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特表2024-5302202’-デオキシグアノシン、グアノシン及びその組成物の調製方法、並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】2’-デオキシグアノシン、グアノシン及びその組成物の調製方法、並びに使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20240808BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240808BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240808BHJP
   A01K 61/13 20170101ALI20240808BHJP
   C12P 19/40 20060101ALI20240808BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
A01N43/90 105
A01P3/00
A01P1/00
A01K61/13
C12P19/40
C12N1/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508795
(86)(22)【出願日】2023-05-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2023092819
(87)【国際公開番号】W WO2023217094
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】202210496024.5
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055621
【氏名又は名称】山東蓬勃生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG PENGBO BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,Beitianmen Street,High-Tech Zone,Tai’an,Shandong 271000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】孔 波
(72)【発明者】
【氏名】張 暁英
(72)【発明者】
【氏名】孫 健
(72)【発明者】
【氏名】王 洪鳳
(72)【発明者】
【氏名】向 亜美
(72)【発明者】
【氏名】趙 紅玲
(72)【発明者】
【氏名】耿 全政
(72)【発明者】
【氏名】陳 大印
【テーマコード(参考)】
2B104
4B064
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA22
2B104BA14
4B064AF34
4B064CA05
4B064CE02
4B064CE08
4B064CE10
4B064DA04
4B064DA12
4B065AA57X
4B065BD01
4B065BD14
4B065BD16
4B065CA19
4B065CA43
4B065CA47
4H011AA01
4H011AA04
4H011BB09
4H011BB21
(57)【要約】
本発明は、2’-デオキシグアノシン、グアノシン及びその組成物の調製方法、並びに使用を開示し、病原微生物の防除の技術分野に属し、具体的には、海水魚養殖における腸炎ビブリオ菌の抑制における2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの使用、抗植物ウイルスにおける2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの使用、並びに、植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量の向上における2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの使用であり、本発明は、2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含む組成物を提供し、また、パエシロミセス・バリオティSJ1菌体から2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを抽出する方法を提供し、本発明は、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンは、病原微生物を防除する作用、特に、顕著な抗植物ウイルス作用を有し、しかも、植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量を向上できることを見出した。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水魚養殖における腸炎ビブリオ菌の抑制における組成物の使用であって、
前記組成物の成分は、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む、ことを特徴とする使用。
【請求項2】
抗植物ウイルスにおける化合物の使用であって、
前記化合物は、グアノシン又は2’-デオキシグアノシンである、ことを特徴とする使用。
【請求項3】
抗植物ウイルスにおける組成物の使用であって、
前記組成物の成分は、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む、ことを特徴とする使用。
【請求項4】
前記2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記植物ウイルスは、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、キュウリモザイクウイルス、ジャガイモウイルスYである、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物の使用濃度が、150ng/mL以上である、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項7】
植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量の向上における化合物の使用であって、
前記化合物は、グアノシン又は2’-デオキシグアノシンである、ことを特徴とする使用。
【請求項8】
植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量の向上における組成物の使用であって、
前記組成物の成分は、グアノシンと、2’-デオキシグアノシンと、を含む、ことを特徴とする使用。
【請求項9】
