(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】光ファイバを介したWDM通信システムのためのI/Qコーディング方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/516 20130101AFI20240808BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H04B10/516
H04J14/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510663
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 FR2022051589
(87)【国際公開番号】W WO2023021260
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524065941
【氏名又は名称】ミモプト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガヤ・レカヤ
(72)【発明者】
【氏名】アクラム・アブセイフ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA61
5K102AD01
5K102AD15
5K102AH26
5K102KA02
5K102KA05
5K102KA12
5K102KA39
(57)【要約】
本発明は、光ファイバを介した二重偏波WDM伝送のための方法に関する。この伝送方法は、PDLの影響に対抗するために特定のI/Qコーディングを使用する。N個の波長の2N個の偏波状態で送信される変調シンボルは、実数値と虚数値に分解される(220)。このようにして取得された実数値のベクトルには第1の直交線形変換(230-1)が適用され、このようにして取得された虚数値のベクトルには第1の直交線形変換とは別の第2の直交線形変換(230-2)が適用される。
における
の既約多項式を解く複素スカラーは、WDMチャネルの異なる偏波状態を変調するための送信シンボルのベクトルを提供するために、2つの変換ベクトルが合計される(240)前に、第1または第2の変換ベクトルと乗算される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法であって、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属する2N個のシンボルを送信することを目的とし、N>1が送信に使用されるWDMチャネル数であり、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、前記シンボルが、前記実数部と前記虚数部(220~520)に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換(230-1、...、430-1)が前記第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、前記第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換(230-2、...、530-2)が前記第2のベクトルに適用され、
2N個の複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、前記2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数1】
における
【数2】
からの既約多項式の解である複素スカラーが、前記第1または前記第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルがWDMチャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
ことを特徴とする、WDM伝送方法。
【請求項2】
前記第1の線形変換が、
【数3】
における第1の回転と第1の非自明な順列および/または第1の非自明な反射との合成であり、前記第2の線形変換が、
【数4】
における第2の回転と第2の非自明な順列および/または第2の非自明な反射との合成であることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項3】
前記第1の順列が偶数の複数の転置によって構成され、前記第2の順列が奇数の複数の転置によって構成されるか、またはその逆であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項4】
前記第1の回転と前記第2の回転が同一であることを特徴とする、請求項3に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項5】
前記第1の直交線形変換が恒等行列であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項6】
前記複素スカラーαが、α
2Nが正の実数でないように選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項7】
前記複素スカラーがjに等しく、j
2=-1であることを特徴とする、請求項5に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項8】
