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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ロボットカメラシステムの光軸較正
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/25 20160101AFI20240808BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20240808BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20240808BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240808BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20240808BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61B90/25
A61B34/30
G02B7/28 Z
G03B13/36
H04N23/67
A61B3/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574529
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 IB2022053498
(87)【国際公開番号】W WO2022259051
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/197,644
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】テリー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アショク バートン トリパシ
【テーマコード(参考)】
2H011
2H151
4C130
4C316
5C122
【Fターム(参考)】
2H011AA06
2H011CA19
2H011CA21
2H011FA11
2H151AA11
2H151CE31
2H151FA76
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA37
4C130BA05
4C130DA03
4C316AA01
4C316AB16
4C316AB17
4C316FA07
4C316FA08
4C316FA14
4C316FC12
5C122DA25
5C122EA42
5C122EA58
5C122FD01
5C122GA01
5C122GA23
5C122GD11
5C122GE05
5C122HA35
5C122HA75
5C122HB01
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
コンピュータ可読媒体から命令が実行される方法によって、シリアルロボットのエンドエフェクタに接続されたデジタルカメラを有するロボットカメラシステムが較正される。エンドエフェクタ及びカメラは、ロボット運動座標系(「ロボット座標系」)内を移動する。方法は、光学座標系を有する像面上の標的物の基準画像を、カメラを使用して取得することと、深度測定値と関節位置信号とを含む、入力信号を受信することとを含む。ロボットを動かしている間に、ロボット座標系に対する基準画像内の標的点の別個のロールオフセット及びピッチオフセットが決定される。オフセットはまた、別の運動シーケンスでロボットを動かしている間に、ロボット座標系のx軸、y軸、及びz軸に対して決定される。オフセットは、変換行列に格納され、この変換行列は、カメラシステムのその後の動作中にロボットを制御するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルロボットのエンドエフェクタに接続されたデジタルカメラを有するロボットカメラシステムを較正する方法であって、前記エンドエフェクタ及び前記デジタルカメラは、ロボット運動座標系内を移動し、前記方法は、
光学座標系を有する像面内の標的物の基準画像を、前記デジタルカメラを使用して取得することと、
前記シリアルロボット及び前記デジタルカメラと通信する電子制御ユニット(ECU)を用いて入力信号を受信することであって、前記入力信号は、前記デジタルカメラと前記標的物との間の直線距離を示す深度測定値と、前記ロボット運動座標系内の前記デジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号とを含み、前記ロボット運動座標系は、x軸、y軸、及びz軸を有する、前記受信することと、
第1の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ECUを用いて、前記ロボット運動座標系に対する前記基準画像内の標的点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定することと、
前記ロールオフセット及び前記ピッチオフセットを決定した後、第2の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ECUを用いて、前記ロボット運動座標系に対する前記標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定することと、
前記ロールオフセット、前記ピッチオフセット、前記x軸オフセット、前記y軸オフセット、及び前記z軸オフセットを前記ECUのメモリ内の変換行列に格納することと、
前記ECUを用いて、前記ロボットカメラシステムのその後の動作中に前記変換行列を使用して前記シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記デジタルカメラは、前記デジタルカメラとフォーカスモータによって制御される前記標的物との間の可変の光学作動距離を有し、前記z軸オフセットを決定することは、前記可変の光学作動距離と前記フォーカスモータの回転位置又はエンコーダカウントとによって索引付けされたルックアップテーブルから前記z軸オフセットを抽出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可変の光学作動距離に対応する焦点範囲にわたって前記フォーカスモータを制御している間に前記ECUを用いて前記ルックアップテーブルにデータを追加することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ECUを用いて前記デジタルカメラのオートフォーカス設定を受信することと、
前記ECUを用いて前記ロボットカメラシステムの前記オートフォーカス設定を処理して前記深度測定値を決定することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
深度センサを使用して前記深度測定値を測定することと、
前記シリアルロボットの対応する1組の関節位置センサを用いて前記関節位置信号を測定することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標的物の前記基準画像を取得することは、前記デジタルカメラを使用して2次元市松模様図形のデジタル画像を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記その後の動作中に1つ又は複数の表示画面を通して前記標的物の3次元画像を表示することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デジタルカメラは、眼科顕微鏡と一体であり、前記標的物の前記基準画像を取得することは、前記眼科顕微鏡を使用することを含み、前記ロボットカメラシステムの前記その後の動作は、前記眼科顕微鏡を使用する眼科手術の一部として実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ロボットカメラシステムであって、
シリアルロボットのエンドエフェクタに接続可能なデジタルカメラであって、前記エンドエフェクタ及び前記デジタルカメラは、ロボット運動座標系内を移動する、前記デジタルカメラと、
前記デジタルカメラと通信する電子制御ユニット(ECU)であって、
光学座標系を有する像面内の標的物の基準画像を、前記デジタルカメラを使用して取得することと、
前記デジタルカメラと前記標的物との間の直線距離を示す深度測定値と、前記ロボット運動座標系内の前記デジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号とを含む、入力信号を受信することであって、前記ロボット運動座標系は、x軸、y軸、及びz軸を有する、前記受信することと、
