(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】組織伸展
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61B17/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512977
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022073087
(87)【国際公開番号】W WO2023030906
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524068159
【氏名又は名称】コンペンソ メドテック エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エングセス,ラース
(72)【発明者】
【氏名】グロンサンド,ヨルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アウナン,アイリック
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL07
4C160LL30
(57)【要約】
組織の線維長を伸長させるための器具であって、器具は、刃具の第1の群であって、刃具の第1の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第1の群と、刃具の第2の群であって、刃具の第2の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第2の群と、を備え、刃具の第2の群の各刃具が、刃具の第1の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられている。刃具の各群は、切断及び非切断の交互配置された領域を形成するように配列されているので、器具が使用される場合に、刃具の各群は、組織の線維長のうちのいくらかの線維を切断する一方で、その他の線維を、切断しないまま残す。刃具の各群は、線維組織に一連の穿刺を行うことによって、ベルマンズ技法と同様のアプローチをとる。しかしながら、刃具の各群は、定義された関係を有し、群内の各刃具が組織の異なる線維を切断することが保証されるように刃具を分離する非切断幅を有するので、ベルマンズ技法の個々の穿刺よりも明確に定義され、信頼性があり、また再現性がある。更に、第1の群の少なくとも1つの非切断幅を重ね合わせることによって、第2の群は、第1の群によって切断されないいくらかの線維を切断することが保証される。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の線維長を伸長させるための器具であって、前記器具が、
刃具の第1の群であって、前記刃具の第1の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように前記器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第1の群と、
刃具の第2の群であって、前記刃具の第2の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように前記器具の前記幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第2の群と、を備え、
前記刃具の第2の群の各刃具が、前記刃具の第1の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられている、工具。
【請求項2】
少なくとも1つの更なる刃具の群であって、前記更なる刃具の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように前記器具の前記幅にわたって離間された複数の刃具を備える、少なくとも1つの更なる刃具の群を更に備え、
更なる刃具の群ごとに、その群の各刃具が、隣接する刃具の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられている、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
刃具の各群が、刃具の列を含む、請求項1又は2に記載の器具。
【請求項4】
前記刃具の群が、前記器具の長さに沿って離間している、請求項1、2又は3に記載の器具。
【請求項5】
刃具の各群が、規則的に離間した刃具のセットを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
刃具の各群が、刃具の同一の配列を有し、刃具の各群が、幅方向において、刃具の各隣接する群から同じオフセット量だけオフセットされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
刃具の各群が、前記群内の全ての個々の切削幅の総和である、合計切削幅と、前記群内の全ての個々の非切削幅の総和である、合計非切削幅と、を有し、
合計切断幅対合計非切断幅の比が、各群について、ほぼ同じである、請求項1~6のいずれか一項に記載の工具。
【請求項8】
各群が、少なくとも5つの刃具、好ましくは、少なくとも6つの刃具、より好ましくは、少なくとも7つの刃具を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の工具。
【請求項9】
前記器具の幅方向において、1つの群の前記刃具と任意のその他の群の前記刃具との間の重なりが、80%以下、好ましくは、70%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
刃具の各群が、少なくとも20mm、所望により、少なくとも30mmの幅にわたって延在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の器具。
【請求項11】
刃具の各群が、前記器具の共通幅部分にわたって延在し、前記共通幅部分が、少なくとも20mm、所望により、少なくとも30mmの幅を有する、請求項10に記載の器具。
【請求項12】
各刃具が、少なくとも1mm、好ましくは、少なくとも1.5mmの切削幅を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の器具。
