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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】印刷版原版及びその印刷版
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240808BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20240808BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240808BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20240808BHJP
   B41N 1/00 20060101ALI20240808BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/00 502
G03F7/004 501
G03F7/095
B41N1/00
C08F2/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506871
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022074135
(87)【国際公開番号】W WO2023015115
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,288
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン ラング
(72)【発明者】
【氏名】ヴィオレタ ラング
(72)【発明者】
【氏名】マーク エー.ハックラー
【テーマコード(参考)】
2H114
2H196
2H225
4J011
【Fターム(参考)】
2H114AA00
2H114BA10
2H114DA03
2H114DA04
2H114DA43
2H114DA46
2H114DA47
2H114DA50
2H114DA51
2H114DA52
2H114DA56
2H114DA57
2H114DA61
2H114EA02
2H114EA04
2H196AA02
2H196BA05
2H196BA06
2H196EA02
2H196EA04
2H196EA13
2H196GA43
2H196KA02
2H225AC21
2H225AC33
2H225AM13P
2H225AM48P
2H225AM49P
2H225BA04P
2H225CA02
2H225CB01
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H225CC29
2H225CD02
2H225DA02
4J011QA03
4J011QA12
4J011QA45
4J011RA05
4J011TA03
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA10
(57)【要約】
本発明は、改善された特性を有する、印刷版原版、特に、印刷版又は印刷プレートを形成することができる印刷版原版に関する。印刷版原版は、式(I)の構造を有する添加剤を含有する光重合性組成物を含む。添加剤の存在は、処理の容易さ及び/又はより良好なクリーンアウト及び印刷版のベタ領域上のウェブマーキングの減少をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性層を含む印刷版原版であって、前記光重合性層が、バインダ、可塑剤、光開始剤、及び添加剤を含み、前記添加剤が、式(I):
【化1】
(式中、Wは、直接結合又は-CHR-であり;X及びYは、独立して、C又はOであり;R、R、R、及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり;RはH又はC~Cアルキルである)
の構造を有する1種以上の化合物を含有する、印刷版原版。
【請求項2】
前記可塑剤がポリブタジエン油又はポリイソプレン油である、請求項1に記載の印刷版原版。
【請求項3】
赤外線放射によってアブレーション可能であり且つ非赤外の化学線に対して不透明なデジタル層を更に含む、請求項2に記載の印刷版原版。
【請求項4】
Wが直接結合である、請求項3に記載の印刷版原版。
【請求項5】
X及びYがCである、請求項4に記載の印刷版原版。
【請求項6】
及びRがHである、請求項4に記載の印刷版原版。
【請求項7】
がC~Cアルキルである、請求項4に記載の印刷版原版。
【請求項8】
がCアルキルである、請求項7に記載の印刷版原版。
【請求項9】
Wが-CHR-である、請求項2に記載の印刷版原版。
【請求項10】
X及びYがOである、請求項9に記載の印刷版原版。
【請求項11】
がHである、請求項10に記載の印刷版原版。
【請求項12】
がCアルキルである、請求項11に記載の印刷版原版。
【請求項13】
がHである、請求項9に記載の印刷版原版。
【請求項14】
及びRがHである、請求項9に記載の印刷版原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下、2021年8月4日付けで出願された米国仮特許出願第63/229288号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、改善された特性を有する、印刷版原版、特に、印刷版又は印刷プレートを形成することができる印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0003】
