(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】薬剤送達ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240808BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240808BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240808BHJP
C08G 63/60 20060101ALI20240808BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61M5/142 522
C08L67/00
C08K7/14
C08G63/60
A61M5/145 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506647
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022039527
(87)【国際公開番号】W WO2023014942
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヨウハオ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4C066
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066PP04
4J002BB002
4J002CF002
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4J002CF081
4J002CF161
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4J002DE146
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4J029AA06
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4J029BB04A
4J029BB05A
4J029BB09A
4J029BB10A
4J029BB12A
4J029BC05A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CB12A
4J029CC06A
4J029CF03
4J029CF08
4J029EB04A
4J029EB05A
4J029EB08
4J029EC05A
4J029EC06A
(57)【要約】
薬剤化合物(例えば、インスリン)を使用者に投与するための医療用デバイスが提供される。医療用デバイスは、薬剤化合物を含む薬剤貯蔵器、薬剤貯蔵器と流体連通するポンプ、ならびに薬剤貯蔵器およびポンプを取り囲むハウジングを含む。医療用デバイスは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を、ポリマーの約25mol.%以下の量で含有する液晶ポリマーを含むポリマーマトリックスを含有するポリマー組成物を含む。ポリマー組成物は、溶融粘度約50Pa・s以下を示す。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤化合物を使用者に投与するための医療用デバイスであって、前記医療用デバイスが、前記薬剤化合物を含む薬剤貯蔵器、前記薬剤貯蔵器と流体連通するポンプ、ならびに前記薬剤貯蔵器および前記ポンプを取り囲むハウジングを含み、前記医療用デバイスが、液晶ポリマーであってナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を前記ポリマーの約25mol.%以下の量で含有する液晶ポリマーを含むポリマーマトリックスを含有するポリマー組成物を含み、前記ポリマー組成物が、せん断速度1,000秒
-1及び融点を約30℃超える温度で、ISO試験11443:2014に準拠して測定された約50Pa・s以下の溶融粘度を示す、医療用デバイス。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、1.8メガパスカルの荷重でISO試験75-2:2013に準拠して測定された約230℃~約300℃の荷重たわみ温度を示す、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、約23℃の温度で、ISO試験527:2019に準拠して測定された約0.5%~約2.5%の引張伸びを示す、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、約23℃の温度でISO試験527:2019に準拠して測定された約7,000MPa以上の引張弾性率を示す、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記液晶ポリマーが、1種もしくは複数の芳香族ジカルボン酸、1種もしくは複数の芳香族ヒドロキシカルボン酸、またはその組み合わせから誘導された繰り返し単位を含有する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸が、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、またはその組み合わせを含む、請求項5に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはその組み合わせを含む、請求項5に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記液晶ポリマーが、全芳香族性である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記液晶ポリマーが、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を約10mol.%~約25mol.%の量で含有する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から誘導された繰り返し単位を約10mol.%~約25mol.%の量で含有する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸から誘導された繰り返し単位を約75mol.%~約90mol.%の量で含有する、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックスが、前記ポリマー組成物の約50wt.%~約98wt.%を構成する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、繊維充填剤をさらに含む、請求項12に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
前記繊維充填剤が、ガラス繊維を含む、請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
前記繊維充填剤が、前記ポリマー組成物の約5wt.%~約25wt.%を構成する、請求項13に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
