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特表2024-530077モリブデン合金ターゲット材及びその調製方法並びに応用
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  • 特表-モリブデン合金ターゲット材及びその調製方法並びに応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-15
(54)【発明の名称】モリブデン合金ターゲット材及びその調製方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240807BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C23C14/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505529
(86)(22)【出願日】2023-05-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CN2023095633
(87)【国際公開番号】W WO2023186188
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210567592.X
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038200
【氏名又は名称】安泰科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED TECHNOLOGY & MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.76 Xueyuan Nanlu, Haidian District, Beijing 100081 China
(71)【出願人】
【識別番号】524038211
【氏名又は名称】安泰天▲竜▼▲う▼▲む▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ATTL ADVANCED MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Baozhong Street, Saving Energy and Protecting Environment Industrial Zone, Baodi District, Tianjin 301899 China
(71)【出願人】
【識別番号】524038222
【氏名又は名称】安泰天▲竜▼(北京)▲う▼▲む▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ATTL (Beijing) ADVANCED MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】101-306, Floor 3, Building 1, Yard 11, Fenghui Middle Road, Haidian District, Beijing 100094 China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】王▲広▼▲達▼
(72)【発明者】
【氏名】熊▲寧▼
(72)【発明者】
【氏名】弓▲艶▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】牛曼
(72)【発明者】
【氏名】季▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲鳳▼▲権▼
(72)【発明者】
【氏名】常洋
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA02
4K029BA07
4K029BA11
4K029BA12
4K029BA16
4K029BA17
4K029CA05
4K029DC04
4K029DC07
(57)【要約】
本発明はレアメタル及び粉末冶金技術分野に関し、具体的にはモリブデン合金ターゲット材及びその調製方法並びに応用に関し、質量%で、前記ターゲット材は10~30%のNi、5~25%のTi、及び0.5~5%のReを含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上である。本発明はモリブデン合金に特定量のレニウムを添加した後、結晶粒寸法を微細化し、結晶粒をより均一にし、材料の脆性を低下させ、塑性を増加させ、変形加工能力を高めることができ、得られたブランクを圧延工程に適応でき、異なる形状または大きい寸法のターゲット材を得ることができ、ターゲット材として膜層を調製する際に膜層の厚さがより均一で、スパッタ速度がより速い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン合金ターゲット材であって、
質量%で、前記ターゲット材は10%~30%のNi、5%~25%のTi、及び0.5%~5%のReを含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上であり、
前記モリブデン合金ターゲット材の調製方法は、
前記ターゲット材の成分の質量割合で原料を秤量して混合し、混合粉末を得る原料調合工程(1)と、
工程(1)の混合粉末をシースに入れ、熱間等方加圧プレスを行い、シース付き熱間プレスブランクを得る熱間等方加圧プレス工程(2)と、
シース付き熱間プレスブランクを熱間圧延処理して圧延材を得る熱間圧延工程(3)と、
圧延材を焼鈍処理して、前記モリブデン合金ターゲット材を得る焼鈍工程(4)と、を含み、
工程(3)において、前記熱間圧延処理において、単パスの圧延変形量を15~25%とし、前記熱間圧延処理の総変形量を40~80%とし、前記熱間圧延処理において、各パスの圧延前に加熱保温を行い、保温温度を1000℃~1300℃とし、保温の時間を30分~120分とし、各パスの圧延前の加熱保温温度を、前のパスの圧延前の加熱保温温度に基づいて0℃よりも大きく50℃以下低くする、
ことを特徴とするモリブデン合金ターゲット材。
【請求項2】
質量%で、前記ターゲット材は、さらに、Tiの一部の代わりに、Cr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つである0.01~15%のMを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン合金ターゲット材。
【請求項3】
質量%で、前記ターゲット材は、15%~25%のNi、10%~20%のTi、1%~5%のRe、0.01%~5%のMを含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上であり、
及び/又は、工程(4)で調製されたモリブデン合金ターゲット材の結晶粒寸法は100μm以下であり、
及び/又は、工程(4)で調製されたモリブデン合金ターゲット材の結晶粒度は4~5級であり、
及び/または、工程(4)で調製された同一のモリブデン合金ターゲット材では、結晶粒度段差が1以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載のモリブデン合金ターゲット材。
