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特表2024-530122ナノ双晶銅の電着のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ナノ双晶銅の電着のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20240808BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240808BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D7/00 J
H05K3/18 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502648
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022038133
(87)【国際公開番号】W WO2023014524
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,792
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501407311
【氏名又は名称】マクダーミッド エンソン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チエンウェン
(72)【発明者】
【氏名】イェー、ピンピン
(72)【発明者】
【氏名】ウィットン、カイル、エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ、ステファン、アイ.
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、トーマス、ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ナジャール、エリー、エイチ.
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
5E343
【Fターム(参考)】
4K023AA19
4K023BA06
4K023CA03
4K023CB05
4K023CB07
4K023CB19
4K023DA02
4K024AA09
4K024BB11
4K024CA02
4K024GA16
5E343BB24
5E343DD43
5E343DD47
5E343DD48
5E343FF17
5E343GG20
(57)【要約】
銅塩、ハロゲン化物イオンの供給源、及び線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含む、銅電解質。銅電解質は、高密度のナノ双晶柱状銅結晶粒を有する銅を基板上に堆積させるために使用される。線状又は分岐状ポリヒドロキシルは、2,3-エポキシ-1-プロパノールとアミン化合物との間の反応生成物を含み得る。ポリマー四級窒素種を含むレベリング剤及び/又は有機硫黄化合物を含む促進剤もまた、ナノ双晶柱状銅結晶粒が維持される限り、銅電解質に添加され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅電解質であって、
a)銅塩と、
b)ハロゲン化物イオンの供給源と、
c)抑制剤であって、線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含む、抑制剤と、を含み、
銅電気めっき浴がまた、
(i)促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、
(ii)レベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、のうちの1つ以上を含み、
前記銅電解質が、銅を堆積させることが可能であり、銅堆積物が、約80%を超えるナノ双晶柱状銅結晶粒を示す、銅電解質。
【請求項2】
前記銅塩が、硫酸銅である、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項3】
酸を更に含み、前記酸が、硫酸又はメタンスルホン酸を含む、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項4】
前記線状又は分岐状ポリヒドロキシルが、ポリ(2,3-エポキシ-1-プロパノール)を含む、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項5】
前記線状又は分岐状ポリヒドロキシルが、2,3-エポキシ-1-プロパノールとアミン化合物との間の反応生成物を含む、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項6】
前記線状又は分岐状ポリヒドロキシルが、少なくとも1つの窒素原子を含む、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項7】
前記アミン化合物が、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-プロピルモノエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、ヒドロキシエチルモルホリン、2-ピペリジノエタノール、ジエタノールイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、4-ピリジンメタノール、4-ピリジンエタノール、4-ピリジンプロパノール、2-ヒドロキシ-4-メチルピリジン、2-ヒドロキシメチル-1-メチルイミダゾール、4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、塩化コリン、塩化b-メチルコリン、塩化ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム、塩化トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化カルニチン、塩化(2-ヒドロキシエチル)ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム、塩化1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム、及び前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の銅電解質。
【請求項8】
前記促進剤が存在し、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィド、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-(ベンゾチゾリル-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸、N,N-ジメチルジチオカルバミルプロピルスルホン酸、3-S-イソチウロニウムプロピルスルホネート、及び(O-エチルジチオカルボナト)-S-(3-スルホプロピル)エステルからなる群から選択される、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項9】
前記促進剤が、3-(ベンゾチゾリル-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸及び3-S-イソチウロニウムプロピルスルホネートからなる群から選択される、請求項8に記載の銅電解質。
【請求項10】
前記促進剤及び前記レベリング剤の両方が、組成物中に存在する、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項11】
銅電気めっき溶液が、
a.約40~約60g/Lの銅イオンと、
b.約80~約140g/Lの硫酸と、
c.約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
d.約300~約600mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、窒素含有種に直接接合したポリ(2,3-エポキシ)-1-プロパノールを含む、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、を含む、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項12】
銅電気めっき溶液が、
a.約5~約50g/Lの銅イオンと、
b.約8~約15g/Lの硫酸と、
c.約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
d.約300~約600mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、窒素含有種に直接接合したポリ(2,3-エポキシ)-1-プロパノールを含む、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、を含む、請求項1に記載の銅電解質。
【請求項13】
e.約0.5~約10mg/Lの前記レベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、前記レベリング剤と、
