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特表2024-530125廃プラスチック熱分解油及びバイオ再生可能原料の共加工
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油及びバイオ再生可能原料の共加工
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/00 20060101AFI20240808BHJP
   C10G 3/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C10G11/00
C10G3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503493
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2022056693
(87)【国際公開番号】W WO2023026111
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,758
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、テンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ジョエル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】グローブ、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ティムケン、ヘ - ギョン チョ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129AA02
4H129BA03
4H129BB04
4H129BC13
4H129BC14
4H129CA07
4H129CA09
4H129CA15
4H129CA22
4H129DA04
4H129GA01
4H129GA02
4H129GA03
4H129GA12
4H129GA13
4H129KA02
4H129KB02
4H129KC15X
4H129KC16X
4H129KC17X
4H129NA22
4H129NA37
(57)【要約】
燃料として、又は燃料中のブレンド成分としての使用に好適な液化炭化水素材料を生成するためのプロセスが提供される。このプロセスは、接触分解プロセスにおいて、接触分解条件下、固体触媒の存在下で、廃プラスチック原材料由来の熱分解油と、トリグリセリドを含むバイオ再生可能原料とを共加工して、分解生成物を提供することを含む。分解生成物を精留して、ガソリン留分及び中間留分のうち少なくとも1つを提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解プロセスにおいて、接触分解条件下、固体触媒の存在下で、廃プラスチック原材料由来の熱分解油と、トリグリセリドを含むバイオ再生可能原料とを共加工して、分解生成物を提供することを含むプロセス。
【請求項2】
前記廃プラスチック原材料が、消費者使用後ポリマー、産業的使用後ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記廃プラスチック原材料が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記廃プラスチック原材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、樹脂識別コード番号7のポリマー、及びこれらの任意の組み合わせから選択されるポリマーを1重量%未満含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記熱分解油が、以下の特性:
(a)少なくとも55重量%のC4~C30炭化水素含有量、
(b)20~90重量%の範囲のパラフィン含有量、
(c)15℃で少なくとも28のAPI比重、及び
(d)15℃で少なくとも0.6g/cmの密度
のうち1つ以上を示す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記バイオ再生可能原料が少なくとも75重量%のトリグリセリドを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記バイオ再生可能原料が、植物油、動物油、藻類油、又はこれらの組み合わせ混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記バイオ再生可能原料が、カメリナ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、ダイズ油、ナタネ油、大豆油、菜種油、トール油、ヒマワリ油、麻実油、オリーブ油、アマニ油、ココナツ油、ヒマシ油、ラッカセイ油、パーム油、カラシ油、イエローグリス及びブラウングリス、獣脂、ラード、魚油、藻類油、下水スラッジ、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記熱分解油と前記バイオ再生可能原料との比(熱分解油:バイオ再生可能原料)が、重量基準で5:1~1:19、重量基準で4:1以下、重量基準で2:1以下、重量基準で1:1以下、重量基準で1:7以上、重量基準で1:5以上、重量基準で1:4以上、及び重量基準で1:3以上のうちの少なくとも1つの範囲内にあるように選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記熱分解油及び前記バイオ再生可能原料を、前記接触分解プロセスが実施される反応器中に、異なる原料供給ラインを介して導入することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記熱分解油及び前記バイオ再生可能原料を、前記接触分解プロセスが実施される反応器中に、同じ原料供給ラインを介して導入することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
