(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】細胞外小胞を単離するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240808BHJP
C12M 1/24 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20240808BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240808BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/24
C12N1/02
C12N5/078
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512209
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 US2022041168
(87)【国際公開番号】W WO2023028031
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520283037
【氏名又は名称】フォーエバー・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FOREVER LABS,INC.
【住所又は居所原語表記】206 S.Main St.,Suite 205,Ann Arbor,MI 48104 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マーク・カタコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】アン・ホゼスカ-ソルゴット
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029HA02
4B029HA10
4B065AA93X
4B065AC12
4B065BD15
4B065CA44
(57)【要約】
遠心デバイスは、第1の端部と、第1の端部とは反対側に配置された第2の端部と、を有する、本体を有する容器を含む。キャップは、容器の第2の端部に結合され、キャップは、空気若しくは流体のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成された少なくとも1つのポートを有する上面を含む。そのように構成されているため、容器は、容器内に配置された第1の流体が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を第1の流体から分離して沈殿させる直立位置と、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した第1の流体のうちの1つ以上が容器から除去され、除去された少なくとも1つの細胞外小胞と混合された第2の流体が注射のために容器から引き出される反転位置との間で移動可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心デバイスであって、
第1の端部と、前記第1の端部とは反対側に配置された第2の端部と、を有する、本体を有する容器と、
前記容器の前記第2の端部に結合されたキャップであって、空気若しくは流体のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成された少なくとも1つのポートを有する上面を含む、キャップと、を備え、
前記容器が、前記容器内に配置された第1の流体が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を前記第1の流体から分離して沈殿させる直立位置と、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した前記第1の流体のうちの1つ以上が前記容器から除去され、除去された前記少なくとも1つの細胞外小胞と混合された第2の流体が注射のために前記容器から引き出される反転位置との間で移動可能である、遠心デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポートが、空気を受容又は送達するように構成され、フィルタを有する第1のポートと、流体を受容又は送達するように構成された第2のポートと、を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2のポートのうちの1つ又は両方が、取り外し可能なキャップ、及びシリンジに結合されるように構成されたルアーロック接続のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポートが単一のポートを含み、前記デバイスが、前記単一のポートに固定して又は取り外し可能に結合されたもののうちの1つであるY字型コネクタを更に備え、前記Y字型コネクタが、空気を受容し、フィルタを含むように構成された第1のポートと、シリンジに結合されるように構成されたシリンジ継手を有する第2のポートと、を含み、そのため、前記容器が前記反転位置にあるときに、空気が前記第1のポートに流入し、細胞外小胞が枯渇した前記流体が前記第2のポートから流出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記容器が円筒形であり、前記第1の端部がテーパー部を含み、前記第2の端部が開口部を含み、前記容器がポリプロピレン又はポリスチレンのうちの1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポート内に配置され、前記容器の内部領域内に延在する少なくとも1つのチューブを更に備え、前記少なくとも1つのチューブが、前記容器への又は前記容器からの流体の添加又は除去を補助するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
(1)前記容器が、乏血小板血漿及び水性二相溶液を受容するように構成され、前記水性二相溶液が、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液を含む濃縮水性二相溶液である、(2)前記第1の流体が、乏血小板血漿である、並びに(3)前記第2の流体が、多血小板血漿である、のうちの1つ以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
流体から細胞外小胞を単離する方法であって、
水性二相溶液及び第1の流体を、直立位置にある遠心デバイスの容器に添加することと、
前記容器内の前記水性二相溶液及び前記第1の流体を遠心して、前記容器の第1の端部の近くに配置された細胞外小胞の分画を前記第1の流体から分離して形成することと、
前記遠心デバイスの前記容器を直立位置から反転位置に移動させ、前記容器から細胞外小胞が枯渇した前記第1の流体を、前記容器の少なくとも1つのポートを通して除去することと、