f.約1~約50mg/Lの前記促進剤と、を更に含む、請求項11に記載の銅電気めっき溶液。
【請求項14】
e.約0.5~約10mg/Lの前記レベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、前記レベリング剤を更に含む、請求項11に記載の銅電気めっき溶液。
【請求項15】
銅電気めっき溶液が、任意の促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、若しくはレベリング剤、又は促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、若しくはレベリング剤として機能し得る任意の化合物を少なくとも実質的に含まない、請求項1に記載の銅電気めっき溶液。
【請求項16】
基板上に銅を電着する方法であって、前記方法が、
a.前記基板の表面及び少なくとも1つのアノードを、請求項1に記載の銅電解質と接触させる工程と、
b.カソード極性が、前記少なくとも1つのアノードに対して前記基板に課されるように、前記基板の前記表面と前記少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加する工程と、を含み、
高密度のナノ双晶柱状銅結晶粒を有する銅堆積物が、前記基板上に堆積される、方法。
【請求項17】
前記ナノ双晶銅堆積物が、(111)配向にある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記銅堆積物が、90%を超えるナノ双晶柱状銅結晶粒を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記基板が、ピラー、パッド、ライン、ビア、及び前述のもののうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の構造物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記基板が、1つ以上のビアを含み、前記ビアが、前記高密度のナノ双晶柱状銅結晶粒を有する前記銅堆積物で充填される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ビアが、第1の電流密度で電気めっきされて、高密度のナノ双晶柱状銅結晶粒を生成し、次いで第2のより低い電流密度で電気めっきされて、マイコビアのボトムアップ充填を仕上げる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の電流密度が、約4~約12ASDの範囲にあり、前記第2のより低い電流密度が、約0.5~約2.0ASDの範囲にある、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ボトムアップ充填によってビア内に高密度のナノ双晶柱状銅を有する銅を電着する方法であって、前記方法が、
a.基板の表面及び少なくとも1つのアノードを第1の銅電解質と接触させて、ナノ双晶銅のベース層を確立する工程であって、前記第1の銅電解質が、銅イオン、硫酸、塩化物イオン、及び線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含有する抑制剤を含み、前記第1の銅電解質が、任意の促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、若しくはレベリング剤、又は促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、若しくはレベリング剤として機能し得る任意の化合物を少なくとも実質的に含まない、工程と、その後
b.前記基板の表面及び少なくとも1つのアノードを第2の銅電解質と接触させて、前記ビアの充填を完了する工程であって、前記第2の銅電解質が、銅イオン、硫酸、塩化物イオン、線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含有する抑制剤、有機硫黄化合物を含む促進剤、及び任意選択的にレベリング剤を含む、工程と、を含み、
前記基板の前記表面を前記第1の銅電解質及び前記第2の銅電解質と接触させる前記工程中、カソード極性が、前記少なくとも1つのアノードに対して前記基板に課されるように、前記基板の前記表面と前記少なくとも1つのアノードとの間に電圧が印加され、
前記ビア内に堆積された前記銅が、高密度のナノ双晶柱状銅結晶粒を示す、方法。
【請求項24】
前記銅堆積物が、約80%を超えるナノ双晶柱状銅結晶粒を示す、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ双晶銅堆積物が、(111)配向にある、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
1つ以上のビアを含む基板であって、前記1つ以上のビアが、ナノ双晶銅でめっきされた堆積物で充填され、
前記1つ以上のビアのうちの少なくとも1つが、1:4~4:1のアスペクト比を有し、請求項1に記載の銅電解質でめっきされ、
前記めっきされた堆積物が、高いパーセンテージのナノ双晶銅結晶粒を示し、前記ナノ双晶銅結晶粒が、前記ビアの底部から成長する、基板。
【請求項27】
銅堆積物が、約80%を超えるナノ双晶柱状銅結晶粒を示す、請求項26に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ナノ双晶銅の電着、及びナノ双晶銅堆積物を生成するための電解銅めっき浴に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学堆積プロセスは、集積回路製造プロセスにおいて十分に確立されている。銅線は、一般的に「ダマシン」処理(プレパッシベーションメタライゼーション)と称される方法において、金属を非常に薄い高アスペクト比のトレンチ及びビアへと電気めっきすることによって形成され得る。
【0003】
マイクロエレクトロニクスの進歩に伴い、より小さくより高密度の相互接続構造物を作成することが継続的に必要とされている。銅は、高い延性及び導電性に起因して、マイクロエレクトロニクスデバイスにおいて最も不可欠な導体のうちの1つである。この目標に向かう1つの方法は、銅ビア、パッド、バンプ、又はピラーを接続する2つの別個の基板間のはんだを除去することであり、これは、例えば、Cu-Cuハイブリッド接合によって置換され得る。
【0004】
高温及び高圧の両方を必要とするこの方法の成功を確実にするためには、90%を超えるナノ双晶柱状銅(nt-Cu)結晶粒を有する(111)配向の電気めっきされた銅を生成することがはるかに好ましい。特定の理論に拘束されるものではないが、2つのnt-Cu基板が接触し、高温及び高圧に曝されると、nt-Cuの成長が銅基板の境界間に広がり、界面全体にわたってCu-Cu接合が形成されることが考えられる。
【0005】
優れた機械的特性、良好な導電性、及び独特の構造の組み合わせに起因して、ナノ双晶銅は、マイクロエレクトロニクスにおける使用のために注目を集めている。銅などの金属の機械的強度は、概して、結晶の粒のサイズがナノスケールレベルまで低減する場合増加する。ナノ双晶銅は、その結晶粒が、密着した双晶境界によって分割された高密度の層状のナノスケール双晶を含有する、超微細結晶粒の銅を表す。銅の微細構造にナノスケールの双晶を導入することによって、機械的強度、延性、エレクトロマイグレーション耐性、及び硬度を含む特性が改善され得る。
【0006】
ナノスケールレベルの金属薄膜は、例示的な機械的特性を有し得る。結果として、ナノ双晶の結晶性特性を有する金属は、シリコン貫通ビア(through silicon via、TSV)、半導体チップ相互接続、基板ピンスルーホールのパッケージング、金属相互接続(例えば、銅相互接続)、又は基板上の金属材料などの用途に好適であり得る。
【0007】
ナノ双晶銅は、例えば、スパッタリング、及びナノ双晶銅を生成するように最適化された銅電気めっき組成物を使用する電着を含む、いくつかの方式で達成され得る。スパッタリングの利点のうちの1つは、銅膜における純度の高さであり、結晶粒の好ましい配向に沿う能力を伴う。スパッタリングされた(111)配向ナノ双晶銅は、高い熱安定性及び強度を有することが示されている。一方、直流電解めっきは、工業的大量生産に極めて適合性があるという利点を有する。電気めっきされたナノ双晶銅は、等軸結晶粒ナノ双晶銅及び(111)配向ナノ双晶銅の2つの群に分類され得る。
【0008】
結晶欠陥は、材料の機械的、電気的、及び光学的特性に影響を及ぼし得る。双晶形成は、結晶構造の2つの部分が互いに対称的に関係している材料において起こる。銅が含まれる面心立方(face-centered cubic、FCC)結晶構造では、密着した双晶境界は、(111)面の典型的な積層順序が反転した(111)鏡映面として形成され得る。言い換えれば、隣接する結晶粒は、層状(111)構造において密着した双晶境界を境に鏡映される。双晶は、横方向の(111)結晶面に沿って延在する層状の様式で成長し、双晶の厚さがナノメートルの大きさであり、したがって「ナノ双晶」と称される。ナノ双晶銅(nt-Cu)は、優れた機械的特性及び電気的特性を示し、ウエハレベルのパッケージング及び先進的なパッケージング設計における多種多様な用途において使用され得る。
