグループによって、またはそれらを使用して実行されてもよい。
【0047】
図5に示すように、プロセス500は、試料の初期質量を決定するステップ(ブロック510)を含み得る。例えば、コントローラユニット180は、試料112が蒸留容器110に配置された後、質量センサ125を使用して試料112の初期質量を記録し得る。プロセス500は、試料の蒸留を開始するステップ(ブロック520)と、蒸留中の時点のセットの各々において、蒸気温度値、液体温度値、および蒸気圧値を記録するステップ(ブロック530)と、少なくとも熱破壊温度まで試料を蒸留するステップ(ブロック540)と、をさらに含み得る。例えば、コントローラユニット180は、ガス流140を開始し、次いで、加熱要素130を使用して蒸留容器110の加熱を開始し得る。コントローラユニット180は、蒸気温度センサ150、液体温度センサ160、および圧力センサ170をそれぞれ使用して、蒸気温度値、液体温度値、および蒸気圧値を取得し得る。
【0048】
熱破壊温度に達するまで蒸留を継続してもよい。いくつかの実施態様では、熱破壊は、オペレータによる目視検査によって決定されてもよい。例えば、オペレータは、蒸留されている蒸気の色の変化、試料112で観察された変化などについて蒸留容器110を観察し得る。他の実施態様では、熱破壊は、温度の変動に基づいてコントローラユニット180によって自動的に検出され得る。例えば、熱破壊温度に達すると、蒸気温度および/または液体温度は上昇を停止し、変動し始める可能性がある。コントローラユニット180は、変動閾値よりも大きい蒸気温度および/または液体温度の変動を検出し、蒸留容器110を加熱することを停止することによって蒸留を停止するように構成されてもよい。コントローラユニット180は、蒸留の最後に蒸留容器110を冷却するためにファン185を作動させてもよい。
【0049】
プロセス500は、試料の残留質量を測定するステップ(ブロック550)をさらに含み得る。例えば、コントローラユニット180は、蒸留が停止した後、質量センサ125を使用して試料112の残留質量を記録してもよい。さらに、プロセス500は、初期質量、残留質量、ならびに蒸気温度値、液体温度値、および蒸気圧値の記録されたセットに基づいて蒸留曲線を生成するステップ(ブロック560)を含み得る。蒸留曲線を生成する例示的なプロセスを、
図6を参照して以下に説明する。
【0050】
図6は、本明細書に記載の実施態様による蒸留の結果を分析するためのプロセスのフローチャートである。いくつかの実施態様では、
図6のプロセスは、蒸留装置101もしくは102によって、および/または蒸留装置101もしくは102を使用して実行され得る。他の実施態様では、
図6のプロセスの一部またはすべては、蒸留装置101または102とは別個の別の装置または装置のグループによって、またはそれらを使用して実行されてもよい。
【0051】
図6に示すように、プロセス600は、沸騰の最初の瞬間を決定するステップ(ブロック610)と、沸騰の最後の瞬間を決定するステップ(ブロック620)と、沸騰の最初の瞬間から沸騰の最後の瞬間までの圧力曲線を生成するステップ(ブロック630)とを含み得る。いくつかの実施態様では、沸騰の最初の瞬間を決定するステップは、例えば、蒸気圧値がゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットの最高値よりも少なくとも閾値量だけ大きい時点を識別することによって、蒸気圧値がゼロ線に典型的な蒸気圧値よりも増加する蒸留中の時点を識別するステップを含んでもよい。データ内のゼロ線は、例えば、ゼロ勾配線の特定の範囲内の勾配に関連するデータ点を識別することによって、および/または別の技術を使用することによって確立され得る。
【0052】
他の実施態様では、沸騰の最初の瞬間を決定するステップは、例えば、蒸気圧ノイズ値がゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットの最高値よりも少なくとも閾値量だけ大きい時点を識別することによって、蒸気圧ノイズ値がゼロ線に典型的な蒸気圧値よりも増加する蒸留中の時点を識別するステップを含んでもよい。さらに他の実施態様では、沸騰の最初の瞬間を決定するステップは、蒸気温度の急激な上昇に関連する時点を識別するステップを含んでもよい。蒸気温度の急激な上昇は、時間tに対する蒸気温度T
蒸気の一次導関数の第1の正の極値
【数1】
を識別することに基づいて、時間に対する蒸気温度T
蒸気の二次導関数の第1の正の極値
【数2】
を識別することに基づいて、および/または、時間に対するT蒸気、時間に対する液体温度T
液体の二次導関数の第1の負の極値
【数3】
によって特徴付けられる、液体の温度上昇速度の減速を識別することに基づいて、識別することであってもよい。
【0053】
いくつかの実施態様では、沸騰の最後の瞬間を決定するステップは、変動閾値よりも大きい温度変動を検出するステップと、変動閾値よりも大きい温度変動を検出することに基づいて熱破壊に達したと決定するステップとを含んでもよい。
【0054】
プロセス600は、生成された圧力曲線の合計要約積分面を計算するステップ(ブロック640)と、初期質量に対する初期質量と残留質量との差の比を乗じて、各時点について、生成された圧力曲線の合計要約積分面と時点までの要約積分面との比を計算するステップ(ブロック650)とをさらに含み得る。例えば、コントローラユニット180は、以下のように定義される圧力曲線下の総要約積分面SS
mを計算し得る。
【数4】
ここで、P
蒸気は蒸気圧に対応し、tは時間に対応し、ρ
蒸気は蒸気密度に対応する。蒸気密度は、理想気体の法則を用いて決定され得、例えば、
総要約積分面が決定されると、時点iにおける蒸発した試料の質量百分率は、以下のように計算され得る。
【数5】
ここで、m
初期は初期質量に対応し、m
残留は残留質量に対応する。
【0055】
プロセス600は、計算された比に基づいて、温度を蒸発した試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成するステップ(ブロック660)をさらに含み得る。例えば、コントローラユニット180は、各時点iについて、時点iにおける計算された質量%を、時点iにおける蒸気温度および液体温度に関連付けることによって蒸留曲線を生成してもよい。