フレキソ印刷プレートは、段ボール箱から厚紙箱及びプラスチックフィルムの連続ウェブに至るまでの包装材料の印刷のために幅広く使用されている。フレキソ印刷プレートは、米国特許第4,323,637号明細書及び同第4,427,759号明細書に記載のもの等の光重合性組成物から作製され得る。光重合性組成物は、一般的に、エラストマー系バインダと、少なくとも1つのモノマーと、光開始剤と、を含む。感光性要素は、一般的に、支持体とカバーシート若しくは多層カバー要素との間に挟まれている光重合性組成物の層を有する。フレキソ印刷プレートは、化学線に曝露されると架橋又は硬化する、その能力によって特徴付けられる。典型的には、プレートは、プレートの裏面を通って指定量の化学線に均一に暴露される。次に、プレートの前面の像様露光が、いわゆるアナログワークフローのための写真のネガ型、ポジ型、若しくはフォトツール(例えば、ハロゲン化銀フィルム)等の像担持アートワーク若しくはテンプレートを通して、又はいわゆるデジタルワークフローのための光重合性層の上に事前に形成された放射不透明領域を有するin-situマスクを通して行われる。プレートは、紫外線(UV)又はブラックライト等の化学線に曝露される。化学線は、ポジフィルムの透明領域を通って感光性材料に入り、黒色領域又は不透明領域に入るのを阻止される。露光した材料は架橋し、画像現像中に使用される溶剤に不溶性になる。ポジフィルムの不透明領域の下の未露光の未架橋フォトポリマー領域は可溶性のままであり、適切な溶媒で洗い流されて印刷に適したレリーフ画像を残す。その後、プレートは乾燥される。印刷プレートは、更に、表面粘着性を取り除くように処理され得る。全ての必要とされる処理工程の後、プレートはシリンダーに取り付けられて印刷に使用される。
【0004】
或いは、「乾式」熱現像プロセスを使用してもよい。熱現像プロセスでは、化学線に像様露光された感光性層は、感光性層の未露光部分の組成物を軟化又は溶融させ、吸収材料に流入させるのに十分な温度で吸収材料と接触される。例えば、米国特許第3,264,103号明細書(Cohenら);米国特許第5,015,556号明細書(Martens);米国特許第5,175,072号明細書(Martens);米国特許第5,215,859号明細書(Martens);及び米国特許第5,279,697号明細書(Petersonら)を参照されたい。感光性層の露光部分は、未露光部分の軟化温度においては、固いまま、すなわち軟化したり溶解したりしない。吸収性材料は、軟化した未照射材料を収集し、次に、感光性層から分離及び/又は除去される。流動性組成物を未照射領域から十分に除去し、印刷に適したレリーフ構造を形成するために、加熱及び感光性層との接触のサイクルを数回繰り返す必要があり得る。したがって、残っているのは、所望の印刷画像を表す照射硬化組成物の隆起レリーフ構造である。熱現像プロセス中、感光性層の未露光部分中の流動性未架橋材料の効果的な除去が必要とされる。
【0005】
加えて、多くの場合、画像、特にはインクの均一で高濃度のカバレッジ、いわゆるベタインク濃度を有するベタ領域を印刷するためのフレキソ凸版印刷版が望ましい。特に大面積での印刷版から基材へのインクの移動又は広がりが乏しいと、斑点及び粒状性等の印刷欠陥が生じる。溶剤系印刷インク及びUV硬化性印刷インクを用いると特に不満足な印刷の結果が得られる。
【0006】
ベタスクリーニングは、フレキソ印刷におけるベタインク濃度を改善するための周知のプロセスである。ベタスクリーニングは、パターンが印刷プロセスにおいて再現(すなわち印刷された画像)されないほどに十分に小さく、またパターンが通常のすなわちスクリーニングされていない印刷面と実質的に異なるように十分に大きい、凸版印刷版のベタ印刷領域にパターンを作り出すことからなる。ベタスクリーニングのために使用される小さいフィーチャのパターンは、多くの場合プレートセルパターン又はマイクロセルパターンと呼ばれる。
【0007】
インクの均一で高濃度のカバレッジ、すなわちベタインク濃度でのベタ印刷のための凸版印刷版の能力を改善するために、様々なマイクロセルパターンが広く使用されている。例えば、米国特許第6,492,095号明細書及び米国特許第7,580,154号明細書のSamworth、米国特許出願公開第2010/0143841号明細書のStoltら、及び米国特許出願公開第2016/0355004号明細書のBlomquistらを参照されたい。マイクロセルパターンは、印刷されるインク濃度の改善のためにベタ領域において使用され得るだけでなく、文字列、線画、ハーフトーンのため、すなわちインク転写特性の改善が実現されるあらゆる種類の画像要素のためにも使用され得る。
【0008】
隆起したレリーフ構造又は中間調ドットの間の改善されたクリーンアウトを必要とする印刷品質に対する増大する要求を満たすことができる熱現像プロセスから得られる凸版印刷版、及び、インクの均一で高濃度のカバレッジを有する、特にベタ領域の印刷の必要性が存在する。印刷版はまた、印刷品質を向上させるために、ウェブマークの形成を最小限に抑えてマイクロセルパターンを保持することが望ましい。本開示は、光重合性組成物中に添加剤を含む印刷版原版を提供することによってこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態は、光重合性層を含む印刷版原版を提供し、当該光重合性層は、バインダ、可塑剤、光開始剤、及び添加剤を含み、当該添加剤は、式(I):
【0010】
【化1】
(式中、Wは、直接結合又は-CHR-であり;X及びYは、独立して、C又はOであり;R、R、R、及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり;RはH又はC~Cアルキルである)
の構造を有する1種以上の化合物を含む。
【0011】
別の実施形態は、可塑剤がポリブタジエン油又はポリイソプレン油であることを提供する。
【0012】
別の実施形態は、印刷版原版が、赤外線放射によってアブレーション可能であり且つ非赤外の化学線に対して不透明なデジタル層を更に含むことを提供する。
【0013】
別の実施形態は、Wが直接結合であることを提供する。
【0014】
別の実施形態は、X及びYがCであることを提供する。
【0015】
別の実施形態は、各R及びRがHであることを提供する。
【0016】
別の実施形態は、RがC~Cアルキルであることを提供する。
【0017】
別の実施形態は、RがCアルキルであることを提供する。
【0018】
別の実施形態は、Wが-CHRであることを提供する。
【0019】
別の実施形態は、X及びYがOであることを提供する。
【0020】
別の実施形態は、RがHであることを提供する。
【0021】
別の実施形態は、RがCアルキルであることを提供する。
【0022】
