(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】水素製造システム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20240808BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240808BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240808BHJP
B01J 8/26 20060101ALI20240808BHJP
B01D 53/12 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/56 Z
C01B32/50
B01J8/26
B01D53/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508036
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022071679
(87)【国際公開番号】W WO2023016862
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522076125
【氏名又は名称】セッグ パワー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノルハイム、アルンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】シュテンロッド ウェスト、マルグレーテ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ、ヴィダル
【テーマコード(参考)】
4D012
4G070
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB20
4D012CD04
4D012CG01
4D012CK01
4G070AA01
4G070AB06
4G070BA08
4G070BB33
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4G070CB18
4G070CC06
4G070CC07
4G140EA03
4G140EA06
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4G140FC02
4G140FC06
4G140FD07
4G140FE01
4G146JA02
4G146JB02
4G146JC02
4G146JC20
4G146JC22
4G146JC34
4G146JC36
(57)【要約】
水素ガスを製造するためのシステム及び方法。システムは、少なくとも1つの改質器反応器と、少なくとも1つの分離器と、少なくとも1つの分離器搬送ラインと、少なくとも1つの再生器反応器と、少なくとも1つの再生器搬送ラインと、少なくとも1つのリサイクルラインとを備える。改質器反応器は、使用済みの吸着剤A
*を形成するCO
2を捕捉する吸着剤Aを収容するためのものであり、供給材料B及び水蒸気Cを改質してH
2及びCO
2を含む改質ガス混合物を生成するように構成される。改質器反応器は、B及びCの少なくとも一方を改質器反応器に供給するための改質器入口と、A
*及びH
2を排出するための改質器出口とを備える。分離器はA
*をH
2から分離するように構成される。分離器は、H
2及びA
*を分離器に供給するための分離器入口と、分離されたA
*を排出するための分離器出口とを備える。分離器搬送ラインは、A
*及びH
2を改質器出口から分離器入口に搬送する。再生器反応器は、分離器で分離されたA
*の少なくとも一部を受け入れるための再生器入口を備える。再生器動力源は、CO
2の放出を可能にして吸着剤を再生するために、受け取ったA
*に十分なエネルギーを供給するように構成される。再生器出口は再生吸着剤を排出する。再生器搬送ラインは、A
*の流れを分離器出口から再生器入口に搬送する。リサイクルラインは、再生吸着剤の少なくとも一部を再生器出口から改質器反応器に搬送するように配置される。再生器搬送ラインは、再生器入口に搬送されるA
*の流量を調整するように構成された流量調整装置を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを製造するためのシステムであって、
- 使用済み吸着剤(A
*)を形成する二酸化炭素を捕捉する吸着剤(A)を収容するための改質器反応器(100)であって、前記改質器反応器(100)は、供給材料(B)及び水蒸気(C)の改質を可能にして、水素ガス(H
2)及び二酸化炭素(CO
2)を含む改質ガス混合物を生成するように構成され、前記供給材料(B)及び前記水蒸気(C)の少なくとも1つを前記改質器反応器(100)に供給するための改質器入口(130)と、前記使用済み吸着剤(A
*)及び前記水素ガス(H
2)を排出するための改質器出口(155)と、を備える改質器反応器(100)と、
- 前記使用済み吸着剤(A
*)を前記水素ガス(H
2)から分離するように構成された分離器(300)であって、前記水素ガス(H
2)及び前記使用済み吸着剤(A
*)を前記分離器(300)に供給するための分離器入口(304)と、分離された前記使用済み吸着剤(A
*)を排出するための分離器出口(305)と、を備える分離器(300)と、
- 前記使用済み吸着剤(A
*)及び前記水素ガス(H
2)を前記改質器出口(155)から前記分離器入口(304)に搬送するための分離器搬送ライン(150)と、
- 前記分離器(300)で分離された前記使用済み吸着剤(A
*)の少なくとも一部を受け入れるための再生器入口(205)と、受け取った前記使用済み吸着剤(A
*)に、二酸化炭素(CO
2)の放出を可能にして前記吸着剤(A)を再生するのに十分なエネルギーを供給するように構成された再生器動力源(220)と、再生吸着剤(A)を排出するための再生器出口(215)と、を備える再生器反応器(200)と、
- 前記使用済み吸着剤(A
*)の流れを、前記分離器出口(305)から前記再生器入口(205)に搬送するための再生器搬送ライン(320、430、430’)と、
- 前記再生吸着剤(A)の少なくとも一部を、前記再生器出口(215)から前記改質器反応器(100)に搬送するように配置されたリサイクルライン(210)と、
を備え、
前記再生器搬送ライン(320、430)が、前記再生器入口(205)に搬送される前記使用済み吸着剤(A
*)の流量(R
A*)を調整するように構成された流量調整装置(440)を備えることを特徴とする、
システム。
【請求項2】
前記再生器搬送ライン(320、430)は、
- 分離された前記使用済み吸着剤(A
*)を収容するためのタンク(410)と、
- 一端が前記分離器出口(305)に結合され、他端が前記タンク(410)のタンク入口(405)に結合された第1の再生器搬送ライン(320)と、
- 一端が前記タンク(410)のタンク出口(415)に結合され、他端が前記再生器入口(205)に結合された第2の再生器搬送ライン(430、430’)と、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流量調整装置(440)は、前記再生器反応器(200)に流入する前記使用済み吸着剤(A
*)の流量(R
A*)を調整するために、調整可能な回転速度(v
r)で回転するように配置されたスクリューコンベア(450)をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スクリューコンベア(450)は、前記スクリューコンベア(450)がより高い回転速度(v
r,H)及びより低い回転速度(v
r,L)でそれぞれ回転している場合に、前記使用済み吸着剤(A
*)がより高い流量(R
A*,H)及びより低い流量(R
A*,L)で前記再生器反応器(200)に搬送されるように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記流量調整装置(440)は、
- 前記スクリューコンベア(450)に回転可能に接続されたモータ(460)と、