第1の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記基準画像内の標的点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定することと、
前記ロールオフセット及び前記ピッチオフセットを決定した後、第2の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定することと、
前記ロールオフセット、前記ピッチオフセット、前記x軸オフセット、前記y軸オフセット、及び前記z軸オフセットを前記ECUのメモリ内の変換行列に格納することと、
前記ロボットカメラシステムのその後の動作中に前記変換行列を使用して前記シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御することと、
を行うように構成された前記電子制御ユニット(ECU)と、
を含む、ロボットカメラシステム。
【請求項10】
前記シリアルロボットを更に含む、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項11】
前記デジタルカメラは、フォーカスモータを含み、前記デジタルカメラと前記フォーカスモータによって制御される前記像面との間の可変の光学作動距離を有し、前記ECUは、前記可変の光学作動距離と前記フォーカスモータの回転位置又はエンコーダカウントとによって索引付けされたルックアップテーブルから前記z軸オフセットを抽出するように構成される、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項12】
前記ECUは、前記可変の光学作動距離に対応する焦点範囲にわたって前記フォーカスモータを制御している間に前記ルックアップテーブルにデータを追加するように構成される、請求項11に記載のロボットカメラシステム。
【請求項13】
前記ECUは、前記デジタルカメラのオートフォーカス設定を受信し、前記オートフォーカス設定を使用して前記深度測定値を決定するように構成される、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項14】
前記深度測定値を決定するように動作可能な深度センサを更に含む、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項15】
前記ECUは、前記デジタルカメラを使用して2次元市松模様図形のデジタル画像を収集することによって前記標的物の前記基準画像を取得するように構成される、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項16】
1つ又は複数の表示画面を更に含み、前記ECUは、前記その後の動作中に前記1つ又は複数の表示画面を通して前記標的物の3次元画像を表示するように構成される、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項17】
前記デジタルカメラと一体である眼科顕微鏡を更に含み、前記標的物はヒト患者の眼であり、前記ロボットカメラシステムの前記その後の動作は、眼科手術の一部として実施される、請求項9に記載のロボットカメラシステム。
【請求項18】
命令が記録されたコンピュータ可読媒体であって、シリアルロボットのエンドエフェクタに接続されたデジタルカメラを有するロボットカメラシステムと共に使用された場合、プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサが、
光学座標系を有する像面上の標的物の基準画像を前記デジタルカメラから取得することと、
前記デジタルカメラと前記標的物との間の直線距離を示す深度測定値と、ロボット運動座標系内の前記デジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号とを含む、入力信号を受信することであって、前記ロボット運動座標系は、x軸、y軸、及びz軸を有する、前記受信することと、
第1の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記基準画像内の標的点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定することと、
前記ロールオフセット及び前記ピッチオフセットを決定した後、第2の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定することと、
前記ロールオフセット、前記ピッチオフセット、前記x軸オフセット、前記y軸オフセット、及び前記z軸オフセットを前記コンピュータ可読媒体内の変換行列に格納し、それにより、前記デジタルカメラを有するロボットカメラシステムを較正することと、
制御するために前記変換行列を使用して前記ロボットカメラシステムのその後の動作中に前記シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御することと、
を行う、コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記デジタルカメラは立体カメラであり、前記プロセッサによる前記命令の前記実行によって、
前記プロセッサが、前記その後の動作中に1つ又は複数の表示画面を通して前記標的物の3次元画像を表示する、請求項18に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記デジタルカメラは、前記デジタルカメラとフォーカスモータによって制御される前記像面との間に可変の光学作動距離を有し、前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサが、
前記フォーカスモータの回転位置又はエンコーダカウントを決定することと、
前記z軸オフセットによってデータが追加されたルックアップテーブルであって、前記可変の光学作動距離と前記フォーカスモータの前記回転位置又はエンコーダカウントとによって索引付けされた前記ルックアップテーブルから前記z軸オフセットを抽出することと、
を行う、請求項18に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットカメラシステムの光軸を較正する自動化された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
外科医は、多くの場合、患者の標的解剖学的構造のリアルタイムのデジタル撮像によって支援される。網膜硝子体手術を施す眼科医は、例えば、外科医の見やすい範囲内に位置決めされた高解像度の医療用表示画面を使用して、又は顕微鏡の光学部品を通して、網膜又は他の眼内の解剖学的構造の高倍率画像をリアルタイムで見る。カメラは、多関節シリアルロボットの遠位端に配置されたエンドエフェクタに確実に取り付けられ得る。シリアルロボットの様々な関節及び相互接続されたリンク機構の集合運動は、標的解剖学的構造に対してカメラの向きと位置を適切に定めるために、電子制御ユニットを用いて制御される。
【0003】
その目的のために、相互接続された多数のアームセグメントを有する多軸シリアルロボットは、接続されたデジタルカメラが必要に応じて回転又は平行移動することを可能にするために、手術室内で使用され得る。かかるシリアルロボットの一例は、「Stereoscopic Visualization Camera and Integrated Robotics Platform」という名称の、Alcon, Inc.に対する米国特許第10,917,543B2号明細書に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ロボット運動は、ロボット運動基準座標系(「ロボット座標系」)内で発生し、ロボット座標系は、少なくとも典型的なデカルト座標系の公称x、y、及びz軸を有する。
【0004】
自動機械視覚支援タスクの実施を支援するために使用されるロボットカメラシステムは、所要の最小解像度、視野、被写界深度、及び光学作動距離を含む、動作パラメータによって定義される。特に本明細書で使用される光学作動距離とは、カメラ又はそのハウジングの底部と標的、例えば患者との間の距離とは対照的に、デジタルカメラの投影中心(CoP)と像面に位置する撮像される標的との間に延びる光軸に沿った直線距離を表す。上述のように、好適なエンドエフェクタを介してシリアルロボットの遠位端に結合された、デジタルカメラは、カメラ自体の基準座標系(「カメラ座標系」)内で標的をデジタル的に撮像する。シリアルロボットの運動を制御するために一般的に使用されるタイプの大抵の数学モデルにおけるカメラ座標系は、ロボット座標系に直交して配置されると想定される。したがって、ロボット座標系内のロボット自体の相対位置についてのロボットの理解に対して意図した標的点に適切にデジタルカメラの焦点が合った状態になることを確実にするために、ワークスペース内でエンドエフェクタ及びデジタルカメラを位置決めするために使用される様々な電子運動制御指令及びフィードバック信号を、まず、ロボット座標系に変換しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、ロボットカメラシステムにおけるデジタルカメラの光軸を較正する自動化された方法及びそれに伴うシステムが開示される。方法は、カメラの光学系の関連パラメータの予見又はモデル化なしに進められる。むしろ、方法は、パラメータを使用して、本教示に従ってロボットカメラシステムのその後の制御に用いられる同次変換行列の生成をもたらす。