前記薬剤化合物が、インスリンを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
前記ハウジングが、前記ポリマー組成物を含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項18】
前記薬剤貯蔵器が、前記ポリマー組成物を含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項19】
前記ポンプが、前記ポリマー組成物を含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項20】
前記デバイスが、前記ポンプから前記薬剤化合物を受け、前記薬剤化合物を前記使用者に送達するように構成された注射アセンブリをさらに含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項21】
前記注射アセンブリが、前記ポリマー組成物を含む、請求項20に記載の医療用デバイス。
【請求項22】
前記注射アセンブリが、スリーブによって外装されたカニューレを含む、請求項20に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
前記カニューレ、前記スリーブ、またはその組み合わせが、前記ポリマー組成物を含む、請求項22に記載の医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、出願日2022年8月6日の米国特許仮出願第63/230099号に基づき、それに対して優先権を主張するものであり、それは参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]薬剤送達ポンプ(例えば、インスリンポンプ)は、使用者が、自身の個人的な必要性に基づいて、標的となる範囲内の、望ましい薬剤注入レベルを保持するのに役立つ。これらのポンプの多くは、その低費用および利便性ゆえに、歩行用、または「装着型」である。こうした装着型薬剤送達ポンプは、一般に、多数の薄壁の、正確な寸法の部品(例えば、ハウジング)で構成される。多数個取りモールドを用いた、これらの部品の成形は、バランスのとれた機械的性質および流動特性を有する材料を必要とする。より多くの凹みを有する器具は、ショートショットなしでモールドを適切に充填することが可能な低溶融粘度材料を必要とする。多くの場合において、成形機は、モールドをより良好に充填するために、圧力を高める必要があるが、これは、費用を増し、成形装置の摩耗を増やす。したがって、薬剤送達ポンプにおける使用のために改善された性質を有するポリマー組成物が現在必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一態様によれば、薬剤化合物を使用者に投与するための医療用デバイスが開示される。医療用デバイスは、薬剤化合物を含む薬剤貯蔵器、薬剤貯蔵器と流体連通するポンプ、ならびに薬剤貯蔵器およびポンプを取り囲むハウジングを含む。医療用デバイスは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を、ポリマーの約25mol.%以下の量で含有する液晶ポリマーを含むポリマーマトリックスを含有するポリマー組成物を含む。ポリマー組成物は、せん断速度1,000秒-1で、融点を約30℃超える温度で、ISO試験11443:2014に準拠して測定された溶融粘度約50Pa・s以下を呈示する。
【0004】
[0004]本発明の他の特質および側面は、以下にさらにより詳細に示される。
[0005]当業者への、本発明の最良の様式を含む、本発明の完全な開示および可能な開示は、添付の図を参照することを含めて、本明細書の残りの部分でより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】[0006]本発明の医療用デバイスの一態様の模式図である。
【
図1B】[0007]
図1Aの医療用デバイスにおいて用いられ得るプライミングメカニズムの一態様を説明する図である。
【
図2】[0008]本発明の医療用デバイスの一態様の、ある特定の部品を図示するブロック図である。
【
図3A】[0009]
図3Aは本発明の医療用デバイスの一態様において使用するための例示的な注射アセンブリを説明する図である。
【
図3B】
図3Bは本発明の医療用デバイスの一態様において使用するための例示的な注射アセンブリを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0010]一当業者によって、本発明の議論が、例示的な態様のみの記載であり、本発明のより広義な側面を制限するものとして意図されないと理解されるべきである。
[0011]一般に、本発明は、患者の体調、疾患、および/または美容状態を抑制する、および/または処置するのを助けるために、薬剤化合物を使用者(例えば、ヒト、ペット、家畜、競走馬など)に長期間投与するための医療用デバイスを対象とする。デバイスは、薬剤化合物および薬剤貯蔵器と流体連通するポンプを含む、薬剤貯蔵器が配置されたハウジングを含有する。デバイスの少なくとも一部分は、液晶ポリマーを含有するポリマー組成物を含む。組成物において用いられた成分(例えば、液晶ポリマー)の特異な性質および濃度について慎重に制御することによって、本発明者らは、得られた組成物が、医療用デバイスに要求される、小さい寸法中に容易に成形することが可能なほど十分に低い溶融粘度を呈示し得ることを見出した。例えば、ポリマー組成物は、せん断速度1,000秒-1で、融点を約30℃超える温度(例えば、約350℃)で、ISO試験11443:2014に準拠して測定された溶融粘度約50Pa・s以下、一部の態様において約48Pa・s以下、一部の態様において約1Pa・s~約45Pa・s、一部の態様において約2~約42Pa・sを有することができる。
【0007】
[0012]従来、こうした低い溶融粘度を呈示するポリマー組成物は、一貫した形状およびサイズを有する医療用デバイス部品の形成において使用するための、良好な物理的一体性を可能にするのに十分に良好な熱的性質および機械的性質を保有しないと考えられた。しかし、従来の考えに反して、得られたポリマー組成物は、優れた熱的性質および機械的性質の両方を有することも可能である。例えば、ポリマー組成物は、ISO11357-2:2020に準拠して測定された融点約285℃以上、一部の態様において約290℃~約350℃、一部の態様において約300℃~約330℃を有することができる。こうした融点でさえも、荷重たわみ温度(「DTUL」)、短距離耐熱性の測定値の融点に対する比は、依然として、相対的に高くあることができ、それにより、とりわけ、医療用デバイスを形成するための高速加工の使用が可能になり得る。例えば、比は、約0.5~約1.00、一部の態様において約0.65~約0.95、一部の態様において約0.75~約0.85の範囲であってもよい。例えば、荷重1.8メガパスカルで、ISO試験75-2:2013に準拠して測定された、特異なDTUL値は、例えば、約160℃以上、一部の態様において約200℃~約350℃、一部の態様において約230℃~約320℃、一部の態様において約235℃~約300℃であってもよい。
【0008】
