(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】皮下単位剤形
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20240808BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240808BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240808BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240808BHJP
A61P 5/40 20060101ALI20240808BHJP
A61P 5/44 20060101ALI20240808BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240808BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240808BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240808BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240808BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240808BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240808BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240808BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240808BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240808BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240808BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240808BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 U
A61P43/00 121
A61K38/46
A61P37/06
A61P17/14
A61P19/08
A61P5/40
A61P5/44
A61P7/06
A61P1/16
A61P9/00
A61P7/00
A61P15/08
A61P17/00
A61P37/04
A61P3/02
A61P17/02
A61P29/00
A61P25/00
A61P1/04
A61P5/14
A61P7/04
A61P11/00
A61P19/04
A61P3/10
A61P21/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P37/02
A61P27/02
A61P25/28
A61P17/04
A61P1/08
A61K38/18
A61K38/22
A61K38/21
A61K38/20
A61K38/02
A61K39/395 A
A61K39/395 M
G01N33/53 N
G01N33/543 545A
C07K16/28 ZNA
C07K16/00
C12N9/26 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506201
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 IB2022000443
(87)【国際公開番号】W WO2023012515
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アントワネッタ ジャコバ マリア ヴァン ブラフト
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ウルリッツ
(72)【発明者】
【氏名】エリック ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ヴェルヘーセン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA41
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA21
4C084DB01
4C084DB52
4C084DB60
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA11
4C084NA12
4C084ZA011
4C084ZA021
4C084ZA141
4C084ZA161
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA511
4C084ZA531
4C084ZA542
4C084ZA551
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA711
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA921
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB051
4C084ZB081
4C084ZB091
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZC061
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4C084ZC191
4C084ZC351
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
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4C085BB36
4C085BB42
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
SC用量の薬力学(PD)値を既知の参照IV用量の薬力学(PD)値と一致させる一方で、SC用量の薬物動態(PK)値がIV用量の薬物動態(PK)値よりも小さい、モデリングアプローチに基づいて決定される生物製剤の単位剤形が、本明細書で提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物製剤の皮下投与のための単位剤形であって、
(a)前記生物製剤が、静脈内投与時に対象においてPK
ivおよびPD
ivをもたらす、RD
ivを有し、
(b)前記単位剤形が、皮下投与時に対象においてPK
scおよびPD
scをもたらす、前記生物製剤のRD
scを含み、
(c)前記PK
sc/PK
iv比が、0.8未満であり、前記PD
sc/PD
iv比が、0.9~1.1である、前記単位剤形。
【請求項2】
前記RD
ivが、10mg/kgであり、前記RD
scが、約1000mgである、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項3】
前記RD
ivが、25mg/kgであり、前記RD
scが、約2000mgである、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項4】
前記PD
ivおよび前記PD
sc値が、総IgG低減である、請求項1~3のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項5】
生物製剤の皮下投与のための単位剤形であって、
(a)前記生物製剤が、静脈内投与時に対象においてPK
ivおよびBL
ivをもたらす、RD
ivを有し、
(b)前記単位剤形が、皮下投与時に対象においてPK
scおよびBL
scをもたらす、前記生物製剤のRD
scを含み、
(c)前記PK
sc/PK
iv比が、約0.8未満であり、前記BL
sc/BL
iv比が、約0.9~約1.1である、前記単位剤形。
【請求項6】
生物製剤の皮下投与のための単位剤形であって、前記単位剤形における前記生物製剤の皮下用量の量が、
(a)皮下用量の前記生物製剤を対象に投与する工程であって、前記生物製剤が、PK
ivおよびBL
ivをもたらす、RD
ivを有する、投与する工程、
(b)前記生物製剤の前記BL
scを決定する工程、
(c)前記生物製剤の前記PK
scを決定する工程、および
(d)約0.9~約1.1のBL
sc/BL
iv比および約0.8未満のPK
sc/PK
iv比をもたらす、皮下用量を決定する工程、を含む方法によって決定される、前記単位剤形。
【請求項7】
前記BL
scおよび前記BL
ivが、前記対象における総血清IgGのレベルである、請求項5または請求項6に記載の単位剤形。
【請求項8】
前記対象における前記総血清IgGが、生物学的分析方法を使用して分析される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的分析方法が、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、健康なボランティアまたは非ヒト動物である、請求項5~9のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項11】
前記PK
sc/PK
iv比が、0.7未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項12】
前記PK
sc/PK
iv比が、0.6未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項13】
前記PK
ivおよび前記PK
sc値が、AUCである、請求項1~12のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項14】
前記生物製剤が、抗体、抗体断片、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、酵素、融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項15】
前記生物製剤が抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項16】
前記抗体が、抗FcRn抗体である、請求項15に記載の単位剤形。
【請求項17】
前記抗FcRn抗体が、ロザノリキシズマブ(UCB7665)、ニポカリマブ(M281)、オリラノリマブ(ALXN1830/SYNT001)またはバトクリマブ(IMVT-1401/RVT1401/HBM9161)である、請求項16に記載の単位剤形。
【請求項18】
前記生物製剤が、対応する野生型Fc領域と比較してpH5.5でより高い親和性でFcRnに結合する、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片を含むか、またはそれからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項19】
前記生物製剤が、抗体Fc領域に結合するFcRnと拮抗する、請求項16~18のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項20】
前記生物製剤がエフガルチギモドである、請求項1~13のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項21】
ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項22】
前記ヒアルロニダーゼ酵素がrHuPH20である、請求項21に記載の単位剤形。
【請求項23】
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、配列番号5~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の単位剤形。
【請求項24】
ヒアルロニダーゼ酵素と同時投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項25】
ヒアルロニダーゼ酵素の前または後に投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項26】
前記ヒアルロニダーゼ酵素がrHuPH20である、請求項25に記載の単位剤形。
【請求項27】
ヒアルロニダーゼ酵素の量が、1000U/ml~3000U/ml、好ましくは、2000U/mLである、請求項22~26のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項28】
自己免疫疾患の治療において使用するための、請求項1~27のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項29】
前記自己免疫疾患が、同種膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、免疫性血小板減少症(ITPまたは特発性血小板減少性紫斑病または特発性血小板減少性紫斑病または免疫介在性血小板減少症)、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡(BP)、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアック・スプルース皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、拡張型心筋症、円板状ループス、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、IgA神経障害、IgM多発神経障害、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、硬化性苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症(MG)、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、皮膚筋炎(DM)、壊死性自己免疫性ミオパチー(NAM)、抗シンテターゼ症候群(ASyS)、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、疱疹状皮膚炎型血管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される、請求項28に記載の使用のための単位剤形。
【請求項30】
治療有効用量の皮下投与のための生物製剤を投与する方法であって、
(a)皮下用量の前記生物製剤を対象に投与することであって、前記生物製剤が、PK
ivおよびBL
ivをもたらす、RD
ivを有する、投与すること、
(b)前記生物製剤の前記BL
scを決定すること、
(c)前記生物製剤の前記PK
scを決定すること、および
(d)約0.9~約1.1のBL
sc/BL
iv比および約0.8未満のPK
sc/PK
iv比をもたらす、皮下用量を決定すること、を含み、
これにより、治療有効用量の皮下投与のための前記生物製剤を決定する、前記方法。
【請求項31】
前記対象が、健康なボランティアまたは非ヒト動物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
皮下用量の生物製剤で対象を治療する方法であって、前記生物製剤の前記皮下用量が、
(a)皮下用量の前記生物製剤を対象に投与する工程であって、前記生物製剤が、PK
ivおよびBL
ivをもたらす、RD
ivを有する、投与する工程、
(b)前記生物製剤の前記BL
scを決定する工程、
(c)前記生物製剤の前記PK
scを決定する工程、および
(d)約0.9~約1.1のBL
sc/BL
iv比および約0.8未満のPK
sc/PK
iv比をもたらす、皮下用量を決定する工程、を含む方法によって決定される、前記方法。
【請求項33】
前記PK
sc/PK
iv比が、0.7未満である、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記PK
sc/PK
iv比が、0.6未満である、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記PK
ivおよび前記PK
sc値が、前記AUCである、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記生物製剤が、抗体、抗体断片、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、酵素、融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤からなる群から選択される、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記BL
scおよび前記BL
ivが、前記対象の血清試料における総IgGのレベルである、請求項30~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象における前記総血清IgGが、生物学的分析方法を使用して分析される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記生物学的分析方法が、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記生物製剤が抗体である、請求項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が抗FcRn抗体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記抗FcRn抗体が、ロザノリキシズマブ(UCB7665)、ニポカリマブ(M281)、オリラノリマブ(ALXN1830/SYNT001)、またはバトクリマブ(IMVT-1401/RVT1401/HBM9161)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記生物製剤が、対応する野生型Fc領域と比較してpH5.5でより高い親和性でFcRnに結合する、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片を含むか、またはそれからなる、請求項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記生物製剤が、抗体Fc領域に結合するFcRnと拮抗する、請求項30~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記生物製剤がエフガルチギモドである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記RD
ivが10mg/kgである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記RD
ivが25mg/kgである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記治療有効量の前記生物製剤が、ヒアルロニダーゼ酵素と同時投与される、請求項30~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記治療有効量の前記生物製剤が、ヒアルロニダーゼ酵素の前または後に投与される、請求項30~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、配列番号5~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒアルロニダーゼ酵素がrHuPH20である、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項52】
ヒアルロニダーゼ酵素の量が、1000U/ml~3000U/ml、好ましくは、2000U/mLである、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片であって、前記Fc領域のFcドメインが、ヒト患者における重症筋無力症の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、
-前記バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片が、前記患者の体重とは無関係に、950~1050mgの週用量として皮下投与され、
-ベースラインIgGレベルと比較して少なくとも60%の、前記患者における総血清IgG低減が得られる、前記バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項54】
前記週用量が約1000mgである、請求項53に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項55】
バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片であって、前記Fc領域のFcドメインが、ヒト患者における尋常性天疱瘡の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、
-前記バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片が、前記患者の体重とは無関係に、1950~2050mgの週用量として皮下投与され、
-ベースラインIgGレベルと比較して少なくとも60%の、前記患者における総血清IgG低減が得られる、前記バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項56】
前記週用量が約2000mgである、請求項55に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項57】
