(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】多層フィルム、カバー材、その使用及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240808BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240808BHJP
C09J 195/00 20060101ALI20240808BHJP
E04D 5/10 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B32B27/32 D
C09J7/29
C09J195/00
E04D5/10 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508504
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022072338
(87)【国際公開番号】W WO2023017028
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021120802.5
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102423
【氏名又は名称】ロパレックス ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Loparex Germany GmbH&Co.KG
【住所又は居所原語表記】Zweibrueckenstr. 15-25, D-91301 Forchheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マウザー マティアス
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AC10A
4F100AC10C
4F100AK01B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK46C
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4F100AL07B
4F100AL09B
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4J004AA04
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4J004FA04
4J040BA221
4J040JA09
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4J040LA11
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA12
4J040PA23
(57)【要約】
本発明は、非対称層配列を有する多層フィルム(100)であって、ポリプロピレンヘテロ相(ブロック)コポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層(110)と、ポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマー及び核剤を含む第2の層(130)と、の層を含み、カップリング剤を含む第3の層(120)が、第1の層(110)と第2の層(130)との間に配置される、多層フィルム(100)に関する。本発明はまた、多層フィルムを含むカバー材料、フィルムの製造方法、ならびに多層フィルム及びカバー材の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称層配列を有する多層フィルム(100)であって、
ポリプロピレンヘテロ相(ブロック)コポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層(110)と、
ポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマー及び核剤を含む第2の層(130)と、の層を含み、
カップリング剤を含む第3の層(120)が、前記第1の層(110)と前記第2の層(130)との間に配置される、前記多層フィルム(100)。
【請求項2】
前記核剤は、好ましくは金属酸化物、金属塩、ケイ酸塩及び窒化ホウ素ならびにそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤、好ましくはタルク、合成シリカ、カオリン及びそれらの混合物からなる群から選択される充填剤及び強化剤、着色剤、顔料またはそれらの混合物、特に好ましくはタルクである、請求項1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項3】
