(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】リンゴ発酵組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240808BHJP
【FI】
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541973
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 KR2022019572
(87)【国際公開番号】W WO2024025051
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0094865
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク、イェウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウニョン
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018MD52
4B018MD92
4B018ME07
4B018ME11
4B018MF13
(57)【要約】
本出願は、炎症性サイトカインの発現を減少または抑制する効果を有するリンゴ発酵組成物及びその腸炎の予防または改善用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性サイトカインの発現を減少させまたは抑制する効果を有する、リンゴ発酵組成物。
【請求項2】
前記リンゴ発酵組成物は、炎症が誘導された細胞に処理時、リンゴ発酵組成物が処理されなかった炎症誘導細胞に比べて炎症誘導による炎症性サイトカインの発現を10%以上減少させまたは抑制する、請求項1に記載のリンゴ発酵組成物。
【請求項3】
前記炎症性サイトカインが、IL-8である、請求項1に記載のリンゴ発酵組成物。
【請求項4】
前記リンゴ発酵組成物が、抗炎効果を有する、請求項1に記載のリンゴ発酵組成物。
【請求項5】
前記リンゴ発酵組成物が、リンゴ酢発酵組成物である、請求項1に記載のリンゴ発酵組成物。
【請求項6】
前記リンゴ発酵組成物が、リンゴ酵母発酵及び酢酸菌発酵組成物である、請求項5に記載のリンゴ発酵組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のリンゴ発酵組成物を含む、食品。
【請求項8】
前記食品が、腸炎の予防または改善用である、請求項7に記載の食品。
【請求項9】
前記食品が、腸健康の改善用または増進用である、請求項7に記載の食品。
【請求項10】
請求項1に記載のリンゴ発酵組成物を含む、健康機能食品。
【請求項11】
前記健康機能食品が、腸炎の予防または改善用である、請求項10に記載の健康機能食品。
【請求項12】
前記健康機能食品が、腸健康の改善または増進用である、請求項10に記載の健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リンゴ発酵組成物及びその腸炎の予防または改善用途に関する。
【背景技術】
【0002】
腸は外部から流入した物質が接触する主要な場所であり、様々な外部刺激から私たちの体を保護する重要な役割を担う。腸内の防御は、一次的には腸管の構造的特性と固有の運動性、二次的には腸上皮細胞の透過性に関連する細胞性、体液性免疫による防御機構が作用することになる。
【0003】
細胞間に存在する密着結合(tight junction)は、腸上皮細胞の透過性に影響を与える。腸内刺激や損傷により密着結合が緩むと、有害な分子(病原菌、毒素、抗原など)が腸上皮に過量に透過し、内毒素血症が誘発され、粘膜免疫システムの混乱と炎症反応が誘導され、炎症を伴う腸疾患または全身疾患が引き起こされうる。
【0004】
腸疾患のうち、最近発症率が増加する傾向を示す炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease;IBD)は、好中球(neutrophils)が媒介体となって発症する疾患であり、これらの好中球は炎症のある粘膜で増加するインターロイキン-8(Interleukin-8;IL-8)によって誘引される(非特許文献1)。IL-8は、炎症性サイトカインの1つであり、好中球誘引に加えて腫瘍形成及び血管新生に関与し、慢性炎症及び癌のような様々な病理学的状態において重要な役割を果たす(非特許文献2)。例えば、マクロファージと腫瘍細胞を含む様々な形態の細胞ではLPS(Lipopolysaccharide)の刺激による炎症反応でIL-8を分泌する。
【0005】
一方、リンゴは、バラ科(the family of Rosaceae)リンゴ属(the genus of Malus)に属する多年生植物であるリンゴ木の果実で、ペクチンなどの食物繊維、有機酸、糖分、ビタミン及び無機塩類の含量が高い。特に、リンゴに多量含有された水溶性食物繊維であるペクチンは腸の運動を助けて便秘に効果的であり、有機酸は胃液分泌を促進して消化・吸収を助けるとよく知られている。
【0006】
現在、リンゴを利用した様々な腸健康改善用機能性食品、健康補助剤が多数開発されているが、腸内炎症を予防または改善して腸健康を増進させうる組成物の国内外需要が増加するにつれて、腸内炎症を予防または改善するのにより優れた効果を有する新しい組成物の開発が求められている実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M C Grimm et al., Gut 1996, pages 90-98.