数値Nが奇数であり、N≧3であることを特徴とする、請求項7に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ通信の分野に関し、より詳細には、波長分割多重通信またはWDM(波長分割多重)通信に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に使用されている光ファイバを介したWDM通信システムは、数Tb/s程度の伝送レートを達成する。最新技術では、異なるタイプのWDMシステムが知られており、波長で定義される(Coarse Wavelength Division Multiplexing:CWDM)ものや、より最近では、周波数で定義される(Dense WDM:DWDM)ものもある。CWDMシステムとDWDMシステムとの間の違いは、基本的に送信チャネル間の間隔である。送信チャネルが連続しているとき、または重なっているとき、それぞれWDMスーパーチャネル、ナイキストスーパーチャネルと呼ぶ。WDMという用語は、以下では一般的な意味で使用され、上記の様々なタイプのシステムがカバーされる。
【0003】
高い変調次数の使用および直交偏波での多重化によって、これらの通信システムの容量をさらに増やすことが可能になったが、この進歩は現在、様々な限界に直面している。
【0004】
まず、WDM送信チャネルの密度が増加し、それに相関してサブキャリアが統合されることで、チャネル間干渉レベルまたはICI(チャネル間干渉)が増加する。この干渉は、周波数領域でのチャネルの理想的な矩形の整形、言い換えれば、時間領域での同期関数に従った波形(いわゆるナイキスト整形)を採用することで対抗することができる。もちろん、実際には整形は不完全であり、残留チャネル間干渉が残る。
【0005】
次いで、色分散またはCD(Chromatic Dispersion)、偏波分散またはPMD(Polarization Mode Dispersion)、および偏波依存減衰またはPDL(Polarization Dependent Loss)など異なる分散現象により、異なるチャネルにおけるエラーレート(BER)が増加する。しかしながら、受信時に最初の2つをデジタル的に補償することができる場合、最後のものはその非ユニタリ性のために補償することができず、ビットレート、したがって伝送容量に応じてBERの面でWDM伝送システムの性能が低下する。
【0006】
PDLによる伝送容量の低下に対抗するために時空間コーディング技術を使用することがElie Awad's thesis entitled 「Emerging space-time coding techniques for optical fiber transmission systems」、published in 2015に提案されている。しかしながら、これらのコーディング技術は、送信される情報シンボルのブロックが、いくつかの連続する伝送間隔またはTTI(Time Transmission Intervals)にわたってコード化され、より一般には、複数のチャネル使用またはCU(Channel Uses)にわたってコード化されるので、送信機および受信機を複雑にする。
【0007】
PDLによる容量の減少に対抗するための直交偏波でのプリコーディング方法は、C. Zhu et al. entitled 「Improved polarization dependent loss tolerance for polarization multiplexed coherent optical systems by polarization pairwise coding」、published in J. Lightwave Technology、vol. 34 no. 8、1746-1753頁、2016の論文に記載されている。
【0008】
直交偏波でのプリコーディングのこの方法が、
図1に概略的に示されている。
【0009】
送信される情報シンボル(バイナリワード)は、q元シンボル変調器110-1および110-2において変調コンステレーションのシンボルに変換される。次いで、取得された変調シンボルx
1、x
2は、それぞれの回転モジュール120-1および120-2を使用して複素平面において角度θの回転にかけられ、回転シンボル、
【数1】
が取得される。第1の回転シンボルの実数部と第2の回転シンボルの実数部が130-1で結合されて、第1の偏波成分(たとえば、第1の水平偏波状態)によって搬送される第1の放射シンボル
【数2】
を提供する。同様に、第1の回転シンボルの虚数部と第2の回転シンボルの虚数部が130-2で結合されて、第1の偏波成分と直交する偏波の第2の偏波成分(たとえば、垂直偏波状態)によって搬送される第2の放射シンボル
【数3】
を提供する。
【0010】
直交偏波成分が放射シンボルX1、X2によってそれぞれ変調された光信号は、光ファイバを介して送信される。
【0011】
しかしながら、この記事で説明するプリコーディング方法は、シングルキャリア伝送システムにのみ適用され、WDM伝送システムには適用されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Elie Awad's thesis entitled 「Emerging space-time coding techniques for optical fiber transmission systems」、published in 2015
