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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】光学素子及び反応チャンバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20240808BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G02B5/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504215
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021072025
(87)【国際公開番号】W WO2023011732
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ウルフギャング
【テーマコード(参考)】
2H042
2H043
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA07
2H042DA10
2H042DA16
2H042DB04
2H042DC09
2H042DD05
2H042DE00
2H043AE17
2H043AE23
(57)【要約】
本発明は、反応チャンバ(70)、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバ(70)と共に使用するための光学素子(10)に関するものであり、反応チャンバ(70)はチャンバ壁(72)を有し、反応チャンバ(70)のフランジ(80)がチャンバ壁(72)の開口(74)に配置される。また、本発明は、シール可能、特に周囲雰囲気に対してシール可能な反応容積を包囲するチャンバ壁(72)を備える、反応チャンバ(70)、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバ(70)に関し、反応容積は反応雰囲気(90)を充填可能であり、反応チャンバ(70)はチャンバ壁(72)の開口(74)に配置されたフランジ(80)を更に備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバ(70)、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバ(70)と共に使用するための光学素子(10)であって、
前記反応チャンバ(70)は、チャンバ壁(72)を有し、
前記反応チャンバ(70)のフランジ(80)は、前記チャンバ壁(72)の開口(74)に配置され、
前記光学素子(10)は、中心本体軸(14)に沿って互いに対向して配置された周囲端部(30)とチャンバ端部(40)とを有する一体型本体(12)を備え、
前記光学素子(10)の組立状態では、前記周囲端部(30)は前記反応チャンバ(70)の外側に配置され、前記チャンバ端部(40)は前記反応チャンバ(70)内に配置され、
前記本体(12)の前記周囲端部(30)は、前記反応チャンバ(70)の前記フランジ(80)をシールするためのシール手段(32)を備え、
前記チャンバ端部(40)は、前記反応チャンバ(70)内で電磁放射(100)を反射及び/又は成形及び/又は吸収するための光学面(46)を備える、光学素子(10)。
【請求項2】
前記本体(12)は、アルミニウムから、又はアルミニウム合金から、又は銅から、又は銅合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子(10)。
【請求項3】
前記シール手段(32)が、ナイフエッジ型シールの一部、とりわけ円周方向ナイフエッジ(34)、及び/又はリングシール(84)のため、好ましくは金属リングシール(84,86)のための円周方向レセプタクル(36)、及び/又は1つ以上の円周方向シール面(38)を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子(10)。
【請求項4】
前記シール手段(32)が、エラストマシールの一部、とりわけエラストマリングシール(84,88)、好ましくはOリングのための円周方向レセプタクル(36)、及び/又は1つ以上の円周方向シール面(38)を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子(10)。
【請求項5】
前記チャンバ端部(40)は、入射する電磁放射(100)を鏡面反射する前記光学面(46)の少なくとも一部を形成する平面を備えることを特徴とする、請求項1から4のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項6】
前記チャンバ端部(40)が、入射する電磁放射(100)を反射すると同時に成形する、好ましくはフォーカス及び/又はデフォーカスする前記光学面(46)の少なくとも一部を形成する曲面を備えることを特徴とする、請求項1から5のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項7】
前記平面及び/又は前記曲面は、前記本体(12)の露出表面、好ましくは前記本体(12)の研磨された露出表面からなることを特徴とする、請求項5又は6に記載の光学素子(10)。
【請求項8】
前記平面及び/又は前記曲面が、反射されることが意図される前記電磁放射(100)のために選択されたアクティブ光学コーティング(48)で被覆され、前記アクティブ光学コーティング(48)は、とりわけ金属コーティング及び/又はブラッグミラーを形成するためのコーティングを光学面(46)として備えることを特徴とする、請求項5又は6に記載の光学素子(10)。
【請求項9】
前記チャンバ端部(40)は、粗面化表面及び/又は入射する電磁放射(100)を吸収する吸収コーティング(50)で被覆された表面を備えることを特徴とする、請求項1から4のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項10】
前記チャンバ端部(40)が、前記本体軸(14)に垂直なスロット(44)によって2つ以上の端部セグメント(42)にスロット分割され、とりわけ前記2つ以上の端部セグメント(42)が前記本体軸(14)の周りに回転対称に配置されることを特徴とする、請求項9に記載の光学素子(10)。
【請求項11】
前記スロット(44)が、前記チャンバ端部(40)から前記周囲端部(30)に向かって前記本体軸(14)に沿って前記本体(12)の前記長さの5%~50%延在することを特徴とする、請求項10に記載の光学素子(10)。
【請求項12】
前記本体(12)が、冷却材流体(92)用の1つ以上の連続した冷却ダクト(18)を備えており、
各冷却ダクト(18)は、前記本体(12)の前記周囲端部(30)に配置された入口開口(20)及び出口開口(22)を備えることを特徴とする、請求項1から11のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項13】