【0009】
従来の粒界を示す銅と比較して、ナノ双晶銅は、高強度及び高引張延性を含む強い機械的特性を有する。例えば、ナノ双晶銅は、双晶境界に起因し得る高い導電性を実証しており、これは、粒界と比較してあまり顕著ではない電子散乱を引き起こす。ナノ双晶銅はまた、高い熱安定性を示し、これは、粒界の過剰エネルギーよりも桁違いに低い過剰エネルギーを有する双晶境界に起因し得るものであり、高い銅原子拡散性を可能にし、これは、銅対銅の直接接合に有用である。加えて、ナノ双晶銅は、エレクトロマイグレーションに対して高い耐性を示し、これは、双晶境界がエレクトロマイグレーションによって誘発される原子拡散を減速させる結果であり得る。ナノ双晶銅は、細線再分配層用途において重要であり得るシードエッチングに対する強い耐性を実証し、また、ナノ双晶銅とのはんだ反応の結果としてより少ないカーケンドールボイド(Kirkendall void)をもたらす低い不純物混入を示す。
【0010】
いくつかの態様では、ナノ双晶銅は、直接の銅-銅接合を可能にし、これは、低温、中程度の圧力、及びより低い接合力/時間で起こり得る。典型的には、銅構造の堆積は、粗い表面をもたらし、場合によっては、銅-銅接合の前に、ナノ双晶銅の電着が行われ、続いて電解研磨が行われて、滑らかな表面を達成し得る。滑らかな表面を有するナノ双晶銅構造は、より短い接合時間、より低い温度、及びより少ないボイドを有し、銅-銅接合において使用され得る。
【0011】
主題全体が参照により本明細書に組み込まれる、Desmaisonらの米国特許第7,074,315号は、銅のマットな層を堆積するための銅電解質について記載している。電解銅めっき浴は、マットであり、均一でわずかな粗さを示す銅堆積物を生成して、追加の前処理を用いずに、有機コーティングの十分な接合を提供するために、ポリ(1,2,3-プロパントリオール)、ポリ(2,3-エポキシ-1-プロパノール)、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1つのポリヒドロキシル化合物を含む。しかしながら、ナノ双晶銅を堆積させるための銅電解質の使用に関して示唆されていない。
【0012】
主題全体が参照により本明細書に組み込まれる、Banikらの国際公開第2020/092244号は、基板上に堆積された高密度のナノ双晶銅を有する銅構造について記載している。Banikは、任意の特定の電解銅めっき浴については記載していないが、代わりに、定電流と無電流との間で交互するパルス電流波形を印加することを含む電気めっき条件について記載しており、無電流が印加される持続時間が、定電流が印加される持続時間よりも実質的に長い。
【0013】
主題全体が参照により本明細書に組み込まれるYangの米国特許第10,566,314号は、金属接合するためには、柱状結晶粒微細構造が、いかにCu-Cu金属に最適な銅結晶粒構造であるかについて記載している。開示の抑制剤のみのシステムによってめっきされた銅結晶粒微細構造は、ナノ双晶銅をめっきする結果として柱状結晶粒構造を生成する。加えて、柱状結晶粒については言及されているが、ナノ双晶銅の(111)銅結晶粒構造については言及されていない。
【0014】
研究は、ナノ双晶銅(nt-Cu)又は高度のナノ双晶を示す銅堆積物を生成することが可能である材料が非常に少ないことを示している。このような材料の1つは、ポリ(2,3-エポキシ-1-プロパノール)であり、これは、約200~約20,000、より好ましくは約500~約5,000、更により好ましくは約1,000~約3,000の分子量を有する線状又は分岐状ポリヒドロキシルである。
【0015】
他の有機電気めっき化合物の導入が、nt-Cuを生成するためのポリヒドロキシル材料の能力を乱すことも考えられる。これらの禁止化合物としては、促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、及び/又はレベリング剤を挙げることができる。
【0016】
加えて、銅-銅ハイブリッド接合は、ナノ双晶銅微細構造を必要とする。典型的には、ナノ双晶銅は、コンフォーマルにしかめっきされ得ず、これは、めっき溶液の使用を、ベース層上でのみ導電性である用途に限定する。ビアなどの底部及び側壁が導電性である構造は限定されてきた。
【0017】
ナノ双晶銅堆積物を生成するための改善された電解銅溶液、特に、マイクロエレクトロニクス基板の構造物内にナノ双晶銅を生成することが可能であるエレクトロニクス銅溶液が、当技術分野において依然として必要とされている。加えて、マイクロエレクトロニクス基板の高密度及び/又は高パーセンテージのナノ双晶を有する構造物に、(111)配向のナノ双晶銅を堆積させ得る改善された電解銅溶液に対する必要性が、当該技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、改善された銅電気めっき溶液を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、堆積物中にナノ双晶銅を生成することが可能である銅電気めっき溶液を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、マイクロエレクトロニクス基板の構造物において、ナノ双晶銅を堆積させるために最適化された銅電気めっき溶液を提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、ビアの底部からのナノ双晶銅結晶粒の成長を有する高アスペクト比のビアを充填することが可能である銅電気めっき溶液を提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、マイクロエレクトロニクス基板の構造物において、(111)配向のナノ双晶銅を提供することである。
【0023】
本発明の更に別の目的は、底部、側壁、及び上部フィールドが導電性銅を含むビア構造内にナノ双晶銅を堆積させることが可能である銅電気めっき溶液を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、高密度のナノ双晶を示すマイクロエレクトロニクス基板の構造物において銅堆積物を提供することである。
【0025】
そのために、一実施形態では、本発明は、概して銅電解質に関し、銅電気めっき溶液は、
a)銅塩と、
b)ハロゲン化物イオンの供給源と、
c)抑制剤であって、線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含む、抑制剤と、を含み、
銅電解質はまた、
(i)促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、
(ii)レベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、のうちの1つ以上を含み、
銅電解質は、基板上にナノ双晶銅を堆積させるように構成されている。
【0026】
別の実施形態では、本発明はまた、概して、本明細書に記載される銅電気めっき溶液を使用して、高密度のナノ双晶を示す銅堆積物を基板上に生成する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図2】実施例2に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図3】実施例3に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図4】実施例4に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図5A】比較例5に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図5B】比較例5に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図6A】比較例6に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図6B】比較例6に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図6C】比較例6に従って生成された銅堆積物のSEM(15K倍率で20μm幅)である。
図7A】ブランケット表面上にめっきされたナノ双晶銅を示す銅堆積物のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図7B】ナノ双晶銅微細構造が失われたブランケット表面上の銅堆積物のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図8A】ブランケット表面上にめっきされたナノ双晶銅を示す銅堆積物のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図8B】ナノ双晶銅微細構造が失われたブランケット表面上の銅堆積物のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図9】ブランケット表面上にめっきされたナノ双晶銅を示す銅堆積物のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図10A】1浴プロセスを用いたダマシン様構造上の銅ビア充填のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図10B】2浴プロセス(nt-Cu浴、続いてビア充填浴)を用いたダマシン様構造上の銅ビア充填のSEM(20K倍率で15μm幅)である。