【請求項4】
前記ターゲット材の成分の質量割合で原料を秤量して混合し、混合粉末を得る原料調合工程(1)と、
工程(1)の混合粉末をシースに入れ、熱間等方加圧プレスを行い、シース付き熱間プレスブランクを得る熱間等方加圧プレス工程(2)と、
シース付き熱間プレスブランクを熱間圧延処理して圧延材を得る熱間圧延工程(3)と、
圧延材を焼鈍処理して、前記モリブデン合金ターゲット材を得る焼鈍工程(4)と、を含み、
工程(3)において、前記熱間圧延処理において、単パスの圧延変形量を15~25%とし、前記熱間圧延処理の総変形量を40~80%とし、前記熱間圧延処理において、各パスの圧延前に加熱保温を行い、保温温度を1000℃~1300℃とし、保温の時間を30分~120分とし、各パスの圧延前の加熱保温温度を、前のパスの圧延前の加熱保温温度に基づいて0℃よりも大きく50℃以下低くする、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項5】
前記ターゲット材の成分Moの原料は純度が3N5以上のモリブデン粉であり、そのFSSS範囲は2.5μm~4μmであり、
前記ターゲット材の成分Niの原料は純度が3N以上のニッケル粉であり、そのFSSS範囲は2μm~3μmであり、
前記ターゲット材の成分Tiの原料は純度が3N以上のチタン粉であり、そのFSSS範囲は2μm~4μmであり、
前記ターゲット材の成分Reの原料はレニウム粉またはレニウム酸アンモニウムであり、前記レニウム粉の純度は4N以上であり、FSSSは2μm~4μmであり、前記レニウム酸アンモニウムの純度は4N以上であり、粒度は150~350メッシュである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項6】
ターゲット材の成分Reの原料がレニウム酸アンモニウムである場合、工程(1)において、原料を秤量した後、原料であるモリブデン粉の一部とレニウム酸アンモニウムとを先に混合し、その後還元処理することによりモリブデンレニウム合金粉末を得て、モリブデンレニウム合金粉末と残りのモリブデン粉及びその他の原料とを混合して混合粉末を得て、
前記還元処理は水素雰囲気中で行われ、前記還元処理の温度は500℃~900℃であり、前記還元処理の時間は2h~8hであり、
前記モリブデンレニウム合金粉末において、モリブデンレニウム質量割合は95:5~50:50であり、
工程(1)において、前記混合の方式はボールミルであり、前記ボールミルのBPRは1:(0.5~2)であり、前記ボールミル時間は10h~16hであり、前記ボールミルは不活性ガス中で行われ、前記ボールミルの回転速度は50~300r/minである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項7】
工程(2)において、前記熱間等方加圧プレスの保温温度は900℃~980℃であり、前記熱間等方加圧プレスの圧力は100MPa~170MPaであり、前記熱間等方加圧プレスの保圧時間は2h~5hであり、工程(2)において、熱間プレスブランクを調製した後、熱間プレスブランクのシースを局所的に修理する工程をさらに含み、工程(2)において、前記熱間プレスブランクのブランク厚さは40mm~60mmである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項8】
工程(3)において、前記熱間圧延処理のコギング温度は1000℃~1350℃であり、最終圧延温度は900℃~1100℃であり、前記熱間圧延は空気又はアルゴンガス雰囲気中で行われ、前記モリブデン合金ターゲット材は板型ターゲット材であり、前記圧延材の厚さは6mm~24mmである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項9】
工程(4)において、圧延材は焼鈍処理を行う前に、シースの除去と粗加工工程をさらに含み、工程(4)において、前記焼鈍処理はアルゴンガス雰囲気中で行われ、前記焼鈍の温度は900℃~1200℃であり、保温時間は60分~120分である、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項10】
前記モリブデン合金ターゲット材は、電子部品用積層配線膜の主導電層にスパッタにより付着する金属被覆層を形成し、前記電子部品は、ディスプレイ、半導体装置、又は薄膜太陽電池である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモリブデン合金ターゲット材、または、請求項4乃至9のいずれか1項に記載の調製方法で調製されたモリブデン合金ターゲット材の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレアメタル及び粉末冶金技術分野に関し、具体的にはモリブデン合金ターゲット材及びその調製方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、表示パネルなどの平面表示装置の技術的な更新のニーズは、配線膜の低抵抗化が必要である。同時に、平面ディスプレイの大画面、高精細度、高速応答化、およびフレキシブルパネルの大型化にも、比較的低い膜抵抗レベルが要求されている。
【0003】
薄膜トランジスタ(TFT)は、表示パネルの駆動素子として、主配線材料としてAlまたはCuを用いている。しかし、AlまたはCuがSiに直接接触すると、調製中に熱加工により熱拡散が形成され、薄膜トランジスタの性能が悪化する。Mo及びMo-Nb、Mo-Ti等のモリブデン合金は、耐食性、耐熱性に優れ、基板との密着性に優れている。しかし、調製過程で基板上に積層配線膜が形成された後、長期間大気中に放置されることがある。表示パネルに信号ケーブルを取り付ける際には、大気中で加熱する必要がある場合があり、また酸化物を用いた半導体薄膜において、性能向上と安定化を図るために、有酸素環境下で加熱処理する必要があるため、耐酸化性を高めるニーズが強い。また、携帯性の軽量・フレキシブル表示パネルに用いられる樹脂フィルムは、ガラス基板に比べて透湿性を有し、積層配線フィルムが高い耐湿性を有することが必要とする。しかし、純Mo、Mo-Tiなどの材料は耐湿性や耐酸化性が十分ではなく、酸化が発生することがあり、AlやCuの抵抗値が顕著に増加する問題がある。
【0004】
特許「CN201202930608」は、純モリブデンめっき膜の耐湿性と耐酸化性を改善するために、モリブデンに一定数のNiとTiを添加し、電子部品の安定調製と信頼性の向上に役立つ積層配線膜用モリブデン合金ターゲット材を開示している。
【0005】
特許「CN2014100909230」は、Niを添加することにより耐酸化性を高め、W元素を添加することにより耐湿性を高めることができる電子部品用モリブデン合金ターゲット材を開示しており、特許「CN20140568166」は、ターゲット材は半分以上のモリブデン元素を基体とし、NiとTa、Cr、Zrなどの元素を添加し、耐湿性、抗酸化性を改善し、低抵抗値を維持することができる金属薄膜スパッタモリブデン合金ターゲット材を開示している。
【0006】