【0006】
当技術分野において理解されるように、比較的低レベルの位置精度しか必要としない機械視覚用途では、異なるロボットとカメラ座標系との間の潜在的な差異が無視される傾向がある。対照的に、精密な顕微手術などの、比較的高レベルの位置精度を必要とする機械視覚用途では、光学システムの挙動を完全にモデル化し、その後、結果として得られた光学モデルをロボットの運動挙動の運動学モデルにマッピングする試みがなされ得る。しかしながら、このような手法の実施は、面倒なプログラミング作業を伴い、プログラミング作業は、正確で信頼できる光学モデルを導出することが極めて困難であるので潜在的な位置誤差を伴う。
【0007】
それゆえ、完全な光学モデルの利用可能性に依存しない用途では、基準画像上の対象となる標的点の位置を算出する際に、高度の位置誤差が生じる可能性がある。この問題は、光学距離が長い精密用途では悪化する。このような条件下では、カメラの視線ベクトルを僅かでも回転させた又は傾斜させたときに、比較的大きな位置誤差が生じる可能性がある。例えば、眼科顕微鏡は、250mm~350mm程度の一定又は可変の光学距離を有し得る。このような例示的な構成では、ほんの0.1度の光軸傾斜角によって、5mm~10mmもの位置誤差が像面上に生じることがある。
【0008】
そのような位置誤差の起こり得る実際の影響の例として、眼科外科医が、表示された光学画像上の対象となる特定の標的点を見る、例えば白内障手術中に散大瞳孔のちょうど中心を見ることを期待する、例示的な事例が考慮され得る。しかしながら、既述の位置誤差のため、外科医はむしろ、全く異なる標的点、おそらく周囲の虹彩の表面に位置する標的点を見ることになる。その後、外科医は、所望の標的点を適切に特定するために更なる制御調整を必要とし、それにより、手術時間が延長され、次善の結果がもたらされる。
【0009】
その目的のために、本明細書で詳細に説明される方法は、デジタルカメラをロボットエンドエフェクタに接続する際に、簡便な自動較正プロセスが実施されることを可能にする。それ自体が本明細書では標的へのロック又はLTT機能と称される、ロボットの基礎となる標的取得及び追跡論理によって予期されるように、かかる接続によって、ロボットの運動座標系(「ロボット座標系」)に対するカメラの光学座標系(「カメラ座標系」)の完全な位置合わせが必ずしももたらされるわけではない。すなわち、カメラの視線ベクトルは、外科医による調整に起因して、又はカメラをシリアルロボットのエンドエフェクタに固定するために使用される機械的結合機構の不完全性に起因して僅かに傾斜する可能性がある。そして、これにより、特により長い光学距離を利用する用途では、許容できないほど高レベルの位置誤差が生じる可能性がある。結果として生じる位置誤差を最小限に抑えるために、方法の較正段階で変換行列が生成され、生成された変換行列を使用して、ロボットカメラシステムの後続の運動制御段階が制御される。
【0010】
より具体的には、本明細書で企図されるロボットカメラシステムは、エンドエフェクタに結合されたデジタルカメラを含み、エンドエフェクタはシリアルロボットの遠位端に配置される。したがって、エンドエフェクタ及び接続されたデジタルカメラは、シリアルロボットの動作によってロボット座標系内を移動する。概して、方法は、標的物(例えば、非限定的な眼科手術の使用事例における患者の眼の表面又は別の標的解剖学的構造)の基準画像を取得することによって進められる。画像は、上述のロボット座標系とは対照的にカメラ座標系内で収集される。
【0011】
方法はまた、シリアルロボットと有線又は無線で通信する電子制御ユニット(ECU)を用いて入力信号を受信することを含み、ECUはロボット運動学のモデルで構成される。ECUは、上述のように、カメラ光学系のモデルがないことによって特徴付けられる。入力信号は、標的物/像面までの直線距離を示す深度測定値と、ロボット座標系内のエンドエフェクタの位置を示す関節位置信号とを含む。分かり易くするために、ロボット座標系は、典型的なデカルト基準系の公称x軸、y軸、及びz軸を有するものとして説明されることがある。
【0012】
方法は、ECUを用いて、基準画像内に位置する標的点の角度オフセットとしてロール角オフセット及びピッチ角オフセットを決定することを含み得、このようなオフセットはロボット座標系に対して得られる。方法はまた、標的点の別個のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットを決定することと、その後、ロール、ピッチ、x軸、y軸、及びz軸オフセットをECUのメモリ又はECUによってアクセス可能なメモリ内の同次変換行列に記録又は格納することとを含む。次いで、変換行列は、ロボットカメラシステムのその後の動作中にシリアルロボットの運動シーケンスを制御するために、前述のロボット運動学と共にECUによって使用される。したがって、デジタルカメラが本方法に従って適切に較正された時点で、カメラがエンドエフェクタに接続されたままである限り、ロボットカメラシステムをその後の使用の度に再較正する必要はない。
【0013】
いくつかの構成におけるカメラは、例えば、外科医が手術中に光学距離を変更することを可能にするために、可変の光学距離を有し得る。可変の光学距離は、フォーカスモータを用いて調整され得る。そのような実施形態では、方法は、フォーカスモータを用いて光学距離又は焦点範囲にわたって可変の光学距離を調整しながら、複数のz軸オフセットをルックアップテーブルに記録することを含み得る。そのような実施形態においてz軸オフセットを決定することは、その後の運動シーケンス中にz軸オフセットを予め用意されたルックアップテーブルから抽出することを含み得る。
【0014】
方法は、任意選択的に、ECUを用いてカメラシステムのオートフォーカス設定を処理して上述の深度測定値を決定することを含み得る。代替的に、ECUは、深度センサ、例えばレーザ距離計又は光学センサを使用して深度測定値を測定し得る。
【0015】
光学座標系内の標的物の基準画像を取得することは、デジタルカメラを使用して2次元市松模様図形又は別のピクセル化された標的のデジタル画像を収集することを含み得る。
【0016】
シリアルロボットは、任意選択的に、かかるロボットのエンドエフェクタに結合された眼科顕微鏡に接続された又は眼科顕微鏡と一体のデジタルカメラを備えた6軸の眼科用手術ロボットとして具現化され得る。ロボットカメラシステムのその後の動作は、眼科手術中に、例えば硝子体切除術又は水晶体置換/白内障手術中に被検眼の3次元視覚化を実施することを含み得る。
【0017】
本開示の別の態様は、デジタルカメラと、デジタルカメラと通信するECUとを有するカメラシステムを含む。デジタルカメラ、例えば顕微鏡に接続された又は顕微鏡と一体の立体カメラは、シリアルロボットのエンドエフェクタに接続可能である。エンドエフェクタ及びデジタルカメラは、ロボット運動座標系内を移動する。デジタルカメラと通信するECUは、上で概説したような方法を実施するように構成される。
【0018】
本明細書では、命令が記録されたコンピュータ可読媒体も開示される。シリアルロボットのエンドエフェクタに接続されたデジタルカメラを有するロボットカメラシステムと共に使用された場合、例えば上述のECUの、プロセッサによる命令の実行によって、プロセッサは、上で概説したような方法を実施する。
【0019】
前述の概要は、本開示の可能な全ての実施形態又は態様を表すように意図されているわけではない。むしろ、この概要は、本明細書に開示される新規な態様及び特徴のいくつかを例示するように意図されている。本開示の上述及び他の可能な特徴及び利点は、本開示を実施するための代表的な実施形態及び態様の以下の詳細な説明を付随する図面及び添付の特許請求の範囲と併せて読めば容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】デジタルカメラの光軸を本開示に従って較正可能である、シリアルロボットのエンドエフェクタにデジタルカメラが接続されたロボットカメラシステムの図を示す。
図2図1のロボットカメラシステムにおける光軸又は視線ベクトルの僅かな角度傾斜から生じ得る位置誤差の概略図である。
