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特表2024-530092血液検体濃度の信頼できる検出のために、空間的にスキャンされる誘導ラマン分光法を使用するウェアラブル装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】血液検体濃度の信頼できる検出のために、空間的にスキャンされる誘導ラマン分光法を使用するウェアラブル装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549621
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2022038922
(87)【国際公開番号】W WO2024025564
(87)【国際公開日】2024-02-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トシトヤン,バヘ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,チェオンユエン・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー,ラフィード・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ドブソン,ケリー・エリザベス
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX01
(57)【要約】
本開示は、誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための方法、システムおよび装置を提供する。装置は、ポンプ波長で組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源と、1つまたは複数のストークス波長で組織に向かってストークス光を放射するストークス光源とを含むことができる。装置は、1つまたは複数の、ミラーおよびレンズをさらに含むことができる。装置は、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、ラマンポンプ光源によって放射されたポンプ光、およびストークス光源によって放射されたストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラをさらに含むことができる。装置は、組織から発する光を測定する光検出器をさらに含むことができる。装置は、ユーザ内の検体のレベルを推定するプロセッサをさらに含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための装置であって、
ポンプ波長で前記ユーザの組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源と、
1つまたは複数のストークス波長で前記組織に向かってストークス光を放射するストークス光源と、
1つまたは複数のミラーと、
1つまたは複数のレンズと、
前記1つまたは複数のミラーおよび前記1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラと、
前記組織から発する光を測定する光検出器と、
前記測定された光を処理し、前記ユーザ内の前記検体の推定検体レベルを提供するプロセッサと、を備える、装置。
【請求項2】
前記装置は、検体を測定するための、前記ユーザの前記組織における最適な標的位置を識別する標的分析システムをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ユーザの前記組織における前記最適な標的位置を識別することは、標的サンプリンググリッドを生成することを含み、前記標的サンプリンググリッドは、前記ビームコントローラによって標的化可能な、前記組織の領域内の複数の潜在的な標的ポイントを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ユーザの前記組織における前記最適な標的位置を識別することは、
前記複数の潜在的な標的ポイントにおけるそれぞれのポイントについて、
前記ビームコントローラによって、1つまたは複数の光源の標的を前記それぞれのポイントに定めることと、
より低パワーで前記1つまたは複数の光源を始動することと、
前記それぞれのポイントによって吸収された1つまたは複数の周波数を決定することと、をさらに含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記1つまたは複数の光源は、前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源のうちの1つまたは複数を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記それぞれのポイントによって吸収される前記1つまたは複数の周波数に基づいて、前記標的ポイントにおける組織のタイプを決定することをさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記1つまたは複数の潜在的な標的ポイントの各々に関連した組織のタイプに少なくとも部分的に基づいて、1つまたは複数の潜在的な標的ポイントをランク付けすることと、
前記ランク付けに基づいて前記1つまたは複数の潜在的な標的ポイントから最適な標的ポイントを選択することと、をさらに含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記1つまたは複数の潜在的な標的ポイントは、検出されている前記検体に少なくとも部分的に基づいてランク付けされる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記標的サンプリンググリッドにおける前記ポイントは、三次元アレイにおいて配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のレンズは、焦点深度を調整するために前記1つまたは複数のレンズを上下に移動させることによって調整される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数のミラーは、ユーザの前記組織の前記表面上の特定の標的に前記ポンプ光および前記ストークス光を方向付けるためにミラーを傾斜させることによって調整される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源は、VCSELである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ラマン光源および前記ストークス光源は、単一モードVCSELである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源は、端面発光ダイオードレーザである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ストークス光は、ラマン測定波長の窓内の複数のそれぞれの中心波長で複数の狭帯域放射を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記ビームコントローラは、前記1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の焦点深度を調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記ビームコントローラは、前記ラマンポンプ光源によって放射される前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射される前記ストークス光の標的が定められる前記組織の前記表面上に向けるように前記1つまたは複数のミラーを制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための、コンピュータにより実施される方法であって、
ラマンポンプ光源が、ポンプ波長で前記ユーザの組織に向かってポンプ光を放射するステップと、
ストークス光源が、1つまたは複数のストークス波長で前記組織に向かってストークス光を放射するステップと、
ビームコントローラが、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の標的を最適な標的位置に定めるステップと、
光検出器が、前記組織から発する光を測定するステップと、
プロセッサが、前記測定された光を処理し、前記ユーザ内の前記検体の推定検体レベルを提供するステップと、を含む、コンピュータにより実施される方法。
【請求項19】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための検体推定システムであって、前記装置は、
ポンプ波長で前記ユーザの組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源と、
1つまたは複数のストークス波長で前記組織に向かってストークス光を放射するストークス光源と、
1つまたは複数のミラーと、
1つまたは複数のレンズと、
前記1つまたは複数のミラーおよび前記1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラと、
前記組織から発する光を測定する光検出器と、
前記測定された光を処理し、前記ユーザ内の前記検体の推定検体レベルを提供するプロセッサと、を備える、検体推定システム。
【請求項20】
前記検体推定システムは、検体を測定するために前記ユーザの前記組織における最適な標的位置を識別する標的分析システムをさらに備える、請求項19に記載の検体推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、概して、ユーザの身体における分子の非侵襲的モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
個人に存在する特定の分子の量を測定する必要性を生じ得る人間の医学的状態が多く存在する。例えば、現在、約4億6300万人の成人が糖尿病であると推定される。これらの個人の多くにとって、深刻な医学的合併症を回避するために、血流に存在するグルコースの量の定期的監視が通常生活の一部である。従来、ユーザの身体の内部の化学的組成を測定するために、侵襲的測定方法(例えば、サンプル組織抽出または採血など)が使用されてきた。例示的な技法は、指先穿刺血糖測定および経皮的持続グルコースモニタリング(CGM:continuous glucose monitoring)を含む。これらのシステムは、しばしば、苦痛であり、かつ/または使用するのが高価である。このような測定を繰り返し受けなければならないユーザにとって、グルコースモニタリングに関連する苦痛および出費は、生活の質に著しく影響する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本開示の実施形態の態様および利点は、部分的に以下の説明に示され、または説明から学習されてよく、または実施形態の実施を通じて学習されてよい。
【0004】
1つの例示的な実施形態は、誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための装置を含む。装置は、ポンプ波長でユーザの組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源を含むことができる。装置は、1つまたは複数のストークス波長で組織に向かってストークス光を放射するストークス光源をさらに含む。装置は、1つまたは複数のミラーをさらに含む。装置は、1つまたは複数のレンズをさらに含む。装置は、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、ラマンポンプ光源によって放射されたポンプ光、およびストークス光源によって放射されたストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラをさらに含む。装置は、組織から発する光を測定する光検出器をさらに含む。装置は、測定された光を処理し、ユーザ内の検体の推定検体レベルを提供するプロセッサをさらに含む。
【0005】
本開示の別の例示的な態様は、誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための、コンピュータにより実施される方法である。方法は、ラマンポンプ光源によって、ポンプ光をポンプ波長でユーザの組織に向かって放射するステップを含む。方法は、ストークス光源によって、ストークス光を1つまたは複数のストークス波長で組織に向かって放射するステップをさらに含む。方法は、ビームコントローラによって、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、ラマンポンプ光源によって放射されたポンプ光、およびストークス光源によって放射されたストークス光の標的を最適な標的位置に定めるステップをさらに含む。方法は、光検出器によって、組織から発する光を測定するステップをさらに含む。方法は、プロセッサによって、測定された光を処理し、ユーザ内の検体の推定検体レベルを提供するステップをさらに含む。
【0006】
本開示の別の例示的な態様は、検体推定システムである。システムは、ポンプ波長でユーザの組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源を含む。システムは、1つまたは複数のストークス波長で組織に向かってストークス光を放射するストークス光源をさらに含む。システムは、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズをさらに含む。システムは、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、ラマンポンプ光源によって放射されたポンプ光、およびストークス光源によって放射されたストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラをさらに含む。システムは、組織から発する光を測定する光検出器をさらに含む。システムは、測定された光を処理し、ユーザ内の検体の推定検体レベルを提供するプロセッサをさらに含む。
【0007】
本開示のその他の例示的な態様は、埋め込まれた計算システムを使用して誘導ラマン散乱を測定するための、システム、機器、コンピュータプログラム製品(有形非一時的コンピュータ可読媒体などであるが、必ずしも非一時的形式で記憶されることなく通信ネットワークを通じてダウンロード可能なソフトウェアなど)、ユーザインターフェース、メモリ装置、および電子装置に関する。
【0008】
様々な実施形態のこれらのおよびその他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されるであろう。本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態を示しており、説明と共に、関連する原理を説明するのに役立つ。
【0009】
当業者に向けられた実施形態の詳細な説明が、添付の図面を参照する本明細書に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の例示的な実施形態による、非侵襲的にユーザの腕の領域をスキャンするための例示的な検体推定システムを示す図である。
図2A】光が標的物質に投射されたときに自発ラマン散乱の結果生じる光の波長および強度のグラフである。
図2B】光が標的物質に投射されたときに誘導ラマン散乱の結果生じる光の波長および強度のグラフである。
図2C】本開示の例示的な実施形態による、非侵襲的にユーザの腕における検体を測定するための例示的な検体推定システムを示す図である。
図2D】本開示の例示的な実施形態による、ストークス範囲内の特定の波長で光を発生させるための複数のレーザダイオードを備える例示的な検体推定システムを示す図である。
図2E】本開示の例示的な実施形態による、必要に応じてストークス範囲内の異なる波長で光を発生させるための単一の波長可変ストークスレーザを備える例示的な検体推定システムを示す図である。
図3】本開示の例示的な実施形態による、ユーザ計算装置を含む例示的な計算環境を示す図である。
図4A】本開示の例示的な実施形態による、物質による異なるタイプの光子散乱の例を示す図である。
図4B】本開示の例示的な実施形態による、光散乱の結果としての分子のエネルギ準位変化の例を示す図である。
図5】典型的な検体のためのレイリー散乱光およびラマン散乱光の相対量を示す図である。
図6】本開示の例示的な実施形態による散乱光の波長を表すグラフである。
図7】自発ラマン散乱を示す図である。
図8】誘導ラマン散乱を示す図である。
図9A】自発ラマン散乱によってラマン散乱された光の量を表す例示的なグラフである。
図9B】誘導ラマン散乱によってラマン散乱された光の量を表す例示的なグラフである。
図10A】本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステムの例示的な構成を示す図である。
図10B】本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステムの例示的な構成を示す図である。
図10C】本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の分子を検出するためのシステムの例示的な構成を示す図である。
図10D】本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステム940の例示的な構成を示す図である。
図11】本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の分子の存在を検出するための例示的なシステムを示す図である。
図12A】本開示の例示的な実施形態による、例示的な分子検出システムを表す図である。
図12B】本開示の例示的な実施形態による、例示的な分子検出システムを表す図である。
図13】本開示の例示的な実施形態による、ユーザの体内の分子を非侵襲的に測定するための例示的なシステムを示す図である。
図14】本開示の例示的な実施形態による、光源およびフォトダイオードを備える例示的なシステムを示す図である。
図15】本開示の例示的な実施形態による、複数の発光源のレイアウトを示す図である。
図16】本開示の例示的な実施形態による、例示的な検体検出システムを示す図である。
図17】本開示の例示的な実施形態による、標的内の分析を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図18】本開示の例示的な実施形態による、例示的なデータ分析モデルのブロック図である。
図19】本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図20】本開示の例示的な実施形態による、ユーザ計算装置を含む例示的な計算環境を示す図である。
図20】本開示の例示的な実施形態による、異なる光源からの光を共線的にする検体検出システムの図である。
図21】本開示の例示的な実施形態による、発生した光における極性の効果を示す図である。
図22】本開示の例示的な実施形態による、発生した光における平行および直交偏光の効果を示すグラフである。
図23】本開示の例示的な実施形態による、特定のデューティサイクルに従ってパルスを発生している光源を示す2つのグラフである。
図24】本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図25】本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図26】本開示の例示的な実施形態による、ユーザ計算装置2600を含む例示的な計算環境を示す。
図27】本開示の例示的な実施形態による標的サンプリンググリッドを示す図である。
図28】本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
ここで、実施形態を詳細に参照するが、その1つまたは複数の例が図に示されている。各例は、本開示の限定ではなく、実施形態の説明によって提供される。実際、本開示の範囲または主旨から逸脱することなく、実施形態に対して様々な修正および変更を加えることができることが当業者に明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示または説明された特徴は、別の実施形態と共に使用され、さらに別の実施形態を生じさせることができる。したがって、本開示の態様は、このような修正および変更をカバーすることが意図されている。
【0012】
概して、本開示は、ユーザの体内の1つまたは複数の検体を非侵襲的に監視する検体測定システムの性能を向上させるためのシステムに関する。例えば、例示的な実施形態による、検体を監視するための検体測定システムは、標的物質に光を投射し、物質から放射された光の波長および強度を測定することによって、ラマン分光法を使用して、標的物質(例えば、ユーザの組織)内の検体の量を推定することができる。光のパワー密度が、測定可能なラマン散乱を生じるために十分に高いことを保証するために、投射される光の標的とされる領域は、極めて小さくする(例えば、約1マイクロメートルの直径)ことができる。その結果、光源の標的とされる組織の特定の領域における小さな変動は、存在する検体の量を正確に測定するための検体測定システムの能力に著しく影響する可能性がある。なぜならば、組織のタイプ(本明細書では組織の組成とも呼ばれる)が著しく異なる可能性があるからである。その結果、検体測定システムは、ユーザの組織内の最適な標的位置を識別し、次いで、最適な標的位置に焦点を合わせるように光源の標的を制御することができる(例えば、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズによって)。ユーザの皮膚内の組織の部分に正確に標的を定めることは、標的物質内の検体を測定する際の向上した精度および効率という結果をもたらすことができる。