【0056】
図7は、本明細書に記載の実施態様による蒸留データの例示的なプロット700を示す。
図7に示すように、プロット700は、熱破壊温度よりも高い最終蒸留温度を有する原油の試料について得られた蒸気温度値(T
蒸気)のプロット、液体温度値(T
液体)のプロット、および蒸気圧値(P
蒸気)のプロットを含む。プロット700は、蒸気圧値がゼロ点線を超えて少なくとも閾値量だけ上昇し始める沸騰の最初の瞬間710を示す。さらに、プロット700は、蒸気温度値および液体温度値が熱破壊の開始後に低下し始める沸騰の最後の瞬間720を示す。
【0057】
図8は、本明細書に記載の実施態様による例示的な蒸留曲線800を示す。
図8に示すように、蒸留曲線は、特定の温度で蒸発した試料の質量百分率を表す。蒸留曲線800は、蒸気温度値(T
蒸気)に基づくプロット、ならびに液体温度値(T
液体)に基づくプロットを示す。
図8に示すように、熱破壊温度に達すると、試料の約60%が沸騰して蒸発するか、または蒸発し、部分蒸留曲線が生成された。いくつかの実施態様では、部分蒸留曲線は、例えば、決定された沸騰の最初の瞬間および線形回帰を使用して蒸留曲線から決定されたパラメータを使用するRiazi分布モデル外挿などの外挿技術を使用して完全蒸留曲線を生成するために外挿されてもよい。使用され得る別の外挿法は、石油生成物の分留のDimudu、Zharkova、およびAbayevモデルであり、これは、沸騰の最初の瞬間、沸騰の終点の瞬間、および試料中の成分の分布を特徴付ける係数のセットを使用する。部分蒸留曲線および/または完全蒸留曲線は、精製プロセスを最適化するために、および/または安全な輸送モードおよび/または貯蔵モードなどを選択するために使用され得る。
【0058】
前述の明細書では、添付の図面を参照して様々な好ましい実施形態を説明した。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載される本発明のより広い範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができ、追加の実施形態を実施することができることは明らかであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。
【0059】
例えば、一連のブロックについて
図5および
図6を参照して説明したが、ブロックの順序は、他の実施態様では変更されてもよい。さらに、非依存ブロックおよび/または信号は、並列に実行されてもよい。
【0060】
上述したようなシステムおよび/または方法は、図に示された実施態様においてソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアの多くの異なる形態で実装され得ることは明らかであろう。これらのシステムおよび方法を実施するために使用される実際のソフトウェアコードまたは専用の制御ハードウェアは、実施形態を限定するものではない。したがって、システムおよび方法の動作および挙動は、特定のソフトウェアコードを参照することなく説明されており、ソフトウェアおよび制御ハードウェアは、本明細書の説明に基づいてシステムおよび方法を実装するように設計されることができることが理解される。
【0061】
さらに、上述した特定の部分は、1つまたは複数の機能を実行する構成要素として実装されてもよい。本明細書で使用される構成要素は、プロセッサ、ASIC、またはFPGAなどのハードウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせ(例えば、ソフトウェアを実行するプロセッサ)を含んでもよい。
【0062】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」/「備える(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定すると解釈されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことを強調するべきである。
【0063】
本明細書で使用される「ロジック(logic)」という用語は、1つまたは複数のメモリ装置に格納された命令を実行するように構成された1つまたは複数のプロセッサの組み合わせを指すことができ、ハードワイヤード回路を指すことができ、および/またはそれらの組み合わせを指すことができる。さらに、ロジックは、単一の装置に含まれてもよく、または複数の、場合によってはリモートの装置にわたって分散されてもよい。
【0064】
本発明を説明および定義する目的で、「実質的に(substantially)」という用語は、本明細書では、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用されることにさらに留意されたい。用語「実質的に(substantially)」はまた、本明細書において、定量的表現が、問題となっている主題の基本機能の変化をもたらすことなく、記載された基準から変化し得る程度を表すために利用される。
【0065】
本出願で使用される要素、動作、または命令は、明示的に記載されていない限り、実施形態にとって重要または必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で使用される場合、冠詞「a」は、1つまたは複数の項目を含むことを意図している。さらに、「基づいて」という語句は、特に明記しない限り、「少なくとも部分的に、基づいて」を意味することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の初期質量を決定するステップと、
少なくとも熱破壊温度まで前記試料を蒸留するステップと、
前記蒸留中の複数の時点において、前記試料に関連する複数の蒸気温度値、複数の液体温度値、および複数の蒸気圧値を記録するステップと、
前記試料の残留質量を決定するステップと、
前記複数の蒸気圧値に基づいて圧力曲線を生成するステップと、