[0013]ポリマー組成物はまた、一般に、本来硬くあることができ、したがって、医療用デバイスの形成中に所望される、物理的一体性の程度を維持することができる。こうした硬さは、一般に、低い引張伸びおよび/または高い引張弾性率によって特徴づけることができる。例えば、温度約23℃でISO試験527:2019に準拠して測定された引張伸びは、約5%以下、一部の態様において約4%以下、一部の態様において約0.1~約3.5%、一部の態様において約0.2%~約3%、および一部の態様において約0.5%~約2.5%であってもよい。例えば、温度23℃でISO試験527:2019に準拠して測定された引張弾性率は、同様に、約7,000MPa以上、一部の態様において約7500MPa以上、一部の態様において約8,000MPa~約25,000MPa、一部の態様において約8,500MPa~約20,000MPa、一部の態様において約9,000MPa~約15,000MPaであってもよい。ポリマー組成物はまた、他の良好な機械的性質も呈示することができる。例えば、ポリマー組成物は、例えば、温度23℃でISO試験527:2019に準拠して測定された引張強度約100MPa以上、一部の態様において約120MPa以上、一部の態様において約140MPa~約250MPaを呈示することができる。ポリマー組成物は、曲げ強度約100~約500MPa、一部の態様において約150~約300MPa、一部の態様において約180~約240MPa;および/または曲げ弾性率約5,000MPa~約20,000MPa、一部の態様において約8,000MPa~約18,000MPa、一部の態様において約10,000MPa~約15,000MPaも呈示することができる。曲げ特性は、23℃でのISO試験178:2019(ASTM D790-10と技術的に同等)に準拠して測定され得る。組成物は、23℃で、ISO試験179-1:2010に準拠して測定された、ノッチなしおよび/またはノッチ付きのシャルピー衝撃強さ約30kJ/m2以上、一部の態様において約40~約80kJ/m2、一部の態様において約50~約70kJ/m2も呈示することができる。
【0009】
[0014]本発明の様々な態様が、より詳細に説明される。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0015]ポリマーマトリックスは、1種または複数の液晶ポリマーを含有し、それらは、一般に、ロッド状構造を保有することができる範囲で「サーモトロピック」に分類され、その溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)において結晶性挙動を呈示する。ポリマーは、約285℃以上、一部の態様において約290℃~約350℃、一部の態様において約300℃~約330℃などの相対的に高い融点を有する。こうしたポリマーは、当分野で公知の、1種または複数の種類の繰り返し単位から形成され得る。液晶ポリマーは、例えば、以下の式(I)で一般に表される、1種または複数の芳香族エステル繰り返し単位を含有することができる:
【0010】
【0011】
(式中、
環Bは、置換もしくは非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンもしくは1,3-フェニレン)、置換もしくは非置換の、5員もしくは6員のアリール基に融合された、置換もしくは非置換の6員アリール基(例えば、2,6-ナフタレン)、または置換もしくは非置換の、5員もしくは6員のアリール基に結合した、置換もしくは非置換の6員アリール基(例えば、4,4-ビフェニレン)であり;かつ
Y1およびY2は、独立して、O、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)。
【0012】
[0016]典型的には、Y1およびY2のうち少なくとも一方はC(O)である。こうした芳香族エステル繰り返し単位の例には、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式IのY1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y1はOであり、Y2はC(O)である)、およびその様々な組み合わせが挙げられ得る。
【0013】
[0017]例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸などから誘導された芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位、ならびにそのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体、ならびにその組み合わせを用いることができる。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)である。所望の特性を実現するのを助けるために、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBAおよび/またはHNA)から誘導された繰り返し単位は、典型的には、ポリマーの、約50mol.%以上、一部の態様において約60mol.%以上、一部の態様において約70mol.%以上、一部の態様において約80mol.%以上、一部の態様において約85mol.%~100mol.%、一部の態様において約90mol.%~約99mol.%を構成する。
【0014】
[0018]芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなどから誘導された芳香族ジカルボン酸繰り返し単位、ならびにそのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体、ならびにその組み合わせも用いることができる。特に好適な芳香族ジカルボン酸には、例えば、テレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)が挙げられ得る。用いられる場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA,および/またはNDA)から誘導された繰り返し単位は、それぞれ場合により、ポリマーの、約0.1mol.%~約20mol.%、一部の態様において約0.5mol.%~約15mol.%、一部の態様において約1mol.%~約10%を構成することができる。
【0015】
[0019]ポリマーにおいて、他の繰り返し単位を用いることもできる。ある態様において、例えば、芳香族ジオール、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどから誘導された繰り返し単位、ならびにそのアルキル置換体、アルコキシ置換体、アリール置換体、およびハロゲン置換体、ならびにその組み合わせを用いることができる。特に好適な芳香族ジオールには、例えば、ヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)が挙げられ得る。用いられる場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)から誘導された繰り返し単位は、それぞれ場合により、ポリマーの、約0.1mol.%~約20mol.%、一部の態様において約0.5mol.%~約15mol.%、一部の態様において約1mol.%~約10%を構成することができる。
【0016】