前記核剤は、ISO13317-3:2001(「重力液体沈降法による粒度分布の測定-パート3:X線重力法」)に準拠して、重力液体沈降法によって測定され、50%の蓄積度が0.5~5μm、好ましくは0.5~4μm、より好ましくは1~3μm、特に1.5~2.5μmである、平均粒径(D50)を有する、請求項1または請求項2に記載の多層フィルム(100)。
【請求項4】
前記核剤が、前記第2の層(130)中に、0.1~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%、特に0.1~1重量%の濃度で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項5】
前記多層フィルムは、前記第1の層(110)、前記第2の層(130)、及び前記第3の層(120)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項6】
前記第2の層(130)が、ポリアミドホモポリマーを含む層からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項7】
前記第2の層(130)が、複数の層からなり、ポリアミドホモポリマー、好ましくはポリアミド6の個別の層を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項8】
前記第2の層(130)の全層中のポリアミドの総量に対するポリアミドホモポリマー、好ましくはポリアミド6の量が、最大65重量%である、請求項7に記載の多層フィルム(100)。
【請求項9】
前記第1の層(110)、前記第2の層(130)及び前記第3の層(120)の総厚に対する前記第2の層(130)の厚さが、20%~75%、好ましくは30%~70%、特に好ましくは45%~68%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項10】
前記多層フィルム(100)の総厚が、40μm~140μm、好ましくは50μm~130μm、より好ましくは55μm~120μmである、請求項1~9のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項11】
前記多層フィルム(100)の引裂強度が、ASTM1970に準拠して、110Nより大きい、請求項1~10のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項12】
マシン方向(md)対前記マシン方向に対する横方向(cd)の破断時の破断力の比が、ASTM1970に準拠して、1.1未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)。
【請求項13】
前記第1の層(110)、前記第2の層(130)、及び前記第3の層(120)が、共押出しされる、請求項1~12のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)と、接着剤組成物(140)とを含む、カバー材(200)。
【請求項15】
前記接着剤組成物(140)が、ビチューメンまたは自己接着性防水組成物である、請求項14に記載のカバー材(200)。
【請求項16】
前記接着剤組成物(140)が、前記第2の層(130)に被着される、請求項14または請求項15に記載のカバー材(200)。
【請求項17】
カバー材(200)または接着テープを製造するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の多層フィルム(100)の使用。
【請求項18】
屋根ふき用、外装材用、建築物または建築物の一部を覆うカバー用、あるいはパイプを覆うカバー用の建築材料としての、請求項14~16のいずれか1項に記載のカバー材(200)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、多層フィルムを含むカバー材(防水材、シール材とも称される)、ならびに多層フィルム及びカバー材の製造方法及び使用方法に関する。
【0002】
先行技術から、広範囲の技術用途に適した多数の多層フィルムが知られている。
【0003】
しかし、これらの技術用途の一部では、この目的に使用される多層フィルムが、非常に特殊な機械的特性及び特殊なバリア特性の組み合わせを特徴とすることが有利である。このことは、特に、カバー膜、とりわけビチューメンカバー膜の製造に使用される多層フィルムに当てはまる。このようなビチューメンカバー膜は、例えば、屋根ふき材に使用される。ASTM1970規格の「急勾配屋根の下敷きとして使用されるアイスダム保護用の自己接着性ポリマー改質瀝青シート材料の標準仕様」セクションは、ここでは米国及びカナダに関連する。
【0004】
多層フィルムを含むそのようなカバー膜は、技術水準において既に知られている。
【0005】
しかしながら、多層フィルムを用いて製造されたこれらのカバー膜の欠点は、油、特に鉱油に対して十分なバリア効果を有しないことが多いことである。このような油は、特にビチューメン化合物の成分である。ビチューメン化合物から多層フィルム中へのこれらの油の移動は、ビチューメン化合物を乾燥させるだけでなく、多層フィルムの接着性を低下させるので、時間と共にビチューメン化合物から剥離する。