【非特許文献2】C. Zhu et al. entitled 「Improved polarization dependent loss tolerance for polarization multiplexed coherent optical systems by polarization pairwise coding」、published in J. Lightwave Technology、vol. 34 no. 8、1746-1753頁、2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、情報シンボルのブロックを送信するために送信チャネルを1度使用するだけで、PDLおよび隣接チャネル間の干渉にもかかわらず、高い伝送容量を達成することを可能にする光ファイバを介したWDM伝送方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法によって定義され、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属する2N個のシンボルを送信することを目的とし、Nは送信に使用されるWDMチャネル数であり、この方法は、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、これらのシンボルが実数部と虚数部に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換が第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換が第2のベクトルに適用され、
2N個の複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数4】
から
【数5】
への既約多項式の解である複素スカラーが、第1または第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルがWDMチャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
点でオリジナルである。
【0015】
好ましい実施形態によれば、第1の線形変換は、
【数6】
における第1の回転と第1の非自明な順列および/または第1の非自明な反射との合成であり、第2の線形変換は、
【数7】
における第2の回転と第2の非自明な順列および/または第2の非自明な反射との合成である。
【0016】
第1の例によれば、第1の順列は偶数の複数の転置で構成され得、第2の順列は奇数の複数の転置で構成され、またはその逆も可能である。
【0017】
第1の回転と第2の回転は同一のものを選択することができる。
【0018】
あるいは、第1の直交線形変換を恒等行列に等しく選択することもできる。
【0019】
どの実施形態であっても、複素スカラーαは、有利には、α2Nが正の実数でないように選択され得る。
【0020】
複素スカラーは、たとえばjと等しくなることがあり、ここでj2=-1である。この場合、数値Nは、N≧3の奇数が選択され得る。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して説明する本発明の好ましい実施形態を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】すでに説明したように、2つの直交偏波においてプリコーディングを使用する光ファイバ伝送デバイスを概略的に表す図である。
【
図2】本発明の一般的な実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表す図である。
【
図6A】チャネル数の異なる仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す図である。
【
図6B】チャネル数の異なる仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す図である。
【
図6C】チャネル数の異なる仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す図である。
【
図7A】光ファイバにおける異なるPDL仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す図である。
【
図7B】光ファイバにおける異なるPDL仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す図である。
【
図7C】光ファイバにおける異なるPDL仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、光ファイバを介したWDM伝送システムを検討し、このファイバが古典的にPDL減衰の影響を受ける、言い換えれば、ファイバにおける異なる偏波状態が同じ減衰を受けないと仮定する。PDL減衰は一般に、ファイバセクション間の光学素子、特に、エネルギー損失、および光信号対雑音比またはOSNR(Optical Signal to Noise Ratio)の変動を生じさせるドープファイバ光増幅器(EDFA)によって導入されることが想起される。しかしながら、色分散(CD)および偏波分散(PMD)のようなファイバにおける分散効果は、受信機DSPのDSP内のチャネル等化によって効果的に補正することができるので、抽象化される。
