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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20240808BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240808BHJP
   C08G 69/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08G69/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508396
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 FR2022051568
(87)【国際公開番号】W WO2023017225
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】2108586
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カシアノ ガスパル, ステファニア
(72)【発明者】
【氏名】ブリュレ, ブノワ
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001EA16
4J001EB09
4J001EC08
4J001FA03
4J001FB03
4J001FC03
4J001FD03
4J001JA02
4J001JA05
4J001JA07
4J001JB16
4J002CL011
4J002CL031
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は主に、窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有する脂肪族半結晶性ポリアミドを含む、20から70重量%のポリアミド成分;30から80重量%のガラス繊維;及び0から10重量%の添加剤を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になる、組成物において、脂肪族半結晶性ポリアミドが、電位差滴定により測定して、70から180、好ましくは100から150μeq/gの全酸度を有することを特徴とする組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有する脂肪族半結晶性ポリアミドを含む、20重量%から70重量%のポリアミド成分;
(b)30重量%から80重量%のガラス繊維;及び
(c)0から10重量%の添加剤
を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になる、組成物において、
半結晶性脂肪族ポリアミドが、電位差滴定により測定して、100から150μeq/gの全酸度と、電位差滴定により測定して、40μeq/g未満の全塩基度を有することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
半結晶性脂肪族ポリアミドが、電位差滴定により測定して、10μeq/gと30μeq/gの間の全塩基度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪族半結晶性ポリアミドが、少なくとも一種のジアミンと少なくとも一種のジカルボン酸との重縮合によって得られるXY型のポリアミドである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
XY型の脂肪族半結晶性ポリアミドが、5から12個の炭素原子を有する少なくとも一種の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジアミンと、9から18個の炭素原子を有する少なくとも一種の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合によって得られる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
脂肪族半結晶性ポリアミドが、少なくとも一種のアミノカルボン酸及び/又は少なくとも一種のラクタムの重縮合によって得られるZ型のポリアミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一種のアミノカルボン酸及び/又は少なくとも一種のラクタムが11又は12個の炭素原子を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
脂肪族半結晶性ポリアミドが、PA59、PA510、PA69、PA512、PA612、PA109、PA610、PA1010、PA1012、PA11、PA12及びPA1212からなる群から選択される、請求項1から6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ガラス繊維が、円形又は非円形断面のガラス繊維である、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項9】
30重量%から65重量%のガラス繊維を含む、請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
半結晶性ポリアミドが、ISO307:2007規格に従い、しかし20℃の0.5重量%m-クレゾール溶液中で測定して、0.85から1.30dl/gの範囲の固有粘度を有する、請求項1から9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の組成物から得られる物品。
【請求項12】
射出によって得られることを特徴とする、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1から10の何れか一項に記載の組成物を製造するための方法であって、
(i)a)窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの間の全酸度を有する脂肪族半結晶性ポリアミドを含む、20重量%から70重量%のポリアミド成分;
b)30重量%から80重量%のガラス繊維;及び
c)0から10重量%の添加剤