- 前記モータ(460)に接続されて、前記モータ(460)の前記回転速度の制御を可能にする変速駆動装置(470)と、
をさらに備える、請求項3又は請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記流量調整装置(440)と信号通信する自動制御装置(500)をさらに備え、
前記自動制御装置(500)は、
・前記改質器反応器(100)に流入する供給材料(B)の流量、
・前記改質器反応器(100)に流入する水蒸気(C)の流量、
・前記改質器反応器(100)に流入する供給材料(B)と水蒸気(C)との混合物の流量、
・前記改質器出口(155)と前記再生器入口(205)との間を流れる前記使用済み吸着剤(A
*)の流量、
・前記改質器出口(155)と前記再生器入口(205)との間を流れる少なくとも二酸化炭素(CO
2)の流量、及び
・前記分離器(300)から流出する前記水素ガス(310)の流量
のうちの少なくとも1つに基づいて、前記流量調整装置(440)の動作を自動的に制御するように構成されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記流量調整装置(440)と信号通信する自動制御装置(500)をさらに備え、
前記自動制御装置(500)は、
・前記改質器反応器(100)に流入する水蒸気(C)の総流量に対する供給材料(B)の組成比、
・前記改質器出口(155)と前記再生器入口(205)との間を流れる流体の化合物の組成比、
・前記改質器出口(155)と前記再生器入口(205)との間を流れる一酸化炭素(CO)と未変換燃料ガスとの間のガス組成比、
・前記改質器出口(155)と前記再生器入口(205)との間を流れる二酸化炭素(CO
2)と未変換燃料ガスとの間のガス組成比、及び
・水素ライン(310)におけるガス組成の測定値
のうちの少なくとも1つに基づいて、前記流量調整装置(440)の動作を自動的に制御するように構成されている、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記改質器反応器(100)は、一定量の前記供給材料(B)、一定量の前記水蒸気(C)、及び一定量の前記吸着剤(A)を含み、前記供給材料(B)は炭化水素含有燃料を含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記改質器反応器(100)及び前記再生器反応器(200)の少なくとも一方が、流動床を含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のシステムを用いて水素ガス(H
2)を製造する方法であって、
A.前記供給材料(B)及び前記水蒸気(C)を、1つ以上の前記改質器入口(130)を介して、二酸化炭素(CO
2)を捕捉するための吸着剤(A)を含む前記改質器反応器(100)に導入することと、
B.前記水素ガス(H
2)及び前記二酸化炭素(CO
2)を含む改質ガス混合物を生成するために、前記改質器反応器(100)内で前記供給材料(B)及び前記水蒸気(C)を改質することであって、前記吸着剤(A)が前記二酸化炭素(CO
2)を捕捉して前記使用済み吸着剤(A
*)を形成する、前記供給材料(B)及び前記水蒸気(C)を改質することと、
C.前記使用済み吸着剤(A
*)の少なくとも一部と前記水素ガス(H
2)の少なくとも一部とを、前記分離器搬送ライン(150)を通して前記改質器反応器(100)から前記分離器(300)に搬送することと、
D.少なくとも1つの前記分離器(300)を動作させることによって、前記使用済み吸着剤(A
*)を前記水素ガス(H
2)から分離することと、
E. 前記流量調整装置(440)を動作させることによって、前記使用済み吸着剤(A
*)の前記流量(R
A*)を調整しながら、前記使用済み吸着剤(A
*)の少なくとも一部を、再生器搬送ライン(320,430,430’)を通して前記分離器(300)から前記再生器反応器(200)に搬送することと、
F.前記再生器反応器(200)内の前記使用済み吸着剤(A
*)にエネルギーを供給して、前記使用済み吸着剤(A
*)から二酸化炭素(CO
2)の少なくとも一部を放出させ、ステップAの前記吸着剤(A)を少なくとも部分的に再生することと、
G.前記再生吸着剤(A)を、前記リサイクルライン(210)を通して前記再生器反応器(200)から前記改質器反応器(100)に搬送することによって、ステップFの前記再生吸着剤(A)の少なくとも一部をリサイクルすることと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記流量調整装置(440)はスクリューコンベア(450)を備え、ステップEにおける前記流量(R
A*)の調整が、前記スクリューコンベア(450)の回転速度(v
r)を調整することによって達成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップEにおいて前記スクリューコンベア(450)の前記回転速度(v
r)を調整することが、
前記使用済み吸着剤(A
*)をより高い流量(R
A*,H)で前記再生器反応器(200)に搬送するために、前記スクリューコンベア(450)をより高い回転速度(v
r,H)に調整することと、
前記使用済み吸着剤(A
*)をより低い流量(R
A*,L)で前記再生器反応器(200)に搬送するために、前記スクリューコンベアをより低い回転速度(v
r,L)に調整することと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流量調整装置(440)は、
- 前記スクリューコンベア(450)に回転可能に接続されたモータ(460)と、
- 前記モータ(440)の回転速度の制御を可能にするために前記モータ(460)に接続された変速度駆動装置(470)と、
をさらに備え、
ステップEにおいて前記スクリューコンベア(450)の回転速度(v
r)を調整する工程が、前記モータ(440)の回転速度を変更するために前記変速度駆動装置(470)を動作させることをさらに含む、
請求項10から請求項12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記再生器搬送ライン(320、430、430’)が、
- 分離された前記使用済み吸着剤(A
*)を収容するためのタンク(410)と、
- 一端が前記分離器出口(305)に結合され、他端が前記タンク(410)のタンク入口(405)に結合された第1の再生器搬送ライン(320)と、
- 一端が前記タンク(410)のタンク出口(415)に結合され、他端が前記再生器入口(205)に結合された第2の再生器搬送ライン(430,430’)と、
を備え、
ステップEが、前記タンク(410)を、分離された前記使用済み吸着剤(A
*)の予め定めた最小量まで充填することをさらに含む、
請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造及びその方法に関する。より詳細には、本発明は、改質器リアクタ(reformer reactor)において改質反応中に生成される二酸化炭素を捕捉するための吸着剤を使用し、使用済みの吸着剤が分離され、再生器リアクタに制御可能に供給される、水素ガスを製造するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーキャリアとしての水素燃料の使用が急速に増加しているため、産業ユーザへの水素の供給は、世界中で主要なビジネスとなっている。
【0003】
水素は、化石燃料やバイオマスから、水から、又は両方の混合物から抽出することができる。現在、水素製造の主要な供給源は天然ガスである。
【0004】
現在、水素燃料は、様々な方法で製造されている。最も一般的な方法は、天然ガス/メタン改質、石炭ガス化、及び電気分解である。他の方法としては、太陽光駆動(solar-driven)プロセスやバイオプロセスが挙げられる。例えば、https://www.energy.gov/eere/fuelcells/hydrogen-fuel-basicsを参照
【0005】
[従来のSMR]
