(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】被覆不規則岩塩型材料を備えた正極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20240808BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240808BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/525
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024509137
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022041661
(87)【国際公開番号】W WO2023034137
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508034554
【氏名又は名称】ワイルドキャット・ディスカバリー・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WILDCAT DISCOVERY TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】イー,タンホン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ビン
(72)【発明者】
【氏名】カン,スン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ユングアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA24
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
正極は、不規則岩塩相および不規則岩塩相の表面に配置されたコーティング層を備える。そのコーティング層は、酸化物、リン酸塩、リン化物、およびフッ化物の1つ以上を含むことがある。その相が、リン酸塩、リン化物、またはその組合せを含むことが望ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則岩塩相材料、および
前記不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層であって、酸化物、リン酸塩、リン化物、およびフッ化物の1つ以上を含むコーティング層、
を備えた正極。
【請求項2】
前記不規則岩塩相材料が、化学式(i):
Li
xN
yM
zO
b-aF
a (i)
で表され、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Nb、Ti、Ta、Zr、W、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである、請求項1記載の正極。
【請求項3】
b=2である、請求項2記載の正極。
【請求項4】
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して0.05質量%以上かつ10質量%以下で存在する、請求項1から3いずれか1項記載の正極。
【請求項5】
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して1から5質量%で存在する、請求項4記載の正極。
【請求項6】
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して2から4質量%で存在する、請求項4記載の正極。
【請求項7】
前記コーティング層が、LiAlO
2、Li
3Al
2(PO
4)
3、AlPO
4、Li
3PO
4、Li
3PおよびLi
2TiO
3、TiO
2の1つ以上を含む、請求項1記載の正極。
【請求項8】
前記コーティング層が、Li
3PO
4およびLi
3Pを含む、請求項7記載の正極。
【請求項9】
前記不規則岩塩相材料が、Fm-3m結晶構造を有する、請求項1から8いずれか1項記載の正極。
【請求項10】
正極を形成する方法において、
不規則岩塩相材料を1種類以上のコーティング前駆体と混合して、混合物を形成する工程であって、該1種類以上のコーティング前駆体は、Al(CH
3CO
2)
3、焼き鈍し中に分解してリン酸リチウムまたはリチウム金属リン酸塩を形成するリン酸塩、リン化リチウム、リチウム金属リン化物およびTiO
2の1つ以上を含む、工程、および
前記混合物を焼き鈍して、前記不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層を有する被覆不規則岩塩粉末を形成する工程、
を含む方法。
【請求項11】
前記リン酸塩が分解してLi
3PO
4を形成する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記リン酸塩が分解してホスフィンを形成する、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記焼き鈍し工程中に、ホスフィンが存在する、請求項10から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ホスフィンが反応してリン化物を形成する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
形成された前記コーティング層が、LiAlO
2、Li
3Al
2(PO
4)
3、AlPO
4、Li
3PO
4、Li
3P、およびLi
2TiO
3、TiO
2の1つ以上を含む、請求項10から14いずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記焼き鈍し工程が、0.5時間以上かつ24時間以下の期間に亘り200℃以上かつ800℃以下の温度で前記混合物を加熱する工程を含む、請求項10から15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記焼き鈍し工程が、不活性ガス中で前記混合物を加熱する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記不活性ガスが流動するアルゴンである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記焼き鈍し工程後に前記被覆不規則岩塩粉末を1種類以上の炭素前駆体と共に混練して、正極活性材料を製造する工程をさらに含む、請求項10から18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記炭素前駆体がカーボンナノチューブを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項1から9いずれか1項記載の正極を備えた二次電池。
【請求項22】
請求項10から20いずれか1項記載の方法により形成された正極を備えた二次電池。
【請求項23】
前記リン酸塩が、リン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩またはその組合せであり、前記リン化物が、リチウム金属リン化物、リン化リチウムまたはその組合せである、請求項1記載の正極。
【請求項24】
前記リチウム金属リン酸塩および前記リチウム金属リン化物の金属が遷移金属である、請求項23記載の正極。
【請求項25】
前記金属が前記不規則岩塩相材料中に存在する金属である、請求項24記載の正極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池技術の分野に関し、より詳しくは、電気化学セルの正極に使用するための高エネルギー材料の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属酸化物は、リチウムイオン電池によく使用される高エネルギー密度の材料である。リチウム金属酸化物の1つの形態または部類に、不規則岩塩型構造がある。式中、Mは3価の陽イオンである、式(1):