を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になる、混合物を調製する工程、及び
(ii)任意選択的に、工程(i)で得られた混合物を成形する工程
を含む、方法。
【請求項14】
湿潤環境における弾性率の改善された安定性を有する物品を製造するための、窒素当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの間の全酸度を有する脂肪族半結晶性ポリアミドの使用。
【請求項15】
湿潤環境における弾性率の改善された安定性を有する物品を製造するための、窒素当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70μeq/gと180μeq/gの間の全酸度を有する脂肪族半結晶性ポリアミドの使用。
【請求項16】
改善された寸法安定性を有する物品を製造するための、窒素当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの間の全酸度を有する脂肪族半結晶性ポリアミドの使用。
【請求項17】
脂肪族半結晶性ポリアミドが、請求項1から10の何れか一項に記載の組成物のマトリックスとして使用される、請求項14から16の何れか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、湿気の存在下で改善された寸法安定性及び堅牢な機械的特性を有する強化された半結晶性脂肪族ポリアミド組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、それを製造するための方法、それから得られる物品、並びに特に弾性率の点で改善されている、改善された寸法安定性及び改善された機械的特性を有する物品を製造するための半結晶性脂肪族ポリアミドの使用に関する。
【従来技術】
【0003】
非常に高い剛性のポリアミド配合物が、例えば電話ケース又はコンピュータシャシーの製造のために電気及び電子分野において求められている。そのような配合物は更に、部品の厚みの低減が可能になるので電子機器を軽量化するのに有利な場合がある。高剛性ポリアミドを得る一般的な経路は、ガラス繊維などの強化材を加えて半結晶性脂肪族ポリアミド配合物を形成することである。
【0004】
そのような配合物の機械的特性は、第一にポリマーとガラス繊維の機械的特性に依存し、第二に繊維・ポリマー界面に応力を伝達するポリマーの能力に依存する。水分(湿気)は、この界面に影響を与える可能性があり、従って機械的特性、特に弾性率に悪影響を及ぼしうる主要な外部要因の一つである。
【0005】
水に対するその親和性を考えると、ポリアミド、特に半結晶性脂肪族ポリアミドは、特に水分収着を受けやすい。吸収された水はポリアミドに可塑化効果をもたらし、その特性に幾つかの影響を及ぼし、特に、
- 部品の寸法安定性に悪影響を与える膨張を引き起こし;かつ
- 特に室温において、材料の弾性率を低下させうる。
【0006】
従って、ポリアミド配合物の特性、特に寸法安定性を改善し、特に弾性率に関してより堅牢な機械的特性を得る一つの方法は、その水分収着を低減させることである。
【0007】
而して、特許FR3043681B1には、窒素原子当たり8個以上の炭素原子を含む半結晶性ポリアミドを非晶質ポリアミド配合物に添加すると、23℃、50%RHでの吸水率を、その成分の重み付けされた吸収率から計算された期待値に対して低下させることにより、その寸法安定性を改善することができると述べられている。
【0008】
ガラス繊維などの充填材で強化されたポリアミド配合物の場合、吸収された水によりポリアミドと充填材の間の相互作用を更に変化させることができる。
【0009】
特許出願US2017/0029621A1には、特定の鎖末端基を有するポリアミドの使用により、高温での射出成形中の分子量の増加を制限できることが教示されている。この文献では、ポリアミドの水分収着に関連する課題には言及されておらず、充填材で強化されたポリアミドについても扱われていない。
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明の目的は、湿気に対して堅牢な、特に弾性率の点で、改善された寸法安定性及び機械的特性を有する、ガラス繊維などの充填材で強化された半結晶性脂肪族ポリアミド組成物を提供することである。
【0011】
実際、本発明は、鎖末端のアミン基及びカルボキシル基の性質及び含有量を調整することによって、半結晶性脂肪族ポリアミド組成物の水分収着を制限できるという驚くべき観察に主に基づいている。実際のところ、水分収着が低いほど寸法安定性が向上し、更に湿潤環境における機械的特性の安定性も向上する。
【0012】
従って、第一の態様によれば、本発明の一主題は、
(a)窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有する脂肪族半結晶性ポリアミドを含む、20重量%から70重量%のポリアミド成分;
(b)30重量%から80重量%のガラス繊維;及び
(c)0から10重量%の添加剤
を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になる、組成物において、
半結晶性脂肪族ポリアミドが、電位差滴定により測定して、70から180μeq/g、好ましくは100から150μeq/gの全酸度を有することを特徴とする、組成物である。
【0013】
有利には、半結晶性脂肪族ポリアミドは、電位差滴定により測定して、10μeq/gと100μeq/gの間の全塩基度を有する。
【0014】
好ましくは、少なくとも一種のジアミン、特に5から12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族ジアミンと、少なくとも一種のジカルボン酸、特に9から18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族ジカルボン酸との重縮合によって得られるXY型の脂肪族半結晶性ポリアミドである。
【0015】
あるいは、脂肪族半結晶性ポリアミドは、有利には11又は12個の炭素原子を含みうる、少なくとも一種のアミノカルボン酸及び/又は少なくとも一種のラクタムの重縮合によって得られる、Z型のポリアミドでありうる。
【0016】
脂肪族半結晶性ポリアミドは、PA59、PA510、PA69、PA512、PA612、PA109、PA610、PA1010、PA1012、PA11、PA12及びPA1212からなる群から特に選択されうる。
