(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】椎間板変性症のIL-1Ra遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/761 20150101AFI20240808BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240808BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240808BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240808BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240808BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240808BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20240808BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/25 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
A61K35/761
C12N15/861 Z
C12N15/63 100Z
C12N15/12
C12N7/01
A61K48/00
A61P19/08
A61P19/00
A61K38/16
A61K31/56
A61P23/02
A61P43/00 121
C12N15/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024511983
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022075358
(87)【国際公開番号】W WO2023028492
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522091232
【氏名又は名称】パシラ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Pacira Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】センター,レベッカ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ル メートル,クリスティン エル
(72)【発明者】
【氏名】スナッグス,ジョセフ ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA21
4C084ZA96
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA21
4C086ZA96
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA21
4C087ZA96
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、ヒトまたは哺乳動物インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードするアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物、ならびに変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態に罹患している対象の1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-IRAを発現させるためにおよびDDDまたはDDDに関連する状態の処置のために医薬組成物を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置のための医薬組成物であって、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質をコードする核酸を含む、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む、医薬組成物。
【請求項2】
核酸が、左側および右側逆方向末端反復配列、アデノウイルスパッケージングシグナル、ならびに非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
IL-1Ra遺伝子の発現が炎症感受性プロモーターにより制御されるように、核酸が、IL-1Raタンパク質をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置する炎症感受性プロモーターをさらに含み、炎症感受性プロモーターが、NF-κB、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、およびマクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)、またはこれらのハイブリッドコンストラクトにより誘導可能なプロモーターからなる群から選択されてもよい、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
IL-1Ra遺伝子の発現がNF-kB誘導性プロモーターにより制御されるように、核酸が、IL-1Raタンパク質をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置するNF-kB誘導性プロモーターをさらに含む、請求項1または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
核酸が、配列番号7の核酸配列と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるか、または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項1または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
DDDに関連する状態が、腰痛、背筋緊張低下、背部柔軟性低下、血餅またはこれらの組合せである、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
IL-1Raをコードする核酸の配列が、配列番号4の核酸配列と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
IL-1Raをコードする核酸の配列が、配列番号6のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるIL-1Raタンパク質をコードする核酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
IL-1Raタンパク質が、ヒトIL-1Raである、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系が、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えてタンパク質をコードする核酸をさらに含み、追加のタンパク質が、治療用タンパク質であってもよい、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板が、変性した円板もしくは変性していない円板または両方である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板が、変性した円板である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1つまたは複数の椎間板の、軟骨終板(CEP)の細胞、高度に組織化された線維輪(AF)の細胞および中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域の細胞(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せへの、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
髄核(NP)細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
細胞が、髄核(NP)細胞である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染している変性した円板の細胞のみが、IL-1Raを産生する、請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞が、少なくとも2週間、少なくとも1カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、または少なくとも1年の期間にわたって、IL-1Raを発現する、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
対象に投与されたときに対象における変性円板疾患(DDD)および/またはDDDに関連する状態を処置するのに有効なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の量を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象が、椎間関節症候群(FJS)を有さない、請求項1から19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象が、椎間関節症候群(FJS)を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態に罹患している対象の1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-IRAを発現させる方法であって、
a)それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞を請求項1から21のいずれか一項に記載の医薬組成物に感染させる工程;および
b)1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-1Raを発現させる工程
を含む方法。
【請求項23】
アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系が、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えてタンパク質をコードする核酸をさらに含み、追加のタンパク質が、治療用タンパク質であってもよく、方法が、1つまたは複数の椎間板の細胞において追加のタンパク質を発現させることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に1回感染させる、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる、請求項22または23の方法。
【請求項26】
1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が、アデノウイルスベースのベクターの異なる数のゲノムコピーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が、アデノウイルスベースのベクターの同じ数のゲノムコピーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が、対象の同じ椎間板において行われる、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、あらゆる第2および後続の感染が、前に感染を行った椎間板とは異なる対象の椎間板において行われる、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
1つまたは複数の椎間板の細胞を感染させる工程が、医薬組成物を1つまたは複数の椎間板の、軟骨終板(CEP)領域、高度に組織化された線維輪(AF)領域もしくは中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せに注射することを含む、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
1つまたは複数の椎間板の細胞を感染させる工程が、医薬組成物を1つまたは複数の椎間板の髄核(NP)領域に注射することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
対象における変性円板疾患(DDD)および/またはDDDに関連する状態を処置する、請求項22から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
c)(b)におけるIL-1Raの発現後に対象の変性された椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程
をさらに含む、請求項22から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程が、患者報告疼痛および/または機能測定からのスコアを決定することによって行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
患者報告疼痛からスコアを決定することが、視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
対象におけるVASスコアが、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後のほうが低い、請求項22から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
患者-機能測定からスコアを決定することが、オスヴェストリー能力障害指数(ODI)を使用して行われる、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
対象におけるVASスコアが、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後のほうが低い、請求項22から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程が、NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、サイトカイン、アグリカン、II型コラーゲン、およびこれらの組合せからなる群から選択される対象におけるマーカーのレベルを決定することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
サイトカインが、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13、ADAMTS 4、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
以下のうちの1つまたは複数:
(a)NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13もしくはADAMTS 4またはこれらの組合せ、のうちの1つまたは複数のレベルの低下または不変;
(b)アグリカンもしくはII型コラーゲンまたはこれらの組合せのレベルの上昇;または
(c)両方
が、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に1つまたは複数の椎間板において生じる、請求項22から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
アグリカンのレベルが、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に1つまたは複数の椎間板において上昇する、請求項22から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程が、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの変化を決定することにより行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの減少が、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に生じる、請求項22から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(d)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が管理または処置されないことが示された場合、(a)について1つまたは複数の椎間板の細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の同じ量の投与を継続する工程;または
(e)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が進行したことが示された場合、(a)について、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の量をさらに調整し、それを必要とする対象における1つまたは複数の椎間板の細胞に投与する工程
をさらに含む、請求項33から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
対象の椎間板へのコルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬の投与をさらに含む、請求項22から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬がアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬を単一の医薬製剤で投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の前および/または後に投与されるように、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と単一の医薬製剤で投与されない、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与後に対象の椎間板への液体の投与をさらに含み、適宜、液体の量が、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlであるか、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約55μl、約60μl、約65μl、約70μl、約75μl、約80μl、約85μl、約90μl、約95μl、約100μl、約150μl、約200μl、約250μl、約300μl、約350μl、約400μl、約450μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1000μlであるか、25μl未満、30μl未満、35μl未満、40μl未満、45μl未満、50μl未満、55μl未満、60μl未満、65μl未満、70μl未満、75μl未満、80μl未満、85μl未満、90μl未満、95μl未満、100μl未満、150μl未満、200μl未満、250μl未満、300μl未満、350μl未満、400μl未満、450μl未満、500μl未満、600μl未満、700μl未満、800μl未満、900μl未満、1000μl未満であるか、約25μl未満、約30μl未満、約35μl未満、約40μl未満、約45μl未満、約50μl未満、約55μl未満、約60μl未満、約65μl未満、約70μl未満、約75μl未満、約80μl未満、約85μl未満、約90μl未満、約95μl未満、約100μl未満、約150μl未満、約200μl未満、約250μl未満、約300μl未満、約350μl未満、約400μl未満、約450μl未満、約500μl未満、約600μl未満、約700μl未満、約800μl未満、約900μl未満、約1000μl未満であるか、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlを超えるか、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約55μl、約60μl、約65μl、約70μl、約75μl、約80μl、約85μl、約90μl、約95μl、約100μl、約150μl、約200μl、約250μl、約300μl、約350μl、約400μl、約450μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1000μlを超えるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、適宜、25~1000μl、25~500μl、25~200μl、50~150μl、500~1000μl、200~800μl、200~600μl、400~800μl、もしくは600~800μlである、請求項22から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
液体が、食塩水である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
さらなる投与が、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬および/または液体の円板内注射を含む、請求項46から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
対象が、椎間関節症候群(FJS)を有さない、請求項22から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
対象が、椎間関節症候群(FJS)を有する、請求項22から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
医薬組成物の円板内注射を含む、請求項22から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
円板内注射が、中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域へのものである、請求項51または54に記載の方法。
【請求項56】
医薬組成物の腱内注射も、筋肉内注射も、関節内注射も、肩峰下注射も含まない、請求項22から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
医薬組成物中のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の濃度が、1×10
8~5×10
11VP/ml、2×10
8~2×10
11VP/ml、2×10
9~2×10
11VP/ml、1×10
8~2×10
9VP/ml、もしくは1×10
9VP/ml未満であるか、または約前記範囲もしくは値である、請求項1から56のいずれか一項に記載の組成物または方法。
【請求項58】
医薬組成物中のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の濃度が、1×10
8~5×10
11GC/ml、2×10
8~2×10
11GC/ml、2×10
9~2×10
11GC/ml、1×10
8~2×10
9GC/ml、もしくは1×10
9GC/ml未満であるか、または約前記範囲もしくは値である、請求項1から56のいずれか一項に記載の組成物または方法。
【請求項59】
椎間板に投与される医薬組成物の単一用量が、0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml、1ml、2ml、3ml、4mlもしくは5mlである量、約0.1ml、約0.2ml、約0.3ml、約0.4ml、約0.5ml、約1ml、約2ml、約3ml、約4mlもしくは約5mlである量、もしくは0.1ml未満、0.2ml未満、0.3ml未満、0.4ml未満、0.5ml未満、1ml未満、2ml未満、3ml未満、4ml未満もしくは5ml未満である量、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、適宜、0.1ml~5ml、0.5ml~5ml、0.5ml~2ml、1ml~5ml、2ml~5ml、4ml~5ml、もしくは3ml~5mlである量である、請求項1から58のいずれか一項に記載の組成物または方法。
【請求項60】
感染細胞が、NP細胞を含む、請求項17から59のいずれか一項に記載の組成物または方法。
【請求項61】
アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系が、FX201/PCRX-201を含むか、からなるか、またはから本質的になる、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照による組込み
本願は、EFS-Web経由でASCII形式で提出した配列表を含み、この配列表は、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年8月23日に作成した前記ASCIIコピーは、「PCRTX_017WO_Sequence_Listing.xml」という名であり、サイズ97.5バイトである。
【背景技術】
【0002】
腰痛症は、人口の80%に彼らの人生のある時点で発症し、症例のほぼ半数が、椎間板(IVD)変性症に起因する。IVD変性症は、ネイティブIVD細胞自体により誘発される;この場合、サイトカインおよび異化酵素産生のカスケードは、細胞外基質(ECM)の破壊および円板(disc)生体力学の変化をもたらし、IVD機能の喪失の一因となり、これは、椎間板内層への神経の侵入(nerve ingrowth)の導入および神経栄養因子の産生と結びついて、背部痛の一因になると考えられる。しかし、これまでのところ、処置の大多数は、短期疼痛管理、理学療法およびヘルニア組織の外科的切除に重点を置いており、IVD変性の根本的な病態生理学的原因を標的とするものはない。遺伝子治療アプローチは、多種多様な疾患の処置の新規のわくわくするような可能性を提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