図11】高濃度のCu(111)微細構造を有する、抑制剤のみを含有する電解質でめっきされた、nt-Cu膜のXRD分析である。
図12】nt-Cuが(111)好ましい配向をし、銅結晶粒の大部分が1.0μmよりも小さいことを示す、抑制剤のみを含有する電解質でめっきされた、nt-Cu膜のEBSD分析である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の発明者らは、高密度の(111)配向のナノ双晶銅の電着により、Cu-Cuハイブリッド接合を介して、銅ビア、パッド、バンプ、ピラーなどを接続するために使用される2つの別個の基板間の相互接続構造物をより小さく、より高密度にすることが可能になり得ることを発見した。
【0029】
これに基づいて、本発明の発明者らは、特定のタイプの促進剤及びレベリング剤が、ナノ双晶銅微細構造を損なうことなく、ナノ双晶生成抑制剤と相乗的に機能し得ることを見出した。したがって、この発見は、垂直成長ナノ双晶銅微細構造を維持しながら、マイクロエレクトロニクス基板の構造物内に銅を超充填することが可能である2又は3構成要素銅めっきシステムの開発につながった。
【0030】
めっきされた銅構造が導電性表面(再分配層(redistribution layer、RDL)又はピラーなど)のみを含有するか、又は完全に金属化された表面を有する構造(ビアなど)を含有するかにかかわらず、90%を超えるnt-Cuが観察され、最初の銅シードからnt-Cuまでの境界が1μm以下であることが非常に望ましい。
【0031】
最近の進歩には、堆積物中に高密度のナノ双晶を有する銅堆積物を提供することが可能である銅電解質の開発が含まれる。一実施形態では、銅電解質は、促進剤、抑制剤、及びレベリング剤の新規な組み合わせの使用により、ナノ双晶銅微細構造を維持しながら、高アスペクト比のビアを超充填するために使用され得る。このような高アスペクト比のビアは、概して、1:4~4:1のアスペクト比を有する。加えて、ビアは、約1μm~20μmの範囲内の直径、及び約1μm~20μmの深さを有し得る。一実施形態では、銅電解質は、このような高アスペクト比のビアを、ビアの底部から延在するナノ双晶銅結晶粒成長で充填することが可能である(すなわち、ナノ双晶銅のボトムアップ充填)。
【0032】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」は、文脈により別途明確に指示されない限り、単数及び複数の両方を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値を意味し、具体的に列挙された値の、及びその値からの、+/-15%以下の変動、好ましくは+/-10%以下の変動、より好ましくは+/-5%以下の変動、更により好ましくは+/-1%以下の変動、なおもより好ましくは+/-0.1%以下の変動を、このような変動が本明細書に記載される本発明で実施するために適切である限り、含むことを意味する。更に、修飾語「約」が意味する値は、それ自体が本明細書に具体的に開示されていることも理解されたい。
【0034】
本明細書で使用する場合、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下側(lower)」、「上方(above)」、「上側(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、図で示されるように、別の要素又は特色に対する1つの要素又は特色の関係を記載するための記載を容易にするために使用される。「前部(front)」及び「後部(back)」という用語は、限定することを意図するものではなく、適切な場合に交換可能であることが意図されていることが更に理解される。
【0035】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、記載された特色、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。
【0036】
本明細書で使用する場合、特定の要素又は化合物に関する「実質的に含まない」又は「本質的に含まない」という用語は、本明細書において別途定義されない場合、所与の要素又は化合物が、浴分析について金属めっきの当業者に周知である通常の分析手段によって検出可能ではないことを意味する。このような方法としては、典型的には、原子吸光分光法、滴定、UV-Vis分析、二次イオン質量分析法、及び他の一般的に利用可能な分析技法が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「構造物」という用語は、マイクロエレクトロニクス基板上に存在し得るビア、シリコン貫通ビア(TSV)、トレンチ、ピラー、パッド、バンプなどを指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、ナノ双晶銅の「高密度」という用語は、堆積物中に少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%のナノ双晶柱状銅結晶粒を含有する銅堆積物を指す。
【0039】
全ての量は、別途明記されない限り、重量パーセントである。全ての数値範囲は、包括的であり、このような数値範囲が合計100%に制約されることが論理的である場合を除いて、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0040】
「めっきすること」及び「堆積する」又は「堆積」という用語は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。「組成物」及び「浴」及び「溶液」という用語は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。「アルキル」という用語は、置換基を有するものとして本明細書において別途記載されない限り、炭素及び水素のみで構成され、一般式:C2n+1を有する有機化学基を意味する。「平均」という用語は、試料の平均値と等価である。全ての量は、別途明記されない限り、重量パーセントである。全ての数値範囲は、包括的であり、このような数値範囲が合計100%に制約されることが論理的である場合を除いて、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0041】
一実施形態では、本発明は、概して、ナノ双晶銅の電着、及び基板上でナノ双晶銅を生成するのに使用可能である銅電解質に関する。
【0042】
銅電解質は、典型的には、
a)銅塩と、
b)ハロゲン化物イオンの供給源と、
c)抑制剤であって、線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含む、抑制剤と、を含み、
銅電解質はまた、
(i)促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、
(ii)レベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、のうちの1つ以上を含み、
銅電気めっき溶液は、マイクロエレクトロニクス基板の構造物においてボトムアップ充填することによってナノ双晶銅を堆積させるように構成されている。
【0043】
好ましい実施形態では、銅塩は、硫酸銅を含む。組成物中で使用可能な他の銅塩としては、メタンスルホン酸銅、ピロリン酸銅、プロパンスルホン酸銅、及び他の同様の化合物が挙げられる。電気めっき溶液中の硫酸銅の濃度は、概して、約1~100g/Lの範囲、より好ましくは約20~約80g/Lの範囲にあり、最も好ましくは約40~約60g/Lの範囲にある。
【0044】
ハロゲン化物イオンは、基板表面上へのある特定の有機添加剤の吸着を補助するためのブリッジとして作用し得る。ハロゲン化物イオンとしては、限定されないが、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ハロゲン化物イオンは、塩化物イオンを含む。電気めっき溶液中の塩化物イオンの濃度は、概して、約1~150mg/L、より好ましくは約30~120mg/L、最も好ましくは約45~75mg/Lの範囲内である。
【0045】
加えて、電気めっき組成物は、めっき浴の導電性を制御するために酸を含有してもよく、好適な酸としては、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。一実施形態では、酸は、硫酸である。電気めっき溶液中の酸の濃度は、概して、約0~約240g/Lの範囲内、より好ましくは約10~約180g/Lの範囲内、最も好ましくは約80~約140g/Lの範囲内である。一実施形態では、酸の濃度は、約8~約15g/Lの範囲に、より好ましくは約10g/Lであり、これは、ビア充填用途により良好であることが見出されている。別の実施形態では、酸濃度は、より高く、約60~約100g/Lの範囲にある。
【0046】
好ましい抑制剤としては、線状又は分岐状ポリヒドロキシル化合物が挙げられる。更により好ましい抑制剤としては、窒素含有化合物とグリシドールとの反応生成物が挙げられる。
【0047】
