(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】エルタペネムナトリウムの新規な結晶形及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 477/20 20060101AFI20240808BHJP
C07D 477/02 20060101ALI20240808BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240808BHJP
A61P 31/04 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
C07D477/20
C07D477/02
A61K31/407
A61P31/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512963
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-23
(86)【国際出願番号】 CN2021134856
(87)【国際公開番号】W WO2023024310
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110965003.9
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516336828
【氏名又は名称】凱菜英医藥集團(天津)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】522173457
【氏名又は名称】吉林凱莱英制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】JILIN ASYMCHEM PHARMACEUTICALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.599,Asymchem Road,High-tech Industrial Zone,Dunhua,Jilin 133700(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】マーク,マクローズ
(72)【発明者】
【氏名】章 文春
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 朝勇
(72)【発明者】
【氏名】井 丁丁
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 保杰
(72)【発明者】
【氏名】蒋 勇
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA03
4C086AA04
4C086CC08
4C086GA13
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA20
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形及びその製造方法を提供する。当該エルタペネムナトリウムの新規な結晶形の粉末X線回折パターンには、27個の主な特徴的なピークがある。本発明の上記のエルタペネムナトリウムの結晶形は、棒状の晶癖であり、粒径が大きく、凝集しにくいため、乾燥処理はより行いやすく、簡単な乾燥処理でも結晶化度及び純度が高い製品を得ることができる。また、本発明の上記の新規な結晶形は、安定性がより良く、後の洗浄及び乾燥工程で結晶形は最大限に変わらないよう保持され、これにより製品の純度を一層向上させる。また、本発明のエルタペネムナトリウムの新規な結晶形の大きい粒径及び良い安定性によれば、工場でのその大規模な生産はより行いやすく、これにより、高純度、高収量のエルタペネムナトリウム製品を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに示される構造を有し、且つCukα線の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが4.3±0.2°、5.1±0.2°、7.1±0.2°、8.2±0.2°、10.8±0.2°、12.0±0.2°、12.7±0.2°、13.9±0.2°、14.7±0.2°、15.5±0.2°、16.3±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、18.8±0.2°、19.1±0.2°、20.0±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、24.5±0.2°、24.9±0.2°、26.5±0.2°、28.0±0.2°、29.3±0.2°、31.7±0.2°、32.6±0.2°、34.7±0.2°及び36.2±0.2°に特徴的なピークを有することを特徴とするエルタペネムナトリウムの新規な結晶形。
【化1】
【請求項2】
前記エルタペネムナトリウムの新規な結晶形は、Cukα線の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが4.3°、5.1°、7.1°、8.2°、10.8°、12.0°、12.7°、13.9°、14.7°、15.5°、16.3°、17.5°、18.4°、18.8°、19.1°、20.0°、21.3°、22.1°、24.5°、24.9°、26.5°、28.0°、29.3°、31.7°、32.6°、34.7°及び36.2°に特徴的なピークを有することを特徴とする請求項1に記載のエルタペネムナトリウムの新規な結晶形。
【請求項3】