従来の水蒸気メタン改質(SMR:steam methane reforming)では、触媒の存在下、高温(800~1000℃)かつ高圧(15~20バール)で、水蒸気がメタンと反応すると、水素(H2)及び一酸化炭素(CO)からなるガス混合物が生成される。反応(2.1)参照。続いて、触媒を用いて一酸化炭素を水蒸気と反応させる水性ガスシフト反応(2.2)により、低温(300~400℃)環境で二酸化炭素(CO2)と追加の水素が生成される。その後、所望の水素純度が達成されるまで、例えば圧力スイング吸着によって、複数の工程を経て水素ガスがCO2から分離される。
【0006】
従来のSMRにおける主な反応は以下の通りである。
改質:CH4(g)+H2O(g) ⇔ CO(g)+3H2(g) (2.1)
シフト:CO(g)+H2O(g) ⇔ CO2(g)+H2(g) (2.2)
全体:CH4(g)+2H2O(g) ⇔ CO2(g)+4H2(g) (2.3)
【0007】
従来のSMRは、圧力降下を最小化するために大きな固定床が必要であること、炭素生成による触媒の失活、及び燃焼熱の一部のみがプロセスに直接使用されるので高い反応器温度を維持する必要があること等、いくつかの欠点を抱えている。
【0008】
[収着強化SMR(SE-SMR)]
SE-SMR(sorption-enhanced steam methane reforming)プロセスは、酸化カルシウム(CaO)やドロマイトなどのCO2吸着剤を、触媒と共に改質器反応器に添加することにより、処理工程を削減する。吸着剤が反応器に添加されると、CO2は、発熱を伴うか焼(calcination)反応(2.4)において固形の炭酸塩(CaCO3)に変換され、その結果、改質器からの生成ガスは、主にH2とH2Oとからなり、少量のCO、CO2及び未変換CH4(燃料ガス)を含む。したがって、吸着剤を添加すると、反応(2.1)~(2.3)が順方向でシフトし、メタン転化率及び水素収率が向上する。発熱反応は、550℃から650℃の範囲の温度で反応するほとんど自己発熱的なプロセスをもたらす。
【0009】
SE-SMRにおける主な反応は、反応(2.1)~(2.2)に加えて、以下の通りである。
炭酸化:CaO(s)+CO2(g) ⇔ CaCO3(s) (2.4)
全体:CH4(g)+2H2O(g)+CaO(s) ⇔ CaCO3(s)+4H2(g) (2.5)
【0010】
連続生産では、CO2で飽和した炭酸吸着剤は、その後、再生器反応器に搬送され、吸熱を伴うか焼反応(2.6)を確実に起こすために高温に曝される。
か焼/再生:CaCO3(s) ⇔ CaO(s)+CO2(g) (2.6)
【0011】
反応器の構成に応じて、飽和した吸着剤は、炭酸化石灰石CaCO3からCO2を放出する吸熱反応のために約900℃まで加熱される。
【0012】
得られた再生吸着剤(CaO)は、その後、改質器反応器に戻され、使用済み吸着剤から放出されたCO2は、外部の場所(通常は、CO2処理設備又は貯蔵設備)に搬送される。
【0013】
再生器反応器に供給される熱は、床に入る飽和吸着剤の温度を上昇させると同時に、か焼反応が行われるのに十分な過剰な熱を供給する必要がある。熱源は、例えば、固体酸化物燃料電池(SOFC:solid oxide fuel cell)からの廃熱であってもよい。CO2によって飽和した吸着剤は、通常「使用済み吸着剤」と呼ばれる。
【0014】
上記のSE-SMRは、固定床反応器及び流動床反応器の両方で実施することができる。しかしながら、流動床反応器の使用は、流体/微粒子の連続供給と連続回収が可能であること(したがって、より高度の連続運転が可能になる)、効率的でかつ略等温に近い熱分布、化学反応物の効率的な混合、大規模運転に対するより高い適合性、少ない圧力降下、及び床と浸漬体との間の高い熱伝達により、有利であると考えられる。
【0015】
SE-SMR再生器のための流動化媒体は、原則としてCO2から容易に分離することができる気体であれば何でもよい。蒸気はCO2よりもかなり高温で凝縮するため、この点で水蒸気が理想的であると考えられる。SE-SMR改質器のための流動化媒体は、通常、水蒸気と炭化水素ガスとの混合物であり、水蒸気と炭化水素ガスとの比率S/Cは、2.5/1~4/1である。
【0016】
SE-SMRは、本発明の技術分野で公知である。例えば、収着強化改質による水素製造システムを開示する、国際公開第2016/191678号を参照されたい。この従来技術のシステムでは、改質器反応器内の吸着剤物質CaOは、CO2を吸着してCaCO3の形態の使用済み吸着剤を形成するように作用する。使用済み吸着剤は、さらに常圧の再生器反応器に案内され、使用済み吸着剤を加熱して使用済み吸着剤からCO2を脱離させ、それによって改質器反応器にリサイクルされる再生吸着剤を生成する。米国特許第8241374号明細書、国際公開第2018/162675号サーチレポート、国際公開第2018/148514号、及び米国特許出願公開第2019/0112188号明細書には、収着強化SMRの他の例が記載されている。
【0017】
上述の特許公報に記載されたシステムはいずれも、改質器反応器と再生器反応器との間の使用済み吸着剤の流量の制御に関する情報を提供していない。
【0018】
したがって、本発明の目的は、システム内で使用済み吸着剤の流量の制御を可能にすることである。
【発明の概要】
【0019】
本発明は独立請求項に記載され、特徴付けられ、従属請求項には本発明の他の特徴が記載されている。
【0020】
第1の態様において、本発明は、水素ガスH2を製造するためのシステムに関する。
【0021】
このシステムは、少なくとも1つの改質器反応器(reformer reactor)と、少なくとも1つの分離器と、少なくとも1つの分離器搬送ラインと、少なくとも1つの再生器反応器(regenerator reactor)と、少なくとも1つの再生器搬送ラインと、少なくとも1つのリサイクルラインとを備えている。
【0022】
改質器反応器(複数可)は、最低圧力及び/又は最低温度及び/又は体積単位当たりの最低量など、二酸化炭素を捕捉するための条件が存在する場合に、使用済み吸着剤A*を形成する二酸化炭素を捕捉する吸着剤Aを収容するための密閉容積を有する。改質器反応器は、供給材料B(炭化水素燃料など)と水蒸気C(すなわち、主に気相の水)との改質を可能にして、水素ガスH2と二酸化炭素CO2とを含む改質ガス混合物を生成するように構成されている。改質器反応器は、供給材料B及び水蒸気Cの少なくとも一方を改質器反応器に供給するための少なくとも1つの改質器入口と、使用済みの吸着剤A*及び水素ガスH2を排出するための少なくとも1つの改質器出口と、を備えている。より好ましくは、改質器反応器は、供給材料入口及び水蒸気入口を含む少なくとも2つの改質器入口を含む。改質器反応器は、二酸化炭素を捕捉する吸着剤を改質器反応器に供給するための、追加の入口を備えていてもよい。
【0023】
分離器(複数可)、例えばサイクロンは、使用済み吸着剤A*を水素ガスH2から分離するように構成されている。分離器(複数可)は、水素ガスH2及び使用済み吸着剤A*を分離器(複数可)に供給するための少なくとも1つの分離器入口と、分離された使用済み吸着剤A*を排出するための少なくとも1つの分離器出口と、を備えている。
【0024】
分離器搬送ライン(複数可)は、使用済み吸着剤A*及び水素ガスH2を改質器出口から分離器入口まで搬送するのに適している。
【0025】
好ましい構成では、改質器反応器は、2つの改質器出口と、ガス(主に水素ガスH2)を排出するために改質器反応器の上部に配置された1つの改質器出口と、主に使用済み吸着剤A*を排出するために改質器反応器の下部に配置された1つの改質器出口と、を含むことができる。この構成では、改質器反応器を出た水素ガスH2及び使用済み吸着剤A*は、分離器搬送ライン(複数可)内で混合され、分離器(複数可)に流入することができる。改質器反応器と分離器との間で水素ガスH2流及び使用済み吸着剤A*の垂直搬送(vertical transport)が必要とされる場合、搬送ライザ(transport riser)などの専用の垂直搬送装置を設置することが推奨され得る。このような搬送ライザの一例は、搬送ガスによる粒子の取り込み(particle entrainment)を確実にする(すなわち、ガス速度が十分に高い)直径を有すると共に、粒子の堆積を防止又は制限する下部を有する配管部であり得る。
【0026】