【0013】
したがって、検体測定システムは、ユーザの組織内の最適な標的位置に特に標的を定めるように、ポンプ光源および1つまたは複数のストークス光源によって投射された1つまたは複数のビームを制御するために、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを使用することによって改善することができる。そうするために、検体測定システムは、(例えば、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御することによって)光源によって標的とされる領域を制御するビームコントローラを含むことができる。
【0014】
ユーザの組織内の最適な標的位置を識別するために、検体検出システムは、検体測定システムがアクセスすることができる組織の領域の疎なサンプリングを行うことができる。例えば、標的位置は、所望の光密度を達成するために1マイクロメートルの直径を有してよい。最適な標的位置を識別するために、システムは、測定のための最適な標的位置を識別するために200マイクロメートル×200マイクロメートルにわたる領域にわたって1マイクロメートルの領域をサンプリングしてよい。最適な標的位置は、特定の検体の識別を可能にする測定応答を示す組織の位置であり得る。サンプリング領域内でサンプリングされた様々な領域は、最善の応答特性を示す領域を識別するために比較されることができる。幾つかの例において、最適な標的位置は、システムが検出しようとする特定の検体に依存し得る。したがって、システムは、潜在的な検体の各々に対する組織の最適なタイプに関連するデータを記憶することができる。例えば、標的検体がグルコースである場合、組織の最適なタイプは、血管の内部であり得る。システムは、内部血管領域を識別するために、サンプリング領域における異なる領域の測定応答を比較してよい。その他の例において、組織の最適なタイプは、変化することができる。
【0015】
最適な標的位置は、特定の検体の存在の正確な測定を提供する位置であってよい。システムは、ユーザの組織における特定の検体の存在の最も正確な測定を生じる組織タイプの識別を記憶することができる。このデータは、検体測定システムにアクセス可能なデータベースに記憶することができる。検体測定システムは、データベースにおけるデータを、システムが疎なスサンプリングを行うときに決定された組織のタイプと比較することができる。幾つかの例において、最適な標的位置を決定するために、組織タイプ以外のファクタを使用することができる。例えば、最適な標的位置を決定する際に、特定の位置の組織内の深さを使用することができる。例えば、2つの位置が同じ組織タイプを有する場合、検体測定システムは、ユーザの組織内のより小さな深さを有する位置を選択することができる。
【0016】
疎なサンプリングは、検体測定システムによって標的とすることができる領域を規定し、この領域をカバーするように三次元グリッドに配置された複数のポイントを決定することによって達成することができる。三次元グリッド(または標的サンプリンググリッド)は、(x軸およびy軸に沿った)皮膚の表面に対する異なる位置に、および(z軸に沿った)皮膚内の異なる深さでポイントを含むことができる。標的サンプリンググリッドにおける各ポイントについて、検体検出システムは、ビームコントローラを使用して、それぞれのポイントに光を投射することができる。検体検出システムは、それぞれのポイントにおける光の吸収を測定することができる。
【0017】
幾つかの例において、中心グリッドのサイズは、レーザの標的を定めるために制御することができる、レーザ、ミラーおよびレンズの特性によって決定することができる。例えば、標的サンプリンググリッドは、200マイクロメートル×200マイクロメートルであり得る。検体測定システムは、二次元において標的サンプリンググリッドの表面に沿って5マイクロメートルごとに間隔を置いてサンプリングポイントを配置することができる。加えて、検体測定システムは、組織内の異なる深さでサンプリングすることができる。例えば、標的サンプリンググリッドは、3つの深さの層を含むことができ、各層は、他の層よりも5マイクロメートルだけ深く、第1の層は表面上にあり、第2の層は組織内の5マイクロメートルの深さにあり、第3の層は組織内の10マイクロメートルの深さにある。標的サンプリンググリッドおよび標的サンプリングの深さのその他の寸法を使用することができる。
【0018】
サンプリングされている組織における物質のタイプを決定するために、異なる波長の光の吸収を使用することができる。例えば、異なる物質は、異なる波長の光を吸収することができ、異なる波長の光を放射することができる。その組織から放射された光の量および強度を測定し、光の中へ送信された光波長の量および強度と比較することができ、これにより、吸収された異なる実験室長さの量を決定する。
【0019】
異なる波長の吸収を比較し、それを組織タイプ波長吸収データと比較することによって、検体測定システムは、その位置における組織のタイプを推定することができる。例えば、位置は、間質液、表皮に関連した細胞、真皮に関連した細胞、脂肪細胞、腺、神経細胞、血管、卵胞などのうちの1つまたは複数であり得る。検体推定システムは、疎なサンプリングを行うために、検体検出中に使用されるのと同じ光源および光検出器を使用することができる。しかしながら、使用される光の量および強度は、疎なサンプリングプロセス中に減じられることができる。このように、検体推定システムは、より少ない電力を使用し、特定の領域内の複数のポイントで組織のタイプを迅速に識別することができる。
【0020】
幾つかの例において、特定の位置における組織のタイプは、検体測定システムの精度に影響し得る。したがって、検体測定システムは、対象の検体を正確に測定することに最も寄与する組織タイプを有する特定の位置を、疎なスキャニングに基づいて選択することができる。選択された位置は、検体を測定するための最適な標的位置として記憶することができる。検体測定システムは、ビームコントローラを使用して、1つまたは複数の光源(例えば、ラマンポンプ光源および1つまたは複数のストークス光源)からのビームを最適な標的位置に集束させることができる。光検出器は、標的位置から放射された光を測定することができる。放射された光に基づいて、検体測定システムは、ユーザの身体内の特定の検体の量を決定することができる。
【0021】
より一般的に、ラマン分光法は、ラマン散乱を使用し、特定の標的物質(例えば、ユーザの組織)に検体が存在するかどうかを決定する。ラマン散乱は、光源(例えば、ポンプレーザ)によって励起光を標的サンプルへ投射することができる光学プロセスである。入射励起光によって、標的サンプル内の分子を、より高いエネルギ状態に励起させることができる。励起された分子は光子を放射し、これにより、分子のエネルギをより低いエネルギ準位に低下させる。幾つかの例において、より高いエネルギ状態は、分子がその状態に実際に励起されないように仮想励起状態であり得る。代わりに、励起および緩和(光子が放射されるとき)の双方は、仮想状態を介して同時に生じる。
【0022】
ラマン散乱によって発生した光子に存在する特定の波長は、励起光によって励起された分子の化学結合の振動モードおよび入射光の波長によって決定することができる。検体の存在を決定するためにラマン散乱を使用するシステムは、自発ラマン散乱または誘導ラマン散乱のいずれかを実施することができる。本明細書に記載のシステムおよび方法を実行するために、その他のタイプのラマン散乱を使用することができることに留意されたい。
【0023】
検体検出システムは、計算装置に含まれることができ、ユーザの組織内の特定の検体の量および/または密度を識別するために使用することができる。幾つかの例において、検体検出システムは、ウェアラブル計算装置に一体化することができる。このようなウェアラブル計算装置は、スマートウォッチ、フィットネスバンド、または任意のその他のタイプのウェアラブル計算装置を含むことができる。幾つかの例において、ウェアラブル計算装置は、検体検出システムをユーザの皮膚に対して直接配置することができるように着用することができる。このように、検体検出システムは、ユーザによって特別な動作がなされることなく検体を目立たずに測定することができる。
【0024】
検体検出システムは、特定の波長(例えば、850ナノメートル)で光を投射するラマンポンプ光源を含むことができる。検出器は、ラマンポンプ光源の波長で反射された光を測定することができる。これは、ラマン散乱されていない、代わりにポンプレーザによって発生した光と同じ波長を有する光であり得る。ラマンポンプ光源によって放射された波長(例えば、850ナノメートル)で検出されるピークは、レイリーピークと呼ぶことができる。レイリー散乱は、標的サンプルによって放射されかつポンプ光と同じ波長を有する光を指すことができる。レイリー散乱は、ラマン散乱よりもはるかに一般的であり、したがって、レイリーピークでの光の強度は、ラマン散乱の結果である光について測定された強度よりも高くなり得る。
【0025】
ラマン散乱光は、(測定される特定の検体に応じて)1つまたは複数の特定の波長で、または所定の波長範囲内で検出することができる。この光は、標的物質によって放射された光が、ポンプレーザによって生成された光とは異なる波長を有する、自発ラマン散乱の結果である。特定の分子によってラマン散乱によって発生する波長の範囲は、当初投射された光子よりも高い波長を有する放射光子に対するその分子のストークス範囲、または当初投射された光子よりも低い波長を有する光子のための反ストークス範囲と呼ぶことができる。
【0026】
ラマン散乱される光の量を増大させるために、1つまたは複数のストークスレーザが、検体検出システムに含まれることができ、光を標的物質に投射することができる。幾つかの例において、ストークス光源は、検体に関連した波長範囲にわたって光を提供することができる。ストークス光源は、波長範囲内の全ての波長で光を提供する広帯域光源であり得る。1つまたは複数のストークス光源の存在の結果、ラマン応答が著しく高くなり得る。その結果、検体の存在をより容易に識別することができる。
【0027】
生じる(したがって、より容易に検出される)ラマン散乱光の量を決定する重要なファクタは、標的組織の領域に投射される光のパワー密度である。したがって、光源からの光は、ユーザの組織の比較的小さな領域に集束させられることができる(その小さな領域におけるパワー密度を高めるため)。例えば、標的領域は、約1マイクロメートルの直径を有し得る。光が組織内の小さな領域に集束させられると、その位置における組織のタイプは、検体の存在、量および/または密度を識別する際にシステムの有効性に著しく影響することができる。
【0028】
したがって、検体検出システムは、可能な標的ゾーン内の様々な異なる位置で組織のタイプを識別することができる。このように、検体検出システムは、特定の検体を検出するために最適な組織タイプを有する特定の位置を識別することができる。そうするために、検体検出システムは、疎なサンプリングプロセスを実行することができる。疎なサンプリングプロセスを実行するために、検体検出システムは、1つまたは複数の光源(例えば、ラマンポンプ光源および1つまたは複数のストークス光源)によって標的とすることができる三次元領域を決定することができる。標的とすることができる三次元領域は、ビームコントローラにとって利用可能な制御機構に基づくことができる。例えば、1つまたは複数のミラーが、検体検出システムに含まれるか、または検体検出システムにアクセス可能であり得る。1つまたは複数の光源によって発生した光の標的をユーザの組織の表面に沿った異なるポイントに定めることができるように、1つまたは複数のミラーを傾斜させることができる。(例えば、x軸およびy軸によって規定される方向において)トータル可能標的範囲は、標的とすることができる領域の境界であり得る。
【0029】
加えて、光源の焦点深度を制御するために調整することができる1つまたは複数のレンズを含むことができる。1つまたは複数のレンズは、互いに近づくようにまたは互いから離れるように移動させられることができ、これにより、光が集束させられる深度を調整する。幾つかの例において、レンズのうちの1つまたは複数は固定されており、1つまたは複数は、ねじの回転により上下に移動させられることができる。幾つかの例において、調整可能なレンズは円形であり、レンズを回転させることは、光がそれを通過するときに光に影響を及ぼさない。レンズが光源の焦点深度を調整することができる程度は、標的とすることができる領域の深度(例えば、領域のz軸)を決定することができる。
【0030】
特定の密度において標的を定めることができる領域全体をカバーするように、ポイントの標的サンプリンググリッドを生成することができる。幾つかの例において、領域における組織のタイプのより高い解像度を得るために、ポイントのより高い密度を使用することができる。しかしながら、ポイントの数を増大させることは、時間および使用される電力の増大を生じる可能性がある。
【0031】
ポイントの標的サンプリンググリッドが確立されると、検体検出システムは、各グリッド位置で1つまたは複数の光源からの光(例えば、ラマンポンプ光および/またはストークス光)を放射することができる。幾つかの例において、特定の位置における組織のタイプを決定するために使用される場合、光源は、検体検出を実行するために使用される場合よりも、低パワーでかつより少ない量の時間にわたって動作する。このように、疎なサンプリンググリッド内の各ポイントにおける組織のタイプを識別するために使用される時間およびパワーを減じることができる。幾つかの例において、検体検出システムは、ポイントのグリッドにおける各ポイントにおいて光を順次に投射することができる。そうするために、各ポイントに標的を定めるようにビームコントローラが1つまたは複数の光源を調整することができる。ラマンポンプ光源と1つまたは複数のストークス光源とのうちの1つまたは複数は、各ポイントにおいて光を放射するために作動させることができる。次いで、光検出器は、検出された光の周波数に基づいて、各ポイントによって吸収される周波数を決定することができる。投射されかつ光検出器によって検出されない光の任意の周波数は、吸収されると決定することができる。同様に、1つまたは複数の特定の周波数における光の強度が他の周波数に対して減じられる場合、システムは、これらの周波数における光が少なくとも部分的に吸収されると決定することができる。次いで、このプロセスは、ポイントの標的サンプリンググリッドにおける各ポイントに対して繰り返すことができる。
【0032】
検体検出システムは、それぞれのポイントによって吸収される光を検出することができる。上記のように、光検出器は、組織から放射された光を検出することができ、どの波長が吸収されたかを決定することができる。幾つかの例において、標的サンプリンググリッドにおける各ポイントにおいて吸収されると決定された波長を分析することができる。異なるタイプの組織は異なる周波数の光を吸収することができる。その結果、光の吸収される波長は、標的サンプリンググリッドの各それぞれのポイントにおける組織のタイプを推定するために使用することができる。検体検出システムは、標的サンプリンググリッドにおける各ポイントについて推定された組織のタイプを記憶することができる。幾つかの例において、検体検出システムがユーザの組織における検体を検出するたびに、標的領域の新たな疎なサンプリングを実行することができる。
【0033】
その他の例において、検体検出システムは、将来の使用のために組織タイプデータを記憶することができる。このように、ユーザの組織のタイプのマップを生成することができる。幾つかの例において、ユーザの身体のタイプのマップが生成されると、検体検出システムは、標的サンプリンググリッド内のより少ないポイントをスキャンし、そのデータを使用し、ユーザの組織のどの部分が現在標的領域内にあるかを正確に決定することができる。したがって、検体検出システムがフィットネスバンドまたはスマートウォッチなどのユーザ計算装置に含まれる場合、ユーザ計算装置の位置の小さな変化は、全てのポイントの新たなスキャンの必要性を生じない。その代わり、減じられた数のポイントのスキャンは、検体検出システムが、既に十分にマッピングされた比較的少数の可能な位置からユーザ計算装置の現在の位置を決定することを可能にすることができる。
【0034】
幾つかの例において、ユーザ計算装置は、絶対的な意味でおよびユーザの身体に対して、ユーザ計算装置の運動を測定するための加速度計を含むことができる。このように、ユーザ計算装置は、新たなスキャンを行うか(ユーザの身体に対する有意な動きが生じた場合)否かを決定することができる。
【0035】
幾つかの例において、検体検出システムは、最適な標的位置として標的サンプリンググリッド内の複数のポイントから1つのポイントを選択することができる。幾つかの例において、最適な標的位置は、その位置における組織のタイプおよび/または検出されている特定の検体に基づいて選択することができる。したがって、幾つかの検体は、血管または間質液中でより容易に検出される。
【0036】
最適な標的位置が決定されると、ビームコントローラは、光源(例えば、ラマンポンプ光源および1つまたは複数のストークス光源)の標的を最適な標的位置に定めることができる。検体検出システムは、組織によって放射された光を測定し、上記のように1つまたは複数の検体の存在を検出することができる。
【0037】
開示される技術の実施形態は、特に標的物質中の検体を検出する分野において、多くの技術的効果および利益を提供する。特に、開示された技術の実施形態は、ユーザの組織中の検体を検出するための改善された技法を提供する。例えば、検体検出の分野において生じる1つの特定の技術的問題は、幾つかのタイプの組織において、他のタイプよりも容易に検出が達成されるということである。光源が組織の非常に小さな領域に焦点を合わせる場合、検体を検出するために最適ではない組織タイプに焦点を合わせることは、検体を正確に検出することを失敗させる可能性がある。この問題を解決するために、開示される技術は、初期スキャンを使用し、複数の異なるポイントにおいて組織のタイプを決定し、適切なタイプのポイントを選択することを説明する。そうすることは、総電力消費を減じながら検体推定システムの精度および有効性を高める。システムの精度および有効性を高めながら電力消費を減じることは、ユーザにとって著しい利益を生じる。
【0038】
図面を参照し、本開示の例示的な実施形態をさらに詳細に説明する。
図1は、本開示の例示的な実施形態による、ユーザの腕の領域を非侵襲的にスキャンするための例示的な検体推定システムを示す。この例において、検体測定システムは、ユーザの腕130の組織における検体を測定することができる。検体測定システムの1つまたは複数の光源134は、ユーザの腕のスキャニング領域132の任意の部分に光を投射することができる。
【0039】
検体測定システムは、まず、光が投射されることができるスキャニング領域132内の投射光のための最適な標的位置を決定することができる。トータル領域132のうちのどの特定の領域を1つまたは複数の光源134が標的とすべきかを決定するために、検体測定システムは、まず、トータル領域132をサンプリングすることができる。そうするために、1つまたは複数の光源134は、一連の位置に標的を定めることができ、例えば、位置は、140-1,140-2および140-3を含むことができる。多くのさらなる位置が示されているが、説明しやすくするために符号は付されていない。1つまたは複数の光源134は、まず、第1の位置140-1に標的142-1を定めることができる。1つまたは複数の光源134は、その後、第2の位置140-2に標的142-2を定めることができる。1つまたは複数の光源134は、その後、第2の位置140-3に標的142-3を定めることができる。1つまたは複数の光源134は、グリッド内の各位置に標的を定め続けることができる。各位置について、1つまたは複数の光源134は、その位置に光を投射することができる。光検出器は、次いで、標的位置から放射された光の量、波長および強度を測定することができる。放射された光の波長および強度を比較することにより、検体検出システムは、標的位置の吸光特性を決定することができる。
【0040】
図2Aは、光が標的物質に投射されたときに自発ラマン散乱の結果生じる光の波長162および強度160のグラフを示す。この例において、ポンプレーザ112は、特定の波長(例えば、850ナノメートル)で光を投射することができる。例示的なグラフに見られるように、高い強度を有する光が、ポンプレーザ112の波長で測定される。これは、ラマン散乱されず、その代わりに、ポンプレーザ112によって発生した光と同じ波長を有する光を表す。ラマンポンプ光源によって放射された特定の波長(例えば、850ナノメートル)で検出されるピークは、レイリーピークと呼ぶことができる。レイリー散乱は、ターゲットサンプルによって放射されかつポンプ光と同じ波長を有する光を指すことができる。レイリー散乱は、ラマン散乱よりもはるかに一般的であり、したがって、レイリーピークにおける光の強度は、ラマン散乱の結果である光について測定される強度よりも高くなり得る。
【0041】