前記容器を前記直立位置に戻し、前記容器に第2の流体を添加することと、
前記第2の流体を、前記容器の前記第1の端部の近くに配置された前記細胞外小胞の分画と混合することと、
前記容器を前記反転位置に戻し、前記細胞外小胞の分画を含む前記第2の流体を、注射のために前記容器の前記少なくとも1つのポートを通して除去することと、を含む、方法。
【請求項9】
多血小板血漿を遠心し、前記多血小板血漿から乏血小板血漿の一部を無菌的に除去した後に、水性二相溶液及び前記第1の流体を前記遠心デバイスの容器に添加することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水性二相溶液及び第1の流体を遠心デバイスの容器に添加することが、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液及び乏血小板血漿を含む濃縮水性二相溶液を、前記遠心デバイスの前記容器の前記第2の端部に配置された少なくとも1つのポートを介して前記容器に添加することを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記水性二相溶液及び前記第1の流体を、前記遠心デバイスの前記容器の前記第2の端部に配置された少なくとも1つのポートを介して前記容器に添加することが、前記水性二相溶液及び乏血小板血漿を、前記容器の第1のポートを介して前記容器に添加することと、空気が前記容器の第2のポートを通して同時に退出することを可能にすることと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記容器内の前記水性二相溶液及び前記第1の流体を遠心して、前記容器の第1の端部の近くに配置された細胞外小胞の分画を前記第1の流体から分離して形成することが、前記細胞外小胞の分画を乏血小板血漿から除去することと、前記容器の前記第1の端部の近くに配置された前記細胞外小胞の分画を前記容器内の前記乏血小板血漿から分離して形成することと、を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記遠心デバイスの前記容器を直立位置から反転位置に移動させ、空気が前記容器の第2のポートに流入している間に、シリンジを介して、前記容器の第1のポートを通して前記容器から細胞外小胞が枯渇した前記第1の流体を除去する、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記容器を前記直立位置に戻し、前記容器に第2の流体を添加することが、前記第1の流体から除去された前記細胞外小胞の分画が前記容器の前記第1の端部に配置されている間に、前記容器の第2の端部に配置された第1のポートを通して多血小板血漿を添加することを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記容器を前記反転位置に戻し、前記細胞外小胞の分画を含む前記第2の流体を、注射のために前記容器の前記少なくとも1つのポートを通して除去することが、(1)注射のために、シリンジを介して、前記容器の第1のポートを通して前記細胞外小胞の分画を含む多血小板血漿を除去すること、又は(2)注射のために、シリンジを介して、前記遠心デバイスの前記容器の前記少なくとも1つのポートに結合されたY字型コネクタのポートを通して前記細胞外小胞の分画を含む多血小板血漿を除去すること、のうちの1つ以上を含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
遠心デバイスであって、
第1の端部と、前記第1の端部とは反対側に配置された第2の端部と、を有する、本体を有する容器と、
前記容器の前記第2の端部に結合されたキャップであって、空気若しくは流体のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成されたポートを有する上面を含む、キャップと、
前記キャップの前記ポートに結合され、空気を受容又は送達するための第1のポートと、流体を受容又は送達するための第2のポートと、を有する、Y字型コネクタと、を備え、
前記容器が、前記容器内に配置された第1の流体及び水性二相溶液が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を沈殿させる直立位置と、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した前記第1の流体のうちの1つ以上が前記第2のポートを通して前記容器から除去され、前記少なくとも1つの細胞外小胞と混合された第2の流体が注射のために前記第2のポートを通して前記容器から除去される反転位置との間で移動可能である、遠心デバイス。
【請求項17】
前記容器が円筒形であり、前記第1の端部がテーパー部を含み、前記第2の端部が開口部を含み、前記容器がポリプロピレン又はポリスチレンのうちの1つを含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
(1)前記第2のポートが、シリンジに結合されるように構成されたシリンジ継手を含む、及び(2)前記第1のポートが、前記容器が前記反転位置にあるときに空気を受容する、のうちの1つ以上である、請求項16又は17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記Y字型コネクタの前記第1及び第2のポートが各々キャップを含み、前記第1のポートがフィルタを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
(1)前記容器が、乏血小板血漿及び水性二相溶液を受容するように構成され、前記水性二相溶液が、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液を含む濃縮水性二相溶液である、(2)前記第1の流体が、乏血小板血漿である、並びに(3)前記第2の流体が、多血小板血漿である、のうちの1つ以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
流体から細胞外小胞を単離する方法であって、
移送デバイスから遠心デバイスの容器に第1の体積の血漿を移送し、前記移送デバイス内に第2の体積の血漿を維持することと、
前記遠心デバイスの前記容器に、水性二相溶液を添加することと、
前記容器内の前記水性二相溶液及び前記血漿を遠心して、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を形成することと、
前記遠心デバイスの前記容器を反転させ、前記容器から残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を除去することと、
前記容器を反転位置から直立位置に戻し、前記移送デバイスから前記遠心デバイスの前記容器に前記第2の体積の血漿を添加することと、