別の実施形態は、RがHであることを提供する。
【0023】
更に別の実施形態は、R及びRがHであることを提供する。
【0024】
本発明のこれらの及び他の特徴及び有利性は、以下の詳細な説明を読むことで当業者により容易に理解されるであろう。明確にするため、別々の実施形態として前述又は後述される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態における組合わせにおいてももたらされ得る。反対に、単一の実施形態に関連して記載される本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の下位の組合わせにおいてももたらされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1の両方のプレートについての50%のドット間のクリーンアウトの顕微鏡画像である。
図2】実施例1の両方のプレートについてのマイクロセルパターニングの顕微鏡画像である。
図3】実施例2の両方のプレートについての50%のドット間のクリーンアウトの顕微鏡画像である。
図4】実施例2の両方のプレートについてのマイクロセルパターニングの顕微鏡画像である。
図5】実施例3の両方のプレートについての50%のドット間のクリーンアウトの顕微鏡画像である。
図6】実施例3の両方のプレートについてのマイクロセルパターニングの顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以降の詳細な説明全体を通じて、図面の全ての図中の類似の参照符号は類似の要素を意味する。
【0027】
特段の指示がない限り、本明細書で使用される以下の用語は、下で定義される通りの意味を有する。
【0028】
「化学線」とは、感光性組成物の物理的又は化学的な特徴を変化させるための反応又は反応群を開始させることができる放射を指す。
【0029】
「ドット毎インチ」(DPI)とは、階調画像中のドット構造の頻度であり、空間的な印刷ドット濃度の尺度であり、特に、1直線インチ(2.54cm)の範囲内に配置され得る個々のドットの数である。DPI値は、画像解像度と相関する傾向がある。グラフィック用途のための典型的なDPI範囲は、75~150であるが、300に達する場合もある。
【0030】
「線スクリーン解像度」は、「スクリーン線数」と呼ばれる場合もあり、ハーフトーンスクリーン上の1インチ当たりの線又はドットの数である。
【0031】
「光学濃度」又は単に「濃度」は、画像の暗さ(光の吸収又は不透明性)の程度であり、次の関係式から決定することができ、
濃度=log10{1/反射率}
式中の反射率は{反射光の強度/入射光の強度}である。濃度は、通常は、ISO 5/3:2009 写真及びグラフィック技術のための国際規格-濃度測定-第3部:分光条件、に準拠して計算される。
【0032】
「ベタインク濃度」とは、印刷色の最大量を示すことが意図される印刷領域の濃度の尺度である。
【0033】
「粒状性」とは、印刷領域の濃度の変動を指す。ISO-13660国際印刷品質規格は、これを「全方向において1ミリメートル当たり0.4サイクルを超える空間周波数での濃度の非周期的な変動」として規定している。粒状性のISO-13660の測定は、多数の42μmの正方形である小さい面積の濃度の標準偏差である。
【0034】
「マイクロセル」は、印刷面を変更する画像要素又はマイクロセルを指し、これは小さい窪み及び/又は非常に小さい反転のようにみえる場合があり、これはそれぞれが、本発明の感光性要素から得られる印刷版上の最小の周期構造間の間隔よりも、少なくとも1つの次元において、より小さい。マイクロセルは、凸版印刷版によって基材上に印刷されるインクの均一性及び見かけ濃度を改善するように設計された、凸版印刷版の印刷面上の不規則な部分である。いくつかの実施形態では、凸版印刷版のマイクロセルは、本発明の感光性要素に一体化された印刷されたマイクロセルパターンのフィーチャに対応し得る。
【0035】
「マイクロセルパターン」は、本発明の感光性要素から得られる凸版印刷版の印刷面を変更するパターンを一緒に形成する、画像要素又はマイクロセルの複合体を指す。
【0036】
「クリーンアウト」は、熱プロセッサ内の不織吸収性材料と接触した後、隆起レリーフ構造間の領域又は中間調ドットを含む印刷版全体において、印刷版が未架橋又は未重合のプレート材料を含まない程度を指す。
【0037】
「可視放射又は可視光」は、放射波長範囲が約390~約770nmである、ヒトの目で検出できる電磁放射の範囲を指す。
【0038】
「赤外線放射又は赤外光」は、約770~10nmの放射波長を指す。
【0039】
「紫外線放射又は紫外光」は、約10~390nmの放射波長を指す。
【0040】
赤外、可視、及び紫外について示した波長範囲は一般的指針であり、一般的に紫外線放射と見なされるものと可視放射と見なされるものとの間、及び一般的に可視放射と見なされるものと赤外線放射と見なされるものとの間にはいくらかの放射波長の重なりが存在し得ることに留意すべきである。
【0041】
「白色光」とは、太陽光のように全ての可視光の波長をほぼ等しい強度で含む光を指す。
【0042】
「室内光」とは、部屋に通常の照明をもたらす光を指す。室内光は、可視光の全ての波長を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0043】
用語「感光性」は、化学線と反応して、感光性組成物が、反応又は反応群、特に光化学反応群、を開始させることが可能な任意の系を包含する。化学線に露光すると、縮合機構又はフリーラジカル付加重合のいずれかにより、モノマー及び/又はオリゴマーの連鎖成長重合が誘起される。全ての光重合性機構が考えられるものの、本発明の組成物及びプロセスは、1つ以上の末端エチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーのフリーラジカルによって開始される付加重合に関して記載される。これに関して、光開始剤系は、化学線に露光されると、モノマー及び/又はオリゴマーの重合を開始するために必要なフリーラジカル源として機能することができる。モノマーは非末端エチレン性不飽和基を有してもよく、及び/又は組成物は、架橋を促進するバインダ若しくはオリゴマー等の1種以上の他の成分を含有してもよい。そのため、用語「光重合性」は、光重合性、光架橋性又はその両方の系を包含することが意図されている。本明細書で使用する場合、光重合は、硬化と呼ばれる場合もある。感光性要素は、本明細書において、感光性原版、感光性印刷原版、印刷原版、及び原版と呼ばれる場合もある。