この特定の例において、ラマン散乱された光は、約900ナノメートルおよび1000ナノメートルの間の波長で検出される。しかしながら、測定される特定の検体に応じて、その他の範囲の波長を測定することができる。この光は、標的物質によって放射された光が、ポンプレーザ112によって生成された光とは異なる波長を有する自発ラマン散乱の結果である。特定の分子によってラマン散乱によって発生した波長の範囲は、当初投射された光子よりも高い波長を有する放射光子に対するその分子のストークス範囲、または当初投射された光子よりも低い波長を有する光子に対する反ストークス範囲と呼ぶことができる。ピーク強度が測定される波長を含むがこれに限定されない、検出されたストークス範囲の特定の特徴は、分子のためのラマンシグネチャを生成するために分析することができる。ラマンシグネチャは、特定の分子に関連した検出されたストークス範囲の特定の特徴(例えば、ピーク)を表すことができる。このようにして、ラマンシグネチャは、特定の分子が標的物質に存在するときに生じるストークス範囲を分析することによって、この特定の分子が識別されることを可能にすることができる。レイリーピークの他方の側に生じることができ、放射された光がポンプレーザ112によって発生した光よりも低い波長を有するラマン散乱を表す反ストークス範囲は示されていない。本開示の多くは、ストークス範囲の観点から説明されるが、開示された概念は、反ストークス範囲内の波長と共に利用され得ることが理解されるであろう。
【0042】
図2Aにおいて、3つのピーク(166,168および170)がストークス範囲に存在する。この情報、およびストークス範囲についてのその他の情報を使用して、特定の検体が標的物質に存在するかどうか、およびどのような濃度で存在するかを決定することができる。しかしながら、自発ラマン散乱で発生するラマン散乱の量は、極めて低い。その結果、対応するストークス範囲またはラマンシグネチャによって分子を識別するために必要とされる情報は、検出することが困難である可能性がある。
【0043】
図2Bは、光が標的物質に投射されたときに誘導ラマン散乱の結果生じる光の波長162および強度160のグラフを示す。ポンプレーザ112に加えて、1つまたは複数のストークスレーザ116が、光を標的物質に投射することができる。幾つかの例において、ストークス光源116は、検体に関連した波長範囲にわたる光を提供することができる。従来、ストークス光源は、LEDがオンにされたときに波長範囲内の全波長で広帯域光を提供するLEDであり得る。
【0044】
ストークスレーザ116の結果、ラマン応答は著しく高くなる。その結果、分子のストークス範囲、したがって、ラマンシグネチャをより容易に検出することができ、検体をより容易に識別することができる。
【0045】
図2Cは、本開示の例示的な実施形態によるユーザの腕における検体を非侵襲的に測定するための例示的な検体推定システムを示す。ポンプレーザ188(例えば、第1の光源)は、標的物質180に光を投射することができる。この例において、標的物質180は、ユーザの腕の皮膚およびその他の組織である。投射された光は、第1の波長でポンプレーザ188によって発生させることができる。検体推定システムは、1つまたは複数のストークスレーザ189も含むことができる。誘導ラマン散乱を容易にするために、1つまたは複数のストークスレーザ189は、標的検体のラマンシグネチャに関連した波長で光を発生するように構成することができる。ポンプレーザ188および1つまたは複数のストークスレーザ189は、垂直共振器面発光レーザ(VCSELs:vertical-cavity surface-emitting lasers)であることができ、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)184に統合することができる。
【0046】
1つまたは複数のストークスレーザ189は、狭帯域光源であり得る。ポンプレーザ188も、幾つかの例において狭帯域光源であり得る。本明細書において使用されるように、狭帯域光源は、対象の検体のためのラマン散乱した放射に関連した関連波長範囲(例えば、ストークス範囲)に対して狭い波長範囲内に収まる波長を光子が有するように光を投射することができる。幾つかの例において、狭帯域光源は、特定の時点に発生するその波長範囲の割合に基づいて規定することができる。例えば、狭帯域レーザは、レーザが投射することができるトータル波長範囲の10%の帯域幅内にある光を発生させることができる。例えば、特定のストークスレーザ189が、500ナノメートル~1500ナノメートルの範囲内の光を発生させることができるように調整可能である場合、狭帯域レーザは、各光子の波長が100ナノメートル範囲内(例えば、レーザのトータル範囲の10%)に入るように光を投射することができる。別の例において、狭帯域レーザは、レーザのトータル波長範囲の1%の波長帯域幅を有する光を投射するレーザとして定義することができる。この定義によれば、狭帯域レーザは、(例えば、全ての投射された光が、目標波長の5ナノメートル以内の波長を有するように)10ナノメートル範囲内に入る光を生成することができる。
【0047】
幾つかの例において、ストークスレーザ189は、波長可変レーザが生成することができる波長の範囲にわたって狭帯域レーザを掃引することができる単一の波長可変レーザであり得る。幾つかの例において、波長可変レーザは、標的検体のストークス範囲内の波長にわたって掃引することができる。別の例において、ストークスレーザ189は、複数のレーザダイオードを含むことができ、各レーザダイオードは、標的検体のストークス範囲内の波長付近を中心とする狭帯域の光を発生させる。
【0048】
幾つかの例において、狭帯域VCSEL光源は、温度および電流を使用して比較的小さな範囲(例えば、約5nm範囲)にわたって調整可能であり得る。このように、狭帯域VSCEL光源は、より広い波長可変性を可能にするためにチップに統合された追加的な機械的構成要素(例えば、MEMSミラー)などの、波長可変レーザに典型的に含まれる余分な構成要素なしに、より大きな範囲を得ることが可能となることができる。
【0049】
幾つかの例において、その他の構成を使用することができる。例えば、検体推定システムは、波長可変ストークスレーザと組み合わされた2つ以上のポンプレーザを含むことができる。したがって、検体推定システムは、20nm離れた2つのポンプレーザ188と、20nm範囲にわたって調整可能な単一の波長可変ストークスレーザ189とを含むことができ、その結果、合計で40nmの可能なラマンシフト範囲を生じる。加えて、または代替的に、20nm離れた3つのポンプレーザを備えると、範囲を3倍にすることができる。加えて、または代替的に、1つまたは複数の固定波長ストークスレーザ189および波長可変ポンプレーザ188。
【0050】
ポンプレーザ188によって投射された光は、標的物質180内の1つまたは複数の分子を励起することができる(例えば、分子内の電子は、より高いエネルギ準位に上昇させられる)。分子は、より低いエネルギ準位に戻り、1つまたは複数の光子を放射することができる。光検出器182は、標的物質180から放射された光を検出することができる。検出された光は、様々な波長での光の強度のグラフに表すことができる。
【0051】
検出された光は、入射光によって励起された分子に対してストークス範囲を形成することができる。特定の検体についてのストークス範囲にわたる波長でのスペクトル強度は、特定のラマンシグネチャを形成することができる。幾つかの例において、ラマンシグネチャは、ピークが検出される波長、ピークの間の間隔、および/または1つまたは複数の波長で検出される光の強度に基づいて、特定のパターンに関連付けられることができる。ストークス範囲において検出された特徴は、標的物質に存在する1つまたは複数の検体を決定するために所定のラマンシグネチャと比較することができる。
【0052】
ストークス範囲を表すデータは、ストークス範囲に含まれる波長の範囲内の各波長での光の量または光の強度を表す情報を含むことができる。ストークス範囲を表すデータは、ピーク波長(例えば、測定された強度が他の近くの波長よりも高い波長)、トラフ、ピーク間の距離、各ピーク波長間の距離、およびポンプレーザの波長などを含む、1つまたは複数の特徴を決定するために分析することができる。
【0053】
図2Dは、本開示の例示的な実施形態による、ストークス範囲内の1つまたは複数の特定の波長での光を発生する複数のレーザダイオードを備える例示的な検体推定システムを示す。図1Cのように、ポンプレーザ188は、標的物質に光を投射する。複数のストークスレーザ(189-1,189-2および189-3)は、ポンプレーザ188の中心波長とは異なる中心波長を有する狭帯域光を標的物質180へ投射することができる。光検出器182は、標的物質180内の検体によって放射された光を測定するように配置することができる。
【0054】
ストークスレーザ189は、各々、ストークス範囲内の異なる波長に対して狭帯域光を発生することができる(例えば、ストークスレーザによって発生する光は、ストークスレーザのトータル波長範囲の割合としてまたは目標波長の1ナノメートル以内などの特定の波長数として表すことができる特定の波長帯域内に入る)。1つの例示的な実施形態において、ポンプレーザ(例えば、第1の光源)およびストークスレーザ(例えば、1つまたは複数の第2の光源)は、各々が40ミリワットの電力を使用するVCSELである。その他の例において、異なる量の電力を使用する異なるレーザを使用することができる。
【0055】
光はその波長ではなくその波数に基づいて測定することができることに留意すべきである。波数は、電磁波の空間周波数を表すことができ、基準値に対して測定することができる(例えば、この場合、ポンプレーザによって生成される光は、0の波数を有すると考えることができ、1つまたは複数の第2の光源によって生成される光は、ポンプレーザによって生成される光の波数に対する波数が与えられることができる)。
【0056】
図2Eは、本開示の例示的な実施形態による、ストークス範囲内の異なる波長で光を発生させる単一の波長可変ストークスレーザ189を備える例示的な検体推定システムを示す。図1Cのように、ポンプレーザ188は、標的物質に光を投射することができる。波長可変ストークスレーザ189は、対象のストークス範囲内の任意の波長に合わせて調整可能な、標的物質180へ狭帯域の光を投射することができる光を発生させることができる。幾つかの例において、波長可変レーザは、ストークス範囲の下端での狭帯域の光で開始し、任意のポイントで、狭帯域の光波長を拡大することなくストークス範囲全体に沿って掃引するように波長を調整することができる。光検出器182は、標的物質180内の検体によって放射される光を測定するように配置することができる。
【0057】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、計算装置100を含む例示的な計算環境を示す。計算装置100は、ユーザの内部の1つまたは複数の検体の存在および量を非侵襲的に決定するための検体推定システムを含むことができる。幾つかの例において、計算装置100は、スマートフォンまたはウェアラブル計算装置などのユーザ計算装置であり得る。その他の例において、計算装置100は、携帯用ではなく、家庭での使用が意図された計算装置であり得る。この例において、ユーザ計算装置100は、1つまたは複数のプロセッサ102と、メモリ104と、検体推定システム110とを含むことができる。
【0058】
より詳細には、1つまたは複数のプロセッサ102は、計算装置100のための任意の適切な処理装置であり得る。例えば、このようなプロセッサは、1つまたは複数のプロセッサコア、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、コントローラ、マイクロコントローラなどのうちの1つまたは複数を含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、1つのプロセッサまたは動作可能に接続された複数のプロセッサであり得る。メモリ104は、RAM、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ装置などの、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、それらの組合せとを含むことができる。
【0059】
特に、幾つかの装置において、メモリ104は、検体推定システム110を実装するための命令108を記憶することができる。「システム」という用語は、専用ハードウェア、より一般的なプロセッサ上で実行するコンピュータロジック、またはそれらの組合せを指すことができることが理解されるであろう。したがって、システムは、ハードウェア、特定用途向け回路、ファームウェア、および/または汎用プロセッサを制御するソフトウェアにおいて実装することができる。一実施形態では、システムは、記憶装置に記憶され、メモリにロードされ、かつプロセッサによって実行される、プログラムコードファイルとして実装することができるか、または、RAM、ハードディスクまたは光もしくは磁気媒体などの有形的コンピュータ可読記憶媒体に記憶された、コンピュータプログラム製品、例えば、コンピュータ実行可能命令から提供することができる。
【0060】
メモリ104は、1つまたは複数のプロセッサ102によって検索、操作、作成または記憶することができるデータ106をも含むことができる。幾つかの例示的な実施形態において、このようなデータは、アクセスされて、検体推定システム110への入力として使用することができる。幾つかの例において、メモリ104は、1つまたは複数のプロセスおよびこれらのプロセスをどのように実行することができるかを記述する命令を実行するために使用されるデータを含むことができる。
【0061】
幾つかの例において、検体推定システム110は、ポンプレーザ112と、1つまたは複数のストークスレーザ116と、光検出器122と、ラマン散乱推定システム120とを含むことができる。図示していないが、検体推定システム110は、光学フィルタと、レーザを同じ領域(例えば、ユーザの皮膚の同じ部分)に集束させるための1つまたは複数の光学レンズ(例えば、マイクロレンズ)も含むことができる。ポンプレーザ112(例えば、第1の光源)は、放射された光が目標波長の一定の範囲内の特定の波長を有するように、狭い波長帯域内の光(例えば、光子の流れ)を放射するレーザダイオードであり得る。幾つかの例において、ポンプレーザは、780ナノメートルの平均波長を有する狭帯域光を生成することができる。ポンプレーザ112のその他の波長が使用されてもよく、1つまたは複数のストークスレーザ116の波長は、少なくとも部分的にポンプレーザ112の波長に基づいて決定される。幾つかの例において、ポンプレーザ112は、半導体チップに含まれた垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得る。幾つかの例において、ポンプレーザ112によって放射される光の波長は、850ナノメートルである。その他の波長を使用することができる。
【0062】
ポンプレーザ112は、変調システム114を含むことができる(または変調システム114に関連付けられることができる)。変調システム114は、ポンプレーザ112によって生成された光を変調するために使用することができる波形を生成することができる波形発生器を含むことができる。ポンプレーザは、第1の光源と呼ぶことができる。ポンプレーザ112によって生成された光を変調することによって、検体推定システム110は、(例えば、フィルタまたはロックイン増幅器を使用して)、ポンプレーザ112から生じた光によって励起された後に標的物質が放射する光と、1つまたは複数のストークスレーザ116から生じる光によって励起された後に標的物質が放射する光とを区別することができる。
【0063】
1つまたは複数のストークスレーザ116は、必要に応じて所定の範囲内の波長を有する光を生成することができる波長可変レーザを含むことができる。したがって、波長可変レーザは、光源によって生成された光の波長がある範囲内で変化することができるように調整することができる。例えば、幾つかの例において、波長可変レーザは、910ナノメートルから980ナノメートルまで変化することができる波長を有する光を放射するように調整することができる。幾つかの例において、波長可変レーザによって生成される光の波長は、検体推定システム110が識別しようとしている特定の検体のラマンシグネチャに基づいて決定することができる。幾つかの例において、ポンプレーザおよび1つまたは複数のストークスレーザの両方は、動作するために約40ミリワットの電力を使用することができる。
【0064】
幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザは、変調システム114を含むことができる。したがって、幾つかの構成において、ポンプレーザ112は、1つまたは複数のストークスレーザ116によって生成された光から、ポンプレーザ112によって生成された光を区別するために変調される。その他の例において、1つまたは複数のストークスレーザ116は、2つの光源を区別するために変調される。
【0065】
幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザ116は、検体推定システム110が識別しようとしている特定の検体(例えば、グルコース)のラマンシグネチャに調整された波長を有する光を提供することができる。検体のラマンシグネチャに基づいて決定された波長を有する追加的な光(例えば、光子の流れ)を提供することによって、検体推定システム110は、誘導ラマン散乱を生じさせることができる。誘導ラマン散乱の結果、1つまたは複数のストークスレーザ116によって提供される光は、1つまたは複数のストークスレーザ116によって提供される追加的な光がない場合に予測されるよりも多くのラマン散乱を誘導することができる。したがって、1つまたは複数のストークスレーザ116によって提供される光を導入することは、ラマン散乱の可能性が増大されるので、サンプル物質内の特定の検体の検出可能性を高めることができる。
【0066】
幾つかの例において、検体推定システム110は、光検出器122を含むことができる。光検出器122は、フォトダイオードなどのセンサ(例えば、光(例えば、光子)を電流に変換する半導体装置)であり得る。フォトダイオードは、波長範囲にわたって光を検出するように構成することができる。幾つかの例示的な実施形態において、光は、特定の波長範囲内の光のみが光検出器によって検出されるように光学的にフィルタリングすることができる。光の量は、検出される光子の数および/または特定の波長で測定される光の強度であると理解することもできる。
【0067】
幾つかの例において、フィルタは、ポンプレーザ112から生じた光のみが検出されるように、1つまたは複数のストークスレーザ116に関連した標的放射光を除去するために使用することができる。同様に、光学フィルタは、ストークスレーザ116またはラマン散乱委より生じる標的放射光のみが光検出器によって検出されるように、ポンプレーザ112に関連した波長を有する光を除去することができる。幾つかの例において、フィルタ(またはロックイン増幅器)は、1つまたは複数のストークスレーザ116が変調されたならば、変調光を除去することができ、ポンプレーザ112が変調されたならば、非変調光を除去することができる。
【0068】
ラマン散乱推定システム120は、サンプル物質内の検体に関連したラマン散乱によって発生した光の量(例えば、光の強度または光子の数)を検出するために使用することができる。幾つかの例において、ラマン散乱推定システム120は、標的物質内の検体を識別するためにラマン散乱された光の量(例えば、光子の数または光の強度のいずれか)を決定することができる。第1の例において、ユーザ計算装置は、失われたポンプ波長(例えば、第1の波長)における光の量(誘導ラマン損失)を決定することができる。代替的に、ユーザ計算装置は、得られたストークス関連波長の光の量(例えば、誘導ラマンゲイン)を決定することができる。測定値またはそれらの組合せのいずれかは、標的物質(例えば、ユーザの皮膚)における特定の検体の量を推定するために使用することができる。検出されたストークス範囲は、標的検体の存在または不在を非侵襲的に測定するために基準スペクトルと比較することができる。
【0069】
例えば、サンプル物質は、ユーザの身体の一部であり得る。検体は、例えば、グルコースであり得る。ラマン散乱推定システム120は、所定の第2の波長を有する光の量に基づいて、標的サンプルにおける検体の量を推定することができる。幾つかの例において、検体の推定量は、ユーザに表示するために提供することができる。
【0070】
図4Aは、物質による異なるタイプの光子散乱の例を示す。この例に見られるように、入射光子200(例えば、入射光)は、特定のサンプル分子と相互作用することができる。入射レーザの1つまたは複数の光子は、サンプル分子(例えば、サンプル分子の電子)と相互作用することができ、電子のエネルギ準位を一時的に上昇させる。電子のエネルギ準位がより低い準位に戻ると、光子が放射される。幾つかの例において、このプロセスを散乱と呼ぶことができる。散乱は、レイリー散乱およびラマン散乱を含むことができる。レイリー散乱(弾性散乱の一種である)において、放射光子は、入射光子と同じエネルギ(したがって同じ波長)を有するが、光子の軌道は潜在的に変更されている。ラマン散乱において、電子のエネルギ準位は変化させられ、これにより、光子が放射されるとき、光子のエネルギ準位(したがって波長)は入射光子とは異なる。その結果、特定のサンプル分子の存在は、特定の変化した波長を有するラマン散乱された光の存在または不在に基づいて決定することができる。
【0071】
幾つかの例において、標的分子のエネルギ準位が増大することができ、その結果、ラマン散乱光(ストークスラマン散乱光と呼ばれる)のエネルギ低下を生じるか、または標的および分子のエネルギ準位が減少することができ、その結果、ラマン散乱光(反ストークスラマン散乱光と呼ばれる)のエネルギの増大を生じる。
