(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】核酸送達のための立体化学的に純粋な脂質
(51)【国際特許分類】
C07C 219/06 20060101AFI20240808BHJP
C07C 213/06 20060101ALI20240808BHJP
A61K 47/18 20170101ALN20240808BHJP
A61K 31/7088 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
C07C219/06 CSP
C07C213/06
A61K47/18
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513192
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022074100
(87)【国際公開番号】W WO2023031210
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591091515
【氏名又は名称】シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ゲマインニュッツィゲ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Platz 1, D-45470 Muelheim an der Ruhr, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リスト・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】デ・チャンドラ・カンタ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー・チェンダン
(72)【発明者】
【氏名】デーン・シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリヒス・ハイケ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076DD50
4C076FF31
4C086AA10
4C086EA16
4C086MA10
4C086NA13
4C086ZC02
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC48
4H006BB12
4H006BN10
4H006BT12
4H006BU32
(57)【要約】
本出願は、一般に、オリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNAのような治療用核酸の細胞内送達をin vitroおよびin vivoの両方で促進するために、オリゴヌクレオチドを有する脂質ナノ粒子を形成するために、他の脂質成分中性脂質、例えば、コレステロールおよびポリマー共役脂質などと組み合わせても使用することができる立体化学的に純粋な脂質に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)で表される脂質化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であって:
式中、
C
*1およびC
*2はそれぞれCH基を表し;
C
1aおよびC
1bは互いに異なっており、C
6-C
24アルキルあるいはC
6-C
24アルケニルを独立して表し;
C
2aおよびC
2bは互いに異なっており、C
6-C
24アルキルあるいはC
6-C
24アルケニルを独立して表し;
C
1aはC
2aと同一または異なっており、C
1bはC
2bと同一または異なっており;
R
1およびR
2はそれぞれ、非置換C
1-C
12アルキレンまたはC
2-C
12アルケニレンであり、R
1およびR
2は、好ましくは同一の基を表し;
R
3はC
1-C
24アルキレン、C
2-C
24アルケニレン、C
3-C
8シクロアルキレンまたはC
3-C
8シクロアルケニレンであり;
F
1およびF
2は、それぞれ-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
1,2-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-RC(=O)-、-C(=O)R-、RC(=O)R-、-OC(=O)R-、-RC(=O)O-または直接結合から選択され、ここで、Rは、HまたはC
1-C
12アルキルであり、F
1およびF
2は、好ましくは同一の基を表し、より好ましくは、それぞれ-O(C=O)または-(C=O)O-であり;
F
3は、H、OR
4、-NR
4
2、-CN、ハロゲン、-C(=O)O-(C
1-C
12アルキル)-、(C
1-C
12アルキル)-OC(=O)-(C
1-C
12アルキル)-または-R
4C(=0)-(C
1-C
12アルキル)-であり、R
4はHまたはC
1-C
6アルキルであり、
ここで、C
*1およびC
*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮されている、前記脂質化合物。
【請求項2】
式(I)において、C
1aおよびC
2aが、C
6-C
24アルキルまたはC
6-C
24アルケニルから選択される同一の基を表し、C
1bおよびC
2bが、C
6-C
24アルキルまたはC
6-C
24アルケニルから選択される同一の基を表す、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項3】
式(I)において、F
1およびF
2が、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
1,2-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-RC(=O)-、-C(=O)R-、RC(=O)R-、-OC(=O)R-または-RC(=O)O-から選択される同一の基を表すか、または、直接結合を表し、ここでRはHまたはC
1-C
12アルキルであり、好ましくは、それぞれ、-O(C=O)-または-(C=O)O-である、請求項1または2に記載の脂質化合物。
【請求項4】
式(I)において、R
1およびR
2が同一であり、それぞれ非置換C
1-C
12アルキレンである、請求項1~3のいずれか一つに記載の脂質化合物。
【請求項5】
式(I)において、R
3がC
1-C
24アルキレンである、請求項1~4のいずれか一つに記載の脂質化合物。
【請求項6】
式(I)において、F
3がOR
4、-NR
4
2、-CN、またはハロゲンであり、R
4がHまたはC
1-C
6アルキルである、請求項1~5のいずれか一つに記載の脂質化合物。
【請求項7】
式(I)において、
C
*1およびC
*2が、それぞれCH基を表し;
C
1aおよびC
2aが、同一のC
6-C
24アルキル基を表し;
C
1bおよびC
2bが、同一のC
6-C
24アルキル基を表し;
F
1およびF
2が、それぞれ-O(C=O)-、-(C=O)O-から選択される同一の基を表し;
R
1およびR
2がそれぞれC
4-8アルキレンであり;
R
3がC
1-C
24アルキレンであり;かつ、
F
3がOR
4または-NR
4
2であり、R
4はHまたはC
1-C
6アルキルであり、
ここで、C