前記治療が、少なくとも4回の週用量を含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項58】
前記バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片が、ヒアルロニダーゼ酵素と共に投与される、請求項53~57のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項59】
前記バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片が、ヒアルロニダーゼ酵素の前または後に投与される、請求項58に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項60】
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、配列番号5~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項58または請求項59に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項61】
前記ヒアルロニダーゼ酵素がrHuPH20である、請求項58~60のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項62】
総血清IgG低減の前記割合が、第一の投与から1ヶ月以内に達成される、請求項53~61のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項63】
総血清IgG低減の前記最大割合が、前記第一の投与から1ヶ月以内に達成される、請求項53~61のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項64】
前記総IgGレベルが、2500~3500μg/mLまで低減される、請求項53~61のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項65】
前記患者における前記総血清IgGが、生物学的分析方法、好ましくは、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)を使用して分析される、請求項53~64のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項66】
IgGのサブタイプの少なくとも一つが、低減される、請求項53~65のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片。
【請求項67】
前記バリアントFc領域がエフガルチギモドである、請求項53~66のいずれか一項に記載の使用のための、バリアントFc領域。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月2日に出願された米国仮特許出願第63/203,856号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
抗体および抗体断片を含む生物製剤は、広範囲の疾患を治療するために使用される。静脈内(IV)投与は、多くの生物製剤を投与する主要な方法である。しかしながら、IV投与の要件のため、患者のコンプライアンスに問題がある。さらに、生物製剤で治療される多くの疾患および障害の慢性的な性質のため、多くの患者は、生命のための治療を必要とし、これは、患者のコンプライアンスを改善する必要性を強調する。生物製剤の皮下(SC)投与は、IV投与の代替である。IV注入と比較して、生物製剤のSC投与にはいくつかの利点がある。例えば、SC投与は、全身反応の発生率を低減し、感染のリスクを低減し、時にはIVアクセスを困難にせず、患者により便利である。
【0003】
以前は、生物製剤のSC投与、特に、高分子量を有する生物製剤のSC投与は、IV投与と比較して、バイオアベイラビリティの低下につながり、これは、生物製剤のSC投与に共通すると考えられていた。概して、ヒト対象における生物製剤のバイオアベイラビリティは、単回SC用量および単回IV用量に従い決定される。次いで、このデータをモデルで使用してSC投与を計算し、これは安全かつ有効なIV投与の薬物動態(PK)パラメータに合致させることを目的とする。具体的には、目標は、IV用量と比較して、SC用量に対して同様の臨床応答を達成することである。しかしながら、このアプローチは、SC投与のための高い投与量をもたらし得、患者に投与することができないか、または患者における有害事象の増加をもたらし得る。
【0004】
したがって、当該技術分野では、生物製剤の安全かつ効果的なSC用量を決定する改善された方法に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
SC用量の薬力学(PD)値を既知の参照IV用量の薬力学(PD)値と一致させる一方で、SC用量の薬物動態(PK)値がIV用量の薬物動態(PK)値よりも小さい、モデリングアプローチに基づいて決定される生物製剤の単位剤形が、本明細書で提供される。本明細書に提供される単位剤形は、参照IV用量と比較して同等の安全性および有効性を示し、したがって、IV用量に対して非劣性であり、これにより、患者に生物製剤の投与のより簡便な代替方法をもたらす。
【0006】
SC用量を決定する以前に公知の方法は、SC用量および参照IV用量のPK値に合致することを目的とするモデルに基づいており、これは、本明細書で使用される方法と比較して、より高い投与量の生物製剤を有する単位剤形をもたらす。したがって、本明細書に開示される単位剤形は、より少ない投与量の生物製剤を含み、これは、患者における有害事象を減少させる可能性があり、IV注入によって一般的に投与される生物製剤の代替としての皮下投与を可能にする可能性がある。
【0007】
したがって、生物製剤の皮下投与のための単位剤形が本明細書において提供され、当該生物製剤は、静脈内投与時に対象においてPKivおよびPDivをもたらし、単位剤形は、皮下投与 時に対象においてPKscおよびPDscをもたらす、生物製剤のRDscを含み、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、0.9~1.1である。
【0008】
生物製剤の皮下投与のための単位剤形が本明細書において提供され、生物製剤は、静脈内投与時に対象においてPKivおよびBLivをもたらし、単位剤形は、皮下投与時に対象においてPKscおよびBLscをもたらす、生物製剤のRDscを含み、PKsc/PKiv比は、約0.8未満であり、BLsc/BLiv比は、約0.9~約1.1である。
【0009】
また、生物製剤の皮下投与のための単位剤形も本明細書において提供され、単位剤形中の生物製剤の皮下用量の量は、(a)皮下用量の生物製剤を対象に投与する工程、生物製剤は、PKivおよびBLivをもたらす、RDivを有する、(b)BLscを決定する工程、(c)生物製剤のPKscを決定する工程、ならびに(d)BLsc/BLiv比約0.9~約1.1およびPKsc/PKiv比約0.8未満をもたらす、皮下用量を決定する工程を含む方法によって決定された。
【0010】
一実施形態では、BLscおよびBLivは、対象における総血清IgGのレベルである。一実施形態では、対象における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、生物学的分析方法は、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)である。
【0011】
一実施形態では、対象は、健康なボランティアまたは非ヒト動物である。
【0012】
一実施形態では、PDivおよびPDsc値は、AUCである。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.8、約0.7、約0.6、または約0.5である。
【0013】
一実施形態では、PDivおよびPDsc値は、総血清IgG低減である。一実施形態では、PDsc/PDiv比は、0.9~1.1である。一実施形態では、PDsc/PDiv比は、0.9、1.0、または1.1である。
【0014】
一実施形態では、生物製剤は、抗体、抗体断片、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、酵素、融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤からなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、生物製剤は、抗体、例えば、抗FcRn抗体である。一実施形態では、抗体は、ロザノリキシズマブ(UCB7665)、ニポカリマブ(M281)、オリラノリマブ(ALXN1830/SYNT001)、またはバトクリマブ(IMVT-1401/RVT1401/HBM9161)である。
【0016】
一実施形態では、生物製剤は、対応する野生型Fc領域と比較して、pH5.5でより高い親和性でFcRnに結合する、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片を含むか、またはそれらからなる。
【0017】
一実施形態では、生物製剤は、抗体Fc領域へのFcRn結合と拮抗する。
【0018】
一実施形態では、生物製剤は、エフガルチギモドである。
【0019】
一実施形態では、RDivは、10mg/kg~25mg/kgであり、RDscは、約1000mg~約2000mgである。一実施形態では、RDivは、10mg/kgであり、RDscは、約1000mgである。一実施形態では、RDivは、25mg/kgであり、RDscは、約2000mgである。
【0020】
一実施形態では、単位剤形は、ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、配列番号5~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、rHuPH20である。
【0021】
一実施形態では、単位剤形は、ヒアルロニダーゼ酵素と同時投与される。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、rHuPH20である。
【0022】
一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、約1000U/ml~約3000U/mlである。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、約1000U/mL、約1500U/mL、約2000U/mL、約2500U/mL、または約3000U/mLである。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、2000U/mLである。
【0023】
一実施形態では、単位剤形は、自己免疫疾患の治療に使用するためのものである。一実施形態では、自己免疫疾患は、同種膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、免疫性血小板減少症(ITPまたは特発性血小板減少性紫斑病または特発性血小板減少性紫斑病または免疫介在性血小板減少症)、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡(BP)、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアック・スプルース皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、拡張型心筋症、円板状ループス、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー(neuropathy)、特発性肺線維症、IgA神経障害、IgM多発神経障害、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、硬化性苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症(MG)、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、皮膚筋炎(DM)、壊死性自己免疫性ミオパチー(NAM)、抗シンテターゼ症候群(ASyS)、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、疱疹状皮膚炎型血管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。
【0024】
また、皮下投与のための生物製剤の治療有効用量を決定する方法も本明細書において提供され、方法は、(a)皮下用量の生物製剤を対象に投与すること、生物製剤は、PKivおよびBLivをもたらす、RDivを有する、(b)生物製剤のBLscを決定すること、(c)生物製剤のPKscを決定すること、ならびに(d)BLsc/BLiv比約0.9~約1.1およびPKsc/PKiv比約0.8未満をもたらす皮下用量を決定し、それにより皮下投与のための生物製剤の治療有効用量を決定することを含む。
【0025】
一実施形態では、対象は、健康なボランティアまたは非ヒト動物である。
【0026】
また、皮下用量の生物製剤を用いて対象を治療する方法も本明細書において提供され、皮下用量の生物製剤、(a)皮下用量の生物製剤を対象に投与する工程、生物製剤は、PKivおよびBLivをもたらす、RDivを有する、(b)生物製剤のBLscを決定する工程、(c)生物製剤のPKscを決定する工程、ならびに(d)BLsc/BLiv比約0.9~約1.1およびPKsc/PKiv比約0.8未満をもたらす、皮下用量を決定する工程を含む方法によって決定された。
【0027】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満である。一実施形態では、PKivおよびPKsc値は、AUCである。
【0028】
一実施形態では、生物製剤は、抗体、抗体断片、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、酵素、融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤からなる群から選択される。
【0029】
一実施形態では、BLscおよびBLivは、対象における総血清IgGのレベルである。一実施形態では、対象における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、生物学的分析方法は、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)である。
【0030】
一実施形態では、生物製剤は、抗体である。一実施形態では、抗体は、抗FcRn抗体である。一実施形態では、抗FcRn抗体は、ロザノリキシズマブ(UCB7665)、ニポカリマブ(M281)、オリラノリマブ(ALXN1830/SYNT001)、またはバトクリマブ(IMVT-1401 /RVT1401/HBM9161)である。
【0031】
一実施形態では、生物製剤は、対応する野生型Fc領域と比較して、pH5.5でより高い親和性でFcRnに結合する、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片を含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、生物製剤は、抗体Fc領域へのFcRn結合と拮抗する。一実施形態では、生物製剤は、エフガルチギモドである。
【0032】
一実施形態では、RDivは、10mg/kgである。一実施形態では、RDivは、25mg/kgである。
【0033】
一実施形態では、治療有効量の生物製剤は、ヒアルロニダーゼ酵素と同時投与される。一実施形態では、治療有効量の生物製剤は、ヒアルロニダーゼ酵素の前または後に投与される。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、配列番号5~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、rHuPH20である。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、1000U/ml~3000U/ml、好ましくは、2000U/mLである。
【0034】
また、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の単位剤形も本明細書に提供され、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における自己免疫疾患の治療において使用するため、それぞれ、EU位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含む。
【0035】
また、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片も本明細書に提供され、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における重症筋無力症の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含む。
【0036】
一態様では、本開示は、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片を提供し、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における重症筋無力症の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、患者の体重とは無関係に、950~1050mgの週用量で皮下投与され、ベースラインIgGレベルと比較して少なくとも60%の、患者における総血清IgG低減が得られる。
【0037】
一実施形態では、週用量は、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、または約1050mgである。一実施形態では、週用量は、約1000mgである。
【0038】
また、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片も本明細書に提供され、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における尋常性天疱瘡の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含む。
【0039】
一態様では、本開示は、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片を提供し、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における尋常性天疱瘡の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、患者の体重とは無関係に、1950~2050mgの週用量で皮下投与され、ベースラインIgGレベルと比較して少なくとも60%の、患者における総血清IgG低減が得られる。
【0040】
一実施形態では、週用量は、約1950mg、約1975mg、約2000mg、約2025mg、または約2050mgである。一実施形態では、週用量は、約2000mgである。
【0041】
一実施形態では、治療は、少なくとも2回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも3回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも4回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも5回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも6回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも7回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも8回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、8回より多くの週用量を含む。
【0042】
一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、ヒアルロニダーゼ酵素と投与される。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、配列番号5~96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、rHuPH20である。
【0043】
一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約60%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%、約70%、約75%、または約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。
【0044】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から31、30、29、28、27、26、または25日以内に達成される。
【0045】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から31、30、29、28、27、26、または25日以内に達成される。
【0046】