【非特許文献2】M Naofimi, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 284(4), Apr 2003, pages L566-577
【非特許文献3】Lee et al., Biochem Biophys Res Commun 337(2), Nov 2005, pages 457 - 463
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、リンゴ発酵組成物及びその腸炎の予防または改善用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の1つの目的は、炎症性サイトカインの発現を減少または抑制する効果を有するリンゴ発酵組成物を提供することである。
本出願の他の目的は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む食品を提供することである。
【0010】
本出願のまた他の目的は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む健康機能食品を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本出願のリンゴ発酵組成物は、炎症性サイトカインの発現を減少または抑制する効果を有するため、腸炎の予防または改善用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】HT-29細胞に濃度別リンゴ発酵組成物またはリンゴ濃縮液と共にLPS(Lipopolysaccharide)を処理して、ヒトインターロイキン-8(Human interleukin-8; hIL-8)発現量を濃度で確認した結果である。
***p<0.001(NO群対比)、
###p<0.001、
#p<0.05(LPS群対比)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これを具体的に説明すると以下の通りである。一方、本出願で開示された各説明及び実施形態は、他の各説明及び実施形態にも適用することができる。言い換えれば、本出願で開示された様々な要素のすべての組み合わせが、本出願のカテゴリに属する。また、下記記載される具体的な記述によって本出願のカテゴリが制限されると見ることはできない。さらに、本明細書全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として参照により本明細書に組み込まれ、本出願が属する技術分野のレベル及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0014】
本出願の一様態は、炎症性サイトカインの発現を減少または抑制する効果を有するリンゴ発酵組成物を提供する。
本出願のリンゴ発酵組成物は、精製水及びリンゴ濃縮液を含んでもよい。
【0015】
本出願において、用語「リンゴ濃縮液」は、リンゴを濃縮して収得した液体を意味し、製造したものまたは市販のものなどを制限なく用いてもよい。一例として、前記リンゴ濃縮液はリンゴ100%濃縮液であってもよいが、これに制限されない。また、前記リンゴ濃縮液は、糖度が屈折糖度計の基準糖度60ブリックス以上であってもよいが、これに制限されない。さらに、前記リンゴ濃縮液は酸度が6%以下であってもよいが、これに制限されない。
【0016】
一具現例では、本出願のリンゴ発酵組成物において、前記リンゴ濃縮液は発酵前に含まれる成分を意味してもよい。具体的には、本出願のリンゴ発酵組成物において、前記リンゴ濃縮液は前記リンゴ発酵組成物の総体積対比1~50%(v/v)、1~30%(v/v)、1~25%(v/v)、5~50%(v/v)、5~30%(v/v)、5~25%(v/v)、10~50%(v/v)、10~30%(v/v)、10~25%(v/v)、15~50%(v/v)、15~30%(v/v)または15~25%(v/v)で含まれてもよい。
【0017】
本出願において、用語「リンゴ発酵組成物」は、リンゴ濃縮液を発酵した発酵物を意味する。
本出願において、用語「発酵」は、通常、微生物が自分が持っている酵素を用いて有機物を分解し代謝産物を転換して蓄積する現象またはその過程を意味する。
【0018】
本出願において、用語「発酵物」は、本出願の発酵によって産生された物質、そのろ過液、その希釈液、その濃縮液、その粗精製物、またはその精製物などをすべて含むものと包括的に解釈してもよいが、これに制限されない。
【0019】
具体的には、本出願の発酵物は酢酸発酵物または酢であってもよい。より具体的には、本出願の発酵物は酵母及び酢酸菌発酵物であってもよい。さらに具体的には、本出願の発酵物は酵母発酵の後に酢酸菌発酵した発酵物であってもよい。
【0020】
