(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システム用の乾燥ヒーター検出
(51)【国際特許分類】
A24F 40/53 20200101AFI20240808BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20240808BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20240808BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/46
A24F40/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513085
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022073178
(87)【国際公開番号】W WO2023025673
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アントニウ エフティシア
(72)【発明者】
【氏名】エメット ロバート ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】メーザー ベンジャミン ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ローベリー アーチャー ガイ クリフト
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA06
4B162AA22
4B162AB14
4B162AC22
4B162AC34
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4B162AD23
(57)【要約】
本発明は、複数の個別の加熱サイクル中の発熱体への電力供給を調節することと、加熱サイクル中の所定の時間間隔での発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを決定することと、n回の先行する加熱サイクルの間の発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtの移動平均値s
nを計算することであって、nが1よりも大きい整数である、計算することと、発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを計算された移動平均値と比較することと、電気抵抗比ΔR/Δtが移動平均値よりも閾値を超えて大きい時に不具合を決定することと、発熱体での不具合が決定されるかどうかに基づいて発熱体への電力の供給を制御することと、を含む、電気的に作動するエアロゾル発生システムにおける発熱体への電力供給の制御方法に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に作動するエアロゾル発生システムにおける発熱体への電力供給の制御方法であって、
複数の個別の加熱サイクル中の前記発熱体への前記電力供給を調節することと、
加熱サイクル中の所定の時間間隔で、前記発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを決定することと、
n回の先行する加熱サイクルの間の前記発熱体の前記電気抵抗比ΔR/Δtの移動平均値s
nを計算することであって、nが1よりも大きい整数である、計算することと、
前記発熱体の前記電気抵抗比ΔR/Δtを、前記計算された移動平均値と比較することと、
前記電気抵抗比ΔR/Δtが前記移動平均値よりも閾値を超えて大きい時に不具合を決定することと、
前記発熱体での不具合が決定されるかどうかに基づいて、前記発熱体に供給される電力を制御することと、を含み、
不具合を決定するための前記閾値が、前記電気抵抗比ΔR/Δtの標準偏差σから決定される、方法。
【請求項2】
電力が、パルスモードでの各加熱サイクル中に前記発熱体に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電力が、固定電力モードまたは固定負荷サイクルモードで前記発熱体に供給される、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記電気抵抗比ΔR/Δtの前記移動平均s
nを決定するためのnが、5~30であり、好ましくは10である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
不具合を決定するための前記閾値が、以前の50、30、10回の加熱サイクル、好ましくは以前の30回の加熱サイクルで決定された前記抵抗比ΔR/Δtの前記移動平均を考慮に入れて、前記電気抵抗比ΔR/Δtの前記標準偏差σから決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
不具合を決定するための前記閾値が、前記電気抵抗比ΔR/Δtの前記標準偏差σと所定の一定値との積から決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の一定値が、前記エアロゾル発生システムで使用される発熱体の前記タイプに依存する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の一定値が、メッシュヒーターについては約2.5、セラミックヒーターについては1.25、芯・コイル型ヒーターについては約1.5になる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エアロゾル発生システムが、不具合が決定された場合にロック状態に移行される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ロック状態で所定の時間が経過した後、前記発熱体の動作が再開されうるように、前記エアロゾル発生システムがロック解除される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記発熱体がメッシュヒーターであり、前記電気抵抗比ΔR/Δtが、加熱サイクルの第一の二つの加熱パルスで決定された最大抵抗値から決定される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記発熱体がセラミックヒーターであり、前記電気抵抗比ΔR/Δtが、連続する加熱サイクルで決定されたR
maxの差から決定される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記発熱体が芯・コイル型発熱体であり、前記電気抵抗比ΔR/Δtが、連続する加熱サイクルで決定されたR
rangeの差から決定される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
電気的に作動するエアロゾル発生システムであって、
発熱体の近傍のエアロゾル形成基体を加熱するための発熱体と、
前記発熱体に電力を供給するための電源と、
電気回路であって、
複数の個別の加熱サイクル中の前記発熱体への前記電力供給を調節するように、
所定の時間間隔で、前記発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを決定するように、
n回の先行する加熱サイクルの間の前記発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtの移動平均値s
nを計算することであって、nが1よりも大きい整数である、計算をするように、
前記発熱体の前記電気抵抗比ΔR/Δtを、前記計算された移動平均値s
nと比較するように、
前記電気抵抗比ΔR/Δtが前記移動平均値s
nよりも閾値を超えて大きい時に不具合を決定するように、
前記発熱体での不具合が決定されるかどうかに基づいて、前記発熱体に供給される電力を制御するように、構成された電気回路と、を備え、
不具合を決定するための前記閾値が、前記電気抵抗比ΔR/Δtの前記標準偏差σから決定される、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電気的に作動するエアロゾル発生システム内で発熱体を動作させるための方法に関する。特に本発明は、電気加熱式エアロゾル発生システムにおける望ましくないヒーター状態の検出に関する。
【0002】
エアロゾル発生システムにおいて、液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵部分から電気発熱体に送達されうる。目標温度まで加熱されるのに伴い、エアロゾル発生基体は気化してエアロゾルを形成する。液体基体は、毛細管構成要素を介して発熱体に送達されてもよい。毛細管構成要素内のエアロゾル発生基体の量が枯渇した時、発熱体はいわゆる乾燥状態に入ってもよい。こうした乾燥状態において、発熱体は容易に過熱しうる。発熱体の過熱は、エアロゾルの品質に影響を与えうる。さらに、発熱体の過熱は、発熱体の破壊につながりうる。
【0003】