前記容器を振盪、反転、ボルテックス、及び/又は遠心することのうちの1つ以上により、前記容器内で前記細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を前記第2の体積の血漿と再懸濁することと、
前記容器を反転させ、注射デバイスに配置するために細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することであって、前記多血小板血漿及び細胞外小胞の体積が、前記移送デバイス内の前記第2の体積の血漿に等しい、除去することと、を含む、方法。
【請求項22】
前記遠心デバイスが第1の遠心デバイスであり、前記移送デバイスから前記第1の遠心デバイスの前記容器に前記第1の体積の血漿を移送する前に、前記方法が、第2の遠心デバイスの容器に全血を添加することと、前記全血を遠心することと、前記第2の遠心デバイスの前記容器から赤血球を除去することと、を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の遠心デバイスの前記容器から前記赤血球を除去した後に、前記第2の遠心デバイスの前記容器から前記移送デバイスに血漿を移送することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
水性二相溶液を前記遠心デバイスの前記容器に添加することが、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液を含む濃縮水性二相溶液を、前記容器の少なくとも1つのポートを介して前記容器に添加することを含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記水性二相溶液を、少なくとも1つのポートを介して前記容器に添加することが、前記水性二相溶液を、前記容器の第1のポートを介して前記容器に添加することと、空気が前記容器の第2のポートを通して同時に退出することを可能にすることと、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記容器内の前記水性二相溶液及び前記血漿を遠心して、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を形成することが、前記容器内の前記水性二相溶液及び前記血漿を遠心して、前記容器の第1の端部の近くに配置された前記細胞外小胞及び多血小板血漿の画分を、枯渇した乏血小板血漿及び前記残存する水性二相溶液から分離して形成することを含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記遠心デバイスの前記容器を反転し、残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を前記容器から除去することが、空気が前記容器の第2のポートに流入している間に、シリンジを介して、前記容器の第1のポートを通して前記容器から前記残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を除去することを含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記容器を反転位置から直立位置に戻すこと、及び前記移送デバイスから前記遠心デバイスの前記容器に前記第2の体積の血漿を添加することが、前記細胞外小胞及び多血小板血漿の分画が前記容器の第1の端部に配置されている間に、前記移送デバイスから及び前記容器の第2の端部に配置された第1のポートを通して前記第2の体積の血漿を添加することを含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記容器を反転させ、注射のために細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することが、(1)注射のために、シリンジを介して、前記容器の第1のポートを通して細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去すること、又は(2)注射のために、シリンジを介して、前記遠心デバイスの前記容器の前記少なくとも1つのポートに結合されたY字型コネクタのポートを通して細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去すること、のうちの1つ以上を含む、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
流体から細胞外小胞を単離する方法であって、
移送デバイスから遠心デバイスの容器に第1の体積の血漿を移送することと、
前記容器に、水性二相溶液を添加することと、
前記容器内の前記水性二相溶液及び前記血漿を遠心して、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を形成することと、
前記遠心デバイスの前記容器を反転させ、前記容器から残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を除去することと、
前記容器を直立位置に移動させ、前記移送デバイスから前記容器に第2の体積の血漿を添加することと、
前記容器内で前記細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を前記第2の体積の血漿と再懸濁することと、
前記容器を反転させ、注射デバイスに配置するために、細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月24日に出願された米国仮特許出願第63/236,643号の利益及び優先権を主張するPCT特許出願であり、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、細胞単離方法及びデバイス、特に、細胞外小胞を迅速に単離するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞外小胞(エキソソームなど)は、分子の積み荷を他の細胞に効率よく移送する細胞によって放出される。細胞外小胞の治療効果は、その積み荷(miRNA、他の非コードRNA、及びタンパク質など)及び表面分子から生じる。加えて、細胞外小胞は、組織化、細胞調節、並びに結合組織及び骨の物理的特性の決定に関与する細胞外マトリックスの機能要素になり得る。
【0004】
多血小板血漿(PRP)及び骨髄濃縮物(BMC)の注射は臨床応用で使用されており、治癒を促進し、組織の再成長を刺激し、血管形成し、炎症を改善し、無傷の内因性組織を再生する。細胞外小胞は、血液及び骨髄を含む全ての生体液に見られ、それらが産生される細胞の多くの効果をもたらすことが実証されている。例えば、臍帯又は骨髄MSCからの細胞外小胞は、ヒトの皮膚の再生を刺激する、又は移植された脂肪移植片の生着を改善することが実証されている。骨間葉系幹細胞からの細胞外小胞が同様の軟骨保護及び抗炎症機能を発揮し、変形性関節症の発症からマウスを保護することが実証されており、細胞外小胞がMSCの主な治療効果を再現していることが示唆されている。実際、最近の科学的及び臨床的証拠は、MSCは主に細胞内でその治療機能を発揮するのではなく、パラクリン的に発揮する可能性があることが示唆されており、細胞外小胞(エキソソーム及び微小胞など)は、これらのパラクリン効果の主要なメディエータとして特定されている。生体液などの流体から単離された細胞外小胞は、それらの内容物が、傷害、感染、がん、免疫機能障害、又は他の病理を反映し得るため、診断目的でも用いられている。