さらに、再生器反応器(複数可)は、分離器(複数可)内で分離された使用済み吸着剤A*の少なくとも一部を受け入れるための少なくとも1つの再生器入口と、受け入れた使用済み吸着剤A*にエネルギーを供給して二酸化炭素CO2の放出を可能にし、それによって吸着剤Aを再生するように構成された少なくとも1つの再生器動力源と、再生吸着剤Aを排出するための少なくとも1つの再生器出口と、使用済み吸着剤A*の流れを分離器出口(複数可)から再生器入口(複数可)まで搬送するための少なくとも1つの再生器搬送ラインと、再生吸着剤Aの少なくとも一部を再生器出口(複数可)から改質器反応器(複数可)に、例えば1つ以上の改質器入口を介して又は1つ以上の専用のリサイクル入口を介して搬送するように構成された少なくとも1つのリサイクルラインと、を備えている。
【0027】
1つの再生器搬送ライン、又は複数の再生器搬送ラインの各々は、有利には、再生器入口に搬送される使用済み吸着剤A*の流量RA*[m3/s(秒)又はkg/s]を調整するように構成された、少なくとも1つの流量調整装置を備えていてもよい。
【0028】
本発明の1つの例示的な構成では、再生器搬送ラインは、分離された使用済み吸着剤A*を収容するための少なくとも1つのタンクと、一端が分離器出口(複数可)に結合され、他端がタンクの少なくとも1つのタンク入口に結合された少なくとも1つの第1の再生器搬送ラインと、一端がタンクの少なくとも1つのタンク出口に結合され、他端が再生器入口に結合された少なくとも1つの第2の再生器搬送ラインと、をさらに備えている。1つ以上の測定装置(複数可)をタンクに接続して、タンク内に貯蔵された使用済み吸着剤A*の量を測定することができる。
【0029】
本発明の別の例示的な構成では、再生器搬送ライン(複数可)は、再生器搬送ライン(複数可)を通して搬送される分離された使用済み吸着剤A*の流れを開放又は停止するように配置された少なくとも1つのバルブをさらに備えている。バルブ(複数可)は、例えば、タンク(複数可)への流れを停止又は開放するために、第1の再生器搬送ラインに配置されてもよい。
【0030】
本発明のさらに別の例示的な構成では、流量調整装置(複数可)は、再生器反応器(複数可)への使用済み吸着剤A*の流量RA*を調整するために、調整可能な回転速度vrで回転するように配置された少なくとも1つのスクリューコンベアを備えている。スクリューコンベアは、一般には、回転する螺旋状のスクリューブレードを使用する機構であり、スクリューブレードが液体及び/又は粒状物質などの固体の移動を可能にする。
【0031】
前記スクリューコンベアは、好ましくは、スクリューコンベアがより高い回転速度vr;H及びより低い回転速度vr,Lでそれぞれ回転している場合に、使用済み吸着剤A*が、より高い流量RA*,H及びより低い流量RA*,Lで再生器反応器に搬送されるように構成されている。
【0032】
さらに、流量調整装置は、好ましくは、スクリューコンベアに回転可能に接続され、それによって前記調整可能な回転速度vrを可能にするモータ(例えば、電動モータ)と、モータに接続され、モータの回転速度の制御を可能にし、それによってスクリューコンベアの回転速度の制御を可能にする、変速駆動装置/周波数変換器と、を備えている。
【0033】
本発明のさらに別の例示的な構成では、システムは、流量調整装置(例えば、変速度駆動装置)と信号通信する、及び/又は直接モータと信号通信する自動制御装置をさらに備えている。この例示的な構成では、制御装置は、以下のうちの少なくとも1つに基づいて、流量調整装置の動作を自動的に制御し、それによって流量RA*を自動的に制御するように設計されプログラムされ得る。
・改質器反応器に流入する供給材料Bの流量、
・改質器反応器に流入する水蒸気Cの流量
・改質器反応器に流入する供給材料Bと水蒸気Cとの混合物の流量
・改質器出口と再生器入口との間を流れる使用済み吸着剤A*の流量、
・改質器と再生器入口との間を流れる少なくとも二酸化炭素CO2の流量、好ましくはさらに一酸化炭素COの流量
・分離器から流出するガス(主に水素ガス)の流量。
【0034】
本発明のさらに別の例示的な構成では、システムは、流量調整装置と信号通信する自動制御装置をさらに含み、この制御装置は、以下のうちの少なくとも1つに基づいて、流量調整装置の動作を自動的に制御し、それによって流量RA*を自動的に制御するように構成されている。
・改質器反応器に流入する水蒸気C及び供給材料Bの総流量に対する供給材料Bの組成比
・改質器出口と再生器入口との間を流れる液体の化合物(典型的には、H2、CO、CO2及びCH4)の組成比
・改質器出口と再生器入口との間を流れる一酸化炭素COと未反応の燃料ガス(典型的にはCH4)との間のガス組成比
・改質器出口と再生器入口との間を流れる二酸化炭素CO2と未反応の燃料ガス(典型的にはCH4)との間のガス組成比
・例えば、改質器反応器(200)内のCO2捕捉の低下を検出するための、水素ラインにおける一般的なガス組成の測定値
【0035】
ガス組成の測定は、ガスクロマトグラフィーなどのいくつかの既知の測定技術によって達成することができる。
【0036】
本発明のさらに別の例示的な構成では、再生器反応器は、内部容積を取り囲み、使用済み吸着剤A*がその中に流入することができる再生器容器(regenerator vessel)をさらに備えている。この構成では、再生器動力源(power source)は、再生器容器の外側に配置され、内部容積内に動力を供給することができる。
【0037】
容器の外側に配置される再生器動力源は、バーナなどの熱源、又は例えば高温の固体酸化物燃料電池(SOFC)からの廃熱であってもよく、それによって、容器壁を通して間接的に熱を供給することによって、使用済み吸着剤からの二酸化炭素の放出を確実にする。バーナは、ガスバーナ、石炭バーナ、酸素燃料バーナ及び/又はオイルバーナとすることができる。動力源と再生器との間の間接的な熱交換は、動力源から再生器床材料(regenerator bed material)に熱を伝達するために、再生器床部に高温熱交換器を組み込む必要がある場合がある。
【0038】
代替的に又は追加的に、前記動力源の少なくとも一部又は追加的な動力源は、再生器容器の内部、典型的には容器の底部に配置されてもよく、それによって、高温ガスのようなエネルギーを使用済み吸着剤A*へ直接供給することができる。内部動力源から(例えば、酸素燃料バーナから)生じるいかなる燃焼生成物も、再生器床の流動化などの他の用途に使用されてもよい。動力源が酸素燃料バーナである場合、動力源と再生器との間の直接的な熱伝達は、酸素燃料バーナに酸素を供給する空気分離ユニットの使用を必要とする場合がある。
【0039】
本発明のさらに別の例示的な構成では、システムは、分離器内で使用済み吸着剤A*から分離された水素ガスH2の流れを、少なくとも1つの第2の分離器出口を介して1つ以上の外部の場所に搬送するための少なくとも1つの水素搬送ラインをさらに備えている。少なくとも1つの外部の場所は、水素ガスH2の流れの少なくとも一部を精製するための設備を含む場所であってもよい。
【0040】
本発明のさらに別の例示的な構成では、システムは、再生器内の使用済み吸着剤A*から放出された二酸化炭素CO2の流れを、少なくとも1つの第2の再生器出口を介して、1つ以上の外部の場所に搬送するための少なくとも1つのCO2搬送ラインをさらに備えている。少なくとも1つの外部の場所は、二酸化炭素CO2の流れの少なくとも一部を貯蔵するための設備を含む場所であってもよい。
【0041】
第2の態様では、本発明は、上述したように、改質器反応器がある量の供給材料Bとある量の水蒸気Cとを含むシステムに関する。供給材料Bは、天然ガス、メタンリッチガス、合成ガス、メタンリッチガスと合成ガスの混合物などの炭化水素含有燃料、バイオマス又は炭素/炭化水素などの有機物のガス化からのガス、及びガスハイドレートのうちの1種以上を含むことができる。
【0042】
本発明の第2の態様の例示的な構成では、改質器反応器は、ある量の吸着剤Aを含む。吸着剤Aは、酸化カルシウムなどの金属酸化物であってもよく、使用済み吸着剤A*は炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩であってもよい。
【0043】