【0072】
入射光が一貫した波長を有する場合、ラマン散乱光は、特定のストークス範囲を生じることに留意されたい。ストークス範囲は、一貫したラマンシグネチャを有することができ、これは、検体推定システムが、一の検体から生じるラマン散乱を、第2の検体から生じるラマン散乱から区別することを可能にすることができる。したがって、特定のラマンシグネチャの存在を識別することは、標的検体の存在を推定するために使用することができ、標的物質内の検体の量を推定するために使用されてもよい。
【0073】
図4Bは、光散乱の結果としての検体のエネルギ準位変化の例を示す。ここで見られるように、電子304は、第1のエネルギ準位306(例えば、基底エネルギ準位)を有することができる。入射光との相互作用に応答して、電子のエネルギ準位が増大する。ある期間の後、電子304は光子を放射し、より低い第1のエネルギ準位306に戻ることができる。
【0074】
第1の例302において、電子304は、最初、第1のエネルギ準位306(低エネルギ準位)にある。入射光に応答して、電子304は、第1のエネルギ準位306よりも高い第2のエネルギ準位310へのエネルギを得る。電子304は、レイリー散乱光312として光を放射することができる。この例302において、レイリー散乱光312のエネルギは、入射光と同じである(したがって、同じ波長を有する)。電子304は、第1のエネルギ準位306に戻ることができ、これにより、システムのトータルのエネルギ準位が維持される。
【0075】
第2の例320において、電子304は、最初、第1のエネルギ準位306(低エネルギ準位)にある。入射光に応答して、電子は、第1のエネルギ準位306よりも高い第2のエネルギ準位310へのエネルギを得る。しかしながら、この例では、一部のエネルギは、振動エネルギとして分子により得られる。その結果、ラマン散乱光が電子304によって放射されるとき、放射光子322のエネルギ(したがって波長)は減じられるが、再び第1のエネルギ準位306には低下しない。その代わりに、電子は、第1のエネルギ準位306よりも高いが第2のエネルギ準位310よりも低い第3のエネルギ準位324にとどまる。したがって、電子304は、第1のエネルギ準位306よりも高い第3のエネルギ準位324になるが、散乱した光子322は、入射光よりも低いエネルギ準位にあるので、システムの総エネルギが維持される。
【0076】
第3の例330において、電子304は、最初、第1のエネルギ準位306よりも高い第4のエネルギ準位332にある。入射光に応答して、電子304は、第2のエネルギ準位310よりも高い第5のエネルギ準位334へのエネルギを得る。ラマン散乱光が放射されると、電子304は、第4のエネルギ準位332での初期開始位置からエネルギを失って第1のエネルギ準位306へ戻る。散乱光334(反ストークスラマン散乱光と呼ばれる)は、入射光よりも高いエネルギ準位を有することができる。
【0077】
図5は、散乱光の相対量を示す。この例において、ラマン散乱光の量は、散乱光の総量の僅かな部分であることが明らかである。したがって、レイリー散乱光が全ての散乱光の99.99パーセントよりも多いことを表す場合、ラマン散乱光は、散乱光の僅か0.000001パーセントを表すことができる。これにより、ラマン散乱光の量は、散乱光の総量よりも大幅に少ない。その結果、ラマン散乱光の量を増大させるための任意の技法は、検体が存在するかどうかを決定するための検出システムの能力の著しい改善を生じることができる。
【0078】
図6は、ストークス範囲の散乱光の波長を表すグラフを示す。この例示的なグラフにおいて、検出された散乱光は、検出された光の波長およびその強度を示すストークス範囲として表すことができる。見てわかるように、散乱光の大部分は、ポンプレーザによって発生した入射光の波長と同じ波長を有するレイリー散乱光であり得る。したがって、532ナノメートル波長でのピーク(波数0)は、非常に高い。その他のピーク(例えば、800ナノメートルにおけるものなど)は、検体に関連したストークス範囲内でストークスラマン散乱光(光はエネルギを失っている)または反ストークスラマン散乱光(光はエネルギを得ている)を表すことができる。
【0079】
図7は、自発ラマン散乱を示す。自発ラマン散乱のために、第1の光源(またはポンプレーザ)によって発生した光は、特定の分子と相互作用することができる。分子によって放射された光子の小部分は、より少ないエネルギを有し、したがって、入射光子とは異なる波長を有する。上述のように、分子内の粒子(例えば、電子)は、基底準位から仮想準位へ増大するエネルギを得ることができる。幾つかの場合、基底準位へ戻るのではなく、分子における1つまたは複数の粒子は、振動エネルギとして一部のエネルギを保持することができる。したがって、放射された光子は、入射光子よりも少ないエネルギを有する。
【0080】
その結果、放射された光のほとんどは、入射光と同じ波長を保持する。しかしながら、入射光のわずかな部分は散乱され、これにより、散乱光のエネルギ準位およびその波長は、分子を励起させた入射光とは異なる。上記のように、散乱光のラマンシグネチャは、どのような検体が標的物質に存在かを決定するために使用することができる。
【0081】
図8は、誘導ラマン散乱を示す。誘導ラマン散乱の場合、ラマン散乱によって散乱された光の量を増幅または増大させるために2つ以上の光源を使用することができ、これにより、ストークス範囲の平均強度を高める。幾つかの例において、ポンプレーザは、(自発ラマン散乱のように)第1の波長を有する光を発生させることができる。加えて、1つまたは複数のストークスレーザは、第2の波長を有する光を発生させることができる。第2の波長は、特定の検体のラマンシグネチャに関連した波長であり得る。
【0082】
第1の波長を有する光と、第2の波長を有する光とは、組み合わされ、標的サンプルに向かって投射されることができる。ダイクロイックミラー(または1つまたは複数の光学レンズ)を使用することができるが、必須ではない。第2の波長を有する光は、ラマン散乱した光の量を増大させる効果を有するコヒーレントに駆り立てられる分子振動を生じることができる。その結果、検出可能な量のラマン散乱光を生じるために、ポンプレーザから必要とされる光が少なくなる。
【0083】
幾つかの例において、発生した光を第1の波長と第2の波長との間で等しく分割させることができる場合、標的サンプル内の分子によって放射された光は、第2の波長を有するより多くの光を有することができる。1つまたは複数のストークスレーザによって発生した第2の波長を有する光の量と、放射後に測定された第2の波長を有する光の量との差は、誘導ラマン散乱により異なる波長で放射された光の量であり得る。
【0084】
ポンプレーザ(または第1の光源)によって発生した光は、特定の分子をより高いエネルギ準位に励起することができる。分子によって放射される光子の小部分は、より小さなエネルギ(例えば、分子の粒子が一部のエネルギを振動エネルギとして保持することができる)かつ異なる波長で放射される。上記のように、分子の粒子(例えば、電子)は、基準準位のエネルギからより高い仮想エネルギ準位へ上昇するエネルギを得ることができる。幾つかの場合、基準準位へ戻るのではなく、分子の1つまたは複数の粒子は、いくらかの振動エネルギを保持することができ、したがって、電子のエネルギ準位がより低い準位へ戻るときに放射される光子は、入射光子よりも低いエネルギを有する。
【0085】
その結果、放射光のほとんどは、入射光と同じ波長を保持する。しかしながら、入射光のわずかな部分は、ラマン散乱されており、これにより、放射光は、異なるエネルギ準位、したがって異なる波長を有する。上記のように、放射光について検出された波長は、どのような検体が標的物質に存在するかを決定するために使用することができる。
【0086】
図9Aは、自発ラマン散乱によってラマン散乱された光の量を表す例示的なグラフを示す。上記のように、自発ラマン散乱の間、単一の光源が、第1の波長802を有する光を提供することができる。第1の波長802で提供された光の小部分は、分子をより高いエネルギ準位に励起することができる。エネルギの一部は振動エネルギとして1つまたは複数の標的分子内の粒子によって保持されるので、第2の波長804を有する光を放射することができる。
【0087】
図9Bは、誘導ラマン散乱によってラマン散乱された光の量を表す例示的なグラフを示す。この例において、ポンプレーザは、第1の波長802の光を発生させ、ストークスレーザは、その波長が第2の波長804である光を発生させることができる。共鳴の結果、ラマン散乱光の量は、第1の量806だけ増加させられ、散乱光の検出をより効率的に、かつ、必要な電力をより少なくすることができる。
【0088】
図10Aは、本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステム900の例示的な構成を示す。この例において、検体推定システム110の関連する部分は、2つのプリント回路基板(PCBs:printed circuit boards)を含む。第1のPCB902は、2つの光源(VCSEL)を含むことができる。第1の光源904は、1つまたは複数の第1の波長で光を生成するポンプレーザであり得、第2の光源906は、1つまたは複数の第2の波長で光を生成するストークスレーザであり得る。第2の波長は、標的検体に関連したラマンシグネチャに関連付けられることができる。
【0089】
第2のプリント回路基板908は、光を検出するように構成された1つまたは複数のフォトダイオード910を含むことができる。1つまたは複数のフォトダイオード910は、検出された光に基づく信号を生成することができる。幾つかの例において、フォトダイオードによって生成された信号は、ストークスレーザ906によって生成された光に応答して生じた信号の変調部分を除去するために処理されることができる。このように、処理された信号は、ポンプレーザ904のラマン散乱によって生成された光を表すことができる。検体推定システム110は、ユーザの皮膚912に押し付けられることができ、これにより、光が、ユーザの皮膚内へ投射され、ユーザの皮膚および/または組織に含まれた分子が、フォトダイオード910へ光を放射することができる。2つのPCBがこの例において使用されているが、幾つかの例示的な実施形態において、単一のPCBのみが使用されることに留意すべきである。そうであるならば、フォトダイオードを表面から僅かに持ち上げることができる。
【0090】
検体推定システム110は、単一の窓914を含み、この窓914を両光源からの光が通過し、ユーザの皮膚912と相互作用する。光は、ユーザ内の分子と相互作用し、応答して、光がユーザの皮膚912から放射される。放射光は、光学フィルタ909を通過してフォトダイオード910へ到達することができる。
【0091】
図10Bは、本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステム920の例示的な構成を示す。この例において、計算システムの関連する部分は、2つのプリント回路基板(PCB)を含む。第1のPCB902は、2つの光源(VCSEL)を含むことができる。第1の光源904は、1つまたは複数の第1の波長で光を生成することができるポンプレーザを含むことができ、第2の光源906は、1つまたは複数の第2の波長で光を生成することができるストークスレーザを含むことができる。第2の波長は、標的検体のラマンシグネチャに関連付けられることができる。両光源からの光は、2つ以上の窓924を通過する前に光学素子922(例えば、レンズ)を通過する。
【0092】
第2のプリント回路基板908は、光を検出するように構成された1つまたは複数のフォトダイオード910を含むことができる。1つまたは複数の目標周波数について受け取られた光をフィルタリングするために、1つまたは複数の光学フィルタを使用することができる。例えば、ストークス周波数を通過させ、ポンプ周波数を排除するために、ロングパス光学フィルタを使用することができる。1つまたは複数のフォトダイオード910は、検出された光に基づいて信号を生成することができる。幾つかの例において、フォトダイオードによって生成された信号を処理して、ストークスレーザ906によって生成された光に応答して発生した信号の変調部分を除去されることができる。このように、処理された信号は、ポンプレーザ904のラマン散乱によって生成された光を表すことができる。検体推定システム110は、ユーザの皮膚912に押し付けられることができ、これにより、光がユーザの皮膚に投射され、ユーザの皮膚および/または組織に含まれた分子が光をフォトダイオード910へ放射することができる。
【0093】
この例において、検体推定システム110は、2つ以上の窓924を含むことができる。両光源904および906からの光は、2つ以上の窓924を通じて45度のビーム発散角で投射することができる。その他の角度が使用されてもよい。
【0094】
図10Cは、本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステムの例示的な構成を示す。この例において、計算システムの関連する部分は、2つのプリント回路基板(PCB)を含む。第1のPCB902は、2つの光源(VCSEL)を含むことができる。第1の光源904は、1つまたは複数の第1の波長で光を生成することができるポンプレーザを含むことができ、第2の光源906は、1つまたは複数の第2の波長で光を生成することができるストークスレーザを含むことができる。第2の波長は、標的検体のラマンシグネチャに関連付けられることができる。検体推定システム110は、2つ以上の窓を含み、各光源は、それらの関連する光をそれぞれの窓932または934に通過させる。
【0095】
第2のプリント回路基板908は、光を検出するように構成された1つまたは複数のフォトダイオード910を含むことができる。1つまたは複数のフォトダイオード910は、検出された光に基づいて信号を生成することができる。幾つかの例では、フォトダイオードによって生成された信号を処理して、ストークスレーザ906によって生成された光に応答して発生した信号の変調部分を除去することができる。このように、処理された信号は、ポンプレーザ904のラマン散乱によって生成された光を表すことができる。検体推定システム110をユーザの皮膚912に押し付けることができ、これにより、光がユーザの皮膚に投射され、ユーザの皮膚および/または組織に含まれた分子が光をフォトダイオード910へ放射することができる。
【0096】
図10Dは、本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体を検出するためのシステム940の例示的な構成を示す。この例において、計算システムの関連する部分は、2つのプリント回路基板(PCB)を含む。第1のPCB902は、2つの光源(VCSEL)を含むことができる。第1の光源904は、1つまたは複数の第1の波長で光を生成することができるポンプレーザを含むことができ、第2の光源906は、1つまたは複数の第2の波長で光を生成することができるストークスレーザを含むことができる。第2の波長は、標的検体のラマンシグネチャに関連付けられことができる。
【0097】
第2のプリント回路基板908は、光を検出するように構成された1つまたは複数のフォトダイオード910を含むことができる。1つまたは複数のフォトダイオード910は、検出された光に基づいて信号を生成することができる。幾つかの例において、フォトダイオードによって生成された信号を処理して、ストークスレーザ906によって生成された光に応答して発生した信号の変調部分を除去することができる。このように、処理された信号は、ポンプレーザ904のラマン散乱によって生成された光を表すことができる。検体推定システム110をユーザの皮膚912に押し付けることができ、これにより、光がユーザの皮膚に投射され、ユーザの皮膚および/または組織に含まれた分子がフォトダイオード910へ光を放射することができる。
【0098】
検体推定システム110は、単一の窓914を含み、この窓914を両光源からの光が通過して、ユーザの皮膚912と相互作用し、ユーザの皮膚912から放射された光は、フォトダイオード910へ通過することができる。したがって、光は、窓を通じてユーザの皮膚912に向かって投射される。光は、1つまたは複数のフィルタを通過してフォトダイオード910へ到達するように、ユーザの皮膚912から放射されることができる。検体推定システム110が皮膚912と接触する領域の幅は、5ミリメートルである。
【0099】
図11は、本開示の例示的な実施形態による、ユーザの皮膚内の検体の存在を検出するための例示的なシステムを示す。システムは、850ナノメートルの波長を有する光を生成するポンプレーザ(例えば、VCSEL)を含むことができる。
【0100】
第2の光源は、910~980ナノメートルの範囲の光を生成することができる1つまたは複数のストークスレーザであり得る。ポンプレーザおよび1つまたは複数のストークスレーザの両方からの光は、ユーザの皮膚に向かって投射されることができ、ユーザの皮膚において、光は、複数の分子を含む細胞および血管に衝突する。ポンプレーザによって生成された光の少なくとも一部は、ユーザの皮膚内の分子を励起することができ、ラマン散乱されることができ、これにより、分子によって放射される光子は、入射光とは異なる波長を有する。
【0101】
システムは、ストークス範囲外の波長の光を除去するために、ユーザの表皮から放射された光をフィルタリングするバンドパスフィルタを含むことができる。ストークス範囲外の波長を除去することによって、システムは、測定された光が、ユーザの皮膚および/または血液内の任意の検体のラマンシグネチャを識別するために使用することができることを保証することができる。次いで、フィルタリングされていない光をフォトダイオードによって検出することができる。フォトダイオードは、電気信号を発生させることができる。電気信号は、(例えば、ロックイン増幅器を使用して)復調され、増幅されることができる。加えて、ストークスレーザが複数の波長で光を生成する場合、フォトダイオードは、様々な波長からスペクトルを集めることができる。増幅され、復調されかつ集められた情報は、どのような分子がユーザの皮膚に存在するかおよびどのような濃度で存在するかを決定するために分析することができる。
【0102】
図12Aは、本開示の例示的な実施形態による、例示的な検体推定システム110を示す。この例において、検体推定システム110は、ポンプレーザ1102を含むことができる。ポンプレーザ1102は、第1の光源と呼ぶことができる。幾つかの例において、ポンプレーザ1102は、850ナノメートルの波長を有する光を生成することができるが、その他の波長が使用されてもよい。幾つかの例において、ポンプレーザ1102は、波形発生器1104の出力を入力として受け取ることができる。波形発生器1104は、ポンプレーザ1102によって生成された光の振幅を変調するための信号を生成することができる。このように、ポンプレーザ1102によって生成された光は、その他の光源から生成された光と区別することができる。したがって、検体推定システム110は、変調に基づいて、特定の光の波長がラマン散乱の結果であるかどうかを決定することができる。
【0103】
ポンプレーザ1102によって生成された光は、バンドパスフィルタ1106を通過することができる。バンドパスフィルタ1106は、特定の周波数(例えば、850ナノメートルと関連した周波数)内の光のみがフィルタを通過してサンプル組織へ到達することを保証することができる。例えば、バンドパスフィルタは、850ナノメートルの波長を有する光のみがフィルタを通過してサンプル組織へ到達することを保証することができる。検体推定システム110は、1つまたは複数の第2の波長付近の狭帯域で光を生成するストークスレーザ1108(例えば、第2の光源と呼ばれる)をも含むことができる。
【0104】
幾つかの例において、ストークスレーザ1108は、波長可変光源であり得る。波長可変光源は、与えられた所定の範囲内の任意の波長(例えば、目標波長の0.1ナノメートル以内)付近の狭帯域の波長で光を生成するように制御されることができる。幾つかの例において、波長可変光源は、910ナノメートル~980ナノメートルの波長範囲にわたって掃引する狭帯域光を生成するように制御されることができる。別の例において、ストークスレーザ1108は、複数の異なる光源(例えば、レーザダイオードまたはその他の発光ダイオード)を含むことができ、各光源は、特定の検体のラマンシグネチャに関連した特定の波長を有する光を出力するように構成されている。例えば、ストークスレーザ1108は、VCSELのセットを含むことができ、各VCSELは、検体のストークス範囲内の異なる波長で光を提供するように調整される。
【0105】
幾つかの例において、複数のストークスレーザ1108は、一度に1つずつ起動させることができ、これにより、任意の特定のポイントで1つのストークスレーザ1108のみが起動する。その他の例において、複数のストークスレーザ1108は同時に起動させることができる。
【0106】
この例において、異なるそれぞれの光波長でのそれぞれのストークスレーザ1108は、異なるそれぞれの時間周波数で振幅変調されることができ、次いで、各異なるそれぞれの光波長に対する応答を、時間ベースのフーリエ変換またはその他の復調技法を使用して、組み合わされた波長の測定された信号から抽出することができる。異なるストークスレーザ1108を振幅変調するための例示的な時間変調周波数は、10kHz~1MHzの範囲であり得るが、本教示の範囲はそれに限定されない。
【0107】