【0044】
本明細書において、用語「固体」は、一定の体積及び形状を有し、その体積又は形状を変えようとする力に抵抗する感光性層の物理的状態を指す。光重合性組成物の層は、約5℃~約30℃の温度である室温で固体である。光重合性組成物の固体層は、重合(光硬化)されていてもよく、或いは未重合であってもよく、或いはその両方であってもよい。
【0045】
用語「デジタル層」は、レーザ光、特には赤外レーザ光によって応答する又は変更可能な層、より具体的には赤外レーザ光によってアブレーション可能である層を包含する。デジタル層は、非赤外の化学線に対して不透明でもある。デジタル層は、本明細書においては赤外線感受性層、赤外線感受性アブレーション層、レーザアブレーション可能な層、又は化学線不透過層とも呼ばれる場合がある。
【0046】
特段の指示がない限り、用語「感光性要素」、「印刷版原版」、「印刷原版」、及び「印刷版」には、平判、プレート、シームレス連続版、円筒版、プレート・オン・スリーブ、及びプレート・オン・キャリア等の印刷版原版として好適な任意の形態の要素又は構造が包含されるが、これらに限定されない。
【0047】
添加剤
上述の式(I)の構造を有する1種以上の化合物を含む添加剤が、印刷版原版の光重合性層に導入される。この添加剤の存在は、驚くべきことに、印刷版の他の望ましい特性を損なうことなく、得られた印刷版のクリーンアウトを改善することが見出された。バインダ及びモノマー等の光重合性層中の他の成分を調整して、得られる印刷版のクリーンアウトを改善することは可能であるが、そうすることは、他の望ましい特性を損ない、不良なウェブマーク、マイクロセルパターンを保持することができないこと、ハイライトドットの喪失等をもたらす。添加剤を含めることにより、良好なクリーンアウトを達成することに加えて、印刷版のより大きな強度及び耐久性をもたらす高濃度のバインダが可能になる。添加剤は、光重合性層の総重量に基づいて、典型的には0.5重量%~20重量%、好ましくは1.5重量%~15重量%の範囲の量で存在する。
【0048】
感光性要素
感光性要素は、光重合可能な印刷版原版である。感光性要素は、化学線に対して感受性のある組成物(大部分の実施形態では光重合性の組成物)の層を含む。感光性要素は、一般的なアナログ及びデジタルワークフロー、又はマスキング層の積層を含むそれらの変形と互換性がある。
【0049】
感光性要素は、感光性組成物の層と、感光性層に隣接するデジタル層とを含むことができる。デジタル層は、感光性要素用の画像のマスクを形成するために、典型的には赤外レーザ光であるレーザ光が使用されるデジタルダイレクト製版(digital direct-to-plate)画像技術で用いられる(従来のポジ型又はフォトツールの代わりに)。デジタル層は、赤外線放射によってアブレーション可能であり且つ非赤外の化学線に対して不透明である赤外線アブレーション層を含む。赤外線アブレーション層は、(i)少なくとも1種の赤外線吸収材料と、(ii)放射不透過性材料と、を含み、(i)と(ii)とは同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、感光性要素は、上方に配置されたデジタル層を最初に含み、光重合性層の表面全体を覆うか又は実質的に覆う。いくつかの実施形態では、赤外レーザ光は、デジタル層を画像様に除去(すなわちアブレーション又は気化)してin-situマスクを形成する。この化学線不透過層のための好適な材料及び構造については、米国特許第5,262,275号明細書中でFanにより;米国特許第5,719,009号明細書中でFanにより;米国特許第6,558,876号明細書中でFanにより;欧州特許出願公開第0741330A1号明細書中でFanにより;並びに米国特許第5,506,086号明細書及び同第5,705,310号明細書中でVan Zoerenにより開示されている。米国特許第5,705,310号明細書中でVan Zoerenにより開示されているように、デジタル層の材料が感光性要素から除去されることから、デジタル層の材料を捕捉するためにデジタル層に隣接する材料捕捉シートがレーザー露光時に存在していてもよい。感光性要素から除去されなかったデジタル層の部分のみが要素上に残ってin-situマスクを形成する。
【0051】
デジタル層を構成する材料及びデジタル層が組み込まれる構造は、デジタル層が画像様に露光されて感光性要素の光重合性層上に又は隣接してin-situマスクを形成できる限り特に限定されない。デジタル層は、光重合性層の表面を実質的に被覆していてもよく、或いは画像形成可能な部分のみを被覆していてもよい。デジタル層は、バリア層あり又はなしで使用することができる。バリア層と共に使用される場合、光重合性層とデジタル層との間の材料の移動を最小限にするために、バリア層は光重合性層とデジタル層との間に配置される。モノマー及び可塑剤は、隣接する層の材料と相溶性がある場合、経時的に移動する可能性があり、それによりデジタル層のレーザ光感受性が変化する場合があるか、或いは画像化後にデジタル層の汚染及び粘着化が生じる場合がある。デジタル層はまた、デジタル層を選択的に除去又は転写できるレーザ光への感受性も有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、デジタル層は放射不透過性材料と、赤外線吸収性材料と、任意選択的なバインダとを含む。カーボンブラック及び黒鉛等の暗色の無機顔料、顔料の混合物、金属、並びに金属合金は、通常、赤外線感受性材料と放射不透過材料の両方として機能する。任意選択的なバインダはポリマー系材料であり、これらとしては、自己酸化型ポリマー、非自己酸化型ポリマー、熱化学分解性ポリマー、ブタジエン及びイソプレンとスチレン及び/又はオレフィンとのポリマー及びコポリマー、熱分解性ポリマー、両性インターポリマー、ポリエチレンワックス、上述した剥離層として従来使用されている材料、並びにこれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。デジタル層の厚さは感受性と不透明性の両方を最適化する範囲とすべきであるが、これは通常約20オングストローム~約50マイクロメートルである。デジタル層は、効果的に化学線を遮断し、下にある光重合性層を重合させるために、2.0超の透過光学濃度を有する必要がある。