【0017】
ガラス繊維は、特に、円形又は非円形断面のガラス繊維でありうる。
【0018】
一実施態様によれば、組成物は30重量%から65重量%のガラス繊維を含む。
【0019】
有利には、半結晶性ポリアミドは、ISO307:2007規格に従い、しかし20℃の0.5重量%m-クレゾール溶液中で測定して、0.85から1.30dl/gの範囲の固有粘度を有する。
【0020】
第二の態様によれば、本発明は、前記組成物から、特に射出成形によって得られる物品に関する。
【0021】
第三の態様によれば、本発明は、
(i)a)窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの間の全酸度を有する脂肪族半結晶性ポリアミドを含む、20重量%から70重量%のポリアミド成分;
b)30重量%から80重量%のガラス繊維;及び
c)0から10重量%の添加剤
を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になる、混合物を調製する工程、及び
(ii)任意選択的に、工程(i)で得られた混合物を成形する工程
からなる工程を含む、前記組成物を製造するための方法に関する。
【0022】
最後に、第四の態様によれば、本発明は、水分収着性が低い組成物の製造のための、特に上に記載した組成物のマトリックスとしての、窒素当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの間の全酸度を有する脂肪族半結晶性ポリアミドの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[用語の定義]
「ポリアミド」という用語は、ジカルボン酸とジアミン、ジイソシアネートとジカルボン酸、アミノ酸、ラクタム、又はそれらの混合物の重縮合によって形成される少なくとも二つの同一又は異なる繰り返し単位を含む化合物を意味すると理解される。
【0024】
ポリアミドの定義に使用される命名法は、ISO16396-1:2015規格「プラスチック-ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム、製品のマーキング及び仕様表記の基礎」に記載されている。ポリアミドがカルボン酸二酸とジアミンの重縮合から誘導される場合、(Caジアミン)・(Cb二酸)で表され、aはジアミンの炭素原子の数を表し、bは二酸の炭素原子の数を表す。二種の異なるモノマーの縮合から誘導されるポリアミドはX・Y型のポリアミドと呼ばれ、ラクタム又はアミノカルボン酸などの単一モノマーの縮合から誘導されるポリアミドはZ型のポリアミドと呼ばれる。
【0025】
ポリアミドは、同一の繰り返し単位から構成されるホモポリアミド、又は幾つかの異なる繰り返し単位を含むコポリアミドでありうる。有利には、ポリアミドがコポリアミドである場合、主モノマーと、10重量%以下、有利には5重量%以下の追加のモノマーとから構成されるモノマー混合物から誘導される。
【0026】
「半結晶性ポリアミド」という用語は、2011年のISO11357-3規格に従って測定して、DSCにおける融解温度(Tm)と、2013年のISO11357-3規格に従って測定されて、30J/gより大きく、好ましくは40J/gより大きい、DSCにおける20K/分の速度での冷却ステップ中の結晶化エンタルピーを有するポリアミドを意味すると理解される。
【0027】
「脂肪族ポリアミド」という用語は、好ましくは非環式であり、更に特に直鎖を有する、脂肪族モノマーの重縮合から誘導されるポリアミドを意味すると理解される。
【0028】
「粘度」という用語は、ISO307:2007規格に従って、しかし20℃の0.5重量%m-クレゾール溶液中で、Micro-Ubbelohde粘度計管を備えた粘度計を使用して測定される、固有粘度を意味するものと理解される。固有粘度は次の式で計算される:
1/cln(ts/t0)、ここで
c:溶液の濃度
ts:溶液の流動時間
t0:溶媒のみの流動時間
【0029】
「融解温度」という用語は、20℃/分の加熱速度でNF EN ISO 11357-3規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定されて、少なくとも部分的に結晶性のポリマーが粘稠な液体状態に移行する温度を意味すると理解される。
【0030】
ポリアミドの「全酸度」という用語は、以下に説明されるプロトコールに従って電位差滴定によって測定される、酸官能基、特に酸鎖末端、特に式-COOHの全含有量を意味すると理解される。
【0031】
ポリアミドの「全塩基度」という用語は、以下に説明されるプロトコールに従って電位差滴定によって測定される、塩基官能基、特に塩基鎖末端、特に式-NHの全含有量を意味すると理解される。
【0032】
本発明によれば、本出願において標的とされる組成物は、
(a)窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有する脂肪族半結晶性ポリアミドを含む、20重量%から70重量%のポリアミド成分;
(b)30重量%から80重量%のガラス繊維;及び
(c)0から10重量%の添加剤
を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になり、
半結晶性脂肪族ポリアミドが、電位差滴定により測定して、70から180μeq/g、好ましくは100から150μeq/gの全酸度を有することを特徴とする。
【0033】
実際、本発明は、ポリアミドの酸度、特に鎖末端の官能基の性質及び含有量を調整することによって、半結晶性脂肪族ポリアミド組成物の水分収着を制限することが可能であるという驚くべき観察に主に基づいている。実際のところ、水分収着が低いほど寸法安定性が向上し、更に湿潤環境における機械的特性の安定性も向上する。
【0034】
更に、ガラス繊維が充填されたそのような組成物では、半結晶性脂肪族ポリアミドのリン酸含有量が制限されていた場合に機械的特性がより有利であったことが見出された。この仮定に束縛されることを望まないが、この段階では、この効果はガラス繊維との好ましくない相互作用に起因すると考えられる。
【0035】
[半結晶性ポリアミド]
