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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】網膜オルガノイドモデル系
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240808BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20240808BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240808BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20240808BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240808BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/079 ZNA
C12Q1/02
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513199
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022075064
(87)【国際公開番号】W WO2023034686
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/238,415
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ガム デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】メイヤール スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS31
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC09
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC46
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、治療的処置を試験するために使用可能な遺伝子操作された網膜オルガノイドに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜オルガノイドモデル系であって、
ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来光受容体(PR)細胞の集団を含み、
前記PR細胞は、光受容体間マトリックス(IPM)の構造成分をコードする遺伝子の機能の回復時に、その表面に視認できる外節を有するIPMを構成するように適合されている、網膜オルガノイドモデル系。
【請求項2】
前記hPSCが、ヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)である、請求項1に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項3】
前記遺伝子の機能が、前記網膜オルガノイドへの治療的処置の投与により回復可能である、請求項1に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項4】
前記治療的処置が、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、又は小分子を含む、請求項3に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項5】
前記治療的処置が、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法を更に含む、請求項4に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項6】
前記hPSCがhiPSCである、請求項2に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項7】
前記hiPSCが、前記IPMの構造成分をコードする遺伝子に自然突然変異を有する患者に由来する、請求項6に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項8】
前記自然突然変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である、請求項7に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項9】
前記hiPSCが、前記IPMの構造成分をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子において遺伝子操作された変異を含む組換えhiPSCである、請求項6に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項10】
前記遺伝子操作された変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である、請求項9に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項11】
前記hPSCがhESCである、請求項2に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項12】
前記hESCが、H9、H1、H7、BG01、BG02、HES-3、HES-2、HSF-6、HUES9、HUES7、又はI6である、請求項11に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項13】
前記hESCが、前記IPMの構造成分をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子において遺伝子操作された変異を含む組換えhESCである、請求項12に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項14】
前記遺伝子操作された変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である、請求項13に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項15】
前記IPMの構造成分をコードする遺伝子が、IMPG1又はIMPG2である、請求項1~14のいずれか一項に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項16】
前記IPMの構造成分をコードする遺伝子がIMPG2である、請求項15に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項17】
網膜オルガノイドモデル系であって、
ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来光受容体(PR)細胞の集団を含み、
前記PR細胞は、光受容体間マトリックス(IPM)の構造成分をコードする組換え遺伝子を含み、
前記遺伝子は、
i)第1の操作された遺伝子変異を含む第1の非機能的対立遺伝子、及び/又は
ii)第2の操作された遺伝子変異を含む第2の非機能的対立遺伝子
のうち少なくとも1つを含み、
第1及び第2の対立遺伝子のうち少なくとも1つの機能の回復は、前記PR細胞の表面に視認できる外節を含むIPMを生成する、
網膜オルガノイドモデル系。
【請求項18】
前記hPSCが、ヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)である、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項19】
前記遺伝子の機能が、前記網膜オルガノイドへの治療的処置の投与により回復される、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項20】
前記治療的処置が、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、又は小分子を含む、請求項19に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項21】
前記治療的処置が、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法を含む、請求項19に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項22】
前記hPSCがhiPSCである、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項23】
前記第1の操作された遺伝子変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項24】
前記第2の操作された遺伝子変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項25】
前記第1の操作された遺伝子変異と前記第2の操作された遺伝子変異が同じ変異である、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項26】
前記hPSCがhESCである、請求項17に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項27】
前記hESCが、H9、H1、H7、BG01、BG02、HES-3、HES-2、HSF-6、HUES9、HUES7、又はI6である、請求項26に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項28】
前記IPMの構造成分をコードする遺伝子が、IMPG1又はIMPG2である、請求項17~27のいずれか一項に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項29】
前記IPMの構造成分をコードする遺伝子がIMPG2である、請求項28に記載の網膜オルガノイドモデル系。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の網膜オルガノイドモデル系を用いて治療的処置の有効性を試験する方法であって、
a.前記網膜オルガノイドモデル系に、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能を回復させるための候補治療的処置を投与すること;
b.前記網膜オルガノイドモデル系のIPM内の光受容体外節を可視化すること;及び
c.前記IPMの変化を検出すること
を含み、
前記網膜オルガノイドモデル系のIPM内の顕微鏡で視認できる光受容体外節の生成及び/又は維持に変化があれば、前記治療的処置がIPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復に有効であったことを示し、
前記網膜オルガノイドモデル系のIPM内の顕微鏡で視認できる光受容体外節の生成及び/又は維持に変化がなければ、前記治療的処置が有効でなかったことを示す、
方法。
【請求項31】