xLi3NbO4・(1-x)LiMO2 (1)
で表される組成物が、リチウムイオン電池の正極として使用するのに見込みがあることが示されてきた。式(1)で表される組成物などの不規則岩塩組成物は、概して、立方晶構造で最密充填されたリチウムイオンと遷移金属イオンのランダム原子配列を有する。これらの不規則岩塩組成物は、従来のリチウム過剰系層状構造よりも、式単位当たりでより多くのリチウム原子を含み得る。
【0003】
この不規則岩塩型構造は、高い比エネルギー密度のために、次世代のリチウムイオン電池の魅力的な正極材料である。例えば、ある不規則岩塩型構造材料は、約1120Wh/kgの理論重量エネルギー密度を有する。この不規則岩塩型材料は、マンガンなどの比較的コストの安い原材料を使用して形成することもできる。よって、不規則岩塩型材料は、比較的安い材料費で、比較的高いエネルギー密度を達成することができる。同等のエネルギー密度を達成するために、他のタイプの公知の正極材料では、コバルトおよび/またはニッケルなどのコストがより高い原材料が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池に不規則岩塩型材料を使用する上での課題の1つは、サイクル使用(cycling)したときの容量保持が不十分であることである。不十分な容量保持は、充電中に副反応をもたらす、アニオン性レドックスの不安定性と高電圧でのサイクル使用に起因することがある。その副反応には、リチウムが豊富な材料の表面に存在することがあり、電池の電気化学性能にとって有害な、水酸化リチウム(LiOH)および炭酸リチウム(Li2CO3)などの残留リチウム塩が関与することがある。不規則岩塩型材料は、正極材料のpH値に基づいて残留リチウム塩を有することもある。副反応の副生成物はセル抵抗を増加させ得、大きいセル抵抗は、過電圧のために、不規則岩塩型材料のサイクル寿命を低下させ得る。真の充電状態(SOC)および放電深度(DOD)の範囲は、サイクル数が増加すると共に縮小し、これにより、サイクル容量が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに記載された本発明の主題の実施の形態は、不規則岩塩型正極を有する電気化学セルのサイクル性能の改善に関する。例えば、ここに記載された実施の形態は、不規則岩塩型材料を安定化させることによって、電気化学セルの容量保持を増加させることがある。不規則岩塩型材料は、この不規則岩塩型材料の表面にコーティング層を施すことによって安定化される。
【0006】
1つ以上の実施の形態において、不規則岩塩相材料およびその不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層を備えた正極が提供される。このコーティング層は、酸化物、リン酸塩、リン化物、またはフッ化物の1つ以上を含むことがある。その層が、リン酸塩、リン化物またはその組合せを含むことが望ましい。
【0007】
必要に応じて、不規則岩塩相材料は、化学式(i):
LixNyMzOb-aFa (i)
で表され、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Nb、Ti、Ta、Zr、W、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである。必要に応じて、b=2である。
【0008】
必要に応じて、コーティング層は、不規則岩塩相材料とコーティング層の総質量に対して0.05質量%以上かつ10質量%以下で存在する。必要に応じて、コーティング層は、不規則岩塩相材料とコーティング層の総質量に対して5質量%で存在する。必要に応じて、コーティング層は、不規則岩塩相材料とコーティング層の総質量に対して2質量%で存在する。
【0009】
必要に応じて、コーティング層は、LiAlO2、Li3Al2(PO4)3/AlPO4、Li3PO4、またはLi2TiO3/TiO2の1つ以上を含む。
【0010】
必要に応じて、不規則岩塩相材料は、Fm-3m結晶構造を有する。
【0011】
1つ以上の実施の形態において、正極を形成する方法が提供される。この方法は、不規則岩塩相材料を合成する工程、およびその不規則岩塩相材料を1種類以上のコーティング前駆体と混合して、混合物を形成する工程を含む。その前駆体は、リン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、リン化リチウム、リチウム金属リン化物、またはその組合せを形成することが望ましいものであることがある。1種類以上のコーティング前駆体は、Al(CH3CO2)3、AlPO4、H3PO3、NH4H2PO4、またはTiO2の1つ以上を含むことがある。この方法は、前記混合物を焼き鈍して、不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層を有する被覆不規則岩塩粉末を形成する工程も含むことがある。実例として、前駆体は、焼き鈍し中に分解して、次に、炭酸リチウム、酸化リチウム、および水酸化リチウムなどの通常リチウム金属上にある表面種と反応して、リン酸リチウム、リン化リチウムまたはその組合せを形成することのあるリン酸、ホスフィンまたはその組合せを形成するものであることがある。別の例は、最終的に望ましいコーティング組成物を作るためのさらなる液体または固体前駆体の有無にかかわらない、ホスフィンガスの使用であることがある。リン酸リチウムとリン化リチウムが存在する場合、それらは、コーティング中に任意の所望の比、典型的に、0.01、0.1、0.5から100、90、5または2のリン酸リチウム/リン化リチウムの範囲で存在することがある。
【0012】
コーティング層は、LiAlO2、Li3Al2(PO4)3/AlPO4、Li3PO4、Li3P、およびLi2TiO3/TiO2の1つ以上を含むことがある。
【0013】
必要に応じて、焼き鈍し工程は、0.5時間以上かつ24時間以下の期間に亘り200℃以上かつ800℃以下の温度で混合物を加熱する工程を含む。必要に応じて、焼き鈍し工程は、アルゴン(Ar)ガス流の下で混合物を加熱する工程を含む。
【0014】
必要に応じて、前記方法は、焼き鈍し工程後に被覆不規則岩塩粉末を1種類以上の炭素前駆体と共に混練して、正極活性材料を製造する工程をさらに含む。
【0015】
必要に応じて、不規則岩塩相材料を合成する工程は、溶媒中の岩塩前駆体の懸濁液を混練して、前駆体混合物を形成する工程、その前駆体混合物を乾燥させる工程、および乾燥後の前駆体混合物を焼き鈍して、不規則岩塩相材料を製造する工程を含む。岩塩前駆体は、例として、MnO、Mn2O3、Li2CO3、LiF、LiOH、Nb2O5、またはNbF5の1つ以上を含むことがある。
【0016】
1つ以上の実施の形態において、負極、正極、および電解質を備えた二次電池が提供される。正極は、リチウムイオンの可逆的変換が可能である。正極は、ここに記載されたようなコーティングを有する不規則岩塩相材料を含む。電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含む。
【0017】
必要に応じて、不規則岩塩相材料は、Fm-3m結晶構造を有する。
【0018】
必要に応じて、不規則岩塩相材料は、化学式(i):
LixNyMzOb-aFa (i)
で表され、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Nb、Ti、Ta、Zr、W、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである。必要に応じて、b=2である。
【0019】
コーティングは、LiAlO2、Li3Al2(PO4)3/AlPO4、Li3PO4、Li3P、およびLi2TiO3/TiO2の1つ以上を含むことがある。この層は、リン酸リチウム、リン化リチウムまたはその組合せを含むことがある。
【0020】