電気的に作動するエアロゾル発生システムで使用される発熱体の乾燥状態を検出するための努力がなされてきた。しかしながら、エアロゾル発生基体の枯渇を検出するためのこれらの技法の多くは依然として、結果として得られる電気抵抗の変化を検出するためにヒーター温度を実質的に上昇させる必要がある。さらに、これらの方法の一部は、初期ヒーター抵抗を検出する必要がある。しかしながら、発熱体の絶対抵抗値は典型的に、1オーム未満であり、乾燥状態に入る発熱体の抵抗変化は、わずか数ミリオームになってもよい。絶対抵抗値のこうした小さい変化は、エアロゾル発生システム内で識別するのが困難である場合がある。
【0004】
従って、発熱体の不具合な状態を確実に検出することを可能にする方法を提供することが望ましい。発熱体の不具合な状態を確実に検出することを可能にする、かつ様々なタイプの発熱体と併用しうる方法を提供することがさらに望ましいであろう。不具合な状態に達する前に発熱体の動作を防止する発熱体の動作方法を提供することが、さらに望ましいであろう。
【0005】
本発明によると、電気的に作動するエアロゾル発生システムにおける発熱体の電力供給を制御する方法が提供されている。方法は、複数の個別の加熱サイクル中に発熱体への電力供給を調節する工程と、所定の時間間隔で発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを決定する工程と、n回の先行する加熱サイクルの間の発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtの移動平均値snを計算する工程であって、nは1よりも大きい整数である、計算する工程とを含む。方法は、発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを、計算された移動平均値と比較する工程と、電気抵抗比ΔR/Δtが移動平均値snよりも閾値を超えて大きい時に不具合を決定する工程とをさらに含む。発熱体に供給される電力は、発熱体での不具合が決定されるかどうかに基づいて制御される。
【0006】
発熱体への所与の電力供給源について、発熱体での最大温度は、利用可能なエアロゾル形成基体の量によって制限される。これは、エアロゾル形成基体の気化の潜熱が理由である。従って、発熱体での最大電気抵抗は、発熱体で利用可能なエアロゾル形成基体の量に関連しうる。例えば、エアロゾル形成基体の欠如は、複数の連続的な加熱サイクルにわたって検出される最大電気抵抗の著しい上昇をもたらしうる。従って、空のカートリッジは、一回の吸煙から次の吸煙までの最大電気抵抗の増大が閾値を超える場合に検出されうる。
【0007】
ところが、発熱体でのエアロゾル形成基体の供給は、カートリッジの寿命にわたって段階的に減少しうる。エアロゾル形成基体が枯渇し始めると、発熱体の最大抵抗もまた、連続的な吸煙にわたって漸進的に増大しうる。従って、不具合の間、二つの連続的な吸煙の間に検出される最大抵抗に実質的な差がない場合がある。これは、空のカートリッジが迅速に検出されない場合があることを意味する。
【0008】
乾燥状態において、発熱体は摂氏1000度超に達しうる。これは典型的に、メッシュヒーターのためのフィラメント破断またはセラミックヒーターの即時破断など、発熱体の永久的な破壊につながる。発熱体の破壊とは別に、望ましくないエアロゾル構成成分が形成されうる。
【0009】
乾燥した芯の状態は、枯渇したカートリッジによって引き起こされることができ、その結果、発熱体に搬送される可能性がある十分な液体を利用できない。乾燥した芯の状態はまた、他の状況によって引き起こされうる。乾燥した芯の状態は、エアロゾル発生装置の誤配置から生じる可能性があり、これに起因して液体基体の供給が停止または減速される。乾燥した芯はまた、ユーザーの過度の引き出しによっても引き起こされうる。乾燥した芯の状態の原因とは無関係に、乾燥した芯の状態における発熱体の動作は防止されるべきである。それ故に、本発明は、潜在的な乾燥した芯の状態の発生をユーザーに警告するように構成されている。乾燥した芯の状態がカートリッジの枯渇によって引き起こされる場合、動作は通常、カートリッジの交換または再充填後にのみ再開されるべきである。エアロゾル発生装置の誤配置などの他の原因については、エアロゾル発生装置の一時的なロック後に動作を再開してもよい。
【0010】
発熱体の温度と抵抗の間の相関関係は、以下の式によって表されることができる。
【0011】
【0012】
公称抵抗およびアルファ値αは、使用される発熱体のタイプに依存する。典型的に使用される発熱体の公称抵抗は非常に低くてもよく、また1オーム未満であってもよい。
【0013】
メッシュヒーターのアルファ値は、約0.00119であってもよく、その公称抵抗は、0.58オームになってもよい。セラミックヒーターのアルファ値は、約0.00016であってもよく、その公称抵抗は、約0.98オームになってもよい。芯・コイル型ヒーターのアルファ値は、約0.00013であってもよく、その公称抵抗は約1.6オームになってもよい。
【0014】
すべての発熱体は、乾燥した芯の状態に入る時に電気抵抗の上昇を示す一方で、電気抵抗の絶対的な増大は非常に小さくてもよく、約0.006オームになるに過ぎない場合がある。それ故に、絶対抵抗の変化に基づく乾燥した芯の状態の検出は、不十分な電気的接続によって妨げられる場合がある。こうした不十分な電気的接続は、全体的な抵抗の同様のまたはさらに高い変化につながる場合があり、誤ったトリガがシステムを不必要にロックする原因となりうる。
【0015】
驚くべきことに、乾燥した芯の状態の信頼できる検出は、所定の時間間隔で、発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtをモニターすることによって実施されることができることが見いだされた。
【0016】
より詳細に、所与の発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtは、乾燥した芯の状態に入る直前または入り次第、特徴的な増加を示すことが見いだされた。所与の発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtの変化は非常に小さい場合があるため、電気抵抗比ΔR/Δtの統計的に有意な変化を識別するために統計的方法が必要である。提案された方法の一つの利点は、所与の発熱体の現在のパラメータが繰り返し決定され、このパラメータの以前の値と比較されるというところにある。それ故に、発熱体の性能は、その以前の性能と連続的に比較される。それ故に、システムは、それ自体と連続的に比較される。これは、発熱体が望ましい動作範囲から離れ始めるかどうかを確実に決定することを可能にする。それ故に、構造的に同一の発熱体間の製造上の差異は、効果的に補正される。
【0017】
以下の式は、所与の発熱体が乾燥した芯の状態に入ろうとしているか、または入ったかどうかを決定するのに有用であることが特定されている。
【0018】
【0019】
この式において、ΔR/Δtは電気抵抗比であり、snは電気抵抗比の以前のn値の移動平均であり、σは電気抵抗比の以前の値の数に基づいて計算された標準偏差であり、Aは発熱体の各タイプについて経験的に決定される数値である。
【0020】
標準偏差σは、限られた数の電気抵抗比の以前の値に基づいて計算される。従って、この値は、実際には標準偏差の真の統計的尺度ではない(真の標準偏差は、すべての測定値を考慮に入れて加熱サイクルの終了時にのみ決定されることができる)。標準偏差σはまた、各サンプルの重み付けを計算するための平均値として記述されてもよい。この平均値はむしろ、ある長さの移動平均であり、真のサンプル平均ではない。本発明に関して、偏差σは、指数平滑法に基づく標準偏差(EWMSD)として見なされうる。サンプリング期間の開始時に、各サンプルの重量は指数関数的に減衰する。これは、加熱プロセスの開始時に加熱プロセスがまだ均一ではなく、個々の偏差がかなり高いことが検出されているため、エアロゾル形成基体の加熱において特に有用である。
【0021】
この平均値を使用する目的の一つは、データ使用量および計算時間を最小化することである。この方法によって正確性と統計的有効性は低下するものの、全体的な性能は向上する。減少された数の値を計算する必要があるため、モニタリングプログラムは、高速サンプリング速度で長期間実行することができる。
【0022】
式(2)から分かる通り、本発明の方法は、電気抵抗比の標準偏差σの統計的尺度を決定することを含む。この統計値は、式(2)においてσと呼ばれる。
【0023】
さらに、以前のn値の移動平均snが決定される。式(2)を用いて、電気抵抗比の新しい値を電気抵抗比の以前のn値の移動平均snと比較することによって、電気抵抗比ΔR/Δtの統計的に有意な増加が検出される。
【0024】
この差が、計算された標準偏差σと経験的に決定された所定の一定値Aとの積よりも高い場合、統計的に有意な増加が決定される。このような場合、システムは、安全な動作をさらに確実にするために特定の措置を講じるように構成されている。システムは、ロックアウトモードに入るように、かつシステムがユーザー体験を継続することを防止するようにトリガされてもよい。別の方法として、システムは、システムが乾燥段階に入ったことを確認するために、再確認するようにトリガされてもよい。