成分として2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含み、前記2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である、ことを特徴とする抗植物ウイルス組成物。
【請求項10】
パエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1菌体から2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを抽出する方法であって、
寄托番号がCGMCC No.10114のパエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1の菌体を調製し、菌体を粉砕して、使用に備えるステップ(1)と、
ステップ(1)で粉砕された菌体と体積分率10~50%のエタノール溶液と、を、1:(1~10)g/mLの質量体積比で混合し、超音波処理した後、固液分離し、液体部分をパエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1菌体の抽出物とするステップ(2)と、
ステップ(2)で調製された抽出物を、逆相HPLC半分取クロマトグラフィーにかけて、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを分離して調製するステップ(3)と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
ステップ(2)におけるエタノール溶液の体積分率は、20~35%であり、ステップ(2)における菌体とエタノール溶液との質量体積比が、1:(1~5)g/mLである、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(2)におけるエタノール溶液の体積分率は、28~32%である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原微生物の防除の技術分野に属し、具体的には、2’-デオキシグアノシン、グアノシン及びその組成物の調製方法、並びに使用である。
【0002】
本発明は、2022年5月9日に中国特許庁に提出され、出願番号が202210496024.5、発明の名称が「2’-デオキシグアノシン、グアノシン及びその組成物の調製方法、並びに使用」である中国特許出願の優先権を主張しており、そのすべての内容は引用により本発明に組み込まれており、本発明の一部となる。
【背景技術】
【0003】
植物ウイルス病は、「植物の癌」と呼ばれ、深刻な植物病害を引き起こし、農業生産に巨大な経済損失をもたらす。現在、植物ウイルス病の防除方法は、主に、例えば、種苗の無毒化、合理的な輪作、耐病性品種の選択などの農業的な防除、及び化学農薬による防除があり、よく見られる防除用農薬には、グアニジノ・酢酸銅、アミノオリゴサッカリン、レンチナン、モロキシジン塩酸塩などがある。実際の植物ウイルス病の防除において、依然として化学的な防除が主であるが、現在、植物ウイルス病をコントロールできる有効な化学農薬がまだなく、しかも、ウイルス耐性の向上や化学農薬の生態環境への汚染が注目されるにつれて、化学由来の抗ウイルス剤の開発は大きく制限されている。
【0004】
ヌクレオシド類物質は、生物体細胞の生命活動を維持する基本的な構成元素であり、プリン塩基やピリミジン塩基とリボースとがグリコシド結合を介して結合してできた小分子化合物であり、従来技術におけるヌクレオシド類物質の薬理活性に関する研究は、主にヒトのウイルス病や腫瘍の研究に重点を置いており、植物に作用する影響に関する報告は少ない。
【0005】
従来技術における2’-デオキシグアノシン及びグアノシンに関する研究は主に医療分野で行われている。2’-デオキシグアノシンは、オリゴデオキシヌクレオチドなど多くの抗ウイルス薬や抗腫瘍核酸薬を合成するための重要な原料として使用され、グアノシンはリバビリンやアシクロビルなどのヌクレオシド系抗ウイルス薬などの医薬品の中間体として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠点に対して、本発明は、2’-デオキシグアノシン、グアノシン及びその組成物の調製方法、並びに使用を提供する。
【0007】
2’-デオキシグアノシンは、2’-デオキシグアニンリボシドとも呼ばれ、
グアノシンは、グアニンリボシドとも呼ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様では、本発明は、海水魚養殖における腸炎ビブリオ菌(VP:Vibrio parahaemolyticus)の抑制における組成物の使用であって、前記組成物の成分が、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む、使用を提供する。
【0009】
本発明の第2態様では、本発明は、抗植物ウイルスにおける物質の使用であって、前記物質は、グアノシン又は2’-デオキシグアノシン、又はグアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む組成物である、使用を提供する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記植物ウイルスは、タバコモザイクウイルス(TMV:Tobacco mosaic virus)、ジャガイモウイルスX(PVX:potato virus X)、キュウリモザイクウイルス(CMV:Cucumber Mosaic Virus)、ジャガイモウイルスY(PVY:potato virus Y)である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記物質の使用濃度が、150ng/mL以上である。
【0012】
本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記物質の使用濃度が、150ng/mL~250ng/mLである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む組成物が抗植物ウイルスに適用される場合、前記2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、1:1である。
【0014】
本発明の第3態様では、本発明は、植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量の向上における物質の使用であって、前記物質が、グアノシン又は2’-デオキシグアノシン、又はグアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む組成物である、使用を提供する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、1:1である。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記組成物の使用濃度が、150ng/mL以上である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記組成物の使用濃度が、150ng/mL~250ng/mLである。