本発明の組成物の成分(a)である半結晶性脂肪族ポリアミドは、第一に、窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を含むことを特徴とする。上述したように、このポリアミドは、ジカルボン酸とジアミン、アミノ酸、ラクタム、又はそれらの混合物の重縮合から誘導されうる。
【0036】
半結晶性脂肪族ポリアミドが、
- アミノ酸又はラクタムの重合によって得られたホモポリアミドである場合、このアミノ酸又はこのラクタム中の炭素原子の数は少なくとも7個に等しく、有利には少なくとも8個に等しく、好ましくは9個以上であり、特に10個以上であり;あるいは
- 二酸とジアミンとの重合によって得られたホモポリアミドであり、式(Caジアミン)・(Cb二酸)に対応するアミド単位を含む場合、合計(a+b)/2は7以上、有利には8以上、好ましくは9以上、特に10以上である。
【0037】
従って、PA6.12は窒素原子当たり9個の炭素原子を含むポリアミドであり、PA6.13は9.5個の炭素原子を含むポリアミドである。
【0038】
半結晶性脂肪族ポリアミドは、直鎖モノマー及び/又は分岐モノマーから得ることができる。好ましくは、それは部分的又は全体的に線状モノマーから得られるポリアミドである。
【0039】
第一の実施態様によれば、半結晶性脂肪族ポリアミドは、少なくとも一種のアミノカルボン酸又は少なくとも一種のラクタムの重縮合によって得られるZ型のポリアミドである。
【0040】
従って、半結晶性脂肪族ポリアミドは、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸から選択されるアミノ酸から得られる少なくとも一つの単位を含みうる。有利には、ポリアミドは、11-アミノウンデカン酸又は12-アミノドデカン酸から得られる少なくとも一つの単位を含む。
【0041】
変形例として、半結晶性脂肪族ポリアミドは、ピロリジノン、ピペリジノン、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム及びラウロラクタムから選択されるラクタムから得られる少なくとも一つの単位を含みうる。
【0042】
半結晶性脂肪族ポリアミドがラクタムから得られる単位を含むホモポリアミドである場合、後者は少なくとも7個の炭素原子を含み、従って、特にエナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタムから選択される。有利には、ポリアミドは、ウンデカノラクタム又はラウロラクタムから得られる少なくとも一つの単位を含む。
【0043】
好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドは、11若しくは12個の炭素原子を含む、少なくとも一種のアミノカルボン酸及び/又は少なくとも一種のラクタムを含むモノマーの重縮合から誘導される。
【0044】
有利には、ポリアミドは、10重量%未満、特に5重量%未満、より特定的には0.1重量%未満のカプロラクタム誘導単位を含むか、又はカプロラクタム誘導単位を全く含まない。
【0045】
別の実施態様によれば、半結晶性脂肪族ポリアミドは、XY型のポリアミドであり、式(Caジアミン)・(Cb二酸)に対応する少なくとも一つの単位を含む。
【0046】
Caジアミンは、特に直鎖脂肪族ジアミンでありうる。同様に、Cb二酸は、特に直鎖脂肪族ジアミンでありうる。
【0047】
優先的には、Ca脂肪族ジアミンが直鎖状である場合、それは、ブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン20(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)、オクタデカンジアミン(a=18)、オクタデカンジアミン(a=18)、エイコサンジアミン(a=20)、ドコサンジアミン(a=22)及び脂肪酸から得られるジアミンから選択される。
【0048】
好ましくは、脂肪族二酸が直鎖状である場合、それは、コハク酸(b=4)、ペンタン二酸(b=5)、アジピン酸(b=6)、ヘプタン二酸(b=7)、オクタン二酸(b=8)、アゼライン酸(b=9)、セバシン酸(b=10)、ウンデカン二酸(b=11)、ドデカン二酸20(b=12)、ブラシル酸(b=13)、テトラデカン二酸(b=14)、ヘキサデカン二酸(b=16)、オクタデカン酸(b=18)、オクタデセン二酸(b=18)、エイコサン二酸(b=20)、ドコサン二酸(b=22)及び脂肪酸二量体、特に36個の炭素を含むものから選択される。
【0049】
上述の脂肪酸二量体は、特に文献EP0471566に記載されているように、長炭化水素鎖を有する不飽和一塩基性脂肪酸(リノール酸及びオレイン酸など)のオリゴマー化又は重合によって得ることができる。
【0050】
しかしながら、半結晶性脂肪族ポリアミドの調製に使用されるモノマー(アミノ酸、ジアミン、二酸)の一部又は全てがまた分岐していてもよい。従って、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンを分岐ジアミンとして使用してもよい。
【0051】
有利には、XY型の脂肪族ポリアミドは、5から12個の炭素原子を有する少なくとも一種の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジアミンと、9から18個の炭素原子を有する少なくとも一種の直鎖又は分岐鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合によって得られる。
【0052】
好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドの調製に使用されるモノマーは飽和化合物である。
【0053】
上述のモノマーの一部を他のモノマーに置き換えることができる。従って、脂肪族ジカルボン酸の一部は、一又は複数種の芳香族又は脂環式ジカルボン酸で置き換えることができる。同様に、脂肪族ジアミンの一部を脂環式及び/又は芳香族若しくは芳香脂肪族ジアミンで置き換えることができる。好ましくは、この置換は、全モノマーの最大10重量%、特に最大5重量%、特に最大2.5重量%の非常に限られた量で行われる。
【0054】