【0005】
密度が低く、サイズが小さいため、細胞外小胞は一般的に、ろ過、超遠心、免疫親和性、マイクロフルイディクス、又は高分子沈殿によって単離される。血液又は骨髄を(赤血球(RBC)、乏血小板血漿(PPP)、及び骨髄濃縮物(BMC)又はPRPなどの分画に)区分するために用いられている現在のデバイスは、低速遠心法を使用しており、細胞外小胞は効果的に単離されないか、又は1つの区分に濃縮されない。したがって、全血又は骨髄を濃縮するデバイスは、治療効果のかなりの部分を生じさせる可能性のある細胞外小胞などの生物学的薬剤を濃縮していない。
【0006】
更に、多血小板血漿(PRP)は、組織を修復する少なくともその理論上の可能性のために、様々な筋骨格系障害、創傷治癒、化粧品、及び再生医療に対してもますます受け入れられている、治療目的のための調製物である。PRP療法は、患者自身の血小板の注射を使用する。記載されるように、血小板を、末梢採血から遠心することによって濃縮し、3つの分画:RBC、PPP、及びPRPをもたらす。
【0007】
標準的なPRP手順では、PRP分画を注射し、PPPとともに捨てられる細胞外小胞などの生体分子を残す。細胞外小胞は、材料の輸送及び細胞間通信などの一連の細胞機能を媒介する。したがって、PRPにおける細胞外小胞の濃度を増加させることにより、PRPの治療効果を改善することができる。
【発明の概要】
【0008】
本開示の1つの例示的な態様によれば、遠心デバイスは、第1の端部と、第1の端部とは反対側に配置された第2の端部と、を有する、本体を有する容器を備える。キャップは、容器の第2の端部に結合され、キャップは、空気若しくは流体のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成された少なくとも1つのポートを有する上面を含む。そのように構成されているため、容器は、容器内に配置された第1の流体が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を第1の流体から分離して沈殿させる直立位置と、反転位置との間で移動可能である。反転位置は、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した第1の流体のうちの1つ以上が容器から除去され、除去された少なくとも1つの細胞外小胞と混合された第2の流体が注射のために容器から引き出される位置である。
【0009】
本開示の別の態様によれば、流体から細胞外小胞を単離する方法は、水性二相溶液及び第1の流体を遠心デバイスの容器に添加することを含み、容器は直立位置にある。方法はまた、容器内の水性二相溶液及び第1の流体を遠心して、容器の第1の端部の近くに配置された細胞外小胞の分画を第1の流体から分離して形成することを含む。方法はなお更に、遠心デバイスの容器を直立位置から反転位置に移動させ、容器から細胞外小胞が枯渇した前記第1の流体を、容器の少なくとも1つのポートを通して除去することを含む。方法はなおまた、容器を直立位置に戻し、容器に第2の流体を添加することを含む。方法はなお更に、第2の流体を、容器の第1の端部の近くに配置された細胞外小胞の分画と混合することを含む。方法はまた、容器を反転位置に戻し、細胞外小胞の分画を含む第2の流体を、注射のために容器の少なくとも1つのポートを通して除去することを含む。
【0010】
本開示の別の態様によれば、別の遠心デバイスは、第1の端部と、第1の端部とは反対側に配置された第2の端部と、を有する、本体を有する容器を備える。キャップは、容器の第2の端部に結合され、キャップは、空気若しくは流体のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成されたポートを有する上面を含む。加えて、Y字型コネクタは、キャップのポートに結合され、空気を受容又は送達するための第1のポートと、流体を受容又は送達するための第2のポートと、を有する。そのように構成されているため、容器は、容器内に配置された第1の流体及び水性二相溶液が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を沈殿させる直立位置と、反転位置との間で移動可能である。反転位置は、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した第1の流体のうちの1つ以上が第2のポートを通して容器から除去され、少なくとも1つの細胞外小胞と混合された第2の流体が注射のために第2のポートを通して容器から除去される位置である。
【0011】
本開示の別の態様によれば、流体から細胞外小胞を単離する方法は、移送デバイスから遠心デバイスの容器に第1の体積の血漿を移送し、移送デバイス内に第2の体積の血漿を維持し、水性二相溶液を遠心デバイスの容器に添加することを含む。方法はまた、容器内の水性二相溶液及び血漿を遠心して、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を形成することと、遠心デバイスの容器を反転させ、容器から残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を除去することと、を含む。方法はなお更に、容器を反転位置から直立位置に戻し、移送デバイスから遠心デバイスの容器に第2の体積の血漿を添加することを含む。方法はまた、容器を振盪、反転、ボルテックス、及び/又は遠心することのうちの1つ以上により、容器内で細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を第2の体積の血漿と再懸濁することと、最後に、容器を反転させ、注射デバイスに配置するために細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することであって、多血小板血漿及び細胞外小胞の体積が移送デバイス内の第2の体積の血漿に等しい、除去することと、を含む。
【0012】
更に例示的な態様のうちのいずれか1つ以上によれば、細胞外小胞を単離するためのデバイス又は本開示のいずれかの方法は、以下の好ましい形態のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0013】
いくつかの態様では、少なくとも1つのポートは、空気を受容又は送達するように構成され、フィルタを有する第1のポートを含んでもよく、第2のポートは流体を受容又は送達するように構成されてもよい。
【0014】