一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~3000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、3000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2500~3500μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2750~3250μg/mLに低減される。
【0047】
一実施形態では、患者における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。
【0048】
一実施形態では、IgGサブタイプのうちの少なくとも一つが低減される。一実施形態では、IgG1が、低減される。一実施形態では、IgG2が、低減される。一実施形態では、IgG3が、低減される。一実施形態では、IgG4が、低減される。
【0049】
一実施形態では、バリアントFc領域は、エフガルチギモドである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1A~1Bは、rHuPH20を伴うか、または伴わない、エフガルチギモドのIVおよびSC投与後(
図1A)ならびにrHuPH20を伴う、エフガルチギモドのSC同時投与後(
図1B)の、背景データからの患者における血清エフガルチギモドレベルを示すグラフである。
【0051】
【
図2】
図2A~2Cは、rHuPH20を伴わない、10mg/kgのSC投与、およびrHuPH20を伴わない、10mg/kgのIV投与後の背景データと比較して、rHuPH20と同時投与された、750mg(
図2A)、1250mg(
図2B)、および1750mg(
図2C)の単回SC投与後のIgG低減を示すグラフである。
【0052】
【
図3】
図3は、実施例1に記載される研究における、エフガルチギモド濃度の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0053】
【
図4】
図4は、従前の研究における、対数スケールのエフガルチギモド濃度の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0054】
【
図5】
図5は、rHuPH20を伴わない(青色の線)およびrHuPH20を伴う(赤色の線)、10mg/kg SCのエフガルチギモドの比較を示すグラフである。青色の点は、rHuPH20を伴わない、10mg/kg SCエフガルチギモドを投与されている健康なボランティアからの観察であり、赤色の点は、rHuPH20と組み合わせて10mg/kg SCエフガルチギモドを投与されている健康なボランティアからの観察であり、青色の線は、rHuPH20を伴わない、エフガルチギモド濃度の集団予測であり、赤色の線は、rHuPH20を伴わない、エフガルチギモド濃度の集団予測である。
【0055】
【
図6】
図6は、パラメータが従前の研究のデータを使用して最適化されたPK/PDモデルを用いて得られた、実施例1に記載される研究における総IgG濃度の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0056】
【
図7】
図7は、パラメータが従前の研究のデータで最適化されたPK/PDモデルを用いて得られた、実施例1に記載される研究における総IgG低減の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0057】
【
図8】
図8は、効果区画を説明しているPK/PDモデルを用いて得られた、実施例1に記載される研究における総IgG濃度の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0058】
【
図9】
図9は、効果区画を説明しているPK/PDモデルを用いて得られた、実施例1に記載される研究における総IgG低減の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0059】
【
図10】
図10は、効果区画を説明しているPK/PDモデルを用いて得られた、背景データにおける総IgG濃度の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0060】
【
図11】
図11は、効果区画を説明しているPK/PDモデルを用いて得られた、背景データにおける総IgG低減の視覚的予測チェックを示すグラフである。灰色の点は、観察されたデータであり、青色の実線は、観察された中央値であり、赤色の破線は、観察の10パーセンタイルおよび90パーセンタイルであり、灰色の面積は、80%の予測区間である。
【0061】
【
図12】
図12は、総IgG低減シミュレーションから決定された22日目~29日目の効果曲線下面積(AUEC)を示すグラフである。実線および破線の水平線は、10mg/kg IV QW用量のエフガルチギモドで得られた22日目~29日目のAUECの中央値および90%CIである。点およびバーは、SC QW用量のエフガルチギモドで得られた、22日目~29日目のAUECの中央値および90%CIである。
【0062】
【
図13】
図13は、22日目~29日目のシミュレーションされた最大総IgG低減を示すグラフである。実線および破線の水平線は、10mg/kg IV QW用量のエフガルチギモドで得られた最大総IgG低減の中央値および90%CIである。点およびバーは、SC QW用量のエフガルチギモドで得られた、総IgG低減の中央値および90%CIである。
【0063】
【
図14】
図14は、29日目のシミュレーションされた最大総IgGを示すグラフである。実線および破線の水平線は、10mg/kg IV週用量のエフガルチギモドで得られた最大総IgG低減の中央値および90%CIである。点およびバーは、SC週用量のエフガルチギモドで得られた、総IgG低減の中央値および90%CIである。
【0064】
【
図15】
図15は、毎週の10mg/kg IVエフガルチギモドで得られたAUEC
22-29の中央値よりも大きい、シミュレーションされたAUEC
22-29(750mg~1750mg(25mgの増加を伴う)の範囲の異なるエフガルチギモドPH20 SC週用量で得られた)の割合を示すグラフである。
【0065】
【
図16】
図16は、毎週の10mg/kg IVエフガルチギモドで得られた22日目~29日目の最大総IgG低減の中央値より小さい、22日目~29日目のシミュレーションされた最大総IgG低減(IgGt追加)(750mg~1750mg(25mgの増加を伴う)の範囲の異なるエフガルチギモドPH20 SC週用量で得られた)の割合を示すグラフである。垂直の破線は、975mg、水平の破線は、毎週の975mg エフガルチギモドPH20 SCで得られた割合である。
【0066】
【
図17】
図17は、毎週の10mg/kg IVエフガルチギモドで得られた29日目の総IgG低減の中央値より小さい、29日目のシミュレーションされた総IgG低減(IgGt追加)(トラフ)(750mg~1750mg(25mgの増加を伴う)の範囲の異なるエフガルチギモドPH20 SC週用量で得られた)の割合を示すグラフである。
【0067】
【
図18】
図18は、毎週の1000mgエフガルチギモドPH20 SCおよび毎週の10mg/kgエフガルチギモドIVで得られた異なる時間間隔でのシミュレーションされたAUECを示すグラフである。点およびバーは、AUECの中央値ならびに5および95パーセンタイルである。
【0068】
【
図19】
図19は、毎週の1000mgエフガルチギモドPH20 SCおよび毎週の10mg/kgエフガルチギモドIVで得られた異なる時間間隔でのシミュレーションされた最大総IgG低減を示すグラフである。点およびバーは、最大総IgG低減の中央値ならびに5パーセンタイルおよび95パーセンタイルである。
【0069】
【
図20】
図20は、毎週の1000mgエフガルチギモドPH20 SCおよび毎週の10mg/kgエフガルチギモドIVで得られた、8、15、22、および29日目の投与前の、シミュレーションされた総IgG低減を示すグラフである。点およびバーは、総IgG低減の中央値ならびに5パーセンタイルおよび95パーセンタイルである。
【0070】
【
図21】
図21は、1000mgエフガルチギモドPH20 SC QWおよび10mg/kg IVのエフガルチギモドQW後の総IgG低減のシミュレーションされた特性を示すグラフである。実線および面積は、総IgG低減の中央値、5および95パーセンタイルであり、垂直の破線は、22日目~29日目である。
【0071】
【
図22】
図22は、rHuPH20と共製剤化されたエフガルチギモドの皮下投与のための臨床試験プロトコールの概略図である。
【0072】
【
図23】
図23は、1000mgエフガルチギモド-PH20 SCまたは10mg/kgエフガルチギモドIVの4回の毎週の投与中および投与後の経時的な総IgGレベル(μg/mL)の平均(SE)を示すグラフである。
【0073】
【
図24】
図24は、1000mgエフガルチギモド-PH20 SCまたは10mg/kgエフガルチギモドIVの4回の毎週の投与中および投与後の経時的な総IgGにおけるベースラインからの平均(SE)パーセント変化を示すグラフである。
【0074】
【
図25】
図25は、1000mgエフガルチギモド-PH20 SCおよび10mg/kgエフガルチギモドIVの4回の毎週の投与の間の総IgGにおけるベースラインからの変化の差についての、平均差および95%の両側信頼区間を示すグラフである。
【0075】
【
図26】
図26は、1000mgエフガルチギモド-PH20 SCまたは10mg/kgエフガルチギモドIV(22日目)の四回目の毎週の投与後の平均(SD)エフガルチギモド血清濃度-時間特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
詳細な説明
本開示は、SC用量の薬力学(PD)値を既知の参照IV用量の薬力学(PD)値と一致させる一方で、SC用量の薬物動態(PK)値がIV用量の薬物動態(PK)値よりも小さい、モデリングアプローチに基づいて決定される生物製剤の単位剤形を提供する。本明細書に提供される単位剤形は、参照IV用量と比較して同等の安全性および有効性を示し、したがって、IV用量に対して非劣性であり、これにより、患者に生物製剤の投与のより簡便な代替方法をもたらす。
【0077】
したがって、生物製剤の皮下投与のための単位剤形が本明細書において提供され、当該生物製剤は、静脈内投与時に対象においてPKivおよびPDivをもたらし、単位剤形は、皮下投与 時に対象においてPKscおよびPDscをもたらす、生物製剤のRDscを含み、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、0.9~1.1である。
【0078】
定義
本明細書で使用される場合、単位剤形という用語は、有効成分および不活性な成分(賦形剤)の特定の混合物を有し、特定の用量に配分された、使用のために市販されている形態の医薬品である。本明細書に提供される単位剤形は、ヒトおよび/または動物対象のための単位投薬量として適当な物理的に別個の単位を指し得、各単位は、必要な医薬希釈剤、担体、またはビヒクルに関連して所望される治療効果を生み出すように計算された所定量の活性な材料(例えば、約500mg~約2500mgのエフガルチギモドまたは約500mg~約2500mgのエフガルチギモドおよび約1000U/ml~約3000U/ml rHuPH20)を含有する。適当な単位剤形の非限定的な例は、バイアル、錠剤、カプセル剤、トローチ、座薬、粉末分包、ウエーハ、カシェ、アンプル、プレフィルドシリンジ、前述のいずれかの分離された複数個、および本明細書に記載されるか、または当該技術分野で一般的に知られている他の形態である。
【0079】
本明細書で使用される場合、「生物製剤」という用語は、生きている生物から産生されるか、または生きている生物の構成成分、例えば、抗体もしくは抗体断片または組換えタンパク質を含有する産物を指す。一実施形態では、生物製剤は、エフガルチギモドである。
【0080】
本明細書で使用される場合、「参照用量」という用語は、PKならびに/またはPD(PKivおよびPDiv)が参照値として使用される生物製剤の任意の静脈内用量を指す。一実施形態では、参照用量は、臨床試験(複数可)中に決定される、承認された薬物用量、特定の決定された薬物用量、または最適な薬物用量であってもよい。一実施形態では、生物製剤の参照用量は、患者への投与についての規制当局(米国食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)など)による承認された用量であり得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、「RDiv」という用語は、概して一回の単回投与における、患者への静脈内投与のための生物製剤の用量を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「RDsc」という用語は、概して一回の単回投与における、患者への皮下投与のための生物製剤の用量を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「PKiv」という用語は、静脈内投与された薬物の実験的に決定された薬物動態値を指す。この値は、(ヒト)体内の薬物の吸収、分布、代謝、および排出を説明するために使用される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「PKsc」という用語は、皮下投与された薬物の薬物動態値を指す。この値は、(ヒト)体内の薬物の吸収、分布、代謝、および排出を説明するために使用される。一実施形態では、PKscは、薬物動態モデリング(予測モデリング方法)に基づいて決定することができる。一実施形態では、PKscは、実験的または経験的に(例えば、経験に基づいて)決定することができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「PDiv」という用語は、静脈内投与された薬物の実験的に決定された薬力学値を指す。一実施形態では、この値は、(ヒト)身体に対する薬物の生化学的、生理的、および分子的効果(臨床効果)を説明するために使用され、受容体結合(受容体感受性を含む)、受容体後効果、および化学的相互作用を含む。
【0086】
本明細書で使用される場合、「PDsc」という用語は、皮下投与された薬物の薬力学値を指す。一実施形態では、この値は、(ヒト)身体に対する薬物の生化学的、生理的、および分子的効果(臨床効果)を説明するために使用され、受容体結合(受容体感受性を含む)、受容体後効果、および化学的相互作用を含む。一実施形態では、PDscは、薬力学モデリング(予測モデリング方法)に基づいて決定することができる。一実施形態では、PDscは、実験的または経験的に(例えば、経験に基づいて)決定することができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「BLiv」という用語は、対象におけるバイオマーカーのベースラインレベルと比較した、対象への生物製剤の静脈内投与後のバイオマーカー(例えば、IgG)のレベルを指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「BLsc」という用語は、対象におけるバイオマーカーのベースラインレベルと比較した、対象への生物製剤の皮下投与後のバイオマーカー(例えば、IgG)のレベルを指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「Cmax」という用語は、生物製剤の最大血清濃度を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「AUC」という用語は、血清濃度対時間曲線下面積を指す。AUCは、投与後の生物製剤の除去速度および除去の程度に基づく。
【0091】
本明細書で使用される際に、用語「Fcドメイン」とは、ヒンジ領域で始まり、抗体のC末端で終わる単一の免疫グロブリン重鎖の部分を指す。したがって、完全なFcドメインは、ヒンジ(例えば、上部、中央部、および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインのうち少なくとも一部を含む。
【0092】
本明細書で使用される際に、用語「Fc領域」とは、その二つの重鎖のFcドメインによって形成される天然の免疫グロブリンの部分を指す。天然のFc領域は、ホモ二量体である。
【0093】
本明細書で使用される際に、用語「バリアントFc領域」とは、天然のFc領域と比較して一つまたは複数の変更(複数可)を有するFc領域を指す。変更には、アミノ酸置換、付加、および/または欠失、追加部分の結合、および/または天然グリカンの変更が含まれ得る。この用語はヘテロ二量体Fc領域を包含し、ここでは、構成する各Fcドメインが異なる。この用語はまた、構成するFcドメインが、リンカー部分によって一緒に連結される一本鎖Fc領域を包含する。
【0094】
本明細書で使用される際に、用語「FcRn結合断片」とは、FcRn結合を付与するのに十分なFc領域の一部分を指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、「ヒアルロニダーゼ酵素」という用語は、体内のヒアルロン酸の分解を触媒する酵素を指し、これは、液体または薬物(例えば、皮下投与される生物製剤)に対する組織の浸透性を増加させ得る。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、ヒアルロナン(HA)を分解する組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)である。
【0096】
本明細書で使用される場合、「IgG低減」という用語は、例えば、患者の血清中の(疾患を引き起こす)免疫グロブリンG(IgG)抗体の低下を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ベースラインIgGレベル」という用語は、生物製剤の第一の投与(例えば、静脈内または皮下投与)前の、患者、例えば、患者の血液中のIgGレベルを指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「生物学的分析方法」という用語は、薬物動態評価を支持する分子(例えば、タンパク質、IgGなどの抗体、および治療剤)の定量のため、例えば、血清試料における総IgGを測定するために使用される生物分析アッセイを指す。一実施形態では、生物学的分析方法は、ELISAである。一実施形態では、生物学的分析方法は、自動診断分析器(IVD)である。
【0099】
本明細書で使用される場合、投薬量などの測定可能な値を指す場合、「約」または「およそ」という用語は、本明細書に開示される方法を実施するのに適切であるため、所与の値または範囲の±20%または±10%、±5%、±1%、または±0.1%の変動を包含する。
【0100】
皮下単位剤形組成物および方法
本開示は、対象への皮下投与のための生物製剤の単位剤形を提供する。これらの単位剤形は、有効量の生物製剤を含み、有効量は、SC用量の薬力学(PD)値を既知の参照IV用量の薬力学(PD)値と一致させる一方で、SC用量の薬物動態(PK)値がIV用量の薬物動態(PK)値よりも小さい、モデリングアプローチに基づいて決定される。本明細書に提供される単位剤形は、参照IV用量と比較して同等の安全性および有効性を示し、したがって、IV用量に対して非劣性であり、これにより、患者に生物製剤の投与のより簡便な代替方法をもたらす。
【0101】
SC用量を決定する以前に公知の方法は、SC用量および参照IV用量のPK値に合致することを目的とするモデルに基づいており、これは、本明細書で使用される方法と比較して、より高い投与量の生物製剤を有する単位剤形をもたらす。したがって、本明細書に開示される単位剤形は、より少ない投与量の生物製剤を含み、これは、患者における有害事象を減少させる可能性があり、IV注入によって一般的に投与される生物製剤の代替としての皮下投与を可能にする可能性がある。
【0102】
したがって、生物製剤の皮下投与のための単位剤形が本明細書において提供され、当該生物製剤は、静脈内投与時に対象においてPKivおよびPDivをもたらし、単位剤形は、皮下投与時に対象においてPKscおよびPDscをもたらす、生物製剤のRDscを含み、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、0.9~1.1である。
【0103】
生物製剤の皮下投与のための単位剤形が本明細書において提供され、生物製剤は、静脈内投与時に対象においてPKivおよびBLivをもたらし、単位剤形は、皮下投与時に対象においてPKscおよびBLscをもたらす、生物製剤のRDscを含み、PKsc/PKiv比は、約0.8未満であり、BLsc/BLiv比は、約0.9~約1.1である。
【0104】
また、生物製剤の皮下投与のための単位剤形も本明細書において提供され、単位剤形中の生物製剤の皮下用量の量は、(a)皮下用量の生物製剤を対象に投与する工程、生物製剤は、PKivおよびBLivをもたらす、RDivを有する、(b)BLscを決定する工程、(c)生物製剤のPKscを決定する工程、ならびに(d)BLsc/BLiv比約0.9~約1.1およびPKsc/PKiv比約0.8未満をもたらす、皮下用量を決定する工程を含む方法によって決定された。
【0105】
また、皮下投与のための生物製剤の治療有効用量を決定する方法も本明細書において提供され、方法は、(a)皮下用量の生物製剤を対象に投与すること、生物製剤は、PKivおよびBLivをもたらす、RDivを有する、(b)生物製剤のBLscを決定すること、(c)生物製剤のPKscを決定すること、ならびに(d)BLsc/BLiv比約0.9~約1.1およびPKsc/PKiv比約0.8未満をもたらす皮下用量を決定し、それにより皮下投与のための生物製剤の治療有効用量を決定することを含む。
【0106】
一実施形態では、対象は、健康なボランティアまたは非ヒト動物である。
【0107】