【0006】
さらに、カバー膜の製造のために先行技術で使用される多層フィルムは、不十分な引裂強度、皺発生、不十分な引裂伝播特性及び不十分な耐穿刺性などの不十分な機械的特性を特徴とすることが多い。しかしながら、屋根ふき材用の防水膜などの多層フィルムを含む防水膜では、歩行者交通、建築材料の保管及び移動、ならびに天候の影響に起因する高い機械的負荷にさらされるので、多層フィルムに高い機械的要求が課される。
【0007】
DE10201712004A1は、層(a)及び層(c)であって、それぞれが、少なくとも15重量%の量の少なくとも1種のプロピレンコポリマーと、少なくとも40重量%の量の少なくとも1種のプロピレンポリマーとをベースとし、それぞれが、それぞれ層(a)及び(c)の総重量に基づく、層(a)及び層(c)と、ポリアミド成分としてイソホロンジアミン単位を有する少なくとも1種のホモポリアミド及び/またはコポリアミドをベースとする少なくとも1つの多層内側層(b)と、接着促進剤層(d)及び(e)とを含む多層フィルムであって、多層層(b)の厚さは、多層フィルムの総厚の少なくとも50%である、多層フィルムに関する。
【0008】
DE102009057862A1は、層(a)及び層(c)であって、それぞれが少なくとも30重量%の量の少なくとも1種のプロピレンコポリマーと、少なくとも20重量%の量の少なくとも1種のプロピレンホモポリマーとをベースとし、各場合において、それぞれ層(a)及び(c)の総重量に基づき、これらのポリマー成分がいつでも100重量%まで増加する、層(a)及び(c)と、ポリアミド成分としてイソホロンジアミン単位を有する少なくとも1種のホモポリアミド及び/またはコポリアミドをベースとする少なくとも1つの内側層(b)とを含む多層フィルムであって、各場合において、1つの接着促進剤層(d)または(e)が、層(a)と(b)との間または(b)と(c)との間に配置され、各場合において、少なくとも1つの変性熱可塑性オレフィンのホモポリマーまたはコポリマーをベースとする多層フィルム、このような多層フィルムを含む防水シート、ならびに屋根ふきのためのその使用に関する。
【0009】
これまでに作製された5層バリアフィルムは、機械的要件を満たすのに必要な厚さになりがちであり、最終製品には深刻な皺発生を被る。このような皺は、製造された防水膜及び接着テープに漏れを引き起こし、したがって、製品破損と言えるほどに製品の機能性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
EP3074228B1は、同じ構造及び同じ用途の3層フィルムを記載している。しかしながら、明細書と同様に、または詳細の欠落に起因して、EP3074228B1は、このように表現することはできず、生産のための本質的な点(核剤または水浴)が欠落している。このような製品は、片側、おそらくポリプロピレン側に独立して巻き上がる。
【0011】
EP3074228B1は、別の5層フィルムを記載するが、異なるポリプロピレン外層を有する。
【0012】
したがって、油に対する非常に良好なバリア特性と、非常に良好な機械的安定性との両方を特徴とする多層フィルムが必要とされている。
【0013】
したがって、本発明の目的は、公知の多層フィルムと比較して、油に対する非常に良好なバリア効果、ならびに改善された耐引裂性、耐穿刺性、低い皺発生、及び良好な引裂強度などの改善された機械的特性を特徴とする多層フィルムを提供することであった。
【0014】
他の目的は、このような多層フィルムを含むカバー材を提供することにある。更に別の課題は、多層フィルム及びカバー材の製造のための方法及びそれらの使用を提供することである。
【0015】
上記の課題は、請求項1に記載の多層フィルム、請求項13に記載の多層フィルムの製造方法、請求項14に記載のカバー材、請求項17に記載の多層フィルムの使用、及び請求項18に記載のカバー材の使用を提供することによって解決される。
【0016】
本発明の第1の態様では、非対称層配列を有する多層フィルムであって、
-ポリプロピレンヘテロ相(ブロック)コポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層と、
-ポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマー、及び核剤を含む第2の層と、の層を含み、
接着促進剤を含む第3の層は、第1の層と第2の層との間に配置される、多層フィルムが提供される。好ましくは、本多層フィルムは、第1の層、第2の層及び第3の層を含み、したがって第1の層(外側層)、第2の層(外側層)、及び第3の層(中間層)を含む3層フィルムである。本発明によれば、層は、単層または複数の同様の層を含み得る。
【0017】
いかなる特定の理論にも固執することなく、結晶子形成のための核剤として核剤を添加することは、均質で粒子の細かい結晶子構造に有利であると想定される。さらに、そのような結晶子構造は、寸法的に安定なプラスチック製品に有利に働き、特にカールが非常に少ないか、または全くないことが想定される。
