(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】高強度で、かつ低色度のポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20240808BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08G65/40
H01L21/68 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508418
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2022111423
(87)【国際公開番号】W WO2023016487
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110928553.3
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524052701
【氏名又は名称】吉林省中研高分子材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】謝懐傑
(72)【発明者】
【氏名】董波
【テーマコード(参考)】
4J005
5F131
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB01
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA00
5F131CA09
5F131CA12
5F131GA02
5F131GA12
5F131GA53
(57)【要約】
高強度で、かつ低色度のポリエーテルエーテルケトン及びその製造方法。当該製造方法は、不活性雰囲気において、0.15MPa~l.0MPaの圧力で、第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーとを、アルカリ金属炭酸塩の存在下で不活性非プロトン性溶媒中に求核重縮合反応させ、ポリエーテルエーテルケトンを得るステップを含む。本発明により、反応時間が短縮され、反応温度を低下させ、エネルギー及びコストを低減させることができ、ポリマーの衝撃強度が向上し、色もより明るく白くなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルエーテルケトンの製造方法であって、該製造方法は、
不活性雰囲気において、0.15MPa~1.0MPaの圧力で、第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーとを、アルカリ金属炭酸塩の存在下で不活性非プロトン性溶媒中に求核重縮合反応させて、ポリエーテルエーテルケトンを得るステップを含み、
第1の重合性モノマーは、ハイドロキノン、ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3-ビス-(p-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス-(p-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、α-ナフトール、及びβ-ナフトールのうちのいずれか1種又は複数種であり、
第2の重合性モノマーは、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4-フルオロ-4’-クロロ-ベンゾフェノン、2-フルオロ-4’-クロロ-ベンゾフェノン、2-クロロ-4’-フルオロ-ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、テレフタロイルクロリド及びイソフタロイルクロリドのうちのいずれか1種又は複数種である、
ポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
【請求項2】
求核重縮合反応の温度は、140℃~260℃であり、時間は、1.5~2.5時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
求核重縮合反応については、まず、150~170℃で20~30分間反応させた後、180~210℃で20~30分間反応させ、最後に225~260℃で55~90分間反応させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
第2の重合性モノマーと第1の重合性モノマーとのモル比は、(1.0~1.1):1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ金属炭酸塩と第2の重合性モノマーとのモル比は、(1.0~1.5):1である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
不活性非プロトン性溶媒は、スルホラン、ジフェニルスルホン、グリセリン、ジメチルアセトアミド及びメチルピロリドンのうちの少なくとも1つである、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法で製造された、ポリエーテルエーテルケトン。