また、皮下用量の生物製剤を用いて対象を治療する方法も本明細書において提供され、皮下用量の生物製剤、(a)皮下用量の生物製剤を対象に投与する工程、生物製剤は、PKivおよびBLivをもたらす、RDivを有する、(b)生物製剤のBLscを決定する工程、(c)生物製剤のPKscを決定する工程、ならびに(d)BLsc/BLiv比約0.9~約1.1およびPKsc/PKiv比約0.8未満をもたらす、皮下用量を決定する工程を含む方法によって決定された。
【0108】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満である。一実施形態では、PKivおよびPKsc値は、AUCである。
【0109】
一実施形態では、BLscおよびBLivは、対象の総血清IgGのレベルである。一実施形態では、対象における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、生物学的分析方法は、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)である。
【0110】
一実施形態では、生物製剤は、抗体分子である。一実施形態では、抗体分子は、FcRnに結合する。一実施形態では、抗体分子は、FcRnへの最適化された結合のため操作されたFcドメインを含む。一実施形態では、抗体分子は、FcRnを遮断する。
【0111】
一実施形態では、生物製剤は、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片である。一実施形態では、生物製剤は、エフガルチギモドである。
【0112】
一実施形態では、生物製剤は、抗体、抗体断片、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、酵素、融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤からなる群から選択される。
【0113】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.8、約0.7、約0.6、約0.5、約0.47、または約0.4である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.8である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.7である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.6である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.5である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.4である。
【0114】
一実施形態では、PDsc/PDiv比は、0.9~1.1である。一実施形態では、PDsc/PDiv比は、0.9、1.0、または1.1である。一実施形態では、PDsc/PDiv比は、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、または約0.99である。一実施形態では、PDsc/PDiv比は、約1.0、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、または約1.09である。一実施形態では、PDsc/PDiv比は、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、または約1.19である。
【0115】
一実施形態では、BLsc/BLiv比は、0.9~1.1である。一実施形態では、BLsc/BLiv比は、0.9、1.0、または1.1である。一実施形態では、BLsc/BLiv比は、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、または約0.99である。一実施形態では、BLsc/BLiv比は、約1.0、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、または約1.09である。一実施形態では、BLsc/BLiv比は、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、または約1.19である。
【0116】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.7であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.6であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.5であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.4であり、PDsc/PDiv比は、約0.9である。
【0117】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.7であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.6であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.5であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.4であり、PDsc/PDiv比は、約1.0である。
【0118】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.7であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.6であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.5であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、約0.4であり、PDsc/PDiv比は、約1.1である。
【0119】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、または約0.99である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.0、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、または約1.09である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.8未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、または約1.19である。
【0120】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満であり、PDsc/PDiv比は、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、または約0.99である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.0、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、または約1.09である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.7未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、または約1.19である。
【0121】
一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満であり、PDsc/PDiv比は、約0.9、約0.91、約0.92、約0.93、約0.94、約0.95、約0.96、約0.97、約0.98、または約0.99である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.0、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、または約1.09である。一実施形態では、PKsc/PKiv比は、0.6未満であり、PDsc/PDiv比は、約1.1、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、または約1.19である。
【0122】
一実施形態では、RDivは、10mg/kg~25mg/kgであり、RDscは、約1000mg~約2000mgである。一実施形態では、RDivは、10mg/kgであり、RDscは、約1000mgである。一実施形態では、RDivは、25mg/kgであり、RDscは、約2000mgである。一実施形態では、RDivは、10mg/kgであり、RDscは、約2000mgである。一実施形態では、RDivは、25mg/kgであり、RDscは、約1000mgである。一実施形態では、RDivは、約10mg/kg~約15mg/kgであり、RDscは、約1000mg~約1500mgである。一実施形態では、RDivは、20mg/kg~約25mg/kgであり、RDscは、約1500mg~約2000mgである。
【0123】
一実施形態では、PKivおよびPKsc値は、AUCである。一実施形態では、PDivおよびPDsc値は、対象における総血清IgG低減である。
【0124】
一実施形態では、単位剤形は、ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、rHuPH20である。
【0125】
一実施形態では、単位剤形は、ヒアルロニダーゼ酵素と同時投与される。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素は、rHuPH20である。
【0126】
一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、約1000U/ml~約3000U/mlである。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、約1000U/mL、約1500U/mL、約2000U/mL、約2500U/mL、または約3000U/mLである。一実施形態では、ヒアルロニダーゼ酵素の量は、2000U/mLである。
【0127】
一実施形態では、単位剤形は、約1000U/ml~約3000U/mlのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1000U/mL、約1500U/mL、約2000U/mL、約2500U/mL、または約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、1000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、1500U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、2500U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、3000U/mLのrHuPH20を含む。
【0128】
一実施形態では、生物製剤は、抗体分子である。一実施形態では、抗体分子は、FcRnへの最適化された結合のため操作されたFcドメインを含む。一実施形態では、抗体分子は、FcRnを遮断する。一実施形態では、生物製剤は、エフガルチギモドである。
【0129】
一実施形態では、単位剤形は、約500mg~約2500mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約500mg~約1000mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1000mg~約1500mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1500mg~約2000mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1500mg~約2000mgのエフガルチギモドを含む。
【0130】
一実施形態では、単位剤形は、約500mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約750mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1000mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1250mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1500mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約1750mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約2000mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約2250mgのエフガルチギモドを含む。一実施形態では、単位剤形は、約2500mgのエフガルチギモドを含む。
【0131】
一実施形態では、単位剤形は、約500mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約750mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1000mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1250mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1500mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1750mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約2000mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約2250mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約2500mgのエフガルチギモドおよび約2000U/mLのrHuPH20を含む。
【0132】
一実施形態では、単位剤形は、約500mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約750mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1000mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1250mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1500mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約1750mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約2000mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約2250mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。一実施形態では、単位剤形は、約2500mgのエフガルチギモドおよび約1000U/mL~約3000U/mLのrHuPH20を含む。
【0133】
一実施形態では、単位剤形は、凍結乾燥粉末、凍結乾燥粉末、または無水濃縮物などの溶解のための乾燥製剤として抗体分子を含む。一実施形態では、乾燥製剤は、バイアル、アンプル剤、またはサシェなどの密封された容器内に含まれる。
【0134】
一実施形態では、単位剤形は、液体製剤、例えば、注射溶液または注入溶液として抗体分子を含む。一実施形態では、液体製剤は、バイアル、サシェ、プレフィルドシリンジ、プレフィルドオートインジェクター、または再使用可能なシリンジもしくはアプリケータ用のカートリッジなどの密封された容器内に含まれる。
【0135】
一実施形態では、バイアル当たりの単位用量は、0.5ml、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、15ml、または20mlの、約500~約2500mgまたは約1000mg~約2000mgの範囲の抗体分子を含有してもよい。一実施形態では、これらの調製物は、無菌の希釈剤を各バイアルに添加することによって、所望の濃度に調整することができる。
【0136】
本明細書に開示される製剤は、単位剤形の調製に使用され得る医薬組成物(例えば、対象または患者への投与に適当な組成物)の製造に有用なバルク薬物組成物を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、医薬組成物である。かかる組成物は、予防有効量または治療有効量の一つまたは複数の予防剤あるいは治療剤(例えば、本発明の抗体分子または他の予防剤もしくは治療剤)、および薬学的に許容し得る担体を含む。一実施形態では、医薬組成物は、対象への皮下投与に適当であるように製剤される。
【0137】
可溶性ヒアルロニダーゼ
本明細書の共製剤、単位剤形、および方法において、可溶性ヒアルロニダーゼが提供される。可溶性ヒアルロニダーゼは、細胞からの発現および分泌の際に、可溶性形態で存在するものを含む。このような可溶性ヒアルロニダーゼとしては、非ヒト可溶性ヒアルロニダーゼ、細菌可溶性ヒアルロニダーゼ、ウシPH20、ヒツジPH20、およびそのバリアントが挙げられるが、これらに限定されない。可溶性ヒアルロニダーゼには、可溶性であるように改変されたヒトPH20ポリペプチドが含まれる。例えば、グリコホファチジルイノシトアル(GPI)アンカーを含有するヒトPH20などのヒアルロニダーゼは、GPIアンカーのすべてまたは一部の切断および除去によって可溶性にすることができる。一実施形態では、通常、GPIアンカーを介して固定された膜であるヒトヒアルロニダーゼPH20は、C末端でGPIアンカーのすべてまたは一部の切断および除去によって可溶性になる。
【0138】
可溶性ヒアルロニダーゼはまた、可溶性ヒトPH20ポリペプチドなどの中性活性ヒアルロニダーゼを含む。一実施形態では、本明細書の組成物、単位剤形、および方法で使用するためのヒアルロニダーゼは、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼである。
【0139】
例示的なヒアルロニダーゼは、配列番号5~40のいずれかのPH20の可溶性形態、ならびに配列番号5および18~23に記載される可溶性PH20ポリペプチドなどの、任意の種由来のPH20の可溶性形態を含む。こうした可溶性形態は、ヒアルロニダーゼが可溶性(発現時に分泌される)であり、ヒアルロニダーゼ活性を保持する限り、C末端のGPIアンカーのすべてまたは一部を欠くその切断形態を含む。このような形態はまた、典型的には、細胞で発現されたときにシグナルペプチドを欠く成熟形態である。また、可溶性ヒアルロニダーゼには、ヒアルロニダーゼ活性を示す配列番号5~40に記載される任意の種由来のPH20のいずれかのバリアントの可溶性形態が含まれる。バリアントは、配列番号5~40のいずれかと少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む。アミノ酸バリアントは、保存的変異および非保存的変異を含む。上記のいずれか、または当業者に公知のいずれかなどの、ヒアルロニダーゼの活性に重要であるか、またはそうでなければ必要とされる残基は、概して、バリアントにあり、変更することができないことが理解される。これらは、例えば、活性部位残基を含む。したがって、例えば、ヒトPH20ポリペプチド、またはその可溶性形態のアミノ酸残基111、113および176(配列番号5に記載される成熟PH20ポリペプチド中の残基に対応する)は、概して、バリアントにあり、改変されない。適切なフォールディングに必要なジスルフィド結合のグリコシル化および形成を付与する他の残基も、不変であり得る。
【0140】
一実施形態では、可溶性ヒアルロニダーゼは、通常、GPIアンカー(例えば、ヒトPH20など)であり、C末端での切断によって可溶性になる。こうした切断は、GPIアンカー付着シグナル配列の全てを除去することができるか、またはGPIアンカー付着シグナル配列の一部のみを除去することができる。しかしながら、生じるポリペプチドは、可溶性である。可溶性ヒアルロニダーゼが、GPIアンカー付着シグナル配列の一部を保持する場合、ポリペプチドが可溶性であることを条件として、GPIアンカー付着シグナル配列中の1、2、3、4、5、6、7個以上のアミノ酸残基を保持することができる。GPIアンカーの一つまたは複数のアミノ酸を含有するポリペプチドは、伸長された可溶性ヒアルロニダーゼと呼ばれる。当業者であれば、ポリペプチドが、当該技術分野で周知の方法を使用してGPI固定されているかどうかを決定することができる。こうした方法には、公知のアルゴリズムを使用して、GPIアンカー付着シグナル配列およびω部位の存在および位置を予測すること、ならびにホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC)またはD(PI-PLD)での消化の前および後に溶解度分析を行うことが含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
生じるポリペプチドが、可溶性であり、GPIアンカー付着シグナル配列由来の一つまたは複数のアミノ酸残基を含有するように、配列番号42~47に記載されるものなどの伸長された可溶性ヒアルロニダーゼは、任意の天然GPI固定ヒアルロニダーゼにC末端切断を行うことによって産生することができる(例えば、米国特許第8,927,249号を参照)。これらは、中性活性であり、可溶性であり、アミノ酸置換を含有し、配列番号42~47のいずれかと少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%以上の配列同一性を有するヒアルロニダーゼを含む。