コーティング層は、不規則岩塩相材料とコーティング層の質量の約0.05、0.1、0.2、0.5または1質量%から10、7、5または3質量%の量で存在することがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態による正極を形成する方法の流れ図
【
図2A】表1および2で特定された18の試験用電気化学セルの初期放電容量をプロットしたグラフ
【
図2B】表1および2で特定された試験用セルのクーロン効率(CE)をプロットしたグラフ
【
図3A】300℃で後焼き鈍しされた、表1に示された候補の試験用セルおよび対照セルのサイクル数に対して放電容量をプロットしたグラフ
【
図3B】表1および
図3Aに示された候補の試験用セルおよび対照セルのサイクル数に対してサイクル使用の容量保持をプロットしたグラフ
【
図4A】600℃で後焼き鈍しされた、表2に示された候補の試験用セルおよび対照セルのサイクル数に対して放電容量をプロットしたグラフ
【
図4B】表2および
図4Aに示された候補の試験用セルおよび対照セルのサイクル数に対してサイクル使用の容量保持をプロットしたグラフ
【
図5A】300℃で後焼き鈍しされた、表1に示された候補の試験用セルおよび対照セルのサイクル数に対してCEをプロットしたグラフ
【
図5B】表1および
図5Aに示された候補の試験用セルおよび対照セルのサイクル数に対してセル抵抗の増大をプロットしたグラフ
【
図6】被覆不規則岩塩を有する本発明と本発明の被覆不規則岩塩を有さない対照の半電池の容量対サイクルおよび容量保持対サイクルを示すグラフ
【
図7】被覆不規則岩塩を有する本発明と本発明の被覆不規則岩塩を有さない対照の全電池(full cell)の容量対サイクルおよび容量保持対サイクルを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の定義は、本発明の主題の1つ以上の実施の形態に関して記載された態様に適用される。これらの定義は、同様に、本明細書で詳しく説明されることがある。各用語は、説明、図面、および実施例の全体に亘り、さらに説明され、例示される。この説明における用語のどの解釈も、本明細書に提示された全説明、図面、および実施例を考慮すべきである。
【0023】
名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、ある物体に対する言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の物体を含み得る。
【0024】
「活性材料」という用語は、電気化学セルにおける電気化学反応中に導電種を供与する、遊離させる、または他のやり方で供給する、電極、特に正極の材料を称する。
【0025】
「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタニド、およびアクチニドを称する。何故ならば、それらの用語は、当業者により理解されるか、またはここに定義されたようなものであるからである。「アルカリ金属」という用語は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、およびフランシウム(Fr)を含む、周期表の1族の化学元素のいずれかを称する。「アルカリ土類金属」という用語は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびラジウム(Ra)を含む、周期表の2族の化学元素のいずれかを称する。「遷移金属」という用語は、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、ラザホージウム(Rf)、ドブニウム(Db)、シーボーギウム(Sg)、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)、およびマイトネリウム(Mt)を含む、周期表の3から12族の化学元素を称する。「ポスト遷移金属」という用語は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、およびポロニウム(Po)を称する。
【0026】
「C」という比率は、電池(実質的に完全に充電された状態)が1時間で実質的に完全に放電するであろう「1C」電流値に対する分数または倍数としての放電電流、または電池(実質的に完全に放電された状態)が1時間で実質的に完全に充電するであろう「1C」電流値に対する分数または倍数としての電荷電流のいずれか(文脈による)を称する。
【0027】
特定の電池特性が温度により変動し得る範囲内では、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような特性はセ氏30度(℃)で規定される。
【0028】
ここに提示される範囲は、それらの端点を含む。それゆえ、例えば、範囲1から3は、値の1と3、並びにこれらの端点の間の中間値を含む。
【0029】
本発明の主題の実施の形態は、不規則岩塩組成物および電気化学セルの正極の構築に使用するための方法論(例えば、構造)を提供する。ここに開示された不規則岩塩型材料を利用する電気化学セルは、二次(例えば、再充電可能な)電池であることがある。この二次電池は、リチウムイオン電池であることがある。このリチウムイオン電池は、放電および再充電の操作中に電極(例えば、正極と負極)間にある電解質配合物にリチウムイオンを伝導させるのに適した濃度でリチウム塩が存在する電解質配合物を含む。例えば、リチウムイオン電池の放電と再充電は、リチウムイオンを正極と負極に出入りさせる交換によって行うことができる。その交換は、リチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションおよび/または変換により特徴付けられることがある。例えば、あるリチウムイオンはインターカレーションにより交換されることがあり、他のリチウムイオンは変換により交換されることがある。少なくとも1つの実施の形態によれば、正極は不規則岩塩型材料を含む。
【0030】
不規則岩塩組成物において、リチウムと遷移金属の両方が、八面体位置の立方最密充填格子を占める。不規則岩塩相は、Fm-3m岩塩結晶構造を有することがある。電気化学反応において、リチウム拡散は、リチウムイオンが中間四面体位置を介してある八面体位置から別の八面体位置にホッピングすることにより進む。中間四面体位置にあるリチウムは、リチウム拡散における活性状態である。活性化した四面体リチウムイオンは、以下のように4つの四面体位置で面を共有する:(i)リチウムイオン自体が以前に占めた位置;(ii)リチウムイオンが中に移動する空孔;および(iiiおよびiv)リチウム、遷移金属、または空孔が占め得る2つの位置。
【0031】
ここに記載された正極の不規則岩塩相材料は、様々な組成を有し得る。この不規則岩塩化学組成は、概して、リチウム、遷移金属、および酸素を含む。遷移金属または酸素の位置の1つ以上は、電気化学性能を改善するために別の元素でドープされることがある。非限定例において、酸素位置がフッ素でドープされている。酸素位置での潜在的なドープのための不規則岩塩相材料の化学式は、式(i):
LixNyMzOb-aFa (i)
であり、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Ti、Ta、Zr、W、Nb、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである。ある実施の形態において、y>0.01である。ある実施の形態において、b=2である。非限定例において、x+y+z=bであり、よって、金属(例えば、Li、N、およびM)対非金属(例えば、OおよびF)の原子比は等しい。欠陥および/または陰イオン欠損が生じることがあり、これにより合計が逸脱するであろうと認識されている。これらの組成は、55℃およびC/40での約350mAh/g、並びに30℃およびC/15での約300mAh/gなど、優れた比容量またはエネルギー密度を示した。
【0032】