【0024】
WDMチャネル(および単一空間モード)についてのPDL減衰の効果は、2つの偏波状態に適用されるHPDL行列によって表すことができる。
【0025】
【0026】
式中、
【数9】
は利得行列、
【数10】
は偏波回転行列、
【数11】
は複屈折行列であり、γ∈[0,1]はPDLの値、ΓdB=log10(Γ)を定義し、
【数12】
および
【数13】
である。
【0027】
WDM伝送システムは、複数のN個のWDMチャネル(波長またはサブキャリア)を使用し、各WDMチャネルは2つの偏波状態に関連付けられる。したがって、各伝送瞬間、言い換えれば、チャネルの各使用時に、伝送システムは2N個の変調シンボルを送信することができ、偏波状態ごとおよびWDMチャネルごとに1つのシンボルが送信される。Nは一般的に、数十、場合によっては数百程度の高い値が選択される。いずれにせよ、N>1、好ましくはN>2である。
【0028】
本発明の根底にある考え方は、異なる変調シンボルの実数部と虚数部を分離し、それらを別個の直交線形変換にかけた後、複素平面において再結合し、次いで、取得されたシンボルでWDM多重の異なる波長/異なるサブキャリアを変調することである。したがって、異なる偏波状態および異なるWDMチャネルにわたるPDL減衰の平均化を実行する。
【0029】
図2は、本発明の一般的な実施形態による、光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表す。
【0030】
各伝送間隔で送信されるデータは、2N個の情報シンボル、たとえば、q≦log2Qの2N個のq元ワードの形であり、Qは変調アルファベットの基数である。変調アルファベットは、特にQ~QAMアルファベットであり得る。
【0031】
情報シンボルは、それ自体既知の方法で、ソースコーディングおよび/またはチャネルコーディングから得られるものであり得る。
【0032】
いずれの場合も、2N個の情報シンボルは、q元シンボル変調器210-1、...、210-2Nにおいて、それぞれ2N個の変調シンボルに変換される。これらのシンボルの奇数インデックスは第1の偏波状態に対応し、偶数インデックスは第1の偏波状態に直交する第2の偏波状態に対応する。これらの各変調シンボルは、次のx1、…、x2Nで示され、次いで、分離モジュールI/Q220で実数部と虚数部に分解される。
【0033】
これらの変調シンボルのそれぞれの実数部
【数14】
は、
【数15】
のベクトルX
Rを形成し、第1の線形結合モジュール230-1に供給される。この第1のモジュールは、行列
【数16】
によって表される第1の直交線形変換Fによって、これらの実数部を結合して、
【数17】
の第1の変換ベクトル
【数18】
を提供する。
【0034】
同様に、変調シンボルの虚数部は、
【数19】
のベクトルX
Iを形成し、第2の線形結合モジュール230-2に供給される。この第2のモジュールは、行列
【数20】
によって表される第2の直交線形変換Gによって、これらの虚数部を結合して、
【数21】
の第2の変換ベクトル
【数22】
を提供する。
【0035】
直交線形変換FおよびGは、別個に選択されることが有利である。たとえば、それらのうちの一方は直接直交線形変換、言い換えれば、対応する行列は特殊直交群
【数23】
の要素、他方は間接的な直交線形変換である。
【0036】
次いで、第2の変換ベクトルは、
【数24】
における既約可能な多項式
【数25】
の解である、複素スカラー値αによって、240で乗算される。好ましくは、αは複素平面における要素のノルムにならないように選択され、言い換えれば、α
2Nは正の実数でないものとする。
【0037】
このようにして乗算された第1の変換ベクトルと第2の変換ベクトルは、最終的に加算器250で合計され、
【数26】
のベクトル
【数27】
を提供し、その複素要素
【数28】
はそれぞれ、N個のWDMチャネルの2N個の偏波状態を変調するために使用される送信シンボルである。より正確には、インデックスnのWDMチャネルの第1の偏波状態(たとえば水平偏波成分)の成分は、
【数29】
によって与えられ、このチャネルの第2の偏波状態のもの(たとえば垂直偏波成分)は、
【数30】
によって与えられ、またはその逆である。
【0038】
したがって、ベクトル
【数31】
は、乗法係数まで、次の形式で表すことができる。
【0039】
【0040】
図示されていない変形例によれば、第1の変換ベクトルは、第2の変換ベクトルの代わりに複素スカラー値αで乗算され、このようにして乗算された第1の変換ベクトルは、次いで第2の変換ベクトルと合計されてベクトル
【数33】
を提供する。
【0041】
図3は、本発明の好ましい実施形態による、光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表している。
【0042】
モジュール310-1、...、310-2N、320、330-1、および330-2はそれぞれ、
図2のモジュール210-1、...、210-2N、220、230-1、および230-2と同じ機能を果たす。
【0043】
図2に示された実施形態とは異なり、第1の変換ベクトルおよび第2の変換ベクトルは、I/Q結合モジュール340によって結合され、
【数34】
の複素ベクトル