図3図1に示すロボットカメラシステムの光軸を較正する方法の例示的な実施形態を説明するフローチャートである。
図4図3に示す方法の実施形態を実施するときに市松模様標的に対して配置された、顕微鏡に取り付けられたデジタルカメラの図である。
図5A】本開示の態様に従ってデジタルカメラの光軸を較正する過程でのデジタルカメラの代表的な運動の概略図である。
図5B】本開示の態様に従ってデジタルカメラの光軸を較正する過程でのデジタルカメラの代表的な運動の概略図である。
図5C】本開示の態様に従ってデジタルカメラの光軸を較正する過程でのデジタルカメラの代表的な運動の概略図である。
図6】光学作動距離がメートル単位で表され、縦軸に示され、且つフォーカスモータ位置がエンコーダカウントで表され、横軸に示された、光学作動距離対フォーカスモータ位置のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の前述の特徴及び他の特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を付随する図面と併せて読めば、より十分に明らかになる。
【0022】
本開示の実施形態が本明細書で説明される。しかしながら、開示される実施形態は単なる例示であり、他の実施形態が様々な代替形態を取り得ることが理解されよう。図は、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張又は最小限にされ得る。したがって、本明細書に開示される特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的に解釈されるべきではなく、単に、本開示を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0023】
当業者であれば理解するように、図面のうちのいずれか1つを参照して示されて説明される様々な特徴を、1つ以上の他の図面に示された特徴と組み合わせて、明示的に図示又は説明されていない実施形態を作り出すことができる。図示の特徴の組み合わせは、典型的な用途のための代表的な実施形態を提供する。しかしながら、本開示の教示と一致する特徴の様々な組み合わせ及び修正が、特定の用途又は実施のために望まれることもある。
【0024】
以下の説明では、特定の用語が参照のみを目的として使用される場合があり、そのため、それらは、限定を意図するものではない。例えば、「上方」及び「下方」などの用語は、参照される図面内における方向を指す。「前部」、「後部」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「後部」、及び「側部」などの用語は、議論している構成要素又は要素を説明する本文及び関連図面を参照することによって明確になる、一貫しているが、任意の基準系の範囲内での構成要素又は要素の部分の向き及び/又は位置を説明するものである。更に、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、別々の構成要素を説明するために使用され得る。そのような用語には、具体的に上述された語、それらの派生語及び類似の意味の語を含み得る。
【0025】
図面を参照すると、類似の参照番号は類似の構成要素を指し、図1において、手術室10は、患者11が手術台12の上に載っている状態で、代表的な眼科手術中に見られるように示されている。本明細書で企図されるような手術室10は、ロボットカメラシステム14を備えており、ロボットカメラシステム14自体は、多関節シリアルロボット16とデジタルカメラ18とを含む。本開示の範囲内で、ロボットカメラシステム14は、電子制御ユニット(ECU)50の動作によって制御され、電子制御ユニット(ECU)50は、較正方法70を具現化するコンピュータ可読命令を実行するように、ソフトウェアでプログラミングされ、ハードウェアに具備され、すなわち構成され、その例については、特に図3を参照して以下に説明する。方法70の実行によって、以下に記載する方式でのロボットカメラシステム14の簡便且つ迅速な較正が可能となる。
【0026】
ロボットカメラシステム14は、ユーザ、この非限定的で例示的な例では、外科医(図示せず)が、高倍率で標的物19の拡大画像を見ることを可能にし、1つ又は複数の高解像度表示画面20上の画像の表示によって高解像度視覚化が容易になる。その目的のために、以下で詳細に説明する方法70は、シリアルロボット16の遠位端E1に配置されたロボットエンドエフェクタ26、例えば、取付板、ブラケット、クランプ、又は他の好適な取付金具にデジタルカメラ18を接続するときに、簡便な自動較正プロセスがECU50によって実施されることを可能にする。
【0027】
エンドエフェクタ26へのデジタルカメラ18の接続によって、典型的なデカルト基準座標系の公称x軸、y軸、及びz軸として図1に表すような、以下、簡略化するためにロボット座標系25と称される、ロボット運動座標系25に対するカメラの光軸及び対応する視線ベクトルの完全な直交方向の又は他の意図された位置合わせが必ずしももたらされない。すなわち、光軸に沿ったデジタルカメラ18の視線ベクトルは、外科医による視線ベクトルの調整、カメラ固有のレンズのばらつき、又は設置よる位置合わせ誤差に起因して僅かに傾斜することがある。
【0028】
デジタルカメラ18と標的物19との間の延長された光学作動距離(WD)を利用する用途では、最終的に、許容できないほど高レベルの位置誤差が生じる可能性がある。このような位置誤差を最小限に抑えるために、ECU50は、ロボットカメラシステム14の較正段階で変換行列(TF)75を生成し、次いで、変換行列75を使用してロボットカメラシステム14のその後の運動を制御する。かかる変換行列75は、カメラの光学系の関連パラメータの予見又はモデル化なしに導出される。補正された位置は、ロボットカメラシステム14のその後の動作中に標的物19を撮像する際に、続いてシリアルロボット16の運動を制御するときに、分散モータ制御プロセッサと共に又は併せてECU50によって用いられる。
【0029】
当技術分野において理解されるように、デジタルカメラ18は、ピクセル画像を形成するときに入射光を取得及び/又は記録するように集合的に構成された1組の光学画像センサ(図示せず)を内部に含む。可能な立体視の実施形態におけるかかる画像センサは、右光路及び左光路用にそれぞれ別個の右光学画像センサ及び左光学画像センサを含み、相補型金属酸化膜半導体(「CMOS」)検知要素、N型金属酸化膜半導体(「NMOS」)、半導体電荷結合素子(「CCD」)検知要素、又は他の様々な用途に適した装置を含み得る。
【0030】
デジタルカメラ18は、調整可能なヘッドユニット22内に位置し、標的物19のデジタル画像データ(矢印CCIMG)を収集するように構成され得、このデジタル画像データは、標的物19のライブ映像の立体視を生成するようにECU50によって処理及びフィルタリングされ得る。切り替えつまみ23は、ユーザがヘッドユニット22を手動で位置決めすることを可能にするのみならず、ユーザが、レベル倍率又は合焦度などの、デジタルカメラ18の特定の特徴を調整することを可能にするために、ヘッドユニット22上又はヘッドユニット22に取り付けられ得る。
【0031】
デジタルカメラ18は、キャプチャされた静止画像、リアルタイム画像及び/又はデジタル映像信号を含むが、これらに限定されない、様々な形態での提示のために標的物19の2次元又は3次元画像をリアルタイムで取得するように構成される。本明細書中で使用する場合、「リアルタイム」とは、データを取得するのと同じ又はほぼ同じ速度で情報を更新することを指す。より具体的には、「リアルタイム」とは、画像データ(矢印CCIMG)から構築された画像が最終的に表示画面20に表示されたときに、表示画像が、スムーズに、すなわち、ユーザが容易に気付く激しい振動又は待ち時間なしに動いているように見えるように、画像データが、十分に高いデータ転送速度で且つ十分に遅い遅延で、取得、処理、及び送信されることを意味する。参考のために、好適な代表的なデータ転送速度は、約30フレーム/秒(30fps)以上であり、約60fpsで表示され、約1/30秒以下の遅延がある。
【0032】
本開示に従って光軸が較正されるデジタルカメラ18は、既述の光学作動距離(WD)を有するレンズアセンブリ(図示せず)を含む。光学作動距離(WD)が設定範囲内で可変である場合、フォーカスモータ21は、当技術分野において理解されるように、デジタルカメラ18と標的物19に焦点が合う基準面との間の直線距離である、作動距離を調整するためにレンズアセンブリの1つ又は複数のレンズを選択的に移動させる。いくつかの実施形態では、光学作動距離(WD)は、フォーカスモータ21を用いて後部作動距離レンズを前部作動距離レンズに対して移動させることによって調整可能であり、「前部」及び「後部」とは、それぞれ、標的物19に近い相対位置及び標的物19から遠い相対位置を指す。フォーカスモータ21は、電気モータ又は別の好適な回転アクチュエータとして、又はステッピングモータ、形状記憶合金アクチュエータ、若しくは別の用途に適したアクチュエータなどの線形アクチュエータとして様々に具現化され得る。