治療候補の投与の前にIPMを可視化することを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記網膜オルガノイドモデル系のIPMを可視化することが、PR細胞の表面の視認できる光受容体外節の存在を定性的に観察すること又は定量することを含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
遺伝子変異に対して有効な治療的処置を試験する方法であって、
a.光受容体間マトリックス(IPM)の構造成分をコードする遺伝子の機能の回復時に、その表面に視認できる外節を有するIPMを発現するように適合されているヒト多能性幹細胞(hPSC)由来光受容体(PR)細胞の集団を含む網膜オルガノイドモデル系を生成すること;
b.前記網膜オルガノイドモデル系に候補治療的処置を投与すること;及び
c.前記網膜オルガノイドモデル系を、前記IPM内の視認できる外節の有無に関して評価すること
を含み、
前記IPMの構造成分をコードする遺伝子は、所定の遺伝子変異を含み、
前記IPMの視認できる外節の存在が、前記候補治療的処置が所定の遺伝子変異を効果的に治療することにより前記IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能を回復させることを示す、
方法。
【請求項34】
前記評価が、PR細胞の表面の視認できる外節の定性的観察又は定量を用いて前記IPMの変化の有無を決定することを更に含み、前記視認できる外節の存在又は量の増加が、前記網膜オルガノイドモデル系のIPMの変化の存在を示す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療的処置が、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、遺伝子療法、又は小分子を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスが、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)又はレンチウイルスを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療的処置が、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記治療的処置が、ゲノム又は塩基編集技術、ナノ粒子、又は細胞送達機構を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記所定の遺伝子変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異、又はノックアウト変異を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記候補治療的処置が、遺伝性疾患の治療の候補である、請求項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記遺伝性疾患が、嚢胞性線維症、鎌形赤血球貧血症、ヘモクロマトーシス、ハンチントン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、テイ-サックス病、アンジェルマン症候群、強直性脊椎炎、マルファン症候群、又はサラセミアである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
網膜オルガノイドモデル系を作製する方法であって、
a.ヒト多能性幹細胞(hPSC)の集団において光受容体間マトリックス(IPM)の構造成分をコードする遺伝子の1以上の遺伝子変異を操作すること;及び
b.前記hPSCを網膜系統への分化に誘導すること、
を含み、前記分化は、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復時に、その表面のIPM内に視認できる外節を発現するように適合された光受容体(PR)細胞を含む三次元(3D)網膜オルガノイドを生じる、方法。
【請求項43】
網膜オルガノイドモデル系を作製する方法であって、
a.光受容体間マトリックス(IPM)の構造部分をコードする遺伝子に変異を有する対象から組織サンプルを得ること;
b.前記組織サンプルからヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)の集団を樹立すること;及び
c.前記hiPSCを網膜系統への分化に誘導すること、
を含み、前記分化は、光受容体(PR)細胞を含む三次元(3D)網膜オルガノイドを生じ、
前記PR細胞は、光受容体間マトリックス(IPM)構造タンパク質を発現するように適合され、且つ、
前記IPM構造の回復は、前記網膜オルガノイドの表面に視認できる光受容体外節の生成及び維持を可能とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月30日に出願された米国仮出願第63/238,415号の利益を主張する国際特許出願であり、その全体が参照により本明細書の一部として援用される。
政府支援に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により授与されたEY021218及びEY031230に基づく政府支援を受けてなされたものである。政府は本発明に関して一定の権利を有する。
電子配列表の参照
コンピューター可読形式の配列表は、電子提出により本願に添付され、その全体が参照により本明細書の一部として援用される。配列表は、2022年8月16日に作成されたファイル名「21-0000-WO.xml」のファイルに含まれ、サイズは14キロバイトである。
発明の分野
本開示は、遺伝子操作された網膜オルガノイド及びこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
多数のヒトの障害が遺伝子変異に直接起因しており、網膜は多くの理由で遺伝子治療検査の最前線にあり、最終的に眼疾患に関心がない企業でも、その明確な利点から眼で試験を「開始」することが多い。例えば、網膜は標準的な外科的手順を用いて容易に接近することができ、実験のリスクが比較的低い。網膜モデルにおける治療効果をモニタリングするために、多くの標準化された非侵襲的な画像検査及び機能検査が利用可能であり、多くの異なる遺伝子及び遺伝子変異(例えば、ミスセンス、ナンセンス、フレームシフト、クリプティックスプライスバリアント、コード/非コード)が機能障害及び失明につながり、著しい遺伝子型-表現型の異質性がある。それにもかかわらず、実験室での遺伝子治療の試験に使用可能な、堅牢で臨床的に適切なin vitroモデルの必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0003】
ヒト胚性幹細胞及び誘導多能性幹細胞(それぞれhESC及びhiPSC、総称してヒト多能性幹細胞(hPSC))から、正真正銘の胎児期神経網膜細胞型及び組織を作製する能力は、in vitro疾患モデリングへの利用に拍車をかけている。これらの研究のほとんどは、網膜の後代を、網膜オルガノイドとしても知られる、単離された3D視胞様構造体(OV)として、懸濁培養で増殖させるhPSC分化法を採用している。このような3D培養技術の利点としては、網膜以外の混入が少ないか又は全くない状態の網膜細胞種が高い割合で得られること、及び成熟度の高い組織構造に自己組織化する傾向があることが挙げられる。しかしながら、遺伝性障害の新規治療薬をより簡単且つ迅速に試験するためには、モデル系の更なる改良が必要であり、遺伝性障害に対する臨床的に適切な新規治療法の同定を促進するために、遺伝性障害を模倣したモデル系の開発がなお急務である。
【0004】
簡単な概要
本明細書に記載されるように、第1の態様において、本開示は、ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来光受容体(PR)細胞の集団を含む網膜オルガノイドモデル系を提供する。PR細胞は、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復時にその表面に視認できる外節を有する光受容体間マトリックス(IPM)を構成するように適合されている。
第1の態様の一実施形態では、hPSCは、ヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)である。第1の態様の一実施形態では、前記遺伝子の機能は、網膜オルガノイドへの治療的処置の投与により回復可能である。一実施形態では、治療的処置は、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、又は小分子を含む。一実施形態では、治療的処置は、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法を更に含む。第1の態様の別の実施形態では、hPSCはhiPSCである。一実施形態では、hiPSCは、IPMの構造成分をコードする遺伝子に自然突然変異を有する患者に由来する。一実施形態では、自然突然変異は、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント(cryptic slice variant)変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である。一実施形態では、hiPSCは、IPMの構造成分をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子に遺伝子操作された変異を含む組換えhiPSCである。一実施形態では、遺伝子操作された変異は、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である。第1の態様の別の実施形態では、hPSCはhESCである。一実施形態では、hESCは、H9、H1、H7、BG01、BG02、HES-3、HES-2、HSF-6、HUES9、HUES7、又はI6である。一実施形態では、hESCは、IPMの構造成分をコードする遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子に遺伝子操作された変異を含む組換えhESCである。一実施形態では、遺伝子操作された変異は、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である。第1の態様の別の実施形態では、IPMの構造成分をコードする遺伝子は、IMPG1又はIMPG2である。一実施形態では、IPMの構造成分をコードする遺伝子は、IMPG2である。
【0005】
第2の態様において、本開示は、ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来光受容体(PR)細胞の集団を含む網膜オルガノイドモデル系を提供する。PR細胞は、光受容体間マトリックス(IPM)の構造部分をコードする組換え遺伝子を含む。組換え遺伝子は、第1の操作された遺伝子変異を有する第1の非機能的対立遺伝子、及び/又は第2の操作された遺伝子変異を有する第2の非機能的対立遺伝子のうち少なくとも1つを含む。第1及び第2の対立遺伝子の少なくとも1つの機能の回復は、PR細胞の表面に視認できる外節を含むIPMを生成する。
