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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】重炭酸ナトリウム栄養補助食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20240808BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 33/10 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240808BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240808BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20240808BHJP
【FI】
A23L33/16
A61P3/00
A61P7/00
A61K33/10
A61K9/20
A61K9/10
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/36
A61K47/26
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510725
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022073487
(87)【国際公開番号】W WO2023025806
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21192881.7
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22176761.9
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518381433
【氏名又は名称】ラミナリア、グループ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】LAMINARIA GROUP AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、アーノフ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B117
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD02
4B018MD03
4B018MD05
4B018MD10
4B018MD28
4B018MD34
4B018MD35
4B018MD36
4B018MD37
4B018ME14
4B018MF08
4B035LC06
4B035LE01
4B035LG01
4B035LG07
4B035LG17
4B035LG26
4B035LG28
4B035LK09
4B035LP36
4B117LC04
4B117LE03
4B117LK01
4B117LK12
4B117LK13
4B117LP20
4C076AA22
4C076AA36
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4C076CC14
4C076CC21
4C076CC40
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE30G
4C076EE32
4C076EE36G
4C076EE38G
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZA51
4C086ZC21
(57)【要約】
重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子であって、1.0mm超5.0mm以下の範囲のサイズを有し、少なくとも1つの寸法の厚さが1.0mm超2.0mm以下であり、50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む、前記粒子。前記摂取可能な粒子は、水性液体、好ましくは粘性の水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液である栄養補助食品組成物中に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に分散された、重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子を含む懸濁液である栄養補助食品組成物であって;前記粒子が厚さ1.0~2.0mm、直径1.0~5.0mmの錠剤であり;かつ前記粒子が50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含み;前記水性媒体が粘性の水性媒体である、前記栄養補助食品組成物。
【請求項2】
前記摂取可能な粒子が、65%(w/w)超の重炭酸ナトリウム、例えば75%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項3】
前記摂取可能な粒子が、小腸内で重炭酸ナトリウムを放出するのに適している、請求項1または2に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項4】
前記錠剤の厚さが1.2~2.0mm、直径が1.2~5.0mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項5】
前記錠剤の直径が2.0mm以下、例えば1.8mm以下である、請求項4に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項6】
前記摂取可能な粒子が、いかなるコーティングも有しない、例えば、いかなる腸溶性コーティングも有しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項7】
前記摂取可能な粒子が結合剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項8】
前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびその組み合わせから選択される、請求項7に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項9】
前記摂取可能な粒子が以下の組成:
重炭酸ナトリウム82~92重量%;
ヒドロキシプロピルセルロース5~15重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0%
を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項10】
撹拌されていない粘性の水性媒体中の単一の摂取可能な粒子の沈降速度が5mm/分未満、好ましくは2mm/分未満、より好ましくは1mm/分未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項11】
前記粘性の水性媒体が粘弾性媒体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項12】
前記粘弾性媒体がゲルである、請求項11に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項13】
前記粘性の水性媒体が、増粘剤として水に溶解された1種以上の天然ポリマーを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項14】
前記天然ポリマーが、天然デンプンおよび加工デンプン、キサンタンガム、グアーガム、カラゲナン、アルギン酸塩、ペクチンおよびそれらの組み合わせ等の多糖類から選択される、請求項13に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項15】
前記粘性の水性媒体が以下の組成:
マルトデキストリン4~12重量%;
フルクトース3~10重量%;
アセチル化アジピン酸ジデンプン2~7重量%;
キサンタンガム0.1~1.0重量%;
水で100重量%とする
を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項16】
前記粘性の水性媒体が以下の組成:
マルトデキストリン6~14重量%、
のフルクトース2~5重量%、
アセチル化アジピン酸ジデンプン1~3重量%、
キサンタンガム0.1~1.0重量%;
水で100重量%とする
を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項17】
栄養補助食品組成物を調製するためのキットであって、摂取可能な粒子および請求項1~16のいずれか一項に記載の水性媒体を含む、前記キット。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための方法。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、対象における運動誘発性アシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和する方法。
【請求項20】
薬学的有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性アシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法。
【請求項21】
重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子であって、厚さ1.0~2.0mm、直径1.0~5.0mmの錠剤であり;50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む、前記粒子。
【請求項22】
高強度の運動パフォーマンスを向上させるための、請求項1~16のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物または請求項17に記載のキットの使用。
【請求項23】
運動誘発性アシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の栄養補助食品組成物または請求項17に記載のキットの使用。
【請求項24】
薬学的有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性アシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物または請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動誘発性アシドーシスを予防、軽減または緩和するため、および運動パフォーマンスを向上させるための栄養補助食品としての重炭酸ナトリウムの使用に関する。より具体的には、本発明は、運動誘発性アシドーシスを予防、軽減または緩和するため、および運動パフォーマンスを向上させるための栄養補助食品として有用な、重炭酸ナトリウムの改良された剤形に関する。摂取後、栄養補助食品は血流中に重炭酸塩を放出し、重炭酸塩は運動パフォーマンスを向上させるための細胞外緩衝剤として機能する。本発明はさらに、代謝性アシドーシスを治療するための医薬組成物において有用な、重炭酸ナトリウムの改良された剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな栄養補助食品が運動選手にとって有用であることが知られており、例えば、ヒドロゲルを開示しているWO2019/185742A1およびEP2098124A1を参照されたい。WO2020/237340A1は、転化黒糖をベースとする高エネルギー栄養補助食品を開示している。
【0003】
重炭酸ナトリウム(NaHCO)は、心身の機能を高める栄養補助食品として確立されている。重炭酸ナトリウムの補給は、重炭酸濃度の増大によって体の細胞外緩衝能力を増強することにより、高強度の運動パフォーマンスを向上させることができ、さまざまな分析でその有効性が確認されている(Hadzic et al. The Impact of Sodium Bicarbonate on Performance in Response to Exercise Duration in Athletes: A Systematic Review. 2019. J Sports Sci Med 18: 271-281)。血液重炭酸塩は酸-塩基恒常性重炭酸塩緩衝系の一部であり、血液のpH濃度を調節し、代謝機能をサポートする上で重要である。細胞外緩衝剤であるNaHCOは、細胞外重炭酸塩の大幅な増大を誘導することにより、内因性重炭酸塩緩衝能力を向上させる。その結果、骨格筋からの水素カチオン(H)の流出が促進され、筋肉の疲労が遅延し、パワー出力や疲労までの時間等の多くのパフォーマンス変数にプラスの影響をもたらす。
