(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】排気ガスを処理する方法及びHVACシステム
(51)【国際特許分類】
B01J 23/889 20060101AFI20240808BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B01J23/889 A ZAB
B01D53/86 245
B01D53/86 280
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506888
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 GB2022052120
(87)【国際公開番号】W WO2023026023
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルコーヴ クラーヴェ、シルビア
(72)【発明者】
【氏名】ドーラ、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フェデイコ、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FB09
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品を使用して、一酸化炭素(CO)及び/又は1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む排気ガスを処理する方法に関する。本発明はまた、PGMフリー触媒物品を含むHVACシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素(CO)及び/又は1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む排気ガスの処理方法であって、前記排気ガスを、Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、40~50重量%のMn及び少なくとも5重量%の銅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、
40~50重量%のMn、
6~8重量%のCu、
3~6重量%のMg、
1~3重量%のAl、
35~45重量%のLaを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、
42~48重量%のMn、
約7重量%のCu、
約4.5重量%のMg、
約2重量%のAl、
39~43重量%のLaを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合酸化物が、Mn、Cu、Mg、Al及びLa、並びに酸素から本質的になる、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Mn対Laのモル比が2.5:1~3:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記VOCが、メタノール、エタノール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロペン及びエチレンから選択される1種以上の化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記排気ガスが、HVACシステムからのものであるか、又は化学合成プロセス、好ましくはテレフタル酸合成からのテールガスである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品を含むHVACシステムであって、好ましくは、前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、
40~50重量%のMn、
6~8重量%のCu、
3~6重量%のMg、
1~3重量%のAl、
35~45重量%のLaを含む、HVACシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス、特に一酸化炭素(CO)及び/又は1種以上の揮発性有機化合物(volatile organic compound、VOC)を含む排気ガスを、PGMフリー触媒物品を用いて処理する方法に関する。本発明はまた、PGMフリー触媒物品を含むHVACシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
白金族金属(platinum group metal、PGM)を含む触媒が、CO及びVOCなどの有害排出物の触媒酸化に使用され得ることは周知である。PGM触媒は、自動車排気排出物並びに工業プロセスからの排出物の処理のための触媒において遍在する。PGM触媒は、高い触媒活性及び良好な熱安定性を有する。しかしながら、PGMは高価であり、触媒活性を失うことなく触媒物品のコストを低減することが望まれている。これは、テレフタル酸合成におけるテールガスの触媒酸化などの工業プロセス、及び高価なPGMへの多大な投資を必要とするHVACシステムなどの大量の排気ガスを処理するために使用される他のシステムに特に当てはまる。
【0003】
PGM触媒に代わるものとして、卑金属を含むPGMフリー触媒が知られている。卑金属はかなり安価であるが、改善されたCO及びVOC酸化活性を提供するために高い触媒活性を示すそのような触媒が依然として必要とされている。
【0004】
国際公開第03/101612号は、工業プロセス及び商業プロセス、並びに石炭、石油及びガスなどの炭化水素燃料から電力を生成するためのプロセスからの排出物を処理するための触媒組成物に関する。特に、本発明は、一酸化炭素(CO)及び揮発性有機化合物(VOC)を酸化するための触媒組成物に関し、一態様において、水素化触媒として使用するための触媒組成物であって、少なくとも2種の異なる高表面積酸化物担体材料を含み、高表面積担体材料のうちの少なくとも1種が少なくとも1種の卑金属促進剤を担持する、触媒組成物を提供する。