本発明の第2の態様の別の例示的な構成では、改質器反応器(複数可)及び/又は再生器反応器(複数可)は流動床を含み、それによって、例えば、吸着剤Aと改質ガス混合物B、Cとの間の接触表面積が大きいこと、温度均一性が向上又は改善すること、及び/又は熱伝達が増加することなど、いくつかの利点を達成する。
【0044】
本発明の第2の態様の別の例示的な構成では、改質器反応器は、
i)収着強化水蒸気メタン改質をサポートするように構成された改質器反応器
ii)収着強化水性ガスシフトをサポートするように構成された改質器反応器、又は
iii)i)及びii)の組み合わせ、からなる群から選択される。
【0045】
第3の態様では、本発明は、上述のシステムを用いて水素ガスH2を製造する方法に関する。
【0046】
この方法は、以下のステップ、すなわち、
A.供給材料B(炭化水素燃料など)及び水蒸気Cを、1つ以上の改質器入口を介して改質器反応器(複数可)に導入することであって、改質器反応器(複数可)は二酸化炭素CO2を捕捉するための吸着剤Aを含む、供給材料B及び水蒸気Cを導入すること、
B.水素ガスH2及び二酸化炭素CO2を含む改質ガス混合物を生成するために改質器反応器(複数可)内で供給材料B及び水蒸気Cを改質することであって、吸着剤Aが二酸化炭素CO2を捕捉して使用済み吸着剤A*を形成する、供給材料B及び水蒸気Cを改質すること、
C.使用済み吸着剤A*の少なくとも一部と水素ガスH2の少なくとも一部とを、分離器搬送ライン(複数可)を介して、改質器反応器(複数可)から分離器(複数可)へ搬送することと、
D.分離器(複数可)を動作させることにより使用済み吸着剤A*を水素ガスH2から分離することと、
E.調整装置を動作させることにより使用済み吸着剤A*の流量RA*を調整しながら、使用済み吸着剤A*の少なくとも一部を、再生器搬送ラインを介して分離器から再生器反応器に搬送することと、
F.再生器反応器(複数可)内の使用済み吸着剤A*に熱などのエネルギーを供給することであって、使用済み吸着剤A*によって捕捉された二酸化炭素CO2の少なくとも一部を放出させ、それによってステップAの吸着剤Aを少なくとも部分的に再生する、エネルギーを供給することと、
G.再生吸着剤Aを、再生器反応器(複数可)から改質器反応器(複数可)にリサイクルライン(複数可)を介して搬送することにより、ステップFの再生吸着剤Aの少なくとも一部分をリサイクルすることと、
を含む。
【0047】
吸着剤Aは、酸化カルシウムなどの金属酸化物であってもよく、使用済み吸着剤A*は炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩であってもよい。
【0048】
リサイクルライン(複数可)を介してリサイクルされた再生吸着剤Aによって提供される熱は、改質ガスを生成し、吸着剤Aに二酸化炭素CO2を捕捉するために、改質器反応器内の所望のプロセスを確実にするのに十分であり得る。しかしながら、改質器反応器は、外部熱源などの別個の動力源を備えていてもよい。
【0049】
本発明の第3の態様の例示的なプロセスでは、流量調整装置は、少なくとも1つのスクリューコンベアを備えており、ステップEにおける流量RA*の調整はスクリューコンベアの回転速度vrを調整することによって達成される。
【0050】
本発明の第3の態様の別の例示的なプロセスでは、ステップEでスクリューコンベア(複数可)の回転速度vrを調節することは、使用済み吸着剤A*を1つ又は複数のより高い流量RA*,Hで再生器反応器(複数可)に搬送するために、スクリューコンベア(複数可)を1つ又は複数のより高い回転速度vr,Hに調整することと、使用済み吸着剤A*を1つ又は複数のより低い流量RA*,Lで再生器反応器(複数可)に搬送するために、スクリューコンベア(複数可)を1つ又は複数のより低い回転速度vr,Lに調整することと、をさらに含む。
【0051】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、流量調整装置は、スクリューコンベア(複数可)に回転可能に接続された少なくとも1つのモータと、モータ(複数可)に接続された少なくとも1つの変速駆動装置と、をさらに備えている。
【0052】
この例示的な方法では、ステップEにおけるスクリューコンベア(複数可)の回転速度vr(複数可)を調整するステップは、モータ(複数可)の回転速度(複数可)を変更するために変速駆動装置を動作させ、それによってモータ(複数可)に接続されたスクリューコンベア(複数可)の回転速度vrを調整することを、さらに含むことができる。
【0053】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、再生器搬送ライン(複数可)は、少なくとも1つのバルブをさらに備え、ステップEは、再生器搬送ライン(複数可)を通って搬送される分離された使用済み吸着剤A*の流れ(複数可)を開放又は停止するようにバルブ(複数可)を動作させることをさらに含む。
【0054】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、再生器搬送ライン(複数可)は、分離された使用済み吸着剤A*を収容するための少なくとも1つのタンクと、一端が分離器出口(複数可)に結合され、他端がタンク(複数可)のタンク入口(複数可)に結合された少なくとも1つの第1の再生器搬送ラインと、一端がタンク(複数可)のタンク出口(複数可)に結合され、他端が再生器入口(複数可)に結合された少なくとも1つの第2の再生器搬送ラインと、をさらに備えており、ステップEは、分離された使用済み吸着剤A*の予め定めた最小量(複数可)までタンク(複数可)を充填することをさらに含む。システムは、タンク(複数可)内に貯蔵された使用済み吸着剤A*の量(複数可)を測定するための少なくとも1つの測定装置を、さらに備えることができる。
【0055】
上述のバルブ(複数可)は、例えば、第1の再生器搬送ラインに配置されて、後述するタンク(複数可)への流れ(複数可)を停止又は開放することができる。
【0056】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、再生器反応器(複数可)は、使用済み吸着剤A*がその中で流動し得る密閉された内部容積を有する再生器容器をさらに備えている。この例示的なプロセスでは、再生器動力源(複数可)は、再生器容器に間接加熱を提供するために再生器容器の外側に配置されてもよく、再生器反応器内の使用済み吸着剤A*にエネルギーを提供するステップFは、再生器動力源(複数可)から再生器容器内に熱などのエネルギーを搬送することを含んでいてもよい。
【0057】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、供給材料(B)及び水蒸気(C)を改質するステップは、i)収着強化水蒸気メタン改質をサポートするように構成された改質器反応器、ii)収着強化水性ガスシフトをサポートするように構成された改質器反応器、又はiii)i)及びii)の組み合わせ、からなる群から選択される改質器反応器(100)を使用して改質することを含む。
【0058】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、改質器反応器(複数可)は、少なくとも1.1バール(絶対圧)、より好ましくは少なくとも1.3バール(絶対圧)の圧力で運転される。
【0059】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、再生器反応器(複数可)は、少なくとも1.1バール(絶対圧)、より好ましくは少なくとも1.3バール(絶対圧)の圧力で運転される。
【0060】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、本方法は、ステップDの間に、分離器(複数可)内で使用済み吸着剤A*から分離された水素ガスH2の流れを、分離器(複数可)から第2の分離器出口(複数可)を介して外部の場所(複数可)に搬送するステップをさらに含む。
【0061】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、外部の場所(複数可)は、水素ガスH2の流れ(複数可)の少なくとも一部を精製するための配置を含む場所であってもよい。精製ステップは、圧力スイング吸着を含んでいてもよい。
