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特表2024-530182被験者の健康リスクを評価および監視するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】被験者の健康リスクを評価および監視するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240808BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240808BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/00 G
G16H50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506902
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 RU2022000247
(87)【国際公開番号】W WO2023014244
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】2021123170
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524045633
【氏名又は名称】オブシェストヴォ ス オグラニチェンノイ オトヴェトストヴェンノスチュ “パルマ-テレコム”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOI OTVETSTVENNOSTIU PARMA-TELECOM
【住所又は居所原語表記】ul. Sovetskaya, 51a g.Perm, 614000 RU
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145218
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 曉
(72)【発明者】
【氏名】ワシリエフ,レオニード・ミハイロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】コロトキーフ,アンドレイ・アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ネリュビン,エドゥアルド・ゲンナデヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】プロコペンコ,タチアナ・イワノワ
(72)【発明者】
【氏名】シナイスキー,セルゲイ・アレクセーヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】タチキン,ドミトリー・ウラジミロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ティコミロフ,レオニード・イワノヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB04
4C117XB15
4C117XC11
4C117XC21
4C117XD15
4C117XD22
4C117XE13
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE33
4C117XE43
4C117XJ13
4C117XJ18
4C117XP01
4C117XP02
4C117XP03
5L099AA15
(57)【要約】
本発明は医療技術に関する。健康リスクを特定および監視するためのデバイスは、:
被験者の身体に接触し、被験者の身体に固定されるセンサ;異なる物理パラメータのセンサからの信号を対応する測定値の形式に変換できる測定ユニット;測定された生理学的パラメータを含む受信信号のそれぞれを、パラメトリック信号から、さらなる変換を必要とせずに信号の相関を可能にする標準フォーマットを有する機能信号に変換するパラメトリックから関数への変換ユニット;リスクの存在を特定し、対応する警報信号を生成することができる信号相関ユニット;リスクを評価し、全体的なリスク評価(レベル)を含む信号を生成することができるリスク評価ユニット;全体的なリスク評価(レベル)を、デバイスの着用者および/または着用者の健康状態を監視する専門家向けのメッセージに変換できる表示ユニットから構成される。健康リスクを特定し監視する方法も想定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体に接触し、被験者の身体に固定されるセンサと;
様々な物理的性質のパラメータを感知するセンサからの信号を、前記センサによって感知される特性の値のタイプに変換するように適合されている測定ブロックと;
追加の変換を行わずにそれらの比較を確実にするために測定された生理学的パラメータを有する受信信号のそれぞれをパラメトリック信号から単一形式の機能信号に変換するように構成されたパラメトリック及び機能変換ブロックと;
リスクの存在を評価し、リスクの存在を示す対応する信号を形成するように適合された信号比較ブロックと;
リスクを評価し、リスクの一般的な評価を伴うシグナルを形成するように適合されたリスク評価ブロックと;
前記リスクの一般的な評価を、前記装置を装着している被験者および/または被験者の健康監視の専門家宛てのメッセージに変換するように構成された表示ブロックと、を備える、
被験者の健康リスクを評価および監視するための装置。
【請求項2】
前記センサは、被験者の健康に害を及ぼさない以下の方法のうちの一であって、特にロック可能なブレスレット、固定可能なパッチもしくは胸部ストラップ、またはインプランテーションによって被験者の身体に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
生理学的特性の測定を提供する、圧電センサ、光電センサ、電気化学センサ、オーディオビデオセンサからの信号を受信できるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
装置ハウジング内に直接設置されたセンサから信号を受信し、必要に応じて、有線または無線データ伝送を介して装置ハウジングの外部に設置されたセンサから信号を受信できるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記測定ブロック、前記パラメトリック及び機能変換ブロック、前記信号比較ブロック、および前記リスク評価ブロックによって、様々な物理的性質のパラメータを感知するセンサから信号を受信できるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
