(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】架橋剤として使用され得る、アジリジン官能基を有するポリカルボジイミドの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 18/28 20060101AFI20240808BHJP
C08G 18/02 20060101ALI20240808BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240808BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240808BHJP
C09D 201/08 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08G18/28 015
C08G18/02 050
C09D7/65
C09D5/02
C09D201/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509311
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 NL2022050470
(87)【国際公開番号】W WO2023022591
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501236847
【氏名又は名称】シュタール インタナショナル ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルクセン、アンドリース ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】フィッセルス、スザンネ
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA02
4J034CA02
4J034CB01
4J034CC33
4J034CC42
4J034CC52
4J034CC62
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB06
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA07
4J038DG001
4J038DN011
4J038GA09
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038PC03
(57)【要約】
アジリジン官能基も含有し、かつ遺伝毒性ではない、ポリカルボジイミドの調製のためのプロセス。これらのアジリジン官能性ポリカルボジイミドは、架橋剤として使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジリジン官能性ポリカルボジイミドの調製のためのプロセスであって、
i)ポリイソシアネート又はモノ及びポリイソシアネートの混合物の、80~200℃での、0.02~5重量パーセンテージのカルボジイミド触媒の存在下での反応のステップであって、イソシアネート官能性ポリカルボジイミドが、任意選択的にポリカルボジイミドと混合して、1~10個のカルボジイミド官能基の平均値で形成される、ステップと、
ii)残りのイソシアネート官能基を、1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の第2の化合物と反応させることとともに、その前に(prior to)、又はその後に(followed by)、親水性基並びに1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する第1の化合物を、ポリカルボジイミド鎖の形成において消費されないイソシアネート官能基に対して、0.05~0.95当量添加することによって、前記ポリカルボジイミド鎖の前記形成中又は後に、前記イソシアネート官能性ポリカルボジイミド鎖を停止並びに/又は鎖延長するステップと、を含み、
0~60重量%の有機溶媒及び/又は0~50重量%の可塑剤、及び/又は0~30重量%の表面活性成分が、カルボジイミド形成反応及び/又は停止反応及び/又は鎖延長反応の間、前、又は後に添加され、
1つ以上のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する前記第2の化合物のうちの少なくとも1つが、追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有し、1つ以上の1-アジリジンアルカン酸部分のエステル又はその誘導体である、プロセス。
【請求項2】
1つ以上のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、かつ追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する前記第2の化合物が、300ダルトンを超える、好ましくは350ダルトン~900ダルトンの範囲内の分子量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
1つ以上のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、かつ追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する前記第2の化合物が、前記ポリカルボジイミド鎖の前記形成において消費されない前記イソシアネート官能基に対して、0.05~0.95当量として計算された量で添加される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、かつ1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する前記第2の化合物が、2つ以上のアジリジン基、好ましくは2~5つのアジリジン基を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、かつ1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する前記第2の化合物が、1-アジリジンアルカン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソアルコキシ]アルキル]-2-(ヒドロキシアルキル)-α,ω-アルカンジイル]エステル又はその誘導体の群に属する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、かつ1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する前記第2の化合物が、1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル、1-アジリジン酢酸、α-メチル-、2-[[2-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2-エチル-、2-[[3-(2-エチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2,2-ジメチル-、2-[[3(2,2-ジメチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]エチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、2-[[3-ヒドロキシ-2,2-ビス[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]プロポキシ]メチル]-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2-プロピル-、2-(ヒドロキシメチル)-2-[[1-オキソ-3-(2-プロピル-1-アジリジニル)プロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、2-(2-ヒドロキシエチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-[[3-[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]-2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]プロポキシ]メチル]-2-[[3-(2メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル、1-アジリジンブタン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソブトキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル、1-アジリジン酢酸、2-[[2-(1-アジリジニル)-1-オキソエトキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル、β-アラニン、N-[2-(1-アジリジニル)エチル]-、3-[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]-2-(ヒドロキシメチル)-2-[[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]メチル]プロピルエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、かつ1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する前記第2の化合物が、1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル、1-アジリジンプロパン酸、2-エチル-、2-[[3-(2-エチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル、及び1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステルからなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の第1及び第2の化合物のうちの少なくとも1つが、例えば、自己縮合又は自己添加によって、ポリマーに含まれた対応する官能基に対する反応性を有するアジリジン以外の1つ又は複数の更なる反応性基を含有する化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する前記第2の化合物が、ハロゲン、アルケニル、アリールアルケン、アルキニル、アリールアルキン、アルカジエン、アルデヒド、ジアルキルアセタール、ジチオアセタール、ケトン、不飽和アルデヒド、ケトン若しくはカルボン酸エステル、ニトリル、イミン、アルキルアルコキシシラン、アルコキシシラン、無水物、混合無水物、オキシム保護ジイソシアネート、ジケトン、ケトエステル、チオケトエステル、ケトチオエステル、チオケトチオエステル、又は反応性環系、又は1つ若しくは複数のそのような反応性基の混合物である、追加の反応性官能基を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
親水性基並びに1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する前記第1の化合物が、100~3000ダルトンの分子量を有するポリエトキシモノオール若しくはジオール、100~3000ダルトンの分子量及び100/0~25/75のエトキシ/プロポキシ比を有するポリエトキシ/ポリプロポキシモノオール若しくはジオール、100~3000ダルトンの分子量を有するポリエトキシモノアミン若しくはジアミン、100~3000ダルトンの分子量及び100/0~25/75のエトキシ/プロポキシ比を有するポリエトキシ/ポリプロポキシモノアミン若しくはジアミン、ペンダントポリアルコキシ鎖を含有するジオール若しくはジアミン、ヒドロキシル若しくはアミンアルキルスルホネート、又はジアルキルアミノ-アルキル-アルコール若しくはアミン、あるいはそれらの混合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ポリイソシアネートが、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、若しくはジシクロヘキシル-メタン-4,4’-ジイソシアネート、又はそれらの混合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記アジリジン官能性カルボジイミドが、遺伝毒性ではない、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
先行請求項のいずれか一項に定義されるプロセスによって入手可能な、アジリジン官能性ポリカルボジイミド。
【請求項14】
架橋剤として請求項13に記載のアジリジン官能性ポリカルボジイミドと、水に分散されたポリマーと、を含む、コーティング混合物であって、ポリマーが、カルボン酸官能基を含有する、コーティング混合物。
【請求項15】
請求項14に記載のコーティング混合物を基質に塗布し、前記水及び、存在する場合、更なる溶媒を蒸発させることによって得られた、硬化された材料。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化された材料のコーティングを含む、コーティングされた製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジリジン官能基も含有し、かつ遺伝毒性ではない、ポリカルボジイミドの調製のためのプロセスに関する。これらのアジリジン官能性ポリカルボジイミドは、架橋剤として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸官能基を含有する水性ポリマーのための既知の架橋剤は、ポリカルボジイミド、エポキシド、及びアジリジンである。特にアジリジンは、有効な架橋剤であり、長年使用されてきた。アジリジン架橋剤は、速く反応し、結果として生じる架橋された樹脂は、頑丈であり、架橋されていない樹脂と比較してはるかに改善された耐薬品性を示す。最も広く使用されるアジリジン架橋剤は、ビス(2-メチルアジリジン-1-プロピオン酸)2-エチル-2-[[3-(2-メチルアジリジン-1-イル)プロピオニル]メチル]プロパン-1,3-ジイル(CAS64265-57-2)であり、これはStahl PolymersからXL-706として市販されている。しかしながら、この化合物の主な不利点は、変異原性である、その分類である。したがって、有益な架橋特性を有するが、好ましくない変異原性特性を有さないアジリジン架橋剤が非常に望ましいであろう。
【0003】
ポリカルボジイミドは、カルボン酸官能基を含有する水性ポリマーのための周知の架橋剤である。ポリカルボジイミドの調製及び適用の開発の概説は、EP1644428に記載される。架橋に寄与する追加の官能基を有するポリカルボジイミドが特に興味深い。
【0004】
架橋剤としての多官能性ポリカルボジイミドの調製及び適用は、EP0507407に記載される。これらの架橋剤は、カルボジイミド基及び少なくとも1つの他の官能基を含有する。両方の基は、架橋に寄与する。この特許は、いくつかのタイプの他の官能基に言及しており、例としては、これらの多官能性ポリカルボジイミドにおける他の官能基として、エポキシド基、トリアルキルオキシシラン基、アゼチジン基、及びアジリジン基が挙げられる。しかしながら、EP0507407は、得られたアジリジン官能性ポリカルボジイミドが、それらを架橋剤としての使用に望ましくないものとする、変異原性であることを教示する。
【0005】
EP2598555はまた、架橋剤としての多官能性ポリカルボジイミドの調製を記載し、特徴として、イソシアネート基がカルボジイミド形成に寄与する1つ以上の追加の官能基を含有する1つ以上のモノ及び/又はポリイソシアネートは、ポリカルボジイミド化ステップ中に存在し、これは、得られたポリカルボジイミドの比較的低い粘度をもたらす。EP2598555は、アジリジン基を含む、追加の官能基についての多くの可能性に言及するが、実施例及び従属請求項は、トリアルキルオキシシラン基にのみ言及する。
【0006】
WO2020/020714は、-NH-C(O)-[O-CHR’’-CHR’]m-アジリジン基として存在する、複数のアジリジン官能基を含有する特定のポリマーの調製及び使用を記載する。複数の-NH-C(O)-[O-CHR’’-CHR’]m-アジリジン基は、脂肪族炭化水素官能基、脂環式炭化水素官能基、芳香族炭化水素官能基、イソシアヌレート官能基、イミノオキサジアジンジオン官能基、エーテル官能基、エステル官能基、アミド官能基、炭酸官能基、ウレタン官能基、尿素官能基、ビウレット官能基、アロファン酸官能基、ウレトジオン官能基、及びそれらの任意の組み合わせを介して接続される。WO2020/020714における例は、複数のアジリジン官能基を含有するこれらの特定のポリマーが遺伝毒性ではないことを実証する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、遺伝毒性ではなく、かつカルボン酸官能基を含有する水性ポリマーについての有効な架橋剤である、アジリジン官能性ポリカルボジイミドの調製のためのプロセスを提供することである。
【0008】
本発明によれば、遺伝毒性ではない、アジリジン官能性ポリカルボジイミドの調製のためのプロセスであって、
i)ポリイソシアネート又はモノ-及びポリイソシアネートの混合物の、80~200℃での、0.02~5重量パーセンテージのカルボジイミド触媒の存在下での反応のステップであって、イソシアネート官能性ポリカルボジイミドが、任意選択的にポリカルボジイミドと混合されて、任意選択的にポリカルボジイミドと組み合わされたイソシアネート官能性ポリカルボジイミドの1~10個のカルボジイミド官能基の平均値で形成される、ステップと、
ii)残りのイソシアネート官能基を、1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の第2の化合物と反応させることとともに、その前に(prior to)、又はその後に(followed by)、親水性基並びに1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する第1の化合物を、ポリカルボジイミド鎖の形成において消費されないイソシアネート官能基に対して、0.05~0.95当量添加することによって、ポリカルボジイミド鎖の形成中又は後に、イソシアネート官能性ポリカルボジイミド鎖を停止並びに/又は鎖延長するステップと、を含み、