[0020]例えば、芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)から誘導された繰り返し単位を用いることもできる。用いられる場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)から誘導された繰り返し単位は、場合により、ポリマーの、約0.1mol.%~約15mol.%、一部の態様において約0.5mol.%~約10mol.%、一部の態様において約1mol.%~約6%を構成することができる。様々な他のモノマー繰り返し単位がポリマーに組み込まれることがあるとも理解されたい。例えば、ある態様において、ポリマーは、非芳香族モノマー、例えば、脂肪族または脂環式のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどから誘導された、1種または複数の繰り返し単位を含有することができる。勿論、他の態様において、ポリマーは、非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーから誘導された繰り返し単位を欠如する、「全芳香族性」であってもよい。
【0017】
[0021]ある態様において、液晶ポリマーは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸、例えば、NDA、HNA、またはその組み合わせから誘導された繰り返し単位の、相対的に低い含量を含有する範囲で、「低ナフテン系」ポリマーであってもよい。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAおよびNDAの組み合わせ)から誘導された繰り返し単位の全量は、典型的には、ポリマーの、約25mol.%以下、一部の態様において約10mol.%~約25mol.%、一部の態様において約12mol.%~約24mol.%、一部の態様において約15mol.%~約23mol.%である。液晶ポリマーはまた、様々な他のモノマーを含有することもできる。例えば、ポリマーは、HBAから誘導された繰り返し単位を、例えば、約75mol.%~約90mol.%、一部の態様において約76mol.%~約88mol.%、一部の態様において約77mol.%~約85mol.%の量で含有することもできる。用いられる場合、HBAのHNAに対するモル比は、例えば、所望の特性を実現するのを助けるために、約0.5~約20、一部の態様において約1~約10、一部の態様において約2~約8、一部の態様において約3~約6などの明記された範囲内で選択的に制御され得る。ポリマーはまた、芳香族ジカルボン酸(複数可)(例えば、IAおよび/もしくはTA)を約0.1mol.%~約20mol.%の量で;ならびに/または芳香族ジオール(複数可)(例えば、BPおよび/もしくはHQ)を約0.2mol.%~約10mol.%量で、一部の態様において約0.5mol.%~約5mol.%の量で含有することもできる。しかし、一部の場合において、所望の特性を実現するのを助けるために、ポリマーにおけるこうしたモノマーの存在を最小限にすることが望まれ得る。例えば、芳香族ジカルボン酸(複数可)(例えば、IAおよび/またはTA)の全量は、ポリマーの、約20mol%以下、一部の態様において約15mol.%以下、一部の態様において約10mol.%以下、一部の態様において0mol.%~約5mol.%、一部の態様において0mol.%~約2mol.%であってもよい。全ての場合において要求されるわけではないが、ポリマーマトリックスの大部分が、こうした低ナフテン系ポリマーから形成されることがしばしば望まれる。例えば、本明細書に記載された低ナフテン系ポリマーは、典型的には、ポリマーマトリックス(例えば、100wt.%)の、50wt.%以上、一部の態様において約65wt.%以上、一部の態様において約70wt.%~100wt.%、一部の態様において約80wt.%~100%を構成する。
【0018】
[0022]ポリマーの特定の構成要素および性質にもかかわらず、液晶ポリマーは、エステル繰り返し単位(例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸など)および/または他の繰り返し単位(例えば、芳香族ジオール、芳香族アミド、芳香族アミンなど)を形成するのに使用される芳香族モノマー(複数可)を、反応容器中に初めに導入して、重縮合反応を開始することによって調製することができる。こうした反応に用いられる、特定の条件および工程は、周知であり、Calundannの米国特許第4161470号;Linstid、IIIらの米国特許第5616680号;Linstid、IIIらの米国特許第6114492号;Shepherdらの米国特許第6514611号;およびWaggonerの国際公開第2004/058851号においてより詳細に記載される。反応に用いられる容器は、典型的には、高粘度流体の反応において通常使用されるものを用いることが望ましいが、特に限定されない。こうした反応容器の例には、多様な形状の撹拌翼、例えば、アンカー型、多段階型、螺旋状リボン型、スクリュー軸型など、またはその改変された形状を備える撹拌機を有する撹拌槽型装置が挙げられ得る。こうした反応容器のさらなる例には、樹脂混練で通常使用される混合装置、例えば、混練機、ロールミル、バンバリーミキサーなどが挙げられ得る。
【0019】
[0023]必要に応じて、反応は、当分野で公知のモノマーのアセチル化によって進行することができる。これは、アセチル化剤(例えば、無水酢酸)をモノマーに添加することによって実現され得る。アセチル化は、一般に温度約90℃で開始される。アセチル化の初期の段階の間、還流を用いて、酢酸副生成物および無水物が蒸留し始める温度よりも低い気相温度を維持することができる。アセチル化中の温度は、典型的には、90℃~150℃の範囲であり、一部の態様において約110℃~約150℃の範囲である。還流が使用される場合、気相温度は、典型的には、酢酸の沸点を超えるが、残留無水酢酸を保持するのに十分なほど低いままである。例えば、無水酢酸は、温度約140℃で蒸発する。したがって、温度約110℃~約130℃で、気相還流を備える反応器を用意することが特に望ましい。実質的に完全な反応を確実にするために、過剰な量の無水酢酸を用いることができる。過剰な無水物の量は、還流の有無を含む、用いられる特定のアセチル化条件に応じて変えることができる。存在する反応物ヒドロキシル基の全モルに基づいた、無水酢酸の約1~約10モルパーセントの過剰量の使用は、珍しいことではない。
【0020】
[0024]アセチル化は、分離反応容器内で生じてもよく、または重合反応器内でin situで生じてもよい。分離反応容器が用いられる場合、モノマーの1種または複数を、アセチル化反応器に導入することができ、その後重合反応器に移すことができる。同様に、モノマーの1種または複数はまた、事前アセチル化を受けることなく、反応容器中に直接導入され得る。
【0021】
[0025]モノマーおよび任意選択のアセチル化剤に加えて、重合を容易にするのを助けるために、他の成分を反応混合物中に含むこともできる。例えば、触媒、例えば、金属塩触媒(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸スズ(I)、チタン酸テトラブチル、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)および有機化合物触媒(例えば、N-メチルイミダゾール)を場合により用いることができる。こうした触媒は、典型的には、反復単位前駆体の全重量に基づいて、約50~約500ppm(parts per million)の量で使用される。分離反応器が用いられる場合、決して必要条件ではないが、典型的には、重合反応器よりもむしろアセチル化反応器に触媒を適用することが望ましい。