本明細書に記載されるように、一実施形態では、抑制剤は、概して約200~約20,000g/モル、より好ましくは約500~約5,000g/モル、最も好ましくは約1,000~約3,000g/モルの分子量を有する線状又は分岐状ポリヒドロキシルを含む。好ましい実施形態では、線状又は分岐状ポリヒドロキシルは、ポリ(2,3-エポキシ-1-プロパノール)を含む。
【0048】
本発明者らはまた、驚くべきことに、アミン化合物を2,3-エポキシ-1-プロパノールと反応させることによって、ナノ双晶銅の特性が改善され得ることを見出した。窒素種を含有するコアによって開始されるこれらのポリヒドロキシル化合物は、柱状ナノ双晶銅密度を増加させ、ポリ(2,3-エポキシ-1-プロパノール)よりも迅速にナノ双晶銅を開始させるのを助けることが可能である。
【0049】
これらのアミン化合物の例としては、アミン系アルコール及びアンモニウムアルコールが挙げられる。
【0050】
アミン系アルコールとしては、限定されないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-プロピルモノエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、ヒドロキシエチルモルホリン、2-ピペリジノエタノール、ジエタノールイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、4-ピリジンメタノール、4-ピリジンエタノール、4-ピリジンプロパノール、2-ヒドロキシ-4-メチルピリジン、2-ヒドロキシメチル-1-メチルイミダゾール、4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、及び前述のものの組み合わせが挙げられる。
【0051】
加えて、これらのアミン化合物は、窒素を四級化することによって、例えば、硫酸ジメチルなどのメチル化剤の手段によって、アンモニウム塩に変換し得る。
【0052】
アンモニウムアルコールの例としては、限定されないが、塩化コリン、塩化b-メチルコリン、塩化ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム、塩化トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、塩化カルニチン、塩化(2-ヒドロキシエチル)ジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム、塩化1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム、及び前述のものの組み合わせが挙げられる。
【0053】
一実施形態では、線状又は分岐状ポリヒドロキシル抑制剤の濃度は、約1~約10,000mg/L、より好ましくは約10~約1,000mg/L、最も好ましくは約50~約600mg/Lの範囲内である。
【0054】
アミン化合物を2,3-エポキシ-1-プロパノールと反応させる際、2,3-エポキシ-1-プロパノールに対するアミン化合物のモル比は、概して、約0.01~0.50の範囲、より好ましくは0.01~0.20の範囲、より好ましくは0.01~0.10の範囲にある。
【0055】
本発明の銅電気めっき組成物に使用するための促進剤は、好ましくは、有機硫黄塩を含む有機硫黄化合物を含む。好適な有機硫黄化合物としては、限定されないが、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィド(SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、3-(ベンゾチゾリル(benzothizolyl)-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸(ZPS)、N,N-ジメチルジチオカルバミルプロピルスルホン酸(DPS)、3-S-イソチウロニウム(isothiuronium)プロピルスルホネート(UPS)、及び(O-エチルジチオカルボナト)-S-(3-スルホプロピル)エステル(OPX)が挙げられる。
【0056】
特定の理論に束縛されるものではないが、MPS及びSPSなどの典型的なより高強度の促進剤は、超充填を可能にするために抑制剤を置換するカソード表面に関与すると考えられる。めっき表面におけるこの相互作用は、ポリヒドロキシル抑制剤によって開始されるナノ双晶銅めっきを乱す。ZPS及びUSPなどのより弱い促進剤を利用することによって、この相互作用は、抑制剤を完全に置換するほど強くなく、したがって、ナノ双晶銅微細構造が維持される。一実施形態では、促進剤は、ZPS又はUPSを含む。別の実施形態では、促進剤は、ZPS及び/又はUPSのみからなり、銅電解質は、MPS又はSPSなどの任意のより高強度の促進剤を少なくとも実質的に含まない。
【0057】
促進剤の濃度は、銅電解質中で使用される特定の促進剤に部分的に依存し、より弱い促進剤は、より強い促進剤よりも高い濃度で使用され得る。例えば、ZPS及びUPSは、SPSよりも高い濃度で銅電解質中において使用され得る。加えて、促進剤としてのSPSなどのより強い促進剤の使用はまた、SPSを含有する銅電解質を使用して後続の層が堆積される前に、高密度ナノ双晶銅堆積物がベース層として適用されることを必要とし得る。
【0058】
UPSの好適な濃度は、約1~50mg/L、より好ましくは約10~25mg/Lの範囲内であり得る。ZPSの好適な濃度は、約1~約50mg/L、より好ましくは約10~25mg/Lの範囲内であり得る。最後に、SPSなどのより強い促進剤の好適な濃度は、約1~12mg/L、より好ましくは約6~10mg/Lの範囲内であり得る。
【0059】
好適なレベリング剤化合物としては、国際公開第2018/057590号、米国特許第10,519,557号、及び米国特許第10,294,574号に記載されているものなどのポリマー四級窒素種が挙げられ、各々の主題全体が参照により本明細書に組み込まれる。好適なレベリング剤化合物としてはまた、米国特許第7,303,992号及び米国特許出願公開第2005/0045488号に記載されているものなどのジピリジルレベリング剤が挙げられ、各々の主題全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
例えば、レベリング剤は、脂肪族ジ(t-アミン)と次式に対応する二官能性アルキル化剤との反応生成物を含み得る。
【0061】
【化1】
式中、Gは、単一の共有結合、-O-、O-((A)-O)-、及び-((A)-O)-からなる群から選択され、Aは、構造-CR-、又は-C(R)(R)C(R33)(R34)-を有し、p及びrの各々は、独立して、1~6の整数であり、sは、1~10の整数であり、qは、0~6の整数であり、R、R、R、R、R、R、及びR34の各々は、独立して、水素及び1~4個の炭素原子を含む置換又は非置換脂肪族ヒドロカルビルからなる群から選択され、R33は、1~4個の炭素原子を有する置換又は非置換脂肪族ヒドロカルビルであり、Yは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、トシル、トリフレート、スルホネート、メシレート、メトスルフェート、フルオロスルホネート、メチルトシレート、及びブロシレート(brosylate)からなる群から選択される脱離基であり、Zは、R30及びYと同じ群から独立して選択される脱離基からなる群から選択され、R30は、脂肪族ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及びアミドからなる群から選択され、-G-が単一の共有結合以外である場合、qは、少なくとも1である。
【0062】
レベリング剤はまた、以下の構造を有するカチオンを含む塩からなる群から選択されるオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含み得る。
【0063】
【化2】
式中、G及びAは、上記で定義した通りであり、Bは、以下の構造を有し、
【0064】
【化3】
Dは、以下の構造を有し、
【0065】
【化4】
は、それぞれのt-アミン部位で、-(CR-G-(CR]-に接合している、ジ(四級アンモニウム)カチオン構造を形成するN,N’-ジアルキル複素環式ジアミンの残基であり、
p、r、t、u、w、及びyの各々は、1~6の整数であり、q、v、x、k、及びzの各々は、独立して、0~6の整数であり、sは、1~10の整数であり、v又はxが0以外である場合、kは、少なくとも1であり、Gが単一の共有結合以外である場合、qは、少なくとも1であり、R~R、R~R19、R23、R25、及びR34の各々は、独立して、水素又は1~4個の炭素原子を含む低級アルキルからなる群から選択され、R、R、R20、R21、R22、R24、及びR33の各々は、独立して、1~4個の炭素原子を有する置換又は非置換脂肪族ヒドロカルビルからなる群から選択され、
nは、1~約30である。
【0066】
レベリング剤はまた、次式に対応する化合物を含み得る。
【0067】
【化5】
式中、G、A、B、及びDは、上記で定義した通りであり、
【0068】
【化6】