【0004】
重炭酸ナトリウムの補給は、運動誘発性アシドーシス、すなわち、運動によって引き起こされる体内の酸-塩基バランスの不均衡を予防、軽減および緩和するのに役立ち得る。運動誘発性アシドーシスは、動脈血のpHが7.35未満であると定義されるアシデミアを引き起こす可能性がある。重炭酸ナトリウムの補給は、運動誘発性アシデミアの予防、軽減または緩和にも役立ち得る。
【0005】
重炭酸ナトリウムの補給は、代謝性アシドーシス、すなわち、体内の酸-塩基バランスの不均衡を特徴とする病状の予防、軽減または緩和を含む治療にも役立ち得る。代謝性アシドーシスは、血漿重炭酸塩レベルが22mmol/l未満であり、血液のpHが7.35未満であることを特徴とし、高強度の運動によって引き起こされる場合のように急性かつ一時的な場合もあれば、腎機能障害(慢性腎臓病、KCD)によって引き起こされる場合のように慢性的な場合もある。急性アシドーシスは筋肉機能の一時的な障害を引き起こすのに対し、慢性アシドーシスは死亡率の増大と関連している(Adamczak M et al.: Diagnosis and Treatment of Metabolic Acidosis in Patients with Chronic Kidney Disease - Position Statement of the Working Group of the Polish Society of Nephrology. Kidney Blood Press Res 2018;43:959-969. doi: 10.1159/000490475)。代謝性アシドーシスは、動脈血のpHが7.35未満であると定義されるアシデミアを引き起こす可能性がある。重炭酸ナトリウムの補給は、代謝性アシデミアの予防、軽減または緩和を含む治療にも役立ち得る。
【0006】
US2007/0218126A1は、特に炭酸カルシウムを含む、アシドーシスに伴う炎症および痛みを軽減するための組成物を開示している。二層構造の粒子の大きさは約3μmである。
【0007】
重炭酸ナトリウムのもう1つの利点は、高強度の運動からの回復の改善であり得る。
【0008】
血液重炭酸ナトリウムの実質的な変化(~約6mmol/l)は、パフォーマンス向上効果の可能性を高める(Heibel et al. Time to optimize supplementation: modifying factors influencing the individual responses to extracellular buffering agents. 2018. Front Nutr 5: 35)。したがって、パフォーマンスを向上させる血中重炭酸塩レベルの上昇を誘導するには、大量の経口投与量(0.2~0.3g/体重kg)が望ましい。
【0009】
しかしながら、急性胃腸(GI)障害が、大量のNaHCOの摂取による既知の副作用であることが(Burke & Pyne. 2007. Bicarbonate loading to enhance training and competitive performance. Int J Sports Physiol Perform 2: 93-97)、特に水溶液として投与した場合に知られている(Carr et al. 2011. Effect of sodium bicarbonate on [HCO3 -], pH, and gastrointestinal symptoms. Int J Sport Nutr Exerc Metab 21: 189-194)。
【0010】
最近の研究[Middlebrook et al. 2021. Capsule size alters the timing of metabolic alkalosis following sodium bicarbonate supplementation. Frontiers Nutr 8: 27]によれば、大きな(5.6mm以上)カプセルを用いたNaHCO補給の効果が調査され、酸-塩基反応にはある程度の効果があるが、GI症状やおいしさには効果がないことが報告されている。
【0011】
さらに、GI障害は、心身の機能を高めるその潜在的な利点に関係なく、個人がNaHCOを用いることを思いとどまらせる可能性がある(上記Heibel)。
【0012】
結論として、吐き気、嘔吐および下痢等の胃腸障害は、アスリートによるNaHCOの使用に大きな実際的な制限をもたらす。
【0013】
胃耐性カプセルは、NaHCO摂取に典型的な症状を緩和する可能性があることが示唆されている(de Oliveira et al. 2018. Is bypassing the stomach a means to optimize sodium bicarbonate supplementation? A case study with a postbariatric surgery individual. Int J Sport Nutr Exerc Metab 26: 1-4)。これは、Hilton et al. 2019. A novel ingestion strategy for sodium bicarbonate supplementation in a delayed-release form: a randomised crossover study in trained males. Sports Med 5: 4において一定の裏付けがなされており、GI症状の発生率は低いものの、血中[HCO ]およびpHがピークに達するまでの時間の望ましくない遅延があることが報告されている。
【0014】
さらに、胃の症状を軽減する手段として腸溶性コーティングが提案されている[Hilton et al. 2020. Enteric-Coated Sodium Bicarbonate Attenuates Gastrointestinal Side-Effects. Int J Sport Nutr Exerc Metab 30: 6268]。結果は、GI症状の軽減を示したが、血液[HCO ]およびpHの望ましい上昇を実証することはできなかった。
【0015】
さらに、医薬品で広く研究され用いられている効率的な胃耐性コーティングは、規制当局によって天然成分とみなされていないか、またはGRAS(一般に安全とみなされる)ステータスを備えていない腸溶性ポリマーを用いているため、NaHCOのような栄養製品には用いることができない(Barbosa et al. 2017. Going natural: using polymers from nature for gastroresistant applications. Br J Pharm 2: 14-30)。
【0016】
US2013/0236545A1は、クレブス回路前駆体塩を含む別の製剤と共に投与した場合にシスチン尿素の治療に有用な経口医薬製剤を開示している。この製剤は、少なくとも重炭酸塩および少なくとも1種の徐放性マトリックスを含むコアと、徐放性を確保するための少なくとも1種のコーティング剤を含むコーティングとからなる2層ミニ錠剤である。
【0017】
US6,432,450B1およびCN109430669Aは、発泡性組成物、すなわち、摂取前に水中で数秒以内に重炭酸塩を放出し、それによって摂取前にすでに二酸化炭素を生成するように設計された組成物を開示している。
【0018】
RU2550927C2は、痰の粘度を低下させるための、重炭酸ナトリウムを含有する顆粒を含む咳止め薬を開示している。これは、重炭酸ナトリウムが口腔内で予め放出され、水中で数秒以内に再度放出されることを示唆している。
【0019】
したがって、摂取後のGI副作用が大幅に低減された、重炭酸ナトリウムNaHCOの栄養摂取のための製剤および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0020】
本発明の目的は、摂取後のGI副作用が有意に低減された、重炭酸ナトリウム、NaHCOの栄養摂取のための製剤および方法を提供することである。
【0021】
さらなる目的は、同時に高い嗜好性および高い胃腸摂取を伴う、重炭酸ナトリウムの栄養摂取のための製剤および方法を提供することである。
【0022】
さらなる目的は、高強度の運動パフォーマンスを向上させるのに十分な量の重炭酸ナトリウムの摂取を促進する、重炭酸ナトリウムの栄養摂取のための製剤および方法を提供することである。
【0023】
さらなる目的は、運動誘発性のアシドーシスまたはアシデミアに対して有用な、重炭酸ナトリウムの栄養摂取のための製剤および方法を提供することである。
【0024】
本開示から明らかなこれらの目的および他の目的のために、本発明は、第1の態様に従って、粘性の水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液である栄養補助食品組成物を提供する。
【0025】
摂取可能な粒子が粘性の水性媒体中に分散される場合、水性媒体の粘度は、分散体が摂取されるまで、摂取可能な粒子の沈降を防止または遅延させる。
【0026】
摂取可能な粒子は重炭酸ナトリウムを含み、粒子は1.0mm超5.0mm以下の範囲のサイズを有し、少なくとも1つの寸法の厚さが1.0mm超2.0mm以下であり;粒子は50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む。
【0027】
本発明者らは、重炭酸ナトリウムNaHCOの効率的な摂取を達成するが、GI副作用の発生率が低い摂取可能な粒子を見出し、実証した。この粒子は、パフォーマンス向上効果の可能性を高める血液重炭酸塩の実質的な変化(4~6mmol/l)を達成するために必要な、体重1kgあたり0.20~0.30g以上の範囲の重炭酸ナトリウム塩の摂取と取り込みを促進する。
【0028】
本発明者らは、摂取可能な粒子が重炭酸ナトリウムの効率的な取り込みを達成するが、特に粘弾性または粘性を有するゲルまたは液体等の粘性媒体中に分散した場合に、GI副作用の発生が低いことを見出し、実証した。
【0029】
第2の態様によれば、栄養補助食品組成物を調製するためのキットであって、本明細書で定義される摂取可能な粒子;および本明細書で定義される水性媒体を含むキットが提供される。
【0030】
さらなる態様によれば、摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物およびキットは、高強度の運動パフォーマンスを向上させるのに有用である。摂取可能な粒子は、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための栄養補助食品組成物において有用である。
【0031】
さらなる態様によれば、摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための方法が提供される。
【0032】
一つのさらなる態様によれば、摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物およびキットは、運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するのに有用である。摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、対象における運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和する方法が提供される。
【0033】
一つのさらなる態様によれば、摂取可能な粒子は、運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するための栄養補助食品組成物において有用である。
【0034】