検体推定システム110は、ポンプレーザ1102およびストークスレーザ1108から放射された光が同じ方向に投射されることを保証するように構成されたダイクロイックミラー1110を含むことができる。ダイクロイックミラー1110は、例えば、ポンプレーザ1102またはストークスレーザ1108のいずれかからの光を通過させ、他方からの光を反射することができる。ダイクロイックミラー1110を正しく向けることによって、両光源からの光を同じ方向に投射させることができる。
【0108】
検体推定システム110は、ポンプレーザ1102およびストークスレーザ1108の両方からの光を集束させ、この光が標的サンプルに向かって方向付けられることを保証する集束レンズ1112を含むことができる。ポンプレーザ1102およびストークスレーザ1108からの光がサンプル1114と相互作用すると、サンプル1114は光を放射することができ、この光は、1つまたは複数のフィルタ1116によってフィルタリングすることができる。例えば、放射光は、ロングパスフィルタを通過することができ、ロングパスフィルタは、ポンプレーザ1102によって生成された第1の波長を有する光を除去することができ、第2の波長を有する光を通過させることができる。このように、ストークスレーザ1108からの光およびラマン散乱されたポンプレーザ1102からのいかなる光も、フィルタ1116を通過することができる。
【0109】
検体推定システム110は、ロングパスフィルタを通過する光を検出するフォトダイオード1120を含むことができる。幾つかの例において、フォトダイオード1120は、所定の波長範囲内の任意の波長の光を測定するように構成することができる。フォトダイオード1120によって検出される光は、電気信号を発生させるために使用することができる。電気信号は、それに基づいて光が発生した光の特性を保持することができる。例えば、検出光の一部が振幅によって変調される場合、結果として生じる電気信号は、直流部分(例えば、非変調光に関連する)と、変調光に関連する交流(AC:alternating current)部分との両方を含むことができる。
【0110】
幾つかの例において、ラマン散乱の量は、電気信号の変調された部分を電気信号の変調されていない部分と区別するためにロックイン増幅器を使用することによって決定することができる。光の変調された部分は、誘導ラマンゲイン(SRG:stimulated Raman gain)に関連付けられると決定することができ、SRGは、放射光が入射光とは異なる波長を有するようにラマン散乱を通じて散乱された(例えば、ポンプレーザによって発生した光とは異なる波長で標的物質から放射された)、ポンプレーザ1102からの光の量を表す。
【0111】
残りの電気信号は、分析のためにロックイン増幅器1124から計算装置の残りへ通過させることができる。ポンプレーザ1102によって発生した光を除去することにより、検体推定システム110は、誘導ラマンゲインを正確に計算することができる。幾つかの例において、誘導ラマンゲインは、信号分析システム1152を使用して計算することができる。この方法は、グルコース、エタノール、脂質、ヘモグロビン、乳酸、コルチゾールなどを含むがこれらに限定されない様々な異なる検体の非侵襲的な測定を可能にすることができる。その他の例において、分光器は使用されない。
【0112】
図12Bは、本開示の例示的な実施形態による、例示的な検体推定システム110を示す。この例において、ポンプレーザ1102ではなく、ストークス光源1108が変調される。図11Aにおける構成と同様に、ポンプレーザ1102からの光およびストークス光源1108からの変調光は、ダイクロイックミラー1110および集束レンズ1112を通過してサンプル物質1114へ入ることができる。
【0113】
この構成において、システムは、第2の波長を有する光(例えば、ストークス光源1108からの光)をフィルタリング除去し、ポンプレーザ1102からの第1の波長を有する光を通過させることができるショートパスフィルタ1150を含む。
【0114】
フォトダイオード1120によって検出された光は、電気信号を発生させるために使用することができる。電気信号は、分析のために信号分析システム1152へ通過させることができる。電気信号は、標的物質から放射されたレイリー散乱光に基づいて発生する。上記のように、レイリー散乱光は、ポンプレーザ1102によって発生した光と同じ波長を有する。ストークス光源1108は変調されるので、レイリー散乱光の強度は変化することができる。1つの特定の例において、ストークス光源108の振幅が低点にある場合(例えば、変調された振幅がゼロに達したとき)、標的物質によって放射されるレイリー散乱光の量は、高強度レベルに達することができる(ストークス光源1108無しではより少ない光がラマン散乱されるからである)。同様に、ストークス光源1108の振幅が、変調中に高い値に達したとき、ポンプ光源1102に関連した波長で標的物質によって放射されたレイリー散乱光の強度は、低点に達し得る(ピーク強度にあるストークス光源1108によって、より多くの光がラマン散乱されるからである)。ポンプ波長の光の強度を表す電気信号(その他の波長は、ショートパスフィルタ1108によってフィルタリングされているからである)は、高点(例えば、レイリー散乱光の強度が最大であるとき)でおよび低点(例えば、レイリー散乱光の強度が最小であるとき)で測定することができる。
【0115】
低点と高点との間の電気信号の差は、ラマン散乱された光の量を決定するために信号分析システム1152によって測定することができる。この量は、誘導ラマン損失(SRL:stimulated Raman loss)と呼ぶことができる。誘導ラマン損失は、分子を標的組織におけるより高いエネルギ準位に励起させた後、異なる波長によって放射された光の量を表すことができる。
【0116】
図13は、本開示の幾つかの例示的な実施形態による、ユーザの体内の検体を非侵襲的に測定するための例示的なシステムを示す。本開示の例示的な実施形態によれば。この例において、検体推定システム110は、2つの光源を含むことができる。第1の光源は、第1の波長を有する光を発生させることができるポンプレーザ112であり得る。第2の光源は、1つまたは複数のストークスレーザ116であり得る。図12において、ストークスレーザ116は、波長の範囲内の任意の波長付近の狭帯域の光を発生させることができる単一の波長可変レーザであり得る。別の例において、ストークスレーザ116は、各々、特定の波長で光を発生させ、検出プロセス中に必要に応じて選択的にオンおよびオフされることができる複数の異なるレーザダイオードを含むことができる。
【0117】
ポンプレーザコントローラ1202は、ポンプレーザ112に関連付けられることができる。ポンプレーザコントローラ1202は、いつポンプレーザ112がオンにされるかおよびどれだけ長くオンにとどまっているかを決定することができる。ストークスレーザコントローラ1204は、ストークスレーザ116と関連付けられることができ、いつストークスレーザ1204がオンにされるかを制御することができ、ストークスレーザ116が波長可変レーザである場合、任意の特定の時間にどの波長の光をストークスレーザ116が出力しているかを制御することができる。
【0118】
波形発生器1206は、ストークスレーザコントローラ1204に提供される波形を発生させることができる。この波形は、ストークスレーザ116によって生成された光を変調するために使用することができる。ストークスレーザ116の出力を変調することは、プロセスにおけるより後の時点において、ストークスレーザ116によって放射された光と、ポンプレーザ112によって放射された光とを互いに分離させることができることを保証することができる。
【0119】
温度コントローラ1210は、熱電冷却器1212を制御することができる。熱電冷却器1212は、温度コントローラ1210によって指示されたとおり、ポンプレーザ112の出力を調整することができる。XY調整器1214は、ポンプレーザ112によって放射される光の方向を制御することができ、ファイバカプラ1216が、ポンプレーザ112によって発生した光を、ストークスレーザ116に関連した二又ファイバ束へ提供することを可能にすることができる。
【0120】
二又ファイバ束1218において組み合わされた光は、この場合は参加者の手である標的サンプル1220に向かって投射されることができる。光は、参加者の手からスペクトル測定システム1222に向かって放出されることができる。スペクトル測定システム1222は、1つまたは複数のフォトダイオード1224を含むことができる。幾つかの例において、フォトダイオード1224は、関連した光学フィルタ1226を有する。光学フィルタ1226は、スペクトル測定システム1222によって必要とされない光の波長を除去することができる。スペクトル測定システム1222の出力は、バイアスモジュール1228に提供される。バイアスされたモジュールは、DC電源1230を有する。ロックイン増幅器1232は、変調光を除去することができ、これにより、非変調光を分離および分析することができる。
【0121】
ロックイン増幅器の出力は、コンピュータ1240へ提供することができる。コンピュータ1240は、この場合は参加者の手である標的組織における対象の分子の有無を決定するためにデータを分析することができる。
【0122】
図14は、開示の例示的な実施形態による光源およびフォトダイオードを備える例示的なシステムを示す。見てわかるように、2つの光源は、検出ユニットにおけるファイバ1302を通じて光を投射するように位置決めされた、ポンプレーザ112およびストークスレーザ116を含むことができる。光は、開口を通って前方に進み、ユーザの皮膚に入る。ユーザの皮膚は、センサユニットに向かって光を放射することができる。検出ユニットは、ある波長の光を除去することができる光学フィルタ1304を含む。次いで、複数のフォトダイオードは、フィルタリングされていない放射光を検出することができる。フォトダイオードによって収集された情報は、計算システムへ送信して戻すことができ、光が投射された組織の内容を決定するために分析される。
【0123】
図15は、本開示の幾つかの例示的な実施形態による、複数の発光源のレイアウトを示す。複数のポンプレーザは、中央に集められることができ、一定の波長の光を提供する。ポンプレーザおよび1つまたは複数のストークスレーザは、ストークスレーザが光の複数の異なる波長を提供するようなパターンで配置することができる。幾つかの例において、ストークスレーザによって提供される光の波長は、対象の分子と関連している。
【0124】
図16は、本開示の幾つかの例示的な実施形態による、例示的な検体検出システム110を示す。検体推定システム110は、ポンプレーザ112(例えば、VCSEL)と、2つのストークスレーザ116(例えば、オフピークストークスレーザ116-1およびオンピークストークスレーザ116-2)を含むことができる。しかしながら、その他の構成において、ストークスレーザ116は、複数のストークスレーザを含むことができ、各ストークスレーザは、特定の波長を有する光を発生させるように構成されている。ポンプレーザ112および/またはストークスレーザ116の1つまたは複数の出力は、10キロヘルツ以上における方形波を使用して変調されてよい。一般に、異なる光源からの光を区別するために変調を使用する場合、より高い周波数がより好ましい。2つ以上のストークスレーザ116を順次に起動させるために、マルチプレクサ(MUX)1502を使用することができる。
【0125】
したがって、ポンプレーザ112は、850ミリメートルで光を一貫して生成し、2つ以上のストークスレーザ116は、特定の波長付近を中心とする狭帯域を有する光を生成するように順次に起動されることができる。ポンプレーザ112および2つ以上のストークスレーザ116からの光は、集束レンズ1504を通って前方にユーザ1506の組織へ投射される。ユーザの組織は、光を放射することができ、この光は、1つまたは複数のフィルタ1508を通過する。例えば、光は、通過する光を所定の帯域の波長に制限するバンドパスフィルタ1508、または1つまたは複数の波長の光を除去するロングパスフィルタを通過することができる。
【0126】
光がフィルタを通過すると、1つまたは複数のフォトダイオード1510が光を検出することができる(例えば、特定の波長を有する光の強度または特定の波長を有する光子の数を検出する)。フォトダイオードは、フォトダイオード1510との光子の相互作用に基づく電気信号を発生させることができる。電気信号は、復調され、増幅され、計算装置へ送信されることができ、計算装置は、波長によって光の全スペクトルを集めることができる。スペクトルにおける様々なポイントにおける光の量(例えば、ラマンシグネチャ)に基づいて、1つまたは複数の検体がユーザの組織に存在するかどうかを決定するために、スペクトルを分析することができる。上記のように、複数のレーザダイオードが同時に起動され、それぞれの複数のストークス周波数において光を提供する場合、各レーザダイオードは、異なるそれぞれの周波数で変調されることができる。結果として生じる信号は、異なる各波長の光の強度を決定するためにフーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換)を使用して分析することができる。
【0127】
図17は、本開示の例示的な実施形態による、標的内の分子を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。方法の1つまたは複数の部分は、例えば、本明細書に説明された計算装置などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。さらに、方法の1つまたは複数の部分は、本明細書に説明された装置のハードウェア構成要素上でアルゴリズムとして実装することができる。図17は、例示および説明の目的で特定の順序で行われる要素を示す。当業者は、本明細書に提供される開示を用いて、本明細書に説明された任意の方法の要素は、本開示の範囲から逸脱することなく様々な方法で適応、再配置、拡張、省略、組合せおよび/または修正することができることを理解するであろう。方法は、図1図11図14に示された計算装置のうちの1つまたは複数など、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。
【0128】
計算装置は、第1の光源および第2の光源からユーザの身体の一部に向かって光を投射することができる。第1の光源は、1714において、第1の波長を有する光を投射することができ、1つまたは複数の第2の光源は、第2の波長を有する光を発生させることができる。光源(例えば、レーザ)は、発生した光をユーザの皮膚へ投射することができる。光は、皮膚内の分子と相互作用することができる。皮膚内の分子は、光をシステムへ放射することができる。幾つかの例において、光は、ユーザの皮膚内の分子と相互作用することによってラマン散乱される。
【0129】
計算装置は、1716において、フォトダイオードを使用して、特定の波長を有する放射光の強度を検出することができる。例えば、フォトダイオードは、第2の波長の光の強度を測定することができる。計算装置は、1718において、放射光に基づいて、ユーザの身体内の複数の分子の各々の濃度を決定することができる。
【0130】
計算装置は、1724において、ユーザの身体内の複数の分子の各々の濃度に基づいて、ユーザプロファイルを生成することができる。例えば、計算装置は、フォトダイオードからの情報に基づいて特定のユーザの身体内のヘモグロビン、グルコース、脂質などの相対濃度を決定することができる。この情報は、標準的なユーザプロファイル形式にコンパイルすることができる。
【0131】
幾つかの例において、ユーザの許可により、計算装置は、ローカルに記憶されたユーザプロファイルまたはコンピュータネットワークを介して利用可能なユーザプロファイルにアクセスすることができる。計算システムは、1726において、ユーザを識別するために、ユーザプロファイルを複数の記憶されたユーザプロファイルと比較することができる。例えば、ユーザの身体内の様々な分子および化学物質の特定の濃度は、各ユーザを一意的に識別するためのフィンガプリントとして機能することができる。しかしながら、ユーザプライバシーを考慮して、ユーザが同意していない限り、プロファイルは生成されず、比較は行われない。
【0132】
幾つかの例において、システムが、一致するユーザプロファイルに基づいてユーザのアイデンティティを決定すると、コンピュータシステムは、ユーザアカウントに関連したデータにアクセスし、その情報およびサービスをユーザに提供することができる。
【0133】
図18は、本開示の例示的な実施形態による、例示的なデータ分析モデル1810のブロック図を示す。機械学習されたデータ分析モデルは、入力1842として様々な波長での光の強度についての情報を取得することができる。例えば、データ分析モデル1810は、グルコースについて予測される波長での値を識別することができる。訓練されると、機械学習されたデータ分析モデルは、R2=0.84の十分な精度を達成することができ、これは、約30mg/dlの平均絶対誤差に対応する。したがって、データ分析モデル1810は、特定の検体が存在するかどうかおよびどのような濃度で存在するかを記述する情報を出力1844することができる。
【0134】
幾つかの例において、人間の血液に見られるグルコース濃度(<300mg/dl、通常<140mg/dl)は、バックグラウンドから容易に分離可能ではないグルコースピークを生じる。なぜならば、ラマン信号が極めて弱いからである。モデルは、波数514、1060、1025、1366cm-1での、グルコースの予測されるラマンピークのうちの幾つかと整合する重要な特徴をピックアップし、上記ピークは、極めて高いグルコース濃度(>5000mg/dl)に対して測定されたスペクトルには明らかに見ることができる。このモデルは、次いで、0.84のR2を有する200回の新たな測定に対してグルコースレベルを予測するために使用することができる。これは、約30mg/dlの平均絶対誤差に対応する。
【0135】
幾つかの例において、機械学習されたデータ分析モデル1810は、それ以外に、ニューラルネットワーク(例えば、ディープニューラルネットワーク)、非線形モデル、および/もしくは線形モデルなどの様々な機械学習されたモデル、または二項分類器を含むその他のタイプの機械学習されたモデル、を含むことができる。ニューラルネットワークは、フィードフォワードニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク(例えば、長短期記憶再帰型ニューラルネットワーク)、畳み込みニューラルネットワーク、またはその他の形式のニューラルネットワークを含むことができる。
【0136】
機械学習されたデータ分析モデル1810を訓練するために、様々な訓練技法を使用することができる。特に、機械学習されたデータ分析モデル1810は、複数の半教師あり訓練技法のうちの1つを使用して訓練することができる。機械学習されたデータ分析モデル1810は、例えば、誤差逆伝播法などの教師あり訓練技法を使用して訓練することもできる。例えば、(例えば、損失関数の勾配に基づいて)モデルの1つまたは複数のパラメータを更新するために、モデルを通じて損失関数を逆伝播することができる。平均2乗誤差、尤度損失、交差エントロピー誤差、ヒンジ損失、および/または様々なその他の損失関数などの様々な損失関数を使用することができる。複数の訓練反復にわたってパラメータを反復して更新するために、勾配下降技法を使用することができる。幾つかの実装において、誤差の逆伝播を実行することは、記憶打ち切り型通時的誤差逆伝搬を実行することを含む。訓練されているモデルの一般化能力を高めるために、一般化技法(例えば、荷重減衰、ドロップアウトなど)を実行することができる。
【0137】
図19は、本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。方法の1つまたは複数の部分は、例えば、本明細書に説明された計算装置などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。さらに、方法の1つまたは複数の部分は、本明細書に説明された装置のハードウェア構成要素上でアルゴリズムとして実装することができる。図19は、例示および説明の目的で特定の順序で実行される要素を示す。当業者は、本明細書に提供された開示を使用して、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に説明された方法のいずれかの要素を様々な方式で適応、再配置、拡張、省略、組合せおよび/または修正することができることを理解するであろう。方法は、図1図11図14に示された計算装置のうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。
【0138】
誘導ラマン散乱を使用してユーザにおけるグルコースレベルを非侵襲的に測定するための計算装置は、ランプポンプレーザ、ストークスレーザ、および光検出器を含むことができる。計算装置は、1812において、ポンプレーザを使用して、ユーザの皮膚表面にポンプ光を放射することができ、ポンプ光は、固定波長である。光を皮膚の表面に向かって方向付けることができるが、光がユーザの血液中の分子とより相互作用しやすくするように、光をユーザの皮下領域に集束させることができることに留意すべきである。したがって、光がユーザの皮膚の表面に方向付けられるまたはユーザの皮膚の表面から受信されると本開示が示すとき、光の標的は、ユーザの皮膚の表面の下であり得る。計算装置は、1814において、ストークスレーザを使用して、ラマン測定波長の窓内の複数のストークス波長で皮膚表面にストークス光を放射することができる。
【0139】
