(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】抗4-1BBナノボディ
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240808BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240808BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240808BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240808BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240808BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K14/725
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/30
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513383
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2022115536
(87)【国際公開番号】W WO2023030258
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/115621
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520266960
【氏名又は名称】ラノバ メディシンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ルンシェン
(72)【発明者】
【氏名】フアン, ウェンタオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
抗4-1BBナノボディ、およびこのナノボディを組み込んだ二重特異性抗体または多重特異性抗体が、提供される。がんなどの疾患を処置および診断するためにそれらの抗体を使用する方法もまた、提供される。その抗体またはポリペプチドと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物もまた提供される。その抗体またはポリペプチドをコードする1種もしくは複数種のポリヌクレオチド、その抗体またはそのフラグメントをコードする1種もしくは複数種のポリヌクレオチドを含む単離された細胞もまた、さらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一ドメイン抗体または前記単一ドメイン抗体を含むポリペプチドであって、前記単一ドメイン抗体はヒト4-1BBタンパク質に対する結合特異性を有し、前記単一ドメイン抗体は相補性決定領域1(CDR1)、CDR2およびCDR3を含み、前記CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、
(a)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列および配列番号32のアミノ酸配列;
(b)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号59のアミノ酸配列および配列番号38のアミノ酸配列;
(c)配列番号17のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列および配列番号31のアミノ酸配列;
(d)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号25のアミノ酸配列および配列番号32のアミノ酸配列;
(e)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列および配列番号33のアミノ酸配列;
(f)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号27のアミノ酸配列および配列番号34のアミノ酸配列;
(g)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;
(h)配列番号19のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;
(i)配列番号20のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;
(j)配列番号19のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;
(k)配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;
(l)配列番号22のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;
(m)配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;
(n)配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;
(o)配列番号19のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列および配列番号33のアミノ酸配列;
(p)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号37のアミノ酸配列;
(q)配列番号23のアミノ酸配列、配列番号30のアミノ酸配列および配列番号38のアミノ酸配列;または
(r)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号39のアミノ酸配列
を含む、単一ドメイン抗体または前記単一ドメイン抗体を含むポリペプチド。
【請求項2】
前記CDR1が配列番号18のアミノ酸配列を含み、前記CDR2が配列番号58のアミノ酸配列を含み、前記CDR3が配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項3】
配列番号40~48および60~62のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項4】
前記CDR1が配列番号18のアミノ酸配列を含み、前記CDR2が配列番号59のアミノ酸配列を含み、前記CDR3が配列番号38のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項5】
配列番号49~57のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項6】
配列番号1~16のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、4-1BBとは異なる抗原に対する結合特異性を有するキメラ抗原レセプター(CAR)または4-1BBとは異なる抗原に対する結合特異性を有する二重特異性抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体と、4-1BBではない標的抗原に対する結合特異性を有する第2の抗体または抗原結合性フラグメントとを含む、二重特異性抗体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはポリペプチドをコードする、1種または複数種のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはポリペプチドと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物。
【請求項12】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、
前記患者に有効量の請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはポリペプチドを投与する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
4-1BB(CD137、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー9)は、TNFレセプタースーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、免疫細胞(自然免疫細胞および適応免疫細胞の両方)の活性化後に発現される共刺激分子である。4-1BBは、種々の免疫細胞の活性を調節することにおいて重要な役割を果たす。4-1BBアゴニストは、免疫細胞の増殖、生存、サイトカインの分泌およびCD8 T細胞の細胞溶解活性を増強する。他の多くの研究により、4-1BBの活性化がマウスにおいて腫瘍を除去する免疫応答を増強することが示された。したがって、4-1BBはがん免疫学において有望な標的分子であることが、示唆された。