別の態様では、第1及び第2のポートのうちの1つ又は両方は、取り外し可能なキャップ、及びシリンジに結合されるように構成されたルアーロック接続のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0015】
更に別の態様では、少なくとも1つのポートは単一のポートを含むことができ、デバイスは、単一のポートに固定して又は取り外し可能に結合されたもののうちの1つであるY字型コネクタを更に備えることができる。Y字型コネクタは、空気を受容し、フィルタを含むように構成された第1のポートと、シリンジに結合されるように構成されたシリンジ継手を有する第2のポートと、を含み得、そのため、容器が反転位置にあるときに、空気が第1のポートに流入し、細胞外小胞が枯渇した流体が第2のポートから流出する。
【0016】
別の態様では、容器はチューブなどの円筒形であってもよく、第1の端部はテーパー部を含んでもよく、第2の端部は開口部を含んでもよい。
【0017】
他の態様では、デバイスは、少なくとも1つのポート内に配置され、容器の内部領域内に延在する少なくとも1つのチューブを含んでもよく、少なくとも1つのチューブは、容器への又は容器からの流体の添加又は除去を補助するように構成されていてもよい。
【0018】
なお他の例では、(1)容器は、乏血小板血漿及び水性二相溶液を受容するように構成されていてもよく、水性二相溶液は、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液を含む濃縮水性二相溶液であってもよい、(2)第1の流体は、乏血小板血漿であってもよい、並びに(3)第2の流体は、多血小板血漿であってもよい、のうちの1つ以上である。
【0019】
なお他の例では、第1の流体は、生体液又は他の可能な再構成流体のうちの1つであり得る。加えて、第2の流体は、生体液、生理食塩水などの無菌溶液、又は他の可能な再構成流体のうちの1つであり得る。
【0020】
なお他の態様では、遠心デバイスは第1の遠心デバイスであり得、移送デバイスから第1の遠心デバイスの容器に第1の体積の血漿を移送する前に、方法は、第2の遠心デバイスの容器に全血を添加することと、全血を遠心することと、第2の遠心デバイスの容器から赤血球を除去することと、を更に含み得る。
【0021】
別の例では、方法は、第2の遠心デバイスの容器から赤血球を除去した後に、第2の遠心デバイスの容器から移送デバイスに血漿を移送することを更に含み得る。
【0022】
更なる任意の態様及び特徴が開示されており、それらは、開示の教示と一致して、単独で、又はいずれかの機能的に実行可能な組み合わせで、いずれかの機能的に適切な様式で配置されてもよい。他の態様及び利点は、以下の詳細な説明を検討することにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示は、添付の図面と併せて以下の説明から、より完全に理解されると考えられる。図面の中には、他の要素をより明確に示すために、選択された要素を省略して簡略化したものもある。いくつかの図面におけるこのような要素の省略は、対応する書面による説明で明示的に述べられている場合を除き、例示的な実施形態のうちのいずれにおいても必ずしも特定の要素の存否を示すものではない。また図面は、必ずしも一定の縮尺ではない。
【0024】
【
図1】本開示の一態様による遠心デバイスの正面斜視図である。
【
図2】チューブが結合された
図1のデバイスである。
【
図3A】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図3B】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図3C】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図3D】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図3E】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図3F】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図3G】本開示の別の態様による、細胞外小胞の単離方法のステップを示す。
【
図4】本開示の別の態様による別の遠心デバイスの正面斜視図である。
【
図6A】本開示のまた別の態様による、細胞外小胞の別の単離方法のステップを示す。
【
図6B】本開示のまた別の態様による、細胞外小胞の別の単離方法のステップを示す。
【
図6C】本開示のまた別の態様による、細胞外小胞の別の単離方法のステップを示す。
【
図6D】本開示のまた別の態様による、細胞外小胞の別の単離方法のステップを示す。
【
図6E】本開示のまた別の態様による、細胞外小胞の別の単離方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一般に、多血小板血漿の調製に使用することができる、血漿からの細胞外小胞の分画を迅速に単離するための遠心デバイス、システム、及び方法が開示される。
【0026】
ここで
図1を参照すると、本開示の一態様による遠心デバイス10が示されている。遠心デバイス10は、チューブの形態をとってもよく、かつ/又は円筒形であってもよい容器12を含む。容器12は、第1の端部16と、第1の端部16とは反対側に配置された第2の端部18と、を有する本体14を含む。キャップ20は、容器12の第2の端部18に取り外し可能に結合され、以下で更に説明されるように、生体液などの流体、生体液以外の流体、若しくは空気のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成された少なくとも1つのポート24を有する上面22を含む。キャップ20は、以下で更に説明されるように、円形、部分的に円形であり得るか、又は流体が引き出されるのを補助する任意の他の幾何学若しくは形状を有してもよく、なお本開示の範囲内に入る。
【0027】
そのように構成されているため、また例えば
図3A~3Gに対して以下で更に説明される、容器12は、
図1に示されるような直立位置と、
図3Dに示されるような反転位置との間で移動可能である。直立位置は、容器12内に配置された乏血小板血漿を含む生体液などの流体が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を容器12内に配置された流体から分離して沈殿させる位置である。反転位置は、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した流体のうちの1つ以上が容器12から除去され、乏血小板血漿から除去された少なくとも1つの細胞外小胞と混合された多血小板血漿が、注射のためにキャップ20の少なくとも1つのポート24を通して容器12から引き出される位置である。
【0028】
更に