【0005】
国際公開第2010/123731号は、一酸化炭素及び揮発性有機化合物の酸化のための銅及びマンガン含有卑金属触媒に関する。本触媒組成物は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、及びチタニアのうちの1種以上(例えば、ランタン安定化アルミナ及び/又はジルコニウム安定化セリア)を含む酸化物担体材料上に担持された、少なくとも1種の卑金属促進剤及び少なくとも1種の卑金属触媒を含む。
【0006】
国際公開第2014/138397号は、卑金属触媒及びその使用方法、特に、アルミナを実質的に含まない酸素付与性の担体と接触している第1の卑金属触媒と、少なくとも1種の第2の卑金属触媒とを含む触媒に関する。いくつかの実施形態では、触媒は10~20重量%のCuOを含み、触媒は5~10重量%のMnOを含む。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、先行技術に関連する問題を克服する目的で本発明を開発し、CO及び/若しくは1種以上のVOCを含む排気ガスを処理するための改善された方法を提供するか、又は少なくとも商業的に有用な代替物を提供した。
【0008】
したがって、本発明の第1の態様では、1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む排気ガスの処理方法であって、排気ガスを、Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品と接触させることを含む、方法が提供される。
【0009】
これから、本開示を更に説明する。以下の節では、本開示の異なる態様/実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0010】
本発明の方法は、排気ガスを処理する方法に関する。排気ガスは、一酸化炭素及び/又は1種以上の揮発性有機化合物を含む。一実施形態において、排気ガスは、CO及び1種以上のVOCを含む。
【0011】
VOCは、ISO16000-6に引用されているように、沸点が(50℃~100℃)~(240℃~260℃)の範囲にあり、25℃で102kPaを超える飽和蒸気圧を有することに対応する任意の有機化合物として、WHOによって定義されている。VOCとしては、アルコール、アルデヒド、アミン、エステル、エーテル、炭化水素(約C10まで)、ケトン、窒素含有化合物、フェノール、インドール及び他の芳香族化合物、テルペン(terpens)並びに硫黄含有化合物が挙げられる。
【0012】
本方法は、排気ガスを、マンガン(Mn)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)及びランタン(La)の混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品と接触させることを含む。白金族金属(PGM)は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、及び白金(Pt)からなる群を指す既知のクラスの貴金属である。したがって、混合金属酸化物は、いかなるPGMも(例えば、金属として、又は酸化物若しくは塩として)含まない。理解されるように、混合金属酸化物の金属(すなわち、Mn、Cu、Mg、Al及びLa)は全て、金属状態にあるのとは対照的に酸化物として存在する。
【0013】
本発明者らは、Mn、Cu、Mg、Al及びLaを含む混合金属酸化物が、CO及びVOCの触媒酸化のための特に有効なPGMフリー触媒を提供することを見出した。このような酸化物は、比較的低温であっても改善された活性を提供することが見出されている。本発明者らは、この触媒がメタノール、エタノール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロペン(プロピレン)及びエテン(エチレン)の触媒酸化に特に有効であることを見出した。したがって、VOCは、メタノール、エタノール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロペン及びエチレンから選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
【0014】
好ましくは、排気ガスは、暖房、換気、及び空調システム(HVACシステム)からのものであるか、又は化学合成プロセス、好ましくはテレフタル酸合成からのテールガスである。すなわち、排気ガスは、精製テレフタル酸(purified terephthalic acid、PTA)を製造するためのプロセスのテールガスであってもよい。PTA植物は、CO、並びに臭化メチル、ベンゼン、アセテート、キシレン、酢酸及びメタノールなどの様々なVOCを放出する。そのようなCO及び様々なVOCは、一緒になってスモッグを引き起こす。臭化メチルはまた、成層圏オゾン破壊物である。
【0015】
PTAを製造するための商業プロセスにおいて、テレフタル酸は、溶媒として酢酸を使用する酸素によるp-キシレンの酸化によって製造することができる。これは、臭化物促進剤を使用してコバルト-マンガンなどの触媒の存在下で行うことができる。生成物は、水溶液中にある間に水素化によって精製することができ、次いで冷却することができる。精製テレフタル酸(PTA)プロセスにおけるテールガスは、酸素、窒素、窒素酸化物、臭化メチル、ベンゼン、メタン、一酸化炭素、酢酸メチル、及び水を含み得る。具体的には、典型的なPTAプロセス排気ガスは、30パーツパーミリオン(ppm)の臭化メチル、10ppmのベンゼン、100ppmのメタン、1000ppmの一酸化炭素、500ppmの酢酸メチル、1.5モル%の水、4モル%の酸素、及び残部の窒素を含み得る。加えて、混合金属酸化物はまた、メチルエチルケトン、メタノール、ブタン、又はブテンなどの他の揮発性有機化合物を酸化及び変換することもできる。