前記入口開口(20)及び前記出口開口(22)は、前記冷却材流体(92)の供給ラインのねじ込み端子(24)の配置のためにねじ切りされていることを特徴とする、請求項12に記載の光学素子(10)。
【請求項14】
前記1つ以上の冷却ダクト(18)は、V字形であり、前記入口開口(20)及び前記出口開口(22)の両方それぞれから、前記冷却ダクト(18)の直線状の脚部(26)が前記本体(12)内まで延在し、前記2本の脚(26)は前記本体(12)内で出合うことを特徴とする、請求項12又は13に記載の光学素子(10)。
【請求項15】
前記光学面(46)が前記入射する電磁放射(100)を反射及び/又は成形するように設計されている場合、前記本体軸(14)に沿った前記冷却ダクト(18)の前記最大延在部分は、前記本体軸(14)に沿って前記周囲端部(30)から前記チャンバ端部(40)に向かう前記本体(12)の前記延在部分の少なくとも60%、好ましくは75%、最も好ましくは85%以上であることを特徴とする、請求項12から14のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項16】
前記光学面(46)が入射する電磁放射(100)を吸収するように設計されている場合、前記本体軸(14)に沿った前記冷却ダクト(18)の前記最大延在部分は、前記本体軸(14)に沿って前記周囲端部(30)から前記チャンバ端部(40)に向かう前記本体(12)の前記延在部分の20%~65%、好ましくは35%~55%であること
を特徴とする、請求項12から14のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項17】
前記1つ以上の冷却ダクト(18)が、前記冷却材流体(92)の流れを測定する手段(60)、及び/又は前記冷却材流体(92)の絶対温度を測定する手段(60)、及び/又は前記入口開口(20)と前記出口開口(22)との間での前記冷却材流体(92)の温度変化を測定する手段(60)を装備することを特徴とする、請求項12から16のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項18】
前記本体(12)が、前記本体(12)の温度を測定する手段(60)、とりわけ熱電対を配置するための1つ以上の孔(16)を備えており、前記1つ以上の孔(16)は、前記本体(12)の前記周囲端部(30)で始端し、前記本体(12)内で前記本体軸(14)に沿って、前記本体軸(14)に沿って前記周囲端部(30)から前記チャンバ端部(40)に向かう前記本体(12)の前記延在部分の少なくとも75%、好ましくは85%、最も好ましくは95%以上のところで終端することを特徴とする、請求項1から17のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項19】
前記本体(12)は前記端部セグメント(42)の各々について孔(16)を備えており、前記それぞれの孔(16)は前記それぞれの端部セグメント(42)内で終端することを特徴とする、請求項18と請求項10又は11のうち一項とに記載の光学素子(10)。
【請求項20】
前記本体(12)は、前記反応チャンバ(70)内に追加のコンポーネントを取り付ける及び/又は固定するための取り付け手段(62)をそのチャンバ端部(40)に備えることを特徴とする、請求項1から19のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項21】
前記本体(12)が、前記周囲端部(30)から前記チャンバ端部(40)に電気接続及び/又は流体接続を提供するための1つ以上のフィードスルー(64)を備えることを特徴とする、請求項1から20のうち一項に記載の光学素子(10)。
【請求項22】
前記1つ以上のフィードスルー(64)は、前記取り付け手段(62)に配置可能及び/又は固定可能な前記追加のコンポーネントのための電気接続及び/又は流体接続を提供するために、前記取り付け手段(62)で終端することを特徴とする、請求項20及び21に記載の光学素子(10)。
【請求項23】
反応チャンバ(70)、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバ(70)であって、シール可能、とりわけ前記周囲雰囲気に対してシール可能な反応容積を包囲するチャンバ壁(72)を備え、
前記反応容積は、反応雰囲気(90)を充填可能であり、
前記反応チャンバ(70)は、前記チャンバ壁(72)の開口(74)に配置されたフランジ(80)を更に備え、
請求項1から22のうち一項に記載の光学素子(10)が前記フランジ(80)に配置されて前記チャンバ壁(72)の前記開口(74)をシールすることを特徴とする、反応チャンバ。
【請求項24】
前記フランジ(80)が前記光学素子(10)を配置するためのフランジリム(82)を備えており、
前記フランジリム(82)が蛇腹部(76)によって前記チャンバ壁(72)に接続されることを特徴とする、請求項23に記載の反応チャンバ(70)。
【請求項25】
前記反応チャンバ(70)、とりわけ前記フランジ(80)及び/又は前記光学素子(10)は、前記蛇腹部(76)によって提供される前記移動半径内で前記光学素子(10)を移動させることにより前記反応チャンバ(70)内で前記光学素子(10)の前記光学面(46)の前記相対位置を調整する手段(78)を備えることを特徴とする、請求項24に記載の反応チャンバ(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応チャンバ、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバと共に使用するための光学素子に関するものであり、反応チャンバはチャンバ壁を有し、反応チャンバのフランジが反応チャンバ壁の開口に配置される。また、本発明は、シール可能、特に周囲雰囲気に対してシール可能な反応容積を包囲するチャンバ壁を備える、反応チャンバ、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバに関し、反応容積は反応雰囲気を充填可能であり、反応チャンバはチャンバ壁の開口に配置されたフランジを更に備える。
【背景技術】
【0002】
熱レーザエピタキシ又はシンクロトロンx線光学系などの用途は、ミラー、ブラッグミラー、アブソーバ及び同様の用途のための、アクティブ光学面を必要とする。図1には、反応チャンバ70のフランジ80に配置された技術水準のそのような光学素子10が示されている。光学素子10は、チャンバ壁72の開口74に配置されている。
【0003】
図示されるように、技術水準による光学素子10に関しては、電磁放射100を反射又は吸収するためのリフレクタ部200は第1の材料から作製されており、その一方で、冷却管202及びシール部206は異なる材料から作製されている。図示される実施形態においては、シール部206はエラストマシールを形成し、エラストマリングシール84,88が、反応雰囲気90を閉じ込める反応容積を、周囲雰囲気94が存在する反応チャンバ70の外側に対してシールする。