前記エルタペネムナトリウムの新規な結晶形のCukα線の粉末X線回折パターンにおいて、前記特徴的なピークの面間隔及び相対高さは、以下のとおりであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエルタペネムナトリウムの新規な結晶形。
【表1】
【請求項4】
エルタペネムナトリウム粗製品を、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液に加えて、第1系を形成させるステップと、
前記第1系にメタノール及びn-プロパノールを加えて、第2系を形成させるステップと、
前記第2系を-10℃~15℃に冷却した後に、3回~10回に分けて前記第2系に酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加えて、第3系を形成させることであって、前記酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液の体積は、前記第2系の体積の30%~50%であるステップと、
前記第3系の温度を-30℃~-15℃に下げた後、また前記第3系の温度を-10℃~15℃に上げて、第4系を形成させるステップと、
前記第4系に濾過処理、洗浄処理及びドライ処理をこの順に行って、前記エルタペネムナトリウムの新規な結晶形を得るステップとを含み、
但し、前記エルタペネムナトリウム粗製品のHPLC純度は、90%~98%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のエルタペネムナトリウムの新規な結晶形の製造方法。
【請求項5】
前記酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液において、酸は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、塩酸又は臭化水素であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液において、酸とメタノールとn-プロパノールの体積比は、1:(10~20):(15~30)であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加える過程で、毎回に加える量は、前記酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液の体積の10%~35%であり、連続する2回に加えることの時間間隔は、20分~60分であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1系で、前記エルタペネムナトリウム粗製品の濃度は、100mg/mL~250mg/mLであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第3系の温度を下げる過程で、温度を下げる速度は、0.02℃/分~0.2℃/分であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項10】
前記洗浄処理は、順次行う第1洗浄工程及び第2洗浄工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液は、炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第3系の温度を下げる処理の前には、前記第3系にメタノール及びn-プロパノールを加えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成の分野に関し、具体的に言えば、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エルタペネムナトリウムの構造は、(4R,5S,6S)-3-[[[[(3S,5S)-5-[(3-カルボキシフェニル)アミノ]カルボニル]-3-ピロリジニル]チオ]-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-メチル-7-オキシカルボニル-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボン酸モノナトリウム塩であり、エルタペネムナトリウムは、メルク・アンド・カンパニー(米Merck&Co.)及びアストラゼネカ(Astrazeneca)によって最初に発見され、他の殆どのβ-ラクタム系抗生物質よりも幅広い活性を有し、且つβ-ラクタマーゼに対してより耐薬性があり、これは多くの細菌の薬剤耐性の主なメカニズムでもある。臨床試験では、他のカルバペネム薬物と比べて、当該抗生物質はより良い薬物動態特性を示しており、単薬剤療法及び1日1回の用量が可能である。
【0003】
結晶形はあらゆる特定の結晶製品の重要な特徴である。異なる結晶形は、一般的に、例えば、安定性、溶解度、均一性などの異なる特性を齎す。エルタペネムナトリウムは、酸、塩基、熱などの条件下で安定性が悪く、且つ生産過程で低温乾燥、低温保存が必要である。
【0004】