IL-1は、自然発症円板変性を誘導したノックアウトモデルにおいて円板変性およびIL-1Raの喪失中に多面発現サイトカインとして作用することが公知である。それに基づいて、IVDの細胞および組織におけるIL-1を遮断することによるIVD処置のためのより効果的な、持続的な、費用効率のよい方法に対する明らかな、満たされていない医療ニーズがある。本開示は、アデノウイルス送達および発現系(FX201、humantakinogene hadenovec、本明細書ではPCRX-201とも呼ばれる)を含む組成物、ならびに変性円板疾患(DDD:degenerative disc disease)またはDDDに関連する状態に罹患している対象におけるものを含むヒト椎間板の細胞を感染させるために、およびIL-1Raの産生および放出を増加させるために、それを使用する方法、ならびにDDDまたはDDDに関連する状態を処置する方法を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置のための医薬組成物であって、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質をコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(アデノウイルスベースのベクターまたはヘルパー依存性アデノウイルスベクター)の、ある量、適宜、有効量を含み、ヒトIL-1Ra遺伝子の発現が、ヒトIL-1Ra遺伝子をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置するNF-kB誘導性プロモーターにより制御され、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列が、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%相同または同一である、医薬組成物を提供する。
【0005】
DDDに関連する状態は、腰痛、背筋緊張低下、背部柔軟性低下、もしくは血餅またはこれらの組合せであり得る。
【0006】
プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも99%相同または同一である。
【0007】
プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と同一である。
【0008】
アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列中のIL-1Raは、配列番号4の核酸を含み得る。
【0009】
配列番号4による核酸は、配列番号6と少なくとも95%相同または同一であるアミノ酸配列のヒトIL-1Raタンパク質を発現し得る。
【0010】
一部の実施形態では、DDDまたはDDDに関連する状態を処置するための、本明細書で開示される医薬組成物は、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、1つまたは複数の椎間板の、軟骨終板(CEP:cartilaginous endplate)の細胞、高度に組織化された線維輪(AF)の細胞および中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域の細胞(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せへの、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板は、変性した円板もしくは変性していない円板または両方である。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、変性円板疾患(DDD)に罹患している対象の1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させる方法であって、a)それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞を、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系のある量、適宜有効量を含む医薬組成物に感染させる工程;およびb)1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-1Raを発現させる工程を含む方法も、提供する。
【0012】
一部の実施形態では、方法は、c)(b)におけるIL-1Raの発現後に対象の変性された椎間板におけるDDDの処置または進行をモニターする工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、(d)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が管理または処置されないことが示された場合、(a)について1つまたは複数の椎間板の細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の同じ量の投与を継続する工程;または(e)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が進行したことが示された場合、(a)について、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の量をさらに調整し、それを椎間板に投与する工程をさらに含む。
【0013】
上記態様のいずれか、または本明細書で開示される他の態様を、任意の他の態様と組み合わせることができる。
【0014】
本開示の実施形態は、以下の番号付き実施形態を含む:
1.それを必要とする対象における変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置のための医薬組成物であって、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質をコードする核酸を含む、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む、医薬組成物。
【0015】
2.核酸が、左側および右側逆方向末端反復配列、アデノウイルスパッケージングシグナル、ならびに非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列をさらに含む、実施形態1の医薬組成物。
【0016】
3.核酸が、IL-1Ra遺伝子の発現が炎症感受性プロモーターにより制御されるように、IL-1Raタンパク質をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置する炎症感受性プロモーターをさらに含み、炎症感受性プロモーターが、NF-κB、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、およびマクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)、またはこれらのハイブリッドコンストラクトにより誘導可能なプロモーターからなる群から選択されてもよい、実施形態1または2の医薬組成物。
【0017】
4.核酸が、IL-1Ra遺伝子の発現がNF-kB誘導性プロモーターにより制御されるように、IL-1Raタンパク質をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置するNF-kB誘導性プロモーターをさらに含む、実施形態1または3の医薬組成物。
【0018】
5.核酸が、配列番号7の核酸配列と、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるか、または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態1または4の医薬組成物。
【0019】
6.DDDに関連する状態が、腰痛、背筋緊張低下、背部柔軟性低下、血餅またはこれらの組合せである、実施形態1~5のいずれか1つの医薬組成物。
【0020】
7.IL-1Raをコードする核酸の配列が、配列番号4の核酸と、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるか、または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態1~6のいずれか1つの医薬組成物。
【0021】
8.IL-1Raをコードする核酸の配列が、配列番号6のアミノ酸配列と、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるか、または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるIL-1Raタンパク質をコードする核酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態1~7のいずれか1つの医薬組成物。
【0022】
9.IL-1Raタンパク質が、ヒトIL-1Raである、実施形態1~8のいずれか1つの医薬組成物。
【0023】
10.アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系が、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えてタンパク質をコードする核酸をさらに含み、追加のタンパク質が、治療用タンパク質であってもよい、実施形態1~9のいずれか1つの医薬組成物。
【0024】
11.それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される、実施形態1~10のいずれか1つの医薬組成物。
【0025】
12.それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板が、変性した円板もしくは変性していない円板または両方である、実施形態1~11のいずれか1つの医薬組成物。
【0026】
13.それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板が、変性した円板である、実施形態12の医薬組成物。
【0027】
14.1つまたは複数の椎間板の、軟骨終板(CEP)の細胞、高度に組織化された線維輪(AF)の細胞および中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域の細胞(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せへの、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される、実施形態1~13のいずれか1つの医薬組成物。
【0028】
15.髄核(NP)細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される、実施形態14の医薬組成物。
【0029】
16.細胞が、髄核(NP)細胞である、実施形態14の医薬組成物。
【0030】
17.アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染している変性した円板の細胞のみが、IL-1Raを産生する、実施形態1~16のいずれか1つの医薬組成物。
【0031】
18.それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞が、少なくとも2週間、少なくとも1カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、または少なくとも1年間の期間にわたって、IL-1Raを発現する、実施形態1~17のいずれか1つの医薬組成物。
【0032】
19.対象に投与されたときに対象における変性円板疾患(DDD)および/またはDDDに関連する状態を処置するのに有効なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の量を含む、実施形態1~18のいずれか1つの医薬組成物。
【0033】
20.対象が、椎間関節症候群(FJS:Facet Joint Syndrome)を有さない、実施形態1~18のいずれか1つの医薬組成物。
【0034】
21.対象が、椎間関節症候群(FJS)を有する、実施形態1~18のいずれか1つの医薬組成物。
【0035】
22.変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態に罹患している対象の1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-IRAを発現させる方法であって、
a)それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞を実施形態1~21のいずれか1つの医薬組成物に感染させる工程;および
b)1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-1Raを発現させる工程
を含む方法。
【0036】
23.アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系が、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えてタンパク質をコードする核酸をさらに含み、追加のタンパク質が、治療用タンパク質であってもよく、方法が、1つまたは複数の椎間板の細胞において追加のタンパク質を発現させることをさらに含む、実施形態22の方法。
【0037】
24.1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に1回感染させる、実施形態22または23による方法。
【0038】
25.1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる、実施形態22または23による方法。
【0039】
26.1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が、アデノウイルスベースのベクターの異なる数のゲノムコピーを含む、実施形態25による方法。
【0040】
27.1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が、アデノウイルスベースのベクターの同じ数のゲノムコピーを含む、実施形態25による方法。
【0041】
28.1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が、対象の同じ椎間板において行われる、実施形態25~27のいずれか1つによる方法。
【0042】
29.1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、あらゆる第2および後続の感染が、前に感染を行った椎間板とは異なる対象の椎間板において行われる、実施形態25~27のいずれか1つによる方法。
【0043】
30.1つまたは複数の椎間板の細胞を感染させる工程が、医薬組成物を1つまたは複数の椎間板の、軟骨終板(CEP)領域、高度に組織化された線維輪(AF)領域もしくは中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せに注射することを含む、実施形態22~29のいずれか1つによる方法。
【0044】
31.1つまたは複数の椎間板の細胞を感染させる工程が、医薬組成物を1つまたは複数の椎間板の髄核(NP)領域に注射することを含む、実施形態30の方法。
【0045】
32.対象における変性円板疾患(DDD)および/またはDDDに関連する状態を処置する、実施形態22~31のいずれか1つの方法。
【0046】
33.c)(b)におけるIL-1Raの発現後に対象の変性された椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程をさらに含む、実施形態22~32のいずれか1つの方法。
【0047】
34.DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程が、患者報告疼痛および/または機能測定からのスコアを決定することによって行われる、実施形態33の方法。
【0048】
35.患者報告疼痛からスコアを決定することが、視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して行われる、実施形態34の方法。
【0049】
36.対象におけるVASスコアが、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後のほうが低い、実施形態22から35のいずれか1つの方法。
【0050】
37.患者-機能測定からスコアを決定することが、オスヴェストリー能力障害指数(ODI:Oswestry disability index)を使用して行われる、実施形態34~36のいずれか1つの方法。
【0051】
38.対象におけるVASスコアが、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後のほうが低い、実施形態22~37のいずれか1つの方法。
【0052】
39.DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程が、NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、サイトカイン、アグリカン、II型コラーゲン、およびこれらの組合せからなる群から選択される対象におけるマーカーのレベルを決定することを含む、実施形態33の方法。
【0053】
40.サイトカインが、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13、ADAMTS 4、およびこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態39の方法。
【0054】
41.以下のうちの1つまたは複数:
(a)NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13もしくはADAMTS 4またはこれらの組合せ、のうちの1つまたは複数のレベルの低下または不変;
(b)アグリカンもしくはII型コラーゲンまたはこれらの組合せのレベルの上昇;または
(c)両方
が、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に1つまたは複数の椎間板において生じる、実施形態22~40のいずれか1つの方法。
【0055】
42.アグリカンのレベルが、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に1つまたは複数の椎間板において上昇する、実施形態22~41のいずれか1つの方法。
【0056】
43.DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行をモニターする工程が、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの変化を決定することにより行われる、実施形態33の方法。
【0057】
44.1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの減少が、医薬組成物による対象の1つまたは複数の椎間板の細胞の感染後に生じる、実施形態22~43のいずれか1つの方法。
【0058】
45.(d)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が管理または処置されないことが示された場合、(a)について1つまたは複数の椎間板の細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の同じ量の投与を継続する工程;または
(e)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が進行したことが示された場合、(a)について、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の量をさらに調整し、それを必要とする対象における1つまたは複数の椎間板の細胞に投与する工程
をさらに含む、実施形態33~44のいずれか1つの方法。
【0059】
46.対象の椎間板へのコルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬の投与をさらに含む、実施形態22~45のいずれか1つの方法。
【0060】
47.コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬がアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬が、単一の医薬製剤中にある、実施形態46の方法。
【0061】
48.コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の前および/または後に投与されるように、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と単一の医薬製剤で投与されない、実施形態46の方法。
【0062】
49.アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与後に対象の椎間板への液体(fluid)の投与をさらに含み、適宜、液体の量が、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlであるか、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約55μl、約60μl、約65μl、約70μl、約75μl、約80μl、約85μl、約90μl、約95μl、約100μl、約150μl、約200μl、約250μl、約300μl、約350μl、約400μl、約450μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1000μlであるか、25μl未満、30μl未満、35μl未満、40μl未満、45μl未満、50μl未満、55μl未満、60μl未満、65μl未満、70μl未満、75μl未満、80μl未満、85μl未満、90μl未満、95μl未満、100μl未満、150μl未満、200μl未満、250μl未満、300μl未満、350μl未満、400μl未満、450μl未満、500μl未満、600μl未満、700μl未満、800μl未満、900μl未満、1000μl未満であるか、約25μl未満、約30μl未満、約35μl未満、約40μl未満、約45μl未満、約50μl未満、約55μl未満、約60μl未満、約65μl未満、約70μl未満、約75μl未満、約80μl未満、約85μl未満、約90μl未満、約95μl未満、約100μl未満、約150μl未満、約200μl未満、約250μl未満、約300μl未満、約350μl未満、約400μl未満、約450μl未満、約500μl未満、約600μl未満、約700μl未満、約800μl未満、約900μl未満、約1000μl未満であるか、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlを超えるか、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約55μl、約60μl、約65μl、約70μl、約75μl、約80μl、約85μl、約90μl、約95μl、約100μl、約150μl、約200μl、約250μl、約300μl、約350μl、約400μl、約450μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1000μlを超えるか、または25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlのいずれか2つにより定義される範囲、適宜、25~1000μl、25~500μl、25~200μl、50~150μl、500~1000μl、200~800μl、200~600μl、400~800μl、もしくは600~800μlである、実施形態22~48のいずれか1つの方法。
【0063】
50.液体が、食塩水である、実施形態49の方法。
【0064】
51.さらなる投与が、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬および/または液体の円板内注射を含む、実施形態46~50のいずれか1つの方法。
【0065】
52.対象が、椎間関節症候群(FJS)を有さない、実施形態22~51のいずれか1つの方法。
【0066】
53.対象が、椎間関節症候群(FJS)を有する、実施形態22~51のいずれか1つの方法。
【0067】
54.医薬組成物の円板内注射を含む、実施形態22~53のいずれか1つの方法。
【0068】
55.円板内注射が、中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域へのものである、実施形態51または54の方法。
【0069】
56.医薬組成物の腱内注射も、筋肉内注射も、関節内注射も、肩峰下注射も含まない、実施形態22~55のいずれか1つの方法。
【0070】
57.医薬組成物中のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の濃度が、1×108~5×1011VP/ml、2×108~2×1011VP/ml、2×109~2×1011VP/ml、1×108~2×109VP/ml、もしくは1×109VP/ml未満であるか、または約1×108~5×1011VP/ml、2×108~2×1011VP/ml、2×109~2×1011VP/ml、1×108~2×109VP/ml、もしくは約1×109VP/ml未満である、実施形態1~56のいずれか1つの組成物または方法。
【0071】
58.医薬組成物中のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の濃度が、1×108~5×1011GC/ml、2×108~2×1011GC/ml、2×109~2×1011GC/ml、1×108~2×109GC/ml、もしくは1×109GC/ml未満であるか、または約前記範囲もしくは値である、実施形態1~56のいずれか1つの組成物または方法。
【0072】