*1およびC
*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮されている、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項8】
式(I)において、C
*1およびC
*2が、それぞれCH基を表し;
C
1aおよびC
2aがそれぞれC
6アルキル基を表し;
C
1bおよびC
2bがそれぞれC
8アルキル基を表し;
F1およびF2がそれぞれ、C
*(1,2)に結合された-O(C=O)基を表し;
R
1およびR
2がそれぞれ非置換C
4-8アルキレン、好ましくはC
6アルキレンであり;
R
3がC
2-C
4アルキレンであり;かつ、
F
3が、OR
4または-NR
4
2であり、R
4は、Hまたはメチル基であり、
ここで、C
*1およびC
*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮化されている、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項9】
次の式(I)
【化2】
[式(I)において、C
*1およびC
*2は、それぞれCH基を表し;
C
1aおよびC
2aは、C
6-C
24アルキルから選択される同一の基を表し、
C
1bおよびC
2bは、C
6-C
24アルキルから選択される同一の基を表し;
F
1およびF
2は、それぞれ-O(C=O)-、-(C=O)O-から選択される同一の基を表し;
R
1およびR
2はそれぞれC
4-8アルキレンであり;
R
3はC
1-C
24アルキレンであり;かつ、
F
3はOR
4または-NR
4
2であり、R
4はHまたはC
1-C
6アルキルであり、
ここで、C
*1およびC
*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮化されている]
で表される脂質化合物を製造するための方法であって、
X-C
1-C
24アルキレン-NH
2(式中、Xは、-OYまたはNR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1-C
6アルキルである)を、第1の反応ステップにおいて、少なくとも等モル量のHO-C
4-8アルキレナール(alkylenal)、好ましくはHO-C
6アルキレナールと反応させ、そして、任意の第2の反応ステップにおいて、少なくとも等モル量のHO-C
4-8アルキレナール、好ましくはHO-C
6アルキレナールと反応させ、ここで、このHO-C
4-8アルキレナールは前の反応ステップと同一または異なるHO-C
4-8アルキレナールであり、式(II)で表される生成物を得、
【化3】
式(II)の得られた反応生成物(ここで、R
1、R
2、R
3およびF
3は、この請求項で上記に定義された意味を示す)を、(R)-形態または(S)-形態で不斉中心C
*を有する式(III)の少なくとも等モル量のカルボン酸と反応させ:
【化4】
ここで、不斉中心C
*上の各C
6-24アルキル基は異なっており、そして、任意の更なる反応ステップにおいて、(R)-形態または(S)-形態で不斉中心C
*を有する式(III)の少なくとも等モル量のカルボン酸と反応させ、ここで、不斉中心C
*上の各C
6-24アルキル基は異なっており、式(III)のこのカルボン酸は、前の反応ステップと同一または異なった式(III)のカルボン酸である、前記製造方法。
【請求項10】
X-C
2-C
4アルキレン-NH
2(式中、Xは-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1-C
6アルキルである)を、第1の反応ステップにおいて、少なくとも2倍等モル量のHO-C
4-8アルキレナールと反応させ、式(II)で表される生成物を得、但し、ここで、R
3はC
2-C
4アルキレンであり、R
1およびR
2は同一であり、それぞれがC
4-8アルキレンであり、そして、式(II)の得られた反応生成物を、更なる反応ステップにおいて、(R)-形態または(S)-形態で不斉中心C
*を有する少なくとも2倍等モル量の式(IIIa)のカルボン酸と反応させる、請求項9に記載の、式(I)で表される脂質化合物を製造するための方法。
【化5】
【請求項11】
式(IV)で表される出発化合物であって、
【化6】
式中、R
1およびR
2は同一または異なり、それぞれC
4-8アルキレンであり;
R
3はC
1-C
24アルキレンであり;
F
1およびF
2は、それぞれ-(C=O)OH、-C(=O)H、-OH、-S(O)
1,2H、-S-S-H、-C(=O)SH、-C(=S)OH、-RC(=O)H、-C(=O)R、-O-C(=O)Rまたは直接結合から選択され、ここで、RはHまたはC
1-C
12アルキルであり、かつ、
F
3は-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1-C
6アルキルである、前記出発化合物。
【請求項12】
式(II)で表される出発化合物であって、
【化7】
式中、R
1およびR
2は同一または異なり、それぞれC
4-8アルキレンであり;
R
3はC
1-C
24アルキレンであり;かつ、
F
3は-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1-C
6アルキルである、前記出発化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、治療用核酸、例えば、オリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNAなどの細胞内送達をin vitroおよびin vivoの両方で促進し、オリゴヌクレオチドを有する脂質ナノ粒子を形成するために、他の脂質成分、例えば、中性脂質、コレステロールおよびポリマー共役脂質と組み合わせても使用することができる立体化学的に純粋な脂質に関する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には、本発明の実施形態は、一般に、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA)のような薬学的に活性な化合物の細胞内への送達を促進または可能にする脂質ナノ粒子に使用される、立体化学的に純粋な脂質の製造および特性評価に関する。
【0003】
治療薬としての核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA)のポテンシャルは大きい。しかし、オリゴヌクレオチドを治療に用いるには、現在2つの問題がある。第1に、遊離RNAは血漿中でヌクレアーゼ消化を受けやすい。第二に、遊離RNAは、関連する翻訳装置が存在する細胞内コンパートメントにアクセスする能力が限られている。この問題に対処するため、核酸医薬の細胞内送達を容易にする脂質ナノ粒子が設計・開発されている。これらの脂質ナノ粒子(LNP)の構成成分の一つは、生理的条件下ではプロトン化され、したがって正に帯電しているアミンを含む合成脂質である。その種のいくつかの脂質は、Acuitas Therapeutics Inc.のWO2017075531またはWO2018081480に開示されており、Acuitas-5がその例である。
【0004】
【0005】
また、よく使われる具体例としては、mRNAワクチンの送達などに顕著な有用性を見出したALC-0315がある。