現在、エルタペネムナトリウムには5種の異なる結晶形がある。メルク社は、特許WO03026572及びWO03027067で初めて結晶形A、結晶形B及び結晶形Cを報告した。詳細なプロセスの記述は、j.org.Chem(2005),70,7478-7487を参照する。メルク(Merck)社のプロセスでは、メタノールと水とn-プロパノールの系から結晶化して結晶形Aを得る。当該結晶形には、2θ=4.8°、6.7°、10.5°、11.7°、13.6°、14.4°、16.0°、17.2°、18.4°、19.7°、20.8°、21.6°、22.1°、23.1°、24.1°、26.1°、26.6°、27.0°、27.4°、28.6°及び31.1°の21個の特徴的なピークが形成される。水とイソプロピルアルコール(体積比15:85)の系で結晶形Aを撹拌及び洗浄して、結晶形Bを得る。結晶形Bには、2θ=4.8°、6.8°、7.8°、10.4°、11.8°、13.6°、14.4°、15.2°、17.3°、18.5°、19.0°、19.7°、20.9°、21.9°、23.1°、24.1°、24.5°、26.1°、26.5°、26.9°、27.7°、28.7°、30.0°、31.1°、32.2°の24個の特徴的なピークがある。結晶形Bを酢酸メチル(水含有量2%)溶液で撹拌及び洗浄する場合に、結晶形Cを得ることができる。当該結晶形には、2θ=4.8°、6.8°、7.8°、10.7°、11.8°、13.7°、14.6°、17.3°、18.6°、19.14°、19.9°、21.0°、22.1°、24.2°、26.1°、27.9°、28.7°、31.3°、32.5°の19個の特徴的なピークがある。結晶形Dは、特許WO2009150630で初めて報告された。エルタペネムナトリウム粗製品を純水とメタノールに溶解し、さらにn-プロパノールで結晶化した。0℃前後で、得られた系を撹拌して、固体を得る。固体とアセトンを撹拌してパルプ化して、結晶形Dである生成物を得る。結晶形Dには11個の特徴的なピークがあり、その2θが、それぞれ、4.44±0.2°、5.26±0.2°、7.44±0.2°、8.12±0.2°、10.98±0.2°、12.74±0.2°、19.28±0.2°、22.93±0.2°、23.51±0.2°、25.07±0.2°及び30.15±0.2°である。結晶形Eは、特許WO2013067878で初めて報告された。エルタペネムナトリウム粗製品を水に溶解し(濃度50~90mg/mL)、酢酸で溶液のpHを5.4~5.5に調整した。メタノールとn-プロパノール溶液を加え、次に、得られた系を静置した。次に、より多くのメタノールとn-プロパノールを加え、低温で生成物を結晶化させて結晶形Eの形態となる。結晶形Eには15個の特徴的なピークがあり、その2θが、4.22±0.2°、4.90±0.2°、6.98±0.2°、8.00±0.2°、10.72±0.2°、11.96±0.2°、13.96±0.2、14.74±0.2°、17.32±0.2°、18.64±0.2、19.20±0.2、22.06±0.2、24.78±0.2、26.30±0.2、27.92±0.2°である。また、特許CN1752090Aではアモルファスエルタペネムナトリウムの製造プロセスが開示され、濾液を真空下で濃縮した後、pHを5.5に調整した。メタノールとn-プロパノール(体積比1:1)を加えると生成物を沈殿させることができる。
【0005】
しかしながら、結晶形A、結晶形B、結晶形Cの製造プロセスで大量の抽出に及ぼし、これは、操作時間が延長し、且つそのプロセスの不純物(例えば、二量体又は開環不純物)が多く、製品純度が低いことを引き起こす。結晶形Dの製造プロセスでは、非常に小さな粒子であるため、濾過しにくく、これにより高純度、高収量の製品を得ることができない。結晶形Eの製造プロセスでは、その粒径も小さく、且つ凝集しやすいため、その乾燥を難しくさせる。また、その製造プロセスで溶媒の使用量が多いため、環境友好性が悪い。アモルファスエルタペネムナトリウムの製造プロセスでは、その主な欠点は製品の純度及び安定性が悪く、他の結晶形と比べられないことである。
【0006】
以上から分かるように、従来技術によるエルタペネムナトリウム結晶形製品の純度及び収量は低い。したがって、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形製品の製造方法を提供する必要があり、その製品の純度及び収量をいずれも高く、且つ製造プロセスを簡単で操作しやすく、工場で大規模な生産を行いやすくさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、従来技術によるエルタペネムナトリウム結晶形製品の純度及び収量はいずれも低い課題を解決するために、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様によれば、式Iに示される構造を有し、且つエルタペネムナトリウムの新規な結晶形は、Cukα線の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが4.3±0.2°、5.1±0.2°、7.1±0.2°、8.2±0.2°、10.8±0.2°、12.0±0.2°、12.7±0.2°、13.9±0.2°、14.7±0.2°、15.5±0.2°、16.3±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、18.8±0.2°、19.1±0.2°、20.0±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、24.5±0.2°、24.9±0.2°、26.5±0.2°、28.0±0.2°、29.3±0.2°、31.7±0.2°、32.6±0.2°、34.7±0.2°及び36.2±0.2°に特徴的なピークを有するエルタペネムナトリウムの新規な結晶形を提供する。
【化1】
【0009】
さらに、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形のCukα線の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが4.3°、5.1°、7.1°、8.2°、10.8°、12.0°、12.7°、13.9°、14.7°、15.5°、16.3°、17.5°、18.4°、18.8°、19.1°、20.0°、21.3°、22.1°、24.5°、24.9°、26.5°、28.0°、29.3°、31.7°、32.6°、34.7°及び36.2°に特徴的なピークを有する。
