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▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電気モータのロータ用中空シャフト
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
H02K9/19 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513365
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022072964
(87)【国際公開番号】W WO2023030888
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21195068.8
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP07
5H609PP10
5H609QQ05
5H609RR07
5H609RR37
5H609RR42
(57)【要約】
本発明は、ロータコアと磁石とを有する同期電気モータのロータに関し、ロータコアのインペラ(2A)が、中空シャフトと組み合わせて電気モータの冷却システムを介して冷却剤を送り出すために使用される。有利な実施態様では、冷却剤は、中空シャフトのメインキャビティ(7)に直接導入され、シャフトコア(1A)と支持ボディ(1B)との結合面の領域にある複数の流路(1C)を介してシャフトから放出され、流路(1C)の出口開口(3)がインペラ(2A)の吸入領域と位置合わせされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフトと積層されたロータコアとを有し、積層された前記ロータコアが、さらに、複数の磁石と、冷却剤の流れを利用するためのインペラ(2A)とを備えた電気モータ用のロータであって、
さらに、前記中空シャフトは、前記冷却剤を前記中空シャフトのメインキャビティ(7)へ直接導入するための入口開口(1AO)と、前記冷却剤が前記中空シャフトから放出される流路(1C)とを有し、前記流路(1C)の出口開口(3)が前記電気モータの冷却システムにより前記冷却剤を送り出すためのインペラ(2A)の吸入領域と位置合わせされていることを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記中空シャフトは、シャフトコア(1A)と支持ボディ(1B)とを有し、複数の前記流路(1C)は、前記シャフトコア(1A)と支持ボディ(1B)との結合面の領域に設けられていることを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記流路(1C)の出口開口(3)は、前記インペラ(2A)のリーディングエッジと位置合わせされていることを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のロータにおいて、
前記インペラ(2)がブレード(4)、特に湾曲したブレード(4)を有することを特徴とするロータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のロータにおいて、
非接触の静止ノズルが設けられ、前記静止ノズルを介して、好ましくは前記入口開口(1AO)の領域内で前記冷却剤を前記シャフト内へ放出可能であることを特徴とするロータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のロータにおいて、
支持ボディ(1B)が、前記中空シャフトから前記冷却剤を放出するための流路(1C)の位置に対して前記ロータコア(2)と前記インペラ(2A)を位置決めするための基準形状部(1D)を備えていることを特徴とするロータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のロータにおいて、
前記入口開口(1AO)は、複数の前記流路(1C)の径方向内側に配置され、前記メインキャビティ(7)の内壁(9)は、湾曲部ないし傾斜部(8)を前記メインキャビティ(7)の最大径の方へ向かって超えた側で延びていることを特徴とするロータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のロータを備えた同期電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のトラクションドライブ用の電気モータのロータに関し、電気モータは誘電冷却剤(オイル)で直接的に冷却されるものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、非同期電気モータのロータを開示しており、このロータは、アルミニウム合金で鋳造されるとともにフィラーボディを形成する、かご形で且つ積層されたロータコアを有し、2つのシャフトのジャーナルが、フィラーボディの両側のシャフトジャーナルを互いに接続する冷却ダクトによってフィラーボディを所定位置で固定するために使用されている。冷却ダクトには電気モータのロータ、ステータ、及び巻線を冷却するためのオイルが導入され、冷却ダクト内の複数の径方向穴が、フィラーボディと冷却ダクトの間のジャケット状のキャビティにオイルを送るために使用される。そして、オイルは、フィラーボディとシャフトジャーナルによって形成されるロータの両側の複数の径方向ボア及び/または径方向通路を介してロータから放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第3507889号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の解決手段では、積層されたロータコアの全部がフィラーボディを設けるためにアルミニウム合金で鋳造されるのではないので、電磁構造の制限のためにフィラーボディが利用できないか、またはフィラーボディが選択肢にならない別実施形態に関して、同期電気モータの直接冷却式ロータのための解決手段が欠如している。