【0033】
更に図1を参照すると、シリアルロボット16は、ヘッドユニット22に動作可能に接続されてヘッドユニット22を選択的に移動させるように構成された多関節ロボットアーム24を含み、このヘッドユニット22は、エンドエフェクタ26に機械的に結合される。操作者は、ロボットアーム24の自動位置制御によってデジタルカメラ18を位置決めし、デジタルカメラ18の向きを定め得る。図1に表すようなロボットアーム24は、ヘッドユニット22を位置決めし及び/又はヘッドユニット22の向きを定めるときに、代表的な実施形態では、6自由度(「6-DoF」)を提供するように集合的に構成された多数の回転関節30を含む。
【0034】
力センサからの感覚データは、デジタルカメラ18の動きを支援するときに、様々な関節30の角度位置及び調整速度を決定するためにECU50によって用いられ得る。各それぞれの関節30は、1つ又は複数の対応する関節モータ31と、それぞれの関節位置センサ33とを備え得る。そして、各関節モータ31は、ロボット座標系25内のそれぞれの軸を中心に回転関節30の対応する1つを回転させるように構成され、その一方で、関節位置センサ33は、それぞれの関節30の各々の測定された角度位置をECU50に送信する。
【0035】
ロボットアーム24は、ロボット座標系25のx、y、及び/又はz軸に沿ってデジタルカメラ18の視野範囲を広げるように選択的に動作可能である。例えば、ロボットアーム24及びロボットアーム24に結合されたデジタルカメラ18は、移動台車34に接続され得、この移動台車34は、調整可能なアーム40を介して表示画面20に物理的又は遠隔的に接続され得る。台車34は、軽量で消毒が容易な医療グレードの材料、例えば塗装されたアルミニウム又はステンレス鋼で構築され、場合により、起こり得る塵埃、破片、及び湿気の侵入から構成ハードウェアを保護する目的でECU50を収容するために使用され得る。図1には、調整可能なアーム40によって支持された表示画面20が、高解像度/4K以上の医療グレードモニタの形態で示されているが、他の実施形態は、非限定的に、例えば、壁掛けの高精細度若しくは超高精細度テレビ、スマート眼鏡若しくは別のウェアラブルモニタ、プロジェクタ、又はコンピュータ画面を含み得る。
【0036】
デジタルカメラ18の動作によって収集される標的物19のデジタル画像データ(矢印CCIMG)は、無線で又は物理的高速伝送導体を介してECU50に伝達される。次に、ECU50は、高解像度デジタル画像を構成して表示するのに必要不可欠なデジタル画像処理ステップを実施する。例えば、ECU50は、デジタルカメラ18からの映像信号を結合又は交互配置して立体視画像を作成し得る。ECU50は、メモリ(M)54として図1に概略的に表す、関連するコンピュータ可読媒体内の映像ファイル内に映像信号及び/又は立体映像信号を格納するように構成され得る。
【0037】
更にECU50に関して、このコンピュータ装置は、単に例示を明確且つ簡潔にするために、単一のボックスとして図1に概略的に示されている。ECU50の実際に実施される実施形態は、各コンピュータ装置が、1つ又は複数の対応するプロセッサ(P)52と、プロセッサ(52)によって読み取り可能且つ実行可能な1組のコンピュータ可読命令が記録又は格納された非一時的(例えば有形)媒体を含む、十分な量の上述のメモリ54とを有する、ネットワークに接続された1つ又は複数のコンピュータ装置を含み得る。メモリ54は、不揮発性媒体及び揮発性媒体を含むが、これらに限定されない、多くの形態を取り得る。図3の方法70を具現化する命令は、メモリ54に格納され、以下に説明される様々な較正機能を果たすようにプロセッサ52によって選択的に実行され得る。
【0038】
当業者に理解されるように、不揮発性媒体は、光ディスク及び/若しくは磁気ディスク又は他の永続的なメモリを含み得、揮発性媒体は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)などを含み得、これらのいずれか又は全てがECU50のメインメモリを構成し得る。入出力(「I/O」)回路56は、デジタルカメラ18、光源(図示せず)、及び高解像度表示画面20を含む様々な周辺装置への接続及び通信を容易にするために使用され得る。グラフィカルユーザインターフェース(GUI)29は、外科医又は臨床医が制御指令(矢印CC14)を入力してシリアルロボット16を動かすことを可能にするために、及び自由空間におけるシリアルロボット16の位置を示す測定された関節角度信号(矢印CC30)を受信するために、並びにデジタルカメラ18の動作を制御し、別の方法で、ECU50及びその様々な機能とインターフェースするために、ECU50に接続され得る。ローカル発振器又は高速クロック、信号バッファ、フィルタ、増幅器などを含むが、これらに限定されない、図示されていないが、当技術分野で一般的に使用される他のハードウェアがECU50の一部として含まれ得る。
【0039】
本開示によれば、方法70の実行は、図1のECU50が、本明細書では「標的へのロック」又はLTTモードと称される、標的ロックモードを実施することを必要とする場合があり、標的ロックモードは、シリアルロボット16を介してロボットの可動域の定められたワークスペース内の任意の場所にデジタルカメラ18が位置決めされることを可能にし、標的物19の位置が、運動追跡の目的でロックされ、この位置に適切に焦点に合った状態を維持しながら、LTTモードが、光学作動距離(WD)の変更を許容する。当技術分野において理解されるように、シリアルロボット16を動かして、シリアルロボット16に接続されたデジタルカメラ18の向きを変えるときに、すなわち、視線ベクトルの方向が変化するときに、画像に焦点が合った状態を維持することは困難である可能性がある。それゆえ、開示の実施形態では、ECU50の標的ロックモード/LTT能力は、特定の標的点にロックオンした状態でデジタルカメラ18の向きを再び定めることを可能にすることによって、ロボットアーム24が、担当外科医の延長部として効果的に動作することを可能にする。
【0040】
この定められた文脈の中で、ECU50は、図3の方法70を具現化するコンピュータ可読命令でプログラミングされ、コンピュータ可読命令は、シリアルロボット16の運動と、標的物19のピクセル画像上の結果として生じる位置変化とを正確に関連付けるためにロボットカメラシステム14を較正するときに実行される。方法70の実行によって、最終的に、5つのパラメータ、すなわち、N1、N2、N3、N4、N5からの同次4×4行列としてそれ自体が構築された、変換行列75の生成及び記録がもたらされる。
【0041】
本方策によれば、パラメータN1及びN2は、それぞれ、算出されたロールオフセット及びピッチオフセットに対応し、その一方で、パラメータN3、N4、及びN5は、それぞれ、x軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットに対応する。したがって、変換行列75は、線形項p=[x,y,z]及び回転項R=R(ほぼx軸)*R(ほぼy軸)を有する4×4(16要素)の同次行列として具現化され得る。例示的な眼科撮像用途での開示した解決策の目的のために、ヨーは無視することができる。解決策は、別の方法で、デジタルカメラ18の光学系の解析モデルにアクセスすることなく進められる。代わりに、像面内の標的物19及び標的物19上の対象点の真の位置を算出して表示するために、変換行列75が、ロボットカメラシステム14のその後の運動シーケンス中に、ECU50によって適用される。したがって、標的物19の表示画像の対応するピクセル位置は、ロボット座標系25内のピクセル位置に対応する。
【0042】
延長された光学作動距離(WD)を用いてデジタルカメラ18を制御する際に本開示によって解消される問題は、図2を簡単に参照することで理解することができ、図2は、ロボット座標系25及び図1に示すデジタルカメラ18のカメラ座標系125を図示している。原点PO,実際は、LTT基準系、すなわちカメラ座標系125内にある。ロボット座標系25のz軸は、通常、デジタルカメラ18の視線ベクトル100であると想定され、これは、視線ベクトル100に傾斜がなければ真である。したがって、図2は、実際には視線ベクトル100が角度(θ)をなして傾斜しているときの、図1のロボットカメラシステム14を制御するための元の運動学モデルに対する起こり得る位置誤差(「誤差」)を図示しており、この運動学モデルは、典型的には視線ベクトル100がヘッドユニット22に垂直である又は直交することを想定している。
【0043】