【0016】
PTAプロセステールガスはまた、約2モル%の水蒸気/水を含んでもよい。同様に、HVACシステムは、水/水分を含むガスを処理するために必要とされ得る。混合酸化物は安定でなければならず、水分を含む環境において効果的に機能することができなければならない。ゼオライトなどの特定の触媒及び担体は、水熱条件下で、特にある期間にわたって劣化することが知られている。しかしながら、本明細書に記載される混合金属酸化物は、400℃超、あるいは200℃~400℃、200℃~325℃、200℃~300℃、200℃~250℃、あるいは325℃未満、300℃未満、又は250℃未満の温度で、水蒸気、例えば1.5モル%~5モル%の水分を含有するガスに耐え、効果的に作用することができる。
【0017】
水蒸気、CO、及びVOCを含有するPTAプロセスからのテールガスなどのガスが混合金属酸化物と接触すると、CO及びVOCが酸化される。例えば、プロセス流出ガスが水蒸気、CO及び臭化メチルを含む場合、このプロセス流出物は予熱され、過剰酸素の存在下で触媒床を通過してもよく、流れ中の汚染成分は酸化されて二酸化炭素(CO2)及び臭化水素(HBr)になる。触媒の下流からの臭化水素は、ガスを苛性スクラバーに通すことによって流出物から容易に除去することができ、したがって排出物を大気に放出する前に流出物から汚染物質を除去することができる。
【0018】
酸化物(本明細書では混合金属酸化物又は混合酸化物と呼ぶことがある)は、好ましくは、La、Al、Zr又はCe混合酸化物などの混合酸化物担体上に担持されていない。代わりに、これらの酸化物のいくつか、具体的にはAl及びLaの酸化物は、本明細書に記載の混合金属酸化物の格子構造に組み込まれている。したがって、混合金属酸化物は、単一の式、例えば、MnaCubMgcAldLaeOf(式中、a、b、c、d、e及びfは元素のモル量である)によって表すことができる。
【0019】
本発明者らは、混合金属酸化物が、Mn及びLa含有量がより多い場合に特に有効であることを見出した。好ましくは、混合酸化物は、金属のみを基準として少なくとも30重量%のMnを含む。より好ましくは、混合酸化物は、少なくとも35重量%、更により好ましくは少なくとも40重量%のMnを含む。好ましくは、Mnの量は、多くとも60重量%、より好ましくは多くとも55重量%、更により好ましくは多くとも50重量%である。
【0020】
好ましくは、混合酸化物は、少なくとも35重量%のLaかつ/又は多くとも45重量%のLa、好ましくは少なくとも39重量%のLaかつ/又は多くとも43重量%のLaを含む。
【0021】
混合金属酸化物の金属に関して本明細書に記載される全ての重量パーセンテージ(すなわち、重量%)は、金属のみに基づいて提供される。すなわち、所与の金属の重量%は、混合金属酸化物中の金属の総量の重量百分率として提供され、そのため酸素(O)によって提供される重量を除外する。
【0022】
同様に、本発明者らは、銅が少なくとも5重量%の量で存在することが好ましいことを見出した。好ましくは、銅の量は多くても10重量%である。
【0023】
例えば、本発明者らは、特に、40~50重量%のMn及び少なくとも5重量%の銅を含む混合金属酸化物が、Mn及びCuの好ましい組み合わせであることを見出した。
【0024】
更に、本発明者らは、好ましくは、混合酸化物が少なくとも3重量%のMgかつ/又は多くとも6重量%のMgを含むことを見出した。好ましくは、混合酸化物は、少なくとも1重量%のAlかつ/又は多くとも3重量%のAlを含む。
【0025】
したがって、特に好ましい実施形態では、混合酸化物は、金属のみに基づいて、以下を含む。
40~50重量%のMn、
6~8重量%のCu、
3~6重量%のMg、
1~3重量%のAl、
35~45重量%のLa。
【0026】
更により好ましくは、混合酸化物は、金属のみに基づいて、以下を含む。
42~48重量%のMn、
約7重量%のCu、
約4.5重量%のMg、
約2重量%のAl、
39~43重量%のLa。
【0027】
好ましくは、「約」という用語は、±10%以内、より好ましくは±5%以内を指すが、同時に実験誤差内の値自体を開示する。したがって、混合酸化物は、好ましくは、少なくとも6.3重量%のCuかつ/又は多くとも7.7重量%のCu、例えば、6.3重量%~7重量%、7重量%~7.7重量%又は6.3重量%~7.7重量%を含む。同様に、混合酸化物は、好ましくは、少なくとも4.05重量%のMgかつ/又は多くとも4.95重量%のMg、例えば、4.05重量%~4.5重量%、4.5重量%~4.95重量%又は4.05重量%~4.95重量%を含む。好ましくは、混合酸化物は、好ましくは、少なくとも1.8重量%のAlかつ/又は多くとも2.2重量%のAl、例えば1.8重量%~2重量%、2重量%~2.2重量%又は1.8重量%~2.2重量%を含む。同じことが、好ましい範囲±5%にも同様に当てはまる。
【0028】
好ましい実施形態において、混合酸化物は、Mn、Cu、Mg、Al及びLa、並びに酸素(O)から本質的になる。すなわち、混合金属酸化物は、単一の式、例えばMnaCubMgcAldLaeOf(式中、a、b、c、d、e及びfは元素のモル量である)によって表すことができる。同様に、金属Mn、Cu、Mg、Al及びLaの重量パーセンテージの合計は、本質的に100重量%に等しくなる。
【0029】
Mn対Laのモル比は、少なくとも2.5:1かつ/又は多くとも3:1であることが好ましい。例えば、Mn対Laのモル比は2.5:1~3:1であることが好ましい。換言すれば、比a:eは2.5:1~3:1である。Mn対Al比は、少なくとも10:1かつ/又は多くとも12:1、例えば比a:dは10:1~12:1であることが好ましい。Mn対Mg比は、少なくとも4:1かつ/又は多くとも5:1、例えば比a:cは4:1~5:1であることが好ましい。Mn対Cu比は、少なくとも7:1かつ/又は多くとも7.5:1、例えば比a:bは7:1~7.5:1であることが好ましい。