【0006】
【0007】
驚くべきことに、この脂質クラスの一つの重要な側面は、これまで注目されてこなかった。その結果、これまでLNPに組み込まれてきた合成脂質は、複数の立体異性体の混合物として製造され、使用されてきた。当技術分野では、LNPに使用する立体化学的に純粋な合成脂質の合成や記載は開示されていない。そのような立体化学的に純粋な脂質への経路も以前は開示されていなかった。
【0008】
典型的な例として、ALC-0315は、4つの異なる置換基で囲まれたsp3ハイブリッド化炭素原子である2つの不斉中心を含む。その結果、ALC-0315は3つの立体異性体、2つのキラルエナンチオマー(R,R)-ALC-0315と(S,S)-ALC-0315、そしてアキラルである1つのいわゆるメソ(meso)化合物(R,S)-ALC-0315が存在する。これらの異性体のいずれも、合成的またはクロマトグラフィー的に、あるいは他のいかなる手段によっても、以前に言及されておらず、特徴づけられておらず、または合成的にアクセスされたことはない。
【0009】
【0010】
これら3つの異なる立体異性体の混合物のみがWO2018081480に開示されているが、当該文献は単一の立体異性体のみ、またはその物理的、生理学的および生物学的特性については記載されていない。Covid-19の最初の出現以来、3つの異性体からなるALC0315の立体化学的な複雑さを認識した当業者は存在せず、これは当業者が容易にこの主題に到達しないか、その方向で研究する動機付けがないことを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
人体が立体異性体を区別する能力が非常に高いことはよく知られている。その結果、現代の医薬品の大部分は通常、単一異性体として使用されている。
【0013】
したがって、本発明者らは、ALC-0315の立体異性体および関連する脂質が、(a)核酸分解を防止する能力、および(b)核酸を局所的または全身的に細胞内に送達する能力に関して同様に異なること、さらに、(c)本発明者らは、立体異性体が耐性、治療指数、および毒性に関して有意に異なることを予期している。
【0014】
従って、当技術分野では、例えば、合成または分解によって、エナンチオピュアな脂質を得る方法を提供する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本特許出願は、ALC-315のようなLNPの立体化学的に純粋な形態の分離、製造および特性評価に関するものである。
【0016】
より詳細には、本発明は、以下の式(I)で表される脂質化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される塩に関し:、
ここで
C
*1およびC
*2はそれぞれCH基を表し;
C
1aおよびC
1bは互いに異なっており、C
6-C
24アルキルあるいはC
6-C
24アルケニルを独立して表し;
C
2aおよびC
2bは互いに異なっており、C
6-C
24アルキルあるいはC
6-C
24アルケニルを独立して表し;
C
1aはC
2aと同一または異なっており、C
1bはC
2bと同一または異なっており;
R
1およびR
2はそれぞれ、非置換C
1-C
12アルキレンまたはC
2-C
12アルケニレンであり、R
1およびR
2は、好ましくは同一の基を表し;
R
3はC
1-C
24アルキレン、C
2-C
24アルケニレン、C
3-C
8シクロアルキレンまたはC
3-C
8シクロアルケニレンであり;
F
1およびF
2は、それぞれ-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
1,2-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-RC(=O)-、-C(=O)R-、RC(=O)R-、-OC(=O)R-、-RC(=O)O-または直接結合から選択され、
ここで、Rは、HまたはC
1~C
12アルキルであり、F
1およびF
2は、各々、好ましくは同一の基を表わし、より好ましくは、それぞれ-O(C=O)または-(C=O)O-であり;
F
3は、H、OR
4、-NR
4
2、-CN、ハロゲン、-C(=O)O-(C
1-C
12アルキル)-、(C
1-C
12アルキル)-OC(=O)(C
1-C
12アルキル)-または-R
4C(=0)-(C
1-C
12アルキル)-、R
4はHまたはC
1~C
6アルキルであり、
ここで、C
*1およびC
*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮されている。
【0017】
本発明によれば、不斉中心が互いに独立して、(R)-形態または(S)-形態から選択される1つのステレオジェニック形態にリッチな脂質化合物を製造することが可能である。本発明の意味におけるリッチなとは、一般に(R)-形態または(S)-形態に存在する不斉中心が、50:50以上、好ましくは60:40以上、より好ましくは70:30以上、さらに好ましくは80:20以上、またはさらに好ましくは90:10以上の比率で、理想的には100:0の比率で2つの形態の一方に優勢であることを意味する。
【0018】
式(I)の炭化水素置換基の種類によっては、1つの式(I)の化合物中に2つ以上の不斉中心が存在する可能性があることは、当業者には明らかであり、特に当業者の技術水準に従って製造した場合、複雑な混合物が得られることになるであろう。したがって、エナンチオピュア(光学異性体的に純粋)
な生成物を得、ラセミ混合物の割合を減らすためには、エナンチオピュアな出発物質を使用することが非常に望ましい。
【0019】
本発明の一実施形態では、式(I)において、C1aおよびC2aは、C6-C24アルキルまたはC6-C24アルケニルから選択される同一の基を表し、C1bおよびC2bは式(I)においてC6-C24アルキルまたはC-C24アルケニルから選択される同一の基を表す。したがって、エナンチオピュアな生成物の合成を促進するために、この数を減らすことができる。
【0020】
あらゆる官能基は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)1,2-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-RC(=O)-、-C(=O)R-、RC(=O)R-、-OC(=O)R-または-RC(=O)O-から選択される任意の機能基、または直接結合であって、ここでRがHまたはC1~C12アルキルであり、好ましくは、それぞれ、-O(C=O)-または-(C=O)O-であり、本発明の脂質中に存在し得る。
【0021】
脂質化合物のさらなる実施形態においては、式(I)中、R1およびR2は同一であり、それぞれ非置換のC1-C12アルキレンである。
【0022】
脂質化合物の別の実施形態においては、R3はC1-C24アルキレンである。
【0023】
式(I)において、F3がOR4、-NR4
2、-CN、-またはハロゲンであり、R4がHまたはC1~C6アルキルである、前記請求項のいずれか1項に記載の脂質化合物。
【0024】
特定の脂質化合物は式(I)で表され
C*1およびC*2は、それぞれCH基を表し;
C1aおよびC2aは、同一のC6-C24アルキル基を表し;
C1bおよびC2bは、同一のC6-C24アルキル基を表し;
F1およびF2は、それぞれ-O(C=O)-、-(C=O)O-から選択される同一の基を表し;