【0062】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、本方法は、ステップFの間に、再生器容器内の使用済み吸着剤A*から放出された二酸化炭素CO2の流れを、専用のCO2出口を介して再生器反応器から外部の場所に搬送するステップをさらに含む。
【0063】
本発明の第3の態様のさらに別の例示的なプロセスでは、外部の場所は、二酸化炭素CO2の流れの少なくとも一部を処理及び/又は貯蔵するための設備を含む場所であってもよい。
【0064】
上記のようなSE-SMRを用いた水素製造システムにおいて、使用済み吸着剤A* の流量RA*を制御が可能であることにより、いくつかの有利な点が達成される。
【0065】
流量調整装置(例えば、スクリューコンベアの回転速度)を調整することにより、再生器搬送ラインを通って搬送される使用済み吸着剤A*の流量RA*を制御することにより、再生器反応器に流入する固形物(solids)/使用済み吸着剤の量を制御することができる。そして、再生器反応器内の再生吸着剤Aは改質器反応器に戻されるので、流量調整装置の調整により、吸着剤循環プロセス(sorbent looping process)に関与する粒子の循環流量全体の高度な制御を達成し、それにより吸着剤循環プロセスで捕捉され、放出されるCO2の量の高度な制御を達成する。流量調整装置の調整により、二酸化炭素(CO2)をほとんど又は全く含まない供給材料と、かなりの量の初期二酸化炭素(CO2)を含む供給材料(B)とを切り替えることができ、それにより供給材料(B)中のCO2含有量の変動に応じて、改質器反応器に可変量の吸着剤を供給することができる。
【0066】
さらに、改質器反応器及び再生器反応器の両方は、一定量の固形物しか保持することができない。反応器内の床が流動化され、平滑化されていると仮定すると、一方の反応器の固形物の最大量を超える場合、余剰の固形物はそれらの相互の直接結合によりシステムループ内で他方の反応器へと流れ続ける。
【0067】
循環速度が低過ぎる場合、改質器反応器は、改質プロセスにおいて生成されるガス中の利用可能なCO2量に比べ、CaOなどの再生吸着剤を十分に受け取ることができない(反応(2.2)-水性ガスシフトを参照)。したがって、循環を続けると、最終的には、改質器反応器内でのみ使用済み吸着剤(飽和固体)A*を生じることになり、この場合もCO2の捕捉/吸収は全く無いか、又は殆ど無いことになる。
【0068】
改質器反応器内でのCO2捕捉は、(未使用の)吸着剤Aの不足により停止するため、より多くのCO2が気相の状態で改質器反応器から排出されることになる。このようなCO2排出量の増加は、例えばガスクロマトグラフィーを用いて、上述のように改質組成(reformate composition)を測定することによって監視することができる。さらに、反応器間のループ結合(looped coupling)により、再生器反応から気体の状態で排出されるCO2の減少を監視することは、システムループにCO2が追加されないので、改質器反応器におけるCO2捕捉の減少の指標を提供する。
【0069】
したがって、システムの最適な動作を保証するために、任意の所与の時間に再生器反応器から改質器反応器に流入する十分な吸着剤(例えば、CaO)が存在することが、非常に有利であると考えられる。
【0070】
改質器反応器内の吸着剤(CaO)が多過ぎることに起因して循環速度が高過ぎることは、循環速度が低過ぎることに比べて問題が少ないと考えられる。しかしながら、特定の閾値を超える循環速度は、再生器反応器内のCO2の滞留時間を減少させ、それによって再生器反応器から排出されるCO2が減少する危険性があるので、望ましくないと考えられる。十分な再生を確保するためには、使用済み吸着剤に供給される動力(power)を増加させなければならない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明の理解を容易にするために、以下の図面が添付される。図面は本発明の実施形態を示しており、ここでは例示としてのみ説明される。
【0072】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による、吸着剤を使用して水素ガスを製造するためのシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、典型的な組成、流れ、及び温度が図示された
図1のシステムを示す図である。
【
図3】
図3は、流量調整装置及び制御システムを備える供給システム(dosing system)の詳細を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態による、吸着剤を使用して水素ガスを製造するためのシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。しかしながら、図面は、本発明を図面に示された主題に限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0074】
特に、
図1及び
図2を参照すると、水素ガスの製造のための本発明のシステム1は、少なくとも2つの反応器、改質器反応器100及び再生器反応器200を含む。
【0075】
まず、改質器反応器100内には、バブリング流動床(BFB)などの流動床、ニッケル触媒などの触媒、及び酸化カルシウム(CaO)などの吸着剤Aが、導入される。
【0076】
流動床の温度を制御するために、反応器に熱交換器を挿入して、冷却流体又は加熱流体を床に運ぶことができる。しかしながら、以下でさらに説明されるように、このような熱交換器は、この特定のシステムでは省略することができる。なせなら、反応器中で所望の反応を確実に行うために必要な改質器反応器の温度は、加熱された再生吸着剤Aのフィードバックによって達成され得るからである。
【0077】
燃料材料ライン3を流れる天然ガス/メタン(CH4)などの燃料/供給材料Bと、水蒸気ライン2を流れる水蒸気CなどのCO2から分離可能なガスとは、混合物Dとして共通の供給ライン4に案内される。次いで、混合物Dは、改質器入口130を介して改質器反応器100に流入する。混合物Dの温度は、通常は200℃と300℃の間、例えば250℃である。混合物Dの圧力及び流量は、それぞれ、1.0バール(絶対圧)(bara:bar absolute)と1.4バール(絶対圧)の間(典型的には1.2バール(絶対圧))とすることができ、375kg/h(時)と425kg/hの間(典型的には392kg/h)とすることができる。
【0078】
また、燃料材料ライン3及び水蒸気ライン2内の温度、気圧及び流量の典型的な値は、それぞれ、120℃(±20℃)/1.4バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))/73kg/h(±15kg/h)と、120℃(±20℃)/1.4バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))/318kg/h(±50kg/h)とである。
【0079】
代替的に、燃料材料B及びガスCは、別々の入口を通って改質器反応器100に流入することができる。
【0080】
例示的な流体及び微粒子が使用される場合、改質器反応器100では以下の反応が起こる。
改質:CH4(g)+H2O(g) ⇔ CO(g)+3H2(g) (2.1)
シフト:CO(g)+H2O(g) ⇔ CO2(g)+H2(g) (2.2)
炭酸化:CaO(s)+CO2(g) ⇔ CaCO3(s) (2.4)
【0081】
改質反応及びシフト反応は、それぞれ吸熱反応と発熱反応であり、炭酸化反応は発熱反応である。
全体:CH4(g)+2H2O(g)+CaO(s) ⇔ CaCO3(s)+4H2(g) (2.5)
【0082】
したがって、CO2ガスは流動床内の吸着剤A(ここではCaO粒子の形態である)によって捕捉され、使用済み吸着剤A*(ここではCaCO3粒子の形態である)を形成する。
【0083】
生成されたH2ガス及び使用済み吸着剤A*は、さらに、改質器出口155及び分離器入口304を介して、分離器搬送ライン/管150を通って1つ以上の分離器300に案内される。
【0084】