【0017】
本発明の第4態様では、本発明は、成分として2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含み、前記2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である、抗植物ウイルス組成物を提供する。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、1:1である。
【0018】
本発明の第5態様では、本発明は、パエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1菌体から2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを抽出する方法であって、
寄托番号がCGMCC No.10114のパエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1の菌体を調製し、菌体を粉砕して使用に備えるステップ(1)と、
ステップ(1)で粉砕された菌体と体積分率10~50%エタノール溶液とを1:(1~10)g/mLの質量体積比で混合し、超音波処理した後、固液分離し、液体部分をパエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1菌体の抽出物とするステップ(2)と、
ステップ(2)で調製された抽出物を、逆相HPLC半分取クロマトグラフィーにかけて、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを分離して調製するステップ(3)と、を含む、方法を提供する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ステップ(1)では、菌糸体の粉砕メッシュが、50~70メッシュである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ステップ(2)では、エタノール溶液の体積分率は、20~35%であり、ステップ(2)では、菌体とエタノール溶液との質量体積比は、1:(1~5)g/mLである。
【0021】
本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、ステップ(2)では、エタノール溶液の体積分率は、28~32%である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ステップ(2)における超音波強度は1200~1600Wである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ステップ(2)では、超音波処理の時間は、50~70minである。
【0024】
本発明の第6態様では、本発明は、組成物を用いて腸炎ビブリオ菌を抑制することを含む方法であって、前記組成物が、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを成分とする、方法を提供する。
【0025】
腸炎ビブリオ菌は海水や魚介類に広く存在しており、食中毒を引き起こしやすいため、本発明のいくつかの実施形態では、前記方法は、主に、前記組成物を海水魚養殖又は魚介類に用いて腸炎ビブリオ菌を抑制することを含み、例えば、前記組成物を海水魚養殖の養殖水又は魚介類に直接接触する保存環境(特に液体環境)に添加する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、1:1である。
【0027】
本発明の第7態様では、本発明は、物質を植物に施用して、植物ウイルスを阻害することを含む方法であって、前記物質が、グアノシン又は2’-デオキシグアノシン、又はグアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む組成物である、方法を提供する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記植物は、タバコ、ジャガイモ及びキュウリを含むが、これらに限定されるものではなく、本発明のいくつかの実施形態によれば、前記植物は植物の若苗であってもよく、前記若苗は、例えば少なくとも葉が成長した若苗である。前記施用方式は、例えば葉面散布又は種子浸漬である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記植物ウイルスは、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、キュウリモザイクウイルス、及びジャガイモウイルスYを含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、グアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記組成物において、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、1:1である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記組成物の使用濃度が、150ng/mL以上である。例えば、本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、前記組成物の使用濃度が、150ng/mL~250ng/mLである。
【0032】
本発明の第8態様では、本発明は、植物に物質を施用して、植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量を向上させることを含む方法であって、前記物質が、グアノシン又は2’-デオキシグアノシン、又はグアノシンと2’-デオキシグアノシンを含む組成物である、方法を提供する。前記施用方式は、例えば、植物葉面散布又は種子浸漬である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記植物は、タバコ、ジャガイモ及びキュウリなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含む組成物を植物に施用する際に、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、(1~2):1である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、植物に2’-デオキシグアノシンとグアノシンの組成物を施用する際に、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が、1:1である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含む組成物を植物に施用する際に、前記組成物の使用濃度が、150ng/mL以上である。本発明のさらに別のいくつかの実施形態によれば、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの組成物を植物に施用する際に、前記組成物の使用濃度が、150ng/mL~250ng/mLである。