特許「CN2017114460697」は、純モリブデンの耐湿性と耐酸化性を良好に改善し、低い膜抵抗を維持することができる、Ni、Nb、Tiなどの元素を含むモリブデン合金ターゲット材成分を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許は、モリブデン基体にNi、Ti又はNb等の元素を一定量添加することにより、モリブデンターゲット材スパッタ膜の耐湿性、耐酸化性を共に向上させ、低い抵抗値を保持する。しかし、ターゲット材の調製は主に熱間等方加圧プレス(Hot Isostatic Pressing、HIP)によって行われ、ターゲット材の長さの増大に伴い、HIP方式はHIP設備の寸法に厳しく制約され、高性能のモリブデン合金ターゲット材を量産することができず、また現在モリブデン合金は脆性が大きく、大きな変形量の場合に割れやすいため、圧延、鍛造などの変形方式によって異なる長さのターゲット材シリーズ製品を調製することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来技術に存在する欠点を克服し、モリブデン合金ターゲット材及びその調製方法並びに応用を提供することである。本発明が提供するモリブデン合金ターゲット材の塑性脆性転移温度が低く、変形能力が強く、結晶粒がより均一であり、ターゲット材として膜層を調製する際に膜層の厚さがより均一であり、スパッタ速度がより速い。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明が採用する技術案は、下記の通りである。
【0010】
第1の側面において、本発明は、質量%で、前記ターゲット材は10%~30%(例えば15%、20%、25%)のNi、5%~25%(例えば10%、15%、20%)のTi、及び0.5%~5%(例えば1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%)のReを含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上(例えば55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%)であるモリブデン合金ターゲット材を提供する。
【0011】
上記モリブデン合金ターゲット材において、好ましい実施形態として、質量%で、前記ターゲット材は、さらに、Tiの一部の代わりに、Cr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つである0.01~15%(例えば、0.05%、0.1%、0.5%、1%、3%、5%、8%、11%、13%)のMを含む。
【0012】
上記モリブデン合金ターゲット材において、好ましい実施形態として、質量%で、前記ターゲット材は、15%~25%(例えば18%、21%、23%)のNi、10%~20%(例えば12%、14%、16%、18%)のTi、1%~5%のRe(例えば2%、3%、4%)、0%~5%のM(例えば1%、2%、3%、4%)を含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上(例えば55%、60%、65%、70%)である。
【0013】
Niは本発明のターゲット材から形成される膜層の耐酸化性を高めることができ、Tiは膜層の耐湿性を高めることができ、両者の適量の添加は膜層の耐酸化性と耐湿性を保証するだけでなく、配線膜の低抵抗を保証することができ、エッチング剤のエッチング速度に影響を与えない。
【0014】
本発明のモリブデン合金ターゲット材に少量のRe元素が添加された。特定割合のレニウム元素の添加は、モリブデン合金中の特定割合の他の元素と共同作用し、レニウムによりこのモリブデン合金において「レニウム効果」を発揮させ、モリブデン合金の室温塑性を改善し、塑性脆性転移温度を低下させ、結晶粒を微細化する。このモリブデン合金ターゲット材にRe元素を添加することにより、ターゲット材の変形性能を向上させることができ、大変形量加工時にもクラックが発生しない。ターゲット材組織結晶粒が小さいため、好ましいモリブデン合金群の配分比で得られたターゲット材結晶粒の段差(階級差、レベル差)が特に小さく、結晶粒が均一であり、本発明のターゲット材で調製された膜層の厚さがより均一であり、スパッタ速度がより速い。Re元素の使用量が5%を超えると、コストが増加する一方で、Re元素の大量添加は他の成分と合金相を形成し、ターゲット材の組織成分分布を不均一させ、後続のめっき効果に影響を与える。Re元素の使用量が0.5%未満であると、効果的な結晶粒の微細化やターゲット材の塑性向上の効果が得られない。
【0015】
本発明におけるM元素は耐湿性を有し、同様に耐湿性を有するTiを部分的に置換することができる。しかし、ターゲット材の各種成分の相互作用の観点から、M元素はTiの一部だけを置換できることが好ましく、一方、M元素の添加はモリブデン合金ターゲット材の耐湿性を高めるとともに、モリブデン合金ターゲット材の耐酸化性をさらに改善することができる。
【0016】
第2の側面において、本発明は以下の工程を含む上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法を提供する。
【0017】
(1)原料調合:上記ターゲット材の成分の質量割合で原料を秤量して混合し、混合粉末を得る。
【0018】
(2)熱間等方加圧プレス:工程(1)の混合粉末をシースに入れ、熱間等方加圧プレスを行い、シース付き熱間プレスブランクを得る。
【0019】
(3)熱間圧延:シース付き熱間プレスブランクを熱間圧延処理して圧延材を得る。
【0020】
(4)焼鈍:圧延材を焼鈍処理して、前記モリブデン合金ターゲット材を得る。
【0021】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、前記ターゲット材の成分Moの原料は純度が3N5以上のモリブデン粉であり、そのFSSS(Fisher Sub-sieve Size)範囲は2.5μm~4μm(例えば2.8μm、3μm、3.5μm、3.8μm)であることが好ましい。好ましくは、前記ターゲット材の成分Niの原料は純度が3N以上のニッケル粉であり、そのFSSS範囲は2μm~3μm(例えば2.2μm、2.4μm、2.6μm、2.8μm)であることが好ましい。好ましくは、前記ターゲット材の成分Tiの原料は純度が3N以上のチタン粉であり、そのFSSS範囲は2μm~4μm(例えば2.3μm、2.6μm、3μm、3.3μm、3.6μm)であることが好ましい。好ましくは、前記ターゲット材の成分Reの原料はレニウム粉またはレニウム酸アンモニウムであり、前記レニウム粉の純度は4N以上であり、FSSSは2μm~4μm(例えば2.3μm、2.6μm、3μm、3.3μm、3.6μm)であることが好ましい。前記レニウム酸アンモニウムの純度は4N以上であり、粒度は150~350メッシュ(例えば180メッシュ、220メッシュ、260メッシュ、300メッシュ、325メッシュ)であることが好ましい。
【0022】
原料としてモリブデンチタン合金粉末、モリブデンニッケル合金粉末などの合金粉末を使用することよりも、本発明の好ましい態様において、本発明のターゲット材を調製する原料として純度が関連する基準を満たすモリブデン粉、ニッケル粉、及びチタン粉を使用することは、調製されたターゲット材の成分分布がより均一にすることができ、めっき効果がより良くなる。