【0025】
再確認の工程は、単一のスパイク値がシステムの動作を不当に防止することを防止するのに有用である。しかしながら、電気抵抗比の統計的増加が再確認される場合、システムはその後ロックアウトモードに入ってもよく、このモードにおいて、さらなる動作が防止される。次に、ロックアウトの原因が解決された場合にのみ、動作は再開されうる。典型的に、ユーザーは、消費されたカートリッジを再充填または交換する必要があるであろう。
【0026】
本発明は一般に、液体エアロゾル形成基体が加熱される任意の種類の発熱体とともに使用されうる。発熱体は、メッシュヒーター、芯・コイル型ヒーター、またはセラミックヒーターを含んでもよい。
【0027】
芯・コイル型ヒーターは、先行技術において容易に公知であり、液体貯蔵部分と接触する多孔性要素を本質的に備える。液体エアロゾル形成基体は、毛細管作用を介して、加熱コイルが周りに巻かれる多孔性要素の一部分に向かって移動される。動作中、加熱コイルによって発生した熱は、液体を気化するために、かつ最終的にエアロゾルを形成するために使用される。
【0028】
芯・コイル型ヒーターの場合、抵抗は加熱サイクル全体を通して着実に増大するが、発熱体が乾燥状態に入ると急速に上昇する。
【0029】
メッシュヒーターは、例えば相互に平行に配列されたフィラメントのアレイであってもよい。メッシュは織られていてもよく、または不織であってもよい。メッシュは、異なるタイプの織り構造または格子構造を使用して形成されてもよい。別の方法として、導電性発熱体は、フィラメントのアレイまたはフィラメントの織物から成る。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物はまた、液体を保持するその能力によっても特徴付けられる場合がある。
【0030】
発熱体のフィラメントは、適切な電気特性を有する任意の材料で形成されてもよい。適切な材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料と金属材料でできた複合材料が挙げられるが、これらに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。
【0031】
発熱体の導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、0.3オーム~4オームであってもよい。電気抵抗は0.5オーム以上であることが好ましい。導電性フィラメントのメッシュ、アレイ、または織物の電気抵抗は、0.6オーム~0.8オームであることがより好ましく、約0.68オームであることが最も好ましい。
【0032】
メッシュヒーターの場合、最大抵抗は発熱体の湿潤状態の吸煙間で非常に一貫していて、乾燥状態で急速に上昇することが分かっている。
【0033】
セラミックヒーターは、適切な任意のセラミック材料を含みうる。セラミック材料は、多孔性セラミック材料であってもよい。毛細管材料は、異なる液体物理特性で使用されるように、任意の適切な毛細管現象および空隙率を有してもよい。毛細管材料は、エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分から運ぶように構成されうる。
【0034】
セラミックヒーターは、発熱体の加熱部分を形成する抵抗材料を含んでもよい。抵抗性材料には、例えばドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料と金属材料とでできた複合材料が挙げられうる。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル白金、金、銀が挙げられる。
【0035】
セラミックヒーターの場合、セラミック発熱体が乾燥し始める時に、数回の吸煙で抵抗が増大する。抵抗はその後減少するが、抵抗ヒーター部分が変形し始めると時に、再び著しく増大する。
【0036】
本発明の方法は、従来のメッシュヒーター、芯・コイル型ヒーター、およびセラミックヒーターについて、最初の乾燥した吸煙の開始時または終了時に乾燥した芯の状態を検出するために首尾よく使用された。それ故に、方法は、システムが乾燥段階に入ることを早期検出するために使用されることができる。
【0037】
電力はシステムの起動後に発熱体に連続的に供給されてもよく、または毎回の吸煙ごとなど、断続的に供給されてもよい。電力は、パルスモードで発熱体に供給されてもよい。
【0038】
パルスモードにおいて、電力は、電流パルスの形態で発熱体に供給されてもよい。電気回路は発熱体の電気抵抗をモニターするように、かつ好ましくは発熱体の電気抵抗に応じて、発熱体への電力供給を制御するように構成されてもよい。
【0039】
加熱サイクル中のパルスの数は、所与の装置にとって好適なものとして選択されてもよい。パルスの数は、加熱サイクル当たり1~50パルスになってもよい。パルスの数は、加熱サイクル当たり5~30パルスになってもよい。パルスの数は、加熱サイクル当たり10~20パルスになってもよい。
【0040】
パルスモードにおいて、発熱体は、固定電力(FP)モードまたは固定負荷サイクル(FDC)で動作されてもよい。固定電力モードは本発明で使用されるのに最も適していることが特定されている。
【0041】
本明細書で使用される「負荷サイクル」という用語は、信号がオンである時間の量と、信号がオフである時間の量とを指す。負荷サイクルはパーセントで与えられる。例えば、60%の負荷サイクルは、信号が60%の時間中オンであることと、信号が40%の時間中オフであることとを意味する。
【0042】
電気抵抗比の移動平均snを決定するために、標準偏差σを決定する場合よりも少ない値を考慮に入れることが好ましい。移動平均snは、電気抵抗比ΔR/Δtの以前のn値を考慮して決定されてもよく、nは1~30の範囲である。移動平均snは、電気抵抗比ΔR/Δtの以前のn値を考慮して決定されてもよく、nは5~20の範囲である。移動平均snは、電気抵抗比ΔR/Δtの以前の10個の値を考慮して決定されてもよい。この値は、s10と呼ばれてもよい。限られた数の電気抵抗比の値のみを考慮することによって、計算能力を節約でき、その一方で、乾燥した芯の識別の十分な精度が維持される。
【0043】
不具合を決定するための閾値は、電気抵抗比ΔR/Δtの標準偏差σから決定されうる。電気抵抗比ΔR/Δtの標準偏差σは、電気抵抗比ΔR/Δtの以前のm値を考慮に入れて、抵抗比ΔR/Δtの移動平均として決定されてもよく、mは任意の所定の数であってもよい。Mは、50、30、または10になってもよい。標準偏差σを決定するために考慮される値の数は、利用可能な計算能力に依存しうる。標準偏差σを決定するために使用される値の数mは、移動平均snを決定するために使用される値の数nよりも大きくてもよい。
【0044】
不具合を決定するための閾値は、電気抵抗比ΔR/Δtの標準偏差σと一定値の積から決定されうる。一定値Aは、使用される発熱体の各タイプについて経験的に識別されてもよい。一定値Aを使用して、検出方法の感度を調整してもよい。
【0045】
一定値Aがより小さいほど、閾値がより低く、乾燥した芯の検出の感度がより高い。しかしながら、感度の増加は誤ったトリガや時期尚早なロックアウトを引き起こしうるため、低すぎる一定値Aを使用することで、信頼性が損なわれる場合がある。一方で、高すぎる一定値Aは、乾燥した芯の状態の検出の遅延をもたらしうるか、または検出を完全に防止しうる。
【0046】
最適な一定値Aは、使用される発熱体の各タイプについて決定されることが好ましい。
【0047】
メッシュヒーターの場合、一定値Aは1.5~3の範囲であってもよい。メッシュヒーターの場合、一定値Aは約2.5になってもよい。
【0048】
セラミックヒーターについては、一定値Aは0.5~2.5の範囲であってもよい。セラミックヒーターについては、一定値Aは約1.25になってもよい。
【0049】
芯・コイル型ヒーターについては、一定値Aは0.5~3の範囲であってもよい。芯・コイル型ヒーターについては、一定値Aは約1.0または約1.5になってもよい。
【0050】
エアロゾル発生システムのコントローラは、不具合が決定された場合に、エアロゾル発生システムをロック状態に移行するように構成されてもよい。不具合は、乾燥した芯の状態に入った、または入ろうとしている発熱体の検出であってもよい。乾燥した芯の状態において、エアロゾル形成は望ましくないエアロゾル構成成分をもたらしうる。乾燥した芯の状態での過剰な加熱はまた、発熱体の破壊につながりうる。ロック状態において、発熱体の動作は防止されうる。
【0051】
エアロゾル発生システムのコントローラは、一段階トリガプロセスでエアロゾル発生システムをロック状態に移行するように構成されてもよい。この場合、エアロゾル発生システムは、式(2)で定義される条件が満たされた時に、ロック状態に移行される。それ故に、電気抵抗比ΔR/Δtの統計的に有意な増加が生じ、かつ移動平均snからの電気抵抗比ΔR/Δtの偏差が閾値Aσを超える時に、エアロゾル発生システムはロック状態に移行される。ロック状態において、ユーザーがカートリッジを交換するか、または再充填するまで、発熱体の動作は防止される。
【0052】
