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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ポストバイオティクス
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240808BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20240808BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240808BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240808BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K9/20
A61K9/48
A61K35/745
A61P1/04
A61P37/08
A61P17/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P19/00
A61P9/10 101
A61P43/00 111
A61K9/14
A61P37/02
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508414
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073082
(87)【国際公開番号】W WO2023021140
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】21192228.1
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, カーチャ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE02
4B018MD86
4B018ME05
4B018ME07
4B018ME08
4B018ME14
4B018MF06
4B065AA21X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB20
4B065BB40
4B065BC01
4B065BD10
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA30
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC31
4C076FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC59
4C087CA10
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB13
4C087ZB32
4C087ZC41
(57)【要約】
本発明は、過剰活性免疫系障害を有する又は過剰活性免疫系障害のリスクがある対象の胃腸管における、抗炎症性サイトカインの発現の増強、及び/又は炎症促進性ケモカインの発現の減少に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。本発明はまた、IL-10介在性疾患を有する又はIL-10介在性疾患のリスクがある対象の胃腸管における、IL-10の発現の増強に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。本発明はまた、対象の胃腸管におけるIL-10の発現を増強することによる、IL-10介在性疾患の治療又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供すする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過剰活性免疫系障害を有する又は過剰活性免疫系障害のリスクがある対象の胃腸管における、抗炎症性サイトカインの発現の増強、及び/又は炎症促進性ケモカインの発現の減少に使用するのための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項2】
IL-10介在性疾患を有する又はIL-10介在性疾患のリスクがある対象の胃腸管における、IL-10の発現の増強に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項3】
対象の胃腸管におけるIL-10の発現を増強することによる、IL-10介在性疾患の治療又は予防に使用するのための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択され、好ましくは、前記ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、糖及び酵母エキス、並びに任意選択的にアスコルビン酸ナトリウム及び/又はポリソルベートを含む培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって得られる又は得ることができ、好ましくは、
(i)前記培養培地が、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の糖を含み、
(ii)前記培養培地が、約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の酵母エキスを含み、
(iii)前記培養培地が、約0重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含み、かつ、
(iv)前記培養培地が、約0重量%~約1重量%、又は約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項6】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、前記ビフィドバクテリウム・ラクティスを、定常期に達するまで培養すること及び/又は嫌気性条件下で培養することによって得られる又は得ることができる、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項7】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、パスチャライズ及び/又は乾燥され、好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項8】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、経口投与される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項9】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、サプリメント又は栄養組成物の形態であり、好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、カプセル又はタブレットの形態である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項10】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、
(i)全糖濃度の減少を有し、好ましくは、全糖濃度が少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少している、
(ii)全酸濃度の増加を有し、好ましくは、全酸濃度が、全糖の濃度減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%増加している、及び/又は、
(iii)全アミノ酸濃度の減少を有し、好ましくは、全アミノ酸濃度が少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、又は少なくとも約0.3重量%減少している、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項11】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、(i)約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、若しくは約0.5重量%以下の全糖、(ii)約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、若しくは約2重量%以上の全酸、及び/又は、(iii)約3.5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、若しくは約0.6重量%以下の全アミノ酸、
を含む、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項12】
前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用され、より好ましくは前記ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスと組み合わせて使用される、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項13】
前記対象が、IL-10欠乏症を有する、又はIL-10欠乏症のリスクがある、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項14】
前記IL-10介在性疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、アレルギー性疾患、皮膚炎、自己免疫疾患、感染に関連する免疫病理、結腸直腸がん、骨治癒不良、及びアテローム性動脈硬化症から選択される、請求項3~請求項13のいずれか一項に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項15】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であって、噴霧乾燥されている、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
【請求項16】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントであって、好ましくは、前記サプリメントがカプセル又はタブレットの形態である、サプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストバイオティクス、並びに抗炎症性サイトカイン(例えばIL-10)の発現の増強及び/又は炎症促進性ケモカインの発現の低減におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、過剰活性免疫系障害(例えば、IL-10介在性疾患)の治療におけるポストバイオティクスの使用に関する。
【0002】
[背景技術]
抗炎症性サイトカインは、特異的サイトカイン抑制因子及び可溶性サイトカイン受容体と共に作用して、ヒト免疫応答を調節する。主な抗炎症性サイトカインには、インターロイキン(IL)-1受容体アンタゴニスト、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、及びIL-13が含まれる(Opal,S.M.and DePalo,V.A.,2000.Anti-inflammatory cytokines.Chest,117(4),pp.1162-1172)。
【0003】
インターロイキン(IL)-10は、多くの細胞集団によって産生される重要な抗炎症性サイトカインである。IL-10の主な生物学的機能は、炎症反応の制限及び終結、並びにT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、抗原提示細胞、肥満細胞、及び顆粒球などのいくつかの免疫細胞の分化及び増殖の調節である(Asadullah,K.,et al.,2003.Pharmacological reviews,55(2),pp.241-269)。
【0004】
IL-10などの抗炎症性サイトカインの調節不全は、慢性全身性炎症及び過剰活性免疫系をもたらし得る。例えば、IL-10欠乏症は、免疫系の重度の調節不全をもたらす場合があり、微生物への暴露に対する炎症反応を増強する場合があり、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)及びいくつかの自己免疫疾患の発症をもたらし得る(Iyer,S.S.and Cheng,G.,2012.Critical Review in Immunology,32(1))。
【0005】
しかしながら、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)の発現を増強する既存の解決策には、いくつかの欠点がある。IL-10による全身性治療は、典型的には、臨床的寛解を誘導するのにあまり有効ではなく、かなりの副作用を伴う。いくつかのプロバイオティクス株はIL-10発現を増強することが示されているが、プロバイオティクスは生菌のままである必要があり、その適用が制限される(de Moreno de LeBlanc,A.,et al.,2011.ISRN 2011,Article ID 892971)。
【0006】
したがって、対象の胃腸管における抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)の発現を増強することができる代替の試薬及び組成物が求められている。
【0007】
[発明の概要]
ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)亜種ラクティス(ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)又はB.ラクティス(B.lactis)としても知られる)培養上清は、驚くべきことに、様々な臨床試験における免疫調節効果が文献に十分に報告されているB.ラクティスプロバイオティクスの培養上清よりも、いくつかの特徴において優れた免疫調節効果を呈することが見出された。
【0008】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、B.ラクティスと比較して、抗炎症性サイトカインのIL-6及びIL-10の分泌を強く増加させた。更に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、炎症促進性ケモカインIL-8の分泌を減少させた。特に注目すべきことに、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-10の分泌を2倍超に増加させた。
【0009】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、免疫調節物質としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、免疫抑制剤としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、過剰活性免疫系障害を有する又は過剰活性免疫系障害のリスクがある対象の胃腸管における、抗炎症性サイトカインの発現を増強する、及び/又は炎症促進性ケモカインの発現を減少させる使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対象の胃腸管におけるIL-10の発現を増強し、及び/又は過剰活性免疫系障害は、IL-10介在性疾患である。
【0013】
別の態様では、本発明は、IL-10介在性疾患を有する又はIL-10介在性疾患のリスクがある対象の胃腸管における、IL-10の発現を増強する使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、対象の胃腸管におけるIL-10の発現を増強することによるIL-10介在性疾患の治療又は予防における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0015】
任意の好適なビフィドバクテリウム・ラクティス株を本発明で使用してもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である。
【0016】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスを好適な培養培地で培養することによって、得てもよい又は得られ得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、糖及び酵母エキス、並びに任意選択的にアスコルビン酸ナトリウム及び/又はポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、(i)約1重量%~約6重量%、若しくは約2重量%~約4重量%の糖、(ii)約1重量%~約10重量%、若しくは約1重量%~約6重量%、若しくは約2重量%~約4重量%の酵母エキス、(iii)約0重量%~約0.5重量%、若しくは約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウム、及び/又は、(iv)約0重量%~約1重量%、若しくは約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、pHは、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHに制御される。ビフィドバクテリウム・ラクティスは、任意の好適な条件下で培養してもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、定常期に達するまで培養される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、嫌気性条件下で培養される。
【0017】
任意の好適な処理工程を使用して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得てもよい。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物からビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の全て又は実質的に全てを除去することによって得てもよい又は得られ得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去される。
【0018】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、パスチャライズされる。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥によって乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム、デンプン、及びイヌリンのうち1つ以上から選択される担体材料と共に噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、アカシアゴムと共に噴霧乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清及び担体材料は、総固形分比約1:3~約2:1(担体:培養上清乾燥固形分)で混合され、好ましくは総固形分比は、約1:1(担体:培養上清乾燥固形分)である。