a>0の場合、不規則岩塩中の酸素位置でのフッ素ドーパントの存在により、リチウムイオン電池の電気化学性能が改善されることがある。特定の理論または作用機構で束縛されるものではないが、酸素のフッ素による陰イオン置換(オキシフッ化物の形成)は、高電圧での電解質の分解によるフッ化水素攻撃に対する抵抗を大きくすることによって、サイクル使用性能を向上させることができる。あるいは、金属・酸素結合のイオン性を上回る金属・フッ化物結合の高いイオン性は、正極から電解質に浸出する遷移金属が少なくなって、その構造をさらに安定化させることができる。いくつかの不規則岩塩型材料組成物が、ここに全てが引用される、米国特許出願第15/222377号(今では、米国特許第10280092号)明細書に開示されている。
【0033】
必要に応じて、不規則岩塩組成物はニオブ(Nb)が欠如していることがある。酸素位置の代わりに、または酸素位置に加え、Nおよび/またはM金属位置が、必要に応じて、ドープされることがある。
【0034】
1つ以上の実施の形態による正極は、不規則岩塩相材料の表面にコーティング層を有する。このコーティングは、不規則岩塩型材料の表面を改質して、電池のサイクル性能を改善する。例えば、そのコーティングは、不規則岩塩型材料のより安定なおよび/またはより導電性の表面(不規則岩塩型材料の表面にコーティングがない配合物と比べて)を提供し、これにより、電解質中のリチウム塩と他の化合物との副反応が減少するであろう。そのコーティングは、過電圧を減少させることによって、安定化もすることがある。その結果、そのコーティングは、室温を含む動作温度の範囲内でのサイクル安定性(例えば、容量保持)を改善する。
【0035】
コーティングは、酸化物および/またはリン酸塩コーティング前駆体を使用して、不規則岩塩相材料の表面に形成される。例えば、そのコーティング前駆体は、1種類以上のリン含有化合物(例えば、リン酸塩、リン化物、および亜リン酸塩)、酸化物、フッ化物、ケイ酸塩、窒化物、炭酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを含むことがある。コーティング前駆体の具体例としては、以下に限られないが、酢酸アルミニウム(「AlAc」)(Al(CH3CO2)3)、リン酸アルミニウム(AlPO4)、亜リン酸(H3PO3)、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)、および酸化チタン(TiO2)が挙げられる。例えば、コーティング層は、列挙したコーティング前駆体の内の1つだけ、または列挙した前駆体の複数を組合せで使用することによって、形成されることがある。それに加え、リン化リチウムを形成するためなどで、リチウム金属内または上に存在する1種類以上の種と反応するホスフィン(PH3)など、リチウム金属上の表面種と反応する気体が、焼き鈍し中に導入されることがある。その気体は、同様に、亜リン酸の分解など、固体または液体前駆体の分解からも生じることがある。その前駆体は、不規則岩塩型材料の表面に存在するリチウムイオンと反応して、その表面を覆う薄いコーティング層を形成することがある。そのリチウムイオンは、下層の不規則岩塩相材料の合成からの残りとして存在することがある。使用されるコーティング前駆体の特定のタイプと量は、不規則岩塩相を合成するために使用される特定の前駆体など、様々な要因に基づいて選択されることがある。例えば、あるコーティング前駆体は、別の不規則岩塩組成物よりも、特定の不規則岩塩組成物により適合していることがある。この文脈における適合性は、不規則岩塩相の表面にコーティング層を形成し、維持するコーティング前駆体の能力を称する。他の要因としては、不規則岩塩相とのコーティング前駆体の反応性、コーティング前駆体の導電率などが挙げられるであろう。例えば、コーティング前駆体は、結果として得られるコーティング層が、正極へと正極からのイオン輸送および/または電子輸送に対する抵抗を著しく増加させずに、不規則岩塩相を安定化させる(例えば、副反応を減少させることにより)ように選択されることがある。
【0036】
コーティング層の組成は、合成プロセスに使用される特定のコーティング前駆体に基づく。そのコーティング層の組成は、酸化物、フッ化物、リン酸塩、ケイ酸塩、窒化物、炭酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、および/または硫酸塩を含むまたは示すことがある。コーティング層の組成の非限定例としては、アルミン酸リチウム(LiAlO2)、リン酸アルミニウムドープアルミニウム安定化NASICON構造材料(Li3Al2(PO4)3/AlPO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)、および/または酸化チタンドープチタン酸リチウム(Li2TiO3/TiO2)が挙げられる。例えば、AlPO4前駆体は、Li3Al2(PO4)3/AlPO4を含むコーティングを製造するために使用することができる。Al(CH3CO2)3前駆体は、LiAlO2を含むコーティングを生成することができる。NH4H2PO4前駆体は、Li3PO4を含むコーティングを生成することができ、TiO2前駆体は、コーティング中にLi2TiO3/TiO2を生成することができる。必要に応じて、複数のコーティング前駆体を利用して、複数の化合物を含むコーティング層をもたらすことができる。例えば、コーティング層は、LiAlO2、Li3Al2(PO4)3/AlPO4、Li3PO4、およびLi2TiO3/TiO2の内の複数を含むことがある。列挙した前駆体の1つ以上の代わりに、またはそれに加え、Al(CH3CO2)3、NH4H2PO4、AlPO4、およびTiO2以外の前駆体が使用される場合など、コーティング層は、他の実施の形態において、他の組成を有し得る。別の望ましい例に亜リン酸の使用があり、亜リン酸は、分解して、リン化リチウム、リチウム金属リン化物、リチウム金属リン酸塩およびリン酸リチウムを含むコーティングをもたらすことのあるリン酸とホスフィンを形成することがある。リン化物とリン酸塩の金属は、遷移金属やアルミニウムなど、どの適切な金属であってもよく、不規則岩塩を製造するのに有用な金属を含む、ここに記載された金属が挙げられるであろう。
【0037】
不規則岩塩相に対するコーティング材料の量も、電池のサイクル性能に影響することがある。1つ以上の実施の形態において、コーティング層は、不規則岩塩相材料とコーティング層の総質量に対して0.05質量%と10質量%の間(例えば、0.05質量%以上かつ10質量%以下)で存在する。例えば、コーティングの含有量は、0.05質量%、0.1質量%、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、または任意の非ゼロの中間量(0~10質量%)であることがある。第1の非限定例において、コーティング層は2質量%で存在する。コーティング層は、第2の非限定例において、5質量%で存在する。
【0038】
被覆不規則岩塩型材料は、電池における正極の活性材料として使用することができる。例えば、被覆不規則岩塩は、金属集電体上の複合正極膜として形成することができる。被覆不規則岩塩型正極は、概して、ここに記載されたように、未被覆の不規則岩塩型材料を有する対照セルと比べて、初期容量を実質的に減少させずに、初期クーロン効率(CE)およびサイクル容量保持を改善する。有益な初期CEおよび容量保持の結果により、コーティングは、充電中に電解質中の化合物との副反応から、不規則岩塩相を防護するのに役立つことが示される。
【0039】
図1は、実施の形態による正極を形成する方法の流れ
図100である。この方法は、実験装置および/または産業機器を使用して行うことができる。より詳しくは、この方法は、被覆不規則岩塩結晶構造を有する正極活性材料を製造するために使用される。この方法は、
図1に示されたものより、多い工程、少ない工程、および/またはそれとは異なる工程を含むことがある。
【0040】