混合容器中で前記熱分解油と前記バイオ再生可能原料とを予め混合して混合物を形成することと、
前記混合物を前記反応器中に導入することと、
を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
別個の原料供給ラインを用いて、前記熱分解油及び前記バイオ再生可能原料のうち一方又は両方の一部分を前記反応器中に個別に導入することを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
化石系留分を前記接触分解プロセスが実施される反応器中に導入することと、前記熱分解油及び前記バイオ再生可能原料と共加工することと、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
異なる原料供給ライン及び同じ原料供給ラインのうちの少なくとも1つを用いて、前記化石系留分及び前記熱分解油を前記反応器中に導入すること、並びに
異なる原料供給ライン及び同じ原料供給ラインのうちの少なくとも1つを用いて、前記化石系留分及び前記バイオ再生可能原料を前記反応器中に導入すること
のうちの少なくとも1つである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記化石系留分が、軽油、減圧軽油、フィッシャー・トロプシュワックス、及びこれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記反応器が、固定床反応器、移動床反応器、又は流動床反応器である、請求項10、11、及び14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
分解触媒が、少なくとも1つの大孔径フォージャサイトゼオライト、又は少なくとも1つの大孔径フォージャサイトゼオライトと、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-48、及びMCM-22から選択される少なくとも1つの中孔径ゼオライトとの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記接触分解条件が、400℃~600℃の温度及び40kPa~725kPaの圧力を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記接触分解プロセスが、2:1~10:1の触媒対油比で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記分解生成物を精留して、ガソリン留分及び中間留分のうち少なくとも1つを提供することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項1に記載のプロセスによって得られる燃料成分。
【請求項23】
前記分解生成物の留分を含み、前記留分は、ガソリン範囲、及び中間留分範囲のうち少なくとも1つで沸騰する留分である、請求項22に記載の燃料成分。
【請求項24】
請求項1~21のいずれか1項に記載のプロセスに従って分解生成物を生成することと、任意選択的に、前記分解生成物を精留して分解生成物留分を提供することと、前記分解生成物又は前記分解生成物留分を別の燃料成分とブレンドして、燃料を提供することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる2021年8月25日出願の米国仮特許出願第63/236,758号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本開示は、燃料として、又は燃料中のブレンド成分としての使用に好適な液化炭化水素材料を生成するためのプロセスに関し、ここでは接触分解プロセス中で廃プラスチック熱分解油がバイオ再生可能原料と共加工される。
【背景技術】
【0003】
接触分解プロセスは、追加の水素を必要とすることなく非再生可能な石油原料を変換して、燃料としての使用に好適な低沸点留分を生成するための方法として、精油所で一般に用いられている。
【0004】
液体輸送燃料の需要が増加して「イージーオイル」(容易に入手及び回収が可能な原油)の埋蔵量が減少しており、また、こうした燃料の二酸化炭素排出量に対する制約が増しているため、液体輸送燃料を代替的供給源から効率的に生成するための手段を開発することが益々重要になってきている。
【0005】
その大規模な入手可能性のために、脂質原料(例えば植物、動物、及び/又は微生物由来の脂肪及び/又は油)などのバイオマス系原料及び廃プラスチックは、代替的液体燃料に対する需要の増加に対処する大きな潜在的可能性を有する供給原料の重要な供給源である。バイオマスは、再生可能炭素の供給源を提供する。廃プラスチックは、「循環経済」プロセスに対する要求の増加に対処する大きな潜在的可能性を有する。
【0006】