【発明の効果】
【0036】
有益な効果
1.本発明では、パエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1抽出物から2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの2種の物質を同定し、抽出物中の他の物質成分と比較して、この2種の物質が明らかな抗植物ウイルス作用を有し、しかもこの2種の物質を一定の配合比で組み合わせて使用すると、抗ウイルス作用効果がより優れていることを見出した。後続の新規な農薬の開発・登録を容易にし、産業化生産を実現する。
2.本発明では、また、2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含有する抽出物を植物に散布することにより、植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の蓄積を増加することができ、植物の免疫作用の増強に有利であることを見出した。本発明はまた、パエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量を効果的に増加させる抽出方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】パエシロミセス・バリオティSJ1菌体抽出物の液体クロマトグラムであり、図においては、クロマトグラフィーのピークの番号は、それぞれ、化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、化合物10の順に対応する。
図2図1における化合物8である2’-デオキシグアノシンの質量スペクトルである。
図3図1における化合物10であるグアノシンの質量スペクトルである。
図4図1における化合物8の核磁気スペクトルであり、図においては、aは、2’-デオキシグアノシンの1D 1Hスペクトルであり、bは、2’-デオキシグアノシンの1D 13Cスペクトルである。
図5図1における化合物10の核磁気スペクトルであり、図においては、aは、グアノシンの1D 1Hスペクトルであり、bは、グアノシンの1D 13Cスペクトルである。
図6】2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの構造図であり、図においては、aは、2’-デオキシグアノシンであり、bは、グアノシンである。
図7】2’-デオキシグアノシン10μg/mL及びグアノシン10μg/mLの標準品の液体クロマトグラムである。
図8】バッチ3の菌体抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの液体クロマトグラムである。
図9】実施例7における対照群CKのサリチル酸を検出した液体クロマトグラムである。
図10】実施例7におけるA群のサリチル酸を検出した液体クロマトグラムである。
図11】実施例7における対照群CKの2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを検出した液体クロマトグラムである。
図12】実施例7におけるA群の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを検出した液体クロマトグラムである。
図13】腸炎ビブリオ菌の平板図であり、図においては、aは、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを加えないTCBS培地平板であり、bは、配合比が1:1の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを1mg/mL含有するTCBS培地平板である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例を参照して、本発明の技術的解決手段についてさらに説明するが、本発明によって保護される範囲はこれに限定されない。
【0039】
実施例において詳細に説明されていない内容は、いずれも当該分野の従来技術に従ったものである。
【0040】
主な材料の由来
アミノオリゴサッカリンはいずれも山東浜海瀚生生物科技有限公司より購入した。
2’-デオキシグアノシン及びグアノシンは上海源葉生物科技有限公司より購入した。
パエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1の寄託番号はCGMCC No.10114であり、この菌の寄託情報は特許文献CN201510059660.1に公開されている。寄託日は2014年12月08日で、中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センター(アドレス:北京市朝陽区北辰西路1号院3号)に寄託されている。
TCBS培地は広東環凱微生物科技有限公司より購入した。
パエシロミセス・バリオティ(Paecilomyces variotii)菌株SJ1は、以下「パエシロミセス・バリオティ菌株SJ1」と略称する。
【実施例1】
【0041】
パエシロミセス・バリオティSJ1菌体抽出物の調製
パエシロミセス・バリオティSJ1菌株を平板PDA培地に接種し、25℃で6日間培養し、パンチで菌体の成長した寒天塊を取り、PDA培地50mLを入れた250mL三角フラスコに接種し、28℃、120r/minでロータリーシェーカーにて3日間培養して種子液とし、種子液を10%の体積量でPDA培地150mLを入れた500mL三角フラスコに接種し、28℃、120r/minでロータリーシェーカーにて5日間培養し、発酵を停止した。培養により得られた菌糸体を洗浄した後、60℃で乾燥し、重量を計量し、高速粉砕機で粉砕し、60メッシュスクリーンにかけ、粉砕した菌粉と体積分率20%エタノール溶液とを1:1g/mLの質量体積比で混合した後、1200W超音波で60min処理し、真空吸引濾過し、濾液を収集して使用に備え、濾液をパエシロミセス・バリオティSJ1菌株の抽出物とした。
【実施例2】
【0042】
実施例1で調製されたパエシロミセス・バリオティSJ1菌株抽出物1mLを1.5mL遠心管に入れ、12000r/minで10min遠心分離し、得られた上清を0.22μmのろ過膜でろ過し、ろ液を逆相HPLC半分取クロマトグラフィーにより勾配溶出して分離し、10個の化合物を得、それぞれ10個の化合物サンプルを採取し、液体クロマトグラム及び化合物番号を図1に示す。
【実施例3】
【0043】
実施例2の抽出物から分離された10個の化合物の抗ウイルス実験
(1)タバコ育苗:通常の育苗方法によりタバコの育苗を行った。