0~60重量%の有機溶媒及び/又は0~50重量%の可塑剤、及び/又は0~30重量%の表面活性成分が、カルボジイミド形成反応及び/又は停止反応及び/又は鎖延長反応の間、前、又は後に添加され、
1つ以上のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する第2の化合物のうちの少なくとも1つが、追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有し、1つ以上の1-アジリジンアルカン酸部分のエステル又はその誘導体である、プロセスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
EP0507407の関連する例では、追加のアジリジン官能基を、2-メチルアジリジン又は1-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンイミンを使用することによって、イソシアネート官能性ポリカルボジイミドオリゴマー上に反応させる。
【0010】
驚くべきことには、本プロセス中に第2の化合物の1つとして、遊離ヒドロキシ又はアミン官能基を更に含む1つ以上の1-アジリジンアルカン酸部分のエステル又はその誘導体を、イソシアネート官能性ポリカルボジイミドオリゴマー上に反応させることによって、追加のアジリジン官能基が組み込まれる場合、得られたアジリジン官能性ポリカルボジイミドは、遺伝毒性ではないことが明らかになった。具体的には、エステルが以下からなる群から選択されるとき:1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS 57116-45-7)、1-アジリジン酢酸、α-メチル-、2-[[2-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 120933-17-7)、1-アジリジンプロパン酸、2-エチル-、2-[[3-(2-エチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 121336-97-8)、1-アジリジンプロパン酸、2,2-ジメチル-、2-[[3(2,2-ジメチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]エチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 121336-99-0)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS 121366-89-0)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、2-[[3-ヒドロキシ-2,2-ビス[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]プロポキシ]メチル]-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 125687-19-6)、1-アジリジンプロパン酸、2-プロピル-、2-(ヒドロキシメチル)-2-[[1-オキソ-3-(2-プロピル-1-アジリジニル)プロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 134449-00-6)、1-アジリジンプロパン酸、2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 333754-04-4)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、2-(2-ヒドロキシエチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 333754-06-6)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-[[3-[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]-2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]プロポキシ]メチル]-2-[[3-(2メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS 959712-87-9)、1-アジリジンブタン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソブトキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS 2583876-73-5)、1-アジリジン酢酸、2-[[2-(1-アジリジニル)-1-オキソエトキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS 2583876-75-7)、β-アラニン、N-[2-(1-アジリジニル)エチル]-、3-[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]-2-(ヒドロキシメチル)-2-[[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]メチル]プロピルエステル(CAS 497092-87-2)、及びそれらの混合物。
【0011】
加えて、架橋有効性は、参照変異原性アジリジン架橋剤CAS 64265-57-2で得られたものと同等、又は更に良好であったことが驚くべきことに見出された。よって、アジリジンタイプの架橋剤は、遺伝毒性ではなく、水性カルボン酸含有樹脂のための架橋剤として有効である本プロセスによって得られる。
【0012】
遺伝毒性は、細胞の遺伝子又はDNAに対する化学物質又は薬剤によってもたらされる毒性効果である。よって、遺伝毒性効果を有する化学物質は、遺伝毒性物質である。変異原性は、細胞又は生物の遺伝子材料において変異を引き起こすか、又は誘導する物質の能力である。遺伝毒性効果は、必ずしも変異と関連付けられるとは限らないので、遺伝毒性化学物質は、必ずしも変異原性物質ではない。しかしながら、全ての変異原性薬剤は、細胞の遺伝子材料を破壊する特性を有するため、遺伝毒性である。したがって、物質が遺伝毒性ではない場合、それは変異原性でもない。
【0013】
アジリジン官能性ポリカルボジイミドにおいてアジリジン官能基及びカルボジイミド官能基の両方を有する追加の利点は、両方の官能基が、水性カルボン酸官能性樹脂のカルボン酸基に対して反応性であり、よって、アジリジン官能性ポリカルボジイミドの官能基の濃度が、官能基としてカルボジイミド基のみを含有するポリカルボジイミドと比較して比較的高いが、一方、カルボジイミド基及びトリアルコキシシランの組み合わせを有することが、水性カルボン酸官能性樹脂のカルボン酸基に対して両方とも反応性ではない2つの官能基をもたらすことである。したがって、より高濃度の組み合わされたアジリジン及びカルボジイミド基があり、これは、カルボン酸水性官能性樹脂を架橋させる架橋剤の適切な量を考慮するときに合計され得る。
【0014】
遺伝毒性は、本明細書に更に記載されるように、ToxTracker(登録商標)アッセイ(Toxys、Leiden、The Netherlands)によって測定することができる。ToxTracker(登録商標)アッセイは、純粋な物質に、又は組成物に適用することができる。ToxTrackerアッセイは、単一の試験において新しく開発された化合物の生物学的反応性及び潜在的発癌特性を特定するために使用することができる、6つの検証されたGFPベースのマウス胚性幹(mES)レポーター細胞株のパネルである。ToxTrackerは、化合物の生物学的反応性の検出のために特定の細胞シグナル伝達経路の活性化をモニタリングする哺乳動物幹細胞ベースアッセイである。インビトロ遺伝毒性試験に現在使用されているがん由来細胞株とは対照的に、幹細胞は、遺伝的に安定しており、化合物の潜在的発癌特性の正確な検出に必要な全ての細胞経路に精通している。広範な全ゲノム転写プロファイリングは、異なるクラスの発癌物質及び毒性物質への曝露時に優先的に活性化されるバイオマーカー遺伝子のパネルの特定につながった。これらのバイオマーカー遺伝子の活性化状態の容易な評価を可能にするために、Toxysは、緑色蛍光(GFP)mESレポーター細胞株を生成した。これらのレポーターは、幹細胞へのトランスフェクション後のGFPレポーターの生理学的調節を確実にするプロモーター及び調節エレメントを含む完全なバイオマーカー遺伝子を含有する細菌人工染色体(BAC)を使用して作製した。ToxTrackerアッセイは、遺伝毒性についての2つのレポーターを含有する。Bscl2-GFPは、バルキーDNA病変の形成、及びその後のDNA複製ストレス時に活性化され、Rtkn-GFPは、DNA二本鎖切断の誘導時に活性化される。直接的にはDNA反応性物質は通常、遺伝毒性についての両方のマーカーを活性化するが、酸化損傷又は異数性誘発性のために間接的に遺伝毒性である物質については、Rtkn-GFPのみの活性化がしばしば観察される。ToxTrackerアッセイは、化合物がレポーターのうちのいずれかにおけるGFP発現の少なくとも2倍の増加を誘導するときに陽性応答を有すると考えられた。Bscl2-GFP又はRtkn-GFPレポーターの活性化は、DNA損傷の誘導を示し、Srxn1-GFP及びBlvrb-GFPは、細胞酸化ストレスの誘導を示し、Ddit3-GFP活性化は、折り畳まれていないタンパク質応答に関連する。Btg2-GFPレポーターは、p53腫瘍サプレッサーによって制御され、DNA損傷によって活性化されるが、酸化ストレス、低酸素、代謝ストレス、及びアポトーシスによっても誘導され得る。化合物は、ToxTracker(登録商標)アッセイ(Toxys、Leiden、The Netherlands)によって測定されたレポーターのうちのいずれかにおいてGFP発現の2倍よりも小さい増加を誘導するとき、遺伝毒性ではないとみなされる。