【0019】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の好適な形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、経口投与に好適な形態である。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、サプリメント又は栄養組成物の形態である。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、カプセル又はタブレットの形態である。
【0020】
培養の間、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養培地中の栄養素(例えば、糖及びアミノ酸)を消費し、様々な可溶性因子(例えば、有機酸及び他の代謝産物)で培養培地を富化する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(i)全糖濃度の減少、(ii)全酸濃度の増加、及び/又は、(iii)全アミノ酸濃度の減少を有する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、(i)全糖濃度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%減少しており、(ii)全酸濃度は、全糖の濃度減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%増加しており、及び/又は、(iii)培地中の全アミノ酸濃度は、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、若しくは少なくとも約0.3重量%減少している。
【0021】
いくつかの実施形態では、パスチャライズの前に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約1×10~約1×10cfu/mLの生細胞数を有する。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(i)約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、若しくは約0.5重量%以下の全糖、(ii)約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、若しくは約2重量%以上の全酸、及び/又は、(iii)約3.5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、若しくは約0.6重量%以下の全アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHを有し、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約6.2のpHを有する。
【0022】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の他の好適な試薬又は組成物と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくはプロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである。
【0023】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対象の胃腸管における1つ以上の抗炎症性サイトカインの発現を増強し得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-6及び/又はIL-10の発現を増強させる。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-10の発現を増強させる。
【0024】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対象の胃腸管における1つ以上の炎症促進性ケモカインの発現を低減し得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、CXCL10及び/又はIL-8の発現を低減させる。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-8の発現を減少させる。
【0025】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、かかる培養上清を必要とする任意の対象へ投与されてもよい。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、過剰活性免疫系障害を有する、又は過剰活性免疫系障害のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、IL-10欠乏症を有する、又はIL-10欠乏症のリスクがある。
【0026】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を使用して、任意の好適な過剰活性免疫系障害又はIL-10介在性疾患を治療又は予防してもよい。いくつかの実施形態では、IL-10介在性疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、アレルギー性疾患、皮膚炎、自己免疫疾患、感染に関連する免疫病理、結腸直腸がん、骨治癒不良(impaired bone healing)、及びアテローム性動脈硬化症から選択される。いくつかの実施形態では、(i)IBDは、クローン病(Crohn’s disease:CD)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)であり、(ii)アレルギー性疾患は、アレルギー性喘息又は食物アレルギーであり、(iii)皮膚炎は、アトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎であり、(iv)自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、強直性脊椎炎、及びギラン・バレー症候群から選択され、並びに/又は、(v)感染症は、原虫感染症、細菌感染症、線虫感染症、ウイルス感染症、及び真菌感染症から選択される。
【0027】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを提供する。サプリメントは、カプセル又はタブレットの形態であってもよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む栄養組成物を提供する。
【0029】
サプリメント又は栄養組成物中に存在するビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、本発明にかかる任意のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であってもよい。
【0030】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の他の好適な試薬又は組成物と組み合わせて存在させてもよい。いくつかの実施形態では、サプリメント又は栄養組成物は、1種以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスを含み、好ましくはサプリメント又は栄養組成物は、1種以上のプロバイオティクスを含む。いくつかの実施形態では、サプリメント又は栄養組成物は、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスを含み、好ましくはプロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである。
【0031】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を製造する方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
を含む。
【0032】
本方法は、好ましくは、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させる工程(d)を更に含み、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥によって乾燥される。
【0033】
本発明の方法によって製造されるビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、本発明にかかる任意のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であり得る。
【0034】
別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを製造する方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させて、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を得る工程と、
(e)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包、圧縮成形、及び/又は包装して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを得る工程と、
を含む。
【0035】
工程は任意の好適な手段によって実行されてよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥によって乾燥される。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末をカプセル内包して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むカプセルを得る。
【0036】
本発明の方法によって製造されるサプリメントは、本発明にかかる任意のサプリメントであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】THP1-Blue(商標)細胞のNF-κB活性に対する結腸のバッチ懸濁液の効果 結腸のバッチ懸濁液によりアピカル側を24時間前処理した後、Caco-2/THP1-Blue(商標)共培養の基底膜側に対してLPS処理を行い、6時間後にNF-κB活性レベルを測定した。点線は対照実験のLPS+に対応する。データを、平均±SEMとして表した。()は、対照試料と処置試料との間の統計的有意差を表す。()=p<0.05、(**)=p<0.01、(***)=p<0.001。BL=ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、SUP=ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446由来の培養上清、low=低用量での試行、D1=ドナー1、D2=ドナー2、D3=ドナー3、D1~D3=全3名のドナーの平均。
図2】IL-6及びIL-10の分泌に対する結腸のバッチ懸濁液の効果 (A)IL-6及び(B)IL-10。結腸のバッチ懸濁液によりアピカル側を24時間前処理した後、Caco-2/THP1-Blue(商標)共培養の基底膜側に対してLPS処理を行い、6時間後にサイトカインレベルを測定した。点線は対照実験のLPS+に対応する。データを、平均±SEMとして表した。()は、処置と対照との間の統計的有意差を表す。()=p<0.05(**)=p<0.01、(***)=p<0.001、(***)=p<0.0001。BL=ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446;SUP=ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446由来の培養上清、low=低用量での試行、D1=ドナー1、D2=ドナー2、D3=ドナー3、D1~D3=全3名のドナーの平均。
図3】CXCL10及びIL-8の分泌に対する結腸のバッチ懸濁液の効果 (A)CXCL10及び(B)IL-8。結腸バッチ懸濁液によりアピカル側を24時間前処理した後、Caco-2/THP1-Blue(商標)共培養の基底膜側に対してLPS処理を行い、6時間後にサイトカインレベルを測定した。点線は対照実験のLPS+に対応する。データを、平均±SEMとして表した。()は、処置と対照との間の統計的有意差を表す。()=p<0.05(**)=p<0.01、(***)=p<0.001、(***)=p<0.0001。BL=ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、SUP=ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446由来の培養上清、low=低用量での試行、D1=ドナー1、D2=ドナー2、D3=ドナー3、D1~D3=全3名のドナーの平均。
図4】結腸のバッチ懸濁液処理群をブランク対照の結腸のバッチ懸濁液に対して正規化した細胞実験結果。 灰色の陰影の濃さは、対照と比較して正の変化の程度に比例する。値=1(対照からの変化なし)、値>1(処置群では対象よりも高い)、値<1(処置群では対照よりも低い)。
【0038】
[発明を実施するための形態]
次に、本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な実施例により記載する。
【0039】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことについて留意する必要がある。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「含有している(containing)」、又は「含有する(contains)」と同義であり、他を包含し得る、すなわちオープンエンドなものであり、かつ追加の、列挙されていない構成、要素、又は工程を除外しない。用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」はまた、用語「からなる(consisting of)」を含む。
【0041】
数値範囲は、その範囲を画定する数を含む。本明細書で使用するとき、用語「約」は、およそ、ほぼ、概ね、又はその付近、を意味する。用語「約」が数値又は範囲と共に使用される場合、その値又は範囲は、記載された数値(複数可)の上方及び下方の境界を拡大することによって、その値又は範囲を修正する。一般に、用語「約」及び「ほぼ」は、本明細書では、規定された値(複数可)を10%超える及び下回る数値(複数可)を調整するために使用される。
【0042】
本明細書で論じられる刊行物は、単に本出願の出願日より前にそれらが開示されていたがために提供されている。本明細書において引用されるいかなる文献も、これらの刊行物が本明細書に添付の特許請求の範囲に対する先行技術を構成するものであると認めるものとして解釈されるべきではない。
【0043】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができる。当業者は、開示される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を組み合わせることができることを理解されたい。
【0044】
本明細書で言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0046】
本明細書で使用するとき、「培養上清(supernatant)」は、細胞が培養されていた馴化(spent)培養培地又は部分的に馴化された培養培地を指し得る。典型的には、全ての細胞又は実質的に全ての細胞は、培養終了時に培養培地から除去される。例えば、培養上清は、(a)培養培地で細胞を培養して、発酵物を得る工程と、(b)発酵物から全ての細胞又は実質的に全ての細胞を除去して、培養上清を得る工程と、を含む方法によって得てもよい又は得られ得る。
【0047】
本明細書で使用するとき、「ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清」は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養物に由来する培養上清を指し得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から全て又は実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、を含む方法によって得てもよい又は得られ得る。
【0048】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ポストバイオティクス(postbiotic)と称され得る。本明細書で使用するとき、「ポストバイオティクス」は、酵素、ペプチド、テイコ酸、ペプチドグリカン由来のムロペプチド、多糖類、細胞表面タンパク質、及び有機酸などの、生菌によって分泌される、又は細菌溶解後に放出される可溶性因子(生成物又は代謝副産物)を指し得る(例えば、Aguilar-ToalaJ.E.,et al.,2018.Trends in Food Science & Technology,75,pp.105-114を参照されたい)。
【0049】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、又はそれからなるポストバイオティクスを提供する。
【0050】
ビフィドバクテリウム・ラクティス株
ビフィドバクテリウム・ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスとしてもまた知られる、NCBI:txid302911)は、ヒトの大腸内に見られるビフィドバクテリウム属の、グラム陽性、嫌気性、棒状細菌である。ビフィドバクテリウム・アニマリス及びビフィドバクテリウム・ラクティスは、2つの異なる種として以前は記載されていた。現在は、両方とも、亜種であるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種アニマリス及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスを含む、B.アニマリスと見なされている(Masco,L.,et al,2004.International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,54(4),pp.1137-1143)。
【0051】
任意の好適なビフィドバクテリウム・ラクティス株を本発明で使用してもよい。例えば、プロバイオティクス効果を有すると知られている任意のビフィドバクテリウム・ラクティス株を本発明で使用してもよい。そのようなビフィドバクテリウム・ラクティス株は当業者に周知である。
【0052】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択され得る。
【0053】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、当業者に知られている任意のB.アニマリス亜種ラクティスに対して少なくとも99%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。ビフィドバクテリウム・ラクティスは、当業者に知られている任意のB.アニマリス亜種ラクティスに対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。公的に利用可能な少なくとも103のゲノムアセンブリがある。