液体燃料を製造するためのプロセスの研究開発が現在続けられているが、液体燃料又は燃料ブレンド成分として有用な二酸化炭素排出量の低い炭化水素を生成するための改善されたプロセスを提供することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、接触分解プロセスにおいて、接触分解条件下、固体触媒の存在下で、廃プラスチック原材料由来の熱分解油と、トリグリセリドを含むバイオ再生可能原料とを共加工して、分解生成物を提供することを含むプロセスが提供される。
【0008】
第2の態様では、上記のプロセスによって入手可能な燃料成分が提供される。
【0009】
第3の態様では、上記で定義された分解生成物を生成することと、任意選択的に、該分解生成物を精留して分解生成物留分を提供することと、該分解生成物又は該分解生成物留分を別の燃料成分とブレンドして、燃料を提供することと、を含む、燃料の生成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
用語「消費者使用後(post-consumer)」とは、最終消費者が消費者商品又は消費者製品中で材料を使用した後に生じるその材料の供給源を指す。
【0011】
用語「産業的使用後(post-industrial)」とは、商品又は製品の製造中に生じる材料の供給源を指す。
【0012】
用語「ポリエチレン」とは、エチレンモノマーから誘導された大部分(>50モル%)の単位を含むポリマーを指す。
【0013】
用語「ポリプロピレン」とは、プロピレンモノマーから誘導された大部分(>50モル%)の単位を含むポリマーを指す。
【0014】
用語「Cn炭化水素」又は「Cn」は、本明細書では、その周知の意味(つまり「n」が整数値である)を有して用いられ、その値の炭素原子を有する炭化水素を意味する。用語「Cn+炭化水素」又は「Cn+」は、その値以上の炭素原子を有する炭化水素を指す。用語「Cn-炭化水素」又は「Cn-」は、その値以下の炭素原子を有する炭化水素を指す。
【0015】
用語「LPG」は、主にプロパン及びブタン(すなわち少なくとも95体積%のプロパン及びブタン)を含み、C2-化合物が2体積%以下であり、C5+化合物が3体積%以下である、混合物形態の液化石油ガスを意味し、ここでC2-化合物は2個以下の炭素原子を有するアルカン又はアルケンであり、C5+化合物は5個以上の炭素原子を有するアルカン又はアルケンである。
【0016】
用語「ガソリン」は、約95°F(35℃)~約427°F(220℃)の留分境界点範囲内で回収される炭化水素ストリームを説明するために使用される。ガソリン沸点範囲の炭化水素は、主にC5~C12炭化水素を含む。
【0017】
用語「中間留分(middle distillate)」は、約427°F(220℃)~約650°F(343℃)の留分境界点範囲内で回収される炭化水素ストリームを説明するために使用される。中間留分沸点範囲の炭化水素は、主にC11~C20炭化水素を含む。
【0018】
用語「オクタン価」は、ASTM D2699及びD2700に従って現在試験中の燃料と同じノック抵抗性を有するイソオクタンとn-ヘプタンとの混合物中におけるイソオクタンの割合を指す。オクタン価は、典型的には0~100の範囲内であり、値が高いほどより良好な燃料性能を示す。オクタン価には単位がない。
【0019】
用語「リサーチ法オクタン価(Research Octane Number、RON)」は、ASTM D2699に従って、より低いエンジン速度及び温度、典型的には約600rpmで試験することによって得られるオクタン価を指す。
【0020】
用語「モーター法オクタン価(Motor Octane Number、MON)」は、ASTM D2700に従って、より高いエンジン速度及び温度、典型的には約900rpmで試験することによって得られるオクタン価を指す。エンジンの非効率性は本質的に温度の増加と共に増加するため、RONは典型的にはMONよりも高い。
【0021】
用語「アンチノック指数」は、以下のように2つのオクタン価の算術平均によって定義される:(RON+MON)/2。
【0022】
用語「重量%」又は「体積%」は、それぞれ、成分を含む材料の合計重量又は合計体積を基準とした、該成分の重量百分率又は体積百分率を指す。非限定的な例では、10グラムの成分を含む合計100グラムの材料中における10グラムの成分は、10重量%の成分である。
【0023】
熱分解油
熱分解油は、廃プラスチック原材料を、触媒的に又は非触媒的に、且つ連続プロセス又はバッチプロセスを介して、熱分解すること(pyrolyzing)(すなわち、酸素の不在下で有機質を熱分解すること(thermally decomposing))によって製造される。廃プラスチックの熱分解は当該技術分野で周知である。
【0024】
廃プラスチック原材料を熱分解した後で、熱分解生成物は、ガス、固体(炭化物)、1つ以上の油性相(複数可)、及び水性相を含み得る。任意で水を含む油性相(複数可)が、本開示で熱分解油として用いられ得る。熱分解油は、任意の既知の方法によって熱分解生成物から分離することができる。これとしては、濾過、遠心分離、サイクロン分離、抽出、膜分離、及び/又は相分離などの方法が挙げられる。
【0025】
熱分解される廃プラスチック原材料は、消費者使用後ポリマー、産業的使用後ポリマー、又はこれらの組み合わせを含み得る。産業的使用後廃ポリマーの例は、製造者によって使用不能材料として回収される、商品又は製品の製造又は出荷中に生成された廃ポリマーであり得る(すなわち、トリミング屑、規格外材料、始動屑)。