分離器300は、少なくともH2ガスを使用済み吸着剤A*から分離するように構成され、好ましくは、遠心分離を駆動分離力として使用して、使用済み吸着剤A*をガスから除去するタイプの慣性分離器である。静電分離器などの当該技術分野で周知の他の分離器でも、所望の分離を達成することができる。
【0085】
運転中、分離されたH2ガスは、分離器300の上部に配置された水素出口315を介して水素ライン310に連続的に放出される。一方、分離された使用済み吸着剤A*は、分離器300の下部に配置された使用済み吸着剤出口305を介して、第1の再生器搬送ライン320に連続的に放出される。
【0086】
分離されたH2ガスは、例えば、加圧スイング吸着、電気化学的精製、又は触媒的再結合を使用して、さらなる精製のための設備に案内されてもよい。運転中の水素ライン310内の典型的な温度、圧力及び流量は、600℃(±100℃)、1.2バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))、及び208kg/h(±40kg/h)である。以下でさらに説明するように、水素ライン310へのガスの放出は、H2ガスに加えて、改質器反応器100からの非反応ガス、例えばCO、CO2及び燃料ガスB(例えばCH4)を含むこともできる。
【0087】
分離された使用済み吸着剤A*は、使用済み吸着剤出口305から、第1の再生器搬送ライン320を通る流量を制御するように構成された供給システム400に案内される。運転中の第1の再生器搬送ライン320内の温度、圧力、及び流量の典型的な値は、600℃(±100℃)、1.2バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))、及び2000kg/h(±600kg/h)である。
【0088】
供給システム400は、分離器300から使用済み吸着剤A*を受け取るために、かつタンク410から使用済み吸着剤A*を排出するために、1つ以上のタンク入口405と、1つ以上のタンク出口415とをそれぞれ有するタンク410を備えることができる。
【0089】
供給システム400は、タンク内のA
*の量、CO、CO
2及び/又はCH
4などの他の化学種の存在及び組成、水分の程度(degree of moisture)などの動作パラメータの監視を可能にするためのタンク測定装置411を含むことができる。
図1~
図4では、このようなタンク測定装置411は、タンク410に直接結合されて示されている。しかしながら、測定は、所望のパラメータを達成できる限り、使用済み吸着剤の搬送ライン320、430に沿った任意の場所で実施することができる。このようなタンク測定装置411の一例は、タンク410内に存在する固形物の体積を連続的に監視することができる、レベル測定装置である。
【0090】
使用済み吸着剤A*は、タンク出口415を介してタンク410から排出された後、さらに、第2の再生器搬送ライン430、430’を通って、再生器反応器200に案内され、使用済み吸着剤A*を再生/か焼して、吸着剤A及びCO2ガスに戻す。再生器反応器200に流入する(主に吸着剤A)の典型的な温度、気圧及び流量は、それぞれ850℃(±100℃)、1.2バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧)ル)、及び296kg/h(±50kg/h)である。
【0091】
前記再生反応
CaCO3(s) ⇔ CaO(s)+CO2(g) (2.6)
は、エネルギーの供給を必要とする吸熱反応であり、通常、熱を加える形式でエネルギーを供給する。1.1~1.4バール(絶対圧)の典型的な圧力では、800℃~1100℃の温度範囲が、再生反応を開始し、維持するのに十分な温度であり得る。
【0092】
再生器反応器200は、
-流動床(通常はBFB)を有する内部容積を有する再生器容器201と、
-使用済み吸着剤A*に熱エネルギーを供給するための再生器動力源220と、
-第2の再生器搬送ライン430’から再生器容器201への使用済み吸着剤A*の流入を可能にするための1つ以上の再生器入口205と、
-CO2を再生器容器201から1つ以上のCO2ライン240に排出するための1つ以上のCO2出口235と、
-再生器反応器の床を流動化させるために、1つ以上の水蒸気再生器ライン230から再生器容器201へのC(水蒸気ライン2から案内された水蒸気Cなど)の流入を可能にするための1つ以上の水蒸気入口225と、
-再生器容器201からの高温の再生吸着剤Aの排出を可能にするための1つ以上の吸着剤出口215と、
を備えている。
【0093】
再生器容器201から排出された後、高温の吸着剤Aは、1つ以上の吸着剤入口120を介して、リサイクルライン210を通って改質器反応器100に戻るように案内される。
【0094】
水蒸気ライン2から再生器容器201に流入する水蒸気Cは、予熱され、750℃(±75℃)、1.2バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))、及び112kg/h(±20kg/h)の典型的な温度、圧力及び流量を有している。上流側で、水蒸気ライン2は、供給ライン4と水蒸気再生器ライン230とに向かう流れに分岐し、水蒸気Cは、120℃、1.2バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))及び430kg/h(±75kg/h)の典型的な温度、圧及び流量を有する。
【0095】
CO2ライン240は、排出されたCO2を、外部の場所、典型的にはCO2貯蔵設備600に案内する。CO2ライン240内の典型的な温度、圧力、及び流量は、850℃(±75℃)、1.2バール(絶対圧)(±0.4バール(絶対圧))、及び296kg/h(±75kg/h)である。
【0096】
さらに、供給システム400は、タンク410への及び/又はタンク410からの使用済み吸着剤A*の流れを開放又は停止するように構成された、逆止弁(one-way valve)などのバルブ(図示せず)を備えていてもよい。
【0097】
吸着剤の速度論(kinetics of sorbent)及び操作圧力の両方が、流動床反応器におけるSE-SMRの生産効率に大きな影響を及ぼすことが知られている[Wang, Y. F.; Chao, Z. X.; Jakobsen, H. A. 3D Simulation of bubbling fluidized bed reactors for sorption enhanced steam methane reforming processes. J. Nat. Gas Sci. Eng. 2010, 2, 105-113 and publication Wang, Y. F.; Chao, Z. X.; Jakobsen, H. A. SE-SMR process performance in CFB reactors: Simulation of the CO2 adsorption/desorption process with CaO based sorbents. Int. J. Greenhouse Gas Control 2011, 5, 489-497等の文献を参照]。
【0098】
したがって、本発明者等は、水素製造プロセス中に、特に吸着剤Aの捕捉効率及び/又は使用済み吸着剤A*の流量RA*を監視し、制御する能力を有することが非常に有利であることに気付いた。
【0099】
図3は、
図1及び
図2の供給システム400の1つの例示的な構成を示し、この構成は、分離器300から排出される使用済み吸着剤A
*の流量R
A*を制御するための流量調整装置440と、流量R
A*及び吸着剤Aの捕捉効率などの様々な動作パラメータ(operating parameters)を制御するための制御システム500と、を備えている。
【0100】
流量RA*を制御するために、流量調整装置440は、図示した例示的な構成では、第2の再生器搬送ライン430の一部を構成するスクリューコンベア450を備え、それにより搬送ラインを上流側搬送ライン部430と下流側搬送ライン部430’とに分割する。スクリューコンベア450に回転運動を行わせるために、モータ460がスクリューコンベア450の端部に回転可能に結合されている。また、変速駆動装置/周波数変換器470をモータ460に接続することにより、回転速度を調整する能力は実現されている。