第2の態様の一実施形態では、hPSCは、ヒト胚性幹細胞(hESC)又はヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)である。第2の態様の一実施形態では、前記遺伝子の機能は、網膜オルガノイドへの治療的処置の投与により回復される。一実施形態では、治療的処置は、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、又は小分子を含む。一実施形態では、治療的処置は、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法を含む。第2の態様の一実施形態では、hPSCはhiPSCである。第2の態様の一実施形態では、第1の操作された遺伝子変異は、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である。第2の態様の一実施形態では、第2の操作された遺伝子変異は、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異のうち1以上である。第2の態様の一実施形態では、第1の操作された遺伝子変異と第2の操作された遺伝子変異は同じ変異である。第2の態様の別の実施形態では、hPSCはhESCである。一実施形態では、hESCは、H9、H1、H7、BG01、BG02、HES-3、HES-2、HSF-6、HUES9、HUES7、又はI6である。第2の態様の別の実施形態では、IPMの構造成分をコードする遺伝子は、IMPG1又はIMPG2である。一実施形態では、IPMの構造成分をコードする遺伝子は、IMPG2である。
【0006】
第3の態様において、本開示は、前記態様又はこれらの実施形態のいずれか1つの網膜オルガノイドモデル系を用いて治療的処置の有効性を試験する方法を提供する。この方法は、網膜オルガノイドモデル系にIPMの構造成分をコードする遺伝子の機能を回復させるための候補治療的処置を投与すること;網膜オルガノイドモデル系のIPM内の光受容体外節を可視化すること;及びIPMの変化を検出することを含む。網膜オルガノイドモデル系のIPM内の顕微鏡で視認できる光受容体外節の生成及び/又は維持に変化があれば、その治療的処置がIPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復に有効であったことを示し、網膜オルガノイドモデル系のIPM内の顕微鏡で視認できる光受容体外節の生成及び/又は維持に変化がなければ、その治療的処置が有効でなかったことを示す。
第3の態様の一実施形態では、この方法は、治療候補の投与前にIPMを可視化することを更に含む。第3の態様の一実施形態では、網膜オルガノイドモデル系のIPMを可視化することは、PR細胞の表面の視認できる光受容体外節の存在を定性的に観察する又は定量することを含む。
【0007】
第4の態様において、本開示は、遺伝子変異に対して有効な治療的処置かどうか試験する方法であって、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復時にその表面に視認できる外節を有する光受容体間マトリックス(IPM)を発現するように適合されたヒト多能性幹細胞(hPSC)由来光受容体(PR)細胞の集団を含む網膜オルガノイドモデル系を生成することを含む方法を提供する。IPMの構造成分をコードする遺伝子は、所定の又は既存の遺伝子変異を含む。この方法は、網膜オルガノイドモデル系に候補治療的処置を投与すること、及び網膜オルガノイドモデル系をIPM内の視認できる外節の有無に関して評価することを更に含む。IPMの視認できる外節の存在は、その候補治療的処置が、所定の遺伝子変異を有効に治療することによりIPMの構造成分をコードする遺伝子の機能を回復させることを示す。
第4の態様の一実施形態では、この評価は、PR細胞の表面の視認できる外節の定性的観察又は定量を用いてIPMの変化の有無を決定することを更に含み、視認できる外節の存在又は量の増加は、網膜オルガノイドモデル系のIPMの変化の存在を示す。第4の態様の一実施形態では、治療的処置は、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、遺伝子療法、又は小分子を含む。一実施形態では、治療的処置は、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法を含む。一実施形態では、ウイルスは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)又はレンチウイルスを含む。一実施形態では、治療的処置は、ゲノム又は塩基編集技術、ナノ粒子、又は細胞送達機構を含む。第4の態様の一実施形態では、所定の遺伝子変異は、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異、又はノックアウト変異を含む。第4の態様の一実施形態では、候補治療的処置は、遺伝性疾患の治療の候補である。一実施形態では、遺伝性疾患は、嚢胞性線維症、鎌形赤血球貧血症、ヘモクロマトーシス、ハンチントン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、テイ-サックス病、アンジェルマン症候群、強直性脊椎炎、マルファン症候群、又はサラセミアである。
【0008】
第5の態様において、本開示は、網膜オルガノイドモデル系を作製する方法であって、ヒト多能性幹細胞(hPSC)の集団において光受容体間マトリックス(IPM)の構造部分をコードする遺伝子の1以上の遺伝子変異を操作すること;及びhPSCを網膜系統へ分化誘導することを含み、前記分化が、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復時にその表面のIPM内に視認できる外節を発現するように適合された光受容体(PR)細胞を含む三次元(3D)網膜オルガノイドを生じる方法を提供する。
第6の態様において、本開示は、網膜オルガノイドモデル系を作製する方法であって、光受容体間マトリックス(IPM)の構造部分をコードする遺伝子に変異を有する対象から組織サンプルを得ること;前記組織サンプルからヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)の集団を樹立すること;及び前記hiPSCを網膜系統へ分化誘導することを含み、前記分化が、光受容体(PR)細胞を含む三次元(3D)網膜オルガノイドを生じる方法を提供する。PR細胞は、光受容体間マトリックス(IPM)構造タンパク質を発現するように適合され、IPM構造の回復は、網膜オルガノイドの表面の視認できる光受容体外節の生成及び維持を可能とする。
【0009】
添付の図面は、本開示の方法及び組成物の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部の構成要素となる。図面は、本開示の1以上の非限定的実施形態を例示し、本明細書と共に、本開示の原理及び操作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A~1Dは、分化中のhPSC-ROの光学顕微鏡的分類を示す:(図1A)ステージ1 hPSC-RO;(図1B)ステージ2 hPSC-RO;(図1C及び1D)ステージ3 hPSC-RO。図1Dは、図1Cの四角で囲んだ領域の拡大画像であり、光受容体外節を示す(括弧)。スケールバーは100μm(図1A及び1C)及び25μm(図1B及び1D)である。
図2図2A~2Eは、IMPG2変異を含むhPSC-ROの分化が、光受容体外節の欠如を生じていることを示す:(図2A)iPSC IMPG2Y254C/A805(fs)Ter、(図2B)iPSC IMPG2Y254C/+、(図2C)iPSC IMPG2-/-、(図2D)H9 IMPG2Y254C/Y254C、及び(図2E)H9 IMPG2-/-。スケールバー=25μm。
図3図3A~3Dは、ステージ3の遺伝子補正されたIMPG2 hPSC-ROが光受容体外節を呈していることを示す:(図3A、3B)iPSC IMPG2+/+ ROは、表面に沿って光受容体外節の完全な回復を示す。(図3A)に示すROの拡大画像を(図3B)に示す。(図3C、3D)は、野生型H9 ROを示す。スケールバー=100μm(図3A、3C);25μm(図3B、3D)。
図4図4A~4Eは、野生型(WT)と変異型(MT)IMPG2 hPSCの混合培養に由来するROの光学顕微鏡画像を示す。図4Aは、100%WT対照hPSC-ROを示し、図4Bは、50:50 WT:MT hPSC-ROを示し;図4Cは、20:80 WT:MT hPSC-ROを示し、図4Dは、5:95 WT:MT hPSC-ROを示し、図4Eは、100%MT IMPG2 hPSC-ROを示す。スケールバー=20μm。
図5図5は、WT(CRX-TdTomato):MT IMPG2混合hPSC-ROの蛍光共焦点画像を示す。IMPG2 hPSC-ROのWT部分(破線の左側)はIMPG2の強い発現を示し、これはCRX-TdTomato発現にほぼ相当する。MT部分(破線の右側)は、IMPG2又はCRX-TdTomatoのいずれの発現もほとんどないか、全くないことを示す。
図6図6は、IMPG2の変異を補正するための塩基編集アプローチの一例を示す。図に示されている配列は、上から下へ、それぞれ配列番号3~5に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本願において、特に断りのない限り、利用される技術は、以下のようないくつかの従来文献のいずれかに見出される:Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press); Gene Expression Technology (Methods in Enzymology, Vol. 185, D. Goeddel編, 1991, Academic Press, San Diego, CA), “Guide to Protein Purification” in Methods in Enzymology (M.P. Deutshcer編, (1990) Academic Press, Inc.); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al. 1990. Academic Press, San Diego, CA); Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 第2版 (R.I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, NY); Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, E.J. Murray編, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.);及びthe Ambion 1998 Catalog (Ambion, Austin, TX)。
【0012】
本明細書で使用する場合、範囲及び量は、「約」特定の値又は範囲として表すことができる。約には正確な量も含まれる。例えば、「約5%」は「約5%」及び「5%」を意味する。「約」という用語は、所定の値又は値の範囲の±10%を指す場合もある。従って、約5%は、例えば4.5%~5.5%も意味する。
本明細書で使用する場合、「又は」及び「及び/又は」という用語は、複数の構成要素を互いに組み合わせて又は排他的に記載するために使用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は、「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」「(x及びy)又はz」、「x又は(y及びz)」又は「x又はy又はz」を指し得る。