エアロゾル発生システムのコントローラは、二段階トリガプロセスでエアロゾル発生システムをロック状態に移行するように構成されてもよい。この場合、エアロゾル発生システムは、式(2)で定義される第一のトリガ条件(本明細書において「乾燥状態」とも呼ばれる)が満たされると、一時的なロック状態に移行される。乾燥状態が検出されると、エアロゾル発生システムの動作は、発熱体が冷めるのを可能にするために一時的にのみロックされてもよい。この一時的なロックアウトの後、エアロゾル発生システムは動作を再開するように構成されている。次の加熱パルス内で再び統計的に有意な増加が検出され、式(2)が再び満たされる場合、エアロゾル発生システムは永久的なロック状態に移行される。しかしながら、次の加熱パルス内で統計的に有意な増加が検出されず、式(2)が満たされない場合、エアロゾル発生システムは湿潤状態に戻ったと見なされる。湿潤状態において、エアロゾル発生システムの通常の動作が可能である。
【0053】
乾燥状態の偽陽性検出の可能性が低いため、二段階トリガプロセスは、より信頼性が高い場合がある。単一の偽陽性検出は、エアロゾル発生システムのロックにつながらない。システムの永久的なロックは、乾燥状態の検出が後続の加熱サイクルで確認された時にのみ発生する。
【0054】
上述の通り、方法の感度は、式(2)の一定値Aの選択によって調整されることができる。二段階トリガプロセスにおいて、このパラメータは、第一のトリガ工程と第二のトリガ工程とで異なってもよい。特に、二段階トリガプロセスにおいて、一定値は第二のトリガ工程で増加されてもよい。第二のトリガ工程で一定値Aを増加させることによって、乾燥状態を検出するための閾値が増加し、第二の偽陽性結果の可能性が減少する。
【0055】
加えて、または別の方法として、二段階トリガプロセスにおいて、第一のトリガ工程における一定値Aはまた、意図的に減少させてもよく、その結果、第一のトリガ工程では感度が増加する。このより高い感度は、このようにすると乾燥した芯を適時に検出する確率が増加するため、有利でありうる。しかしながら、感度を増加させることによって、第一のトリガ工程において、より多くの数の偽陽性が得られる場合がある。このような場合、より高い一定値Aは、これらの偽陽性を効果的に識別するのに、かつ第二の工程の乾燥した芯の条件も満たされる時に、永久的なロックアウトに入るのにのみ有用でありうる。
【0056】
二段階プロセスにおける一時的なロックアウトの期間は、適切と見なされる通りに調整されてもよい。ほんの数秒のかなり短い期間であっても、発熱体の著しい冷えが達成されうる。一時的なロックアウトの期間は、適切と見なされる通りに選択されうる。一時的なロックアウトの期間は、装置の内部設計に応じて、またはユーザーの好みに応じて選択されうる。一時的なロックアウトの期間は、0.01~10秒の範囲でありうる。一時的なロックアウトの期間は、0.1~5秒の範囲でありうる。一時的なロックアウトの期間は、1~3秒の範囲でありうる。
【0057】
電気抵抗比ΔR/Δtは、加熱サイクルの最初の二つの加熱パルスで決定された最大抵抗値から決定されてもよい。この場合、ΔRは、加熱サイクルの第一の加熱パルスと第二の加熱パルスの間の最大抵抗の差であってもよい。Δtの値は、この加熱サイクルの二つの第一の加熱パルス間のパルス幅である。
【0058】
一部の発熱体において、乾燥吸煙状態が、吸煙の開始時に電気抵抗比ΔR/Δtによって既に識別されうることが見いだされた。吸煙の開始時に乾燥吸煙状態を決定することは、メッシュヒーターの形態での発熱体が使用される時に、特に信頼性が高い。加熱サイクルの開始時に乾燥吸煙を検出することは、乾燥吸煙が実際に実施される前に、乾燥吸煙を識別することを可能にしうる。それ故に、乾燥吸煙状態が発生する前に、システムが停止されてもよい。これは、望ましくないエアロゾル構成成分の吸入を防止するのに役立つ場合があり、発熱体への潜在的な損傷を防止するのに役立つ場合がある。
【0059】
電気抵抗比ΔR/Δtは、二つの連続する加熱サイクルの最大抵抗値の差から決定されてもよい。この場合、ΔRはまた、ΔRmaxと呼ばれてもよい。Δtの値は、加熱サイクルの長さである。この方法は、セラミック発熱体と併用した場合に信頼性があることが見いだされた。典型的な加熱サイクル中、最大温度および最大抵抗は、加熱サイクルの終了時に生じる。従って、この検出は、吸煙の終了時に、および対応する加熱サイクルの終了時に実施される。システムは乾燥吸煙状態が発生した直後に、停止されてもよい。これはまた、望ましくないエアロゾル構成成分の吸入を防止するのに役立つ場合があり、発熱体への潜在的な損傷を防止するのに役立つ場合がある。
【0060】
電気抵抗比ΔR/Δtは、二つの連続する加熱サイクルについて決定される加熱サイクル中の抵抗の増大の差から決定されてもよい。加熱サイクル中の抵抗の増大は、所与の加熱サイクルについて決定される最小抵抗値と最大抵抗値の間の差である。典型的に、この増加は、第一の加熱パルスと最後の加熱パルスで決定された抵抗値の差である。それ故に、各加熱サイクルについて、抵抗値の範囲の増加が決定される。抵抗値の範囲の著しい増加は、乾燥した芯の状態の発生を示す。この場合、ΔRはまた、ΔRRANGEと呼ばれてもよい。Δtの値は、加熱サイクルの長さである。この方法は、芯・コイル型発熱体と併用した場合に信頼性があることが見いだされた。繰り返しになるが、典型的な加熱サイクル中、最高温度および最大抵抗は加熱サイクルの終了時に生じるため、抵抗範囲は各加熱サイクルの終了時に決定される。従って、この検出は、吸煙の終了時に、および対応する加熱サイクルの終了時に実施される。システムは乾燥吸煙状態が発生した直後に、停止されてもよい。これはまた、望ましくないエアロゾル構成成分の吸入を防止するのに役立つ場合があり、発熱体への潜在的な損傷を防止するのに役立つ場合がある。
【0061】
乾燥した芯の状態が発生したか、または起ころうとしているかどうかを決定するための抵抗データを収集する適切な瞬間は、発熱体およびウィッキング要素の相対的寸法に依存しうる。
【0062】
メッシュ発熱体において、ウィッキング要素は、発熱体のサイズと比較して幾分小さくてもよい。従って、加熱サイクルの開始時に強い増加が見られうる。それ故に、加熱サイクルの開始時の抵抗読取値の評価は、対象の加熱プロセスにとって特徴的である。こうした評価は、乾燥吸煙を非常に早期に検出することを可能にする。
【0063】
セラミック発熱体において、ウィッキング要素は、発熱体のサイズと比較して大きくてもよい。従って、加熱サイクルの開始時に、やや遅い応答が見られる。それ故に、加熱サイクルの終了時の抵抗読取値の評価は、加熱プロセスを特徴付けるのにより信頼性が高い。それ故に、この場合、乾燥した芯の状態を識別するためにΔRmaxを使用することが有利でありうる。
【0064】
芯・コイル型発熱体において、ウィッキング要素は発熱体とほぼ同じサイズを有してもよい。この場合、加熱サイクルの開始時および終了時の抵抗読取値を評価することが好ましい。従って、加熱サイクル全体を通したヒーター温度の範囲の変化は、電気抵抗比にとって適切なパラメータである。それ故に、この場合、乾燥した芯の状態を識別するためにΔRRANGEを使用することが有利でありうる。
【0065】
ヒーターの検出抵抗を時間と比較して2Dプロットにプロットする時に、正規抵抗曲線は概して、大きい勾配を有してもよく、すなわち、液体沸点までは温度が上昇するにつれて開始時により迅速に上昇するが、沸点に近づくにつれて、液体を加熱するためにより多くのエネルギーが必要となり、温度と抵抗比の両方が減少する。こうした正規抵抗曲線の形状は、その間に角度θを画定する二つの脚によって画定される湾曲した「Γ」のように見える場合がある。二つの脚の間の角度θと、第一の抵抗読取値と最後の抵抗読取値の間の距離とは、芯の湿潤状態で非常に一貫している。芯が乾燥すると、電気抵抗比ΔR/Δtが増加し、結果としてより高めの抵抗がもたらされる。角度θと、最初の抵抗読取値と最後の抵抗読取値の間の距離とは、乾燥した芯領域内で増加する。
【0066】
電気抵抗比ΔR/Δtは、正規電気抵抗曲線の二つの脚によって画定される角度θから決定されうる。第一の脚は、電気抵抗曲線の第一の点を通る垂直線によって近似されてもよい。第二の脚は、第二の脚を画定する、電気抵抗読取値の線形平均として画定されてもよい。
【0067】
角度θの値は、電気抵抗比ΔR/Δtの測定値と見なされてもよく、また乾燥した芯の状態が発生したかどうかを決定するための式(2)で使用されてもよい。この方法は、メッシュ発熱体と併用した場合に信頼性があることが見いだされた。繰り返しになるが、典型的な加熱サイクル中、最高温度および最大抵抗は加熱サイクルの終了時に生じるため、抵抗範囲は各加熱サイクルの終了時に決定される。従って、この検出は、吸煙の終了時に、および対応する加熱サイクルの終了時に実施される。システムは乾燥吸煙状態が発生した直後に、停止されてもよい。これはまた、望ましくないエアロゾル構成成分の吸入を防止するのに役立つ場合があり、発熱体への潜在的な損傷を防止するのに役立つ場合がある。
【0068】