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算するステップと、
前記計算された要約積分面、前記試料の前記初期質量、および前記試料の前記残留質量に基づいて、前記複数の蒸気温度値および前記複数の液体温度値を、蒸発した前記試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算する前記ステップが、
前記試料の沸騰の最初の瞬間を決定するステップと、
前記試料の沸騰の最後の瞬間を決定するステップと、
前記沸騰の最初の瞬間から前記沸騰の最後の瞬間まで前記圧力曲線を生成するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定する前記ステップが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定する前記ステップが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧ノイズ値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定する前記ステップが、
時間に対する蒸気温度の一次導関数の第1の正の極値または時間に対する蒸気温度の二次導関数の第1の正の極値に関連する、前記複数の蒸気温度値のうちの、蒸気温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ、または
時間に対する液体温度の二次導関数の第1の負の極値に関連する、前記複数の液体温度値のうちの、液体温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するステップ
の少なくとも一方を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
変動閾値より大きい温度変動を検出するステップと、
前記変動閾値よりも大きい前記温度変動を検出したことに基づいて、前記熱破壊温度に到達したと決定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸留曲線を生成する前記ステップが、
前記試料の前記初期質量に対する前記試料の前記初期質量と前記試料の前記残留質量との差の比を乗じて、前記複数の時点のうちの特定の時点について、前記生成された圧力曲線の前記計算された要約積分面と、前記特定の時点までの前記生成された圧力曲線の要約積分面との比を計算するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生成された蒸留曲線を外挿して完全蒸留曲線を生成するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
命令を格納するメモリと、
プロセッサと、
を備える装置であって、
前記プロセッサは、前記命令を実行して、
試料の初期質量を決定し、
少なくとも熱破壊温度まで前記試料を蒸留し、
前記蒸留中の複数の時点において、前記試料に関連する複数の蒸気温度値、複数の液体温度値、および複数の蒸気圧値を記録し、
前記試料の残留質量を決定し、
前記複数の蒸気圧値に基づいて圧力曲線を生成し、
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算し、
前記計算された要約積分面、前記試料の前記初期質量、および前記試料の前記残留質量に基づいて、前記複数の蒸気温度値および前記複数の液体温度値を、蒸発した前記試料の質量百分率に関連付ける蒸留曲線を生成する
ように構成される、
装置。
【請求項10】
前記生成された圧力曲線の要約積分面を計算するとき、前記プロセッサが、
前記試料の沸騰の最初の瞬間を決定し、
前記試料の沸騰の最後の瞬間を決定し、
前記沸騰の最初の瞬間から前記沸騰の最後の瞬間まで前記圧力曲線を生成する
ようにさらに構成される、請求項
9に記載の装置。
【請求項11】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定するとき、前記プロセッサが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別する
ようにさらに構成される、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定するとき、前記プロセッサが、
ゼロ線値として指定された蒸気圧値のセットのうちの最高のものよりも少なくとも閾値量だけ大きい、前記複数の蒸気圧値のうちの、蒸気圧ノイズ値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別する
ようにさらに構成される、請求項
10に記載の装置。
【請求項13】
前記試料の前記沸騰の最初の瞬間を決定するとき、前記プロセッサが、少なくとも
時間に対する蒸気温度の一次導関数の第1の正の極値または時間に対する蒸気温度の二次導関数の第1の正の極値に関連する、前記複数の蒸気温度値のうちの、蒸気温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別するか、または
時間に対する液体温度の二次導関数の第1の負の極値に関連する、前記複数の液体温度値のうちの、液体温度値に関連する、前記複数の時点のうちの、時点を識別する
ようにさらに構成される、請求項
10に記載の装置。
【請求項14】
前記蒸留曲線を生成するとき、前記プロセッサが、
前記試料の前記初期質量に対する前記試料の前記初期質量と前記試料の前記残留質量との差の比を乗じて、前記複数の時点のうちの特定の時点について、前記生成された圧力曲線の前記計算された要約積分面と、前記特定の時点までの前記生成された圧力曲線の要約積分面との比を計算する
ようにさらに構成される、請求項
9に記載の装置。
【請求項15】
蒸留フラスコをさらに備え、
前記蒸留フラスコが、
前記試料の前記初期質量および前記残留質量を決定するための質量センサと、
前記複数の蒸気温度値を取得するための蒸気温度センサと、
前記複数の液圧値を取得するための液体温度センサと、
前記複数の蒸気圧値を取得するための圧力センサと
を含む、請求項9に記載の装置。
【国際調査報告】