本開示において、「含む(comprises, comprising)」、「含む(containing)」、「有する(having)」等は、米国特許法において付与される意味を有し、「包含する(includes, including)」等を意味し得る。本明細書で使用する場合、「決定する」、「評価する」、「アッセイする」、「測定する」、「検出する」、及び「同定する」という用語は、定量的及び定性的両方の決定を指し、従って、これらの用語は互換的に使用できるが、該当する場合、それらの定量的又は定性的な性質は、当業者によって文脈で理解されるであろう。
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0013】
本明細書で使用する場合、「網膜オルガノイド」は、網膜組織の細胞の超微細構造及び機能を模倣する、in vitroで作出された細胞クラスターである。
本明細書で使用する場合、「網膜オルガノイドモデル系」は、遺伝子変異に対する治療的処置を同定又は評価するために使用可能な網膜オルガノイドを指す。
本明細書で使用する場合、「多能性」とは、全ての三胚葉の細胞に分化する細胞の能力を指す。
本明細書で使用する場合、ヒト「多能性幹細胞」(hPSC)という用語は、継続した自己再生能と適当な条件下で全ての三胚葉の細胞に分化する能力を有する細胞を指す。hPSCの例には、ヒト胚性幹細胞(hESC)及びヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)が含まれる。本明細書で使用する場合、「iPS細胞」は、本明細書に記載されるように、分化した個々の起源体細胞と遺伝的に実質的に同一であり、胚性幹(ES)細胞などのより効力の高い細胞と同等の特徴を示す細胞を指す。これらの細胞は、非多能性(例えば、複能性(multipotent)又は体)細胞を初期化することによって得ることができる。
【0014】
「光受容細胞」又は「PR細胞」は、本明細書で使用する場合、視覚的光伝達が可能な神経上皮細胞の特殊なタイプであり、内節と外節からなる。PR細胞には桿体と錐体の2種類がある。桿体はグレースケールで見るための低照度視覚に適応しており、錐体はカラーで見るための昼間視覚に適応している。
本明細書で使用する場合、「構成する」という用語は、発達する、発現する、又は提示することを意味する。例えば、PR細胞は、光受容体間マトリックス(IPM)を構成するように適合され、これは、IPMを発達する、発現する、及び/又は提示するように適合されている。
「光受容体間マトリックス」又は「IPM」という用語は、本明細書で使用する場合、高度に組織化された構造であり、これが光受容器と網膜色素上皮(RPE)の間に位置する。IPMは、健康な正常網膜の必須構成要素であり、輸送代謝産物、網膜の接着、及び光受容体の配列に重要である。
本明細書で使用する場合、「外節」は、脳に最も近く、視野から最も遠いPR細胞の部分である。外節は、光を吸収するPR細胞の部分である。
【0015】
本明細書で使用する場合、「野生型」という用語は、正常、健康、及び/又は不変の状態を指す。例えば、変異のない遺伝子が発現される場合には、野生型の表現型が生じる。更に、野生型遺伝子は、発現した際に正常な機能的表現型を生じる遺伝子を指す。
本明細書で使用する場合、「表現型」という用語は、遺伝子型から生じる観察可能な特徴のセットを指す。例えば、野生型表現型は、野生型遺伝子又は遺伝子セットの正常な発現の結果である表現型を指す。
本明細書で使用する場合、「対立遺伝子」は、染色体上のある部位(遺伝子座)に択一的に存在し得る遺伝子の2つ以上のバージョンのうちいずれか1つである。対立遺伝子はペアで存在する場合もあるし、又はその形質を担う遺伝子に起因し得る特定の形質の発現(表現型)に影響を及ぼす複数の対立遺伝子が存在することもある。
【0016】
本明細書で使用する場合、「視認できる外節」又は「視認できるIPM表現型」とは、PR細胞の外節に、例えば顕微鏡の使用により視覚的に観察可能な毛様の光受容体構造を有するIPMを指す。
「機能の回復」という用語は、部分的に機能的な又は非機能的な遺伝子に関して使用する場合、遺伝子が発現された際の野生型表現型の回復を指す。例えば、遺伝子の機能の回復は、その遺伝子の変異が野生型表現型を回復させるための治療薬によって機能的に修復される(必ずしも遺伝子自体を野生型、非変異型に再調整するものではない)場合に生じ得る。本明細書では、機能の回復は部分的でよい、すなわち、完全な野生型機能(又は表現型)に完全に戻らなくてもよいことが企図される。この文脈で、機能の回復は、臨床的に適切であると考えられる機能の改善とみることができる。例えば、遺伝子の機能の部分的回復は、本明細書で企図されるように、治療薬で処置された個体における視力の部分的回復及び/又は視力低下速度の低減をもたらし得る。
【0017】
「変異」という用語は、次世代に伝達され得る遺伝子又はその一部の変種型を生じる、遺伝子の配列又は構造の変化として定義される。変異は、例えば、DNAにおける一塩基単位の変化、又は遺伝子のより大きな断片の欠失、挿入、若しくは再配列により生じ得る。
「自然」遺伝子変異は、集団内に自発的に生じる遺伝子、又はその一部の変異である。例えば、自然突然変異は、遺伝可能であり、網膜色素変性症等の遺伝性疾患に関連し得る。
本明細書で使用する場合、「組換え」とは、本明細書で使用する場合、意図的に遺伝子改変された又は遺伝子操作された遺伝子、細胞、又は組織を指す。「遺伝子操作された」という用語は、遺伝子に関して使用する場合、天然に存在しない、遺伝子の一方又は両方の対立遺伝子の遺伝子操作による、遺伝子又はその一部を指す。例えば、非機能的対立遺伝子を有する遺伝子は、その対立遺伝子に導入された1以上の操作された遺伝子変異の結果であり得る。遺伝子操作された変異は、所定のものであってもよいし、又はランダムなものであってもよく、遺伝子の発現レベル又は発現した表現型に変化をもたらし得る。1以上の遺伝子操作された遺伝子を含む細胞及び/又は組織も、組換え又は遺伝子操作されたものであると見なされる。
【0018】
本明細書で使用する場合、「所定の遺伝子変異」とは、遺伝子配列が既知の遺伝子変異である。例えば、所定の遺伝子変異は、その遺伝子の機能を破壊するために遺伝子に付加することができる。特定の例において、所定の遺伝子変異は、網膜オルガノイドのIPMの構造要素をコードする遺伝子に導入することができる。この変異は、遺伝子の発現を破壊し、それにより、IPM構造を損ない、視認できるIPM表現型の消失に至る。所定の遺伝子変異の例としては、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、又は非コード変異、及び/又はノックアウト変異のうち1以上が含まれる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「有効な又は十分な量」又は「治療上有効な量」は、本開示による特定の細胞効果を誘発するのに十分な治療薬等の薬剤の量である。例えば、遺伝子変異を治療するために有効な治療薬の有効な又は十分な量は、対象に投与した際に遺伝子の機能の部分的又は完全な回復をもたらす治療薬の量である。
本明細書で使用する場合、「治療的処置」は、遺伝子の機能又は野生型表現型の回復等のプラスの臨床効果又は治療的利益を提供するための治療薬による処置を指す。
【0020】
「候補治療的処置」は、処置の有効性が確立されていない試験的処置である。
本明細書で使用する場合、「治療薬」は、必要とする対象に治療上有効な量で投与された際に、治療される特定の疾患又は障害を有する対象に治療的利益を提供する化学物質、化合物、及び/又は医薬組成物等の物質を指し得る。治療薬の他の例としては、細胞療法に使用するための遺伝子改変された細胞を含み得る。
本明細書で使用する場合、「治療的利益」は、対象が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、治療薬で治療されている対象が感覚又は状態の改善を報告するような、治療される基礎疾患の根絶若しくは改善、及び/又は基礎疾患に関連する1以上の症状の根絶若しくは改善を指す。治療的利益の更なる例には、遺伝子の機能の部分的若しくは完全な回復、及び/又は表現型の部分的若しくは完全な回復が含まれる。治療的利益のなお更なる例には、特定の疾患に関連する機能喪失の部分的又は完全な停止が含まれる。具体的な例では、治療的利益を経験する人は、網膜色素変性症に関連する視力の改善若しくは回復、又は視力低下速度の低減を経験し得る。
【0021】
「対象」又は「患者」とは、限定されるものではないが、ヒト患者等のヒト、非ヒト霊長類、又はウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、若しくはネコ等の非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物を意味する。
本明細書で使用する場合、「治療」とは、障害及び/又はそれに関連する1以上の症状を軽減する、減少させる、低減する、緩和する、消失させる、又は改善することを指す。排除されるものではないが、障害又は病態を治療するとは、障害、病態、又はそれに関連する症状を完全に除去することを必要としないことが認識されるであろう。
【0022】
概要
本開示は、遺伝子変異に対する治療的処置の有効性を同定及び/又は評価するための網膜オルガノイドモデル系を提供する。網膜オルガノイドモデル系は、IPMを破壊する遺伝子変異を含み、光受容体の視認できる毛様、外節構造の喪失をもたらし得る。このPR細胞の外節の喪失は、遺伝子変異の存在を示す容易に視認できる表現型である。候補治療的処置の投与によるIPMの視認できる外節の部分的又は完全な回復は、候補治療的処置が遺伝子変異の治療に有効であることを示す。従って、本開示の網膜オルガノイドモデル系は、遺伝性疾患に対する候補治療的処置の有効性を迅速に評価するための手段を提供する。更に、これらのモデル系は網膜オルガノイドに基づくが、試験可能な遺伝子変異は、眼に悪影響を及ぼすものに限定されない。本明細書の他所に記載されるように、IPMの視認できる外節の喪失を引き起こすために、これらの系にいずれの遺伝子変異も導入可能である。従って、特定の変異に起因する眼以外の他の遺伝性疾患の治療のために検討されている候補治療的処置は、本明細書で提供される系で試験可能である。その結果、本開示は、遺伝性障害に対する新たな臨床的に適切な治療法の迅速な定性的評価のための強力な新しいツールを導入する。
【0023】
網膜オルガノイド
一実施形態では、本開示の網膜オルガノイドは、網膜組織の細胞の超微細構造及び機能を模倣する細胞クラスターである。細胞クラスターは、網膜神経節細胞、水平細胞、アマクリン細胞、双極細胞、ミュラー細胞、及び光受容(PR)細胞(すなわち、桿体及び錐体)を含む3次元(3D)網膜カップ及び網膜色素上皮(RPE)を含む完全に積層された3D網膜組織を有する、単離された3D視胞様構造(OV)を形成する。健康な、又はは野生型の網膜オルガノイドでは、野生型IPMを有するPR細胞は、IPM表面に視認できる外節を生じる。毛様構造に見えるこの視認できる外節は、あらゆる種類の適切な顕微鏡法を用いて容易に可視化することができ、健常な野生型網膜オルガノイドを示す視認できる表現型として役立ち得る。
外節及びIPMを可視化するための方法には、限定されるものではないが、光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、及び走査型プローブ顕微鏡法を含み得る。光学顕微鏡法の様々な例には、明視野、共焦点及び蛍光顕微鏡法が含まれる。
【0024】
