(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ウレイドメタクリレートの調製
(51)【国際特許分類】
C07C 273/18 20060101AFI20240808BHJP
C07C 275/10 20060101ALI20240808BHJP
C07D 233/32 20060101ALN20240808BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
C07C273/18
C07C275/10
C07D233/32
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505581
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022040389
(87)【国際公開番号】W WO2023023004
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】サティオサタム、ムハンタン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC57
4H006BA03
4H006BA04
4H006BA07
4H006BA32
4H006BA37
4H006BA45
4H006BC10
4H039CA66
(57)【要約】
本発明は、亜鉛アセチルアセトネート(Zn(acac)2)及びラジカル阻害剤の存在下で、メチルメタクリレートを1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンと接触させてウレイドメタクリレートを形成する工程を含む、ウレイドメタクリレートを調製する方法に関する。方法は、アクリルラテックスの合成に使用される重要なモノマーを作製する効率的で環境に優しい方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛アセチルアセトネート(Zn(acac)
2)及びラジカル阻害剤の存在下で、メチルメタクリレートを1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンと接触させてウレイドメタクリレートを形成する工程を含む、ウレイドメタクリレートを調製する、方法。
【請求項2】
メチルメタクリレート対1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンのモル:モル比が、1.5:1~10:1の範囲内であり、反応が、50℃~150℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチルメタクリレート対1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンのモル:モル比が、2:1~5:1の範囲であり、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オン対Zn(acac)
2のモル:モル比が、100:0.2~100:10の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オン対Zn(acac)
2のモル:モル比が、100:0.5~100:5の範囲内である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応が、補助金属塩の非存在下又は実質的な非存在下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
Zn(acac)
2対補助金属塩のモル:モル比が、少なくとも10:1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Zn(acac)
2対補助金属塩のモル:モル比が、少なくとも100:1であり、前記補助金属塩が、LiCl、LiI、ZnCl
2、及び/又はCs
2CO
3である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が、補助金属塩LiCl、LiI、ZnCl
2、及びCs
2CO
3のいずれかの非存在下で行われる、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ウレイドメタクリレート及びその類似体の調製に関する。ウレイドメタクリレートは、アクリルラテックスの合成におけるモノマーとして有用である。ウレイドメタクリレート基で官能化されたラテックスは、接着促進剤として有用であることが見出されている。(米国特許第9,212,292(B2)号を参照)。
【0002】
ウレイドメタクリレートは、スズ触媒、最も注目すべきはジブチルスズオキシドの存在下で、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンとメチルメタクリレートとのエステル交換によって商業的に調製される。反応はかなり効率的であるが、スズの毒性に対する懸念は、特に、次にラテックスが食品接触用途に使用される場合、プロセス効率を維持しながら、より安全で環境に優しい合成アプローチを見出す動機付けとなる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、亜鉛アセチルアセトネート及びラジカル阻害剤の存在下でメチルメタクリレートを1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンと接触させてウレイドメタクリレートを形成する工程を含む、ウレイドメタクリレートを調製する方法を提供することによって、当技術分野における必要性に対処する。
【0004】