【0004】
前述したリフレクタ部200と冷却管22及びシール部206とについての異なる材料の使用は、これらの要素の互いに対する固定の必要を生じさせ、これは図示される実施形態においては溶接204によって提供される。しかしながら、例えばシリコンと銅のような類似的でない材料間のこうした接合は、高出力動作によって課される高い熱応力の下で漏れを生じる傾向があり、したがって、高価な非標準的な解決策を必要とする。加えて、溶接204に起因して、通常、シール部206とリフレクタ部200との間には精確な機械的位置合わせが存在せず、リフレクタ部200を反応チャンバ70内で位置合わせするためには追加の措置が講じられる必要がある。
【0005】
上記に鑑みて、本発明の目的は、技術水準の上述の欠点を有さない、反応チャンバと共に使用するための改良された光学素子と改良された反応チャンバとを提供することである。具体的には、本発明の目的は、反応チャンバ内に配置された状態で光学素子の光学面の特に容易な配置、とりわけ位置合わせと、光学素子が配置可能であるか又は配置される反応チャンバのフランジの確実なシールとを、同時にそれぞれ可能にする、反応チャンバと共に使用するための改良された光学素子と改良された反応チャンバとを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的は、それぞれの独立特許請求項によって満足される。具体的には、この目的は、独立請求項1に記載の反応チャンバと共に使用するための光学素子によって、及び独立請求項23に記載の反応チャンバによって、満足される。従属請求項は本発明の好適な実施形態を説明する。本発明の第1の態様による光学素子に関して説明される詳細及び利点は、技術的な意味があれば、本発明の第2の態様による反応チャンバも参照し、その逆も同様である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、目的は、反応チャンバ、とりわけ熱レーザ蒸発システムの反応チャンバによって満足され、この反応チャンバはチャンバ壁を有しており、反応チャンバのフランジがチャンバ壁の開口に配置される。
【0008】
本発明の第1の態様による光学素子は、特に、中心本体軸に沿って互いに対向して配置された周囲端部とチャンバ端部とを有する一体型本体を備え、光学素子の組立状態では、周囲端部は反応チャンバの外側に配置され、チャンバ端部は反応チャンバ内に配置される。また、本体の周囲端部は反応チャンバのフランジをシールするためのシール手段を備え、チャンバ端部は反応チャンバ内で電磁放射を反射及び/又は成形及び/又は吸収するための光学面を備える。
【0009】
本発明の第1の態様による光学素子は、反応チャンバと共に、とりわけ反応チャンバのチャンバ壁の開口を囲むフランジにおいて使用され得る。反応チャンバのチャンバ壁は、周囲雰囲気に対してシール可能且つ反応雰囲気を充填可能な反応容積を包囲する。反応雰囲気は、10-4hPa~10-12hPaの真空であってもよく、あるいは、圧力が10-8hPa~周囲圧力、それぞれ最大で1hPaの、例えば分子状酸素、オゾン、分子状水素、もしくは分子状窒素などの1つ以上の反応ガスを備えるか又はそれらからなっていてもよい。また、反応ガスは、少なくとも部分的にイオン化されてもよく、とりわけプラズマイオン化によってイオン化され得る。
【0010】
本発明によれば、光学素子のコアは一体型本体によって形成される。換言すれば、その一体型本体は、単一の材料からなり、とりわけ周囲端部とチャンバ端部との間に延在し、周囲端部はシール手段を担持し、チャンバ端部は光学面を担持する。具体的には、本発明の第1の態様による光学素子の組立状態では、光学素子の周囲端部は反応チャンバの外側に配置され、チャンバ端部は反応チャンバ内に、したがって反応容積内に配置される。
【0011】
周囲端部に備えられるシール手段は、フランジのそれぞれの手段との協働によってチャンバ壁の開口のシールを提供する。したがって、反応雰囲気は反応チャンバ内に閉じ込められ、ほとんどの場合は周囲雰囲気であるがこれに限定されない、周囲端部に存在する雰囲気は、確実に締め出される。
【0012】
これに対応して、チャンバ端部に備えられる光学面は、意図された目的のために、すなわち反応チャンバ内で電磁放射を反射及び/又は成形及び/又は吸収するために構成される。本発明による電磁放射は、好ましくはレーザ放射として提供されてもよく、及び/又はUV範囲及び/又は可視範囲及び/又はIR範囲の波長を備えていてもよい。もっとも、このリストは限定的なものではなく、例えばx線又はマイクロ波も本発明の範囲内の電磁放射である。光学面のこうした構成は、光学面の反射性又は吸収性を高めるためのコーティング及び/又は研磨もしくは粗面化などの表面処理を備えていてもよい。
【0013】
具体的には、前述の周囲端部及びチャンバ端部は、単一の一体型本体の対向する部品である。換言すれば、本発明の第1の態様による光学素子には、シール又は光学特性の提供などの異なるタスクを解決する異なる素子の組み立てが必要とされない。
【0014】
また、周囲端部及びチャンバ端部のそれぞれの位置及び配向が互いに対してそれぞれ固定されているので、周囲端部によって提供されるシール手段を反応チャンバのフランジに固定して位置合わせすると、チャンバ端部によって提供される光学面の位置及び配向も決定される。その結果、チャンバ端部によって担持される光学面の追加の位置合わせは、必要とされないか、又は少なくとも有意に単純化される。
【0015】
要約すると、本発明の第1の態様による光学素子に一体型本体を設けることによって、両方のタスク、すなわち反応チャンバをシールすることと、反応チャンバ内で光学面を配置及び位置合わせすることとが単純化され得る。同時に、緊密さ及び位置合わせの精度に関する欠点又は不利益は危惧されない。
【0016】
また、本発明の第1の態様による光学素子は、本体がアルミニウムから、又はアルミニウム合金から、又は銅から、又は銅合金からなることを特徴とし得る。アルミニウム及び銅の両元素は、それぞれ、電磁放射に対して非常に高い反射性を備える。さらに、両材料は高い熱伝導性も備えており、高強度の電磁放射での動作を可能にする。同時に、両材料は、10-8hPa~10-12hPaの圧力の真空として提供される反応雰囲気など、高純度環境での使用に適している。材料のうち1つの合金を使用することは、前述の利点を維持することを可能にし、例えば構造的安定性及び/又は熱伝導性のような他の特徴を改良する。考えられるアルミニウム合金は、例えば、特に高強度のアルミニウム合金であるEN AW 6082 T6、又は200W/mKを上回る高い熱伝導性を有するアルミニウム合金であるEN AW 6063である。
【0017】