図1を参照すると、一例では、キャップ20の少なくとも1つのポート24は、空気を受容又は送達するように構成された第1のポート26を含み、フィルタ27を有する。少なくとも1つのポート24は、以下で更に説明されるように、生体液などの流体を受容又は送達するように構成された第2のポート28を更に含む。加えて、第1及び第2のポート26、28の各々は、取り外し可能なキャップ30を含んでもよく、流体を受容又は送達するように構成された第2のポート28は、シリンジに結合されるように構成されたルアーロック接続32を含んでもよい。
【0029】
図1に更に示されるように、容器12の第1の端部16はテーパー部34を含んでもよく、第2の端部18は、キャップ20が第2の端部18から取り外されるときなど、開放端であってもよい。
【0030】
ここで
図2を参照すると、遠心デバイス10は、第2のポート28内に配置され、容器12の内部領域38に延在する少なくとも1つのチューブ36を更に含んでもよい。少なくとも1つのチューブ36は、容器12への又は容器12からの生体液などの流体の添加又は除去を補助するように構成される。
【0031】
ここで
図3A~3Gを参照すると、例えば、1つ以上の
図1及び2の遠心デバイス10を使用して、細胞外小胞を流体から単離する方法のステップが示されている。最初に
図3Aを参照すると、方法は、まず、シリンジ40を介してなど、容器12の本体12の第2の端部18に配置された第1のポート26を通して、水性二相溶液を遠心デバイス10の容器12に添加することを含む。容器12は、
図3A及び
図3Bに直立位置で示されている。この例では、水性2相溶液は、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液を含む濃縮水性二相溶液である。水性二相溶液は、生物学的材料の精製に必要である。加えて、水性二相溶液は、Forever Labs,Inc.のSuperShot(商標)溶液と称され得る。水性二相溶液は、他の水性ポリマーを含んでもよく、なお本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。加えて、及びいくつかの例では、容器12は、ポリプロピレン及び/又はポリスチレンのうちの1つから作製されてもよく、疎水性層でコーティングされてもよい。使用中、ポリスチレン製の容器12は、残留水性二相溶液が最も低いことが判明した。PEG-DEXなどの残留水性二相溶液を最小限に抑えることは、注射のために細胞外小胞を含む多血小板血漿を調製する際に望ましいため、ポリスチレン製の容器12、例えば、遠心チューブを有することが最適であり得る。
【0032】
加えて、及び
図3Bを参照すると、方法は、例えば、同様に容器12の第2の端部18に配置された第1のポート26を通して、及びシリンジ40により、乏血小板血漿などの流体を遠心デバイス10の容器12に添加することを更に含む。一例では、容器12に添加される乏血小板血漿は、多血小板血漿を最初に遠心した後に作製される。具体的には、多血小板血漿の遠心後、乏血小板血漿の一部を無菌的に除去し、次いで、遠心デバイス10の容器12内の水性二相溶液と組み合わせる。多血小板血漿は、本開示の遠心デバイス10又は当業者に一般的に知られている任意の他の遠心デバイス又はシステム11(例えば、
図3Bを参照)を使用して遠心され得る。
【0033】
加えて、別の例では、水性二相溶液及び上記の乏血小板血漿などの流体が、第1のポート26を介して容器12に添加されている間に、空気が容器12の本体14の第2の端部18に配置されたキャップ20の第2のポート28から同時に退出することができる。PEG-DEX溶液などの水性二相溶液を血漿に添加すると、遠心下での細胞外小胞を含む少量の低密度分子の沈殿が可能になる。
【0034】
乏血小板血漿が、その中に配置された二相水溶液ASを有する容器12に添加された後、方法は、例えば、
図3Bの遠心デバイス10及び遠心システム11を使用して、水性二相溶液及び乏血小板血漿を容器12内で混合し遠心することを更に含む。そうすることで、細胞外小胞(FEV)を含む低密度生体分子の分画が形成され、
図3Cに示されるように、容器12の第1の端部16の近く又は第1の端部16の1つ以上で濃縮される。細胞外小胞の分画は、
図3Cにも示されるように、乏血小板血漿(PPP)から分離され、かつ/又は乏血小板血漿から枯渇若しくは除去される。加えて、別の例では、容器12内の水性二相溶液及び乏血小板血漿を遠心して、容器12の第1の端部18の近くに配置された細胞外小胞の分画を乏血小板血漿から分離して形成することは、
図3Cにも示されるように、細胞外小胞の分画を乏血小板血漿から除去することと、容器12の第1の端部18の近くに配置された細胞外小胞の分画を容器12内の乏血小板血漿から分離して形成することと、を含み得る。
【0035】
ここで
図3Dを参照すると、方法は、例えば、遠心デバイス10の容器12を
図3Aに示される直立位置から、
図3Dに示される反転位置に移動させることを更に含む。反転位置になると、方法は、細胞外小胞の分画が枯渇した乏血小板血漿及び水性二相溶液を、
図3Dに示される第1のポート26などのキャップ20の少なくとも1つのポート24を通して、容器12から除去することを更に含む。この例では、細胞外小胞の分画が枯渇した乏血小板血漿がシリンジ40を介して容器12から除去され、第2のポート28は、容器12に流入する空気を受容する。しかしながら、細胞外小胞の分画が枯渇した乏血小板血漿は、
図2のチューブ36などのシリンジ40とは異なる別のデバイスを使用して、第1のポート26を通して容器12から除去されてもよく、なお本開示の範囲内に入る。
【0036】
ここで
図3Eを参照すると、方法は、
図3Eに示されるように、容器12を直立位置に戻すことと、細胞外小胞の分画を有する容器12に多血小板血漿(PRP)を添加することと、を更に含む。方法は、多血小板血漿を、容器12の第1の端部16の近くに配置された細胞外小胞の分画と混合し、細胞外小胞を多血小板血漿に再懸濁することを更に含む。一例では、遠心デバイス10の容器12を直立位置に戻し、多血小板血漿を容器12に添加することは、乏血小板血漿から除去された細胞外小胞の分画が容器12の第1の端部16の近くに配置されている間に、容器12の第2の端部18に配置されたキャップ20の第1のポート26を通して多血小板血漿を添加することを含む。
【0037】
ここで
図3Fを参照すると、方法はなお更に、遠心デバイス10の容器12を反転位置に戻し、注射のために、シリンジ40を介して、キャップ20の第1のポート26などの少なくとも1つのポート24を通して、その中に混合された細胞外小胞(EVF)の分画を含む多血小板血漿(PRP)を除去することを含む。一例では、その中に混合又は配置された細胞外小胞(EVF)の分画のうちの1つ以上を含む多血小板血漿は、SuperShot(商標)PRPと称される。
【0038】
ここで
図3Gを参照すると、シリンジ40は、上述のように、その中に配置された乏血小板血漿及び水性二相溶液混合物から遠心された細胞外小胞(EVF)の分画を含む多血小板血漿を有し、注射の準備ができているように示されている。シリンジ40が示されているが、別の注射若しくは薬物投与デバイス又はシステムを代替的にかつ/又は追加的に使用してもよく、なお本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。