【0142】
典型的には、本明細書の組成物、組み合わせ、および方法において使用するため、配列番号5および18~23のいずれかのPH20ポリペプチド、ならびに例えば、少なくとも98%の配列同一性を有するバリアントなどの可溶性ヒトPH20などの可溶性ヒトヒアルロニダーゼが使用される。本明細書の方法で使用されるヒアルロニダーゼは、組換え的に生成することができるか、または例えば、精巣抽出物などの天然供給源から精製もしくは部分的に精製することができる。組換えヒアルロニダーゼを含む組換えタンパク質の産生方法は、当該技術分野で周知である。
【0143】
(a)可溶性ヒトPH20
例示的な可溶性ヒアルロニダーゼは、可溶性ヒトPH20である。組換えヒトPH20の可溶性形態が生成されており、本明細書に記載される組成物、組み合わせ、および方法で使用することができる。PH20のかかる可溶性形態の説明および生成は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,767,429号、第8,202,517号、第8,431,380号、第8,431,124号、第8,450,470号、第8,765,685号、第8,772,246号、第7,871,607号、第7,846,431号、第7,829,081号、第8,105,586号、第8,187,855号、第8,257,699号、第8,580,252号、第9,677,061号、および第9,677,062号に記載される。
【0144】
ヒトPH20の組換え可溶性形態が生成されており、本明細書に提供される組成物、組み合わせ、および方法で使用することができる。例えば、全長前駆PH20の配列を記載し、シグナル配列(残基1~35)を含む、配列番号4を参照して、可溶性形態としては、配列番号4に記載されるアミノ酸の配列のC末端のアミノ酸残基467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499もしくは500を有する配列番号4に記載されるヒトPH20のC末端切断ポリペプチド、またはそれと少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示し、中性pHで活性を有し、可溶性である(哺乳類細胞中で発現されたとき、培地中に分泌される)ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。ヒトPH20の可溶性形態は、概して、配列番号4に記載されるアミノ酸36~464を含有するものを含む。例えば、哺乳類細胞で発現されるとき、35個のアミノ酸のN末端シグナル配列が処理中に切断され、タンパク質の成熟形態が分泌される。したがって、成熟可溶性ポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸36~467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482および483を含有するものを含む。一実施形態では、可溶性ヒアルロニダーゼは、配列番号5および18~23のいずれかに記載されるものなど、442、443、444、445、446または447アミノ酸長である可溶性ヒトPH20ポリペプチド、ならびに配列番号5および18~23のいずれかに記載されるアミノ酸の配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、ヒアルロニダーゼ活性を保持するそのバリアントである。組換えヒトPH20のかかる可溶性形態の生成は、例えば、米国特許第7,767,429号、第8,202,517号、第8,431,380号、第8,431,124号、第8,450,470号、第8,765,685号、第8,772,246号、第7,871,607号、第7,846,431号、第7,829,081号、第8,105,586号、第8,187,855号、第8,257,699号、第8,580,252号、第9,677,061号、および第9,677,062号に記載される。
【0145】
一般的に、PH20の可溶性形態は、ポリペプチドが活性を保持することを確実にするために正しいN-グリコシル化を促進するタンパク質発現系を使用して産生されるが、これは、グリコシル化が、ヒアルロニダーゼの触媒活性および安定性にとって重要であるためである。そのような細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、DG44 CHO細胞)が挙げられる。
【0146】
(b)rHuPH20
rHuPH20は、天然または異種シグナル配列(配列番号4の残基1~35)に一般的に連結された、配列番号4の残基36~482をコードする核酸のCHO細胞などの細胞における発現の時に産生される組成物を指す。rHuPH20は、アミノ酸1~482(配列番号4に記載される)をコードする核酸分子などの、核酸分子の発現によって産生される。翻訳後プロセシングは、35個のアミノ酸シグナル配列を除去し、配列番号5および18~23に記載されるものを含むポリペプチドまたはポリペプチドの混合物を残す。培養培地中で産生されるとき、rHuPH20と呼ばれる産物が、様々な存在量で配列番号5および18~23のうちのいずれか一つまたは複数を含み得る種の混合物を含むように、C末端に不均一性がある。典型的には、rHuPH20は、CHO細胞(例えば、DG44 CHO細胞)などの、活性を保持するための正しいN-グリコシル化を促進する細胞で産生される。一般的に、最も豊富な種は、配列番号4の残基36~481に対応する446個のアミノ酸のポリペプチドである。
【0147】
(c)ヒアルロニダーゼのグリコシル化
可溶性PH20ヒアルロニダーゼを含む一部のヒアルロニダーゼのN結合型グリコシル化およびO結合型グリコシル化を含むグリコシル化は、それらの触媒活性および安定性に重要であり得る。一部のヒアルロニダーゼについては、N結合型グリコシル化の除去は、ヒアルロニダーゼ活性のほぼ完全な不活性化をもたらし得る。したがって、このようなヒアルロニダーゼについては、N結合型グリカンの存在が、活性酵素の生成に重要であり得る。
【0148】
N結合型オリゴ糖は、いくつかの主要なタイプ(オリゴマンノース、複合体、ハイブリッド、硫酸化)に分類され、その全ては、-Asn-Xaa-Thr/Ser-配列(XaaはProではない)内に含まれるAsn残基のアミド窒素を介して結合された(Man)3-GlcNAc-GlcNAc-コアを有する。-Asn-Xaa-Cys部位でのグリコシル化は、凝固タンパク質Cについて報告されている。一部の例では、PH20ヒアルロニダーゼなどのヒアルロニダーゼは、N-グリコシド結合およびO-グリコシド結合を含み得る。例えば、PH20は、O結合型オリゴ糖ならびにN結合型オリゴ糖を有する。配列番号1に例示されるヒトPH20のN82、N166、N235、N254、N368、N393には、六つの可能性のあるN結合型グリコシル化部位が存在する。
【0149】
(d)バリアント
安定性および/または活性の増加などの変更された特性を有する可溶性PH20ポリペプチドのバリアントが産生されている。参照により組み込まれる米国特許第9,447,401号および第10,865,400号、ならびに付与された出願第16/824,572号は、PH20の触媒ドメイン内の各残基におけるアミノ酸置換の効果を詳述する、ヒトPH20の構造/機能マップを説明し、提供する。これらの特許は、活性および安定性に対する、各アミノ酸を15個の他のアミノ酸で置換する効果が特定され、記載された約7000種の例を提供する。アミノ酸置換、欠失、および挿入を有するものを含む可溶性PH20ポリペプチドのほとんどのバリアントは、当該技術分野で公知である。当業者は、可溶性ヒアルロニダーゼおよびそのバリアントを容易に調製し、得られたヒアルロニダーゼの特性を知ることができる。
【0150】
当業者に公知の他のバリアントは、参照により組み込まれ、改変されたPH20ポリペプチドを記載する、国際PCT出願WO2020/022791号およびWO2020197230A号に記載される。配列番号5~40のPH20ポリペプチドのバリアントである、これらのポリペプチドは、一つまたは複数のアミノ酸残基S343E、M345T、K349E、L353A、L354I、N356E、およびI361Tを含む、置換、挿入、および欠失を含む。こうした改変および他の改変を含有するバリアントは、国際PCT出願WO2020/022791号の配列番号41~96に記載される。
【0151】
生物製剤
SC用量の薬力学(PD)値を既知の参照IV用量の薬力学(PD)値と一致させる一方で、SC用量の薬物動態(PK)値がIV用量の薬物動態(PK)値よりも小さい、モデリングアプローチに基づいて決定される生物製剤の単位剤形が、本明細書で提供される。本明細書に提供される単位剤形は、参照IV用量と比較して同等の安全性および有効性を示し、したがって、IV用量に対して非劣性であり、これにより、患者に生物製剤の投与のより簡便な代替方法をもたらす。
【0152】
本明細書に提供される単位剤形において有用である生物製剤の非限定的な例としては、抗体、抗体断片、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、酵素、融合タンパク質、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤が挙げられる。本明細書に提供される単位剤形において有用である生物製剤のさらなる非限定的な例としては、例えば、IgGレベルを使用して、FcRnアンタゴニストの皮下投与を決定することができる、生物製剤の適切な皮下投与を決定するために使用することができるバイオマーカー存在する、任意の生物製剤が挙げられる。一実施形態では、バイオマーカーは、健康なボランティアまたは試験動物における分析を使用して、生物製剤の皮下投与を決定することができるように、健康な対象および/または試験動物に存在する。
【0153】
一実施形態では、生物製剤は、抗体Fc領域へのFcRn結合と拮抗する。一実施形態では、生物製剤は、抗体、例えば、抗FcRn抗体である。任意の抗FcRn抗体は、本明細書に開示される単位剤形における使用に適している。一実施形態では、抗体は、ロザノリキシズマブ(UCB7665)、ニポカリマブ(M281)、オリラノリマブ(ALXN1830/SYNT001)、またはバトクリマブ(IMVT-1401/RVT1401/HBM9161)である。
【0154】
一実施形態では、生物製剤は、対応する野生型Fc領域と比較して、pH5.5でより高い親和性でFcRnに結合する、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片を含むか、またはそれらからなる。
【0155】
一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、二つのFcドメインからなる。一実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列からなる。一実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列からなる。一実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号3のアミノ酸配列からなる。
【0156】
一実施形態では、単離されたFcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、バリアントFc領域は、ホモダイマーを形成する二つのFcドメインからなリ、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号1からなる。
【0157】
一実施形態では、単離されたFcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、バリアントFc領域は、ホモダイマーを形成する二つのFcドメインからなリ、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号2からなる。
【0158】
一実施形態では、単離されたFcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、バリアントFc領域は、ホモダイマーを形成する二つのFcドメインからなリ、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号3からなる。
【0159】
一実施形態では、生物製剤は、エフガルチギモド(CAS登録番号1821402-21-4)である。
【表1】
【0160】
使用方法
一態様では、本開示は、本明細書に開示される生物製剤の単位剤形を、それを必要とする対象に皮下投与することを含む、疾患または障害を治療する方法を提供する。
【0161】
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるバリアントFc領域の単位剤形、またはそのFcRn結合断片を、それを必要とする対象に皮下投与することを含む、抗体介在性自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【0162】
一実施形態では、自己免疫疾患は、同種膵島移植片拒絶反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、アルツハイマー病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、免疫性血小板減少症(ITPまたは特発性血小板減少性紫斑病または特発性血小板減少性紫斑病または免疫介在性血小板減少症)、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡(BP)、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアック・スプルース皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、拡張型心筋症、円板状ループス、後天性表皮水疱症、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性膜性ニューロパチー、特発性肺線維症、IgA神経障害、IgM多発神経障害、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、硬化性苔癬、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、粘膜類天疱瘡、多発性硬化症、1型糖尿病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、重症筋無力症(MG)、傍腫瘍性水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、皮膚筋炎(DM)、壊死性自己免疫性ミオパチー(NAM)、抗シンテターゼ症候群(ASyS)、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、再発性多発軟骨炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植拒絶反応、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、疱疹状皮膚炎型血管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。
【0163】
一実施形態では、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片は、週一回投与される。一実施形態では、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片は、二週間に一回投与される。一実施形態では、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片は、10~14日間に一回投与される。一実施形態では、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片は、三週間に一回投与される。一実施形態では、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片は、四週間に一回投与される。
【0164】
一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の用量は、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、または約1050mgである。一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の用量は、約950mgである。一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の用量は、約975mgである。一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の用量は、約1000mgである。一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の用量は、約1025mgである。一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の用量は、約1050mgである。
【0165】
一実施形態では、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片は、週一回投与される。一実施形態では、週用量は、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、または約1050mgである。一実施形態では、週用量は、約950mgである。一実施形態では、週用量は、約975mgである。一実施形態では、週用量は、約1000mgである。一実施形態では、週用量は、約1025mgである。一実施形態では、週用量は、約1050mgである。
【0166】
一実施形態では、治療は、少なくとも2回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも3回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも4回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも5回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも6回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも7回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも8回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、8回より多くの週用量を含む。
【0167】
一実施形態では、用量は、注射である。一実施形態では、用量は、単位剤形である。
【0168】
一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼと共に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、rHuPH20である。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、同じ製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、別々の製剤中に含有される。
【0169】
一実施形態では、エフガルチギモドは、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼと共に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、rHuPH20である。一実施形態では、 組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、同じ製剤中に含有される。一実施形態では、 組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、別々の製剤中に含有される。
【0170】
一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約60%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%、約70%、約75%、または約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約70%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約75%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。
【0171】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から3週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から4週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から5週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から31、30、29、28、27、26、または25日以内に達成される。
【0172】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から2週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から3週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から4週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から5週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から31、30、29、28、27、26、または25日以内に達成される。