【0010】
さらに、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形の粉末X線回折パターンにおいて、特徴的なピークの面間隔及び相対高さは、以下のとおりである。
【表1】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様によれば、エルタペネムナトリウム粗製品を、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液に加えて、第1系を形成させるステップと、第1系にメタノール及びn-プロパノールを加えて、第2系を形成させるステップと、第2系を-10~15℃に冷却した後、3~10回を分けて第2系に酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加えて、第3系を形成させることであって、混合溶液の体積は、第2系の体積の30~50%であるステップと、第3系の温度を-30~-15℃に下げた後、また第3系の温度を-10~15℃に上げて、第4系を形成させるステップと、第4系に濾過処理、洗浄処理及びドライ処理をこの順に行って、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形を得るステップとを含み、但し、エルタペネムナトリウム粗製品のHPLC純度は、90~98%である上記エルタペネムナトリウムの新規な結晶形の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液において、酸は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、塩酸又は臭化水素であり、好ましくは、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液において、酸とメタノールとn-プロパノールの体積比が、1:(10~20):(15~30)であり、好ましくは、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加える過程で、毎回に加える量が、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液の体積の10~35%であり、好ましくは、連続する2回に加えることの時間間隔が、20~60分である。
【0013】
さらに、第1系におけるエルタペネムナトリウム粗製品の濃度は、100~250mg/mLである。
【0014】
さらに、第3系の温度を下げる過程で、温度を下げる速度は、0.02~0.2℃/分であり、好ましくは、温度を上げる過程で、温度を上げる速度が、0.02~0.2℃/分である。
【0015】
さらに、洗浄処理は、順次行う第1洗浄工程及び第2洗浄工程を含み、好ましくは、第1洗浄工程で洗浄剤が、水とアセトンとイソプロピルアルコールの混合物であり、好ましくは、第2洗浄工程で洗浄剤が、アセトンと水の混合物であり、より好ましくは、第1洗浄工程で、水とアセトンとイソプロピルアルコールの体積比が、1:(1~7):(1~7)であり、より好ましくは、第2洗浄工程で、アセトンと水の体積比が、(90~99):(1~10)である。
【0016】
さらに、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液は、炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液であり、好ましくは、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液の質量濃度が、20~50mg/mLであり、好ましくは、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液で塩基とエルタペネムナトリウム粗製品のモル比が、(0.9~1.5):1である。
【0017】
さらに、第3系の温度を下げる処理の前には、ステップは、第3系にメタノール及びn-プロパノールを加えることをさらに含み、好ましくは、メタノールとn-プロパノールの体積比が、(4~7):(7~10)である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記の結晶形は、棒状の晶癖であり、その粒径が大きく、凝集しにくい。したがって、その乾燥処理は行いやすく、簡単な乾燥処理でも純度が高い製品を得ることができる。また、本発明の上記の結晶形は、安定性がより良く、後の洗浄及び乾燥工程で結晶形は最大限に変わらないよう保持され、これにより製品の純度を一層向上させる。また、本発明のエルタペネムナトリウム結晶形の大きい粒径及び良い安定性によれば、工場でのその大規模な生産はより行いやすく、これにより高純度、高収量のエルタペネムナトリウム製品を得ることができ、製品の純度は99.2%以上に達し、収率は93%以上に達している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本願を構成する部分である明細書図面は、本発明の一層の理解に供するものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明の解釈に供するもので、本発明に対する不適切な限定を構成しない。図面は、下記の通りである。
【
図1】