【請求項8】
ポリエーテルエーテルケトンの性能は、以下の条件を満たし、
IS×L
*≧310 (1)
式(1)において、ISは、アイゾット衝撃強度を表し、単位はkJm
-2であり、L
*は、色度値を表す、請求項7に記載のポリエーテルエーテルケトン。
【請求項9】
ポリエーテルエーテルケトンのアイゾット衝撃強度は、5.5~9kJm
-2であり、色度値は60~90である、請求項8に記載のポリエーテルエーテルケトン。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載のポリエーテルエーテルケトンの、ウェハキャリア又は電子絶縁膜の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリールエーテルケトン及びその製造方法に関し、エンジニアリングプラスチックの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
1960年代以来、高性能エンジニアリングプラスチックに対する開発は、電子、電気工学、航空軍事工業などの先進分野での要求を十分に満たし、その発展が非常に速い。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、全芳香族系半結晶性ポリマーとして、優れた耐熱性、耐放射線性、絶縁性及び耐老化性などを有し、その優れた物理的機械的特性、熱的特性、電気的特性及び化学的特性により、電子機器、機械器具、交通輸送及び宇宙航空などの分野に幅広く応用されている。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、ポリアリールエーテルケトン系材料の代表的な材料として、最初は国防用途で応用されていたが、ここ十数年間で民間用途にも応用されており、例えば、自動車製造、医療、部品加工など幅広い分野に応用されている。
【0003】
応用分野の拡大に伴い、ポリエーテルエーテルケトンに対する研究は、ますます多くなり、CN1035679C、CN101125923B、EP0278720A2など多くの特許が出願されている。ポリエーテルエーテルケトンの従来の合成技術のほとんどは、求核置換を用いて重縮合反応を行うものであるが、このような方法は通常、高沸点の不活性溶媒内で、求核成分としてのビスフェノール系化合物と、1つ以上のビスハロゲン化ベンゾフェノンとを用いて、アルカリ金属炭酸塩の存在下で重縮合反応を行うものであり、通常、このような反応は、常圧高温下で行われ、反応時間が長く、5~6時間であり、最終的な反応温度が300~400℃である。このようにしてエネルギー及びコストの使用量は膨大になる。
【0004】
電子の分野では、主にウェハキャリア及び電子絶縁膜に応用されるポリエーテルエーテルケトンについては、強度が高く、色がより明るくて白いポリエーテルエーテルケトンが求められることが多い。しかしながら、このような要求を満たすポリエーテルエーテルケトンを製造するプロセスは複雑であり、影響因子が多く、関連する技術について開示された文献が見出されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、高強度で、かつ低色度のポリエーテルエーテルケトンを如何に製造するかということである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、ポリエーテルエーテルケトンの製造方法を提供する。本製造方法は、
不活性雰囲気において、0.15MPa~1.0MPaの圧力で、第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーとを、アルカリ金属炭酸塩の存在下で不活性非プロトン性溶媒中に求核重縮合反応させて、ポリエーテルエーテルケトンを得るステップを含み、
第1の重合性モノマーが、ハイドロキノン、ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3-ビス-(p-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス-(p-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、α-ナフトール、及びβ-ナフトールのうちのいずれか1種又は複数種であり、
第2の重合性モノマーが、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4-フルオロ-4’-クロロ-ベンゾフェノン、2-フルオロ-4’-クロロ-ベンゾフェノン、2-クロロ-4’-フルオロ-ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、テレフタロイルクロリド及びイソフタロイルクロリドのうちのいずれか1種又は複数種である。
【0007】
本発明では、特定の圧力でポリエーテルエーテルケトンを製造することにより、反応時間を短縮し、反応温度を低下させ、製造に必要なエネルギー及びコストを低減するとともに、衝撃強度が高く、色がより明るくて白いポリエーテルエーテルケトン製品を製造することができる。
【0008】