一例として、本出願のリンゴ発酵組成物は、リンゴを酢酸菌で発酵させたリンゴ酢酸発酵組成物、リンゴ酢酸発酵物またはリンゴ酢であってもよい。また、本出願のリンゴ発酵組成物は、リンゴを酵母及び酢酸菌で発酵したリンゴ酵母発酵及び酢酸菌発酵組成物であってもよい。さらに、本出願のリンゴ発酵組成物は、リンゴを酵母発酵後に酢酸菌発酵したリンゴ酵母発酵後酢酸菌発酵した組成物であってもよい。
【0021】
本出願の炎症性サイトカインは、インターロイキン-8(Interleukin-8;IL-8)、IL-1α、IL-12、TNF-α(tumor necrosis factor alpha)またはIFN-γ(Interferon gamma)であってもよく、当業界で知られている炎症性サイトカインであれば、本出願の範囲に含まれてもよい。一具現例として、前記炎症性サイトカインはIL-8であってもよい。
【0022】
前記リンゴ発酵組成物は、炎症が誘導された細胞に処理時、リンゴ発酵組成物が処理されなかった炎症誘導細胞に比べて炎症誘導による炎症性サイトカインの発現を減少または抑制することができる。
【0023】
その例として、前記リンゴ発酵組成物は炎症誘導による炎症性サイトカインの発現を10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、46%以上、50%以上、54%以上、55%以上、60%以上、65%以上、69%以上から選択された1つの下限線及び/または100%以下、90%以下、80%以下及び70%以下から選択された1つの上限線で構成される範囲に減少または抑制することができるが、これに制限されない。
【0024】
本出願において、本出願のリンゴ発酵組成物は抗炎効果を有するものであってもよい。
本出願において、本出願のリンゴ発酵組成物は腸炎の予防または改善効果を有するものであってもよい。
【0025】
本出願において、用語「腸炎」は、腸に発生する炎症であり、ウイルス、細菌、毒素摂取などにより腸が刺激されて生じる炎症を意味する。
本出願において、用語「予防」は、本出願の組成物の投与によって腸炎を抑制するか、発症を遅らせる全ての行為を意味する。
【0026】
本出願において、用語「改善」は、前記組成物を用いて腸炎の疑いのある及び発症個体の症状が好転したり有利になるすべての行為を指す。
前記抗炎または腸炎の予防または改善は、一例として、炎症性サイトカインの発現減少または抑制によって達成することができ、これについては前述の通りである。
【0027】
本出願において、本出願のリンゴ発酵組成物は腸健康の改善または増進効果を有するものであってもよい。
前記腸健康の改善または増進は、一例として、炎症性サイトカインの発現減少または抑制によって達成することができ、これについては前述の通りである。
【0028】
本出願の他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む食品を提供する。
前記リンゴ発酵組成物は前述の通りである。
本出願において、本出願の食品は腸炎の予防または改善効果を有するものであってもよい。前記腸炎の予防または改善は、炎症性サイトカインの発現減少または抑制によって達成することができ、これについては以前の様態で前述した通りである。
【0029】
本出願において、本出願の食品は腸健康の改善または増進効果を有するものであってもよい。前記腸健康の改善または増進は、炎症性サイトカインの発現減少または抑制によって達成することができ、これについては以前の様態で前述した通りである。
【0030】
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む健康機能食品を提供する。
前記リンゴ発酵組成物は前述の通りである。
【0031】
本出願において、本出願の健康機能食品は腸炎の予防または改善効果を有するものであってもよい。前記腸炎の予防または改善は、炎症性サイトカインの発現減少または抑制によって達成することができ、これについては以前の様態で前述した通りである。
【0032】
本出願において、本出願の健康機能食品は腸健康の改善または増進効果を有するものであってもよい。前記腸健康の改善または増進は、炎症性サイトカインの発現減少または抑制によって達成することができ、これについては以前の様態で前述した通りである。
【0033】
本出願の「食品」は、一般食品、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加物(food additives)などの任意の形態を含み得る。
【0034】
前記タイプの食品は、当業界に公知の通常的な方法に従って様々な形態で製造することができる。
