(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】筬および筬の製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 49/62 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
D03D49/62 A
D03D49/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513120
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022070319
(87)【国際公開番号】W WO2023025479
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102021122217.6
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021122220.6
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルスケ,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーンハス,シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】マイナート,ペーター
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050CC17
4L050CD00
(57)【要約】
ここ数年、織布の新しい用途分野、例えば濾材としての用途が確立されつつある。このような用途の要求を満たすためには、非常に微細な織布が必要であり、このような織布は、それに対応する小さなピッチを有する筬を使用してのみ製造することができる。このような筬を製造する際、筬の羽間の間隔が小さいため、例えば毛細管効果のような物理的効果が、これまで大きなピッチを有する筬の製造では無視されてきた役割を果たす。本発明の目的は、8分の1ミリメートルの最大ピッチを有する筬と、これらの特徴を考慮したその製造方法を提供することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機のための最大のピッチ(11)が1/8mmの筬(1)であって、
a)少なくとも2つの羽(2)であって、主として長手方向(L)に延び、長手方向(L)に対して直交する幅方向(B)に互いに隣接して配置されて、羽間空間(5)を形成する、少なくとも2つの羽(2)を含み、
b)少なくとも2つの羽(2)のそれぞれは、長手方向(L)と幅方向(B)に対して直交する高さ方向(H)においてそれぞれの羽(2)を区切り、高さ方向(H)において互いに間隔をあけて配置される2つの端面(6)を有しており、
前記筬は、
c)少なくとも2つのプロファイルロッド(3)であって、少なくとも2つの端面(6)に当接し、高さ方向(H)に対をなして互いに反対側に位置する機能的な対を形成する、少なくとも2つのプロファイルロッド(3)と、
d)機能的な対を形成する少なくとも2つの対向するプロファイルロッド(3)の周囲に少なくとも部分的に巻き付き、機能的な対を形成する少なくとも2つの対向するプロファイルロッド(3)を互いに引き寄せる少なくとも1つの結合手段と、をさらに含み、
e)結合手段は、少なくとも2つの羽(2)の間の羽間空間(5)を少なくとも部分的に通り、
f)結合手段は、複数の繊維(8)を含む織物用糸(4)であり、および、
g)織物用糸(4)は、プロファイルロッド(3)の少なくとも1つと直接接触する少なくとも1点で、幅方向(B)において、高さ方向(H)においてプロファイルロッド(3)の間に位置する領域よりも大きな幅を有する、ことを特徴とする筬。
【請求項2】
織物用糸(4)は、弾性を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の筬(1)。
【請求項3】
織物用糸(4)は、幅方向(B)に大きな幅を有する隣接する巻き部を有し、プロファイルロッド(3)の少なくとも1つと直接接触する少なくとも1つの点で、隣接する巻き部が互いに当接する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の筬(1)。
【請求項4】
繊維(8)の最大直径(13)は、最大で羽間空間(5)の幅(9)の半分に相当する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項5】
織物用糸(4)は、圧縮力の適用下で圧縮可能であり、圧縮力は、織物用糸(4)の圧縮が増加するにつれて漸増する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の筬ド(1)。
【請求項6】
織物用糸(4)は、高さ方向(H)にプロファイルロッド(3)の間に位置する領域において、幅方向(B)の両側でそれぞれの場合に少なくとも1つの羽(2)に当接する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項7】