【数35】
を形成する。言い換えれば、この実施形態は、α=jの一般的な実施形態から特別なケースとして推論され、ここでのI/Q結合モジュールは、乗算器240および加算器250に取って代わる。
【0044】
有利なことに、複素スカラーαはノルムではなく、言い換えれば、Nは、N≧3の奇数が選択され得る。
【0045】
ベクトル
【数36】
の複素要素
【数37】
はそれぞれ、N個のWDMサブキャリア/波長の2N個の偏波状態を変調するために使用される。
【0046】
図4は、本発明の第1の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表している。
【0047】
モジュール410-1、...、410-2N、420、430-1、430-2、440はそれぞれ、
図3のモジュール310-1、...、310-2N、320、330-1、330-2、および340と同じ機能を果たす。
【0048】
この実施形態は、第1の線形変換が直接的、すなわち、
【数38】
の空間内の回転Rであるという点で、
図3の好ましい実施形態の特殊なケースである。
【0049】
第2の線形変換は、この回転Rと、
【数39】
の非自明な順列P、および/または
【数40】
の非自明な反射Sの合成によって得られる。非自明な順列とは、恒等行列
【数41】
とは異なる順列を意味する。非自明な反射とは、
【数42】
とは異なる反射を意味する。
【0050】
順列は偶数の転置で構成することもでき、その場合、第2の線形変換は依然として回転であり、または奇数のそのような転置で構成することもできる。
【0051】
順列は巡回であり得、この場合、第2の線形変換が行列PRによって表され、ここで、P∈{Φ,Φ2,...,Φ2N-1}は可能な順列の集合(自明な順列を除く)であり、Φは巡回順列行列であり、次式で定義される。
【0052】
【0053】
一般的な場合と同様に、第1と第2の線形変換の役割は入れ替えることができる。言い換えれば、回転Rを虚数部XIのベクトルに適用することができ、回転と順列および/または反射の合成(S)PR/S(P)Rを実数部XRのベクトルに適用することができる。
【0054】
図5は、本発明の第2の実施形態による、IQコーディングを用いた光ファイバを介したWDM伝送デバイスを概略的に表す。
【0055】
モジュール510-1、...、510-2N、520、530、540はそれぞれ、
図3のモジュール310-1、...、310-2N、320、530-2、および540と同じ機能を果たす。
【0056】
この例示的な実施形態は、第1の線形変換が自明であり、恒等行列
【数44】
に等しいこと、および第2の線形変換が、この回転Rと、
【数45】
の自明または非自明の順列Pとの合成から生じるという点で、
図3の好ましい実施形態の特殊なケースである。
【0057】
ここで、第1のベクトルおよび第2の変換ベクトルは、上記のように2N個の偏波状態を変調するためのシンボルの複素ベクトル
【数46】
を形成するために結合される。
【0058】
すべての場合において、受信された光信号は、WDMチャネル(波長またはサブキャリア)ごと、また偏波状態ごとに分離され、次いで、色分散(CD)を補償するために等化される。次いで、2N×2NのMIMOチャネルは、たとえばパイロットシンボルからLS(最小二乗法)アルゴリズムを使用して推定される。次いで、伝送デバイスによって送信されたシンボルは、MIMOデコーダを使用して、受信した信号をチャネル行列の擬似逆行列、すなわち、
【数47】
で乗算することを目的としたML(最尤)推定、またはより簡単なZF(Zero Forcing)推定を使用して推定することができ、ここで、2N×2Nのサイズの
【数48】
は、MIMOチャネルの推定行列である。
【0059】
【数49】
の各成分の実数部と虚数部を分離し、2N個の実数部からなる第1のベクトル
【数50】
および2N個の虚数部からなる第2のベクトル
【数51】
を形成した後、第1の逆直交変換F
-1が第1のベクトル
【数52】
に適用され、第2の逆直交変換G
-1が第2のベクトルに適用され、α
-1で乗算され、
【数53】
となる。次いで、このようにして取得されたベクトルの同じランクの成分から、変調シンボルの実数部および虚数部を推定することができる。
【0060】
図6A~
図6Cは、WDMチャネル数の異なる仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す。
【0061】
PDLの値、ΓdBはすべてのWDMチャネルで同じであり、5dBに等しいと仮定し、偏波回転φはπ/2に等しいとした。
【0062】
光ファイバは各々100kmの10セクションで構成されており、連続するセクション間には波長の一定の利得を持つ光増幅器が設けられている。シンボルレートは12Gbaudであり、変調コンステレーションは16-QAMであった。異なるWDMチャネルに対応するサブバンドは重なり合わず、各サブバンドで送信される信号は、ロールオフ係数0.1のフィルタで累乗されたコサインルートによって整形された。
【0063】
選択された実施形態は、
図5のP=Id
2Nのものであった。
【0064】
受信時の推定は、ML推定器を使用して行われた。
【0065】
図6Aは、N=2波長のファイバにおける光信号対雑音比(OSNR)の関数としてのビットエラーレート(BER)を示している。この場合、α