R1およびR2はそれぞれC4-8のアルキレンであり;
R3はC1-C24アルキレンであり;
F3がOR4または-NR4
2、R4がHまたはC1~C6アルキルであり、
ここで、C*1およびC*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮され、エナンチオピュアであることが好ましい。
【0025】
脂質化合物では、式(I)において、C*1およびC*2は、それぞれCH基を表し;
C1aおよびC2aはそれぞれC6アルキル基を表し;
C1bおよびC2bはそれぞれC8アルキル基を表し;
F1およびF2はそれぞれ、C*(1,2)に結合された-O(C=O)基を表し;
R1およびR2はそれぞれ非置換C4-8アルキレン、好ましくはC6アルキレンであり;
R3はC2~C4アルキレンであり、
F3は、OR4または-NR4
2、R4は、Hまたはメチル基であり、
ここで、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮された、C*1およびC*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、同一炭化水素基の観点から特に重要であり、したがって、出発化合物の光学純度に応じて、脂質化合物をエナンチオピュア(R,R)形態または(S,S)形態またはメソ形態(R,S)で表す。
【0026】
本発明は、また、次の式(I)で表される脂質化合物を製造するための方法に関する;
【化5】
式(I)において、
C
*1およびC
*2は、それぞれCH基を表し;
C
1aおよびC
2aは、同一のC
6-C
24アルキル基を表し、
C
1bおよびC
2bは、同一のC
6-C
24アルキル基を表し;
F
1およびF
2は、それぞれ-O(C=O)-、-(C=O)O-から選択される同一の基を表し;
R
1およびR
2はそれぞれC
4-8のアルキレンであり;
R
3はC
1-C
24アルキレンであり;
F
3がOR
4または-NR
4
2、R
4がHまたはC
1~C
6アルキルであり、
ここで、C
*1およびC
*2における不斉中心(ステレオジェニック中心)は、(R)-形態または(S)-形態から選択される一つのステレオジェニック形態において互いに独立して濃縮化される、
ここで、X-C
1-C
24アルキレン-NH
2(式中、Xは、-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1-C
6アルキルである)を、第1の反応ステップにおいて、少なくとも等モル量のHO-C
4-8アルキレナール(alkylenal)、好ましくはHO-C
6アルキレナールと反応させ、そして、任意の第2の反応ステップにおいて、少なくとも等モル量のHO-C
4-8アルキレナール、好ましくはHO-C
6アルキレナールと反応させ、ここで、このHO-C
4-8アルキレナールは前の反応ステップと同一または異なるHO-C
4-8アルキレナールであり、式(II)で表される生成物を得、
【化6】
式(II)の得られた反応生成物は(ここで、R
1、R
2、R
3およびF
3は、上記に定義された意味を示し)、(R)-形態または(S)-形態で不斉中心C
*を有する式(III)の少なくとも等モル量のカルボン酸と反応し:
【化7】
ここで、不斉中心C
*上の各C
6-24アルキル基は異なっており、そして、任意の更なる反応ステップにおいて、(R)-形態または(S)-形態で不斉中心C
*を有する式(III)の少なくとも等モル量のカルボン酸と反応させ、ここで、不斉中心C
*上の各C
6-24アルキル基は異なっており、式(III)のこのカルボン酸は、前の反応ステップと同一または異なった式(III)のカルボン酸である。
【0027】
本発明の方法は、限定された数の官能基について例示されているが、当業者であれば、本発明の方法の理解と化学技術に基づいて、必要であれば、他の官能基や保護基にも容易に適応させることができる。
【0028】
より具体的な実施形態においては、本発明は、X-C
2-C
4アルキレン-NH
2(式中、Xは-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1-C
6アルキルである)を、第1の反応ステップにおいて、少なくとも2倍等モル量のHO-C
4-8アルキレナールと反応させ、式(II)で表される生成物を得、但し、ここで、R
3はC
2-C
4アルキレンであり、R
1およびR
2は同一であり、それぞれがC
4-8アルキレンであり、そして、式(II)の得られた反応生成物を、更なる反応ステップにおいて、(R)-形態または(S)-形態で不斉中心C
*を有する少なくとも2倍等モル量の式(IIIa)のカルボン酸と反応させる、:
【化8】
【0029】
2つの反応ステップで少なくとも2倍の等モル量を用いることによって、2つの不斉中心のみをもつ「対称的」な脂質化合物を得ることができる。
【0030】
重要な化合物として、式(IV)で表されるような出発化合物は、そのような化合物のための本発明の方法において使用することができ、主請求項によってカバーされる各脂質化合物は、前記出発化合物を適切な反応パートナーと反応させ、得られた反応生成物を適切なさらなる処理および精製工程に供することによって得ることができる:
【化9】
式中、R
1およびR
2は同一または異なり、それぞれC
4-8アルキレンであり;
R
3はC
1-C
24アルキレンであり;
F
1およびF
2は、それぞれ-(C=O)OH、-C(=O)H、-OH、-S(O)
1,2H、-S-S-H、-C(=O)SH、-C(=S)OH、-RC(=O)H、-C(=O)R、-O-C(=O)Rまたは直接結合から選択され、ここで、RはHまたはC
1~C
12アルキルであり、F
3は-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1~C
6アルキルである。
【0031】
したがって、本発明は、式(IV)の前記化合物に関し、より詳細には、式(II)で表されるような、より具体的な出発化合物にも関する。
【化10】
式中、R
1およびR
2は同一または異なり、それぞれC
4-8アルキレンであり;
R
3はC
1-C
24アルキレンであり;
F
3は-OYまたは-NR
4
2であり、Yは保護基であり、R
4はYまたはC
1~C
6アルキルである。
【0032】
本発明の方法においては、1つ以上の不斉中心を有する任意の反応パートナーまたは反応化合物は、1つ以上の不斉中心が2つの形態(R)-形態または(S)-形態のいずれかで存在する場合、その濃縮形態、理想的にはエナンチオピュアな形態で使用される。それぞれの濃縮形態は合成または分解によって得られる。
【0033】
本発明の方法において、有機溶媒の選択は、THF、アセトニトリル、他のニトリル、塩素化炭化水素、または他の非プロトン性溶媒、またはそれらの混合物から選択される非プロトン性有機溶媒である限り、必須ではない。また、反応条件も必須のものではなく、通常、常圧下、非反応性雰囲気下、-78℃~50℃、好ましくは-40℃~30℃で行われる。
【0034】
本発明の態様の文脈において、以下の定義は、本出願を通じて使用される、より一般的な用語である。
【0035】