織物用糸(4)は、撚られており、
織物用糸(4)は、少なくとも20である撚り因子αを有し、
撚り因子は、
【数1】
の数式が適用され、該数式において、
t=織物用糸(4)の1メートル当たりの撚り数、
P
t=織物用糸(4)のテックス(tex)で表された糸番手、
である、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項8】
織物用糸(4)は、好ましくは、ポリアミド、ポリアミド6.6、ポリアミド6、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、の材料のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの繊維を有する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項9】
織物用糸(4)は、少なくとも20cN/texの糸番手に関連する最大引張力を有する、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項10】
織物用糸(4)は、10%から80%、好ましくは20%から45%、の最大引張力伸度を有する、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項11】
少なくとも2つの羽(2)の間の羽間空間(5)の幅を規定するスペーサを含まない、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの羽(2)は、少なくとも1つのスペーサスタッドを有し、該スペーサスタッドは、少なくとも片側において羽(2)の大部分に対して幅方向(B)に高くなっており、幅方向(B)において隣接する少なくとも1つの羽(2)に対する最小間隔が下がることを防止する、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の筬(1)。
【請求項13】
最大のピッチ(11)が1/8mmの筬(1)の製造方法であって、
a)主として長手方向(L)に延びる少なくとも2つの羽(2)が、長手方向(L)に直交する幅方向(B)に羽間空間(5)を形成するように、互いに隣接させて配置され、
b)少なくとも2つの羽(2)のそれぞれは、長手方向(L)および幅方向(B)に直交する高さ方向(H)においてそれぞれの羽(2)を区切り、高さ方向(H)において互いに間隔をあけている2つの端面(6)を有しており、
c)少なくとも1つの結合手段が、少なくとも2つのプロファイルロッド(3)の周囲に、少なくとも2つうのプロファイルロッドが機能的な対を形成し、高さ方向(H)において対をなして互いに対向するように、少なくとも2つのプロファイルロッド(3)の周囲に少なくとも部分的に巻き付けられ、かつ少なくとも2つのプロファイルロッド(3)が少なくとも2つの羽の少なくとも2つの端面に互いに引き寄せられるように、巻き付けられ、
d)結合手段は、少なくとも2つの羽(2)の間の羽間空間(5)を少なくとも部分的に通り、
e)複数の繊維(8)を含む織物用糸(4)が、結合手段として使用され、および、
f)織物用糸(4)は、少なくともプロファイルロッド(3)の少なくとも1つと直接接触する点で、幅方向(B)に広がるように、予張力下で巻かれる、ことを特徴とする筬の製造方法。
【請求項14】
織物用糸(4)は、少なくともプロファイルロッド(3)の少なくとも1つと直接接触する点で、幅方向(B)において互いに隣り合う織物用糸(4)の巻き部が幅方向(B)において横方向に互いに当接する仕方で幅方向(B)に広がるように、予張力下で巻かれる、ことを特徴とする請求項13に記載の筬(1)の製造方法。
【請求項15】
a)織物用糸(4)が、幅方向(B)における少なくとも2つの羽(2)の間の羽間空間(5)の幅(9)まで圧縮され、
b)織物用糸(4)の繊維(8)が圧縮されることはない、ことを特徴とする請求項13または14に記載の筬(1)の製造方法。
【請求項16】
織物用糸(4)の繊維(8)は、羽間空間(5)の幅(9)が公称寸法を下回ると圧縮される、ことを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の筬(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