(2)接種及び施薬方法:タバコが4~8枚の葉に成長した後、タバコ若苗を得て、成長の状態が一致したタバコを選び、濃度が200ng/mL、使用量が10mLの実施例2で分離された10個の化合物サンプルをそれぞれタバコの葉に散布し、それぞれ処理群1~10とし、処理群ごとに5本のタバコに散布し、清水散布を対照(CK)とし、処理ごとに3回繰り返し、各葉に均等に散布し、処理2時間後に摩擦接種方法でタバコ系統の葉の下の3枚の真葉に接種し、ウイルス溶液50μLを取り、600メッシュの石英砂を各葉の前面に軽く摩擦して接種し、接種したウイルスは、それぞれタバコモザイクウイルス(TMV)、ジャガイモウイルスX(PVX)、キュウリモザイクウイルス(CMV)及びジャガイモウイルスY(PVY)であり、接種後、人工気候室内で5d培養した。
(3)ウイルス含有量の計算:接種5d後、ステップ(2)で処理した葉を取り、紫外灯の下に置いて各薬剤処理群のウイルスタンパク質の蛍光状況を観察し、蛍光標識を持った発病系統の葉を取り、アルミホイルで標識を作って迅速に液体窒素に入れ、すべて処理してサンプルを取り終わった後、-80℃の冷蔵庫に入れて長期保存し、酵素結合免疫吸着測定法を用いて、ウイルスを持った系統の葉のウイルス含有量を測定した。
抗ウイルス実験方法の参考文献は、「Ultrahigh-activity immune inducer from Endophytic Fungi induces tobacco resistance to virus by SA pathway and RNA silencing」Peng C,Zhang A,Wang Q,et al.Ultrahigh-activity immune inducer from Endophytic Fungi induces tobacco resistance to virus by SA pathway and RNA silencing[J].BMC Plant Biology, 2020, 20(1)である。
(4)ウイルス含有量の具体的な検出結果を表1に示す。
【表1】
表1の実験データを分析した結果、10個の化合物でタバコの葉を処理した後、各処理群は4種類のウイルスに対していずれも一定の抵抗性があり、そのウイルス含有量はすべて対照群より低かった。このうち、化合物8では、4種類のウイルスの含有量はいずれも最も低く、発症が最も軽く、対照群の0.4倍前後であり、化合物10はその次であり、ウイルス含有量は対照群の0.5倍前後であり、残りの化合物は、対照と比べて有意差がないため、本発明は、化合物8及び化合物10がパエシロミセス・バリオティSJ1菌株抽出物の主な抗ウイルス物質であると判明した。
【実施例4】
【0044】
抗ウイルス物質の同定
実施例3においてウイルスに対して明らかな抵抗性を有する2個の化合物について、液体クロマトグラフィータンデム質量分析計と核磁気共鳴装置をそれぞれ用いて検出し、スペクトルデータ分析により、抗ウイルス作用を有する2個の化合物の構造を特定した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析スペクトル及び核磁気スペクトルを、それぞれ図2図3図4、及び図5に示す。
まず、抽出物を半分取高速液体クロマトグラフにより分離して精製し、この工程で得られた成分中に微量の不純物が存在する。次に、液体クロマトグラフィータンデム質量分析計を用いて全走査を行う場合、液体クロマトグラフィータンデム質量分析計システム自体にも微量の干渉イオンが存在する。したがって、図2図3の質量スペクトルには、2’-デオキシグアノシン及びグアノシン以外にも、微量の他の化合物が存在する。図2では、相対存在量の多い2つのイオンm/zは268.13と152.11であり、データベース検索により、それぞれ2’-デオキシグアノシンの親イオンと子イオンであると推定された。図3では、相対存在量の多い2つのイオンm/zは284.13と152.16であり、データベース検索により、それぞれグアノシンの親イオンと子イオンであると推定された。
分析した結果、化合物8は、分子式がC10134、相対分子量が267.24であった。ESI-MS m/z268.1[M-H]+。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.93(1H,s,H-8),6.49(2H,s,NH2),5.69(1H,d,J=6.0Hz,H-1’),4.39(1H,m,H-2’),4.08(1H,m,H-3’),3.86(1H,d,J=2.96Hz,H-4’),3.52~3.61(2H,m,Ha-5’,Hb-5’);13C-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:159.70(C-6),154.59(C-2),152.04(C-4),138.54(C-8),117.41(C-5),87.98(C-1’),84.80(C-4’),72.03(C-3’),62.50(C-2’),39.57(C-5’)。
分析した結果、化合物10は、分子式がC10135、相対分子質量が283.2であった。ESI-MS m/z284.1[M-H]+。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.93(1H,s,H-8),6.49(2H,s,NH2),5.69(1H,d,J=6.0Hz,H-1’),4.39(1H,m,H-2’),4.08(1H,m,H-3’),3.86(1H,d,J=2.96Hz,H-4’),3.52~3.61(2H,m,Ha-5’,Hb-5’);13C-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:157.21(C-6),154.15(C-2),151.77(C-4),135.98(C-8),117.18(C-5),86.81(C-1’),85.65(C-4’),74.15(C-3’),70.83(C-2’),61.86(C-5’)。
2’-デオキシグアノシン及びグアノシンは既知のものであり、その構造も関連文献で報告されているので、図2では、相対存在量の多い2つのイオンm/zは268.13と152.11であり、図3では、相対存在量の多い2つのイオンm/zは284.13と152.16であることから、データベース検索により、このイオンは、それぞれ2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの親イオンと子イオンであると推定された。また、図4及び図5の核磁気共鳴では、水素スペクトル及び炭素スペクトルのデータは、参照文献の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンのデータと一致していることから、化合物8は2’-デオキシグアノシン(2’-deoxyguanosine)であると同定され、構造図は図6のaを参照し、化合物10はグアノシン(guanosine)であると同定され、構造図は図6のbを参照する。
参考文献は以下のとおりである。
焦森、毛淑傑、梁曜華ら.石菖蒲中のヌクレオシド類成分の分離同定及び転化経路の分析[J].中国実験方剤学雑誌,2020,26(12):9。
徐小博、高節竹(Phyllostachys prominens)の葉、タケノコの化学成分の研究[D].中国林業科学研究院,2015.