は、それぞれのt-アミン部位で、-(CR-G-(CR]-に接合している、ジ(四級アンモニウム)カチオン構造を形成するN,N’-ジアルキル複素環式ジアミンの残基であり、p、r、t、u、w、及びyの各々は、1~6の整数であり、q、v、x、k、及びzの各々は、独立して、0~6の整数であり、sは、1~10の整数であり、v又はxが0以外である場合、kは、少なくとも1であり、Gが単一の共有結合以外である場合、qは、少なくとも1であり、R~R、R~R19、R23、R25、及びR34の各々は、独立して、水素又は1~4個の炭素原子を含む低級アルキルからなる群から選択され、R、R、R20、R21、R22、R24、及びR33の各々は、独立して、1~4個の炭素原子を有する置換又は非置換脂肪族ヒドロカルビルからなる群から選択され、
30は、脂肪族ヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及びアミドからなる群から選択される。
【0069】
レベリング剤はまた、構造1Nに対応するn個の繰り返し単位及び構造1Pに対応するp個の繰り返し単位を含む四級化ポリ(エピハロヒドリン)を含み得る。
【0070】
【化7】
式中、Qは、ポリ(エピハロヒドリン)のペンダントメチレンハライド基を、以下からなる群から選択される三級アミンと反応させることによって得られ得るものに対応する構造を有する:(i)NR、式中、R、R、及びRの各々は、独立して、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、置換又は非置換脂環式化合物、置換又は非置換アラルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式化合物からなる群から選択され、(ii)N-置換及び任意選択的に更に置換されたヘテロ脂環式アミン、ここで、N-置換基は、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換脂環式化合物、置換又は非置換アラルキル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式化合物からなる群から選択され、並びに(iii)置換又は非置換窒素含有ヘテロアリール化合物、
nは、3~35の整数であり、pは、0~25の整数であり、
Xは、ハロ置換基であり、
は、1価のアニオンである。
【0071】
好ましくは、Qは、構造IIA、IIB、又はIICに対応する。
【0072】
【化8】
式中、(i)構造IIBは、N-置換複素環部分であり、(ii)構造IICは、複素環部分であり、(iii)R、R、R、及びRの各々は、独立して、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、置換又は非置換アラルキル、置換又は非置換脂環式化合物、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式化合物からなる群から選択され、(iv)R、R、R、R、及びRの各々は、独立して、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、置換又は非置換アラルキル、置換又は非置換脂環式化合物、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式化合物からなる群から選択される。R~Rのうちのいずれかが置換されている場合、置換基は、好ましくはアミノ基を含まない。
【0073】
レベリング剤はまた、置換ピリジル化合物を含み得、これは、例えば、ピリジニウム化合物、特に四級化ピリジニウム塩であり得る。これらの置換ピリジル化合物の例としては、限定されないが、ビニルピリジンの誘導体(例えば、2-ビニルピリジンの誘導体、及び4-ビニルピリジンの誘導体)、ビニルピリジンのホモポリマー、ビニルピリジンのコポリマー、ビニルピリジンの四級化塩、並びにこれらのホモポリマー及びコポリマーの四級化塩が挙げられる。このような化合物の具体例としては、例えば、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)と硫酸ジメチルとの反応生成物、4-ビニルピリジンと2-クロロエタノールとの反応生成物、4-ビニルピリジンと塩化ベンジルとの反応生成物、4-ビニルピリジンと塩化アリルとの反応生成物、4-ビニルピリジンと4-クロロメチルピリジンとの反応生成物、4-ビニルピリジンと1,3-プロパンスルトンとの反応生成物、4-ビニルピリジンとメチルトシレートとの反応生成物、4-ビニルピリジンとクロロアセトンとの反応生成物、4-ビニルピリジンと塩化2-メトキシエトキシメチルとの反応生成物、4-ビニルピリジンと2-クロロエチルエーテルとの反応生成物、2-ビニルピリジンとメチルトシレートとの反応生成物、2-ビニルピリジンと硫酸ジメチルとの反応生成物、ビニルピリジンと水溶性開始剤との反応生成物、ポリ(2-メチル-5-ビニルピリジン)、及び1-メチル-4-ビニルピリジニウムトリフルオロメチルスルホネートなどが挙げられる。
【0074】
他のポリマー四級窒素種も、抑制剤及び促進剤と適合性があり、マイクロエレクトロニクス基板の構造物内にナノ双晶銅を生成することが可能である限り、本明細書に記載される銅電気めっき組成物中のレベリング剤として使用され得る。
【0075】
レベリング剤がポリヒドロキシル抑制剤とともに抑制種である場合、ウェハレベルパッケージング用途のめっき時間が長くなるため、典型的には、めっき性能は、めっき表面でのレベリング剤相互作用の関数となる。ポリヒドロキシル抑制剤の速い速度論は、ナノ双晶銅が開始されることを可能にするが、最終的に、より強くかつより遅く作用するレベリング剤が、めっき表面で起こる相互作用を支配し、したがって、ナノ双晶銅微細構造の形成を再び乱す。弱いレベリング剤種を選択することによって、この乱れは、ナノ双晶銅が維持され得るところまで大幅に低減され得る一方で、レベリング剤は、フィールドに対する抑制種として作用し得、ポリヒドロキシル抑制剤がビアの凹部において作用することを可能にする。
【0076】
したがって、一実施形態では、好適なレベリング剤種としては、限定されないが、4,4-ジピリジルと2-クロロエチルエーテルとの反応生成物が挙げられる。レベリング剤の濃度は、部分的には、使用される特定のレベリング剤、並びに特定の抑制剤及び促進剤、並びにプロセス条件に依存する。一実施形態では、レベリング剤は、約0.5~約10mg/L、より好ましくは約2~約5mg/Lの範囲内の濃度で銅電解質中に存在する。
【0077】
ナノ双晶銅微細構造を生成し得る抑制剤のみのシステムでは、より高い電流密度(すなわち、約4~約20ASD、より好ましくは約6~12ASD)は、より低い電流密度(すなわち、約0.5~約2ASDの範囲、より好ましくは約1ASDの範囲)よりも良好である。しかしながら、マイクロエレクトロニクス基板の構造物内に銅を超充填する場合、その逆で、より低い電流密度(1ASD)は、より高い電流密度(6ASD)よりも良好である。
【0078】
したがって、一実施形態では、銅電気めっき組成物は、ナノ双晶銅微細構造ビア充填を可能にするために、ステップ電流めっき法で使用される2又は3構成要素銅電気めっき浴を含む。一実施形態では、ポリヒドロキシル抑制剤、及び上に記載されるようなポリマー四級窒素種を含むレベリング剤を含む2構成要素銅電気めっき浴が使用され得る。別の実施形態では、ポリヒドロキシル抑制剤、有機硫黄化合物、好ましくはUPSを含む促進剤、及びポリマー四級窒素種を含むレベリング剤を含む、3構成要素銅電気めっき浴が使用され得る。本発明の発明者らは、抑制剤及びレベリング剤及び/又は促進剤のこれらの組み合わせを含有する浴が、最初に高電流密度で電気めっきされて、高密度ナノ双晶銅を生成し、その直後により低い電流密度工程で、ボトムアップ充填を完了する場合、ビアなどの構造物を充填することが可能であることを見出した。
【0079】
ステップ電流変化とは対照的に、電流が高から低に傾斜する傾斜電流もまた、ナノ双晶銅微細構造によるビア充填を達成するために、2構成要素及び3構成要素銅めっき浴に印加され得る。
【0080】
同様に、2浴システムは、ナノ双晶銅微細構造によるビア充填を達成し得る。これは、例えば、ポリヒドロキシル抑制剤ポリヒドロキシルのみを含有する銅電解質(すなわち、銅電解質は、任意の促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、若しくはレベリング剤、又は促進剤、光沢剤、担体、湿潤剤、若しくはレベリング剤として機能し得る任意の化合物を少なくとも実質的に含まない)で高密度ナノ双晶銅をめっきすることによって、続いて、SPS、ポリヒドロキシル抑制剤、及びレベリング剤を含有する別個の銅電解質中でめっきすることによって達成され得る。
【0081】
概して、銅電解質中でのSPSの使用によって、ナノ双晶銅の形成が抑止される。しかしながら、高密度ナノ双晶銅表面上にめっきされる場合、最大で約10~15mg/L ppmのSPSを含有する銅電解質が、所望の微細構造を損なうことなく組成物中で使用され得る。
【0082】
したがって、本明細書に記載されるように、一実施形態では、本発明の銅電解質は、
A)約40~約60g/Lの銅イオンと、
B)約80~約140g/Lの硫酸と、
C)約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
D)約300~約500mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、ポリマーが、窒素含有種を含有し得るか、又は含有しない場合がある、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、