前記食品は、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセル、散剤または液剤などの形態を含み、本出願の組成物を添加できる食品としては、例えば、各種食品類、例えば、米、食用穀粉(食用穀物粉)、穀物スープ、丼、麺類、クッパ、即席米、調味料、弁当、乾燥調理されたご飯、パン、食用糖類、餅、ビビンジャン、ソース、香辛料、食用塩、調味料、調味料粉末、加工処理、冷凍、乾燥及び調理された果物と野菜、ゼリー、ジャム、砂糖漬けの果実、卵、牛乳及びその他の乳製品、食用油脂、コーヒー、ココアと代用コーヒー、タピオカ、穀粉及び穀物調製品、ラーメン、うどん、麺、カルグクス、冷麺、粥、スープ、スープ料理、インスタント食品、冷凍食品、即席食品、レトルト食品、その他の飲料、ガム、茶、ビタミン複合体、健康補助食品類などがあるが、これに制限されない。
【0035】
本出願の食品に含まれてもよい成分として、通常の食品のように様々な生薬抽出物、食品補助添加剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。また、前記食品補助添加剤は、当業界で通常的な食品補助添加剤、例えば、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などを含んでもよい。
【0036】
前記天然炭水化物の例は、単糖類、例えば、グルコース、フルクトースなど;二糖類、例えば、マルトース、スクロースなど;及び多糖類、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。前述のもの以外に、香味剤として天然香味剤(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に用いてもよい。また、味と栄養を補う目的で用いられる通常の食品添加物、例えば、核酸、アミノ酸、有機酸などを添加してもよい。
【0037】
前記の他、本出願の食品は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。他に、天然フルーツジュース及びフルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は独立的または組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本出願の食品は、当業界で通常的に用いられる方法によって製造可能であり、前記製造においては、当業界で通常添加される原料及び成分を添加して製造してもよい。また、前記食品の剤形も食品と認められる剤形であれば、制限なく製造されうる。
【0039】
また、本出願の食品が健康機能食品として用いられる場合、本出願の食品は様々な形態の剤形で製造することができ、一般薬品とは異なり、食品を原料として薬品の長期服用時に発生可能性のある副作用などがないという利点があり、携帯性に優れ、本出願の食品は補助剤で摂取可能である。
【0040】
一方、本出願の食品は、食品添加剤としても分類できる香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤及び調味素材も含み得る。
本出願の用語「調味素材(flavor)」は、食品の風味を増進するために添加される素材であってもよい。前記調味素材は、食品が優れた呈味性を有するようにする素材であってもよい。
【0041】
前記調味素材は味の成分に応じて分けることができる。すなわち、風味に応じて、ニュートラル(neutral)調味素材、牛肉(beef)風味調味素材、鶏肉(chicken)調味素材、豚肉(pork)調味素材、コク味(kokumi)調味素材などに分けることができる。
【0042】
「コク味調味素材(kokumi flavor)」は、コク味を出す調味素材を意味するもので、前記「コク味」は日本語に由来する単語であり、英語圏では「mouthfulness」、「continuity」、「thickness」、「heartiness」とも表現され、韓国語では「濃い味」、「こってりとした味」、「口の中に広がる味」、「濃厚な味」、「ねばりのある味」などで表現される味を意味することができる。「ニュートラル調味素材(neutral flavor)」は、うま味(umami)を最大化し、その他の風味を最小限に抑えることで、純粋ですっきりとした風味を出す調味素材を意味するもので、例えば、オイルの中からキャノーラ油やブドウ種油などのオイルをニュートラルな風味を有すると呼ぶことができる。「呈味性」は、酸味、甘味、塩味、苦味、うま味などを持つことを意味するが、これに制限されない。
【0043】
本出願の食品は、CJ第一製糖(株)のリンゴ酢またはフルーツ発酵飲用酢製品であってもよく、その例として、プチッチェルミチョ(商標)またはミチョ(登録商標)製品であってもよいが、これに制限されない。本出願の食品は、全食品体積に対して本出願のリンゴ発酵組成物を1~50%(v/v)、1~30%(v/v)、5~50%(v/v)、5~30%(v/v)または10~30%(v/v)の濃度で含まれたものであってもよいが、これに制限されない。
【0044】
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を投与する段階を含む、炎症性サイトカインの発現を減少または抑制する方法を提供する。