【請求項13】
各刃具が、カニューレである、請求項1~12のいずれか一項に記載の器具。
【請求項14】
前記器具が、アプリケータを備え、前記刃具の群が、前記アプリケータに取り付け可能な挿入部上に形成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の器具。
【請求項15】
前記挿入部が、置換可能及び/又は交換可能である、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記アプリケータが、使用時に、前記刃具を前記組織の線維長に押し込むように配列された把持デバイスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の器具。
【請求項17】
前記アプリケータが、プライヤである、請求項14、15、又は16に記載の器具。
【請求項18】
前記器具が、プレートを更に備え、前記プレートが、各刃具に位置的に対応する穴部を備え、前記アプリケータが、前記組織の線維長を通過した後に、前記穴部に向かって、所望により、前記穴部の内部へと、及び/又は前記穴部を通して、前記刃具を適用するように、配列されている、請求項14~17のいずれか一項に記載の器具。
【請求項19】
前記器具が、前記組織の線維長に対して位置付けられるように配列され、かつ前記組織の線維長の長さ方向に垂直に、前記刃具の群を位置合わせさせるように配列された、位置合わせデバイスを備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の器具。
【請求項20】
前記器具が、内側側副靭帯伸長器具である、請求項1~19のいずれか一項に記載の器具。
【請求項21】
組織の線維長を伸長させる方法であって、前記方法が、
組織の線維長の線維を切断するために器具を使用することであって、前記器具が、
刃具の第1の群であって、前記刃具の第1の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように前記器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第1の群と、
刃具の第2の群であって、前記刃具の第2の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように前記器具の前記幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第2の群と、を備え、
前記刃具の第2の群の各刃具が、前記刃具の第1の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられている、工具を使用することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織伸展技術、特に、人工膝関節全置換術における靭帯バランシングのようなプロセスに適用され得る、靭帯伸展技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内反膝の人工膝関節全置換術(TKA)では、内側構造の短縮及び外側構造の伸長がある。内反膝は、TKA中に遭遇する、最も頻繁な変形である。移植組織生存の主な要因として、議論の余地があるものの、大腿脛骨アライメントは、人工膝関節全置換術における主要な目的のままである。骨変形は、機械軸に垂直な骨切断によって、対処される。内反膝において、機械軸に対して垂直な骨切断は、短い内側を有する台形形状の関節大腿脛骨間隙を誘発する。したがって、対称的な弛緩を提供するために、内側の軟組織のバランスをとることが、多くの場合必要である。これは、対称的な弛緩が達成されるまで、1種以上の内側軟組織を、順次弛緩させることによって、達成され得る。
【0003】
靭帯バランシングは、周知の手順であり、TKAにおける良好な機能及び生存のための必要条件と考えられる。靭帯バランシングは、異なる技術によって確立され得る。これらの技術は、多くの場合、内側側副靭帯(MCL)の伸長に焦点を当てている。1つの従来の技術は、MCL足での骨膜下解放にある。「ベルマンズ技法」として周知の別の技術は、弛緩の漸進的増大を可能にするために19ゲージ針を使用して内側側副靱帯を複数回穿刺する、複数回の針穿刺を伴う、十分に証明された技術であり、したがって、膝のバランスを保つ。本技術は、典型的には、伸展において2~4mmの増大した弛緩及び屈曲において2~6mmの所望の弛緩を得るために必要とされる、3~5mmの間隔を有する5~35個の穿刺のいずれかを含む。しかしながら、これは、放出の正確な定量化を可能にしない。ベルマンズ技法において成功を達成するために必要とされる広範囲の穿刺数は、再現性及び信頼性の欠如につながる。ベルマンズ技法を使用する典型的な手順は、靭帯を5回穿刺し、次に、膝のバランシングを再試験して、靭帯の伸展がどの程度達成されたかを検討することである。更なる伸展が必要な場合、更なる5回の穿刺を行い、膝を再び試験する。本プロセスは、靭帯の十分な伸展が達成されるまで続く。所与の伸展に必要な穿刺の数は、事前に確実に予測することができない。
【0004】
これらの問題は、人工膝関節全置換術における靭帯伸展において特有のものではない。同様の問題は、組織伸展が求められるその他の状況においても生じ得る。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、組織の線維長を伸長させるための器具を提供し、本器具は、
刃具の第1の群であって、刃具の第1の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第1の群と、
刃具の第2の群であって、刃具の第2の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第2の群と、を備え、
刃具の第2の群の各刃具は、刃具の第1の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられている。
【0006】