対象に対する健康リスクを継続的かつ長期的に監視できるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記表示ブロックは、光インジケータおよび/または音声インジケータおよび/またはスクリーンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
携帯電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップまたはデスクトップPCとして構成されたモバイルガジェットと通信することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記パラメトリック及び機能変換ブロックは、測定された生理学的パラメータを有する前記受信信号のそれぞれをパラメトリック信号からバイナリ関数信号に変換するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記リスク評価ブロックは、一般的なリスクレベルを有する信号を形成するように構成され、前記表示ブロックは、一般的なリスクレベルを前記装置を装着している被験者および/または健康監視の専門家宛てのメッセージに変換するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
関数パラメータのセットが事前に提供されており、
それぞれのパラメータには、クリティカル生理学的パラメータの相互に関連する閾値と、持続時間と周期性に関する時間特性の組み合わせが含まれ、
測定された生理学的特徴を含む信号が、収集された回顧的データを使用して少なくとも 一のセンサから受信され、
信号のそれぞれは、単一形式の信号に変換され、所定の時間間隔で追加の変換を行わずに信号を比較することが保証され、
関数パラメータの事前に形成された複数のセットのうちの一に保存されているクリティカルパラメータ値の閾値に達している場合に、信号は被験者の健康に対するリスク要因の存在を示す値をとり、
また、閾値に達していない場合は、被験者の健康に対するリスク要因がないことを示す値をとり、
単一形式の信号が関数パラメータの各セットのフレームワーク内で比較され、
被験者の健康に対するリスク要因を示すセットの信号の値が互いに一致する場合、被験者の健康に対する特定のリスクの存在に関する判断が、健康状態の一般的な評価が形成される複数の情報に基づいて行われ、これは、デバイスを装着している被験者および/または継続的かつ長期的な健康監視の専門家に伝達され、
前記装置が被験者の健康に害を及ぼさない何らかの方法で被験者の身体に固定される請求項1-10のいずれか一項に記載の装置が使用されることを特徴とする、被験者の健康リスクを評価および監視する方法。
【請求項12】
外部ガジェットが、携帯電話、スマートフォン、タブレットまたはデスクトップPCからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
関数パラメータのセットが事前に提供され、それらの対応する閾値が確立されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記関数パラメータセットのそれぞれが、時間と、センサから受信したそれに対応する少なくとも一の生理学的パラメータの少なくとも2つのパラメータの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
心拍数、睡眠または覚醒状態、人間の身体活動の種類、エネルギー消費と流入、体の水分補給状態、睡眠相、ストレスレベル、細胞間液中のグルコース含有量などのパラメータを含む信号がセンサから受信されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記センサからの信号を単一形式の信号に変換する前に、所与の時間間隔における前記センサからの信号の特定の値、例えば算術平均が決定されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記受信信号のそれぞれが単一形式の信号に変換された後、単一形式の信号から単一の同種ストリームが形成されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記センサからの信号がクリティカル生理学的パラメータの閾値に達したとき、前記センサからの信号の前記閾値からの偏差の値が記憶されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
健康リスクの存在を判断する際に、閾値からのセンサ信号の偏差の大きさ、ならびにそのような偏差の持続時間および頻度が考慮されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
単一形式の信号に変換されるセンサからの一の信号は、関数パラメータのセット内の信号に対応するクリティカル生理学的パラメータの異なる閾値値と同数の均一な信号を生成することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
関数パラメータの各セットについて、各信号の入力データが関連付けられる一または複数のタイムウィンドウが使用されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
各タイムウィンドウの長さは、関数パラメータのセットによって決定されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記装置の技術的状態の継続的な監視が実行され、測定された生理学的特性を含む信号が自動的に補正され、つまり、測定プロセス中にフィードバック、データ送信のために外部システムと相互作用を提供することによって行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
様々な物理的性質のパラメータを感知するセンサから受信した信号に対するアクションが個々のプロセスフェーズに分割され、それらが請求項1に記載の装置の対応するブロックによって実行されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記個々のプロセスフェーズが信号変換ステップであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
単一のバイナリ形式が選択されている場合、パラメトリック信号を機能信号に変換する際に測定された生理学的特性を含む信号が少なくとも一のセンサから受信され、