59.椎間板に投与される医薬組成物の単一用量が、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlである量、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlである量、もしくは0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5ml未満である量、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、適宜、0.1ml~5ml、0.5ml~5ml、0.5ml~2ml、1ml~5ml、2ml~5ml、4ml~5ml、もしくは3ml~5mlである量である、実施形態1~58のいずれか1つの組成物または方法。
【0073】
60.感染細胞が、NP細胞を含む、実施形態17~59のいずれか1つの組成物または方法。
【0074】
61.アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系が、FX201/PCRX-201を含むか、からなるか、またはから本質的になる、前記実施形態のいずれか1つの組成物または方法。
【0075】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての専門および科学用語は、本開示を踏まえて読まれるとき、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本開示では、単数形は、文脈による別段の明確な定めがない限り、複数形も含み;例として、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、単数または複数であると解され、用語「または」は、両立的なものであると解される。例として、「要素」は、1つまたは複数の要素を意味する。本明細書全体を通して、語「含む(comprising)」、または語尾変化形、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、述べられている要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群の包含を含意するが、他のいかなる要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群の除外も含意しないと、解されるものとする。約は、述べられている値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と解され得る。文脈から別様に明らかである場合を除き、本明細書で提供される全ての数値は、用語「約」により修飾されている。
【0076】
本明細書に記載の用語「変性円板疾患」は、用語「椎間板性腰痛症」、「椎間板内断裂(internal disc disruption)」または椎間板変性症」または「椎間板変性疾患(degenerated intervertebral disc disease)」と同義で使用される。
【0077】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料を本開示の実施または試験の際に使用することができるが、好適な方法および材料が下で説明される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それら全体が、および本明細書で論じられる特定の情報について、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される参考文献は、請求項に関わる開示に対する先行技術であること認めるものではない。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先するものとする。加えて、材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定することを意図したものではない。本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1は、humantakinogene hadenovec(FX201、別名PCRX-201)のゲノムマップを描示する。ITR=逆方向末端反復配列(5’における1~103bp;3’における29,158~29,260bp)、Ψ=パッケージングシグナル(240~375bp)、HPRTスタッファー=ヒトヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(463~16,518bp)、ヒトコスミドインサート=ヒトコスミド(16,532~27,637bp)、SV40ポリA=サルウイルス40ポリA(27,750~28,020bp)、huIL-1Ra=ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、目的のゲノム(28,033~28,566bp)、NF-kB5-ELAMプロモーター=NΦ-κB ινδυχιβλεプロモーター(28,581~28,842bp)。
【
図2】
図2は、本開示のヘルパー依存性アデノウイルスベクターの実施形態の基礎遺伝子マップを描示する。ベクター骨格は、左側および右側逆方向末端反復配列(ITR)、アデノウイルスパッケージングシグナル(Ψ)、ならびに非コード、非ウイルス性スタッファー配列(ITR間の標識のない配列を維持する)からなる。ヒトIL-1Ra、ウマIL-1Ra(GQ-201)またはマウスIL-1RaのcDNAが、使用されるアデノウイルスベースのベクターのウイルス性左側および右側ITRの間にクローニングされる。IL-1-Raの遺伝子の発現は、炎症感受性NF-KB5-ELAMプロモーターにより支配される。
【
図3】
図3A~3Dは、PCRX-201に様々なMOIで感染させたヒトNP細胞の感染後24時間(
図3A)、48時間(
図3B)、72時間(
図3C)および1週間(
図3D)での代謝活性の実施形態を描示する(
*=P<0.05)。
【
図4】
図4は、アルジネート培養で21日後にピコグリーンDNA定量化キットを使用して測定したアルジネートビーズ培養による総DNA含有量の実施形態を描示する(*=P<0.05)。
【
図5】
図5A~5Bは、PCRX-201(別名FX201)に感染させた単層ヒトNP細胞によるIL-1Ra産生の実施形態を描示する。2日、±1日の10ngのIL-1βでの刺激後の、単層培養したヒトNP細胞(患者n=7名からの)の細胞培養上清におけるIL-1Ra産生(
図5A)、および5日±4日の10ng IL-1β刺激後の、細胞培養上清におけるIL-1Ra産生(
図5B)が示されている。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIl-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のIL-1Raのpg/mlでの濃度を描示する。試験された7名の患者の各々からのNP細胞により産生されたIL-1Raの濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたIL-1Raの平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
【
図6】
図6A~6Dは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるIL-1Ra産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の2日後(
図6A)、感染の7日後(
図6B)、感染の14日後(
図6C)、および感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後(
図6D)のIL-1Raの産生が、示されている。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIl-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のタンパク質のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたIL-1Raの濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたIL-1Raの平均濃度も示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
【
図7】
図7A~7Hは、PCRX-201に感染させた変性したNP細胞からのIL-1Ra産生の長期維持の実施形態を描示する。変性した円板組織から、非感染対照細胞およびPCRX-201にMOI 3000で感染させた細胞から、単離されたNP細胞によるIL-1Ra産生。48時間感染させた後に3Dアルジネートビーズにおいて2日間(
図7A)、1週間(
図7B)、2週間(
図7C)、3週間(
図7D)、4週間(
図7E)、6週間(
図7F)、8週間(
図7G)、10週間(
図7H)培養したNP細胞(
*=P<0.05)。
【
図8】
図8は、PCRX-201によるMOI 750または3000での48時間の感染後に変性した円板から単離され、14日間アルジネート中で培養された後にさらに1週間、100pg/mlのIL-1βで刺激されたNP細胞における、18sおよび未処置対照に正規化されたNGFについての相対遺伝子発現の実施形態を描示する。
【
図9】
図9A~9Dは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるVEGF産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の2日後(
図9A)、感染の7日後(
図9B)、感染の14日後(
図9C)、および感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後(
図9D)のVEGFの産生が、示されている。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIL-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のタンパク質のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたVEGFの濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたVEGFの平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
【
図10】
図10A~10Dは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるIL-1β産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の2日後(
図10A)、感染の7日後(
図10B)、感染の14日後(
図10C)、および感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後(
図10D)のIL-1βの産生が、示されている。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIL-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のタンパク質のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたIL-1βの濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたIL-1βの平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
【
図11】
図11A~11Cは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるIL-6産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の7日後(
図11A)、感染の14日後(
図11B)、および感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後(
図11C)のIL-6の産生が、示されている。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIL-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のタンパク質のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたIL-6の濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたIL-6の平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
図11D~11Fは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるIL-8産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の7日後(
図11D)、感染の14日後(
図11E)、および感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後(
図11F)のIL-8の産生が、示されている。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIL-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のIL-8のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたIL-8の濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたIL-8の平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
【
図12】
図12Aは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるMMP3産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後のMMP3の産生が、示されている(
図12A)。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIL-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のMMP3のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたMMP3の濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたMMP3の平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
図12Bは、PCRX-201に感染させた3DヒトNP細胞によるADAMTS4産生の実施形態を描示する。細胞培養上清におけるPCRX-201に感染させた(0、750および3000のMOI)3D培養ヒトNP細胞(患者n=6名からの)による、感染の21日後±10ngのIL-1β刺激による刺激の7日後のADAMTS4の産生が、示されている(
図12B)。x軸は、示されているように、PCRX-201およびIL-1βを加えたPCRX-201のMOIである異なる刺激を描示し、y軸は、ELISAにより決定された、細胞培養上清中のタンパク質のpg/mlでの濃度を描示する。試験された6名の患者の各々からのNP細胞により産生されたADAMTS4の濃度が、示されているようにドットで表されている。特定の刺激群におけるNP細胞により産生されたADAMTS4の平均レベルも示されている。異なる刺激群間のタンパク質濃度の差の有意性が示されている(
*)。
【
図13】
図13A~13Eは、PCRX-201感染細胞のパラ分泌効果の実施形態を描示する。処置された変性した円板から得られたヒトNP細胞の処置後の、+/-PCRX-201感染細胞からの患者適合馴化培地からの馴化培地の、IL-1Ra(
図13A)、IL-1β(
図13B)、IL-6(
図13C)、MMP 3(
図13D)、ADAMTS4(
図13E)についてのタンパク質産生(
*=P<0.05)。
【
図14】
図14は、半制限培養系(semi-constrained culture system)におけるヒトNP組織外植片の実施形態を描示する。
【
図15】
図15A~15Bは、注射していない対照とともに、約MOI 3000でPCRX-201を注射した変性IVD試料からのヒトNP外植片におけるIL-1Raについての免疫陽性染色による、培地に放出されたIL-1Raタンパク質濃度の実施形態(
図15A)および細胞の数の実施形態(
図15B)を描示する(
*=P<0.05)。
【
図16】
図16A~16Gは、注射していない対照とともに、約MOI 3000でPCRX-201を注射した変性したIVD試料からのヒトNP外植片からの培地の放出されたVEGF(
図16A)、IL-1β(
図16B)、IL-6(
図16C)、MMP 3(
図16D)、ADAMTs4(
図16E)、II型コラーゲン(
図16F)およびアグリカン(
図16G)の濃度の実施形態を描示する(
*=P<0.05)。
【
図17】
図17A~17Fは、注射していない対照とともに、約MOI 3000でPCRX-201を注射した変性したIVD試料からのヒトNP外植片におけるVEGF(
図17A)、NGF(
図17B)、IL-1β(
図17C)、MMP 3(
図17D)、ADAMTs4(
図17E)およびII型コラーゲン(
図17F)についての免疫陽性パーセンテージの実施形態を描示する(
*=P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示は、変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態に罹患している対象のものを含む、椎間板の細胞における生物活性組換えインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の長期発現を可能にする改善された送達および発現系についての組成物を提供する。一部の実施形態では、これらの組成物は、変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置に使用される。DDDまたはDDDに関連する状態の患者の処置のために開発中である、椎間板への投与のための新規IL-1Ra遺伝子治療(FX201、humantakinogene hadenovec、これはPCRX-201とも呼ばれる)が、本明細書で開示される。FX201(humantakinogene hadenovec、PCRX-201)は、DDDまたはDDDに関連する状態を有する患者の椎間板への投与のための、核因子-κB(NF-κB)誘導性プロモーターの支配下にあるヒトIL-1Raをコードする核酸配列を送達するヘルパー依存性アデノウイルス(HDAd)である。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0080】
本明細書に記載の用語「変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置」または「DDDの処置」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、DDDがそれに罹患する対象の1つまたは複数の椎間板において発症または発生するのを予防することを包含するのではなく、既存のDDDまたはDDDに関連する状態がそれに罹患している対象の1つまたは複数の椎間板において進行するのを阻止または抑制することを包含する。一部の態様では、「変性円板疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置」または「DDDの処置」は、DDDまたはDDDに関連する状態から、それに罹患している対象の1つまたは複数の椎間板を好転または回復させることも包含する。用語「予防」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、当技術分野において公知であるように、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板におけるDDDの発生またはDDDに関連することが公知の特徴/状態の発生を予防することまたは停止させることを包含し、この場合、対象における1つまたは複数の椎間板は、DDD、またはDDDに関連することが公知の特徴/状態を、まだ提示していない。
【0081】
本開示は、哺乳動物(例えば、ヒト)インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質、例えばFX201をコードする核酸配列を含む、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(アデノウイルスベースのベクター)の椎間板注射(すなわち、円板内注射)のための組成物を提供する。椎間板注射後、アデノウイルス送達および発現系は、炎症に応答してIL-1Raを局所的に産生するように椎間板内の細胞を感染させる。一部の実施形態では、アデノウイルス送達および発現系(例えば、FX201)は、IL-1Ra(例えば、ヒトIL-1Ra)の遺伝子コード配列を運ぶように操作された、ウイルスコード配列を有さない非複製、非組込みHDAdベクターである。一部の実施形態では、アデノウイルスパッケージングシグナルおよび逆方向末端反復配列(ITR)のみが、これらは製造に必要とされるので、アデノウイルスゲノム内に残存する。一部の実施形態では、転写は、炎症感受性NF-κB誘導性プロモーターにより支配され、このプロモーターが、炎症環境に応答してIL-1Raの発現を駆動する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0082】
一部の実施形態では、アデノウイルス送達および発現系は、単一用量として椎間板注射(円板内)により投与される。期待される臨床的利点は、疼痛の軽減と機能の改善または回復の両方を含む持続的な症状軽減、およびDDDまたはDDDに関連する状態を有する患者における基礎疾患の経過の有益な修飾である。有利なことに、一部の実施形態では、本開示のアデノウイルス送達および発現系は、椎間板に投与されたとき、椎間板の細胞内に特異的に位置する。したがって、一部の実施形態では、IL-1Ra濃度は、本開示のベクターが注射された椎間板において最も高く、その上、いずれの他の臓器にも有意な副作用が存在しない。
【0083】
一部の実施形態では、本明細書で開示される組成物のアデノウイルス送達および発現系は、PCT出願番号:PCT/US2020/051642(公開番号:WO2021/055860)において開示されているものと同じであり、この参考特許文献の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、本明細書で開示される組成物のアデノウイルス送達および発現系は、PCT出願番号:PCT/IB2013/000198(公開番号:WO2013/114199)において開示されているものと同じであり、この参考特許文献の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。アデノウイルス送達および発現系の実施形態の特性は、下に記載される。
【0084】
ベクター骨格:一部の実施形態では、(例えば、FX201)アデノウイルス送達および発現系は、非複製、非組込みHDAdベクターである。ゲノム成分は、サイズおおよそ29.3キロベース(kb)の二本鎖線状DNAで構成されている。一部の実施形態では、(例えば、FX201)アデノウイルス送達および発現系ゲノムは、その製造を可能にするための増幅およびパッケージングに必要な最少アデノウイルスエレメント:左側および右側逆方向末端反復配列(本明細書では以降、それぞれ「L ITR」および「R ITR」と呼ばれる)ならびにパッケージングシグナル(Ψ)を含有する。一部の実施形態では、おおよそ1.1kbのアデノウイルス送達および発現系(例えば、FX201)ゲノムは、ゲノムの右末端に逆(右から左)方向で挿入されている、ヒトIL-1Raをコードする核酸配列と、R ITRの直前に配置されているプロモーターとで構成されている。一部の実施形態では、プロモーターは、炎症性サイトカインに応答する、ヒトELAM遺伝子の近位プロモーター領域に融合された5つの種保存NF-κB結合モチーフ反復配列である(Schindler 1994)。一部の実施形態では、おおよそ27kbのアデノウイルス送達および発現系(例えば、FX201)ゲノムは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)およびヒトコスミドインサートで構成されている非コードスタッファー配列からなり、このスタッファー配列は、各ウイルス粒子(VP)へのベクターゲノムの効率的なパッケージングを可能にするサイズにゲノムを拡大するために挿入される。アデノウイルス送達および発現系、FX201の実施形態についてのゲノムマップは、
図1に提示される。
【0085】
目的のゲノム:一部の実施形態では、(例えば、FX201)アデノウイルス送達および発現系ゲノムは、ヒトIL-1Raの534塩基対(bp)配列を含有し、この配列は、NF-κB誘導性プロモーターの262bp配列により制御される。
【0086】
FX201の、および本開示のHDAdベクターの実施形態の遺伝子マップ(