刃具の各群は、切断及び非切断の交互配置された領域を形成するように、器具の幅にわたって位置合わせされているので、器具が使用される場合に、刃具の各群は、組織の線維長のうちのいくらかの線維を切断する一方で、その他の線維を、切断しないまま残す。これは、刃具の各群が、線維組織に一連の穿刺を行うことによって、ベルマンズ技法と同様のアプローチをとることを意味する。しかしながら、刃具の各群は、それらが、定義された関係を有し、群内の各刃具が組織の異なる線維を切断することが保証されるように、それらが、刃具を分離する非切断幅を有するので、ベルマンズ技法の個々の穿刺よりも明確に定義され、信頼性があり、また再現性がある。なお、刃具の第2の群は刃具の第1の群と平行に配列される(両方とも、器具の幅にわたって配列される)が、第1の群の少なくとも1つの非切断幅と重なり合うので、刃具の第2の群は、第1の群によって切断されないいくらかの線維を切断することが、保証される。したがって、刃具の第2の群は、制御され明確に定義された反復可能な様式で、切断された線維の総数を増加させる。刃具の第1の群及び第2の群は共に、線維組織の明確に定義された数の線維を切断する、明確に定義された切断パターンを形成する。これは、線維組織の明確に定義された伸長をもたらす。
【0007】
靭帯バランシング(あるいは、線維組織の長さを伸長させる)場合に、達成される伸長の量は、切断される線維の数に依存する。組織(例えば、靭帯)の線維長は、それらの間で任意の適用荷重を共有する、多数の平行な線維を含む。線維が切断された場合に、その線維は、もはや荷重支持に寄与せず、したがって、荷重は、切断されていない線維の間に分散される。線維が弾性であるため、切断されていない線維は、増大した荷重の下で伸長し、それによって、線維組織(例えば、靭帯)の所望の伸長を達成する。刃具の定義された配列は、組織における切断線維の定義されたパターンをもたらすが、これは、線維組織の長さの定義された反復可能な伸長をもたらす。これは、施術者が、所望の結果を達成することを、非常に容易にする。例えば、靭帯バランシング処置の場合、不均衡性の予備測定は、どれだけの伸長が望まれるかを示す。刃具の適切な配列を有する器具を選択することによって、所望の伸長は、予測可能かつ反復可能な様式で、単一の切断動作(すなわち、器具の単一適用)において、達成され得る。これは、ベルマンズ技法の全ての利点を達成するが、迅速かつ正確な手順の、追加の利点を伴う。更に、多くの実習及び経験を必要とせずに、一貫した結果を達成し得るので、本技術を適用するための訓練要件が低減される。
【0008】
いくつかの実施形態では、器具は、少なくとも1つの更なる刃具の群を更に備えてもよく、更なる刃具の群は、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備え、更なる刃具の群ごとに、その群の各刃具は、隣接する刃具の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられている。
【0009】
刃具の更なる群は、刃具の第2の群が第1の群に対して切断される線維の数を増加させるのと同一の方法で、切断される線維の数を増加させる。それぞれの更なる群は、再び、定義されたパターンを全体的なパターンに追加し、それぞれが、隣接する群によって切断されないいくらかの線維を切断する。したがって、全体として、群は、一貫した量の切断を提供する。器具は、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の刃具の群を有してもよく、各群は、各追加の群が追加量の切断を追加し、したがって、線維組織の追加量の伸長を提供するように、部分的な重なりを伴って配列される。このようにして、異なる群数及び/又は異なる切削量を有する異なる器具を形成し得るが、それぞれ、異なるが明確に定義された切削度、したがって、異なるが明確に定義された伸長程度を得ることができる。
【0010】
少なくとも1つの隣接する群の非切断長さと重なり合うことに加えて、いくつかの好ましい実施形態では、各群、又は少なくとも可能な限り多くの群はまた、刃具の第1の群の少なくとも1つの非切断幅と少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられた、各刃具を有する。いくつかの実施形態では、各群は、その他の各群の少なくとも1つの非切断幅に少なくとも部分的に重なり合うように位置付けられた、各刃具を有する。
【0011】
刃具の各群の刃具は、必ずしも器具の幅にわたって互いに正確に整列している必要はない。しかしながら、刃具の各群が刃具の列を含むことが好都合であり、好ましい。刃具を一列に配列させることは、個々の刃具が全て、線維組織の長さに対して同じ位置に位置付けられ、したがって、線維組織の長さに沿って、同じ距離で、線維組織の線維を全て切断することを意味する。次に、異なる刃具の群を、組織の長さに沿って直ちに離間させて、長さに沿った異なる点で、線維を切断し得る。
【0012】
刃具の群は、器具の長さに沿って離間していることが好ましい。次に、各群は、線維組織の長さの異なる長さ方向部分を切断し、それによって、組織の長さに沿って、切断部の間隔を空ける。これは、組織の長さに沿って残りの線維上の応力を分散させ、個々の切断が組織のより大きい面積にわたって広がるため、処置の影響を低減し、回復を促進し得る。刃具の群の間隔は規則的である必要はない、すなわち、隣接する群間の間隔は、器具の長さに沿って変化してもよい。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態では、刃具の群は、切断(及び応力)が器具の長さに沿って、及び衝撃を受けた線維組織の長さに沿って、均等に広がるように、規則的に離間されている。
【0013】
刃具の各群内で、刃具の間隔は規則的である必要はない。実際に、各刃具が、群内のその他の刃具と同じ長さである必要はない。不規則な長さの刃具及び間隔(非切断幅)は、所望の重なり及び切断量を達成するように、依然として使用されて、隣接する群内の刃具と調整され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、刃具の各群は、規則的に離間された刃具のセットを含む。いくつかの実施形態では、群内の各刃具は、その群内のその他の刃具と同じ幅である。同様に、群内の各非切削幅は、その群内のその他の非切削幅と同じ幅であってもよい。このような規則的な配列は、器具の幅にわたって(したがって、線維組織の幅にわたって)切断を可能な限り均一に広げて、それによって、組織の幅にわたって荷重及び外傷を分散させるという利点を有する。
【0014】