織機は17世紀から知られており、それ以来、織機の技術は大きく発展してきた。時代とともに、ますます精密に織られた織物を生産できるようになった。但し、織機の基本的な操作方法と製織方法は変わっていないため、ここで詳しく説明しないが、既知のものとする。織機の筬は、織機の発展に大きな影響を与えた。通常、筬は、一定の間隔を保ちながら幅方向に一列に隣り合って配置された複数の羽を含む。その結果、機械幅方向に隣接する羽の間に羽間間隔が形成される。製織の際、経糸はこの羽間空間に導かれる。したがって、筬は、織機の幅方向における経糸の位置に直接影響を及ぼし、したがって、その後の織物における経糸の位置にも影響を及ぼす。したがって、筬に不規則な凹凸があると、製織時に織物に不規則な凹凸(例えばストライプ)が生じる。筬の特徴としてピッチがあり、これは羽の幅と羽間空間の幅の合計である。ピッチは、羽および羽間空間がどれだけ密に(細かく)隣り合って配置されているかを表し、それに応じて、筬で織られた織物がどれだけ細かくなるかを表す。筬の基本的な構造は、何世紀にもわたってほとんど変化していないが、より経済的に、および/または、より正確に筬を製造することを目的とした構造的な変化が頻繁に起こった。初期の筬の羽は、まだ葦で構成されていたが、金属片から羽を製造するように急速に移行し、筬の羽は、筬の細さが増すにつれて、ますます細い金属片から製造されなければならなくなった。現在では、筬の羽は、1センチメートル当たり80個またはそれ以上の小さなピッチになることが多い。そのため、羽の元となる金属片は非常に薄く、非常に剛性が低く、むしろ金属箔と言える。ピッチが粗い筬の場合、糸、例えば綿糸、と幅方向に延びるプロファイルロッド(主に半円形の棒)で羽を結合することはすでに知られている。一方では、糸は隣接する羽間の間隔を調整する機能を有し、これにより所望の羽間空間が得られる。他方では、糸による結合は、さらなる製造工程(例えば、筬の接着剤による結合)のために、羽とプロファイルロッドとの間に十分に強固な結合を作り出す役割を果たす。
【0002】
英国特許出願公開第第727546号には、綿糸で結束されたこのような筬が開示されている。この筬の羽の端部領域には、半円形の棒が配置され、羽は、高さ方向に互いに対向して横たわる2つの半円形の棒の間にそれぞれ囲まれている。綿糸は、対をなして配置されたそれぞれ2つの互いに対向する半円形の棒の周りに螺旋状に巻かれ、螺旋状に巻かれた綿糸のそれぞれ1巻きが、隣接する羽の間を通ることにより、隣接する羽の間隔が確保される。このとき、羽と半円形の棒をしっかりと結合させるために、通常、綿糸はピッチブラックに含浸される。ピッチブラックは、筬を束ねた後に固まって固まりとなり、筬の構成要素間の強固な結合を作り出す。
【0003】
西独国特許出願公開第2428097号には、金属線の代わりにナイロン糸で筬を結束する筬の製造方法が開示されている。この場合、ナイロン糸は、筬の羽の間隔に影響を及ぼさない。このためには、ナイロン糸は、その断面の変形に対して全く抵抗がないか、わずかな抵抗しかない弱く撚られた糸でなければならない。それどころか、適当な機械によって、製造工程中に羽がその端の位置に正確に位置決めされることが条件となる。ナイロン糸は弾性があり、筬のプロファイルロッド(レール)の周りに予張力下で巻かれ、プロファイルロッドが羽を端の位置でクランプするようにする。このクランプは、羽の滑りを防止するためのものである。その後、既知の方法で、通常はU字型に、羽同士を接着する。接着の際、粘性接着剤が筬の羽の間に導入され、毛細管力が羽に作用する。ここでの欠点は、毛細管力が接着領域における羽の変形および/または不均一な変位をもたらす可能性があることである。この影響は、羽間の間隔が小さいほど、また羽自体が薄いほど、すなわち特にピッチが小さい筬の場合ほど、ますます強く作用する。西独国特許出願公開第2428097号に記載されているナイロン糸は、抵抗が低いため変形に対抗できず、ピッチの小さい筬には適しない。
【0004】
同様の問題は、英国特許出願公開693629号に開示された筬にも見られる。この筬は、熱可塑性の糸で結束されている。しかし、羽、糸およびプロファイルロッドは、接着剤によるポッティングによって互いに接着されるのではなく、熱可塑性の糸を軟化させ、その後硬化させることによって互いに接続される。軟化の過程で糸は予張力と抵抗力を失い、筬の羽間で変形することがある。この場合、糸はもはや互いに対する羽の位置を保証することはできない。したがって、筬の個々の羽間の均一な間隔を確保することはできない。
【0005】
筬の精度に対する要求が高まり、より細い筬が製造されるようになった結果、筬を結束するために糸の代わりに金属線が使用されるようになった。例えば、カナダ国特許発明第2130760号には、金属ワイヤーで結束された筬が開示されている。結束後、羽の端部は、U字型プロファイルの開いた側面に挿入され、筬の個々の構成要素間の強固な接続を作り出すために、ポッティングコンパウンドまたは接着剤で、これらのU字型プロファイルに接着結合される。綿糸の代わりに細いワイヤーを使うことで、羽間の間隔を小さくすることができる。しかし、この技術の欠点は、ワイヤーの太さを、それぞれの場合に必要な羽間の間隔に対応させなければならないことである。したがって、筬の製造業者は、筬の羽間の所望の間隔ごとに、適切なワイヤーを用意しなければならない。さらに、現在一般的な金属ワイヤーの製造公差は、特に非常に微細な筬(80羽/cmより大きい密度、または8分の1ミリメートルよりも小さいピッチ)、すなわち個々の羽間の間隔が非常に小さい筬の製造時に、筬の不正確さ、ひいてはそれによって製造される織布の不正確さをもたらす。例えば、直径が大きすぎるワイヤーでは、隣り合う羽間の間隔が大きくなりすぎる。これらの間隔誤差は、筬の複数の羽にわたって合計されるため、最終的に筬が大きくなりすぎる。しかし、大きすぎる筬は織機には使えない。そのため、この技術をさらに発展させる試みが過去にすでになされている。