【0030】
本発明の更なる態様では、Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品を含むHVACシステムが提供される。
【0031】
好ましくは、Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物は、排気ガスの処理方法に関して本明細書に記載されたものである。例えば、混合酸化物は、金属のみに基づいて、以下を含むことが好ましい。
40~50重量%のMn、
6~8重量%のCu、
3~6重量%のMg、
1~3重量%のAl、
35~45重量%のLa。
【0032】
本発明者らは、Mn、Cu、Mg、Al及びLaを含む混合金属酸化物が、CO2に対する選択性と共に、より大きなVOC酸化活性を示すことを見出した。その結果として、この酸化物は、浄化された屋内空気を提供するためのHVACシステムにおいて空気から有害なVOC汚染物質を除去するのに特に有効である。特に、混合金属酸化物は、比較的低温で酸化触媒として特に有効であり、したがって、そのような低温用途に特に適している。
【0033】
以下において、触媒Aは比較触媒であり、触媒MOは本発明による実施例である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
ここで、以下の非限定的な図を参照して、本発明を更に説明する。
【
図1A】実施例1の結果を提供し、触媒MOと既知の比較卑金属触媒である触媒Aについて、ガスエンジン試験条件下での温度に対するホルムアルデヒド及びメタノールのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図1B】実施例1の結果を提供し、触媒MOと既知の比較卑金属触媒である触媒Aについて、ガスエンジン試験条件下での温度に対するホルムアルデヒド及びメタノールのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図2A】実施例2の結果を提供し、触媒MOと触媒Aの両方について、ガスエンジン試験条件下での温度に対するCO及びNOそれぞれの変換率をプロットする。
【
図2B】実施例2の結果を提供し、触媒MOと触媒Aの両方について、ガスエンジン試験条件下での温度に対するCO及びNOそれぞれの変換率をプロットする。
【
図3A】実施例3の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するメタノール及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図3B】実施例3の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するメタノール及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図3C】触媒MO及び触媒Aの両方について、それぞれホルムアルデヒド及びCO
2の観察された濃度を温度に対してプロットする。
【
図3D】触媒MO及び触媒Aの両方について、それぞれホルムアルデヒド及びCO
2の観察された濃度を温度に対してプロットする。
【
図4A】実施例4の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエタノール及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図4B】実施例4の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエタノール及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図4C】触媒MO及び触媒Aの両方について、それぞれアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの観察された濃度を温度に対してプロットする。
【
図4D】触媒MO及び触媒Aの両方について、それぞれアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの観察された濃度を温度に対してプロットする。
【
図5A】実施例5の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するプロペン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図5B】実施例5の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するプロペン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図6A】実施例6の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエチレン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図6B】実施例6の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエチレン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図7A】実施例7の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエチレン、プロペン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図7B】実施例7の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエチレン、プロペン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【