刃具の各群は、刃具(切断幅)及び空間(非切断幅)の独自の別個の配列を有してもよい。異なる群は同一の配列を有する必要はないが、それでも依然として、明確に定義された切断幅と、切断幅と非切断幅との間の重なりと、を提供する。しかしながら、刃具の各群が刃具の同一の配列を有し、刃具の各群が、刃具の各隣接群から同じオフセット量だけ、幅方向にオフセットされていることが、好都合であり、好ましい。同一の配列及びオフセットを有することは、各群の各刃具が、隣接する群内の対応する刃具に対して同一の関係を有すること、すなわち、オフセットが、群内の各刃具及び全ての刃具に適用されることを意味する。これは、新しい線維(すなわち、隣接する群によって切断されない、1つの群によって切断される線維)もまた、器具の幅及び線維組織の幅にわたって均一に分散され、それによって、線維組織にわたる荷重及び応力の変化を分散させることを確実にする。各群が同一のパターンの切削幅及び非切削幅を有し、それぞれが、幅方向に同じ量だけ次第にオフセットされている場合に、群が、長さ方向にもまた均等に離間されていれば、次に、刃具は、傾いた又は傾斜した二次元アレイ刃具を形成する。各群の刃具が幅方向に規則的に離間されている場合、次に、刃具の二次元配置は刃具の傾斜したグリッドを形成する。上述したように、これは、応力及び外傷を器具領域内で可能な限り均一に分散させる。
【0015】
刃具の各群は、群内の全ての個々の切断幅の総和である、合計切断幅と、群内の全ての個々の非切断幅の総和である、合計非切断幅と、を有すると見なされてもよい。合計切断幅対合計非切断幅の比は、各群について、ほぼ同じである。非切断幅に対する切断幅の同じ比率を有することによって、器具は、線維組織の幅の同じ割合が各列によって切断されることを確実にし得る。例えば、線維組織の長さにおける線維の約10%又は20%又は30%(又は実際には任意の比率)を切断する刃具の各群を有することが望ましい場合がある。したがって、各群は同じ割合の線維を切断し、それによって、群の数及び一貫した重なりの程度は、より多くの群が器具に追加されるにつれて、線維切断の線形進行をもたらす。特定の組織、例えば靭帯、特に、内側側副靭帯(MCL)の伸長程度は、このような刃具の群の数に対して線形であることが判明しており、それによって、伸長の量は、単に器具内の刃具の群(例えば列)の適切な数を選択することによって、容易に選択され得る。次に、選択された器具の単一の適用は、所望の伸長程度を確実に達成し得る。
【0016】
好ましくは、刃具の各群はまた、同じ合計切断幅を有する。同様に、刃具の各群は、好ましくは、同じ合計非切削幅を有する。すなわち、全ての群が、同じ量を切断する。あるいは、別の言い方をすれば、刃具の第1の群の合計切断幅は、刃具の第2の群の合計切断幅と同じであり、刃具の更なる群のそれぞれは、刃具の第1の群の合計切断幅と同じ合計切断幅を有する。
【0017】
各群内の刃具の数は、用途に応じて選択されてもよい。刃具の数は、各刃具の幅と共に、切断の総量を決定する。より多数の刃具は、組織の幅にわたって切断を広げるのに役立つ。いくつかの実施形態では、各群は、少なくとも5つの刃具、好ましくは、少なくとも6つの刃具、より好ましくは、少なくとも7つの刃具を有する。より多数の刃具はまた、器具がより広い範囲の組織幅を網羅することを可能にする一方で、依然として、組織の各幅に対して信頼性の高い切断比を提供する。例えば、MCLなどの特定の靭帯の幅は、患者ごとに異なり得る。ヒトにおいて、MCLは、典型的には、幅が、約14mm~20mmで変動し得る(しかし、場合によっては、より広くても狭くてもよい)。理想的には、器具は、より広い標的組織を網羅するために十分な幅であるが、幅にわたって十分な数の刃具を有し、それがより狭い標的組織を切断する場合に、いくつかの切断部位にわたって、切断荷重を依然として分散させる。刃具が、幅にわたって均一に分布される場合に、切断比は、標的組織の幅にかかわらず同じであり得ることに、留意されたい。
【0018】
したがって、いくつかの実施形態では、刃具の各群は、少なくとも20mm、所望により、少なくとも30mmの幅にわたって延在する。いくつかの実施例では、刃具の各群は、器具の共通幅部分にわたって延在し、共通幅部分は、少なくとも20mm、所望により、少なくとも30mmの幅を有する。したがって、共通幅部分は、刃具の各群及び全ての群によって共有され、網羅されるが、上述したように、刃具は、その共通幅にわたってオフセットされてもよい、又は異なって配列されてもよい。共通幅は、標的組織より大きくてもよく、例えば、少なくとも20mm又は少なくとも30mmであってもよい(又は、その他の組織については、当然ながら、有意に大きくても小さくてもよい)。
【0019】
隣接する群(又は実際に、所望により、任意の2つの選択された群)の刃具は、様々な程度に重なり合ってもよい。例えば、1つの極端な実施例では、このような群の刃具は、全く重なり合わなくてもよい(すなわち、各刃具は、隣接する群の、又は実際に、所望により、全てのその他の群の非切断幅と、完全に平行に位置する)。しかしながら、いくつかの実施形態では、刃具は、隣接する群(又は任意の2つの選択された群)からの刃具が、同じ線維の少なくともいくらかと位置合わせされ得るように、重なり合ってもよい。この結果、同じ線維が、刃具の異なる群によって、2回切断される場合がある。これは、線維が、伸長した構成においてやがて治癒することに起因して、必ずしも問題ではない。更に、刃具は重なり合ってもよいが、個々の刃具は、必ずしも常にその幅にわたって全ての線維を切断するわけではなく、いくらかの線維は、刃具が適用される際に、刃具の経路から滑り出るか、滑走するので、刃具の縁の近くの線維が、刃具によって実際に切断されない場合がある。したがって、ある程度の重なりは、必ずしも同じ線維の複数の切断をもたらすわけではない。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、同じ線維の複数の切断が、重なり合った刃具を有する群から必然的に生じるように、刃具の有意な重なりが使用されてもよい。上述したように、これは必ずしも問題ではないが、重要なことは、各群が、少なくともいくらかの新しい線維を切断して、群の数が、切断された線維の一貫した信頼性のある総数(又は割合)を定義し、それによって、器具で達成される一貫した伸長程度を定義することである。いくつかの実施形態では、器具の幅方向において、1つの群の刃具と任意のその他の群の刃具との間の重なりは、80%以下、好ましくは、70%以下である。いくつかの実施形態では、重なりは、器具の幅方向において、約3分の2であってもよい。