すなわち、ロボット座標系25内の点A、B、及びCに対して、原点PO,実際は、生じ得るピッチ及びロールオフセットも同様に、x軸、y軸、及びz軸から離れてある距離だけオフセットされ得る。換言すれば、座標系25及び125は、基礎となるモデルに対して完全には位置合わせされず、別の言い方をすれば、直交関係と通常想定されるものは、正確にはそうではない。光学作動距離(WD)が増加するにつれて、結果として生じる位置誤差も増加する。例えば、300mmの光学作動距離及びほんの0.5度の傾斜角(θ)が、標的物19の提示画像内の対応する表示誤差を伴う、5mm~10mmの位置誤差につながる可能性がある。それゆえ、本解決策は、その後の運動制御動作で使用するためにカメラ座標系125をロボット座標系25まで平行移動させるときに、かかる位置誤差を最小限に抑えるために、角度オフセット、並びにx軸、y軸、及びz軸オフセットを求めることを模索する。
【0044】
当技術分野において理解されるように、ECU50のLTT制御機能は、図1に示す付属のデジタルカメラ18を用いてロボットアーム24の運動を制御するときに実行される。LTT機能によって、ECU50が、開始画像を表示画面20の中心に維持しながらロボットアーム24を動かすことが可能となる。これは、図1の光学作動距離(WD)を「ロック」することによって行われ、デジタルカメラ18の結果として生じる運動は球面運動であり、その半径はデジタルカメラ18の推定された焦点距離に等しい。ECU50のかかるLTT機能は正確性を向上させるが、LTT機能を使用する際の画像誤差の主な原因は、許容できるレベルの精度で、視線ベクトル100に基づく投影中心(CoP)及び/又は焦点(FP)の位置、ひいては、図2のロボット座標系25内の標的物19の位置が依然として分からないことである。
【0045】
本教示は、図1に示すタイプのロボットカメラシステム、すなわち、6自由度のシリアルロボットのエンドエフェクタに接続されたデジタルカメラを有するロボットカメラシステムであって、エンドエフェクタ及びデジタルカメラがロボット運動座標系内を移動する又は自由に移動するロボットカメラシステムを較正する目的で実行されるコンピュータ実行可能命令として実現され得る。概して、本開示の範囲内に含まれる解決策は、光学座標系、すなわち、シリアルロボットの座標系とは対照的なデジタルカメラの座標系を有する像面上に位置する標的物の1つ又は複数の基準画像を取得することによって進められる。入力信号は、デジタルカメラと標的物との間の直線距離を示す深度測定値、及びロボット運動座標系内のデジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号の形式で受信される。上で説明されたように、ロボット運動座標系は、公称x軸、y軸、及びz軸を有する。
【0046】
非限定的で例示的な実施形態を図3に示し以下に説明する、方法の好適な実施は、基準画像内の標的点のロール及びピッチオフセットを決定する論理ステップを含み、「オフセット」とは、ロボット運動座標系に対する角度差又はデルタを指す。そのようなオフセットは、第1の較正済み運動シーケンスでシリアルロボットを動かしている間に決定され、その後、方法は、ロボット運動座標系に対する標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定する。これは、第2の較正済み運動シーケンスでシリアルロボットを動かしている間に行われる。方法は、ここから、角度及び線形/軸オフセットを変換行列に格納することによって進められ、変換行列は、シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御するために後に、すなわち、ロボットカメラシステムのその後の動作中に使用される。
【0047】
デジタルカメラ18を含む顕微鏡17を示す図4と併せて図3を参照すると、上で概説した方法、すなわち方法70の実施形態は、ブロックB72(「開始」)で始まる。方法70は、カメラ固有のばらつきを捕捉して補正するために、所与のロボットカメラシステム14に対して実行され得る。ブロックB72は、シリアルロボット16の遠位端E1に位置するエンドエフェクタ26にデジタルカメラ18が確実に取り付けられた時点で完了する。次いで、方法70はブロックB74に進む。
【0048】
ブロックB74(「標的位置合わせ」)は、デジタルカメラ18を使用して基準標的48の画像を取得することを含み、分かり易くするために、そのような画像は本明細書では「基準画像」と称される。図4に示すように、基準標的48は、ピクセル化された標的図形48P、例えば、y軸寸法(yOPT)とx軸寸法(xOPT)とを有する交互の黒色及び白色ピクセル49を有する2次元矩形市松模様画像であり得る。初期の標的位置合わせ中に、ECU50は、シリアルロボット16を既定の関節角度まで動かし、次いで、基準画像のx軸及びy軸が基準標的48のx軸及びy軸と位置合わせされるように、シリアルロボット16を回転させるように試みる。基準画像は、ブロックB74ではx軸とy軸のみが位置合わせされ、結果として得られた関節角度がメモリ54に格納されるので、センタリングされる必要はない。
【0049】
ブロックB74の一部として、図1のフォーカスモータ21の位置は、較正された焦点距離で初期化される。較正された焦点距離は、続いてECU50がブロックB76、B78、及びB80を実施する焦点距離を表す。例えば、ECU50は、可能な実施形態では、焦点距離を、それ自体がメモリ54に格納された既定の2次作動距離曲線の50%に又は約0.35m~0.45mに設定し得る。したがって、ブロックB74は、場合により、図4に示すように深度センサ27を使用して測定された又はデジタルカメラ18のオートフォーカス設定から導出された、深度測定値を含む入力信号(矢印CCIN)を使用して、ECU50自体が図1のシリアルロボット16と通信する、ECU50を用いて入力信号(矢印CCIN)を受信することを伴う。深度測定値は、デジタルカメラ18の光軸(LL)に沿った標的物19までの直線距離を示し、デジタルカメラ18は、可能な実施形態では、顕微鏡17、例えば眼科顕微鏡と一体のものとして示されている。入力信号(矢印CCIN)はまた、ロボット座標系25におけるシリアルロボット16の遠位端E1の位置を示す関節位置信号(図1の矢印CC30)も含む(図1及び図2を参照)。次いで、方法70はブロックB76に進む。
【0050】
次に、ブロックB76(「角度オフセット」)において、ECU50は、上述の基準画像内の基準点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定し、ロボット座標系25に対してそれを行う。ロールオフセット及びピッチオフセットは、シリアルロボット16のエンドエフェクタ26をz軸に沿って上方又は下方に動かすことと、ECU50を用いて、図4の中心画像148のx位置及びy位置が初期状態から逸脱する距離を観察して記録することとによって決定され得る。例えば、ECU50は、基準画像と測定された変位との差又はデルタを使用して、x軸及びy軸に対して独立してロール角及びピッチ角を算出するために、アークタンジェント(逆正接)計算を用い得る。変位の測定は、当業者に理解されるように、上述のLTT論理を用いて達成され得る。ECU50は、例えば、±0.5度の範囲内のロール及びピッチパラメータに対して繰り返すことによって、正確性を高めるために、ブロックB76の数回の繰り返しを選択的に実行し得る。
【0051】
ブロックB78(「X、Yオフセット」)は、デジタルカメラ18のz軸を中心にデジタルカメラ18を回転させることを伴い得る。これが行われると、投影中心(CoP)におけるxオフセット及びyオフセットによって、基準画像が円軌跡を描く。したがって、Ax=b行列は、基準画像上で測定される、x方向及びy方向におけるデルタを算出し、それにより、ECU50が開始x及びy位置を算出することを可能にすることで、ECU50によって使用され得る。そのため、ブロックB78は、ECU50を用いて、ロボット座標系25に対する基準点のx軸オフセット及びy軸オフセットを決定することを含む。次いで、ECU50は、ロールオフセット及びピッチオフセットと共にx軸オフセット及びy軸オフセットを、ECU50のメモリ54内の又は別のアクセス可能な場所における、図1の変換行列75に格納する。
【0052】
ブロックB80は、ブロックB78のx及びyオフセットを調整した後にz軸オフセットを決定することを伴う。図5A及び図5Bを簡単に参照すると、Z軸オフセットは、所与の焦点距離(f)に対して正しい標的Z軸位置を位置合わせするための[f,z]の可能な解の1つである。実際のCoPは、点64で表される。光軸に沿って、基準点62は、光軸が像面60と交差する場所に存在する。しかしながら、ECU50は、方法70を用いる較正の前に、CoPが実際には点66(CoP50)に位置し、標的の真の位置が点65(TGT50)であるという間違った理解に基づいて、動作し得る。したがって、点64と点62との間の実際の焦点距離(f)は、ECU50の焦点距離推定値(f50)と異なり、z軸に沿った差の量はΔzで表される。