【0006】
ここ数年、織布の新たな応用分野、例えば濾材としての用途が生まれた。国際公開第2017/060765号には、このような用途(「合成単繊維精密織物」)の織物に課される要件、すなわち、織物が各点で要求される特性を有するように、糸の間隔が均一で非常に均一な織物であること、が記載されている。このような用途の要求を満たすためには、さらに非常に小さなピッチの織物が必要とされる。例えば、国際公開第2020/115625号には、ディーゼル油と水の混合物から水を濾過するのに適したディーゼルフィルター用の織布が記載されている。この目的のために、10μmから90μmの間の糸径を有する糸から織られ、5μmから150μmの間の格子間隔を有する織物が使用される。このような織物を製造するためには、15μmから240μmのピッチを持つ筬が必要である。細幅織物の新たな応用分野の別の例が国際公開第1990/25885号に記載されている。この織物は、スマートフォンのスピーカーのダスト(固体粒子)に対する水または空気透過性のシールとして使用されている。このような織物には、20μmから300μmの小さなピッチを有する筬も必要である。さらなる例は、国際公開第2011/132062号および欧州特許出願公開第3219837号に開示されている。しかしながら、前述の段落に記載された筬は、織布に要求される均一性を維持しつつ、このような微細な織布を製造するには適していない。次に、このような微細織布の製造に適した筬を提供しようとする先行技術について説明する。
【0007】
欧州特許出願公開第3425096号は、段落〔0002〕から〔0015〕において、特に小さなピッチを有する筬に関して、現在の先行技術を詳細に説明している。小さなピッチを実現するために、筬の羽は0.1mmよりも小さな厚さを有している。また、このような羽は、その小さな厚みの結果として高い柔軟性を有することが記載されている。羽のこの柔軟性により、「取り扱いの問題」の結果として、小さなピッチを持つ筬を製造することが難しくなる。
【0008】
さらに、筬の接着時に羽間に作用する前述の毛細管力が増加する。曲げに対する抵抗モーメントの計算式では、羽の厚さは二次関数的に現れるので、細い筬に必要な薄い羽は非常に柔軟である。そのため、羽間の毛細管力は、その高い柔軟性(曲げ時の復元力の低下)の結果として、そのような羽を変形させたり、変位させたりする可能性がある。その結果、筬に凹凸が生じる。
【0009】
欧州特許第3427095号には、筬の接着時に発生する毛細管力にもかかわらず、隣接する羽間に均一な間隔が確保されるように、羽が構成された筬が開示されている。この目的のために、羽には、隣接するスラット間に最小間隔を提供するスペーサスタッドがある。これにより、羽の接着時に毛細管力による凹凸の形成または変形を防ぐことができる。しかし、スペーサスタッドは、最小間隔に達したときに毛細管力に対抗して凹凸を制限するだけである。しかしながら、筬の隣り合う羽間には様々な大きな間隔が生じ、その結果、製織中に織物に不規則な凹凸が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、このような先行技術を背景として、毛細管力によって引き起こされる羽の小さな変位さえも打ち消す微細なピッチを有する筬と、その製造方法を提供することにある。
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する筬および請求項13の特徴を有する方法によって達成される。織機のための最大のピッチが8分の1ミリメートルの筬であって、この筬は、少なくとも2つの羽を含み、これらの羽は、主として長手方向に延び、長手方向に対して直交する幅方向に互いに隣接して配置されて、羽間空間を形成する。羽間空間は、隣り合う羽の間の自由空間であり、羽の幅方向における間隔によって形成される。この少なくとも2つの羽のそれぞれは、長手方向と幅方向に対して直交する高さ方向においてそれぞれの羽を区切り、高さ方向において互いに間隔をあけて配置される少なくとも2つの端面を有する。筬は、少なくとも2つのプロファイルロッドを含み、プロファイルロッドは、少なくとも2つの端面(好ましくは、平坦面)に当接し、高さ方向に対をなして互いに対向して配置される機能的な対を形成する。プロファイルロッドは、主として幅方向に延び、長手方向と高さ方向によって張られる平面において、通常は半円形であるプロファイル断面を有する。しかし、他の断面も可能である。例えば、矩形断面である。好ましくは、筬は、2つの機能的な対を形成する4つのプロファイルロッドを含む。さらに、筬は、少なくとも部分的に機能的な対を形成する少なくとも2つの対向するプロファイルロッドの周りに巻き付き、2つの対向するプロファイルロッドを互いに引き寄せる少なくとも1つの結合手段を含み、結合手段は、少なくとも部分的に少なくとも2つの羽の間の中間空間を通る。