本開示の網膜オルガノイドは、ヒト多能性幹細胞(hPSC)を用いて生成することができる。例えば、hPSCは、参照により本明細書の一部として援用されるMeyer et al. (2009, PNAS, 106(39): 16698-16703)に概説されているような分化プロトコールによって、網膜オルガノイドモデル系に存在する種々の細胞種に発達するように誘導することができる。様々な実施形態において、hPSCは、ヒト胚性幹細胞(hESC)であり得る。いくつかの実施形態では、hPSCは、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)(Zhong et al., 2014, Nature Communications, 5: 4047)であり得る。更なる実施形態では、企図される網膜オルガノイドモデル系は、hESC及びhiPSCの組合せを用いて生成することができる。使用可能なhESCの非限定的な例としては、WA09、WA01、WA07、BG01、BG02、HES-3、HES-2、HSF-6、HUES9、HUES7、及びI6胚性幹細胞が含まれる(Thomson et al., 1998, Science, 282, no. 5391: 1145-1147)。企図されるヒト胚性幹細胞株の登録は、NIH Human Embryonic Stem Cell Registryに見出すことができる。
本開示の網膜オルガノイドは、全体が参照により本明細書の一部として援用されるCapowski et al. (2019, Development, 146, no. 1)に見出される方法によって生成することができる。
【0025】
本モデル系の網膜オルガノイドは、in vitroで生成することもできるし、野生型網膜オルガノイドであってもよいし、又はIPMの1以上の構造成分をコードする遺伝子における自然遺伝子変異又は操作された遺伝子変異を含んでもよい。本モデル系の野生型網膜オルガノイドにおいて、IPMの外節は、顕微鏡で視認でき、IPMの表面の薄い毛様構造として見える。対照的に、IPMの構造成分をコードする遺伝子に1以上の遺伝子変異を含む網膜オルガノイドは、IPMの視認できる外節の数の減少及び/又は視認できる外節の完全な喪失を示す。
IPMの構造成分は、他の成分の中でもRPE、PHAMM、IMPG2、IMPG1、PEDF、CD44、ミュラー細胞、及びヒアルロン酸を含む(Ishikawa, et al., 2015 Experimental Eye Research, Ocular extracellular matrix: Role in development, homeostasis and disease, 13: 3-18)。
【0026】
疾患モデル
網膜の障害は、IPM成分の特徴的な変化と関連があり得る。このようなIPMの変化は、視認できる表現型に変化を生じ得る。網膜の障害の一例として網膜色素変性症(RP)がある。RPは、主に数年から数十年にわたる光受容体の進行性喪失を特徴とする、希な遺伝性網膜変性疾患の不均一な一群である。RPは、光受容体の機能及び維持に関与する80を超える遺伝子の変異によって引き起こされる可能性がある。RPの一例では、IMPG2の遺伝子が変異し、PRの外節の喪失、及び最終的な桿体と錐体の死滅、その後失明に至る。このタイプのRPでは、損なわれたIMPG2遺伝子の発現が、容易に視認できる外節の喪失をもたらし、IPM表面に視認できる毛様の外節がないことに基づいて容易に診断することができる。
本開示の様々な実施形態では、網膜オルガノイドモデル系は1以上の遺伝子変異;遺伝子の一方若しくは両方の対立遺伝子の遺伝子変異;及び/又はIPMの構造成分をコードする遺伝子の1以上の遺伝子変異を含み得る。このような遺伝子変異は、IPM表面の視認できる外節の減少又は喪失をもたらす。よって、IPMの構造成分をコードする遺伝子の1以上の対立遺伝子の一方又は両方における1以上の変異の存在は、IPM表現型の外節に基づいて可視化することができる。
【0027】
様々な実施形態では、IPMの構造成分をコードする遺伝子は、IMPG1、IMPG2、ペルレカン、HCAM、HAPLN1、HAPLN4、及び/又はバーシカンを含み得る。好ましい実施形態では、遺伝子操作された構造遺伝子は、IMPG2である。
本開示の様々な実施形態では、IPMの構造成分をコードする遺伝子の変異は、自然に存在するものでも、又は遺伝子操作されたものでもよく、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、クリプティックスライスバリアント変異、コード変異、及び/又は非コード変異のうち1以上を含み得る。
【0028】
IPMの構造成分をコードする遺伝子の自然突然変異の様々な例としては、Y254C等のミスセンス変異、又はA805(fs)Ter等のフレームシフト変異、又はナンセンス変異が含まれる。公開されている変異は、Bandah-Rozenfeld et al. (2010, American Journal of Human Genetics 87 (2): 199-208)及びBrandl et al. (2017, Genes 8 (7): 170)等の論文に見出すことができる。
他の自然変異体は、www.uniprot.org/uniprot/Q9BZV3に見出すことができる。
IPMの構造成分をコードする遺伝子に導入可能な操作された遺伝子変異の様々な例としては、Y254C等のナンセンス変異、又はA805(fs)Ter等のフレームシフト変異が含まれる。
【0029】
本開示の様々な実施形態では、本開示の網膜オルガノイドは、遺伝性疾患に見られる遺伝子変等の所定の遺伝子変異を含むように生成される。
様々な実施形態では、網膜オルガノイドモデル系は、IPMの構造成分をコードする遺伝子の対立遺伝子の少なくとも一方又は両方に操作された遺伝子変異を含み得る。1つの非限定例では、網膜オルガノイドモデル系は、IMPG2対立遺伝子の一方又は両方に1以上の遺伝子操作された変異を含む。
この実施形態の様々な例では、操作された遺伝子変異は、IMPG2Y254C/A805(fs)Ter、IMPG2Y254C/+、IMPG2-/-、及び/又はIMPG2Y254C/Y254Cである。
【0030】
十分に特徴付けられ、再現性のある遺伝子変異により引き起こされる多くの遺伝性疾患がある。本開示の網膜オルガノイドは、既知の遺伝性疾患の遺伝子変異を保有するものを生成することができ、この方法で、このような網膜オルガノイドは、これらの疾患の治療を意図した治療薬を試験するために使用可能である。本開示の網膜オルガノイドモデル系における試験のために企図される遺伝子変異を有する遺伝性疾患の例としては、限定されるものではないが、嚢胞性線維症、マルファン症候群、鎌形赤血球貧血症、ヘモクロマトーシス、ハンチントン病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、テイ-サックス病、アンジェルマン症候群、強直性脊椎炎、及びサラセミアが挙げられる。
1つの非限定例では、本開示の網膜オルガノイドモデル系は、欠失が、嚢胞性線維症を引き起こすことが知られる最も多い欠失を模倣するように、IPMの構造成分をコードする遺伝子の一方又は両方の対立遺伝子に欠失を含むように遺伝子操作することができる。その後、その網膜オルガノイドモデル系を用いて、遺伝子の機能の回復のための方法及び嚢胞性線維症の候補治療的処置を評価することができる。
【0031】
機能の回復及び治療的処置
本開示の網膜オルガノイドモデル系は、IPMの構造成分をコードする遺伝子の1以上の遺伝子変異の機能の回復に応答して視認できる表現型を生成するように設計される。遺伝子変異の機能の回復は、IPM表面に視認できる毛様外節の回復をもたらす。よって、IPMの構造成分をコードする遺伝子の1以上の遺伝子変異の機能の回復は、IPM表面の視認できる外節の存在によって可視化することができる。従って、本開示の網膜オルガノイドモデル系は、容易に可視化され、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能的遺伝子型に直接相当する表現型を提供する。この機能の回復は、遺伝子機能の回復に好適ないずれの機構によって起こってもよい。
IPMにおける視認できる外節の回復には、外節の数、大きさ、又は密度の部分的又は完全な増加を含み得る。回復は、野生型の外観(又は表現型)に完全に戻る必要はなく、臨床的に適切ないずれの視認できる改善も含み得る。IPMの外節の表現型の回復は、IPMの構造成分をコードする遺伝子の変異及び遺伝子機能の回復のための機構によって様々なであり得る。
【0032】
一例では、遺伝子機能は、網膜オルガノイドモデル系への治療的処置の投与によって回復可能である。この例の様々な実施形態では、治療的処置としては、限定されるものではないが、タンパク質、ウイルス、RNA分子、DNA分子、小分子、遺伝子エディター、塩基エディター、RNAエディター、DNA/RNAを標的とする小分子、又は細胞療法、及びこれらの任意の組合せによる処置を含み得る。
いくつかの非限定例では、候補治療的処置は、遺伝子増強、ゲノム編集、塩基編集、RNAトランススプライシング分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ナンセンスリードスルー薬等を含む。
【0033】
様々な非限定例において、使用可能なウイルスとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、及びピコルナウイルスが含まれる。
様々な非限定例において、企図されるRNA分子は、ペガプタニブ等のアプタマーであり得る。
いくつかの実施形態において、企図されるDNA分子は、DNAアプタマー、DNAザイム、並びに抗遺伝子及びアンチセンス適用のためのオリゴヌクレオチドであり得る。
いくつかの実施形態において、企図される小分子は、ナンセンスリードスルー薬である。
様々な非限定例において、遺伝子、塩基、又はRNAエディターとしては、CRISPR、シトシン塩基エディター(CBE)、アデニン塩基エディター(ABE)、TALEN塩基エディター、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAトランススプライシング分子等を含み得る。
様々な非限定例において、企図される細胞療法としては、幹細胞移植が含まれる。
【0034】
様々な態様において、本開示は、網膜オルガノイドモデル系を用いて治療的処置の有効性に関して試験する方法を提供する。これらの方法は、網膜オルガノイドモデル系にIPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復のための候補治療的処置を投与すること;網膜オルガノイドモデル系のIPM内の光受容体外節を可視化すること;及びIPMの変化の有無を評価することを含む。網膜オルガノイドモデル系のIPM内の顕微鏡で視認できる光受容体外節の生成の変化(すなわち生成の増加)及び/又は維持(すなわち喪失の防止)の存在は、治療的処置がIPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復に有効であったことを示す。顕微鏡で視認できる光受容体の視認できる外節の生成の変化(すなわち生成の増加)及び/又は維持(すなわち喪失の防止)の不在は、治療的処置が有効でなかったことを示す。
【0035】
治療的処置は、いずれの好適な方法を用いて網膜オルガノイドモデル系に投与してもよい。これには、限定されるものではないが、ナノ粒子薬の送達、膜融合、リポフェクション、リボヌクレオタンパク質の送達、エレクトロポレーション、治療的処置のオルガノイドへの局所注射、又はオルガノイド周囲の媒体への治療的処置の添加が含まれる。
本開示の方法は、治療薬候補の投与前にIPM内の光受容体外節を評価するために、治療薬候補の投与前にIPMを可視化することを更に含み得る。
様々な実施形態において、IPMの可視化は、PR細胞表面の視認できる光受容体外節の存在、長さ、直径及び/又は密度を定性的に観察する又は定量することを含む。一実施形態では、IPMの可視化は、PR細胞表面の視認できる光受容体外節の有無のみを同定することを含む。