【0015】
本プロセスにおいて、プロセス中、又はアジリジン官能性ポリカルボジイミドの得られた混合物の使用中に使用するのに便利な粘度を得るために、ある量の有機溶媒又は可塑剤を使用することができる。これは、使いやすさを改善する。いくらかの親水性を有する可塑剤、例えば、エチルリン酸トリブトキシ、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、又はグリコールモノ-2-ヘキシル-ヘキサン酸トリエチレンが好ましく、その結果、アジリジン官能性ポリカルボジイミドは、可塑剤と一緒に水又は水性系中に容易に分散され得る。本発明の生成物は、水性ポリマー系において使用されるように優れて作製されており、したがって、溶媒又は溶媒系は、水と混和性であるか、又は少なくとも部分的に混和性であることが好ましい。好適な溶媒の例は、酢酸メチル、酢酸エチル、N-メチル-ピロリドン、N-エチル-ピロリドン、N-オクチル-ピロリドン、酢酸メトキシプロピル、酢酸エトキシプロピル、酢酸メトキシブチル、酢酸エトキシブチル、二酢酸プロピレングリコール、ジグリコールジメチルエーテル、ジグリコールジエチルエーテル、酢酸メチルグリコール、酢酸エチルグリコール、酢酸ブチルグリコール、レブリン酸エチル、レブリン酸ブチル、レブリン酸塩プロパンジオールケタール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭酸プロピレン、及び関連溶媒である。
【0016】
本発明のプロセスにおいて使用される表面活性材料は、一般に、ヒドロキシル又はアミン官能性タイプを除き、コーティング産業において使用される従来の表面活性イオン性又は非イオン性薬剤である。
【0017】
アジリジン官能性ポリカルボジイミドの調製に使用されるポリイソシアネートは、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、及びそれらの混合物、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシル-メタン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロ-ヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン(2,2,4-異性体、2,4,4-異性体、又はそれらの混合物)、1,4-シクロヘキシジイソシアネート、ノルボニルジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び/又は1,5-ナフチレンジイソシアネートであり得る。ポリイソシアネートの混合物、及びまたウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、又はイソシアヌレート残基の導入によって修飾されたポリイソシアネートを使用することができる。特に好ましいポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート、並びに具体的には脂肪族ジ-及びポリイソシアネート、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、及びジシクロヘキシル-メタン-4,4’-ジイソシアネートが挙げられる。
【0018】
本発明のプロセスでは、ポリイソシアネートの次に、いくつかのモノ-イソシアネートもステップi)において使用され得る。モノ-イソシアネートの量は、アジリジン官能性化合物と反応し、依然として1を超えるカルボジイミド官能基の平均値を得るために利用可能な十分な未反応イソシアネートを有するように高すぎないべきであり、好ましくは、イソシアネート混合物中のモノ-イソシアネートのモル分率は、33%未満、より好ましくは25%未満であるべきである。モノ-イソシアネートは、4~25個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル、アルキレン、アルキル-アリール、若しくはアルキレン-アリール基を含有するイソシアネートであり得るか、又はモノ-イソシアネートは、トリメトキシシラン基、ジメトキシメチルシラン基、若しくはトリ-エトキシシラン基などの、追加の官能基を含有し得る。例えば、それは、アルキル-、シクロアルキル、アルキル-アリール、又はアリールアルキル官能性イソシアネート、例えば、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、2-ヘプチル-3,4-ビス(9-イソシアナトノニル)-1-ペンチルシクロヘキサン、(3-イソシアナト-プロピル)トリメトキシシラン、(3-イソシアナトプロピル)トリ-エトキシ-シラン、又は(3-イソシアナトプロピル)メチルジメトキシシランであり得る。しかしながら、好ましくは、ポリイソシアネートのみが使用され、その場合、未反応イソシアネート基の得られる量は、所望の平均カルボジイミド官能基の特定の値についてより高く、より多くのアジリジン官能性化合物をポリマー上に反応させることを可能にする。
【0019】
プロセスにおいて使用されるカルボジイミド触媒は、任意の従来のカルボジイミド触媒であり得るが、好ましくは、1-メチルホスホレン-オキシド又は2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドが使用される。
【0020】
ポリカルボジイミド鎖中のカルボジイミド官能基の平均値は、第1の反応ステップをモニタリングすることによって選択することができる。第1の反応ステップ後のイソシアネートの残量は、この数についての尺度である。より短い反応時間を使用することによって、より少ないカルボジイミド官能基を有するポリカルボジイミド鎖が得られ、より長い反応時間を使用することによって、より多くのカルボジイミド官能基を有するポリカルボジイミド鎖が得られる。より多量のカルボジイミド触媒を使用し、より高い反応温度を使用することは、より高い反応速度及びよって、ポリカルボジイミド鎖中の同じ数のカルボジイミド官能基が目的とされる場合、より短い反応時間の両方をもたらす。ポリカルボジイミド鎖中のカルボジイミド官能基の平均値は、平均カルボジイミド官能性とも呼ばれる。
【0021】
本プロセスの方法に従って調製される生成物は、親水性基がポリマー中に組み込まれているため、それらが使用される水又は水性ポリマー分散物中に容易に分散され得る。
【0022】
親水性基並びに1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する第1の化合物は、好ましくは、100~3000ダルトンの分子量を有するポリエトキシモノオール若しくはジオール、100~3000ダルトンの分子量及び100/0~25/75のエトキシ/プロポキシ比を有するポリエトキシ/ポリプロポキシモノオール若しくはジオール、100~3000ダルトンの分子量を有するポリエトキシモノアミン若しくはジアミン、100~3000ダルトンの分子量及び100/0~25/75のエトキシ/プロポキシ比を有するポリエトキシ/ポリプロポキシモノアミン若しくはジアミン、ペンダントポリアルコキシ鎖を含有するジオール若しくはジアミン、ヒドロキシル若しくはアミンアルキルスルホネート、又はジアルキルアミノ-アルキル-アルコール若しくはアミン、あるいはそれらの混合物である。
【0023】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の第2の化合物は、任意のモノオール、モノアミン、ジオール、ジアミン、若しくはポリオール、又はポリアミンであり得る。ポリマーポリオールは、特に、ジオール及びトリオール並びにそれらの混合物を含むが、例えば、ジオールとの混合物中のマイナー成分として、より高次官能性ポリオールも使用され得る。ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、又はそれらの混合物などの、使用されるポリマーポリオールの化学クラスのうちのいずれかのメンバーであり得る。
【0024】