図2)が、本明細書で開示される。本開示のHdAdベクターは、ITRおよびアデノウイルスパッケージングシグナルばかりでなく、配列番号1または4のいずれか一方によるIL-1Ra cDNAの上流に炎症感受性NF-κB-ELAMプロモーターも含有し得る。HDAd-mIL-1Ra、GQ-201、およびHDAd-ヒトIL-1Raの完全ベクター配列は、それぞれ、配列番号2、3および7で示される。3つのベクター間の唯一の相違は、GQ-201がmIL-1Raのウマ変異体を有し、HDAd-mIL-RaがマウスIL-1Ra変異体を有し、HDAd-huIL-1RaがヒトIL-1Raを有することである。一例として、配列番号3による核酸配列のHDAd-mIL-1Raは、配列番号1によるマウスIL-1Raをコードする核酸を含み得る。一例として、配列番号7による核酸配列のHDAd-ヒトIL-1Raは、配列番号4によるヒトIL-1Raをコードする核酸を含み得る。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるベクターは、次の戦略による標準的な消化/ライゲーション反応によりクローニングされる。NF-KB5-ELAMプロモーターにより駆動されるルシフェラーゼcDNAを含有するプラスミドであるpNifty-lucにおけるルシフェラーゼcDNAを、NcolおよびNhelで切除し、ウマ、マウスまたはヒトIL-1RaのcDNAをこの位置にライゲーションした。NF-KB5-ELAMプロモーター-マウスIL-1RaまたはNF-KB5-ELAMプロモーター-ウマIL-1RaまたはNF-KB5-ELAMプロモーター-ヒトIL-1Raカセットを、NotlおよびPadまたはEcoRIおよびPadで切除し、平滑末端化し、pLPBLシャトルプラスミドに挿入し、それをSailで線状化し、平滑末端化した。次いで、NF-KB5-ELAMプロモーター-マウスIL-1RaまたはNF-KB5-ELAMプロモーター-ウマIL-1RaまたはNF-KB5-ELAMプロモーター-ヒトIL-1Raカセットを、複数のクローニング部位の両側に位置するAsclで切除し、Ascl線状化ρΔ28プラスミド(Toietta, G., Pastore, L, Cerullo, V., Finegold, M., Beaudet, A.L., and Lee, Β. (2002)。Generation of helper-dependent adenoviral-based vectors by homologous recombination. Mol Ther 5, 204-210.)にライゲーションし、それによって、ゲノムプラスミドpA28-mll-1Ra、pA28-eqll-1RaおよびpA28- hull-1Raを得た。これらのプラスミドをPmelで消化してベクターを線状化し、逆方向末端反復配列を遊離させ、細菌耐性遺伝子を切除した。ヘルパーウイルスAdNG163R-2および116の細胞工場を使用して以前に記載されたように(Palmer, D., and Ng, P. (2003). Improved system for helper-dependent adenoviral vector production. Mol Ther 8, 846-852 ;Suzuki, M., Cela, R., Clarke, C, Bertin, T.K., Mourino, S., and Lee, B. (2010). Large-scale production of high-quality helper-dependent adenoviral-based vectors using adherent cells in cell factories. Hum Gene Ther 21, 120-126.)ベクターをレスキューし、増幅した。
【0088】
本開示の組成物
一部の実施形態では、本開示の組成物は、アデノウイルスベースのベクターに基づくアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含み得、アデノウイルスベースのベクターは、ヒトまたは哺乳動物インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードする核酸配列、L ITR、R ITR、アデノウイルスパッケージングシグナル、および非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列を含む。一部の実施形態では、IL-1Raをコードする核酸配列は、マウスIl-1Ra、ウマ1-1Ra、イヌIl-1Ra、ネコIl-1Ra、ウサギIl-1Ra、ハムスターIl-1Ra、ウシIl-1Ra、ラクダIl-1Raおよび他の哺乳動物種におけるそれらのホモログからなる群から選択されるIl-1RaのcDNA配列を含有する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0089】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクターは、宿主における免疫応答を最小限に抑え、DDDを患っているものを含む椎間板においてヒトまたは哺乳動物IL-1Raの長期遺伝子発現をもたらす。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクターは、ヘルパー依存性のアデノウイルスベースのベクター(HDAd)である。
【0090】
一部の実施形態では、本開示の組成物におけるヒトまたは哺乳動物インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードする配列は、炎症感受性プロモーターにより支配される。理論により拘束されることを望まないが、本開示の組成物における炎症感受性プロモーターの使用は、DDDまたはDDDに関連する状態に罹患している椎間板の組織および細胞におけるIL-1Ra遺伝子発現に対する特異的支配をもたらす。この疾患またはこの疾患に関連する状態を患っている細胞のみがIL-1Ra遺伝子産物を発現し、分泌するのに対して、患っていない細胞は、IL-1Raを発現も分泌もしない。一部の態様では、プロモーター配列は、ヒトまたは哺乳動物IL-1Raをコードする配列のリーディングフレームの上流に位置する。
【0091】
一部の実施形態では、本開示の組成物において使用される炎症感受性プロモーターは、免疫刺激物質および/またはサイトカインをはじめとする因子のレベル上昇によって特異的に活性化される。理論により拘束されることを望まないが、DDD中またはDDDに関連する状態中に、様々な免疫刺激物質およびサイトカインが放出され、その結果、高レベルのプロモーター活性化物質が生じることになる。非限定的な例では、免疫刺激物質は、IL-1であり、IL-1は、DDDの発生および発病においてならびに椎間板基質分解を誘導する上で極めて重要な役割を果たすことが公知である。放出された免疫刺激物質および/またはサイトカインは、NF-κBプロモーターを制御するNF-κBなどの転写因子を活性化することができる。それ故、そのようなDDDまたはDDDに関連する状態に特異的な免疫刺激物質および/またはサイトカインの放出は、DDDおよびDDDに関連する状態に罹患しているヒトまたは哺乳動物の椎間板における遺伝子発現を支配することを可能にし得る。一部の実施形態では、そのようなDDDまたはDDDに関連する状態に特異的な免疫刺激物質および/またはサイトカインの放出は、DDDおよびDDDに関連する状態を処置または予防するためにヒトまたは哺乳動物の椎間板における遺伝子発現を支配することを可能にし得る。
【0092】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染している変性した円板の細胞のみが、IL-1Raを産生する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた変性した円板の細胞により産生されるIL-1Raは、自己分泌様式で椎間板のIL-1受容体に作用する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた変性した円板の細胞により産生されるIL-1Raは、パラ分泌様式で椎間板細胞および/または椎間板の周囲の組織の細胞のIL-1受容体に作用する。本明細書に記載の用語「自己分泌」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、細胞による産生される分子が、その因子自体を産生する細胞に作用するときのものである。本明細書に記載の用語「パラ分泌」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、細胞による産生される分子が、周囲組織におけるそれ自体以外の細胞に作用するときのものである。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた変性した円板の細胞により産生されるIL-1Raは、同じ変性した椎間板の細胞のIL-1受容体に作用する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた変性した円板の細胞により産生されるIL-1Raは、周囲の他の変性された椎間板の細胞のIL-1受容体に作用する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた変性した円板の細胞により産生されるIL-1Raは、周囲の他の変性していない椎間板の細胞のIL-1受容体に作用する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた変性した円板の細胞により産生されるIL-1Raは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現によって感染させた変性した椎間板の周囲の組織の細胞に直接または間接的に作用する。一部の実施形態では、変性した円板の周囲の組織は、血管、神経組織、筋肉、靱帯、腱、骨格組織(例えば、椎骨)もしくは脊髄組織またはこれらの組合せである。血管は、脊柱またはその任意の枝へまたはそれから血液を運ぶ血管であり得る。神経組織は、脊柱またはその任意の枝に分布している神経であり得る。
【0093】
任意の炎症感受性プロモーターを本開示の文脈において使用することができると考えられる。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、DDDまたはDDDに関連する状態を有する椎間板の細胞および組織におけるIL-1Ra遺伝子産物の特異的発現をもたらすと考えられる。一部の実施形態では、本開示における使用のための炎症感受性プロモーターは、NF-κΒ、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、マクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)、もしくは前述のもののハイブリッドコンストラクトによって誘導可能なプロモーター、または本明細書で別様に開示されるプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0094】
一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、NF-κ B5-ELAMプロモーターである。ヒト内皮白血球接着分子(ELAM)遺伝子の近位プロモーター領域に融合された5つの種保存NF-κB結合モチーフ反復配列で構成されている、NF-κB誘導性プロモーターを、いくつかの理由からIL-1Raの発現を駆動するために選択した。第1に、転写因子としてのNF-κBは、体のあらゆる細胞において普遍的に発現され、いずれの形質導入細胞も、炎症の合図による刺激を受けると、原理上、IL-1Ra導入遺伝子を発現することができる。それ故、IL-1Ra発現を誘導するための細胞特異性要件はない。加えて、NF-κBは、インターロイキン-1(IL-1)および腫瘍壊死因子-αなどの炎症性サイトカインの受容体、ならびに他の免疫細胞受容体、例えばtoll様受容体の末端シグナル伝達分子であり、多くの炎症性入力への細胞応答を開始させるように作用する。したがって、IL-1Ra産生の活性化は、椎間板において様々な炎症シグナルにより刺激されるように設計される。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、これらの特徴の1つまたは複数をNF-κB誘導性プロモーターと共有する。
【0095】
一部の実施形態では、椎間板注射後、IL-1Raの遺伝子は、中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域(髄核(NP)細胞)を含むがこれらに限定されない、椎間板細胞に送達される。一部の実施形態では、注射後、炎症を患っているNP細胞は、炎症感受性プロモーター(例えば、NF-κBプロモーター)の支配下にある組換えIL-1Raタンパク質を産生し始める。一部の実施形態では、次いで、大量のIL-1Raが、椎間板腔に分泌され、そこでIL-1Raは、椎間板領域および腔に埋め込まれたNP細胞および他の細胞表面上のインターロイキン-1受容体を遮断することにより、炎症および異化タンパク質を阻害し、ならびに/または軟骨分解を停止もしくは低減させる。一部の実施形態では、組換えIL-1Raの高い局所濃度は、いかなる有害副作用ももたらさない。
【0096】
本明細書で開示される、一部の実施形態では、椎間板分解、およびDDDの椎間板の発病に関与するタンパク質は、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を使用して有効に阻害される。一部の実施形態では、治療用タンパク質IL-1Raの高い局所および低い全身濃度は、本開示の組成物の投与によって達成される。一部の実施形態では、結果は、副作用なしまたは最少の副作用でのDDDの処置の高い有効性である。
【0097】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させた、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞は、少なくとも2週間、少なくとも1カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月または少なくとも1年の期間にわたってIL-1Raを発現する。その結果として、一部の実施形態では、短期処置に必要とされる高頻度の椎間板注射に関連する医療および経済的負担は、有意に削減される。一部の実施形態では、円板変性障害(degenerated disc disorder)のための処置に関連する可能性のある合併症が最小限に抑えられ、椎間板の健康が確保され、その結果として、処置された対象(例えば、ヒト)の持続的な健康改善が見られる。
【0098】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(アデノウイルスベースのベクター)の炎症感受性IL-1Ra産生は、DDDの発生の予防を可能にする。残存する本開示のアデノウイルスベースのベクターに感染している椎間板における細胞は、NF-κB5-ELAMプロモーターまたは任意の他の炎症感受性プロモーターを活性化し得る免疫刺激物質の非存在下でIL-1Ra遺伝子を発現しないからである。DDDの発病が開始した場合にのみ、プロモーターが、炎症の結果として活性化され、その後、IL-1Raが産生され、分泌される。かくて、本開示のアデノウイルス送達および発現系を使用することにより、この機序によってDDDの発生の早期の予防が可能になる。
【0099】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクターの炎症感受性IL-1Ra産生は、DDD条件が解消するかまたは消滅してしまと、もはやIL-1Raが産生されないことになる。結果として、一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクターの炎症感受性IL-1Ra産生は、対象への投与の安全性がより高い。
【0100】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクターは、L ITR、R ITRおよびアデノウイルスパッケージングシグナルを除いて、いずれのウイルス配列も運ばない。一部の実施形態では、本開示で使用されるアデノウイルスベースのベクターは、PalmerおよびNg(Palmer, D., and Ng, P. (2003). Improved system for helper-dependent adenoviral vector production. Mol Ther 8, 846-852.)ならびにToiettaら(Toietta, G., Pastore, L., Cerullo, V., Finegold, M., Beaudet, A.L., and Lee, B. (2002). Generation of helper-dependent adenoviral-based vectors by homologous recombination. Mol Ther 5, 204-210.)により開発された、ヘルパーウイルスおよびヘルパー依存性骨格系に基づくヘルパー依存性のアデノウイルスベースのベクターである。一部の実施形態では、本開示によるアデノウイルス送達および発現系は、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含む、アデノウイスルベースの生物学的送達および発現系の核酸配列を含み得る。一部の実施形態では、アデノウイルス送達および発現系は、配列番号2、配列番号3もしくは配列番号7で示される核酸配列、またはその生物学的に有効な部分を含むかまたはそれからなる。配列番号2の核酸配列は、マウスヘルパー依存性アデノウイルスベースのベクターを記載し、配列番号3で示される核酸配列は、ウマヘルパー依存性アデノウイルスベースのベクターを記載し、配列番号7で示される核酸配列は、ヒトヘルパー依存性アデノウイルスベースのベクターを記載し、3つ全てのベクターは、それぞれ、マウスIL-1Ra遺伝子、ウマIL-1Ra遺伝子またはヒトIL-1Ra遺伝子のいずれか1つを有する。一部の実施形態では、本開示の系は、配列番号2、配列番号3または配列番号7で示されるベクターと少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列相同性のいずれか1つを有する。一部の実施形態では、アデノウイルス送達および発現系は、配列番号2、配列番号3または配列番号7で示されるベクターと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる。アデノウイルス送達および発現系の一部の実施形態では、IL-1Raをコードする核酸配列は、配列番号4の核酸と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる。アデノウイルス送達および発現系の一部の実施形態では、IL-1Raをコードする核酸配列は、配列番号6のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるIL-1Raタンパク質をコードする核酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0101】
一部の実施形態では、本開示は、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物、およびDDDもしくはDDDに関連する状態を有すると同定されたか、またはそれを発生するリスクがあると同定された対象の椎間板細胞、例えば、NP細胞を感染させるためにそれを使用する方法を提供する。一部の実施形態では、核酸配列は、左側および右側逆方向末端反復配列、アデノウイルスパッケージングシグナル、ならびに非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、ヒトIL-1Ra遺伝子の発現は、ヒトIL-1Raタンパク質をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置するNF-κB誘導性プロモーターにより制御される。一部の実施形態では、ヒトIL-1Ra遺伝子は、NF-κB誘導性プロモーター以外の炎症感受性プロモーターにより制御される。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、NF-κΒ、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、マクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)、もしくは前述のもののハイブリッドコンストラクトによって誘導可能なプロモーター、または本明細書で別様に開示されるプロモーターからなる群から選択される。一部の実施形態では、それを必要とする対象におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置のための医薬組成物のアデノウイルス送達および発現系は、配列番号2、配列番号3または配列番号7で示されるベクターと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象における椎間板炎症および異化活性に対するIL-1の作用を中和するためにならびに/または対象におけるDDDもしくはDDDに関連する状態の1つもしくは複数の測定量の改善をもたらすために有効量のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む。一部の実施形態では、椎間板細胞、例えばNP細胞の感染は、椎間板への医薬組成物の円板内注射により行われる。一部の実施形態では、注射は、関節内注射ではない。
【0102】
一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置のための医薬組成物であって、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質をコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の有効量を含み、ヒトIL-1Ra遺伝子の発現が、ヒトIL-1Ra遺伝子をコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置するNF-kB誘導性プロモーターにより制御され、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列が、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%相同または同一である、医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、ヒトIL-1Ra遺伝子は、NF-κB誘導性プロモーター以外の炎症感受性プロモーターにより制御される。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、NF-κΒ、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、マクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)、もしくは前述のもののハイブリッドコンストラクトによって誘導可能なプロモーター、または本明細書で別様に開示されるプロモーターからなる群から選択される。一部の実施形態では、それを必要とする対象におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置のための医薬組成物のアデノウイルス送達および発現系は、配列番号2、配列番号3または配列番号7で示されるベクターと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であるかまたは少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一である核酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0103】
一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%相同または同一である。
【0104】
一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも99%相同である。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と同一である。
【0105】
「長期発現」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、本開示の文脈において、アデノウイルス送達および発現系の遺伝子産物(すなわち、IL-1Ra)が、本開示のアデノウイルスベースのベクター(アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系)に感染させた椎間板において少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも12カ月間、発現される場合を含む。一部の実施形態では、IL-1Raは、本開示のアデノウイルスベースのベクターに感染させた椎間板において少なくとも3カ月間、発現される。一部の実施形態では、IL-1Raは、本開示のアデノウイルスベースのベクターに感染させた椎間板細胞、例えばNP細胞において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24もしくは52週間であるか、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24もしくは52週間であるか、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24もしくは52週間であるか、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24もしくは52週間であるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、1~24、1~52、4~12、4~24、8~12、8~24、12~24、もしくは8~16週間である期間にわたって発現される。
【0106】
「生物学的に有効な」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、本開示の文脈において、アデノウイルス送達および発現系の遺伝子産物が、椎間板炎症および異化活性に対するIL-1の効果を中和するならびに/またはDDDもしくはDDDに関連する状態の1つもしくは複数の測定量の改善をもたらす椎間板内活性(in-intervertebral disc activity)を有するIL-1Raの全または部分ポリペプチド配列を含む場合を含む。
【0107】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクター(アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系)は、炎症感受性プロモーターの支配下にあるIL-1Raの核酸配列を含む。IL-1Raは、種特異的核酸配列を含有するが、一部の実施形態では、アデノウイルスベースのベクターは、任意の哺乳動物種またはヒトからのインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)を発現することができる。一部の実施形態では、クローニングに使用され、アデノウイルスベースのベクターに含まれる哺乳動物インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードするcDNAは、ヒトIL-1Ra、マウスIL-1Ra、ウマIL-1Ra、イヌIL-1Ra、ネコIL-1Ra、ウサギIL-1Ra、ハムスターIL-1Ra、ウシIL-1Ra、ラクダIL-1Raまたは他の哺乳動物種におけるそれらのホモログからなる群から選択されるcDNAである。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0108】