通常、結合手段は、プロファイルロッドの機能的な対の周りに螺旋状に巻かれ、羽は、螺旋状に配置された結合手段の少なくとも1つの巻き部にある。複数の巻き部を2つの羽間に配置することもできる。結合手段は、複数の繊維を含む織物用糸であり、プロファイルロッドの少なくとも1つと直接接触する少なくとも1点において、織物用糸は、高さ方向においてプロファイルロッド間にある領域よりも幅方向において大きな幅を有する。プロファイルロッドの断面が半円形の場合、糸は、通常、半円の円周上にあり、この領域でプロファイルロッドと直接接触する。この領域では、織物用糸は、織物用糸が通る羽間空間よりも大きな幅で幅方向に延びる。そのため、羽間空間の外側で幅が広がる。その結果、織物用糸とプロファイルロッドの接触面は拡大し、したがってプロファイルロッド上での糸の滑りが増大した摩擦面によって防止される。その結果、幅方向の羽位置は、織物用糸によってより確実に固定される。このようにして、ピッチが細かく、かつ羽および羽間空間が幅方向に正確に配列された筬を製造することができる。したがって、織物用糸は、羽の位置またはその固定に直接影響を及ぼす。織物用糸の拡幅は糸の体積を維持しながら行われるため、幅方向に垂直な糸の高さは拡幅の領域で減少する。その結果、これらの領域では糸の断面が非円形になる。驚くべきことに、前述の方法で、8分の1ミリメートル以下の比較的小さなピッチを有する筬でさえも、特に均一に製造できることが分かった。羽間空間について、金属線を結合手段として使用する従来の筬よりも高い均一性を達成することができる。
【0012】
有利には、織物用糸は、弾性を有する。好ましくは、織物用糸は弾性的に予張力をかけてプロファイルロッドに巻き付けられる。弾性のある織物用糸を用いると、予張力をかけることによって、筬の接着前に羽をその位置に固定することができる。このことは、筬の小さな動きでさえ、予張力を完全に失うことなく、織物用糸の伸張または収縮によって補正できるという利点を有する。最小限の変化しか生じない予張力の結果、プロファイルロッド間の以前に結合された羽の緩みや変位が防止される。
【0013】
織物用糸が、少なくともプロファイルロッドの少なくとも1つと直接接触している点で、隣接する巻き部が互いに当接するような、幅方向に大きな幅を有する隣接する巻き部を有すると、特に有利である。この場合、少なくとも幅方向の断面において、織物用糸の隣り合う巻き部の間に間隔がなくなる。織物用糸の隣り合う巻き部が接触する結果、これらの巻き部は相互にプロファイルロッドに対する位置を固定し、したがって、これらの巻き部に機能的に接続された筬の羽が幅方向に変位することが防止される。
【0014】
織物用糸の繊維が、最大で幅方向の羽間空間の幅の半分に相当する最大直径を有すると、さらなる利点が得られる。有利には、繊維の最大直径は、幅方向における羽間空間の幅の最大で3分の1、好ましくは最大で4分の1である。このような織物用糸は圧縮可能であり、その寸法は幅方向で羽間空間に適合させることができるが、同時に、羽間空間の幅が公称寸法を下回ったときに圧縮に対して十分に大きな抵抗を提供する。その結果、織物用糸は、例えば接着中の毛細管力によって引き起こされ得る、幅方向における羽の変形および/または変位に対抗し、その結果、筬の羽間空間の均一性を向上させる。糸の繊維の数も筬の均一性に影響を与え得る。有利には、筬は少なくとも5本の繊維を含み、好ましくは少なくとも15本の繊維を含む。
【0015】
有利には、織物用糸は、圧縮力を加えることによって圧縮可能であり、圧縮力は、織物用糸の圧縮が増加するにつれて漸増する。このような特徴を有する織物用糸は、圧縮力が、特に羽間空間の幅が公称寸法を下回ると、筬の接着の間に羽に作用する毛細管力を打ち消すことにより、筬に不規則な羽間空間が形成されるのを防止することができる。
【0016】
筬の、高さ方向にプロファイルロッドの間に位置する領域において、織物用糸が幅方向の両側でそれぞれ少なくとも1つの羽に当接するとき、羽間空間の均一性に関するさらなる利点が得られる。したがって、これらの領域では、織物用糸は、少なくとも部分的に、隣接する羽間の羽間隙全体を完全に埋めるものである。この目的のため、織物用糸は、有利には、筬の組立中に、羽間空間の公称寸法に圧縮される。したがって、織物用糸は、有利には、羽間空間の公称寸法よりも大きな直径を有するが、羽間空間の公称寸法まで圧縮することができる。
【0017】
織物用糸は、有利には、撚られており、少なくとも20である撚り因子(twist factor)αを有する。撚り因子αについて以下の式が成り立つ。
【数1】
ここで、
t=織物用糸の1メートル当たりの撚り数
P
t=織物用糸のテックス(tex)で表された糸番手
である。