【0018】
好ましくは、核剤は、好ましくは金属酸化物、金属塩、ケイ酸塩及び窒化ホウ素ならびにそれらの混合物からなる群から選択される無機充填剤、好ましくはタルク、合成シリカ、カオリン及びそれらの混合物からなる群から選択される充填剤及び強化剤、着色剤、顔料またはそれらの混合物である。特に、核剤は、タルクであることが好ましい。
【0019】
好ましくは、核剤は、ISO13317-3:2001(「重力液体沈降法による粒度分布の測定-パート3:X線重力法」)に準拠して、重力液体沈降法によって測定され、50%の蓄積度が0.5~5μm、好ましくは0.5~4μm、より好ましくは1~3μm、特に1.5~2.5μmである、平均粒径(D50)を有する。
【0020】
好ましくは、核剤は、0.1~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%、特に0.1~1重量%の濃度で第2の層(130)中に存在する。
【0021】
驚いたことに、本発明に係る多層フィルムは、従来公知の5層バリアフィルムと比較して、最終製品に皺が寄る傾向が低い。したがって、本発明による多層フィルムは、高度の不透過性を示すとともに、それを長期間にわたって保持するカバー膜及び接着テープを製造するのに使用することができる。この効果は、とりわけ、本発明によるフィルムが、ASTM1970の機械的要件に準拠しているにもかかわらず、比較的薄く製造することができ、したがってフィルムの内部巻き取りに抵抗する圧縮性を有するという事実に基づく。
【0022】
また、本発明に係る層配列ポリアミド/接着促進剤/ポリプロピレンを含む本発明に係る多層フィルムは、ポリアミド側に接着剤組成物で直接コーティングすることができる。ポリプロピレンのコーティングと比較して、ポリアミドの直接コーティングは、ポリアミドがはるかに高い耐熱性を持つため、皺発生などの熱によって誘発される材料変化の発生が少ないという利点を有する。加えて、ポリアミドとブチル/ビチューメン接着化合物との間の複合接着は、そのような接着系に対するポリプロピレンまたはHDPEの複合接着と、少なくとも同等であるか、またはより良好であり、フィルム及び各接着系の層間剥離を防ぐのに役立つ。
【0023】
また、本発明に係る多層フィルムによれば、ポリアミド側を接着性化合物でコーティングした場合に、ビチューメン系またはブチル系接着性化合物からの粘着付与剤または油の移動を大幅に回避することができる。したがって、ヘテロ相ポリプロピレン(ブロック)コポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層の膨潤作用及び/または脱結晶化も回避できる。したがって、先行技術と比較して、フィルムのいわゆる「カール効果」をもたらし、最終的に接着剤組成物からのフィルムの剥離、または基材からのフィルム接着剤ラミネートの剥離を引き起こす、バイメタル効果が回避される。
【0024】
最後に、ポリアミド側に接着剤をコーティングした場合、特にビチューメン系接着剤を用いた場合、本発明による多層フィルムは、油と光との組み合わせによって生じる化学反応による、接着剤に面する接着促進剤層の破損から、十分に保護される。
【0025】
本発明によれば、第1の層は、任意の割合のヘテロ相ポリプロピレン(ブロック)コポリマー及びポリプロピレンホモポリマーを含む。
【0026】
好ましくは、第1の層は、少なくとも40重量%、特に50~90重量%の範囲のホモポリプロピレンを含有する。これにより、多層フィルムの機械的強度及び耐熱性がさらに向上する。
【0027】
第2の層は、任意の割合のポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマーを含み得る。
【0028】
ホモポリアミドは、コポリアミドとは異なり、単一繰り返し単位によって記述され得る。ホモポリアミド及び/またはコポリアミドは、熱可塑性脂肪族、部分芳香族及び芳香族のホモポリアミドまたはコポリアミドを含む群から選択することができる。これらのホモポリアミド及びコポリアミドは、2~10個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、特にヘキサメチレンジアミン及び/またはイソホロンジアミン、ならびに6~10個の炭素原子を有する芳香族ジアミン、特にp-フェニルジアミンなどのジアミン、ならびにジカルボン酸、6~14個の炭素原子を有する脂肪族及び芳香族のジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸またはイソテレフタル酸、及びラクタム、例えばε-カプロラクタムから選択することができる。例えば、ポリアミドとして、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6I、ポリアミド6T、それらのポリアミド6/IPDIコポリマー、または少なくとも2種のポリアミドの混合物を用いることができる。
【0029】
ホモポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含むことが好ましい。ホモポリアミドは、これらの化合物の少なくとも80重量%または全て、特にε-カプロラクタムに遡ることができるポリアミド6を含むことができる。
【0030】
コポリアミドは、好ましくは、イソホロンジアミン単位を含むコポリアミドである。このようなコポリアミドの例は、ポリアミド6/IPDIである。これは、イソフタル酸(I)と共にIPDI中に存在するイソホロンジアミン単位(IPD)を1~10重量%、特に1.8~7重量%含むことができる。イソホロンジアミン(3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン)及びイソフタル酸(1,3-ベンゾジカルボン酸)中の官能基の1,3配置は、非晶質ポリアミドをもたらす。これにより、高結晶度を有するポリアミドよりも高い引裂強度及び靭性が得られる。
【0031】
一実施形態では、第2の層は、ポリアミドコポリマーを含む層を含む。
【0032】
一実施形態では、第2の層は複数の層を含み、個々の層はホモポリアミド、好ましくはポリアミド6を含む。好ましくは、第2の層(130)の全層中のポリアミドの総量に対するホモポリアミド、好ましくはポリアミド6の量は、最大65重量%、好ましくは1~49重量%、より好ましくは1~25重量%、より好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~10重量%、より好ましくは3~9重量%である。
【0033】
本発明によれば、本発明による多層は、第1の層と第2の層との間に配置され、カップリング剤を含む第3の層を含む。接着促進剤は、熱可塑性ポリマー、有機酸、有機酸無水物、ならびにそれらの混合物及び化合物からなる群から選択される材料を含むか、またはそれらからなる。有機酸または酸無水物は、特に、カルボン酸及びカルボン酸無水物から選択される。例えば、接着促進剤は、変性熱可塑性ポリマー、特に、変性されたポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマー、例えば、変性されたプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、エチレンホモポリマー、少なくとも1種の有機酸または有機酸無水物、例えば、無水マレイン酸で変性されたエチレンビニルアルコールコポリマーまたはエチレンビニルコアセテートポリマーであってもよい。
【0034】
好ましくは、カップリング剤は、無水マレイン酸グラフト化ホモポリプロピレンをベースとするカップリング剤である。接着促進剤層はまた、少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%で、または完全に構成され得る。
【0035】
加えて、第1の層、第2の層、及び第3の層は、必要に応じて、それぞれ独立して選択された添加物を含み得る。これらの添加物は、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、帯電防止剤、抗菌剤、光安定剤、UV吸収剤、UVフィルター、染料、着色顔料、安定剤、特に熱安定剤、プロセス安定剤、及びUV及び/または光安定剤を含む群から選択することができ、好ましくは、少なくとも1つの立体障害アミン(HALS)、プロセス助剤、難燃剤、核剤、結晶化剤、特に結晶核形成剤、潤滑剤、蛍光増白剤、柔軟剤、シール剤、可塑剤、シラン、スペーサー、充填剤、剥離添加剤、ワックス、湿潤剤、表面活性化合物、好ましくは界面活性剤、分散剤及びこれらの組み合わせに基づく。
【0036】
第1の層、第2の層及び第3の層は、それぞれ独立して、0.01~30重量%、特に0.1~20重量%の上記の添加物の1種類以上を含有し得る。例えば、第1の層は、5~20重量%、特に5~15重量%、例えば5重量%の染料を含有し得る。第1の外層が、例えば0.5~10重量%、特に1~7重量%、例えば5重量%の範囲のUV安定剤も含有する場合、多層フィルムを保護するのにも有利である。
【0037】
好ましくは、第1の層、第2の層及び第3の層の総厚に対する第2の層の厚さは、20%~75%、好ましくは30%~70%、より好ましくは45%~68%である。
【0038】
好ましくは、多層フィルムの総厚は、40μm~140μm、好ましくは50μm~130μm、より好ましくは55μm~120μmである。
【0039】
好ましくは、多層膜の引裂強度は、ASTM1970/ASTMD2523に準拠して、110Nより大きい。ASTM1970は、達成すべき特性を規定し、一方、ASTMD2523は、「屋根ふき用の膜の荷重-歪み特性を試験するための標準的技法」のセクションの下で使用される測定方法、試験用標本等を記載する。
【0040】
本発明の第2の態様では、第1の態様に係る本発明の多層フィルムの製造方法が提供される。
【0041】
本発明によれば、少なくとも第1の層、第2の層、及び中間に配置された第3の層が、共押出によって1つのプロセスステップで製造される。このプロセスで多層フィルムが形成される。