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を投与する段階を含む、腸炎の予防、改善、または治療方法を提供する。
【0045】
本出願において、用語「投与」は、任意の適切な方法で炎症性サイトカインが過剰に発現されるか、腸炎が疑われる個体に本出願の組成物を導入することを意味する。
本出願の薬学組成物は、炎症性サイトカインの発現を減少または抑制するか、腸炎を予防、改善または治療することを目的とする個体であれば特に限定されず、いかなる個体にも適用可能である。例えば、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどの非ヒト動物、鳥類及び魚類のいずれも使用することができる。
【0046】
本出願の組成物は、炎症性サイトカインの発現減少または抑制に有効な量で投与してもよく、または腸炎の予防、改善または治療に有効な量で投与してもよい。本出願の組成物の好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができる。
【0047】
また、本出願の組成物は、目的の組織に到達することができる限り、経口または非経口の様々な経路を介して投与することができる。例えば、経口、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、直腸または静脈、筋肉、子宮内硬膜または脳血管内注射で投与することができ、局所治療のために、必要に応じて病変内投与を含む適切な方法によって投与することができる。しかし、これに制限されるものではない。
【0048】
一具現例では、前記リンゴ発酵組成物は、それを含む食品組成物の形態で投与するものであってもよい。この場合、前記投与は経口投与であってもよい。
また他の一具現例では、前記リンゴ発酵組成物は、それを含む健康機能食品組成物の形態で投与するものであってもよい。この場合、前記投与は経口投与であってもよい。
【0049】
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物の炎症性サイトカインの発現を減少または抑制する用途を提供する。
前記リンゴ発酵組成物は、炎症が誘導された細胞に処理時、リンゴ発酵組成物が処理されなかった炎症誘導細胞に比べて炎症誘導による炎症性サイトカインの発現を10%以上減少または抑制するものであってもよいが、これに制限されない。これについては前述の通りである。
【0050】
前記炎症性サイトカインはIL-8であってもよいが、これに制限されない。これについては前述の通りである。
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物の抗炎症用途を提供する。
【0051】
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む食品の腸炎の予防、治療または改善用途を提供する。
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む食品の腸健康の改善用または増進用途を提供する。
【0052】
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む健康機能食品の腸炎の予防、治療または改善用途を提供する。
本出願のまた他の一様態は、本出願のリンゴ発酵組成物を含む健康機能食品の腸健康の改善用または増進用途を提供する。
【0053】
ここで使用される用語は、前の様態で前述した通りである。
【実施例】
【0054】
以下、本出願を実施例によりより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本出願を例示するための好ましい実施様態に過ぎず、したがって本出願の権利範囲をこれに制限することを意図するものではない。一方、本明細書に記載されていない技術的事項は、本出願の技術分野または類似技術分野で熟練した通常の技術者であれば十分に理解し、容易に実施することができる。
【0055】
製造例1:リンゴ発酵組成物の製造
リンゴ濃縮液はリンゴを100%濃縮した市販品で、屈折糖度計の基準糖度60ブリックス以上、酸度6%以下の中国産リンゴ濃縮液を蒸留水で4倍(w/w)希釈して約20ブリックスで製造して使用した。
【0056】
リンゴ発酵組成物は市販のリンゴ酢(酵母及び酢酸菌発酵物、精製水及びリンゴ濃縮液20.86%含有、酸度6~8%;CJ第一製糖(株)健康発酵リンゴ酢)を使用した。
リンゴ発酵組成物及びリンゴ濃縮液から微生物を除去するために、0.2μmフィルターを用いて濾過した。
【0057】
実施例1:腸における炎症抑制能の評価
リンゴ発酵組成物の腸における炎症抑制能をLeeらの方法に従ってLPS(Lipopolysaccharide)により炎症が誘導されたHT-29細胞のヒトインターロイキン-8(Human interleukin-8; hIL-8)発現量で分析した(非特許文献3)。