【0173】
一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~3000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、3000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2500~3500μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2750~3250μg/mLに低減される。
【0174】
一実施形態では、患者における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAを使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。
【0175】
一実施形態では、IgGサブタイプのうちの少なくとも一つが低減される。一実施形態では、IgG1が、低減される。一実施形態では、IgG2が、低減される。一実施形態では、IgG3が、低減される。一実施形態では、IgG4が、低減される。
【0176】
一実施形態では、バリアントFc領域は、エフガルチギモドである。
【0177】
一態様では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片も本明細書に提供され、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における重症筋無力症の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含む。
【0178】
一態様では、本開示は、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片を提供し、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における重症筋無力症の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、患者の体重とは無関係に、950~1050mgの週用量で皮下投与され、ベースラインIgGレベルと比較して少なくとも60%の、患者における総血清IgG低減が得られる。
【0179】
一実施形態では、週用量は、約950mg、約975mg、約1000mg、約1025mg、または約1050mgである。一実施形態では、週用量は、約950mgである。一実施形態では、週用量は、約975mgである。一実施形態では、週用量は、約1000mgである。一実施形態では、週用量は、約1025mgである。一実施形態では、週用量は、約1050mgである。
【0180】
一実施形態では、治療は、少なくとも2回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも3回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも4回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも5回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも6回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも7回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも8回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、8回より多くの週用量を含む。
【0181】
一実施形態では、用量は、注射である。一実施形態では、用量は、単位剤形である。
【0182】
一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼと共に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、rHuPH20である。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、同じ製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、別々の製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、同時投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、順次投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の前に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片の後に投与される。
【0183】
一実施形態では、エフガルチギモドは、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼと共に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、rHuPH20である。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、同じ製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、別々の製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、同時投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、順次投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、エフガルチギモドの前に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、エフガルチギモドの後に投与される。
【0184】
一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約60%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%、約70%、約75%、または約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約70%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約75%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。
【0185】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から3週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から4週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から5週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から31、30、29、28、27、26、または25日以内に達成される。
【0186】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から2週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から3週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から4週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から5週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から31、30、29、28、27、26、または25日以内に達成される。
【0187】
一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~3000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、3000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2500~3500μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2750~3250μg/mLに低減される。
【0188】
一実施形態では、患者における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAを使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。
【0189】
一実施形態では、IgGサブタイプのうちの少なくとも一つが低減される。一実施形態では、IgG1が、低減される。一実施形態では、IgG2が、低減される。一実施形態では、IgG3が、低減される。一実施形態では、IgG4が、低減される。
【0190】
一実施形態では、バリアントFc領域は、エフガルチギモドである。
【0191】
また、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片も本明細書に提供され、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における尋常性天疱瘡の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含む。
【0192】
一態様では、本開示は、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片を提供し、Fc領域のFcドメインは、ヒト患者における尋常性天疱瘡の治療において使用するため、それぞれ、EU Kabat位置252、254、256、433、434、および436にアミノ酸Y、T、E、K、F、およびYを含み、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、患者の体重とは無関係に、1950~2050mgの週用量で皮下投与され、ベースラインIgGレベルと比較して少なくとも60%の、患者における総血清IgG低減が得られる。
【0193】
一実施形態では、週用量は、約1950mg、約1975mg、約2000mg、約2025mg、または約2050mgである。一実施形態では、週用量は、約1950mgである。一実施形態では、週用量は、約1975mgである。一実施形態では、週用量は、約2000mgである。一実施形態では、週用量は、約2025mgである。一実施形態では、週用量は、約2050mgである。
【0194】
一実施形態では、治療は、少なくとも2回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも3回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも4回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも5回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも6回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも7回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、少なくとも8回の週用量を含む。一実施形態では、治療は、8回より多くの週用量を含む。
【0195】
一実施形態では、用量は、単位剤形である。
【0196】
一実施形態では、バリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼと共に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、rHuPH20である。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、同じ製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびバリアントFc領域、またはそのFcRn結合断片は、別々の製剤中に含有される。
【0197】
一実施形態では、エフガルチギモドは、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼと共に投与される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼは、rHuPH20である。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、同じ製剤中に含有される。一実施形態では、組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼおよびエフガルチギモドは、別々の製剤中に含有される。
【0198】
一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約60%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%、約70%、約75%、または約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約65%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約70%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約75%の患者における総血清IgG低減が得られる。一実施形態では、ベースラインIgGレベルと比較して約80%の患者における総血清IgG低減が得られる。
【0199】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から2週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から3週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から4週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から5週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の割合は、第一の投与から6週間以内に達成される。
【0200】
一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から1ヶ月以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大の割合は、第一の投与から2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から2週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から3週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から4週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から5週間以内に達成される。一実施形態では、患者における総血清IgG低減の最大割合は、第一の投与から6週間以内に達成される。
【0201】
一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2000~3000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、3000~4000μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2500~3500μg/mLに低減される。一実施形態では、患者における総血清IgGレベルは、2750~3250μg/mLに低減される。
【0202】
一実施形態では、患者における総血清IgGは、生物学的分析方法を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAまたは自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、ELISAを使用して分析される。一実施形態では、患者における総血清IgGは、自動診断分析器(IVD)を使用して分析される。
【0203】
一実施形態では、IgGサブタイプのうちの少なくとも一つが低減される。一実施形態では、IgG1が、低減される。一実施形態では、IgG2が、低減される。一実施形態では、IgG3が、低減される。一実施形態では、IgG4が、低減される。
【0204】
一実施形態では、バリアントFc領域は、エフガルチギモドである。
【実施例】
【0205】
以下の実施例は、例示の目的で提供されており、限定の目的で提供されていない。
【0206】
実施例1:エフガルチギモド+rHuPH20の皮下用量のPK/PDと安全性を比較する試験
エフガルチギモド(UNII:961YV2O515)は、ヒトFcRnにナノモル親和性で結合するzaアロタイプ(バリアントFc領域)のヒトlgG1由来Fc断片である。無作為化、非盲検、臨床試験を行い、エフガルチギモドの皮下(SC)用量の安全性および薬物動態(PK)/薬力学(PD)パラメータを評価した。
【0207】
組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)を含むSC製剤を、IV注入の代替として、エフガルチギモドのSC投与のために開発した。酵素rHuPH20は、SC空間内のヒアルロナン(HA)を局所的に分解し、これは、同時投与する療法の分散および吸収の増加を可能にする。エフガルチギモドおよびrHuPH20(エフガルチギモド-PH20)を含むすぐに使える液体SC製剤を、固定用量として注射した。この製剤および投与方法は、IV製剤および投与と比較して、患者の利便性を増加させることが予想される。
【0208】
50~100kgの範囲の体重を有する18~70歳の健康なボランティアを、21日間スクリーニングし、次いで、以下のように四つの処置群(各群についてn=8)に無作為化した。
a.処置A:2000U/mLヒアルロニダーゼ酵素rHuPH20と同時投与する750mgエフガルチギモドの単回SC投与;
b.処置B:2000U/mL rHuPH20と同時投与する1250mgエフガルチギモドの単回SC投与;
c.処置C:2000U/mL rHuPH20と同時投与する1750mgエフガルチギモドの単回SC投与;および
d.処置D:2000U/mL rHuPH20と同時投与する10mg/kgエフガルチギモドの単回SC投与。
【0209】
薬物動態パラメータの分析
いくつかの薬物動態パラメータの中間分析を、PK集団(エフガルチギモドのため入手可能な少なくとも一つの血漿濃度値を有する、無作為化した患者)に基づいて行った。各試料採取時点でのエフガルチギモドの血漿濃度を、以下の要約統計量によって分析した:未変換データを使用して計算した加算平均、未変換データを使用して計算した標準偏差(SD)、最小値、中央値、最大値、観察の数、および定量下限より大きい観察の数(LLOQ)。
【0210】
プロトコール時間に対する幾何平均血漿濃度を、それぞれ、線形スケールと対数スケールの両方で患者によって示した。
【0211】
以下の要約統計量を、tmaxを除くすべてのPKパラメータ:Gmean、GCV、未変換データを使用して計算した加算平均、未変換データを使用して計算したSD、最小値、中央値、最大値、および観察の数について評価した。
【0212】
以下の要約統計量を、PKパラメータtmax:観察の数、中央値、最小値、および最大値について評価した。
【0213】
薬力学パラメータの分析
総IgGの分析を含む連続的PDパラメータを、幾何平均を含む記述統計量で要約した。
【0214】
結果
PKパラメータおよびPDパラメータを評価するために、投与の22日後に中間分析を行った。治療群A~Dの患者における単回SC投与後のエフガルチギモドの血清レベルを、10mg/kgのIVまたはSCエフガルチギモド(rHuPH20を伴わない)の投与からの背景データと比較した(
図1Aおよび
図1B)。PKデータは、rHuPH20の添加が、rHuPH20を伴わないSC投与と比較して、SC投与後のエフガルチギモドのバイオアベイラビリティの増加をもたらしたことを示す(表2を参照)。
【表2】
【0215】
中間分析のPD結果も、背景データと比較した。750mg SCエフガルチギモド後の総IgG低減は、10mg/kg IV投与に劣り(
図2A)一方、1250mg SCエフガルチギモド後の最大IgG低減は、10mg/kg IV投与と同等であった(
図2B)。1750mgのSCエフガルチギモド後の総IgG低減の開始と総IgG低減の長期効果の両方は、10mg/kgのIV投与と同等であった(
図2C)。処置群A~Dでは、有意な有害事象を観察しなかった。
【0216】
この単回投与試験は、rHuPH20と同時投与した、エフガルチギモドのSC投与の安全性を示し、SC投与が、健康なボランティアにおけるIV投与と同等である総IgG低減をもたらし得ることを示した。
【0217】
実施例2:薬物動態(PK)データおよび薬力学(PD)データからのエフガルチギモドの皮下用量の計算
生物製剤の安全かつ有効なSC用量を決定するために、PK/PDモデリングを使用して、既知のIV用量をベンチマークとして使用して、生物製剤の単回SC投与のデータに基づき、生物製剤のIVおよびSC用量の総IgG(PDパラメータ)の低減と一致させた。
【0218】