【0039】
ここで
図4及び
図5を参照すると、本開示の別の態様による別の遠心デバイス110が示されている。遠心デバイス110は、
図1~3Gの遠心デバイス10と同じ特徴の多くを含むが、遠心デバイス10の第1のポート26及び第2のポート28を有するキャップ20の代わりに、遠心デバイス110は、以下で更に説明されるように、それに結合されたY字型コネクタを有する単一のポートのみを有するキャップを含む。遠心デバイス10の部品と同じ遠心デバイス110の部品は、100以上の番号が付けられ、簡潔にするためにここで再び説明されない。少なくとも以下の説明を考慮して理解されるように、遠心デバイス110はまた、上述され、
図3A~
図3Gに示される方法により動作し得る。別の言い方をすれば、本開示の遠心デバイス10、110の各々は、上述の細胞外小胞を単離する方法を用いるために使用され得る。遠心デバイス110は、例えば、
図3A~
図3Gに示される遠心デバイス10の代わりになり、遠心デバイス10と同様に効果的に方法を用いることができることが理解されるであろう。
【0040】
ここで
図4を参照すると、遠心デバイス110は、チューブの形態をとってもよく、かつ/又は円筒形であってもよい容器112を含む。容器112は、第1の端部116と、第1の端部116とは反対側に配置された第2の端部118と、を有する本体114を含む。キャップ120は、容器112の第2の端部18に取り外し可能に結合され、以下で更に説明されるように、生体液などの流体若しくは空気のうちの1つ以上を受容又は送達するように構成されたポート124を有する上面122を含む。
【0041】
加えて、Y字型コネクタ125は、キャップ120のポート124に取り外し可能に結合され、空気を受容又は送達するための、及びフィルタ129A(
図5A)を有する第1のポートなどの第1の部分129と、生体液などの流体を受容又は送達するための第2のポートなどの第2の部分131と、を有する。
【0042】
そのように構成されているため、また
図3A~3Gに示される遠心デバイス10及び方法と同様に、例えば、容器112は、
図4に示されるような直立位置と、
図5に示されるような反転位置との間で移動可能である。直立位置は、容器112内に配置された乏血小板血漿を含む生体液などの流体が遠心されて、少なくとも1つの細胞外小胞を容器112内に配置された流体から分離して沈殿させる位置である。反転位置は、少なくとも1つの細胞外小胞が枯渇した流体が、Y字型コネクタ125の第2のポート131を通して容器112から除去される位置である。反転位置は、代替的にかつ/又は追加的に、乏血小板血漿から除去された少なくとも1つの細胞外小胞と混合された多血小板血漿が、キャップ120のポート124及び注射のためにY字型コネクタ125の第2のポート131を通して容器112から引き出される位置である。更に、第1のポートなどの第1の部分129は、
図5に示されるように、容器112が反転位置にあるときに空気を受容してもよい。
【0043】
加えて、第1及び第2のポート129、131の各々は、取り外し可能なキャップ133(
図4)を含んでもよく、流体を受容又は送達するように構成された第2のポート131は、シリンジに結合されるように構成されたルアーロック接続などのシリンジ継手135(
図4)を含んでもよい。
【0044】
図4及び5に更に示されるように、容器112の第1の端部116はテーパー部分134を含んでもよく、第2の端部118は、キャップ120が第2の端部118から取り外されるときなど、開放端であってもよい。容器112の第1の端部116は、
図4及び5のテーパー部134を有するように示されているが、第1の端部116は、代替的に、平坦な部分などのテーパー部とは異なる形状を含み得、なお本開示の範囲内に入る。
【0045】
ここで
図6A~6Eを参照すると、例えば、
図1及び2のうちの1つ以上の遠心デバイス10を使用して、細胞外小胞を流体から単離する別の方法が示されている。最初に
図6Aを参照すると、方法は、シリンジ40などの移送デバイスから遠心デバイス10の容器12に第1の体積の血漿を移送することを含み、移送デバイス40に第2の体積の血漿を残す。この例では、及び
図6Aに示されるように、遠心デバイス10の容器12は、直立位置にある。方法は、移送デバイス40内の第2の体積の血漿を維持することを更に含み、これは、以下で更に説明されるように、後に注射に使用される。
【0046】
より一般的には、及び一例では、移送デバイス40内に維持される第2の体積の血漿は、最終注射の所望の体積に等しい。したがって、医師などの使用者が、5mLの多血小板血漿を注射することを望み、20mLの血漿を有する場合、医師は、15mLの血漿を遠心デバイス10の容器12に添加し、5mLの血漿を移送シリンジ40などの移送デバイス40に保持する。したがって、この例では、移送デバイス40から容器12に移送される第1の体積の血漿は15mLの血漿であり、移送デバイス40内に維持される第2の体積の血漿は5mLである。第1及び第2の体積の血漿の様々な他の組み合わせが代替的に所望されてもよく、したがって、使用者及び/又は医師によって選択されてもよく、例えば、注射体積の柔軟性及び容易さを可能にし、なお本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。加えて、移送デバイス40とは異なる様々な他の種類の移送デバイス、例えば、シリンジ40を代替的にかつ/又は追加的に使用することができ、同様に、なお本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。
【0047】
加えて、一例では、第1の体積の血漿を移送デバイス40から遠心デバイス10の容器12に移送する前に、方法はまた、第2の遠心デバイス(図示せず)などの別の遠心デバイスの容器に全血を添加することを含み得る。この例では、
図6Aの遠心デバイス10は、第1の遠心デバイス10である。次いで、方法はまた、全血を遠心することと、第2の遠心デバイスの容器から赤血球を除去することと、を含む。次いで、第2の遠心デバイスの容器からの血漿は、赤血球を除去した後に、シリンジ40などの移送デバイス40に移送される。
【0048】
なお
図6Aを参照すると、方法は、次に、容器12の少なくとも1つのポート26を介するなどして、水性二相溶液を遠心デバイス10の容器12に添加することを含む。このようにして、水性二相溶液は、移送デバイス40から移送された血漿と組み合わされる。いくつかの例では、水性二相溶液が容器12に添加されている間に、空気が第2のポート28を通るなどして容器14から同時に退出することができる。この例では、水性二相溶液は、同様に、濃縮ポリエチレングリコール-デキストラン(PEG-DEX)溶液を含む濃縮水性二相溶液である。上記のように、水性二相溶液は、生物学的材料の精製に必要であり、Forever Labs,Inc.のSuperShot(商標)溶液と称され得る。水性二相溶液は、他の水性ポリマーを含んでもよく、なお本開示の範囲内に入ることが理解されるであろう。