上述した製造方法では、0.15MPa~1.0MPaは、そのうちの任意の数値、全ての範囲、及び任意の部分範囲を含む。例えば、0.2MPa~1.0MPa、0.2MPa~0.8MPa、0.2MPa~0.5MPa、0.5MPa~1.0MPa、0.5MPa~0.8MPa、0.8MPa~1.0MPa、0.15MPa~0.8MPa、0.15MPa~0.5MPa、0.15MPa~0.2MPa、0.15MPa、0.2MPa、0.5MPa、0.8MPa、1.0MPaを含むが、これらに限られない。
【0009】
上述した製造方法では、求核重縮合反応の温度は、140℃~260℃であってもよく、その時間は、1.5~2.5時間であってもよく、温度と時間は、そのうちの任意の数値、全ての範囲、及び任意の部分範囲を含む。例えば、まず、150~170℃(例えば、160℃)で20~30分間(例えば、20分間、25分間又は30分間)反応させた後、180~210℃(例えば、180~200℃、190℃、200℃又は180℃)で20~30分間(例えば、20分間、25分間又は30分間)反応させ、最後に225~260℃(例えば、225~260℃、225℃、240℃、250℃又は260℃)でシステムの粘度が410Pa・sに達するまで(例えば、55~90分間、80分間、90分間、93分間、70分間又は55分間)反応させることを含むが、これらに限られない。
【0010】
上述した製造方法では、第2の重合性モノマーと第1の重合性モノマーとのモル比は、(1.0~1.1):1であってもよく、具体的には、1.043:1であってもよい。
【0011】
上述した製造方法では、アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムであってもよい。
【0012】
上述した製造方法では、アルカリ金属炭酸塩と第2の重合性モノマーとのモル比は、(1.0~1.5):1であってもよく、具体的には、1.0:1であってもよい。
【0013】
上述した製造方法では、不活性非プロトン性溶媒は、スルホラン、ジフェニルスルホン、グリセリン、ジメチルアセトアミド及びメチルピロリドンのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0014】
上述した製造方法では、不活性雰囲気は、具体的には、窒素ガス雰囲気であってもよい。
【0015】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、上記いずれか1つに記載の製造方法で製造されたポリエーテルエーテルケトンを更に提供する。
【0016】
本発明に係るポリエーテルエーテルケトンの性能は、以下の条件を満たし、
IS×L*≧310、好ましくは330である (1)
式(1)において、ISは、アイゾット衝撃強度を表し、単位はkJm-2であり、L*は、色度値を表す。
【0017】
本発明のポリエーテルエーテルケトンは、機械的特性及び色度において、いずれも明らかに改善されている。
【0018】
更に、ポリエーテルエーテルケトンのアイゾット衝撃強度は、5.5~9kJm-2であってもよく、例えば、5.7kJm-2、6.0kJm-2、7.3kJm-2、8.0kJm-2又は8.5kJm-2であり、ポリエーテルエーテルケトンの色度値L*は、60~90であってもよく、例えば、80~90である。
【0019】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、上記ポリエーテルエーテルケトンのウェハキャリア又は電子絶縁膜の製造における使用を更に提供する。
【0020】
本発明では、製造されたポリアリールエーテルケトンポリマーを射出成形機で標準試験用サンプルに射出成形した後、QJL衝撃試験機を用いて、ISO179/leAに準拠してサンプルのシャルピー衝撃強度を検出し、ISO180/Aに準拠してサンプルのアイゾット衝撃強度を検出し、得られた衝撃強度の結果は、それぞれCIS及びIISであり、サンプルの色度について、色度計を用いて、DIN EN ISO 11664-3-2013に準拠してサンプルの色度値を試験し、サンプルの色度値L*を得る。
【0021】
[発明の効果]
本発明は、反応過程において加圧方式を用いて反応温度を低下させて反応時間を短縮するとともに、加圧過程において化学反応動力学の面で反応の正方向への反応速度を加速することにより、本来活性の低いアルカリ金属炭酸塩の反応における反応活性を増大させ、生成したフェノキシドをビスハロゲン化ベンゾフェノンと迅速に反応させ、フェノキシドの長時間の滞留による生成物の変色を回避するとともに、加圧後に反応温度が低下し、反応温度が高過ぎることによるその中の不純物が架橋して変色することがなく、生成したポリマーの色を改善し、生成したポリマーの力学特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るポリエーテルエーテルケトンの製造方法は、
不活性雰囲気において、0.15MPa~1.0MPaの圧力で、第1の重合性モノマーと第2の重合性モノマーとを、アルカリ金属炭酸塩の存在下で不活性非プロトン性溶媒中に求核重縮合反応させて、ポリエーテルエーテルケトンを得るステップを含み、