ポリアミド組成物において有用な脂肪族半結晶性ポリアミドは、特に、PA410、PA59、PA510、PA69、PA610、PA512、PA612、PA613、PA614、PA615、PA616、PA618、PA910、PA912、PA913、PA914、PA915、PA916、PA918、PA936、PA109、PA1010、PA1012、PA1013、PA1014、PA11、PA12、PA1210、PA1212、PA1213、PA1214、並びにそれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択されうる。
【0055】
特に好ましいのは、脂肪族半結晶性ポリアミドPA59、PA510、PA69、PA610、PA512、PA612、PA109、PA1010、PA1012、PA11、PA12及びPA1212、並びにそれらのコポリマー及び混合物である。
【0056】
有利には、ポリアミド組成物は、特にPA6及びPA66などの短鎖半結晶性ポリアミドを含まない。これは、これらのポリアミドは水分吸収性が非常に高く、従って、意図される用途に必要とされる寸法安定性を達成することができなくなるためである。
【0057】
本発明に係る組成物は、一種、二種又はそれ以上の異なる半結晶性ポリアミドを含みうる。好ましくは、組成物は一種又は二種の異なる半結晶性ポリアミドを含む。
【0058】
成分(a)である半結晶性脂肪族ポリアミドは、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの間、好ましくは100から150μeq/gの間の全酸度を有することを特徴とする。
【0059】
所定の実施態様によれば、組成物中の脂肪族半結晶性ポリアミドの全酸度は、70から75μeq/g;又は75から80μeq/g、又は80から85μeq/g;又は85から90μeq/g;又は90から95μeq/g;又は95から100μeq/g;又は100から105μeq/g、又は105から110μeq/g;又は110から115μeq/g;又は115から120μeq/g;又は120から125μeq/g;又は125から130μeq/g;又は130から135μeq/g;又は135から140μeq/g、又は145から150μeq/g;又は150から155μeq/g;又は155から160μeq/g;又は160から165μeq/g;又は165から170μeq/g;又は170から175μeq/g;又は175から180μeq/gまで変化しうる。
【0060】
半結晶性ポリアミドの全酸度は、特に鎖末端におけるカルボキシル基の含有量を反映する。
【0061】
ポリアミドは、その合成中に触媒として使用される鉱酸、特にリン酸の残基を含む場合がある。これらの触媒はポリアミドの酸度に寄与する場合がある。それにもかかわらず、それらは、本出願で報告されている好ましい効果は生じさせない。
【0062】
従って、脂肪族半結晶性ポリアミドは、有利には、以下に記載されるプロトコールに従ってP31NMRによって測定して、8000ppm、有利には7000ppm、特に6000ppm、更に特には5000ppmを超えないリン酸含有量を有する。
【0063】
有利には、脂肪族半結晶性ポリアミドは、更に、電位差滴定により測定して、100未満、特に10から100μeq/g、好ましくは80未満、特に60μeq/g未満、特に40μeq/g未満、更に特には10から30μeq/gの全塩基度を有する。
【0064】
所定の実施態様によれば、脂肪族半結晶性ポリアミドの塩基度は、10から15μeq/g;又は15から20μeq/g;又は20から25μeq/g;又は25から30μeq/g;又は30から35μeq/g;又は35から40μeq/g;又は40から45μeq/g;又は45から50μeq/g;又は50から55μeq/g;又は55から60μeq/g;又は60から65μeq/g;又は65から70μeq/g;又は70から75μeq/g;又は75からμeq/g;又は85から90μeq/g;又は90から95μeq/g;又は95から100μeq/gまで変化しうる。
【0065】
半結晶性ポリアミドの全塩基度は、特にアミン基及び鎖末端のKOHなどの強塩基によって中和されたカルボキシル基の含有量を反映する。
【0066】
ポリアミドの全塩基度と全酸度は、合成中に連鎖制限剤を添加することによって制御できる。
【0067】
有利には、本発明に係るポリアミドは、直鎖脂肪族C2~C18モノカルボン酸、直鎖脂肪族C4~C18モノアミン、直鎖脂肪族C3~C36ジカルボン酸及び/又は直鎖脂肪族C4~C18ジアミンによって制限される。
【0068】
連鎖制限剤として使用される酸は、酢酸、プロピオン酸、乳酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸、コハク酸、ペンタン二酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、及びドコサン二酸から選択されうる。
【0069】
好ましくは、ポリアミドは、直鎖脂肪族C6~C12モノカルボン酸及び/又は直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸によって制限され、特に好ましくは直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸によって制限される。好ましい酸は、アジピン酸、セバシン酸及びラウリン酸である。
【0070】
連鎖制限剤として使用されるアミンは、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミンから選択されうる。
【0071】
好ましくは、本発明に係るポリアミドは、C6~C12モノアミン及び/又はC6~C12ジアミンによって制限される。好ましくは、デカンジアミン及びラウリルアミンが使用される。
【0072】
上述のように、ポリアミドの全塩基度は、KOHなどの強塩基を使用して鎖末端のカルボキシル基を中和することによってもまた高めることができる。
【0073】
有利には、半結晶性ポリアミドは、ISO307:2007規格に従って測定して、0.85から1.30dl/g、好ましくは0.90から1.1dl/gの固有粘度を更に有する。
【0074】
所定の実施態様によれば、組成物中の脂肪族半結晶性ポリアミドの固有粘度は、0.85から0.90dl/g、又は0.90から0.95dl/g、又は0.95から1.0dl/g、又は1.1dl/gから1.15dl/g、又は1.15から1.2dl/g、又は1.2から1.25dl/g、又は1.25から1.3dl/gまで変化しうる。
【0075】