【0042】
共押出は、特にインフレーションフィルム共押出の形態で行うことができる。このプロセス及びそれに適した装置は当業者に知られている。したがって、本出願による多層フィルムは、好ましくは、いわゆるインフレーションフィルム、特に3層インフレーションフィルムである。
【0043】
多層フィルムが、接着剤層を含み、任意選択で保護層または保護フィルムも含む限りにおいて、これらの層は、共押出後の少なくとも1つの更なるプロセスステップで製造することができる。
【0044】
この方法は、本出願による少なくとも1つの実施形態による多層フィルムを製造するために使用され得る。したがって、上記の説明は、製造プロセスにも適用される。
【0045】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様に係る多層フィルム(100)と、接着剤組成物とを含むカバー材が提供される。好ましくは、粘着性組成物は、ビチューメンまたは自己接着性シール組成物である。好ましくは、粘着性組成物は、第2の層に被着される。
【0046】
本発明の第4の態様では、第1の態様に係る多層フィルムの使用が、コーティング、カバー材または接着テープの製造に提供される。
【0047】
本発明の第5の態様では、第3の態様に係る防水材の使用が、屋根ふき用、外装用、建築物または建築物の一部を覆うカバー用、あるいはパイプを覆うカバー用の建築材料として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明による、非対称層配列を有する多層フィルム(100)であって、ポリプロピレンコポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層(110)と、ポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマーを含む第2の層(130)と、を含み、第1の層(110)と第2の層(130)との間に、接着促進剤を含む第3の層(120)がある、多層フィルム(100)を示す。
【
図2】
図1に示す多層フィルム(100)と、第2の層に配置された粘着性組成物(140)とを含むカバー材(200)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本出願に係る少なくとも1つの実施形態に係る多層フィルム100を通る概略断面図を示す。多層フィルム100は、第1の層110と、第2の層130と、中間層120とを有する。中間層120は、接着促進剤層である。好ましい実施形態では、多層フィルムは、第1の外層110、第2の外層130、及び中間層120を含む3層フィルムである。
【0050】
多層フィルム100は、40~140μm、好ましくは50~130μm、特に55~120μmの総厚を有してもよい。第1の層110は、5~50μm、特に10~30μmの層厚さを有することができる。接着促進剤を含む第3の層は、1~30μm、特に2~20μmの層厚を有することができる。第2の層130は、5~100μm、好ましくは10~80μm、特に20~80μmの層厚を有することができる。
【0051】
第1の層110は、例えば40~60重量%のホモポリプロピレン、及び例えば15~30重量%のポリプロピレンヘテロ相(ブロック)コポリマー(エチレン含有量7~9重量%)を含む。
【0052】
第2の層130は、少なくとも30重量%のコポリアミド、例えば80~100重量%のコポリアミドを含む。具体的には、コポリアミドは、ポリアミド6/IPDIなどのイソホロンジアミン単位を含み得る。接着促進剤層120は、無水マレイン酸で変性またはグラフト化されたポリプロピレンポリマーを含んでもよい。
【0053】
図1に示すフィルムは、例えば、いわゆるインフレーションフィルム、例えば、3層インフレーションフィルムであってもよい。第2の層(外層)130の第3の層(中間層)120と反対側の面には、接着剤層、及び必要に応じて、保護層または保護フィルムが被着され得る(図示せず)。
【0054】
図2は、少なくとも1つの実施形態に係るシール材200の概略断面図を示す。カバー材200は、例えば
図1について説明したような多層フィルム100を含む。多層フィルム100は、例えば、ビチューメンを含むかまたはそれからなる接着剤組成物140に積層される。
図2に示されるカバー材200は、表面コーティングまたは表面フィルムとして多層フィルム100を備えた、例えば、カバー膜、特に瀝青カバー膜として具現化され得、建築物の屋根または他の部分を防水またはカバーするのに適し得る。
【0055】
この点に関して、多層フィルム100は、不透水性材料70を有害なガス、例えば大気酸素から保護し、特に防水材の設置中にオイルバリアとして作用する。
【0056】
実施例
実施例では、以下の表1に列挙される略号が使用される。
【表1】
【0057】
本実施例では、3層フィルムを、層110、120及び130から、インフレーションフィルム共押出によって製造した。層は、以下の組成を有した。
【0058】