【0036】
本開示の方法によれば、IPMの状態を評価することは、PR細胞表面の視認できる外節の定性的観察又は定量を用いてIPMの変化の有無を決定することを更に含むことができ、視認できる外節の存在又は量の増加は、網膜オルガノイドモデル系のIPMの変化の存在を示す。IPMの状態は又、IMPG1及び2等のプロテオグリカンのタンパク質の翻訳後修飾(すなわち、適切なグリコシル化)を見ることによって評価することもできる。
本開示の更なる態様によれば、網膜オルガノイドモデル系は、様々な遺伝子変異及び障害をモデル化し、その後、候補治療的処置の有効性を試験するために使用することができる。候補治療的処置の有効性は、明確に視認できるPR細胞外節表現型を用いて容易に評価することができる。この態様の様々な実施形態において、網膜オルガノイド系は、本明細書の他所に記載されるように、遺伝性疾患に見られる1以上の遺伝子変異を模倣する所定の遺伝子変異を含むように操作することができる。次いで、網膜オルガノイドモデル系は、候補治療的処置を試験するために使用することができる。遺伝子変異の有効な処置は、IPMの構造成分をコードする遺伝子の機能の回復によって同定することができる。
【実施例
【0037】
実施例
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態及びこれらの様々な使用の例示である。これらの実施形態は、単に説明のために示されるものであり、本開示の範囲を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。
【0038】
実施例1: hPSC網膜オルガノイドの樹立
概要
本実施例では、ヒト多能性幹細胞を用いて網膜オルガノイドを樹立した。
材料及び方法
以下のhPSC細胞株を使用した:H9 IMPG2+/+、H9 IMPG2-/-、H9 IMPG2Y254C/Y254C、iPSC IMPG2Y254C/A805(fs)Ter、iPSC IMPG2Y254C/+、iPSC IMPG2-/-、及びiPSC IMPG2+/+
hPSCは、マトリゲル(WICell)上で維持した。hPSCの多能性を維持するために、mTeSR Plus(STEMCELL TECHNOLOGIES)を用いた。継代培養及び胚様体(EB)の作製のために、ReLeSR(STEMCELL TECHNOLOGIES)を用いた。次に、EBを、mTeSR plusから神経誘導培地(NIM;DMEM:F12 1:1、1%N2サプリメント、1×MEM非必須アミノ酸(MEM NEAA)、1×GlutaMAX(Thermo Fisher)及び2 mg/mLヘパリン(Sigma))へ4日かけて段階的に移行した。
【0039】
6日目に1.5nM BMP4(R&D Systems)を新鮮なNIMに添加し、7日目にEBを、6ウェルプレートにウェル当たりEB200個の密度でマトリゲル(登録商標)上に播種した。9日目、12日目、及び15日目に培地の半分を新鮮なNIMに置き換えてBMP4を段階的に希釈し、16日目に培地を網膜分化培地(RDM;DMEM:F12 3:1、2%B27サプリメント、MEM NEAA、1×抗真菌抗生物質(Thermo Fisher)及び1×GlutaMAX)に変更した。25~30日目に、3D視胞様構造(OV)が見られ、MSP眼科手術用ナイフ(Surgical Specialties Corporation)で切り取った。オルガノイドは、ポリHEMAコーティングフラスコ(SigmaからのpolyHEMA)で、3D-RDM(DMEM:F12 3:1、2%B27サプリメント、1×MEM NEAA、1×抗真菌抗生物質、及び1×GlutaMAXに5%FBS、100μMタウリン、1:1000の化学的に定義された脂質サプリメント(11905031、Thermo Fisher)を添加したもの)を週に2回供給しつつ維持した。ライブカルチャーは、DS-Fi3カメラを搭載したNikon Ts2-FL又はQImaging CE CCDカメラを搭載したNikon Ts100で画像化した。特に断りのない限り、全てのプラスチック器具及び試薬は、Thermo Fisherからのものであった。全てのhPSC-ROは200日までに分化し、これはIMPG2+/+hPSC-ROが伸張した光受容体外節を呈していた時点である(PR-OS;Capowskiら,2019)。
【0040】
結果
分化中のhPSC-ROの光学顕微鏡的分類を図1A~1Dに示す。ステージ1 hPSC-RO(図1A)は、主として網膜前駆細胞及び神経節細胞から成っている。ステージ2 hPSC-RO(図1B)は、光受容体前駆細胞がより成熟した中間体の発達を示す。ステージ3 hPSC-RO(図1C及び1D)は、容易に(低倍率の光学顕微鏡により)同定できる光受容体外節の表面外観によって特徴付けられる。図1Dは、図1Cの四角で囲んだ領域の拡大画像であり、光受容体外節を示す(括弧)。
結論
ステージ3のhPSC-ROの光受容体外節は、低倍率の光学顕微鏡で容易に観察される。従って、光受容体外節の生成に必要な遺伝子の機能的摂動は容易に同定されるはずである。
【0041】
実施例2: IMPG2変異及び光受容体(PR)外節の維持
概要
本実施例では、一塩基多型(SNP)修飾を用いて、光受容体(PR)外節(OS)の維持に対する効果を観察するためにIMPG2に変異を作出した。
材料及び方法
一塩基多型(SNP)修飾を行うために、Yang et al. (2013, Nucleic Acids Research, 41(19))に述べられている一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)法を用いるプロトコールを使用した。このアプローチは、Chen et al. (2015 Cell Stem Cell 17(2):233-44)に公開されている既存のCRISPRワークフロー内で適合するように改変した。簡単に述べると、CRISPORデザインツール(www.crispor.tefor.net)を用いて、目的部位に対するシングルガイドRNA(sgRNA)の同定を行った。次に、Feng Zhang研究所により提供されているpLentiCRISPR-V1プラスミドにsgRNA配列をクローニングした。Y254C変異を作出するために、ドナー一本鎖オリゴドナー(ssODN)を使用した。
【0042】
H9 IMPG2-/-RO及びH9 IMPG2Y254C/Y254CROを作出するために、H9 IMPG2+/+細胞を使用した。iPSC IMPG2Y254C/+RO及びiPSC IMPG2-/-ROを作出するために、iPSC IMPG2Y254C/A805(fs)Terを使用した。各細胞株を実施例1のプロトコールに従って増殖させた。iPSC IMPG2+/+を作出するために、iPSC IMPG2Y254C/+を使用した。Chenらに記載されているように細胞を培養し、エレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションの後、細胞をピューロマイシンで処理して、pLentiCRISPRV1プラスミドを含む細胞を選択した。ピューロマイシン選択の後、細胞をMEFコンディショニングhPSC培地で、コロニーが選択のために視認できるまで培養した。クローン集団を手で選択し、単離した。次に、ゲノムDNAの単離を行って、ssODNの組込みの成否を確認し、標的外分析を行った。
【0043】
結果
図2A~2Eに示されるように、IMPG2変異を含むhPSC-ROの分化は、光受容体外節の欠如をもたらす。hPSC株は全て200日までに分化し、この時点で、齢が一致した野生型対照hPSC株には常に光受容体外節が存在している(図1参照)。しかしながら、低倍率の光学顕微鏡により容易に決定されるように、IMPG2変異を保有する各株、すなわち、(図2A参照)iPSC IMPG2Y254C/A805(fs)Ter、(図2B)iPSC IMPG2Y254C/+、(図2C)iPSC IMPG2-/-、(図2D)H9 IMPG2Y254C/Y254C、及び(図2E)H9 IMPG2-/-は外節を完全に欠いている。
結論
IMPG2の変異は、網膜オルガノイドにおいて観察可能な機能欠失表現型(光受容体外節維持の欠如)をもたらし得る。これは、20歳まで疾病が発症しないため、ヒト患者に見られるものが加速された表現型を示す。しかしながら、驚くことに、単一の対立遺伝子の遺伝子補正後も、異型接合性IMPG2 hPSC-ROは光受容体外節をなお欠いており(図2B)、これは、RPの臨床診断を受けていない異型接合性IMPG2変異(MT)を含むヒトとは対照的である。異型接合性IMPG2 hPSC-ROにおける疾患表現型の存在は、野生型(WT)表現型を回復させるための治療介入によって達成されるべき発現レベルの有力な基準点/ベンチマークとなる。例えば、同型接合性IMPG2(MT/MT)モデルの治療後にWT表現型が回復したことは、正常なタンパク質発現の50%超が達成されたことを示唆しており、異型接合体性IPMG2変異を有する実際の患者は正常な表現型を持っているので、これはヒトRP患者の機能的表現型を回復させるのに十分すぎるほどであろう。実際、他の疾患に関連する他のタイプの変異への異型接合状態を回復させることも、そのような疾患の患者にとって臨床的に意味のある結果をもたらす可能性がある。
【0044】
実施例3: IMPG2変異を含むhPSC-ROにおけるPR外節の回復
概要
本実施例では、一塩基多型(SNP)修飾を用いて、IMPG2において誘導された変異の補正が、視認できる光受容体外節を回復させることにより、網膜オルガノイドにおいて機能欠失表現型を逆転させ得るかどうかを決定した。
材料及び方法
遺伝子補正変異は、上記の実施例2に概略を示したプロトコールに従い、実施例2においてIMPG2に導入された変異を逆転させてIMPG2を野生型へ戻した種々のssODNを用いて行った。
【0045】
結果
ステージの3の遺伝子補正iPSC IMPG2+/+ROは、光受容体外節を示した(図3A~3D)。遺伝子補正IMPG2変異株(すなわち、変異型IMPG2株の野生型IMPG2状態への変換)は200日までに分化した。この時点で、これらの遺伝子補正同質遺伝子iPSC IMPG2+/+ROは、それらの表面に光受容体外節の完全な回復を示した(図3A及び3B)。パネル図3Aに示されているROの拡大画像を図3Bに示す。比較すると、図3A及び3Bの回復した外節の外観は、改変されていない野生型のH9 ROの外節とほぼ区別ができない(図3C及び3D)。
【0046】
結論
IMPG2機能を回復させるための遺伝子操作は、網膜オルガノイドにおいて視認できる外節の回復をもたらす。これらの結果は、遺伝子変異したIMPG2遺伝子を保有するROに対する遺伝子療法による又は他の治療薬の投与によるIMPG2機能の回復が、このような療法の有効性を決定するための、容易に観察できる読み出しとして使用できることを示唆する。IMPG2機能を回復させ得るいずれのタイプの療法でもこのモデル系により試験可能であること、及び遺伝子供給源又は関連する疾患にかかわらず、様々なタイプの遺伝子変異が、試験のためにこのモデル系に組み込むことができることが想定される。従って、本モデル系は、疾患に関連する遺伝子変異を同定し、IMPG2に導入してIMPG2の機能の喪失及び視認できる外節の喪失をもたらすことができるいずれの遺伝性疾患についても、候補となる療法及び/又は治療薬を試験するためのプラットフォームとして機能し得ると考えられる。
【0047】
実施例4: IMPG2-RPに対する新規療法の評価
概要
本実施例では、ROの表面の外節を回復させるために必要な補正のレベルを、野生型及びIMPG2変異型hPSC株の混合培養を用いて調べた。本実施例は、療法を試験するためのモデル系の感度についての洞察を提供した。