ストークス光源は、前記非侵襲的グルコース測定中にラマン測定波長の窓の一端から他端まで連続的に掃引される可変波長狭帯域レーザを含むことができる。幾つかの例において、ストークス光源は、複数の固定波長狭帯域レーザ光源を含むことができ、各レーザ光源は、ラマン測定波長の窓内にある異なる中心波長を有する。
【0140】
幾つかの例において、ラマンポンプ光源と、ストークス光源の固定波長狭帯域レーザ光源とは、VCSELであり、装置のどこにも光ファイバまたはミラーは使用されていない。計算装置は、1816において、光検出器を使用して、皮膚表面から放出されて戻って来る光を測定することができる。
【0141】
幾つかの例において、光検出器は、前記ラマンポンプ光源波長および前記ラマン測定波長の窓の両方を含む波長の範囲にわたって光を検出することができ、ラマンポンプ光源の時間変調、前記ストークス光源の時間変調、および/または前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源の両方の異なる時間変調が、ラマン測定波長の窓内にある波長を有する光からのラマンポンプ波長光の区別を可能にするために使用される。
【0142】
幾つかの例において、光検出器は、ラマン測定波長の窓全体にわたって光を検出するフォトダイオードであり、前記非侵襲的グルコース測定中に、複数の固定波長狭帯域レーザ光源が一度に1つずつ起動される。
【0143】
計算装置は、1818において、ユーザの推定グルコースレベルを提供するために、測定された光を処理することができる。幾つかの例において、ストークス光源は、前記ラマン測定波長の窓に対して狭帯域の光を放射し、前記ストークス光は、前記ラマン測定波長の窓にわたるそれぞれの複数の中心波長での前記狭帯域光の複数の放射を含む。
【0144】
図20は、本開示の例示的な実施形態による、ユーザ計算装置1900を含む例示的な計算環境を示す。計算装置1900は、ユーザの内部の1つまたは複数の検体の存在および量を非侵襲的に決定するための検体推定システム1910を含むことができる。幾つかの例において、計算装置1900は、スマートフォンまたはウェアラブル計算装置などのユーザ計算装置であり得る。その他の例において、計算装置1900は、携帯用ではなく、家庭での利用が意図された計算装置であり得る。この例において、ユーザ計算装置1900は、1つまたは複数のプロセッサ1902、メモリ1904、検体推定システム1910、1つまたは複数のコリメータ1930および制御回路1940を含むことができる。
【0145】
より詳細には、1つまたは複数のプロセッサ1902は、計算装置1900のための任意の適切な処理装置であり得る。例えば、このようなプロセッサは、1つまたは複数のプロセッサコア、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、コントローラ、マイクロコントローラなどのうちの1つまたは複数を含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、1つのプロセッサまたは動作可能に接続された複数のプロセッサであり得る。メモリ1904は、RAM、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ装置などの1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体、およびそれらの組合せなどを含むことができる。
【0146】
特に、幾つかの装置において、メモリ1904は、検体推定システム1910を実装するための命令1908を記憶することができる。「システム」という用語は、専用ハードウェア、より一般的なプロセッサ上で実行されるコンピュータロジック、またはそれらの組合せを指すことができることが理解されるであろう。したがって、システムは、ハードウェア、特定用途向け回路、ファームウェア、および/または汎用プロセッサを制御するソフトウェアにおいて実装することができる。一実施形態では、システムは、記憶装置に記憶され、メモリにロードされ、およびプロセッサによって実行されたプログラムコードファイルとして実装することができ、またはRAM、ハードディスクまたは光媒体もしくは磁気媒体などの有形コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品、例えば、コンピュータ実行可能命令から提供することができる。
【0147】
メモリ1904は、1つまたは複数のプロセッサ1902によって検索、操作、作成または記憶することができるデータ1906を含むこともできる。幾つかの例示的な実施形態において、このようなデータは、アクセスし、検体推定システム1920への入力として使用することができる。幾つかの例において、メモリ1904は、1つまたは複数のプロセスを実行するために使用されるデータおよびどのようにこれらのプロセスを実行することができるかを記述する命令を含むことができる。
【0148】
幾つかの例において、検体推定システム1920は、ポンプレーザ1912と、1つまたは複数のストークスレーザ1916と、光検出器1922と、ラマン散乱推定システム1910とを含むことができる。図示されていないが、検体推定システム1920は、光学フィルタと、レーザを同じ領域(例えば、ユーザの皮膚の同じ部分)に集束させるための1つまたは複数の光学レンズ(例えば、マイクロレンズ)とを含むこともできる。ポンプレーザ1912(例えば、第1の光源)は、目標波長で光(例えば、光子の流れ)を放射するレーザダイオードであり得る。幾つかの例において、ポンプレーザは、780ナノメートルの平均波長を有する光を生成することができる。ポンプレーザ1912のその他の波長が使用されてもよく、1つまたは複数のストークスレーザ1916の波長は、少なくとも部分的に、ポンプレーザ1912の波長に基づいて決定される。幾つかの例において、ポンプレーザ1912は、半導体チップに含まれた垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得る。幾つかの例において、ポンプレーザ1912によって放射される光の波長は、850ナノメートルである。その他の波長を使用することもできる。
【0149】
ポンプレーザ1912は、少なくとも1つのデューティサイクルに従ってポンプレーザを作動させるまたはオフにするための信号を送信することができる制御回路によって制御することができる。幾つかの例において、ポンプレーザ1912はパルス変調されることができる。ポンプレーザ1912をパルス変調することは、方形波パルスを発生させるようにポンプレーザ1912を制御することを含むことができる。
【0150】
ポンプレーザ1912は、変調システムを含むことができる(または変調システムに関連付けられることができる)。変調システムは、制御回路と協調して、ポンプレーザ1912によって生成された光を変調するために使用することができる。ポンプレーザは、第1の光源と呼ぶことができる。ポンプレーザ1912によって生成された光を変調することによって、検体推定システム1920は、ポンプレーザ1912から発せられた光によって励起された後に標的物質が放射する光と、1つまたは複数のストークスレーザ1916から発せられた光によって励起された後に標的物質が放射する光とを、(例えば、フィルタまたはロックイン増幅器を使用して)区別することができる。
【0151】
1つまたは複数のストークスレーザ1916は、必要に応じて所定の範囲内の波長を有する光を生成することができる波長可変レーザを含むことができる。したがって、波長可変レーザは、光源によって生成された光の波長が所定の範囲内で変化することができるように調整することができる。例えば、幾つかの例において、波長可変レーザは、910ナノメートルから980ナノメートルまで変動し得る波長を有する光を放射するように調整することができる。幾つかの例において、波長可変レーザによって生成された光の波長は、検体推定システム1920が識別しようとしている特定の検体のラマンシグネチャに基づいて決定することができる。幾つかの例において、ポンプレーザおよび1つまたは複数のストークスレーザの両方は、動作するために約40ミリワットの電力を使用することができる。
【0152】
1つまたは複数のストークスレーザ1916は、少なくとも1つのデューティサイクルに従ってポンプレーザを作動させるまたはオフにするための信号を送信することができる制御回路によって制御することができる。幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザ1916はパルス変調されることができる。ポンプレーザ1912をパルス変調することは、方形波パルスを発生させるように1つまたは複数のストークスレーザ1916を制御することを含むことができる。
【0153】
幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザは、変調システムを含むことができる。したがって、幾つかの構成において、ポンプレーザ1912は、ポンプレーザ1912によって生成された光を1つまたは複数のストークスレーザ1916によって生成された光から区別するように変調することができる。その他の例において、1つまたは複数のストークスレーザ1916は、2つの光源を区別するために変調される。
【0154】
幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザ1916は、検体推定システム1920が識別しようとしている特定の検体(例えば、グルコース)のラマンシグネチャに調整された波長を有する光を提供することができる。検体のラマンシグネチャに基づいて決定された波長を有する追加的な光(例えば、光子の流れ)を提供することによって、検体推定システム1920は、誘導ラマン散乱を生じさせることができる。誘導ラマン散乱の結果、1つまたは複数のストークスレーザ1916によって提供された光が、1つまたは複数のストークスレーザ1916によって提供される追加的な光なしで予測されるよりも多くのラマン散乱を誘導することができる。したがって、1つまたは複数のストークスレーザ1916によって提供される光を導入することは、ラマン散乱の可能性が増大するので、サンプル物質内の特定の検体の検出可能性を高めることができる。
【0155】
幾つかの例において、検体推定システム1920は、光検出器1922を含むことができる。光検出器1922は、フォトダイオードなどのセンサ(例えば、光(例えば、光子)を電流に変換する半導体装置)であり得る。フォトダイオードは、所定の範囲の波長にわたって光を検出するように構成することができる。幾つかの例示的な実施形態において、特定の波長範囲内の光のみが光検出器によって検出されるように、光を光学的にフィルタリングすることができる。光の量は、検出される光子の数および/または特定の波長で測定される光の強度であると理解することもできる。
【0156】
幾つかの例において、ポンプレーザ1912から生じた光のみが検出されるように、1つまたは複数のストークスレーザ1916に関連した標的放射光を除去するために、フィルタを使用することができる。同様に、ストークスレーザ1916またはラマン散乱の結果生じた標的放射光のみが光検出器によって検出されるように、光学フィルタが、ポンプレーザ1912に関連した波長を有する光を除去することができる。幾つかの例において、フィルタ(またはロックイン増幅器)は、1つまたは複数のストークスレーザ1916が変調された場合には変調光を除去することができ、またはポンプレーザ1912が変調された場合には非変調光を除去することができる。
【0157】
ラマン検体推定システム1910は、サンプル物質内の検体に関連したラマン散乱によって発生した光の量(例えば、光の強度または光子の数)を検出するために使用することができる。幾つかの例において、ラマン散乱推定システム1910は、標的物質内の検体を識別するためにラマン散乱された光の量(例えば、光子の数または光の強度のいずれか)を決定することができる。第1の例において、ユーザ計算装置は、失われたポンプ波長(例えば、第1の波長)の光の量(誘導ラマン損失)を決定することができる。代替的に、ユーザ計算装置は、得られたストークス関連波長の光の量(例えば、誘導ラマンゲイン)を決定することができる。測定値またはそれらの組合せのいずれかは、標的物質(例えば、ユーザの皮膚)内の特定の検体の量を推定するために使用することができる。検出されたストークス範囲は、標的検体の有無を非侵襲的に測定するために基準スペクトルと比較することができる。
【0158】
例えば、サンプル物質は、ユーザの身体の一部であり得る。検体は、例えば、グルコースであり得る。所定の第2の波長を有する光の量に基づき、検体推定システム1910は、標的サンプル内の検体の量を推定することができる。幾つかの例において、検体の推定量を、ユーザに表示するために提供することができる。
【0159】
幾つかの例において、ユーザ計算装置1900は、1つまたは複数のコリメータ1930を含むことができる。コリメータは、ミラー(例えば、ダイクロイックミラー1932)と共に、ビームが発散しないように(またはより少なく発散するように)、ポンプレーザ1912および1つまたは複数のストークスレーザ1916からの光が共線的であるようにするために使用することができる。1つまたは複数のコリメータ1930を使用することにより、ユーザ計算装置1900は、さもなければ可能であろうよりも小さな標的組織の一部上にレーザビームを集束させることができる。小さな領域(例えば、10μm未満の直径)に光を集束させる結果、光のパワー密度の増大が生じる。この文脈におけるパワー密度は、光が投射される単位面積当たりの投射される光の量に基づいて測定することができる。したがって、より小さな領域に光を集束させることは、投射される光の総量を増加させる必要なく、より高いパワー密度を生じることができる。
【0160】
ユーザ計算装置1900は、1つまたは複数のダイクロイックミラー1932を含むことができる。ダイクロイックミラー1932は、1つまたは複数の周波数の光がダイクロイックミラー1932から反射されるように構成することができる。加えて、1つまたは複数の他の周波数の光は、影響されることなくダイクロイックミラー1932を通過することができる。したがって、ダイクロイックミラー1932は、2つ以上の光源(例えば、ポンプレーザ1912および1つまたは複数のストークスレーザ1916)からの光を単一の光ビームに組み合わせるために使用することができる。複数の光源からの光を組み合わせることは、より密に集束された光を生じることができ、これにより、光は比較的小さな領域に標的が定められ、光のパワー密度を増大させる。
【0161】
ユーザ計算装置1900は、制御回路1940を含むことができる。制御回路1940は、標的組織の領域に投射される光の量(例えば、光のパワー密度)を増大させるために使用することができる。特に、制御回路は、デューティサイクルに従って光源をオンおよびオフにするために使用することができる。光源をオンおよびオフにすることによって、光源は、光源が連続的に動作される場合に可能であろうよりも高い電力レベルで動作されることができる。特に、光源を短時間であるがより高い電力で動作させる結果、光源のための最大許容線量を超えることなく、光源がオンにされる期間の間のより高いパワー密度を生じることができる。最大許容線量限界は、有害な影響または生物学的変化なしに組織(またはその他の物質)が暴露され得る光(またはその他の電磁放射)の最大量を記述することができる。最大許容線量は、光の波長、光のエネルギ、および曝露時間によって決定することができる。
【0162】
したがって、光源をパルス変調することによって、制御回路1940は、曝露時間を減じることができ、光源がオンにされる時間の間、より高い電力(光のエネルギ)が使用されることを可能にすることができる。制御回路1940は、特定の期間中、光源のうちの1つまたは複数をオンにし、他の期間中、それらをオフにするように構成することができる。総時間の一部だけ光源をアクティブにすることによって、制御回路1940は、システムの電力使用量が低いままであることと、組織が暴露される光の量が複数の光源のうちのいずれかの所定の曝露限度を超えないこととを保証することができる。
【0163】
制御回路1940は、少なくとも1つのデューティスケジュールに従って光源(例えば、ラマン光源およびストークス光源)を操作することができる。例えば、制御回路は、1%デューティサイクルに従って起動されるように光源を制御することができる。したがって、光源は、10ナノ秒作動させられた後、990ナノ秒にわたって光源は作動させられない。ほんの僅かな時間のみ光源を作動させることによって、光源は、光源が連続的に作動させられる場合に可能であろうパワーよりも高いパワーを(作動させられたときに)得ることができる。したがって、光源が作動させられる時間の間、検体検出システムは、曝露限度内にとどまりながら高い精度を有することができる。
【0164】
幾つかの例において、異なる光源は、異なるデューティサイクルを有することができる。例えば、制御回路1940は、10MHzで1つまたは複数のストークス光源をパルス変調し、5MHzでポンプ光源をパルス変調することができる。これにより、ストークス信号スペクトルは、10MHzの中心周波数を有することができ、ポンプ信号スペクトルは、5MHzの中心周波数を有することができる。1つまたは複数のストークス光源に対する第1の中心周波数とポンプ信号スペクトルに対する第2の中心周波数とを有することにより、検体推定システムは、信号処理を用いて両者をより容易に区別することができる。
【0165】
図21は、本開示の例示的な実施形態による、異なる光源からの光を共線的にする検体検出システムの図である。幾つかの例において、検体検出システム1910は、ポンプ光源2002、第1のストークス光源2004、および第2のストークス光源2006を含むことができる。全ての3つの光源からの光が標的組織の同じ領域に効果的に集束させられるように全ての3つの光源からの光が1つの光の流れに組み合わされることを保証するために、検体検出システム1910は、複数のダイクロイックミラーおよびコリメータを含む。これらの構成要素は、各光源からの光を組み合わされた光の流れに組み合わせるために使用することができる。したがって、ポンプ光源2002からの光は、第1のダイクロイックミラー2010に向かって方向付けられることができる。このダイクロイックミラー2010は、ポンプ光源2002の周波数の光がミラー2010において反射するように構成することができる。ダイクロイックミラー2010は、反射光を第2のダイクロイックミラー2012に向かって方向付けるように構成することができる。第2のダイクロイックミラー2012は、ポンプ光源2002からの光を、その軌道を変化させることなく通過させるように構成することができる。
【0166】
第1のストークス光源2004は、光を第2のダイクロイックミラー2012に向かって投射することができる。第2のダイクロイックミラー2012は、第1のストークス光源2004に関連した周波数を有する光がダイクロイックミラー2004において第3のストークス光源2016に向かって反射するが、ポンプ光源に関連した周波数を有する光が、ダイクロイックミラーを通過し、第1のストークス光源2004から投射された光のビームに合流するように、構成することができる。第1のストークス光源2004からの光は、ポンプ光源2002からの光と同じ経路に反射されることができる。ポンプ光源2002および第1のストークス光源からの光は、1つの光の流れに有効に組み合わされることができる。
【0167】
組み合わされた光の流れは、第3のダイクロイックミラー2014に向かって方向付けられることができる。第3のダイクロイックミラー2014は、ポンプ光源2002および第1のストークス光源2004に関連した周波数を有する光が変化せず通過するように、構成することができる。第2のストークス光源2006からの光は、第3のダイクロイックミラー2014に向かって方向付けられる。第3のダイクロイックミラー2014は、第2のストークス光源2006からの光を反射し、この光を、ポンプ光源2002および第1のストークス光源からの組み合わされた光と同じ経路に沿って方向付けるように構成されている。これにより、ポンプ光源2002、第1のストークス光源2004および第2のストークス光源2006からの光は、ここでは共線的な1つの流れに有効に組み合わされることができる。検体推定システム1910は、各光源に関連したレンズ(2022,2024および2026)も含む。
【0168】
組み合わされた光は、全ての周波数の光を反射するx/yミラー2016に向かって方向付けられることができる。x/yミラー2016は、組み合わされた共線的な光を測定位置2040上の標的領域に向かって方向付けることができる。測定位置2040は、光検出器2042を含むことができる。x/yミラー2016は、ビームを組織の表面に沿って方向付け、標的とされる領域を変更するように傾斜させられることができる。
1つまたは複数のレンズ2030は、目標深度で光ビームが所望の深度で集束させられるように調整することができる。幾つかの例において、レンズは、円形であることができ、ミラーの焦点深度を調整するために1つまたは複数のレンズを上下に移動させるようにねじを回転させることによって調整することができる。
【0169】
図22は、本開示の例示的な実施形態による、発生した光における極性の影響を示す図である。この例において、ポンプ光源によって生成された光2102および1つまたは複数のストークス光源によって生成された光2104(電磁放射の両方の例)が、それぞれの成分の電界および磁界と共に表示されている。
【0170】
図23は、本開示の例示的な実施形態による、発生した光における平行偏光および直交偏光の影響を示すグラフ2200である。このグラフで見てわかるように、ストークス光およびポンプ光が平行偏光を有する場合、結果として生じるパワーは、光が直交偏光を有する場合に生じるパワーよりも著しく高くなる。したがって、検体推定システムは、ポンプ光源および1つまたは複数のストークス光源によって生成された光が平行偏光を有することを保証することができる。