【0054】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12(受託番号CP004053)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1(受託番号CP003039)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140(受託番号CP001606)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9(受託番号CP001892)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04(受託番号CP001515)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07(受託番号NC_017867)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420(受託番号NC_017866)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12(受託番号CP001853)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011(受託番号CP001213)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019(受託番号CP031154)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、又はビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010に対して、少なくとも99%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。
【0055】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12(受託番号CP004053)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1(受託番号CP003039)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140(受託番号CP001606)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9(受託番号CP001892)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04(受託番号CP001515)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07(受託番号NC_017867)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420(受託番号NC_017866)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12(受託番号CP001853)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011(受託番号CP001213)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019(受託番号CP031154)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、又はビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスであり得る。
【0056】
NCC 2818ともまた呼称されるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446を、2005年6月7日にCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM),Institut Pasteur,25 rue du Docteur Roux,F-75724 PARIS Cedex 15,Franceに寄託し、寄託番号1-3446を得た。
【0057】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである。
【0058】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である。
【0059】
培養上清調製
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の好適な方法によって調製され得る。例えば、細菌上清の調製は、Moradi,M.,et al.,2021.Enzyme and Microbial Technology,143,p.109722に記載されている。
【0060】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去する工程と、を含む方法によって得てもよい又は得られ得る。。
【0061】
好適な培養条件及び処理工程は当業者に周知である。例示的な培養条件及び処理工程を本明細書に記載する。
【0062】
培養培地
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスを培養培地で培養することによって、得てもよい又は得られ得る。
【0063】
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、任意の好適な培養培地で培養され得る。好適な培養培地は当業者によく知られている。例えば、Marsaux,B.,et al.,2020.Nutrients,12(8),p.2268には、デキストロース2.8%、酵母由来アミノ酸3%、及びビタミンCからなるビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446の好適な培養培地が記載されている。
【0064】
好適には、培養培地は、MRSブロスなどの市販の培地であり得る。MRSブロスは、乳酸菌の大量増殖のための非選択的培地であり、約2%のグルコース、約0.4%の酵母エキス、及び約0.1%のポリソルベートを含んでもよく、かつ約6.2のpHを有してもよい。
【0065】
培養培地は、糖、酵母エキス、ビタミンC、及び/又はポリソルベートを含んでよい。好適には、培養培地は、糖及び酵母エキスを含んでよい。好適には、培養培地は、糖、酵母エキス、及びビタミンCを含んでよい。好適には、培養培地は、糖、酵母エキス、ビタミンC、及びポリソルベートを含んでよい。
【0066】
好適な糖は当業者に知られており、グルコース、デキストロース、及び/又はグルコースシロップが挙げられる。好適には、培養培地は、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の糖を含んでよい。
【0067】
酵母エキスは、自己消化酵母の水溶性部分である。好適には、培養培地は、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の酵母エキスを含んでよい。
【0068】
ビタミンC(アスコルビン酸塩又はアスコルビン酸としてもまた知られる)の好適な供給源は当業者に周知である。例えば、アスコルビン酸ナトリウムは、アスコルビン酸の数多くのミネラル塩のうちの1つである。好適には、培養培地は、約0重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含んでよい。
【0069】
好適なポリソルベートは当業者に周知であり、例えば、ポリソルベート80が挙げられる。好適には、培養培地は、約0重量%~約1重量%、又は約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含んでよい。
【0070】
好適には、培養物は、ミネラル(例えば、硫酸マンガン)及び/又はペプトン(例えば、酵母ペプトン)などの任意の他の好適な構成成分を含んでよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、培養培地は、約1重量%~約6重量%の糖、約1重量%~約6重量%の酵母エキス、約0重量%~約0.5重量%のアスコルビン酸ナトリウム、及び約0重量%~約1重量%のポリソルベートを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、培養培地は、約2重量%~約4重量%の糖、約2重量%~約4重量%の酵母エキス、約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウム、及び約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む。
【0073】
好適なpHは当業者に周知であり、任意の好適な手段によって調整され得る。好適には、培養培地は、約7未満のpH、例えば、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHなどを有し得る。
【0074】
培養条件
ビフィドバクテリウム・ラクティスは、任意の好適な条件下で培養してもよい。好適な培養条件は当業者に周知である。例えば、Marsaux,B.,et al.,2020.Nutrients,12(8),p.2268には、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446を37℃でインキュベートしたことが記載されている。
【0075】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティスを嫌気性条件下で培養することによって、得てもよい又は得られ得る。。
【0076】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対数増殖期後期又は定常期に達するまでビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって、得てもよい又は得られ得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、定常期に達するまでビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって、得られてもよい又は得られ得る。
【0077】
細菌の培養において認識される段階は当業者に公知であり、「誘導期」、「対数増殖期」、「定常期」、及び「死滅」期が挙げられる。「誘導期」は、生細菌細胞の数の増加がない時期である。「対数増殖期」は、生細菌細胞の数が指数関数的に増加する時期である。「対数増殖期後期」は、対数増殖期の後半、例えば、対数増殖期全体の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を指し得る。「定常期」は、生細菌細胞の数が一定のままである時期である。「死滅期」は、生細菌細胞の数が減少する時期である。
【0078】
培養フェーズは、当業者に公知の任意の好適な方法により決定され得る。例えば、定常期の開始は、追加の酸が生成されず、かつ所望のpHを維持するための塩基の添加がもはや必要とされない時点として決定され得る。あるいは、培養フェーズは、培養培地中の細菌濃度と相関する600nmでの光学密度に基づいて決定され得る。
【0079】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約35℃~約40℃、又は約37℃で培養することによって、得てもよい又は得られ得る。温度は当業者に公知の任意の好適な方法によって制御されてもよい。
【0080】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、pH制御しながら培養することによって、得てもよい又は得られ得る。pHは、当業者に公知の任意の好適な方法によって、例えば塩基添加を用いることによって制御され得る。好適には、pHは、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHに制御され得る。好適には、pHは6.0のpHに制御され得る。
【0081】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、撹拌しながら及び/又はヘッド・スペース・ガス法(head space gassing)で培養することによって、得てもよい又は得られ得る。撹拌及び/又はヘッド・スペース・ガス法は、当業者に公知の任意の好適な方法によって、例えば、二酸化炭素によるヘッド・スペース・ガス法によって実施され得る。
【0082】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約37℃にて、約pH6でpH制御し、撹拌しながら、及び/又は二酸化炭素でヘッド・スペース・ガス法により培養することによって、得てもよい又は得られ得る。
【0083】
発酵物の処理
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物からビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の全て又は実質的に全てを除去することによって得てもよい又は得られ得る。
【0084】
ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、当業者に公知の任意の好適な方法によって除去され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離又は濾過によって除去され得る。
【0085】
ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去され得る。好適な遠心分離条件は当業者によく知られており、例えば、約4000~約12000gで約10分間にわたる遠心分離である。
【0086】
ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、濾過によって除去され得る。好適な濾過条件は当業者に周知であり、例えば、約0.2μmの孔径を用いて全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去する、若しくは約0.3μm~約0.5μmの孔径を実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去する膜濾過、又は約0.5μm~約2.0μmの孔径フィルタを使用して、実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去してもよい。
【0087】
本明細書で使用するとき、「実質的に全て」は、大部分のビフィドバクテリウム・ラクティス細胞、例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%を意味し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の「実質的に全て」を除去することは、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%が除去されることを意味し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、一部のビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、培養上清中に留まる(例えば、除去後に)。例えば、不活性化の前に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約1×10~約1×1010cfu/mLの生細胞数、又は約1×10~約1×10cfu/mLの生細胞数を有し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、残存しているビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、熱不活性化される。ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を熱不活性化する好適な方法は当業者によく知られている。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清はパスチャライズされてもよい。好適なパスチャライズ条件は当業者によく知られている。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約70℃~約100℃の温度で約10~約30秒間、約70℃~約100℃で約10~約15秒間、又は約80℃~約100℃で約10秒間パスチャライズされ得る。
【0090】
いくつかのその他の実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、無細胞培養上清であり得る(すなわち、ビフィドバクテリウム・ラクティス細胞の100%が除去される)。無細胞培養上清は、培養上清を1つ以上のフィルタに通して、全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去することによって得てもよい。好適な濾過条件は当業者によく知られている。例えば、0.22μm又は0.4μm孔径のフィルタを使用して、全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去してもよい。
【0091】
上清の乾燥
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、乾燥させてもよい。乾燥形態のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得ることは、長期貯蔵にとってより好適であり得る。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、当業者に公知の任意の好適な方法によって乾燥させてもよい。例えば、培養上清は、噴霧乾燥又は凍結乾燥によって乾燥させてもよい。誤解を避けるために、用語「培養上清」は、乾燥した培養上清、例えば固体(例えば、粉末)形態)の培養上清を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、噴霧乾燥される。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を噴霧乾燥するための好適な方法は当業者によく知られていることであろう(例えば、Santos,D.,et al.,2018.Biomaterials Physics and Chemistry-New Edition.InTech Open、Spray Drying:An Overviewを参照されたい)。誤解を避けるために、用語「培養上清」は、噴霧乾燥した培養上清を含む。
【0093】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、担体材料と共に噴霧乾燥され得る。好適な担体材料は当業者によく知られている。例えば、担体材料は、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム、デンプン、及びイヌリンのうち1つ以上から選択され得る。いくつかの実施形態では、担体材料は、アカシアゴムである。
【0094】