【0005】
したがって、本発明の目的は、前述した装置の改良態様または前述した装置の少なくとも別態様であって前述の欠点が解消される態様を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、独立の請求項1の主題によって解決される。有利な形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、トラクションドライブ用の電気モータのロータのインペラを、電気モータの冷却システムを介して冷却剤を送り出すポンプの機能で用いることにより、積層されたロータコアを所定位置で受けるための中空シャフトを利用するという概念に基づくものであり、好ましくは非接触の静止ノズルによって入口開口の領域内で冷却剤がシャフト内に放出され、したがって、インペラのための入口の領域に出口開口を備えた複数の流路を有する中空シャフトのメインキャビティ内へ冷却剤が直接導入される。有利なことに、中空シャフトとの組合せにおいてインペラで電気モータのステータと巻線とを冷却することによって、電気モータの冷却性能ひいては連続出力が著しく向上し、ロータの中空シャフトのメインキャビティ内で冷却剤が目標周速度まで徐々に加速されることによって冷却剤が滑るように動き、したがって電気モータの効率も基本的に向上する。
【0008】
本発明では、説明を簡略化するために「第1/第2」という複合語を用いる。本発明に関しては、複合語「第1/第2」の個々の用語「第1」及び「第2」は、常に「及び/または」で結び付けられる。したがって、ロータには「第1」要素及び/または「第2」要素が存在し得る。この場合、それぞれの「第1」要素は、ロータの更なる「第1」要素またはロータの第1軸方向端部にのみ関連し、それぞれの「第2」要素は、ロータの更なる「第2」要素またはロータの第2軸方向端部にのみ関連する。複合語「第1/第2」に個々の用語「第1」及び「第2」が使用されていない場合、この用法に従って理解すべきである。さらに、本発明では、「軸方向」及び「径方向」という用語は常に回転軸に関するものである。
【0009】
電気モータのロータは、中空シャフトとロータコアとを有する。有利な実施形態では、中空シャフトは、組み立てられるように構成され且つロータコアを所定位置で支持するように構成された、中空のシャフトコアとそれに対応する支持ボディとを有する2部分の中空構造である。有利な実施形態では、中空シャフトは、第1端部と中空シャフトの反対側の第2端部とを有する円筒体である。有利な実施形態では、中空シャフトは圧入結合によって組み立てられる。このような圧入結合をすることは容易であり、他の締結材は必要ではない。別実施形態では、シャフトは、締まり嵌め及び/または中間嵌めを溶接と組み合わせて組み立てられる。有利な実施形態では、中空シャフトは、冷却剤を導入するための入口開口と、ロータコアを中空シャフトの外周面に位置決めするための基準形状部(基準特徴部)とを有する。有利な実施形態では、中空シャフトから冷却剤を放出するために、中空シャフトは、少なくとも中空シャフトの一端の領域に、シャフトを組み立てた後に機械加工によって設けられ、及び/または形成され、及び/または加工される、複数の流路及び/または開口及び/または通路及び/またはボアを有する。ロータコアは、積層された複数の電磁鋼板のシートをさらに有する円筒体を備え、ロータコアは、ロータコアの第1の側の第1の隣接する前面と、ロータコアの第2(反対)の側の第2の隣接する前面とを有する。有利な実施形態では、ロータコアは、締まり嵌め及び/または中間嵌め、及び/またはクランプナットにより中空シャフトに取り付けられる。有利な実施形態のロータコアは、さらに、複数の磁石と、その磁石をロータコアに固定するための樹脂とを有し、ロータコアは、電気モータの筐体内の冷却剤の流れを促進するための複数のブレードを備えたインペラをさらに有する。有利な実施形態では、冷却剤を中空シャフトから放出するための流路は、中空シャフトの外周縁に近い領域、より正確には、中空シャフトコアとそれに対応する支持ボディとの圧入結合の領域にあり、流路の数はインペラのブレードの数と等しいことが好ましく、流路の位置は対応するブレードのリーディングエッジに位置合わせされる。
【0010】
入口開口は、複数の流路の径方向内側に配置することができ、メインキャビティの内壁は、湾曲部または傾斜部をメインキャビティの最大径の方へ向かって超えた側で延びるようにすることができる。このようにすると、キャビティの壁に沿った冷却剤の境界流により、冷却剤をキャビティ内で最大角速度まで徐々に加速することができる。
【0011】
本発明のさらに他の重要な特徴及び効果は、従属請求項、図面、及び添付図面に基づく図の説明から明らかである。