図1は、本発明の実施例1の製品の粉末X線回折パターンを示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1の製品の走査型電子顕微鏡写真(SEM、拡大倍率500倍)を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1の製品の走査型電子顕微鏡写真(SEM、拡大倍率2000倍)を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2の製品の粉末X線回折パターンを示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施例2の製品の走査型電子顕微鏡写真(SEM、拡大倍率500倍)を示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施例2の製品の走査型電子顕微鏡写真(SEM、拡大倍率2000倍)を示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施例1と実施例2の粉末X線回折のカバレッジ図を示す。
【
図8】
図8は、本発明の比較例5の製品の走査型電子顕微鏡写真(SEM、拡大倍率500倍)を示す。
【
図9】
図9は、本発明の比較例5の製品の走査型電子顕微鏡写真(SEM、拡大倍率2000倍)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
なお、矛盾がない限り、本願の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせてもよい。以下、図面を参照しながら実施例を結合して本発明を詳細に説明する。
【0021】
背景技術の部分で述べたように、従来技術によるエルタペネムナトリウム結晶形製品の純度及び収量はいずれも低い。本発明は、この課題を解決するために、式Iに示される構造を有し、且つエルタペネムナトリウムの新規な結晶形は、Cukα線の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが4.3±0.2°、5.1±0.2°、7.1±0.2°、8.2±0.2°、10.8±0.2°、12.0±0.2°、12.7±0.2°、13.9±0.2°、14.7±0.2°、15.5±0.2°、16.3±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、18.8±0.2°、19.1±0.2°、20.0±0.2°、21.3±0.2°、22.1±0.2°、24.5±0.2°、24.9±0.2°、26.5±0.2°、28.0±0.2°、29.3±0.2°、31.7±0.2°、32.6±0.2°、34.7±0.2°及び36.2±0.2°に特徴的なピークを有するエルタペネムナトリウムの新規な結晶形を提供する。
【化2】
【0022】
本発明の上記の結晶形は、棒状の晶癖であり、その粒径が大きく、凝集しにくい。したがって、その乾燥処理は行いやすく、簡単な乾燥処理でも純度が高い製品を得ることができる。また、本発明の上記の結晶形は、安定性がより良く、後の洗浄及び乾燥工程で結晶形は最大限に変わらないよう保持され、これにより製品の純度を一層向上させる。また、本発明のエルタペネムナトリウム結晶形の大きい粒径及び良い安定性によれば、工場でのその大規模な生産はより行いやすく、これにより高純度、高収量のエルタペネムナトリウム製品を得ることができ、製品の純度は99.2%以上に達し、収率は93%以上に達している。
【0023】
好ましい実施形態では、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形は、Cukα線の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが4.3°、5.1°、7.1°、8.2°、10.8°、12.0°、12.7°、13.9°、14.7°、15.5°、16.3°、17.5°、18.4°、18.8°、19.1°、20.0°、21.3°、22.1°、24.5°、24.9°、26.5°、28.0°、29.3°、31.7°、32.6°、34.7°及び36.2°に特徴的なピークを有する。さらに、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形の粉末X線回折パターンにおいて、特徴的なピークの面間隔及び相対高さは、以下のとおりである。
【表2】
【0024】
本発明は、また、エルタペネムナトリウム粗製品を、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液に加えて、第1系を形成させるステップと、第1系にメタノール及びn-プロパノールを加えて、第2系を形成させるステップと、第2系を-10~15℃に冷却した後、3~10回を分けて第2系に酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加えて、第3系を形成させることであって、混合溶液の体積は、第2系の体積の30~50%であるステップと、第3系の温度を-30~-15℃に下げた後、また第3系の温度を-10~15℃に上げて、第4系を形成させるステップと、第4系に濾過、洗浄処理及びドライ処理をこの順に行って、エルタペネムナトリウムの新規な結晶形を得るステップとを含み、但し、エルタペネムナトリウム粗製品のHPLC純度は、90~98%である上記のエルタペネムナトリウムの新規な結晶形の製造方法を提供する。
【0025】
本発明は、上記の操作を多重相乗することにより、効果的な制御により前記新規な結晶形を得ることができる。前述した各理由から、本発明によって製造された結晶形は、棒状の晶癖であり、その粒径が大きく、凝集しにくい。したがって、その乾燥処理は行いやすく、簡単な乾燥処理でも純度が高い製品を得ることができる。また、本発明の上記の結晶形は、特性の安定性がより良く、後の洗浄及び乾燥工程で結晶形は最大限に変わらないよう保持され、製品の高い純度が保証される。本発明の製造方法は、簡単で操作しやすく、且つ耐性がより良いため、工場での大規模な生産はより行いやすい。
【0026】