角度θは、電気抵抗曲線の二つの脚の傾斜から計算されてもよい。この目的のために、二つの脚は直線で近似されてもよい。次に、角度θは、これらの直線の間に画定される角度である。傾斜は、当業者に周知の任意の適切な方法によって決定されてもよい。傾斜は、所与の加熱サイクルの最初のデータ点と最後のデータ点を考慮することによって決定されてもよい。傾斜は、電気抵抗曲線の曲率k(t)を考慮に入れて決定されてもよい。角度θを決定するための例示的な方法は、さらに以下でより詳細に説明される。これらの方法のうち最も適切な方法がどれかは、必要とされる精度および電気抵抗データのノイズの多さに依存しうる。
【0069】
エアロゾル発生システムは電気回路を備えてもよい。電気回路はマイクロプロセッサを備えてもよく、これはプログラマブルマイクロプロセッサであってもよい。マイクロプロセッサはコントローラの一部であってもよい。電気回路はさらなる電子構成要素を備えてもよい。電気回路は、発熱体への電力供給を調節するように構成されてもよい。
【0070】
本明細書で使用される「電気的に作動するエアロゾル発生システム」とは、一つ以上のエアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるシステムを意味する。エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生装置とエアロゾル発生物品またカートリッジを備えてもよい。エアロゾル発生物品はエアロゾル形成基体を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、カートリッジの中に含有されてもよい。
【0071】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成しうる揮発性化合物を放出する能力を有する基体を意味する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。
【0072】
カートリッジを提供する利点は、エアロゾル形成基体が周囲環境から保護されることである。一部の実施形態において、エアロゾル形成基体の光誘発性分解が回避されうるように、周囲光も同様にカートリッジに入ることができない。さらに、高いレベルの衛生を維持することができる。
【0073】
エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置内の再充填可能な液体貯蔵部分内に含有されてもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生システム内の再充填可能なカートリッジ内に含有されてもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生システム内の使い捨て可能なカートリッジ内に含有されることが好ましい。前記カートリッジは、単一の使用セッション後に交換されてもよく、または複数の使用セッション後に交換されてもよい。これは、ユーザーが枯渇したカートリッジを安全かつ効率的な方法で交換することを可能にしうる。
【0074】
エアロゾル形成基体は室温で液相であってもよい。本明細書で使用される「液体」および「固体」という用語は、室温でのエアロゾル形成基体の状態を指す。エアロゾル形成基体は室温で流動性液体であってもよい。液体エアロゾル形成基体については、基体のある特定の物理的特性、例えば蒸気圧または粘性は、エアロゾル発生システムでの使用に適するように選ばれる。
【0075】
エアロゾル形成基体は植物由来材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、たばこを含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、均質化した植物由来材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、少なくとも一つのエアロゾル形成体を含んでもよい。エアロゾル形成体は、使用時に高密度の安定したエアロゾルの形成を容易にし、かつシステムの動作温度にて熱分解に対して実質的に抵抗性である任意の適切な周知の化合物または化合物の混合物でありうる。適切なエアロゾル形成体は当技術分野で周知であり、これには多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテート、またはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいエアロゾル形成体は、多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよびグリセリン(最も好ましい)など)である。エアロゾル形成基体は、他の添加物および成分(風味剤など)を含んでもよい。
【0076】
液体エアロゾル形成基体の場合、基体の特定の物理的特性、例えば蒸気圧または粘性は、エアロゾル発生システムでの使用に適するように選ばれる。液体は、加熱に伴い液体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含む、たばこ含有材料を含むことが好ましい。別の方法として、または追加的に、液体は非たばこ材料を含んでもよい。液体は、水、エタノール、または他の溶媒、植物抽出物、ニコチン溶液、および天然もしくは人工の風味を含んでもよい。液体は、エアロゾル形成体をさらに含むことが好ましい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0077】
電気エアロゾル発生システムは、電気的に作動するエアロゾル発生装置の中の搭載型電力供給源を再充電するための充電ユニットなど、追加的な構成要素を含んでもよい。
【0078】
エアロゾル発生システムはハウジングを備えてもよい。ハウジングは、任意の適切な材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例としては、金属、合金、プラスチック、もしくはこれらの材料のうちの一つ以上を含有する複合材料、または食品もしくは医薬品用途に適切な熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンが挙げられる。材料は軽く、かつ脆くないことが好ましい。
【0079】
電源は任意の適切な電源であってもよく、例えば電池などの直流電圧源であってもよい。電源は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、またはリチウム系電池(例えば、リチウムコバルト電池、リン酸鉄リチウム電池、チタン酸リチウム電池、またはリチウムポリマー電池)であってもよい。
【0080】
電源は再充電可能なリチウムイオン電池を含んでもよい。電力供給源は、コンデンサなどの別の形態の電荷蓄積装置を備えてもよい。電力供給源は再充電を必要とする場合がある。電力供給源は、エアロゾル発生装置の1回以上の使用のために十分なエネルギーの蓄積を可能にする容量を有してもよい。例えば、電力供給源は従来の紙巻たばこ1本を喫煙するのにかかる一般的な時間に対応する約6分間、また6分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電力供給源は所定の吸煙回数、または不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0081】
電気回路は、加熱サイクルの開始時に、電力供給源から発熱体への電力供給を開始するように構成されてもよい。電気回路は、加熱サイクルの終了時に、電力供給源から発熱体への電力供給を終了するように構成されてもよい。
【0082】
電気回路は、電力供給源から発熱体への連続的な電力供給を提供するように構成されてもよい。
【0083】
電気回路は、電力供給源から発熱体への断続的な電力供給を提供するように構成されてもよい。電気回路は、電力供給源から発熱体への電力のパルス供給を提供するように構成されてもよい。
【0084】
発熱体への電力のパルス供給は、期間中の発熱体からの総出力の制御を容易にする場合がある。有利なことに、期間中の発熱体からの全出力を制御することは、温度の制御を容易にする場合がある。
【0085】
電気回路は、電力供給源から発熱体への電力供給を変化させるように構成されてもよい。電気回路は電力のパルス供給の負荷サイクルを変化させるように構成されうる。電気回路は、パルス幅および負荷サイクルの期間のうち少なくとも一つを変化させるように構成されてもよい。
【0086】
本発明はまた、発熱体の近傍のエアロゾル形成基体を加熱するための発熱体と、発熱体に電力を供給するための電源と、複数の個別の加熱サイクル中に発熱体への電力供給を調節するように構成された電気回路とを備える電気的に作動するエアロゾル発生システムに関する。電気回路は、所定の時間間隔での発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを決定するように、かつn回の先行する加熱サイクルの間の発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtの移動平均値を計算することであって、nは1よりも大きい整数である、計算をするように、かつ発熱体の電気抵抗比ΔR/Δtを計算された移動平均値と比較するように構成されている。電気回路は、電気抵抗比ΔR/Δtが閾値を超えて移動平均値よりも大きい時に不具合を決定するように、かつ発熱体での不具合が決定されるかどうかに基づいて発熱体に供給される電力を制御するように、さらに構成されている。
