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特表2024-530252イネの雑草抵抗におけるフラボノイド配糖体の作用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】イネの雑草抵抗におけるフラボノイド配糖体の作用
(51)【国際特許分類】
   A01H 3/04 20060101AFI20240808BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20240808BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20240808BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20240808BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20240808BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20240808BHJP
   A01N 65/44 20090101ALI20240808BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20240808BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20240808BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20240808BHJP
【FI】
A01H3/04
A01H6/46 ZNA
A01H1/00 A
A01N43/16 C
A01P21/00
A01P13/00
A01N65/44
A01M21/04 C
A01G7/06 A
A01G22/22 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510257
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2022070229
(87)【国際公開番号】W WO2023019871
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110942015.X
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524061976
【氏名又は名称】中国科学院植物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】漆小泉
(72)【発明者】
【氏名】馬愛民
(72)【発明者】
【氏名】宋波
(72)【発明者】
【氏名】戴均貴
(72)【発明者】
【氏名】宋治軍
【テーマコード(参考)】
2B022
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA10
2B121AA19
2B121CC05
2B121EA26
2B121FA15
4H011AB02
4H011AB03
4H011BB08
(57)【要約】
本発明は、イネの雑草抵抗におけるフラボノイド配糖体の作用を開示している。本発明は、イソオリエンチンの以下のいずれかにおける使用:雑草の成長抑制、植物の他感作用の制御、植物の雑草に対する抵抗力の制御を提供する。本発明の結果は、イソオリエンチン(isoorientin)により植物の他感作用を制御することができ、雑草の成長を抑制するために使用できることを示している。本発明は、環境に優しいグリーン農薬の開発に重要な意義を持つとともに、水田における雑草の防除に理論的指針を与える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソオリエンチンの以下のいずれかにおける使用:
P1:雑草の成長抑制、
P2:植物の他感作用の制御、
P3:植物の雑草に対する抵抗力の制御。
【請求項2】
P2において、前記植物の他感作用の制御は、当該植物体内におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、前記植物の他感作用を強化することであり、
P3において、前記植物の雑草に対する抵抗力の制御は、前記植物体内におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、前記植物の雑草に対する抵抗力を強化することである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記植物はイネであり、前記雑草はイヌビエである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
雑草にイソオリエンチンを施用する工程を含む、雑草の成長抑制方法。
【請求項5】
前記イソオリエンチンの作用濃度が500mg/L以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記イソオリエンチンの作用濃度が500mg/Lである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記雑草の成長抑制は、雑草の根又は幼根の成長を抑制することである、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、他感作用が強化された植物品種を得る工程を含む、他感作用が強化された植物品種の育種方法。
【請求項9】
受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を低下させることにより、他感作用が低減された植物品種を得る工程を含む、他感作用が低減された植物品種の育種方法。
【請求項10】
受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、雑草に対する抵抗力が強化された植物品種を得る工程を含む、雑草に対する抵抗力が強化された植物品種の育種方法。
【請求項11】