受信された各信号は、指定された時間間隔でバイナリ形式の信号に変換され、
信号が、あらかじめ形成された関数パラメータの複数のセットのうちの一に保存されているクリティカルパラメータ値の閾値に達すると、信号が≪1≫値をとり、
閾値に達していない場合、信号が≪0≫値をとり、
バイナリ形式の信号が関数パラメータの各セットのフレームワーク内で比較され、
関数パラメータセット信号の≪1≫値が互いに一致する場合、被験者の健康に対する特定のリスクの存在についての判断が行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、具体的には、被験者の健康に対するリスクを評価および監視するため、また被験者の生体の状態を診断するための装置および方法に関する。本発明で使用される≪被験者≫という用語は、個人用デバイスを装着した人間の被験者または他の生物、特に動物被験者(哺乳類被験者を含む)として理解されるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、様々なセンサからの信号に基づいて人間の健康状態を評価するのに有用な様々な方法が知られている。
【0003】
ここで、2003年12月24日に公開された国際出願WO200357025、IPC A61В 05/00によれば、患者の生体信号を分析することによって患者の正常または異常な生理学的事象を監視する方法が知られている。解析対象となる生体信号は次のようにして調査される。まず、未処理の信号、たとえば、対応する電極を使用して心電図信号が取得される。次に、この信号の適応セグメント化が実行される。さらに、そのような未処理の信号からいくつかの特徴が取得される。次に、信号の時間的および波形的特徴のクラスタリングが実行される。最後に、得られたデータに基づいて、クラスターの医学的解釈が行われる。
【0004】
2010年2月24日に公開された特許EP2156788、IPC А61В 05/00は、時系列でバイタルサインを測定する方法を開示している。バイタルパラメータはバイタルインジケータ測定モジュールによって継続的に測定される。バイタルインジケータ測定モジュールは、病状に基づいて人が車両を運転できるかどうかを判断する。
【0005】
本出願でクレームされている本発明の方法に最も近い従来技術から知られている方法は、2010年9月16日に公開された特許出願US20100234748、 IPC A61В 05/04に記載されているように、ヒトの疾患を診断するための生理学的信号の病理学的変動を検出する方法である。
【0006】
既知の方法は、スライディングウィンドウ分析を実行して、指定された許容範囲内のテンプレート関数の振幅‐および持続時間‐修正バージョンに対応する生理学的信号データ内の配列を見つけることを含む。
【発明の概要】
【0007】
本発明により達成される技術的効果は、被験者の健康に対するリスクを評価する精度、信頼性、および迅速性を高めることであり、また、同時に測定された被験者の生体の不均一な生理学的特徴に基づいて前記リスクを評価するのに役立つツールの多用途性も高める。
【0008】
本発明の上記の技術的効果を達成するために、発明者らは、被験者の身体に接触し、被験者の身体に固定されるセンサと、様々な物理的性質のパラメータを感知するセンサからの信号を前記センサによって感知される特性の値のタイプに変換するように適合される測定ブロックと、追加の変換を行わずにそれらの比較を確実にするために、測定された生理学的パラメータを有する受信信号のそれぞれをパラメトリック信号から単一形式の関数信号に変換するように構成されたパラメトリック及び関数変換ブロックと、リスクの存在を評価し、リスクの存在を示す対応する信号を形成するように適合された信号比較ブロックと、リスクを評価し、リスクの一般的な評価(リスクのレベル)を伴うシグナルを形成するように適合されたリスク評価ブロックと、前記リスクの一般的な評価(リスクのレベル)を、前記装置を装着している被験者および/または被験者の健康監視の専門家宛てのメッセージに変換するように構成された表示ブロックと、を備える被験者に対する健康リスクを評価および監視するための装置を提案する。
【0009】
本発明によれば、クレームされた装置は、被験者の健康に害を及ぼさない以下のいずれかの方法で被験者の身体に固定できるセンサを備える。たとえば、ブレスレットをロックする、パッチやチェストストラップで固定する、インプランテーションなどである。
【0010】
本発明によれば、クレームされた装置は、生理学的特性の測定を提供する圧電センサ、光電センサ、電気化学センサ、さらにオーディオビデオセンサから信号を受信できるように設計され得る。
【0011】
本発明によれば、クレームされた装置は、装置ハウジングに直接設置されたセンサから信号を受信することができ、必要に応じて、無線データ送信プロトコルを使用して有線または無線で装置ハウジングの外側に設置されたセンサから信号を受信できるように設計されてもよい。
【0012】
本発明によれば、クレームされた装置は、測定ブロック、パラメトリック及び関数変換ブロック、信号比較ブロックとリスク評価ブロックによってさまざまな物理的性質のパラメータを感知するセンサから信号を受信できるように設計されてもよい。
【0013】
本発明によれば、クレームされた装置は、被験者の健康リスクを継続的かつ長期的に監視できるように設計することができる。
【0014】
本発明によれば、クレームされた装置は、光インジケータおよび/または音声インジケータおよび/またはスクリーンを含む表示ブロックを有する。
【0015】
本発明によれば、クレームされた装置は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップPCとして構成されたモバイルガジェットと通信することができる。
【0016】
被験者の健康リスクを評価および監視するためのクレームされた装置は、次の機能を果たす。
‐被験者の身体に接触して固定されたセンサによる生理学的特性(例えば、心拍数(HR)、体温、塩基性物質の濃度、および他のパラメータ)の連続測定による長期モニタリング;
‐結果の比較のための測定された異種信号のそれぞれを同じ数の均質の関数信号へのパラメトリックかつ関数的変換;
‐均質の関数信号の比較;
‐健康リスクに関連する一連の確立された条件に基づいて、被験者の健康に対するリスクを評価し、被験者の健康の潜在的な変化を示す;
‐本発明の装置を装着している被験者および/または健康監視の専門家に、本発明の装置によって特定された特定の健康リスクについて通知するためのメッセージを生成する;
【0017】
さらに、本発明は、被験者の健康状態分析の精度を高めることを可能にするいくつかの追加機能の利用を考慮している:
‐本発明の装置によって実行される動作状態の継続的な自己チェック(例えば、電源がオンになっているかどうか、および被験者の身体に接触しているセンサが実際に被験者の身体に取り付けられ固定されているかどうかをチェックする)。
‐測定された生理学的特性を含む信号の自動補正(測定プロセス中にフィードバックを提供)。
‐さらなる処理のためにデバイスからデータを送信するための外部システムとの相互作用。
【0018】
センサ、測定ブロック、パラメトリック及び関数変換ブロック、信号比較ブロック、リスク評価ブロック、および、表示ブロックを構造的に統合して、例えばブレスレットとして設計されたパーソナルウェアラブル装置を形成することができる。
【0019】
必要に応じて、センサを装置のハウジングの外側に配置して、有線または標準の無線データ送信プロトコルを使用して無線でブレスレットに接続するようにしてもよい。
【0020】
被験者の健康リスクを評価および監視するためのクレームされた装置とクレームされた方法の本質的な特徴の完全な組み合わせは、クレームされた発明の技術的効果の達成可能性に直接的な影響を与える。対象の身体に接触し、固定されるセンサがクレーム対象の装置に存在することを示す特徴、及び、測定された生理学的特徴を含む信号を前記センサから受信する特徴は、本発明にとって重要なものであり、それらは、装置の機能性と、クレームされた技術的効果の達成を伴う、クレームされた方法の実現を保証する。健康リスク評価の精度、信頼性、および運用効率は、クレームされた装置にセンサが存在すること、これらのセンサからの信号を受信すること、および本発明で説明する方法で信号をさらに変換することなしには改善できない。健康リスク評価ツールの多用途性も、主にクレームされた装置にセンサを搭載し、これらのセンサから信号を受信し、さらに信号を変換することによって向上する。
【0021】
また、上記の技術的効果を達成するために、本発明は、関数パラメータのセットが事前に提供されており、それぞれのパラメータには、クリティカル生理学的パラメータの相互に関連する閾値と、持続時間と周期性に関する時間特性の組み合わせが含まれ、測定された生理学的特徴を含む信号が、収集された回顧的データを使用して少なくとも 一のセンサから受信され、信号のそれぞれは、単一形式の信号に変換され、所定の時間間隔で追加の変換を行わずに信号を比較することが保証され、関数パラメータの事前に形成された複数のセットのうちの一に保存されているクリティカルパラメータ値の閾値に達している場合に、信号は被験者の健康に対するリスク要因の存在を示す値をとり、また、閾値に達していない場合は、被験者の健康に対するリスク要因がないことを示す値をとり、続いて、単一形式の信号が関数パラメータの各セットのフレームワーク内で比較され、被験者の健康に対するリスク要因を示すセットの信号の値が互いに一致する場合、被験者の健康に対する特定のリスクの存在に関する判断が、健康状態の一般的な評価が形成される複数の情報に基づいて行われ、これは、デバイスを装着している被験者および/または継続的かつ長期的な健康監視の専門家に伝達され、装置が使用され、前記装置は被験者の健康に害を及ぼさない何らかの方法で被験者の身体に固定されるものであることを特徴とする被験者の健康リスクを評価および監視する方法を、提案する。
【0022】
以下の操作の実行を含む、被験者に対する健康リスクを評価および監視するための上記装置を用いて被験者に対する健康リスクを評価および監視するための本発明の方法は、以下のように詳細に説明することができる。
【0023】
予備的に、関数パラメータのセットが事前に提供され、それぞれのパラメータには、被験者の健康に対する特定のリスク要因を特徴付けるために、クリティカル生理学的パラメータの相互に関連する閾値と、期間および周期性の観点からの時間特性の組み合わせが含まれる。さらに、前記のクリティカル生理学的パラメータおよび持続時間および周期性に関するそれらの時間特性の選択は、検証された医療データに基づいている。
【0024】
関数パラメータの各セットは、センサから受信した少なくとも2つのパラメータ(時間およびそれに対応する少なくとも一の生理学的パラメータ)に基づいて形成される。
【0025】
さらに、被験者の健康に対するリスクを継続的に評価および監視するために、前記リスク評価および監視は、前記生理学的パラメータのセットを事前に提供する操作を除き、本発明の方法を構成するすべての操作の連続的かつ逐次的な実行であり、少なくとも1のセンサから測定された生理学的特徴を含む信号が受信され、センサは受信される信号を提供し、信号には、心拍数(HR)、睡眠または覚醒状態、人間の身体活動の種類、エネルギー消費と流入、体の水分補給状態、睡眠相、ストレスレベル、細胞間液中のグルコース含有量などのパラメータが含まれるが、受信信号に含まれるパラメータはこのようなリストに限定されない。
【0026】
続いて、各信号は単一形式の関数信号に変換され、追加の変換を行わずに所定の時間間隔で信号を比較できるようになる、ここで、この信号が、予め形成された関数パラメータの複数のセットのうちの一に格納されているクリティカルパラメータ値の閾値に達した場合、信号は被験者の健康に対する危険因子の存在を示す値をとり、また、閾値に達していない場合は、被験者の健康に対するリスク要因がないことを示す値をとる。言い換えれば、これにより、センサからの異種信号を単一形式に変換してさらに比較できるようになる。
【0027】
関数パラメータのセット内の信号に対応するクリティカル生理学的パラメータの異なる閾値が存在するため、センサからの一の信号から単一形式の信号に変換される過程で、同じ数の均質の信号が得られようになることに言及されるべきである。
【0028】
また、センサからの信号を単一形式の信号に変換する前に、所定の時間間隔におけるセンサからの信号の一定の値(例えば、算術平均)が求められる。
【0029】
さらに、センサ信号がクリティカル生理学的パラメータの閾値に達すると、閾値からのセンサ信号の偏差の大きさ、ならびにそのような偏差の持続時間および周期性が保存される。このような偏差の大きさ、その期間、周期性を考慮することにより、危険因子の有無を判断しながら健康状態をより正確に判定することができる。
【0030】
次に、単一形式の信号が関数パラメータの各セットの枠組み内で比較され、そして、対象者の健康に対するリスク要因を示す信号セットの値が一致した場合に、健康リスクが特定されたと判定され、そのようなリスクの存在に関する対応する信号が形成される。
【0031】
その後、特定された健康リスクと潜在的な健康変化を示す関連した条件のセットが生成される。
【0032】