図7C】実施例7の結果を提供し、触媒Aと共に触媒MOについてのVOC試験条件下での温度に対するエチレン、プロペン及びCOのそれぞれの変換率をプロットする。
【実施例】
【0035】
混合金属酸化物の製造
共沈は、溶液中の金属硝酸塩(Mn、Cu、Mg、Al、La)の使用を含む。アルカリ溶液が沈殿剤として使用される(NaOH/Na2CO3)。金属硝酸塩溶液は、金属硝酸塩前駆体を1つの容器中で脱塩水と一緒に溶解することによって得られる。アルカリ溶液の調製のために、NaOH及びNa2CO3を一緒に混合し、脱塩水を添加する。両方の溶液を撹拌し、次いで液体ポンプを使用して両方の溶液の容器から反応器に移す。
【0036】
【0037】
【0038】
共沈は、pHを約10~11で一定に保つことを可能にする制御された添加速度で、撹拌しながら、表1及び表2からの両方の溶液を添加することによって実施した。pHは、標準pH電極を使用して監視することができる。
【0039】
添加は約1時間にわたって行われてもよく、反応混合物は添加完了後更に1時間撹拌され得る。
【0040】
共沈が終了したら、洗浄及び濾過する必要がある。大量の脱塩水を、水の導電率が新鮮な脱塩水の導電率(例えば、約100μS)になるまで沈殿剤を通して流す。
【0041】
最後に、固体材料を一晩空気中105~110℃で一晩乾燥させた後、粉砕し、続いて例えば空気中500℃で2時間か焼する。得られた混合金属酸化物を本明細書では触媒MOと呼ぶことがある。
【0042】
混合金属酸化物の試験
混合金属酸化物を、比較用の既知の市販のPGMフリー卑金属触媒である触媒Aに対して試験した。
【0043】
触媒Aは、国際公開第2010/123731号に従って調製され、ランタン安定化アルミナ及びセリウム安定化ジルコニアを含む担体を含む。マンガンをアセテートとしてウォッシュコートスラリーに添加し、これを2回のパスでセラミック基材に適用して、3.3g/in3(0.2g/cm3)の目標ウォッシュコート装填量を提供する。次いで、硝酸銅を、375g/ft3(13,243g/m3)を目標として含浸させる。ICPによって決定されるように、触媒Aは、金属のみに基づいて3重量%のMn及び2重量%のCuを含む。
【0044】
触媒Aコアを破砕し、ペレット化し、粉砕し、篩にかけた。355~250μmのふるい画分を試験に使用した。合計0.2gの篩にかけた材料を試験した。
【0045】
混合酸化物は粉末であり、したがって破砕する必要はなかった。試料はまた、試験前にペレット化し、粉砕し、篩にかけた。
【0046】
実施例1(ホルムアルデヒド及びメタノールの活性):
ガスエンジン試験条件:100ppm CH4、20ppm CH2O、200ppm NOx、540ppm CO、10%O2、10%CO2、10%H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0047】
結果を
図1A及び
図1Bに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、175℃で50%のホルムアルデヒド変換率を達成し、一方、触媒Aは、220℃で50%のホルムアルデヒド変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物は、触媒Aによって必要とされる270℃と比較して、211℃のより低い温度で50%のメタノール変換を達成する。
【0048】
実施例2(CO及びNOの活性):
ガスエンジン試験条件:100ppm CH4、20ppm CH2O、200ppm NOx、540ppm CO、10%O2、10%CO2、10%H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0049】
結果を
図2A及び
図2Bに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、243℃で50%のCO変換率を達成し、一方、触媒Aは、272℃で50%のCO変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物のNO変換の開始温度は約225℃であるが、触媒AのNO変換の開始温度は約300℃である。
【0050】
実施例3(メタノール及びCOの酸化):
VOC試験条件:500ppmメタノール、1000ppm CO、15%O2、5% H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0051】
結果を
図3A及び
図3Bに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、191℃で50%のメタノール変換率を達成し、一方、触媒Aは、260℃で50%のメタノール変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物は、触媒Aによって必要とされる275℃と比較して、222℃のより低い温度で50%のCO変換率を達成する。
【0052】
更に、
図3C及び
図3Dに見られるように、混合金属酸化物は、CO
2の生成に対してより大きな選択性を示し、生成されるホルムアルデヒドの量の減少をもたらす。
【0053】
実施例4(エタノール及びCOの酸化):
VOC試験条件:500ppmエタノール、1000ppm CO、15%O2、5% H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0054】
結果を
図4A及び
図4Bに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、198℃で50%のエタノール変換率を達成し、一方、触媒Aは、261℃で50%のエタノール変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物は、触媒Aによって必要とされる288℃と比較して、236℃のより低い温度で50%のCO変換率を達成する。