ある範囲の値が列挙されるとき、それは範囲内の各値と小範囲を包含することを意図している。例えば、「C1-6」は、包含、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、およびC5-6を意図している。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、1~24個の炭素原子を有する直鎖状、環状または分枝状の飽和炭化水素基のラジカルを指す(「C1-24アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、4~8個の炭素原子(「C4-8アルキル」)を有し、他の形態においては、1~6個の炭素原子を有する。C1-6アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、イソプロピル(C3)、n-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、iso-ブチル(C4)、n-ペンチル(C5)、3-ペンタニル(C5)、アミル(C5)、ネオペンチル(C5)、3-メチル-2-ブタニル(C5)、3級アミル(C5)、およびn-ヘキシル(C6)である。アルキル基のその他の例としては、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)などが挙げられる。特に断らない限り、アルキル基の各例は、独立して、非置換(「非置換アルキル」)または1つ以上の置換基で置換(「置換アルキル」)されている。特定の実施形態において、アルキル基は、非置換C1-10アルキル(例えば、-CH3)である。特定の実施形態において、アルキル基は、置換アルキルである。
【0037】
「アルケニル」とは、2~24個の炭素原子および1以上の炭素-炭素二重結合(「C2-24アルケニル」)を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基のラジカルをいう。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2個の炭素原子(「C2アルケニル」)を有する。1つ以上の炭素-炭素二重結合は内部(例えば、2-ブテニル中の)でも末端(例えば、1-ブテニル)でもよい。C2-4アルケニル基には、たとえば、エテニール(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)などが含まれる。C2-6アルケニル基としては、例えば、前述のC2-4アルケニル基、並びにペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが挙げられる。追加的な例示としては、ヘプテニール(C7)、オクテニール(C8)、オクタトリエニル(C8)等がある。特に明記しない限り、アルケニル基の各例は、独立に任意に置換され、すなわち、置換されていない(「非置換アルケニル」)、または1以上の置換基で置換(「置換アルケニル」)されている。ある態様において、アルケニル基は、非置換のC2-10アルケニルである。ある態様において、アルケニル基は置換C2-10アルケニルである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明は、以下の図によってさらに説明される。図においては、
図1は、ALC-315の従来の合成法を示す。
図2Aは、(S,S)-ALC-0315の本発明の合成を示す。
図2B (R,R)-ALC-0315の本発明の合成を示す。
図2C (S,R)-ALC-0315((メソ)-ALC-0315)の本発明の合成を示す。
【0039】
先行技術で使用され、
図1に示されているALC-315の合成は、市販のα-分岐酸(rac)-1から始まる。このような酸は、α-位において、エチレンの要素(CH
2CH
2)によって異なる2つのn-アルキル鎖で置換されており、技術的には、アルコールの2つのアルデヒドの二量化で製造され、豊富で安価である。しかし、その技術的合成において、生成される酸はラセミ体であり、これは(R)-および(S)-エナンチオマーとして記述される2つの鏡像体の混合物を意味する。
【0040】
ALC-315の合成の第1のステップでは、(rac)-1を1,6-ヘキサンジオールでエステル化する。得られたアルコールは対応するアルデヒドに酸化され、次に4-アミノブタン-1-オールとの二重還元的アミノ化を経てALC-315が得られる。この製法は、様々なエナンチオピュアな化合物を得ることに制限があるという点で、あまり好ましくない。
【0041】
本発明者らのアプローチは、(R)-または(S)-形態のエナンチオピュアなカルボン酸から出発する。エナンチオピュアな酸は、物理的または化学的方法によってラセミ体を分離するか、エナンチオ選択的合成によって得られる。エナンチオピュアな酸1により、(R,R)-ALC-0315および(S,S)-ALC-0315は、ALC-315異性体の既知の合成法または別の合成法に従って入手することができる。対応する(meso)-ALC-315の合成は、酸1の2つのエナンチオマーを2つの別々のステップで導入する改良された合成を必要とする。
【0042】
本出願において、本発明者らは、キラル酸1を最初にエナンチオピュアな形態で製造するという、彼らの考察に基づくアプローチを用いて、ALC-315のようなLNPの全ての可能な立体異性体の合成について述べている。これに続いて、3つのALC-315異性体が改良された手順で別々に製造される。一実施形態においては、キラル酸は、キラルなアミドをα位でジアステレオ選択的にアルキル化されることができる、キラルな補助的アプローチを介して得られる。このアミドを加水分解して、所望の酸1を得る。したがって、(+)-プソイドエフェドリンは、第1に、対応するアミドにカプリル酸クロライドで変換される。このアミドを1-ヨードオクタンでアルキル化し、次いで加水分解して、エナンチオマー比(e.r.)が98:2のエナンチオ濃縮(R)-1を得る。(R)-1のエナンチオマーである(S)-1も同様に得ることができる:まず(+)-プソイドエフェドリンを無水カプリン酸と反応させ、得られたアミドを1-ヨードヘキサンでアルキル化し、次いで加水分解する。この場合、(S)-1は98.5:1.5のe.r.で得られる。
【0043】
別の実施形態においては、ラセミ酸1が高速液体クロマトグラフィーによって分離される。従って、本発明者らは、キラル固定相(Chiralpak IG-3)を用いたHPLCを用いて、rac-1を分取スケールで分離できることを見出した。
【0044】
さらなる実施形態では、ラセミ酸1は対応するアミドに変換され、高速液体クロマトグラフィーで分離される。従って、本発明者らは、アミド形態のrac-1が、キラル固定相(Chiralpak IG-3)を用いたHPLCを用いて分取スケールで分離できることを見出した。
【0045】
エナンチオピュアな酸(S)-1および(R)-1を手にして、本発明者らは新たに開発したルートに従って、対応するALC-315異性体を合成した。すなわち、6-ヒドロキシヘキサナールが4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブタン-1-アミンで還元的にアミノ化される。得られたジオールが酸(S)-1によって二重エステル化される。シリル基が除去されると、純粋な生成物(S,S)-ALC-0315が得られる。そのエナンチオマー(鏡像異性体)である(R,R)-ALC-0315は、同一の手順に従って製造されているが、酸(S)-1の代わりに酸(R)-1)が使用される。
【0046】