【0020】
各刃具の幅は、特定の動作に従って、例えば、伸長されるべき組織及び所望の伸長程度に従って、変動してもよい。いくつかの実施例では、各刃具は、少なくとも1mm、好ましくは、少なくとも1.5mmの切断幅を有する。約1mmより小さい刃具は、特定の靱帯などの特定の線維組織に作用するようには、十分に切断しないことが分かっている。約1.6mmの切断幅を有する刃具は、ベルマンズ技法の特定の一般的な適用において使用されるカニューレの切断幅に密接に対応し、したがって、いくつかの実施形態(例えば、MCL靭帯バランシング手術のためのもの)において、特に好ましい。いくつかの実施形態では、各刃具は、カニューレである。カニューレは、次に、ベルマンズ技法で使用されるものに正確に対応してもよい、又は、たとえ異なる切断量又は異なる比率に関して異なる幅を有していても、少なくとも同一の形状及び同一の切断動作に類似している場合がある。
【0021】
器具は、多くの形態のうちのいずれかをとることができる。例えば、工具は、刃具が取り付けられた単一の剛性構造の形態をとることができ、所望により、刃具が、その一端に向かって形成された細長い構造としてもよい。次に、刃具は、単に刃具を組織に押し込むことによって、ある長さの線維組織に適用されてもよい。刃具の配列は、組織において対応する切断の配列を作成し、次に、器具が除去され得る。器具は、アプリケータを備えてもよく、刃具の群は、アプリケータに取り付け可能な挿入部上に形成されてもよい。このような配列は、異なる程度の伸長に必要な刃具の数が変化する場合に、例えば、異なる数の群又は群内の異なる配列の刃具が、異なる量の切断を提供する場合に、特に有用である。したがって、施術者が適切な挿入部を選択し、それをアプリケータ上に取り付け、次に、アプリケータを使用して、挿入部をある長さの線維組織に適用し得るように、異なる配列の刃具が、異なる挿入部上に形成されてもよい。アプリケータは、全ての異なる形態の挿入部に対して、同一であってもよい。もちろん、必要に応じて、異なる用途、例えば、異なる靭帯又は異なる組織に対して、異なる寸法のアプリケータが提供されてもよい。しかしながら、単一のアプリケータは、異なる動作のための多数の異なる挿入部に、適切であり得る。
【0022】
アプリケータは、使い捨てであってもよい。同一のアプリケータを異なる挿入部に使用し得るので、大量生産を、低コストで達成し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、アプリケータは、再使用可能であってもよい。異なる挿入部は、アプリケータが、異なる挿入部を用いて別の処置のために再び使用され得るように、取り付けられ、取り外されてもよい。したがって、挿入部は、置換可能及び/又は交換可能であることが好ましい。挿入部は再使用可能であってもよいが、使用後に使い捨てであることが、好ましい。
【0023】
アプリケータは、使用時に、刃具を組織の線維長に押し込むように配列された把持デバイスであってもよい。アプリケータは、プライヤであってもよい。プライヤなどの把持デバイスは、操作者が、例えば、鋏の動作を使用して、刃具を組織に押し込むなど、離れた位置から刃具に圧力をかけることを可能にするために、好都合である。
【0024】
器具は、アプリケータが刃具及びバックプレートを互いに向かって押し込めるように、刃具に面して配列され、刃具に対して移動可能であるバックプレートを備えてもよい。バックプレートは、それによって、刃具が、アプリケータによって(例えば、把持デバイス又はプライヤのハンドルの動作によって)その内部へと押し込まれ得るように、ある長さの線維組織を、定位置に保持してもよい。
【0025】
器具は、プレートを備えてもよく、プレートは、各刃具に位置的に対応する穴部を備え、アプリケータは、組織の線維長を通過した後に、穴部に向かって、所望により、穴部の内部へと、及び/又は穴部を通して、刃具を適用するように、配列されている。プレートは、上述のように、バックプレートとして機能してもよい。穴部は、刃具の幅に基づいて、かつ刃具の長さ、バックプレートの平坦度、又は線維の弾性に依存することなく、完全かつ確実な切断が達成され得るように、組織を通した刃具の連続移動を可能にする。異なるプレートが、異なる挿入部に対応して(したがって、刃具の異なる配列に対応して)設けられていてもよい。器具には、刃具の選択された挿入部と、適切な穴部を有する対応する選択されたプレートと、が取り付けられていてもよい。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態では、プレートは、アプリケータの一部であり、全ての挿入部に共通である。したがって、穴部は、全ての可能な挿入部からの、刃具の全ての可能な配列に対応していなければならない、すなわち、複数の異なる伸長程度を標的とする用途に好適でなければならない。いくつかの実施例では、(異なる伸長のための)異なる挿入部は、異なる数の刃具の群(例えば、列)を備え、プレートは、次に、使用され得る全ての可能な刃具の群に対応する、対応する穴部の群(例えば、列)を有してもよい。これは、単一の器具を複数の異なる挿入部と共に使用可能にし、任意の所望の標的とする伸長のために使用可能にする。これは、所望の伸長程度が決定されると、施術者は、単に、その伸長程度に対応する刃具の適切な配列を伴う適切な器具を選択し、それをアプリケータ内へと挿入し、切断を行うためにそれを線維組織に適用する必要があるので、施術者のために処置を大幅に簡略化する。
【0026】
器具は、好ましくは、組織の線維長に対して位置付けられるように配列され、かつ組織の線維長の長さ方向に垂直に、刃具の群を位置合わせさせるように配列された、位置合わせデバイスを備える。位置合わせデバイスは、刃具が適切な数の線維を切断するように、各群の刃具が線維長に対して適切に垂直に位置合わせされることを確実にする。位置合わせデバイスはまた、器具が組織の線維長を横切って延在して、その全幅を網羅することを確実にするように配列されてもよい。例えば、位置合わせデバイスは、プライヤ型器具の旋回軸の近くに位置付けられてもよく、刃具は、旋回軸及び位置合わせデバイスから離れて、器具の端部に向かって延在するように配列される。
【0027】