一部の実施形態では、注射した椎間板の細胞におけるゲノムベクター配列の存在をモニターするために、本開示によるアデノウイルスベースのベクター(アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系)は、視覚的にまたは機器により検出可能であるマーカー遺伝子をコードする配列をさらに含み得る。一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、次の群から選択されるが、これらに限定されない:緑色蛍光タンパク質(GFP)、LacZ、およびルシフェラーゼ酵素。
【0109】
一部の実施形態では、一例として、本開示で使用される場合のマウスIL-1Raの核酸配列は、配列表中の配列番号1で示されている。上で述べられたように、および本明細書で別様に開示されるように、任意の哺乳動物またはヒト種の生物活性IL-1Raタンパク質をもたらす任意の核酸配列を、本開示の文脈において使用することができる。さらに、同じアミノ酸、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする保存核酸配列は、本開示の範囲下に入る。一部の実施形態では、本開示によるアデノウイルスベースのベクターは、配列番号1で示される核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性を有するIL-1Raの核酸配列(例えば、cDNA)を含有する。一部の実施形態では、本開示は、IL-1Raの生物活性核酸配列またはその断片も含む。したがって、一部の実施形態では、本開示のヘルパー依存性のアデノウイルスベースのベクターは、配列番号1で提示される核酸配列の生物活性断片を含み得る。
【0110】
一部の実施形態では、一例として、本開示で使用される場合のヒトIL-1Raの核酸配列は、配列表中の配列番号4で示されている。上で述べられ、本明細書で別様に述べられるように、一部の実施形態では、ヒトの生物活性IL-1Raタンパク質をもたらす核酸配列を、本開示の文脈において使用することができる。一部の実施形態では、同じアミノ酸、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする保存核酸配列は、本開示の範囲下に入る。一部の実施形態では、本開示によるアデノウイルスベースのベクターは、配列番号4で示される核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性を有するIL-1Raの核酸配列(例えば、cDNA)を含有する。一部の実施形態では、本開示は、IL-1Raの生物活性核酸配列またはその断片も含む。したがって、一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースのベクターは、配列番号4で提示される核酸配列の生物活性断片を含み得る。
【0111】
一部の実施形態では、一例として、本開示で使用される場合のヒトIL-1Raの核酸配列は、配列番号6と少なくとも95%相同または同一であるアミノ酸配列のヒトIL-1Raタンパク質を発現し得る。一部の実施形態では、本開示で使用される場合のヒトIL-1Raの核酸配列は、配列番号6と少なくとも96%、97%、98%または99%相同または同一であるアミノ酸配列のヒトIL-1Raタンパク質を発現し得る。配列番号4で示される本開示で使用される場合のヒトIL-1Raの核酸配列は、配列番号6と少なくとも99%相同または同一であるアミノ酸配列のヒトIL-1Raタンパク質を発現し得る。一部の実施形態では、本開示で使用される場合のヒトIL-1Raの核酸配列は、配列番号6によるアミノ酸配列のヒトIL-1Raタンパク質を発現し得る。
【0112】
一部の実施形態では、ヒトIL-1Raは、野生型ヒトIL-1Raタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%相同または同一であるアミノ酸配列を有し得る。一部の実施形態では、ヒトIL-1Raは、配列番号6によるアミノ酸配列のヒトIL-1Raタンパク質と95%~99%相同または同一であるアミノ酸配列を有し得る。
【0113】
一部の実施形態では、本開示は、椎間板の細胞におけるIL-1Raの発現のための、および/あるいはDDDもしくはDDDに関連する状態に罹患していると同定されたか、またはそれを発生するリスクがあると同定されたヒトにおける、DDDもしくはDDDに関連する状態の処置のための、またはそのような状態の予防のための、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系であって、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードする核酸配列を含むアデノウイルスベースのベクターのゲノムコピー(GC)を含む、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を提供する。一部の実施形態では、核酸は、左側および右側逆方向末端反復配列、アデノウイルスパッケージングシグナル、ならびに非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、ヒトIL-1Ra遺伝子の発現は、ヒトIL-1Raをコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置するNF-κB誘導性プロモーターにより制御される。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号2、配列番号3または配列番号7の核酸配列と少なくとも95%相同または同一である。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターおよびヘルパーウイルスに感染している宿主細胞から単離され、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、a)1ミリリットル当たり1.4×108~1.4×1012GC(1ml当たりのGC)のヘルパー依存性アデノウイルスベクター;b)15%未満のヘルパーウイルス粒子;c)10%未満の空のカプシド;d)最高で100μg/ml以下の宿主細胞タンパク質;e)最高で20ng/ml以下の宿主細胞核酸;f)35EU/mL以下のエンドトキシン;およびg)≦300GC/TCID50のウイルス粒子対感染単位比を含む。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系におけるヘルパーウイルスのレベルは、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%もしくは1%のヘルパーウイルス粒子であるか、または15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%もしくは1%未満であるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、1%~2%、2%~3%、3%~4%、4%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~10%、10%~11%、11%~12%、12%~13%、13%~14%、14%~<15%、1%~15%、もしくは1%~5%ヘルパーウイルス粒子である。
【0115】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系における空のカプシドのレベルは、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%もしくは1%の空のカプシドであるか、または10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%もしくは1%未満であるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、1%~2%、2%~3%、3%~4%、4%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%、9%~<10%、1%~10%、もしくは1%~5%の空のカプシドである。一部の実施形態では、本明細書で開示されるアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系における、空のカプシドのレベルとヘルパーウイルスのレベルは、同じである。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「空のカプシド」、および「空の粒子」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、ヘルパー依存性アデノウイルスタンパク質シェルを含むが、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトを全部または一部欠いている、アデノウイルスベースのウイルスビリオンを指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、例えば、本発明の、およびヘルパーウイルスのヘルパー依存性アデノウイルスベクターコンストラクトのレシピエントとして使用され得るかまたは使用されたことがある微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を意味する。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。したがって、「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、外来性DNA配列がトランスフェクトされた細胞を一般に指す。単一の親細胞の子孫は、自然、偶発的または意図的突然変異のため、形態の点でまたはゲノムもしくは全DNA補体の点で元の親と必ずしも完全に同一であるとは限らないことを理解されたい。
【0118】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、7.0±1.0のpHを有する。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、6.0~6.5、6.5~7.0、7.0~7.5または7.0~8.0のpHを有する。
【0119】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、≦600mOsm/kgのオスモル濃度を有する。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、100mOsm/kg~200mOsm/kg、200mOsm/kg~300mOsm/kg、300mOsm/kg~400mOsm/kg、400mOsm/kg~500mOsm/kg、または500mOsm/kg~600mOsm/kgのオスモル濃度を有する。
【0120】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、1ml当たりのGC:a)1.4×109~1.4×1012;b)1.4×109~1.4×1011;またはc)1.4×109~1.4×1010で、ヘルパー依存性アデノウイルスベクター(HDAd)を含む。
【0121】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、1ml当たり≧1.4×109GC~1ml当たり<5.6×109GC、1ml当たり2.8×109GC、1ml当たり≧1.4×1010GC~1ml当たり<5.6×1010GC、1mL当たり2.8×1010GC、1mL当たり≧1.4×1011GC~1mL当たり<5.6×1011GC、1mL当たり2.8×1011GC、1mL当たり1.4×109~5.6×109GC、1mL当たり1.4×1010~5.6×1010GC、1ml当たり1.4×1011~5.6×1011GC、1ml当たり2×109~5.6×109GC、1ml当たり2×1010~5.6×1010GC、1ml当たり2×1011~5.6×1011GC、1ml当たり2.8×109~5.6×109GC、1ml当たり2.8×1010~5.6×1010GC、1ml当たり2.8×1011~5.6×1011GC、1ml当たり2×109~2.8×109GC、1ml当たり2×1010~2.8×1010GC、1ml当たり2×1011~2.8×1011GC、1ml当たり1.4×109~2.8×1010GC、1ml当たり1.4×1010~2.8×1011GC、1ml当たり1.4×1011~2.8×1011GC、1ml当たり2.8×109~1.4×1012GC、1ml当たり2.8×1010~1.4×1012GC、1ml当たり2.8×1011~1.4×1012GC、1ml当たり2.8×109~2.8×1011GC、1ml当たり2.8×109~1.4×1010GC、1ml当たり2.8×1010~2.8×1011GC、1ml当たり1.4×109GC、1ml当たり1.4×1010GC、1ml当たり1.4×1011GC、1ml当たり1.4×1012GC、1ml当たり2×109GC、1ml当たり2×1010GC、1ml当たり2×1011GC、1ml当たり2.8×109GC、1ml当たり2.8×1010GC、1ml当たり2.8×1011GC、1ml当たり5.6×109GC、1ml当たり5.6×1010GC、または1ml当たり5.6×1011GCの濃度で、ヘルパー依存性アデノウイルスベクター(HDAd)を含む。
【0122】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、1ml~5ml、2ml~5ml、3ml~5ml、4ml~5ml、5ml、または2mlの用量容量を含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、1ml、3ml、または4mlの用量容量を含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlであるか、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlであるか、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5ml未満であるか、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5ml未満であるか、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlを超えるか、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlを超えるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、0.1ml~5ml、0.5ml~5ml、0.5ml~2ml、1ml~5ml、2ml~5ml、4ml~5ml、もしくは3ml~5mlである、用量容量を含む。
【0123】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、7×109~7×1012GC、7×109~7×1011GC、7×109~7×1010GC、7×109~2.8×1010GC、7×1010~2.8×1011GC、7×1011~2.8×1012GC、7×1010~7×1012GC、7×1010~7×1011GC、7×1011~7×1012GC、7×109~2.8×1010GC、7×1010~2.8×1011GC、7×1011~2.8×1012GC、1010~2.8×1010GC、1011~2.8×1011GC、1012~2.8×1012GC、2.8×109~5.6×109GC、2.8×1010~5.6×1010GC、2.8×1011~5.6×1011GC、1010~1.4×1010GC、1011~1.4×1011GC、1012~1.4×1012GC、7×109~5.6×1011GC、7×1010~5.6×1012GC、7×1011~5.6×1012GC、1.4×1010~7×1012GC、1.4×1011~7×1012GC、1.4×1012~7×1012GC、1.4×1010~1.4×1012GC、1.4×1010~1.4×1011GC、1.4×1011~1.4×1012GC、7×109GC、7×1010GC、7×1011GC、7×1012GC、1.4×1010GC、1.4×1011GC、1.4×1012GC、2.8×1010GC、2.8×1011GC、または2.8×1012GCの総用量で、ヘルパー依存性アデノウイルスベクター(HDAd)を含む。一部の実施形態では、総用量は、投与1回当たりの、単一の円板に注入される量である。
【0124】
医薬組成物
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、DDDもしくはDDDに関連する状態に罹患しているまたはそれを発生している椎間板への投与に好適な医薬組成物に組み込まれる。一部の実施形態では、対象は、DDDもしくはDDDに関連する状態に罹患しているまたはそれを発生していると同定された者である。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つまたは複数の変性した円板もしくは変性していない円板または両方の細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つまたは複数の変性した円板の細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、本明細書に記載のDDDは、頸部または腰部変性円板疾患のいずれか一方である。一部の実施形態では、DDDは、腰部変性円板疾患である。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、脊柱骨対:C2-C3、C3-C4、C4-C5、C5-C6、C6-C7、C7-T1、T1-T2、T2-T3、T3-T4、T4-T5、T5-T6、T6-T7、T7-T8、T8-T9、T9-T10、T10-T11、T11-T12、T12-L1、L1-L2、L2-L3、L3-L4、L4-L5およびL5-S1間の椎間板またはこれらの任意の組合せの細胞への直接的なアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0125】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つまたは複数の椎間板の、軟骨終板(CEP)の細胞、高度に組織化された線維輪(AF)の細胞および中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域の細胞(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せへの、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域の細胞(髄核(NP)細胞)へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、NP細胞である細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の送達用に製剤される。
【0126】
一部の実施形態では、本開示の組成物は、ヒトまたは哺乳動物インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードする核酸配列と、L ITRと、R ITRと、パッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースのベクターを含む医薬組成物であって、ヒトまたは哺乳動物インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)遺伝子の発現が、ヒトまたは哺乳動物IL-1Raをコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置する炎症感受性プロモーターにより制御される、医薬組成物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、DDDまたはDDDに関連する状態の処置に使用される。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0127】
本開示の文脈において使用される場合の炎症感受性プロモーターは、例えば、NF-κΒ、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、マクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)、または前述のもののハイブリッドコンストラクトによって誘導可能なプロモーターである。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、NF-κB5-ELAMプロモーターである。
【0128】
一部の実施形態では、本開示の組成物のアデノウイルスベースのベクター(アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系)は、ヘルパー依存性のアデノウイルスベースのベクター(HDAd)である。一部の実施形態では、そのような組成物は、本明細書で開示されるヘルパー依存性アデノウイルスベクターウイルス粒子、および薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態では、組成物は、ヘルパーウイルスおよび/または空のウイルス粒子を本明細書で開示される量でさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、医薬品投与に適合する、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むように意図されている。好適な担体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、当分野における標準的な参考テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。そのような担体または希釈剤の非限定的な例としては、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、リポソームおよび非水性媒体、例えば、固定油も、使用され得る。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と非適合性である場合を除いて、組成物におけるその使用が考えられる。一部の実施形態では、補助活性化合物も組成物に組み込まれる。
【0129】
本開示の医薬組成物は、その意図された投与経路である椎間板への円板内注射に適合するように製剤される。円板内注射に使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用蒸留水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および等張性の調整用の薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHを、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで、調整することができる。医薬調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアルに封入される。一部の実施形態では、医薬組成物は、椎間板への直接注射(円板内注射)用に製剤される。
【0130】
一部の実施形態では、椎間板に直接注射するための本開示の医薬組成物は、少量の局所麻酔薬、例えば、リドカインまたはブピバカインに加えて、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、またはトリアムシノロンをさらに含む。一部の実施形態では、椎間板に直接注射するための本開示の医薬組成物は、コルチコステロイドをさらに含む。一部の実施形態では、コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、コルチコステロイドが、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の前または後に投与できるように、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、またはこれらの組合せは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系とは別個の剤形である。一部の実施形態では、コルチコステロイドが、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、またはこれらの組合せは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同じ剤形(例えば、単一の液体)中にある。一部の実施形態では、椎間板に直接注射するための本開示の医薬組成物は、局所麻酔薬をさらに含む。一部の実施形態では、局所麻酔薬は、リドカイン、ブピバカイン、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、局所麻酔薬が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の前または後に投与できるように、局所麻酔薬、例えば、リドカイン、ブピバカイン、またはこれらの組合せは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系とは別個の剤形中にある。一部の実施形態では、局所麻酔薬が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、局所麻酔薬、例えば、リドカイン、ブピバカイン、またはこれらの組合せは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同じ剤形(例えば、単一の液体)の形態である。一部の実施形態では、椎間板に直接注射するための本開示の医薬組成物は、少なくとも1つの増粘剤をさらに含む。一部の実施形態では、椎間板に直接注射するための本開示の医薬組成物は、少なくとも1つの保存剤を含む。増粘剤は、当技術分野において公知の、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients Ninth edition, Paul J Sheskey, Bruno C Hancock, Gary P Moss, David J Goldfarb; およびThe United States pharmacopeia : USP 30 ; The National formulary : NF 25)に記載されているような、任意の1つまたは複数の増粘剤であり得、参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