【実施例5】
【0045】
パエシロミセス・バリオティSJ1菌体抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量の測定
10バッチのパエシロミセス・バリオティSJ1菌体抽出物1mLをそれぞれ1.5mL遠心管に取り、12000r/minで10min遠心分離し、遠心分離により得られた上清を0.22μmのろ過膜でろ過し、分析型液相検出に供した。10バッチのパエシロミセス・バリオティSJ1菌体の培養方法は実施例1と同様であった。
標準品溶液の調製:一定重量まで乾燥した2’-デオキシグアノシン及びグアノシン標準品をそれぞれ1mgずつ計量し、水で溶解して100mLまで定容し、10μg/mLの標準品母液を調製した。
検量線の作製:標準品の母液0.1mL、0.2mL、0.4mL、0.6mL、0.8mL、1.0mLをそれぞれ吸引し、1mLまで定容し、標準作動液を調製した。
標準品のピーク時間を参照にして、サンプルを積分し、式(1)によりパエシロミセス・バリオティSJ1菌株抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量を計算した。
【数1】
式中、
Xは、試料中の測定対象成分の含有量で、単位はミリグラム/キログラム(mg/kg)であり、
Cは、検量線から得られた試料液中の測定対象物の質量濃度で、単位はマイクログラム/ミリリットル(μg/mL)であり、
Vは、試料定容体積で、単位はミリリットル(mL)であり、
mは、試料質量で、単位はグラム(g)である。
結果を表2に示す。
【表2】
分析の結果、パエシロミセス・バリオティSJ1菌株抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量は、それぞれ5.44~10.3mg/kg及び4.22~7.31mg/kgであり、パエシロミセス・バリオティSJ1菌株抽出物中の2’-デオキシグアノシンとグアノシンの含有量の比が(1~2):1であることが分かった。
2’-デオキシグアノシン10μg/mL及びグアノシン10μg/mL標準品の液体クロマトグラムを図7に示す。
表2のバッチ3の菌体抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの液体クロマトグラムを図8に示す。
【実施例6】
【0046】
2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの抗ウイルス効果の検証実験
実施例3の育苗、接種及び施薬方法に従って処理し、濃度150ng/mL、質量比1:2の2’-デオキシグアノシン及びグアノシン溶液はA群、濃度150ng/mL、質量比1:1の2’-デオキシグアノシン及びグアノシン溶液はB群、濃度150ng/mL、質量比2:1の2’-デオキシグアノシン及びグアノシン溶液はC群、濃度150ng/mL、質量比3:1の2’-デオキシグアノシン及びグアノシン溶液はD群、濃度150ng/mL、質量比4:1の2’-デオキシグアノシン及びグアノシン溶液はE群、濃度150ng/mLの2’-デオキシグアノシンはF群、濃度150ng/mLのグアノシン溶液はG群、質量分率5%のアミノオリゴサッカリン溶液はH群、清水は対照群CKとし、各比での2’-デオキシグアノシンとグアノシンのタバコモザイクウイルスに対する抵抗性を研究し、結果を表3に示す。
【表3】
表3から分かるように、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンはいずれもタバコモザイクウイルスに対して防除効果があり、しかも効果は対照薬品の質量分率5%アミノオリゴサッカリン溶液より大きく、同じ濃度の条件下で、2’-デオキシグアノシン標準品とグアノシン標準品との組み合わせの作用効果は2’-デオキシグアノシン及びグアノシン単独の抗植物ウイルス作用効果より優れており、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの両者が一定の相乗作用を生じていることが証明された。
また、表3より、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が(1~2):1の場合、抗植物ウイルス作用効果が顕著であり、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が4:1の場合の抗植物ウイルス作用効果よりも優れており、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が1:2の場合の抗植物ウイルス作用効果よりも優れていることが分かった。特に、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの配合質量比が1:1である場合、抗植物ウイルス作用効果が最も優れている。