【0026】
熱分解される廃プラスチック原材料は、単一の種類の廃プラスチックであってもよく、2種類以上の廃プラスチックの組み合わせからなるものであってもよい。
【0027】
プラスチック材料は、プラスチック材料の選別の改善に役立つように、プラスチック材料の製造者によって分類及びラベリングされる。現在、プラスチック材料は、Society of the Plastics Industry(SPI)によって定められた7種のカテゴリに区別されており、各カテゴリはそれ自体の樹脂識別コードを有する。各番号は特定のプラスチックの種類を表し、一般的には、同じ番号を有するプラスチックとしか共にリサイクルすることができない。プラスチック材料は、1番の樹脂識別コードを有するポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET又はPETE)、2番の樹脂識別コードを有するポリマーである高密度ポリエチレン(HDPE)、3番の樹脂識別コードを有するポリマーであるポリ塩化ビニル(PVC)、4番の樹脂識別コードを有するポリマーである低密度ポリエチレン(LDPE)、5番の樹脂識別コードを有するポリマーであるポリプロピレン(PP)、6番の樹脂識別コードを有するポリマーであるポリスチレン(PS)、並びに7番の樹脂識別コードを有するその他のプラスチック(すなわち、コード1~6に記載されていないもの)、例えば多層プラスチック、混合プラスチック、並びにポリカーボネート(PC)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)などの他の樹脂を含む。
【0028】
熱分解される廃プラスチック原材料は、HDPE、LDPE、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせから選択され得る。
【0029】
HDPEは、一般に0.940g/cm超(例えば0.945~0.97g/cm)の密度を有するエチレン系ポリマーである。本明細書で提供されるポリマー密度は、ASTM D792に従って決定される。
【0030】
LDPEは、エチレンホモポリマー、又は0.915g/cm~0.940g/cmの密度を有し、且つ広いMWDを有する長鎖分枝を含有する、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィン(例えばC3~C4α-オレフィン)を含むエチレン/α-オレフィンコポリマーから構成される。LDPEは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む。LLDPEは、エチレンに由来する単位と、少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマー、又は少なくとも1つのC4~C8α-オレフィンコモノマー、又は少なくとも1つのC6~C8α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む、不均質な短鎖分枝分布を含有する直鎖状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分枝があるとしてもごくわずかであることを特徴とする。
【0031】
ポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマーであっても、主にポリプロピレンのコポリマーであってもよい。
【0032】
他のプラスチック(樹脂識別コード1番、3番、6番、及び/又は7番)、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びポリカーボネートは、熱分解される廃プラスチック原材料中ではあまり望ましくない。存在する場合、これらは、好ましくは、乾燥廃プラスチックの合計重量の5重量%未満(例えば1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.1重量%未満)の量で存在する。好ましくは、任意のあまり望ましくないプラスチックの個々の含有量は、乾燥廃プラスチック原材料の合計重量を基準に1重量%未満(例えば、0.5重量%未満、又は0.1重量%未満)である。
【0033】
熱分解油は、主にC4~C30炭化水素を含み得る。熱分解油は、熱分解油の重量を基準に、少なくとも55重量%(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%)のC4~C30炭化水素含有量を有し得る。
【0034】
熱分解油は、主にC5~C25、C5~C22、又はC5~C20炭化水素を含んでもよく、或いは熱分解油の重量を基準に少なくとも約55重量%(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%)のC5~C25、C5~C22、又はC5~C20炭化水素を含んでもよい。
【0035】
熱分解油は、パラフィン(n-パラフィン、イソパラフィン、又はその両方)、ナフテン、オレフィン、芳香族化合物、及び他の化合物を含有してもよい。
【0036】
熱分解油は、少なくとも20重量%(例えば25重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%、又は少なくとも50重量%)のパラフィン含有量を有し得る。追加的に又は代替的に、熱分解油は、90重量%以下(例えば、85量%以下、又は80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下)のパラフィン含有量を有し得る。いくつかの態様では、熱分解油は、20~90重量%(例えば25~90重量%、又は25~55重量%、又は30~90重量%、又は40~80重量%、又は40~70重量%、又は40~65重量%)の範囲のパラフィン含有量を有し得る。