受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を低下させることにより、雑草に対する抵抗力が低減された植物品種を得る工程を含む、雑草に対する抵抗力が低減された植物品種の育種方法。
【請求項12】
前記方法において、前記受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることは、以下のように達成される、請求項8又は10に記載の方法:
(A1)前記受容体植物における、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を低下させる、及び/又は
(A2)前記受容体植物における、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を向上させる。
【請求項13】
前記方法において、前記受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を低下させることは、以下のように達成される、請求項9又は11に記載の方法:
(B1)前記受容体植物における、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を向上させる、及び/又は
(B2)前記受容体植物における、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を低下させる。
【請求項14】
(A1)は、以下の(a1)により達成され、(A2)は、以下の(a2)により達成される、請求項12に記載の方法:
(a1)前記受容体植物における、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する、
(a2)前記受容体植物に、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子を導入する。
【請求項15】
(B1)は、以下の(b1)により達成され、(B2)は、以下の(b2)により達成される、請求項13に記載の方法:
(b1)前記受容体植物に、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子を導入する、
(b2)前記受容体植物における、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する。
【請求項16】
前記他の物質は、前記受容体植物の他感作用を強化できない物質であるか、又はイソオリエンチンよりも弱い程度で前記受容体植物の他感作用を強化する物質である、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記他の物質は、前記受容体植物の雑草に対する抵抗力を強化できない物質であるか、又はイソオリエンチンよりも弱い程度で前記受容体植物の雑草に対する抵抗力を強化する物質である、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
(A1)、(a1)、(B1)及び(b1)において、前記他の物質は、イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシドである、請求項12から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
植物がイネであり、前記雑草はイヌビエである、請求項4から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
Os02g0589400タンパク質又はその関連生物材料の以下のいずれかにおける使用:
Q1:イソオリエンチンのグリコシル化反応を触媒すること、
Q2:イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシドの調製、
Q3:植物におけるイソオリエンチン含有量の制御;
前記関連生物材料は、前記Os02g0589400タンパク質を発現することができる核酸分子又は前記核酸分子を含む発現カセット、組換えベクター、組換え菌又はトランスジェニック細胞株である;
前記Os02g0589400タンパク質は、以下のいずれかで示されるタンパク質である:
(D1)アミノ酸配列がSEQ ID No.1であるタンパク質、
(D2)SEQ ID No.1で示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加されるとともに、同一の機能を有するタンパク質、
(D3)(D1)~(D2)のいずれかに限定されるアミノ酸配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上、又は80%以上の相同性を有するとともに、同一の機能を有するタンパク質、
(D4)(D1)~(D3)のいずれかに限定されるタンパク質のN末端及び/又はC末端にタグを結合して得られる融合タンパク質。
【請求項21】
請求項8から19のいずれかに記載の方法を用いて育種することにより得られた植物品種。
【請求項22】
イソオリエンチンである、雑草の成長抑制化合物。
【請求項23】
前記雑草は、イヌビエである、請求項22に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーの分野に関し、具体的にはイネの雑草抵抗におけるフラボノイド配糖体の作用に関する。
【背景技術】
【0002】
水田における雑草の成長は、イネの収量や品質に深刻な影響を及ぼしている(Amb and Ahluwalia,2016;Chung et al.,2018)。現在、除草剤の施用が主な雑草防除方法であるが、除草剤の大量施用には、環境汚染を引き起こし(Annett et al.,2014)、ヒトの健康を危険にさらし、抵抗性雑草を増加させる(Jabran et al.,2015)など、多くの危険が伴う。したがって、環境に優しい雑草管理技術、特に他感作用に基づく雑草防除戦略の開発がますます注目を集めている(Cheng and Cheng、2015)。植物の他感作用とは、生物間の相互作用、すなわち、ある植物(又は微生物)が、1つ又は複数の化学物質(他感物質)を環境に放出することによって、他の植物(又はは微生物)の成長に直接的又は間接的に影響を与える作用を指す(Rice,1984)。