材料及び方法
IMPG2変異型hPSC株は上記の実施例2に記載されている。hPSC光受容体リポーター株(WA09 CRX+/TdTomato)を、Phillips et al. (2018, Stem Cells, 36(3): 313-324)に従って作出し、IMPG2野生型細胞株として使用した。野生型(WT)とIMPG2変異型(MT)の混合hPSC-RO(すなわち、野生型hPSCとIMPG2変異型hPSCの混合培養から作出されたhPSC-RO)を作出するために、野生型hPSC株とIMPG2変異型hPSC株を実施例1で上記したように継代培養した。hPSCが単細胞に解離されたところで、血球算定器を用いて細胞を計数した。次に、単細胞化されたhPSCを、15mLのコニカルチューブにて、3種類の異なる野生型:IMPG2変異型比:1)5:95(最小レベルの遺伝子増強をモデル化するため);2)20:80(今回のウイルス送達ベクターでin vivoにおいて可能な最大レベルの遺伝子増強をモデル化するため);及び3)50:50(目標(期待)レベルの遺伝子増強をモデル化するため)で混合した。使用した混合培養と特定の培養比率は、RO表面に外節を回復させるために必要な補正のレベル(例えば、必要な機能回復の程度)を決定できるように設計された。
【0048】
結果
野生型(WT)及び変異型(MT)IMPG2 hPSCの混合培養に由来するROの光学顕微鏡画像を図4A~4Eに示す。図4Aは、括弧内に厚い光受容体外節を有する100%WT対照hPSC-ROを示す。図4Bは、50:50 WT:MT hPSC-RO培養物を示し、100%WT ROに比べて少ないが、そこそこの量の光受容体外節を示す。20:80(図4C)及び5:95(図4D)WT:MTの比率のhPSC-RO培養では、光受容体外節の存在の更なる低下が見られた。図4Eは、100%MT IMPG2 hPSC-RO対照を示し、RO表面に光受容体外節が全く無いことを示している。
WT(CRX-TdTomato):MTの混合ROの蛍光共焦点画像を図5に示す。混合ROのWT領域(白い破線の左側)とMT領域(白い破線の右側)との境界を示す。それぞれWT領域又はMT領域において、IPMの変動のある厚い表面層のIMPG2発現の有無に着目されたい。
結論
これらの結果は、野生型IMPG2が十分に存在すれば、IPM及び光受容体外節の回復が得られることを示す。
【0049】
実施例5: AAV5-IMPG2によるH9 IMPG2-/-の治療
概要
本実施例では、IMPG2ノックアウトH9 hPSC-ROにおいてIMPG2機能を回復させることができるかどうかを判定するために遺伝子増強アプローチを試みた。
材料及び方法
分化150日目に、IMPG2ノックアウトhPSC-RO(上記の通り)を2e12vp/mLのAAV5-IMPG2で処理した。処理したhPSC-ROを光受容体外節の外観に関してモニタリングした。50日後、hPSC-ROを凍結切片とし、ICCでIMPG2の発現に関してスクリーニングした。錐体特異的タンパク質である錐体アレスチン-3(AAR3)に対する免疫染色を用いて錐体光受容体を可視化した。
AAV5-IMPG2で処理したROのICC分析を行った。
【0050】
結果
非処理の野生型H9 hPSC-ROは、高レベルの内因性IMPG2発現を示し、不連続の(切片化による)ARR3免疫染色でマークされた光受容体外節を有していた。hPSC-ROにおけるIMPG2のノックアウトは、非処理のhPSC-ROにおいてIMPG2発現及び光受容体外節の完全な欠如をもたらした。IMPG2ノックアウトhPSC-ROをAAV5-IMPG2で処理した場合には、IMPG2発現のいくらかの回復を示した(データは示されていない)。
結論
これらの結果は、遺伝子増強療法によるIMPG2の機能の回復がIMPG2ノックアウトhPSC-ROにおける光受容体外節の再出現によってモニタリングできることを示す。従って、IMPG2機能を回復させるための付加的アプローチは、IMPG2有害変異を含むhPSC-RO株を用いて試験できると結論づけられる。具体的な処置候補は、IMPG2に導入される変異の具体的なタイプに合わせることができる。
【0051】
実施例6: IMPG2機能を補正するための塩基編集アプローチ
概要
本実施例では、IMPG2機能を回復させるための塩基編集アプローチを検討する。
図6は、IMPG2の変異を補正するための、可能性のある塩基編集アプローチを示す。例としてIMPG2に有害なY254C変異を引き起こすシチジンを黒で示す。Cas9に融合させたシチジンデアミナーゼを用い、この変異をシチジンデアミナーゼ酵素によって標的化することができ、グアニン-シトシン対からアデニン-チミン対に変換することができる。
【0052】
意義
CRISPR/Cas9ゲノム編集は、相同組換え修復(homology-directed repair)(HDR)により有害な変異を補正するある程度の能力が示された。しかしながら、CRISPR/Cas9によって生じる二本鎖DNA鎖切断のほとんどは、非相同末端接合(NHEJ)をもたらし、変異修復には至らない。CRISPR/Cas9塩基編集も又、特定の変異の修復を標的とするが、二本鎖DNA切断を引き起こすことはない。その代わりに、変異はデアミナーゼ酵素によって補正され、変異塩基対の変換に成功する。
【0053】
本開示の任意の態様の全ての実施形態は、文脈が別段のことを明確に示さない限り、組み合わせて使用することができる。
よって、本明細書において言及される全ての特許及び刊行物は、各独立した特許及び刊行物が参照により本明細書の一部として援用されることが具体的且つ個々に示される場合と同程度に、参照により本明細書の一部として援用される。本願のいずれの節におけるいずれの参考文献の引用又は特定も、そのような参考文献が本開示の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0054】
配列
IMPG1 cDNA(配列番号1)NC_000006.12:c76072662-75921114 遺伝子ID:3617
agacactgctacatgttcttcataaattaacaccctcataaaggtaaaccaagaaggttatcctcaatcatctggtatcaatatataattatttttcacatttctgttactttttaatgagatttgaggttgttctgtgattgttatcagaattaccaatgcacaaaagccagaatgtatttggaaactagaagagctatttttgttttttggatttttctccaagttcaaggaaccaaagatatctccattaacatataccattctgaaactaaagacatagacaatcccccaagaaatgaaacaactgaaagtactgaaaaaatgtacaaaatgtcaactatgagacgaatattcgatttggcaaagcatcgaacaaaaagatccgcatttttcccaacgggggttaaagtctgtccacaggaatccatgaaacagattttagacagtcttcaagcttattatagattgagagtgtgtcaggaagcagtatgggaagcatatcggatctttctggatcgcatccctgacacaggggaatatcaggactgggtcagcatctgccagcaggagaccttctgcctctttgacattggaaaaaacttcagcaattcccaggagcacctggatcttctccagcagagaataaaacagagaagtttccctgacagaaaagatgaaatatctgcagagaagacattgggagagcctggtgaaaccattgtcatttcaacagatgttgccaacgtctcacttgggcctttccctctcactcctgatgacaccctcctcaatgaaattctcgataatacactcaacgacaccaagatgcctacaacagaaagagaaacagaattcgctgtgttggaggagcagagggtggagctcagcgtctctctggtaaaccagaagttcaaggcagagctcgctgactcccagtccccatattaccaggagctagcaggaaagtcccaacttcagatgcaaaagatatttaagaaacttccaggattcaaaaaaatccatgtgttaggatttagaccaaagaaagaaaaagatggctcaagctccacagagatgcaacttacggccatctttaagagacacagtgcagaagcaaaaagccctgcaagtgacctcctgtcttttgattccaacaaaattgaaagtgaggaagtctatcatggaaccatggaggaggacaagcaaccagaaatctatctcacagctacagacctcaaaaggctgatcagcaaagcactagaggaagaacaatctttggatgtggggacaattcagttcactgatgaaattgctggatcactgccagcctttggtcctgacacccaatcagagctgcccacatcttttgctgttataacagaggatgctactttgagtccagaacttcctcctgttgaaccccagcttgagacagtggacggagcagagcatggtctacctgacacttcttggtctccacctgctatggcctctacctccctgtcagaagctccacctttctttatggcatcaagcatcttctctctgactgatcaaggcaccacagatacaatggccactgaccagacaatgctagtaccagggctcaccatccccaccagtgattattctgcaatcagccaactggctctgggaatttcacatccacctgcatcttcagatgacagccgatcaagtgcaggtggcgaagatatggtcagacacctagatgaaatggatctgtctgacactcctgccccatctgaggtaccagagctcagcgaatatgtttctgtcccagatcatttcttggaggataccactcctgtctcagctttacagtatatcaccactagttctatgaccattgcccccaagggccgagagctggtagtgttcttcagtctgcgtgttgctaacatggccttctccaacgacctgttcaacaagagctctctggagtaccgagctctggagcaacaattcacacagctgctggttccatatctacgatccaatcttacaggatttaagcaacttgaaatacttaacttcagaaacgggagtgtgattgtgaatagcaaaatgaagtttgctaagtcagtgccgtataacctcaccaaggctgtgcacggggtcttggaggattttcgttctgctgcagcccaacaactccatctggaaatagacagctactctctcaacattgaaccagctgatcaagcagatccctgcaagttcctggcctgcggcgaatttgcccaatgtgtaaagaacgaacggactgaggaagcggagtgtcgctgcaaaccaggatatgacagccaggggagcctggacggtctggaaccaggcctctgtggccctggcacaaaggaatgcgaggtcctccagggaaagggagctccatgcaggttgccagatcactctgaaaatcaagcatacaaaactagtgttaaaaagttccaaaatcaacaaaataacaaggtaatcagtaaaagaaattctgaattactgaccgtagaatatgaagaatttaaccatcaagattgggaaggaaattaaaaactgaaaatgtacaattatcatttaggctatctcaagagagatgatttgccttctcaaggaaaatggagacaggcatattcatgggtcatcaaaatccagacatacagtcaacactgagaatcagcacacaccatatttcaaatatagaagagtcatgtacttggcaaccagtaaattctgaagaaaaagacacttacttattattaaaaccccaaatgcaatcagcgaaacatatttttactattcttggatgatagtcaaaatgatcataagccaggtttgcttccaccttccctgaaaattttactcacagatcatttgcaacaagcatagcttacttattgtttagggactgaacaatttattgggaagcaaactctttatatgctagaaagtacatttaaaagatgactacttacgcagggagatgcaggtctctctaaacgcatgaatgtatgtagtgtgtaggcactgtagtgagtgtatatatgctccacactacgtctgataaacacaaacctcagtattcagttattaggcacactagttttatacgcaactactgcttacatagtagactgttttgttgccaataatctttgaattgttctttaaaagaaactgaggttcagatacacataccatggaaaaatcttacttttcttgttactacacaaagctattttaaagaagatgctatgttgggagaagggcgaagttgtactatatgacataatcaattcctgtcttccaccacagatgaacaatgtcttcctataataacttcagaatatttcctcacaccaactttagtgtgtgtatacctagactggcatcaatgtaatccaattcagtccattttttatgtgctgcttaatgaaaatgaatctgtctctatctctttcaaatgttctaatatcagatatatttgctacaaaccttaatttcaataaagtaaaagtgatatactca
【0055】
IMPG2 cDNA(配列番号2)NC_000003.12:c101320575-101222546 遺伝子ID:50939
atgattatgtttcctctttttgggaagatttctctgggtattttgatatttgtcctgatagaaggagactttccatcattaacagcacaaacctacttatctatagaggagatccaagaacccaagagtgcagtttcttttctcctgcctgaagaatcaacagacctttctctagctaccaaaaagaaacagcctctggaccgcagagaaactgaaagacagtggttaatcagaaggcggagatctattctgtttcctaatggagtgaaaatctgcccagatgaaagtgttgcagaggctgtggcaaatcatgtgaagtattttaaagtccgagtgtgtcaggaagctgtctgggaagccttcaggactttttgggatcgacttcctgggcgtgaggaatatcattactggatgaatttgtgtgaggatggagtcacaagtatatttgaaatgggcacaaattttagtgaatctgtggaacatagaagcttaatcatgaagaaactgacttatgcaaaggaaactgtaagcagctctgaactgtcttctccagttcctgttggtgatacttcaacattgggagacactactctcagtgttccacatccagaggtggacgcctatgaaggtgcctcagagagcagcttggaaaggccagaggagagtattagcaatgaaattgagaatgtgatagaagaagccacaaaaccagcaggtgaacagattgcagaattcagtatccaccttttggggaagcagtacagggaagaactacaggattcctccagctttcaccaccagcaccttgaagaagaatttatttcagaggttgaaaatgcatttactgggttaccaggctacaaggaaattcgtgtacttgaatttaggtcccccaaggaaaatgacagtggcgtagatgtttactatgcagttaccttcaatggtgaggccatcagcaataccacctgggacctcattagccttcactccaacaaggtggaaaaccatggccttgtggaactggatgataaacccactgttgtttatacaatcagtaacttcagagattatattgctgagacattgcagcagaattttttgctggggaactcttccttgaatccagatcctgattccctgcagcttatcaatgtgagaggagttttgcgtcaccaaactgaagatctagtttggaacacccaaagttcaagtcttcaggcaacgccgtcatctattctggataatacctttcaagctgcatggccctcagcagatgaatccatcaccagcagtattccaccacttgatttcagctctggtcctccctcagccactggcagggaactctggtcagaaagtcctttgggtgatttagtgtctacacacaaattagcctttccctcgaagatgggcctcagctcttccccagaggttttagaggttagcagcttgactcttcattctgtcaccccggcagtgcttcagactggcttgcctgtggcttctgaggaaaggacttctggatctcacttggtagaagatggattagccaatgttgaagagtcagaagattttctttctattgattcattgccttcaagttcattcactcaacctgtgccaaaagaaacaataccatccatggaagactctgatgtgtccttaacatcttcaccatatctgacctcttctataccttttggcttggactccttgacctccaaagtcaaagaccaattaaaagtgagccctttcctgccagatgcatccatggaaaaagagttaatatttgacggtggtttaggttcagggtctgggcaaaaggtagatctgattacttggccatggagtgagacttcatcagagaagagcgctgaaccactgtccaagccgtggcttgaagatgatgattcacttttgccagctgagattgaagacaagaaactagttttagttgacaaaatggattccacagaccaaattagtaagcactcaaaatatgaacatgatgacagatccacacactttccagaggaagagcctcttagtgggcctgctgtgcccatcttcgcagatactgcagctgaatctgcgtctctaaccctccccaagcacatatcagaagtacctggtgttgatgattactcagttaccaaagcacctcttatactgacatctgtagcaatctctgcctctactgataaatcagatcaggcagatgccatcctaagggaggatatggaacaaattactgagtcatccaactatgaatggtttgacagtgaggtttcaatggtaaagccagatatgcaaactttgtggactatattgccagaatcagagagagtttggacaagaacttcttccctagagaaattgtccagagacatattggcaagtacaccacagagtgctgacaggctctggttatctgtgacacagtctaccaaattgcctccaaccacaatctccaccctgctagaggatgaagtaattatgggtgtacaggatatttcgttagaactggaccggataggcacagattactatcagcctgagcaagtccaagagcaaaatggcaaggttggtagttatgtggaaatgtcaacaagtgttcactccacagagatggttagtgtggcttggcccacagaaggaggagatgacttgagttatacccagacttcaggagctttggtggttttcttcagcctccgagtgactaacatgatgttttcagaagatctgtttaataaaaactccttggagtataaagccctggagcaaagattcttagaattgctggttccctatctccagtcaaatctcacggggttccagaacttagaaatcctcaacttcagaaatggcagcattgtggtgaacagtcgaatgaagtttgccaattctgtccctcctaacgtcaacaatgcggtgtacatgattctggaagacttttgtaccactgcctacaataccatgaacttggctattgataaatactctcttgatgtggaatcaggtgatgaagccaacccttgcaagtttcaggcctgtaatgaattttcagagtgtctggtcaacccctggagtggagaagcaaagtgcagatgcttccctggatacctgagtgtggaagaacggccctgtcagagtctctgtgacctacagcctgacttctgcttgaatgatggaaagtgtgacattatgcctgggcacggggccatttgtaggtgccgggtgggtgagaactggtggtaccgaggcaagcactgtgaggaatttgtgtctgagcccgtgatcataggcatcactattgcctccgtggttggacttcttgtcatcttttctgctatcatctacttcttcatcaggactctccaagcacaccatgacaggagtgaaagagagagtcccttcagtggctccagcaggcagcctgacagcctctcatctattgagaatgctgtgaagtacaaccccgtgtatgaaagtcacagggctggatgtgagaagtatgagggaccctatcctcagcatcccttctacagctctgctagcggagacgtgattggtgggctgagcagagaagaaatcagacagatgtatgagagcagtgagctttccagagaggaaattcaagagagaatgagagttttggaactgtatgccaatgatcctgagtttgcagcttttgtgagagagcaacaagtggaagaggtttaa
【0056】
Cas9融合シチジンデアミナーゼ遺伝子編集アプローチのためのアニーリング配列例(配列番号3)-ccctgcactgcttccccaaa
Cas9融合シチジンデアミナーゼ遺伝子編集アプローチにより標的とされる5’-3’IMPG2遺伝子セグメント例(配列番号4)-ggacatcaagaagggacgtgacgaaggggttttcc
Cas9融合シチジンデアミナーゼ遺伝子編集アプローチにより標的とされる3’-5’IMPG2遺伝子セグメント例(配列番号5)-cctgtagttcttccctgcactgcttccccaaaagg
図1A-1D】
図2A-2E】
図3A-3D】
図4A-4E】
図5
図6
【配列表】
2024530307000001.xml
【国際調査報告】