2N=1であるが、それでも非IQコード化WDMシステムと比較して2dBの利得(OSNR)が観測され、理想チャネル(ガウシアンチャネル)との差はわずか0.6dBである。
【0066】
図6Bは、N=3波長でのOSNRの関数としてBERを示している。この場合、α
2N=-1となる。前のケースよりも2.6dB大きいゲインが観察され、理想的なチャネルからの偏差は無視でき、言い換えれば、PDLの影響は平均化によってほぼ完全に補正されている。
【0067】
図6Cは、N=5波長でのOSNRの関数としてBERを示している。α
2N=-1の性質が再び検証され、得られた性能はN=3の場合とほぼ同じである。
【0068】
図7A~
図7Cは、光ファイバにおける異なるPDL仮説について、本発明によるWDM伝送デバイスによって提供される利得を示す。
【0069】
前のケースでN=3波長を考えるが、異なるPDL構成を検討する。
【0070】
図7Aでは、PDLの値Γ
dBは3つのチャネルで同一であり、5dBに等しいと仮定した。本発明によるIQコーディングは、非コード化の場合と比較して1.8dBの利得を達成することが可能であり、ガウシアンチャネルと比較して1dBの偏差を示すだけである。
【0071】
図7Bでは、PDLの値Γ
dBがチャネル1と3では3dB、チャネル2では5dBであると仮定している。回転角
【数54】
は、[-π,π]における一様確率分布からランダムに抽出される。本発明によるIQコーディングは、非コード化の場合と比較して2dBの利得を達成することが可能であり、ガウシアンチャネルと比較して0.6dBの偏差を示すだけである。
【0072】
最後に、
図7Cでは、各光増幅器の出力におけるPDLがガウス則に従うと仮定し、その結果、ファイバ出力におけるPDLの確率分布がマクスウェル分布に従うと仮定した。PDLの平均は5dBに等しくなるように選択された。ここでもまた、本発明による伝送方法により、最も不利な場合において、非コード化の場合と比較して1dBの利得を達成することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
110-1 q元シンボル変調器
110-2 q元シンボル変調器
120-1 回転モジュール
120-2 回転モジュール
210 q元シンボル変調器
220 分離モジュールI/Q
230-1 第1の線形結合モジュール
230-2 第2の線形結合モジュール
240 乗算器
250 加算器
340 I/Q結合モジュール
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法であって、1つのチャネル使用中に、複素平面における変調コンステレーションに属する2N個のシンボルを送信することを目的とし、N>1が送信に使用されるWDMチャネル数であり、
これらのシンボルの実数部からなる第1のベクトル、およびこれらの同じシンボルの虚数部からなる第2のベクトルを提供するために、前記シンボルが、前記実数部と前記虚数部(220~520)に分離され、
第1の変換ベクトルを提供するために、第1の直交線形変換(230-1、...、430-1)が前記第1のベクトルに適用され、
第2の変換ベクトルを提供するために、前記第1の直交線形変換とは異なる第2の直交線形変換(230-2、...、530-2)が前記第2のベクトルに適用され、
2N個の複素放射シンボルからなるベクトルを提供するために、前記2つの変換ベクトルが合計される前に、
【数1】
における
【数2】
からの既約多項式の解である複素スカラーが、前記第1または前記第2の変換ベクトルに乗算され、各複素送信シンボルがWDMチャネルの第1の状態および第2の偏波状態を変調する
ことを特徴とする、WDM伝送方法。
【請求項2】
前記第1の線形変換が、
【数3】
における第1の回転と第1の非自明な順列および/または第1の非自明な反射との合成であり、前記第2の線形変換が、
【数4】
における第2の回転と第2の非自明な順列および/または第2の非自明な反射との合成であることを特徴とする、請求項1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項3】
前記第1の順列が偶数の複数の転置によって構成され、前記第2の順列が奇数の複数の転置によって構成されるか、またはその逆であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項4】
前記第1の回転と前記第2の回転が同一であることを特徴とする、請求項3に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項5】
前記第1の直交線形変換が恒等行列であることを特徴とする、請求項2に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項6】
前記複素スカラーαが、α
2Nが正の実数でないように選択されることを特徴とする、請求項
1に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項7】
前記複素スカラーがjに等しく、j
2=-1であることを特徴とする、請求項5に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【請求項8】
数値Nが奇数であり、N≧3であることを特徴とする、請求項7に記載の偏波二重性を有する光ファイバを介したWDM伝送方法。
【国際調査報告】