【0171】
図24は、本開示の例示的な実施形態による、特定のデューティサイクルに従ってパルスを発生する光源を示す2つのグラフ2300を含む。この例において、ポンプ光源は、第1のデューティサイクルに従って制御することができ、1つまたは複数のストークス光源は、第2のデューティサイクルに従って制御することができる。例えば、1つまたは複数のストークス光源は、ポンプ光源の2倍の頻度でオンにされるようにデューティサイクルで動作されることができる。重要なことに、ポンプ光源がパルスを発生するときはいつでも、1つまたは複数のストークス光源もパルスオンされる。
【0172】
図25は、本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。方法の1つまたは複数の部分は、例えば、本明細書に説明された計算装置などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。さらに、方法の1つまたは複数の部分は、本明細書に説明された装置のハードウェア構成要素上でアルゴリズムとして実装することができる。図25は、例示および説明の目的で特定の順序で行われる要素を示す。当業者は、本明細書に提供された開示を使用して、本明細書に説明された方法のいずれかの要素が、本開示の範囲から逸脱することなく様々な方式で適応、再配置、拡張、省略、組合せおよび/または修正されることができることを理解するであろう。方法は、図20に示された計算装置のうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。
【0173】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための装置は、ラマンポンプ光源を含むことができ、このラマンポンプ光源は、作動させられたとき、2402において、ポンプ波長でユーザの皮膚表面に向かってポンプ光を放射する。装置は、ストークス光源をさらに含み、このストークス光源は、作動させられたとき、2404において、1つまたは複数のストークス波長で皮膚表面に向かってストークス光を放射する。装置は、2406において、皮膚表面から発せられる光を測定する光検出器をさらに含むことができる。
【0174】
幾つかの例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、レーザダイオードであり得る。例えば、レーザダイオードは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得る。ラマンポンプ光源およびストークス光源は、単一モードVCSELであり得る。別の例において、レーザダイオードは、端面発光ダイオードレーザであり得る。したがって、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、光端面発光ダイオードレーザ、VCSEL、または別のタイプのレーザダイオードであり得る。幾つかの例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源の両方は、同じタイプのレーザダイオードであり得る。その他の例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源は異なっていてもよい。
【0175】
装置は、制御回路をさらに含むことができ、制御回路は、ラマンポンプ光源およびストークス光源によって生成された光の関連したパワーを最大化することに関連した少なくとも1つのデューティサイクルに従って、所定の曝露限度内でラマンポンプ光源およびストークス光源を制御する。少なくとも1つのデューティサイクルは、第1の期間にわたってラマンポンプ光源およびストークス光源を作動させることができ、その後、より長い第2の期間においてラマンポンプ光源およびストークス光源は作動させられない。装置は、プロセッサをさらに含むことができ、プロセッサは、2408において、測定された光を処理し、ユーザ内の検体の推定検体レベルを提供する。
【0176】
幾つかの例において、少なくとも1つのデューティサイクルは、特定の期間における時間の1パーセント未満にわたってラマンポンプ光源およびストークス光源を作動させるように制御回路に指示することができる。より具体的には、少なくとも1つのデューティサイクルは、0.1パーセントデューティサイクルであり得る。幾つかの例において、光源は、10ナノ秒以下の期間だけ作動させられることができ、その後、990ナノ秒以上の期間において、光源は作動させられない。特定の例において、少なくとも1つの特定のデューティサイクルは、1nsパルス持続時間にわたってラマンポンプ光源およびストークス光源を作動させることができ、その後、999nsにおいてラマンポンプ光源およびストークス光源は作動させられない。
【0177】
幾つかの例において、少なくとも1つのデューティサイクルは、第1のデューティサイクルおよび第2のデューティサイクルを含む。例えば、ラマンポンプ光源は第1のデューティサイクルに従ってパルス変調され、ストークス光源は第2のデューティサイクルに従ってパルス変調される。ラマンポンプ光源が、1つまたは複数のストークス光源とは異なるデューティサイクルに従ってパルス変調される例において、ポンプ光源が作動させられるときはいつでも少なくとも1つのストークス光源が作動させられる。
【0178】
幾つかの例において、制御回路は、ラマンポンプ光源およびストークス光源を制御するためにパルス変調を使用することができる。幾つかの例において、第1のパルス周波数はラマンポンプ光源に関連付けられることができ、第2のパルス周波数は1つまたは複数のストークス光源に関連付けられることができる。幾つかの例において、第1のパルス周波数は、第2のパルス周波数未満であり得る。例えば、第1のパルス周波数は5MHzであり得、第2のパルス周波数は10MHzであり得る。幾つかの例において、第2のパルス周波数は第1のパルス周波数未満であり得る。幾つかの例において、制御回路は、同相でパルス信号を生成するようにラマンポンプ光源およびストークス光源を制御することができる。
【0179】
幾つかの例において、装置は、ラマンポンプ光源によって放射された光およびストークス光源によって放射された光が平行にユーザの皮膚表面に投射されることを保証するためにコリメータを含むことができる。幾つかの例において、1つまたは複数のダイクロイックミラーは、ラマンポンプ光源およびストークス光源からの光を単一の光ビームに組み合わせることができる。装置は、単一の光ビームを標的サンプルの特定の領域(例えば、10ミクロン未満の直径を有するユーザの皮膚の領域)に集束させる集束光学系を含むことができる。集束光学系は、1つまたは複数のレンズを含むことができる。幾つかの例において、装置は、ダイクロイックミラーではなく導波管を含むことができる。幾つかの例において、装置は、導波管および1つまたは複数のダイクロイックミラーの両方を含むことができる。
【0180】
ラマンポンプ光源によって生成されたラマンポンプ光、およびストークス光源によって生成されたストークス光は、偏光されることができる。ラマンポンプ光源によって生成された光およびストークス光源によって生成された光は、光ビームが平行になるように偏光させることができる。
【0181】
幾つかの例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、10ミクロン未満の直径を有する領域に光を投射するように構成することができる。ラマンポンプ光源およびストークス光源は、パルスモードで動作させられる間、連続動作モードの間に可能であるよりも高いパワーレベルで動作させられることができる。幾つかの例において、所定の曝露限度は、ラマンポンプ光源およびストークス光源についての最大許容線量に基づくことができる。幾つかの例において、ストークス光は、ラマン測定波長の窓内の複数のそれぞれの中心波長での複数の狭帯域放射を含む。
【0182】
図26は、本開示の例示的な実施形態による、ユーザ計算装置2600を含む例示的な計算環境を示す。計算装置2600は、ユーザの内部の1つまたは複数の検体の存在および量を非侵襲的に決定するための検体推定システム2610を含むことができる。幾つかの例において、計算装置2600は、スマートフォンまたはウェアラブル計算装置などのユーザ計算装置であり得る。その他の例において、ユーザ計算装置2600は、携帯用ではなく、家庭での使用が意図された計算装置であり得る。この例において、ユーザ計算装置2600は、1つまたは複数のプロセッサ2602、メモリ2604、検体推定システム2610、1つまたは複数のレンズ2630、1つまたは複数のミラー2632および制御回路2640を含むことができる。
【0183】
より詳細には、1つまたは複数のプロセッサ2602は、計算装置2600のための任意の適切な処理装置であり得る。例えば、このようなプロセッサは、1つまたは複数のプロセッサコア、マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA、コントローラ、マイクロコントローラなどのうちの1つまたは複数を含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、1つのプロセッサまたは動作可能に接続された複数のプロセッサであり得る。メモリ2604は、RAM、ROM、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ装置などの、1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体など、およびそれらの組合せを含むことができる。
【0184】
特に、幾つかの装置において、メモリ2604は、検体推定システム2610を実装するための命令2608を記憶することができる。「システム」という用語は、専用ハードウェア、より汎用のプロセッサ上で実行するコンピュータロジック、またはそれらの組合せを指すことができることが理解されるであろう。したがって、システムは、ハードウェア、特定用途向け回路、ファームウェア、および/または汎用プロセッサを制御するソフトウェアにおいて実装されることができる。一実施形態では、システムは、記憶装置に記憶され、メモリにロードされ、かつプロセッサによって実行されるプログラムコードファイルとして実装することができる、またはRAM、ハードディスクまたは光媒体もしくは磁気媒体などの有形コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品、例えば、コンピュータ実行可能命令から提供することができる。
【0185】
メモリ2604は、1つまたは複数のプロセッサ2602によって検索、操作、作成または記憶されることができるデータ2606を含むこともできる。幾つかの例示的な実施形態において、このようなデータは、アクセスされ、検体推定システム2610への入力として使用することができる。幾つかの例において、メモリ2604は、1つまたは複数のプロセスおよびこれらのプロセスをどのように実行することができるかを記述する命令を実行するために使用されるデータを含むことができる。
【0186】
幾つかの例において、検体推定システム2610は、ポンプレーザ2612(ラマンポンプレーザとも呼ばれる)、1つまたは複数のストークスレーザ2616、光検出器2622、ラマン散乱推定システム2620、ビームコントローラ2622、および組成決定システム2624を含むことができる。ポンプレーザ2612(例えば、第1の光源)は、目標波長で光(例えば、光子の流れ)を放射するレーザダイオードであり得る。幾つかの例において、ポンプレーザは、780ナノメートルの平均波長を有する光を生成することができる。その他の波長がポンプレーザによって生成されてもよい。1つまたは複数のストークスレーザ2616の波長は、少なくとも部分的に、ポンプレーザ2612の波長に基づいて決定することができる。幾つかの例において、ポンプレーザ2612は、半導体チップに含まれた垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得る。幾つかの例において、ポンプレーザ2612によって放射される光の波長は850ナノメートルである。その他の波長が使用されてもよい。
【0187】
ポンプレーザ2612によって生成された光は、ビームコントローラ2622によって方向付けることができる。ビームコントローラ2622は、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、ポンプレーザ2612によって放射された光が最適な標的領域に向かって方向付けられ、適切な深度で集束させられることを保証することができる。最適な標的領域は、組成決定システム2624によって決定することができる。
【0188】
ポンプレーザ2612は、変調システムを含むことができる(変調システムに関連付けられることができる)。変調システムは、制御回路と協調して、ポンプレーザ2612によって生成された光を変調するために使用することができる。ポンプレーザは、第1の光源と呼ぶことができる。ポンプレーザ2612によって生成された光を変調することによって、検体推定システム2610は、ポンプレーザ2612から生じた光によって励起された後に標的物質が放射する光と、1つまたは複数のストークスレーザ2616から生じた光によって励起された後に標的物質が放射する光とを(例えば、フィルタまたはロックイン増幅器を使用して)区別することができる。
【0189】
1つまたは複数のストークスレーザ2616は、必要に応じて所定の範囲内の波長を有する光を生成することができる波長可変レーザを含むことができる。したがって、波長可変レーザは、光源によって生成された光の波長が所定の範囲内で変化することができるように調整することができる。例えば、波長可変レーザは、910ナノメートルから980ナノメートルまで変動し得る波長を有する光を放射するように調整することができる。幾つかの例において、波長可変レーザによって生成された光の波長は、検体推定システム2620が識別しようとしている特定の検体のラマンシグネチャに基づいて決定することができる。幾つかの例において、ポンプレーザおよび1つまたは複数のストークスレーザの両方は、動作するために約40ミリワットの電力を使用することができる。
【0190】
幾つかの例において、ポンプレーザ2612および1つまたは複数のストークスレーザ2616は、2つ以上のパワーレベルで動作させられることができる。例えば、レーザ(例えば、ポンプレーザ2612および1つまたは複数のストークスレーザ2616)は、ユーザの組織内の1つまたは複数のポイントで見出される組織のタイプを決定する場合に使用される、より低いパワーレベルを有することができる。レーザ(例えば、ポンプレーザ2612および1つまたは複数のストークスレーザ2616)は、組織が特定の検体を含むかどうか、もしそうであるならば、どのような濃度で含むかを決定するために組織を分析する場合に使用される、より高いパワーレベルを有することができる。
【0191】
1つまたは複数のストークスレーザ2616によって生成された光は、ビームコントローラ2622によって方向付けられることができる。ビームコントローラ2622は、1つまたは複数のミラー2632および1つまたは複数のレンズ2630を制御して、1つまたは複数のストークスレーザ2616によって放射された光が最適な標的領域に向かって方向付けられ、適切な深度で集束させられることを保証することができる。最適な標的領域は、組成決定システム2624によって決定することができる。
【0192】
幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザ2616は、変調システムを含むことができる。したがって、幾つかの構成において、ポンプレーザ2612は、1つまたは複数のストークスレーザ2616によって生成された光からポンプレーザ2612によって生成された光を区別するために変調されることができる。その他の例において、1つまたは複数のストークスレーザ2616は、2つの光源を区別するために変調される。
【0193】
幾つかの例において、1つまたは複数のストークスレーザ2616は、検体推定システム2620が識別しようとしている特定の検体(例えば、グルコース)のラマンシグネチャに調整された波長を有する光を提供することができる。検体のラマンシグネチャに基づいて決定された波長を有する追加的な光(例えば、光子の流れ)を提供することによって、検体推定システム2620は、誘導ラマン散乱を生じさせることができる。誘導ラマン散乱は、1つまたは複数のストークスレーザ2616によって提供される光が、1つまたは複数のストークスレーザ2616によって提供される追加的な光がない場合に予測されるよりも多くのラマン散乱を誘導する結果となり得る。したがって、1つまたは複数のストークスレーザ2616によって提供された光を導入することは、ラマン散乱の可能性が高められるため、サンプル物質内の特定の検体の検出可能性を高めることができる。
【0194】
幾つかの例において、検体推定システム2610は、光検出器2618を含むことができる。光検出器2618は、フォトダイオードなどのセンサ(例えば、光(例えば、光子)を電流に変換する半導体装置)であり得る。フォトダイオードは、所定の波長範囲にわたって光を検出するように構成することができる。幾つかの例示的な実施形態において、光は、特定の波長範囲内の光のみが光検出器によって検出されるように、光学的にフィルタリングされることができる。光の量は、検出される光子の数および/または特定の波長で測定される光の強度であると理解することもできる。
【0195】
幾つかの例において、ポンプレーザ2612から生じた光のみが検出されるように、1つまたは複数のストークスレーザ2616に関連した標的放射光を除去するために、フィルタを使用することができる。同様に、ストークスレーザ2616またはラマン散乱から生じた標的放射光のみが光検出器によって検出されるように、光学フィルタが、ポンプレーザ2612に関連した波長を有する光を除去することができる。幾つかの例において、フィルタ(またはロックイン増幅器)は、1つまたは複数のストークスレーザ2616が変調された場合には変調光を、またはポンプレーザ2612が変調された場合には非変調光を除去することができる。
【0196】
ラマン散乱推定システム2620は、サンプル物質内の検体に関連したラマン散乱によって発生した光の量(例えば、光の強度または光子の数)を検出するために使用することができる。幾つかの例において、ラマン散乱推定システム2620は、標的物質内の検体を識別するために、ラマン散乱された光の量(例えば、光子の数または光の強度のいずれか)を決定することができる。第1の例において、ユーザ計算装置は、失われたポンプ波長(例えば、第1の波長)における光の量を決定することができる(誘導ラマン損失)。代替的に、ユーザ計算装置は、得られたストークス関連波長の光の量(例えば、誘導ラマンゲイン)を決定することができる。測定値またはそれらの組合せのいずれかは、標的物質(例えば、ユーザの皮膚)における特定の検体の量を推定するために使用することができる。検出されたストークス範囲は、標的検体の有無を非侵襲的に測定するために基準スペクトルと比較することができる。
【0197】
例えば、サンプル物質は、ユーザの身体の一部であり得る。検体は、例えば、グルコースであり得る。所定の第2の波長を有する光の量に基づいて、ラマン散乱推定システム2620は、標的サンプル内の検体の量を推定することができる。幾つかの例において、検体の推定量は、ユーザに表示するために提供することができる。
【0198】
幾つかの例において、ユーザ計算装置2600は、ビームコントローラ2622を含むことができる。ビームコントローラは、ポンプレーザ2612および1つまたは複数のストークスレーザ2616によって生成されたビームの方向を制御することができるシステムを含むことができる。ビームコントローラ2622は、1つまたは複数のレンズ2630および1つまたは複数のミラー2632を介してビームの方向を制御することができる。特に、1つまたは複数のミラーは、標的領域の表面に沿ってビームを方向付けるために傾斜させられることができる。このように、ビームの方向は、x軸およびy軸(ユーザの皮膚に沿った長さおよび高さ)に沿って修正することができる。
【0199】
1つまたは複数のレンズ2630は、ビームが収束させられる焦点深度を更新するために調整することができる。したがって、標的位置のz軸を調整することができる。このように、ビームコントローラは、検体検出システム2610にアクセス可能な三次元空間内の任意の位置を標的にするためにビームの標的位置を調整することができる。例えば、ユーザ計算装置2600が、バンドまたはその他の手段によってユーザの皮膚に対して保持されるウェアラブル装置である場合、検体検出システム2610にアクセス可能な三次元位置は、検体検出システム2610の幅とほぼ等しい幅と、検体検出システム2610の最大焦点深度に関連した深度とを有する、装置の下の皮膚の領域とほぼ等しいことが可能である。この最大焦点深度は、レンズを調整できる程度および組織自体の特性に基づくことができる。このように、ビームコントローラ2622は、検体検出システム2610が、ユーザの組織内の最適な標的位置を、それが生じ得るところはどこでも標的とすることを可能にすることができる。
【0200】
ユーザ計算装置2600は、組成決定システム2624を含むことができる。組成決定システム2624は、対象の領域内の複数の位置における組織のタイプを決定することができる。対象の領域は、ビームコントローラによって標的とすることができるユーザの組織の範囲に基づいて決定することができる。対象の領域を通じて組織のタイプを決定するために、組成決定システム2624は、標的サンプリンググリッドを生成することができる。サンプリングは、組成決定システム2624によってサンプリングされる複数のポイントを含むことができる。