【0003】
現在、イネで発見された他感物質は、主にインドール類、フェノール酸類、テルペノイド類、フラボノイド類、脂肪酸類、アルカロイド類などに分けられ(Khanh et al.,2007;Kato-Noguchi et al.,2011;Chung et al.,2018)、他感作用を有するフラボノイド類物質は主にトリシン(tricin,5,7,4’-trihydroxy-3’,5’-dimethoxyflavone)であり、他のフラボノイド類物質に他感作用があるかどうか、またイネの他感作用の遺伝メカニズムや抑草メカニズムは明らかになっていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、イネの雑草抵抗におけるフラボノイド配糖体の作用について保護を求める。
【0005】
第一態様において、本発明は、イソオリエンチンの以下のいずれかにおける使用について保護を求める。
P1:雑草の成長抑制、
P2:植物の他感作用の制御、
P3:植物の雑草に対する抵抗力の制御。
【0006】
植物の他感作用の制御は、植物体内におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、植物の他感作用を強化することである。
【0007】
植物の雑草に対する抵抗力の制御は、植物体内におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、植物の雑草に対する抵抗力を強化することである。
【0008】
第二態様において、本発明は、雑草の成長抑制方法について保護を求める。
【0009】
本発明が保護を求める雑草の成長抑制方法は、雑草にイソオリエンチンを施用する工程を含むことができる。
【0010】
ここで、イソオリエンチンの作用濃度が500mg/L以上であってもよい。
【0011】
本発明の具体的な実施形態において、イソオリエンチンの作用濃度は500mg/Lである。
【0012】
本発明の具体的な実施形態において、雑草の成長抑制は、具体的に雑草の根又は幼根の成長を抑制することである。
【0013】
第三態様において、本発明は、以下のいずれかの方法について保護を求める。
方法I:受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、他感作用が強化された植物品種を得る工程を含む、他感作用が強化された植物品種の育種方法。
方法II:受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を低下させることにより、他感作用が低減された植物品種を得る工程を含む、他感作用が低減された植物品種の育種方法。
方法III:受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることにより、雑草に対する抵抗力が強化された植物品種を得る工程を含む、雑草に対する抵抗力が強化された植物品種の育種方法。
方法IV:受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を低下させることにより、雑草に対する抵抗力が低減された植物品種を得る工程を含む、雑草に対する抵抗力が低減された植物品種の育種方法。
【0014】
上記方法において、受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を向上させることは、以下のように達成することができる。
(A1)受容体植物における、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を低下させる、及び/又は
(A2)受容体植物における、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を向上させる。
【0015】
上記方法において、受容体植物におけるイソオリエンチンの含有量を低下させることは、以下のように達成することができる。
(B1)受容体植物における、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を向上させる、及び/又は
(B2)受容体植物における、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質の活性及び/又は発現量を低下させる。
【0016】
さらに、(A1)は、以下の(a1)により達成することができ、(A2)は、以下の(a2)により達成することができる。
(a1)受容体植物における、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する、
(a2)受容体植物に、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子を導入する。
【0017】
さらに、(B1)は、以下の(b1)により達成することができ、(B2)は、以下の(b2)により達成することができる。
(b1)受容体植物に、イソオリエンチンから他の物質への変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子を導入する、
(b2)受容体植物における、他の物質からイソオリエンチンへの変換を触媒することができるタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する。
【0018】
ここで、他の物質は、受容体植物の他感作用を強化できない物質であるか、又はイソオリエンチンよりも弱い程度で受容体植物の他感作用を強化する物質である。あるいは、他の物質は、受容体植物の雑草に対する抵抗力を強化できない物質であるか、又はイソオリエンチンよりも弱い程度で受容体植物の雑草に対する抵抗力を強化する物質である。
【0019】
本発明の具体的な実施形態において、(A1)、(a1)、(B1)及び(b1)における他の物質は、具体的にはイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシドである。
【0020】
上記各態様において、植物はイネであってもよく、雑草はイヌビエであってもよい。
【0021】