【0022】
[0026]反応混合物は、一般に、重合反応容器内で高温まで加熱されて、反応物の溶融重縮合を開始する。重縮合は、例えば、約250℃~約380℃、一部の態様において約280℃~約380℃の温度範囲内で生じることができる。例えば、芳香族ポリエステルを形成するための、1つの好適な技術は、反応器内に前駆体モノマーおよび無水酢酸を装入するステップ、混合物を温度約90℃~約150℃まで加熱してモノマーのヒドロキシル基をアセチル化する(例えば、アセトキシを形成する)ステップ、次いで、温度を約280℃~約380℃に上げて溶融重縮合を実行するステップを含むことができる。最終重合温度に近づくと、反応の揮発性副生成物(例えば、酢酸)を除去して、所望の分子量を容易に得ることもできる。反応混合物は、重合中に撹拌され、良好な熱移動および質量移動を確実にし、次いで良好な材料均質性を確実にする。撹拌機の回転速度は、反応過程の間、様々であってもよいが、典型的には、約10~約100/分回転数(「rpm」)、一部の態様において約20~約80rpmの範囲である。溶融物中の分子量を構築するために、重合反応を、真空下で実行することもでき、その適用により、重縮合の最終段階中に生じる揮発性物質の除去が容易になる。真空は、例えば、約5~約30ポンド/平方インチ(「psi」)の範囲内、一部の態様において約10~約20psiの範囲内の吸引圧力の適用によって生じ得る。
【0023】
[0027]溶融重合の後、溶融ポリマーは、反応器から、典型的には、所望の構成のダイを装着した押出オリフィスを通して排出され、冷却され、回収され得る。通常、溶融物を、有孔ダイを通して排出して、水槽に取り上げてストランドを形成し、ペレット化し、乾燥
させる。一部の態様において、溶融重合されたポリマーは、引き続いて固体状態重合法を施されて、その分子量をさらに増すこともできる。固体状態重合は、ガス(例えば、空気、不活性ガスなど)の存在下で実行することができる。好適な不活性ガスには、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンなど、およびその組み合わせが挙げられ得る。固体状態重合反応容器は、所望の固体状態重合温度で所望の滞留時間で、ポリマーを維持することを可能にする、実質上任意のデザインのものであってもよい。こうした容器の例は、固定床、静止床、移動床、流動床などを備えるものであってもよい。固体状態重合が実施される温度は、様々であってもよいが、典型的には、約250℃~約350℃の範囲内である。重合時間は、勿論、温度および目標の分子量に基づいて変わることになる。しかし、大抵の場合、固体状態重合時間は、約2~約12時間、一部の態様において約4~約10時間になるであろう。
【0024】
B.他の添加剤
[0028]一部の場合において、ポリマーマトリックスが、ポリマー組成物全体(例えば、100wt.%)を構成してもよい。しかし、ある態様において、目標の特性を得るのに役立つように、ポリマー組成物内に1種または複数の添加剤を含むことが望ましい場合がある。こうした態様において、ポリマーマトリックスは、組成物の、約50wt.%~約98wt.%、一部の態様において約60wt.%~約96wt.%、一部の態様において約75wt.%~約95wt.%を構成することができ、かつ1種または複数の添加剤(例えば、繊維充填剤)は、組成物の、約2wt.%~約50wt.%、一部の態様において約4wt.%~約40wt.%、一部の態様において約5wt.%~約25wt.%の量で構成することができる。
【0025】
[0029]一態様において、流動性に有意な影響を及ぼすことなく、組成物の熱的性質および機械的性質を改善するために、例えば、繊維充填剤がポリマー組成物において用いられ得る。繊維充填剤は、典型的には、その大部分に対して高度の引張強度を有する繊維を含む。例えば、繊維の最終引張強度(例えば、ASTM D3822に準拠して測定される)は、典型的には約1,000~約15,000MPa、一部の態様において約2,000MPa~約10,000MPa、一部の態様において約3,000MPa~約6,000MPaである。こうした高強度繊維は、一般に、性質上絶縁性である材料、例えば、ガラス、セラミック(例えば、アルミナまたはシリカ)、アラミド(例えば、Kevlar(登録商標))、ポリオレフィン、ポリエステル、チタン酸(例えば、TISMOから入手可能なチタン酸カリウム)などから形成され得る。E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、O-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラスなどのガラス繊維が特に好適である。さらに、ある特定の長さおよび径を有する繊維は、得られる熱可塑性組成物の機械的性質を改善するのを促すことができる。例えば、特に好適な繊維は、平均呼び長さ(調合前)約0.3~約10ミリメートル、一部の態様において約0.5~約6ミリメートル、および一部の態様において約1~約5ミリメートルを有することができる。繊維は、同様に、平均呼び径約5~約35マイクロメートル、一部の態様において約6~約25マイクロメートル、一部の態様において約7~約15マイクロメートルを有することができる。繊維長さおよび/または繊維径は、多様な、公知の技術を使用して、例えば、走査型電子顕微鏡(「SEM」)によって測定され得る。
【0026】
[0030]他の添加剤も用いられ得る。例えば、粒子(例えば、プレートレット形状、フレーク形状など)、繊維などの形態であり得る無機充填剤が用いられ得る。一態様において、例えば、無機充填剤には、粒子状無機充填剤、例えば、タルク、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、雲母、珪藻土など、およびその組み合わせが挙げられ得る。雲母および/またはタルクが特に好適であり得る。特定の一態様において、例えば、粒子状無機充填剤(例えば、タルク)は、約10マイクロメートル以下、一部の態様において約0.1~約8マイクロメートル、一部の態様において約0.5~約5マイクロメートル、一部の態様において約0.6~約2.5マイクロメートルのメジアン径(例えば、D50サイズ)を有することができる。珪酸塩の他に、他の好適な無機充填剤粒子には、炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)または炭酸水酸化銅(Cu2CO3(OH)2);フッ化物、例えば、フッ化カルシウム(CaFl2);リン酸塩、例えば、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO4)、または水和リン酸アルミニウム(AlPO4・2H2O);ガラス(例えば、ガラス粉末)などが挙げられ得る。鉱物繊維(「ウィスカ」としても公知である)もまた、ポリマー組成物の無機充填剤として用いることができる。