【0087】
エアロゾル発生システムは携帯型であってもよい。エアロゾル発生システムは従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有してもよい。喫煙システムは、およそ30mm~およそ150mmの全長を有してもよい。喫煙システムは、およそ5mm~およそ30mmの外径を有してもよい。
【0088】
エアロゾル発生システムは、ユーザー入力装置を備えてもよい。ユーザー入力装置は、押しボタン、スクロールホイール、タッチボタン、タッチスクリーン、マイクロフォンのうちの少なくとも一つを備えてもよい。ユーザー入力装置は、ユーザーがエアロゾル発生システムの動作の一つ以上の態様を制御することを可能にする場合がある。ユーザー入力装置は、ユーザーが発熱体への電力の供給を起動すること、または発熱体への電力の供給を停止すること、またはその両方を可能にする場合がある。
【0089】
一つの実施形態に関して説明される特徴は、本発明の他の実施形態にも等しく適用されてもよい。
【0090】
例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】
図1は、本発明で使用できる先行技術のエアロゾル発生システムを示す。
【
図2】
図2は、
図1のエアロゾル発生システムのカートリッジの詳細を示す。
【
図4】
図4は、加熱サイクル中の様々な発熱体の電気抵抗の変化を示すプロットである。
【
図5】
図5は、メッシュ発熱体の寿命中の電気抵抗の変化を示すプロットである。
【
図6】
図6は、乾燥状態への移行時の電気抵抗の変化を示すプロットである。
【
図7】
図7は、メッシュヒーターの電気抵抗比の変化を示すプロットである。
【
図8】
図8は、セラミックヒーターの電気抵抗比の変化を示すプロットである。
【
図9】
図9は、芯・コイル型ヒーターの電気抵抗比の変化を示すプロットである。
【
図10】
図10は、メッシュヒーターの角度θの変化を示すプロットである。
【
図12】
図12は、電気抵抗曲線の曲率k(x)を使用することによって角度θを決定する方法を図示する。
【0092】
図1aおよび
図1Bは、本発明の方法によって使用されうる周知の電気加熱式エアロゾル発生システムの概略図である。エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生装置10とカートリッジ20とを備える。
【0093】
カートリッジ20は、カートリッジハウジング24内にエアロゾル形成基体を含有し、装置内の空洞18の中に受容されるように構成されている。カートリッジ20は使い捨てカートリッジである。ユーザーは、カートリッジ内のエアロゾル形成基体が枯渇した時に、カートリッジ20を交換しうる。
図1aは、装置10の中への挿入直前のカートリッジ20を示し、
図1aの矢印1は、カートリッジ10の挿入方向を示す。
【0094】
エアロゾル発生装置10は携帯型であり、従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有する。装置10は、本体11およびマウスピース部分12を備える。本体11は、電池14(リン酸鉄リチウム電池など)、電気回路16、空洞18を包含する。空洞18は円形断面を有し、カートリッジ20のハウジング24を受容するようにサイズ設定されている。
【0095】
電気回路16はプログラマブルマイクロプロセッサを備える。マウスピース部分12は、ヒンジ留め接続部21によって主本体11に接続されていて、かつ
図1aに示す通りの開位置と
図1bに示す通りの閉位置との間で移動することができる。マウスピース部分12は、カートリッジ20の挿入および取り外しを可能にするように開位置に置かれていて、またシステムがエアロゾルの発生に使用される時に閉位置に置かれている。マウスピース部分は、複数の空気吸込み口13および空気出口15を備える。使用時に、ユーザーは出口で吸うかまたは吸煙して、空気を空気吸込み口13からマウスピース部分を通して出口15に引き出し、その後ユーザーの口または肺に入れる。内部バッフル17は、マウスピース部分12を通してカートリッジを通過する空気の流れを強制するために提供されている。
【0096】
図1bは、マウスピース部分12が閉位置にある
図1aのシステムを示す。マウスピース部分12は、留め金機構によって閉位置に保持されている。システムの向きに関係なく、使用時に良好な電気的接続が維持されるように、閉位置にあるマウスピース部分12は、カートリッジを電気コネクタ19と電気的に接触した状態に保つ。
【0097】
図2はカートリッジ20の分解組立図である。カートリッジハウジング24は、空洞18の中に受容されるように選択されたサイズおよび形状を有する。ハウジングは、液体エアロゾル形成基体に浸された毛細管材料27、28を包含する。この例において、エアロゾル形成基体は、39重量パーセントのグリセリン、39重量パーセントのプロピレングリコール、20重量パーセントの水および風味剤、および2重量パーセントのニコチンを含む。毛細管材料は、液体濃度の相対的な差に基づいて、液体を一方の端から他方の端に能動的に運ぶ材料である。毛細管材料は任意の適切な材料から作製されうる。この実施例において、毛細管材料はポリエステルから形成されている。
【0098】
カートリッジハウジング24は、発熱体30が固定されている開放端を有する。発熱体30は、中に形成された開口35を有する基体34と、基体に固定された、かつギャップ33によって相互に分離された一対の電気接点32と、開口にまたがって、かつ開口35の反対側にある電気接点に固定された複数の導電性ヒーターフィラメント36とを備える。
【0099】
発熱体30は、剥離可能なシール26によって覆われている。剥離可能なシール26は、発熱体30に接着されているが簡単に剥がすことができる、液体不透過性プラスチックシートを含む。剥がす時にユーザーが剥離可能なシール26を掴むことを可能にするように、剥離可能なシール26の側面にタブが提供されている。接着は不浸透性プラスチックシートを発熱体に固定する方法として説明されているものの、消費者によってカバーが簡単に取り外されうる限り、ヒートシールまたは超音波溶接を含む当業者が精通している他の方法も使用してもよいことが、当業者には明らかとなろう。
【0100】
図2のカートリッジには二つの別個の毛細管材料27、28がある。第一の毛細管材料27のディスクが、使用時に発熱体36、32と接触するように提供されている。第二の毛細管材料28の大きい方の本体は、発熱体への第一の毛細管材料27の反対側に提供されている。第一の毛細管材料と第二の毛細管材料の両方は、液体エアロゾル形成基体を保持する。発熱体と接触する第一の毛細管材料27は、第二の毛細管材料28よりもより高い熱分解温度(少なくとも160℃以上、例えば約250℃など)を有する。
【0101】
毛細管材料27、28は、液体を発熱体30に運ぶために、ハウジング24の中で有利に方向付けられている。カートリッジが組み立てられた時に、ヒーターフィラメント36は毛細管材料27と接触してもよく、そのためエアロゾル形成基体はメッシュヒーターに直接運ばれることができる。
図3は、発熱体30のフィラメント36の詳細図であり、ヒーターフィラメント36間の液体エアロゾル形成基体のメニスカス40を示す。発熱体30によって発生された熱の大半がエアロゾル形成基体の中に直接入るように、エアロゾル形成基体はそれぞれのフィラメント36の表面の大半に接触することが分かる。
【0102】
そのため、通常動作において、液体エアロゾル形成基体はヒーターフィラメント36の表面の大きい部分に接触する。ところが、カートリッジ中の液体基体の大半が使用された時に、より少ない液体エアロゾル形成基体がヒーターフィラメント36に送達されるであろう。気化する液体がより少ないと、気化のエンタルピーが要するエネルギーがより小さくなり、ヒーターフィラメント36に供給されるより多くのエネルギーが、ヒーターフィラメントの温度を上げることに向けられる。同様に、目標温度を維持するために必要なエネルギーはまた、ヒーターフィラメント36が乾燥するにつれて減少する。ヒーターフィラメント36は、カートリッジ内のエアロゾル形成基体が枯渇したため、乾燥する場合がある。別の方法として、ただし可能性はあまりないが、ヒーターフィラメント36は、ユーザーが非常に長くまたは非常に頻繁に吸煙を行っていて、かつ液体が気化されるのと同じ速さでヒーターフィラメント36に液体を送達することができないため、乾燥する場合がある。
【0103】
使用時、発熱体30は抵抗加熱により作動する。電流は、制御電子回路16の制御の下で、フィラメント36を通過し、フィラメントを望ましい温度範囲内に加熱する。フィラメントのメッシュまたはアレイは、高い温度がフィラメントに局所化されるように、電気接点32および電気コネクタよりも著しく高い電気抵抗を有する。これは、エアロゾル発生装置10の他の部品に対する熱損失を最小化する。この実施例において、システムは、ユーザーの吸煙に応答して電流を発熱体30に提供することによって熱を発生するように構成されている。