さらなる態様によれば、摂取可能な粒子を含む組成物およびキットは、代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療するのにさらに有用である。これは、本発明の組成物が医薬組成物であることを示唆するものである。摂取可能な粒子を含む薬学的有効量の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法が提供される。本発明の組成物およびキットは、摂取可能な粒子を含む薬学的有効量の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法において有用である。
【0035】
さらなる態様によれば、摂取可能な粒子は、代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療するのにさらに有用である。薬学的有効量の摂取可能な粒子を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法が提供される。摂取可能な粒子は、薬学的有効量の摂取可能な粒子を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法において有用である。
【0036】
好ましい実施形態およびさらなる態様は、添付の特許請求の範囲、列挙された実施形態および出願本文全体において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、重炭酸ナトリウム粒子の摂取前後に測定された血漿標準重炭酸濃度を示す。
図2図2は、重炭酸ナトリウム粒子の摂取前後に測定された血漿標準重炭酸濃度を示す。
図3図3は、高粘性媒体または低粘性媒体のいずれかと組み合わせた重炭酸ナトリウム粒子からの重炭酸塩の取り込みを示す。
図4図4は、重炭酸ナトリウム粒子の摂取後に測定された血漿重炭酸濃度を示す。
図5図5は、0.5~1.0mmの顆粒の形態の重炭酸ナトリウムおよび1.5×3.0mmのミニ錠剤の形態の重炭酸ナトリウムの溶解の進行の比較を示す。
図6図6は、異なる媒体および異なる条件下で分散された場合の、ミニ錠剤からの経時的なNaHCOの放出を示す。
図7図7は、2種の媒体の粘度およびずり減粘特性の比較を示す。
図8図8は、粘弾性媒体の振動試験を示す。
図9図9は、本発明の栄養補助食品組成物を摂取するアスリートにおける血液pHおよび血漿重炭酸塩濃度の影響を示す。
【発明の詳細な説明】
【0038】
本明細書で提供される栄養補助食品組成物は、粘性の水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液である。
【0039】
摂取可能な粒子は重炭酸ナトリウムを含み、明確に定義されたサイズを有する。摂取可能な粒子は、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための栄養補助食品組成物において、それ自体が有用である粒子である。本発明によるNaHCO粒子の摂取は、溶液中またはカプセル中の同量のNaHCOの摂取後に見られる胃腸における副作用を軽減することを実証し得る。
【0040】
言うまでもなく、摂取可能な粒子は、体内で重炭酸ナトリウムを放出するように、より具体的には小腸で重炭酸ナトリウムを放出するように設計されている。摂取可能な粒子は、大腸より前に重炭酸ナトリウムを放出するように設計されている。
【0041】
摂取可能な粒子は重炭酸ナトリウム塩を含み、粒子は1.0mm超5.0mm以下、例えば4.0mm以下の範囲のサイズを有し、少なくとも1つの寸法の厚さが1.0mm超2.5mm以下、例えば2.0mm以下、例えば1.8mm以下であり;50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む。摂取可能な粒子のサイズは典型的には1.2~5.0mmの範囲であり、少なくとも1つの寸法の厚さは1.2~2.0mmである。
【0042】
少なくとも1つの寸法が2.0mm未満であると、良好な嗜好性が得られると同時に、摂取可能な粒子が幽門括約筋を自由に通過できるため、胃通過時間が短くなり、有益である。これにより、胃室内でのNaHCOの溶解レベルが低くなり、潜在的な上部GI障害が大幅に軽減される。「溶解」および「放出」という用語は、この文書において同じ意味で用いられる。
【0043】
摂取可能な粒子は崩壊することはなく;代わりに、重炭酸ナトリウムは時間の経過と共に粒子表面から連続的に溶解または浸食される。これは、第一に、潜在的な上部GI障害を軽減し、第二に、同様に重要であるが、血液[HCO ]およびpHの望ましい上昇期間を延長する。
【0044】
腸内での重炭酸ナトリウムの取り込みメカニズムは、Na/H交換を含むナトリウムの積極的な取り込みを介して行われる。このようにして腸内に分泌されたプロトンは炭酸を形成する重炭酸塩を中和し、さらに水およびCOを形成する。最後の皇帝は、小腸の管腔壁にあるカルボアンヒドラーゼによって触媒される。溶解したCOは細胞膜を通って容易に拡散し、血流に入る。重炭酸イオン自体の細胞膜上での輸送が重要であるという科学的証拠は存在しない。
【0045】
これらのプロセスの最終的な影響は、細胞外液(血液および間質液)のナトリウムおよび重炭酸塩(それぞれ陽イオンおよび陰イオン)ならびにpHの両方の増大である。
【0046】
時間の経過と共に、重炭酸塩は体内の他の区画にさらに分配される。重炭酸塩は腎分泌によって除去されるため、重炭酸塩のアルカリ化効果のほとんどは24~36時間以内に消失する。
【0047】
胃および小腸での重炭酸塩の中和は、人体に対するアルカリ化効果という点では同等である。胃内での重炭酸塩への過度の曝露は避けるべきであるが、高GI耐容性を維持しながらある程度の曝露は可能であると考えられている。
【0048】
部分的ではあるが限定的な重炭酸ナトリウムの放出が胃内で起こる。このようにして溶解した重炭酸ナトリウムの一部は胃酸と反応して炭酸/二酸化炭素を生成し、その大部分は小腸に輸送される。
【0049】
好ましくは、粒子中の実質的にすべての重炭酸ナトリウムが完全に溶解し、小腸を出る前に血液中に取り込まれることができる。これにより、大腸での重炭酸ナトリウムの放出が防止され、潜在的なGI障害が軽減される。
【0050】
したがって、摂取可能な粒子は、他の種類のNaHCO製剤で観察されるような重度のGI障害のリスクを伴うことなく、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための栄養補助食品として用いることができる。
【0051】
65%(w/w)超の重炭酸ナトリウム、例えば75%(w/w)超、例えば80%(w/w)以上の重炭酸ナトリウムを含むことが好ましい。
【0052】
90%(w/w)未満の重炭酸ナトリウム、例えば85%(w/w)以下の重炭酸ナトリウムを含むことも好ましい。
【0053】
好ましくは、摂取可能な粒子はそれぞれ80mg未満の重炭酸ナトリウム、例えば50mg未満、好ましくは30mg未満、より好ましくは20mg未満の重炭酸ナトリウムを含む。さらに好ましくは、摂取可能な粒子はそれぞれ5mg超の重炭酸ナトリウム、例えば10mg超、好ましくは15mg超の重炭酸ナトリウムを含む。典型的には、錠剤はそれぞれ5~30mg、例えば10~20mg、例えば15~20mgの重炭酸ナトリウムを含む。
【0054】
摂取可能な粒子は、少なくとも1つの寸法において、2.5mm以下、例えば2.0mm以下の厚さを有する。本明細書において、アスリートは、厚さ2.0mm以下、例えば1.5mmの粒子の方が、厚さ2.0mm超、例えば2.3mmの粒子よりもかなり飲み込みやすいと考えていることが実証されている。嗜好性は、摂取される粘性の液体と粒子とを組み合わせることによってさらに改善され得る。さらに、厚さが2.5mm以下、例えば2.0mm以下であることにより、粒子が幽門括約筋を通って比較的自由に胃から出ることが可能となり、したがって、胃におけるGI障害のリスクが低減されると考えられる。
【0055】
摂取可能な粒子は、このましくは、少なくとも1つの寸法において、1.8mm以下、例えば1.6mm以下、好ましくは1.5mm以下の厚さを有する。これらの寸法であることにより、良好な嗜好性が確保されると同時に、摂取可能な粒子が幽門括約筋を自由に通過することができるため、胃通過時間が短くなり、有益である。これにより、胃室内でのNaHCOの溶解レベルが低くなり、GI障害の可能性が大幅に軽減される。
【0056】
摂取可能な粒子は、少なくとも1つの寸法において、1.0mm超、好ましくは1.2mm以上、例えば1.5mm以上の厚さを有し得る。粒子が薄い(0.5mm以下)と胃室内での溶解時間が速くなり、GI障害を引き起こす可能性があることが実証されている。また、本明細書において、0.5~1.0mmのサイズを有する粒子が中等度のGI症状と関連していることも実証されている。厚さの下限により、腸溶性コーティングを必要とせずに、口内での溶解の程度が最小限に抑えられ、胃内での放出速度が適切に減衰されることが確保される。摂取可能な粒子、例えば錠剤またはミニ錠剤は、好ましくは層状ではない。これは、粒子が本質的に均質であり、コーティングが含まれていないことを意味する。したがって、粒子は多層ではない。好ましくは、摂取可能な粒子は非層状、非コーティング錠剤である。これは、小腸内で重炭酸ナトリウム塩を効率的に放出するのに有益であり、含有される重炭酸塩が血液中に取り込まれるようになる。典型的には、摂取可能な粒子中に含有される重炭酸ナトリウムは、摂取後3時間以内、好ましくは摂取後2時間以内に完全に溶解する。溶解が遅いと、例えば4時間超かかると、大腸内で重炭酸ナトリウムが放出され、下痢等の望ましくない下部GI症状を引き起こす。
【0057】
摂取可能な粒子は、好ましくは、4.0mm以下、例えば3.5mm以下、例えば3.0mm以下、例えば2.0mm以下、さらには1.8mm以下、または1.6mm以下のサイズを有する。適切な粒子サイズは、例えば1.2~4.0mm、例えば1.2~3.0mm、例えば1.2~2.0mmまたは1.2~1.8mmである。これらの寸法であることにより、重炭酸塩の十分な栄養摂取を伴う良好な嗜好性が確保されます。5.0mm超の大きな粒径、例えば大きなカプセルの場合、特にパフォーマンスを発揮するアスリートにとっては摂取がより困難である。
【0058】
摂取可能な粒子は回転楕円体の形状であることが好ましい。典型的には、摂取可能な粒子は、側面の高さが全体の厚さよりも小さい曲率を有し得る。摂取可能な粒子の好ましい形式としては、ペレット、ビーズ、錠剤および顆粒が挙げられる。特に好ましい形式は、錠剤またはミニ錠剤である。
【0059】
特定の実施形態において、略球状の粒子は3:2~3:1、または1:3~2:3の直径/厚さの比を有する。
【0060】
一つの実施形態において、摂取可能な粒子は、厚さが1.0mm超2.0mm以下であり、直径が1.0mm超5.0mm以下である錠剤またはミニ錠剤であり、例えば厚さが1.2~2.0mmであり、直径が1.2~5.0mmである錠剤またはミニ錠剤である。錠剤は、好ましくは、1.8mm以下、例えば1.6mm以下、好ましくは1.5mm以下の厚さを有する。これらの寸法であることにより、良好な嗜好性が確保されると同時に、錠剤が幽門括約筋を自由に通過できるため、胃通過時間が短くなり、有益である。これにより、胃室内でのNaHCOの溶解レベルが低くなり、GI障害の可能性が大幅に軽減される。錠剤の厚さは1.0mm超、最も好ましくは1.2mm以上である。本明細書において、より薄い粒子(0.5mm以下)は、胃室内でのより速い溶解時間と関連しており、それがGI障害を引き起こす可能性があることが実証されている。また、本明細書において、0.5~1.0mmのサイズを有する粒子が中等度のGI症状と関連していることも実証されている。錠剤は、好ましくは、4.0mm以下、例えば3.5mm以下、例えば3.0mm以下、例えば2.0mm以下、さらには1.8mm以下または1.6mm以下の直径を有する。適切な錠剤の直径は、例えば1.2~4.0mm、例えば1.2~3.0mm、例えば1.2~2.0mmまたは1.2~1.8mmである。これらの寸法であることにより、炭酸水素ナトリウムの十分な栄養摂取による優れた嗜好性が確保される。5.0mm超の大きな錠剤は、特にパフォーマンスを発揮するアスリートにとっては摂取が困難である。
【0061】
粒子、例えば錠剤またはミニ錠剤は非崩壊性であることが好ましい。摂取可能な粒子は崩壊しないため、重炭酸ナトリウムは時間の経過と共に粒子表面から連続的に溶解または浸食される。これにより、GI障害の可能性が軽減され、血液[HCO ]およびpHの望ましい上昇が長期間持続する。
【0062】
摂取可能な粒子は、口や胃内であまり溶解されない。これにより、GI障害の可能性が軽減される。粒子は胃内にかなり長い時間存在するため、口の中よりも胃内でより多くの重炭酸ナトリウムが放出される。摂取可能な粒子からの重炭酸ナトリウムの放出の適切な遅延は、ゲルまたは他の粘弾性媒体等の粘性媒体に摂取可能な粒子を組み込むことによって有利に達成することができる。