1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の第2の化合物は、例えば、自己縮合又は自己添加によって、ポリマー若しくは水中のポリマー分散物、エマルジョン、若しくは溶液中の官能基に対して、又は対応する基に対して反応性を有する1つ又は複数の反応性基を含有する化合物であり得る。反応性官能基は、ハロゲン、アルケニル、アリールアルケン、アルキニル、アリールアルキン、アルカジエン、アルデヒド、ジアルキルアセタール、ジチオアセタール、ケトン、不飽和アルデヒド、ケトン若しくはカルボン酸エステル、ニトリル、イミン、アルキルアルコキシシラン、アルコキシシラン、無水物、混合無水物、オキシム保護ジイソシアネート、ジケトン、ケトエステル、チオケトエステル、ケトチオエステル、チオケトチオエステル、又は1つ若しくは複数のそのような反応性基の混合物であり得、反応性官能基はまた、反応性環系であるか、又はそれを含有し得る。反応性環系は、求電子又は求核攻撃時に開き得る任意の環系であり得る。反応性環系は、1つ又は複数の窒素及び/又は酸素及び/又は硫黄及び/又はケト及び/又はケト-エノール官能基を含有する任意の3、4、5、6、7、又は8員環であり得る。そのような反応性環系の例は、アジリジン、エポキシド、チイラン、アジリン、オキシレン、チイレン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ベータ-ラクタム、ベータ-ラクトン、チエタノン、フラン、ピロリン、ジヒドロフラン、ジヒドロチオフェン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、オキサゾリジン、ジオキソラン、オキサチオラン、チアゾリジン、イミダゾリン、ジチオラン、ピラゾリジン、ピラゾリン、オキサゾリン、チアゾリン、イミダゾリン、ジオキソール、オキサゾロン、ピロリドン、ブチロラクトン、チオブチロラクトン、ブチロチオラクトン、チオブチロチオラクトン、オキサゾリドン、ジオキソラン-2-オン、チアゾリジノン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、コハク酸無水物、スクシンイミド、チオピラン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリミジン、ジオキサン、モルホリン、チアモルホリン、ジチアン、及びトリアジンである。
【0025】
一態様においては、1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の第2の化合物は、1つ以上のアジリジン反応性基を含有する1つ又は複数の化合物及び、例えば、自己縮合又は自己添加によって、ポリマー若しくは水中のポリマー分散物、エマルジョン、若しくは溶液中の官能基に対して、又は対応する基に対して反応性を有する、アジリジン以外の、少なくとも1つの更なる反応性基を含有する1つ又は複数の化合物の組み合わせであり得る。例えば、コーティング製剤に含まれるような、ポリマーの官能基に対して反応性を有する複数の異なる官能基の添加は、単位重量及び/又は体積当たりの形成されたアジリジン官能性ポリカルボジイミドの架橋性能を有利に増加させることができる。
【0026】
追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の化合物は、1つ以上の1-アジリジンアルカン酸部分のエステルであり得る。追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の化合物は、以下の構造(I)によって視覚化することができ、
【化1】
式中、m=1以上、n=1以上、q=2又は3、r=3-q、R
1、R
2、及びR
3は、H又はアルキルであり、Aは、アルキル又はテロ-アルキル鎖の任意の長さであり、R
4は、任意の基、例えば、アルキル又は[]
q括弧間に官能基を更に含有する基であり得る。
【0027】
代替的には、追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有する1つ又は複数の化合物は、以下の構造(II)によって視覚化することができ、
【化2】
式中、aは、1又は2個の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、b、d、及びeは、各々個別に、1~3個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、各々個別に、1又は2個の炭素原子を有するHラジカル又はアルキルラジカルを表す。
【0028】
1つ以上の1-アジリジンアルカン酸部分のエステルとしては、1-アジリジンアルカン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソアルコキシ]アルキル]-2-(ヒドロキシアルキル)-α,ω-アルカンジイル]エステル又はその誘導体が挙げられる。1つ以上の1-アジリジンアルカン酸部分のエステルの好ましい例は、1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS57116-45-7)、1-アジリジン酢酸、α-メチル-、2-[[2-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS120933-17-7)、1-アジリジンプロパン酸、2-エチル-、2-[3-(2-エチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロキシ]メチル]-2(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS121336-97-8)、1-アジリジンプロパン酸、2,2-ジメチル-、2-[3(2,2-ジメチル-1-アジリジリジニル)-1-オキソプロキシエチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS121336-99-0)、1-アジリジンプロピン酸、2-メチル-、1,1’-[2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS121366-89-0)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、2-[[3-ヒドロキシ-2,2-ビス[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]プロポキシ]メチル]-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(CAS125687-19-6)、1-アジリジンプロパン酸、2-プロピル-、2-(ヒドロキシメチル)-2-[[1-オキソ-3-(2-プロピル-1-アジリジニル)プロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(CAS134449-00-6)、1-アジリジンプロパン酸、2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS333754-04-4)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、2-(2-ヒドロキシエチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(CAS333754-06-6)、1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-[[3-[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]-2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]プロポキシ]メチル]-2-[[3-(2メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS959712-87-9)、1-アジリジンブタン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソブトキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS2583876-73-5)、1-アジリジン酢酸、2-[[2-(1-アジリジニル)-1-オキソエトキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS2583876-75-7)、又はβ-アラニン、N-[2-(1-アジリジニル)エチル]-、3-[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]-2-(ヒドロキシメチル)-2-[[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]メチル]プロピルエステル(CAS497092-87-2)であり、そのうち1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステルが好ましい例である。
【0029】
本発明の文脈において、1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、追加の官能基として1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する1つ又は複数の化合物は、ポリカルボジイミド鎖の形成において消費されないイソシアネート官能基に対して、0.05~0.95当量(モル当量)として計算された量で添加される。
【0030】
本発明の文脈において、1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する1つ又は複数の化合物の分子量は、300ダルトンを超え、好ましくは350ダルトン~900ダルトンの範囲内である。