以前に決定したPK/PDモデルを使用して、ヒアルロニダーゼ酵素rHuPH20を伴うエフガルチギモド、および伴わないエフガルチギモドの異なる皮下用量後の総IgG低減のシミュレーションを構築した。エフガルチギモドの単回皮下用量で処置したヒト対象から得た予備的PK/PDデータ(上記の実施例1に記載した試験)を使用して、PK/PDモデルを使用して、rHuPH20を伴う、または伴わない、CmaxおよびAUC、ならびに投与群にわたるIgG低減の中央値傾向を記載した。
【0219】
体重の共変数分析は、PKまたはIgGに対する体重の統計的に有意な効果がないことを示し、固定用量が皮下投与に可能であることを示唆する。
【0220】
健康なボランティアにおけるエフガルチギモドについての従前のPKモデル
従前は、集団PK分析を行い、健康なボランティアにおけるエフガルチギモドの研究において、エフガルチギモドの効果を評価した。これは、健康な男性および妊娠の可能性のない健康な女性ボランティアにおける、エフガルチギモドの安全性、忍容性、PK、PD、および免疫原性を評価するための、第I相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回および複数回漸増IV投与試験であった。要約すると、PKモデルは、0.2、2、10、25、および50mg/kgの単回漸増用量、ならびに複数回漸増用量の後に、エフガルチギモドの濃度-時間特性を適切に捕捉した。複数回用量のエフガルチギモドまたはプラセボを、6回(10mg/kg単独)で4日毎(q4d)または4回(10および25mg/kg)で7日毎(q7d)に投与した。最終的なPKモデルは、線形クリアランスを有する三区画モデルからなり、第二の周辺体積(V3)が、第一の周辺体積(V2)と等しいという仮定を含んでいた。クリアランス(CL)、分布の中央体積(V1)、区画間クリアランス(Q)、および周辺区画の体積(V2=V3)について、個体間変動(IIV)を特定した。さらに、IIVの共分散を、CL、V1、およびV2=V3のモデルに実装した。対数変換したデータの標準である、付加的残余誤差モデルを使用した。
【0221】
このモデルを拡張して、別のエフガルチギモド試験における健康なボランティアにおける、エフガルチギモドのPKを記載した。これは、健康な男性対象においてSC製剤のPK、PD、安全性、および忍容性をエフガルチギモドの静脈内(IV)製剤と比較するための無作為化、非盲検、並行群試験であった。本試験では、対象を、処置A(10mg/kg IVの単回投与)もしくはB(10mg/kg SCの単回投与)または処置C(20mg/kgの二回のIV投与、続いて300mgの8回の毎週のSC投与)のいずれかに割り当てた。本試験の化合物のPKを説明するために、ゼロ次吸収を既存のPKモデルに加え、ゼロ次プロセス(DUR)の期間ならびに絶対バイオアベイラビリティ(F)を推定した。最終モデルは、CL上のIIV、V2=V3、V1, Q2、およびFを含んでいた。モデル安定性を増加させるために、CL上のIIVとV2=V3との間の共分散のみを推定した。
【0222】
rHuPH20と同時投与したエフガルチギモドの最新モデリングアプローチおよび仮定
分析の焦点は、750mg、1250mg、1750mg、または10mg/kgのエフガルチギモド+rHuPH20のいずれかの単回SC注射で処置した32名の対象からのデータのモデリングであった(実施例1に記載した研究)。rHuPH20を伴わないIV投与およびSC投与に関するデータについては、従前の試験からの処置A(10mg/kgの単回IV投与)およびB(10mg/kgの単回SC投与)からのPKおよびIgG背景データを分析に含めた。
【0223】
まず、健康なボランティアのための既存のPKモデルからのパラメータを使用して、実施例1に記載した研究における健康なボランティアデータを予測した。モデルは、特に、吸収期において、rHuPH20と同時投与したエフガルチギモドのPKを十分に予測しなかった。したがって、吸収関連パラメータ(すなわち、ゼロ次吸収プロセスの絶対バイオアベイラビリティおよび持続時間)を、残留誤差と共に、実施例1に記載した研究について推定した。このようにして、新しい試験でのエフガルチギモドのPKの説明が改善した。しかしながら、吸収相はまだ、適切に記述していなかった。rHuPH20と同時投与した場合の化合物の吸収の説明を改善するために、実施例1に記載した研究について一次吸収速度定数kAも推定し(すなわち、表3の0.24 1/時間)、一方、従前のPKモデルでは、パラメータkAを、ゼロ次吸収に類似するように99に固定した。このようにして、逐次的なゼロ第一次吸収モデルを識別することができ、これは、エフガルチギモド+rHuPH20のPKの説明を改善した。さらに、ゼロ次プロセスの期間を、背景データ(すなわち、表3に報告するように、83.7時間対131時間)と比較して、実施例1に記載した研究ではより短いと推定した。
【0224】
最後の工程として、すべてのPKパラメータを、実施例1に記載した背景データおよび試験からのデータにおいて最適化した。パラメータ推定値は、相対的バイオアベイラビリティおよびゼロ次プロセスの期間が、背景データと比較して、実施例1に記載した研究において、それぞれ、より高いおよび低いことを見出したことを示した(表3を参照)。さらに、Q2での個体間変動(IIV)およびクリアランス(CL)でのIIVと第一の周辺体積(V2)でのIIVとの間の相関を、正確に推定しなかった(すなわち、RSE%>50%)ため、除去した。モデル安定性を改善するために、kA上の個体間変動を除去し、ゼロ次吸収の期間について推定した。視覚的予測チェックに示すように、PKモデルは、実施例1(
図3を参照)および背景データ(
図4を参照)に記載した研究におけるエフガルチギモド濃度の典型的な特性ならびに処置群間の個体間変動を適切に捕捉した。PKパラメータに対する体重の効果を調べたが、統計的に有意ではないことが分かった。
【表3】
【0225】
rHuPH20の同時投与を伴うエフガルチギモドと伴わないエフガルチギモドの10mg/kg SCの比較は、観察したt
maxが、予測t
maxよりも小さいように思われるため、実施例1に記載した研究について吸収モデルをまだ改善し得ることを示唆した(
図5)。平行なゼロ次ゼロ次吸収(ラグタイムあり、およびなし)ならびに平行ゼロ一次吸収(ラグタイムあり、およびなし)など、実施例1に記載した研究における、エフガルチギモドのPKの説明を改善するために、異なる吸収モデルを調べた。しかしながら、これらの調べたモデルのいずれも、連続的なゼロ一次吸収を有する現在のモデルよりも良好ではないことを見出した。したがって、PKパラメータと用量との間の潜在的な依存性を調べた。実施例1に記載した研究において、バイオアベイラビリティは用量と共に増加したように見えた。それにもかかわらず、相対的バイオアベイラビリティに用量関数を含めることは、集団および個々のPK特性の説明を有意に改善しなかった。
【0226】
結論として、エフガルチギモド+rHuPH20の集団PKモデルを、PK/PD分析に適切であるとみなした。
【0227】
PK/総IgGモデル
PK/総IgGモデルは、エフガルチギモドの濃度が、総IgGの分解速度(kout)を刺激した、間接的な応答モデルからなっていた。このモデルは、FcRn受容体に結合し、総IgGのリサイクルを低減し、総IgGの分解の増加を引き起こす、エフガルチギモドについての作用機序を反映する。エフガルチギモドの総IgG低減効果が、飽和可能であることが見出されたため、Emaxモデルを使用して、PK/PD関係を定量した(従前の研究の合わせた分析からの推定値に固定したEmaxパラメータを用いて)。総IgG濃度の減少の遅延の正確な説明を可能にするために、効果区画をモデルに含めた。対数-正規分布を想定して、エフガルチギモドのベースライン総IgGレベルおよび有効性(EC50)についての個体間変動(IIV)を特定し、残余変動を、比例誤差モデルにより記載した。
【0228】
特に、従前のエフガルチギモド研究についての従前の合わせた分析から導いたモデルパラメータを使用して、実施例1に記載した研究における総IgG濃度を予測した。そのために、実施例1に記載した研究における総IgGのベースラインは、従前の研究のうちの一つにおけるベースラインと同じ(すなわち、8570mg/L)であると仮定した。全体として、モデルは、750mg、1750mg、および10mg/kgの投与群を合理的に良好に予測することができた。しかしながら、1250mg処置群を、適切に予測しなかった。実施例1に記載した研究における総IgGのベースラインを推定することによって、モデルは、投与群にわたって総IgGの説明を改善した(パラメータ推定値を表4に報告する)。しかしながら、1250mg群の総IgG濃度を依然として過小予測した。さらなる工程として、E
maxを除くすべてのパラメータを、従前の研究および実施例1に記載した研究からの総IgGデータに対して最適化した。実施例1に記載した研究の他の治療群に関して、1250mg SC群におけるベースラインの個体間変動は、より低いように思われた。視覚的予測チェックは、モデルが、1250mg SC処置群における個体間変動を過剰予測したことを示した(
図6)。さらに、このモデルは、750mgおよび1750mgのSC投与群における総IgG低減の中央値を過小予測した(
図7)。
【0229】
モデル構造に効果区画を含めることにより、実施例1に記載した背景データと研究の両方におけるSC投与群の総IgG濃度のより良好な捕捉が可能となった。この新しいモデル構造では、EC50は、効果区画の濃度(すなわち、表4の33636ng/mL対20900ng/mL)を表すため、EC50は、より高いと推定した。視覚的予測チェックは、モデルが、実施例1に記載した研究における、経時的な典型的な総IgG濃度(
図8)と低減(
図9)の両方ならびに個体間変動を捕捉したことを確認した。さらに、効果区画を含めることは、背景データ中の総IgG濃度(
図10)および低減(
図11)の合理的な説明を提供した。したがって、このモデルは、将来の試験において予測した総IgG低減を探索するのに適当であるとみなす。
【0230】
体重の効果を、ベースラインの総IgGパラメータおよびEC50パラメータに対して調べたが、統計的に有意ではないことがわかった。結論として、エフガルチギモド+rHuPH20の集団PK/総IgGモデルは、典型的なPKおよびIgG低減ならびに将来の試験において用量を評価するためのその不確実性をシミュレーションするのに適切であるとみなした。
【表4】
【0231】
モデリング結論
従前の研究におけるエフガルチギモド濃度を記載するために従前に開発された利用可能な集団PKモデルを、実施例1に記載した研究における化合物+rHuPH20のPKを適切に捕捉することができるよう改良した。より詳細には、エフガルチギモド+rHuPH20のSC処置群が、逐次的ゼロ一次プロセスの実施を必要としたため、吸収モデルを改変した。さらに、rHuPH20を伴うエフガルチギモドの投与は、背景データ中の10mg/kg SC群と比較して、より高い相対的バイオアベイラビリティをもたらした(rHuPH20を伴う、および伴わないについて、それぞれ、0.764対0.560)。
【0232】
健康な集団における総IgGを説明するために従前に開発された最終PK/総IgGモデルは、間接的な応答モデルからなり、このモデルでは、エフガルチギモドの濃度が、目的のバイオマーカーの分解速度を刺激した。このモデルを、実施例1に記載した研究においてエフガルチギモド+rHuPH20で処置した健康なボランティアにおける総IgG濃度および低減を適切に捕捉するための効果区画の包含によって精緻化した。PKまたはPDパラメータのいずれかに対する体重の効果は、統計的に有意ではないことが分かった。
【0233】
シミュレーション方法および仮定
R(バージョン3.4.4、The R foundation for Statistical Computing)およびRStudio(バージョン1.1.463、RStudio Inc、ボストン、米国)をカスタム構築シミュレーションパッケージと組み合わせて使用して、シミュレーションを行った。
【0234】
実施例1に記載した試験からの健康なボランティアにおけるエフガルチギモドおよび総IgG濃度を説明するために開発したPKおよびPK/総IgGモデルを使用して、シミュレーションを行った。表5および表6にそれぞれ報告した典型的なPKパラメータおよび総IgGパラメータの推定値に基づいて、エフガルチギモド濃度および総IgG時間特性をシミュレーションした。これらのシミュレーションのベンチマークを表した、12週間のシナリオの間、毎週10mg/kg IVエフガルチギモド(QW)に加えて、12週間の750mg~1750mg(25mgの増加で)QWの範囲のエフガルチギモドPH20 SCに基づく異なるシナリオをシミュレーションした。各シナリオについて、パラメータの不確実性を含む500のシミュレーションを行った。10mg/kg IV QWのベンチマーク用量については、一時間の注入および70kgの体重を想定した。各シナリオについて、以下の三つの指標の中央値、5パーセンタイル、および95パーセンタイルを、エフガルチギモド投与後のシミュレーションした総IgG濃度-時間特性に基づいて計算した。
(a)22日目~29日目の四回目の投与後の総IgG濃度についての効果曲線下面積(AUEC
D22-D29)、
(b)22日目~29日目の四回目の投与後の最大総IgG低減、および
(c)29日目の総IgGのトラフ低減(すなわち、29日目の投与前の総IgGの低減を生じた)。
【表5】
【表6】
【0235】
シミュレーション結果
10mg/kg IVのエフガルチギモドQWを用いて得た測定基準の中央値ならびに5パーセンタイルおよび95パーセンタイルは、(a)AUECD22-D29:949gh/L(863gh/L;1030gh/L)、(b)22日目~29日目の四回目の投与後の最大総IgG低減:-66.59%(-68.96%;-64.38%)、および(c)29日目の総IgGのトラフ低減:-65.75%(-68.43%;-63.42%)であった。
【0236】
22日目~29日目のAUEC
D22-D29、最大総IgG低減、および29日目の総IgG低減について、それぞれ、異なる用量レベルのエフガルチギモドPH20 SCの投与後のシミュレーションした測定基準を、
図12、13、および14に示す。これら三つの測定基準についてのベンチマークシナリオと同等の中央値をもたらしたエフガルチギモドPH20 SC用量は、それぞれ、925mg(
図12)、900mg(
図13)、および825mg(
図14)であった。これらのシミュレーションは、ベンチマークIV用量に対して非劣性であるSC用量のエフガルチギモドを示した。
【0237】
各用量について、標的レベル(ベンチマークシナリオに対して導出した)を超えるシミュレーションした値の割合を、三つの測定基準のそれぞれについて計算した(
図15、16、および17を参照)。825mg(29日目のトラフ総IgG低減)、900mg(22日目~29日目の最大総IgG低減)、および925mg(AUEC
D22-D29)用量のエフガルチギモドPH20 SCは、三つの選択した測定基準についてのベンチマークシナリオと同等の中央値をもたらした。
【0238】
825mgのエフガルチギモドPH20 SC用量は、ベンチマークシナリオで得た中央値AUECD22-D29より上の34.2%AUECD22-D29値、10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得た対応する中央値より下の22日目~29日目の最大総IgG低減の32.8%、およびベンチマークシナリオで得た対応する中央値より下の29日目のトラフ総IgG低減の46.4%をもたらした。
【0239】
さらに、900mgのエフガルチギモドPH20 SC用量は、ベンチマークシナリオで得た中央値AUECD22-D29より上の47.6%AUECD22-D29値、10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得た対応する中央値より下の22日目~29日目の最大総IgG低減の56.4%、およびベンチマークシナリオで得た対応する中央値より下の29日目のトラフ総IgG低減の72.4%をもたらした。
【0240】
さらに、925mgのエフガルチギモドPH20 SC用量は、ベンチマークシナリオで得た中央値AUECD22-D29より上の51.4%AUECD22-D29値、10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得た対応する中央値より下の22日目~29日目の最大総IgG低減の65.4%、およびベンチマークシナリオで得た対応する中央値より下の29日目のトラフ総IgG低減の78.4%をもたらした。
【0241】
いくつかの用量のエフガルチギモドPH20 SCを用いて得た結果の概要を、以下の表7に示す。
【表7】
【0242】
これらの結果は、少なくとも975mgエフガルチギモドPH20 SC用量が、ベンチマークシナリオの22日目~29日目の最大総IgG低減の中央値を上回る、22日目~29日目の最大総IgG低減の75%を超える値を得るために必要であることを示唆していた(表7を参照)。
【0243】
SC用量選択
この用量は、AUECD22-D29についてのベンチマークシナリオの5パーセンタイルおよび22日目~29日目の最大総IgG低減についてのベンチマークシナリオの95パーセンタイルおよび29日目のトラフ総IgG低減に近いと予測したため、1000mgのエフガルチギモドPH20 SCの用量を、さらなる臨床開発のため選択した。
【0244】
具体的には、シミュレーションは、(a)1000mgのエフガルチギモドPH20 SCの用量は、一週間に一回の10mg/kg IVのエフガルチギモドで得た5パーセンタイルと同等のAUEC
D22-D29の5パーセンタイルをもたらし(
図12)、(b)950mgのエフガルチギモド PH20 SCの用量は、一週間に一回の10mg/kg IVのエフガルチギモドで得た95パーセンタイルと同等の22日目~29日目の最大総IgG低減の95パーセンタイルをもたらし(
図13)、(c)900mgのエフガルチギモドPH20 SCの用量は、一週間に一回の10mg/kg IVのエフガルチギモドで得た95パーセンタイルと同等の29日目のトラフ総IgG低減の95パーセンタイルをもたらした(
図14)ことを示した。
【0245】
さらに、シミュレーションは、1000mgのエフガルチギモドPH20 SCが、ベンチマークシナリオで得た中央値AUEC
D22-D29より上の59.8%AUEC
D22-D29値(
図15)、一週間に一回の10mg/kg IVのエフガルチギモドで得た対応する中央値より下の22日目~29日目の最大総IgG低減の84.0%(
図16)、および一週間に一回の10mg/kg IVエフガルチギモドのベンチマークシナリオで得た対応する中央値より下の29日目のトラフ総IgG低減の92.6%をもたらした(
図17)ことを示した(表7も参照のこと)。
【0246】
さらに、1000mgのエフガルチギモドPH20 SC QWおよび10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得たAUEC(
図18)および最大総IgG低減(
図19)を、i)1日目~8日目、ii)8日目~15日目、iii)15日目~22日目、およびiv)22日目~29日目に計算した。1000mgのエフガルチギモドPH20 SC QWおよび10mg/kg IVのエフガルチギモドQWを用いた8、15、22、および29日目の投与前の総IgG低減も導出した(
図20)。各時間間隔において、10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得た中央値AUECより上の1000mgのエフガルチギモドPH20 SC QWで得たシミュレーションしたAUECの割合を、(
図18):i)0%(1日目~8日目)、ii)25%(8日目~15日目)、iii)53.6%(15日目~22日目)、iv)59.8%(22日目~29日目)であると予測した(表8を参照のこと)。
【0247】
各時間間隔において、10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得た最大総IgG低減の中央値より下の1000mgのエフガルチギモドPH20 SC QWで得たシミュレーションした最大総IgG低減の割合を、(
図19):i)9.6%(1日目~8日目)、ii)78.2%(8日目~15日目)、iii)88.4%(15日目~22日目)、およびiv)84.0%(22日目~29日目)であると予測した(表8を参照のこと)。10mg/kg IVのエフガルチギモドQWで得た総IgG低減の中央値より下の1000mgのエフガルチギモドPH20 SC QWで得たシミュレーションした総IgG低減の割合は、i)9.6%(8日目に投与する前)、ii)78.2%(15日目に投与する前)、iii)92.0%(22日目に投与する前)、iv)92.6%(29日目に投与する前)であると予測した(
図20および表8を参照のこと)。
【0248】
10mg/kgのIVエフガルチギモドQWおよび1000mgのエフガルチギモドPH20 SC QWを用いて得たシミュレーションした総IgG特性を、
図21に示す。
【表8】
【0249】
結論
総IgG低減の同等のPDパラメータに基づいて、rHuPH20と共に皮下投与した1000mgのエフガルチギモドの用量を、臨床試験における毎週の投与のため提案した。
【0250】
実施例1に記載した研究からの健康なボランティアにおけるエフガルチギモドおよび総IgG濃度を説明するために従前に開発したPKおよびPK/PDモデルを使用して、一週間に一回のエフガルチギモドPH20 SCの用量選択を支持するためのシミュレーションを行い、総IgGに対して一週間に一回の10mg/kg IVのエフガルチギモドと同様の効果をもたらす。シミュレーション結果は、925mg、900mg、および825mgのエフガルチギモドPH20 SC用量が、それぞれ、10mg/kg IVエフガルチギモドQWと同等の、22日目~29日目の中央値AUECD22-D29、最大総IgG低減、および29日目のトラフ総IgG低減をもたらしたことを示唆した。
【0251】
1000mgのエフガルチギモドPH20 SCの用量は、AUECD22-D29についてのベンチマークシナリオの5パーセンタイルおよび22日目~29日目の最大総IgG低減についてのベンチマークシナリオの95パーセンタイルおよび29日目のトラフ総IgG低減に近いと予測したため、将来的な臨床開発のため選択した。