加えて、本発明の第1の態様による光学素子は、シール手段が、ナイフエッジ型シールの一部、とりわけ円周方向ナイフエッジ、及び/又はリングシールのため、好ましくは金属リングシールのための円周方向レセプタクル、及び/又は1つ以上の円周方向シール面を形成することを備え得る。好ましくは、ISO3669のような標準化されたシールシステムが使用され得る。具体的には、反応雰囲気として使用される真空、特に10-8hPa~10-12hPaの圧力の高真空には、ナイフエッジ型シールが最も適している。このようなナイフエッジ型シールの部品、とりわけ全ての必要な部品を提供することによって、反応雰囲気としての高真空の安全な使用が可能になる。
【0018】
あるいは、本発明の第1の態様による光学素子は、シール手段が、エラストマシールの一部、とりわけエラストマリングシール、好ましくはOリングのための円周方向レセプタクル、及び/又は1つ以上の円周方向シール面を形成することを特徴とし得る。このようなエラストマシールは、反応チャンバと共に使用される最も一般的なタイプのシールの1つである。このようなエラストマシールの部品、とりわけ全ての必要な部品を提供することによって、本発明の第1の態様による光学素子の、多種多様な反応チャンバとの使用が提供され得る。
【0019】
本発明の第1の態様による光学素子の別の一実施形態によれば、チャンバ端部は、入射する電磁放射を鏡面反射する光学面の少なくとも一部を形成する平面を備える。換言すれば、この実施形態においては、光学素子のそれぞれの部品は、電磁放射のため、例えば反応チャンバ内での電磁放射のビーム誘導のための平面鏡として作用する。したがって、反応チャンバ内での電磁放射の分散及び拡大が全くないか又は少なくとも本質的にない、精確な誘導が提供され得る。
【0020】
追加的又は代替的には、本発明の第1の態様による光学素子は、チャンバ端部が、入射する電磁放射を反射すると同時に成形する、好ましくはフォーカス及び/又はデフォーカスする光学面の少なくとも一部を形成する曲面を備えることも特徴とし得る。換言すれば、この実施形態においては、光学素子のそれぞれの部品は、電磁放射のため、例えば反応チャンバ内での電磁放射のビーム誘導のための成形素子として作用する。したがって、反応チャンバ内での電磁放射の精確な成形、特にフォーカス又はデフォーカスが提供され得る。
【0021】
本発明の第1の態様による光学素子の更なる改良された一実施形態によれば、平面及び/又は曲面は、本体の露出表面、好ましくは本体の研磨された露出表面からなる。上述のように、とりわけアルミニウム及び銅は、既に電磁放射に対して高い反射性を備えている。したがって、本発明の第1の態様による光学素子の一体型本体の露出表面は既に、良好な、又は非常に優れた反射性さえ提供することができる。例えばダイヤモンド工具を用いて、この露出表面を研磨することによって、それぞれの反射性はより一層改良され得る。
【0022】
代替として、本発明の第1の態様による光学素子は、平面及び/又は曲面が、反射されることが意図される電磁放射のために選択されたアクティブ光学コーティングで被覆されることも備えていてもよく、そのアクティブ光学コーティングは、とりわけ金属コーティング及び/又はブラッグミラーを形成するためのコーティングを光学面として備える。金属コーティングによれば、光学面の反射性は広い波長範囲にわたって向上され得るのに対し、ブラッグミラーは、非常に狭い波長範囲においてのみ反射性を高め、したがってフィルタ素子としても作用する。具体的には、コーティングは、単一フィルム又は複数フィルム構造を備えることができる。それにより、意図された動作及び/又は電磁放射の特別な必要性への光学面の適合が提供され得る。
【0023】
本発明の第1の態様による光学素子の別の代替的な一実施形態においては、チャンバ端部は、粗面化表面及び/又は入射する電磁放射を吸収する吸収コーティングで被覆された表面を備える。この実施形態においては、光学面に入射する電磁放射は反射されるべきではなく、それとは対照的に吸収されるべきである。光学面上に粗面化表面及び/又は吸収コーティングを設けることによって、この意図された吸収を高めることができる。粗面化は、例えば、光学面をサンドブラスト及び/又はビードブラストすることによって提供され得る。
【0024】
光学面で吸収された電磁放射は、そのエネルギを、光学面内に、ひいては本発明の第1の態様による光学素子の本体内に堆積させる。したがって、本体の温度及び/又は温度変化を測定することによって、電磁放射から吸収されたエネルギの量が判定され得る。換言すれば、本発明による光学素子はボロメータとして使用され得る。それに基づいて、反応チャンバ内での電磁放射のモニタリングが提供され得る。
【0025】
また、本発明の第1の態様による光学素子は、チャンバ端部が、本体軸に垂直なスロットによって2つ以上の端部セグメントにスロット分割され、とりわけその2つ以上の端部セグメントが本体軸の周りに回転対称に配置されることによって、改良され得る。換言すれば、光学面はいくつかの部品、すなわち端部セグメントに分割され、端部セグメントの各々が、その光学面の部品のうちの1つを備える。スロットは、光学面において互いに別個であり且つ分離された端部セグメントを形成するので、上記の段落において説明された吸収された電磁放射からのエネルギ堆積もまた、端部セグメントにわたって分布する。端部セグメントの各々の温度及び/又は温度変化を測定することによって、これらの端部セグメントの各々における電磁放射から吸収されたエネルギの量が個別に判定され得る。それに基づいて、反応チャンバ内での電磁放射のモニタリングが、改善された空間分解能で提供され得る。
【0026】
好ましくは、本発明の第1の態様による光学素子は、スロットがチャンバ端部から周囲端部に向かって本体軸に沿って本体の長さの5%~50%延在することにより、更に改良される。一方では、本体軸に沿って大きな延在部分を有するスロットは、端部セグメント間に改善された断熱を提供して、電磁放射に関して端部セグメント間のクロストークが最小の空間分解能を提供する。他方では、本体軸に沿って大きな延在部分を有するスロットは、光学素子の一体型本体の構造的安定性を弱めもする。チャンバ端部から周囲端部に向かって本体軸に沿って本体の長さの5%~50%というスロットの延在は、前述の境界条件の両方を満たす良好なトレードオフである。
【0027】
また、本発明の第1の態様による光学素子は、本体が冷却材流体用の1つ以上の連続した冷却ダクトを備えており、各冷却ダクトは本体の周囲端部に配置された入口開口及び出口開口を備えることを特徴とし得る。一体型本体の冷却を提供することによって、とりわけ本発明の第1の態様による光学素子の光学面が温度安定化され得る。特に、光学素子は中央部分として一体型本体を備えているので、この冷却は、冷却管などの追加の要素の必要なしに提供されることができる。それにより、本発明の第1の態様による光学素子における電磁放射の反射及び吸収の両方それぞれについて反応チャンバ内での連続条件が提供され得る。
【0028】
好ましくは、本発明の第1の態様による光学素子は、冷却材流体の供給ラインのねじ込み端子の配置のために入口開口及び出口開口がねじ切りされることによって改良され得る。ねじ山、とりわけ標準化されたねじ山を提供することによって、本発明の第1の態様による光学素子の冷却ダクトの、冷却システムの他の要素への接続が、より容易に提供され得る。
【0029】