【0037】
熱分解油は、少なくとも0.001:1(例えば少なくとも0.1:1、又は少なくとも0.2:1、又は少なくとも0.5:1、又は少なくとも1:1、又は少なくとも2:1、又は少なくとも3:1、又は少なくとも4:1、又は少なくとも5:1、又は少なくとも6:1、又は少なくとも7:1、又は少なくとも8:1、又は少なくとも9:1、又は少なくとも10:1、又は少なくとも15:1、又は少なくとも20:1)のn-パラフィン対イソパラフィン重量比を有し得る。追加的に又は代替的に、熱分解油は、100:1以下(例えば75:1以下、又は50:1以下、又は40:1以下、又は30:1以下)のn-パラフィン対イソパラフィン重量比を有し得る。いくつかの態様では、熱分解油は、0.1:1~100:1(例えば1:1~100:1、又は4:1~100:1、又は15:1~100:1)の範囲のn-パラフィン対イソパラフィン重量比を有し得る。
【0038】
熱分解油は、少なくとも1重量%(例えば、少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%、又は少なくとも8重量%、又は少なくとも9重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも11重量%、又は少なくとも12重量%、又は少なくとも13重量%、又は少なくとも14重量%、又は少なくとも15重量%)のナフテン含有量を有し得る。追加的に又は代替的に、熱分解油は、50重量%以下(例えば、45量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下)のナフテンのナフテン含有量を有し得る。いくつかの態様では、熱分解油は、2~50重量%の範囲のナフテン含有量を有し得る。
【0039】
熱分解油は、少なくとも1重量%(例えば、少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%)のオレフィンを含有し得る。追加的に又は代替的に、熱分解油は、60重量%以下(例えば、55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下)のオレフィンを含み得る。いくつかの態様では、熱分解油は、2~60重量%の範囲の(例えば、10~40重量%の)オレフィン含有量を有し得る。熱分解油は、オレフィン含有量を低下させるために生産施設で水素添加され得る。
【0040】
熱分解油は、少なくとも1重量%(例えば、少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%)の芳香族化合物を含有し得る。追加的に又は代替的に、熱分解油は、50重量%以下(例えば、45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下)の芳香族化合物を含み得る。いくつかの態様では、熱分解油は、2~50重量%の範囲の(例えば、5~30重量%の)芳香族化合物含有量を有し得る。
【0041】
いくつかの態様では、生成したままの状態の熱分解油のうち約10重量%、代替的に25重量%、又は代替的に50重量%以上が、370℃未満の沸点を特徴とする。他の態様では、熱分解油のうち約90重量%、代替的に95重量%、又は代替的に99重量%以上が、650℃未満の沸点を特徴とする。
【0042】
パラフィン、ナフテン、オレフィン、及び芳香族化合物の含有量は、熱分解ユニットの苛酷さ(severity)に応じて大きく異なり得る。より過酷な条件(例えば高温及び長期の滞留時間)では、パラフィン及びナフテンの含有量と比較して、芳香族化合物及びオレフィンの含有量は増加する。
【0043】
上記で引用した炭化水素の重量百分率は、全てガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を用いて測定され得ることに留意されたい。
【0044】
熱分解油は、15℃で少なくとも28(例えば少なくとも29、又は少なくとも30、又は少なくとも31、又は少なくとも32、又は少なくとも33)のAPI比重を示し得る。追加的又は代替的に、熱分解油は、15℃で50以下(例えば49以下、又は48以下、又は47以下、又は46以下、又は45以下、又は44以下)のAPI比重を示し得る。いくつかの態様では、熱分解油は、15℃で28~50(例えば29~48、又は30~45)の範囲のAPI比重を示す。
【0045】
熱分解油は、15℃で少なくとも0.6g/cm(例えば、少なくとも0.65g/cm、又は少なくとも0.7g/cm)の密度を示し得る。追加的又は代替的に、熱分解油は、15℃で1g/cm以下(例えば、0.95g/cm以下、又は0.9g/cm以下、又は0.85g/cm以下)の密度を示し得る。いくつかの態様では、熱分解油は、15℃で0.6~1g/cm(例えば、0.65~0.95g/cm又は0.7~0.9g/cm)の範囲の密度を示す。
【0046】