最後に、(R,S)-ALC-0315(または(meso)-ALC-0315)も製造した。従って、上記のシリルで保護されたジオールは、その後、第1のステップで(S)-1と、第2のステップで(R)-1とエステル化される。最後に、シリル基を除去して純粋な生成物(meso)-ALC-0315を得る。
【0047】
本発明は、以下の実験パートによってさらに説明される。
【実施例】
【0048】
実験パート
例1:(R)-2-ヘキシルデカン酸の合成
【化11】
【0049】
ステップ1:火炎乾燥した250mL二つ口フラスコに、(+)-プソイドエフェドリン(4.0g,24.2mmol,1.0当量)およびトリエチルアミン(4.8mL,27.8mmol,1.3当量)を装入し、次いで無水テトラヒドロフラン(50mL)を加えた。反応混合物を撹拌し、0℃に冷却した。テトラヒドロフラン(10mL)中のカプリル酸クロライド(4.8mL,27.8mmol,1.15当量)の氷冷溶液を、添加漏斗を介して10分間かけて添加した。20分後、過剰の酸クロライドを水(10mL)の添加によりクエンチした。反応混合物を酢酸エチル(100mL)と塩水(brine)(80mL)の間で分配し、有機層を分離した。有機層を塩水(2×80mL)で抽出し、Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。減圧下溶媒を蒸発させると、N-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルオクタンアミドがオイルとして得られた(6.0g、収率85%)。
【0050】
ステップ2:火炎乾燥した250mLの二つ口フラスコに、マグネチックスターラー、塩化リチウム(3.2g,76.1mmol,6.0当量)、ジイソプロピルアミン(4.0mL,28.6mmol,2.25当量)、および無水テトラヒドロフラン(15mL)を装入した。懸濁液を-78℃に冷却した。10分後、ヘキサン中のn-ブチリチウム溶液(2.8M、9.4mL、26.4mmol、2.08当量)を加えた。反応混合物を10分間0℃に温めた後、-78℃に冷却した。テトラヒドロフラン(55mL)中のN-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルオクタンアミド(3.7g,12.7mmol,1.0当量)の氷冷溶液をゆっくり加えた。反応混合物を-78℃で1時間、0℃で15分間、室温で5分間撹拌した。0℃で、1-ヨードオクタン(17.7mL,149mmol,1.50当量)を加え、0℃でさらに15分間撹拌を続けた。その後、飽和NH4Cl溶液を加えてクエンチした。混合物を飽和NH4Cl溶液(80mL)と酢酸エチル(100mL)の間で分配した。水層を分離し、酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサン中の5%EtOAc~15%(v/v)EtOAc)。減圧下で溶媒を蒸発させると、(R)-2-ヘキシル-N-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミドがオイルとして得られた(2.9g、56%収率)。
【0051】
ステップ3:50mLの1つ首フラスコに、マグネチックスターラー、(R)-2-ヘキシル-N-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミド(1.2g,3.0mmol,1.0当量)、および1,4-ジオキサン(6mL)を入れた。水溶液18MのH2SO4酸溶液(6mL)をゆっくりと加えた。反応混合物を110℃で1時間加熱した。1時間後、反応混合物を0℃まで冷却し、50%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH>10まで塩基化した。得られた混合物を水(10mL)とジクロロメタン(20mL)の間で分配した。水層を分離し、ジクロロメタン(2x10mL)で抽出した。水層を、6M水溶液H2SO4酸溶液を用いてpH<2に酸性化し、ジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、後者の有機抽出物をNa2SO4上で乾燥した。その後濃縮し、粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサンv/v中20%酢酸エチル)。減圧下で溶媒を蒸発させると、(R)-2-ヘキシルデカン酸がオイルとして得られた(0.23g、収率35%)。エナンチオマー比は、HPLC、Chiralpak IG-3、アセトニトリル/0.1%TFA-水=65:35(v/v)、流速=1.0mL/分、λ=220nm、298K、tR=14.7分(メジャー)、tR=16.1分(マイナー)で測定した。er=98:2。
【0052】
例2:(S)-2-ヘキシルデカン酸の合成
【化12】
【0053】
ステップ1:火炎乾燥した100mLの2つ口フラスコに、(+)-プソイドエフェドリン(2.0g、12.1mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(2.1mL、14.5mmol、1.2当量)を入れ、続いて無水ジクロロメタン(24mL)を加えた。室温において、無水カプリン酸(4.8mL,13.0mmol,1.1当量)を10分かけて加えた。3時間後、過剰の無水物を水(1mL)の添加によりクエンチした。反応混合物を酢酸エチル(50mL)と塩水(40mL)の間で分配し、有機層を分離した。有機層を塩水(2×20mL)で抽出し、Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。減圧下で溶媒を蒸発させると、N-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミドがオイルとして得られた(3.5g、収率95%)。
【0054】
ステップ2:火炎乾燥した250mLの2つ口フラスコに、マグネチックスターラー、塩化リチウム(2.1g,69.5mmol,6.0当量)、ジイソプロピルアミン(3.7mL,26mmol,2.25当量)、および無水テトラヒドロフラン(14mL)を装入した。懸濁液を-78℃に冷却した。10分後、ヘキサン中のn-ブチリチウム溶液(2.8M、8.6mL、24mmol、2.08当量)を加えた。反応混合物を10分間0℃に温めた後、-78℃に冷却した。THF(50mL)中のN-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミド(3.7g,11.6mmol,1.0当量)の氷冷溶液をゆっくり加えた。反応混合物を-78℃で1時間、0℃で15分間、室温で5分間撹拌した。0℃で、1-ヨードヘキサン(2.6mL,17.4mmol,1.50当量)を加え、0℃でさらに15分間撹拌を続けた。その後、飽和NH4Cl溶液を加えてクエンチした。混合物を飽和水溶液、NH4Cl溶液(80mL)と酢酸エチル(50mL)の間で分配した。水層を分離し、酢酸エチル(3x30mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサン中の5%(v/v)EtOAc~15%EtOAc)。減圧下で溶媒を蒸発させると、(S)-2-ヘキシル-N-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミドがオイル(油)として得られた(2.2g、収率47%)。
【0055】