器具は、多くの異なる処置のために設計され得ることが理解されよう。例えば、工具は、手根靭帯又は外側側副靭帯(LCL)を長くするように設計され得、又はその他の関節及び位置の靭帯のために設計され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、器具は、内側側副靭帯伸長器具であってもよい。
【0028】
刃具(例えば、挿入部)は、金属及び/又はプラスチックを含む、任意の好適な材料から作製されてもよい。
【0029】
挿入部及び/又は器具は、その他の組織に引っ掛かることなく、又はその他の組織を損傷することなく、関節領域への容易な挿入を容易にするように、丸みを帯びた角部を有するように設計されてもよい。
【0030】
本発明の別の態様によれば、組織の線維長を伸長させる方法が提供されるが、本方法は、
組織の線維長の線維を切断するために器具を使用することであって、本器具が、
刃具の第1の群であって、刃具の第1の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第1の群と、
刃具の第2の群であって、刃具の第2の群が、切削幅及び非切削幅の交互配置されたセットを形成するように器具の幅にわたって離間された複数の刃具を備える、刃具の第2の群と、を含む器具を、使用することを含み、
刃具の第2の群の各刃具は、刃具の第1の群の少なくとも1つの非切削幅に少なくとも部分的に重なるように位置付けられている。
【0031】
本方法は、上述した実施形態のいずれかに記載された器具を使用することを含んでもよく、所望により、上述した好ましい又は所望による特徴のいずれかを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
ここで、特定の本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照しながら、ほんの一例として説明する。
【
図1a】本発明の一実施形態による器具挿入部を上から見た図を示す。
【
図1b】使用時に、器具が靭帯とどのように位置合わせされるかを示す。
【
図3a】プライヤ型アプリケータ器具の断面図を示す。
【
図3b】プライヤ型アプリケータ器具のヘッドを示す。
【
図5】本発明による器具の適用後のブタ靭帯の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、本発明の好ましい実施形態のものである。
【0034】
図1aは、本発明の一実施形態による器具を上から見た図を示す。本器具は、靱帯のような組織の線維長の線維を、その線維長の伸展又は伸長を引き起こす目的で切断するためのものである。このような伸長の1つの一般的な用途は、人工膝関節全置換手術後の、内側側副靭帯(MCL)の靭帯バランシングに関するものである。本発明の適用は、ここでは、MCL上でのこのような靭帯バランシング手術に関連して説明されるが、器具及び技法は、その他の適用においても適用可能であることが理解されよう。例えば、器具は、膝(例えば、外側側副靭帯)、股関節、肘等のその他の関節の靭帯を含む手術など、靭帯が伸長される任意のその他の用途で使用されてもよい。本器具は、手根靱帯などの靱帯を伸長させるためにもまた使用されてもよい。器具が動作する機械的原理は、これらの様々な手順にわたって、一般に同じである。
【0035】
図1は、MCL靭帯バランシング手順で使用するために設計された器具100を示す。器具100は、
図1において上から示され、
図2a及び
図2bにおいて、2つの斜視図でもまた示されている。
【0036】
器具100は、基部101から形成され、いくつかの刃具102が、基部101の片側から延在する。刃具102は、刃具102の5つの群103a~群103eからなるパターンで配列されている。各群103a~103eは、各群103の刃具102が、靱帯の異なる線維を切断するように、器具100の幅方向に、次第に更にオフセットされている。刃具102の5つの群103a~103eは一緒になって、刃具の傾いた又は傾斜したグリッドを形成する。
【0037】
本器具100は、複数の別個の場所で組織を穿刺し、各穿刺(又は切断)が、靭帯の少数の線維を切断することによって、靭帯バランシングのためのベルマンズ技法の穿刺を行う。しかし、ベルマンズ技法の現在の適用に対する本器具の利点は、穿孔(又は切断)が、全て同時に、かつ事前に配列されたパターンで行われ、それによって、予測可能かつ反復可能な数の線維が切断され、それによって、靱帯の予測可能かつ反復可能な伸展が達成されることである。なお、器具100が、所定のパターンの刃具102を有するので、靭帯の完全な分離(又は切断)のリスクもまた低減されるが、この所定のパターンは、切断が、靭帯の領域にわたって広がり、靭帯に十分な強度を残すことを確実にするように設計され得る。
【0038】
刃具102の各群103a~103eは、7つの刃具102のセットを含む。各群103a~103e内の刃具102は、刃具102が、切断幅(すなわち、靱帯の線維を切断する器具の幅の部分)を形成し、刃具102間の空間104が、非切断幅(すなわち、靱帯の線維を切断しない器具の幅の部分)を形成するように、規則的に離間されている。5つの群103a~103eは全て、器具の幅に沿って異なる量だけオフセットされているので、刃具の各群は、靭帯の線維の異なるセットを切断させる。刃具の2つの隣接する群、すなわち群103a及び103bを比較すると、隣接する群内の対応する刃具間に重なりがあることが分かる。例えば、群103bの刃具113は、群103aの非切断空間114と部分的に重なり合うだけでなく、群103aの刃具112と部分的に重なり合う。非切断空間114に重なり合う刃具113の部分は、群103aのいずれの刃具によっても切断されなかった靭帯の線維を、線維が非切断空間114を通過する際に切断する。これは、使用時に、器具が、靭帯120の線維121とどのように位置合わせされるかを概略的に示す
図1bから分かる。線維121はそれぞれ、靭帯120の長さにわたって延在し、線維121は、靭帯120の幅にわたって平行に配列される。器具100は、器具幅が靭帯120の幅に平行になるように、すなわち、刃具102の各群103a~103eが靭帯120の幅を横切って延在して、それによって、線維121の一部を切断するが、線維121のその他の部分は切断しないように配列される。
図1bにおいて、長さ方向は、矢印Lによって示され、幅方向は、矢印Wによって示される。
【0039】