【0059】
【0060】
比較実施例
比較実施例では、5層フィルムを、連続する層1~5からインフレーションフィルム共押出によって製造した。層は、以下の組成を有した。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
スライドの評価
ASTM1970に従って、フィルムの破断時の引裂強度を試験した。
【表9】
ビチューメンI及びビチューメンIIは、異なる製造業者からのビチューメン塊である
【表10】
【符号の説明】
【0067】
110 ヘテロ相ポリプロピレン(ブロック)コポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層
120 接着促進剤を含む第3の層(120)
130 ポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマーを含む第2の層(130)
140 粘着性塊
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称層配列を有する多層フィルム(100)であって、
ポリプロピレンヘテロ相(ブロック)コポリマー及び/またはポリプロピレンホモポリマーを含む第1の層(110)と、
ポリアミドコポリマー及び/またはポリアミドホモポリマー及び核剤を含む第2の層(130)と、の層を含み、
カップリング剤を含む第3の層(120)が、前記第1の層(110)と前記第2の層(130)との間に配置される、前記多層フィルム(100)。
【請求項2】
前記核剤は
、無機充填剤
、充填剤及び強化剤、着色剤、顔料またはそれらの混合
物である、請求項1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項3】
前記核剤は、ISO13317-3:2001(「重力液体沈降法による粒度分布の測定-パート3:X線重力法」)に準拠して、重力液体沈降法によって測定され、50%の蓄積度が0.5~5μ
mである、平均粒径(D50)を有する、請求項1または請求項2に記載の多層フィルム(100)。
【請求項4】
前記核剤が、前記第2の層(130)中に、0.1~5重量
%の濃度で存在する、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項5】
前記多層フィルムは、前記第1の層(110)、前記第2の層(130)、及び前記第3の層(120)を含む、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項6】
前記第2の層(130)が、ポリアミドホモポリマーを含む層からなる、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項7】
前記第2の層(130)が、複数の層からなり、ポリアミドホモポリマ
ーの個別の層を含む、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項8】
前記第2の層(130)の全層中のポリアミドの総量に対するポリアミドホモポリマ
ーの量が、最大65重量%である、請求項7に記載の多層フィルム(100)。
【請求項9】
前記第1の層(110)、前記第2の層(130)及び前記第3の層(120)の総厚に対する前記第2の層(130)の厚さが、20%~75
%である、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項10】
前記多層フィルム(100)の総厚が、40μm~140μ
mである、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項11】
前記多層フィルム(100)の引裂強度が、ASTM1970に準拠して、110Nより大きい、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項12】
マシン方向(md)対前記マシン方向に対する横方向(cd)の破断時の破断力の比が、ASTM1970に準拠して、1.1未満である、請求項
1に記載の多層フィルム(100)。
【請求項13】
前記第1の層(110)、前記第2の層(130)、及び前記第3の層(120)が、共押出しされる、請求項
1に記載の多層フィルム(100)の製造方法。
【請求項14】
請求項
1に記載の多層フィルム(100)と、接着剤組成物(140)とを含む、カバー材(200)。
【請求項15】
前記接着剤組成物(140)が、ビチューメンまたは自己接着性防水組成物である、請求項14に記載のカバー材(200)。
【請求項16】
前記接着剤組成物(140)が、前記第2の層(130)に被着される、請求項1
4に記載のカバー材(200)。
【請求項17】
カバー材(200)または接着テープを製造するための、請求項
1に記載の多層フィルム(100)の使用。
【請求項18】
屋根ふき用、外装材用、建築物または建築物の一部を覆うカバー用、あるいはパイプを覆うカバー用の建築材料としての、請求項1
4に記載のカバー材(200)の使用。
【国際調査報告】