次のステップは、被験者の健康に対するリスクを総合的に評価するために、生成された一連の条件に従ってリスクを評価することであり、この評価に対応する信号が形成される。
【0033】
最後に、デバイスの表示ブロック上にリスクの一般的な評価(レベル)を示す信号を表示することによって、個人用デバイスを装着している被験者および/または人間の健康監視を行う専門家に適宜通知される。
【0034】
本発明によれば、クレームされた方法では、外部ガジェットは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、またはデスクトップPCからなるグループから選択され得る。
【0035】
本発明によれば、クレームされた方法では、あらかじめ関数パラメータのセットを用意しておき、そのセットに対応する閾値を指定する。本発明によるクレーム方法では、センサは、特に以下の心拍数(HR)、睡眠または覚醒状態、人間の身体活動の種類、エネルギー消費と流入、体の水分補給状態、睡眠相、ストレスレベル、細胞間液中のグルコース含有量などのパラメータを含む信号源として使用され得るが、受信信号に含まれるパラメータはこのリストに限定されない。
【0036】
本発明によれば、クレームされた方法では、センサからの信号を単一形式の信号に変換する前に、センサからの信号の現在値と収集された回顧データの両方が使用される。
【0037】
本発明によれば、クレームされた方法では、受信された信号のそれぞれが単一形式の信号に変換された後、単一形式の信号から単一の同種のストリームが形成される。
【0038】
本発明によれば、クレームされた方法では、関数パラメータの各セットについて、一以上のタイムウィンドウが使用され、各信号の入力データがそれに関連付けられる。
【0039】
本発明によれば、クレームされた方法では、各タイムウィンドウの長さは、関数パラメータの特定のセットによって決定できる。
【0040】
本発明によれば、クレームされた方法では、装置の技術的状態の継続的監視、特に測定プロセス中のフィードバックの提供、データ送信のための外部システムとの相互作用による測定された生理学的特性を含む信号の自動補正を行うことが可能となる。
【0041】
本発明によるクレームされた方法では、様々な物理的性質のパラメータを感知するセンサから受信した信号に対する動作が、個々のプロセス段階(信号変換ステップ)に分割され、本発明の装置の対応するブロックによって実行される。
【0042】
したがって、健康リスク評価の精度、信頼性、運用効率の向上、並びに、クレームされた方法においてそのような評価を実行するためのツールおよび前記方法を実現するための装置の多用途性が強化されることが、本発明の本質的な特徴の全体の組み合わせによって確立される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1は、本発明の実施形態を示す。
図2は、被験者の健康に対するリスクを評価および監視するためのクレームされた方法を構成する操作の概略図を示す。
図3は、関数パラメータのセットがどのように提供されるかを示す一般的な概略図を示す。
図4は、センサからの生理学的パラメータを含む信号を単一形式の信号に変換するグラフを示す。
図5は、提供された関数パラメータのセットのそれぞれの信号の組み合わせの枠組み内で単一形式の信号を比較した結果のグラフと、被験者の健康に対する特定のリスクのグラフ表示を示す。
図6は、生理学的パラメータを含む信号を単一形式の信号に変換する例を示す。
図7は、生理学的パラメータを含む信号を単一形式の信号に変換するさらに別の例を示す。
図8は、その後の比較に先立ち、パラメトリック信号を機能信号に変換する核心を示す例を示し、このような変換は、被験者の健康に対するリスクを評価および監視するための本発明の方法の基礎を築くものである。
図9は、リスクを評価する一般的なアルゴリズムの例を示す。
図10は、ロック可能なブレスレットとして設計された個人用ウェアラブルデバイスを使用してリスクを評価する例を示す。
図11は、アナログおよびデジタル集積回路に基づくパーソナルウェアラブルデバイスの使用による本発明の実施形態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0044】
被験者の健康に対するリスクを評価および監視するための本発明の装置および方法については、いくつかの実施形態が可能である(図1)。したがって、本発明の独立した実施形態は、対象の身体に接触して固定されるセンサを備えたブレスレットとして設計されたパーソナルウェアラブル装置(I)、“ブレスレット-電話(タブレットPC)」の組み合わせ(II)、または、汎用デジタル機器に基づく技術機器の複雑なシステムの一部としてのもの(III)を提供することができる。
【0045】
パーソナルウェアラブル装置1(図1)は、被験者の健康に対するリスクを評価および監視するためのデバイスを含み、主に生理学的パラメータを測定し、そのようなパラメータの受信値をデバイスの着用者に通知することを目的とする。現時点では、これらの装置は被験者の健康に対するリスクを詳細に評価することを目的とするものではない。さらに、これらの装置は、技術機器の複雑なシステムの一部として動作可能であり、例えば、さらなる処理のためにウェアラブル装置から外部デバイス3にデータを送信するための携帯電話(タブレットPC)2(III)など、他のウェアラブル装置とリンクされていてもよい。
【0046】
パーソナルウェアラブル装置(図1)として独立して具体化される本発明は、例えば、センサを備えたブレスレット(I)として設計され、
被験者の身体に接触して固定されるセンサ(1);
様々な物理的性質のパラメータを感知するセンサからくる信号を、前記センサによって感知される特性の一種の値に変換する測定ブロック(2);
追加の変換を行わずにそれらの比較を確実にするために、測定された生理学的パラメータを有する受信信号のそれぞれをパラメトリック信号から単一形式の機能信号に変換するパラメトリック及び関数変換ブロック(3);
リスクの存在を評価し、前記リスクの存在を示す対応する信号を形成するための信号比較ブロック(4);
リスクを評価し、リスクの一般的な評価(リスクのレベル)を伴うシグナルを形成するためのリスク評価ブロック(5);
前記リスクの一般的な評価(リスクのレベル)を、前記装置を装着している被験者および/または被験者の健康監視の専門家宛てのメッセージに変換するための表示ブロック(6);
から構成される。
【0047】
クレームされた発明の重要な機能は、測定ブロック(2)における目的のあるパラメトリック及び関数変換に基づいてさまざまな物理的性質の一または複数のセンサ(1)によって感知されたパラメトリック信号を順次処理する手段、パラメトリック及び関数変換を実行する手段(3)、信号を比較する手段(4)、リスクを評価する手段(5)によって、被験者の健康に対するリスクを評価することである。