注射剤使用に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合に、組成物は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性でなければならない。それは、製造および保管条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対抗して保存されなければならない。一部の実施形態では、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合は必要粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって、達成することができる。一部の実施形態では、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましであろう。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることにより、もたらすことができる。
【0132】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙されている成分の1つまたは組合せとともに、適切な溶媒に添合し、その後、濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上に列挙されているものからの他の必要成分とを含有する滅菌媒体に活性化合物を添合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の方法は、任意の追加の所望成分を加えた活性成分の粉末を、事前に滅菌濾過されたその溶液から生じさせる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0133】
本開示のアデノウイルス発現および送達系の化学特性
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201/PCRX-201)のカプシドは、非包膜型であり、29.3kb二本鎖DNAで構成されている。カプシドの理論分子量は、103.9メガダルトン(MDa)であり、ゲノムは、18.1MDaである。FX201のカプシドは、おおよそ100nmの直径を有し得る。
【0134】
製剤:一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201/PCRX-201)は、約1~20mM、TRIS、約50~100mM NaCl、0.01~1%重量/容量(w/v)ポリソルベエート80、1~10%(w/v)スクロース、0.1~10mM MgCl2、50~500μM EDTA、1~5%容量/容量(v/v)エタノール、および5~50mM L-ヒスチジンで構成されている緩衝液中で製剤される。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201)は、10mM TRIS、75mM NaCl、0.02%(重量/容量(w/v)ポリソルベエート80、5%(w/v)スクロース、1.0mM MgCl2、100μM EDTA、0.5%(容量/容量(v/v)のエタノール、および10mM L-ヒスチジンで構成されている緩衝液中で製剤される。一部の実施形態では、生成物は、目視可能な微粒子を有さない、透明からやや半透明の無色懸濁液である。
【0135】
保管条件および安定性:一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201/PCRX-201)は、凍結された液体として≦-65℃で保管される。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201)は、≦-65℃で保管されたとき、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間または少なくとも12カ月間、安定している。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201)は、≦-65℃で保管されたとき、少なくとも24カ月間、安定している。一部の実施形態では、解凍したら、生成物を2~8℃で保管し、7日以内に使用するべきである。一部の実施形態では、解凍したら、生成物を2~8℃で保管し、14日以内に使用するべきである。一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(例えば、FX201)は、ある程度の期間、室温(RT)に保つことができる。一部の実施形態では、バイアルの使用準備が完了したら、それはRTでバイアル内に7時間以下、保持される(一部の実施形態では、RTで保持されたバイアルを後の使用のために冷蔵に戻すことはできない)。一部の実施形態では、バイアルの使用準備が完了したら、それはRTでバイアル内に12時間以下、保持される(一部の実施形態では、RTで保持されたバイアルを後の使用のために冷蔵に戻すことはできない)。一部の実施形態では、投薬量を注射器の中で調製したら、それをRTで保持し、4時間以内に使用しなければならない。一部の実施形態では、投薬量を注射器の中で調製したら、それをRTで保持し、8時間以内に使用しなければならない。
【0136】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系(アデノウイルスベースのベクター)を含む本開示の医薬組成物は、円板変性疾患((degenerated disc disease))のまたはDDDに関連する状態の処置に使用され、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、アデノウイルスベースのベクターのゲノムコピー(GC)を含み、このベクターは、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)をコードする核酸配列を含み、さらに、左側および右側逆方向末端反復配列、アデノウイルスパッケージングシグナル、ならびに非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列を含み、ヒトIL-1Ra遺伝子の発現は、ヒトIL-1Raをコードする核酸配列のリーディングフレームの上流に位置する炎症感受性プロモーターにより制御されてもよい。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号2、配列番号3または配列番号7の核酸配列と少なくとも95%相同または同一である。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、1ミリリットル(ml)当たりアデノウイルスベースのベクターの1.4×108~1.4×1012GCを含む。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、NF-κΒ、インターロイキン6(II-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、補体因子3(C3)、血清アミロイドA3(SAA3)、マクロファージ炎症性タンパク質-1a(MIP-1a)または前述のもののハイブリッドコンストラクトのいずれか1つによって誘導可能な、プロモーターである。一部の実施形態では、炎症感受性プロモーターは、NF-κ誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、NF-κB誘導性プロモーターは、NF-KB5-ELAMプロモーターである。
【0137】
一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号2、配列番号3または配列番号7の核酸配列と少なくとも96%、97%、98%または99%相同または同一である。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号2、配列番号3または配列番号7の核酸配列と少なくとも99%相同または同一である。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号2、配列番号3または配列番号7のものである。
【0138】
一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%相同または同一である。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも96%、97%、98%または99%相同または同一である。
【0139】
一部の実施形態では、IL-1Raをコードする核酸配列は、配列番号1の核酸を含む。一部の実施形態では、IL-1Raをコードする核酸配列は、配列番号4の核酸配列を含む。配列番号4は、ヒトIL-1Raの元のコード配列(配列番号5)のコドン最適化バージョンであり、配列番号4によるコドン最適化配列は、a)野生型ヒトIL-1Raタンパク質における0.78のCAIと比較して0.96のコドン適応指標(CAI:codon adaptive index)、b)野生型ヒトIL-1Raタンパク質における56%の最高使用頻度と比較して最高使用頻度内のコドンの85%、c)野生型ヒトIL-1Raタンパク質における51.98の平均GC含量と比較して60.4の平均GC含量を有し、d)野生型ヒトIL-1Raタンパク質と比較して、スプライス部位(GGTAAG)、スプライス部位(GGTGAT)、ポリA(AATAAA)、ポリA(ATTAAA)、不安定化(ATTTA)、ポリT(TTTTTT)およびポリA(AAAAAAA)をはじめとする負のシス作用エレメントを有さない。
【0140】
一部の実施形態では、ヒトIL-1Raのアミノ酸配列は、配列番号6によるものである。一部の実施形態では、プロモーターと、IL-1Raをコードする核酸配列と、左側および右側逆方向末端反復配列と、アデノウイルスパッケージングシグナルと、非ウイルス性の非コードスタッファー核酸配列とを含むアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の核酸配列は、配列番号2、配列番号3または配列番号7の核酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0141】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースのベクターは、感染細胞におけるベクター配列の存在をモニターするために視覚的にまたは機器により検出可能であるタンパク質産物をコードするマーカー遺伝子をさらに含んでもよい。マーカー遺伝子は、蛍光タンパク質、酵素または検出可能な細胞表面タンパク質のいずれか1つをコードする遺伝子であり得る。一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質LacZまたはルシフェラーゼ酵素のいずれか一方をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。
【0142】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、医薬組成物の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターのa)1.4×109~1.4×1012、b)1.4×109~1.4×1011、またはc)1.4×109~1.4×1010ゲノムコピー(GC)を含む。
【0143】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、医薬組成物の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの1.0×1010~1.0×1012、1.0×1010~1.0×1011、1.0×1011~1.0×1012、9×1010~9×1011、1.4×1010~1.4×1012、1.4×1010~1.4×1011、1.4×1011~1.4×1012、1.4×109~5.6×109、1.4×1010~5.6×1010、1.4×1011~5.6×1011、2×109~5.6×109、2×1010~5.6×1010、2×1011~5.6×1011、2.8×109~5.6×109、2.8×1010~5.6×1010、2.8×1011~5.6×1011、2×109~2.8×109、2×1010~2.8×1010、2×1011~2.8×1011、1.4×109~2.8×1010、1.4×1010~2.8×1011、1.4×1011~2.8×1011、2.8×109~1.4×1012、2.8×1010~1.4×1012、2.8×1011~1.4×1012、2.8×109~2.8×1011、2.8×109~1.4×1010、2.8×1010~2.8×1011、1.4×109、1.4×1010、1.4×1011、1.4×1012、2×109、2×1010、2×1011、2.8×109、2.8×1010、2.8×1011、5.6×109、5.6×1010、または5.6×1011ゲノムコピー(GC)を含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、医薬組成物の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの1×108GC、1×109GC、1×1010GC、1×1011GC、2×108GC、2×109GC、2×1010GC、2×1011GC、3×108GC、3×109GC、3×1010GC、もしくは3×1011GC、または医薬組成物の1ml当たりのアデノウイルスベースのベクターの前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、1×108GC~3×1011GC、1×108GC~3×109GC、もしくは1×109GC~3×109GCを含む。
【0144】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、1ml~5ml、2ml~5ml、4ml~5ml、3ml~5ml、または最大5mlの用量容量を含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlであるか、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlであるか、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5ml未満であるか、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5ml未満であるか、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlを超えるか、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4もしくは5mlを超えるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、0.1ml~5ml、0.5ml~5ml、0.5ml~2ml、1ml~5ml、2ml~5ml、4ml~5ml、もしくは3ml~5mlである、用量容量を含む。
【0145】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、アデノウイルスベースのベクターの7×109~7×1012GC、7×109~7×1011GC、7×109~7×1010GC、7×1010~7×1012GC、7×1010~7×1011GC、7×1011~7×1012GC、7×109~2.8×1010GC、7×1010~2.8×1011GC、7×1011~2.8×1012GC、7×109~2.8×1011GC、7×109~2.8×1012GC、7×1010~2.8×1012GC、1×1010~2.8×1010GC、1×1011~2.8×1011GC、1×1012~2.8×1012GC、2.8×109~5.6×109GC、2.8×1010~5.6×1010GC、2.8×1011~5.6×1011GC、1×1010~1.4×1010GC、1×1011~1.4×1011GC、1×1012~1.4×1012GC、7×109~5.6×1011GC、7×1010~5.6×1012GC、7×1011~5.6×1012GC、1.4×1010~7×1012GC、1.4×1011~7×1012GC、1.4×1012~7×1012GC、1.4×1010~1.4×1012GC、1.4×1010~1.4×1011GC、1.4×1011~1.4×1012GC、7×109GC、7×1010GC、7×1011GC、7×1012GC、1.4×1010GC、1.4×1011GC、1.4×1012GC、2.8×1010GC、2.8×1011GC、または2.8×1012GCの総用量を含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む本開示の医薬組成物は、1×108GC、1×109GC、1×1010GC、1×1011GC、2×108GC、2×109GC、2×1010GC、2×1011GC、3×108GC、3×109GC、3×1010GC、もしくは3×1011GC、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、1×108GC~3×1011GC、1×108GC~3×109GC、もしくは1×109GC~3×109GCの総用量を含む。本開示の医薬組成物の一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系のアデノウイルスベースのベクターは、ヘルパー依存性アデノウイルスベクター(HDAd)である。
【0146】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、ヒト椎間板への円板内注射用に製剤される。一部の実施形態では、組成物は、関節内注射されない。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、対象の椎間板への円板内注射用に製剤される。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、椎間板の髄核への円板内注射用に製剤される。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0147】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、ミリリットル(ml)当たりのアデノウイ ルスベースのベクターのゲノムコピー(GC)またはミリリットル(ml)当たりのアデノウイルスベースのベクターのウイルス粒子(VP)として定量化されるヘルパー依存性アデノウイルスベクターのウイルス粒子を含み、1VP/mlは、1.4GC/mlに相当する。
【0148】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、ミリリットル(ml)当たりアデノウイルスベースのベクターの1.4×108~1.4×1012ゲノムコピー(GC)を含む、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、椎間板内の流体のミリリトル(ml)当たりまたは椎間板の容量の1ml当たり本開示のヘルパー依存性アデノウイルスベクターの108~1012ウイルス粒子(VP)も含み得る。
【0149】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの109~1012、109~1011、または109~1010VPを含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの109~1011VPを含む。
【0150】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの2.8×109~2.8×1011、2.8×109~2.8×1010、2.8×1010~2.8×1011、2×109~2×1011、2×109~2×1010、または2×1010~2×1011VPを含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの1×108VP、1×109VP、1×1010VP、1×1011VP、2×108VP、2×109VP、2×1010VP、2×1011VP、3×108VP、3×109VP、3×1010VP、もしくは3×1011VP、またはアデノウイルスベースのベクターの前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、1×108VP~3×1011VP、1×108VP~3×109VP、もしくは1×109VP~3×109VPを含む。
【0151】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの2.8×109、2.8×1010、2.8×1011、または2.8×1011VPを含む。
【0152】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの109~1012、109~1011、または109~1010VPを含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの109~1011VPを含む。
【0153】
一部の実施形態では、DDDまたはDDDに関連する状態に罹患しているヒトの1つまたは複数の椎間板の細胞を、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させる方法は、それを必要とするヒトの1つまたは複数の椎間板を、椎間板内の流体のミリリットル(ml)当たりまたは椎間板の容量の1ml当たり本開示のアデノウイルスベースのベクターの108~1012ウイルス粒子(VP)に感染させることを含む。
【0154】
一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たりまたは椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの109~1012、109~1011、または109~1010VPを含む。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系を含む医薬組成物は、椎間板内の流体の1ml当たり、または椎間板の容量の1ml当たりアデノウイルスベースのベクターの109~1011VPを含む。
【0155】
一部の実施形態では、椎間板は、約0.5ml~約20ml、0.5ml~10ml、0.5ml~5ml、5ml~10ml、10ml~15ml、15ml~17ml、もしくは17ml~20mlの流体またはmlの椎間板容量を有する。
【0156】
本開示の方法
一部の実施形態では、本開示は、変性円板疾患(DDD)に罹患している対象または罹患していると同定された対象の1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に感染させる方法であって、a)対象の、またはそれを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞を、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系のある量、適宜、有効量を含む医薬組成物に感染させる工程;およびb)1つまたは複数の椎間板の細胞においてIL-1Raを発現させる工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)タンパク質に加えて1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、追加のタンパク質は、DDDまたはaまたはDDDに関連する状態を処置するための治療用タンパク質である。一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数の椎間板の細胞において追加のタンパク質を発現させることをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0157】
一部の実施形態では、方法は、コルチコステロイド、例えば、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、またはこれらの組合せを対象の椎間板に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、コルチコステロイドがアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、コルチコステロイドは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と単一の医薬組成物に製剤される。一部の実施形態では、コルチコステロイドが対象の椎間板へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与の前または後に投与できるように、コルチコステロイドは、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系とは別個の剤形中にある。一部の実施形態では、方法は、局所麻酔薬、例えば、リドカイン、ブピバカイン、またはこれらの組合せを対象の椎間板に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、局所麻酔薬がアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、局所麻酔薬は、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と単一の医薬組成物に製剤される。一部の実施形態では、局所麻酔薬が対象の椎間板へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与の前または後に投与できるように、局所麻酔薬は、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系とは別個の剤形中にある。一部の実施形態では、方法は、コルチコステロイドと局所麻酔薬との両方を対照の椎間板に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬がアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と同時に投与されるように、コルチコステロイドおよび局部麻酔薬の一方または両方が、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系と単一の医薬組成物に製剤される。一部の実施形態では、コルチコステロイドおよび/または局所麻酔薬が、対象の椎間板へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与の前または後に投与できるように、コルチコステロイドおよび局部麻酔薬の一方または両方は、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系とは別個の剤形中にある。