102で、不規則岩塩相材料を合成する。この不規則岩塩相材料は、固体化学合成により合成されることがある。例えば、溶媒中で岩塩前駆体を混合することによって、岩塩前駆体の懸濁液を調製することができる。岩塩前駆体としては、酸化マンガン(Mn2O3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、フッ化リチウム(LiF)、水酸化リチウム(LiOH)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、および/またはフッ化ニオブ(NbF5)などの金属化合物が挙げられる。溶媒としては、脱イオン水が挙げられるであろう。前駆体は、不規則岩塩相材料の所望の組成にしたがって、特定の化学量論量で添加されることがある。次に、懸濁液を混練して、前駆体混合物を形成する。混練は、粒径を小さくし、混合物を均質にするために遊星ボールミルを使用して行われることがある。混練は、他の実施の形態において、他の装置を使用して行われることがある。
【0041】
混練後、前駆体混合物を乾燥させ、次いで、焼き鈍す。例えば、前駆体混合物は、空気流の下で12時間に亘り100℃で乾燥されることがある。焼き鈍しプロセスは、乾燥した混合物を6時間と24時間の間に亘り750℃と900℃の間の温度で加熱する工程を含むことがある。焼き鈍しプロセスにより、不規則岩塩相が生じる。例えば、熱により、前駆体が反応し、単一相が形成される。焼き鈍し工程の条件は、か焼中に所望の結晶構造を提供するように選択される。例えば、その条件は、結果として得られる不規則岩塩相材料がFm-3m結晶構造を有するように選択される。指定範囲から外れた温度で、および/または指定時間範囲から外れた期間に亘り、焼き鈍すことは、形成される結晶構造に望ましくない影響を与えることがある。必要に応じて、焼き鈍しプロセスは、アルゴン(Ar)などのガス流の下で行われることがある。あるいは、焼き鈍し環境は、Arの代わりに、窒素ガス(N2)または空気であることがある。
【0042】
合成される不規則岩塩相材料は、以下の化学式(i):
LixNyMzOb-aFa (i)
を有することがあり、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Ti、Ta、Zr、W、Nb、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである。ある実施の形態において、y>0.01である。
【0043】
次に、104で、不規則岩塩相材料を1種類以上のコーティング前駆体と混合して、混合物を形成する。非限定例において、1種類以上のコーティング前駆体としては、Al(CH3CO2)3、AlPO4、NH4H2PO4、および/またはTiO2が挙げられる。コーティング前駆体は、形成すべきコーティング層の所望の組成および性質(例えば、厚さ)に基づいて、特定量で混合物に添加されることがある。
【0044】
106で、不規則岩塩相材料とコーティング前駆体の混合物を焼き鈍して、不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層を有する被覆不規則岩塩粉末を形成する。焼き鈍し工程(例えば、後焼き鈍し(post-annealing)))は、0.5時間と24時間の間の期間に亘り200℃と800℃の間の温度で混合物を加熱する工程を含むことがある。より狭い範囲の条件に、10時間と14時間の間に亘り300℃と600℃の間の温度で混合物を加熱する工程がある。1つの非限定例において、混合物は12時間に亘り300℃で加熱されることがある。別の非限定例において、混合物は、12時間に亘り600℃で加熱されることがある。加熱により、コーティング前駆体が不規則岩塩相材料の表面と反応することがある。例えば、コーティング前駆体は、残留する水酸化リチウム、残留する炭酸リチウムから存在する、または不規則岩塩相自体の内部に存在する、リチウムイオンと反応し、不規則岩塩相の表面を覆うコーティング材料の薄層を形成することがある。限られた反応しか生じない場合でさえ、焼き鈍し工程は、不規則岩塩相の表面にコーティング前駆体の層が物理的に堆積することがある。焼き鈍しは、Arガス流、もしくはN2または空気などの別のガス流の下で行われることがある。表面のコーティング層は、リン酸塩、酸化物、および/またはフッ化物の組成を有することがある。例えば、コーティング層の組成は、混合物中に利用される1種類以上のコーティング前駆体に基づいて、LiAlO2やLi2TiO3/TiO2などの酸化物、またはLi3Al2(PO4)3/AlPO4やLi3PO4などのリン酸塩を含むことがある。
【0045】
実施の形態において、焼き鈍し工程後、被覆不規則岩塩粉末を炭素前駆体と共に混練して、正極活性材料を製造する。この炭素前駆体としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、KJ600などが挙げられるであろう。ある実施の形態において、炭素前駆体と被覆不規則岩塩粉末は、不規則岩塩粉末が大多数である比で混練される。例えば、炭素前駆体に対する被覆不規則岩塩粉末の比は、60:40、70:30、80:20、90:10、またはそれより大きいことがある。ある実施の形態において、炭素前駆体に対する被覆不規則岩塩粉末の比は、95:5、96:4、または97:3など、90:10を上回る。実験的試験に使用される非限定例において、その比は96:4である。
【0046】
次いで、活性材料は、複合正極膜に形成されることがある。例えば、活性材料粉末(炭素前駆体と共に被覆不規則岩塩粉末を含む)は、1種類以上の溶媒と混合されて、スラリーを形成することがある。1種類以上の溶媒の非限定例としては、ポリ(フッ化ビニリデン)(「PVDF」)および1-メチル-2-ピロリジノン(「NMP」)が挙げられる。結果として得られたスラリーは金属集電体上に堆積される。金属集電体はステンレス鋼であることがある。次に、金属集電体上のスラリーを乾燥させて、複合正極膜を形成する。
【0047】
上述した方法により製造された複合正極膜は、被覆不規則岩塩結晶構造(例えば、Fm-3m構造)を有する。この複合正極膜は、リチウムイオン電池などの二次電池における正極として利用することができる。電池は、高分子セパレータで隔てられた正極と負極を備える。電池は、正極と負極との間でリチウムイオンと電子の輸送を可能にする電解質を備える。ここに記載された正極活性材料は、様々なタイプと組成の負極および電解質と共に使用することができる。
【0048】
非限定例において、正極としての複合正極材料、負極、セパレータ、および電解質を備えた二次電池が形成される。その電池は、高純度アルゴン充填グローブボックス(M-Braum、O2と湿度の含有量<0.1ppm)中で形成されることがある。適切な負極材料の例としては、リチウム、黒鉛(「LixC6」)、ケイ素、および他の炭素、ケイ酸塩、または酸化物系負極材料、並びに複数の負極材料を組み合わせた複合合金など、リチウムイオン電池に使用される従来の負極材料が挙げられる。非限定例において、負極は、リチウムが負極活性材料の総質量の少なくとも50質量%を占めるようなリチウム負極である。必要に応じて、リチウム含有量は、90質量%超など、75質量%超であることがある。例えば、負極活性材料は、少なくとも95質量%またはそれより多いリチウムであることがある。代わりの実施の形態において、二次電池は、負極を含まないことがあり、よって、その電池には、リチウムまたは黒鉛負極が完全にない。この代わりの実施の形態において、正極は、電池機能のためにリチウムイオンを提供することができる。
【0049】
電解質は、少なくとも1種類の有機溶媒および少なくとも1種類のリチウム塩を含むことがある。有機溶媒としては、炭酸エチレン(「EC」)、炭酸エチルメチル(「EMC」)、炭酸ジエチル(「DEC」)、炭酸フルオロエチレン(「FEC」)、炭酸トリフルオロプロピレン(「TFPC」)、炭酸プロピレン(「PC」)など、1種類以上の炭酸エステルが挙げられる。リチウム塩としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(「LiPF6」)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(「LiFSI」)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(「LiDFOB」)(LiBF2(C2O4))などが挙げられるであろう。電解質は、液相、固相、ゲル相、または別の非固相にあることがある。一例では、電解質は液体電解質である。別の例では、電解質は固体電解質である。セパレータは、ポリプロピレンなどの高分子であることがある。