しかし有利なことに、織物用糸は20から100の撚り因子を有する。撚り因子は、DIN EN ISO 2016に記載されており、この規格において単位なしで規定されている。この規格には、『撚り因子とは、糸の表面の繊維が糸の軸に対してとる角度を表し、撚りによって生じる糸の硬さの尺度である。』のように記載されている。糸の1回の撚りは、糸の長手軸に対して360°の撚りに相当する。糸の撚りは、断面形状および伸縮挙動に影響を与えまる。撚り因子は、撚り度(degree of twist)または撚り係数(twist coefficient)とも呼ばれる。これは、撚りの硬さを特徴付けるものであり、異なる番手の糸の伸縮挙動を互いに比較するのに適している。撚り因子は、同じ撚り硬さで1000texの番手を持つ比較糸が持つであろう、長さ1メートルに対する撚り数を示す。撚り因子が同じであれば、糸の撚り硬さは同じになる。精細な筬を織物用糸で結束する場合、前述の選択範囲内の撚り因子を有する織物用糸の伸縮挙動が、筬の均一性に関して利点をもたらすことが示されている。しかしながら、織物用糸の撚り因子が45から65であると、特に有利である。この場合、織物用糸は、少なくとも羽間空間の幅の公称寸法分だけ圧縮可能である。しかし、羽間空間の幅が公称寸法を下回ると、圧縮力は少なくとも圧縮の増加に伴って漸増する。このようにして増大する圧縮力は、羽間空間の幅が公称寸法を下回ることに対抗する。
【0018】
織物用糸が1メートル当たり500から2000の撚りを有すると、さらなる利点が得られる。しかし有利には、織物用糸は1メートル当たり800から1800の撚りを有する。糸1メートル当たりの撚り数によって、織物用糸の伸縮挙動は、筬の製造中に可能な限り均一な羽間空間が得られるように適合させることができる。
【0019】
有利には、織物用糸は、次の材料の少なくとも1つを含む少なくとも1つの繊維を有する。その材料は、ポリアミド、ポリアミド6.6、ポリアミド6、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、である。特に、ポリアミドは、その材料挙動から、要求される伸縮挙動を有する織物用糸を形成するのに適している。しかしながら、織物用糸は、有利には、上述したリストには記載されていないが、要求される伸縮挙動を有する糸の形成を可能にする他の材料から構成することができる。織物用糸の繊維は、有利には、複数の材料を含むこともできる。したがって、織物用糸は、例えば、ポリアミド繊維およびポリエステル繊維、様々なポリアミド繊維または様々なポリエステル繊維、を含むものであってもよい。しかし、有利には、織物用糸のすべての繊維はポリアミドを含む。
【0020】
可能な限り均一な予張力および均一な羽間空間を達成するために、織物用糸が、少なくとも20cN/texの糸番手に関連する最大引張力(maximum tensile force)を有すると、有利である。有利には、織物用糸は、100cN/texの糸番手に関連する最大引張力を有する。しかし、織物用糸が、30cN/texから60cN/texの糸番手に関連する最大引張力を有すると、特に有利である。糸番手に関連する最大引張力はDIN EN ISO 2062に従って決定することができる。
【0021】
織物用糸が、10%から80%、好ましくは20%から45%、の最大引張伸度(maximum tensile force elongation)を有すると、さらなる利点が得られる。最大引張伸度は、DIN EN ISO 2062に従って決定することができる。
【0022】
筬の有利な実施形態は、少なくとも2つの羽の間の羽間空間の幅を予め規定する配置のスペーサを含んでいない。スペーサは、例えば、金属(実質的に非圧縮性)ワイヤー、金属螺旋またはばねであり得る。このようなスペーサは、先行技術から知られており、結束手段に加えて使用される。先行技術の筬では、それらは筬の羽の間に配置される。特に、0.1mm未満の小さなピッチを有する筬では、これはしばしば非常に複雑な手作業と関連している。1cm当たり150個を超える羽を有する筬を、羽間にスペーサを使用しながら製造するには、数ヶ月かかることもある。したがって、この技術は、このような小さなピッチの筬の工業生産には適していない。
【0023】
有利には、筬の少なくとも1つの羽は、少なくとも1つのスペーサスタッドを有し、このスペーサスタッドは、少なくとも片側で羽の大部分に対して幅方向Bに高くなっており、少なくとも1つの隣接する羽に対する最小間隔が幅方向で下がることを防止する。このようなスペーサスタッドは、欧州特許第3425095号から既に知られている。この文献には、例えば、
図4および
図5には、スペーサスタッド(30)を有する筬の羽(16)が示されている。
この特許明細書に開示されているスペーサスタッドのすべての実施形態は、本発明による本教示と有利に組み合わせることができる。隣り合う羽の間に生じる毛細管力は、スペーサスタッドで打ち消すことができる。その結果、ピッチの小さい筬の羽間空間を均一に作ることができる。
【0024】