【0055】
更に、
図4C及び
図4Dに見られるように、混合金属酸化物は、触媒Aよりも少ないホルムアルデヒドを生成する。
【0056】
実施例5(プロペン及びCOの酸化):
VOC試験条件:500ppmプロペン、1000ppm CO、15%O2、5% H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0057】
結果を
図5A及び
図5Bに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、284℃で50%のプロペン変換率を達成するのに対して、触媒Aは、390℃の著しくより高い温度で50%のプロペン変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物は、触媒Aによって必要とされる262℃と比較して、207℃のより低い温度で50%のCO変換率を達成する。
【0058】
実施例6(エチレン及びCOの酸化):
VOC試験条件:500ppmエチレン、1000ppm CO、15%O2、5% H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0059】
結果を
図6A及び
図6Bに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、346℃で50%のエチレン変換率を達成するのに対して、触媒Aは、475℃の著しくより高い温度で50%のエチレン変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物は、触媒Aによって必要とされる259℃と比較して、196℃のより低い温度で50%のCO変換率を達成する。
【0060】
実施例7(プロピレン、エチレン及びCOの酸化):
VOC試験条件:500ppmプロペン、500ppmエチレン、1000ppm CO、15%O2、5%H2O、残部N2;0.2g触媒(355~250μm)、流量=3.3L/分、T ramp=110~500℃。
【0061】
結果を
図7A~
図7Cに示す。混合金属酸化物(すなわち、触媒MO)は、335℃で50%のエチレン変換率及び247℃で50%のプロペン変換率を達成するのに対して、触媒Aは、それぞれ435℃及び355℃の著しく高い温度で50%のエチレン変換率及びプロペン変換率を達成する。同様に、混合金属酸化物は、触媒Aによって必要とされる226℃と比較して、195℃のより低い温度で50%のCO変換率を達成する。
【0062】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。「含む(comprising)」という用語の使用は、そのような特徴を含むが他の特徴を除外しないものとして解釈されることが意図され、また、記載されたものに必然的に限定される特徴の選択肢を含むことが意図される。換言すれば、この用語はまた、文脈が明らかに他を示さない限り、「本質的に~からなる」(特定の更なる構成要素が、記載された特徴の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさないという条件で存在し得ることを意味することが意図される)及び「~からなる」(構成要素がそれらの割合によるパーセンテージとして表された場合、これらが合計して100%になる一方で、任意の不可避不純物を説明するが、他の特徴が含まれ得ないことを意味することが意図される)限定を含む。
【0063】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素(CO)及び/又は1種以上の揮発性有機化合物(VOC)を含む排気ガスの処理方法であって、前記排気ガスを、Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、40~50重量%のMn及び少なくとも5重量%の銅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、
40~50重量%のMn、
6~8重量%のCu、
3~6重量%のMg、
1~3重量%のAl、
35~45重量%のLaを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、
42~48重量%のMn、
約7重量%のCu、
約4.5重量%のMg、
約2重量%のAl、
39~43重量%のLaを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合酸化物が、Mn、Cu、Mg、Al及びLa、並びに酸素から本質的になる、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
Mn対Laのモル比が2.5:1~3:1である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記VOCが、メタノール、エタノール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロペン及びエチレンから選択される1種以上の化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記排気ガスが、HVACシステムからのものであるか、又は化学合成プロセス、好ましくはテレフタル酸合成からのテールガスである、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
Mn、Cu、Mg、Al及びLaの混合酸化物を含むPGMフリー触媒物品を含むHVACシステムであって、好ましくは、前記混合酸化物が、金属のみに基づいて、
40~50重量%のMn、
6~8重量%のCu、
3~6重量%のMg、
1~3重量%のAl、
35~45重量%のLaを含む、HVACシステム。
【国際調査報告】