なお、本発明では、最初にナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液でエルタペネムナトリウム粗製品を予め溶解して、大部のエルタペネムナトリウムが溶解することを促す。続いてメタノール及びn-プロパノールを加え、一方では、全てのエルタペネムナトリウムを一層溶解することができ、他方では、後の結晶化のための環境を作ることができる。特に、エルタペネムナトリウム(水と弱く結合する結晶性化合物)の結晶構造を分析したところ、複数の結晶水と分子との間の作用力でそれに外乱の影響に敏感にさせ、溶媒の比率や温度など要因の他に、過飽和度はその結晶形に影響を与える最も主な要因である。本発明では、上記バッチ式のモードで系に酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加えることにより、系が常に低い過飽和度を維持して結晶化することを促進し、且つ当該低い過飽和度は結晶化の過程で持続的に安定する。これにより、上記の結晶形の単位胞の組み立てのために良好で安定的な環境を作ることができ、これによって組み立てて新規な上記の結晶形を製造するとともに、結晶の結晶化度の向上を促進することができる。また、本発明は、さらに、結晶化の過程での昇温と降温との協力で、不純物(例えば、開環不純物、ペントキサゾン、二量体(Dimers)、開環メチルエステル不純物)が、温度を上げる過程で溶解し、製品が温度を下げる過程で析出することを促進し、結晶形の棒状の晶癖の生成及び結晶化度の向上を一層最適化させ、結晶形の安定性がより良くなることを促進することができる。具体的には、上記の不純物の由来は次のとおりである。エルタペネムナトリウムを溶解した後、開環不純物及び開環メチルエステル不純物が生成し始める。二量体(Dimer)は、1分子のエルタペネムと1分子の開環不純物が脱水して生成されるもので、6~10種の二量体(Dimer)が生じる。ペントキサゾンは、エルタペネムナトリウム粗製品によって持ち込まれる。以上から分かるように、本発明は、上記の製造方法により、高純度、高収量の上記のエルタペネムナトリウムの新規な結晶形製品を得ることができ、製品の純度は99.2%以上に達し、収率は93%以上に達している。
【0027】
なお、本発明のエルタペネムナトリウム粗製品には、CAS登録番号153773-82-1を原料として選んでもよい。
【0028】
好ましくは、上記の第4系を形成させるステップで、上記昇温及び降温ステップを複数回繰り返しサイクルしてもよく、これにより余分な不純物を一層除去して、製品の純度を向上させる。より好ましくは、3回を繰り返してもよく、これにより、エネルギーの消費と製品の高い純度との間でよりバランスがとれるようになる。
【0029】
上記の結晶形の粒径を一層効果的に制御するために、好ましくは、第2系を-10~5℃に冷却した後、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加える。
【0030】
上記の結晶形の形成について一層効果的に制御するために、好ましくは、上記の製造方法において、第1系、第2系及び第3系を形成させる過程で、撹拌速度が、100~300rpmであってもよい。第3系に固体が析出したことが観察されると、撹拌速度を300rpmに保ってもよい。
【0031】
結晶形の安定性を一層向上させるために、好ましくは、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加えることが終了した後毎に、結晶成長処理を1回行う(系の温度を一定に保ち、撹拌速度は300rpmで一定であり、時間は20~60分である)。結晶成長回数は、3~10回であり、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加える回数と一致する。
【0032】
余分な不純物を一層除去して、製品の純度を向上させるために、より好ましくは、第3系の温度を-25~-20℃に下げた後、また第3系の温度を-10~5℃に上げる。
【0033】
結晶形の形成について一層効果的に制御するために、好ましくは、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液において、酸が、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、塩酸又は臭化水素であり、好ましくは、酸とエルタペネムナトリウム粗製品のモル比が、(0.9~1.5):1であり、好ましくは、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液において、酸とメタノールとn-プロパノールの体積比が、1:(10~20):(15~30)である。好ましくは、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液を加える過程で、毎回に加える量が、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液の体積の10~35%であり、好ましくは、連続する2回に加えることの時間間隔が、20~60分である。
【0034】
第3系の温度を下げる過程で、温度を下げる速度は、0.02~0.2℃/分であり、好ましくは、温度を上げる過程で、温度を上げる速度が、0.02~0.2℃/分である。
【0035】
製品の純度及び収率を一層向上させるために、好ましくは、第1系におけるエルタペネムナトリウム粗製品の濃度が、100~250mg/mLであり、より好ましくは、エルタペネムナトリウム粗製品の濃度が、100~150mg/mLである。
【0036】