【0050】
電解質は、非限定例の組成において、ECおよびEMC溶媒の添加剤との混合物中にLiPF6を含む。次いで、電池を密封し、サイクル使用する。電池は、30℃で1.5Vと4.6Vとの間でサイクル使用されることがある。
【実施例】
【0051】
実験
二次電池における正極活性材料としての被覆不規則岩塩型材料の性能を試験するために、いくつかの試験用セルを製造し、サイクル使用し、次いで、分析した。これらの実験に記載される組成およびプロセスは、非限定例である。試験用セルは、特定の性質のみを変えて、上述した方法にしたがって形成した。例えば、化学量論量の岩塩前駆体(Mn2O3、Li2CO3、Nb2O5、および酸化物またはフッ化物形態にある他のドーパント)を脱イオン水中で混合して、懸濁液を製造し、これを遊星ボールミルでボールミル粉砕して、粒径を減少させると同時に、全ての前駆体の均質な混合物を調製した。混合物を空気流の下で12時間に亘り100℃で乾燥させ、その後、アルゴン流の下で6~24時間に亘り750~900℃で焼き鈍して、不規則岩塩相を得た。
【0052】
次に、不規則岩塩相材料を特定量のコーティング前駆体、例えば、(Al(CH3CO2)3、AlPO4、NH4H2PO4、およびTiO2と混合し、その後、アルゴン流の下で、試験用セルに応じて、12時間に亘り300℃または12時間に亘り600℃のいずれかで後焼き鈍しして、被覆不規則岩塩粉末を形成した。次に、被覆不規則岩塩粉末を、96:4の被覆不規則岩塩粉末対炭素の比で炭素前駆体と共に混練して、正極注型のための活性材料を生成した。試験用セルに使用した活性材料は、使用したコーティング前駆体のタイプ、コーティング前駆体の量(例えば、活性材料の総質量に対して2質量%または5質量%のいずれか)、および焼き鈍し温度(例えば、300℃または600℃)のみを変えた。
【0053】
電池は、高純度アルゴン充填グローブボックス(M-Braum、O2と湿度の含有量<0.1ppm)中で形成した。正極は、活性材料(例えば、被覆不規則岩塩粉末と炭素前駆体)を溶媒のポリ(フッ化ビニリデン)(Sigma Aldrich)および1-メチル-2-ピロリジノン(Sigma Aldrich)と混合することによって調製した。結果として得られたスラリーをステンレス鋼集電体上に堆積させ、乾燥させて、複合正極膜を形成した。負極については、薄いLi箔を所要のサイズに切断した。各電池は、複合正極膜、ポリプロピレンセパレータ、およびリチウム箔負極を備えた。ECとEMCの混合物中にLiPF6を含む電解質を使用した。電池を密封し、30℃で1.5~4.6Vでサイクル使用した。
【0054】
2つの対照の試験用セルおよび16の候補の試験用セルを製造した。対照の試験用セルは、不規則岩塩型材料上にどのようなコーティング材料も有さなかった。16の試験用セルの各々は、4つの試験用セルが(Al(CH3CO2)3前駆体を有し、別の4つがAlPO4前駆体を有し、別の4つがNH4H2PO4前駆体を有し、4つの最後の群がTiO2前駆体を有するように、Al(CH3CO2)3、AlPO4、NH4H2PO4、またはTiO2のいずれかに基づくコーティング層を備えた。16の試験用セルの半分が、不規則岩塩相材料とコーティング前駆体の総質量の2質量%を占めるコーティング層を生成するための量のコーティング前駆体を有した。残りの試験用セルは、コーティング層が正極活性材料の5質量%を占めるように、それより多い量のコーティング前駆体を有した。最後に、後焼き鈍し条件を変えて、同じ量の時間に亘り2つの異なる温度で試験用セルを加熱した。例えば、試験用セルの半分を300℃で焼き鈍し、他方の半分を600℃で焼き鈍した。試験用セルは、下記の表1および2に特定され、特徴付けられている。試験用セルの全ては、不規則岩塩型正極材料およびリチウム負極を有し、0.1C充電(0.05C CV)/0.1V放電で、30℃で1.5~4.6Vでサイクル使用した。
【0055】
表1には、対照の試験用セルと比べた、実施の形態による被覆不規則岩塩型正極を有する試験用セルのサイクル使用結果が示されており、表1の全ての試験用セルは、12時間に亘り300℃で後焼き鈍しされている。表2には、対照の試験用セルと比べた、実施の形態による被覆不規則岩塩型正極を有する試験用セルのサイクル使用結果が示されており、表2の全ての試験用セルは、12時間に亘り600℃で後焼き鈍しされている。これらの表には、第1サイクルの容量(「Cy1放電容量」)および第1サイクルのクーロン効率(「Cy1CE」)を含む実験結果が示されている。第1サイクルの容量のデータはmAh/gの単位であり、クーロン効率のデータはパーセント(%)である。
【0056】
【0057】
【0058】
表1および2のデータが、
図2Aおよび2Bにグラフ化されている。
図2Aは、表1および2で特定された18の試験用セルに関する初期(第1サイクル)放電容量をプロットしたグラフ200である。
図2において、表1からのデータ(300℃の焼き鈍し)が、プロットの左半分202に示されており、表2からのデータ(600℃の焼き鈍し)が、プロットの右半分204に示されている。グラフ200は、候補の試験用セルのほとんどは、対照の試験用セルと比べて、類似のまたはわずかしか減少していない初期放電容量を有したことを示している。コーティング前駆体としてAl(Ac)
3を含む4つの候補のセルのみが、対照のセルと比べて、著しく減少した放電容量を示した。
【0059】
図2Bは、表1および2に特定された18の試験用セルに関するクーロン効率(CE)をプロットしたグラフ250である。表1および2からのデータは、
図2Aに示されたように、半分に分割されている。グラフ250は、Al(CH
3CO
2)
3を含むいくつかの組成を除いて、候補の試験用セルのほぼ全てが、対照セルよりも改善された初期CEを有したことを示している。これら18の試験用セルのサイクル性能を試験した。その結果が、
図3A、3B、4A、4B、5A、および5Bに示されている。
【0060】
図3Aは、300℃で後焼き鈍しされた、表1に示されている候補の試験用セルおよび対照セルに関するサイクル数に対する放電容量をプロットしたグラフ300である。
図3Bは、表1および
図3Aに示されている候補の試験用セルおよび対照セルに関するサイクル数に対するサイクル使用容量保持をプロットしたグラフ350である。
図4Aは、600℃で後焼き鈍しされた、表2に示されている候補の試験用セルおよび対照セルに関するサイクル数に対する放電容量をプロットしたグラフ400である。
図4Bは、表2および
図4Aに示されている候補の試験用セルおよび対照セルに関するサイクル数に対するサイクル使用容量保持をプロットしたグラフ450である。
【0061】
図3A、3B、4A、および4Bは、被覆不規則岩塩型正極材料を有する候補の試験用セルの全てが、対照の試験用セルよりも改善されたサイクル性能を提供したことを示している。リン酸塩前駆体AlPO
4およびNH
4H
2PO
4を含む候補の試験用セルは、概して、酸化物コーティング前駆体よりも良好な成績を収めることが観察された。5質量%のコーティングを有する候補の試験用セルは、概して、
図3Bおよび4Bに示されるように、両方の後焼き鈍し条件下で、2質量%のものよりも良好なサイクル容量保持を有することが観察された。
【0062】
図5Aは、300℃で後焼き鈍しされた、表1に示されている候補の試験用セルおよび対照セルに関するサイクル数に対するCEをプロットしたグラフ500である。
図5Bは、表1および
図5Aに示されている候補の試験用セルおよび対照セルに関するサイクル数に対するセル抵抗の増大をプロットしたグラフ550である。抵抗の増大は、第1すなわち初期サイクルでの抵抗に対する所定のサイクル数での抵抗の割合(「Cyx/Cy1」)として示されている。