【0031】
本発明の文脈において、1つ又は複数のアミン及び/又はヒドロキシル官能基を含有し、1つ又は複数のアジリジン官能基も含有する1つ又は複数の化合物は、2つ以上のアジリジン基、好ましくは2~5つのアジリジン基を含有する。化合物当たりのより多くのアジリジン基は、結果として、最終生成物中のアジリジン基の総濃度をより高くするであろう。これは、架橋剤として使用されるとき、架橋基のより高い濃度のために、より低い量(グラム)の化合物が必要であるため、有利である。化合物当たりのより多くのアジリジン基はまた、得られるポリマーのより高い分子量をもたらし、これは、生細胞へのより低い移動性、及びしたがって遺伝毒性のより低いリスクをもたらし得る。
【0032】
本発明は更に、架橋剤として本発明のプロセスによって入手可能なアジリジン官能性ポリカルボジイミド、及び水中に分散されたポリマーを含むコーティング混合物に関し、このポリマーはカルボン酸官能基を含有し、これは溶媒を含有し得る。これらのポリマーの例は、ポリウレタン、アクリレート又はメタクリレートポリマー又はコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ラテックスである。
【0033】
更に、コーティング混合物は、有機溶媒又は乳化剤、着色剤、顔料、湿潤剤、レベリング剤、シリコーン、充填剤、可塑剤、マット剤などの、従来の添加剤を含有し得る。
【0034】
最後に、本発明は、コーティング混合物を基質に塗布し、水及び、存在する場合、溶媒を蒸発させることによって得られた硬化された材料及びコーティングされた製品に及ぶ。
【0035】
コーティングされる好適な基質は、例えば、皮革、人工皮革、プラスチック、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC又はポリエステル、紙、板紙、繊維、不織布、布、発泡体、木材、ガラス、金属、アスファルト、石、コンクリートである。
【0036】
上述の特定の態様は、本発明による全ての態様である。様々な態様は、相互に組み合わされ得る。1つの特定の態様について記載される特徴は、物理法則がそのような組み合わせを禁止しない限り、他の特定の態様に取り込まれるか、組み込まれるか、又はそれと組み合わされ得る。
【0037】
本発明は、しかしながら、本発明が限定されない以下の例によって更に例示される。全て保護の範囲内で、多くの他の態様が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0038】
実施例1:
窒素雰囲気下、184gのジシクロヘキシル-メタン-4,4’-ジイソシアネート及び0.25gの1-メチルホスホレン-オキシドの混合物を、撹拌しながら180℃に加熱し、2.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して11.9%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで100gの二酢酸プロピレングリコールを加え、混合物を90~100℃まで冷却した。次いで、169g(0.86当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)及び0.05gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を1時間続け、続いて66gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)及び500gの二酢酸プロピレングリコールを添加した。撹拌を120℃で3時間続けた。
【0039】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの21gのCO2の放出に起因して、40重量%である。
【0040】
カルボジイミド基の理論濃度は、0.47mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、1.19mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、1.66mmol/gである。
【0041】
実施例2:
窒素雰囲気下、478gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、138gの二酢酸プロピレングリコール、及び1.7gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、2.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して10.8%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、77g(0.13当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)及び0.08gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を1時間続け、続いて106gのブチルグリコール、98gのMPEG-350(350ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M350PUとして市販される)及び162gの二酢酸プロピレングリコールを添加した。撹拌を120℃で3時間続けた。
【0042】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの63gのCO2の放出に起因して、70重量%である。
【0043】
カルボジイミド基の理論濃度は、1.12mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、0.43mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、1.55mmol/gである。
【0044】
実施例3:
窒素雰囲気下、380gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、108gの二酢酸プロピレングリコール、及び1.4gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、3.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して8.3%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、118g(0.33当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)、61gのブチルグリコール、95gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、及び100gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.09gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を120℃で3時間続けた。次に、192gの二酢酸プロピレングリコールを混合物に加えた。
【0045】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの56gのCO2の放出に起因して、60重量%である。
【0046】
カルボジイミド基の理論濃度は、1.16mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、0.75mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、1.91mmol/gである。
【0047】
実施例4:
窒素雰囲気下、382gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、108gの二酢酸プロピレングリコール、及び1.4gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、3.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して8.3%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、123g(0.34当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)、50gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.09gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を120℃で1時間続けた。次に、60gのブチルグリコール、90gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、及び50gの二酢酸プロピレングリコールを添加し、撹拌を120℃で3時間続け、続いて192gの二酢酸プロピレングリコールを混合物に添加した。
【0048】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの57gのCO2の放出に起因して、60重量%である。