さらに、表3から分かるように、同じ濃度の条件下で、2’-デオキシグアノシン単独施用による抗植物ウイルス作用効果は、グアノシン単独施用による抗植物ウイルス作用効果より優れているが、両者を組み合わせて施用する場合、組成物中の2’-デオキシグアノシンの比が高いほど、作用効果が良いわけではなく、表3のC群、E群の実験データにより、2’-デオキシグアノシンとグアノシンの両者が一定の相乗作用を生じていることがさらに証明された。
【実施例7】
【0047】
パエシロミセス・バリオティSJ1菌体抽出物による植物内在性ヌクレオシド類物質及びサリチル酸の変化の誘導
通常の育苗方法に従ってタバコの育苗を行い、タバコが4週間まで成長したときに、10本のタバコを選び、濃度150ng/mL、質量比1:1の2’-デオキシグアノシン及びグアノシン溶液をA群、清水を対照群CKとしてそれぞれ散布し、1本当たりの施用量を10mLとし、処理ごとに3回繰り返した。2h後、A群と対照群CKのベンサミアナタバコの葉を取り、液体クロマトグラフィーで2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量を検出した。
(1)ヌクレオシド類物質の抽出方法:タバコの葉0.50gを液体窒素条件下で粉砕して粉末にし、タバコの葉の粉末0.10gを10mL遠心管に正確に計量し、純水3mLを加え、室温、250Wのパワーで30min超音波処理し、超音波処理後のサンプルを8000r/minで10min遠心分離し、上清を取り、上清の1/2体積のトリクロロメタンを加え、30min振とうさせ、水相を吸引し、上記の操作を繰り返し、2回抽出した水相溶液を合わせ、不溶性ポリビニルピロリドン(PVPP)15mgを加え、上下に振とうさせ、8000r/minで10min遠心分離し、上清を取り、0.22μmの微多孔性ろ過膜でろ過し、液体検出に供した。
(2)サリチル酸の抽出方法:葉10.0gを十分に粉砕した後、100mL遠心管に入れ、5%トリクロロ酢酸を4mL加え、水を20mLまで加えた後、更にエチルエーテル30mLを加え、十分に揺らし、12h浸出し、8000r/minで5min遠心分離し、上部のエチルエーテル相を取り出し、更に水相をエチルエーテルで2回繰り返し抽出し、エチルエーテル相を合わせ、乾固まで真空回転蒸発した後、50%メタノール+50%酢酸緩衝液(pH=3.2)の混合液1mLを加えて溶解し、Eppendorf管に保存し、遊離状態のサリチル酸サンプルとした。水相に18.5%のHClを加えて最終pHを3.2にし、80℃の水浴にて1h加熱し、冷却した後、エチルエーテルで3回抽出し、エチルエーテル相を併せて、乾固まで蒸発させて、その後に50%メタノール+50%酢酸緩衝液(pH=3.2)の混合液1mLを加えて溶解し、Eppendorf管に入れて保存し、結合状態のサリチル酸サンプルとした。結合状態のサリチル酸サンプルを0.22μmの微多孔性ろ過膜でろ過した後、液体検出に供した。
(3)結果を表4に示す。
【表4】
表4から分かるように、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの1:1溶液を散布したところ、タバコの葉中の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の含有量は対照群に比べて20~35%上昇し、2’-デオキシグアノシンとグアノシンを一定の配合比で含む溶液を植物に散布すると、植物内の2’-デオキシグアノシン、グアノシン、及びサリチル酸の蓄積を引き起こすことを明らかにした。
対照群CK:サリチル酸を検出した液体クロマトグラムを図9に示し、
A群:サリチル酸を検出した液体クロマトグラムを図10に示し、
対照群CK:2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを検出した液体クロマトグラムを図11に示し、
A群:2’-デオキシグアノシン及びグアノシンを検出した液体クロマトグラムを図12に示した。
【実施例8】
【0048】
因子の選択及び応答曲面の最適化
材料-液体比、超音波処理時間、超音波パワー及び溶媒濃度などの4つの因子を選択して応答曲面試験を設計し、ヌクレオシド類物質の抽出量を応答値とし、最適な抽出条件を得て検証し、試験設計因子及び結果を表5に示す。
【表5】
【表6】
モデルの作成及び統計解析
得られたデータに基づいて多重回帰分析を行い、対応する変数である材料-液体比、超音波処理時間、超音波パワー及び溶媒濃度とヌクレオシド抽出含有量との間の多重二次回帰方程式を得た。
Y=130.30+65.87*A+12.10*B+3.09*C+0.8250*D+5.89*A*B-2.39*A*C+0.2125*A*D-0.5375*B*C+6.51*B*D-1.61*C*D-1.06*A-0.4208*B-8.71*C+2.99*D