【0053】
デジタル層は、(i)少なくとも1種の赤外線吸収性材料と、(ii)放射不透過性材料と、少なくとも1種のバインダと、を含み、(i)と(ii)とは同じであっても異なっていてもよい。次の材料はデジタル層のためのバインダとして好適であり、ポリアミド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、酢酸ビニルとビニルアルコールとのコポリマー、酢酸ビニルとピロリドンとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンワックス、ポリアセタール、ポリブチラール、ポリアルキレン、ポリカーボネート、ポリエステルエラストマー、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、スチレンとブタジエンとのコポリマー、スチレンとイソプレンとのコポリマー、スチレンとブタジエンとの熱可塑性ブロックコポリマー、スチレンとイソプレンとの熱可塑性ブロックコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ブチルゴム、ニトリルゴム、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、環式ゴム、酢酸ビニルと(メタ)アクリレートとのコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、メタクリレート-ブタジエン-スチレンターポリマー、アルキルメタクリレートのポリマー若しくはコポリマー、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、スチレンとアルコールで部分的にエステル化された無水マレイン酸とのコポリマー、及びこれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいバインダとしては、ポリアミド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、酢酸ビニルとビニルアルコールとのコポリマー、酢酸ビニルとピロリドンとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンワックス、ポリアセタール、ポリブチラール、ポリアルキレン、ポリカーボネート、環式ゴム、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、スチレンとアルコールで部分的にエステル化された無水マレイン酸とのコポリマー、ポリエステルエラストマー、及びこれらの組合わせが挙げられる。
【0054】
放射不透過性材料及び赤外線吸収性材料としての使用に好適な材料としては、金属、金属合金、顔料、カーボンブラック、黒鉛、及びこれらの組合わせが挙げられるがこれらに限定されない。各顔料が赤外線吸収性材料又は放射不透過性材料(又は両方)として機能する顔料の混合物をバインダと共に使用してもよい。染料も赤外線吸収性剤として好適である。適切な染料の例としては、ポリ(置換)フタロシアニン化合物;シアニン染料;スクアリリウム染料;カルコゲノピロアリリデン染料;ビス(カルコゲノピロロ)-ポリメチン染料;オキシインドリジン染料;ビス(アミノアリール)-ポリメチン染料;メロシアニン染料;クロコニウム染料;金属チオレート染料;及びキノイド染料が挙げられる。赤外線吸収性材料及び放射不透過性材料の両方として機能する好ましいものは、カーボンブラック、黒鉛、金属、及び金属合金である。放射不透過性材料及び赤外線吸収性材料は、材料を取り扱い易くし、均一に分布し易くするために、分散液であってもよい。
【0055】
光重合性層は、少なくともバインダ、可塑剤、光開始剤、及び上述の式(I)の添加剤を含む組成物から形成される。好ましい可塑剤は、典型的には液体形態であり、ポリブタジエン油、ポリイソプレン油、及び白色鉱油を含む。これらの油は、1,000~30,000の範囲の数平均分子量及び0~85%の範囲のビニル含有量を有する。これらの油は、商業的供給源から入手可能であるか、又は公知の方法に従って当業者によって容易に調製され得る。光開始剤は化学線に感受性を有する。本明細書全体を通じて、化学線には紫外線放射及び/又は可視光が含まれる。光重合性組成物の固体層は、凸版印刷に好適なレリーフを形成するために、1種以上の溶液で処理されるか、及び/又は加熱される。本明細書において、用語「固体」は一定の体積及び形状を有し、その体積又は形状を変えようとする力に抵抗する層の物理的状態を指す。光重合性組成物の固体層は、重合(光硬化)されていても、重合されていなくてもよく、又はその両方であってもよい。いくつかの実施形態では、光重合性組成物の層はエラストマーである。一実施形態では、感光性要素は、少なくともバインダと、少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物と、光開始剤とからなる光重合性組成物の層を含む。別の実施形態では、光重合性組成物の層は、エラストマー系バインダと、少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物と、光開始剤とを含む。いくつかの実施形態では、凸版印刷版はエラストマー系印刷版である(すなわち光重合性層はエラストマー層である)。
【0056】