第四態様において、本発明は、Os02g0589400タンパク質又はその関連生物材料の以下のいずれかにおける使用について保護を求める。
Q1:イソオリエンチンのグリコシル化反応を触媒すること、
Q2:イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシドの調製、
Q3:植物におけるイソオリエンチン含有量の制御。
【0022】
関連生物材料は、Os02g0589400タンパク質を発現することができる核酸分子又は核酸分子を含む発現カセット、組換えベクター、組換え菌又はトランスジェニック細胞株である。
【0023】
Os02g0589400タンパク質は、以下のいずれかで示されるタンパク質であってもよい。
(D1)アミノ酸配列がSEQ ID No.1であるタンパク質、
(D2)SEQ ID No.1で示されるアミノ酸配列において1つ又は複数のアミノ酸残基が置換及び/又は欠失及び/又は付加されるとともに、同一の機能を有するタンパク質、
(D3)(D1)~(D2)のいずれかに限定されるアミノ酸配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上、又は80%以上の相同性を有するとともに、同一の機能を有するタンパク質、
(D4)(D1)~(D3)のいずれかに限定されるタンパク質のN末端及び/又はC末端にタグを結合して得られる融合タンパク質。
【0024】
上記タンパク質において、タグとは、目的タンパク質の発現、検出、追跡及び/又は精製を容易にするために、生体外組換えDNA技術を用いて目的タンパク質と一緒に融合して発現させたポリペプチド又はタンパク質を意味する。タグは、Flagタグ、Hisタグ、MBPタグ、HAタグ、mycタグ、GSTタグ及び/又はSUMOタグなどであってもよい。
【0025】
上記タンパク質において、相同性とはアミノ酸配列の同一性を指す。アミノ酸配列の同一性は、NCBIホームページのBLASTページなど、インターネット上の相同性検索サイトを使用して測定することができる。例えば、高度なBLAST2.1では、プログラムとしてblastpを使用し、Expect値を10に設定し、すべてのFilterをOFFに設定し、MatrixとしてBLOSUM62を使用し、Gap existence cost、Per residue gap cost、Lambda ratioをそれぞれ11、1、0.85(デフォルト値)に設定し、一対のアミノ酸配列の同一性を検索して計算すると、同一性の値(%)を得ることができる。
【0026】
上記タンパク質において、99%以上の同一性は、少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%の同一性であってもよい。95%以上の同一性は、少なくとも96%、97%、98%の同一性であってもよい。90%以上の同一性は、少なくとも91%、92%、93%、94%の同一性であってもよい。85%以上の同一性は、少なくとも86%、87%、88%、89%の同一性であってもよい。80%以上の同一性は、少なくとも81%、82%、83%、84%の同一性であってもよい。
【0027】
Os02g0589400タンパク質を発現することができる核酸分子は、以下のいずれかで示されるDNA分子であってもよい。
(E1)SEQ ID No.2で示されるDNA分子、
(E2)ストリンジェントな条件下で、(E1)で限定されるDNA分子とハイブリダイズするとともに、Os02g0589400タンパク質をコードするDNA分子、
(E3)(E1)又は(E2)で限定されるDNA分子と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上又は80%以上の同一性を有するとともに、Os02g0589400タンパク質をコードするDNA分子。
【0028】
上記核酸分子において、ストリンジェントな条件は以下の通りである。50℃で、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5MのNaPOおよび1mMのEDTAの混合溶液でハイブリダイズし、50℃、2×SSC、0.1%SDSで洗浄してもよい。又は、50℃で、7%SDS、0.5MのNaPOおよび1mMのEDTAの混合溶液でハイブリダイズし、50℃、1×SSC、0.1%SDSで洗浄してもよい。又は、50℃で、7%SDS、0.5MのNaPOおよび1mMのEDTAの混合溶液でハイブリダイズし、50℃、0.5×SSC、0.1%SDSで洗浄してもよい。又は、50℃で、7%SDS、0.5MのNaPOおよび1mMのEDTAの混合溶液でハイブリダイズし、50℃、0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄してもよい。又は、50℃で、7%SDS、0.5MのNaPOおよび1mMのEDTAの混合溶液でハイブリダイズし、65℃、0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄してもよい。又は、6×SSC、0.5%SDS溶液で、65℃でハイブリダイズした後、2×SSC、0.1%SDSおよび1×SSC、0.1%SDSで一回ずつ洗浄してもよい。
【0029】
上記核酸分子において、相同性とはヌクレオチド配列の同一性を指す。ヌクレオチド配列の同一性は、NCBIホームページのBLASTページなど、インターネット上の相同性検索サイトを使用して測定することができる。例えば、高度なBLAST2.1では、プログラムとしてblastpを使用し、Expect値を10に設定し、すべてのFilterをOFFに設定し、MatrixとしてBLOSUM62を使用し、Gap existence cost、Per residue gap cost、Lambda ratioをそれぞれ11、1、0.85(デフォルト値)に設定し、一対のヌクレオチド配列の同一性を検索して計算すると、同一性の値(%)を得ることができる。
【0030】
上記核酸分子において、95%以上の相同性は、少なくとも96%、97%、98%の同一性であってもよい。90%以上の相同性は、少なくとも91%、92%、93%、94%の同一性であってもよい。85%以上の相同性は、少なくとも86%、87%、88%、89%の同一性であってもよい。80%以上の相同性は、少なくとも81%、82%、83%、84%の同一性であってもよい。