E)任意選択的に約0.5~約10mg/Lのレベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、
F)任意選択的に約1~約50mg/Lの促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、を含み得る。
【0083】
別の好ましい実施形態では、本発明は、高密度のナノ双晶銅を有する銅を電着することが可能な銅電気めっき組成物から本質的になり、電気めっき組成物は、
A)約40~約60g/Lの銅イオンと、
B)約80~約140g/Lの硫酸と、
C)約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
D)約300~約500mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、ポリマーが、窒素含有種を含有し得るか、又は含有しない場合がある、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、
E)約0.5~約10mg/Lのレベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、から本質的になる。
【0084】
別の好ましい実施形態では、本発明は、高密度のナノ双晶銅を有する銅を電着することが可能な銅電気めっき組成物から本質的になり、電気めっき組成物は、
A)約40~約60g/Lの銅イオンと、
B)約80~約140g/Lの硫酸と、
C)約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
D)約300~約500mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、ポリマーが、窒素含有種を含有し得るか、又は含有しない場合がある、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、
E)約0.5~約10mg/Lのレベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、
F)約1~約50mg/Lの促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、から本質的になる。
【0085】
別の実施形態では、本発明の銅電解質は、より少ない量の硫酸を含み得る。例えば、銅電解質は、
A)約5~約50g/Lの銅イオンと、
B)約8~約15g/Lの硫酸と、
C)約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
D)約300~約500mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、ポリマーが、窒素含有種を含有し得るか、又は含有しない場合がある、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、
E)任意選択的に約0.5~約10mg/Lのレベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、
F)任意選択的に約1~約50mg/Lの促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、を含み得る。
【0086】
別の好ましい実施形態では、本発明は、高密度のナノ双晶銅を有する銅を電着することが可能な銅電気めっき組成物から本質的になり、電気めっき組成物は、
A)約5~約50g/Lの銅イオンと、
B)約8~約15g/Lの硫酸と、
C)約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
D)約300~約500mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、ポリマーが、窒素含有種を含有し得るか、又は含有しない場合がある、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、
E)約0.5~約10mg/Lのレベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、から本質的になる。
【0087】
別の好ましい実施形態では、本発明は、高密度のナノ双晶銅を有する銅を電着することが可能な銅電気めっき組成物から本質的になり、電気めっき組成物は、
A)約5~約50g/Lの銅イオンと、
B)約8~約15g/Lの硫酸と、
C)約30~約120mg/Lの塩化物イオンと、
D)約300~約500mg/Lの線状又は分岐状ポリヒドロキシルであって、ポリマーが、窒素含有種を含有し得るか、又は含有しない場合がある、線状又は分岐状ポリヒドロキシルと、
E)約0.5~約10mg/Lのレベリング剤であって、ポリマー四級窒素種を含む、レベリング剤と、
F)約1~約50mg/Lの促進剤であって、有機硫黄化合物を含む、促進剤と、から本質的になる。
【0088】
「から本質的になる」とは、組成物が、高密度のナノ双晶銅を有する銅構造を生成する組成物の能力に有害な影響を及ぼすであろういずれの添加剤も含まないことを意味する。
【0089】
本発明はまた、概して、基板上にナノ双晶銅を電気めっきする方法であって、
本方法は、A)基板と、少なくとも1つのアノードと、本明細書に記載される銅めっき浴とを提供する工程と、
B)基板及び少なくとも1つのアノードを、それぞれ銅浴と接触させる工程と、
C)カソード極性が、少なくとも1つのアノードに対して基板に課されるように、加工品の表面と少なくとも1つのアノードとの間に電圧を印加する工程と、を含み、
高密度のナノ双晶を有する銅構造が、基板上に堆積される、方法、に関する。
【0090】
いくつかの実施形態では、ナノ双晶銅構造は、複数の(111)結晶の粒構造を有する。更に、高温及び高圧を必要とするこの方法の成功を確実にするためには、概して、少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%のナノ双晶柱状銅(nt-Cu)結晶粒を有する(111)配向の電気めっきされた銅を生成することが好ましい。特定の理論に拘束されるものではないが、2つのナノ双晶銅基板が接触し、必要な温度及び圧力に曝されると、ナノ双晶銅の成長が銅基板の境界間に広がり、界面全体にわたってCu-Cu接合が形成されるという仮説が立てられる。
【0091】
電流密度は、概して、約0.01~約50ASD、より好ましくは約0.5~約20ASD、最も好ましくは約1~約10ASDの範囲にある。加えて、電気めっき溶液は、好ましくは撹拌され、電気めっき溶液は、概して、約1~約2,500rpm、より好ましくは約10~約1,200rpm、最も好ましくは約50~約400rpmで混合される。
【0092】
アノードは、不溶性又は可溶性アノードであり得る。不溶性アノードが好ましい。可溶性アノードを2,3-エポキシ-1-プロパノールとともに使用することは、nt-Cu形成に有害であることが示されている。しかしながら、抑制剤が、アミン系アルコール又はアンモニウムアルコールとグリシドールとの反応生成物に切り替えられる場合、nt-Cuは、可溶性アノード及び不溶性アノードの両方で形成され得る。
【0093】
銅がしばらくの間電着されて、約0.1~約1,000μm、より好ましくは約0.3~約200μm、最も好ましくは約1~約100μmの厚さまで銅をめっきする。
【0094】
本明細書に記載される銅電気めっき溶液でめっきされ得る基板としては、プリント配線板(printed wiring board、PWB)、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)、並びに1つ以上のピラー、パッド、ライン、及びビアを含み得る他のエレクトロニクス基板が挙げられる。一実施形態では、基板は、1つ以上の構造物を含むマイクロエレクトロニクス基板を含む。一実施形態では、構造物は、1つ以上のビア、トレンチ、ライン、又は高密度のナノ双晶を示す銅で超充填され得る他の同様の構造物を含む。
【0095】
ナノ双晶結晶粒構造の存在は、電子顕微鏡技法などの任意の好適な顕微鏡技法を使用して観察することができる。銅堆積物中のナノ双晶結晶粒構造の量は、好ましくは約80%超、より好ましくは約90%超のナノ双晶柱状銅結晶粒であり、これは、SEM断面に基づいて推定される。
【0096】
以下の実施例に記載されるように、ナノ双晶銅構造は、大部分にナノ双晶を含有する複数の(111)配向結晶銅結晶粒を特徴とし得る。いくつかの実装態様では、複数の(111)配向結晶銅結晶粒は、高密度のナノ双晶を含有する。本明細書で使用する場合、「高密度のナノ双晶」は、好適な顕微鏡技法を使用して観察して、約80%超のナノ双晶、更には約90%超のナノ双晶を有する銅製構造を指し得る。
【0097】
銅結晶粒の結晶配向は、電子後方散乱回折(electron backscatter diffraction、EBSD)分析などの好適な技法を使用して特徴評価することができる。いくつかの実装形態では、結晶配向マップは、逆極点図(inverse pole figure、IPF)マップで示すことができる。本発明によれば、ナノ双晶銅構造は、(111)配向結晶粒を主に含有することが好ましい。