【0023】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、ターゲット材の成分Reの原料がレニウム酸アンモニウムである場合、工程(1)において、原料を秤量した後、原料であるモリブデン粉の一部とレニウム酸アンモニウムとを先に混合し、その後還元処理することによりモリブデンレニウム合金粉末を得て、モリブデンレニウム合金粉末と残りのモリブデン粉及びその他の原料とを混合して混合粉末を得る。
【0024】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、前記還元処理は水素雰囲気中で行われ、前記還元処理の温度は500℃~900℃(例えば550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃)であり、前記還元処理の時間は2h~8h(例えば3h、4h、5h、6h、7h)であり、好ましくは、前記モリブデンレニウム合金粉末において、モリブデンレニウム質量割合は95:5~50:50(例えば、18:1、15:1、12:1、9:1、6:1、3:1)である。
【0025】
上記水素還元処理におけるガス流量は還元炉の大きさに応じるものであり、圧力は微正圧であればよい。レニウム源としてレニウム酸アンモニウムを選択し、まずモリブデンの一部ともにモリブデンレニウム粉末として調製したのは、モリブデン中のレニウムの分布をより均一にするためである。レニウム粉を直接使用したり、レニウム酸アンモニウムを単独でレニウム粉に還元したりして、ソースとして直接混合することもできるが、粉末の均一性はレニウム酸アンモニウムとモリブデン粉との混合還元技術に及ばない。
【0026】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(1)において、前記混合の方式はボールミルであり、前記ボールミルのBPR(Ball-to-Power Ratio)は1:(0.5~2)(例えば、1:0.8、1:1.2、1:1.4、1:1.6、1:1.8)であり、1:1であることが好ましい。好ましくは、前記ボールミル時間は10h~16h(例えば、11h、12h、13h、14h、15h)である。好ましくは、前記ボールミルは不活性ガス中で行われる。好ましくは、前記不活性ガスはアルゴンガスである。好ましくは、前記ボールミルの回転速度は50~300r/min(例えば、100r/min、150r/min、200r/min、250r/min)である。
【0027】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(2)において、前記熱間等方加圧プレスの保温温度は900℃~980℃(例えば910℃、920℃、930℃、940℃、950℃、960℃、970℃)である。好ましくは、前記熱間等方加圧プレスの圧力は100MPa~170MPa(例えば、110MPa、120MPa、130MPa、140MPa、150MPa、160MPa)である。好ましくは、前記熱間等方加圧プレスの保圧時間は2h~5h(例えば、2h、3h、4h)である。
【0028】
本発明の熱間等方加圧プレス工程後に得られる熱間プレスブランクの密度は100%に達することができる。
【0029】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(2)において、混合粉末をシースに装入後、真空排気シールを行う。好ましくは、真空排気は、真空度が10-1Paになるまで行われる。
【0030】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(2)において、熱間プレスブランクを調製した後、熱間プレスブランクのシースを局所的に修整することをさらに含む。
【0031】
本発明において、熱間等方加圧プレス工程で熱間プレスブランクを調製した後、そのシースに対して局所的な修整を行い、熱間プレスブランクの大面積平坦、突起無しを確保し、後続の圧延に有利である。
【0032】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(2)において、前記熱間プレスブランクのブランク厚さは40mm~60mm(例えば、42.5mm、45mm、47.5mm、50mm、52.5mm、55mm、57.5mm)である。
【0033】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(3)において、前記熱間圧延工程のコギング温度は1000℃~1350℃(例えば1150℃、1200℃、1250℃、1300℃)であり、最終圧延温度は900~1100℃(例えば950℃、1000℃、1050℃)である。
【0034】
本発明の好ましい態様は、圧延プロセスにおいて各パスの圧延温度を適切に低減し、すなわち各パスの圧延開始温度が隣接する前のパスの圧延開始温度よりも、0℃よりも大きく50℃以下低下するように制御することにより、材料強度と可塑性を向上させることができる。各パスの圧延開始温度の隣接する前回の圧延開始温度に基づく降温幅が大きすぎると、結晶粒抵抗力が増大し、圧延ブランクの亀裂リスクが増加し、熱間圧延の歩留まりが低下する。
【0035】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(3)において、前記熱間圧延工程において、単パス圧延変形量は15%~25%(例えば17.5%、20%、22.5%)であり、前記熱間圧延工程の総変形量は40%~80%(例えば45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%)である。好ましくは、前記熱間圧延工程において、各パスの圧延前に加熱保温を行い、保温温度は1000℃~1300℃(例えば1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃)であり、保温の時間は30分~120分(例えば40min、50min、60min、70min、80min、90min、100min、110min)である。好ましくは、各パスの圧延前の加熱保温温度は、前のパスの圧延前の加熱保温温度に基づいて、0℃よりも大きく50℃以下(例えば、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃)を低下する。好ましくは、前記熱間圧延は空気又はアルゴンガス雰囲気中で行われる。
【0036】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(4)において、圧延材は、焼鈍工程を行う前に、シースの除去と粗加工工程をさらに含む。
【0037】
本発明は、焼鈍工程の前に圧延材を異なる寸法に加工することができることによって異なる形状または大きい寸法のターゲット材を得て、市場のモリブデン合金ターゲット材に対する異なる規格の需要を満たすことができる。
【0038】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(4)において、前記焼鈍処理はアルゴンガス雰囲気中で行われる。好ましくは、前記焼鈍の温度は900℃~1200℃(例えば950℃、1000℃、1050℃、1100℃、1150℃)であり、保温時間は60分~120分(例えば70min、80min、90min、100min、110min)である。