任意の好適な量の担体材料が使用され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清及び担体材料は、総固体比約1:5~約5:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:3~約3:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:2~約2:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:1.5~約1.5:1(担体:培養上清乾燥固形分)、又は総固形分比約1:1(担体:培養上清乾燥固形分)で混合され得る。
【0095】
培養上清の形態
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、任意の好適な形態で提供され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、固体(例えば、粉末)、液体、又はゼラチン状の形態であり得る。ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、経口投与又は経腸投与に好適な形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、経口投与に好適な形態で提供される。
【0096】
いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、固体(例えば、粉末)形態で提供される。固体(例えば、粉末)の形態であるビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供することは、サプリメント(例えば、タブレットの形態又はカプセルの形態)としての摂取により好適であり得る。
【0097】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、サプリメント又は栄養組成物の形態で提供され得る。
【0098】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを提供する。
【0099】
「サプリメント」又は「ダイエタリーサプリメント」とは、個体の栄養を補完するために使用されてもよい(典型的にはそのように使用されるものの、ダイエタリーサプリメントはまた、摂取を意図している任意の種類の組成物に添加されてもよい)。サプリメントは任意の好適な様式で調製してもよい。
【0100】
サプリメントは、例えば、タブレット、カプセル、トローチ、又は液体の形態であり得る。いくつかの実施形態では、サプリメントは、カプセル又はタブレットの形態である。
【0101】
サプリメントは、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル内包剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、及びゲル形成剤を更に含有してもよい。かかるサプリメントはまた、従来の医薬品添加物及び補助剤、賦形剤、及び希釈剤を含有してもよく、これには、水、任意の由来のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、風味剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などが挙げられるが、これらに限定されない。更に、サプリメントには、経口又は非経口投与に好適な有機又は無機担体材料に加え、USRDAなどの政府機関の推奨に従い、ビタミン類、ミネラル類、微量元素及びその他の微量栄養素を含有させることもできる。サプリメントは単位用量の形態で提供され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、サプリメントは、ペットのサプリメントである。「ペットのサプリメント」は、ペットを意図したサプリメントを指し得る。ペットは、イヌ、ネコ、鳥、魚、げっ歯類、例えばマウス、ラット、及びモルモットなど、ウサギから選択される動物であり得る。
【0103】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む栄養組成物を提供する。
【0104】
本発明によれば、「栄養組成物」は、対象に栄養を与える組成物を意味する。栄養組成物は任意の好適な様式で調製してもよい。
【0105】
栄養組成物は、投与(例えば、経口投与又は静脈内投与)に好適であるものであれば特に限定されない。好適な栄養組成物の例としては、食料品、飲料、薬用基剤(drug bases)、及び動物飼料が挙げられる。
【0106】
本発明による栄養組成物は、経腸栄養組成物であってもよい。「経腸栄養組成物」は、投与に胃腸管が関与する食料品である。
【0107】
栄養組成物は乳児に好適であり得る。例えば、栄養組成物は、乳児用フォーミュラ、ベビーフード、乳児用シリアル組成物、又は強化剤であってもよい。好適には、栄養組成物は、乳児用フォーミュラ又は強化剤であってもよい。
【0108】
好適には、栄養組成物は、医薬組成物であってもよい。医薬製剤の形態は特に限定されず、例えば、タブレット剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤などが挙げられる。経口投与用の医薬担体として広く用いられている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味剤、希釈剤、界面活性剤などの添加剤が使用されてもよい。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、β-ラクトースなど、コーン甘味料、天然ガム及びガム、例えばアカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、及びポリエチレングリコールが挙げられる。好適な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、栄養組成物は、動物用飼料、例えばペットフード製品(特に、ドライペットフード製品)である。用語「ペットフード製品」は、ペットによる摂取を意図した栄養製剤を指し得る。いくつかの実施形態では、栄養組成物は、イヌ用食品製品又はネコ用食品製品である。いくつかの実施形態では、栄養組成物は、獣医学用組成物である。
【0110】
培養上清組成物
上記のように、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(a)ビフィドバクテリウム・ラクティスを培養培地で培養する工程を含む方法により得てもよい又は得られ得る。培養の間、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培地中の栄養素(例えば、糖及びアミノ酸)を消費し、様々な可溶性因子(例えば、有機酸及び他の代謝産物)で培地を富化する。
【0111】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清中のビフィドバクテリウム・ラクティス由来代謝産物は、多様な物理化学的特性及び機能的特性を有し得るものであり、当業者に公知の任意の好適な方法によって分析することができる。例えば、好適な方法には、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、分光光度法、NMR分光法、及びFTIR分光法が含まれる(例えば、Moradi,M.,et al.,2021.Enzyme and Microbial Technology,143,p.109722に記載されている)。
【0112】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、(i)全糖濃度の減少、(ii)全酸濃度の増加、及び/又は、(iii)全アミノ酸濃度の減少を有し得る。
【0113】
本明細書で使用するとき、用語「全糖」は、例えばグルコース及びフルクトースを含む、任意の糖を指し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全糖濃度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%減少し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全糖濃度は、約50%~約100%、又は約80%~約100%減少し得る。
【0114】
本明細書で使用するとき、用語「全酸」は、例えば、酢酸、乳酸、及びギ酸を含む、任意の有機酸(すなわち、アミノ酸を除外)を指し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全酸濃度は、全糖の濃度減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%増加し得る。例えば、全糖の濃度が1重量%減少した場合、全酸の濃度は、少なくとも約0.7重量%、少なくとも約0.8重量%、又は少なくとも約0.9重量%増加し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全酸濃度は、全糖の濃度減少の約70%~約90%増加し得る。
【0115】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全アミノ酸濃度は、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも0.4重量%、又は少なくとも0.5重量%減少し得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)中の全アミノ酸濃度は、約0.1重量%~約0.5重量%減少し得る。
【0116】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約2重量%~約18重量%、約2重量%~約10重量%、約3重量%~約9重量%、約4重量%~約8重量%、約5重量%~約7重量%、又は約6重量%の総固形分含有量を有し得る。
【0117】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下の全糖を含み得る。いくつかの実施形態では、上清は、0.3重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満の全糖を含み得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約5重量%、約0重量%~約2重量%、約0重量%~約1重量%、約0重量%~約0.5重量%、又は約0重量%~約0.3重量%の全糖を含み得る。
【0118】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は約5重量%以上の全酸を含み得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%~約5重量%、約1重量%~約3重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、約2重量%~約2.5重量%、又は約2重量%の全酸を含み得る。
【0119】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%~約6重量%、約1重量%~約3重量%、又は約1.5重量%~約2.5重量%の灰分を含み得る。
【0120】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.4重量%以下、又は約0.2重量%以下の全アミノ酸を含み得る。好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.2重量%~約3.5重量%、約0.4重量%~約2重量%、約0.6重量%~約1重量%、約0.7重量%~約0.9重量%、又は約0.8重量%の全アミノ酸を含み得る。
【0121】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約5重量%以下の全糖と、約0.5重量%以上の全酸と、約3.5重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0122】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約2重量%以下の全糖と、約1重量%以上の全酸と、約2重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0123】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約1重量%以下の全糖と、約1.5重量%以上の全酸と、約1重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0124】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.5重量%以下の全糖と、約2重量%以上の全酸と、約0.8重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0125】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約5重量%の全糖と、約0.5重量%~約5重量%の全酸と、約0.2重量%~約3.5重量%以下の全アミノ酸と、を含み得る。
【0126】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約2重量%の全糖と、約1重量%~約3重量%の全酸と、約0.4重量%~約2重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0127】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約1重量%の全糖と、約1.5重量%~約2.5重量%の全酸と、約0.6重量%~約1重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0128】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0重量%~約0.3重量%の全糖と、約2重量%の全酸と、約0.8重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0129】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、
(i)約0.3重量%未満のグルコース、
(ii)約0.3重量%未満のフルクトース、
(iii)約0重量%~約0.5重量%のクエン酸、
(iv)約0.6重量%~約0.9重量%の乳酸、
(v)約0.1重量%~約0.3重量%のギ酸、
(vi)約1.2重量%~約1.4重量%の酢酸、及び/又は
(vii)約0.2重量%の全窒素、
を含み得る。
【0130】
好適には、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物又はビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清(例えば、乾燥前)は、約0.3重量%未満のグルコース及び約0.3重量%未満のフルクトースを含む、約0重量%~約2重量%の全糖と、約0重量%~約0.5重量%のクエン酸、約0.6重量%~約0.9重量%の乳酸、約0.1重量%~約0.3重量%のギ酸、及び約1.2重量%~約1.4重量%の酢酸を含む、約1.5重量%~約2.5重量%の全酸と、約0.2重量%の全窒素を含む、約0.6重量%~約1重量%の全アミノ酸と、を含み得る。
【0131】
プロバイオティクス、プレバイオティクス、及びシンバイオティクスの組合せ
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用される。プロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清とを、任意の好適な用量で組み合わせてもよい。
【0132】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清と、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスとの組合せを含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清と、1つ以上のプロバイオティクスとの組合せを含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。
【0134】
用語「プロバイオティクス」は、適切な量で投与された場合に対象へ健康上の利益を与える、生きた微生物を含有する構成成分を指し得る(例えば、Hill,C.,et al.,2014.Nature reviews Gastroenterology & hepatology,11(8),p.506を参照されたい)。
【0135】
好適には、プロバイオティクスは、市販のプロバイオティクス株及び/又は健康上の利益を有することが示されている株を含み得る(例えば、Fijan,S.,2014.International journal of environmental research and public health,11(5),pp.4745-4767を参照されたい)。いくつかの実施形態では、プロバイオティクスは、エシェリキア属(Escherichia)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)(2020年3月までに定義)、バチルス属(Bacillus)、及び/又はエンテロコッカス属(Enterococcus)を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、プロバイオティクスは、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスである。任意の好適なビフィドバクテリウム・ラクティス株としては、例えば、プロバイオティクス効果を有することが知られている任意のビフィドバクテリウム・ラクティス株が使用され得る。かかるビフィドバクテリウム・ラクティス株は当業者に周知であり、上記「ビフィドバクテリウム・ラクティス株」と題したセクションで説明した。ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するのと同じビフィドバクテリウム・ラクティスであってもよく、又は異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティスは、培養上清が由来するのと同じビフィドバクテリウム・ラクティスである。
【0137】
用語「プレバイオティクス」は、1つ以上の微生物分類群の好ましい増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって対象に利益をもたらす、難消化性の構成成分を指し得る。例示的なプレバイオティクスとしては、ヒトミルクオリゴ糖が挙げられる。例示的なプレバイオティックスオリゴ糖としては、ガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharide:GOS)、フラクトオリゴ糖(fructo-oligosaccharide:FOS)、2’-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオ-テトラオース、及びイヌリンが挙げられる。
【0138】
用語「シンバイオティクス」は、プロバイオティクス及びプレバイオティクスの両方を含有する構成成分を指し得る(例えば、Swanson,K.S.,et al.,2020.Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology,17(11),pp.687-701を参照されたい)。
【0139】
免疫調節物質としての使用