【0048】
表示ブロック(5)は、光インジケータ、音声インジケータ、および/または画面によって、リスクの一般的な評価(リスクのレベル)を、当該装置を装着している被験者および/または被験者の健康監視の専門家宛てのメッセージに変換することを目的とする。
【0049】
被験者の健康に対するリスクを評価する手順におけるパラメトリック信号の逐次処理とは、センサから受信した信号を特定されるリスクに関するメッセージに段階的に変換することを意味し、そのメッセージは、前記装置を装着している人間の被験者および/または被験者の健康監視のプロフェッショナルに宛てられるものである。5の変換ステップが使用される:測定、パラメトリック及び関数変換、信号比較、リスクの評価、評価結果の表示。各信号変換は、本発明の装置の対応するブロックで実行される。健康リスクの評価手順におけるセンサから受信した信号を変換するステップ、そのような信号の種類、および本発明の装置を構成し、これらの信号変換に対応するブロックの図示が図2に示されている。
【0050】
測定手順を開始する前に、関数パラメータのセット(4)(図面上では「セット」として示されている)が事前に提供され(図3)、各パラメータには、被験者の健康に対する特定のリスク要因を特徴づけるための期間と周期性に関するクリティカル生理学的パラメータとその時間特性の相互に関連する閾値の組み合わせが含まれる。このようなパラメータには、心拍数 (HR)、睡眠または覚醒状態、人間の身体活動の種類、エネルギー消費と流入、体の水分補給状態、睡眠相、ストレスレベル、細胞間液中のグルコース含有量を含んでもよいが、受信信号に含まれるパラメータはこのリストに限定されない。
【0051】
概略図(図3)は、関数パラメータのセット4を提供する手順を示す。
【0052】
特定の健康状態を反映する関数パラメータのセット4は、被験者の健康に対するリスク要因(FR)ごとに特定され、センサから得られる測定された生理学的特性をパラメータPの形式で含む信号S(P)から特定できる潜在的な健康リスク5について相互に関連する仮説であると理解される。実際、関数パラメータのセット4のそれぞれは、いくつかのパラメータPを組み合わせた場合に起こり得る健康リスクに関する仮説を反映している。健康リスクを評価する際には、Pパラメータの期間と周期性という時間特性を考慮する必要があるため、時間もパラメータの1つとなる。
【0053】
複数のPパラメータを組み合わせた場合の人間の健康についての潜在的なリスクについて仮説を立てる場合、医学によって蓄積され、病気と人の生理学的パラメータPの以前の変化パターンとの間の因果関係を反映する客観的なデータが使用される。これらのデータに基づいて、これらのパラメータPのクリティカルCP値が形成され、これはウェアラブルパーソナル装置1によって測定することができる(I,図1)。
【0054】
関数パラメータのそのような可能なセット4の一の例が図6に示されている。心拍数信号(HRS)は信号PパラメータS(P)として使用され;その人が置かれている状態の特徴、これはパラメータ「平静」状態、「歩行」状態、「ランニング」状態、および、パラメータ「時間」がある。
【0055】
セット内の各パラメータに対して、その閾値が指定される;したがって、セット内の各パラメータはクリティカル生理学的パラメータとして定義される。
【0056】
図6に示される本発明の実施形態では、以下の閾値が指定される:
‐クリティカル生理学的パラメータHRSには、事前に指定された閾値HRSnormがある。パラメータ(HRS)の信号Sに対する臨界生理学的パラメータCPの現在値は、≪S(HRS)>70%*S(HRSnorm)≫として定義される。つまり、HRSモニタリングの結果、確立された生理学的パラメータの限界から70%以上の逸脱があった場合、このパラメータによって特徴付けられる特定の健康リスク要因の存在も記録される。つまり、このクリティカル生理学的パラメータについては、このパラメータの公称値の一部としての相対値の形で閾値を指定することができる。
‐危険因子の存在を示すパラメータ(活動の一種)の信号Sに対する臨界生理学的パラメータCPの閾値の値。これは、≪ランニング≫状態を除く任意の状態として確立される。つまり、被験者の活動のタイプを特徴づけるクリティカル生理学的パラメータについては、特定の危険因子の存在は、それが特定の現在の状態に属する場合にのみ確立される。
‐危険因子の存在を示す、パラメータの信号Sに対するクリティカル生理学的パラメータCPの閾値(観察時間)は、≪2分≫と推定される。つまり、特定の絶対値に達すると、リスク係数が確立される。
【0057】
図7は他の例を示しており、関数パラメータの2つのセット4が同じPパラメータに基づいて使用される。関数パラメータのセットNは、図6に示す例からのセットである。同じPパラメータに基づいてN+1個の関数パラメータを設定すると、被験者の健康に対する潜在的なリスクに関する他の仮説に関連付けられる。図7に示される本発明の実施形態では、この仮説に対して次の閾値が指定される:
‐クリティカル生理学的パラメータHRSとして、事前に指定された閾値HRSnormがある。パラメータ(HRS)の信号Sに対するクリティカル生理学的パラメータCPの現在値は、≪S(HRS)>90%*S(HRSnorm)≫として定義される。つまり、HRSモニタリングの結果、確立された生理学的パラメータの限界から90%以上の逸脱があった場合、このパラメータによって特徴付けられる特定の健康リスク要因の存在も記録される。つまり、このクリティカル生理学的パラメータについては、このパラメータの公称値の一部としての相対値の形で閾値を指定することができる。
‐危険因子の存在を示すパラメータ(活動の一種)の信号Sに対する臨界生理学的パラメータCPの閾値の値。これは、≪ランニング≫状態を除く任意の状態として確立される。つまり、被験者の活動のタイプを特徴づけるクリティカル生理学的パラメータについては、特定の危険因子の存在は、それが特定の現在の状態に属する場合にのみ確立される。
‐危険因子の存在を示すパラメータ(観察時間)の信号Sに対する臨界生理学的パラメータCPの閾値値は、≪0.1分≫と推定される。つまり、リスク係数は特定の絶対値(≪0.1分≫)に達したときに確立される。
【0058】
図7に示す例は、同じパラメータの組み合わせであっても、関数パラメータの複数のセットが存在する可能性があることを示している。セットの数は、利用可能なセンサデータを使用して判断できるリスクの数にのみ依存する。
【0059】