熱分解油は、分解ゾーンなどの下流ユニットに導入される前に1つ以上の処理工程に供され得る。好適な処理工程の例としては、あまり望ましくない成分(例えば、窒素含有化合物、含酸素化合物(oxygenate)、及び/又はオレフィン及び芳香族化合物)の分離、特定の熱分解油組成物を提供するための蒸留、及び予熱が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの態様では、熱分解油は、いかなる下流での使用の前にも全く前処理されず、熱分解油源からそのまま送られてもよい。
【0047】
バイオ再生可能原料
トリグリセリドを含むバイオ再生可能原料は、原油(鉱油)若しくはシェール油又は石炭などの化石油系供給源ではなく生物学的供給源(複数可)に由来する。
【0048】
再生可能原料は、トリグリセリドを含む任意の原料を含み得る。再生可能原料は、植物油、動物油、藻類油、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。再生可能原料の代表的な例としては、カメリナ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、ダイズ油、ナタネ油、大豆油、菜種油、トール油、ヒマワリ油、麻実油、オリーブ油、アマニ油、ココナツ油、ヒマシ油、ラッカセイ油、パーム油、カラシ油、イエローグリス及びブラウングリス、獣脂、ラード、魚油、藻類油、下水スラッジなどが挙げられる。
【0049】
トリグリセリドに加えて、再生可能原料は、典型的には、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸(FFA)などのその他の脂質成分を含有する。再生可能原料は、好ましくは、少なくとも75重量%(例えば少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、80~99.9重量%、又は90~99.5重量%)のトリグリセリドを含有する。典型的な植物又は動物油のグリセリド及びFFAは、約8~約30の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖をその構造中に含有する。グリセリド又はFFA中の脂肪族炭素鎖は、完全に飽和していてもよく、又はモノ不飽和、ジ不飽和、若しくはポリ不飽和であってもよい。
【0050】
再生可能原料は、様々な量の不純物、例えば金属、水、リン、ケイ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属などを含有し得る。
【0051】
再生可能原料は、前処理して不純物を除去し、濾過して固形分を除去してもよい。
【0052】
接触分解
接触分解は、少なくとも1つの炭化水素質原料ストリームを、接触分解条件下で分解触媒と接触させて、分解生成物を生成することを伴う。本開示では、分解生成物は、触媒を除き、反応器から取り出せる任意のものである(液体、固体、揮発性物質)。本明細書に記載の接触分解プロセスに由来する分解生成物の例としては、水素、軽質オレフィン(炭素原子が5個未満)、軽質パラフィン、5個超の炭素原子を有するオレフィン及びパラフィン、並びにコークスのうちの1つ以上が挙げられる。
【0053】
接触分解反応は、固定床反応器、移動床反応器、又は流動床反応器中で、好ましくは流動床反応器を用いて実施され得る。流動床反応器は、ライザー、ダウナー、複数のライザー、及び複数のダウナー、並びにこれらの組み合わせからなるリストからの選択物を含むように構成され得る。
【0054】
本開示のプロセスは、好ましくは連続プロセスとして実施される。連続プロセスを用いることで、反応条件を変更する必要がなくなるという利点がもたらされる。その結果、容易な取り扱い及び非常に良好な結果が実現され得る。
【0055】
いくつかの態様では、接触分解プロセスは流動接触分解(FCC)プロセスである。FCCプロセスを用いることで、容易な取り扱い及び高い処理量が可能となり、その結果、有利な特に高い収率がもたらされる。
【0056】
固定床反応器、移動床反応器、及び流動床反応器のうち1つ以上で接触分解が実施される場合、分解条件は、400℃~600℃の温度及び40kPa~725kPaの圧力を含み得る。温度は420℃以上、例えば440℃以上、例えば450℃以上、例えば460℃以上、例えば470℃以上であってもよく、上限は570℃以下、例えば550℃以下、例えば540℃以下、例えば530℃以下、例えば525℃以下、例えば520℃以下である。圧力は、40kPaの低圧、例えば55kPa、例えば65kPa、例えば70kPaから、650kPaの高圧、例えば675kPa、例えば700kPa、例えば725kPaまでであってよい。
【0057】
接触分解が流動床反応器で実施される場合、反応条件は、0.5h-1~50h-1の範囲内(例えば、1h-1~40h-1、又は2h-1~20h-1)の重量時空間速度(WHSV)を含み得る。流動床反応器中の滞留時間は、100ミリ秒~10秒の範囲内(例えば1秒~5秒、又は2秒~4秒)であり得る。
【0058】
触媒と、接触分解ゾーンに導入されて接触分解ゾーン内で触媒と接触する混合供給原料(例えば熱分解油及びバイオ再生可能原料)の合計量と、の重量比(「触媒と油との比」又は「触媒:油比」と称される場合もある)は、2:1~10:1の範囲内(例えば、3:1~9:1、又は4:1~8:1、又は5:1~7:1)であり得る。
【0059】