【0049】
カルボジイミド基の理論濃度は、1.16mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、0.78mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、1.94mmol/gである。
【0050】
実施例5:
窒素雰囲気下、318gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、92gの二酢酸プロピレングリコール、及び1.2gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、2.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して10.8%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、191g(0.47当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)、50gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.06gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を120℃で1時間続けた。次に、49gのブチルグリコール、82gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、及び50gの二酢酸プロピレングリコールを添加し、撹拌を120℃で3時間続け、続いて208gの二酢酸プロピレングリコールを混合物に添加した。
【0051】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの42gのCO2の放出に起因して、60重量%である。
【0052】
カルボジイミド基の理論濃度は、0.88mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、1.23mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、2.11mmol/gである。
【0053】
実施例6:
窒素雰囲気下、218gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、63gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.8gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、2.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して10.8%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、240g(0.87当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)、50gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.06gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を120℃で1時間続けた。次に、3gのブチルグリコール、66gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、及び50gの二酢酸プロピレングリコールを添加し、撹拌を120℃で3時間続け、続いて337gの二酢酸プロピレングリコールを混合物に添加した。
【0054】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの29gのCO2の放出に起因して、50重量%である。
【0055】
カルボジイミド基の理論濃度は、0.61mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、1.57mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、2.18mmol/gである。
【0056】
実施例7:
窒素雰囲気下、218gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、63gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.8gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、2.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して10.8%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、264g(0.87当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、2-メチル-、1,1’-[2-(ヒドロキシメチル)-2-[[3-(2-メチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル]エステル(CAS121366-89-0)、50gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.06gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を120℃で1時間続けた。次に、3gのブチルグリコール、66gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、及び50gの二酢酸プロピレングリコールを添加し、撹拌を120℃で3時間続け、続いて337gの二酢酸プロピレングリコールを混合物に添加した。
【0057】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの29gのCO2の放出に起因して、50重量%である。
【0058】
カルボジイミド基の理論濃度は、0.58mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、1.51mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、2.09mmol/gである。
【0059】
実施例8:
窒素雰囲気下、218gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、63gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.8gの2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニル-1H-ホスホール1-オキシドの混合物を、撹拌しながら150℃に加熱し、2.0のポリマー中の所望の理論量のカルボジイミド官能基に対して10.8%のNCO含有量が得られるまで加熱を続けた。反応時間は、6時間であった。次いで、混合物を90~100℃まで冷却し、287g(0.87当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、2-エチル-、2-[[3-(2-エチル-1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイルエステル(CAS121366-97-8)、50gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.06gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)を添加し、撹拌を120℃で1時間続けた。次に、3gのブチルグリコール、66gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、及び50gの二酢酸プロピレングリコールを添加し、撹拌を120℃で3時間続け、続いて337gの二酢酸プロピレングリコールを混合物に添加した。
【0060】
不揮発性部分は、カルボジイミド形成反応からの29gのCO2の放出に起因して、50重量%である。
【0061】
カルボジイミド基の理論濃度は、0.55mmol/gである。アジリジン基の理論濃度は、1.45mmol/gである。カルボジイミド基及びアジリジン基の合計理論濃度は、2.00mmol/gである。
【0062】
比較実施例9:
窒素雰囲気下、272gのTolonate HDT-LV(Vencorex Chemicalsから市販される1,6-ヘキシルジイソシアネートのホモポリマー)、208g(0.34当量に相当する)の1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル]エステル(Menadiona S.L.から、CL-427として市販される)、110gのブチルグリコール、109gのMPEG-750(750ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル、Clariant GmbHからPolyglykol M750PUとして市販される)、300gの二酢酸プロピレングリコール、及び0.06gのK-Kat348(触媒、King Industriesから市販される)の混合物を、120℃で3時間撹拌した。