図5AにおけるCEのサイクル使用についてプロットされた傾向と、
図5Bにおけるセル抵抗の増大は、
図2Bに示されたサイクル使用した容量保持の傾向と良好に合致する。すなわち、候補の試験用セルは、CEおよびセル抵抗の増大の限定に関して、対照の試験用セルを上回って改善させれたサイクル性能を示した。600℃で後焼き鈍しされた候補のセルに関するサイクル使用したCEおよびセル抵抗の増大は、その結果が
図5Aおよび5Bに示された傾向と似ているので、プロットされていない。
【0063】
これらの実験結果により、ここに記載された実施の形態による被覆不規則岩塩型正極材料を備えた候補の試験用セルは、その不規則岩塩型正極材料上にコーティングを備えていない対照セルよりも優れたサイクル性能を示したことが示される。例えば、そのコーティングは、不規則岩塩の表面を安定化し、これにより良好なサイクル性能がもたらされると考えられる。類似のサイクル使用容量が得られたときに、候補のセルが対照セルよりも大きい初期CEおよびサイクル使用CEを示すという事実は、充電中に不規則岩塩相材料と電解質との間で生じた副反応がより少ないという兆候である。(Al(CH3CO2)3を有するセル以外の候補の試験用セルは、対照よりもわずかに少ない初期可逆容量を有することが観察されたが、この差はわずかであり、サイクル性能の利得により薄れる。全てのコーティング前駆体は、サイクル使用中に対照セルよりも良好に機能を果たすことが示されたが、リン酸塩前駆体のAlPO4およびNH4H2PO4は、概して、酸化物前駆体よりもわずかに良好に機能を果たし、したがって、好ましい。TiO2前駆体は、概して、(Al(CH3CO2)3前駆体よりも良好に機能を果たし、よって、TiO2は、(Al(CH3CO2)3よりも好ましい。
【0064】
同じ組成であるが、異なるバッチの不規則岩塩を使用した別の実験を、対照と、亜リン酸(H
3PO
3)前駆体を使用して形成された被覆不規則岩塩の両方について、上述したのと同じやり方で被覆した。この亜リン酸の量は、不規則岩塩と亜リン酸の1質量%と3質量%である。同様に、同じ濃度での亜リン酸被覆不規則岩塩について、同じ不規則岩塩とプロセスを使用して、リン酸二水素アンモニウム(ADP)で繰り返す。亜リン酸被覆不規則岩塩を、走査電子顕微鏡法によって、エネルギー分散型X線分析で検査し、比較的均一なリンの分布が示された。コーティングのない半電池(対照)および亜リン酸被覆不規則岩塩型正極とリチウム金属負極のサイクル性能が、
図6に示されている。これらの被覆不規則岩塩型正極セルが、相当な初期容量を犠牲にせずに、実質的に改善されたサイクル寿命を有するのが容易に明らかである。ADP被覆不規則岩塩半電池は、サイクル性能を改善するが、亜リン酸不規則岩塩被覆半電池と同じ程度ではない。限定するものではないが、亜リン酸は分解して、リン酸とホスフィンを形成し、これらが反応して、リン酸リチウム(Li
3PO
4)とリン化リチウム(Li
3P)を形成し、これが改善された性能の主な要因であろうと考えられる。すなわち、決して限定するものではなく、ホスフィンの存在が、不規則岩塩型正極電池を被覆するために、さらに有益であろうと考えられる。
【0065】
亜リン酸被覆不規則岩塩の全電池を製造する。この電池は、
図7に示されるように、半電池と比べて改善されたサイクル性能を示し、未被覆の不規則岩塩型正極(対照)を有するセルの寿命の約2倍を達成する。
【0066】
ここに用いられているように、数値の前に挿入される「約」、「実質的に」、および「およそ」などの値の修飾語句は、その値が、既定値の5%以内、10%以内、または15%以内の値など、既定値より高いおよび/または低い指定閾値範囲内の他の値を表せることを示す。
【0067】
先の記載は、説明に役立つことが意図されており、制限するものではないことを理解すべきである。例えば、上述した実施の形態(および/またはその態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。それに加え、特定の状況または材料を本開示の様々な実施の形態の教示に、それらの範囲から逸脱せずに、適用するために、多くの改変を行うことができる。ここに記載された材料の寸法およびタイプは、本開示の様々な実施の形態のパラメータを定義する意図があるが、その実施の形態は、決して限定するものではなく、例示の実施の形態である。先の記載を検討した際に、多くの他の実施の形態が、当業者に明白であろう。したがって、本開示の様々な実施の形態の範囲は、付随の特許請求の範囲の請求項を、そのような請求項が関与する等価物の全範囲と共に参照することによって、決定されるべきである。付随の特許請求の範囲および詳細な説明において、「含む」および「において」という用語は、それぞれの用語「含む」および「において」の分かり易い英語の等価物として使用される。さらに、「第1」、「第2」および「第3」などという用語は、ラベルとしてのみ使用され、それらの物体に数値要件を課す意図はない。さらに、以下の請求項の制限は、ミーンズ・プラス・ファンクションの形式で記載されておらず、そのような請求項の制限が、構造が欠けている機能の記述が続く「ための手段」という句を明確に使用していない限り、米国法典第35編第112(f)条に基づいて解釈される意図はない。
【0068】
ここに記載された説明は、最良の形態を含む、本開示の様々な実施の形態を開示し、また任意の装置またはシステムの製造と使用、および任意の組み込まれた方法の実施を含む、本開示の様々な実施の形態を当業者が実施できるようにするために、例を使用している。本開示の様々な実施の形態の特許可能な範囲は、請求項により定義され、当業者に想起される他の例を含み得る。そのような他の例は、例が、請求項の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、または例が、請求項の文字通りの言語からの違いが極わずかな同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあると意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
ここに記載された説明は、最良の形態を含む、本開示の様々な実施の形態を開示し、また任意の装置またはシステムの製造と使用、および任意の組み込まれた方法の実施を含む、本開示の様々な実施の形態を当業者が実施できるようにするために、例を使用している。本開示の様々な実施の形態の特許可能な範囲は、請求項により定義され、当業者に想起される他の例を含み得る。そのような他の例は、例が、請求項の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、または例が、請求項の文字通りの言語からの違いが極わずかな同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあると意図されている。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
不規則岩塩相材料、および
前記不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層であって、酸化物、リン酸塩、リン化物、およびフッ化物の1つ以上を含むコーティング層、
を備えた正極。
実施形態2
前記不規則岩塩相材料が、化学式(i):
Li
x
N
y
M
z
O
b-a
F
a
(i)
で表され、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Nb、Ti、Ta、Zr、W、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである、実施形態1に記載の正極。
実施形態3
b=2である、実施形態2に記載の正極。
実施形態4
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して0.05質量%以上かつ10質量%以下で存在する、実施形態1から3いずれか1つに記載の正極。