第1の重合性モノマーが、ハイドロキノン、ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,3-ビス-(p-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス-(p-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、α-ナフトール、及びβ-ナフトールのうちのいずれか1種又は複数種であり、
第2の重合性モノマーが、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、2,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4-フルオロ-4’-クロロ-ベンゾフェノン、2-フルオロ-4’-クロロ-ベンゾフェノン、2-クロロ-4’-フルオロ-ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、テレフタロイルクロリド及びイソフタロイルクロリドのうちのいずれか1種又は複数種である。
【0023】
以下、ハイドロキノン及び4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを例として、本発明を詳細に説明する。以下、具体的な実施形態を参照して本発明を更に詳細に説明するが、示される実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。以下に提供される実施例は、当業者が更なる改良を行うためのガイドとすることができ、決して本発明を限定するものではない。
【0024】
以下の実施例における実験方法は、特に説明しない限り、いずれも通常の方法であり、本分野の文献に記載された技術又は条件に従って、又は製品の明細書に従って行われる。以下の実施例に使用される材料、試薬などは、特に説明しない限り、いずれも商業的に入手可能である。
【0025】
実施例1:
フランジ式機械撹拌高圧反応釜内に、530.54gのジフェニルスルホン、110.10gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、60.71gの炭酸ナトリウム、53.22gのハイドロキノンを加えて、高純度窒素ガスを導入し、3回繰り返した後、システム内の空気を完全に窒素ガスに置換し、そして加圧を開始して0.2MPaにし、溶融するまで加熱し、撹拌を開始して100rpm/min(分)にし、160℃まで昇温して30分間反応させ、200℃まで加熱し続けて30分間反応させ、260℃まで昇温させ、反応システムの粘度が410Pa・sに達するまで定温で反応させ、粘度によって反応プロセスをモニターし、粘度が検出値に達し、分子の重合度が要件に達する。この時点の反応時間は、90分間であり、材料を冷たい蒸留水に入れて、白色塊状物を得て、粉砕機で白色塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応により生成した無機塩を除去し、白色粉末を得て、小型射出成形機で標準サンプルを製造し、色度値及び衝撃強度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0026】
実施例2:
フランジ式機械撹拌高圧反応釜内に、780.63gのジフェニルスルホン、176.16gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、97.13gの炭酸ナトリウム、85.15gのハイドロキノンを加えて、高純度窒素ガスを導入し、3回繰り返した後、システム内の空気を完全に窒素ガスに置換し、そして加圧を開始して0.5MPaにし、溶融するまで加熱し、撹拌を開始して100rpm/minにし、160℃まで昇温して30分間反応させ、200℃まで加熱し続けて30分間反応させ、250℃まで昇温させ、反応システムの粘度が410Pa・sに達するまで定温で反応させ、この時点の反応時間は、80分間であり、材料を冷たい蒸留水に入れて、白色塊状物を得て、粉砕機で白色塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応により生成した無機塩を除去し、白色粉末を得て、小型射出成形機で標準サンプルを製造し、色度値及び衝撃強度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0027】
実施例3:
フランジ式機械撹拌高圧反応釜内に、860.32gのジフェニルスルホン、198.20gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、109.28gの炭酸ナトリウム、95.80gのハイドロキノンを加えて、高純度窒素ガスを導入し、3回繰り返した後、システム内の空気を完全に窒素ガスに置換し、そして加圧を開始して0.8MPaにし、溶融するまで加熱し、撹拌を開始して100rpm/minにし、160℃まで昇温して20分間反応させ、190℃まで加熱し続けて20分間反応させ、240℃まで昇温させ、反応システムの粘度が410Pa・sに達するまで定温で反応させ、この時点の反応時間は、70分間であり、材料を冷たい蒸留水に入れて、白色塊状物を得て、粉砕機で白色塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応により生成した無機塩を除去し、白色粉末を得て、小型射出成形機で標準サンプルを製造し、色度値及び衝撃強度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0028】