【0053】
ブロックB80では、ECU50は、シリアルロボット16が、図5Bに矢印67で表すように、球状の可動域内で既知の角度(θ’)だけデジタルカメラ18を移動させる実験を行い得る。点62、64、及び66の新たな対応する位置は、それぞれ、点162、164、及び166として図5Bに示されている。このようないくつかの運動は連続して実施され得、平均デルタは、次の式で使用され得る。したがって、測定誤差(Δximg)が像面内に生じる。
【0054】
図6に示すようなz軸による解決策は、ximgを測定し、既知の角度(θ’)を使用してz軸距離(r)を算出することである。ECU50は、ロボット座標系25内でΔx=0となるように、以下:
【数1】
のように標的点65を距離(r)だけ上にずらすことができる。方法70の初期におけるECU50は、較正済み焦点距離にロックされているので、最適な解決策は、ECU50によって使用されるz軸オフセットを距離(r)に等しくなるように簡便に設定することであり、この距離(r)は、当技術分野において理解されるように、ECU50を用いて測定され得る。次いで、方法70はブロックB82に進む。
【0055】
図3に示す方法70のブロックB82は、ECU50のメモリ54内にフォーカス対光学作動距離(F対WD)テーブルを作成することを伴い得る。この動作は、上で説明したロール、ピッチ、及びx、y、x軸オフセットの調整後に、ロボットカメラシステム14のその後の動作中に使用されるテーブルから抽出された値を用いて、オフラインで達成され得る。例えば、ECU50は、較正された焦点距離で初期化し、その後、テーブルにデータを追加し得る。可能な実施形態では、シリアルロボット16は、ECU50又は他の好適な処理及び制御ハードウェアの指示で、較正される量だけ各限界に向けてデジタルカメラ18を図2の視線ベクトル100に沿って移動させ、次いで、エンコーダ位置又は「カウント」の対応するテーブルエントリ、メートル単位の光学作動距離(WD)をルックアップテーブルに格納する。図8に示すそのようなデータの曲線90は、曲線90は、所与の光学作動距離(WD)に対する対応するz軸オフセットを表す。すなわち、ECU50は、フォーカスモータ21(図1を参照)のカウントに基づく位置及び対応する光学作動距離(WD)を使用して、図示の曲線90を生成する。
【0056】
所与のLTT操作を実施するために標的物19をロックオンするときに、図1のロボットアーム24には、視線ベクトル100に沿ったCoPから標的位置までの距離が与えられる。この値は、フォーカスモータ21の生のエンコーダ位置を入力することによって得られ得る。したがって、本較正方法70の重要な最終結果は、標的物19の位置を算出する際に変換行列75を使用して位置誤差が最小限に抑えられることである。実質的な意味において、ECU50は、ECU50がLTTモードに入るたびに、対応するLTT制御座標系の位置を算出し、光学作動距離(WD)を求めるために、デジタルカメラ18に、光学作動距離テーブル、例えば図8の曲線90を調べさせる。その後、ECU50は、視線ベクトル100を生成する。視線ベクトル100の終点は標的位置であり、標的位置の位置誤差は、方法70の実行によって最終的に最小限に抑えられる。一定の光学作動距離の顕微鏡17の場合のように、単一の光学作動距離(WD)を考慮する場合、ECU50は依然として、その特定の光学作動距離における誤差を最小限に抑えるために単一のz軸オフセットを決定する。それゆえ、そのような手法の機能的等価物は、単一のZオフセットエントリを有するルックアップテーブル又はメモリ位置の作成である。
【0057】
次に、図3の方法70は、ECU50が、図1の変換行列75を使用して、ロボットカメラシステム14のその後の動作中にシリアルロボット16の運動シーケンスを制御する、ブロックB84に続く。したがって、例えば、自律的に生成された又は外科医によって指令された、ECU50からの指令に応答してシリアルロボット16を動かすときに、ECU50の運動制御論理は、ロボット座標系25内のシリアルロボット16の増分運動の、カメラ座標系125内での、すなわち像面上での、応答を認識する。したがって、標的物19上の特定の点、例えば眼科手術中の患者の角膜又は水晶体上の点を視覚化したいと望む外科医には、表示されたデジタル画像上の予期される場所に標的点が正確に現れるという高い確信度が与えられる。
【0058】
前述の開示に鑑みて当業者に理解されるように、方法70の実行によって可能となる較正プロセス又はその論理的変化は、ロボット座標系25とカメラ座標系125との予期される位置合わせの間の僅かな変化を補正するように意図されている。外科医による視線ベクトルの調整、デジタルカメラ18を図1のエンドエフェクタ26に取り付ける際の公差、又は他の要因によるかどうかにかかわらず、所与のカメラは、所与の手術室10内の予期される位置合わせと完全に一致しない。したがって、既述の較正する試みは、所与のカメラとロボットとの接続に対して行われる。方法70の較正ステップが完了した時点で、方法70は、ブロックB84に進むことができ、ブロックB84では、外科医又は臨床医は、ロボットカメラシステム14のその後の動作中の位置誤差が最小限に抑えられるという利点を享受することができる。これらの及び他の潜在的な利点は、前述の開示に鑑みて当業者に容易に理解されるであろう。
【0059】
詳細な説明及び図面は、本開示をサポートし、説明するものであるが、本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。特許請求の範囲に記載された開示を実施するための最良の態様及び他の実施形態のいくつかを詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲において定義された開示を実施するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。更に、図面に示された実施形態又は本明細書で言及された様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに独立した実施形態として理解されるべきではない。むしろ、ある実施形態の例のうちの1つで説明された特性のそれぞれは、他の実施形態からの1つ又は複数の他の望ましい特性と組み合わせることが可能であり、その結果、言葉で説明されていないか又は図面を参照することによって説明されていない他の実施形態を得ることができる。したがって、このような他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の枠組み内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A-5C】
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルロボットのエンドエフェクタに接続されたデジタルカメラを有するロボットカメラシステムを較正する方法であって、前記エンドエフェクタ及び前記デジタルカメラは、ロボット運動座標系内を移動し、前記デジタルカメラは、眼科顕微鏡と一体であり、前記方法は、
光学座標系を有する像面内の標的物の基準画像を、前記デジタルカメラを使用して取得することと、
前記シリアルロボット及び前記デジタルカメラと通信する電子制御ユニット(ECU)を用いて入力信号を受信することであって、前記入力信号は、前記デジタルカメラと前記標的物との間の直線距離を示す深度測定値と、前記ロボット運動座標系内の前記デジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号とを含み、前記ロボット運動座標系は、x軸、y軸、及びz軸を有する、前記受信することと、
第1の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ECUを用いて、前記ロボット運動座標系に対する前記基準画像内の標的点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定することと、
前記ロールオフセット及び前記ピッチオフセットを決定した後、第2の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ECUを用いて、前記ロボット運動座標系に対する前記標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定することと、
前記ロールオフセット、前記ピッチオフセット、前記x軸オフセット、前記y軸オフセット、及び前記z軸オフセットを前記ECUのメモリ内の変換行列に格納することと、