【0031】
組換え発現ベクターは、既存の植物発現ベクターを用いて構築することができる。植物発現ベクターには、バイナリーアグロバクテリウムベクターやマイクロプロジェクタイルボンバードメントに使用可能なベクターなど、例えば、pCAMBIA-1300-221、pGreen0029、pCAMBIA3301、pCAMBIA1300、pBI121、pBin19、pCAMBIA2301、pCAMBIA1301-UbiN又はこれらのベクター由来の植物発現ベクターが含まれる。植物発現ベクターはさらに、外来遺伝子の3’末端非翻訳領域、すなわちポリアデニル酸シグナル及びmRNA処理又は遺伝子発現に関与する他の任意のDNA断片を含むこともできる。ポリアデニル酸シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸の付加を指示することができる。上記遺伝子を用いて組換え発現ベクターを構築する場合には、その転写開始ヌクレオチドの前に、強化的、構成的、組織特異的又は誘導性プロモーターのいずれかを付加することができる。例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CAMV)35Sプロモーター、ユビキチン遺伝子Ubiquitinプロモーター(pUbi)、ストレス誘導性プロモーターrd29Aなどが挙げられ、これらは単独で又は他の植物プロモーターと組み合わせて使用することができる。さらに、本発明の遺伝子を用いて組換え発現ベクターを構築する場合には、翻訳エンハンサーや転写エンハンサーなどのエンハンサーを使用することもできる。これらのエンハンサー領域は、ATG開始コドンや隣接領域開始コドンなどであってもよいが、配列全体を確実に翻訳するために、コード配列のリーディングフレームと一致しなければならない。翻訳制御シグナル及び開始コドンは、様々な起源に由来するものであり、天然であってもよく、合成であってもよい。翻訳開始領域は、転写開始領域又は構造遺伝子に由来することができる。トランスジェニック植物細胞又は植物の同定やスクリーニングを容易にするために、使用される組換え発現ベクターを処理することができる。例えば、植物で発現することができる色変化酵素や発光化合物をコードする遺伝子、耐性を有する抗生物質マーカーや化学薬剤耐性マーカー遺伝子などを付加する。また、選択的マーカー遺伝子を付加することなく、そのまま植物をストレススクリーニングにより形質転換することもできる。
【0032】
第五態様において、本発明はさらに、前文の第三態様に記載の方法を用いて育種することにより得られた植物品種について保護を求める。
【0033】
植物品種には、完全な植物、種子、繁殖可能な組織又は器官などが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
育種方法によって、植物品種は、他感作用が強化された植物品種、他感作用が低減された植物品種、雑草に対する抵抗力が強化された植物品種、雑草に対する抵抗力が低減された植物品種、のいずれであってもよい。
【0035】
第六態様において、本発明はさらに、雑草の成長抑制化合物について保護を求める。
【0036】
本発明が保護を求める雑草の成長抑制化合物は、イソオリエンチンである。
【0037】
ここで、雑草はイヌビエであってもよい。
【0038】
上記各態様において、イソオリエンチン(isoorientin)の構造式は、図1で示される。イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の構造式は、図2で示される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】イソオリエンチン(isoorientin)の構造式である。
図2】イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の構造式である。
図3】Os02g0589400タンパク質の精製である。矢印は、タンパク質精製後の組換えタンパク質の大きさである。
図4】Os02g0589400のインビトロ酵素活性アッセイのクロマトグラムである。
図5】化合物イソオリエンチン(isoorientin)とイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の雑草抑制効果の比較を示す。Aは、イソオリエンチン(isoorientin)とイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)のイヌビエの幼根の成長に対する影響を示し、Bは、イソオリエンチン(isoorientin)とイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)のイヌビエの幼芽の成長に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の実施例は本発明の理解を容易にするためのものであるが、本発明を限定するものではない。以下の実施例における実験方法は、特に説明がない限り、通常の方法である。以下の実施例に使用される試験材料は、特に説明がない限り、通常の生化学試薬の店から購入したものである。以下の実施例における定量試験は、いずれも3回の重複実験を設定し、その結果を平均化したものである。
【0041】
実施例1、化合物の精製
(1)目的化合物の含有量の高いインディカ米の生葉を播種後約55日で採取し、凍結乾燥機で乾燥後、粉末状に粉砕する。8倍体積の75%エタノールを加え、超音波で3回、各回20分間抽出する。
【0042】
(2)抽出液をろ過し、ロータリーエバポレーターでアルコール臭がなくなるまで濃縮し、等体積の石油エーテルを加えて3回抽出し、石油エーテル相の抽出液を集めた後、残りの水相に等体積のジクロロメタンを加えて3回抽出し、ジクロロメタン相の抽出液を集めた後、残りの水相に等体積のn-ブタノールを加えて3回抽出し、n-ブタノール相の抽出液を集める。
【0043】