特に、本発明の第1の態様による光学素子は、1つ以上の冷却ダクトがV字形であり、入口開口及び出口開口の両方それぞれから、冷却ダクトの直線状の脚部が本体内まで延在し、その2本の脚部は本体内で出合うことを備えていてもよい。換言すれば、冷却ダクトの2本の脚部は、孔として、とりわけ深穴穿孔として、容易に製造され得る。これにより、一体型本体における連続した冷却ダクトの製造が単純化され得る。
【0030】
V字形の冷却水路は、冷却ダクトの先端における冷却水の鋭い方向転換が乱流を促進するという追加の利点を有している。層状の冷却材流の場合であっても、鋭い方向転換は、V字形の冷却ダクトの先端に向かう冷却水の追加の圧力をもたらす。両方の効果は、消失する又は薄い層流層と、したがって光学面の中心に最も近いこの位置での冷却力の増大とにつながり、ガウシアンビームの場合、電磁放射の電力密度も最も高くなる。これは、この概念における流体冷却の効率を高める。
【0031】
加えて、本発明の第1の態様による光学素子は、光学面が入射する電磁放射を反射及び/又は成形するように設計されている場合、本体軸に沿った冷却ダクトの最大延在部分は、本体軸に沿って周囲端部からチャンバ端部に向かう本体の延在部分の少なくとも60%、好ましくは75%、最も好ましくは85%以上であることを特徴とし得る。
【0032】
反射素子として使用されるときには、光学素子の性能にとって、反射光学面の温度が一定又は少なくとも本質的に一定のままであり、とりわけ冷却材流体の温度に可能な限り近いことが有利である。本体軸に沿った冷却ダクトの最大延在部分が少なくとも60%、好ましくは75%、最も好ましくは85%以上であることを確実にすることによって達成され得る、光学面の近傍で又は少なくとも付近で終端する冷却ダクトを設けることによって、光学面の最適な冷却と、ひいては前述の一定の又は少なくとも本質的に一定の、とりわけ低い、光学面の温度が提供され得る。
【0033】
本発明の第1の態様による光学素子の代替的な一実施形態によれば、光学面が入射する電磁放射を吸収するように設計されている場合、本体軸に沿った冷却ダクトの最大延在部分は、本体軸に沿って周囲端部からチャンバ端部に向かう本体の延在部分の20%~65%、好ましくは35%~55%である。
【0034】
先の段落において説明された実施形態とは対照的に、吸収素子として使用されるときには、光学素子の性能にとって、光学素子の吸収容量及び吸収体積が、入射する電磁放射を吸収するのに十分であることが有利である。特に、電磁放射をモニタリングするために一体型本体の吸収領域の温度又は温度変化が測定される場合、吸収領域の過度の冷却は、妨害的、又は逆効果でさえあろう。そのようなボロメータ構成においては、測定温度は、吸収面付近の測定点と冷却ダクトとの間の有限の熱伝導による吸収電力の関数である。したがって、例えば測定点と冷却ダクトとの間の本体材料の断面を減少させることによる、測定点と冷却ダクトとのより大きな間隔、又は低減された熱伝導性は、所与の吸収電力範囲について温度範囲を増加させ、ひいては測定の感度を高める。加えて、冷却材流体温度を適宜選択することによっても、温度センサの所与の温度範囲に適合する、改善され最適化された温度測定の範囲が提供され得る。
【0035】
よって、本体軸に沿って周囲端部からチャンバ端部に向かう本体の延在部分の20%~65%、好ましくは35%~55%の本体軸に沿った冷却ダクトの最大延在部分を有する冷却ダクトを選択することによって、一方では光学素子の一体型本体の十分な冷却が、他方では吸収電磁放射によって堆積されたエネルギの測定を妨げることなく、提供され得ることが保証され得る。換言すれば、この実施形態において、本発明による光学素子は、吸収電磁放射のエネルギを測定するためのボロメータとして作用することができる。
【0036】
好ましくは、本発明の第1の態様による光学素子は、1つ以上の冷却ダクトが、冷却材流体の流れを測定する手段、及び/又は冷却材流体の絶対温度を測定する手段、及び/又は入口開口と出口開口との間での冷却材流体の温度変化を測定する手段を装備することによって、更に改良され得る。この実施形態では、光学素子の冷却自体が、光学素子の一体型本体内に堆積されたエネルギの量を測定するために使用される。特に、冷却は堆積されたエネルギを除去する又は取り除くことを意図されているので、これは、とりわけ入口と出口との間の温度差に加えて冷却材流体の単位時間当たりの流量も測定される場合には、入射する電磁放射によって堆積されたエネルギの量を測定する、実に間接的な手法ではあるが、それにもかかわらず非常に正確で定量的な手法である。
【0037】
本発明の第1の態様による光学素子の別の代替的又は追加的な一実施形態は、本体が、本体の温度を測定する手段、とりわけ熱電対を配置するための1つ以上の孔を備えることを備えていてもよく、その1つ以上の孔は、本体の周囲端部で始端し、本体内で本体軸に沿って、本体軸に沿って周囲端部からチャンバ端部に向かう本体の延在部分の少なくとも75%、好ましくは85%、最も好ましくは95%以上のところで終端する。
【0038】
先の段落において説明された実施形態とは対照的に、この実施形態では、入射する電磁放射によって引き起こされる一体型本体の温度又は温度変化の直接的な測定が提供され得る。このために、温度を測定する手段は、光学面の近傍に又は少なくとも付近に設置されるべきである。本体の周囲端部で始端し、本体内で本体軸に沿って、本体軸に沿って周囲端部からチャンバ端部に向かう本体の延在部分の少なくとも75%、好ましくは85%、最も好ましくは95%以上のところで終端する孔を提供することによって、この要件は特に容易に満たされ得る。
【0039】
本発明の第1の態様による光学素子の特別な一実施形態によれば、本体は端部セグメントの各々について孔を備えており、それぞれの孔はそれぞれの端部セグメント内で終端する。上述したように、端部セグメントは、光学面に入射する電磁放射のモニタリングのための空間分解能を提供又は改良するために使用され得る。そのためには、端部セグメントの各々についての堆積されたエネルギの測定が非常に有利である。各端部セグメントについて、それぞれのセグメントにおいて終端する専用の孔を設けることは、前述の測定を可能にするための、単純であるが、それにもかかわらず効果的な手法である。
【0040】
また、本発明の第1の態様による光学素子は、本体がチャンバ端部に、反応チャンバ内に追加のコンポーネントを取り付ける及び/又は固定するための取り付け手段を備えることを備え得る。換言すれば、電磁放射を反射及び/又は吸収するための光学コンポーネントとしての使用に加え、本発明の第1の態様による光学素子は、追加的なコンポーネントのためのプラットフォームとしても使用され得る。特に、光学素子の取り付け手段に取り付けられ及び/又は固定された追加のコンポーネントのための、本発明の第1の態様による光学素子の一体型本体及び光学面のそれぞれの精確な位置合わせも提供され得る。
【0041】