ステップ2:火炎乾燥した250mLの2つ口フラスコに、マグネチックスターラー、塩化リチウム(2.1g,69.5mmol,6.0当量)、ジイソプロピルアミン(3.7mL,26mmol,2.25当量)、および無水テトラヒドロフラン(14mL)を装入した。懸濁液を-78℃に冷却した。10分後、ヘキサン中のn-ブチリチウム溶液(2.8M、8.6mL、24mmol、2.08当量)を加えた。反応混合物を10分間0℃に温めた後、-78℃に冷却した。THF(50mL)中のN-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミド(3.7g,11.6mmol,1.0当量)の氷冷溶液をゆっくり加えた。反応混合物を-78℃で1時間、0℃で15分間、室温で5分間撹拌した。0℃で、1-ヨードヘキサン(2.6mL,17.4mmol,1.50当量)を加え、0℃でさらに15分間撹拌を続けた。その後、飽和NH4Cl溶液を加えてクエンチした。混合物を飽和水溶液.NH4Cl溶液(80mL)と酢酸エチル(50mL)の間で分配した。水層を分離し、酢酸エチル(3x30mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサン中の5%(v/v)EtOAc~15%EtOAc)。減圧下で溶媒を蒸発させると、(S)-2-ヘキシル-N-((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミドがオイルとして得られた(2.2g,収率47%)。
【0056】
ステップ3:50mLの1つ口フラスコに、マグネチックスターラー、(S)-2-ヘキシル-N-(((1S,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)-N-メチルデカンアミド(0.94g、2.3mmol、1.0当量)および1,4-ジオキサン(5mL)を装入した。水溶液である18MのH2SO4液(5mL)をゆっくりと加えた。反応混合物を110℃で1時間加熱した。1時間後、反応混合物を0℃に冷却し、50%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液を使用してpH>10に塩基性化した。得られた混合物を水(10mL)とジクロロメタン(20mL)の間に分配した。水層を分離し、ジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。水層を、6M水溶液を用いてpH<2に酸性化し、ジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、後者の有機抽出物をNa2SO4上において乾燥させた。次に濃縮し、シリカ上でフラッシュカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製した(溶離液:ヘキサンv/v中20%酢酸エチル)。溶媒を減圧下で蒸発させると、(S)-2-ヘキシルデカン酸がオイルとして得られた(0.25g,42%収率)。エナンチオマー比はHPLC、Chiralpak IG-3、アセトニトリル/0.1%TFA-水=65:35(v/v)、流速=1.0mL/分、λ=220nm、298K、tR=15.0分(マイナー)およびtR=15.4分(メジャー)で測定した。er=98.5:1.5。
【0057】
例3:rac-2-ヘキシルデカン酸の分取HPLC分離
【化13】
【0058】
rac-2-ヘキシルデカン酸はSigma-Aldrichから購入し、到着したものを使用した。rac-2-ヘキシルデカン酸はHPLCを用いて分取スケールで分離することに成功した。
条件:Chiralpak IG-3、アセトニトリル/0.1%TFA-水=65:35(v/v)、流速=1.0mL/分、λ=220nm、298K、tR=16.0分、tR=16.8分。
【0059】
例4:アミド誘導体の分取HPLC分離:
rac-2-ヘキシルデカン酸を対応する酸塩化物(ClCOCOCl,cat.DMF,DCM,rt,2h)に変換し、これを数種のキラルおよびアキラルアミンと反応させた(下の図を参照)。その後、対応するアミドをHPLC(キラルおよびアキラル固定相)を用いて分離した。加水分解後(ステップ3に記載)、エナンチオピュアな2-ヘキシルデカン酸が得られる。
【0060】
【0061】
実施例5:6,6’-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-1-オール)の合成
【化15】
【0062】
250mLの1つ口フラスコに、マグネチックスターラー、4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブタン-1-アミンクロライド(4.8g、20.0mmol、1.0当量)および6-ヒドロキシヘキサナール(5.8g、50mmol、2.5当量)を装入した。酢酸(4.8g、80mmol、4.0当量)と1,2-ジクロロエタン(63.0mL)を室温で加えた。その後、反応混合物を室温で10分間撹拌した。次に、反応混合物にNaHB(OAc)3(17.0g、80mmol、4.0当量)を室温で1時間かけて少しずつ加えた。NaHB(OAc)3を完全に加えた後、反応混合物をさらに室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和水溶液NaHCO3で中和し、酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:100%アセトン)。減圧下で溶媒を蒸発させると、6,6’-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-1-オール)が淡黄色オイルとして得られた(4.1g、収率50%)。
【0063】
実施例6:6-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)(4-ヒドロキシブチル)アミノ)ヘキサン-1-オールの合成
【化16】
【0064】
25mLの1つ口フラスコに、マグネチックスターラー、4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブタン-1-アミンクロライド(1.1当量)および6-ヒドロキシヘキサナール(1.0当量)を入れた。酢酸(2.0当量)および1,2-ジクロロエタン(6.3mL)をrtで加え、反応混合物を室温で10分間撹拌した。次に、反応混合物にNaHB(OAc)3(1.5当量)を室温で10分間かけて少しずつ加えた。NaHB(OAc)3を完全に添加した後、反応混合物をさらに室温で一晩撹拌した。次に、4-ヒドロキシブタナール(1.1当量)、酢酸(2.0当量)を室温で加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌した。次に、反応混合物にNaHB(OAc)3(1.5当量)を室温で10分間かけて少しずつ加えた。NaHB(OAc)3を完全に添加した後、反応混合物をさらに室温で6時間撹拌した。反応混合物を飽和水溶液NaHCO3溶液で中和し、酢酸エチル(3x10mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:100%アセトン)。減圧下で溶媒を蒸発させると、6-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)(4-ヒドロキシブチル)アミノ)ヘキサン-1-オールが淡黄色オイルとして得られた。
【0065】