前記ECUを用いて、前記ロボットカメラシステムのその後の動作中に前記変換行列を使用して前記シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御することであって、前記その後の動作は、前記眼科顕微鏡を使用する眼科手術の一部である、前記制御することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記デジタルカメラは、前記デジタルカメラとフォーカスモータによって制御される前記標的物との間の可変の光学作動距離を有し、前記z軸オフセットを決定することは、前記可変の光学作動距離と前記フォーカスモータの回転位置又はエンコーダカウントとによって索引付けされたルックアップテーブルから前記z軸オフセットを抽出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可変の光学作動距離に対応する焦点範囲にわたって前記フォーカスモータを制御している間に前記ECUを用いて前記ルックアップテーブルにデータを追加することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ECUを用いて前記デジタルカメラのオートフォーカス設定を受信することと、
前記ECUを用いて前記ロボットカメラシステムの前記オートフォーカス設定を処理して前記深度測定値を決定することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
深度センサを使用して前記深度測定値を測定することと、
前記シリアルロボットの対応する1組の関節位置センサを用いて前記関節位置信号を測定することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記標的物の前記基準画像を取得することは、前記デジタルカメラを使用して2次元市松模様図形のデジタル画像を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記その後の動作中に1つ又は複数の表示画面を通して前記標的物の3次元画像を表示することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ロボットカメラシステムであって、
シリアルロボットのエンドエフェクタに接続可能なデジタルカメラであって、前記エンドエフェクタ及び前記デジタルカメラは、ロボット運動座標系内を移動する、前記デジタルカメラと、
前記デジタルカメラと一体である眼科顕微鏡と、
前記デジタルカメラと通信する電子制御ユニット(ECU)であって、
光学座標系を有する像面内の標的物の基準画像を、前記デジタルカメラを使用して取得することであって、前記標的物はヒト患者の眼である、前記取得することと、
前記デジタルカメラと前記標的物との間の直線距離を示す深度測定値と、前記ロボット運動座標系内の前記デジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号とを含む、入力信号を受信することであって、前記ロボット運動座標系は、x軸、y軸、及びz軸を有する、前記受信することと、
第1の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記基準画像内の標的点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定することと、
前記ロールオフセット及び前記ピッチオフセットを決定した後、第2の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定することと、
前記ロールオフセット、前記ピッチオフセット、前記x軸オフセット、前記y軸オフセット、及び前記z軸オフセットを前記ECUのメモリ内の変換行列に格納することと、
前記ロボットカメラシステムのその後の動作中に前記変換行列を使用して前記シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御することであって、前記ロボットカメラシステムの前記その後の動作は、眼科手術の一部として実施される、前記制御することと、
を行うように構成された前記電子制御ユニット(ECU)と、
を含む、ロボットカメラシステム。
【請求項9】
前記シリアルロボットを更に含む、請求項に記載のロボットカメラシステム。
【請求項10】
前記デジタルカメラは、フォーカスモータを含み、前記デジタルカメラと前記フォーカスモータによって制御される前記像面との間の可変の光学作動距離を有し、前記ECUは、前記可変の光学作動距離と前記フォーカスモータの回転位置又はエンコーダカウントとによって索引付けされたルックアップテーブルから前記z軸オフセットを抽出するように構成される、請求項に記載のロボットカメラシステム。
【請求項11】
前記ECUは、前記可変の光学作動距離に対応する焦点範囲にわたって前記フォーカスモータを制御している間に前記ルックアップテーブルにデータを追加するように構成される、請求項10に記載のロボットカメラシステム。
【請求項12】
前記ECUは、前記デジタルカメラのオートフォーカス設定を受信し、前記オートフォーカス設定を使用して前記深度測定値を決定するように構成される、請求項に記載のロボットカメラシステム。
【請求項13】
前記深度測定値を決定するように動作可能な深度センサを更に含む、請求項に記載のロボットカメラシステム。
【請求項14】
前記ECUは、前記デジタルカメラを使用して2次元市松模様図形のデジタル画像を収集することによって前記標的物の前記基準画像を取得するように構成される、請求項に記載のロボットカメラシステム。
【請求項15】
1つ又は複数の表示画面を更に含み、前記ECUは、前記その後の動作中に前記1つ又は複数の表示画面を通して前記標的物の3次元画像を表示するように構成される、請求項に記載のロボットカメラシステム。
【請求項16】
命令が記録されたコンピュータ可読媒体であって、デジタルカメラがシリアルロボットのエンドエフェクタに接続された、前記デジタルカメラと一体である眼科顕微鏡のロボットカメラシステムと共に使用された場合、プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサが、
光学座標系を有する像面上の患者の眼の基準画像を前記デジタルカメラから取得することと、
前記デジタルカメラと前記患者の眼との間の直線距離を示す深度測定値と、ロボット運動座標系内の前記デジタルカメラの位置を集合的に記述する1組の関節位置信号とを含む、入力信号を受信することであって、前記ロボット運動座標系は、x軸、y軸、及びz軸を有する、前記受信することと、
第1の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記基準画像内の標的点のロールオフセット及びピッチオフセットを決定することと、
前記ロールオフセット及び前記ピッチオフセットを決定した後、第2の較正済み運動シーケンスで前記シリアルロボットを動かしている間に、前記ロボット運動座標系に対する前記標的点のx軸オフセット、y軸オフセット、及びz軸オフセットの各々を決定することと、
前記ロールオフセット、前記ピッチオフセット、前記x軸オフセット、前記y軸オフセット、及び前記z軸オフセットを前記コンピュータ可読媒体内の変換行列に格納し、それにより、前記デジタルカメラを有する前記ロボットカメラシステムを較正することと、
前記ロボットカメラシステムのその後の動作中に前記変換行列を使用して前記シリアルロボットの第3の運動シーケンスを制御することであって、前記ロボットカメラシステムの前記その後の動作は、眼科手術の一部として実施される、前記制御することと、
を行う、コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記デジタルカメラは立体カメラであり、前記プロセッサによる前記命令の前記実行によって、
前記プロセッサが、前記その後の動作中に1つ又は複数の表示画面を通して前記標的物の3次元画像を表示する、請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記デジタルカメラは、前記デジタルカメラとフォーカスモータによって制御される前記像面との間に可変の光学作動距離を有し、前記プロセッサによる前記命令の実行によって、前記プロセッサが、
前記フォーカスモータの回転位置又はエンコーダカウントを決定することと、
前記z軸オフセットによってデータが追加されたルックアップテーブルであって、前記可変の光学作動距離と前記フォーカスモータの前記回転位置又はエンコーダカウントとによって索引付けされた前記ルックアップテーブルから前記z軸オフセットを抽出することと、
を行う、請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【国際調査報告】