(3)(2)における各相の抽出液を1mL取り、乾燥させた後にメタノールで溶解し、遠心分離し、上清を吸引してAgilentバイアルに移し、UPLC-QTOF/MSを使用して各相の化合物を測定する。カラム:RRHD SB-C18(Agilent)、充填剤粒径:1.8μm、仕様:2.1mm(内径)×100mm(長さ)。カラム温度:40℃、注入量:5μL。移動相A:HO(ギ酸0.1%含有、%は体積百分率を表す)、移動相B:アセトニトリル。溶出勾配:0~2分:5%B~10%B、2~12分:10%B~25%B、12~18分:25%B~70%B、18~23分:70%B~90%B、23~25分:90%B~100%B、25~30分:100%B、ポストラン5分。流速:0.3mL/Min。質量分析システムは、正イオン測定モードのエレクトロスプレーイオン化源(ESI)を使用し、キャリアガスが高純度窒素、圧力:40psi、温度:325℃である。測定した結果、目的化合物が主にn-ブタノール相に存在していることが分かった。
【0044】
(4)得られたn-ブタノール相をロータリーエバポレーターで濃縮した後、低・中圧分取高速液体クロマトグラフ(Biotage IsoleraTM Prime)を用いてウェットローディング法で粗分画を行う。シリカゲルカラムの充填剤は、粒子径50μm、孔径12nmのYMC*GEL C18球形充填剤である。移動相は水(ギ酸0.1%含有、%は体積百分率を表す)、メタノールである。移動相比は10%~90%メタノールを10カラム体積、90%~100%メタノールを2カラム体積であり、%は体積百分率を表す。流速:50mL/min。
【0045】
(5)UPLC-QTOF/MSを用いて各画分中の目的化合物の含有量を(3)と同じ方法で測定する。その後、目的化合物を含む画分を合わせて、ロータリーエバポレーターで濃縮する。
【0046】
(6)濃縮物をODSカラムで予備分離し、18:82、24:76、30:70、35:65、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、100:00(体積比)のメタノール:HO溶液で順次溶出する。合計8画分を得た後、UPLC-QTOF/MSを使用して各画分中の目的化合物の含有量を測定する。測定した結果、画分2(Fr2)及び画分3(Fr3)には目的化合物が含まれていることが分かった。
【0047】
(7)Fr2を濃縮して秤量する。その後、逆相セミ分取高速液体クロマトグラフを使用して203mgのFr2を分離する。移動相:アセトニトリル-HO(15:85、v/v)、流速:2.5mL/min。合計13画分(Fr2.1~Fr2.13)を得た。測定した結果、Fr2.10には目的化合物が含まれていることが分かった。これを濃縮して、43mgの濃縮物を得た後、逆相セミ分取高速液体クロマトグラフを使用してさらに分離する。移動相:メタノール-HO(40:60、v/v)、流速:2.5mL/min、イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)(13.0mg、RT=18.3min)を得た。
【0048】
(8)Fr3を濃縮して108mgの濃縮物を得た。その後、Sephadex LH-20カラムで予備分離し、溶出液はメタノールである。合計8画分を得、そのうち画分2(Fr3.2)には目的化合物が含まれている。濃縮後、Fr3.2(54mg)を逆相セミ分取高速液体クロマトグラフにより精製する。移動相:アセトニトリル-HO(20:80、v/v)、流速:2.5mL/min、イソオリエンチン(isoorientin)(16.9mg、RT=16.3min)を得た。
【0049】
(9)得られた化合物単体を、NMR(Bruker AVIII 400分光計)を用いて構造同定する。イソオリエンチン(isoorientin)の構造は図1に示され、具体的なNMR結果は、H-NMR(400MHz,Methanol-d4)δ:6.53(1H,s,H-3),6.47(1H,s,H-8),7.35(1H,s,H-2′),6.89(1H,brsH-5′),7.35(1H,s,H-6′),4.89(1H,d,J=8.0Hz,H-1′′),4.18(1H,m,H-2′′),3.48(1H,m,H-3′′),3.50(1H,m,H-4′′),3.43(1H,m,H-5′′),3.91(1H,d,J=12.4Hz,H-6a′′),3.75(1H,dd,J=12.4,5.2Hz,H-6b′′);13C-NMR(100MHz,Methanol-d4)δ:166.2(C-2),103.9(C-3),184.0(C-4),162.0(C-5),109.1(C-6),164.8(C-7),95.2(C-8),158.7(C-9),105.2(C-10),123.5(C-1′),114.1(C-2′),147.0(C-3′),151.0(C-4′),116.8(C-5′),120.3(C-6′),75.3(C-1′′),72.6(C-2′′),80.1(C-3′′),71.8(C-4′′),82.6(C-5′′),62.9(C-6′′)である。
イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の構造は図2に示され、具体的なNMR結果は、H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:13.65(1H,s,5-OH),7.35(1H,s,H-6′),7.35(1H,s,H-2′),6.84(1H,brsH-5′),6.54(1H,s,H-3),6.40(1H,s,H-8),4.65(1H,d,J=8.0Hz,H-1′′),4.52(1H,m,H-2′′),3.41(1H,m,H-3′′),3.18(1H,m,H-4′′),3.18(1H,m,H-5′′),3.19(1H,m,H-6′′),4.22(1H,d,J=8.5Hz,H-1′′′),2.85(1H,m,H-2′′′),3.04(1H,m,H-3′′′),3.04(1H,m,H-4′′′),3.04(1H,m,H-5′′′),3.66(1H,m,H-6′′′);13C-NMR(100MHz,DMSO-d6)δ:163.3.2(C-2),102.3(C-3),181.6(C-4),160.5(C-5),108.2(C-6),161.5(C-7),93.2(C-8),156.9(C-9),104.7(C-10),121.1(C-1′),112.8(C-2′),146.0(C-3′),150.6(C-4′),116.11(C-5′),118.9(C-6′),71.6(C-1′′),81.3(C-2′′),78.6(C-3′′),70.5(C-4′′),81.6(C-5′′),60.7(C-6′′),105.6(C-1′′′),74.6(C-2′′′),76.6(C-3′′′),69.8(C-4′′′),76.6(C-5′′′),61.7(C-6′′′)である。