加えて、本発明の第1の態様による光学素子は、本体が、周囲端部からチャンバ端部に電気接続及び/又は流体接続を提供するための1つ以上のフィードスルーを備えることを特徴とし得る。本発明の第1の態様による光学素子は、反応チャンバのチャンバ壁の開口をシールするために使用される。そのような開口は、反応容積と反応チャンバの外側との間の電気接続及び/又は流体接続のためのフィードスルーを提供するためにも使用され得る。本発明の第1の態様による光学素子によってこのフィードスルーを提供することにより、反応チャンバのチャンバ壁のいくつかの追加の開口が減少され得、及び/又は他の開口が他の目的のために使用され得る。
【0042】
本発明の第1の態様による光学素子の好適な改良によれば、1つ以上のフィードスルーは、取り付け手段に配置可能及び/又は固定可能な追加のコンポーネントのための電気接続及び/又は流体接続を提供するために、取り付け手段で終端する。本発明の第1の態様による光学素子の取り付け手段に取り付けられ及び/又は固定された追加のコンポーネントは、その動作のために電気接続及び/又は流体接続を必要とし得る。それぞれのフィードスルーも光学素子の一部として設けることによって、追加のコンポーネントの設定、及びひいては反応チャンバ全体の設定が単純化され得る。
【0043】
本発明の第2の態様によれば、目的は、シール可能、とりわけ周囲雰囲気に対してシール可能な反応容積を包囲するチャンバ壁を備える反応チャンバ、特に熱レーザ蒸発システムの反応チャンバによって満足され、反応容積は反応雰囲気を充填可能であり、反応チャンバはチャンバ壁の開口に配置されたフランジを更に備える。本発明の第2の態様による反応チャンバは、本発明の第1の態様による光学素子がフランジに配置されると共にチャンバ壁の開口をシールすることを特徴とする。
【0044】
本発明の第2の態様による反応チャンバは、本発明の第1の態様による光学素子を備える。したがって、本発明の第2の態様による反応チャンバは、本発明の第1の態様による光学素子に関して上述した全ての利点を提供することができる。
【0045】
動作中、とりわけ熱レーザ蒸発システムで使用される反応チャンバにおいて、光学面は、反応チャンバにおいて蒸発及び/又は昇華された材料によって被覆され得る。よって、光学素子の光学特性は変化し得、特に悪化するおそれがある。したがって、本発明の第1の態様による光学素子は本発明の第2の態様による反応チャンバのフランジに配置されるので、特別な利点として、光学素子は、別の、好ましくは同一の、本発明の第1の態様による光学素子によって置換されることができる。
【0046】
また、本発明の第2の態様による反応チャンバは、フランジが光学素子を配置するためのフランジリムを備え、フランジリムが蛇腹部によってチャンバ壁に接続されることを備え得る。換言すれば、フランジリム、及びひいてはそのフランジリムに配置された本発明の第1の態様による光学素子は、蛇腹部が局所的に圧縮又は伸張され得るので、わずかに移動され得る。それによって、反応チャンバ内での本発明の第1の態様による光学素子の、及びひいては光学面の、精確な位置合わせ及び/又は位置合わせの補正が提供され得る。
【0047】
さらに、本発明の第2の態様による反応チャンバは、反応チャンバ、とりわけフランジ及び/又は光学素子が、蛇腹部によって提供される移動半径内で光学素子を移動させることにより反応チャンバ内での光学素子の光学面の相対位置を調整する手段を備えることによって、改良され得る。そのような調整手段は、例えば手動で駆動されてもよく、及び/又は1つ以上のアクチュエータを備えていてもよい。それによって、前述した光学面の精確な位置合わせ及び/又は位置合わせの補正が、より簡単に提供され得る。加えて、調整手段は、好ましくは、完了した調整を固定するための固定デバイスを備えていてもよい。
【0048】
本発明は、実施形態によって及び図面を参照して、以下に詳細に説明される。図面には次のものが示される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】技術水準による反応チャンバに配置された光学素子の概略側面図である。
図2】本発明による反応チャンバに配置された光学素子の第1の実施形態の概略側面図である。
図3】本発明による光学素子の第2の実施形態の概略側面図である。
図4】本発明による光学素子の第3の実施形態の概略側面図である。
図5】本発明による反応チャンバに配置された光学素子の第4の実施形態の概略側面図である。
図6】本発明による反応チャンバに配置された光学素子の第5の実施形態の概略側面図である。
図7】本発明による反応チャンバに配置された光学素子の第6の実施形態の概略側面図である。
図8】本発明による反応チャンバに配置された光学素子の第7の実施形態の概略側面図である。
図9】本発明による反応チャンバに配置された光学素子の第8の実施形態の概略側面図である。
図10】本発明による光学素子の第9の実施形態の半透過斜視図である。
図11】本発明による光学素子の第10の実施形態の半透過斜視図である。
図12】本発明による光学素子の第11の実施形態の半透過斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図2は、本発明による反応チャンバ70のチャンバ壁72の開口74を囲むフランジ80に配置された、本発明による光学素子10の可能な一実施形態を概略的に図示している。反応チャンバ70は反応雰囲気90を充填された反応容積を包囲しており、反応チャンバ70の外側には、ほとんどの場合、周囲雰囲気94が存在する。しかしながら、反応チャンバ70のチャンバ壁72は、反応雰囲気90を、周囲雰囲気94とは異なる別の雰囲気から完全に又は部分的に分離することもできる。
【0051】
図2において明確に視認できるように、光学素子10の中心要素は、中心本体軸14に沿って互いに対向して配置された周囲端部30とチャンバ端部40とを備える一体型本体12である。好ましくは、一体型本体12は、アルミニウムから、又はアルミニウム合金から、又は銅から、又は銅合金からなる。とりわけ、図示される光学素子の配置状態では、チャンバ端部40は反応チャンバ70内に、周囲端部30は反応チャンバ70の外側に、それぞれ配置される。
【0052】
具体的には、周囲端部30は、反応チャンバ70のフランジ80をシールするためのシール手段32を備える。図示される例においては、シール手段32は、エラストマリングシール84,88を備えるエラストマシールを形成しており、シール手段32は、特に、エラストマリングシール84,88のためのレセプタクル36と、追加的にはシール面38と、を提供する。
【0053】
一体型本体12の反対側の端部では、チャンバ端部46が光学面46を担持する。図示される実施形態においては、光学面46は、反射性の向上のために光学コーティング48で追加的に被覆されている。これは、入射する電磁放射100を効果的に反射することを可能にする。光学面46は平面として設けられるので、電磁放射100の反射は鏡面反射として提供される。
【0054】