【0252】
実施例3:健康な対象における、エフガルチギモドの複数回の静脈内注入の薬力学、薬物動態、安全性、および忍容性を、エフガルチギモド-PH20 SCの複数回の皮下注射の薬力学、薬物動態、安全性、および忍容性と比較するための研究
本実施例は、rHuPH20(エフガルチギモド-PH20)と共製剤化した1000mgのエフガルチギモドの一週間に4回の皮下(SC)注射の薬力学(PD)効果を示すための第I相臨床試験のプロトコールおよび結果が、10mg/kgの用量でのエフガルチギモドの一週間に4回の静脈内注入(IV)の薬力学(PD)効果に劣らないことを記載する
図15の研究プロトコールの概略図を参照)。
【0253】
この研究では、対象を1:1の比で無作為化し、それぞれ、非盲検のエフガルチギモドIVまたはエフガルチギモド-PH20 SCを投与した。同等のPD効果は、患者において同等の有効性をもたらすと仮定し、IV投与と比較したSC投与のエフガルチギモドPD効果の非劣性を調べた。
【0254】
この研究のために選択したエフガルチギモドIV 10mg/kg用量は、全身型重症筋無力症の患者において忍容性が良好で、安全であり、臨床有効性と関連していることが示されている用量である。エフガルチギモド-PH20 SC 1000mg用量は、エフガルチギモドIV 10mg/kg用量と同様のPD効果をもたらすと予測し、実施例2に記載したモデリングおよびシミュレーションに基づき選択した。
【0255】
包含基準および除外基準
合計54名の健康な対象を、1:1の比で、エフガルチギモドIV(27名の対象)またはエフガルチギモド-PH20 SC(27名の対象)のいずれかに無作為化した。対象を、以下に列挙する包含基準および除外基準に基づき選択した。
包含基準および除外基準
包含基準:
1.対象は、ICFに署名した日に、包括的に、18~65歳である。
2.対象者は、出産可能性のない男性または女性(閉経後[卵胞刺激ホルモン(FSH)が33.4IU/Lを超え、代替医学的原因がなく少なくとも1年間、継続的な無月経により定義される;ホルモン補充療法を受けている対象者において、処置前の背景値が33.4IU/Lを超えることが閉経状態の証明として認められる])であるか、または文書化された永久避妊手術(すなわち、子宮摘出術、両側卵管切除術、両側卵巣摘出術)を受けている。
3.女性対象は、-1日目での妊娠検査が陰性である。
4.対象は、スクリーニング時の体重が≧50kgおよび≦100kgで、包括的に、18~30kg/m2のボディ・マス・インデックス(BMI)を有する。
5.対象は、試験の要件を理解することができ、書面によるインフォームドコンセント(研究に関連する健康情報の使用および開示に対する同意を含む)、治験実施計画書の手順(必要な試験訪問を含む)を遵守する意欲および能力を提供することができる。
6.対象は、治験責任医師の意見により、病歴、身体検査、ECG、およびバイタルサインの所見、ならびに最初のIMP投与前の生化学、血液学、ウイルス学、および尿検査の結果に基づいて、身体および精神の健康状態が良好である。
7.妊娠の可能性のある女性パートナーと性行為を行う断種していない男性対象は、有効な避妊を行わなければならない。真の性的禁欲を行なっている男性対象(参加者の好ましい通常のライフスタイルと一致する場合)も含めることができる。精管切除術を受け、術後に無精子症が証明された断種した男性対象も含めることができる。加えて、ICFへの署名から試験期間中、およびIMPの最終投与の90日後まで、男性対象は、精子の提供は許可されない。
8.対象の腹部の皮膚組織の状態は、治験責任医師が決定するように、計画されたSC注射の吸収および局所安全性の評価を可能にしなければならない。
9.対象者は、初回エフガルチギモド投与の少なくとも2週間前から78日目の最終フォローアップ診察まで、時折使用するパラセタモール(最大用量2g/日および最大10g/2週間)、制酸剤使用、イブプロフェン(最大用量400mg/日および制酸剤とは同時投与しない)を除き、すべての薬剤(市販薬および/または処方薬を含む)を中止し、控えることに同意する。
10.対象は、エフガルチギモド初回投与の少なくとも2週間前から78日目の最終フォローアップ診察まで、激しい運動を控えることに同意する。
11.対象は、非喫煙者であり、ニコチン含有製品を使用しない。非喫煙者を、スクリーニング前の少なくとも1年間、禁煙した個人として定義する。
12.対象は、スクリーニング時および-1日目に陰性ニコチン分析物試験を有する。
13.対象は、スクリーニング時および-1日目に、尿薬物スクリーニング(アンフェタミン、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、大麻、コカイン、鎮静剤、メタドン、および三環式抗うつ剤)が陰性である。
14.対象は、スクリーニング時および-1日目に陰性アルコール尿検査を有する。
15.対象は、スクリーニング時および-1日目に、35.2℃~37.6℃の体温を有する。
除外基準
16.対象は、以前に、エフガルチギモドの臨床試験に参加しており、エフガルチギモドを投与された。
17.対象は、治験責任医師の意見により、エフガルチギモド製剤の構成成分の1つに対して既知の過敏症、または重篤なアレルギー反応もしくはアナフィラキシー反応の既往歴がある。
18.対象は、以下の状態のいずれかについてスクリーニング時に陽性と検査する
a.対象は、スクリーニング時にB型肝炎血清学(https://www.cdc.gov/hepatitis/hbv/pdfs/SerologicChartv8.pdf)によって決定する通り、活動性B型肝炎感染(急性または慢性)を有する。
b.対象は、C型肝炎ウイルス抗体(HCV Ab)に対して血清学的陽性である。
c.対象は、陽性のヒト免疫不全ウイルス(HIV)血清学を有する。
19.対象は、スクリーニング時に臨床的に有意な活性または慢性の制御不能な細菌、ウイルス、または真菌感染を有する。
20.他の重大な重篤な疾患の臨床的証拠を有する対象、最近の大手術を受けた対象、または治験の結果を混乱させる、もしくは対象を過度のリスクにさらす可能性がある任意の他の理由。
21.対象は、スクリーニング時に総IgG<6g/Lを有する。
22.対象は、胃腸、肝臓、腎臓、またはエフガルチギモドの吸収、分布、代謝、もしくは排出に潜在的に干渉することが知られている任意の他の状態の存在または後続を有する。
23.対象は、エフガルチギモド初回投与前3年以上、再発の証拠がない、適切な処置により治癒したとみなされない限り、悪性腫瘍の既往歴を有する。以下の癌を有する対象は、いつでも含めることができる:
a.適切に処置した基底細胞または扁平上皮細胞皮膚癌
b.子宮頚部原位置の癌腫
c.乳房の原位置の癌腫または
d.前立腺癌の偶発的な組織学的所見(TNMステージT1aまたはT1b)
24.対象は、リズムまたは伝導のいずれかに関してECG記録で検出した臨床的に意義のある異常を有する(例えば、男性についてはQTcF>450ms、女性対象についてはQTcF>470ms、または既知のQT延長症候群)。第一度心ブロックまたは洞不整脈は、有意な異常とはみなさない。
25.対象は、投与前のバイタルサイン測定で検出した臨床的に関連のある異常を有する。
26.対象は、著しい失血(血液提供>500mLを含む)を有するか、または試験終了の4週間後以内に、(最初の)エフガルチギモド投与前の12週間以内にいずれかの血液製剤の輸血を受けているか、または予定された輸血を受けている。
27.対象は、最初のエフガルチギモド投与の過去3ヶ月前に、主要臓器に対する毒性の明確な可能性を有することが知られている任意の薬物で処置されている。
28.対象は、スクリーニングの2年以内前に、一週間に21単位を超えるアルコール飲料を摂取している履歴、またはアルコール依存症もしくは薬物/化学的/物質乱用の履歴を有する(注:1単位=330mLのビール、110mLのワインまたは28mLの酒精)。第一の投与の3週間前以内に大量のコーヒー、お茶(一日当たり>6カップ)、または同等のものを定期的に摂取することも除外される。
29.対象は、最初のエフガルチギモド投与前の薬物の3ヶ月または5半減期(いずれか長い方)以内に治験薬を投与されている。
30.対象は、スクリーニングの過去4週間前以内にワクチン接種(例えば、インフルエンザワクチン)を受けている。
31.対象は、初回エフガルチギモド投与の6ヶ月前以内に任意の全身性免疫抑制剤を受けている。
32.対象は、初回エフガルチギモド投与の3ヶ月前以内に任意の全身性ステロイドを受けている。
33.対象は、初回エフガルチギモド投与の6ヶ月前以内に任意のモノクローナル抗体を受けている。
34.対象は、治験責任医師または研究センターの従業員であり、その治験責任医師または研究センターの指示の下で、提案された研究または他の研究、ならびに従業員または研究センターの家族に直接関与する。
35.対象は、治験責任医師の意見により、対象が試験を完了する可能性が低いか、または試験を完了することができないか、または試験手順および要件を遵守することができない、何らかの状態または状況を有する。
36.対象は、瀉血症を損なう任意の状態を有する。
37.対象は、妊娠もしくは授乳中の女性であるか、または試験中もしくは最終投与の90日後以内に妊娠する意図がある。
38.対象は、-2日目または-1日目にSARS-CoV-2について鼻咽頭PCR検査が陽性である。
39.対象は、臨床研究センターへの入院の過去2週間前以内にSARS-CoV-2陽性またはCOVID-19患者と何らかの接触をしている。
【0256】
治験薬、用量、および投与方法
エフガルチギモドIV製剤は、抽出可能量20mLの20Rバイアルである。バイアル一本は、400mgのエフガルチギモドを送達することができる。
【0257】
エフガルチギモド-PH20 SC製品は、抽出可能体積10mLの10Rバイアルであり、濃度165mg/mLである。バイアルは、使用準備が整っており、1650mgのエフガルチギモドを送達することができる。
【0258】
併用療法
エフガルチギモド初回投与の2週間前から試験終了まで、対象は、いかなる処置または薬剤(市販薬および/または処方薬、栄養補助食品、栄養補助食品、ビタミン剤および/またはイチョウ葉やセイヨウオトギリソウなどのハーブサプリメントを含む)の使用も禁止され、ただし、パラセタモール(最大用量2g/日、最大用量10g/2週間)、制酸剤、イブプロフェン(最大用量400mg/日、制酸剤と同時投与されない)は治験責任医師と相談の上、承認される。
【0259】
インフォームドコンセントの署名の受領から試験終了まで、または試験中に開始されたすべての薬剤を記録する。
【0260】
AEに応答して開始、停止、漸増、または漸減された任意の薬剤も記録する。
【0261】
目的と評価項目
研究の主な目的は、1000mgのエフガルチギモド-PH20の一週間に4回のSC注射のPD効果が、10%の非劣性マージンを使用して、4週間後(29日目)、すなわち、四回目の投与の1週間後の合計免疫グロブリンG(IgG)レベルの割合低減を比較することによって、10mg/kgの用量で、一週間に4回のエフガルチギモドの静脈内注入(IV)のPD効果に劣らないことを実証することである。
【0262】
研究の副次的な目的は、以下である。
・経時的な、エフガルチギモドIVおよびエフガルチギモド-PH20 SCのPD効果を比較すること、
・エフガルチギモドIVおよびエフガルチギモド-PH20 SCのPKを評価すること、および
・エフガルチギモドIVおよびエフガルチギモド-PH20 SCの安全性、忍容性、および抗薬物抗体(ADA)を評価すること。
【0263】
研究の主要評価項目は、ベースラインと比較した、エフガルチギモドの四回目のIVまたはSC投与の7日後である29日目(4週目)での、総IgGレベルの割合低減である。
【0264】
研究の副次的な評価項目は、以下である。
・4週目時点での全ての他の評価時点での総IgGレベルの割合低減、
・すべての評価時点でのIgGサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のレベルの割合低減、
・すべての評価時点での総IgGレベルおよびIgGサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のレベルにおける絶対値ならびにベースラインからの変化、
・1週目~4週目、および試験期間全体(1週目~11週目)にわたる、各用量1週目、2週目、3週目、および4週目)後の毎週の間隔毎に、総IgGレベルの割合低減および各サブタイプについてのAUEC、
・エフガルチギモドおよび導出したPKパラメータの血清レベル、および
・臨床検査評価、バイタルサイン測定、ECG記録、ならびにTEAEの発生率および特徴付け。
【0265】
試料収集および分析
薬物動態/薬力学
血清中のエフガルチギモド濃度を、検証済みの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定した。定量の下限(LLOQ)は、300ng/mLであった。濃度を、較正曲線からの補間によって計算した。品質管理試料を、研究全体を通して分析した。それらの測定した濃度を使用して、分析の実行間、全体的な精度、および精度を決定した。
【0266】
血液試料は、総IgGおよびIgGサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のレベルを決定するための、研究1、8、15、22、23~27、29、36、50、64、および78日目のもの(処置日の各IVまたはSCエフガルチギモド投与前に採取した)であった。
【0267】
抗薬物抗体(ADA)評価
SC処置群の対象については、エフガルチギモドおよびrHuPH20に対するADAの個々の血清力価および血漿力価を、それぞれ、エフガルチギモド-PH20のSC注射の前および後に測定した。IV処置群の対象については、エフガルチギモドに対するADAの個々の血清力価を、エフガルチギモドのIV注入の前および後に測定した。
【0268】
ADA決定のための試料を、研究1、15、29、50、および78日目に採取した。
【0269】
PD分析に基づく主要評価項目分析
研究の主要評価項目を、ベースラインと比較した、29日目(4週目)、すなわち、エフガルチギモドの四回目のIVまたはSC投与の7日後での、総IgGレベルの割合低減として定義した。
【0270】
SC投与とIV投与を比較する、10%の非劣性マージンを有する、非劣性の評価に関する仮説は、以下であった。
・H0:μiv-μsc≧10
・H1:μiv-μsc<10
【0271】
μivおよびμscは、それぞれ、IV投与またはSC投与としてエフガルチギモドを受けている対象群における、4週間後(29日目)の総IgGの%低減の推定平均である。
【0272】
共分散モデル(ANCOVA)の解析を使用して、各処置群について4週目の平均割合低減ならびに両方の処置群間の差について両側95%CIを推定した。モデルは、処置の因子およびベースラインIgG値を共変量として含めた。
【0273】
95%CIの上限(IVでの平均低減-SCでの平均低減)が、10%のマージンを下回った場合、SC製剤は、IV製剤に劣っていないとみなした。
【0274】
PD分析に基づく主要評価項目分析
二次PD評価項目は、以下を含んでいた:
・4週目時点での全ての他の評価時点での総IgGレベルの割合低減、
・すべての評価時点でのIgGサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のレベルの割合低減、
・すべての評価時点での総IgGレベルおよびIgGサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のレベルにおける絶対値ならびにベースラインからの変化、
・1週目~4週目、および総試験期間(1週目~11週目)にわたる、各用量1週目、2週目、3週目、および4週目)後の毎週の間隔毎に、総IgGレベルの割合低減および各サブタイプについてのAUEC。
【0275】
同じANCOVAモデルを、すべての副次的な評価項目のため使用した。すべての評価項目を、時点または間隔毎、および処置群ごとに要約した。
【0276】
結果
薬理学
研究からのデータの中間分析は、エフガルチギモド-PH20 SCおよびエフガルチギモドIV群について総IgGの絶対値および経時的なIgGレベルのベースラインからのパーセント変化を、それぞれ、
図16および
図17に提示することを示す。
【0277】
総IgG低減のパターンは、両方の処置群間で同等であり、最後の投与の約1週間後に最大低減を達成する。その後、平均総IgGは、64日目(すなわち、最終投与の42日後)までにゆっくり増加し、ベースラインに戻った。データカットオフにより、29日目後の観察の数は、徐々に減少することに留意されたい(表9を参照されたい)。
【表9】
【0278】
本研究の主要評価項目を、被験薬の四回目の投与の1週間後(すなわち、29日目)のベースラインからの総IgGの割合低減として定義した。2つの処置群間の総IgGのベースラインからのパーセント変化の差についての信頼区間(CI)を導出するために、処置群の因子およびベースラインIgGを共変量として含む、共分散分析(ANCOVA)を使用した。このモデルから、95%の両側CIを、29日目のベースラインからのパーセント変化と先行する毎週の訪問との差について導出した。
【0279】
このモデルに基づいて、29日目の総IgGの低減の差は、1.23パーセンテージポイント(PP)(表10を参照)であり、これは、エフガルチギモドIV投与と比較して、エフガルチギモド-PH20 SC投与での総IgGのわずかに高い減少を意味する。非劣性評価は、中間分析の目的ではなかったが、結果は、非劣性基準を満たしており、29日目の処置群間の差の95%CIの下限(-2.68PP)は、既に-10%の事前に指定した非劣性マージンを上回っていた。実際に、8日目、15日目、および22日目における総IgGの低減の差についての信頼区間の下限はすべて、この予め指定した非劣性マージンを上回ることを見出された(
図18および表10を参照)。
【表10】
【0280】
中間分析の結果は、総IgGのベースラインから29日目までのパーセント変化に対する、1000mgのエフガルチギモド-PH20 SCの4回の毎週のSC注射の効果は、10mg/kgのエフガルチギモドIVを用いた4回の毎週のIV注入の効果に劣らないことを示唆する。
【0281】
エフガルチギモド-PH20 SCおよびエフガルチギモドIV投与後、総IgGレベルのベースラインからの平均パーセント変化は、それぞれ、エフガルチギモドの各投与後に減少し、29日目(最後の注射の7日後)で67.5%、26日目(最後の注入の4日後)で68.0%の最大低減まで減少した。
【0282】
総IgGのベースラインレベル、ならびに最大低減時のレベルは、両方の治療群間で同等であり、すなわち、それぞれ、ベースラインでの8003μg/mLおよび8968μg/mL、ならびにエフガルチギモド-PH20 SCおよびエフガルチギモドIV後の最大低減時に2600μg/mLおよび2829μg/mLであった(表11を参照)。
【表11】
【0283】
薬物動態(PK)
1000mgのエフガルチギモド-PH20 SCまたは10mg/kgのエフガルチギモドIVの四回の毎週の投与後のPK特性を、
図19に示し、PKパラメータを、表12に要約する。この中間評価については、PKパラメータを、予定した試料採取時間に基づいて推定した。
【表12】
【0284】
1000mgのエフガルチギモド-PH20 SCの複数回の注射後、投与の24~120時間後に、1つまたは複数のピークからなるプラトー期を観察し、これは、SC投与経路による吸収期の延長を示唆している。tmax中央値は、48時間であり、個々の値は、8~96時間の範囲であった。四回目のSC注射後の平均(SD)エフガルチギモドCtroughおよびCmaxは、それぞれ19.9(7.11)μg/mLおよび46.6(11.9)μg/mLであった。
【0285】
平均値に基づくと、CmaxおよびAUC0-168hは、それぞれ、約80%および15%低かったが、一方、Ctroughは、10mg/kgのエフガルチギモドIVと比較して、1000mgのエフガルチギモド-PH20 SC後に約50%高かった。見かけの消失半減期(t1/2)は、それぞれ、1000mgのエフガルチギモド-PH20 SCおよび10mg/kgのエフガルチギモドIVの83.2(16.3)時間後および75.6(13.2)時間後の平均(SD)値と同等であった。
【0286】
結論
1000mgのエフガルチギモド-PH20 SC固定用量は、同様の総IgG低減をもたらし、したがって、10mg/kgのエフガルチギモドIV用量に劣らない。これは、驚くことに、古典的なPKモデルを使用して、有効なIV用量と同等のバイオアベイラビリティを有する、エフガルチギモドのSC用量を計算する場合、用量は、体重ベースのIV用量の二倍であったためであった(エフガルチギモドSCのバイオアベイラビリティは、エフガルチギモドIVのバイオアベイラビリティの約47%である)。代わりに、実施例2に記載した、PDパラメータを参照IV用量に一致させることに基づいて、PK/PDモデリングアプローチは、安全かつ有効であり、患者のコンプライアンスの増大につながる可能性が高い固定用量を特定した。
* * *
【0287】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されない。実際に、記載されるものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の説明および添付図面から当業者に明らかになるであろう。こうした改変は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0288】
本明細書に引用されるすべての参考文献(例えば、刊行物または特許または特許出願)は、各個々の参考文献(例えば、刊行物または特許または特許出願)が、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、その全体が、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】