本明細書での使用に好適な触媒は、大孔径分子篩、又は少なくとも1つの大孔径分子篩触媒と少なくとも1つの中孔径分子篩触媒との混合物のいずれかを含む分解触媒であり得る。好適な大孔径分子篩としては、ゼオライトベータ、ZSM-10、並びにフォージャサイト、特にゼオライトY、超安定Y(USY)、希土類交換Y(REY)、及び希土類交換超安定Y(REUSY)が挙げられる。好適な中孔径分子篩の例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-48、及びMCM-22が挙げられる。分解触媒は、結合剤と混合してから所望の形状(例えば押出ペレット)に成形してもよい。好適な結合剤としては、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、クレイ、又は他の既知の無機結合剤が挙げられる。混合触媒は、共通の触媒ペレット中に混合された2つ以上の分子篩を含んでもよく、様々な種類の触媒材料からなる触媒ペレットの混合物を含んでもよい。
【0060】
本開示のプロセスでは、熱分解油とバイオ再生可能原料との比(熱分解油:バイオ再生可能原料)は、重量基準で5:1~1:19の範囲内であり得る。熱分解油とバイオ再生可能原料との比は、バイオ再生可能原料の部に対する熱分解油の部として定義される。換言すると、重量基準で1:19の熱分解油とバイオ再生可能原料との比(熱分解油:再生可能原料)とは、1重量部の熱分解油及び19重量部のバイオ再生可能原料を含有する混合物を意味する(5重量%の熱分解油及び95重量%のバイオ再生可能原料であるが、但し(すなわち熱分解油及びバイオ再生可能原料からなる混合物の場合は)、熱分解油とバイオ再生可能原料との合計が100重量%であることを条件とする)。熱分解油:バイオ再生可能原料の比は、重量基準で4:1以下、又は重量基準で2:1以下、又は重量基準で1:1であり得る。更に、比は、重量基準で1:7以上、又は重量基準で1:10以上、又は重量基準で1:7以上、又は重量基準で1:5以上、又は重量基準で1:4以上、又は重量基準で1:3以上であり得る。
【0061】
熱分解油及びバイオ再生可能原料は、異なる原料供給ラインを用いて、接触分解プロセスが実施される反応器中に導入することができる。熱分解油及びバイオ再生可能原料が異なる供給ラインを用いて添加される場合は、良好な温度制御の達成がより容易となり得る。連続プロセスでは、分解に必要なエネルギーは、通常、加熱された触媒によって提供される。したがって、触媒の注入口の近くで温度は最も高くなる。過度な高温によって供給原料が容易に分解する場合は、この原料をより後方の位置(触媒注入口からより遠い)から注入することで、コーキングを減らすことができる。
【0062】
熱分解油及びバイオ再生可能原料は、同じ原料供給ラインを用いて、接触分解プロセスが実施される反応器中に導入することができる。こうした手順は原料供給を容易にする。これらのアプローチを組み合わせること、すなわち、単一の原料供給ラインを用いて熱分解油とバイオ再生可能原料との混合物を供給し、それに加えて、追加の(別の)原料供給ライン(複数可)を用いて熱分解油及びバイオ再生可能原料のうち一方又は両方を供給すること、もまた可能である。
【0063】
接触分解プロセスが実施される分解反応器中に、更に化石系留分を導入してもよい。この場合、化石系留分を、熱分解油及びバイオ再生可能原料と共加工する。
【0064】
化石系留分及び熱分解油は、異なる原料供給ラインを用いて、及び/又は同じ原料供給ラインを用いて、接触分解プロセスが実施される反応器に導入することができる。同様に、化石系留分及びバイオ再生可能原料も、異なる原料供給ラインを用いて、及び/又は同じ原料供給ラインを用いて、分解反応器に導入することができる。それぞれの留分を供給する適切な方法は、実際の加工条件及び必要な温度制御に応じて変化する。更に、化石系留分は、バイオ再生可能原料と、熱分解油と、又はバイオ再生可能原料及び熱分解油と、予め混合してもよい。
【0065】
化石系供給原料は、燃料精製(例えば接触分解)に通常用いられる任意の従来の化石供給原料であってよい。好ましくは、化石系供給原料は、炭化水素供給原料である。化石系留分供給原料は、軽油(GO)供給原料、減圧軽油(VGO)供給原料、フィッシャー・トロプシュワックス、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0066】
本開示のプロセスは、接触分解生成物を精留して少なくともガソリン留分及び中間留分を提供する工程を更に含み得る。これらの留分は、輸送燃料にとって最も価値が高いため、あまり価値の高くない留分からこれらの留分を分離することは好ましい。ガソリンストリーム及び中間留分ストリームに加えて、精留によって誘導された留分は、ガスストリーム及び蒸留底を含み得る。精留は、雰囲気圧力下での蒸留、又は減圧下での蒸留若しくは蒸発を含む、任意の好適な蒸留手段を含み得る。
【0067】
本開示は更に、本開示のプロセスによって得ることが可能な燃料成分に関する。燃料成分は輸送燃料成分であり得る。燃料成分は、そのままで燃料として使用することもでき、その他の燃料成分(再生可能及び/又は石油燃料成分)とブレンドして燃料を提供することもできる。
【0068】
本開示のプロセスは、廃プラスチック熱分解油とバイオ再生可能原料との比類のない組み合わせに起因する、分解生成物の特異的な組成をもたらす。つまり、従来の分解生成物以外に、本開示は、特異的な化学組成を有する燃料成分を提供する。具体的には、本開示の燃料成分は、従来の燃料成分とは、沸点範囲、イソパラフィン/n-パラフィン含有量、芳香族化合物含有量、オレフィン含有量、オクタン価、密度、及び/又は硫黄含有量が異なる。
【0069】