【0058】
具体的には、HT-29細胞株(韓国細胞株銀行)は、熱不活化された10%ウシ胎児血清(FBS)、1%L-グルタミン、ペニシリンG(100IU/mL)及びストレプトマイシン(100mg/mL)が添加されたRPMI培地(Gibco、USA)で37℃、CO
25%条件で培養した。培養したHT-29細胞を1.5×10
4cells/well(体積250μL)になるように96ウェルプレート(Corning、USA)に分注し、完全に単層(monolayer)を形成するまで3日間培養した(
図1、NCで示す)。その後、上清液を除去した。
【0059】
実験群として、前記製造例1のリンゴ発酵組成物(0.25、0.5%(v/v))及びリンゴ濃縮液(0.25、0.5%(v/v))をそれぞれ250μL/wellずつLPS0.25μg/mLと共に処理した後、16時間培養した。無処理群の場合、LPS0.25μg/mLのみを処理した後培養した(
図1、LPSで示す)。リンゴ発酵組成物の場合、pHはやや低かったが、サンプルの希釈倍数がかなり高く、細胞培地で希釈して緩衝効能によりpHに変化がなく、別のpH調節は進行しなかった。培養後、上清液を採取し、4℃で13,000rpmで3分間遠心分離し、細胞を除いた上清液のみを収得した。その後、上清液内の残留菌体を除去するために0.2μmフィルターを用いて濾過した。
【0060】
収得した上清液をELISAアッセイで分析し、hIL-8発現量を測定した。
具体的には、ELISAアッセイは、Duoset ELISA ancillary reagent kit 2(R&D systems、cat DY008、USA)の製造社の指示に従って以下のように行った。ELISAアッセイを実施するために、IL-8抗体と二次抗体であるビオチン化(biotinylated)が含まれたヒトIL-8/CXCL8 Quantikine ELISA Kit(R&D systems、cat number D8000C、USA)を使用した。ELISAプレートの各ウェルに、IL-8捕捉抗体(Capture antibody, R&D systems, cat number 890462)を常温で24時間付着した。各実験群及び対照群別上清液及びIL-8標準溶液(R&D systems、cat number 890466)を反応希釈液(R&D systems、cat number 895877)に希釈し、各ウェルに100μLずつ入れ、常温で2時間培養した。その後、培養液を除去し、二次抗体であるビオチン化(biotinylated)ヒトIL-8抗体(R&D systems, cat number 890465)を入れ、常温で2時間付着した。発色反応は、各ウェルにストレプトアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(streptavidin-conjugated horseradish peroxidase, R&D systems, cat number 893975)とその基質であるTMB(tetramethylbenzidine, R&D systems, cat number DY999)を処理して誘導した。この時、青色から黄色へ発色反応が進行された。50μLの反応停止溶液(R&D systems, cat number 895032)を処理して反応を停止させた後、分光光度計を用いて470nmで(補正値540nm)吸光度を測定した。
【0061】
その結果、リンゴ発酵組成物処理群及びリンゴ濃縮液処理群ともに、細胞毒性のない0.25、0.5%(v/v)濃度でLPSのみを処理した対照群(LPS)対比hIL-8濃度が有意に減少した(表1、
図1、
###p<0.001、
#p<0.05)。
【0062】
また、腸における炎症抑制能を同一濃度で比較すると、リンゴ濃縮液(0.25%で25%、0.5%で54%)に比べてリンゴ濃縮発酵組成物(0.25%で46%、0.5%で69%)でhIL-8濃度減少率がより高かった(表1、
図1、
###p<0.001、
#p<0.05)。
【0063】
これにより、リンゴ発酵組成物とリンゴ濃縮液の両方が腸で炎症抑制効果を示し、特にリンゴ発酵組成物はリンゴ濃縮液に比べて炎症抑制効果に優れることを確認した。
【0064】
【0065】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。これに関連して、以上で技術した実施例はすべての面で例示的なものであり、制限的なものではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明より後述する特許請求の範囲の意味と範囲及び請求範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【国際調査報告】