上記のとおり、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、驚くべきことに、様々な臨床試験におけるその免疫調節効果について文献により十分に説明されているB.ラクティスプロバイオティクスの培養上清よりも、いくつかの特徴において優れた免疫調節効果を呈することが見出された。
【0140】
一態様では、本発明は、免疫調節物質としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。本明細書で使用するとき、「免疫調節物質」は、免疫系の機能に影響を及ぼす物質である。いくつかの実施形態では、免疫調節物質としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用は、対象の胃腸管における抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)の発現を増強し、かつ/又は炎症促進性ケモカインの発現を低減する。
【0141】
別の態様では、本発明は、免疫抑制剤としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。本明細書で使用するとき、「免疫抑制剤」は、免疫系の活性を阻害又は予防する物質である。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤としてのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用は、対象の胃腸管における抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)の発現を増強し、かつ/又は炎症促進性ケモカインの発現を低減する。
【0142】
別の態様では、本発明は、対象の胃腸管における、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)の発現の増強、及び/又は炎症促進性ケモカインの発現の低減に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0143】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対象の胃腸管における1つ以上の抗炎症性サイトカインの発現を増強し得る。抗炎症性サイトカインは、炎症促進性サイトカインの応答を制御する一連の免疫調節性分子である(例えば、Opal,S.M.and DePalo,V.A.,2000.Chest,117(4),pp.1162-1172を参照されたい)。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-1受容体アンタゴニスト、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、及びIL-13から選択される1つ以上の抗炎症性サイトカインの発現を増強し得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-6及び/又はIL-10の発現を増強させる。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-10の発現を増強させる。
【0144】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、対象の胃腸管における1つ以上の炎症促進性ケモカインの発現を低減し得る。炎症促進性ケモカインは、炎症条件下において上方制御されるケモカインであり、主に炎症組織への白血球の動員に関与する(例えば、Zlotnik,A.and Yoshie,O.,2012.Immunity,36(5),pp.705-716を参照されたい)。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、CXCL-8(IL-8)、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL10から選択される1つ以上の炎症促進性ケモカインの発現を低減させ得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、CXCL10及び/又はIL-8の発現を低減させる。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、IL-8の発現を低減させる。
【0145】
インターロイキン-10(IL-10)
一態様では、本発明は、対象の胃腸管におけるIL-10の発現の増強における使用のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。
【0146】
インターロイキン-10(IL-10)は、アレルギー、感染に関連する免疫病理、及び自己免疫から宿主を保護するのに重要な多面的な免疫調節性サイトカインである。IL-10は、当初、2型ヘルパーT細胞(T helper:TH)特異的サイトカインであるとして評価されたが、しかしながら、さらなる調査により、IL-10産生はT調節性(Treg)細胞応答にも関連することが明らかになった。IL-10欠乏マウスは、抗原に対して長期の過度の免疫応答を呈し、その多くの場合に過剰な炎症及び組織損傷を伴い、またしばしば慢性腸炎を発症する(Kuhn et al.,1993,Cell 75,263-274;Leon et al.,1998,Ann.N.Y.Acad.Sci.856,69-75)。IL-10mRNAの低発現に関連する一塩基多型(Single-nucleotide polymorphism:SNP)もまた、関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)(Hajeer et al.,1998,Scand.J.Rheumatol.27,142-145)、重症喘息(Lim et al.,1998,Lancet 352,113、及び全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)(Gibson et al.,2001,J.Immunol.166,3915-3922)を有する患者において過剰発現される。胸腺及び末梢で産生されたFoxP3+制御性T細胞は、IL-10を分泌する(Sky Ng et al.,Front.Immunol.,31 May 2013)。
【0147】
TH2細胞によって分泌されるサイトカインIL-4、サイトカインIL-5、及びサイトカインIL-13は、寄生虫感染症に関連して防御免疫を提供するが、IgEの産生を増強することによってアレルギー反応を開始、増幅、及び延長し、好酸球及び肥満細胞の動員、増殖、及び分化に関与する(Robinson et al.,1992,N.Engl.J.Med.326,298-304;Romagnani,1994,Annu.Rev.Immunol.12,227-257;Northrop et al.,2006,J.Immunol.177,1062-1069)。ネズミ鞭虫(Trichuris muris)及びT.クルーズ(T. cruzii)などのTH2誘導性寄生生物感染実験の初期の研究は、致死的なT細胞応答の防止におけるIL-10の重要な役割を実証している(Schopf et al.,2002,J.Immunol.168,2383-2392)。
【0148】
TH2が産生したIL-10は、アレルギー反応の期間中のIL-4及びIL-13の下方制御に関連する(Grunig et al.,1997,J.Exp.Med.185,1089-1100;Jutel et al.,2003,Eur.J.Immunol.33,1205-1214;Akdis et al.,2004,J.Exp.Med.199,1567-1575)。アレルギー性気道炎症のマウスモデルにおいて、IL-10は、TH2応答を抑制するのに重要である(Grunig et al.,1997)。アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)のアレルゲンの繰り返し吸入後のIL-10ノックアウトマウス由来の肺細胞及び気管支肺胞洗浄(BAL)液では、高レベルのIL-4、IL-5、及びIFN-γが産生されており、気道炎症の悪化をもたらしていた(Grunig et al.,1997)。さらに、喘息患者から単離された肺胞マクロファージは、非喘息患者からの肺胞マクロファージと比較して低いレベルのIL-10を分泌する(Borish,1998;John et al.,1998,Am.J.Respir.Crit.Care Med.157,256-262)。
【0149】
IL-10は、抗原特異的治療の寛容性を首尾よく調整するという重要な役割を果たす。例えば、卵白アルブミン(ovalbumin:OVA)に由来するペプチドの経鼻投与は、TH2により促進されるOVA/ミョウバン誘導性の気道過敏症(AHR)の症状を低減することができる(Akbari et al.,2001)。AHRからの保護は、インビトロにおいてIL-4及びIL-10を分泌するOVA特異的CD4+T細胞を誘導する能力を有し、IL-10を分泌する肺DCの誘導と関連する(Akbari et al.,2001)。寛容性誘導中のIL-10の中和は、OVA特異的IgEの産生の増加をもたらし、OVA投与の防御効果を打ち消す(Vissers et al.,2004,J.Allergy Clin.Immunol.113,1204-1210)。ヒトにおいて成功したアレルゲン特異的免疫療法(SIT)、例えば、イネ科植物花粉又はチリダニアレルギーの治療におけるその療法は、IL-10分泌CD4+T細胞の産生と相関がある(Jutel et al.,2003,Eur.J.Immunol.33,1205-1214)。IL-10は、IL-4の下方制御、DC上のMHCクラスIIによる抗原提示の阻害、並びにCD28、ICOS、及びCD2を含む共刺激分子の発現の抑制によって、TH2応答を制限する(Taylor et al.,2007,J.Allergy Clin.Immunol.120,76-83)。ナイーブCD4+T細胞においてsrc相同性ホスファターゼ(SHP)-1に介在されるこの制限は、IL-10がエフェクター応答を調節することができ、またナイーブCD4+T細胞からのTH2細胞の分化を防止できることを示唆している(Taylor et al.,2007)。
【0150】
免疫調節におけるIL-10の重要な役割は、アレルギー性疾患の予防にとどまらず、炎症性腸疾患及び自己免疫疾患を含む他の疾患にまで及ぶ。IBDに関しては、IL-10欠乏マウスが大腸炎を自然発症することが示されている(Kuhn et al;1993,Cell.75,263-274)。このプロセスは、IL-10の投与又はIL-10の過剰発現によって防止することができる(Steidler et al;2000,Science.289,1352-1355 and Hagenbaugh et al;1997,J Exp Med.185,2101-2110)。同様に、ヒトにおけるIBDの素因は、IL-10応答の異常と強く関連している(Glocker et al;2009,N Engl J Med.361,2033-2045)。前臨床モデルでは、IL-10の欠乏が関節リウマチ(Hata et al;2004,J Clin Invest.114,582-588)、狼瘡(Ishida et al;1994,J Exp Med.179,305-310)、及び脳脊髄炎(Betteli et al;1998,J Immunol.161,3299-3306)の発症を悪化させたことから、免疫調節におけるIL-10の重要性は、さまざまな自己免疫の病状において更に実証されている。
【0151】
投与経路
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、当業者に公知の任意の好適な方法によって投与され得る。例えば、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、経口投与及び/又は経腸投与によって投与され得る。いくつかの実施形態では、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、経口投与される。
【0152】
対象
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は対象へ投与してもよく、ここで、対象は哺乳動物である。好適には、対象は、ヒト又はペット、例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、若しくはモルモット)、又はウサギなどである。好ましくは、対象は、ヒト対象である。
【0153】
対象は任意の年齢であってもよい。例えば、対象は児童又は成人であり得る。用語「児童」は、18歳未満の対象を指し得る。用語「成人」は、18歳以上の対象を指し得る。いくつかの実施形態では、対象は、児童である。いくつかの実施形態では、対象は、成人である。
【0154】
いくつかの実施形態では、対象は、乳児、幼児、又は小児である。用語「乳児」は、約0歳~約1歳の対象を指し得る。用語「幼児」は、約1歳~約3歳の対象を指し得る。用語「小児」は、約3歳~約5歳の対象を指し得る。いくつかの実施形態では、乳児、幼児、又は小児は、早産児、幼児、又は小児である。「早産児」又は「低出生体重児(premature)」、幼児、又は小児は、満期で生まれなかった乳児、幼児、又は小児を意味する(例えば、在胎36週までに出生)。いくつかの実施形態では、乳児、幼児、又は小児は、帝王切開によって誕生した、又は経膣分娩された。
【0155】
対象は、IL-10欠乏症を有し得る、又はIL-10欠乏症のリスクがあり得る。対象がIL-10欠乏症であるかどうかは、当業者に知られている任意の方法によって評価され得る。罹患患者は、主に、人生の早い時期において炎症性腸疾患(IBD)を発症する。IL-10変異は、遺伝子シーケンシングによってスクリーニングすることができる(例えば、Glocker,E.O.,et al.,2011.Annals of the New York Academy of Sciences,1246(1),pp.102-107)を参照されたい)。
【0156】
対象は、過剰活性免疫系障害を有し得る、又は過剰活性免疫系障害のリスクがあり得る。かかる過剰活性免疫系障害は、「過剰活性免疫系障害を治療及び/又は予防する方法」と題するセクションでより詳細に説明している。いくつかの実施形態では、対象は、IL-10介在性疾患を有する、又はIL-10介在性疾患のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、炎症性腸疾患を有する、又は炎症性腸疾患のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、アレルギー性疾患を有する、又はアレルギー性疾患のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、皮膚炎を有する、又は皮膚炎のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する、又は自己免疫疾患のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、感染に関連する免疫病理を有する、又は感染に関連する免疫病理のリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化症を有するか、又は結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化症のリスクがある。
【0157】
対象は、IL-6欠乏症を有し得る、又はIL-6欠乏症のリスクがあり得る。対象がIL-6欠乏症であるかどうかは、当業者に公知の任意の方法によって決定され得る。
【0158】
疾患を治療又は予防する方法
一態様では、本発明は、医薬品として使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を投与することを含む治療の方法を提供する。
【0159】
一態様では、本発明は、医薬品として使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、医薬品製造のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を投与することを含む、治療方法を提供する。
【0160】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清、サプリメント、又は栄養組成物は、対象の胃腸管において、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)の発現を増強すること、及び/又は炎症促進性ケモカインの発現を低減することによって、疾患を予防又は治療し得る。
【0161】
過剰活性免疫系障害を治療又は予防する方法
抗炎症性サイトカイン及び/又は炎症促進性ケモカインの調節不全は、慢性全身性炎症及び過剰活性免疫系をもたらし得る。
【0162】
一態様では、本発明は、過剰活性免疫系障害の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、過剰活性免疫系障害を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象の過剰活性免疫系障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0163】
一態様では、本発明は、過剰活性免疫系障害の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、過剰活性免疫系障害を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における過剰活性免疫系障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0164】
本明細書で使用するとき、「過剰活性免疫系障害」(また、「機能亢進性免疫系障害(hyperactive immune system disorder)」としても知られる)は、慢性全身性炎症及び/又は過剰活性免疫系によって引き起こされる疾患を指し得る。過剰活性免疫系障害には、例えば、アレルギー性疾患及び自己免疫疾患が含まれ得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、過剰活性免疫系障害は、IL-10欠乏症に関連する。いくつかの実施形態では、過剰活性免疫系障害は、IL-6欠乏症に関連する。いくつかの実施形態では、過剰活性免疫系障害は、炎症性腸疾患(IBD)、アレルギー性疾患、皮膚炎、自己免疫疾患、感染に関連する免疫病理、結腸直腸がん、骨治癒不良、及びアテローム性動脈硬化症から選択される。
【0166】
IL-10介在性疾患
IL-10欠乏症(IL-10 deficiency)は、免疫系の重度の調節不全をもたらす場合があり、微生物への暴露に対する炎症反応を増強する場合があり、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)及びいくつかの自己免疫疾患の発症をもたらし得る(Iyer,S.S.and Cheng,G.,2012.Critical Review in Immunology,32(1))。
【0167】
一態様では、本発明は、IL-10介在性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、IL-10介在性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象のIL-10介在性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0168】