本発明によれば、脂肪族半結晶性ポリアミドは組成物の20重量%から70重量%を占める。
【0076】
所定の実施態様によれば、組成物中の脂肪族半結晶性ポリアミドの含有量は、20重量%から25重量%;又は25重量%から30重量%、又は30重量%から35重量%;又は35重量%から40重量%;又は45重量%から50重量%;又は50重量%から55重量%;又は55重量%から60重量%、又は60重量%から65重量%;又は65重量%から70重量%まで変化しうる。
【0077】
[ガラス繊維]
本発明に係る組成物は更にガラス繊維を強化材として含む。
【0078】
本発明の目的では、ガラス繊維は、特にFrederick T.Wallenberger,James C.Watson及びHong Li,PPG Industries Inc.(ASM Handbook,Vol 21:Composites(#06781G),2001 ASM International)によって記載された任意のガラス繊維を意味するものと理解される。
【0079】
好ましくは、ガラス繊維は短く、組成物中に導入される前の平均長は2mmと13mmの間、好ましくは3から8mmである。組成物中に導入されると、それらは、好ましくは、(例えば、マトリックスの溶解又は焼成後に)光学顕微鏡法によって測定して、50から300μm、特に100から250μmの範囲の平均長を有する。
【0080】
ガラス繊維のガラスの性質は、原則として、本発明の実施においてはあまり重要ではない。従って、ガラス繊維は、E、R、S2、NE、又はTガラスなど、任意のガラス製でありうる。
【0081】
ガラス繊維は中実及び/又は中空でありうる;有利には、それらは中実である。
【0082】
ガラス繊維は、
- 好ましくは4μmと25μmの間、特に4から15μmの直径を有する円形断面;
- 又は、好ましくは2から8、特に2から4のL/D比(Lは繊維の断面の最大寸法を表し、Dは前記繊維の断面の最小寸法を表す)を有する、非円形断面、特に楕円形、長円形又は平坦な断面の何れかでありうる。L及びDは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0083】
更に、繊維は、異なる形状の非円形断面、例えば、星形、フレーク形、平板、十字形、多角形、又はリング形でありうる。
【0084】
本発明の組成物は、30重量%から80重量%、特に30重量%から65重量%のガラス繊維を含む。それは、様々な種類のガラス繊維と、任意選択的に、ガラス繊維に加えて、中実及び/又は中空のガラスビーズなどの他の強化材を含みうる。
【0085】
所定の実施態様によれば、組成物中のガラス繊維の含有量は、30重量%から35重量%;又は35重量%から40重量%、又は40重量%から45重量%;又は45重量%から50重量%;又は50重量%から55重量%;又は55重量%から60重量%;又は60重量%から65重量%、又は65重量%から70重量%;又は70重量%から75重量%;又は75重量%から80重量%まで変化しうる。
【0086】
[添加剤]
本発明に係る組成物はまた一又は複数種の添加剤を含みうる。添加剤は、特に、染料、安定剤、界面活性剤、核形成剤、増白剤、酸化防止剤、潤滑剤、ワックス及びそれらの混合物などの通常の添加剤から選択されうる。
【0087】
安定剤は、有機又は無機安定剤でありうる。ポリマーと共に使用される通常の安定剤は、例えば、フェノール、亜リン酸塩、UV吸収剤、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)型の安定剤、又は金属ヨウ化物である。BASFのIrganox(登録商標)1010、245又は1098、BASFのIrgafos(登録商標)168又は126、BASFのTinuvin(登録商標)312又は770、Cibaのヨウ化物P201、及びClariantのNylostab(登録商標)S-EEDを挙げることができる。
【0088】
潤滑剤は、特にステアリン酸塩又はワックス結合剤でありうる。
【0089】
ワックスは、特に、ミツロウ、シリコーンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンオキシドワックス、エチレンコポリマーワックス、モンタンワックス及びポリエーテルワックスなどの非晶質ワックスでありうる。
【0090】
添加剤の含有量は、組成物の全重量に対して0から10重量%である。
【0091】
所定の実施態様によれば、組成物中の添加剤の含有量は、0から0.5重量%;又は0.1重量%から0.5重量%、又は0.5重量%から1.0重量%;又は1重量%から1.5重量%;又は1.5重量%から2.0重量%;又は2.0重量%から2.5重量%;又は2.5重量%から3.0重量%;又は3.5重量%から4.0重量%;又は4.0重量%から4.5重量%;又は4.5重量%から5.0重量%;又は5.0重量%から5.5重量%;又は5.5重量%から6.0重量%;又は6.5重量%から7.0重量%;又は7.0重量%から7.5重量%;又は7.5重量%から8.0重量%;又は8.0重量%から8.5重量%;又は8.5重量%から9.0重量%、又は9.0重量%から9.5重量%;又は9.5重量%から10.0重量%まで変化しうる。
【0092】
記載された組成物は、湿潤環境において、優れた寸法安定性と、更には機械的特性、特に弾性率の非常に良好な安定性を有する。
【0093】
[組成物を製造するための方法]
第二の主題によれば、本発明は、上に記載した組成物を調製するための方法に関する。
【0094】
この方法は、
(i)a)窒素原子当たり平均して少なくとも7個の炭素原子を有し、電位差滴定により測定して、70から180μeq/gの全酸度を有する、20重量%から70重量%の半結晶性脂肪族ポリアミドを含むポリアミド成分;
b)30重量%から80重量%のガラス繊維;及び
c)0から10重量%の添加剤
を含み、成分(a)、(b)及び(c)の合計が100%になる、混合物を調製する工程、及び
(ii)任意選択的に、工程(i)で得られた混合物を成形する工程
からなる工程を含む。
【0095】
工程(i)は、本発明に係る組成物と任意選択的に他の添加剤を含む均質な混合物を得ることを可能にする任意の方法、例えば溶融押出、圧縮又はロールミリングによって実施されうる。
【0096】