【0063】
含有される重炭酸ナトリウムは、小腸を出る前に完全に溶解し、これは含有される重炭酸ナトリウムが血液中に取り込まれることができることを意味する。典型的には、摂取可能な粒子中に含有される重炭酸ナトリウムは、摂取後3時間以内、好ましくは摂取後2時間以内に完全に溶解する。実施例で実証されるように、これは、重炭酸ナトリウムが確実に血中に取り込まれることができるため、例えばより大きなカプセルと比較して有利である。好ましくは、摂取可能な粒子の摂取後、最大血漿重炭酸塩濃度の90%(T90%max)に達するまでの時間は、摂取後3時間未満である。溶解が遅く、それに関連してT90%maxが高くなると、例えば4時間を超えると、大腸で重炭酸ナトリウムが放出され、これが下痢等の望ましくない下部GI症状を引き起こす。摂取可能な粒子は、溶解および関連するT90%maxを遅らせるため、いかなる腸溶性コーティングも有さないことが好ましい。したがって、摂取可能な粒子にはコーティングがないことが好ましい。
【0064】
重炭酸ナトリウム塩に加えて、摂取可能な粒子は、重炭酸ナトリウム塩と合わせて最大100%(w/w)となる賦形剤を含んでもよい。したがって、摂取可能な粒子は、結合剤、潤滑剤および流動促進剤のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。摂取可能な粒子は、さらなる賦形剤を含んでもよい。
【0065】
特定の実施形態において、摂取可能な粒子は、典型的には1~50%(w/w)、例えば1~30%(w/w)または1~15%(w/w)の量の結合剤をさらに含む。結合剤成分は、上述したように、粒子の浸食による重炭酸ナトリウムの徐放に関する要件を満たすように選択される。好ましい結合剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)および多糖類、ならびにそれらの組み合わせから選択される。さらに好ましい結合剤は、微結晶セルロースおよびゼラチンであり、これらは上述したように組み合わせてもよい。好ましい多糖類結合剤は、高分子量アルギン酸塩、ペクチン、トラガカントガムおよびアカシアガム、ならびにそれらの組み合わせ、例えば高分子量アルギン酸塩、ペクチンおよびアカシアガム、およびそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態において、結合剤は、炭酸カルシウムおよびアカシアガム、ならびにそれらの組み合わせから選択される。一つの好ましい実施形態において、結合剤はHPCを含む。HPCは粒子に良好な機械的安定性をもたらす。特定の好ましい実施形態において、結合剤はHPCであり;例えば、摂取可能な粒子の1~30%(w/w)、1~15%(w/w)、または5~15%(w/w)の量である。特定の実施形態において、結合剤はHPCおよびアカシアガム、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
特定の実施形態において、摂取可能な粒子は、典型的には0.1~10%(w/w)、例えば1~5%(w/w)の量の滑沢剤をさらに含む。好ましい潤滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、およびそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態において、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0067】
特定の実施形態において、摂取可能な粒子は、典型的には0.1~5%(w/w)、例えば1~3%(w/w)の量の流動促進剤をさらに含む。好ましい流動促進剤はヒュームドシリカ(無水コロイダルシリカ)である。
【0068】
特定の実施形態において、摂取可能な粒子は、糖および複合炭水化物から選択されるさらなる賦形剤を、典型的には1~50%(w/w)、例えば1~40%(w/w)、例えば1~30%(w/w)、例えば1~20%(w/w)、例えば1~10%(w/w)の量でさらに含む。好ましい糖はグルコース、フルクトース、スクロースおよびイソマルツロースから選択され、典型的には1~50%(w/w)、例えば1~40%(w/w)、例えば1~30%(w/w)、例えば1~20%(w/w)、例えば1~10%(w/w)の量である。好ましい複合炭水化物は、マルトデキストリン、乾燥グルコースシロップおよび乾燥フルクトースシロップから選択され、典型的には1~50%(w/w)、例えば1~40%(w/w)、例えば1~30%(w/w)、例えば1~20%(w/w)、例えば1~10%(w/w)の量である。
【0069】
摂取可能な粒子は、好ましくは下記のいずれかの組成(合計で100重量%)を有する:
(A)重炭酸ナトリウム75~85重量%;炭酸カルシウム5~10重量%;ヒドロキシプロピルセルロース5~10重量%;マルトデキストリン0.1~1.0重量%;アカシアガム1~3重量%;ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;および無水コロイダルシリカ0.1~1.0重量%、
(B)重炭酸ナトリウム82~92重量%;ヒドロキシプロピルセルロース5~15重量%;ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;および無水コロイダルシリカ0.1~1.0%、
(C)重炭酸ナトリウム80~90重量%;リン酸カルシウム5~15重量%;アカシアガム1~5重量%;ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;および無水コロイダルシリカ0.1~1.0重量%。
【0070】
好ましくは、本発明の組成物は、直径が1.2~5.0mmの範囲であり、厚さが1.2~2.0mmの範囲であるミニ錠剤として製剤化される。
【0071】
栄養補助食品組成物は、水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液である。摂取可能な粒子は、摂取を容易にし、嗜好性を改善するために、水性媒体中に懸濁されることが好ましい。水性媒体は、例えば粘性の溶液またはコロイド状懸濁液であってもよい。
【0072】
摂取可能な粒子は、摂取前の重炭酸ナトリウムの望ましくない溶解を防ぐために、摂取直前に水性媒体中に新たに分散させることが好ましい。得られる懸濁液は、調製後15分以内に摂取することが好ましい。重炭酸ナトリウムの放出量は、摂取前にできるだけ少なく、好ましくは摂取総量の20%未満、例えば摂取総量の15%未満であるべきである。
【0073】
摂取を容易にし、嗜好性を改善するために、水性媒体は粘性水性媒体、例えば粘性水性液体、例えば粘性水溶液であることが好ましい。好ましくは、粘性水性媒体は粘弾性媒体である。好ましい粘弾性媒体はゲルである。粘性水性媒体は、粘性液体であってもよい。重炭酸ナトリウムは高密度であるため、それを最大85%またはそれ以上の量で含む摂取可能な粒子も高密度になる。これらの粒子が水に分散すると、急速に容器の底に沈降する。媒体の粘度は、粘性媒体中に分散した場合に分散液が摂取されるまでに摂取可能な粒子の沈降を防ぐのに十分に大きい必要がある。撹拌されていない粘性の水性媒体中の単一の摂取可能な粒子の沈降速度は70mm/分未満、例えば20mm/分未満、例えば10mm/分未満であることが好ましい。実施例2のような中間粘度の媒体中でのミニ錠剤の沈降速度は約60mm/分である(実施例8を参照されたい)。特に好ましくは撹拌されていない粘性の水性媒体中の単一の摂取可能な粒子の沈降速度が5mm/分未満、好ましくは2mm/分未満、より好ましくは1mm/分未満である。実施例1に示すように、粘性媒体中でのミニ錠剤の沈降速度は0.5mm/分未満である(実施例8を参照されたい)。また、本明細書(図3)において、高粘度の媒体を用いることにより、おそらく胃から粒子がより速く排出されるため、摂取後の最初の90分間は重炭酸ナトリウムのより速い取り込みが達成されることが実証されている。さらに、粘性媒体は組成物の嗜好性を改善し、粒子が容易に摂取され、容器内に残らないようにする。粘性媒体のさらなる利点は、例えば摂取時の媒体の混合を遅くし、それによって栄養補助食品組成物中の錠剤の浸食速度を減少させることである。
【0074】
いかなる特定の理論にも限定されることを望まないが、粘性媒体は、塩酸が排泄される胃壁の高酸性環境に粒子が直接曝露されるのを防止すると考えられる。これにより粒子の完全性が保護され、そうでない場合に発生する可能性のある胃腸の問題が予防または軽減されると考えられる。
【0075】
本発明の栄養補助食品組成物における摂取可能な重炭酸ナトリウム粒子と粘性の水性媒体との相互作用的な組み合わせにより、運動誘発性アシドーシスを含むアシドーシスを驚くほど効率的な方法で予防する。摂取可能な粒子のサイズにより、摂取の促進および嗜好性の改善、ならびにGI副作用の大幅な軽減の両方が可能になる。粘性水性媒体は、粒子を媒体中に分散させて十分な量の重炭酸ナトリウムの摂取を促進するだけでなく、摂取前および胃内の両方において粒子からの重炭酸ナトリウムの放出を遅らせる。粘性水性媒体は、組成物が小腸に到達して効率的に吸収されるまで、摂取されたミニ錠剤からの重炭酸ナトリウムの放出を遅らせると考えられる。
【0076】
栄養補助食品組成物の一つの有利な実施形態において、粘性水性媒体は粘弾性媒体であり、好ましくはゲルの形態である。ミニ錠剤は、組み合わせた生成物を摂取する前に粘弾性媒体中に分散される。好ましくは、粘弾性媒体は、粘弾性特性を有する水性半固体ゲル等のゲルである。粘弾性媒体は沈降を防ぎ、粒子の摂取を促進する。粘弾性媒体のさらなる利点は、例えば摂取時の媒体の混合を遅くし、それによって栄養補助食品組成物中の錠剤の浸食速度を低下させることである。実施例7に示されるように、粘弾性媒体は、組成物が摂取されるまでミニ錠剤からのNaHCOの放出を実質的に遅らせるのに有用であると考えられる。
【0077】
粘弾性媒体の特性の一つは、せん断減粘特性または擬似塑性特性を有することである。粘性であるが粘弾性ではない媒体と比較すると、粘弾性媒体は静止しているときは粘性を示すが、高速で流れているときや、飲み込むとき等撹拌されているときは粘性が低下する。
【0078】
実施例9および図7を参照すると、粘度は、例えば、平行プレート形状(プレート直径50mm、ギャップ100μm)を用いて、せん断速度制御レオメーター(Model 302、Anton Paar社製、ドイツ)を用いて20℃で測定することができる。この設定では、水の粘度は0~100s-1のせん断速度で1mPa・sでほぼ一定である。疑義を避けるために、本明細書で定義される粘性水性媒体は水よりもかなり粘性が高い。本明細書で定義される粘性水性媒体は、典型的には0~100s-1の間のせん断速度、例えば40s-1で、少なくとも50mPa・s、例えば少なくとも100mPa・sの粘度を示す。好ましくは、本明細書で定義される水性媒体は、0~100s-1の間のせん断速度、例えば40s-1で、少なくとも300mPa・s、例えば少なくとも500mPa・sの粘度を示す。粘性特性に加えて、本明細書で定義される粘弾性媒体は、典型的には20~100s-1のせん断速度よりも0~10s-1のせん断速度で著しく高い粘度を示す。本明細書で定義される粘弾性媒体は、典型的には5s-1のせん断速度で、40s-1のせん断速度の少なくとも2倍の粘度を示す。上述した特定の値は、この特定の設定に関連するものであるが、当業者であれば実施例9を参照することにより、他の実験設定における粘度および粘弾性の対応する値を容易に決定することができる。疑念を避けるために、この特性がこの実験設定により決定することができる場合、決定された粘度の値は、摂取可能な粒子と組み合わせる前の粘性水性媒体を指す。
【0079】
粘弾性媒体(ビヒクル)は、例えば摂取時の媒体の混合を遅くし、それによって栄養補助食品組成物中の錠剤の浸食速度を低下させるために有利である。水と接触すると、重炭酸塩が制御された方法でミニ錠剤から放出される。ミニ錠剤が粘弾性媒体に囲まれている場合、錠剤近くの水が停滞しているため、低粘度の液体よりも放出が遅くなる。胃内では、粘弾性媒体はある程度胃液に対する障壁としても機能する。
【0080】