【0201】
標的サンプリンググリッドが確立されると、組成決定システム2624は、標的サンプリンググリッドにおける各ポイントについて、そのポイントで光を投射することができる。投射された光は、ポンプローザ2612および/または1つまたは複数のストークスレーザ2616からのものであり得る。放射された光の量および持続時間は、ラマン散乱を通じて検体を検出しようとするときに投射されるものよりも低くなる可能性がある。なぜならば、組織のタイプの検出は、検出可能レベルでラマン散乱を誘発するために使用される高パワー密度を必要とすることなく、皮膚の吸収に基づいて可能であるからである。より低い準位の光が、標的サンプリンググリッド内のそれぞれのポイントにおいて投射されると、組成決定システム2624は、それぞれのポイントによる光の吸収を分析することができる。どの波長の光がその標的ポイントにおける物質によって吸収されたかを決定することによって、組成決定システム2624は、そのポイントにおける物質のタイプを推定することができる。例えば、異なるタイプの組織は、異なる波長の光を吸収する。組織のタイプは、間質液、表皮に関連した細胞、真皮に関連した細胞、脂肪細胞、腺、神経細胞、血管、卵胞などのうちの1つまたは複数であり得る。
【0202】
組成決定システム2624が標的サンプリンググリッド内の各ポイントを一度分析すると、組成決定システム2624は、最適な標的位置を決定することができる。幾つかの例において、最適な標的位置は、その位置における特定のタイプの組織に基づくことができる。その他の例において、最適標的位置は、検出される検体に基づくことができる。
【0203】
幾つかの例において、ユーザ計算装置2600は、1つまたは複数のレズ2630を含む。1つまたは複数のレンズは、光ビームを異なる深度で集束させることができる。ビームが集束される深度は、レンズを上下に移動させることによって調整することができる。幾つかの例において、レンズ2630の焦点深度は、回転可能なねじに取り付けられることによって移動させられる。回転可能なねじは、レンズが円形であるため、光ビームの任意のその他の態様に影響を及ぼすことなくレンズを上下に調整することができる。
【0204】
ユーザ計算装置2600は、1つまたは複数のミラー2632を含むことができる。1つまたは複数のミラー2632は、光が標的組織の特定の部分に向かって方向付けられるように構成することができる。幾つかの例において、1つまたは複数のミラー2632は、標的とされた位置であるように、傾斜させられることができる。
【0205】
ユーザ計算装置2600は、制御回路2640を含むことができる。制御回路2640は、標的組織の領域に投射される光の量(例えば、光のパワー密度)を増大させるために使用することができる。幾つかの例において、制御回路2640は、特定の位置における組織のタイプを決定する場合に光の強度を減じることができる。
【0206】
図27は、標的サンプリンググリッド2700を使用するサンプリングを示す図である。標的サンプリンググリッド2700に関連した領域は、検体検出システムの特性に基づいて決定される。特に、標的サンプリンググリッド2700の寸法は、検体検出システムによって標的とされることが可能な領域を表す。したがって、x軸2710およびy軸2712は、1つまたは複数のミラーがユーザの皮膚の表面に沿って光ビームを調整することができる程度に基づいて決定される。z軸2714の深さは、1つまたは複数のレンズを調整することによって標的とされることが可能な深さを表す。幾つかの例において、レーザが組織に浸透することができる深さは、少なくとも部分的にその組織の構成に基づいて決定することができる。
【0207】
標的サンプリンググリッド2700は、分析される標的とされる複数のポイント(例えば、2702,2704および2706)を含むことができる。標的は、三次元空間において配置されることができる。したがって、標的ポイントのうちの幾つかは、他のものよりも標的組織においてより深い。この例において、標的ポイントは、3つの層の深さに配置することができる。層1(最も深い層)は、黒い点によって示されており、ポイント2702を含む。層2(中間層)は、右斜線によって示されており、ポイント2704を含む。層3(最も上の層)は、垂直線によって示されており、ポイント2706を含む。潜在的な標的ポイントを異なる層の深さに配向することによって、検体推定システムは、ユーザの組織のセクション全体を構成する組織のタイプを決定することができる。
【0208】
図28は、本開示の例示的な実施形態による、標的組織内の検体を検出する例示的なプロセスを示すフローチャートである。方法の1つまたは複数の部分は、例えば、本明細書に説明された計算装置などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。さらに、方法の1つまたは複数の部分は、本明細書に説明された装置のハードウェア構成要素上でアルゴリズムとして実装することができる。図28は、例示および説明の目的で特定の順序で実行される要素を示す。当業者は、本明細書に提供された開示を使用して、本明細書に説明された方法のうちのいずれの要素も、本開示の範囲から逸脱することなく様々な方式で適応、再配置、拡張、省略、組合せおよび/または修正されることができることを理解するであろう。方法は、図26に示された計算装置のうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数の計算装置によって実装することができる。
【0209】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための装置は、2802において、ポンプ波長でユーザの皮膚表面に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源を含むことができる。装置は、2804において、1つまたは複数のストークス波長で皮膚表面に向かってストークス光を放射するストークス光源をさらに含むことができる。装置は、ポンプ光およびストークス光が標的とされる皮膚表面の領域を決定するために制御される1つまたは複数のミラーをさらに含むことができる。ミラーは、1つまたは複数のミラーを傾斜させるように制御されることができる。各ミラーは、独立して傾斜させることができる。その他の例において、ミラーは、1つのミラーの傾斜が1つまたは複数の他のミラーの傾斜に依存するように接続されてよい。ミラーを傾斜させることで、ストークス光源およびラマンポンプレーザによって投射される光が標的とされる位置を変化させることができる。
【0210】
幾つかの例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、レーザダイオードであり得る。例えば、レーザダイオードは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得る。ラマンポンプ光源およびストークス光源は、単一モードVCSELであり得る。別の例において、レーザダイオードは、端面発光ダイオードレーザであり得る。したがって、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、光端面発光ダイオードレーザ、VCSEL、または別のタイプのレーザダイオードであり得る。幾つかの例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源の両方は、同じタイプのレーザダイオードであり得る。他の例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、異なるタイプのレーザダイオードであり得る。
【0211】
幾つかの例において、装置は、ユーザの皮膚内のラマンポンプ光源およびストークス光源の焦点深度を決定するために制御される1つまたは複数のレンズを含む。1つまたは複数のレンズは、(装置に対してかつ/または互いに対して)上下に移動させられることができる。例えば、1つまたは複数のレンズは、レンズの位置を調整するために回転させることができるねじに取り付けるかまたはその他の態様で接続することができる。レンズが円形である限り、ねじの回転は、焦点深度以外の、投射光のいかなる特性も変化させ得ない。
【0212】
装置は、2806において、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、ラマンポンプ光源によって放射されたポンプ光、およびストークス光源によって放射されたストークス光を最適な標的位置に標的を定めるビームコントローラを含む。そうするために、ビームコントローラは、1つまたは複数のミラーの傾斜および1つまたは複数のレンズの焦点深度を制御することができる。
【0213】
装置は、2808において、皮膚表面から発する光を測定する光検出器をさらに含むことができる。幾つかの例において、装置は、ラマンポンプ光源によって放射された光およびストークス光源によって放射された光が平行にユーザの皮膚表面に投射されることを保証するためのコリメータを含むことができる。幾つかの例において、1つまたは複数のダイクロイックミラーは、ラマンポンプ光源およびストークス光源からの光を単一の光ビームに組み合わせることができる。装置は、単一の光ビームを、標的とするサンプルの特定の領域(例えば、10ミクロン未満の直径を有するユーザの皮膚の領域)に集束させる集束光学系を含むことができる。集束光学系は、1つまたは複数のレンズを含むことができる。幾つかの例において、装置は、ダイクロイックミラーではなく導波管を含むことができる。幾つかの例において、装置は、導波管および1つまたは複数のダイクロイックミラーの両方を含むことができる。
【0214】
幾つかの例において、ラマンポンプ光源およびストークス光源は、10ミクロン未満の直径を有する領域に光を投射するように構成することができる。幾つかの例において、光が投射される領域の直径は、1ミクロンである。
【0215】
装置は、検体を測定するためにユーザの組織内の最適な標的位置を識別する標的分析システムを含むことができる。ユーザの組織内の最適な標的位置を識別することは、標的サンプリンググリッドを生成することを含むことができ、標的サンプリンググリッドは、ビームコントローラによって標的化可能な、組織の領域内の複数の潜在的な標的ポイントを含む。幾つかの例において、標的サンプリンググリッド内のポイントは、三次元アレイにおいて配置されている。したがって、標的サンプリンググリッドは、組織内の三次元空間内の異なる深さにポイントを含む。
【0216】
幾つかの例において、複数の潜在的な標的ポイントにおけるそれぞれのポイントについて、装置は、ビームコントローラを使用して、1つまたは複数の光源の標的をそれぞれのポイントに定める。光源のうちの1つまたは複数は、より低いパワーで始動される。より低いパワーは、検体を検出するときに光源がセットされるパワーよりも低いものとして定義することができる。装置は、それぞれのポイントによって吸収される1つまたは複数の周波数を決定することができる。吸収される周波数は、1つまたは複数の光源によって投射される光の周波数と、光検出器によって検出される光の周波数との比較に基づいて決定することができる。1つまたは複数の光源は、ラマンポンプ光源およびストークス光源のうちの1つまたは複数を含む。
【0217】
幾つかの例において、投射されるように選択された光の周波数は、1つまたは複数の特定の組織タイプに基づいて決定することができる。例えば、装置は、現在の標的位置において最も見出される可能性が高い2つ以上の組織タイプを区別するために最も有用な1つまたは複数の周波数を選択することができる。装置が、(近い測定からの組織のタイプの過去の測定に基づいて)2つの最も可能性の高い組織タイプが動脈および間質液であると決定した場合、装置は、これらの2つの組織タイプを区別するために最も有用な1つまたは複数の周波数を選択することができる。このように、装置は、組織のタイプを検出するために使用される周波数の数を最小化することができる。
【0218】
装置が、それぞれの標的ポイントによって吸収される1つまたは複数の周波数を決定すると、装置は、標的ポイントにおける組織のタイプを決定することができる。幾つかの例において、装置は、標的ポイントにおける組織のタイプが血管、間質腔、神経組織、毛髪または毛包などのうちの1つであり得ることを決定することができる。
【0219】
組織のタイプが標的ポイントのそれぞれについて決定されると、装置は、1つまたは複数の潜在的な標的ポイントのそれぞれに関連した組織のタイプに少なくとも部分的に基づいて、1つまたは複数の潜在的な標的ポイントをランク付けることができる。装置は、ランキングに基づいて1つまたは複数の潜在的な標的ポイントから最適な標的ポイントを選択することができる。幾つかの例において、1つまたは複数の潜在的な標的ポイントは、検出される検体に少なくとも部分的に基づいてランク付けされる。例えば、ある検体は、異なるタイプの組織においてより容易に検出される。したがって、装置は、現在の標的検体を検出するために有用な組織のタイプを有する位置における最適な標的ポイントを選択することができる。
【0220】
本明細書に説明された技術は、サーバ、データベース、ソフトウェアアプリケーションおよびその他のコンピュータベースのシステム、ならびに実行されるアクション、およびこのようなシステムへまたはこのようなシステムから送信される情報を指す。当業者は、コンピュータベースシステムの固有の柔軟性が、構成要素間でのタスクおよび機能の様々な可能な構成、組合せおよび分割を可能にするということを認識するであろう。例えば、本明細書に説明されたサーバプロセスは、単一のサーバまたは組合せで動作する複数のサーバを使用して実装されてよい。データベースおよびアプリケーションは、単一のシステムにおいて実装されてよいかまたは複数のシステムの間で分散されてよい。分散された構成要素は、順次または並列で動作し得る。
【0221】
本主題は、その特定の例示的な実施形態に関して詳細に説明されているが、当業者が、前記の理解を得ることにより、このような実施形態に対する変更、このような実施形態の変形、およびこのような実施形態の均等物を容易に生み出し得ることが理解されるであろう。したがって、本開示の範囲は、限定的ではなく、例示的であり、主体の開示は、当業者に容易に明らかとなる本主題に対するこのような修正、変更および/または追加の包含を排除しない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための装置であって、
ポンプ波長で前記ユーザの組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源と、
1つまたは複数のストークス波長で前記組織に向かってストークス光を放射するストークス光源と、
1つまたは複数のミラーと、
1つまたは複数のレンズと、
前記1つまたは複数のミラーおよび前記1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラと、
前記組織から発する光を測定する光検出器と、
前記測定された光を処理し、前記ユーザ内の前記検体の推定検体レベルを提供するプロセッサと、を備える、装置。
【請求項2】
前記装置は、検体を測定するための、前記ユーザの前記組織における最適な標的位置を識別する標的分析システムをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ユーザの前記組織における前記最適な標的位置を識別することは、標的サンプリンググリッドを生成することを含み、前記標的サンプリンググリッドは、前記ビームコントローラによって標的化可能な、前記組織の領域内の複数の潜在的な標的ポイントを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ユーザの前記組織における前記最適な標的位置を識別することは、
前記複数の潜在的な標的ポイントにおけるそれぞれのポイントについて、
前記ビームコントローラによって、1つまたは複数の光源の標的を前記それぞれのポイントに定めることと、
より低パワーで前記1つまたは複数の光源を始動することと、
前記それぞれのポイントによって吸収された1つまたは複数の周波数を決定することと、をさらに含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記1つまたは複数の光源は、前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源のうちの1つまたは複数を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記それぞれのポイントによって吸収される前記1つまたは複数の周波数に基づいて、前記複数の潜在的な標的ポイントの各々における組織のタイプを決定することをさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
記複数の潜在的な標的ポイントの各々に関連した組織のタイプに少なくとも部分的に基づいて、前記複数の潜在的な標的ポイントをランク付けすることと、
前記ランク付けに基づいて前記複数の潜在的な標的ポイントから最適な標的ポイントを選択することと、をさらに含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
記複数の潜在的な標的ポイントは、検出されている前記検体に少なくとも部分的に基づいてランク付けされる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記標的サンプリンググリッドにおける前記ポイントは、三次元アレイにおいて配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のレンズは、焦点深度を調整するために前記1つまたは複数のレンズを上下に移動させることによって調整される、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数のミラーは、ユーザの前記組織の前記表面上の特定の標的に前記ポンプ光および前記ストークス光を方向付けるためにミラーを傾斜させることによって調整される、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源は、VCSELである、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源は、単一モードVCSELである、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記ラマンポンプ光源および前記ストークス光源は、端面発光ダイオードレーザである、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記ストークス光は、ラマン測定波長の窓内の複数のそれぞれの中心波長で複数の狭帯域放射を含む、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記ビームコントローラは、前記1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の焦点深度を調整する、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記ビームコントローラは、前記ラマンポンプ光源によって放射される前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射される前記ストークス光の標的が定められる前記組織の前記表面上に向けるように前記1つまたは複数のミラーを制御する、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための、コンピュータにより実施される方法であって、
ラマンポンプ光源が、ポンプ波長で前記ユーザの組織に向かってポンプ光を放射するステップと、
ストークス光源が、1つまたは複数のストークス波長で前記組織に向かってストークス光を放射するステップと、
ビームコントローラが、1つまたは複数のミラーおよび1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の標的を最適な標的位置に定めるステップと、
光検出器が、前記組織から発する光を測定するステップと、
プロセッサが、前記測定された光を処理し、前記ユーザ内の前記検体の推定検体レベルを提供するステップと、を含む、コンピュータにより実施される方法。
【請求項19】
誘導ラマン散乱を使用してユーザ内の検体のレベルを非侵襲的に測定するための検体推定システムであって、前記検体推定システムは、
ポンプ波長で前記ユーザの組織に向かってポンプ光を放射するラマンポンプ光源と、
1つまたは複数のストークス波長で前記組織に向かってストークス光を放射するストークス光源と、
1つまたは複数のミラーと、
1つまたは複数のレンズと、
前記1つまたは複数のミラーおよび前記1つまたは複数のレンズを制御し、前記ラマンポンプ光源によって放射された前記ポンプ光、および前記ストークス光源によって放射された前記ストークス光の標的を最適な標的位置に定めるビームコントローラと、
前記組織から発する光を測定する光検出器と、
前記測定された光を処理し、前記ユーザ内の前記検体の推定検体レベルを提供するプロセッサと、を備える、検体推定システム。
【請求項20】
前記検体推定システムは、検体を測定するために前記ユーザの前記組織における最適な標的位置を識別する標的分析システムをさらに備える、請求項19に記載の検体推定システム。
【国際調査報告】