一態様では、本発明は、IL-10介在性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、IL-10介在性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象におけるIL-10介在性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0169】
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)は、結腸及び小腸の一群の炎症状態である。例示的なIBDとしては、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び回腸嚢炎が挙げられる。血清IL-10は、炎症性腸疾患を有する患者において疾患回復中に増加することが示されている(Mitsuyama,K.,et al.,2006.Mediators of Inflammation,2006(6),pp.26875-26875)。
【0170】
IL-10組換え療法は、IBDのいくつかの前臨床モデルにおいて有効性が実証されている(Iyer,S.S.and Cheng,G.,2012.Critical Reviews in Immunology,32(1),pp.23-63;and Li,M.C.and He,S.H.,2004.World Journal of Gastroenterology,10(5),p.620)。
【0171】
一態様では、本発明は、IBDの治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、IBDを治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象におけるIBDを治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0172】
一態様では、本発明は、IBDの治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、IBDを治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象におけるIBDを治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0173】
いくつかの実施形態では、IBDは、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0174】
アレルギー性疾患
アレルギー性疾患は、典型的には環境中の無害な物質に対する免疫系の過敏反応によって引き起こされるいくつかの状態である。アレルギー性疾患としては、花粉症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性喘息、及びアナフィラキシーが挙げられる。
【0175】
アレルゲン反応性の2型ヘルパーT(Th2)細胞及び炎症促進性サイトカインは、アレルギー性喘息における炎症カスケードの誘導及び維持において重要な役割を果たすことが示唆されている。血漿中のIL-10及びIL-13濃度は、正常な対照対象よりもアレルギー性喘息患者において有意に高かった(Wong,C.K.,et al.,2001.Clinical & Experimental Immunology,125(2),pp.177-183)。更に、喘息の動物モデルにおいて、IL-10は、アレルゲン誘導性気道炎症及び非特異的応答を阻害することができると示された(Iyer,S.S.and Cheng,G.,2012.Critical Reviews in Immunology,32(1),pp.23-63)。
【0176】
IL-10遺伝子の特定の一塩基多型は、食物アレルギーを発症するリスクを高めるようである。アレルギー性疾患の免疫療法におけるIL-10を分泌するアレルゲン特異的調節性CD4+CD25+T細胞の発達に特に関心が寄せられている(Nedelkopoulou,N.,et al.,2020.Allergologia et immunopathologia,48(4),pp.401-408)。
【0177】
一態様では、本発明は、アレルギー性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、アレルギー性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象のアレルギー性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0178】
一態様では、本発明は、アレルギー性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、アレルギー性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象におけるアレルギー性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0179】
いくつかの実施形態では、アレルギー性疾患は、アレルギー性喘息又は食物アレルギーである。
【0180】
皮膚炎
皮膚炎(湿疹としてもまた知られる)は、皮膚の炎症であり、典型的にはかゆみ、発赤、及び発疹を特徴とする。皮膚炎としては、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、及び鬱血性皮膚炎が挙げられる。
【0181】
IL-10は、接触性皮膚炎及びアトピー性皮膚炎において抑制的役割を有し得ることが示されている(Boyman,O.,et al.,2012.Journal of Allergy and Clinical Immunology,129(1),pp.160-161)。例えば、重度のアトピー性皮膚炎は、IL-10生成アレルゲン特異的CD4+T細胞の発現頻度の低下に関連することが示されている(Seneviratne,S.L.,et al.,2006.Clinical and Experimental Dermatology:Experimental dermatology,31(5),pp.689-694)。更に、肥満細胞由来のIL-10は、接触性皮膚炎における皮膚病変を制限する(Grimbaldeston,M.A.,et al.,2007.Nature immunology,8(10),pp.1095-1104)。
【0182】
一態様では、本発明は、皮膚炎の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、皮膚炎を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象における皮膚炎を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0183】
一態様では、本発明は、皮膚炎の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、皮膚炎を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における皮膚炎を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0184】
いくつかの実施形態では、皮膚炎は、アトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎(例えば、アレルギー性接触性皮膚炎)である。
【0185】
自己免疫疾患
自己免疫疾患は、機能的な身体部分に対する異常な免疫応答から生じる状態である。自己免疫疾患は、自己反応性リンパ球の維持に機能する、調節不全のサイトカインの発現が存在することを特徴とする。
【0186】
自己免疫疾患のマウスモデル及びヒトモデルの両方に関するいくつかの研究では、IL-10レベルと疾患との間の直接的な関連を示唆する、IL-10血清レベルの変化が実証されている。IL-10多型は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、及びギラン・バレー症候群を含む、自己免疫疾患に関連している(Gibson AW,et al.The Role of IL-10 in Autoimmune Pathology,In:Madame Curie Bioscience Database)。
【0187】
一態様では、本発明は、自己免疫疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、自己免疫疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象の自己免疫疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0188】
一態様では、本発明は、自己免疫疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、自己免疫疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における自己免疫疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0189】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、及びギラン・バレー症候群から選択される。
【0190】
感染に関連する免疫病理
いくつかの感染症では、免疫応答は疾患の主な原因であり得る。免疫系によって引き起こされる損傷は免疫病理として知られており、抗体、過剰な生得的応答、又はリンパ球によって引き起こされ得る。
【0191】
IL-10は、病原体のクリアランスを妨げること、及び免疫病理学を改善することの両方ができ、ウイルス、細菌、真菌、原虫、及び蠕虫による感染症の間の重要な免疫調節因子であることが明らかとなってきている。複数の研究が、感染症の解消には、初期の炎症促進性の機構が病原体を除去した後、病態が生じる前にかかる機構がIL-10によって制限される、協調的応答が必要であることを示している。例えば、IL-10シグナル伝達の消失は、T.ゴンディ(T.gondii)、マラリア、及びクルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)を含む多くの感染症において、重度で、しばしば致命的な免疫病理の発症を引き起こす(Couper,K.N,et al.,2008.The Journal of Immunology,180(9),pp.5771-5777)。
【0192】
一態様では、本発明は、感染に関連する免疫病理の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、感染に関連する免疫病理を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象における感染に関連する免疫病理を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0193】
一態様では、本発明は、感染に関連する免疫病理の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、感染に関連する免疫病理を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における感染に関連する免疫病理を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0194】
いくつかの実施形態では、感染症は、原虫(例えば、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、リーシュマニア(Leishmania)種、プラスモディウム(Plasmodium)種、クルーズ・トリパノソーマ)、細菌(例えば、マイコバクテリア(Mycobacteria)種、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ヘリコバクター(Helicobacter)種、ボルデテラ属(Bordetella)種、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes))、蠕虫(例えば、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ヘリグモソモイデス・ポリギルス(Heligmosomoides polygyrus))、ウイルス(例えば、HIV、肝炎、HSV-1、LCMV、MCMV)、又は真菌(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))によるものである。
【0195】
その他の疾患
IL-10の多型は、結腸直腸がんに関連し得る(Tsilidis,K.K,et al.,2009.Cancer Causes & Control,20(9),pp.1739-1751))。更に、結腸直腸がんは、高レベルの循環IL-10を伴わない、広範囲の単球/マクロファージ炎症促進性サイトカインの産生の強化に関連することが示されている(Szkaradkiewicz,A.,et al.,2009.Archivum immunologiae et therapiae experimentalis,57(4),pp.291-294)。
【0196】
破壊された骨が治癒しない場合、これは「偽関節」と呼ばれ、「遷延治癒」は、骨折が治癒するのに通常よりも長い時間がかかる場合である。IL10は、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein:BMP)経路を介して軟骨細胞の増殖及び分化を促進することによって骨形成に影響を及ぼすことができ、したがって、内軟骨性骨形成に影響を及ぼす。IL-10欠乏症マウスは、骨形成及び骨芽細胞形成の抑制を示し、骨減少症及び骨の脆弱性の増加をもたらした(Maruyama,M.,et al.,2020.Frontiers in Endocrinology,11,p.386)。
【0197】
動脈壁において線維脂肪病変が形成されるアテローム性動脈硬化症は、世界中の多くの罹患率及び死亡率に寄与し、ほぼ心筋梗塞及び多くの脳卒中を伴い、また末梢動脈疾患を重症にする。IL-10欠乏症はアテローム性動脈硬化症において有害な役割を果たし得ること、並びにIL-10はアテローム形成を低減させ、プラークの安定性を改善し得ることが示されている(Caligiuri,G.,et al.,2003.Molecular medicine,9(1),pp.10-17;and Mallat,Z.,et al.,1999.Circulation research,85(8),pp.e17-e24)。
【0198】
一態様では、本発明は、結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防用の医薬品を製造するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象における結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0199】
一態様では、本発明は、結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防用の医薬品を製造するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、サプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象における結腸直腸がん、骨治癒不良、又はアテローム性動脈硬化を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0200】
IL-6介在性疾患
IL-6欠乏症は、例えば、炎症性骨破壊(inflammatory bone destruction)を増加させ得る(Balto,K.,et al.,2001.Infection and immunity,69(2),pp.744-750)、及び/又はハンチントン病を悪化させ得る(Wertz,M.H.,et al.,2020.Molecular neurodegeneration,15,pp.1-8)。IL-6欠乏症に関連する例示的な疾患は、Murakami,et al.,2019.Immunity,50(4),pp.812-831に記載されている。
【0201】
一態様では、本発明は、IL-6介在性疾患の治療及び/又は予防に使用するためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を提供する。別の態様では、本発明は、IL-6介在性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清の使用を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を対象へ投与することを含む、対象のIL-6介在性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0202】
一態様では、本発明は、IL-6介在性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、IL-6介在性疾患を治療及び/又は予防するための医薬品の製造のための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を提供する。別の態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメント又は栄養組成物を対象へ投与することを含む、対象におけるIL-6介在性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0203】
製造方法
本発明のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製してもよい。例えば、細菌上清の調製は、Moradi,M.,et al.,2021.Enzyme and Microbial Technology,143,p.109722に記載されている。
【0204】
例示的な培養条件及び処理工程は、上記「培養上清の調製」と題したセクションで説明しており、本発明にかかる製造方法は、該セクションに記載されている工程のいずれかを含み得る。
【0205】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を製造する方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程であって、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去される、工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
を含む。
【0206】
本方法は任意の他の好適な処理工程を含んでもよい。好ましい実施形態では、本方法は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させる工程(d)を更に含む。
【0207】
ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、本明細書に記載の任意のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清であり得る。
【0208】