一般に、ゲルは、分散相が分散媒と結合して、粘性および弾性の両方の特性を備え、弾性が支配的である、半固体材料を生成するコロイドとして説明される。粘弾性特性は、ひずみ(γ、無次元)と応力(τ、N/m)との間の位相シフトが測定される振動試験によって説明される。45°と90°との間の位相シフトでは流体特性が支配的であるが、0°と45°との間の位相シフトではゲルに典型的な弾性特性が支配的である。複素せん断弾性率は、垂直成分G’(弾性エネルギーの貯蔵、貯蔵弾性率)およびG’’(粘性散逸によるエネルギー損失、損失弾性率)を有するベクトルGとして説明される。したがって、ゲルはG’がG’’よりも大きいという特徴を有する。G’(材料の固体様応答部分に関係する貯蔵弾性率)がG’’(材料の液体様応答に関係する損失弾性率)よりも高くなると、系は特定の周波数でゲル状になる。
【0081】
ゲル状生成物は比較的柔らかく、もちもちとした食感が特徴である。典型的なゲル化生成物としては、ゼラチンベースの生成物のほか、特定の種類のカラギーナン、アルギン酸塩、デンプン、アガロース、β-グルカン、ジェランガム、ペクチンまたはセルロース化合物をベースにした生成物が挙げられる。一般に、ゲルは、分散相が分散媒と結合して半固体材料、例えばゼリーを生成するコロイドとして説明することができる。
【0082】
ゲルでは、その高密度にもかかわらず、ゲル構造により錠剤の沈降/沈殿が防止される。ゲルはまた、栄養補助食品組成物の知覚される美味しさの改善にも寄与する。したがって、ゲルはミニ錠剤の摂取も促進する。
【0083】
疑義を避けるために、重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子は、ゲル系の分散相を構成しない。重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子は、それ自体ゲル中に分散されている。ゲルは、分散相(重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子ではない)が分散媒と結合して半固体材料を生成するコロイドとして説明することができる。
【0084】
特定の実施形態において、粘性水性媒体は、増粘剤として水に溶解される1種以上の天然ポリマーを含む。好ましい天然ポリマーは、天然デンプンおよび加工デンプン、キサンタンガム、グアーガム、カラゲナン、アルギン酸塩、ペクチン、およびそれらの組み合わせ等の多糖類から選択される。加工デンプンは、培地に良好な安定性を備える粘弾性特性を付与する。好ましい加工デンプンはアセチル化アジピン酸二デンプンであり、非常に有用な粘弾性特性を得るには、好ましくは粘性水性媒体の2重量%超、例えば3重量%超の量である。高い嗜好性を得るために、デンプンとキサンタンガム等の少量のより強力な増粘剤とを組み合わせるのが有利である。好ましい天然ポリマーは、
(a)天然デンプンまたは加工デンプン;および
(b)キサンタンガムまたはグアーガム
の相対重量比(a):(b)が99:1~90:10である組み合わせである。
【0085】
好ましい実施形態において、粘性水性媒体は、天然ポリマーとしてデンプンまたは加工デンプン、好ましくは加工デンプンを含む。これらはアミラーゼによって分解され、それによりゲルが弱くなり、小腸内のミニ錠剤からの重炭酸ナトリウムの放出が促進される。重炭酸塩の放出が促進され、ミニ錠剤が結腸に到達する前に完了すると予想される。
【0086】
いくつかの実施形態において、粘性水性媒体は、水に溶解した1種以上の糖または複合炭水化物を含む。好ましい糖は、グルコース、フルクトース、スクロースおよびイソマルツロースから選択される。好ましい複合炭水化物は、デンプン、マルトデキストリン、グルコースシロップおよびフルクトースシロップから選択される。
【0087】
粘性水性媒体は、好ましくは下記の組成の1つを有し得る(水により100重量%とする):
(A)マルトデキストリン4~12重量%、フルクトース3~10重量%、アセチル化アジピン酸二デンプン2~7重量%、およびキサンタンガム0.1~1.0重量%;
(B)マルトデキストリン6~14重量%、フルクトース2~5重量%、アセチル化アジピン酸二デンプン1~3重量%、およびキサンタンガム0.1~1.0重量%。
【0088】
栄養補助食品組成物のいくつかの実施形態において、1回の摂取量における摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の総量は10g超であり、好ましくは15g超である。栄養補助食品組成物のいくつかの実施形態において、1回の摂取量における摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の総量は50g未満であり、好ましくは40g未満、より好ましくは30g未満である。
【0089】
一つの実施形態において、栄養補助食品組成物は、水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液である。粒子のサイズは1.2~5.0mmの範囲であり、少なくとも1つの寸法の厚さは1.2~2.0mmである。粒子は、65%(w/w)超の重炭酸ナトリウム塩を含む。摂取可能な粒子は、摂取を促進し、嗜好性を改善するために、例えば水に溶解したマルトデキストリン、およびフルクトース等の糖を含む粘性媒体中に懸濁される。
【0090】
栄養補助食品組成物を調製するためのキットも提供される。このキットは、本明細書で定義される摂取可能な粒子;および本明細書で定義される水性媒体を含む。このキットは、水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液として栄養補助食品組成物を調製するのに有用である。得られた栄養補助食品組成物は、高強度の運動パフォーマンスを向上させるのに有用である。いくつかの実施形態において、1回の摂取における摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の総量は10g超であり、好ましくは15g超である。栄養補助食品組成物のいくつかの実施形態において、1回の摂取における摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の総量は50g未満であり、好ましくは40g未満、より好ましくは30g未満である。
【0091】
さらなる側面によれば、摂取可能な粒子は、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための栄養補助食品組成物において有用である。具体的には、摂取可能な粒子は、高強度の運動パフォーマンスを向上させるために、本明細書に開示される栄養補助食品組成物において有用である。
【0092】
摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物およびキットは、運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するのに有用であることが理解される。摂取可能な粒子は、それ自体が運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するのに有用である。重炭酸ナトリウムの補給は、運動誘発性アシドーシス、すなわち、運動によって引き起こされる体内の酸-塩基バランスの不均衡を予防、軽減または緩和するのにも役立つ。運動誘発性アシドーシスは、動脈血のpHが7.35未満であると定義されるアシデミアを引き起こす可能性がある。重炭酸ナトリウムの補給は、運動誘発性アシデミアの予防、軽減または緩和にも役立ち得る。
【0093】
さらなる側面によれば、摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための方法が提供される。具体的には、栄養補助食品組成物は本明細書で定義される通りである。好ましくは、栄養補助食品組成物は、摂取の直前、例えば摂取の5分前未満に、摂取可能な粒子と水性媒体とを混合することによって新たに調製される。これにより、粒子が本質的に完全で、摂取時に溶解しないことが確保される。
【0094】
摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、対象における運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和する方法が提供される。典型的には、kg体重あたり総量で0.10~0.40gの重炭酸塩;好ましくはkg体重あたり0.20~0.35gの重炭酸塩;好ましくはkg体重あたり0.25~0.30gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される。
【0095】
本明細書で定義される好ましい使用または方法では、体重kgあたり総量で0.10~0.40gの重炭酸ナトリウム塩;好ましくは体重kgあたり0.20~0.35gの重炭酸ナトリウム塩;体重kgあたり0.25~0.30gの重炭酸ナトリウム塩を含む摂取可能な粒子が摂取される。少なくとも5mmol/l、例えば少なくとも6mmol/lの血中重炭酸ナトリウム濃度の増大を達成するために、十分な量の重炭酸ナトリウムが摂取されることが好ましい。しかしながら、状況に応じて、血中重炭酸塩濃度を1mmol/l、2mmol/l、3mmol/lまたは4mmol/l増大させることが有用である可能性があることがすでに認識されている。
【0096】
さらなる態様によれば、摂取可能な粒子を含む組成物およびキットは、代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミア、すなわち、体内の酸-塩基バランスの不均衡を特徴とする病状を治療するのにさらに有用である。これは、組成物が医薬組成物であることを示唆する。代謝性アシドーシスは、動脈血のpHが7.35未満であると定義されるアシデミアを引き起こす可能性がある。臨床的には、代謝性アシドーシスは、酸生成の増大、重炭酸塩の喪失、または過剰な酸を排泄する腎臓の能力の低下によって引き起こされる可能性がある。
【0097】
数分から数日続く急性代謝性アシドーシスは、重篤な疾患や入院中に発生することが多く、一般に体内で過剰量の有機酸(ケト酸または乳酸)が生成されることで引き起こされる。数週間から数年続く慢性代謝性アシドーシスの状態は、腎機能障害(慢性腎臓病)や重炭酸塩消耗の結果である可能性がある。急性代謝性アシドーシスおよび慢性代謝性アシドーシスの悪影響もまた異なり、急性代謝性アシドーシスは病院環境において心臓血管系に影響を及ぼし、慢性代謝性アシドーシスは筋肉、骨、腎臓、心臓血管の健康に影響を及ぼす。
【0098】
摂取可能な粒子を含む薬学的有効量の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法が提供される。栄養補助食品組成物およびキットは、摂取可能な粒子を含む薬学的有効量の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法において有用である。代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアは、慢性腎臓病によって引き起こされる可能性がある。典型的には、kg体重あたり総量で0.01~0.10gの重炭酸塩;好ましくはkg体重あたり0.02~0.07gの重炭酸塩;好ましくはkg体重あたり0.02~0.04gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される。好ましい実施形態において、これは1日の投与量に相当する。いくつかの実施形態において、摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の1日量は1g超であり、好ましくは2g超である。組成物のいくつかの実施形態において、摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の1日量は5g未満であり、好ましくは1日に4g未満、より好ましくは3g未満、例えば2~5g、3~5gまたは2~3gである。1日の用量全体を一度に摂取することが望ましく、本明細書に開示される組成物は胃腸障害の関連リスクを低減させる。
【0099】