以下、最大のピッチが8分の1ミリメートルの筬を製造する方法について説明する。第1のステップにおいて、主として長手方向に延びる少なくとも2つの羽が、長手方向に直交する幅方向に羽間空間を形成するように、互いに隣接して配置される。この際、少なくとも2つの羽のそれぞれは、長手方向および幅方向に直交する高さ方向においてそれぞれの羽を区切り、高さ方向において互いに間隔をあけて配置される端面を有する。次に、少なくとも1つの結合手段が、少なくとも2つのプロファイルロッドの周囲に、それらが機能的な対を形成し、高さ方向において対をなして互いに対向するように、少なくとも2つのプロファイルロッドの周囲に少なくとも部分的に巻き付けられ、少なくとも2つのプロファイルロッドが少なくとも2つの羽の少なくとも2つの端面に互いに引き寄せられように、巻き付けられる。この場合、結合手段は、少なくとも2つの羽の間の羽間空間を少なくとも部分的に通る。複数の繊維を含む織物用糸が結合手段として使用され、織物用糸は、少なくともプロファイルロッドの少なくとも1つと直接接触する点において、プロファイルロッド間の高さ方向にある領域における糸の幅に比べて幅方向に広がるように、予張力下で巻かれる。糸を予張力下で巻くことは、巻き部用の糸が予張力を受け、その長手方向に沿って伸張されることを意味する。織物用糸は、羽間空間の外側に広がるか、幅が広がる。その結果、織物用糸とプロファイルロッドとの間の接触面が拡大され、拡大された摩擦面によりプロファイルロッド上での糸の滑りが防止される。このようにして、微細なピッチと、幅方向における羽と羽間空間の正確な整列を有する筬を製造することができる。説明した方法は、すでに前の節で説明したすべての特徴を有する筬を製造するのに適している。
【0025】
有利には、織物用糸は、少なくともプロファイルロッドの少なくとも1つと直接接触する点で、幅方向において互いに隣り合う織物用糸の巻き部が幅方向において横方向に互いに当接する仕方で幅方向に広がるように、予張力下で巻かれる。このようにして、織物用糸の隣り合う巻き部は、幅方向の滑りに対して相互に固定され、また、製造中の筬の羽の滑りを防止する。
【0026】
追加のステップにおいて、織物用糸は、幅方向における少なくとも2つの羽の間の羽間空間の幅まで圧縮される。しかしこの場合、織物用糸の繊維は圧縮されない。糸の圧縮は、有利には、織物用糸の繊維の位置が変わり、糸の断面形状は変わるが、個々の繊維の断面形状は変わらないという結果をもたらす。したがって、繊維は、有利には互いに対して再配置される。
【0027】
羽間空間の幅が公称寸法を下回るときに織物用糸の繊維が圧縮されると、さらなる利点が得られる。このようにして、公称寸法を下回ると圧縮力が不釣り合いに増大し、織物用糸またはその繊維が、公称寸法を下回る羽間空間の幅に対抗する。その結果、筬の製造中、羽間空間の可能な限り均一な幅が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、複数の羽(2)が幅方向(B)に隣り合って配置され、羽間空間(5)を形成している筬の透視図である。
【
図2】
図2は、長手方向(L)と高さ方向(H)にまたがる平面にあり、羽間間空間(5)を通って2つの羽(2)の間を正確に通る、
図1の筬を通る断面を示す図である。
【
図5】
図5は、織物用糸(4)が撚りを有する
図2のC部詳細図である。
【
図6】
図6は、
図3と同様に、
図2のA-A断面を示す図である。但しし、
図3と比較して、織物用糸(4)はより多くの繊維(8)を含んでいる。
【
図7】
図7は、
図4と同様に、
図2のB-B断面を示す図である。但し、
図4とは対照的に、織物用糸(4)の隣接する巻回部は、幅方向(B)において互いに横方向に当接していない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、筬(リード)1の透視図である。筬1は、隣り合う羽(デント)2の間に羽間空間5が形成されるように幅方向Bに互いに隣り合って配置された複数の羽2を含む。4本のプロファイルロッド3が、高さ方向Hにおいて羽2の上下に配置されている。それぞれの場合において、高さ方向Hにおける鏡映の位置で互いに対向する2本のプロファイルロッド3は、機能的な対を形成し、高さ方向Hに羽2を囲むものである。それぞれの場合において、織物用糸4は、織物用糸4の巻き部がそれぞれの羽間空間5を通り、プロファイルロッド3と羽2とをこのように接続するように、プロファイルロッド3の機能的な対の周りにらせん状に巻かれている。
【0030】
図2は、
図1の筬1を通る断面を示している。この断面は、長手方向Lおよび高さ方向Hに張られる平面内にあり、羽間空間5内の2つの羽2の間に正確に位置する。したがって、羽間空間5は、この表現では参照番号が付されていない。この図では、1つの羽2だけが示されており、筬の残りの羽2は隠されている。図示された羽2の左端と右端には、それぞれ機能的な対を形成する2本のプロファイルロッド3が配置されている。プロファイルロッド3は、羽2の端面6に置かれ、プロファイルロッド3の周囲に巻かれた織物用糸4により予張力をもって端面6に押し付けられる。その結果、羽2の位置を固定し、幅方向Bへの変位を防止するのに適したクランプ力が羽2に加えられる。図では、織物用糸4の巻き部は、プロファイルロッド3のそれぞれの機能的な対に巻かれている。それぞれの巻き部は、高さ方向Hにおける織物用糸4の最も高い位置から始まり、このことは、織物用糸4がこの位置で切断されていることから分かる。織物用糸4の切断面7はハッチングで示されている。それぞれの巻き部は、プロファイルロッド3の機能的な対の周囲を1回完全に回った後、図示された羽2の後方に存在する羽間空間5に延びる織物用糸4の次の巻き部に移り変わる。