製品の純度を一層向上させるために、洗浄処理の過程は、順次行う第1洗浄及び第2洗浄を含み、好ましくは、第1洗浄工程で洗浄剤が、水とアセトンとイソプロピルアルコールの混合物であり、好ましくは、第2洗浄工程で洗浄剤が、アセトンと水の混合物であり、好ましくは、第1洗浄工程で、水とアセトンとイソプロピルアルコールの体積比が、1:(1~7):(1~7)であり、好ましくは、第2洗浄工程で、アセトンと水の体積比が、(90~99):(1~10)である。より好ましくは、第1洗浄工程で、水とアセトンとイソプロピルアルコールの体積比が、1:(2~5):(4~7)である。より好ましくは、第2洗浄工程で、アセトンと水の体積比が、(95~98):(2~5)である。好ましくは、洗浄処理の過程の撹拌速度が、50~500r/minである。
【0037】
粗製品原料の溶解性及び安定性を一層向上させるために、好ましくは、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液が、炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液であり、好ましくは、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液の質量濃度が、20~50mg/mLである。好ましくは、ナトリウムイオンを含むアルカリ性の水溶液で塩基とエルタペネムナトリウム粗製品のモル比が、(0.9~1.5):1である。より好ましくは、第2系を形成させるステップで、第1系にメタノール及びn-プロパノールを加えることをさらに含み、メタノールとn-プロパノールの体積比は、(2~4):(2.5~4.5)である。
【0038】
結晶化の効率及び製品の収量を一層向上させるために、第3系に対する冷却処理の前には、ステップは、第3系にメタノール及びn-プロパノールを加えることをさらに含み、但し、メタノールとn-プロパノールの体積比は、(4~7):(7~10)である。
【0039】
好ましくは、ドライ処理の過程で、湿った窒素で製品をドライし、好ましくは、湿った窒素の相対湿度が、5~60%であり、より好ましくは、10~30%である。溶媒の残留量がICHの要求に適合し且つ水分含有量が仕様の要件に達する(KF:15.5~19.0%)まで湿った窒素で製品をドライする。
【0040】
以下、具体的な実施例を用いて本願を一層詳細に記述し、これらの実施例を本願の主張する保護範囲に対する制限と理解することができない。
【0041】
(実施例1)
製造プロセスは、次のとおりである。
炭酸水素ナトリウム溶液(精製水1000mL、炭酸水素ナトリウム25.35g)を調製し、それに100gのエルタペネムナトリウム粗製品(CAS:153773-82-1、HPLC純度93%)を加えて、第1系を形成させた。第1系におけるエルタペネムナトリウム粗製品の濃度は、100mg/mLであった。
【0042】
第1系にメタノール(280mL)及びn-プロパノール(350mL)を加えて、第2系を形成させた。
【0043】
0~5℃で、8回に分けて第2系に酢酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液(酢酸18.15g、メタノール250mL、n-プロパノール300mL)を加えて、第3系を形成させた。毎回に加える量は、酢酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液の体積の12.5%であり、連続する2回に加えることの時間間隔は30分であった。
【0044】
第3系にメタノール(1260mL)及びn-プロパノール(2265mL)を加えた。
【0045】
第3系の温度を-25℃に下げ、次に第3系の温度を5℃に上げ、上記昇温及び降温操作を2回繰り返して、第4系を形成させた。但し、温度を下げる速度は、0.15℃/分であり、温度を上げる速度は、0.15℃/分であった。
【0046】
第4系に対して1回目の濾過を行い、次に0℃でイソプロピルアルコール/アセトン/精製水(700mL/500mL/100mL)で洗浄して、2回目の濾過を行い、次に0℃でアセトン/精製水(950mL/50mL)を用いて洗浄し、3回目の濾過を行い、固体製品を得て、湿った窒素(10~30%)で製品をドライした。
【0047】
X線回折計(BrukerD8Focus)を用いて製品を測定し、上記製品からサンプルを作り、3°から42°(2θ)でスキャンし、ステップ幅は0.02°(2θ)であり、管電圧は40kVであり、管電流は40mAであった。
【0048】
上記の製品の粉末X線回折(XRPD)は、
図1に示すとおりであった。その結晶形には27個の主な特徴的なピークがあり、その2θが、4.3°、5.1°、7.1°、8.2°、10.8°、12.0°、12.7°、13.9°、14.7°、15.5°、16.3°、17.5°、18.4°、18.8°、19.1°、20.0°、21.3°、22.1°、24.5°、24.9°、26.5°、28.0°、29.3°、31.7°、32.6°、34.7°及び36.2°であった。具体的なデータは、表1に示すとおりである。上記の製品に対してHPLC検出を行ったところ、エルタペネムナトリウムのHPLC純度は99.4%であった。
【表3】
【0049】
Phenom卓上走査型電子顕微鏡Phenompure+を用いて固体サンプルに対してSEM観察を行った。イオンスパッタ装置において固体に対して60秒間噴霧した後、電子走査モードで固体を走査型電子顕微鏡の下に置き、
図2及び
図3に示されるように、例示的な結果は、明らかな凝集がないことを示した。
【0050】
上記の製品の-18℃の時の安定性データは、表2に示すとおりである。
【表4】
【0051】
表2データから、当該結晶形製品は、非常に安定的であり、分解速度が遅いことが分かった。
【0052】
(実施例2)