【0049】
方法は、容器12内の水性二相溶液及び血漿を遠心して、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を形成することを更に含む。一例では、及び
図6Bに示されるように、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画は、乏血小板血漿及び残存する水性二相溶液から分離して遠心デバイス10の容器12の第1の端部16の近くに配置される。
【0050】
ここで
図6Bを参照すると、方法は、遠心デバイス10の容器12を反転させ、容器12から残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を除去することを更に含む。一例では、遠心デバイス10の容器12を反転し、残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を容器12から除去することは、空気が容器12の第2のポート28に流入している間に、シリンジ40などの移送デバイス40を介して、第1のポート26を通して容器12から残存する水性二相溶液及び枯渇した乏血小板血漿を除去することを含む。
【0051】
ここで
図6Cを参照すると、方法はなお更に、容器12を反転位置(
図6B)から直立位置に戻し、シリンジ40などの移送デバイス40内に維持された第2の体積の血漿を遠心デバイス10の容器12に添加することを含む。一例では、容器12を反転位置から直立位置に戻すこと、及び移送デバイス40に維持された第2の体積の血漿を遠心デバイス10の容器12に添加することは、
図6Cに示されるように、細胞外小胞及び多血小板血漿の分画が容器12の第1の端部16に又はその近くに配置されている間に、容器12の第2の端部18に配置された第1のポート26を通して、移送デバイス40から第2の体積の血漿を添加することを含む。方法はなお更に、例えば、容器12を振盪、反転、ボルテックス、及び/又は遠心することのうちの1つ以上により、容器12内で細胞外小胞及び多血小板血漿の分画を第2の体積の血漿と再懸濁することを含む。
【0052】
ここで
図6Dを参照すると、方法はまた、容器12を反転させ、注射シリンジ42(
図6Eも参照)などの注射デバイス42に配置するために、細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することを含む。多血小板血漿及び細胞外小胞の体積は、移送デバイス40内の第2の体積の血漿に等しい。一例では、容器12を反転させ、注射デバイス42に配置するために細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することは、注射シリンジ42を介して容器12の第1のポート26を通して細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することを含む。別の例では、容器12を反転させ、注射デバイス42に配置するために細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することは、注射シリンジ42を介して遠心デバイス10の容器12の第1のポート26に結合されたY字型コネクタ125(例えば、
図4及び5を参照)のポートを通して細胞外小胞を含む多血小板血漿を除去することを含む。
【0053】
少なくとも前述を考慮して、本開示の遠心デバイス10、110及び細胞外小胞を単離する方法は、いくつかの利点を含むことが理解されるであろう。例えば、方法及びデバイス10、110は、例えば、多血小板血漿注射後の残存する細胞外小胞の量を低減する。加えて、本開示の方法及びデバイス10、110はまた、多血小板血漿内の細胞外小胞の全体的な濃度を増加させ、多血小板血漿の全体的な治療効果を改善する。
【0054】
以下の追加の検討事項が、上記の考察に適用される。本明細書を通して、複数の事例は、単一の事例として記載された構成要素、動作、又は構造を実装し得る。1つ以上の方法の個々の動作が別個の動作として例示及び記載されるが、個々の動作のうちの1つ以上が同時に実行されてもよく、例示された順序で動作が実行される必要はない。例示的な構成内で別個の構成要素として提示された構造及び機能は、組み合わされた構造又は構成要素として実装されてもよい。同様に、単一の構成要素として提示された構造及び機能は、別個の構成要素として実装されてもよい。これらの及び他の変形、変更、追加、及び改善は、本明細書の主題の範囲内に含まれる。
【0055】
いくつかの実装は、派生語とともに「結合された」という表現を使用して記載されてもよい。例えば、いくつかの実装は、2つ以上の要素が物理的又は電気的に直接接触していることを示すのに、「結合された」という用語を用いて記載されてもよい。しかしながら、「結合された」という語はまた、2つ以上の要素が互いに直接には接触してはいないが、それでも互いに協働又は相互作用していることも意味し得る。上記実装は、この文脈において限定されるものではない。
【0056】
本明細書に使用される際、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む)including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていないか、又はこのようなプロセス、方法、物品若しくは装置に固有の他の要素を含むことができる。更に、正反対に明示的に述べられない限り、「又は」は、排他的な又はではなく、包括的な又はを指す。例えば、条件A又はBは、Aが真(又は存在)かつBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)かつBが真(又は存在する)、並びにA及びBの双方が真である(又は存在する)のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0057】
加えて、「a」又は「an」の使用は、本明細書の実装の要素及び構成要素を説明するために用いられる。これは単に便宜上、かつ本発明の一般的な観念を与えるために行われているにすぎない。この記述は、1つ又は少なくとも1つを含むと読み取るべきであり、別の意味であることが明らかでない限り、単数形は複数形も含む。
【0058】
更に、特定の実装及び応用が図示され、説明されているが、開示された実装は、本明細書に開示された正確な構造及び構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者には明らかとなる、様々な修正、変更、及び変形が、添付の特許請求の範囲で定義される趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される方法及び装置の構成、動作、及び詳細において行われ得る。
【国際調査報告】