【0104】
システムは、ユーザーがマウスピース部分を通して空気を引き出している時を検出するように構成された吸煙センサーを含む。吸煙センサ(図示せず)は制御電子回路16に接続されていて、制御電子回路16は、ユーザーが装置を吸煙していることが判定された時にのみ電流を発熱体30に供給するよう構成されている。任意の適切な気流センサーは吸煙センサー(マイクロフォンまたは圧力センサーなど)として使用されてもよい。
【0105】
ヒーターフィラメントの温度の増加を検出するために、電気回路16はヒーターフィラメントの電気抵抗を測定するように構成されている。この実施例におけるヒーターフィラメントは、ステンレス鋼から形成されていて、そのため正の温度抵抗係数を有する。加えて、吸煙により作動するこうしたシステムにおいて、高電流パルスを使用する短時間のバーストで熱が発生されるため、比較的に高い比熱容量を有するステンレス鋼フィラメントが理想的である。ヒーターフィラメント36の温度が上昇するにつれて、それらの電気抵抗も上昇する。
【0106】
図4a~
図4cのプロットは、二つの連続的な加熱サイクル(その各々がユーザーの吸煙に対応する)中の様々な発熱体の抵抗の変化を例示的に図示する。
図4aのプロットは、メッシュ発熱体の二つの連続的な加熱サイクルに関する。
図4bのプロットは、セラミック発熱体に関する。
図4cのプロットは、芯・コイル型発熱体に関する。
【0107】
図4a~
図4cの各々において、左のプロットは、十分な液体基体が気化のために利用可能である湿潤状態に発熱体がある時の抵抗の増大を示す。
図4a~
図4cの各々において、右のプロットは、十分な液体基体が気化のために利用可能できない乾燥状態に発熱体がある時の抵抗の増大を示す。
【0108】
加熱サイクルの各々は、14個の電気パルスから成る。各電気パルスについて、ドットはパルス中に測定された最大抵抗を示す。x軸は時間尺度を表し、y軸は発熱体30での測定された電気抵抗を表す。
【0109】
発熱体30は、初期抵抗Riniを有する。前記初期抵抗Riniは、発熱体30の固有特性である。これは、室温での発熱体30の基準抵抗を示す。
【0110】
ユーザーの吸煙中に発熱体30に電力が印加されるにつれて、ヒーターフィラメント36の温度は周囲温度から上昇する。これは、ヒーターフィラメント36の電気抵抗Rを上昇させる。
【0111】
ヒーターフィラメント36の抵抗は、式(1)による対象の温度範囲におけるヒーターの温度に関連する。従って、電気抵抗を能動的に測定することによって、電気回路は発熱体30でのヒーター温度を決定することができる。
【0112】
メッシュ発熱体での抵抗の増大を示す、
図4aのプロットで分かる通り、抵抗は特に加熱サイクルの開始時に増大する。それ故に、各加熱サイクルにおける最初の二つの加熱パルス間の電気抵抗比ΔR/Δt
P2-P1の増加は、式(2)でモニターされたパラメータとして使用される。
【0113】
この電気抵抗比ΔR/ΔtP2-P1の以前の10回の測定値の移動平均s10、およびこの電気抵抗比の以前の30回の測定値の移動平均という形態での標準偏差σが決定される。これらのパラメータは、以下の式につながる式(2)に挿入される。
【0114】
【0115】
式中、Aは2.5という一定のパラメータである。電気抵抗比ΔR/ΔtP2-P1が、標準偏差σと一定のパラメータAの積を超えて平均値s10に対して増加する時に、メッシュ発熱体の乾燥した芯の状態が検出される。
【0116】
図4bのプロットは、セラミック発熱体での抵抗の増大を示す。この場合、抵抗も増大するが、増大は加熱サイクルの終了時に特に顕著である。電気抵抗比の増加は、式(2)でモニターされたパラメータとして使用される、完全な加熱サイクルΔR/Δt
MAX全体を通して測定された最大温度から決定される。
【0117】
この電気抵抗比ΔR/ΔtMAXの以前の10回の測定値s10の移動平均、およびこの電気抵抗比の以前の30回の測定値の移動平均σという形態での標準偏差σが決定される。これらのパラメータは、以下の式につながる式(2)に挿入される。
【0118】
【0119】
式中、Aは1.25という一定のパラメータである。電気抵抗比ΔR/ΔtMAXが、標準偏差σと一定のパラメータAの積を超えて平均値s10に対して増加する時に、セラミック発熱体の乾燥した芯の状態が検出される。
【0120】
図4cのプロットは、芯・コイル型発熱体での抵抗の増大を示す。この場合、電気抵抗比ΔR/Δt
RANGEの増加は、完全な加熱サイクル中の発熱体の温度範囲の増加から決定され、温度範囲は、加熱サイクル中の最大温度と最小温度の間の差である。式(2)でパラメータΔR/Δt
RANGEをモニターされたパラメータとして使用することは、以下の式につながる。
【0121】
【0122】
式中、Aは1または1.5という一定のパラメータである。電気抵抗比ΔR/ΔtRANGEが、標準偏差σと一定のパラメータAの積を超えて平均値s10に対して増加する時に、芯・コイル型発熱体の乾燥した芯の状態が検出される。
【0123】
図5は、抵抗Rがメッシュ発熱体のライフサイクルについて示されている実験データを示す。実験の初期段階50において、発熱体が充満し、これは吐き出し(急速な液体加熱による気泡の破裂)を引き起こす。従って、抵抗曲線の形状は、安定かつ再現可能な形態に達するまで、試験開始時にわずかに変動する。最適な動作のこの主段階は、「湿潤状態」52と呼ばれる。湿潤状態52において、発熱体は良好な状態であり、各吸煙の最終抵抗は一定のままである。試験の終了段階54で、抵抗の瞬間的な増大が検出される。この増大は、乾燥状態56に入る発熱体に対応する。暴走段階とも呼ばれる最終段階58において、ヒーター抵抗は指数関数的に増大し、発熱体は光り始める。ヒーター温度は、完全に燃焼する前に、摂氏1200度を超える最大温度まで上昇するであろう。
【0124】
図6は、
図5と同様の実験データを示す。ここでもメッシュ発熱体を試験した。
図6に示す実験の曲線は、より高い分解能で再現されている。気泡が破裂した初期段階50、発熱体が湿潤状態52にある主要段階、および発熱体が乾燥状態56に入ったことを示す抵抗の急激な増大という三つの主要な段階が見られる。
【0125】
図7は、メッシュ発熱体の実験データを再び示す。この略図においてまた、式(5)から決定された電気抵抗比ΔR/Δt
P2-P1の結果が曲線60によって示されている。初期段階50にて、電気抵抗比は幾らか変動し、値が部分的に増加することにつながる。増加は十分に小さく、その結果、乾燥トリガは正しく満たされない。湿潤状態52の間、電気抵抗比はむしろ一定のままであり、発熱体が乾燥状態56に入る時にのみ増加する。
図7の赤線62は、本発明の乾燥した芯の検出方法からの論理出力を表す。この論理出力は、初期段階50で、かつ湿潤状態52中に「0」であり、乾燥状態が検出されると「1」に増加する。本発明では、乾燥した芯の状態56が正しい吸煙で検出された。拡大図は、湿潤状態52と乾燥状態56の間の発熱体の移行のさらなる詳細を示す。方法は、この加熱サイクルの最初の二つの加熱パルス中に、赤線62の直前に吸煙によってトリガされた。従って、この加熱サイクルでは、加熱プロセスが中断され、即時の吸煙は完了しなかったであろう。
【0126】
図8において、セラミック発熱体についての類似のデータが描写されている。セラミック発熱体の抵抗は、湿潤状態52において非常に一貫している。セラミック発熱体の金属要素が溶融し始めるにつれて、抵抗は急速に減少する前に、2~3回の吸煙の間に乾燥状態56で増大する。この発熱体について、電気抵抗比ΔR/Δt
MAXが、式(4)で示す通りに使用される。この電気抵抗比はまた、
図8に曲線60で示されている。この電気抵抗比を重要なパラメータとして使用することは、
図8の赤線62で示す通りの乾燥状態56の検出につながる。方法は、発熱体の乾燥状態56における最初の吸煙に対応する、赤線62のすぐ左の吸煙によってトリガされた。
【0127】
図9は、芯・コイル型発熱体の実験データを示す。この場合、抵抗は、芯が乾燥状態56に入る時に膨大に増大する。それにもかかわらず、抵抗は、乾燥状態56を確実に識別することが可能ではない場合があるが、その理由は湿潤状態52においても、抵抗の増大が起こるからである。従って、加熱サイクル中の抵抗の総変化を考慮に入れた電気抵抗比ΔR/Δt
RANGEは、式(5)による決定的なパラメータとして使用される。
図9で分かる通り、湿潤状態52の間、曲線60によって示される電気抵抗比ΔR/Δt
RANGEは、メッシュ発熱体およびセラミック発熱体の場合に観察された通り、主に一定のままである。この場合も、方法は、
図9において赤線62によって示された正しい吸煙での乾燥状態56を識別する。方法は、発熱体の乾燥状態56における最初の吸煙に対応する、赤線62のすぐ左の吸煙によってトリガされた。
【0128】
図10は、メッシュ発熱体の実験データを再び示す。青色の枠で印された曲線は、発熱体が湿潤状態52にあることを示す。赤色の枠で印された曲線は、発熱体が乾燥状態56にあることを示す。拡大図において、角度θは、電気抵抗比ΔR/Δtの測定値として決定される。角度θは、二つの脚64、66によって画定されている。第一の脚64は、電気抵抗曲線の各々の第一の点を通る垂直線によって近似されてもよい。第二の脚66は、対応する加熱サイクルのより後期段階での電気抵抗読取値の線形平均として定義されうる。