実施例1との違いは、炭酸水素ナトリウムの使用量が20.28gであること、3回を分けて第2系に酢酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液(酢酸14.52g、メタノール250mL、n-プロパノール300mL)を加えること、第3系の温度を-25℃に下げ、次に第3系の温度を5℃に上げて、第4系を得ることであった。第1系におけるエルタペネムナトリウムの濃度は、100mg/mLであった。毎回に加える量は、酸とメタノールとn-プロパノールの混合溶液の体積の33%であり、連続する2回に加えることの時間間隔は、30分であった。温度を下げる速度は0.12℃/分であり、温度を上げる速度は0.12℃/分であり、昇温及び降温は1回だけ繰り返した。
【0053】
上記の製品の粉末X線回折(XRPD)を
図4に示す。その結晶形には27個の主な特徴的なピークがあり、その2θが、4.4°、5.1°、7.1°、8.2°、10.8°、12.1°、12.8°、14.0°、14.8°、15.7°、16.4°、17.7°、18.6°、19.0°、19.3°、20.2°、21.4°、22.3°、24.7°、25.1°、26.7°、28.2°、29.5°、31.9°、32.8°、34.8°、36.3°であった。具体的なデータは、表3に示すとおりである。
図7は、本発明の実施例1と実施例2の粉末X線回折のカバレッジ図を示す。上記の製品に対してHPLC検出を行ったところ、エルタペネムナトリウムのHPLC純度は、99.2%であった。Phenom卓上走査型電子顕微鏡Phenompure+を用いて固体サンプルに対してSEM観察を行った。イオンスパッタ装置において固体に対して60秒間噴霧した後、電子走査モードで固体を走査型電子顕微鏡の下に置いた。
図5及び
図6に示されるように、例示的な結果は、明らかな凝集がないことを示した。
【表5】
【0054】
上記の製品の-18℃の時の安定性データは、表4に示すとおりである。
【表6】
【0055】
表4データから、当該結晶形製品は、非常に安定的であり、分解速度が遅いことが分かった。
【0056】
(比較例1)
特許WO03026572及びWO03027067に基づいて、エルタペネムナトリウムの結晶形A、結晶形B及び結晶形C製品を製造した。
【0057】
(比較例2)
特許WO2009150630に基づいて、エルタペネムナトリウムの結晶形D製品を製造した。
【0058】
(比較例3)
特許WO2013067878に基づいて、エルタペネムナトリウムの結晶形E製品を製造した。
【0059】
(比較例4)
特許CN1752090Aに基づいて、非晶質エルタペネムナトリウム製品を製造した。
【0060】
(比較例5)
特許CN102363617に基づいて、純度98.4%のエルタペネムナトリウムを製造し、その走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、
図8及び
図9に示すとおりである。
図8及
図9から、当該結晶形エルタペネムナトリウムは、凝集が明らかであり、粒子が小さく、結晶化度が悪いことが分かった。
図2、
図3、
図5、
図6に示すように、本発明の新規な結晶形製品は、典型的な棒状の晶癖であり、その粒径が大きく、凝集しにくい。
【0061】
性能の評価:
(一)実施例1の結晶形製品、結晶形A製品、結晶形B製品、結晶形C製品、結晶形D製品、結晶形E製品及び非晶質エルタペネムナトリウム製品各100g(±5%)を濾液が滴らないまで加圧濾過し、溶媒の残留がICH基準に適合するまでドライし、対応する濾過時間、乾燥時間は、表5に示すとおりである。
【表7】
備考:
1.結晶形Bは、結晶形Aを撹拌及び洗浄して得られたものであり、結晶形Cは、結晶形Bを撹拌及び洗浄して得られたものであるため、結晶形Aの濾過時間だけを集計の対象とした。
2.加圧濾過で同じハステロイ・フィルタードライヤー(800mL、Φ=110mm)が使用され、加圧濾過の時に、真空でp≦-0.095MPaの条件下で行うことを保証し、また、フィルタードライヤーの上口を窒素で保護する。
3.ドライ条件は、ドライ温度が5~15℃であり、窒素流量が1~2m
3/時間であり、窒素の湿度が20~40%であることである。
【0062】
表5のデータから分かるように、本発明によって製造された新規な結晶形製品は棒状の晶癖であり、その粒径が大きく、凝集しにくいため、濾過及びドライの効率は著しく向上しており、スケールアップ生産では生産効率を効果的に向上させるとともに、製品分解のリスクを低減させることができる。
【0063】
(二)上記のエルタペネムナトリウムの結晶形A製品、結晶形B製品、結晶形C製品、結晶形D製品、結晶形E製品及び非晶質エルタペネムナトリウム製品について、流動性に関する測定を行い、測定結果は表6に示すとおりである。
【表8】
【0064】
カーの流動性指数、ハウスナー比と流動性評価の関係は、表7に示すとおりである。
カーの流動性指数=(タップ密度-かさ密度)/タップ密度×100%
ハウスナー比=タップ密度/かさ密度
【表9】
【0065】
表6、表7のデータから分かるように、カーの流動性指数、ハウスナー比及び安息角から判断すると、本発明の新規な結晶形製品を既存の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E及びアモルファスの製品と比べると、本発明の新規な結晶形製品のほうが流動性はより良い。現在、エルタペネムナトリウムは主に凍結乾燥粉末の形態で製剤に使用されており、良い流動性は、潜在的な他の剤形の開発及び応用に無限の可能性を提供する。
【0066】
上述したのは、本発明を制限するためのものではなく、本発明の好ましい実施例に過ぎず、当業者にとって、本発明には様々な変更及び変化があってもよい。本発明の趣旨と原則内で行われるいかなる補正、同等な置き換え、改善などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】