さらに、摂取可能な粒子は、それ自体が代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療するのに有用である。薬学的有効量の摂取可能な粒子を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法が提供される。摂取可能な粒子は、薬学的有効量の摂取可能な粒子を摂取するステップを含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法において有用である。代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアは、慢性腎臓病によって引き起こされる可能性がある。典型的には、kg体重あたり総量で0.01~0.10gの重炭酸塩;好ましくはkg体重あたり0.02~0.07gの重炭酸塩;好ましくはkg体重あたり0.02~0.04gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される。好ましい実施形態において、これは1日の投与量に相当する。いくつかの実施形態において、摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の1日量は1g超であり、好ましくは2g超である。組成物のいくつかの実施形態において、摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウム塩の1日量は5g未満であり、好ましくは1日に4g未満、より好ましくは3g未満、例えば2~5g、3~5gまたは2~3gである。1日の用量全体を一度に摂取することが望ましく、本明細書に開示される摂取可能な粒子は胃腸障害の関連リスクを低減させる。
【実施例
【0100】
以下、本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0101】
実施例1
直径3.0mm、高さ1.5mmおよび平均重量18mgのミニ錠剤を以下の組成で製造した:NaHCO85重量%、リン酸カルシウム10重量%、アカシアガム2.5重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%、および無水コロイダルシリカ0.5重量%。各成分をTurbulaミキサーで混合した。錠剤を、強制フィーダーを備えたFette 52iロータリープレスを用いて圧縮した。
【0102】
参加者は、重炭酸ナトリウムミニ錠剤および媒体を摂取する少なくとも3時間前に朝食をとっていた。22gのマルトデキストリン、16gのフルクトース、12gのアセチル化アジピン酸ジデンプンおよび0.4gのキサンタンガムを混合し、この混合物を300gの水と混合することによって、粘性の媒体を調製した。混合物は、混合後10分で用いることができる状態になった。体重1kgあたり0.3gの重炭酸ナトリウムに相当する重炭酸ナトリウムミニ錠剤を混合物に添加し、すべてを5分以内に摂取した。
【0103】
動脈化毛細管血液サンプルを、摂取前、および摂取後8時間まで30、60または120分間隔で収集した。血液サンプルは血液ガス分析装置で直ちに分析された。
【0104】
図1は、ミニ錠剤の摂取前後に測定された血漿標準重炭酸塩濃度(平均+/-S.D.、n=4)を示し、350gの粘性飲料と共に摂取した体重1kgあたり0.30gのNaHCOに相当する。
【0105】
120分でピーク重炭酸塩濃度の少なくとも90%に達した。t=0からの最大増大は約7mmol/lであった。
【0106】
実施例2
実施例1と同様のミニ錠剤を使用した。
【0107】
参加者は、重炭酸ナトリウムミニ錠剤および媒体を摂取する少なくとも3時間前に朝食をとっていた。33gのマルトデキストリン、11gのフルクトース、5.4gのアセチル化アジピン酸ジデンプンおよび0.6gのキサンタンガムを混合し、この混合物を300gの水(中間粘度)と混合することによって、粘性媒体を調製した。体重1kgあたり0.3gの重炭酸ナトリウムに相当する重炭酸ナトリウムミニ錠剤を混合物に添加し、すべてを5分以内に摂取した。アーモンドバターを添えた餅2個と、26gのマルトデキストリンおよび13gのフルクトースを水300gに溶かした飲み物とからなる軽食を60分に摂取した。
【0108】
2つの実験日のうちの1日(図2の破線)に、重炭酸ナトリウム摂取後それぞれ約3時間、5時間および7時間後に開始して、20分間の高強度インターバルトレーニング(HIIT)運動を3回実施した。動脈化毛細管血液サンプルを、摂取前、および摂取後約8.5時間まで採取した。
【0109】
図2は、体重1kgあたり0.30gのNaHCOに相当するミニ錠剤を350gの粘性飲料(中間粘度)と共に摂取した場合の、摂取前後で測定された血漿標準重炭酸塩濃度を示す。
実線:安静または低強度の運動(歩行)条件。
破線:安静および低強度の運動を3回の20分間の高強度インターバルトレーニング(HIIT)セッションによって中断し、それぞれ約180分、300分および420分の採血後に開始する。
【0110】
血症重炭酸塩はHIITセッションによって低下したが、次のHIITセッション前および試験終了時には、安静時/低強度運動条件の結晶中短鎖粘レベルと比較して回復した(図2)。
【0111】
実施例3
実施例1および2のようなミニ錠剤を、実施例1のような高粘度媒体と組み合わせて、または実施例2のような中間粘度の媒体のいずれかと組み合わせて用いた。体重1kgあたり重炭酸ナトリウム0.30gに相当するミニ錠剤を含む混合物を、標準的な朝食から2.5~3.5時間後に摂取した。動脈化毛細血管血液中の標準重炭酸塩レベルを、摂取の直前および直後にモニタリングした。
【0112】
図3は、高粘度媒体(実線BおよびC)または中間粘度媒体(破線A)のいずれかと組み合わせたミニ錠剤からの重炭酸塩の取り込みを示す。サンプルAおよびBでは、60分後に軽食を摂取した。サンプルCでは、軽食は摂取しなかった。
【0113】
図3に見られるように、摂取の直前および直後にモニターされた動脈化毛細管血中の標準重炭酸塩レベルは、高粘度媒体を用いた場合(BおよびC)、摂取後の最初の120分間は重炭酸塩の取り込みがより速く、これはおそらく胃排出の速さによるものと考えられる。60分後に摂取した軽食(アーモンドバターを添えた餅2個と、マルトデキストリン26gおよびフルクトース13gを水300gに溶かした飲み物とからなる)は、その後の90~120分間の重炭酸塩の摂取に影響を及ぼした(AおよびB)。
【0114】
実施例4
異なる重炭酸ナトリウム製剤をそれぞれ媒体と組み合わせて、2~6人の対象が1~4回摂取した。摂取6時間後に知覚されたおいしさ、ならびに知覚された上部および下部の胃腸症状を記録した。毛細管血中の標準重炭酸塩濃度を、摂取前、および摂取後の少なくとも210分までモニタリングした。結果を表1にまとめる。単一の実験による重炭酸塩レベルの例を図4に示す。
【0115】
図4は、2人の異なる対象において、下記の摂取後に測定された血漿重炭酸塩レベルを示す:
A:33gのマルトデキストリンおよび17gのスクロースを含む480mLの水に溶解した重炭酸ナトリウム;
B:摂取直前に実施例1と同様に媒体と混合した重炭酸ナトリウム粉末(<0.3mm)
D1およびD2:実施例1と同様に、重炭酸ナトリウムミニ錠剤および粘性媒体を用いた2つの同一の実験。
【0116】
表1
さまざまな重炭酸塩および媒体製剤の摂取後に知覚されるおいしさおよびGI症状、ならびに最大血漿重炭酸塩濃度の90%(T90%max)に達するまでの時間。
A:低粘度媒体に溶解した重炭酸ナトリウム(スクロース33g、マルトデキストリン17g、水480ml)
B:摂取直前に高粘度媒体に添加された重炭酸ナトリウム粉末
C:重炭酸ナトリウム顆粒
DおよびE:85%重炭酸ナトリウムを含有する、実施例1~3と同様のミニ錠剤
F:重炭酸ナトリウムを炭酸カルシウム(50%)およびマルトデキストリン(35%)に代えたプラセボミニ錠剤
G:リン酸カルシウムおよびアカシアガムを10重量%のPVPに代えた、実施例1~3と同様のミニ錠剤。重炭酸ナトリウム含有量は87.5重量%。
H:Eudragit(登録商標)L30D55の腸溶性コーティングを施した、Gと同様のミニ錠剤
I:1.2gの重炭酸ナトリウム粉末(<0.3mm)を充填したサイズ00Eのヒプロメロースカプセル。
実施例1に記載の高粘度媒体。
実施例2に記載の中間粘度媒体。
おいしさ:1=非常に低い、5=非常に高い。
上部および下部GI症状:1=無症状、4~5=重篤な症状。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例5
85%のNaHCOを含有する実施例1のようなミニ錠剤と粒径0.5~1.0mmの重炭酸ナトリウム顆粒(表1のサンプルC)とを、in vitro溶解速度について比較した。
【0119】
重炭酸ナトリウム138mgに相当するミニ錠剤または顆粒を、50mlのねじ蓋付き容器に入れた模擬腸液30mlに添加した。実験中、容器を断続的に穏やかに振盪し、経時的にpHを測定した(図5を参照されたい)。
【0120】
重炭酸塩によって引き起こされるpHの上昇は、小顆粒と比較してミニ錠剤では大幅に遅れた。
【0121】
実施例6
(A)直径1.2~5.0mm、厚さ1.2~2.0mmのミニ錠剤を、以下の組成で製造した。
重炭酸ナトリウム80重量%
炭酸カルシウム8重量%
ヒドロキシプロピルセルロース7重量%
マルトデキストリン0.5重量%
アカシアガム2重量%
ステアリン酸マグネシウム2重量%
無水コロイダルシリカ0.5%
【0122】
(B)直径1.2~5.0mm、厚さ1.2~2.0mmのミニ錠剤を、以下の組成で製造した。
重炭酸ナトリウム87.5重量%
ヒドロキシプロピルセルロース10重量%
ステアリン酸マグネシウム2重量%
無水コロイダルシリカ0.5%
【0123】
実施例7
3つの異なる実験におけるミニ錠剤からの重炭酸ナトリウムの放出。
(A)欧州薬局方(Ph.Eur.)2.9.3「Dissolution test for solid dosage forms」に準拠したタイプ2の溶解装置と同様の装置を用いた。実施例6Bと同様に、126mgのNaHCOおよび賦形剤を含む、サイズ1.5×3.0mm、総重量144mgの8つのミニ錠剤を、500mlのガラスビーカーの底から40mm上、かつ回転する磁気撹拌バーから25mm上のステンレス鋼ネット上に置いた。脱塩水(500ml)を37+/-2℃に保ち、150rpmで撹拌した。溶解したNaHCOの濃度を、電気伝導度測定によって決定した。完全な放出の基準として、錠剤の残骸が観察できなくなり、3分以内に導電率がそれ以上増大しなくなった時点で導電率を測定した。脱塩水中のミニ錠剤からは、NaHCOの75%以上が15分以内に放出され、95%以上が30分以内に放出された。
【0124】
(B)上記(A)と同様にそれぞれ8個のミニ錠剤を入れた6つの容器を、実施例1に記載の半固体ゲルである粘弾性媒体40g中に分散させ、37℃に保たれたインキュベーター内で12rpmでタンブリングした。容器を異なる時点で取り出し、ミニ錠剤を取り出して脱塩水で穏やかに洗浄した後、ゲルおよび洗浄液を混合し、総重量が200gになるまで希釈した。NaHCO濃度を、電気伝導度測定により測定した。完全な放出の基準として、8個のミニ錠剤を完全に崩壊するまで160mlの脱塩水に入れ、次いで40gのゲルと混合した。ミニ錠剤を穏やかにタンブリングしたゲル中に分散させたままにすると、NaHCOの約25%が15分以内に、約50%が30分以内に、約75%が60分以内に放出された。
【0125】
(C)ミニ錠剤を分散させ、ゲル中に室温で15分間保持した。放出されたNaCOの量を、(B)と同様にして決定した。ミニ錠剤をタンブリングさせずに室温でゲル中に分散させたままにすると、約10~15%のNaCOが15分以内に放出された。
【0126】
結果は図6に示されており、上で詳述した実験(A)~(C)について、ミニ錠剤から放出されたNaHCOの割合が経時的に示されている。
【0127】
これらの実験から、ミニ錠剤からのNaHCOの放出は、水媒体中で撹拌した場合(A)に比べて、粘弾性ゲル媒体中でタンブリングさせた場合(B)の方がかなり遅いと結論付けられる。本発明の文脈において、粘弾性媒体は、組成物が小腸に到達するまで、摂取されたミニ錠剤からのNaHCOの放出を遅らせるのに有用であると考えられる。また、ミニ錠剤をタンブリングさせないゲル中に分散された場合(C)、ミニ錠剤からのNaHCOの放出は、タンブリングさせた場合(B)よりもかなり遅いと結論付けられる。本発明の文脈において、粘弾性媒体は、組成物が摂取されるまでミニ錠剤からのNaHCOの放出を実質的に遅らせるのに有用であると考えられる。実験(C)では15分以内に約10~15%のNaCOが放出され、この時間内に生成物を摂取することが推奨される。
【0128】
実施例8
粘弾性媒体を、本明細書で定義される重炭酸塩ミニ錠剤の沈降速度について試験した。
【0129】
錠剤は、直径3mm、高さ1.5mm、重量18mgおよび密度2.6mg/mmであった。数個の錠剤を媒体の表面の下に置き、最長30分間、または少なくとも10mm沈降するまで観察した。
【0130】