【0039】
本発明において、焼鈍温度をこの範囲に制御することにより、押出後のターゲット材の異方性を解消し、組織が均一で、結晶粒が細かいモリブデン合金ターゲット材を得ることができる。焼鈍温度は900℃より低いと、ターゲット材組織は完全な結晶を得られず、一部の領域の結晶粒の変形状態が存在し、焼鈍温度が1200℃より高いと、結晶粒の異常な成長を招き、混晶が現れ、組織分布の不均一を招き、ターゲット材スパッタめっき膜の効果に影響を与える。
【0040】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(4)で調製されたモリブデン合金ターゲット材の結晶粒寸法は100μm以下であり、60μm~100μm(例えば65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm)であることが好ましい。
【0041】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、工程(4)で調製されたモリブデン合金ターゲット材の結晶粒度は4~5級であり、好ましくは、工程(4)で調製された同一のモリブデン合金ターゲット材において、結晶粒度段差は1以下、好ましくは0である。
【0042】
上記モリブデン合金ターゲット材の調製方法において、好ましい実施形態として、前記モリブデン合金ターゲット材はプレート型ターゲット材であり、好ましくは、前記圧延材の厚さは6mm~24mm(例えば、8mm、10mm、12.5mm、15mm、17.5mm、20mm、22mm)である。
【0043】
第3の側面において、本発明は、電子部品用積層配線膜の主導電層にスパッタにより付着する金属被覆層を形成する上記モリブデン合金ターゲット材の応用をさらに提供し、好ましくは、前記電子部品はディスプレイ、半導体装置、または薄膜太陽電池である。
【発明の効果】
【0044】
上記技術案を採用することにより、本発明は従来技術に比べて以下のような積極的な効果を有する。
【0045】
(1)本発明のターゲット材にレニウム元素を添加することはターゲット材成膜後の耐熱性、耐酸化性、及び耐湿性に影響しないだけでなく、本発明はモリブデン合金に特定量のレニウムを添加した後、結晶粒寸法を微細化し、材料脆性を低下させ、塑性を増加させ、変形加工能力を高めることができ、得られたブランクに対して圧延工程を行うことで異なる形状または大きい寸法のターゲット材を得ることができ、ターゲット材は通常に板材として調製される。レニウムの価格は比較的高いが、本発明は少量のレニウムを使用しただけでも改善の役割を果たすことができる。
【0046】
(2)本発明の焼鈍工程は更に均一に微結晶化することができ、本発明において調製されたモリブデン合金ターゲット材は、結晶粒寸法は100μm以下であり、結晶粒度レベルは4~5級であり、同一のモリブデン合金ターゲット材における結晶粒度の段差は1以下であり、最高は0に達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施例1の方法で調製されたモリブデン合金ターゲット材の金相組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。提供される実施例は、本発明を説明するためだけであり、本発明の範囲を限定するためではない。以下に提供される実施例は、本発明を具体的に限定するものではなく、当業者による更なる改良または応用の基礎とすることができる。
【0049】
以下の実施例における試験方法のうち、特に説明がない限り、いずれも通常方法であり、当分野内の文献に記載されている技術または条件、または製品説明書に従って行うことができる。以下の実施例で使用される材料は、いずれも従来の市販経路から得ることができる。
【0050】
本発明は、Re元素がモリブデン中で果たす「レニウム効果」を通じて、モリブデン合金の室温塑性を改善し、塑性脆性転移温度を下げ、結晶粒を微細化する。モリブデン合金ターゲット材にRe元素を添加することにより、ターゲット材の変形性能を向上させ、すなわち圧延などの変形方式により、大寸法の板状ターゲット材を調製し、焼鈍処理により、均一な微結晶を有するターゲット材を得ることができる。
【0051】
特に説明がない限り、以下の実施例でいう粉末粒度はいずれもFSSSである。
【0052】
本願の実施例における結晶粒度レベル試験の基準は、「GB/T6394 金属平均結晶粒度測定方法」である。
【0053】
以下の実施例でいう歩留まりは、熱間圧延処理後に得られた合格圧延材の数/熱間圧延を行う熱間プレスブランクの数*100%である。
【実施例1】
【0054】
モリブデン合金ターゲット材の調製方法は、以下の工程:
純度3N5、粒度3.2μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.0μmのNi粉と、純度3N、粒度2.8μmのTi粉と、純度4N、粒度3.2μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=61:20:18:1に従って、140Kg原料を用意する工程1、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、ボールミルを行い、ボールミル時間を12hとし、回転速度を200r/minとする工程2、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製のシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を3h維持して密封する工程3、
工程3のシースをHIPし、温度950℃、圧力120MPa、保圧時間3hで熱間プレスブランクを調製する工程4、
工程4の熱間プレスブランクのシースを局所的に修整し、熱間プレスブランクの大面平坦、突起無しを確保し、ブランク厚さを56mmとする工程5、
工程5で局所的に修整されたシース付き熱間プレスブランクを、マッフル炉に入れ、空気雰囲気中でコギング温度1300℃まで加熱し、保温時間を90分とし、単パス変形量を15%~25%とし、各パスの圧延前に再び炉に戻って加熱保温し、各パスの圧延前の加熱保温温度は前のパスの圧延前の加熱保温温度に基づいて50℃低下させ、各パスの圧延前の加熱保温時間を90分とし、圧延パスを5回とし、最終圧延温度を1050℃とし、得られた圧延ブランク寸法は20mm×240mm×2900mm(厚さ×幅×長さ)である工程6、
工程6で得られた圧延ブランクからシースを除去し、機械加工により寸法18mm×230mm×2750mm(厚さ×幅×長さ)のブランクを得る工程7、及び
工程7のブランクに対してArガス雰囲気下での焼鈍処理を行い、焼鈍温度を1100℃とし、保温時間を60分とし、結晶粒寸法70μm~100μmの均一微結晶板材を得て、図1を参照して、結晶粒度レベルは4級である工程8を含む。
【0055】
本実施例で得られた板状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【実施例2】
【0056】
本実施例のモリブデン合金ターゲット材の調製方法は以下の工程:
純度3N5、粒度3.5μmの純Mo粉と、純度3N、粒度2.6μmのNi粉と、純度3N、粒度3.0μmのTi粉と、純度4N、粒度3.5μmのレニウム酸アンモニウムとを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=61:20:18:1に従って、140Kg原料を用意し、まずモリブデンレニウム合金粉末を調製し、モリブデンレニウム合金粉末中のMo:Re=7:3の元素質量割合に基づいて、先に原料中のMo粉の一部と原料中のすべてのレニウム酸アンモニウムとを混合し、水素雰囲気中で600℃で4h還元してモリブデンレニウム合金粉末を得て、還元後のモリブデンレニウム合金粉末を残りの原料粉末に添加する工程1、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:2とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、ボールミルを行い、ボールミル時間を10hとし、回転速度を200r/minとする工程2、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製のシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を4h維持して密封する工程3、
工程3のシースをHIPし、温度930℃、圧力150MPa、保圧時間3hで熱間プレスブランクを調製する工程4、
工程4の熱間プレスブランクのシースを局所的に修整し、熱間プレスブランクの大面平坦、突起無しを確保し、ブランク厚さを50mmとする工程5、
工程5で局所的に修整されたシース付き熱間プレスブランクを、マッフル炉に入れ、空気雰囲気中でコギング温度1350℃まで加熱し、保温時間を80分とし、単パス変形量を15%~25%とし、各パスの圧延前の加熱保温温度は前回の圧延前の加熱保温温度に基づいて50℃低下させ、各パスの圧延前の加熱保温時間を90分とし、圧延パスを4回とし、最終圧延温度を1100℃とし、得られた圧延ブランク寸法は24mm×240mm×2900mm(厚さ×幅×長さ)である工程6、
工程6で得られた圧延ブランクからシースを除去し、機械加工により寸法22mm×230mm×2800mm(厚さ×幅×長さ)のブランクを得る工程7、及び
工程7のブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度を1050℃とし、保温時間を90分とし、結晶粒寸法65μm~90μmの均一微結晶板材を得て、結晶粒度レベルは4級である工程8を含む。
【0057】
本実施例で得られた板状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【実施例3】
【0058】
本実施例のモリブデン合金ターゲット材の調製方法は、以下の工程:
純度3N5、粒度3.2μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.5μmのNi粉と、純度3N、粒度3.5μmのTi粉と、純度4N、粒度3.5μmのレニウム酸アンモニウムとを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=60:20:18:2に従って、70Kg原料を用意し、まずモリブデンレニウム合金粉末を調製し、モリブデンレニウム合金粉末中のMo:Re=1:1の元素質量割合に基づいて、先に原料中のMo粉の一部と原料中のすべてのレニウム酸アンモニウムとを混合し、水素雰囲気中で700℃で3h還元してモリブデンレニウム合金粉末を得て、還元後のモリブデンレニウム合金粉末を残りの原料粉末に添加する工程1、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、ボールミルを行い、ボールミル時間を16hとし、回転速度を200r/minとする工程2、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製のシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を5h維持して密封する工程3、
工程3のシースをHIPし、温度を920℃、圧力を170MPa、保圧時間を4hとする工程4、
工程4の熱間プレスブランクのシースを局所的に修整し、熱間プレスブランクの大面平坦、突起無しを確保し、ブランク厚さを40mmとする工程5、
工程5で局所的に修整されたシース付き熱間プレスブランクを、マッフル炉に入れ、空気雰囲気中でコギング温度1300℃まで加熱し、保温時間を70分とし、単パス変形量を15%~25%とし、各パスの圧延前の加熱保温温度は前回の圧延前の加熱保温温度に基づいて50℃低下させ、各パスの圧延前の加熱保温時間を90分とし、圧延パスを4回とし、最終圧延温度を1100℃とし、得られた圧延ブランク寸法は18mm×240mm×1450mm(厚さ×幅×長さ)である工程6、
工程6で得られた圧延ブランクからシースを除去し、機械加工により寸法16mm×230mm×1400mm(厚さ×幅×長さ)のブランクを得る工程7、及び
工程7のブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度を1150℃とし、保温時間を45分とし、結晶粒寸法70μm~95μmの均一微結晶板材を得て、結晶粒度レベルは4級である工程8、を含む。
【0059】
本実施例で得られた板状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【実施例4】
【0060】
本実施例のモリブデン合金ターゲット材の調製方法は、以下の工程:
純度3N5、粒度3.8μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.5μmのNi粉と、純度3N、粒度3.2μmのTi粉と、純度4N、粒度2.8μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=58:20:18:4に従って、140Kg原料を用意する工程1、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを2:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、ボールミルを行い、ボールミル時間を14hとし、回転速度を200r/minとする工程2、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製のシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を5h維持して密封する工程3、
工程3のシースをHIPし、温度920℃、圧力170MPa、保圧時間4hで熱間プレスブランクを調製する工程4、
工程4の熱間プレスブランクのシースを局所的に修整し、熱間プレスブランクの大面平坦、突起無しを確保し、ブランク厚さを54mmとする工程5、
工程5で局所的に修整されたシース付き熱間プレスブランクを、マッフル炉に入れ、空気雰囲気中でコギング温度1350℃まで加熱し、保温時間を60分とし、単パス変形量を15%~25%とし、各パスの圧延前の加熱保温温度は前回の圧延前の加熱保温温度に基づいて50℃低下させ、各パスの圧延前の加熱保温時間を90分とし、圧延パスを5回とし、最終圧延温度を1100℃とし、得られた圧延ブランク寸法は24mm×240mm×2900mm(厚さ×幅×長さ)である工程6、