本発明による光学素子10の主な利点は、光学素子10が、前述した周囲端部30とチャンバ端部40との両方を提供する一体型本体12を備えるという事実に起因する。それによって、シール手段32と光学面46との両方が、本発明による光学素子10において、互いに対して固定された、とりわけ既知の関係で、配置され、位置決めされ、配向される。したがって、本発明による反応チャンバ70のフランジ80にシール手段32を配置することによって、本発明による光学素子10の周囲端部30のみならずチャンバ端部40の位置、配向、及び位置合わせも決定される。これにより、配置後の光学面46の追加の位置合わせが回避され得る。
【0055】
以下では、光学素子10の実施形態のいくつかの変形例が説明される。これらの全ては、周囲端部30とチャンバ端部40との両方を含む一体型本体12の発明概念を共有するものであり、よって前述の利点を共有する。したがって、以下では特に、それぞれの実施形態の違いが明らかにされる。異なる実施形態によって共有される特徴に関して、たとえ明示的に言及されていない場合であっても、特に図2に関する上記の説明が参照される。
【0056】
図2に図示された光学素子10の実施形態とは対照的に、図3及び図4のそれぞれの光学素子10は、入射する電磁放射100の吸収を意図されている。もっとも、図3及び図4の光学素子10は、それぞれの吸収能力を高めるために、それぞれ異なるアプローチを提供する。
【0057】
図3に図示される実施形態においては、チャンバ端部40、及びひいてはチャンバ端部40に形成された光学面46が、吸収コーティング50で被覆されている。それとは対照的に、図4は、例えばサンドブラスト及び/又はビードブラストによって粗面化された粗面化表面を有する光学素子10を示す。異なる実施形態について示されているが、これらの措置は組み合わせられてもよい。
【0058】
図3及び図4に図示される光学素子10の他の全ての要素、とりわけ光学素子10のコアを形成する一体型本体12は、図2に示される実施形態と同様に構成されている。すなわち、例えば、図3及び図4の実施形態も、一体型本体12の周囲端部30に設けられたシール手段32を備えている。したがって、やはり、位置合わせプロセスの単純化という前述の利点が提供され得る。
【0059】
図5の本発明による光学素子10の及び反応チャンバ70の実施形態の重点は、それぞれ、シール手段32にある。具体的には、このシール手段32は、ナイフエッジ型シールの一部を形成する。円周方向ナイフエッジ34が、シール手段32の円周方向レセプタクル36に配置された金属リングシール84,86に深く切り込む。円周方向シール面38が、シール手段32を完成させ、反応チャンバ70のチャンバ壁72の開口74の緊密なシールを確実にする(図2を参照)。具体的には、このようなナイフエッジ型シールを用いると、反応チャンバ70内の反応雰囲気90として、10-12hPa以下の超高真空が実現され得る。
【0060】
ここでも、他の全ての要素、とりわけチャンバ端部40上の光学面46の説明に関しては、光学素子10の他の実施形態の上記の説明を参照されたい。
【0061】
図6には、本発明による光学素子10の及び反応チャンバ70のそれぞれの一実施形態が図示されており、この実施形態は、測定手段60、特に一体型本体12の温度の測定手段60を備えている。具体的には、この測定手段60は、熱電対として提供され得る。本体12の温度を測定することによって、光学面46に入射する電磁放射100によって本体12内に堆積されたエネルギの測定が提供され得る。そのために、周囲端部30で始端し本体12内まで延在する孔16が配置され、測定手段60は孔16内、好ましくは孔16の内端に配置される。
【0062】
図6に図示するように反射される電磁放射100については、可能な限り光学面46に近接して温度を測定することが有利である。これは、反射される電磁放射100(図11を参照)にも当てはまる。しかしながら、電磁放射100の堆積されたエネルギによって引き起こされるチャンバ端部40の偶発的な溶融を完全に排除することはできないので、本体軸14に沿って約75%~95%以上の孔16の延在の値が適切であることが分かった。
【0063】
ここでも、他の全ての要素、とりわけチャンバ端部40上の光学面46の説明に関しては、光学素子10の他の実施形態の上記の説明を参照されたい。
【0064】
図7は、本発明による、すなわち一体型本体12内に配置された冷却ダクト18を装備した、光学素子10の及び反応チャンバ70のそれぞれの別の可能な特徴を示す。冷却ダクト18は、いずれも本体12の周囲端部30に配置された入口開口20と出口開口22とのそれぞれの間に延在している。これは、冷却材流体92が本体12を通って流れること、及びチャンバ端部の光学面46に入射する電磁放射100の吸収によって生じる過剰なエネルギを除去することを可能にする。好ましくは、入口開口20及び出口開口22は、冷却材流体92の供給ラインのねじ込み端子24(図11,12)の配置のためにねじ切りされている。
【0065】
冷却ダクト18は、したがって光学素子10は、冷却材流体92の流れ、及び/又は冷却材流体92の絶対温度、及び/又は入口開口20と出口開口22との間での冷却材流体92の温度変化を測定する手段60を備えていてもよい。よって、冷却量、したがって入射する電磁放射100によって本体12内に堆積されたエネルギの量が、測定され得る。
【0066】
図7に図示される実施形態においては、光学面46上での電磁放射100の反射及び/又は成形が意図されている。特に光学面46の近傍における本体12の温度に関して、安定した条件を提供するために、本体軸14に沿った冷却ダクト18の最大延在部分は、本体軸14に沿って周囲端部30からチャンバ端部40に向かう本体12の延在部分の少なくとも60%、好ましくは75%、最も好ましくは85%以上であることが有利である。
【0067】
これは、反対の場合、すなわち光学面46が入射する電磁放射100を吸収するように設計されている場合には、とりわけ本体12の同時温度測定を伴う実施形態(特に図12及び付随する説明を参照)にとって逆効果となり得る。よって、これらの実施形態については、十分な温度変動と吸収された電磁放射100の量を用いて測定される温度の測定精度とを可能にするために、本体軸14に沿って周囲端部30からチャンバ端部40に向かう本体12の延在部分の20%~65%、好ましくは35%~55%の、本体軸14に沿った冷却ダクト18の最大延在部分が好適である。
【0068】
図8には、本発明による反応チャンバ70の更なる改良が図示されている。すなわち、この実施形態においては、反応チャンバ70のフランジ80は、蛇腹部76によって反応チャンバ70のチャンバ壁72に接続されたフランジリム82を備えている。本発明による光学素子10は、そのシール手段32がこのリム82にある状態で配置される。
【0069】
図8に図示されるように、蛇腹部76は、リム82の、及びひいてはこのリム82に配置され固定された光学素子10の、ある程度の移動を可能にする。その結果、光学素子10のチャンバ端部40上の光学面46の位置及び/又は配向の位置合わせが、光学素子10の周囲端部30を位置合わせすることによって、したがって全体としてより容易に、提供され得る。
【0070】