【0098】
実施例1:
50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン、400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤、及び2mg/Lのポリ四級アミン塩の溶液を含有する銅電解質を、調製し、3ASDの定電流で1:4のアスペクト比を有するビアをめっきするために使用した。結果は、図1に示されるようなディッシング(dishing)プロファイルを有する所望のナノ双晶銅微細構造であった。
【0099】
アミン系又はアンモニウムアルコールを2,3-エポキシ-1-プロパノールと反応させることによって、アミン系ポリヒドロキシル抑制剤を調製した。一般反応手順は、以下の通りである。
【0100】
温度計、還流冷却器、及び磁気撹拌機を備えた1Lの丸底フラスコ中の2,3-エポキシ-1-プロパノール(2モル)及びN-メチルジエタノールアミン(0.2モル)の溶液に、メタノール中の三フッ化ホウ素エーテル化合物(5ミリモル)溶液を滴加した。発熱中に温度を自由に上昇させ、その最大温度で30分間加熱した。次いで、水を添加して反応物を100℃未満まで冷却して、20%w/w溶液を作製し、これを4時間撹拌し続けた。次いで、この溶液を濾過し、そのまま使用した。
【0101】
実施例2:
50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン、400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤、及び2mg/Lのポリ四級アミン塩(すなわち、2-クロロエーテルと反応したジピリジル)の溶液を含有する銅電解質を、調製し、1ASDの定電流でビアをめっきするために使用した。結果は、実施例1と比較して、所望のナノ双晶銅微細構造未満であったが、ドーミングプロファイルを有し、図2に示されるように、より良好なビア充填を示した。
【0102】
実施例3:
50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン、400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤、及び2mg/Lのポリ四級アミン塩の溶液を含有する銅電解質を、調製し、3ASD、次いで1ASD(等しいめっき時間)の波形でビアをめっきするために使用した。結果は、図3に示されるような最適な平坦プロファイルを有する所望のナノ双晶銅微細構造であった。
【0103】
実施例4:
50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン、400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤、10mg/LのUPS、及び2mg/Lのポリ四級アミン塩の溶液を含有する銅電解質を調製し、それを3ASD、次いで1ASD(等しいめっき時間)の波形でビアをめっきするために使用した。これは、図4に見られるように、最適な平坦プロファイルを有する所望のナノ双晶銅微細構造を示した。
【0104】
比較例5:
50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン、400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤、及び2mg/Lのポリ四級アミン塩の溶液を含有する銅電解質を調製し、それを3ASDでビアをめっきするために使用した。50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオン、10mg/LのUPS、400mg/Lのポリエチレングリコール抑制剤を含有する第2の銅電解質を調製し、2mg/Lのポリ四級アミン塩を3ASDとしてビアをめっきするために使用した。図5A及び図5Bに示されるように、ポリエチレングリコール抑制剤の使用は、ナノ双晶銅微細構造を生成しなかった。
【0105】
比較例6:
50g/Lの銅(II)イオン、100g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオンの溶液を含有する銅電解質を調製し、(a)400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤アミン塩を使用して、3ASDでビアをめっきし、(b)10mg/LのSPS及び400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤を有する同じ電解質を使用して、3ASDでビアをめっきし、(c)10mg/LのSPS、400mg/Lのポリエチレングリコール抑制剤、及び2mg/Lのポリ四級アミン塩及びを有する同じ電解質を使用して、3ASDでビアをめっきした。図6A図6Cに示されるように、10mg/LのSPSの添加は、ナノ双晶銅微細構造に悪影響を及ぼしたが、ビア充填を改善したことは明らかである。
【0106】
実施例7:
40g/Lの銅(II)イオン、10g/Lの硫酸、50mg/Lの塩化物イオンの溶液を含有する銅電解質で、ダマシン様ビアを電気めっきした。(A)400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤アミン塩を含有する第1の浴を使用して、3ASDでビアをめっきし、(B)同じ電解質を用いて2つの異なる浴を調製し、ビアの最初の1/3~1/2を、3ASDで400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤アミン塩を含有する電解質でめっきし、6mg/LのSPS、400mg/Lのアミン系ポリヒドロキシル抑制剤、及び1mg/Lのジピリジルポリ四級アミン塩を含有する第2の浴を使用して、6ASDでビアの残りの部分をビア充填した。図10A及び図10Bに示されるように、第1の浴からnt-Cu微細構造の上部にめっきされた3構成要素浴がビア充填を改善したことは明らかである。
【0107】
実施例及び比較例から見られるように、本明細書に記載される銅電解質は、高密度のナノ双晶柱状銅結晶粒を含むめっきされた銅構造を堆積させることが可能である。加えて、電解質中の添加剤のタイプ及び濃度は、めっき条件とともに、ナノ双晶銅堆積物の生成及びビア充填の品質の両方に影響を及ぼし得ることもわかる。
【0108】
図7Aは、ナノ双晶銅がポリヒドロキシル抑制剤を含有する電解質から堆積された、ブランケット表面上のナノ双晶銅めっき堆積物を示す。図7Aに見られるように、銅でめっきされた堆積物は、(111)配向に整列したナノ双晶銅結晶粒の高いパーセンテージを示す。対照的に、図7Bは、銅がポリヒドロキシル抑制剤及び1mg/LのSPSを含有する電解質から堆積された、ブランケット表面上の銅めっき堆積物を示す。図7Bに見られるように、ナノ双晶銅微細構造は失われている。
【0109】
図8Aは、ナノ双晶銅がポリヒドロキシル抑制剤及び25mg/LのUPSを含有する電解質から堆積された、ブランケット表面上のナノ双晶銅めっき堆積物を示す。図7Aに見られるように、銅でめっきされた堆積物は、(111)配向に整列したナノ双晶銅結晶粒の高いパーセンテージを示す。対照的に、図7Bは、銅がポリヒドロキシル抑制剤及び50mgs se/LのUPSを含有する電解質から堆積された、ブランケット表面上の銅めっき堆積物を示す。図7Bに見られるように、より多量のUPSの添加によって、ナノ双晶銅微細構造が失われた銅堆積物がもたらされた。
【0110】
図9は、ナノ双晶銅がポリヒドロキシル抑制剤及び25mg/LのZPSを含有する電解質から堆積された、ブランケット表面上のナノ双晶銅めっき堆積物を示す。
【0111】
図7図9から、銅電解質中の促進剤のタイプ及び濃度の両方が、堆積物中のナノ双晶銅の形成に影響を及ぼし得ることがわかる。
【0112】
図10Aは、抑制剤のみの浴でめっきされたダマシン様ビア上のナノ双晶銅めっき堆積物を示し、これは、中心ボイドを生成する傾向を有する。一方、図10Bは、抑制剤のみの浴を利用して、ビアの1/3をnt-Cuでめっきし、ビアの残りの2/3を、銅めっき浴を構成する促進剤、抑制剤、及びレベリング剤でめっきする、2浴システムを示す。これによって、中心ボイドが防止され、より小さいオーバーバーデンでビアをより速く充填することも可能である。
【0113】
本明細書に記載されるプロセスによって、ビアの底部からのナノ双晶銅結晶粒成長の高いパーセンテージを有するビアをめっきすることが可能である。このプロセスは、1:4~4:1のアスペクト比を有するビアを、高いパーセンテージのナノ双晶銅結晶粒でめっきするために使用され得、ナノ双晶銅結晶粒は、ビアの底部から成長する。
【0114】
図11は、高濃度のCu(111)微細構造を有する、抑制剤のみを含有する電解質でめっきされた、nt-Cu膜のXRD分析を示す。
【0115】
図12は、銅結晶粒の大部分が1.0μmよりも小さいことを示す、抑制剤のみを含有する電解質でめっきされた、nt-Cu膜のEBSD分析である。
【0116】
最後に、以下の特許請求の範囲は、言語の問題が含まれ得るので、本明細書に記載の本発明の一般的かつ具体的な特色の全て、及び本発明の範囲の全ての記載を網羅することを意図することも理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
【国際調査報告】