一態様では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを得る方法を提供し、本方法は、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程であって、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス細胞は、遠心分離によって除去される、工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させて、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を得る工程と、
(e)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を処理して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を含むサプリメントを得る工程と、
を含む。
【0209】
本方法は任意の他の好適な処理工程を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、工程(e)は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包、圧縮成形、及び/又は包装して、サプリメントを得る工程を含む。例えば、いくつかの実施形態では、工程(e)は、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末をカプセル内包して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むカプセルを得る工程を含む。
【0210】
サプリメンは、本明細書に記載の任意のサプリメントであり得る。
【0211】
例示的な培養条件及び処理工程は、上記「培養上清の調製」と題したセクションで説明しており、本発明にかかる製造方法は、該セクションに記載されている工程のいずれかを含み得る。
【0212】
[実施例]
次に、実施例により本発明を更に説明するが、これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのに役立てるために提供することを意味するものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0213】
実施例1 B.ラクティス培養上清、B.ラクティスプロバイオティクス、及びこれらの両方の組み合わせの免疫効果の比較
培養上清粉末の生成
B.ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446)の培養上清を、パイロットプラント規模で生成した(8000Lの主発酵)。主発酵のための接種材料は、1200Lスタータ発酵にてパイロットプラント規模で生成された。主発酵工程は、pH制御(pH6.0)、撹拌、及び定常期に達するまでのヘッド・スペース・ガス法(二酸化炭素)を用いて、37℃で実施した。培地は、酵母エキス、アスコルビン酸ナトリウム、及びデキストロースを含有していた。定常期に達した後、発酵物を連続遠心分離機で遠心分離して、細菌細胞の大部分を除去した。続いて、培養上清を、プレート熱交換器で99℃にて10秒間パスチャライズして、残存している生細胞を不活性化させた後、キャニスタへ充填して凍結させた。
【0214】
液体の培養上清を、例えばサプリメントに使用することができる粉末へと変換するために、乾燥方法を開発した。噴霧乾燥は、この技術が大容量に好適であり、エネルギー効率がよく、容易に利用可能であるため、好ましい技術として選択した。噴霧乾燥実験のために、卓上型ビュッヒ噴霧乾燥機を使用した。粘着性を低下させ、物理的安定性を改善する担体材料を試験した。これらの試験では、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム(アラビアガム)、デンプン、及びイヌリンが好適な食品用担体材料として特定された。担体を、総固形分比1:3及び総固形分比1:1(担体:培養上清乾燥固形分)で培養上清溶液へ添加した。全体として、1:1の比は、1:3の比と比較して粘着性の挙動がより少なかった。
【0215】
生成された全ての粉末のうち、1:1の比のアカシアゴムを含む培養上清粉末を、インビトロでの結腸シミュレーション研究のために選択し、続いてインビトロ免疫アッセイを行った。
【0216】
短期の結腸インキュベーション
成人腸内微生物叢における、プロバイオティクスB.ラクティス(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446)を含む又は含まない培養上清粉末の腸内変換を模倣するために、結腸のインビトロモデルを採用した。短期のバッチでの実験は、ヒト微生物生態系の連続シミュレータ(SHIME(登録商標))の単純化されたシミュレーションを表す。このモデルは20年以上使用されており、これまでにインビボパラメータで検証されている。短期の結腸インキュベーションアッセイは、典型的には、選択されたドナーから得られた細菌接種材料を用いた健康な成人の近位大腸を表す模擬条件下において、選択された用量の試験化合物(複数可)を結腸発酵させることから構成される。
【0217】
新たに調製したヒト糞便試料を、結腸モデルの接種のための接種材料用の微生物群の供給源として使用した。異なる3名の健常ドナー(ドナーD1、ドナーD2、ドナーD3)から糞便接種材料を得た。短期の結腸インキュベーションの開始時に、試験製品を、結腸内に存在する基本栄養(例えば、ムチンなどの宿主由来グリカン)を含有する糖枯渇栄養培地へ添加した。B.ラクティス培養上清粉末の用量は3.6g/Lとし、B.ラクティスプロバイオティクス培養粉末の用量は1.4E+08cfu/mL(通常用量)とした。2つの原材料を個別に組み合わせて使用した。更に、2.6g/Lの培養上清粉末及び1.4E+07cfu/mLのB.ラクティスとの低用量の組合せを試験した。細菌群のバックグラウンド活性を模倣するために、糖を枯渇させた栄養培地のみを含有するブランクもまた含めた。インキュベーションは、37℃で、振盪(90rpm)及び嫌気性条件下で48時間行われた。生物学的なばらつきを考慮して、全ての試験を3回行った。糖を枯渇させた栄養培地に被検原材料を添加して、3名のドナーの糞便接種材料を48時間結腸インキュベーションした後、試料を採取し、濾過滅菌(0.22μm)によって細胞を取り除いた。次いで、これらの濾過滅菌後の試料を免疫アッセイに使用した。
【0218】
免疫アッセイ
宿主と腸内微生物叢との間の界面を模倣するために、ヒト由来の腸上皮様細胞及び免疫細胞に基づくインビトロモデルが開発されている。この研究では、Satsu氏らの研究(Satsu,H.,et al.(2006)Exp.Cell Res.,312:3909-939)に基づいて、腸上皮様細胞(Caco-2細胞)及びヒト単球/マクロファージ(THP1細胞)の共培養モデル(Possemiers,S.,et al.(2013)J.Agric.Food Chem.,61:9380-939)を使用した。このモデルでは、抗炎症能は、サイトカインプロファイルの分析(抗炎症性サイトカインの増加及び炎症促進性サイトカインの低減)によって決定される。結腸インキュベーションから収集したフィルタ滅菌結腸懸濁液を、共培養物のアピカル側(Caco-2細胞)と接触させる。次いで、基底膜側チャンバー(THP1細胞が存在する場所)で観察される効果は、Caco-2細胞によって生成されるシグナルによって、並びに/又は微小分子及び巨大分子の輸送によって、間接的に調節される。これにより、消化工程中に腸内微生物叢によって生成される、生成物及び発酵由来代謝産物によって誘導される(したがって、純粋な生成物によってではない)効果を評価することができる。
【0219】
共培養実験は、既報のように行った(Daguet,D.,et al.(2016)Journal of Functional Foods,20:369-379)。手短に言えば、Caco-2細胞(HTB-37;American Type Culture Collection)を、24ウェルの半透性インサートに播種した。機能性細胞の単層が得られるまで、3回の培地交換/週で14日間にわたりCaco-2単層を培養した。THP1-Blue(商標)細胞を24ウェルプレートに播種し、マクロファージ様細胞(接着することができ、かつトール様受容体(toll-like receptor:TLR)シグナル伝達のためにプライミングされる)への細胞分化を誘導するホルボール12ミリステート13アセテート(PMA)で処理した。既報のように、更なる実験のために、Caco-2担持インサートをPMA分化THP1-Blue(商標)細胞の上に置いた(Possemiers,S.,et al.(2013)J.Agric.Food Chem.,61:9380-939;Daguet,D.,et al.(2016)Journal of Functional Foods,20:369-379)。簡潔には、アピカルコンパートメント(Caco-2細胞を含有)を、濾過滅菌した(0.22μm)結腸バッチ懸濁液で満たした。細胞はまた、陽性対照として酪酸ナトリウム(NaB)(Sigma-Aldrich)を用いアピカル側を処理した。基底膜側コンパートメント(THP1-Blue(商標)細胞を含有)をCaco-2完全培地で満たした。細胞はまた、対照として両方のチャンバーにおいてCaco-2完全培地に曝露させた。
【0220】
細胞を24時間にわたり処理し、次いで、側底の培養上清を捨て、超純粋(ultrapure)リポ多糖類(lipopolysaccharide:LPS)を含有するCaco-2完全培地により細胞の基底膜側を刺激した。細胞はまた、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone:HC)と組み合わせたLPS(Sigma-Aldrich)及び対照としてLPSを含まない培地(LPS-)で、6時間にわたり、基底膜側を刺激した。LPS刺激後、製造者による指示に従い、サイトカイン測定(Luminex(登録商標)マルチプレックス(Affymetrix-eBioscience)によるヒトIL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、TNF-α、CXCL10、及びMCP-1)及びNF-κB活性のために、基底膜側の培養上清を収集した。MCP-1は規格の上限値を超えており、結果が信頼できないため除外した。
【0221】
全ての処理を3連で行った。細胞を、空気/CO2(95:5、v/v)の加湿雰囲気中で、37℃でインキュベートした。全ての結腸バッチ試料を、細胞アッセイにおいて生物学的複製物(n=3)として採取した。免疫マーカーの差を評価するために、ダネットの多重比較検定を用いた2元配置分散分析を用いて処置試料をそれぞれの対照試料と比較し、()で表した。()、(**)、(***)、及び(****)は、それぞれ、p<0.05、P<0.01、p<0.001、及びp<0.0001を表す。全ての統計は、GraphPad Prism version 8.3.0 for Windows(GraphPad Software,San Diego,CA,USA)を用いて行った。
【0222】
全ての結腸バッチ懸濁液は、LPS+対照と比較して、NF-κB活性を増加させた(図1)。更に、ドナー1において、B.ラクティスとのインキュベーションは、その対照と比較してNF-κB活性を有意に増加させた。更に、ドナー1及びドナー3において、B.ラクティス由来培養上清、並びにB.ラクティスとその上清との組合せは、NF-κB活性を有意に増加させた。これらの効果は、全てのドナーの平均を観察したときに反映されていた。結論として、B.ラクティス由来培養上清及びB.ラクティスとその培養上清との組合せは、3名のドナーのうち2名においてLPS誘導性NF-κB活性を有意に増加させた。
【0223】
全ての結腸バッチ懸濁液(ドナー1におけるブランク試料並びにB.ラクティスと培養上清との試料を除く)は、LPS+対照と比較して、抗炎症性サイトカインIL-6の分泌を増加させた(図2A)。更に、B.ラクティスは、全てのドナーにおいてLPS誘導性IL-6分泌を増加させる傾向があったが、一方で培養上清は、ドナー1及びドナー3においてIL-6分泌を有意に増加させた。ドナー2において、培養上清はIL-6分泌を増加させる傾向があった。両方の濃度で、B.ラクティスと培養上清との組合せは、ドナー3におけるIL-6分泌を有意に増加させた。ドナー2では、通常用量のB.ラクティスと培養上清とのみがIL-6分泌を有意に増加させたが、一方でドナー1では効果は見られなかった。全ドナーの平均を観察したところ、B.ラクティス、その培養上清、及びB.ラクティスと培養上清との組合せ(通常用量)は、LPS誘導性IL-6分泌を有意に増加させた。概して、IL-6分泌に対する効果は上清で最も顕著であった。
【0224】
全ての結腸バッチ懸濁液は、LPS+対照と比較して、抗炎症性サイトカインIL-10の分泌を増加させた(図2B)。ドナー2及びドナー3では、B.ラクティスとのインキュベーションはIL-10の分泌を増加させ、ドナー2においては有意に増加した。更に、全てのドナーにおいて培養上清はIL-10分泌を有意に増加させた。B.ラクティスと培養上清との組合せは、ドナー3においていずれの濃度でもIL-10の分泌を有意に増加させたが、一方で、ドナー2においては、この効果は、通常用量レベルでのみ観察された。全ドナーの平均を観察したところ、B.ラクティス、その培養上清、及びB.ラクティスと培養上清との組合せ(通常用量)は、LPS誘導性IL-10分泌を有意に増加させた。概して、IL-10分泌に対する効果は上清で最も顕著であった。
【0225】
結論として、B.ラクティスは、抗炎症性サイトカインのIL-6及びIL-10の分泌をわずかに増加させた。対照的に、B.ラクティス由来培養上清は、これらのサイトカインの分泌を強く増加させた。最後に、通常用量では、B.ラクティスと培養上清ともまた、IL-6及びIL-10の分泌を有意に増加させたが、ただし、その程度は培養上清単独よりも少ない。
【0226】
B.ラクティスと培養上清(通常用量)との組合せは、ドナー1及びドナー3において、対照と比較してケモカインCXCL10のLPS誘導性分泌を有意に減少させた(図3A)。更に、B.ラクティス由来培養上清は、ドナー3におけるCXCL10分泌を有意に低減させた。B.ラクティスで処理した結腸懸濁液は、ドナー3においてCXCL10の分泌をわずかに減少させたが、一方で、ドナー2においてはその分泌を増加させた。全ドナーの平均を観察したところ、B.ラクティスと培養上清(通常用量)との組合せは、対照と比較して、CXCL10の発現を有意に減少させた。B.ラクティスで処理したドナー2の試料及びドナー3のブランク試料のCXCL10レベルは、レプリケートの値のいくつかが標準の線形範囲から外れたため、正確に決定することができなかった。したがって、これらの試料では濃度が過大評価される可能性がある。
【0227】
B.ラクティスで処理した結腸懸濁液は、ドナー2及びドナー3において、対照と比較してケモカインIL-8の分泌を有意に減少させた(図3B)。さらに、B.ラクティス由来培養上清及びB.ラクティスと培養上清との組合せ(通常用量)は、ドナー1及びドナー2においてIL-8分泌を有意に減少させた。全ドナーの平均を観察したところ、B.ラクティス、その培養上清、及びB.ラクティスと培養上清との組合せ(通常用量)は、IL-8分泌を有意に減少させた。
【0228】
結論として、B.ラクティス、その培養上清、及びB.ラクティスと培養上清との組合せ(通常用量)は、ケモカインIL-8の分泌を有意に減少させた。さらに、B.ラクティスと培養上清との通常用量は、ケモカインCXCL10の分泌を有意に減少させた。
【0229】
複数の異なる処理によって誘導される、ブランク対照と比較した変化の概要を提供するために、処理結腸バッチ懸濁液を対照結腸バッチ懸濁液に対して正規化した。図4に概説する。全ての処置は、抗炎症性サイトカインのIL-6及びIL-10の分泌をわずかに増加させた。B.ラクティス由来培養上清では最も強い効果が認められ、次いで、B.ラクティスプロバイオティクスとその培養上清との組合せの通常用量で認められた。更に、全ての処理はケモカインIL-8の分泌を減少させ、最も強い効果は上清で観察された。対照的に、B.ラクティスとその培養上清(通常用量)との組合せは、ケモカインCXCL10の分泌に対して最も強い阻害効果を示した。
【0230】
結論として、B.ラクティス由来培養上清並びにB.ラクティスとその培養上清との組合せ(通常用量)は、使用したインビトロCaco-2/THP1共培養モデルにおいて有意な抗炎症特性を実証した。様々な臨床試験において、培養上清のいくつかの特徴が、その免疫調節効果についてプロバイオティクスが十分に実証されているプロバイオティクスビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446よりも優れていたことは、驚くべきことであった。
【0231】
実施形態
本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態を、以下の付番したパラグラフ(段落)を参照して説明する。
1.過剰活性免疫系障害を有する又は過剰活性免疫系障害のリスクがある対象の胃腸管における、抗炎症性サイトカインの発現の増強、及び/又は炎症促進性ケモカインの発現の低減に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
2.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、対象の胃腸管におけるIL-10の発現を増強する、段落1に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
3.過剰活性免疫系障害が、IL-10介在性疾患である、段落1又は段落2に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
4.IL-10介在性疾患を有する又はIL-10介在性疾患のリスクがある対象の胃腸管における、IL-10の発現の増強に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
5.対象の胃腸管におけるIL-10の発現を増強することによる、IL-10介在性疾患の治療又は予防に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
6.IL-6介在性疾患を有する又はIL-6介在性疾患のリスクがある対象の胃腸管における、IL-6の発現の増強に使用するための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
7.対象の胃腸管におけるIL-6の発現を増強することによる、IL-6介在性疾患の治療又は予防に使用するのための、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