本発明の方法は、環境、健康、及び安全基準の要求を満たすのにより好適な触媒の存在下でウレイドメタクリレートを生成する高効率な方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、亜鉛アセチルアセトネート(Zn(acac)2)及びラジカル阻害剤の存在下でメチルメタクリレートを1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンと接触させてウレイドメタクリレートを形成する工程を含む、ウレイドメタクリレートを調製する方法である。有利には、少なくとも80%又は少なくとも90%の1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンの転化率を達成するのに十分な時間、50℃から、又は80℃から、又は100℃から150℃まで、又は120℃までの範囲の温度で、好適な溶媒の存在下において、メチルメタクリレート、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オン、及びZn(acac)2-を一緒に接触させる。
【0006】
好ましくは、出発物質及び溶媒の両方として機能するようにメチルメタクリレートを化学量論的に過剰に使用する。反応が完了又はほぼ完了したら、ウレイドメタクリレートのメチルメタクリレート溶液をそのままコモノマーとして使用してもよく、代替的には、未反応メチルメタクリレートの少なくとも一部を留去して、より濃縮されたウレイドメタクリレートのメチルメタクリレート溶液を残すことが望ましい場合もある。(ウレイドメタクリレートは、一般に、水及びメチルメタクリレートで希釈されて商業的に供給されている。)
【0007】
1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オン対Zn(acac)2のモル:モル比は、典型的には、100:0.2から、又は100:0.5から、又は100:0.8から100:10まで、又は100:5まで、又は100:2までの範囲である。メチルメタクリレート対1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンのモル:モル比は、典型的には、1.5:1から、又は2:1から10:1まで、又は7:1まで、又は5:1までの範囲である。反応性及び非反応性溶媒を含む、メチルメタクリレート以外の溶媒を使用してもよい。このような溶媒の例としては、米国特許第8,865,931(B2)号、第6欄、55~68行に列挙されているものが挙げられる。
【0008】
反応は、有利には、メチルメタクリレートの濃度に基づいて50ppm~1000ppmの範囲の濃度のラジカル阻害剤の存在下で行われる。好適なラジカル阻害剤の例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ジエチルヒドロキシルアミン、2-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、ジ-t-ブチルカテコール、4-ヒドロキシ2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジンN-オキシル(4-ヒドロキシTEMPO)、及び4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジンN-オキシルが挙げられる。
【0009】
LiCl、LiI、ZnCl2等のハロ金属塩及びCs2CO3等の金属炭酸塩を含む任意の補助金属塩なしに、Zn(acac)2の存在下で高収率のウレイドメタクリレートを得ることができることが見出された。したがって、本発明の別の態様では、ハロ金属塩又は炭酸塩金属塩の非存在下又は実質的な非存在下、より具体的にはLiCl、LiI、ZnCl2、又はCs2CO3の実質的な非存在下における反応条件下で、メチルメタクリレート、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オン、及びZn(acac)2を一緒に接触させる。本明細書で使用するとき、補助塩の「実質的な非存在」とは、Zn(acac)2対補助塩のモル:モル比が、少なくとも5:1、又は少なくとも10:1、又は少なくとも100:1、又は少なくとも1000:1であることを意味する。
【実施例】
【0010】
ウレイドメタクリレートの調製
撹拌機、熱電対、1”、10トレーオルダーショーカラム、及び加熱マントルを備えた四つ口丸底フラスコに、メチルメタクリレート(601.5g、6mol)、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オン(260.3g、2mol)、Zn(acac)2一水和物(5.3g、0.02mol)、4-ヒドロキシTEMPO(0.12g)、及びヒドロキノンモノエチルエーテル(0.52g)を仕込んだ。反応混合物を大気圧において110℃に加熱し、塔頂での蒸気温度が67℃になった時点で留出物を回収し、還流スプリッタは3:7(前方3、還流7)とした。3.5時間にわたって、およそ94gの留出物を回収した。反応混合物の1H-NMR分光分析は、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンの転化率>93%を示し、マイケル付加物は1%未満であった。転化率は意図的に93%~95%を目標とし、より高い転化率では、所望の生成物がメチルメタクリレートと反応して、前駆体としてウレイドメタクリレートを使用する後続の乳化重合においてゲル化を引き起こす不純物を形成する可能性があることが見出された。
【0011】
オルダーショーカラムを直留ヘッドと交換し、その後、圧力を100mmHgに下げ、ポットの内容物を53℃に加熱した。真空をゆっくりと2mmHgに下げ、ポットの温度をゆっくり90℃に上げた。過剰のMMAおよそ360gを留去した。1H-NMR分光法によって求めたところ、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリン-2-オンの転化率は93.5%、マイケル付加物は0.8%、残留メチルメタクリレートは3.4%であると求められた。
【国際調査報告】