本開示は、更に、上記で定義された分解生成物を生成することと、任意選択的に、該分解生成物を精留して分解生成物留分を提供することと、該分解生成物又は該分解生成物留分を別の燃料成分とブレンドして、燃料を提供することと、を含む、燃料の生成方法に関する。燃料の生成方法は、分解生成物又はその留分の任意選択的な精製を更に含み得る。
【実施例
【0070】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【0071】
以下の供給原料に対して触媒試験を実施した:減圧軽油(VGO)、廃プラスチック熱分解油(PPO)、大豆油(SBO)、50%VGO/50%PPO、50%VGO/50%PPO、50%VGO/50%SBO、及び50%SBO/50%PPO。
【0072】
接触分解実験は、Advanced Cracking Evaluation(ACE)Model Cユニット(Kayser Technology Inc)中で実施した。ACEユニット内で用いられる反応器は、内径1.6cmの固定流動反応器(fixed fluidized reactor)であった。窒素を、流動化ガスとして使用し、底部及び上部の両方から導入した。上部の流動化ガスを用いて、目盛り付きシリンジの供給ポンプから三方弁を介して注入された供給原料を運んだ。
【0073】
各供給原料の接触分解を、大気圧及び975°Fの温度で実施した。各実験で、一定量の供給原料を1.2g/分の速度で75秒間にわたり注入した。触媒/油比は6であった。供給原料を75秒間注入した後、触媒を窒素で525秒間ストリップ処理した。
【0074】
接触分解及びストリッププロセスの間、反応器出口の端部に配置され、-15℃に維持されたガラス受器に取り付けられた試料バイアル中に液体生成物を回収した。1気圧でNを予め充填した密閉ステンレス製容器(12.6L)中にガス状生成物を回収した。供給原料の注入が完了したらすぐに、60rpmで回転する電動攪拌器でガス状生成物を混合した。ストリップ処理の後に、ガス生成物を更に10分間混合して確実に均質化した。リファイナリーガスアナライザ(RGA)を使用して最終ガス生成物を分析した。
【0075】
ストリップ処理プロセスの完了後、1300°Fの空気の存在下で、その場(in-situ)触媒再生を実施した。再生煙道ガスは、CuOペレット(LECO Inc.)を充填した触媒コンバータを通過して、COを酸化してCOにした。続いて、触媒コンバータの下流に位置するオンライン赤外線(IR)アナライザによって煙道ガスを分析した。IRアナライザによって測定したCO濃度から分解プロセス中に堆積したコークスを算出した。
【0076】
結果を表1にまとめる。
【表1】
【0077】
プラスチック熱分解油(PPO)と大豆油(SBO)との共加工には相乗効果が存在するものと思われる。100%PPO及び100%SBO供給原料の水素収率はそれぞれ0.04%及び0.05%であり、一方で、共加工された50%PPO/50%SBO供給原料の水素収率は0.03%であり、どちらの純粋供給原料の場合よりも低かった。PPO/SBO共供給原料のプロピレン収率(5.81%)も、100%PPO及び100%SBO供給原料(それぞれ6.75%及び5.97%)より低かった。PPO/SBO共供給原料の合計C4オレフィン収率(5.80%)は、2つの100%純粋な供給原料の場合の数値平均(6.75%及び5.97%の平均は6.36%である)よりも低かった。理論に束縛されるものではないが、PPOとSBOとの間で水素転移が存在するものと考えられる。これら2つの原料間の水素転移は、生成物の収率、選択性、及び生成物の特性を改善するため非常に望ましい。
【0078】
PPOとSBOとの共加工のいくつかの利点が観察された。100%PPOの分解は高い変換率をもたらしたが、コークスの収率は低く、FCCユニットのヒートバランスに悪影響を及ぼし得る。高いガソリン収率が達成されたが、n-パラフィン含有量が高かったことにより低オクタンであった。100%SBOの分解は、良好な変換率、及びPPOよりも高いコークス収率をもたらした。供給原料の酸素の存在のせいでガソリン収率は低かったが、芳香族化合物含有量が高かったために高オクタンであった。100%PPOの分解と比較して、PPO/SBO共供給原料の分解は、明らかにn-パラフィンを低減させ、芳香族化合物を増加させ、ひいてはガソリンのオクタンを改善した。コークス収率も良好であり、大半のFCCユニットのヒートバランス要件を満たすことができる。
【0079】
PPO供給原料とSBO供給原料との共加工の利点を定量化するため、100%PPO供給原料の結果、100%SBO供給原料の分解の結果、及びこれらの数値平均を、50/50 PPO/SBO共供給の場合と比較した。結果を表2にまとめる。
【表2-1】

【表2-2】
【0080】
表2の結果は、共加工はガソリン収率を5%増加させたが、LPG、ライトサイクルオイル、及びヘビーサイクルオイルの収率を減少させたことを示す。ガソリンのオレフィン含有量は7%低下し、オクタン価は3~5%増加したが、これは、ガソリンの特性が共加工によって改善されたことを示す。更に、共加工により、炭化水素から望ましくない副生成物に損失されることが低減した(例えば一酸化炭素、二酸化炭素、及び水がそれぞれ14%、4%、及び8%)。トリグリセリド油中の高濃度の酸素のために、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水の形成による炭化水素の損失は問題となってきた。これらの低減は、廃プラスチック熱分解油を共供給することによって、バイオ再生可能原料由来の再生可能ガソリンの収率増加が可能であることを示唆する。
【国際調査報告】