実施例4:
フランジ式機械撹拌高圧反応釜内に、500gのジフェニルスルホン、90.28gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、49.78gの炭酸ナトリウム、43.64gのハイドロキノンを加えて、高純度窒素ガスを導入し、3回繰り返した後、システム内の空気を完全に窒素ガスに置換し、そして加圧を開始して1.0MPaにし、溶融するまで加熱し、撹拌を開始して100rpm/minにし、160℃まで昇温して20分間反応させ、180℃まで加熱し続けて20分間反応させ、225℃まで昇温させ、反応システムの粘度が410Pa・sに達するまで定温で反応させ、この時点の反応時間は、55分間であり、材料を冷たい蒸留水に入れて、白色塊状物を得て、粉砕機で白色塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応により生成した無機塩を除去し、白色粉末を得て、小型射出成形機で標準サンプルを製造し、色度値及び衝撃強度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0029】
実施例5:
フランジ式機械撹拌高圧反応釜内に、583.58gのジフェニルスルホン、121.09gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、66.77gの炭酸ナトリウム、58.542gのハイドロキノンを加えて、高純度窒素ガスを導入し、3回繰り返した後、システム内の空気を完全に窒素ガスに置換し、そして加圧を開始して0.15MPaにし、溶融するまで加熱し、撹拌を開始して100rpm/minにし、160℃まで昇温して30分間反応させ、200℃まで加熱し続けて30分間反応させ、260℃まで昇温させ、反応システムの粘度が410Pa・sに達するまで定温で反応させ、粘度によって反応プロセスをモニターし、粘度が検出値に達し、分子の重合度が要件に達する。この時点の反応時間は、93分間であり、材料を冷たい蒸留水に入れて、白色塊状物を得て、粉砕機で白色塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応により生成した無機塩を除去し、白色粉末を得て、小型射出成形機で標準サンプルを製造し、色度値及び衝撃強度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0030】
比較例1:
フランジ式機械撹拌高圧反応釜内に、600gのジフェニルスルホン、99.10gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、54.64gの炭酸ナトリウム、47.90gのハイドロキノンを加えて、高純度窒素ガスを導入し、3回繰り返した後、システム内の空気を完全に窒素ガスに置換し、常圧条件下で、溶融するまで加熱し、撹拌を開始して100rpm/minにし、200℃まで昇温して40分間定温に維持し、280℃まで加熱し続けて1h(時間)定温に維持し、305℃まで昇温させ、定温で2h反応させ、材料を冷たい蒸留水に入れて、灰白色塊状物を得て、粉砕機で塊状物を粉砕し、エタノールで5~6回洗浄して溶媒のジフェニルスルホンを除去し、蒸留水で5~6回洗浄して反応により生成した無機塩を除去し、白色粉末を得て、小型射出成形機で標準サンプルを製造し、色度値及び衝撃強度を測定した。実験結果を表1に示す。
【0031】
上記実施例及び比較例により、重合反応中に加圧することにより、反応時間を短縮し、反応温度を低下させるとともに、ポリマーの性能を向上させることができ、例えば、ポリマーの衝撃強度が常圧で生成したポリマーの衝撃強度よりも向上するとともに、ポリマーの色がより明るくて白くなることを見出した。本発明者らは、衝撃強度(IS)と色度値L*との積が特定の範囲内であること、即ち、衝撃強度(IS)×(L*)≧310であることを見出した。
【0032】
以上、本発明について詳述した。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、また、不必要な実験を行うことなく、同じパラメータ、濃度及び条件下で、広い範囲で本発明を実施することができる。本発明は、特定の実施例を提供したが、本発明を更に改良することができることを理解されたい。要するに、本発明の原理に基づいて、本願は、本願に開示された範囲を超えて、本分野において既知の従来技術で行われる改良を含む、任意の変更、用途、又は本発明に対する改良を含むことを意図している。いくつかの基本的な特徴は、添付の特許請求の範囲で応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のポリエーテルエーテルケトンの製造方法は、反応時間を短縮し、反応温度を低下させ、製造に必要なエネルギー及びコストを低減するとともに、ポリマーの性能を向上させることができ、例えば、ポリマーの衝撃強度が常圧で生成したポリマーの衝撃強度よりも向上するとともに、ポリマーの色がより明るくて白くなる。
【国際調査報告】