こうした鉱物繊維の例には、珪酸塩から誘導されたもの、例えば、ネオ珪酸塩(neosilicate)、ソロ珪酸塩、イノ珪酸塩(例えば、イノ珪酸カルシウム、例えば、珪灰石;イノ珪酸カルシウムマグネシウム、例えば、透角閃石;イノ珪酸カルシウムマグネシウム鉄、例えば、陽起石;イノ珪酸マグネシウム鉄、例えば、直閃石など)、フィロ珪酸塩(例えば、フィロ珪酸アルミニウム、例えば、パリゴルスカイト)、テクト珪酸塩など;硫酸塩、例えば、硫酸カルシウム(例えば、脱水または無水の石こう);鉱物ウール(例えば、ロックウールまたはスラグウール);ガラスなどが挙げられる。特に好適なものは、イノ珪酸塩、例えば、商標名NYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4W、NYGLOS(登録商標)5、またはNYGLOS(登録商標)8)でNyco Mineralsより利用可能な珪灰石繊維である。上記のサイズ特徴を保有することに加えて、鉱物繊維は、相対的に高いアスペクト比(平均長さ割るメジアン幅)を有することもでき、機械的性質をさらに改善するのに役立つ。例えば、鉱物繊維は、約1~約50、一部の態様において約2~約20、一部の態様において約4~約15のアスペクト比を有することができる。こうした鉱物繊維の体積平均長さは、例えば、約1~約200マイクロメートル、一部の態様において約2~約150マイクロメートル、一部の態様において約5~約100マイクロメートル、一部の態様において約10~約50マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0027】
[0031]ポリマー組成物において、多様な、他の追加の添加剤、例えば、潤滑剤、熱伝導性充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、液垂れ防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、流動性改質剤、カップリング剤、抗菌剤、顔料、または他の着色剤、衝撃改質剤、および特性および加工可能性を高めるために添加される、他の材料が含まれてもよい。
【0028】
II.形成
[0032]ポリマー組成物を形成するために使用される成分は、当分野で公知の多様な異なる技術のいずれかを使用して共に組み合わせることができる。特定の一態様において、例えば、液晶ポリマーおよび他の任意選択の添加剤は、ポリマー組成物を形成するため
に、押出成形機内で混合物として溶融加工される。混合物は、単軸または多軸の押出成形機で、温度約200℃~約450℃で溶融混練されてもよい。一態様において、混合物は、多数の温度区域を含む押出成形機で溶融加工されてもよい。個々の区域の温度は、典型的には、ポリマーの融点に対して約-60℃~約25℃以内で設定される。例として、混合物は、2軸押出成形機、例えば、Leistritz 18-mm共回転完全噛合2軸押出成形機を使用して溶融加工され得る。一般的な目的の軸設計を用いて混合物を溶融加工することができる。一態様において、成分の全てを含む混合物は、定量供給機によって第1のバレルの供給口まで供給され得る。別の態様において、知られているように、様々な成分を、押出成形機の様々な添加地点で添加することができる。例えば、ポリマーは、供給口で加えられ、ある種の添加剤(例えば、繊維充填剤)は、それよりも下流に置かれる、同じ温度域または異なる温度域で供給され得る。しかし、得られた混合物は、溶融され、混合され、次いでダイを通して押し出され得る。次いで、押し出されたポリマー組成物は、水槽でクエンチされ、凝固およびペレタイザーで粒化され、続いて乾燥させることができる。
【0029】
III.医療用デバイス
[0033]医療用デバイスは、本発明のポリマー組成物を含有する、1種または複数の部品を含む。例えば、エンボス加工(例えば、熱エンボス加工、ロール・ツー・ロール成形など);成形、例えば、微細成形、射出成形(例えば、低圧射出成形、ガス射出成形、発泡射出成形など)、圧縮成形(例えば、押出圧縮成形)、押出成形;印刷(例えば、三次元印刷)などの多様な技術のいずれかを用いて、こうした部品を形成することができる。例えば、その中にポリマー組成物を射出することができるモールドを備える射出成形装置を用いることができる。射出機内部の時間は、制御し、最適化することができ、ゆえにポリマーマトリックスは予め凝固されない。サイクル時間に到達し、バレルが満杯で排出される場合、ピストンを用いて組成物をモールドキャビティへ射出することができる。圧縮成形装置もまた用いることができる。射出成形と同様に、ポリマー組成物の所望の成形品への成形もまたモールド内で起こる。任意の公知の技術を使用して、例えば、自動ロボットアームで取り上げることによって、組成物を圧縮モールド中に設置することができる。モールドの温度を、ポリマーマトリックスの凝固温度以上で、所望の時間維持して、凝固を可能にする。成形生成物は、融点よりも低い温度まで下げることによって、凝固することができる。得られた生成物を離型することができる。それぞれの成形工程のサイクル時間は、ポリマーマトリックスに適するように、十分な接合を得るように、かつ全体の工程生産性を高めるように、調節することができる。
【0030】
[0034]一般に、医療用デバイスは、少なくとも1種の薬剤化合物、薬剤貯蔵器(複数可)と流体連通するポンプを含み、貯蔵器(複数可)から薬剤化合物を受けることができ、それを注射アセンブリに送達することができる、1種または複数の薬剤貯蔵器を含む。注射アセンブリは、ポンプと流体連通し、ポンプから薬剤化合物を受け、1つまたは複数の注入部位で薬剤化合物を使用者に送達するように構成された、1種または複数の部品(例えば、ニードル、カニューレなど)を含む。薬剤化合物は、例えば、使用者に持続的に注入されてもよい。ハウジングは、上記の部品のうちの1種または複数(例えば、貯蔵器(複数可)、ポンプ、注射アセンブリなど)を取り囲み、外部環境からそれらを保護することができる。注目すべきことに、前述された部品のうちの1種または複数は、本発明のポリマー組成物から形成され得る。
【0031】
[0035]
図1A、
図1B、および
図2を参照すると、例えば、患者の皮膚中へ、または皮膚を通した持続注入によって、液体またはゲルの薬剤化合物(例えば、インスリン)を送達することができる、医療用デバイス100の特定の一態様が示される。こうした公知の医療用デバイスは、共通して、使用者の皮膚に装着される、または貼り付けられる、その性質ゆえに「装着型パッチポンプ」と称される。例えば、医療用デバイス100は、上部ハウジング部分102および下部ハウジング部分104から形成されるハウジング、薬剤貯蔵器106、注射アセンブリ108、ならびに注射アセンブリ108によって、使用者の体内への薬剤化合物の送達を制御するためのポンプ114を含むことができる。医療用デバイス100は、注射アセンブリ108およびポンプ114に誘導し、かつ医療用デバイス100の、他の好ましい操作およびシステムをモニターし、および/または制御するための、マイクロプロセッサまたはコントローラ116を含有することもできる。医療用デバイス100は、同様に、流量センサー120および/または電力供給109、例えば、電池、蓄電器、または他のエネルギーハーベスティングシステムを含むことができる。上記のように、ハウジング(例えば、ハウジング部分102および/またはハウジング部分106)、薬剤貯蔵器106、注射アセンブリ108、ポンプ114などの医療用デバイス100の部品のいずれかは、本発明のポリマー組成物を含有することができる。例えば、長期にわたる使用期間、例えば5~7日間の適切な供給をもたらす薬剤貯蔵器106は、一般に、大量の薬剤を収めることが可能である。薬剤貯蔵器106は、医療用デバイス100において収容された事前充填型貯蔵器として提供することができ、ポリマー材料、例えば、熱可塑性オレフィンポリマー(例えば、環状オレフィン)および/または本発明のポリマー組成物から形成され得る。