【0050】
実施例2、Os02g0589400遺伝子の使用
(1)遺伝子クローニング
ジャポニカ米(Oryza sativa L.ssp.japonica cv.Zhonghua11、ZH11)の幼苗期の葉身のゲノムDNAを鋳型としてOs02g0589400遺伝子をクローニングする。酵素切断連結法により目的遺伝子をpEASY-T3ベクター(TransGen Biotech,pEASY(登録商標)-T3 Cloning Kit)に連結する。その後、連結生成物をDH5αコンピテントセルに形質転換し、青白スポットで陽性クローンをスクリーニングし、得られた組換えプラスミドをpEASY-T3-Os02g0589400と命名する。
組換えベクターpEASY-T-Os02g0589400の構造は、pEASY-Tベクターにおける酵素切断部位BamHIとHindIIIとの間の小さな断片をSEQ ID No.2に示すDNA断片に置き換えた組換えプラスミドとして説明されている。SEQ ID No.2はOs02g0589400遺伝子のCDS配列で、SEQ ID No.1に示すタンパク質をコードする。
【0051】
(2)Os02g0589400の原核発現
組換えベクターpEASY-T-Os02g0589400を制限酵素BamHI及びHindIIIで完全に切断すると同時に、発現ベクターpMAL-c2X(華越洋、VECT-570)を切断する。アガロース電気泳動後、Os02g0589400を含む約1.3Kbのサイズの断片と、約6.6KbのpMAL-c2Xベクター断片を回収して連結し、得られた組換えプラスミドを配列決定により正しいことを確認した後、pMAL-Os02g0589400と命名する。pMAL-Os02g0589400の構造は、pMAL-c2Xベクターにおける2つの酵素切断部位BamHIとHindIIIとの間の配列をOs02g0589400遺伝子(SEQ ID No.2)に置き換えたベクターとして説明されている。
【0052】
得られた組換え原核発現ベクターpMAL-Os02g0589400を大腸菌NovaBlue(華越洋、WR4478)コンピテントセルに形質転換する。同時にpMAL-c2X空ベクターを形質転換してコントロールとする。アンピシリン抗生物質を含むLBプレートで陽性クローンをスクリーニングし、PCR増幅法により陽性クローンを同定し、プライマーはF1/R1であり、増幅断片のサイズは414bpである。
【0053】
陽性クローンを20mLのアンピシリン耐性を含むLB液体培地に接種し、37℃、220rpmで12~14時間振とう培養する。その後、1:1000の割合(体積比)で菌液を400mLのLB液体培地(100μg/mLアンピシリン含有)に移し、37℃、220rpmでOD600=0.6~0.8まで培養する。菌液を取り出し、氷に置いて冷やした後、濃度が500mMのIPTGを160μL加え、IPTGの最終濃度を0.2mMとする。タンパク質発現を誘導するために、16℃、100rpmで24時間振とう培養する。4℃、10,000rpmで10分間遠心分離し、細菌を回収する。その後、菌体をカラム緩衝液に再懸濁し、-20℃で一晩凍結する。カラム緩衝液(1L)の処方は、NaCl 11.7g;DTT 154mg;0.5M EDTA2mL;1M Tris-HCl(pH=7.4)40mL;残りは水である。翌日、サンプルが溶融した後、超音波破砕機で細胞を破砕して、10,000rpmで10分間遠心分離する。直鎖デンプンカラムを用いて目的タンパク質を精製する。
【0054】
具体的な精製方法は以下の通りである。
a、カラム緩衝液(処方は上記を参照)を用いてアフィニティカラム充填剤を活性化する(流速1mL/min)。
b、得られた粗タンパク質上清を活性化した直鎖デンプンカラムにゆっくりと添加し、目的タンパク質がアフィニティカラム充填剤に十分に結合するように、流速を約0.5mL/minに調整する。
c、すべてのサンプルが充填剤を流れた後、カラム緩衝液を加え、数回洗浄して未結合の不純タンパク質を除去する。
d、マルトースを含むカラム緩衝液(カラム緩衝液1Lにマルトース3.6gが含まれる)を15mL加えて目的タンパク質を溶出し、この工程を1回繰り返す。
e、溶出液を数回に分けて限外ろ過チューブに加え、4℃、5000rpmで15分間ずつ遠心分離する。
f、100mM Tris-HClを1mL加え、4℃、5000rpmで15分間遠心分離し、廃液を流し出す。目的タンパク質溶液を1.5mLエッペンドルフ遠心分離チューブに移す。
g、得られた目的タンパク質溶液を2μL吸い取り、Bradford(Quick StartTM Bradford 1×Dye Reagent,BioRAD,CAS67-56-1)を1mL加え、分光光度計を用いて被測定タンパク質の595nm(OD595)における吸収ピークを測定する。目的タンパク質の吸収値をタンパク質濃度に換算し、精製して得られたOs02g0589400組換えタンパク質の濃度は2.03μg/μLである。
h、SDS-PAGE電気泳動後、クマシーブリリアントブルー染色により、組換えタンパク質Os02g0589400のサイズは約90KDであることが確認された(図3)。
プライマーF1:5’-GGCGACACAGCTCTCATGTCCTCGT-3’;
プライマーR1:5’-CCCTCTCGCCCCTTCCAAGTAGCTC-3’。
【0055】
(3)Os02g0589400のインビトロ酵素活性化