この回帰方程式R2=0.9809、Adj R2=0.9630は、この方程式の予測値と実際値との間の相関が良好であることを示している。
分散結果の分析:表6の分析から分かるように、モデルのF値は54.89であり、このモデルが有意であることを示唆し、P値は0.0001より小さく、わずか0.01%の確率でこのF値がノイズによるものであることを示した。P値が0.05より小さいことは、このモデルの項目が有意であることを示唆し、今回の実験では、A、B、BD、C2は、有意項であり、有意レベルの順序はA>B>C2>BDであり、その他の項は有意ではない。不適合度のF値が1であることは、不適合度が絶対誤差に対して有意でないことを示し、53.54%の確率で不適合度のF値がノイズによるものであることを示し、不適合度が有意でないことはこのモデルが良いことを示唆した。各項のF値は、A(材料-液体比)とB(エタノール濃度)が抽出液濃度に著しい影響を与え、Aの影響はBよりはるかに大きいことを示した。
Design-Expertソフトウェアを用いて、材料-液体比1:3(g/mL)、エタノールの体積濃度30%、抽出時間63.3min、超音波パワー1600Wという最適なパラメータの組み合わせを得た。
【実施例9】
【0049】
最適抽出条件の検証試験
粉砕したパエシロミセス・バリオティSJ1菌株の菌粉を、一定濃度のエタノール溶液と一定の質量体積比で混合した後、一定のパワーで一定時間超音波処理し、真空吸引濾過し、濾液を収集し、使用に備え、濾液はパエシロミセス・バリオティSJ1菌株抽出物であり、具体的な条件は以下の通りであり、その他の条件は実施例1の抽出方法と同じであった。
A群の材料-液体比は1:3(g/mL)、エタノールの体積濃度は30%、超音波パワーは1600W、抽出時間は63.3minであり、
B群の材料-液体比は1:5(g/mL)、エタノールの体積濃度は30%、超音波パワーは1600W、抽出時間は63.3minであり、
C群の材料-液体比は1:3(g/mL)、エタノールの体積濃度は20%、超音波パワーは1600W、抽出時間は63.3minであり、
D群の材料-液体比は1:1(g/mL)、エタノールの体積濃度は20%、超音波パワーは1600W、抽出時間は63.3minである。
実施例5のステップに従って抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量を測定し、その結果を表7に示す。
【表7】
表7の実験データから分かるように、本発明による抽出方法では、抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量が高く、特に抽出条件として、材料-液体比が1:3(g/mL)で、エタノールの体積濃度が30%である場合、菌体抽出物中の2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの含有量は最も高く、2’-デオキシグアノシンの含有量は10.93mg/kgで、グアノシンの含有量は8.54mg/kgであり、本発明による抽出方法は、2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの後続の生産や利用などの研究の展開に有利である。
【実施例10】
【0050】
腸炎ビブリオ菌に対する2’-デオキシグアノシン及びグアノシンの影響に関する実験
腸炎ビブリオ菌(VP:Vibrio parahaemolyticus)は、海水や魚介類に広く存在し、中国の沿海地域でよく見られる食中毒病原菌である。
腸炎ビブリオ菌を37℃で12hかけて対数期まで培養し、0.01M pH7.2リン酸緩衝液で10CFU/mLまで希釈した。2’-デオキシグアノシンとグアノシンを1:1の質量比で含む1mg/mLのTCBS培地、及び2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含まないTCBS培地にそれぞれ接種し、37℃で一晩インキュベートした後、培地上の腸炎ビブリオ菌の成長状況を観察した。図13に示すように、2’-デオキシグアノシンとグアノシンを含まない対照と比べて、1:1の2’-デオキシグアノシンとグアノシンは、腸炎ビブリオ菌に対して一定の抑制効果があった。
【0051】
以上は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するためのものではなく、当業者にとって、本発明は様々な変更や変化が可能である。本発明の精神及び原則を逸脱することなく行われるすべての補正、均等置換や改良などは、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】