媒体A(A100%)は、27gのマルトデキストリン、20gのフルクトース、15gのアセチル化アジピン酸ジデンプン、0.5gのキサンタンガム、300mlの水を含んでいた。Aを水で希釈したものも調製し、A80%~A67%と名付けた。媒体A67%は、A100%の1.5倍の希釈に相当する。媒体E1は実施例1と同様の組成物である。媒体E2は実施例2と同様の組成物である。
【0131】
試験した媒体の沈降速度を表2に示す。
【表2】
【0132】
実施例9
(A)実施例8からの2つの媒体A100%およびA67%の粘度およびずり減粘特性を、せん断速度制御レオメーター(Model 302、Anton Paar社製、ドイツ)を用いて測定した。平行プレート形状を用いた(プレート直径50mm、ギャップ100μm)。粘度を20℃で測定した。媒体の粘度を図7に示す(A-100およびA-67)。相対粘度A-100/A-67を図7に示す。
【0133】
図7に見られるように、2つの親水コロイド分散液A-100およびA-67の粘度曲線はせん断減粘特性を示す。せん断速度5s-1における粘度:A-100 5900mPa・s;A-67 560mPa・s。せん断速度40s-1における粘度:A-100 1540mPa・s;A-67 220mPa・s。
【0134】
図7に示すように、媒体A-100を1.5倍に希釈して得られたA-67の粘度は、せん断速度に応じて約6倍以上の粘度低下をもたらした。
【0135】
(B)複素せん断ベクトルGの弾性成分G’(貯蔵弾性率)および粘性成分G’’(損失弾性率)を示す振動試験を、実施例8の媒体A(A100%)について実施した。
【0136】
測定は、せん断速度制御レオメーター(Model 302、Anton Paar社製、ドイツ)を用いて20℃で行われた。平行プレート形状を用いた(プレート直径50mm、ギャップ100μm)。
【0137】
A100%の貯蔵弾性率G’および損失弾性率G’’を図8に示す。比G’/G’’は約3であり、これはサンプルが粘弾性媒体であり、ゲルの特性を有していることを意味する。
【0138】
実施例10
体重80kgのよく訓練された男性アスリートに、毎日同じ運動プロトコルに従い、高強度のインターバルトレーニングを2日連続で実行させた。高強度インターバルトレーニングの前、最中および後に血液のpHと血漿重炭酸塩を測定した。ウォームアップ後、タイム0から45秒のランニングと15秒の休憩を途中で5分間の休憩を挟みながら30回繰り返した。運動強度が無酸素性閾値を超えた(血漿乳酸塩が4mmol/lを超えた)。2日目に、本明細書で定義される栄養補助食品組成物を、運動前、時間約90分のサンプリング直後に摂取させた。栄養補助食品組成物は、実施例1に記載の半固体媒体中に分散させた、0.275g/kg体重に相当する22gのNaHCOを含有する実施例7に記載のミニ錠剤を含んでいた。
【0139】
結果を図9に示す。上のパネル(A)は血液pHを示し、下のパネル(B)は血漿重炭酸塩濃度を示す。灰色のバーは、高強度インターバルトレーニングの間隔を示す。
1日目:丸/点線;2日目:四角/実線。
【0140】
初日(対照)、運動によりpHはpH7.43からpH7.35に低下し、血漿重炭酸塩濃度は24mmol/lから18mmol/lに低下し、これは軽度のアシドーシスに相当する。2日目には、運動によって引き起こされるpH低下は、摂取された栄養補助食品組成物からの重炭酸塩の継続的な摂取によって引き起こされるpH上昇によって打ち消された。血液のpHは7.40超のままであり、血漿重炭酸塩濃度は23mmol/l超のままであった。図9に見られるように、血液pHおよび血漿重炭酸塩の変化は同じパターンに従っていた。
【0141】
実施形態の項目別リスト
1.水性媒体中に分散された、重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子を含む懸濁液である栄養補助食品組成物であって;前記粒子が厚さ1.0~2.0mm、直径1.0~5.0mmの錠剤であり;かつ前記粒子が50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含み;前記水性媒体が粘性の水性媒体である、前記栄養補助食品組成物。
2.前記摂取可能な粒子が、65%(w/w)超の重炭酸ナトリウム、例えば75%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む、項目1に記載の栄養補助食品組成物。
3.前記摂取可能な粒子が90%(w/w)未満の重炭酸ナトリウム、例えば85%(w/w)以下の重炭酸ナトリウムを含む、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
4.前記摂取可能な粒子が小腸内で重炭酸ナトリウムを放出するのに適している、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
5.前記錠剤の厚みが1.2~2.0mmであり、直径が1.2~5.0mmである前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
6.前記錠剤の厚みが1.8mm以下、例えば1.5mm以下である、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
7.前記錠剤の直径が4.0mm以下、例えば3.0mm以下である、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
8.前記錠剤の直径が2.0mm以下、例えば1.8mm以下である、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
9.前記摂取可能な粒子が非崩壊性である、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
10.前記摂取可能な粒子が、いかなるコーティングもされておらず、例えばいかなる腸溶コーティングもされていない、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
11.前記摂取可能な粒子が非層状粒子である、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
12.前記摂取可能な粒子が結合剤をさらに含む、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
13.前記結合剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、微結晶セルロース、ゼラチンおよび多糖類、ならびにそれらの組み合わせから選択される、項目12に記載の栄養補助食品組成物。
14.前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびそれらの組み合わせから選択される、項目13に記載の栄養補助食品組成物。
15.前記多糖類が、高分子量アルギン酸塩、ペクチン、トラガカントガムおよびアカシアガム、ならびにそれらの組み合わせから選択される、項目13に記載の栄養補助食品組成物。
16.前記結合剤が、炭酸カルシウムおよびアカシアガム、ならびにそれらの組み合わせから選択される、項目12に記載の栄養補助食品組成物。
17.前記摂取可能な粒子が滑沢剤をさらに含む、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
18.前記潤滑剤が、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、およびそれらの組み合わせから選択され;好ましくは潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである、項目17に記載の栄養補助食品組成物。
19.前記摂取可能な粒子が流動促進剤をさらに含む、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
20.前記流動促進剤がヒュームドシリカである、項目19に記載の栄養補助食品組成物。
21.前記摂取可能な粒子が、糖および複合炭水化物から選択されるさらなる賦形剤を含む、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
22.前記糖類が、グルコース、フルクトース、スクロースおよびイソマルツロースから選択される、項目21に記載の栄養補助食品組成物。
23.前記複合炭水化物が、デンプン、マルトデキストリン、乾燥ブドウ糖シロップおよび乾燥フルクトースシロップから選択される、項目21に記載の栄養補助食品組成物。
24.前記摂取可能な粒子が以下の組成を有する、項目1および4~11のいずれかに記載の栄養補助食品組成物:
重炭酸ナトリウム75~85重量%;
炭酸カルシウム5~10重量%;
ヒドロキシプロピルセルロース5~10重量%;
マルトデキストリン0.1~1.0重量%;
アカシアガム1~3重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0重量%。
25.前記摂取可能な粒子が以下の組成を有する、項目1および4~11のいずれかに記載の栄養補助食品組成物:
重炭酸ナトリウム82~92重量%;
ヒドロキシプロピルセルロース5~15重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0%。
26.前記摂取可能な粒子が以下の組成を有する、項目1および4~11のいずれかに記載の栄養補助食品組成物:
重炭酸ナトリウム80~90重量%;
リン酸カルシウム5~15重量%;
アカシアガム1~5重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0重量%。
27.前記撹拌されていない粘性の水性媒体中の単一の摂取可能粒子の沈降速度が、5mm/分未満、好ましくは2mm/分未満、より好ましくは1mm/分未満である、前項のいずれかに記載の栄養補助組成物。
28.前記粘性の水性媒体が粘弾性媒体である、前項のいずれかに記載の栄養補助組成物。
29.前記粘性の水性媒体が液体である、前項のいずれかに記載の栄養補助組成物。
30.前記粘弾性媒体がゲルである、項目28に記載の栄養補助組成物。
31.前記粘性の水性媒体が、増粘剤として水に溶解した1種以上の天然ポリマーを含む、前項のいずれかに記載の栄養補助組成物。
32.前記天然ポリマーが、天然および加工デンプン、キサンタンガム、グアーガム、カラゲナン、アルギン酸塩、ペクチン、およびそれらの組み合わせ等の多糖類から選択される、項目31に記載の栄養補助食品組成物。
33.天然ポリマーが、
(a)天然デンプンまたは加工デンプン、および
(b)キサンタンガムまたはグアーガム
の相対重量比(a):(b)が99:1~90:10である組み合わせである、項目32に記載の栄養補助食品組成物。
34.前記天然ポリマーが、天然デンプンおよび加工デンプンから選択される、項目32に記載の栄養補助食品組成物。
35.前記天然高分子が加工デンプンである、項目34に記載の栄養補助食品組成物。
36.前記粘性の水性媒体が、水に溶解した1つ以上の糖または複合炭水化物を含む、前項のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
37.前記糖類が、グルコース、フルクトース、スクロースおよびイソマルツロースから選択される、項目36に記載の栄養補助食品組成物。
38.前記複合炭水化物が、デンプン、マルトデキストリン、グルコースシロップおよびフルクトースシロップから選択される、項目36に記載の栄養補助食品組成物。
39.前記粘性の水性媒体が以下の組成を有する、項目1~30のいずれかに記載の栄養補助食品組成物:
マルトデキストリン4~12重量%;
フルクトース3~10重量%;
アセチル化アジピン酸ジデンプン2~7重量%;
キサンタンガム0.1~1.0重量%;
水で100重量%とする。
40.前記粘性の水性媒体が以下の組成を有する、項目1~30のいずれかに記載の栄養補助食品組成物:
マルトデキストリン6~14重量%、
フルクトース2~5重量%、
アセチル化アジピン酸ジデンプン1~3重量%、および
キサンタンガム0.1~1.0重量%、
水で100重量%とする。
41.1回の摂取量における摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウムの総量が10g超であり、好ましくは15g超である、項目1~40のいずれかに記載の栄養補助食品組成物。