バインダは、単独のポリマーであってもポリマーの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、バインダはエラストマー系バインダである。他の実施形態では、光重合性組成物の層はエラストマーである。バインダとしては、ポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリル、及びジエン/スチレン熱可塑性-エラストマー系ブロックコポリマー等の、共役ジオレフィン炭化水素の天然又は合成のポリマーが挙げられる。好ましくは、エラストマーブロックコポリマーは、直鎖及び多腕等の異なる構造のA-B-A型ブロックコポリマー、及びA-B型ブロックコポリマーであり、Aは非エラストマーブロック、好ましくはビニルポリマー、最も好ましくはポリスチレンを表し、Bはエラストマーブロック、好ましくはポリブタジエン又はポリイソプレンを表す。いくつかの実施形態では、エラストマー系A-B-Aブロックコポリマーバインダは、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマー、ポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマー、及びこれらの組合わせであってもよい。バインダは、感光性組成物の約10重量%~90重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、バインダは、感光性組成物の約40重量%~85重量%で存在する。
【0057】
他の好適なバインダとしては、アクリル;ポリビニルアルコール;ポリけい皮酸ビニル;ポリアミド;エポキシ;ポリイミド;スチレンブロックコポリマー;ニトリルゴム;ニトリルエラストマー;非架橋ポリブタジエン;非架橋ポリイソプレン;ポリイソブチレン及び他のブチルエラストマー;ポリアルキレンオキシド;ポリホスファゼン;アクリレートとメタクリレートとのエラストマー系ポリマー及びコポリマー;エラストマー系ポリウレタン及びポリエステル;エチレン-プロピレンコポリマー及び非架橋EPDM等のオレフィンのエラストマー系ポリマー及びコポリマー;酢酸ビニル及びその部分的に水素化された誘導体のエラストマー系コポリマー;が挙げられる。
【0058】
透明で曇りのない感光性層が製造される限り、光重合性組成物はバインダと相溶性がある付加重合可能な少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。付加重合可能な少なくとも1種の化合物は、モノマーとも呼ばれる場合があり、単一のモノマーであってもモノマーの混合物であってもよい。光重合性組成物の中で使用できるモノマーは当該技術分野で周知であり、少なくとも1つの末端エチレン基を有する付加重合エチレン性不飽和化合物が挙げられるが、これに限定されない。モノマーは、光重合性組成物にエラストマー特性を付与するために当業者が適切に選択することができる。
【0059】
光開始剤は、任意の単一の化合物であっても化合物の組合わせであってもよく、これは化学線に対して感受性があり、過剰な停止なしにモノマー又はモノマー類の重合を開始するフリーラジカルを生成する。任意の公知の分類の光開始剤、特にはフリーラジカル光開始剤を使用することができる。代替として、光開始剤は、放射により活性化された増感剤によってフリーラジカルを生じさせる際に化合物のうちの1種がフリーラジカルを与える、化合物の混合物であってもよい。大部分の実施形態では、主露光(並びに後露光及びバックフラッシュ)用の光開始剤は、310~400nm、好ましくは345~365nmの可視放射又は紫外線放射に感受性を有する。光開始剤は、通常、光重合性組成物の重量基準で0.001%~10.0%の量で存在する。
【0060】
光重合性組成物は、必要とされる最終的な特性に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。光重合性組成物への追加的な添加剤としては、増感剤、可塑剤、レオロジー調整剤、熱重合禁止剤、着色剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、安定剤、染料、及び充填剤が挙げられる。
【0061】
安定剤には、BNX1035及びBNX1037等のフェノール系酸化防止剤;トリス(4-ノニルフェニル)ホスファイト(TNPP)、Benefos 1618、及びBenefos 1626等のホスファイト系酸化防止剤;BLS292、及びBLS123等のヒンダードアミン光安定剤;Irganox(登録商標)565及びIrganox(登録商標)1520L等のチオエーテル;Uvinul3039等のシアノアクリレート;及び当技術分野で一般的に知られている他のタイプの安定剤を含む。
【0062】
光重合性層の厚さは、必要とされる印刷プレートの種類に応じて幅広い範囲、例えば約0.005インチ~約0.250インチ以上(約0.013cm~約0.64cm以上)、にわたって変動する場合がある。いくつかの実施形態では、光重合性層は約0.005インチ~0.0450インチ(0.013cm~0.114cm)の厚さを有する。いくつかの他の実施形態では、光重合性層は約0.020インチ~約0.112インチ(約0.05cm~約0.28cm)の厚さを有する。他の実施形態では、光重合性層は約0.112インチ~約0.250インチ以上(0.28cm~約0.64cm以上)の厚さを有する。当該技術分野で従来行われているように、製造業者は、典型的には、支持体と光重合性層の厚さを含む印刷機上での印刷版の総厚さと比較して印刷原版を識別する。印刷版の光重合性層の厚さは、支持体の厚さを含まないので、典型的には製造業者が設計した厚さよりも小さい。
【0063】
感光性要素は、感光性層上の又は感光性層に隣接した1つ以上の追加の層を含み得る。大部分の実施形態では、1つ以上の追加的な層は、支持体と反対の感光性層の面上にある。追加的な層の例としては、保護層、キャッピング層、エラストマー層、バリア層、及びこれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の追加的な層は、処理等の、要素を印刷版に変換する工程のうちの1つの間に、全部又は一部を除去可能であってもよい。
【0064】