装置における関数パラメータのセットの実装は、クリティカル生理学的パラメータの閾値を事前に設定することによって意図されており、たとえば、最も単純なケースでは、閾値装置のアナログ入力信号(図11)-HRSを測定するセンサからの信号を使用をする必要がある場合、電圧の振幅の形式である。
【0060】
関数パラメータセットには、クリティカル生理学的パラメータの時間特性も保存できる。この目的にはデジタル時計を使用できる。たとえば、HRSの周波数が高く、持続時間が長すぎる場合、そのような信号値が対応するセットに含まれるようにしてもよい。
【0061】
継続的な長期リスク監視の目的で、被験者の健康観察の回顧的データを装置に直接蓄積することも、保存およびその後の処理のために外部システム(装置)に送信することもできる。この目的のために、外部デバイスとの相互作用の可能性が提供され、外部デバイスは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップまたはデスクトップPCからなるグループから選択される。
【0062】
本発明で実施される、被験者の健康に対するリスクを評価および監視する本発明の方法は、以下のように実行される(図2)。
【0063】
一または二のセンサ1(図2)、例えば、センサ1およびセンサ2から、測定された生理学的パラメータPを含む信号S(P)が受信される。
【0064】
さらに、測定ブロック2では、異なる物理的性質のパラメータのセンサからの信号が、センサによって測定された量の値の形式に変換される。つまり、信号はパラメトリックな性質をとる。
【0065】
その後、パラメトリック及び関数変換ブロック3において、受信した各パラメトリック信号が、所定の時間間隔で単一(以下、バイナリ)形式の関数信号に変換される。この場合、対応するパラメトリック信号が、事前に作成された関数パラメータのセットの一に保存されているクリティカル生理学的パラメータの閾値に達した場合、機能信号は≪1≫と判定され(図3)、閾値に達していない場合は≪0≫と判定される。
【0066】
図4は、条件信号S1およびS2に対するそのような変換の例を示す。したがって、信号S1の場合、クリティカル生理学的パラメータの限界は点線で示すCP1の閾値であり、信号S2の場合、それはCP2の閾値である。パラメトリックおよび関数変換ブロック3(図2)の出力において、所定の時間間隔でこの値を超えた場合に、信号CB1またはCB2に≪1≫が記録され、超えていない場合に、≪0≫が記録される。
【0067】
この方法は、干渉に対して調整するために、入力信号Sの時間間隔でセンサから来る信号の特定の値(例えば、平均値)を決定することを提供する。さらに、測定された生理学的パラメータを含む信号Sは、例えば、センサの誤動作、信号伝送における干渉の存在、および他の客観的な理由により、存在しない可能性がある。この場合、変換後にバイナリCB信号は形成されない。図4に示すように、信号の送信中に中断が発生する。
【0068】
次のステップ(図2)には、信号比較ブロック4の関数パラメータの各セットの枠組み内でのバイナリ信号の比較が含まれる。パラメトリック及び関数ブロック3の出力では、バイナリ信号の単一ストリームが形成される。したがって、この特定の変換により、バイナリ形式への変換前には比較できなかった信号を将来比較できるようになる。
【0069】
この例では、最も単純なバイナリ形式、つまり≪1≫と≪0≫での比較について言及している。ただし、前のステップでの超過閾値をより多くの桁の形式で保存する、つまり超過の値を保存できるようにしてもよい。これにより、健康リスクの存在を判断する際に、生理学的パラメータのクリティカルな信号値の閾値を超える値とそのような超過の期間を考慮することができる。
【0070】
事前に提供された関数パラメータのセット4(図3)のそれぞれについて、関数バイナリ信号を相互に比較し、セット内の信号の≪1≫値が一致すると、特定の健康リスクの存在について判断が行われる。この操作を図5に示す。この例の機能バイナリ信号SB1、SB2、SB3は、各関数パラメータセット、つまりセット1、セット2、およびセット3内において、≪AND≫ ロジックによって比較される。関数パラメータのセット内の比較期間中に各信号SBの値が≪1≫の場合、出力は≪1≫になる。テンプレート内の比較の時間間隔で各SB信号の値が≪1≫である場合、出力は≪1≫になる。≪0≫が1つでもある場合、出力は≪0≫となる。この例では、第1のセットと第3のセットを比較すると、出力に≪1≫が含まれており、健康上のリスクがあることを示している。複数の関数パラメータセットが同時にトリガされた場合、健康リスクに関連し、被験者の健康状態の潜在的な変化を示す複数の状態が特定される。また、特定された一の状態が被験者の健康に対する複数のリスクを示している可能性があることにも言及する必要がある。
【0071】
パラメトリック信号をその結果の比較を伴う関数信号に変換する核心を示す一般的な例は、被験者の健康に対するリスクを評価および監視するための本発明の方法の基礎を築くものであり、図8に示されている。
【0072】
次のステップ(図2)は、リスクに関連する以前に特定された条件に従って被験者の健康に対するリスクを評価し、被験者の健康における潜在的な変化を反映するものであり、リスク評価ブロック5で実装される。たとえば、装置によって形成されるリスクの定性的評価には、二値論理の代数を使用できる。このようなリスク評価の一般的なスキームの例を図9に示す。
【0073】
この次のステップ(図2)では、被験者の健康に対するリスクを評価および監視するための本発明の装置の表示ブロック6(例えば、図1に示すように、ブレスレット形状のパーソナルウェアラブル装置1を使用)は、前記リスクの一般的な評価(リスクのレベル)を前記装置を装着している被験者および/または被験者の健康監視の専門家宛てのメッセージに変換する、例えば、本発明の装置のディスプレイ上に表示されるテキストメッセージのライトインジケータによる手段による(図10)。
【0074】
医療例
健康リスク評価の実際の例として、観察された60歳の男性で測定されたストレスと水分補給レベルの時間的関数パラメータを含むウェアラブルパーソナル装置からの信号を使用した例を次に示す。バイナリ信号への変換の第一段階では、ストレスパラメータの信号と水分補給レベル(脱水)のパラメータの信号の両方が、ストレスパラメータを伴う信号と脱水パラメータを伴う信号の両方に関するクリティカル生理学的パラメータ値閾値の信号とこれを超える時間と比較される。次のフェーズでは、バイナリ形式の信号が関数パラメータセットの枠組み内で既に比較されている。次の状況が特定できる:
‐水分補給低下によるストレスの増加;
‐長期にわたる水分不足(脱水症状);
【0075】