図1aでは、5つの群103a~103eのそれぞれは、異なる量だけ器具100の幅に沿って右にオフセットされている。第2~第5の群103b~103eのそれぞれは、ベースオフセット量の倍数だけオフセットされている。ベースオフセット量は、第1群103aに対する第2群103bのオフセットである。したがって、隣接する群103a~103eの任意の対は、それらの2つの群103a~103e間で同じオフセットを有する。したがって、各群103b~103eは、上記の群103a~103dの非切断空間104に重なり合うように位置付けられた、刃具102を有する。したがって、第1の群103aを超える各追加の群103b~103eは、上記の群によって切断されなかった線維の新しいセットを切断する。この場合、各追加の群は、全体として器具100によって切断される線維121の総数を増加させる。靭帯120のより多くの線維121が切断されるにつれて、靭帯上の荷重は、より少ない線維によって共有され、したがって、靭帯は、その荷重の下で伸長する。したがって、器具100内の刃具102の群103a~103eの数を注意深く選択することによって、切削の総量、したがって、伸長の総量を選択し得る。例えば、
図1aの最初の2つの列103a~103bのみを有する器具100は、ある量の線維121を切断し、ある程度の伸長をもたらす。比較すると、
図1aの最初の3つの列103a~103cを有する器具100は、より多くの量の線維121を切断し、より大きな程度の伸長をもたらす。特定の状況において、切断された線維121の数と靭帯120の伸長程度との間に実質的に線形の関係が存在することが見出されている。これは、MCLの場合である。したがって、異なる器具100は、刃具102の異なる数の群103a~103eを用いて容易に作製され得るが、これらの器具100のそれぞれは、標的組織(例えば、靭帯)の異なる程度の伸長に対応する。これにより、所望の伸長に達するまで穿刺と再測定とを繰り返す必要があるベルマンズのプロセスの反復部分が削除されるため、手順が大幅に簡素化され、能率促進がなされる。
【0040】
刃具102の各群103a~103e内で、群103a~103e内の各刃具102は、同一であってもよい、又は異なる寸法/幅であってもよい。しかしながら、全ての刃具102の幅が一緒に追加される場合に、それらは、その群103a~103eのための全切断幅を提供する。群103a~103eの全ての刃具102が同一である場合、次に、全切削幅は、単に、1つの刃具102の幅に群103a~103e内の刃具102の数を乗じたものである。同様の計算が、群103a~103eの全非切削幅に対して実行されてもよい。再び、非切断幅の大部分は、いくつかの実施形態では、同一であってもよい(但し、それらはまた、不規則に離間された刃具102を伴って、不規則であってもよい)。しかしながら、各群103a~103eの各端部には非切削幅もまた存在するが、これは、典型的には、オフセットが異なるので、群103a~103e間で変化する。各群103a~103eの刃具102の数が同じであり、器具100が長方形である(又は少なくとも切削領域に平行な辺を有する)場合、次に、各群103a~103eの全切削幅+全非切削幅は、一定である。
【0041】
図1a、
図2a、及び
図2bに示す実施形態では、各群103a~103e内の刃具102は直線状の列に配列されているが、正しい数の線維121が群103a~103eによって全体として切断される限りにおいて、これは、所望の切断量を達成するために厳密に必要ではないことが理解されよう。
【0042】
図2a及び
図2bの斜視図から最もよく分かるように、本実施形態における刃具102は、カニューレ202である。各カニューレ202は、点204に向かって先細になる先細状の先端部203を有する中空管である。先細状の先端部203は鋭利であり、切断ブレードとして機能し、管の軸に平行に組織内へと押し込まれる際に組織を薄く切る。カニューレ202は、靭帯バランシングのためのベルマンズ技法の標準的な適用における切断デバイスとして使用されるので、本実施形態において使用され、それによって、ベルマンズ技法と同様の様式で組織に穿刺を行い、それによって、同様の結果を達成する。しかしながら、その他の種類の刃具もまた使用され得ることが、理解されよう。例えば、先の尖った外科用メスの刃を代わりに使用して、ほぼ同じ様式で、組織を切開してもよい。
【0043】
図1、
図2a、及び
図2bに示す特定の実施形態では、カニューレ202は、直径1.6mmのカニューレである。各群103a~103eのカニューレ202は、それらの中心が3mm離間している。これにより、1つの群103a~103eのカニューレ202の各隣接する対の間に、1.4mmの非切断幅を残す。各カニューレ202は、その直径全体にわたって(例えば、直径1.6mmのカニューレに対して、1.6mmの幅にわたって)線維121を切断し得るが、カニューレ202の円筒形状に起因して、それらはまた、いくらかの線維121を切断するのではなく、邪魔にならないように、すなわち、側面に押し出してもよい。これは、カニューレ202の直径よりわずかに小さい有効切断幅を、もたらし得る。これは、器具100を設計する場合に考慮されてもよく、特に、隣接する群103a~103eの刃具102間の重なりの量は、これが、各新しい群103a~103eでどれくらいの新しい線維121が切断されるか、並びに重ね合わされた刃具102によって、どれくらいの線維121が2回切断され得るかに、影響を及ぼすためである。
【0044】
カニューレ202の直径(又はその他の刃具102の幅)は、当然ながら、異なる用途に対して、並びに異なる程度の切断及び異なる程度の重なりを達成するために異なり得る。
【0045】
上述したように、
図1a、
図2a、及び
図2bに示す器具100では、群103a~103eは、長さ方向におけるそれらの位置に従って、幅方向に、次第に更にオフセットされる。これは、刃具102の傾斜グリッドを形成する。これらの図に示される特定の実施例では、傾斜の角度は11.7度であるが、これは一例にすぎず、多くのその他の角度が可能であることが、理解されよう。角度は、切断幅及び群103a~103e間の長さ方向の間隔と共に、刃具間の重なりの量を決定し、したがって、各列によって切断される新しい線維の数を決定する。(幅方向及び長さ方向の両方において)中心間隔が3mmである、直径1.6mmの領域のカニューレの場合、グリッドの傾斜の最適角度は、内側側副靭帯バランシング手順の場合、5度~25度であることが、見出されている。5度未満の角度は、通常寸法のカニューレによる靭帯のより多くの二重切断をもたらし、それぞれの新しい群103a~103eによって切断される十分な追加の線維121をもたらさない。25度超の角度は、多くの利益を追加することなく、器具100を、より広げるだけである。刃具の一般的な寸法及び間隔では、このような大きな角度はまた、刃具の重なり、すなわち、二重切削の量を増加させる傾向にある。