工程6で得られた圧延ブランクからシースを除去し、機械加工により寸法22mm×230mm×2750mm(厚さ×幅×長さ)のブランクを得る工程7、及び
工程7のブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度を1100℃とし、保温時間を60分とし、結晶粒寸法65μm~95μmの均一微結晶板材を得て、結晶粒度レベルは4級である工程8、を含む。
【0061】
本実施例で得られた板状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【実施例5】
【0062】
純度3N5、粒度3.2μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.0μmのNi粉と、純度3N、粒度2.8μmのTi粉と、純度4N、粒度3.2μmのレニウム粉と、Crの原料であるクロム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re:Cr=61:20:16:1:2に従って、140Kg原料を用意する工程1、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、ボールミルを行い、ボールミル時間を12hとし、回転速度を200r/minとする工程2、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製のシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を3h維持して密封する工程3、
工程3のシースをHIPし、温度950℃、圧力120MPa、保圧時間3hで熱間プレスブランクを調製する工程4、
工程4の熱間プレスブランクのシースを局所的に修整し、熱間プレスブランクの大面平坦、突起無しを確保し、ブランク厚さを56mmとする工程5、
工程5で局所的に修整されたシース付き熱間プレスブランクを、マッフル炉に入れ、空気雰囲気中でコギング温度1300℃まで加熱し、保温時間を90分とし、単パス変形量を15%~25%とし、各パスの加熱保温温度は前のパスの加熱保温温度に基づいて50℃低下させ、各パスの加熱保温時間を90分とし、圧延パスを5回とし、最終圧延温度を1050℃とし、得られた圧延ブランク寸法は24mm×240mm×2900mm(厚さ×幅×長さ)である工程6、
工程6で得られた圧延ブランクからシースを除去し、機械加工により寸法22mm×230mm×2750mm(厚さ×幅×長さ)のブランクを得る工程7、及び
工程7のブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度を1100℃とし、保温時間を60分とし、結晶粒寸法60μm~90μmの均一微結晶板材を得て、結晶粒度レベルは4~5級である工程8、を含む。
【0063】
本実施例で得られた板状ターゲット材は亀裂がなく、歩留まりは100%であった。
【0064】
(比較例1)
純度3N5、粒度3.2μmの純Mo粉と、純度3N、粒度3.0μmのNi粉と、純度3N、粒度2.8μmのTi粉と、純度4N、粒度3.2μmのレニウム粉とを、ターゲット材の各元素質量比Mo:Ni:Ti:Re=56:20:18:6に従って、140Kg原料を用意する工程1と、
工程1で得られた粉末をボールミル缶に入れ、BPRを1:1とし、負圧まで排気し、アルゴンガスを大気圧まで充填し、ボールミルを行い、ボールミル時間を12hとし、回転速度を200r/minとする工程2と、
工程2で得られた混合後の粉末をステンレス製のシースに入れ、10-1Paまで排気し、排気を3h維持して密封する工程3と、
工程3のシースをHIPし、温度950℃、圧力120MPa、保圧時間3hで熱間プレスブランクを調製する工程4と、
工程4の熱間プレスブランクのシースを局所的に修整し、熱間プレスブランクの大面平坦、突起無しを確保し、ブランク厚さを56mmとする工程5と、
工程5で局所的に修整されたシース付き熱間プレスブランクを、マッフル炉に入れ、空気雰囲気中でコギング温度1300℃まで加熱し、各パスの圧延前の加熱保温を90分行い、単パス変形量を15%~25%とし、各パスの加熱保温温度は前回の加熱保温温度に基づいて50℃低下させ、圧延パスを5回とし、最終圧延温度を1050℃とし、得られた圧延ブランク寸法は24mm×240mm×2900mm(厚さ×幅×長さ)である工程6と、
工程6で得られた圧延ブランクからシースを除去し、機械加工により寸法22mm×230mm×2750mm(厚さ×幅×長さ)のブランクを得る工程7と、
工程7のブランクをArガス雰囲気下で焼鈍処理し、焼鈍温度を1100℃とし、保温時間を60分とし、結晶粒寸法90μm~120μmの均一微結晶板材を得て、同一板材の結晶粒度は3級で、一部の結晶粒寸法は100μmよりも大きい工程8と、を含む。
【0065】
本比較例で得られた板状ターゲット材に亀裂が発生し、歩留まりは75%であった。
【0066】
比較例1で調製されたモリブデン合金ターゲット材は、コストが上昇し、かつレニウム含有量が高すぎるため、かえって変形の困難性が増加し、変形過程でブランク表面に亀裂が発生した。同時に、Re含有量が多い場合、Reは他の成分と合金相を形成し得るので、後続のめっき効果に影響する。
【0067】
(比較例2)
実施例1と同様であるが、本比較例の焼鈍温度が1250℃であることのみを実施例1との区別とした。
【0068】
本比較例で得られた板状ターゲット材の結晶粒度は70μm~110μmであり、一部の結晶粒寸法が100μmよりも大きい。
【0069】
本比較例で得られた板状ターゲット材に亀裂が発生し、歩留まりは90%であった。
【0070】
本比較例の焼鈍温度が高すぎて、一部の結晶粒が異常に大きくなり、得られた板状ターゲット材の結晶粒度寸法が大きく、混晶が現れ、局部に大きな結晶粒がある。
【0071】
(比較例3)
実施例1と同様であるが、本比較例の圧延工程におけるパス変形量が30%であることのみを実施例1との区別とした。
【0072】
本比較例の圧延過程では、1回目のパスにおいてエッジ割れが発生し、2回目のパスにおいて亀裂が発生し、板材として調製することができなかった。
【0073】
(比較例4)
実施例1と同様であるが、本比較例の圧延工程において、各パスの加熱保温温度は前回の加熱保温温度に基づいて80℃低下させたことのみを実施例1との区別とした。
【0074】
本比較例で得られた板状ターゲット材の結晶粒度は80μm~150μmであり、大部分の結晶粒寸法は100μmを超え、結晶粒均一性が悪い。
【0075】
本実施例で得られた板状ターゲット材に亀裂が発生し、歩留まりは50%であった。本比較例では、熱間圧延時の各パスの加熱保温温度は前回の加熱保温温度に基づいて降温幅が大きすぎるため、結晶粒抵抗力が増大し、圧延ブランクの亀裂リスクが増加し、熱間圧延の歩留まりが低下した。
【0076】