【0032】
[0036]
図1Bで説明されるように、医療用デバイス100においてもたらされ得る、別の特質は、使用前の医療用デバイスの自動または半自動のプライミングを対象とするものである。薬剤貯蔵器106で始まり、注射アセンブリ108によって挿入された注入ニードルで終わる薬剤流路112は、医療用デバイス100内に提供され得る。必要に応じて、メンブレン107を注射アセンブリ108付近の流路112に設置して、流路112の空隙容積に閉じ込められた、いずれの空気も、ポンプ機能114が初めに稼働されるとき、流路から抜くことができる。流路112における流体流れは、メンブレン107を通して、流路112から空気を追いやり、それによって、流路112からの流体流れを抑制することになる。必要に応じて、メンブレン107は、本発明のポリマー組成物から形成されてもよい。
【0033】
[0037]医療用デバイスの注射アセンブリは、当分野で公知のように、1種または複数の挿入ニードルおよび/またはカニューレを使用して形成され得る。
図3Aを参照すると、注射アセンブリ108において用いられ得るカニューレ300の特定の一態様が示される。本態様において、カニューレ300は、カニューレのシャフトに沿って、レーザー切断または化学的エッチングされた、尖った先端および交互するスロット302を有する。交互するスロット302により、カニューレを曲げることができるが、使用者の皮膚への挿入に必要な、硬さまたはカラム強度をもたらすことができる。カニューレ300は、典型的には、金属(例えば、ステンレス鋼)または他の材料、例えば本発明のポリマー組成物から形成され得る単一体である。カニューレ300はまた、薬剤流体が、カニューレの先端を通って使用者に入るのを可能にするための、生体適合性の表側流体シールを提供するスリーブ304によって、外装され得るか、または被覆され得る。スリーブ304は、耐流体性ポリマー材料、例えば、本発明のポリマー組成物から形成され得る。尖ったニードル先端306が捻りバネ308に取り付けられた、カニューレの別の例示的な態様が、
図3Bに示される。捻りバネ308は、
図3Aにおいて述べられた態様と同様の利点をもたらし、同様に、捻りバネの内部空洞内に流体を封止するためのスリーブ304も含む。当業者によって認識されるように、捻りバネ308およびカニューレ300は、任意の好適な断面を備えることができ、あるいは長方形の断面を含んで内径を最大化することができる。さらに、
図3Aおよび
図3Bに示された注入ニードルの先端は、使用者への薬剤流れのための開口部を含む必要がない。使用者への薬剤流れを可能にするために、先端近くに位置したサイドポートを有する、閉塞型の注入ニードルを実装することが望まれ得る。
【0034】
[0038]その特定の構成にもかかわらず、注射アセンブリ108(
図1A)は、使用者の皮膚に注入ニードル122を挿入し、抜去するための、手動または自動のメカニズムを含有することができる。さらに、注射アセンブリ108を、手動で、または自動で作動させて、注入ニードルを使用者の皮膚に挿入することができる。コントローラ116は、医療用デバイスの初期設定の後、または一部の他のプログラム状態または検知状態に基づいて、注射アセンブリ108を自動的に作動させることができる。さらに、自動的配備は、BGM、PDM、またはホストデバイスから受けた適切なコマンドによって実行され得る。
【0035】
[0039]医療用デバイス100の特定の一態様は、事前にプログラムされたパッチポンプである。事前にプログラムされたパッチポンプは、睡眠および歩行のインスリン要件に適合するように、終日変更可能な、個別調整された基礎注入比率を提供するための、単純な知能を含むことができる。事前にプログラムされたパッチポンプは、様々な比率で、一日の様々な時間で、または様々な条件下で、1種または複数の薬剤を使用者に送達するようにプログラムされ得る。経時的に薬剤送達比率を変更することは、本明細書において薬剤送達プロファイルと称される。事前にプログラムされたパッチポンプは、製造設備またはヘルスケア提供者によってプログラム可能であり、一般に、追加の使用者のプログラミングを必要としない。事前にプログラムされたパッチポンプは、さらに、多数の日々の注入を提供するように構成することができ、漸進的なボーラス投与の手動作動を可能にするメカニズムを備えて設計され得る。手動作動の一形態は、長期間にわたって、電気接点の閉鎖、例えば、1個または2個の瞬時スイッチを要することになり、その後、振動信号または音響信号により、薬剤送達の完了が確認され得る。本発明の例示的な態様における使用のための、事前にプログラムされたパッチポンプは、インスリン流れの閉塞、貯蔵器における低レベルのインスリン、および他の故障状態の検知を実施するのに十分な知能を含む。事前にプログラムされたパッチポンプはまた、好ましくは、これらの故障状態のそれぞれにおいて、使用者に警告を提供する。事前にプログラムされたパッチポンプは、ホストデバイスとの通信を除いて、「スマート」パッチポンプと同じ機能を実施し、ゆえにこうしたデバイスを備える薬剤治療を提供する費用を大幅に減らし、こうしたデバイスの利便性を高める。前述されたように、本発明における医療用デバイス100の例示的な態様は、好ましくは、事前プログラム可能パッチポンプを対象とする。
【0036】
[0040]他の態様において、当業者によって認識されるように、医療用デバイス100はまた、完全プログラム可能な(「スマート」)パッケージまたは(「シンプル」)パッケージとしても提供され得る。完全プログラム可能パッケージは、使用者の生活様式に適した、薬剤を投与する比率を制御することにおいて、最大限の正確性および融通性を使用者にもたらすが、追加の費用は必要としない。完全プログラム可能「スマート」パッチポンプは、一般に、血糖モニター(BGM)または持続的グルコースモニター(CGM)およびホストデバイス、例えば、パーソナル糖尿病モニター(PDM)と連結されて使用され、閉ループ制御および閉ループ検知によって、終日のどの時点でも稼働させ、調節することができる、個別の基礎注入比率およびボーラス注射を提供する。「スマート」パッチポンプは、典型的には、例えば、パーソナル・エリア・ネットワークを介して、ホストデバイスと通信するように構成される。「スマート」パッチポンプは、さらに、有線接続または他の直接接続を介して、持続的に、または断続的にホストデバイスと通信することができる。「シンプル」パッチポンプは、最小限のシステム知能で、またはシステム知能なしで提供されることがあり、一般に、大抵の場合、予め設定された基礎比率、または手動で稼働させたボーラス注射のいずれかによってインスリン注入の基本制御をもたらす機械システムを含む。それぞれのパッチポンプは、特に有効であり、ある特定のタイプの使用者に望ましい。使用者の生活様式、病状、経済状態、および医療用デバイスを操作する能力は、パッチポンプのどのパッケージがその使用者に適しているかどうかを主に決定する。以下の、本発明の例示的な態様の特異な特質および機能は、上記のパッチポンプパッケージのそれぞれにおいて実装され得る。
【0037】