図1a、
図2a、及び
図2bに示す実施例では、各行103a~103eは、前の行103a~103eから0.6mmだけオフセットされている、すなわち、オフセットは、0.6mm、1.2mm、1.8mm、及び2.4mmである。
【0046】
器具100はまた、
図3及び
図4のものなどの、アプリケータに器具100を固定するために使用され得る、2つの取り付け穴部130を有する。このようにして、器具100は、より大きな器具300に対する取り外し可能な挿入部となる。
【0047】
図3aは、プライヤ型器具の形態の、アプリケータ300を示す。アプリケータ300はハンドル310を有しており、これらのハンドルは、一緒に圧搾された場合に、本体320とバックプレート330とを一緒にする。挿入部340が、本体320に取り付けられている。挿入部340は、
図1a、
図2a、及び
図2bに示すような器具100であってもよく、取り付け穴部130を通過する固定デバイス350(例えば、ねじ又はクリップ)を介して、本体320に取り付けられ得る。
【0048】
バックプレート330は、その内部に形成された穴部360を有するが、1つの穴部は、挿入部340内の各刃具に対応し、ハンドル310が完全に一緒に圧搾された場合に、本体320が完全に移動する際に挿入部340内の刃具102が穴部360を通過するように配列される。挿入部340は、取り外し可能かつ交換可能であり、新しい挿入部が各手順のために使用され得るように、使い捨てであってもよい。バックプレート330は、同様に、取り外し可能、交換可能、及び使い捨てであってもよいが、本実施形態では、アプリケータ300の恒久的部分である。バックプレート330は、アプリケータ300の恒久的な特徴部であるため、アプリケータ300と共に使用され得る、任意の挿入部340上に存在し得る、任意の刃具102に対応する、孔360を有する必要がある。上述したように、異なる器具100(したがって、異なる挿入部340)は、器具100が達成するように設計されている靱帯の所望の伸長程度に応じて、刃具102の異なる数の群103a~103eを有してもよい。伸長量を増加させることは、単に刃具102の追加の群103a~103eを追加することを含むので、より長い伸長のための器具100は、理想的には、より短い伸長のための器具100でもまた使用される刃具102の、少なくともいくつかの群103a~103eを含み得る。このようにして、バックプレート330は、刃具102が特定の挿入部340上に存在するか否かにかかわらず、穴部360が存在するように、刃具102の可能な各群103a~103eに対応する穴部360を有し得る。
【0049】
図3bは、アプリケータ器具300のヘッドを示すが、断面図ではない。この図は、アプリケータ300のサイドプレート370が、切断方向(すなわち、刃具102が靱帯内へと押し込まれる方向)に平行であり、バックプレート330に垂直な位置合わせ面380を備えて形成されていることを、示す。位置合わせ面380は、使用時に、挿入部340を線維に対して定義された配向で位置合わせするように靭帯(又はその他の組織)の縁部まで押し上げられる。これは、刃具102の選択されたパターンが、線維121に対して正しい配向で適用されることを確実にし、それによって、正しい切断比が達成され、したがって、所望の伸長が確実に達成されることを、確実にする。
【0050】
図4は、アプリケータ300の代替形態を示しており、この場合、一方の端部に、バックプレート330及び切断器具100が設けられ、他方の端部に、操作ハンドル310が設けられた、鉗子の形態である。切断器具100は、
図3のプライヤと同様に取り外し可能であってもよいが、またアプリケータ300の恒久的な特徴部であってもよい。アプリケータ300は、再使用可能であってもよく、(好適に設計された器具100を伴う)異なるアプリケータ300が、標的組織の各所望の伸長のために提供されてもよい。例えば、異なるアプリケータ300には、2列、3列、4列、及び5列の刃具が設けられてもよく、これらのそれぞれは、靭帯の異なる伸長程度に対応する。
【0051】
MCL靭帯バランシング手順におけるアプリケータ300の使用は、以下の通りであってもよい。最初に、膝靭帯のバランスを標準として試験して、所望の伸長程度を決定する。次に、所望の伸長程度に従って、適切な挿入部340が選択される。挿入部340は、挿入部340上に存在する群(又は行)103a~103eの数によって、容易に認識されてもよい。例えば、刃具の各列が、(純粋に例として)約1mmの伸長を所与しし、4mmの伸長が望ましい場合に、次に、挿入部340は、4列の刃具を有してもよく、したがって、容易に認識され、目で確認される。挿入部340は、取り付け穴部130を通して、アプリケータ300に取り付けられて、デバイス350を固定してもよい。次に、アプリケータ300は、MCLが、挿入部340の刃具102とバックプレート330との間にあるように、かつ、刃具102が、靱帯線維121に対して適切に位置付けられるように、靱帯の縁部が両方の位置合わせ表面380と接触するように位置付けられる。ハンドル310は、刃具102が、靭帯120及びバックプレート330の穴部360を通過し、それによって、靭帯120の線維121を所定の量及びパターンで切断するように、完全に一緒に圧搾される。次に、ハンドル310が、再び分離され、アプリケータ300が、靭帯120から取り外される。所定の量及びパターンでの靭帯における穿刺の位置付けは、所望の程度の伸長を確実に提供することが、期待され得る。
【0052】
図5は、上述したような器具で穿刺された、ブタの内側側副靱帯の写真である。靭帯組の穴500を、はっきりと見ることができる。各穴500は、ここでは、カニューレ刃具202によって作られており、穴500の各列510は、靱帯の異なる線維(図中の矢印510にほぼ垂直に延びる靱帯線維)を切断するように、その他の列510からオフセットされていることが分かる。
【国際調査報告】