【0012】
前記の特徴及び以下に説明する特徴が、それぞれに示された組み合わせで用いるだけでなく、他の組み合わせで、または単独で、本発明の範囲から逸脱することなく使用できることを理解されたい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態を図面に示し、以下においてより詳細に説明するが、同一の参照符号は、同一もしくは類似、または機能的に同一の構成要素を示す。
【0014】
各図は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用ロータの斜視図である。
図2図2は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用ロータの側面図である。
図3図3は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用ロータの断面図である。
図4図4は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用ロータの詳細断面図である。
図5図5は、本発明の有利な実施形態に係る中空シャフトの斜視図であり、分解図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用のオーバーモールドされたロータの斜視図である。ロータは、中空シャフトとロータコア2とを有する。中空シャフトは、シャフトコア1Aと支持ボディ1Bとを有し、中空シャフトのメインキャビティ7に冷却剤を導入するために入口開口1AOが用いられ、シャフトコア1Aと支持ボディ1Bとの間の接合面の領域には複数の流路1Cが設けられている。メインキャビティ7は、好ましくは全ての出口開口3を通じて、一様な圧力分布と均一な冷却剤の排出を保証する。ロータコア2は、複数のブレード4を備えたインペラ2Aを有し、有利な実施形態における流路1Cの出口開口3の位置はブレード4のリーディングエッジと位置合わせされる。ブレード4は湾曲していることが好ましい。
【0017】
図1及び図4に示すように、出口開口3は径方向外側を向き、隣接する2つのブレード4の周方向に間に配置されている。図3図4図5では、流路1Cは軸方向領域5とそれに隣接する径方向領域6を有し、出口開口3は径方向領域6の端部に位置している。
【0018】
図2は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用ロータの側面図であり、断面A-Aに対応する面が示されている。
【0019】
図3は、本発明に係る有利な実施形態の電気モータ用ロータのA-A断面図を示し、領域Bの詳細図を示す。有利な実施形態では、中空シャフト、より正確には支持ボディ1Bは、中空シャフトから冷却剤を放出するための流路1Cの位置に対してロータコア2及びインペラ2Aを位置決めするための基準形状部(基準特徴部、基準機能部)1Dを有する。有利なことに、インペラの性能、ひいては電気モータの冷却性が著しく向上する。
【0020】
図3によれば、出口開口3がメインキャビティ7の上端にのみ配置されていることにより、インペラ2は下端に配置することもできる。純粋に理論的な観点では、出口開口(図示せず)を下端に設けてもよく、これにより冷却剤がメインキャビティ7から、好ましくはインペラ2の隣接する2つのブレード4の間で軸方向へ流出する。冷却剤は、そこから遠心力とブレード4によりさらに送り出すことができる。このことにより、冷却性をさらに高め、それに伴って電気モータの性能を高めることができるようになる。
【0021】
入口開口1AOは複数の流路1Cの径方向内側に配置され、メインキャビティ7の内壁9は、湾曲部ないし傾斜部8をメインキャビティ7の最大径の方へ向かって超えた側で延びている。このようにして、冷却剤を、内壁9に沿った冷却剤の境界流により、メインキャビティ7内で最大角速度まで徐々に加速することができる。
【0022】
図4は、本発明の有利な実施形態に係る電気モータ用ロータの詳細断面図であり、中空シャフトから冷却剤を放出するための流路1Cと基準形状部1Dとが明瞭に示されている。
【0023】
支持ボディ1Bに流路1Cを形成することにより、流路1Cを閉じた流路として加工する必要がなくなってシャフトコア1Aを有する1Bを組み立てることによってのみ流路1Cが形成されるので、流路1Cの加工が比較的に容易になる。したがって、支持ボディ1Bには、流路1Cの形状の一部のみを加工すればよい。このことにより、支持ボディ1Bの加工が概して容易になる。流路1Cは、支持ボディ1Bとシャフトコア1Aとによって形成される。
【0024】
図5は、本発明の有利な実施形態に係る中空シャフトの斜視図を分解図で示し、支持ボディ/シャフト1Bの溝の形態の流路1Cの構造の詳細が明瞭に示され、シャフトコア1Aとそれに対応する支持ボディ1Bの面との圧入結合を利用する面が明確に示されている。圧入結合に加えて、または圧入結合に代えて、接着結合を使用することも当然可能である。
【0025】
本明細書では、電気モータ用ロータのすべての部品、特に中空シャフトを最良の実施形態で示して説明している。しかしながら、他の形状/サイズ/配置も可能であり、冷却剤は、油、空気、または油と空気の混合物であることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】