具体的には、本発明による反応チャンバ70、例えば光学素子10は、蛇腹部76によって提供される移動範囲内で光学素子10を移動させることにより反応チャンバ70内で光学素子10の光学面46の相対位置を調整する手段78を更に備えることができる。この調整手段78は、好ましくはチャンバ壁72に固定されてもよく、(図8に図示されるように)光学素子10の周囲端部30を、又は代替的にはリム82を移動させる。光学素子10又はリム82に調整手段78を固定してチャンバ壁72に可動支持体を固定するという逆の配置も、同じ利点を提供する。
【0071】
加えて、図9に図示されるように、本発明による光学素子10及び反応チャンバ70のぞれぞれは、チャンバ端部30を周囲端部40と接続するフィードスルー64も装備し得る。フィードスルー64の開口をシールするためのシール手段が設けられるが、図9には図示も参照もされておらず、フィードスルー64は、周囲端部30からチャンバ端部40への電気接続及び/又は流体接続を提供するために使用される。
【0072】
特に、一体型本体12は、反応チャンバ70内に追加のコンポーネントを取り付ける及び/又は固定するための取り付け手段62をチャンバ端部40に備えることもできる。特に、この取り付け手段62を有する実施形態については、それぞれのフィードスルー64が、取り付け手段62に取り付けられた及び/又は固定された追加のコンポーネントに必要な電気接続及び/又は流体接続を提供するために使用され得る。
【0073】
図10から図12は、本発明による光学素子10の3つの異なる実施形態の半透過斜視図を示し、それらのうちの最初の2つは光学面46での電磁放射100の反射を意図されており、最後の1つは電磁放射100の吸収を意図されている。光学素子10の3つ全ての実施形態が、V字形の冷却ダクト18を備える。2本の直線状の脚部26が、入口開口20及び出口開口22のそれぞれから、それぞれの光学素子10の一体型本体12内まで延在し、本体12内で出合って連続した冷却ダクトを形成している。図11,12の実施形態は更に、冷却材流体92の供給ラインへのそれぞれの冷却ダクト18の容易且つ便利な接続のために、入口開口20及び出口開口22のそれぞれに配置された端子24を備える。
【0074】
加えて、図示される光学素子10の3つ全ての実施形態において、シール手段32は、レセプタクル36と、シール面38と、更にはナイフエッジ型シールのナイフエッジ34とを備える。
【0075】
図10は光学素子10を示し、その光学面46はチャンバ端部40において、本体軸14に対して、特に45°の角度で傾斜している。好ましくは、光学素子10は、光学素子10の本体12の本体軸14に平行な方向とこの本体軸14に垂直な方向との間で電磁放射100を反射するために使用され得る。一体型本体12は、好ましくは、EN AW 6082 T6などの高強度アルミニウム合金から製造され得る。加えて、光学面46は、ダイヤモンド工具を用いて滑らかな鏡面仕上げに機械加工されてもよく、更なるコーティングの必要がなくなる。
【0076】
先の段落において説明された実施形態とは対照的に、図11は、本体軸14に垂直な、したがってフランジ80(図示しない。例えば図2を参照)の配向に平行な光学面46を有する光学素子10を示す。これは、図10に関して先の段落で説明された傾斜した光学面46を有する実施形態と比較して、光学素子10のより短い全体設計を可能にする。加えて、ここでは冷却ダクト18を、光学面46の中心に、したがって入射する電磁放射100の最高電磁電力密度を有する点に、より近接させることができる。さらに、このジオメトリのより高い対称性は、光学面46におけるより対称的な温度分布につながる。これは、ひいては、高負荷下での光学面46の不均一な熱膨張による反射ビームの低対称歪みのおそれを低減する。
【0077】
図12は、ボロメータ機能を有するアブソーバとして作用する、本発明による光学素子10を示す。図10,11に関して説明された実施形態とは対照的に、チャンバ端部40の光学面46は、ここでは、その吸収を最大化するために、サンドブラスト又はビードブラストによって粗面化されている。冷却ダクト18は、一体型本体12の本体軸14に沿った延在部分の中央のあたりで、特に光学面46から有意な距離離れて、終端する。これは、吸収光学面46と熱を運び去る冷却ダクト18との間に熱勾配を生じさせ、光学面46から本体軸14の方向でいくらかの距離のところにおいてさえ、昇温をもたらす。
【0078】
4つの長く細い孔16がこの昇温の領域まで延びて、これら4つの孔16の端部で温度を測定する細い温度の測定手段60(図示しない)、好ましくは熱電対接点の挿入を可能にしている。同時に、孔16の端部は吸収光学面46から十分に遠く離れており、電磁ビームが吸収される光学面46に近接した一体型本体12の材料の溶融を伴う光学素子10の過負荷の場合に、いくらかの安全距離がある。細い孔16は、好ましくは、代替的に種々の異なる温度センサが使用されることを可能にするように、直径が4mmである。
【0079】
このような設定は、ボロメータとして作用し、デバイスの周囲端部30を冷却水温度に維持しながら、吸収光学面46に近い温度を介して吸収された放射強度の測定を可能にする。加えて、冷却材流体92、この場合には冷却水の単位時間当たりの体積流量と、入口開口20及び出口開口22のそれぞれにおける冷却材流体92間の温度差とを測定して、吸収された電力を定量的に決定することができる。
【0080】
また、図示される光学素子10は、チャンバ端部40の光学面46にスロットを有し、吸収光学面46を等しいサイズの4つの端部セグメント42に分割している。各端部セグメント42は、対称的に均等な位置に、自身の孔16内に配置された温度を測定する手段60を装備しており、これら4つの端部セグメント42間での吸収された放射エネルギの分布が決定され得る。
【0081】
これは、光学面46に入射する電磁放射100のビーム位置の空間分解検出を可能にする。4つ全ての端部セグメント42において等しいエネルギが吸収され、したがって4つ全ての熱電対センサ60によって等しい温度が測定される場合には、ビームはデバイスの中心に位置する。この平衡状態からの逸脱は、その逸脱の方向についての情報をもたらし、したがって、電磁放射100のビームを操向するため及びビームを光学素子10の中心に再配置するために使用され得る。
【符号の説明】
【0082】
10 光学素子
12 本体
14 本体軸
16 孔
18 冷却ダクト
20 入口開口
22 出口開口
24 端子
26 脚部
30 周囲端部
32 シール手段
34 ナイフエッジ
36 レセプタクル
38 シール面
40 チャンバ端部
42 端部セグメント
44 スロット
46 光学面
48 光学コーティング
50 吸収コーティング
60 測定手段
62 取り付け手段
64 フィードスルー
70 反応チャンバ
72 チャンバ壁
74 開口
76 蛇腹部
78 調整手段
80 フランジ
82 リム
84 リングシール
86 金属リングシール
88 エラストマリングシール
90 反応雰囲気
92 冷却材流体
94 周囲雰囲気
100 電磁放射
200 リフレクタ部
202 冷却管
204 溶接
206 シール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】