より具体的には、工程(i)は、「直接」プロセスで全ての成分を溶融混合することによって実施できる。本発明に係る組成物はまた、乾式混合によって調製することもできる。有利には、組成物は、一般に、二軸押出機、共混練機又は内部ミキサーなどの当業者に知られている装置でのコンパウンディングによって、顆粒形態で得ることができる。
【0097】
上述の調製方法によって得られた本発明に係る組成物は、その後、当業者に知られている続く転換又は使用のために、特に射出成形、カレンダー加工又は押出成形、好ましくは射出成形によって転換されうる。転換は、直接、溶融混合を使用して、又は上記の乾式混合を使用して実施することができる(工程ii)。
【0098】
本発明に係る組成物を調製するための方法は、当業者に知られている加工装置により射出成形機又は押出機に、中間造粒を行わずに供給する二軸押出機を使用することもできる。
【0099】
[組成物から得られる物品]
本発明に係る組成物は、湿潤条件にさらされた場合にその弾性率などの機械的特性が余り変化しない、特に組立てが意図された物品の製造に有用である。
【0100】
従って、第三の主題によれば、本発明は、上に記載された組成物から得られる物品に関する。
それは特に、成形品、繊維、織物、フィルム、シート、ロッド、又はチューブに関係しうる。
【0101】
特に、それはスポーツ用品を意図した部品などの成形品に関しうる。これらのスポーツ用品の中で、スポーツシューズ、アイススケートなどのスポーツ用品、又はウィンタースポーツ及び登山用の他の物品、スキー締め具、ラケット、スポーツ用バット、ボード、蹄鉄、フィン、ゴルフボール及び娯楽用車両を挙げることができる。一般的には、レクリエーション用品又は家の改善用品、高速道路の道具又は天候及び機械的攻撃にさらされる機器の部品;ヘルメットバイザー、メガネ、メガネ用サイドアームなどの保護物品をまた挙げることができる。
【0102】
機械的及び化学的攻撃にさらされる自動車部品、例えばヘッドランププロテクター、全地形対応車の小型部品、戦車、特にモペット、バイク又はスクーター、ネジ及びボルト、機械的及び化学的攻撃にさらされる化粧物品、口紅容器、圧力計、ガスボトルなどの魅力的な保護部材をまた挙げることができる。
【0103】
最後に、特に、軽さが望まれ、寸法を尊重する必要がある電子製品用の部品、例えば、携帯電話、コンピュータ、タブレット、テレビ、デジタルカメラ、デジタルゲーム機、ドローン又はプリンターの部品を挙げることができる。
【0104】
[使用]
第四の目的によれば、本発明は、湿潤環境における弾性率の安定性が改善された物品を製造するための、上述の半結晶性脂肪族ポリアミドの使用に関する。
【0105】
一実施態様によれば、半結晶性脂肪族ポリアミドは、上に記載のポリアミド組成物のマトリックスとして使用される。
【0106】
本発明はまた、上に記載の半結晶性ポリアミドを含む組成物の弾性率の安定性を高めるための方法にも関する。この使用は、7000MPaを超え、特に10000MPaと25000MPaの間の引張弾性率を有する非常に硬い組成物にとって特に有利である。
【0107】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に説明される。
【実施例
【0108】
例示された組成物に使用される材料を以下に詳述する。
ポリアミド:
PA610:PA610A 次のプロセスに従って、化学量論比のモノマーの全量に対して1.03重量%過剰に投入されるセバシン酸とヘキサンジアミンの重縮合によって得られる。全てのモノマーを、撹拌機を備えた反応器に投入する。熱交換を改善し、モノマーの溶融を促進するために、モノマーの全量に対して15重量%の水を添加する。ついで、残留酸素を除去するために反応器を真空/窒素サイクルによって不活性化し、次に8バール下で160~170℃の第一の保持まで加熱する。1時間後、混合物の温度を17バールの圧力で240℃に上昇させる。次に、温度を徐々に255℃まで上げながら、大気圧まで減圧する。この温度で、重縮合反応が窒素フラッシング下で行われる。目標粘度に達したときに反応を終了させる。ついで、ポリアミドを押し出し、顆粒化する。得られたポリマーは、リン酸を含まず、以下の表1に示した固有粘度を有する。
【0109】
PA610B 上に記載したプロセスに従って、化学量論的比のモノマーの全量に対して、3600ppmのKOHと共に1.24重量%過剰に投入されるセバシン酸とヘキサンジアミンの重縮合によって得られる。得られたポリマーは、リン酸を含まず、以下の表1に示される固有粘度を有する。
【0110】
PA610C 上に記載したプロセスに従って、3600ppmのKOHと共にヘキサンジアミンとセバシン酸を化学量論比で重縮合させることによって得られる。得られたポリアミドは、リン酸を含まず、表1に示される固有粘度を有する。
【0111】
PA11:PA11A 次のように重縮合により得られる。11-アミノウンデカン酸、15重量%の水及び0.67重量%のアジピン酸(これら二つの量は11-アミノウンデカン酸の量に対して計算している)を反応器に入れ、ついで不活性雰囲気下に置く。ついで、撹拌を維持しながら、反応媒体の温度を235℃まで上昇させる。反応媒体を20バールの圧力下で1時間30分間、235℃に維持する。次に、温度を235℃に維持しながら、圧力を12バールまで下げる。ついで、この材料を、235℃において窒素フラッシング下で重合装置に移す。窒素フラッシング下で温度を1時間30分間維持する。次に、材料を顆粒の形で押し出す。得られたポリアミドはリン酸を含まず、表1に示される固有粘度を有する。
【0112】
PA11B アジピン酸を11-アミノウンデカン酸の量に対して0.47重量%のデカンジアミンで置き換えることを除いて、PA11Aについて記載したように重縮合によって得られる。得られたポリアミドはリン酸を含まず、表1に示された固有粘度を有する。
【0113】
PA11C アジピン酸を11-アミノウンデカン酸の量に対して0.25重量%のKOHで置き換えることを除いて、PA11Aについて記載したように重縮合によって得られる。得られたポリアミドはリン酸を含まず、表1に示された固有粘度を有する。
【0114】
[強化材]
GF1: 日東紡績株式会社からCSG3PA-820Sの名称で販売されている、断面が長径28μm、短径7μm、平均長3mmの平板ガラス繊維;
GF2: 日東紡績株式会社からCSX3J451の名称で販売されている、直径10μm、平均長3mmの円形断面のガラス繊維。
【0115】
ポリアミド及び得られた組成物の特性は、次のプロトコールに従って測定される。