以上、本発明について詳述した。当業者にとっては、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、及び不必要な実験を行わないで、同等のパラメータ、割合及び条件の下で、広い範囲で本発明を実施することができる。本出願は発明の特別な実施例を提供するが、本発明をさらに改良することができると理解されるべきである。要するに、本発明の原理によれば、本出願は、本願に開示されている範囲を逸脱し、当業者に知られている従来技術を用いて行われた変更を含む、任意の変更、用途、または本発明への改良を含むことを意図する。以下に添付する特許請求の範囲に従って、いくつかの基本的な特徴の応用を行うことができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン合金ターゲット材であって、
質量%で、前記ターゲット材は10%~30%のNi、5%~25%のTi、及び0.5%~5%のReを含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上であり、
前記モリブデン合金ターゲット材の調製方法は、
前記ターゲット材の成分の質量割合で原料を秤量して混合し、混合粉末を得る原料調合工程(1)と、
工程(1)の混合粉末をシースに入れ、熱間等方加圧プレスを行い、シース付き熱間プレスブランクを得る熱間等方加圧プレス工程(2)と、
シース付き熱間プレスブランクを熱間圧延処理して圧延材を得る熱間圧延工程(3)と、
圧延材を焼鈍処理して、前記モリブデン合金ターゲット材を得る焼鈍工程(4)と、を含み、
工程(3)において、前記熱間圧延処理において、単パスの圧延変形量を15~25%とし、前記熱間圧延処理の総変形量を40~80%とし、前記熱間圧延処理において、各パスの圧延前に加熱保温を行い、保温温度を1000℃~1300℃とし、保温の時間を30分~120分とし、各パスの圧延前の加熱保温温度を、前のパスの圧延前の加熱保温温度に基づいて0℃よりも大きく50℃以下低くする、
ことを特徴とするモリブデン合金ターゲット材。
【請求項2】
質量%で、前記ターゲット材は、さらに、Tiの一部の代わりに、Cr、Zr、Ta、Nbのうちの少なくとも1つである0.01~15%のMを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモリブデン合金ターゲット材。
【請求項3】
質量%で、前記ターゲット材は、15%~25%のNi、10%~20%のTi、1%~5%のRe、0.01%~5%のMを含み、残りはMo及び不可避的不純物であり、且つMoの質量%は50%以上であり、
及び/又は、工程(4)で調製されたモリブデン合金ターゲット材の結晶粒寸法は100μm以下であり、
及び/又は、工程(4)で調製されたモリブデン合金ターゲット材の結晶粒度は4~5級であり、
及び/または、工程(4)で調製された同一のモリブデン合金ターゲット材では、結晶粒度段差が1以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載のモリブデン合金ターゲット材。
【請求項4】
前記ターゲット材の成分の質量割合で原料を秤量して混合し、混合粉末を得る原料調合工程(1)と、
工程(1)の混合粉末をシースに入れ、熱間等方加圧プレスを行い、シース付き熱間プレスブランクを得る熱間等方加圧プレス工程(2)と、
シース付き熱間プレスブランクを熱間圧延処理して圧延材を得る熱間圧延工程(3)と、
圧延材を焼鈍処理して、前記モリブデン合金ターゲット材を得る焼鈍工程(4)と、を含み、
工程(3)において、前記熱間圧延処理において、単パスの圧延変形量を15~25%とし、前記熱間圧延処理の総変形量を40~80%とし、前記熱間圧延処理において、各パスの圧延前に加熱保温を行い、保温温度を1000℃~1300℃とし、保温の時間を30分~120分とし、各パスの圧延前の加熱保温温度を、前のパスの圧延前の加熱保温温度に基づいて0℃よりも大きく50℃以下低くする、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項5】
前記ターゲット材の成分Moの原料は純度が3N5以上のモリブデン粉であり、そのFSSS範囲は2.5μm~4μmであり、
前記ターゲット材の成分Niの原料は純度が3N以上のニッケル粉であり、そのFSSS範囲は2μm~3μmであり、
前記ターゲット材の成分Tiの原料は純度が3N以上のチタン粉であり、そのFSSS範囲は2μm~4μmであり、
前記ターゲット材の成分Reの原料はレニウム粉またはレニウム酸アンモニウムであり、前記レニウム粉の純度は4N以上であり、FSSSは2μm~4μmであり、前記レニウム酸アンモニウムの純度は4N以上であり、粒度は150~350メッシュである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項6】
ターゲット材の成分Reの原料がレニウム酸アンモニウムである場合、工程(1)において、原料を秤量した後、原料であるモリブデン粉の一部とレニウム酸アンモニウムとを先に混合し、その後還元処理することによりモリブデンレニウム合金粉末を得て、モリブデンレニウム合金粉末と残りのモリブデン粉及びその他の原料とを混合して混合粉末を得て、
前記還元処理は水素雰囲気中で行われ、前記還元処理の温度は500℃~900℃であり、前記還元処理の時間は2h~8hであり、
前記モリブデンレニウム合金粉末において、モリブデンレニウム質量割合は95:5~50:50であり、
工程(1)において、前記混合の方式はボールミルであり、前記ボールミルのBPRは1:(0.5~2)であり、前記ボールミル時間は10h~16hであり、前記ボールミルは不活性ガス中で行われ、前記ボールミルの回転速度は50~300r/minである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項7】
工程(2)において、前記熱間等方加圧プレスの保温温度は900℃~980℃であり、前記熱間等方加圧プレスの圧力は100MPa~170MPaであり、前記熱間等方加圧プレスの保圧時間は2h~5hであり、工程(2)において、熱間プレスブランクを調製した後、熱間プレスブランクのシースを局所的に修理する工程をさらに含み、工程(2)において、前記熱間プレスブランクのブランク厚さは40mm~60mmである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項8】
工程(3)において、前記熱間圧延処理のコギング温度は1000℃~1350℃であり、最終圧延温度は900℃~1100℃であり、前記熱間圧延は空気又はアルゴンガス雰囲気中で行われ、前記モリブデン合金ターゲット材は板型ターゲット材であり、前記圧延材の厚さは6mm~24mmである、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項9】
工程(4)において、圧延材は焼鈍処理を行う前に、シースの除去と粗加工工程をさらに含み、工程(4)において、前記焼鈍処理はアルゴンガス雰囲気中で行われ、前記焼鈍の温度は900℃~1200℃であり、保温時間は60分~120分である、
ことを特徴とする請求項4に記載のモリブデン合金ターゲット材の調製方法。
【請求項10】
前記モリブデン合金ターゲット材は、電子部品用積層配線膜の主導電層にスパッタにより付着する金属被覆層を形成し、前記電子部品は、ディスプレイ、半導体装置、又は薄膜太陽電池である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモリブデン合金ターゲット材、または、請求項に記載の調製方法で調製されたモリブデン合金ターゲット材の応用。
【国際調査報告】