【0101】
図示した制御システム500は、デジタル制御及び監視の両方のために、変速駆動装置470と信号通信するように設定されている。
【0102】
図1から
図4に示す例示的な構成では、制御システム500は、さらに、以下のように、ループ化された水素製造プロセスに関与するシステム1の他の動力学/構成要素(dynamics / components)の1つ以上から動作信号を受信及び/又は送信することができる。
-燃料材料Bの改質器反応器100への流量及び/又は組成を測定するために、燃料材料ライン3を流れる燃料材料B(通常はCH
4)の流量を示す信号を、燃料材料測定ライン501aを介して受信すること、
-水蒸気ライン2を通って改質器反応器100に流入する水蒸気C(又はCO
2から分離可能な他の気体、上記参照)の流量及び/又は組成を示す信号を、水蒸気測定ライン501cを介して受信すること、
-水蒸気ライン2を通って再生器反応器200に流入する水蒸気C(又はCO
2から分離可能な他の気体、上記参照)の流量及び/又は組成を示す信号を、水蒸気測定ライン501dを介して受信すること、
-供給ライン4を通って改質器反応器100に流入する混合物Dの流量及び/又は組成を示す信号を、供給入口測定ライン501bを介して受信すること、
-改質器反応器100内の気体及び/又は固体の体積及び/又は組成を示す信号を、改質器測定ライン501eを介して受信すること、
-流量調整装置440の上流及び/又は下流430’の第2の再生器搬送ライン430内を流れる流体(主に分離された使用済み吸着剤A
*)の流量及び/又は組成を示す信号を、使用済み吸着剤測定ライン502を介して受信すること、
-再生器容器201からCO
2ラインに排出されるガス(主にCO
2及び水蒸気)の流量及び/又は組成を示す信号を、CO
2測定ライン505を介して受信すること、
-再生器容器201内の使用済み吸着剤A
*を加熱するための所望の動力出力を設定するために、熱調整測定ライン504を介して再生器動力源220に送信すること、
-再生器容器201内の使用済み吸着剤A
*に供給される動作動力(operating power)を示す信号を、熱調整測定ライン504を介して又は再生器動力源220から別の測定ラインを介して受信すること、
-再生器容器201内の流体の温度を監視するために、再生器容器201から熱測定ライン506を介して信号を受信すること、
-再生器容器201からリサイクルライン210に排出される流体(主に再生吸着剤A)の流量及び/又は組成を示す信号を、再生吸着剤測定ライン507を介して受信すること、
-固体/使用済み吸着剤A
*の容積及び/又は重量などのタンク410の動作パラメータを示す信号を、タンク測定ライン508又はタンク410から直接別の測定ラインを介して信号を受信すること、
-水素ライン310内を流れるガスの流量及び/又は組成を示す信号を、ガス測定ライン509を介して受信すること。
【0103】
制御システム500は、必要な送信機/受信機を設置することによって、上述の構成要素のうちの1つ以上に対して無線で信号を受信及び/又は送信することができ、それにより対応する測定ライン(複数可)を省略することができる。
【0104】
さらに、制御システム500は、これらの部分の監視及び/又は制御を可能にするために、システム1の他の部分に接続されてもよい。
【0105】
流量及び組成の測定は、使用済み吸着剤及び再生吸着剤Aの流量測定の場合には、質量流量計などの必要な測定手段を含む制御システム500内の共有測定システムによって行うことができ、ガス組成測定の場合には、ガスクロマトグラフ、ダイオードレーザ分光計及び/又はコンボプローブ(combo-probe)などの必要な測定手段を含む制御システム500内の共有測定システムによって行うことができる。代替的に又は追加的に、測定は、個々の測定ライン専用の測定システムによって実行されてもよい。
図3に示すように、流れの測定の少なくとも1つは、測定前に冷却510を必要とする場合がある。
【0106】
システム1が上述の制御システム500を備える場合、種々の有利な診断結果を得ることができる。
【0107】
例えば、典型的なSE-SMRプロセスで起こる反応を考慮すると、CH4及びCOは、改質反応(2.1)及びガスシフト反応(2.2)によって消費され、CO2及びH2を生成する。
【0108】
したがって、吸着剤AがCO2を捕捉する能力が低下すると、改質器反応器100から流出し、分離器300内の使用済み吸着剤A*から分離され、水素ライン310に放出されるCO、CH4及びCO2の量が増加する。
【0109】
したがって、水素製造中にCO2を捕捉する吸着剤Aの能力の低下は、水素ライン310に流入するガス組成を測定することによって監視することができる。測定値が、CO、CH4及びCO2のうちの少なくとも1つのガスの漸増を示す場合、それは、改質器反応器100内においてCO2を捕捉/吸着する吸着剤の能力が低下していると解釈することができる。
【0110】
上述したように、このようなガス組成測定は、ガスクロマトグラフ(図示せず)のような適切なガス組成測定装置を設置することによって実施することができる。測定信号は、ガス測定ライン509を介して自動制御装置500に送信され、自動制御装置500は、ディスプレイ(図示せず)上に測定結果を表示することができ、及び/又は、測定信号は、(熱測定ライン504を介した)再生器動力源220からのエネルギー供給、又は(流量調整測定ライン503を介した)スクリューコンベア450の回転速度vrなどのパラメータの新しい設定値を(制御装置500内のプロセッサを介して)計算するために使用される。
【0111】
これまでの説明では、本発明によるシステムの様々な態様を、例示的な実施形態を参照して説明してきた。説明の目的で、システム及びその動作を十分に理解できるように、具体的な数、システム及び構成を記載した。しかしながら、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図していない。開示された主題が関係する当業者に明らかな、例示した実施形態の様々な修正及び変形、並びにシステムの他の実施形態は、本発明の範囲内にあるものと見なされる。
【符号の説明】
【0112】
1 水素製造システム
2 水蒸気ライン
3 燃料材料ライン
4 供給ライン
100 改質器反応器
120 吸着剤入口
130 供給材料Bと水蒸気Cとの混合物Dのための改質器入口
150 分離器搬送ライン
155 改質器出口
200 再生器反応器
201 再生器容器
205 再生器入口
210 リサイクルライン
215 吸着剤出口
220 再生器動力源/再生器熱源
225 水蒸気入口
230 水蒸気再生器ライン
235 CO2出口
240 CO2ライン
300 分離器
304 分離器入口
305 使用済み吸着剤出口
310 水素ライン
315 水素出口
320 第1の再生器搬送ライン
400 供給与システム
405 タンク入口
410 タンク
411 タンク測定装置
415 タンク出口
430 第2の再生器搬送ライン(440上流側)
430 第2の再生器搬送ライン(440下流側)
440 流量調整装置
450 スクリューコンベア
460 モータ/電動モータ
470 変速駆動装置/周波数変換器
500 制御システム/自動制御装置
501a 供給入口測定ライン
501b 燃料材料測定ライン
501c 水蒸気測定ライン(改質器反応器)
501d 水蒸気測定ライン(再生器反応器)
501e 改質器測定ライン
502 使用済み吸着剤測定ライン
503 流量調整測定ライン
504 熱調整測定ライン
505 CO2測定ライン
506 熱測定ライン
507 再生吸着剤測定ライン
508 タンク測定ライン
509 ガス測定ライン
510 冷却システム
600 CO2貯蔵(storage/reservoir)
A 吸着剤、CaO
A* 使用済み吸着剤、CaCO3
B 供給材料/天然ガス
C 水蒸気
D 供給混合物
RA* 使用済み吸着剤の流量
RA*,H より高い使用済み吸着剤の流量
RA*,L より低い使用済み吸着剤の流量
vr スクリューコンベアの回転速度
vr,H より高いスクリューコンベアの回転速度
vr,L より低いスクリューコンベアの回転速度
Q 熱
【国際調査報告】