健康状態を監視したところ、患者が慢性的に脱水状態にあることが判明した。医師との面談の結果、10年前に心臓弁の1つを人工心臓弁に交換した後、過去2年間にわたり利尿薬を含む血圧降下薬を服用し、その結果、脱水症状による≪血液凝固≫が引き起こされたことが確認された。同時に、水分補給の低下はストレスの増加を伴った。この例で説明されているリスクは、観察対象者の生命と健康にとって重大であると医師によって認識され、新しい治療法が処方された。
【0076】
これらすべての状況は、人間の健康に対するリスクを特定する客観的な可能性があることを示唆している。
【0077】
これらのデータに基づいて、人間の健康リスクのより一般的な評価をさらに検討することができる。たとえば、これらの特定のリスクは心血管疾患や代謝障害を示している可能性がある。さらに、ストレス関連のリスクや水分補給の低下の証拠は、適応能力の低下やパフォーマンスの低下を示している可能性がある。
【0078】
また、たとえば、人間の健康に対する全体的なリスク評価は、個人の一般的な健康状態と全体的なリスクの決定を行う専門家によって分析され、リスクとそのパラメータのリストの形式でリスクを表現するものとして構築できることにも言及されるべきである。受信したリスクデータのすべてまたは一部について、受信したデータに基づいてより一般的なリスクを判断する自動システムを構築することもできる。このようなオプションの実現は、さらなる処理のためにウェアラブル装置からデータを送信するために、本発明と外部システム(デバイス)との相互作用によって想定される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、パーソナルウェアラブルデバイスとして具体化することができ、例えば本発明のデバイスはブレスレットとして設計することができ、または技術機器の部品からなる複雑なシステムの一部とすることもできる。
【0080】
アナログおよびデジタルICに基づいて手首に装着されるブレスレットとして設計されたパーソナルウェアラブルデバイスとして提供される本発明の実施形態の例が図11に示されている。
【0081】
例として、この特定の図は、HRS臨界値の超過を識別する方法について触れており、心血管疾患(CVD)のリスクがあることを示し(リスク1)、夜間に強くなったHRSを識別する方法とともに、被験者の生体の適応能力が低下するリスクを示している(リスク2)。
【0082】
したがって、ブレスレットのハウジング内に配置され、ブレスレットを手首にロックすることで被験者の体に接触するように取り付けられたHRSセンサ(例:光学式脈拍計)が、閾値デバイス(コンパレーター1)に電気信号を送信し、信号はアナログ形式の信号からデジタル情報信号に変換される。入力アナログ信号が、装置(ブレスレット)の関数パラメータの最初のセット(セット1)のクリティカル関数信号として事前に設定されている特定の(閾値)電圧(クリティカルHR値)より大きい値を持つ場合、その後、≪1≫に相当する論理レベル信号が閾値デバイスの出力に形成される。さらに、単純な接続回路(たとえば、正しく選択された抵抗器)を介して、論理要素からの信号がLEDを≪点灯≫する。これは、危険因子であるHRの増加が検出されたことを示し、したがって、たとえばCVDのリスク(リスク1)が決定されたことを示す。このリスクの仮定として、グラフ表示を簡素化するために、第2のクリティカルなパラメータ(時間)は考慮されていない。
【0083】
夜間における心拍数の増加を特定するための本発明の方法を実施するには、以下の2つのリスク要因を監視する必要があるため、本発明の装置の追加要素が必要であり、これらの要素はブレスレット内にも配置される:心拍数の増加と被験者の活動の種類≪睡眠≫。
【0084】
現在の時刻を特定し、一日より小さい単位(この場合は夜間)で時間間隔の継続時間を測定するには、出力が時間信号を生成するデジタル時計が必要であり、2つのデジタルコンパレータ(デジタルコンパレータ1とデジタルコンパレータ2)に分配される。このようなコンパレータは、測定機器、無線および有線通信、家庭用電化製品などで広く使用されている。たとえば、目覚まし時計付きデジタル時計にはデジタルコンパレータが組み込まれており、現在時刻が設定時刻と一致すると音声信号が発される。
【0085】
第1のデジタルコンパレータは、夜間の始まりを示す0時0分(目覚まし時計1)にあらかじめ設定され、第2のデジタルコンパレータは、夜間の終わりを示す6時0分(目覚まし時計2)に設定される。0分(目覚まし時計2)、これは夜間の終わりを意味する。これらの値は、装置(ブレスレット)の関数パラメータの第2のセット(セット2)を参照している。各コンパレータの条件付きアラームがトリガされると、≪1≫に相当する論理レベル信号が出力に形成される。両方の信号は第3のデジタルコンパレータ(デジタルコンパレータ3)に入力され、その出力では、第1のコンパレータからの≪1≫が存在する場合は≪1≫に相当する論理レベル信号が形成され、第2のデジタルコンパレータから≪1≫があった場合は≪0≫の信号がそれぞれ形成される。このような切り替えのたびに、第1と第2のコンパレータは、条件付き目覚まし時計が次にトリガされるまで、出力信号を反対に変更する。したがって、このデバイスは、被験者の条件付きタイプの活動≪睡眠≫を特徴付けるクリティカル生理学的パラメータ≪夜間≫を実装する。つまり、特定の危険因子の存在は、この現在の状態に属する場合にのみ確立される。活動タイプの測定の信頼性を高めるために、たとえば、空間内での装置の動きを測定する加速度計などのセンサを追加で使用できる。
【0086】
第2の方法では、2つの危険因子を考慮する必要があることを考慮すると、第1のファクターの出力≪1≫が存在することを意味する閾値デバイス(コンパレータ1)からの信号および 出力≪1≫に第2のファクターが存在することを意味する第3のデジタルコンパレータ(デジタルコンパレータ3)からの信号が、第4のデジタルコンパレータ(デジタルコンパレータ4)に供給され、そこで比較が実行される。第4のコンパレータの入力に≪1≫に相当する2の信号が同時に存在する場合、その出力にも≪1≫に相当する信号が形成され、これは、被験者の生体の適応能力が低下するリスク(リスク2)が存在することを意味する。この場合、最初の方法と同様に、第4のデジタルコンパレータの論理要素からの信号によってLEDが≪点灯≫する。
【0087】
本発明の利点は、その実装の単純さと多用途性であり、被験者の生体状態に関するパラメータおよび情報の一部に関する任意のデータを運ぶ信号を使用して、被験者の健康に対するリスクを評価および監視できることである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】