【0031】
図3は、
図2のA-A断面を示しており、織物用糸4が羽間空間5にどのように配置されているかがわかる。この例示的な実施形態では、織物用糸4は11本の繊維8からなり、織物用糸4のそれぞれ1巻きが各羽間空間5を通るように、プロファイルロッド3に巻かれている。したがって、この図では、織物用糸4は、各羽間空間5で1回切断されて示されている。織物用糸4は撚り糸であり、プロファイルロッド3に巻き付ける前の状態では、実質的に円形の断面を有している。しかし、筬1を組み立てる間に、この断面は圧縮される。例えば
図3では、織物用糸4の断面が、幅方向Bの羽間空間5の幅9に適合するように、筬1の羽2の間で圧縮されることがわかる。したがって、繊維用糸4は、幅方向Bの両側で羽2に対して当接する。この場合、繊維8の位置が、互いに対してずれることもあり得る。但し、好ましくは、個々の繊維8は圧縮されない。これにより、織物用糸4は、羽間空間5の幅9の公称寸法に規定された力が加えられ、圧縮され得る。しかし、公称寸法を下回ると、有利なことに、個々の繊維8が圧縮され、かなり大きな力を加える必要が生じる。このようにして、羽間空間5の幅9の公称寸法を下回ることに対して対抗することができる。織物用糸4のこの挙動は、羽間空間5の幅9の半分の最大値に対応する最大直径13を有する繊維8によって達成することができる。
図2には、本特許出願の意味においてピッチ11によって理解されるものが再び示されている。ピッチ11は、羽間空間5の幅9と幅方向Bの羽幅10の和である。
【0032】
図4は、
図2の筬1を通るB-B断面を示す。複数の羽2が切断図で示されている。切断面の長手方向の後方には、羽2の上にプロファイルロッド3が示されている。隣り合う羽2の間の幅方向Bには、それぞれ羽間空間5が配置されている。図の左側にある2つの羽間空間5は、幅方向Bおよび高さ方向Hにおいて織物用糸4が完全に充填されている。したがって、繊維用糸4は、羽間空間5の均一な構成をもたらすことができる。説明のために、織物用糸4のない3つの羽間空間5が図に示されている。これらの羽間空間5も、実際には織物用糸4が充填されている。織物用糸4は、その長手軸を中心に撚り角12だけ撚られ、高さ方向Hの最上部で羽間空間5から現れる。羽間空間5から現れると、織物用糸はプロファイルロッド3に当接し、幅方向Bに広がる。したがって、織物用糸は、織物用糸がプロファイルロッドに当接する領域において、織物用糸が羽間空間5において羽2の間を通る領域における幅よりも大きな幅を有する。これにより、織物用糸4の幅は、幅方向Bで織物用糸4の隣り合う巻き部が互いに当接するまで、羽間空間5からの距離が長くなるにつれて、高さ方向Hに漸増する。織物用糸4の隣り合う巻き部は、このようにして、その位置を互いに固定するとともに、幅方向Bにおける羽2の位置を固定する。織物用糸4が幅方向Bに広がる一方で、その高さ14は、幅方向Bに垂直かつ織物用糸4の長手延伸方向に垂直に、減少する。織物用糸4のこの挙動は、
図2のC部詳細を示す
図5に示されている。織物用糸4が幅方向Bにどれだけ広がるか、またはその高さ14がどれだけ縮むかは、織物用糸4の撚りによって影響され得る。この効果は、弱く撚られた(撚り角12が小さい)糸または撚りのない糸の場合、強く撚られた(撚り角12が大きい)糸の場合よりも顕著に現れる。
【0033】
図6は、
図3と実質的に同じ図であるが、織物用糸4が、より多くの繊維(正確には22本の繊維)から構成されている。繊維の最大直径13は、羽間空間5の幅9の3分の1よりも小さい。このような織物用糸4は、羽間空間5にさらによく適合する。したがって、羽間空間5の均一性がより高い筬1を製造することができる。
【0034】
図7は、
図4と実質的に同じ図であるが、織物用糸4が異なる伸縮挙動を有する。この例示的な実施形態でも、織物用糸4は、羽間空間5の外側で幅方向Bに広がっている。しかし、
図4に示す例示的な実施形態とは対照的に、織物用糸4は、織物用糸4の隣接する巻き部が幅方向Bにおいて横方向に互いに当接するほどには広がっていない。
【0035】
図1から
図7は、部分的に筬1の個々の構成要素の実際のサイズ比を示していない。したがって、これらは縮尺図ではなく、本発明の本質的な特徴を示すことを意図した概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1:筬
2:羽
3:プロファイルロッド
4:織物用糸
5:羽間空間
6:端面
7:織物用糸4の切断面
8:繊維
9:羽間空間5の幅
10:羽幅
11:ピッチ
12:撚り角
13:繊維8の最大直径
14:織物用糸4の高さ
B:幅方向
H:高さ方向
L:長手方向
α:撚り因子
【国際調査報告】