【0158】
一部の実施形態では、方法は、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与後に対象の椎間板に液体を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、液体は、生理食塩水、例えば、0.9%生理食塩水である。一部の実施形態では、液体は、緩衝溶液、例えば、PBSである。一部の実施形態では、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の投与後に対象の椎間板に投与される液体の容量は、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlであるか、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約55μl、約60μl、約65μl、約70μl、約75μl、約80μl、約85μl、約90μl、約95μl、約100μl、約150μl、約200μl、約250μl、約300μl、約350μl、約400μl、約450μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1000μlであるか、25μl未満、30μl未満、35μl未満、40μl未満、45μl未満、50μl未満、55μl未満、60μl未満、65μl未満、70μl未満、75μl未満、80μl未満、85μl未満、90μl未満、95μl未満、100μl未満、150μl未満、200μl未満、250μl未満、300μl未満、350μl未満、400μl未満、450μl未満、500μl未満、600μl未満、700μl未満、800μl未満、900μl未満、1000μl未満であるか、約25μl未満、約30μl未満、約35μl未満、約40μl未満、約45μl未満、約50μl未満、約55μl未満、約60μl未満、約65μl未満、約70μl未満、約75μl未満、約80μl未満、約85μl未満、約90μl未満、約95μl未満、約100μl未満、約150μl未満、約200μl未満、約250μl未満、約300μl未満、約350μl未満、約400μl未満、約450μl未満、約500μl未満、約600μl未満、約700μl未満、約800μl未満、約900μl未満、約1000μl未満であるか、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μlを超えるか、約25μl、約30μl、約35μl、約40μl、約45μl、約50μl、約55μl、約60μl、約65μl、約70μl、約75μl、約80μl、約85μl、約90μl、約95μl、約100μl、約150μl、約200μl、約250μl、約300μl、約350μl、約400μl、約450μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1000μlを超えるか、または前述の値のいずれか2つにより定義される範囲、例えば、25~1000、25~500、25~200、50~150、500~1000、200~800、200~600、400~800、もしくは600~800μlである。一部の実施形態では、液体の投与は、液体の円板内注射または注入を含む。一部の実施形態では、液体の投与は、円板のNPにおけるアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の分布を増加させる。
【0159】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞を、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に1回感染させる。一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞を、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる。一部の実施形態では、細胞を医薬組成物の円板内注射によって感染させる。
【0160】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染は、アデノウイルスベースのベクターの異なる数のゲノムコピーを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に少なくとも2回感染させる場合、第1の感染は、第2のまたは一切の後続の感染の1ml当たりのGC数未満である1ml当たりのGC数を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に少なくとも2回感染させる場合、第1の感染は、第2のまたは一切の後続の感染の1ml当たりのGC数より多い1ml当たりのGC数を含む。
【0161】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞を、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染は、アデノウイルスベースのベクターの異なる数のゲノムコピーを含み、第1の感染は、1ml当たり1.4×109GC~1.4×1010GC/mlを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×1011~1.4×1012GCを含むか、第1の感染は、1.4×1010~1.4×1011GC/mlを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×1011~1.4×1012GCを含むか、第1の感染は、1.4×109~1.4×1010GC/mlを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×1010~1.4×1011GCを含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×109GC~5.6×109GC/mlを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×1010~5.6×1010GCを含むか、第1の感染は、1.4×1010~5.6×1010GC/mlを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×1011~5.6×1011GCを含むか、第1の感染は、1.4×109~5.6×109GC/mlを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×1011~5.6×1011GCを含むか、第1の感染は、1ml当たり2.8×109GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり2.8×1010GCを含むか、第1の感染は、1ml当たり2.8×1010GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり2.8×1011GCを含むか、第1の感染は、1ml当たり2.8×109GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり2.8×1011GCを含むか、第1の感染は、第2のもしくは一切の後続の感染の1ml当たりのGC数より多い1ml当たりのGC数を含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×1011~1.4×1012GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×109~1.4×1010GC/mlを含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×1011~1.4×1012GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1.4×1010~1.4×1011GC/mlを含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×1010~1.4×1011GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1.4×109~1.4×1010GC/mlを含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×1010~5.6×1010GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり1.4×109~5.6×109GC/mlを含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×1011~5.6×1011GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1.4×1010~5.6×1010GC/mlを含むか、第1の感染は、1ml当たり1.4×1011~5.6×1011GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1.4×109~5.6×1010GC/mlを含むか、第1の感染は、1ml当たり2.8×1010GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり2.8×1010GCを含むか、第1の感染は、1ml当たり2.8×1011GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり2.8×1010GCを含むか、または第1の感染は、1ml当たり2.8×1011GCを含み、第2もしくは後続の感染は、1ml当たり2.8×109GCを含む。
【0162】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染は、アデノウイルスベースのベクターの同じ数のゲノムコピーを含む。
【0163】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に少なくとも2回感染させる場合、各感染は、1ml当たり1.4×109~5.6×1010、1.4×1010~5.6×1010、1.4×1011~5.6×1011、2.8×109、2.8×1010、または2.8×1011GCを含む。
【0164】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、各感染が対象の同じ椎間板において行われる。
【0165】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞をアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系に2回以上感染させる場合、あらゆる第2および後続の感染が、前に感染を行った椎間板とは異なる対象の椎間板において行われる。
【0166】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板を感染させることは、本開示の医薬組成物の円板内注射を含む。本明細書に記載の「1つまたは複数の椎間板を感染させること」は、本開示を踏まえて読まれる場合、その通常かつ通例の意味を有し、DDDまたはDDDに関連する状態を患っている1つまたは複数の椎間板に本開示の医薬組成物を投与することを含み、投与することは、医薬組成物を、DDDまたはDDDに関連する状態を患っている、1つまたは複数の椎間板に、1つまたは複数の椎間板の円板内に、注射することを含む。一部の実施形態では、DDDまたはDDDに関連する状態を患っている椎間板に本開示の医薬組成物を投与することは、DDDまたはDDDに関連する状態を患っている1つまたは複数の椎間板に組成物を円板内注射により注射することによって行われる。一部の実施形態では、DDDまたはDDDに関連する状態を患っている椎間板に本開示の医薬組成物を投与することは、DDDまたはDDDに関連する状態を患っている1つまたは複数の椎間板に組成物を関節内にではない方法により注射することによって行われる。
【0167】
一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞を感染させる工程は、本開示の医薬組成物を1つまたは複数の椎間板の軟骨終板(CEP)領域、高度に組織化された線維輪(AF)領域もしくは中心部のゼラチン状の髄核(NP)領域(髄核(NP)細胞)またはこれらの組合せに注射することを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の椎間板の細胞を感染させる工程は、医薬組成物を1つまたは複数の椎間板の髄核(NP)領域に注射することを含む。
【0168】
処置のモニタリング
一部の実施形態では、本開示の方法は、c)本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系のある量(and amount)、適宜、有効量を含む医薬組成物に感染させた、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板の細胞におけるIL-1Raの発現後に、対象の変性された椎間板におけるDDDの処置または進行をモニターする工程を、さらに含み得る。
【0169】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0170】
一部の実施形態では、DDDの処置または進行のモニタリングは、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系のある量、適宜、有効量を含む医薬組成物に感染させたそれを必要とする対象における1つまたは複数の椎間板における、NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、サイトカイン:IL-1βIL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13、ADAMTS 4、アグリカンもしくはII型コラーゲンまたはこれらの組合せのレベルを決定することを含む。
【0171】
一部の実施形態では、本開示のアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系のある量、適宜、有効量を含む医薬組成物に感染させた、それを必要とする対象における1つまたは複数の椎間板における、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、それを必要とする対象における疼痛、身体機能、患者の包括的評価、および椎間板画像診断を判定すること;患者報告疼痛および/もしくは機能測定からのスコアを使用して円板変性疾患の進行を評価すること;または対象の視覚的アナログ尺度(VAS)スコアを決定することによりDDD関連疼痛を評価することを含み、VASは、次のような、質問票に基づく得点評価システムであってもよい:0(疼痛なし);1~3(軽度の疼痛);4~6(中等度から重度の疼痛):7~9(非常に重度の疼痛);および10(最悪の疼痛)。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、対象のVASスコアが本開示の医薬組成物の注射後に、より高かったまたは不変であった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理されていないとまたは処置されていないとみなされる。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、対象のVASスコアが本開示の医薬組成物の注射後に、より低かった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理または処置されているとみなされる。
【0172】
一部の実施形態では、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板における円板変性疾患(DDD)またはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、次のようなオスヴェストリー能力障害指数(ODI)によって機能の喪失または獲得を評価することを含む:0~20%(最小限の能力障害);21%~40%(中等度の能力障害);41%~60%(重度の能力障害);61~80%(肢体不自由状態):81%~100%(寝たきり状態または症状悪化)。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、対象のODIスコアが本開示の医薬組成物の注射後に、より高かったまたは不変であった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理されていないとまたは処置されていないとみなされる。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、対象のODIスコアが本開示の医薬組成物の注射後に、より低かった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理または処置されているとみなされる。
【0173】
一部の実施形態では、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、それを必要とする対象を、頸部または背下部における疼痛もしくは圧痛、脊椎の柔軟性および可動域、動作(着席および歩行を含む)に影響を与える疼痛およびこわばり、刺痛、しびれ、または上下肢の脱力のいずれか1つまたは全てについて身体検査することを含む。一部の実施形態では、それを必要とする対象の1つまたは複数の椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、それを必要とするヒトを、うつ、睡眠不足、痛覚過敏、中枢性感作、および破滅化、またはこれらの組合せについて身体検査することを含む。
【0174】
一部の実施形態では、それを必要とする対象の椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、放射線画像診断を使用して、(a)椎間板の高さの変化を示す椎体間の間隔;ならびに(b)骨棘の形成、および隣接した椎体終板が硬化し、不規則であるかどうかを決定することを含む。一部の実施形態では、それを必要とする対象の椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、磁気共鳴画像診断(MRI)、超音波(US)、および光干渉断層撮影(OCT)のいずれか1つまたは組合せを使用して、それを必要とする対象の椎間板を画像診断することを含む。
【0175】
一部の実施形態では、それを必要とする対象の椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、椎間板におけるインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)およびインターロイキン-1ベータ(IL-1β)タンパク質濃度の測定;本開示のアデノウイルスベースのベクターに対する免疫応答を評価すること;本開示の医薬組成物または方法で処置されたヒトの血液試料を、抗カプシドおよび抗IL-1Ra抗体の存在について試験すること;および/または本開示の医薬組成物または方法で処置されたヒトの椎間板組織および流体試料におけるIL-1RaおよびIL-1βタンパク質濃度を試験することを含む。
【0176】
一部の実施形態では、それを必要とする対象の椎間板におけるDDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングは、本開示の医薬組成物または方法で処置されたヒトの椎間板組織および流体試料におけるNGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、サイトカイン:IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13およびADAMTS 4、アグリカンもしくはII型コラーゲンのレベルまたはこれらの組合せを決定することを含む。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、サイトカイン:IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13およびADAMTS 4のいずれか1つまたは複数のレベルが、本開示の医薬組成物の注射後に、より高かったまたは不変であった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理されていないとまたは処置されていないとみなされる。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、アグリカンまたはII型コラーゲンのいずれか1つまたは複数のレベルが、本開示の医薬組成物の注射後に、より低かった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理されていないとまたは処置されていないとみなされる。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは:医薬組成物の注射後の1つまたは複数の椎間板における(a)NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13もしくはADAMTS 4またはこれらの組合せのレベルの上昇、あるいは(b)アグリカンもしくはII型コラーゲンまたはこれらの組合せのレベルの低下または不変、あるいは(c)両方は、対象の椎間板における変性円板疾患が管理されていないまたは処置されていないことを示す。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、サイトカイン:IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13およびADAMTS 4のいずれか1つまたは複数のレベルが、本開示の医薬組成物の注射後に、より低かった場合、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理または処置されているとみなされる。一部の実施形態、DDDまたはDDDに関連する状態の処置または進行のモニタリングでは、アグリカンまたはII型コラーゲンのいずれか1つまたは複数のレベルが、本開示の医薬組成物による感染後に、より高かった場合、本開示の医薬組成物による感染後、対象の椎間板における変性円板疾患は、管理または処置されているとみなされる。一部の実施形態、DDDの処置または進行のモニタリングでは:医薬組成物の注射後の1つまたは複数の椎間板における(a)NGF、NT-3、VEGF、サブスタンスP、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF α、MMP 3、MMP 13もしくはADAMTS 4またはこれらの組合せのレベルの低下または不変、あるいは(b)アグリカンもしくはII型コラーゲンまたはこれらの組合せのレベルの上昇、または(c)両方は、対象の椎間板における変性円板疾患が管理または処置されていることを示す。
【0177】
一部の実施形態では、DDDの処置または進行のモニタリングは、医薬組成物の注射後に1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの変化を決定することにより行われる。一部の実施形態では、ヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムは、当技術分野において公知のスコアリングシステム、例えば、Christine L. Le Maitre et al., JOR Spine, Vol. 4, Issue 2, June 2021に記載されているグレード分類システム(グレード0~3)、Nachemson分類システム(グレード1~4)、Thompson分類システム(グレード1~5)、Gries分類システム(グレード1~4)、Boos分類システム(グレード0~22)、Sive分類システム(グレード0~12)およびRutges分類システム(グレード0~12)のいずれか1つである。一部の実施形態、DDDの処置または進行のモニタリングでは、医薬組成物の注射後の1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの増加または不変は、対象の椎間板における変性円板疾患が管理または処置されていないことを示す。一部の実施形態、DDDの処置または進行のモニタリングでは、医薬組成物の注射後の1つまたは複数の椎間板についてのヒト椎間板変性症の組織病理スコアリングシステムに基づくスコアの減少は、対象の椎間板における変性円板疾患が管理または処置されていることを示す。
【0178】
一部の実施形態では、本開示方法は、(d)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が管理されていないまたは処置されないことが示された場合、(a)について1つまたは複数の椎間板の細胞へのアデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の同じ量の投与を継続する工程;または(e)(c)のモニターする工程によって、対象の椎間板の変性円板疾患が進行したことが示された場合、(a)について、アデノウイルスベースの生物学的送達および発現系の量をさらに調整し、それを1つもしくは複数の椎間板の細胞に投与する工程をさらに含む。
【0179】
DDD、DDDに関連する状態、およびそれに罹患している対象、