実施例7:((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(2R,2’R)-ビス(2-ヘキシルデカノエート)の合成
【化17】
【0066】
火炎乾燥した25mLシュレンク管に、6,6’-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-1-オール)(39.4mg、0.1mmol、1.0当量)、(R)-2-ヘキシルデカン酸(50.0mg,0.2mmol,2.0当量、98:2er)およびDMAP(25.6mg、0.24mmol、2.4当量)を添加し、続いて無水ジクロロメタン(3mL)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドクロライド(44.9mg,0.24mmol,2.4当量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2mL)、塩水(5mL)で希釈し、ジクロロメタン(3x5mL)で抽出した。合わせた有機物をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサン中40%(v/v)酢酸エチル)。減圧下で溶媒を蒸発させると、((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(2R,2’R)-ビス(2-ヘキシルデカノエート)がオイルとして得られた(75.0mg、収率87%)。
【0067】
((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(2R,2’R)-ビス(2-ヘキシルデカノエート)をテトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、TBAFの1Mテトラヒドロフラン溶液(0.4mL,0.4mmol,4.0当量)を室温で加えた。2時間後、反応混合物を水でクエンチし、ジクロロメタン(3x5mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:酢酸エチル中0%~30%(v/v)アセトン)。減圧下で溶媒を蒸発させると、((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(2R,2’R)-ビス(2-ヘキシルデカノエート)がオイルとして得られた(51.0mg、2ステップにわたる収率68%)。
【0068】
エナンチオマー比の測定:エナンチオマー比は、以下の反応順序に従って脂質をカルボン酸に誘導体化した後、HPLCで測定した:
【化18】
er≧95.5:4.5、計算dr→20:1
【0069】
実施例8:((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(2S,2’S)-ビス(2-ヘキシルデカノエート)の合成
【化19】
【0070】
実施例4の手順に従って、(S)-2-ヘキシルデカン酸を用い、((4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)(2S,2’S)-ビス(2-ヘキシルデカノエート)をオイルとして得た(61.0mg,2ステップにわたる収率77%)。
er≧98:2、計算dr→20:1
【0071】
実施例9:6-((6-(((R)-2-ヘキシルデカノイル)オキシ)ヘキシル)(4-ヒドロキシブチル)アミノ)ヘキシル(S)-2-ヘキシルデカノエートの合成
【化20】
【0072】
火炎乾燥した25mLシュレンク管に、6,6’-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-1-オール)(75.6mg、0.19mmol、2.0当量)、(S)-2-ヘキシルデカン酸(25.0mg、0.1mmol、1.0当量、98:2er)およびDMAP(13.7mg、0.11mmol、1.2当量)を装入し、続いて無水ジクロロメタン(3mL)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドクロライド(21.5mg,0.11mmol,1.2当量)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2mL)、塩水(5mL)で希釈し、ジクロロメタン(3x5mL)で抽出した。合わせた有機物をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ジエチルエーテル中50%(v/v)アセトン)。溶媒を減圧下で蒸発させると、6-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)(6-ヒドロキシヘキシル)アミノ)ヘキシル(S)-2-ヘキシルデカノエートがオイルとして得られた。
【0073】
次に、単離された6-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)(6-ヒドロキシヘキシル)アミノ)ヘキシル(S)-2-ヘキシルデカノエートを、火炎乾燥した25mLのシュレンク管に移した。(R)-2-ヘキシルデカン酸(25.0mg、0.1mmol、1.0当量,98:2er)およびDMAP(13.7mg、0.11mmol、1.2当量)を添加し、続いて無水ジクロロメタン(3mL)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドクロライド(21.5mg,0.11mmol,1.2当量)を加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2mL)、塩水(5mL)で希釈し、ジクロロメタン(3x5mL)で抽出した。合わせた有機物をNa2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサン中40%(v/v)酢酸エチル)。減圧下で溶媒を蒸発させると、6-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)(6-(((R)-2-ヘキシルデカノイル)オキシ)ヘキシル)アミノ)ヘキシル(S)-2-ヘキシルデカノエートがオイルとして得られた(66mg、2ステップにわたる収率80%)。
【0074】
6-((4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ブチル)(6-(((R)-2-ヘキシルデカノイル)オキシ)ヘキシル)アミノ)ヘキシル-(S)-2-ヘキシルデカノエートをテトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、TBAFの1Mのテトラヒドロフラン溶液(0.4mL,0.4mmol,4.0当量)を室温で加えた。2時間後、反応混合物を水でクエンチし、ジクロロメタン(3x5mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカ上のフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:EtOAc中0%~30%(v/v)アセトン)。減圧下で溶媒を蒸発させると、6-((6-(((R)-2-ヘキシルデカノイル)オキシ)ヘキシル)(4-ヒドロキシブチル)アミノ)ヘキシル(S)-2-ヘキシルデカノエートがオイルとして得られた(51.0mg、3ステップにわたる収率71%)。
計算dr→20:1
【国際調査報告】