[0041]本発明の医療用デバイスを使用して送達され得る薬剤化合物は特に限定されない。好適な化合物には、例えば、タンパク質系化合物、例えば、インスリン、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE)、TNF-α、抗ウイルス薬など;ポリヌクレオチド剤、例えば、プラスミド、siRNA、RNAi、抗腫瘍性ヌクレオシド薬剤、ワクチンなど;小分子薬、例えば、アルカロイド、グリコシド、フェノールなど;感染防止剤、ホルモン、心筋活動または血流を調節する薬剤、疼痛管理;ワクチンなどが挙げられ得る。作用剤の非限定的な例には、血管新生阻害剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、ブトルファノール、カルシトニンおよび類似体、COX-II阻害剤、皮膚用薬、ドパミン作動薬およびドパミン拮抗薬、エンケファリン、および他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリスロポエチンおよび類似体、卵胞刺激ホルモン、グルカゴン、成長ホルモンおよび類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヘパリン、ヒルジンおよびヒルジン類似体、例えばヒルログ、IgE抑制剤および他のタンパク質阻害剤、免疫抑制剤、インスリン、インスリノトロピンおよび類似体、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホ
ルモン放出ホルモンおよび類似体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、乗り物酔い防止薬、筋弛緩薬、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド系抗炎症剤、オリゴ糖、副甲状腺ホルモンおよび類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、スコポラミン、鎮痛剤、セロトニン作動薬およびセロトニン拮抗薬、性的機能低下、組織プラスミノーゲン活性化因子、精神安定剤、担体/アジュバントを含むワクチンまたは担体/アジュバントを含まないワクチン、血管拡張薬、ツベルクリン剤および他の過敏症剤などの主要診断薬が挙げられる。医療用デバイスは、高分子量の薬剤化合物の送達において特に有益であり得る。用語「高分子量」は、一般に、約1キロダルトン(「kDa」)以上、一部の態様において約2kDa以上、および一部の態様において約5kDa~約150kDaの分子量を有する化合物を指す。
【0038】
[0042]本発明は、以下の実施例を参照して、より良く理解され得る。
【実施例】
【0039】
試験方法
[0043]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、ISO試験11443:2014に準拠して、せん断速度1,000秒-1および融点より15℃高い温度でDynisco LCR7001細管式レオメータを使用して測定することができる。レオメータオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および進入角度180°を有した。バレルの直径は、9.55mm+0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0040】
[0044]融点:融点(「Tm」)は、当分野で公知の示差走査熱量測定(「DSC」)によって測定することができる。融点は、ISO試験11357-2:2020によって決定される、示差走査熱量測定(DSC)ピーク融点である。DSC手順の下、TA Q2000装置で実行されるDSC測定を使用して、ISO標準10350で示したように、試料を20℃/分で加熱し、冷却した。
【0041】
[0045]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重温度下でのたわみは、ISO試験75-2:2013(ASTM D648-18と技術的に同等)に準拠して測定することができる。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmを有する試験片試料にエッジワイズ3点曲げ試験を施すことができ、特異な荷重(最大外繊維応力)は1.8メガパスカルであった。試験片は、0.25mm(ISO試験75-2:2013では0.32mm)曲げるまで、温度を2℃/分で上昇させたシリコーン油槽中に下げてもよい。
【0042】
[0046]引張弾性率、引張応力、および引張伸び:引張特性は、ISO試験527:2019(ASTM D638-14と技術的に同等)に準拠して試験され得る。係数測定および強度測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmを有する、同じ試験片試料で行うことができる。試験温度は、23℃であってもよく、試験速度は、1mm/分または5mm/分であってもよい。
【0043】
[0047]曲げ弾性率、曲げ応力、および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験178:2019(ASTM D790-10に技術的に同等)に準拠して試験され得る。この試験は、64mm支持スパンで実施することができる。試験は、切断されていないISO3167マルチパーパスバーの中心部分で実行され得る。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0044】
[0048]シャルピー衝撃強さ:シャルピー特性は、ISO試験ISO179-1:2010(ASTM D256-10、方法Bと技術的に同等)に準拠して試験され得る。この試験は、1型試験片サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して実行され得る。ノッチ付き衝撃強さを試験する場合、ノッチは、A型ノッチ(底部半径0.25mm)であってもよい。試験片は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切断され得る。試験温度は23℃であってもよい。
【0045】
実施例1
[0049]LCP1を85wt.%、およびガラス繊維を15wt.%含有した試料が形成される。LCP1は、HBA約73%およびHNA27%から形成される。
【0046】
実施例2
[0050]LCP2を85wt.%、およびガラス繊維を15wt.%含有した試料が形成される。LCP2は、HBA約79%、HNA20%、およびTA1%から形成される。
【0047】
[0051]上記の試料は、ISO引張棒(80mm×10mm×4mm)に射出成形され、熱的性質および機械的性質について試験される。結果を以下の表1に示す。
【0048】
【0049】
[0052]これらの本発明の改変および変更、ならびに他の本発明の改変および変更は、当業者によって、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく実践され得る。加えて、様々な態様の側面は、全体において、または部分において、置き換えられ得ると理解されるべきである。さらに、当業者は、前述の記載が、単なる例示であり、添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を制限しようと意図するものではないと認識するであろう。
【国際調査報告】