【0129】
図10で分かる通り、角度θは、湿潤状態52全体を通して一定であるが、乾燥状態56に入ると著しく増加する。それ故に、角度θはまた、決定パラメータΔR/Δtとして使用されてもよく、以下の式につながる式(2)に挿入されてもよい。
【0130】
【0131】
式中、Aは2.5という一定のパラメータであり、s10およびσは、移動平均、および角度θについて決定される標準偏差に対応する。角度θが、標準偏差σと一定のパラメータAの積を超えて平均値s10に対して増加する時に、メッシュ発熱体の乾燥した芯の状態が検出される。
【0132】
角度θは、以下の式による電気抵抗曲線の二つの脚64、66の傾斜a1およびa2から計算されてもよい。
【0133】
【0134】
a1は第一の脚64の傾斜であり、a2は電気抵抗曲線の第二の脚66の傾斜である。
電気抵抗曲線の二つの脚の傾斜を決定する第一の方法が、
図11に図示されている。第一の工程において、
図10の左図で図示の通り、電気抵抗曲線の最端の傾斜L1およびL2が決定される。この目的のために、第一の脚の最初の10つのデータ点、および第二の脚の最後の10つのデータ点が考慮される。データの品質に応じて、より高いまたはより低い数のデータ点が考慮されうる。次の工程において、これら二つの傾斜の算術平均が決定され、平均傾斜L=(L1+L2)/2がもたらされる。
【0135】
図11の中央図に図示した第三の工程において、電気抵抗曲線の傾斜が、以前に決定された平均傾斜Lに対応する、データ点(tL、RL)が識別される。これは、関数ΔR/Δtを、データセットを通して移動させることによって、例えばスパンΔRおよびΔtに対する固定数のデータ点を使用するアルゴリズムによって行われてもよい。
【0136】
このデータ点(tL、RL)は、電気抵抗曲線の二つの脚に近似する二つの直線を画定するために使用される。第一の直線は、データ点(t1、R1)および(tL、RL)を通る線である。第二の直線は、データ点(tL、RL)および(tN、RN)を通る線である。これは
図10の右図に示されている。
【0137】
次いで、以下の式を使用して、傾斜a1およびa2を計算する。
【0138】
【0139】
【0140】
傾斜a1およびa2の値は、角度θを得るために式(7)に挿入されてもよい。
【0141】
二つの傾斜を決定するさらなる方法は、電気抵抗曲線の曲率k(t)を利用する。この方法は、電気抵抗曲線の曲率を示す
図12に図示されている。
【0142】
曲率k(t)は、以下の式から計算されうる。
【0143】
【0144】
図12から分かる通り、曲率k(t)は極値点を示す。この極値点は、曲率が最大値に達する点であり、対応するグラフが最も「曲がる」点である。この点は、電気抵抗曲線の第一の脚から電気抵抗曲線の第二の脚への移行点を画定すると見なされうる。この極値点は、
図11に関連して論じる通り、電気抵抗曲線の二つの脚に近似する二つの直線の画定のために、データ点(tL、RL)として再び使用されてもよい。次いで、傾斜a1およびa2は、上記の式(8)および(9)を使用して再び計算されうる。
【0145】
図11に記載の方法と同様に、導関数の決定のために、特定の所定のスパンΔRおよびΔtを使用することが好ましい場合がある。これは、データが電気的ノイズの増加を含む場合に特に有用でありうる。データセットはまた、導関数が決定される前に、フィルター関数によって平滑化されてもよい。
【0146】
曲率の極値点は、「findmax()」のような利用可能なシステム関数によって見つけられることができるか、またはk(t)の第一の導関数のゼロ値を検索して計算されることができる。このゼロ値は、Δk/Δt法を使用して数値的に決定されることができる。
【0147】
これら二つの方法で決定された移行値(tL、RL)は、必ずしも同じデータ点である必要はない。しかしながら、結果は、いずれの場合でも、電気抵抗比を検出するための一貫した結果が得られたことを示す。
【0148】
図13は、
図12の方法の修正を示す。この方法において、二つの別個の点(tL1、RL1)および(tL2、RL2)が決定され、次いで、電気抵抗曲線の第一の脚64および第二の脚66に近似する直線a1およびa2を画定するために使用される。
【0149】
二つの点(tL1、RL1)および(tL2、RL2)は、曲率の極値点の幅wを選択することによって画定されている。この場合、この幅は、曲率極値点からの約10%の曲率変化のパーセンテージpによって画定されている。
【0150】
乾燥した芯の状態を正しく検出するために、角度θが著しく増加し始める時点を決定しなければならないと考えられる。この増加は、第二の脚66の暴走によって主に駆動され、第一の脚の傾斜a1にはそれほど依存しないと思われる。それ故に、前述の通り、第一の脚の傾斜a1を無限になるように、かつ垂直線によって表されるように近似させることは十分に正当であると考えられる。
【0151】
さらに、角度θを決定する際に、第二の脚のすべてのデータ点を考慮に入れる必要はない場合がある。特に、暴走が高速であり、単一の加熱サイクル内で破壊を引き起こしうる場合、必要なデータ点は、曲率極値点の後であるがその近くのデータ点に制限されうる。このようにして、乾燥した芯の状態に入ったかどうかを単一の加熱サイクル内で決定することと、電源を即座に遮断することとが可能でありうる。それ故に、この方法は、非常に早期の状態で乾燥した芯の状態を検出することを再び可能にしてもよく、所与の加熱サイクルが終了するまで待つことをシステムに要求しない。
【0152】
上記から分かる通り、第一の脚64を画定するデータ点と、電気抵抗曲線の第二の脚66を画定するデータ点とにデータセットを分けるための移行点を画定する必要がある。どの方法が最も適切な方法であるかは、必要とされる精度および電気抵抗データのノイズの多さに依存しうる。
【0153】
図14は、2トリガシステムを使用する本発明の方法の個別の工程を図示するフローチャートを示す。起動時(工程70)に、エアロゾル発生装置は「湿潤」としてフラグ付けされ、装置の動作準備ができていることを示す。エアロゾル発生が開始され、電気抵抗比ΔR/Δtが決定される(工程72)。その後、システム状態を確認する(工程74)。装置は現在、「湿潤」としてフラグ付けされているため、方法は、電気抵抗比が「乾燥トリガ」を満たすかどうかを決定するであろう(工程76)。乾燥トリガが満たされない場合、エアロゾル発生装置は「湿潤」としてフラグ付けされ続ける(工程78)。決定された電気抵抗比は、標準偏差σおよび新しい移動平均s10を更新するために使用される(工程80)。次にユーザーは、さらなる吸煙を行うことによってユーザー体験を継続してもよい(工程82)。
【0154】
電気抵抗比ΔR/Δtが著しく増加し、その結果「乾燥トリガ」が満足されると、エアロゾル発生装置は「乾燥」としてフラグ付けされる(工程84)。システムは、システムが一時的にロックされる「冷却期間」に入る(工程86)。冷却期間は5~10秒間続く。この期間は2回の連続的な吸煙間の平均中断に対応するため、システムのこの一時的なロックはユーザーによってほとんど知覚されない。
【0155】
「冷却期間」が過ぎると、システムは動作を再開することが可能であり、ユーザーはさらなる吸煙を行いうる(工程70)。この吸煙のために、エアロゾル発生が再び開始され、電気抵抗比ΔR/Δtが決定される(工程72)。装置は前回の吸煙の終了時に「乾燥」としてフラグ付けされていたため、方法はこれで、電気抵抗比が「ロックアウトトリガ」を満たすかどうかを決定するであろう(工程88)。ロックアウトトリガが実際に満たされている場合(これは、芯の乾燥状態の検出が確認されていることを意味する)、エアロゾル発生装置は、ロックアウト状態に永久的に設定される(工程90)。このような場合、システムは動作を停止することになり、ユーザーはカートリッジを変更または再充填するように促されることになる。
【0156】
ロックアウトトリガが満たされていない場合、これは、芯の乾燥状態が確認されていないことを意味する。この場合、エアロゾル発生装置は再び「湿潤」としてフラグ付けされる(工程92)。決定された電気抵抗比は、標準偏差σおよび新しい移動平均s10を更新するために使用される(工程80)。次にユーザーは、さらなる吸煙を行うことによってユーザー体験を継続してもよい。
【0157】
乾燥トリガおよびロックアウトトリガという二つのトリガは、一定のパラメータAについて異なる値を選択することによって調整されることができる。両方のトリガについて同じ値が使用される場合、発熱体の乾燥状態を再確認するために、基本的に同じ条件が2回適用される。感度を高めるために、乾燥トリガに対してより低いパラメータAが選択されてもよい。しかしながら、こうした感度の増加は、偽陽性の数の増加をもたらしうる。これらの偽陽性を補うために、ロックアウトトリガに対してより高い値のパラメータAが使用されてもよい。これは、装置が時期尚早に永久的にロックアウトに入ること、すなわち芯が実際にまだ乾燥状態にないにもかかわらず永久的なロックアウトに入ることを防止しうる。
【国際調査報告】