42.1回の摂取量における摂取可能な粒子中の重炭酸ナトリウムの総量が50g未満であり、好ましくは40g未満、より好ましくは30g未満である、項目41に記載の栄養補助食品組成物。
43.栄養補助食品組成物を調製するためのキットであって、前項のいずれかに記載の摂取可能な粒子および水性媒体を含むキット。
44.前記栄養補助食品組成物が、水性媒体中に分散された摂取可能な粒子を含む懸濁液である、項目43に記載のキット。
45.高強度の運動パフォーマンスを向上させるための、項目1~42のいずれかに記載の栄養補助食品組成物、または項目43~44のいずれかに記載のキットの使用。
46.運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するための、項目1~42のいずれかに記載の栄養補助食品組成物、または項目43~44のいずれかに記載のキットの使用。
47.項目1~42のいずれかに記載の摂取可能な粒子を含む栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための方法。
48.体重kgあたり総量で0.10~0.40gの重炭酸塩、好ましくは体重kgあたり0.20~0.35gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.25~0.30gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される、項目47に記載の方法。
49.項目1~42のいずれかに記載の栄養補助食品組成物を摂取する工程を含む、対象における運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、緩和または緩和するための方法。
50.薬学的有効量の項目1~42のいずれかに記載の組成物を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法。
51.前記代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアが慢性腎臓病によって引き起こされる、項目50に記載の方法。
52.体重kgあたり総量で0.01~0.10gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.02~0.07gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.02~0.04gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される、項目50~51のいずれかに記載の方法。
53.薬剤として使用するための、項目1~42のいずれかに記載の組成物、または項目43~44のいずれかに記載のキット。
54.項目50~52のいずれかに記載の方法における使用のための、項目1~42のいずれかに記載の組成物、または項目43~44のいずれかに記載のキット。
55.代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアの治療のための薬剤の調製における、項目1~42のいずれかに記載の組成物、または項目43~44のいずれかに記載のキットの使用。
56.重炭酸ナトリウムを含む摂取可能な粒子であって、前記粒子が厚さ1.0~2.0mm、直径1.0~5.0mmの錠剤であり;かつ前記粒子が50%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む、前記摂取可能な粒子。
57.65%(w/w)超の重炭酸ナトリウム、例えば75%(w/w)超の重炭酸ナトリウムを含む、項目56に記載の摂取可能な粒子。
58.90%(w/w)未満の重炭酸ナトリウム、例えば85%(w/w)以下の重炭酸ナトリウムを含む、項目56~57のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
59.前記粒子が小腸内で重炭酸ナトリウムを放出するのに適している、項目56~58のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
60.前記錠剤の厚さが1.2~2.0mm、直径が1.2~5.0mmである、項目56~59のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
61.前記錠剤が、1.8mm以下、例えば1.5mm以下の厚さを有する、項目56~60のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
62.前記錠剤が、4.0mm以下、例えば3.0mm以下の直径を有する、項目56~61のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
63.前記錠剤が、2.0mm以下、例えば1.8mm以下の直径を有する、項目62に記載の摂取可能な粒子。
64.前記粒子が非崩壊性である、項目56~63のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
65.いかなるコーティングも施されておらず、例えばいかなる腸溶性コーティングも施されていない、項目56~64のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
66.前記摂取可能な粒子が非層状粒子である、項目56~65のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
67.結合剤をさらに含む、項目56~66のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
68.前記結合剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、微結晶セルロース、ゼラチンおよび多糖類、ならびにそれらの組み合わせから選択される、項目67に記載の摂取可能な粒子。
69.前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびそれらの組み合わせから選択される、項目68に記載の摂取可能な粒子。
70.前記多糖類が、高分子量アルギン酸塩、ペクチン、トラガカントガムおよびアカシアガム、ならびにそれらの組み合わせから選択される、項目68に記載の摂取可能な粒子。
71.前記結合剤が、炭酸カルシウムおよびアカシアガム、ならびにそれらの組み合わせから選択される、項目67に記載の摂取可能な粒子。
72.滑沢剤をさらに含む、項目56~71のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
73.前記滑沢剤が、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、およびそれらの組み合わせから選択される、項目72に記載の摂取可能な粒子。
74.前記滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、項目73に記載の摂取可能な粒子。
75.流動促進剤をさらに含む、項目56~74のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
76.前記流動促進剤がヒュームドシリカである、項目75に記載の摂取可能な粒子。
77.糖および複合炭水化物から選択されるさらなる賦形剤を含む、項目56~76のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
78.前記糖類が、グルコース、フルクトース、スクロースおよびイソマルツロースから選択される、項目77に記載の摂取可能な粒子。
79.前記複合炭水化物が、デンプン、マルトデキストリン、乾燥ブドウ糖シロップおよび乾燥フルクトースシロップから選択される、項目77に記載の摂取可能な粒子。
80.前記摂取可能な粒子が以下の組成を有する、項目56および59~67のいずれかに記載の摂取可能な粒子:
重炭酸ナトリウム75~85重量%;
炭酸カルシウム5~10重量%;
ヒドロキシプロピルセルロース5~10重量%;
マルトデキストリン0.1~1.0重量%;
アカシアガム1~3重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0重量%。
81.前記摂取可能な粒子が以下の組成を有する、項目56および59~67のいずれかに記載の摂取可能な粒子:
重炭酸ナトリウム82~92重量%;
ヒドロキシプロピルセルロース5~15重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0%。
82.摂取可能な粒子が以下の組成を有する、項目56および59~67のいずれかに記載の摂取可能な粒子:
重炭酸ナトリウム80~90重量%;
リン酸カルシウム5~15重量%;
アカシアガム1~5重量%;
ステアリン酸マグネシウム1~3重量%;
無水コロイダルシリカ0.1~1.0重量%。
83.高強度の運動パフォーマンスを向上させるための、栄養補助食品組成物における項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子の使用。
84.高強度の運動パフォーマンスを向上させるための、項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子の使用。
85.運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するための栄養補助食品組成物における項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子の使用。
86.運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するための、項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子の使用。
87.項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子を摂取する工程を含む、高強度の運動パフォーマンスを向上させるための方法。
88.項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子を摂取する工程を含む、対象における運動誘発性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを予防、軽減または緩和するための方法。
89.体重kgあたり総量で0.10~0.40gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.20~0.35gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.25~0.30gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される、項目87~88のいずれかに記載の方法。
90.薬学的有効量の項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子を摂取する工程を含む、それを必要とするヒト対象における代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアを治療する方法。
91.代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアが慢性腎臓病によって引き起こされる、項目90に記載の方法。
92.体重kgあたり総量で0.01~0.10gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.02~0.07gの重炭酸塩;好ましくは体重kgあたり0.02~0.04gの重炭酸塩を含む摂取可能な粒子が摂取される、項目90~91のいずれかに記載の方法。
93.薬剤として使用するための、項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
94.項目90~92のいずれかに記載の方法における使用のための、項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子。
95.代謝性のアシドーシスおよび/またはアシデミアの治療のための薬剤の調製における、項目56~82のいずれかに記載の摂取可能な粒子の使用。
図1
図2
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図8
図9
【国際調査報告】