【0116】
[固有粘度]
固有粘度は、0.5重量%のm-クレゾール溶液を使用し、測定を20℃において実施することを除いて、ISO307:2007規格に従って測定される。
【0117】
[リン酸含有量]
ポリアミドのリン酸含有量は、BRUKERによって販売されているAvance 400NEOコンソールでのP31NMRによって定量した。400mgの量のポリアミドを、3mlのHFIP/CDCl混合物(体積比2:1)中に室温で一晩可溶化した。分析は内部標準法(イルガホス168)を用いて行われる。先の溶液に20mgのイルガホスを加えた(これにより、リン酸含有量の計算に必要なリンの量とリンの質量の間の関係を知ることが可能になる)。
【0118】
[全酸度]
酸度は次の方法に従って測定される:1gのポリアミドを130℃の熱い状態で80mlのベンジルアルコールに溶解させる。次にサンプルを80℃まで冷却する。ついで、pH電極を組み合わせたメトローム滴定装置(モデル888)を使用し、水酸化テトラブチルアンモニウムの0.02N溶液を用いて電位差滴定によって分析する。溶液の電位の変曲点で加えられる滴定溶液の体積は等価体積Veqに対応し、これから次の式によって全酸度が計算される:
【数1】
ここで
Veqは等価体積を示し、
[TBAOH]は水酸化テトラブチルアンモニウム溶液の濃度(0.02N)を示し、
mはサンプルの質量(1g)を示す。
【0119】
[全塩基度]
塩基度は次の方法に従って測定される。1gのポリアミドを130℃の熱い状態で80mlのメタ-クレゾールに溶解させる。次にサンプルを80℃まで冷却する。ついで、pH電極を組み合わせたメトローム滴定装置(モデル888)を使用し、酢酸中の過塩素酸の0.02N溶液を用いて電位差滴定によって分析する。溶液の電位の変曲点で加えられる滴定溶液の体積は等価体積Veqに対応し、これから次の式によって全塩基度が計算される:
【数2】
ここで
Veqは等価体積を表し、
[HClO]は過塩素酸溶液の濃度(0.02N)を示し、
mはサンプルの質量(1g)を示す。
【0120】
[含水量]
得られた組成物から、次のパラメーターを使用して、ENGEL VICTORY 500,160T油圧プレスで射出成形により、100×100×1mmの寸法のシートを作製した:
- 射出温度(フィード/ノズル):265℃/280℃
- 金型温度:100℃
- 保持時間:10秒
- 材料保持圧力:700バール
- 冷却時間:35秒
【0121】
ついで、これらのシートを80℃のオーブンで含水量が0.02重量%になるまで乾燥させる。次に、シートを秤量した後、23℃の温水中又は23℃、相対湿度50%に調整された空間に置く。
【0122】
秤量によって各媒体中で費やされた時間の関数としてシートの重量を監視することにより、材料の水分吸収量を決定することが可能になる。秤量は、水分吸収が終了したことを示す同一測定値が3回得られるまで実施する。
【0123】
実験の最後に、170℃のオーブンで20分間水分を脱着させ、ついで、試薬「溶媒Eを含むHydranal滴定2」を使用し、滴定装置(Metrohm Titrino 795KFT容量モデル)でカールフィッシャー法に従って脱着した水分を滴定することにより、約1gのシート片について含水量をチェックする。
【0124】
[弾性率(E)]
次のパラメーターを使用して、ENGEL VICTORY 500,160T油圧プレスで射出成形により、ISO527-2 1Aに準拠したダンベルを製作した:
- 射出温度(フィード/ノズル):285℃/295℃
- 金型温度:100℃
- 保持時間:10秒
- 材料保持圧力:700バール
- 冷却時間:15秒
【0125】
引張弾性率を、乾燥状態(Edry)と、ついで一度水で飽和させた後(Esat)に測定した。つまり、それぞれ70℃の水中で1096時間後と23℃の水中で1272時間後に測定した。引張試験は、油圧ジョーを備えたMTS SystemsのMTS 810装置で行われる。引張試験は、23℃において、弾性率の場合は1mm/分、応力測定の場合は5mm/分の速度で行われる。
弾性率はISO527-1(2012)に従って計算される。
【0126】
[破断点応力(σ)]
破断点応力は、ISO527-1(2012)規格に従って行われる引張試験から得られる応力-歪み曲線で観察された最大応力として決定した。
【0127】
実施例1~3
ポリアミドとガラス繊維を含む組成物を、表1の表示に従って、ガラス繊維を導入するための横方向供給経路を備えたCoperion ZSK26MC二軸押出機で、次のパラメーターを使用して、調製した:
機械温度:270℃
スクリュー速度:250rpm
押出機出口の処理量:16kg/h
ポリアミドはメインホッパーに投入する。
【0128】
本発明の組成物を用いて得られた結果を以下の表1に示す。
【表1】
【表2】
【0129】
比較例C1~C3
組成物中のポリアミドを上の表1に示したものと交換することを除いて、実施例1から3を繰り返す。
得られた組成物を、上で詳細に示したプロトコールに従って、水分吸収及び機械的特性の観点から、特に弾性率及び破断点応力の観点から分析した。
【0130】
表1及び2にまとめた全ての結果は、研究した各ポリアミドについて、本発明に係る組成物では水分吸収がより低いことを実証している。
【0131】
更に、水分収着前後の引張弾性率E及び破断点応力σなどの機械的特性の研究により、本発明に係る組成物ではこれらの特性の変化が著しく少ないことが明らかになった。実際、水分吸収ΔEに伴う弾性率の損失は、比較組成物(41%)よりも本発明に係る組成物の方が顕著に低い(21%及び24%)ことが見出される。同様に、破断点応力損失Δσは、比較組成物(63%)と比較して、本発明に係る組成物の方がより制限されている(32%及び34%)。
【0132】
従って、実施例では、本発明に係る半結晶性脂肪族ポリアミド組成物が、湿気に対して堅牢である、改良された寸法安定性と特に弾性率に関する機械的特性をまた示すことが実証される。
【0133】
従って、鎖末端のアミン基とカルボキシル基の性質と含有量を調整することにより、半結晶性脂肪族ポリアミド組成物の水分収着を制限することが可能であり、これにより寸法安定性が向上し、加えて湿潤環境での機械的特性の安定性も向上する。
【0134】
[引用文献リスト]
US2014/0342145A1
US2017/0029621A1
JP2017/155157
【国際調査報告】