任意選択的には、感光性要素は少なくとも1つの光重合性層の上にエラストマー系キャッピング層を含んでいてもよい。エラストマー系キャッピング層は、典型的には、光重合性層のカレンダー加工時に感光性印刷要素の一部となる多層カバー要素の一部である。多層カバー要素、及びエラストマー系キャッピング層として好適な組成物は、Gruetzmacherらの米国特許第4,427,759号明細書及び米国特許第4,460,675号明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、エラストマー系キャッピング層の組成物は、エラストマー系バインダと、任意選択的なモノマー及び光開始剤及び他の添加剤とを含み、これらの全ては、バルクの光重合性層に使用されるものと同じであっても異なっていてもよい。エラストマー系キャッピング層は必ずしも光反応性成分を含有していなくてもよいものの、層は、下にあるバルクの光重合性層と接触すると最終的に感光性になる。そのため、化学線に画像様露光すると、エラストマー系キャッピング層は、重合又は架橋が生じた硬化部分と、未重合すなわち未架橋のままである未硬化部分とを有する。処理によって、エラストマー系キャッピング層の未重合部分が光重合性層と共に除去されて、レリーフ面が形成される。化学線に露光されたエラストマー系キャッピング層は、光重合性層の重合領域の表面に残り、印刷プレートの実際の印刷面になる。エラストマー系キャッピング層を含む感光性要素の複数の実施形態では、セルパターン層はエラストマー系キャッピング層とデジタル層との間に配置される。
【0065】
凸版印刷版として有用な感光性要素のいくつかの実施形態については、光重合性層の表面は粘着性であってもよく、実質的に非粘着性の表面を有する剥離層が光重合性層の表面に設けられていてもよい。このような剥離層は、任意選択的な仮カバーシート又は他のデジタルマスク要素の除去時に光重合性層の表面を傷つかないように保護することができ、また光重合性層が確実にカバーシート又は他のデジタルマスク要素に貼り付かないようにすることができる。画像の露光中、剥離層は、マスクを有するデジタル要素が光重合性層と結合することを防止することができる。剥離層は、化学線に感受性を有さない。剥離層は、光重合性層とデジタル層との間に任意選択的に介在するバリア層の第1の実施形態としても好適である。エラストマー系キャッピング層は、バリア層の第2の実施形態としても機能することができる。剥離層に好適な材料の例は当該技術分野で周知であり、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、両性インターポリマー、及びこれらの組合わせが挙げられる。
【0066】
感光性印刷要素は、要素の最上層の上に、印刷版の作製前に除去され得る仮カバーシートも含んでいてもよい。カバーシートの1つの目的は、保管時及び取扱時に、感光性印刷要素の最上層を保護することである。カバーシートに好適な材料の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアミド、又はポリエステルの薄膜が挙げられ、これらは剥離層で下引きされていてもよい。カバーシートは、好ましくは、Mylar(登録商標)ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルから作製される。
【0067】
感光性要素の作製プロセス
バインダと、油と、モノマーと、光開始剤と、他の任意選択的な添加剤とを混合することによって形成される光重合性組成物の層を含む感光性要素印刷版原版を作製又は製造することは十分に当業者の技術の範囲内である。大部分の実施形態では、光重合性混合物は、支持体とデジタル層を有する仮カバーシート等の、2枚のシートの間、又は1枚の平らなシートと離型ロールとの間、の望ましい厚さまで室温より上の温度でホットメルトへと形成され、押出され、カレンダー加工される。或いは、光重合性材料は、押出及び/又はカレンダー加工されて仮支持体上に層を形成し、その後望ましい最終的な支持体又はデジタルカバーシートにラミネートされてもよい。印刷版原版は、適切な混合装置の中で成分を混ぜ合わせた後に適切なモールドの中で材料を望ましい形状に圧縮することによって作製することもできる。材料は、通常は支持体とカバーシートとの間で圧縮される。成形工程には圧力及び/又は熱が含まれていてもよい。
【0068】
感光性要素は、二層又は多層構造である1つの光重合性層を含むことができる。更に、感光性要素は少なくとも1つの光重合性層の上のエラストマー系キャッピング層を含んでいてもよい。多層カバー要素、及びエラストマー系キャッピング層として好適な組成物は、Gruetzmacherらの米国特許第4,427,759号明細書及び米国特許第4,460,675号明細書に開示されている。
【0069】
円筒形状の光重合性要素は任意の好適な方法によって作製することができる。一実施形態では、円筒形状の要素は、キャリア又は円筒状の支持体、すなわちスリーブの上に巻かれた光重合性印刷プレートと円筒形状を形成するために嵌め合わされたプレートの端部とから形成することができる。円筒形状の光重合性要素は、Cushnerらの米国特許第5,798,019号明細書に開示されている方法及び装置に従って円形に押出及びカレンダー加工して作製することもできる。
【0070】
上で説明されている本発明の教示の利益を受ける当業者は、これらに対する様々な修正に影響を及ぼすことができる。これらの修正は、添付の請求項に示されている本発明の範囲内に包含されるものとして解釈されるべきである。
【実施例
【0071】
以下の実施例において、全てのパーセンテージは、特段の記載がない限り重量基準である。
【0072】
実施例1
スチレン系ブロックコポリマーと、ポリブタジエン油と、添加剤としての反応性アクリレートとを含有するフレキソ印刷版原版のための2つの異なる配合物を作製した。第1の配合物では、フレキソ印刷で一般的に使用される直鎖脂肪族二官能性アクリレートモノマーを添加剤として採用し(A1)、第2の配合物では、添加剤は上述した式(I)の単官能性環状アクリレート化合物である4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(BCHA)であった(A2)。両方の印刷版原版は、同じ重量%(15%)のアクリルモノマー系添加剤を含有していた。両方の印刷版原版は、74重量%のスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーと、30%未満のビニル含有量を有する9重量%のポリブタジエン油と、UV光開始剤と、染料と、安定剤とを含有していた。典型的なフレキソ印刷製版ワークフローに従って、プレートをデジタル画像化し、365nmの化学線を用いて架橋し、熱処理した。50%のドット間のクリーンアウト(図1)及びマイクロセルパターニング(図2)の顕微鏡画像を両方のプレートについて撮影した。図1及び図2に示されているように、A2配合物を用いて作製された印刷プレートは、A1配合物を用いて作製された印刷版と比較して優れたクリーンアウトを有する。