酵素活性化反応系は、Tris-HCl(pH7.0,50mM,10mM DTT含有)38μL、10mMグリコシル受容体(Os02g0589400のグリコシル受容体はイソオリエンチンである)1μL、100mMグリコシル供与体(UDPG)1μL、(2)で得られたOs02g0589400組換えタンパク質10μL(Os02g0589400のタンパク濃度は2.03μg/μL)である。30℃の水浴中で1時間反応させた後、等体積のメタノールで反応を中止させる。pMAL-c2X空ベクターを形質転換した大腸菌に加え、上記工程(2)に従って得られたタンパク質のサンプルを陰性コントロールとする。4℃、12,000rpmで10分間遠心分離し、上清を30μL取り、UPLC-QTOF/MSで測定し、測定方法は実施例1で示されるUPLC-QTOF/MS測定方法と同じである。
【0056】
測定の結果は、空ベクターコントロールと比較して、Os02g0589400組換えタンパク質を添加した反応系では、Os02g0589400がイソオリエンチン(isoorientin)からイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の生成を触媒することができることが分かった。これは、Os02g0589400がイソオリエンチン(isoorientin)からイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の生成を触媒するプロセスにおいて重要な役割を果たしていることを示した(図4を参照)。
【0057】
実施例3、化合物のレタス及びイヌビエへの施用
一、化合物のレタス及びイヌビエへの施用の実験の流れ
試験化合物:イソオリエンチン(isoorientin)及びイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)。
(1)試験化合物を遠心濃縮機で粉末状に乾燥して秤量し、適量の滅菌水を加えて最終濃度を10mg/mLにする。
(2)0.8%寒天を500mL調製し、オートクレーブに入れて滅菌する。
(3)滅菌した寒天をクリーンベンチで室温まで冷却(注:培地を固化させないように)した後、滅菌した10mL遠心チューブに培地を4.75mL正確に吸い取る。10mg/mL試験化合物溶液250μLを加え、化合物の最終濃度を500mg/Lとする。試験化合物を含む培地を10cm×10cmの角型シャーレに素早く注ぎ、角型シャーレを素早く振って培地を角型シャーレに均一に平らに広げる。等量の滅菌水を加えた培地をコントロールとする。
(4)イヌビエの種子を蒸留水で数回洗浄し、滅菌ろ紙に載せて乾燥させる。
(5)培地が固まった後、滅菌ピンセットでイヌビエの種子を入れ、各シャーレに26粒ずつ入れる(13粒ずつ2列に分けて入れる)。各処理には3つの生物学的レプリケートが含まれる。
(6)シャーレを28℃のインキュベーターに入れて暗所で3日間培養する。
(7)表現型統計:3日後に各処理材の幼根と幼芽の長さを統計する。
【0058】
二、化合物のイヌビエ及びレタスへの施用の表現型
図5に示すように、イソオリエンチン(isoorientin)及びイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)を500mg/Lの濃度でそれぞれイヌビエに施用した場合に、コントロールと比較して、イソオリエンチン(isoorientin)で処理したイヌビエの幼根の長さは有意に短かくなった(p=1.539×10-3)が、イソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)で処理したイヌビエの幼根の長さは、コントロールと比較して有意差はなかった(p=0.321)。また、イソオリエンチン(isoorientin)及びイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)で処理したイヌビエの幼芽の長さは、コントロールと比較していずれも有意差はなかった(p=0.297、p=0.902)。これは、化合物イソオリエンチン(isoorientin)の施用が主にイヌビエの幼根の成長に影響を及ぼし、生成物のイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)よりも、イソオリエンチン(isoorientin)はイヌビエの幼根の成長に対して顕著な抑制作用を有することを示した。
【0059】
以上、本発明を詳細に説明した。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、及び不要な実験を行うことなく、同等のパラメータ、濃度及び条件下で、より広い範囲で本発明を実施することができる。本発明は特定の実施形態を示したが、本発明にさらなる改良を加えることができることを理解されたい。要するに、本発明の原理に基づいて、本願は、本願で開示される範囲から逸脱し、当分野で知られている従来の技術を使用して行われる変更を含む、あらゆる変更、使用、又は本発明に対する改良を含むことを意図している。いくつかの基本的な特徴は、以下の添付された特許請求の範囲内で適用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により提供される他感作用に関連するフラボノイド配糖体類物質はイソオリエンチン(isoorientin)である。化合物の施用実験では、イソオリエンチンはイヌビエの幼根の成長に対して顕著な抑制作用を有することを示した。本発明により提供されるイソオリエンチン(isoorientin)化合物の形成に関与する遺伝子は、Os02g0589400である。インビトロ酵素活性化実験では、Os02g0589400がイソオリエンチン(isoorientin)からグリコシル化生成物であるイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)の生成を触媒することができることを示した。化合物の施用濃度が500mg/Lである場合、生成物のイソオリエンチン-2’’-O-グルコピラノシド(isoorientin-2’’-O-glucopyranoside)よりも、イソオリエンチン(isoorientin)はイヌビエの幼根の成長に対して顕著な抑制作用を有する。このことから、イソオリエンチン(isoorientin)は植物の他感作用を制御することができ、雑草の成長抑制に使用できることが分かった。本発明は、環境に優しいグリーン農薬の開発に重要な意義を持つとともに、水田における雑草の防除に理論的指針を与えるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】