【0063】
不揮発性部分は、70重量%である。
【0064】
アジリジン基の理論濃度は、1.40mmol/gである。
【0065】
実施例10:遺伝毒性試験
遺伝毒性は、純粋な物質に、又は組成物に適用することができる、ToxTracker(登録商標)アッセイ(Toxys、Leiden、The Netherlands)によって測定した。ToxTrackerアッセイは、単一の試験において新しく開発された化合物の生物学的反応性及び潜在的発癌特性を特定するために使用することができる、6つの検証された緑色蛍光タンパク質(GFP)ベースのマウス胚性幹(mES)レポーター細胞株のパネルである。
【0066】
6つの独立したmESレポーター細胞株を、200μlのmES細胞培地(ウェル当たり50.000細胞)中のゼラチンコーティングされた96ウェル細胞培養プレートにおいて播種した。96ウェルプレートにおいて細胞を播種した24時間後、培地を吸引し、10%ウシ胎仔血清及び希釈された化学物質を含有する新鮮なmES細胞培地を細胞に添加した。試験された材料について、5つの濃度を2倍希釈で試験した。GFPレポーターの誘導は、フローサイトメーターを使用して24時間の曝露後に決定された。無傷の単一細胞におけるGFP発現のみが決定された。平均GFP蛍光を測定し、ビヒクル対照処理と比較してGFPレポーター誘導を計算するために使用した。細胞毒性は、フローサイトメーターを使用して24時間曝露後の細胞数によって推定され、ビヒクル曝露対照と比較して、24時間曝露後の無傷の細胞のパーセンテージとして表された。代謝活性化は、aroclor1254誘導ラット(Moltox)からのS9肝臓抽出物の添加によって、ToxTrackerアッセイに含めた。細胞を、0.25%のS9及び必要な補因子(RegenSysA+B、Moltox)の存在下で、5つの濃度の試験試料に24時間曝露した。
【0067】
シスプラチン(DNA損傷)、マレイン酸ジエチル(酸化ストレス)、ツニカマイシン(折り畳まれていないタンパク質応答)、及びアフラトキシンB1(S9によるプロゲノトキシンの代謝活性化)での陽性参照処理を全ての実験に含めた。溶媒濃度は、全てのウェルにおいて同じであり、DMSO又はエタノールについて1%を超えることはなかった。ToxTrackerアッセイは、化合物がレポーターのうちのいずれかにおけるGFP発現の少なくとも2倍の増加を誘導するときに陽性応答を有すると考えられた。ToxTrackerアッセイは、遺伝毒性についての2つのレポーターを含有する。Bscl2-GFPは、バルキーDNA病変の形成、及びその後のDNA複製ストレス時に活性化され、Rtkn-GFPは、DNA二本鎖切断の誘導時に活性化される。直接的にはDNA反応性物質は通常、遺伝毒性についての両方のマーカーを活性化するが、酸化損傷又は異数性誘発性のために間接的に遺伝毒性である物質については、Rtkn-GFPのみの活性化がしばしば観察される。
【0068】
1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル](CL-427として、Menadiona S.L.から市販される)への曝露は、S9の不在下で、Bscl2-GFP及びRtkn-GFPレポーターを活性化した。実施例3からの試料への曝露は、Bscl2-GFPレポーターを活性化しなかった。Rtkn-GFPレポーターの弱い活性化(>1.5倍)が、S9の存在下で観察されたが、誘導レベルは、陽性ToxTracker応答についての2倍閾値を超えなかった。
【0069】
p53活性化についてのレポーターである、Btg2-GFPを、1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル](CL-427として、Menadiona S.L.から市販される)への、S9の不在下での曝露時に活性化した。実施例3からの試料への曝露は、S9の存在下でBtg2-GFPレポーターを弱く活性化したのみであったが、誘導レベルは、陽性ToxTracker応答についての2倍閾値を超えなかった。Btg2-GFPレポーターは、DNA損傷、及び酸化ストレス、熱ショック、低酸素、又はアポトーシスによって活性化され得る、p53腫瘍サプレッサーの活性化と関連付けられる。
【0070】
これらの試験結果は、1-アジリジンプロパン酸、1,1’-[2-[[3-(1-アジリジニル)-1-オキソプロポキシ]メチル]-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジイル](CL-427として、Menadiona S.L.から市販される)が遺伝毒性であるとみなされ、実施例3からの試料が遺伝毒性であるとみなされないという結論に至った。
【0071】
実施例11:
比較実施例9からの生成物及び市販製品を参照例としたポリウレタン分散物中の架橋剤としての実施例1~6からの生成物の試験。
【0072】
5重量%の実施例1~6及び比較実施例9からの生成物を、RU-3901(Stahl Europe BVから市販されるポリウレタン分散物)と、又はトップコート製剤WT-73-575(Stahl Europe BVから市販されるポリウレタン分散物を含む混合物)と混合した。全ての場合において、まず水中での1:1又は1:2希釈を行い、その後、この希釈物をRU-3901又はWT-73-575と混合した。加えて、いくつかの市販の架橋剤も、参照として、以下の試験シリーズに含めた:XL-706(ビス(2-メチルアジリジン-1-プロピオン酸)2-エチル-2-[[3-(2-メチルアジリジン-1-イル)プロピオニル]メチル]プロパン-1,3-ジイル;Stahl Polymersから市販される)、XL-702(40%の不揮発性含有量を有する水性ポリカルボジイミド架橋剤、Stahl Polymersから市販される)、XL-701(50%の不揮発性含有量を有する「多官能性」ポリカルボジイミド架橋剤、Stahl Polymersから市販される)、及びNeoAdd Pax523(80%の不揮発性含有量を有する、マルチ-アジリジンポリマー、Covestro AGから市販される)。XL-706を、5重量%の代わりに1重量%及び2重量%の量で添加した。各分散物を、300μmの厚さで、ガラスシート上に塗布し、その上に塗布されたフィルムを有するガラスシートを、室温で1日間、その後オーブンにおいて80℃で8時間乾燥させた。乾燥フィルムの試料を、溶媒として水、エタノール、又はMEK(メチルエチルケトン又は2-ブタノン)での溶媒取り込み試験に供した。この試験では、乾燥され、秤量されたフィルム片を、水、エタノール、又はMEK中に30分間浸漬し、次いでフィルムの重量の増加を決定する。
【0073】
この溶媒取り込み試験における重量増加は、重量のより低い増加がより高い程度の架橋を示す、架橋についての尺度である。更に、フィルムの機械的特性及び伸びを、Instron5544A装置で測定した。機械的特性は、特定の歪みでのより大きな応力値がより高い程度の架橋を示す、架橋についての尺度である。試験の結果を表1に提示する。
【0074】
結果は、実施例1~6の架橋剤での架橋が、参照市販架橋剤製品及び比較実施例9と比較して同等以上の程度であることを示し、これは、フィルムが100%延伸されるときに得られるフィルムにおけるより高い歪み(M-100)によって、及びフィルムが水、エタノール、又はMEKに浸漬されるときの同等の重量増加によって実証される。
【0075】
結果は、非遺伝毒性である、本発明の架橋剤が、変異原性として分類される、参照アジリジン架橋剤XL-706と同様の又はそれよりも良好な架橋性能を与えることを実証する。
【0076】
【0077】
実施例12:
ポリウレタン分散物中の架橋剤としての実施例1~6からの生成物、及び比較例9からの生成物、並びに参照例としての市販製品の試験は、実施例11と同様に行ったが、使用された量は、等量のミリモルの官能基が投与されるように計算され、官能基のミリモルは、カルボジイミド基の量及びアジリジン基の量の合計である。添加される架橋剤の量は、約7mmolの架橋剤の官能基が、100gのポリウレタン樹脂又は水性トップコートに投与されるように計算された。これは、この架橋剤の通常の量である、XL-706の1%の使用に対応する。参照製品NeoAdd Pax523についての2,0mmol/gは、その技術データシートに記載される1当量当たり500gの等価重量から計算した。結果を表2に収集する。実施例1~6における高濃度の官能基のため、より低濃度のカルボジイミド基を含有する、参照ポリカルボジイミド架橋剤XL-701及びXL-702と比較して、比較的少量のみの実施例1~6を投与しなければならなかった。
【0078】
結果は、実施例1~6の架橋剤での架橋が、参照市販架橋剤製品及び比較実施例9と同等以上の程度であることを示し、これは、フィルムが100%延伸されるときに得られるフィルムにおけるより高い歪み(M-100)によって、及びフィルムが水、エタノール、又はMEKに浸漬されるときの同等の重量増加によって実証される。
【0079】
結果は、非遺伝毒性である、本発明の架橋剤が、変異原性として分類される、参照アジリジン架橋剤XL-706と同様の架橋性能を与えることを実証する。
【0080】
【国際調査報告】