8.ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBLC1、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDSM10140、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスV9、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBl-04、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBi-07、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスB420、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスBB-12、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスAD011、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスHN019、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスDN-173 010、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスATCC 27536、及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスVTT E-012010から選択される、段落1~段落7のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
9.ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446に対して、少なくとも99.0%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%の配列同一性を有する、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスである、段落1~段落8のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
10.ビフィドバクテリウム・ラクティスが、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスCNCM I-3446である、段落1~段落9のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
11.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、糖及び酵母エキス、並びに任意選択的にアスコルビン酸ナトリウム及び/又はポリソルベートを含む培養培地中においてビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって得られる、又は得ることがでる、段落1~段落10のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
12.
(i)培養培地が、約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の糖を含み、
(ii)培養培地が、約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約6重量%、又は約2重量%~約4重量%の酵母エキスを含み、
(iii)培養培地が、約0重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約0.2重量%のアスコルビン酸ナトリウムを含み、かつ、
(iv)培養培地が、約0重量%~約1重量%、又は約0重量%~約0.3重量%のポリソルベートを含む、
段落7に記載の使用、又は段落7に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
13.糖が、グルコース、デキストロース、及び/又はグルコースシロップである、段落11若しくは段落12に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
14.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清は、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHで培養することによって、得られる又は得ることができる、段落11~段落13のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
15.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスを、定常期に達するまで培養することによって、得られる又は得ることができる、段落1~段落14のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
16.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、嫌気性条件下においてビフィドバクテリウム・ラクティスを培養することによって、得られる又は得ることができる、段落1~段落15のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
17.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去することによって、得られる又は得ることができる、段落1~段落16のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
18.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、パスチャライズされている、段落1~段落17のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
19.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、乾燥されている、段落1~段落18のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
20.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥により乾燥されている、段落19に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
21.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、オートムギ繊維、マルトデキストリン、アカシアゴム、デンプン、及びイヌリンのうち1つ以上から選択される担体材料と共に噴霧乾燥され、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、アカシアゴムと共に噴霧乾燥される、段落20に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
22.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清及び担体材料が、総固形分比約1:3~約2:1(担体:培養上清乾燥固形分)で混合され、好ましくは総固形分比が、約1:1(担体:培養上清乾燥固形分)である、段落17に記載の使用、又は段落17に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
23.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、経口投与される、段落1~段落22のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
24.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、サプリメント又は栄養組成物の形態である、段落1~段落23のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
25.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、カプセル又はタブレットの形態である、段落1~段落24のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
26.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が
(i)全糖濃度の減少、
(ii)全酸濃度の増加、及び/又は、
(iii)全アミノ酸濃度の減少、
を有する、段落1若しくは段落4~段落21のいずれか一段落に記載の使用、又は段落2~段落21のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
27.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、全糖濃度が、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少している、段落26に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
28.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、全酸濃度が、全糖濃度の減少の少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%増加している、段落26又は段落27に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
29.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養培地と比較して、全アミノ酸濃度が、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、又は少なくとも約0.3重量%減少している、段落26~段落28のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
30.パスチャライズの前に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約1×10~約1×10cfu/mLの生細胞数を有する、段落1~段落29のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
31.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下の全糖を含む、段落1~段落30のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
32.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2重量%以上の全酸を含む、段落1~段落31のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
33.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約3.5重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、又は約0.6重量%以下の全アミノ酸を含む、段落1~段落32のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
34.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約5~約7のpH、約5.5~約6.5のpH、又は約6のpHを有し、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、約6.2のpHを有する、段落1~段落33のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
35.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスと組み合わせて使用され、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、1つ以上のプロバイオティクスと組み合わせて使用される、段落1~段落34のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
36.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスと組み合わせて使用される、段落1~段落35のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
37.プロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスが、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである、段落36に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
38.対象が、IL-10欠乏症を有する、又はIL-10欠乏症のリスクがある、段落1~段落37のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
39.対象が、哺乳動物であり、好ましくは対象が、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯類、又はウサギであり、より好ましくは対象が、ヒトである、段落1~段落38のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
40.IL-10介在性疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、アレルギー性疾患、皮膚炎、自己免疫疾患、感染に関連する免疫病理、結腸直腸がん、骨治癒不良、及びアテローム性動脈硬化症から選択される、段落3~段落5又は段落8~段落39のいずれか一段落に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
41.
(i)IBDが、クローン病(CD)若しくは潰瘍性大腸炎(UC)であり;
(ii)アレルギー性疾患が、アレルギー性喘息若しくは食物アレルギーであり;
(iii)皮膚炎が、アトピー性皮膚炎若しくは接触性皮膚炎であり;
(iv)自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、強直性脊椎炎、及びギラン・バレー症候群から選択され;並びに/又は、
(v)感染は、原虫感染症、細菌感染症、線虫感染症、ウイルス感染症、及び真菌感染症から選択される、
段落40に記載の使用のためのビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
42.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥されている、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
43.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、段落8項~段落19項又は段落21~段落34のいずれか一段落に従って定義されるとおりである、段落42に記載のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清。
44.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントであって、好ましくはサプリメントが、カプセル又はタブレットの形態である、サプリメント。
45.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含む、栄養組成物。
46.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、段落8~段落23又は段落25~段落34のいずれか一段落に記載のとおりである、段落44に記載のサプリメント、又は段落45に記載の栄養組成物。
47.サプリメント又は栄養組成物が、1種以上のプロバイオティクス、プレバイオティクス、又はシンバイオティクスを含み、好ましくはサプリメント又は栄養組成物が、1種以上のプロバイオティクスを含む、段落44若しくは段落46に記載のサプリメント、又は段落45若しくは段落46に記載の栄養組成物。
48.サプリメント又は栄養組成物が、ビフィドバクテリウム・ラクティスプロバイオティクスを含み、好ましくはプロバイオティクスビフィドバクテリウム・ラクティスが、培養上清が由来するビフィドバクテリウム・ラクティスと同じである、段落44、段落46、若しくは段落47のいずれか一段落に記載のサプリメント、又は段落45~段落47のいずれか一段落に記載の栄養組成物。
49.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を製造する方法であって、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程と、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程と、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程と、
を含む、方法。
50.方法が、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させる工程(d)を更に含み、好ましくはビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、段落49に記載の方法。
51.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、段落42又は段落43に記載のビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清である、段落49又は段落50に記載の方法。
52.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを製造する方法であって、
(a)培養培地でビフィドバクテリウム・ラクティスを培養して、ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物を得る工程、
(b)ビフィドバクテリウム・ラクティス発酵物から実質的に全てのビフィドバクテリウム・ラクティス細胞を除去して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を得る工程、
(c)任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清をパスチャライズする工程、
(d)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を乾燥させて、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を得る工程と、
(e)ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包、圧縮成形、及び/又は包装して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むサプリメントを得る工程、
を含む、方法。
53.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清が、噴霧乾燥によって乾燥される、段落52に記載の方法。
54.ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清粉末を、カプセル内包して、ビフィドバクテリウム・ラクティス培養上清を含むカプセルを得る、段落52又は段落53に記載の方法。
55.サプリメントが、段落44、段落46、段落47、又は段落48のいずれか一段落に記載のサプリメントである、段落52~段落54のいずれか一段落に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】