実施形態5
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して1から5質量%で存在する、実施形態4に記載の正極。
実施形態6
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して2から4質量%で存在する、実施形態4に記載の正極。
実施形態7
前記コーティング層が、LiAlO
2
、Li
3
Al
2
(PO
4
)
3
、AlPO
4
、Li
3
PO
4
、Li
3
PおよびLi
2
TiO
3
、TiO
2
の1つ以上を含む、実施形態1に記載の正極。
実施形態8
前記コーティング層が、Li
3
PO
4
およびLi
3
Pを含む、実施形態7に記載の正極。
実施形態9
前記不規則岩塩相材料が、Fm-3m結晶構造を有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の正極。
実施形態10
正極を形成する方法において、
不規則岩塩相材料を1種類以上のコーティング前駆体と混合して、混合物を形成する工程であって、該1種類以上のコーティング前駆体は、Al(CH
3
CO
2
)
3
、焼き鈍し中に分解してリン酸リチウムまたはリチウム金属リン酸塩を形成するリン酸塩、リン化リチウム、リチウム金属リン化物およびTiO
2
の1つ以上を含む、工程、および
前記混合物を焼き鈍して、前記不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層を有する被覆不規則岩塩粉末を形成する工程、
を含む方法。
実施形態11
前記リン酸塩が分解してLi
3
PO
4
を形成する、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
前記リン酸塩が分解してホスフィンを形成する、実施形態10または11に記載の方法。
実施形態13
前記焼き鈍し工程中に、ホスフィンが存在する、実施形態10から12いずれか1つに記載の方法。
実施形態14
前記ホスフィンが反応してリン化物を形成する、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
形成された前記コーティング層が、LiAlO
2
、Li
3
Al
2
(PO
4
)
3
、AlPO
4
、Li
3
PO
4
、Li
3
P、およびLi
2
TiO
3
、TiO
2
の1つ以上を含む、実施形態10から14いずれか1つに記載の方法。
実施形態16
前記焼き鈍し工程が、0.5時間以上かつ24時間以下の期間に亘り200℃以上かつ800℃以下の温度で前記混合物を加熱する工程を含む、実施形態10から15いずれか1つに記載の方法。
実施形態17
前記焼き鈍し工程が、不活性ガス中で前記混合物を加熱する工程を含む、実施形態10に記載の方法。
実施形態18
前記不活性ガスが流動するアルゴンである、実施形態17に記載の方法。
実施形態19
前記焼き鈍し工程後に前記被覆不規則岩塩粉末を1種類以上の炭素前駆体と共に混練して、正極活性材料を製造する工程をさらに含む、実施形態10から18いずれか1つに記載の方法。
実施形態20
前記炭素前駆体がカーボンナノチューブを含む、実施形態19に記載の方法。
実施形態21
実施形態1から9いずれか1つに記載の正極を備えた二次電池。
実施形態22
実施形態10から20いずれか1つに記載の方法により形成された正極を備えた二次電池。
実施形態23
前記リン酸塩が、リン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩またはその組合せであり、前記リン化物が、リチウム金属リン化物、リン化リチウムまたはその組合せである、実施形態1に記載の正極。
実施形態24
前記リチウム金属リン酸塩および前記リチウム金属リン化物の金属が遷移金属である、実施形態23に記載の正極。
実施形態25
前記金属が前記不規則岩塩相材料中に存在する金属である、実施形態24に記載の正極。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則岩塩相材料、および
前記不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層であって、酸化
チタン、
リチウム金属リン酸塩、
リン酸リチウム、リン酸金属酸化物、リン化物、およびフッ化物の1つ以上を含むコーティング層、
を備えた正極。
【請求項2】
前記不規則岩塩相材料が、化学式(i):
Li
xN
yM
zO
b-aF
a (i)
で表され、式中、1.0<x<1.65;0≦y<0.55;0.1<z<1;0≦a<0.8;l≦b≦3;Nは、Nb、Ti、Ta、Zr、W、Sb、またはMoの内の1つであり;Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Y、Mo、Ru、Rh、またはSbの内の1つである、請求項1記載の正極。
【請求項3】
前記コーティング層が、前記不規則岩塩相材料と該コーティング層の総質量に対して0.05質量%以上かつ10質量%以下で存在する、
請求項1記載の正極。
【請求項4】
前記コーティング層が、LiAlO
2、Li
3Al
2(PO
4)
3
、Li
3PO
4、Li
3PおよびLi
2TiO
3、TiO
2の1つ以上を含む、請求項1記載の正極。
【請求項5】
前記コーティング層が、Li
3PO
4およびLi
3Pを含む、
請求項4記載の正極。
【請求項6】
正極を形成する方法において、
不規則岩塩相材料を1種類以上のコーティング前駆体と混合して、混合物を形成する工程であって、該1種類以上のコーティング前駆体は、Al(CH
3CO
2)
3、焼き鈍し中に分解してリン酸リチウムまたはリチウム金属リン酸塩を形成するリン酸塩、リン化リチウム、リチウム金属リン化物およびTiO
2の1つ以上を含む、工程、および
前記混合物を焼き鈍して、前記不規則岩塩相材料の表面に配置されたコーティング層を有する被覆不規則岩塩粉末を形成する工程、
を含む方法。
【請求項7】
前記
1種類以上のコーティング前駆体が、焼き鈍し中に分解してリン酸リチウムまたはリチウム金属リン酸塩を形成するリン酸塩、リン化リチウム、リチウム金属リン化物およびTiO
2
の1つ以上を含み、該リン酸塩が分解してLi
3PO
4を形成する、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記焼き鈍し工程中に、ホスフィンが存在する、
請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記リン酸塩が分解してホスフィンを形成する、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ホスフィンが反応してリン化物を形成する、
請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記焼き鈍し工程が、
不活性ガス中で0.5時間以上かつ24時間以下の期間に亘り200℃以上かつ800℃以下の温度で前記混合物を加熱する工程を含む、
請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記焼き鈍し工程後に前記被覆不規則岩塩粉末を1種類以上の炭素前駆体と共に混練して、正極活性材料を製造する工程をさらに含む、
請求項6から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記炭素前駆体がカーボンナノチューブを含む、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1から5いずれか1項記載の正極を備えた二次電池。
【請求項15】
前記リン化物が、リチウム金属リン化物、リン化リチウムまたはその組合せであ
り、前記リチウム金属リン酸塩および前記リチウム金属リン化物の金属が、前記不規則岩塩相材料中に存在する遷移金属である、
請求項1から5いずれか1項記載の正極。
【国際調査報告】