腰痛症(LBP)は、人口の80%に彼らの人生のある時点で発症する、世界的に見て病的状態の最大の原因である(Hoy DG et al., Ann Rheum Dis. 2014; Hoy D et al., Ann Rheum Dis. 2014)。LBP症例の40パーセントは、変性円板疾患(DDD)として公知の変性過程での椎間板(IVD)の損傷に起因する(Luoma K, et al., Spine. 2000)が、円板変性症それ自体が、必ずしもLBPを伴うとは限らない(Brinjikji W et al., AJNR Am J Neuroradiol. 2015)。使い尽くされた保存的処置(例えば、鎮痛薬および理学療法)を受けた、IVD変性症(IDD)またはDDDに起因する慢性LBPに罹患している患者には、侵襲的で費用のかかる外科的介入以外に残された選択肢がない。これまでのところ、何百万人もの人々の生活の質を低下させるDDDの大きな社会経済的負担および影響にもかかわらず、DDDを食い止めることまたは好転させることができる処置はない。
【0180】
正常なIVDは、軟骨終板(CEP)、高度に組織化された線維輪(AF)、および中心部のゼラチン状の髄核(NP)という、3つの形態学的に明確に異なる領域で構成されており、これらは共同で、脊椎全体にわたって均一に荷重を伝達してエネルギーを分散させるように働く。これら3つの組織間の相互作用によって、IVDを健康に保つために必要な局所生物物理学的現象も支配される。CEPは、IVDの無血管内部構造への栄養素および酸素の拡散を助長する硝子軟骨の薄層である(Benneker LM et al., Spine. 2005; Bibby SR et al., Eur Spine J. 2004)。AFは、ラメラに配向された大量の線維状I型コラーゲンを含有する。それは、脊椎の曲げおよびねじりからの張力に対する耐性(Shankar H et al., Techniques in Regional Anesthesia and Pain Management. 2009)および圧縮加重の影響下での高次に水和されたNPの外側への伸長に対する耐性をもたらす。NP細胞外基質(ECM)は、プロテオグリカン(主として、アグリカン)が豊富な基質内にランダムに配列されたII型コラーゲン線維で主として構成されており(Mwale F et al., Eur.Cell Mater. 2004)、このプロテオグリカンが、円板膨張能力および圧縮に対する耐性をもたらし、その一方で、組織膨張が、コラーゲン網の線維を伸ばす(Dolan P et al., Clin.Biomech.(Bristol., Avon.). 2001)。円板の細胞は、機械的感受性であり、機械的負荷のこの内部機能的分配によって、円板組織の適切な生物学的維持にとって重要な生物物理学的シグナルが局所的に生じる。
【0181】
DDDは、細胞代謝の変更、基質合成および正常な基質成分の分解増加に起因するECMの漸進的変化、ならびに基質の組成の変化を特徴とする(Le Maitre CL et al., Biochem Soc Trans. 2007; Inkinen RI et al., J Rheumatol. 1998)。並行して、基質分解が、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)およびADAMTS(トロンボスポンジンモチーフを有する、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)の上方制御により加速される(Pockert AJ et al., Arthritis Rheum. 2009; Le Maitre CL et al., J Pathol. 2004)。IVD変性症中の基質の組成の変化は、組織細胞性の低下(Vo NV et al., Orthop Res. 2016)と共に、アポトーシス増加(Gruber HE et al., Spine. 1998, Zhao CQ et al., Apoptosis. 2006)および老化(Heathfield SK et al., Arthritis Res.Ther. 2008; Gruber HE et al., Spine. 2007; Le Maitre CL et al., Arthritis Res Ther. 2007; Roberts S et al., Eur Spine J. 2006)による細胞の変化も伴う。IVDの細胞は、大量の異化サイトカインおよびケモカインを産生し(Vo NV et al., Orthop Res. 2016; Phillips KL et al., Osteoarthritis Cartilage. 2015; Phillips KL et al., Arthritis Res Ther. 2013; Shamji MF et al., Arthritis Rheum. 2010)、最も高度な発現がNPおよび内部AFに見られる(Phillips KL et al., Osteoarthritis Cartilage. 2015; Le Maitre CL et al., Arthritis Res Ther. 2005)。IL-1およびIL-1Ra(IL-1受容体アンタゴニスト)は、DDDの発病に極めて重要な役割を果たす(Hoyland JA et al., Rheumatology (Oxford). 2008; Phillips KL et al., Ann Rheum Dis. 2013; Karppinen J et al., Eur Spine J. 2009; Solovieva S et al., Eur Spine J. 2005; Solovieva S et al., Epidemiology. 2004; Solovieva S, et al., Pain. 2004; Eskola PJ et al., Int J Mol Epidemiol Genet. 2012; Kim DH et al., Spine (Phila Pa 1976). 2010; Paz Aparicio J et al., Eur Spine J. 2011; Le Maitre CL et al., nt J Exp Pathol. 2006)。
【0182】
本開示の方法の一部の実施形態では、DDDもしくはDDDに関連する状態に罹患している対象または罹患していると同定された対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、対象は、DDDもしくはDDDに関連する状態に罹患している対象または罹患していると同定された対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0183】
一部の実施形態では、DDDもしくはDDDに関連する状態に罹患しているヒトまたは罹患していると同定されたヒトは、20歳より高齢から80歳より高齢であるか、40~50歳の間であるか、または50歳より高齢である。一部の実施形態では、DDDもしくはDDDに関連する状態に罹患しているヒト、または罹患していると同定されたヒトは、頸椎椎間板症(cervical disc disease):円板の変性が脊椎の頸部に生じる;胸椎椎間板症(thoracic disc disease):円板の変性が脊椎の中背部に生じる、または腰椎椎間板変性症(lumbar disc disease):円板の変性が脊椎の下背部に生じる、に罹患している。一部の実施形態では、DDDは、椎間板の乾燥または椎間板の亀裂または椎間板スリップまたは椎間板ヘルニアを含むがこれらに限定されない、変性過程によって引き起こされる。一部の実施形態では、変性過程は、外傷または老化に起因する。
【0184】
一部の実施形態では、DDDに関連する状態は、腰痛、背筋緊張低下、背部柔軟性低下、もしくは血餅またはこれらの組合せであり得る。一部の実施形態では、DDDに関連する状態は、特発性腰痛症、腰髄神経根障害、脊髄症、腰部狭窄症、脊柱管狭窄症、脊椎の変形性関節症、脊椎症、脊椎すべり症、脊柱側弯症、関節突起間関節(zygapophydeal joint)変性症またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0185】
一部の実施形態では、DDDは、下記のようなPfirrmann分類によるグレード2、3、4および5のいずれか1つである:グレード2、核と輪との間が多少不鮮明である、水平帯を有する不均一な形状;グレード3、輪の形状がまだ認識可能である、核と輪との間が不鮮明な不均一な形状;グレード4、低強度であり、輪の形状が無傷でなく、核と輪との間の区別が不可能であり、円板の高さが通常は減少されている、不均一な形状;グレード5、円板腔が潰れていること以外、グレード4と同じ。
【0186】
一部の実施形態では、DDDは、下記のようなグレード1、2、3および4のいずれか1つの線維輪を有するものである:グレード1:造影剤が、亀裂を通って軟骨終板に入る;グレード2:造影剤が、骨終板に流入する;グレード3:造影剤が、終板の下の椎骨の海綿骨に侵入する;グレード4:造影剤が、海綿骨に完全に漏入する。一部の実施形態では、DDDの異なるステージまたはグレードは、CTスキャン、MRIもしくはx線またはこれらの組合せを使用して診断される。
【0187】
一部の実施形態では、本明細書に記載のDDDは、頸部または腰部変性円板疾患のいずれか一方である。一部の実施形態では、DDDは、腰部変性円板疾患である。一部の実施形態では、本明細書に記載のDDDは、脊柱骨対:C2-C3、C3-C4、C4-C5、C5-C6、C6-C7、C7-T1、T1-T2、T2-T3、T3-T4、T4-T5、T5-T6、T6-T7、T7-T8、T8-T9、T9-T10、T10-T11、T11-T12、T12-L1、L1-L2、L2-L3、L3-L4、L4-L5およびL5-S1間の椎間板またはこれらの任意の組合せのDDDである。一部の実施形態では、DDDは、脊柱骨対:L4-L5間もしくはL5-S1間の椎間板またはこれらの組合せのDDDである。
【0188】
一部の実施形態では、ヒトは、老化、遺伝的素因、肥満、代謝性疾患、関節損傷、脊柱への反復ストレス、スポーツ外傷もしくは骨変形またはこれらの組合せによって引き起こされるDDDまたはDDDに関連する状態に罹患している、あるいは罹患していると同定される。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有する。一部の実施形態では、対象は、椎間関節症候群(FJS)を有さない。
【0189】
一部の実施形態では、ヒトは、次のステージのいずれか1つのDDDもしくはDDDに関連する状態に罹患している、または罹患していると同定される:ステージ1:脊椎が、その正常なバランスを失っており、脊椎湾曲障害の可能性があり、その結果、姿勢に影響を与える。関節および神経がストレスを受け、より急速に老化する。全エネルギーの低下およびさらには高さのわずかな減少があり得るが、疼痛も不快感もほとんどない;ステージ2:円板がより狭くなり、骨変形(骨棘)が現れるので、円板崩壊の程度がより大きい。姿勢の変化がより顕著になり、脊椎管狭窄も始まる。疼痛および不快感がより明らかであり、身長が減少し続けることがある。より全般的な疲弊、しかしまた、ストレスに対処する能力の低下;ステージ3:姿勢が、著しく影響される。より一層高度な円板薄化があり、中等度から重度の神経損傷および瘢痕組織形成があることもある。より進行した症例では、さらなる骨変形が起こる。患者の全身および/または精神状態の増悪ならびにエネルギーの大きな損失;およびステージ4:重度の脊椎損傷。円板の薄化がその最大のものであるか、またはさらに悪い例では、完全に消失する。バランスの悪い姿勢は深刻であり、動作および柔軟性が極度に制限される。患者は、多くの場合、顕著な神経損傷を被り、永久的な瘢痕組織が形成し、骨が癒着し始めることもある。重度の疼痛、ならびにより進行度の高い身体および/または精神機能低下を経験する。身長およびエネルギレベルの継続的な低下もある。ステージ4 DDDは、通常は不治とみなされる。
【0190】
本開示は、以下の実施例によってさらに例証されるが、以下の実施例を限定とみなすべきではない。
【実施例】
【0191】
[実施例1]
PCRX-201感染はNP細胞の生存率に影響を与えない(レサズリン還元アッセイ)。
ヒト髄核(NP)細胞を外科手術試料からコラゲナーゼ消化によって単離した。各外科手術試料からの組織を組織学的グレード分類のためにパラフィンろうにも包埋し、この組織学的グレード分類は、0~3が変性していないものであり、4~6が中等度に変性したものであり、7~9が重度に変性したものである、0~9の尺度で、NP領域のみをグレード分類するヒトIVD変性症のためのコンセンサスグレード分類システムを利用するものであった。変性していないおよび変性した円板から得たNP細胞を、最大で2継代まで単層培養で拡大させ、PCRX-201(FX201としても公知)に0、100、500、1000、2000および300感染多重度(MOI)で感染させ、24時間、48時間、72時間および1週間でレサズリン還元アッセイを使用して代謝活性を(生存率のプロキシ測定量として)調査した。代謝活性の喪失は、3000の最高MOIででもPCRX-201感染後72時間まで観察されなかったが、代謝活性の若干の低下が、MOI 2000および3000での1週間の感染後に観察された(P<0.05)(
図3)。
【0192】
[実施例2]
PCRX-201感染はNP細胞の生存率に影響を与えない(DNA含有量)
変性したヒトIVD(n=6、グレード分類:4、5、5、6、7および8)から得たNP細胞を単層で0、750および3000のMOIでPCRX-201に48時間感染させ、次いで、アルジネートビーズ培養に移して、インビボ(in vivo)表現型を模倣し、再分化および増殖率を誘導した。アルジネートビーズを低グルコース培地におい5%O
2で維持して、最大21日間、インビボ環境+/-培養の最後の7日間、生理学的に適切な濃度のIL-1β(100pg/ml)での刺激を模倣した。4名の患者(グレード5、5、7、8)から得たNP細胞において、ELISAを使用してIL-1Ra産生を決定し、ピコグリーン定量化を使用してDNA含有量によって生存率を評価した。DNA含有量の減少は、PCRX-201感染後の21日のアルジネート培養後に観察されず(
図4)、これは、細胞生存率に対する有害効果がないことを示唆していた。
【0193】
[実施例3]
PCRX-201は変性していないおよび変性した円板から得たヒトIVD細胞においてIL-1Ra遺伝子およびタンパク質の発現を誘導することができる
PCRX-201が、変性した円板から得たNP細胞においてIL-1Raタンパク質を誘導することができるかどうかを調査するために、7つの患者試料(グレード:4、4、5、5、8、9および9)を、単独でのまたは追加の10ng/mLのIL-1β刺激と組み合わせた継代2の単層培養におけるPCRX-201に、3000のMOIで48時間、感染させた。IL-1β刺激を伴うおよび伴わない感染の48時間および120時間後に、馴化培地を収集し、ELISAを使用してIL-1Ra産生を決定した。単層培養における非感染ヒトNP細胞のIL-1βでの刺激は、48時間および120時間後にNP細胞によるIL-1Ra産生の有意な増加を誘導した(P<0.05)(
図5Aおよび5B)。単層培養でのPCRX-201による感染は、感染から48および120時間後に培養培地へのIL-1Raタンパク質分泌の大きな約100倍の増加を誘導し(P<0.05)(
図5Aおよび5B)、産生は、IL-1β刺激後にさらに増進された。本明細書に記載の研究の結果は、PCRX-201が、インビトロ(in vitro)での単層および3D条件で、変性したヒトNP細胞を感染させる能力およびその細胞におけるIL-1Raの産生を増加させる能力があることを実証した。
【0194】
[実施例4]
インビボ環境を模倣する条件での長期培養期間にわたってのPCRX-201の維持およびIL-1Raの放出プロファイルの決定
変性したヒトIVD(n=6、グレード分類:4、5、5、6、7および8)から得たNP細胞を単層で0、750および3000のMOIでPCRX-201に48時間感染させ、次いで、アルジネートビーズ培養に移して、インビボ表現型を模倣し、再分化および増殖率を誘導した。アルジネートビーズを低グルコース培地において5%O
2で維持して、最大21日間、インビボ環境+/-培養の最後の7日間、生理学的に適切な濃度のIL-1β(100pg/ml)での刺激を模倣した。IL-1Ra産生を、ELISAを使用して決定した。PCRX-201に感染させたNP細胞によるIL-1Raタンパク質分泌は、アルジネート培養での2、7、14および21日後に、アルジネート培養での長期IL-1Ra産生の維持に伴う経時的なMOIの用量依存的増加と、MOI 750での培養において21日後に誘導されるIL-1Ra産生の約2000倍増加およびMOI 3000後の約3000倍増加を示した(P<0.05)(
図6A~6D)。生理的濃度(100pg/ml)でのIL-1による刺激は、IL-1Ra放出の有意な増加を誘導しなかった(
図6A~6D)。
【0195】
[実施例5]
PCRX-201に感染させた変性したNP細胞からのIL-1Ra産生の長期維持
PCRX-201に感染させた変性したNP細胞からのIL-1Ra産生の維持を調査するために、上記の培養を最大10週間低グルコースDMEM培地において5%O
2で維持して生理条件を模倣した。培養培地へのIL-1Ra放出を、感染後1、2、3、4、6、8および10週間後に定量化した。PCRX-201に感染させた細胞からのIL-1 Ra産生は、培養で10週間後でも有意に増進された(P<0.05)(
図7)が、培養で8週間後、アルジネート培養物の完全性は、馴化培地におけるより低いIL-1Ra含有量と一致するアルジネート培養物からの細胞の喪失に伴って、減少された。これらの結果は、ヒトの変性した円板から単離されたNP細胞におけるPCRX-201の感染によって誘導されるIL-1Raタンパク質の産生が、低グルコースおよび5%O
2のネイティブ生理条件を模倣する3D培養環境で、少なくとも10週間、高レベルで維持されることを実証する。
【0196】
[実施例6]
円板変性の異化特徴および疼痛誘導因子の放出に対するヒトIVD細胞におけるPCRX-201によるIL-1Ra誘導の有効性
変性したヒトNP組織(n=6、グレード分類:4、5、5、6、7および8)から得たNP細胞を単層で0、750および3000のMOIで感染させ、アルジネートビーズ培養に移した。培養を、14日間、インビボ環境を模倣するために低グルコース培地において5%O2で維持した後、さらに1週間、+/-100pg/mlのIL-1βで刺激した。血管新生および中和因子:NGF、VEGF、サイトカイン:IL-1、IL-6、およびIL-8;ならびに基質分解酵素:MMP 3およびADAMTS 4の発現を阻害するPCRX-201の能力の決定は、馴化培地へのタンパク質の放出を調査することにより決定した。NGFの遺伝子発現も調査した。
【0197】
NGFタンパク質発現は、1つの患者試料の中で唯一低レベルで検出され、他の患者のものはELISAの検出可能限界未満であったため、PCRX-201およびNGF産生の潜在的な影響を調査するために遺伝子発現解析を利用した(-53-tilized)。NGF mRNA発現は、100pg/mlのIL-1β刺激によって有意に増加され、その一方で、PCRX-201による感染は、NGF mRNA発現の用量依存的減少を誘導した(
図8)。
【0198】
VEGF産生は、PCRX-201に感染させた細胞において培養で7、14および21日後に有意に減少し、その一方で、100pg/mlのIL-1βは、VEGFの増加を誘導しなかった(
図9A~9D)。
【0199】
IL-1βタンパク質放出は、培養で2、7、14および21日に、PCRX-201感染後、用量依存的に有意に減少した(P<0.05)(
図10A~10D)。IL-6およびIL-8タンパク質が、2日間の培養後、多くの患者試料の培養上清において、検出されなかった。IL-6は、培養で7、14および21日に、PCRX-201感染後、用量依存的に有意に減少し、IL-1βによる刺激は、全ての処置群においてIL-6産生を増加させた(P<0.05)(
図11A~11C)。対照的に、IL-8産生は、IL-1β刺激による影響も、PCRX-201による感染による影響も受けなかった(
図12A~12C)。
【0200】
PCRX-201にMOI 750および3000で感染させた、および再分化を可能にするためにアルジネート中で14日間培養した後に100pg/mlのIL-1βによってさらに1週間の刺激した、変性した円板から得たNP細胞において、基質分解酵素MMP 3およびADAMTS 4の産生を調査した。MMP 3およびADAMTS 4は、750および3000両方のMOIでのPCRX-201後に有意に下方制御され(P<0.05)、その一方で、IL-1β刺激は、非感染細胞においてのみ、MMP 3およびADAMTS 4産生の、有意でないが若干の増加を誘導した(
図12Aおよび12B)。
【0201】
これらの結果は、変性した円板から得たNP細胞のPCRX-201による感染が、PCRX-201に感染させた細胞における肝要な異化、血管新生および神経栄養因子の産生を減少させることを実証する。
【0202】
PCRX-201感染NP細胞から放出されたIL-1Raが、パラ分泌方式で作用することもできるかどうか、したがって、PCRX-201に直接感染させた細胞のものに勝る円板への作用のさらなる除去を潜在的に送達するかどうかを判定すること。馴化培地を、PCXR-201に感染させた患者適合ヒトNP細胞から収集し、それを利用して、72時間、低グルコース培地において5%O
2で非感染対照細胞を処置した。未処置非感染対照細胞、およびPCRX-201患者適合細胞からの馴化培地で刺激したものによる、IL-1Ra(
図13A)、IL-1β(
図13B)、IL-6(
図13C)、MMP 3(
図13D)およびADAMTS 4(
図13E)のタンパク質産生を、ELISAを使用して判定した。PCRX-201細胞からの馴化培地は、パラ分泌形式での非感染細胞におけるIL-6、MMP 3およびADAMT 4のタンパク質産生を有意に減少させ(P<0.05)、その一方で、IL-1βの若干の増加が観察され、非常に低レベルがIL-1Raの増加濃度と比較して見られた。
【0203】
これらの結果は、変性した円板から得たNP細胞のPCRX-201による感染が、パラ分泌様式で、PCRX-201に感染させた細胞および局所細胞における肝要な異化、血管新生および神経栄養因子の産生を減少させることを実証する。
【0204】
[実施例7]
外植片モデルを使用して直接注射後にヒトIVD組織においてIL-1Ra産生を誘導するPCRX-201の能力
PCRX-201を利用して、ex vivo遺伝子送達とは対照的にIL-1RaをIVD内に直接送達することができるかどうかを判定するために、PCRX-201を、NP組織完全性および表現型を維持する半制限培養系内で培養したヒトIVD組織外植片に、直接注射した(
図14)。5つの患者試料(組織学的グレード分類:4、5、6、7および8)をこの研究に利用した。組織外植片を、3つの処置群、注射していない対照、PCRX-201を注射したもの(外植片1つ当たり50μl)に分けた。3000のMOIを生じさせるために、4×106細胞/mm3の円板組織の細胞密度および98.2mm3の組織外植片エリア(コア直径5mm、高さ5mm)に基づいて感染率を計算した。全ての処置を最大2週間、低グルコース、5%O
2培養において三連で行った。細胞培養上清を回収して、培地へのIL-1Raの放出をELISAによって調査し、加えて、組織外植片をろうに加工し、免疫組織化学検査を利用して組織外植片におけるIL-1Raの発現を調査した。組織外植片からのIL-1Raタンパク質放出とIL-1Raについて免疫陽性のNP組織内の細胞の数との両方の有意な増加が、NP組織外植片へのPCRX-201の注射の2週間後に見られた(
図15A~15B)。
【0205】
さらに、これらの円板外植片を利用して、ネイティブNP組織へのPCRX-201の直接注射が、変性した円板において同化を促進し、異化過程を阻害することができるかどうかを調査した。細部培養上清を、ELISAを使用してVEGF、IL-1β、IL-6、MMP 3、ADAMT 4、II型コラーゲンおよびアグリカンについて解析し、パラフィン包埋組織外植片に免疫組織化学検査を行って、各外植片内のVEGF、NGF、IL-1β、MMP 3、ADAMT 4、II型コラーゲンおよびアグリカンについて免疫陽性である細胞のパーセンテージを決定した。変性した円板から得たヒトNP組織外植片に対するPCRX-201の注射は、VEGF(
図16A)およびMMP3(
図16D)の濃度を有意に低下させ、Il-1β(
図16B)およびIL-6(
図16C)の低下も観察されたが、これは、有意性に至らなかった。培養培地に放出されたADAMT 4タンパク質濃度は、注射の2週間後に変わりなかった(
図16E)。ごくわずかなII型コラーゲンが馴化培地において観察され(
図16F)、その一方で、アグリカンは、培地に放出され、それが、PCRX-201を注射したそれらの組織外植片では有意に減少され、これは、分解低減に起因する可能性があった(
図16G)。免疫組織化学解析は、これらの結果を確証し、VEGF(
図17A)、IL-1β(
図17C)およびMMP 3(
図17D)の免疫陽性細胞の数が有意に減少した。免疫陽性細胞パーセンテージの有意でないが若干の低下が、ADAMTS 4についても見られた(
図17E)。一方、NGF(
図17B)およびII型コラーゲン(
図17F)の免疫陽性細胞の数は、注射の2週間後に影響を受けていなかった。
【0206】
これらのデータは、PCRX-201が直接注射によってネイティブ組織内のIL-1Ra産生の増加を誘導することができることおよびこれがアグリカンの異化の低減および分解の減少を誘導することの証拠を提供する。
【0207】
結論:
まとめると、外科手術によって除去したヒトIVD組織から単離した細胞および組織を使用して行ったこれらのデータは、PCRX-201が、変性した円板から得たNP細胞による活性IL-1Raタンパク質産生を成功裏に増加させることができることを実証した。感染細胞によるIL-1Raタンパク質の発現を、グルコース、O2、細胞表現型および増殖能の点でIVD環境を模倣する3D培養系において、長期間(最大10週間調査した)維持することができた。誘導されたIL-1Raは、馴化培地での処理によって感染細胞においてパラ分泌方式で肝要な異化因子(分解酵素ならびに異化および炎症性サイトカイン)、血管新生および神経栄養因子(VEGFおよびNGF)の下方制御をもたらした。さらに、ex vivo培養系でのネイティブ円板組織へのPCRX-201の直接注射は、注射した円板において異化の一致した減少に伴ってIL-1Ra産生および発現の増加を誘導した。
【配列表】
【国際調査報告】