【0073】
【数1】
【0074】
実施例2
スチレン系ブロックコポリマーと、ポリブタジエン油と、添加剤としての反応性アクリレートとを含有するフレキソ印刷版原版のための2つの異なる配合物を作製した。第1の配合物では、フレキソ印刷で一般的に使用される脂肪族ジアクリレートモノマーを添加剤として採用し(A3)、第2の配合物では、添加剤は上述した式(I)の単官能性環状アクリレート化合物である4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(BCHA)であった(A4)。両方の印刷版原版は、同じ重量%(12.5%)のアクリルモノマー系添加剤を含有していた。両方の印刷版原版は、70重量%のスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーと、30%未満のビニル含有量を有する12重量%のポリブタジエン油と、UV光開始剤と、染料と、安定剤とを含有していた。典型的なフレキソ印刷製版ワークフローに従って、プレートをデジタル画像化し、365nmの化学線を用いて架橋し、熱処理した。50%のドット間のクリーンアウト(図3)及びマイクロセルパターニング(図4)の顕微鏡画像を両方のプレートについて撮影した。図3及び図4に示されているように、A4配合物を用いて作製された印刷プレートは、A3配合物を用いて作製された印刷版と比較して優れたクリーンアウトを有する。
【0075】
【数2】
【0076】
実施例3
スチレン系ブロックコポリマーと、ポリブタジエン油と、添加剤としての反応性アクリレートとを含有するフレキソ印刷版原版のための2つの異なる配合物を作製した。第1の配合物では、フレキソ印刷で一般的に使用される長鎖脂肪族ジアクリレートモノマーを添加剤として採用した(A5)。第2の配合物は、A5中の25%の長鎖脂肪族ジアクリレートモノマーをBCHAで置き換えることにより得られる(A6)。プレートA5は12重量%の長鎖脂肪族ジアクリレートを含んでおり、プレートA6は9重量%の長鎖脂肪族ジアクリレートと3重量%のBCHAとを含んでいた。両方の印刷版原版は、70重量%のスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーと、30%超のビニル含有量を有する12重量%のポリブタジエン油と、UV光開始剤と、染料と、安定剤とを含有していた。典型的なフレキソ印刷製版ワークフローに従って、プレートをデジタル画像化し、365nmの化学線を用いて架橋し、熱処理した。50%のドット間のクリーンアウト(図5)及びマイクロセルパターニング(図6)の顕微鏡画像を両方のプレートについて撮影した。図5及び図6に示されているように、A6配合物を用いて作製された印刷プレートは、A5配合物を用いて作製された印刷版と比較して優れたクリーンアウトを有する。
【0077】
【数3】
【0078】
追加の実施例
以下の表1に示す組成の配合物を含む光重合性層を有するいくつかの他の印刷版原版も製造し、試験した。表1の結果は、添加剤としてのBCHAの存在がクリーンアウトを改善したことを示している。
【0079】
【表1】
【0080】
仮想例
SIS若しくはSBSブロックコポリマー、又はSISとSBSの両方の組合せと、光重合性層の総重量に基づいて1.5重量%~15重量%の任意のレベルの上記式(I)で定義される添加剤と、に基づく光重合性配合物を含む印刷版原版からのフレキソ印刷版は、熱処理されたプレートにおいて中間調ドット間のクリーンアウトの改善を示す。
【0081】
バインダとして35重量%のSIS及び35重量%のSBSブロックコポリマーと、最大20重量%のポリブタジエン又はポリイソプレンと、添加剤としての6%の環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTPF)とを含む光重合性配合物を含む印刷版原版からのフレキソ印刷版は、光重合性層中にモノマーとして脂肪族二官能アクリレートのみを含む印刷版原版からの印刷版と比較した場合、改善されたクリーンアウトを示す。
【0082】
典型的な光重合性配合物を含み、添加剤として式(I)及び下の表2で定義されるいずれか1種以上の化合物を含有する印刷版原版からのフレキソ印刷版は、クリーンアウトの改善を示す。
【0083】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性層を含む印刷版原版であって、前記光重合性層が、バインダ、可塑剤、光開始剤、及び添加剤を含み、前記添加剤が、式(I):
【化1】
(式中、Wは、直接結合又は-CHR-であり;X及びYは、独立して、C又はOであり;R、R、及びRは、独立して、H又はC~Cアルキルであり;RはC~Cアルキルであり;RはH又はC~Cアルキルである)
の構造を有する1種以上の化合物を含有する、印刷版原版。
【請求項2】
前記可塑剤がポリブタジエン油又はポリイソプレン油である、請求項1に記載の印刷版原版。
【請求項3】
赤外線放射によってアブレーション可能であり且つ非赤外の化学線に対して不透明なデジタル層を更に含む、請求項2に記載の印刷版原版。
【請求項4】
Wが直鎖結合である、請求項3に記載の印刷版原版。
【請求項5】
X及びYがCである、請求項4に記載の印刷版原版。
【請求項6】
及びRがHである、請求項4に記載の印刷版原版。
【請求項7】
Wが-CHR-である、請求項2に記載の印刷版原版。
【請求項8】
X及びYがOである、請求項7に記載の印刷版原版。
【請求項9】
がHである、請求項8に記載の印刷版原版。
【請求項10】
がCアルキルである、請求項9に記載の印刷版原版。
【請求項11】
がHである、請求項7に記載の印刷版原版。
【請求項12】
がHである、請求項7に記載の印刷版原版。
【国際調査報告】