【0002】
単一ドメイン抗体(sdAb)(ナノボディとしても知られている)は、単一のモノマー抗体可変ドメインからなる抗体フラグメントである。ラクダ科動物および他の特定の動物から作製されたナノボディは、VHHフラグメントとも呼ばれる。抗体全体と同様に、ナノボディは、特定の抗原に選択的に結合できる。わずか12kDa~15kDaの分子量を有しており、単一ドメイン抗体は一般的な抗体(150kDa~160kDa)よりもかなり小さい。単一ドメイン抗体は、その小さいサイズおよび一本鎖の性質を考慮すると、他のタンパク質(例えば、キメラ抗原レセプター(CAR)および二重特異性抗体)中のフラグメントとして含めるために特に適切であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(概要)
二重特異性抗体または三重特異性抗体に含むために適切な抗ヒト4-1BBナノボディが、提供される。したがって、本開示の一実施形態において、単一ドメイン抗体またはこの単一ドメイン抗体を含むポリペプチドが提供され、この単一ドメイン抗体はヒト4-1BBタンパク質に対する結合特異性を有し、この単一ドメイン抗体は相補性決定領域1(CDR1)、CDR2およびCDR3を含み、このCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、(a)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列および配列番号32のアミノ酸配列;(b)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号59のアミノ酸配列および配列番号38のアミノ酸配列;(c)配列番号17のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列および配列番号31のアミノ酸配列;(d)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号25のアミノ酸配列および配列番号32のアミノ酸配列;(e)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列および配列番号33のアミノ酸配列;(f)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号27のアミノ酸配列および配列番号34のアミノ酸配列;(g)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;(h)配列番号19のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;(i)配列番号20のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;(j)配列番号19のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列;(k)配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;(l)配列番号22のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;(m)配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;(n)配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列;(o)配列番号19のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列および配列番号33のアミノ酸配列;(p)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号37のアミノ酸配列;(q)配列番号23のアミノ酸配列、配列番号30のアミノ酸配列および配列番号38のアミノ酸配列;または(r)配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号39のアミノ酸配列;のアミノ酸配列を含む。
【0004】
一部の実施形態において、そのCDR1は配列番号18のアミノ酸配列を含み、そのCDR2は配列番号58のアミノ酸配列を含み、そのCDR3は配列番号32のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その単一ドメイン抗体またはポリペプチドは、配列番号40~48および60~62のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0005】
一部の実施形態において、そのCDR1は配列番号18のアミノ酸配列を含み、そのCDR2は配列番号59のアミノ酸配列を含み、そのCDR3は配列番号38のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その単一ドメイン抗体またはポリペプチドは、配列番号49~57のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0006】
一部の実施形態において、その単一ドメイン抗体またはポリペプチドは、配列番号1~16のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0007】
その抗体またはポリペプチドと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物もまた提供される。その抗体またはポリペプチドをコードする1種もしくは複数種のポリヌクレオチド、その抗体またはそのフラグメントをコードする1種もしくは複数種のポリヌクレオチドを含む単離された細胞もまた、さらに提供される。
【0008】
処置方法および使用もまた、提供される。一実施形態において、それを必要とする患者においてがんを処置する方法が提供され、この方法は、その患者に有効量の本開示の抗体またはポリペプチドを投与する工程を含む。一部の実施形態において、そのがんは固形腫瘍である。一部の実施形態において、そのがんは、膀胱がん、肝がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、消化器がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群より選択される。一部の実施形態において、その方法は、その患者に第2のがん治療剤を投与する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】
図1A~
図1Bは、抗41BBナノボディが可溶性ヒト4-1BBおよび可溶性カニクイザル4-1BBに用量依存的に結合したことを示す。
【0010】
【
図2】
図2は、4-1BBへの4-1BBリガンドの結合を抗41BBナノボディが濃度依存的様式で遮断し得たことを示す。
【0011】
【
図3-1】
図3A~
図3Bは、Fc架橋の存在下で抗41BBナノボディが4-1BB媒介性NFκB活性を効率的に誘導したことを示す。
【0012】
【
図4-1】
図4A~
図4Bは、親クローンVV02-1LP-263に由来する抗41BBヒト化ナノボディが細胞表面ヒト4-1BBまたは細胞表面カニクイザル4-1BBに濃度依存的様式で結合したことを示す。
【0013】
【
図5】
図5は、親クローンVV02-1SP(1)-73に由来する抗41BBヒト化ナノボディが細胞表面ヒト4-1BBに濃度依存的様式で結合したことを示す。
【0014】
【
図6】
図6は、最適化抗4-1BB配列が、4-1BBを保有するCHO-K1細胞に対して親配列に匹敵する結合活性を維持したことを示す。
【0015】
【
図7】
図7は、最適化抗4-1BBをベースとする二重特異性抗体が、標的細胞の存在下での4-1BB活性化の誘導において、親抗体TAA-263-1-3に匹敵する効力を有したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(詳細な説明)
(定義)
用語「ある(1つの)(a)」または「ある(1つの)(an)」実体とは、1つまたは複数のその実体を指すことが、留意されるべきであり;例えば、「(ある)抗体」は、1つまたは複数の抗体を示すと理解される。このように、用語「ある(a)」または「ある(an)」と、「1つまたは複数」と、「少なくとも1つ」とは、本明細書において交換可能に使用され得る。
【0017】
ポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)が別の配列に対して特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98 %または99 %)の「配列同一性」を有するとは、整列させた場合に、その2つの配列を比較する際にそのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が同じであることを意味する。この整列、および相同性パーセントまたは配列同一性パーセントは、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Ausubelら編(2007)Current Protocols in Molecular Biologyにおいて記載されているソフトウェアプログラムを使用して、決定され得る。好ましくは、デフォルトパラメータが整列のために使用される。整列プログラムの1つはBLASTであり、デフォルトパラメータを使用する。詳細には、プログラムはBLASTNおよびBLASTPであり、以下のデフォルトパラメータを使用する:遺伝暗号(Genetic code)=標準(standard);フィルター(filter)=なし(none);鎖(strand)=両方(both);カットオフ(cutoff)=60;期待値(expect)=10;マトリックス(Matrix)=BLOSUM62;記載(Descriptions)=50種の配列;ソーティング(sort by)=高スコア(HIGH SCORE);データベース(Databases)=重複なしの(non-redundant)、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。生物学的に同等なポリヌクレオチドとは、上記の特定の相同性パーセントを有し、同じ生物学的活性または類似の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドである。
【0018】
用語「同等な核酸またはポリヌクレオチド」とは、核酸またはその相補体のヌクレオチド配列と特定の程度の相同性または配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する、核酸を指す。二本鎖核酸のホモログは、その相補体とまたはその相補体と、特定の程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を含むと意図される。一態様において、核酸のホモログは、その核酸またはその相補体とハイブリダイズ可能である。同様に、「同等なポリペプチド」とは、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と特定の程度の相同性または配列同一性を有するポリペプチドを指す。一部の態様において、その配列同一性は、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%である。一部の態様において、その同等なポリペプチドまたは同等なポリヌクレオチドは、参照ポリペプチドまたは参照ポリヌクレオチドと比較した場合に1個、2個、3個、4個または5個の、付加、欠失、置換、およびそれらの組合せを有する。一部の態様において、その同等な配列は、参照配列の活性(例えば、エピトープ結合)または構造(例えば、塩架橋)を保持する。
【0019】
本明細書において使用される場合、「抗体」または「抗原結合性ポリペプチド」とは、抗原を特異的に認識して結合する、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、抗体全体および任意の抗原結合性フラグメントであっても、それらの単鎖であってもよい。したがって用語「抗体」は、その抗原に対する結合という生物学的活性を有する、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質含有分子またはペプチド含有分子を含む。それらの例としては、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはそれらのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、重鎖もしくは軽鎖の定常領域、フレームワーク(FR)領域、またはそれらの任意の部分、あるいは結合タンパク質の少なくとも一部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「抗体フラグメント」または「抗原結合性フラグメント」とは、本明細書において使用される場合、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの、抗体の部分である。構造に関係なく、抗体フラグメントは、そのインタクト抗体により認識されるのと同じ抗原に結合する。用語「抗体フラグメント」は、アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmer)、およびダイアボディ(diabody)を含む。用語「抗体フラグメント」はまた、特定の抗原へ結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質を含む。
【0021】
「単鎖可変フラグメント」または「scFv」とは、免疫グロブリンの重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)との融合タンパク質を指す。一部の態様において、それらの領域は、10アミノ酸~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結されている。そのリンカーは、可撓性のためにグリシンが豊富であり得、溶解度のためにセリンまたはスレオニンが豊富で有り得、VHのN末端をVLのC末端に連結にするかまたはその逆であるかのいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。ScFv分子は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。
【0022】
抗体という用語は、生化学的に区別され得る種々の広範な種類のポリペプチドを含む。重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラス(例えば、γl~γ4)があることを、当業者は理解する。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5など)は、十分に特徴付けられており、機能的特殊化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の改変バージョンは、本開示の範囲を考慮すれば当業者には容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内にある。免疫グロブリンのすべてのクラスが明らかに本開示の範囲内にあり、以下の議論は、一般的にIgGクラスの免疫グロブリン分子に関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一な軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000~70,000の2つの同一な重鎖ポリペプチドとを含む。これらの4つの鎖は、典型的には、ジスルフィド結合によって「Y」字構成で連結されており、これらの軽鎖は、この「Y」字の入り口から始まって可変領域を通って続くこれらの重鎖を挟んでいる。
【0023】
本開示の抗体、抗原結合性ポリペプチド、それらの改変体、または誘導体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、もしくはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合性フラグメント、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VKドメインまたはVHのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーにより生成されるフラグメント、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示されているLIGHT抗体に対する抗Id抗体が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の免疫グロブリン分子または抗体分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAlおよびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。
【0024】
「特異的に結合する」または「に対する特異性を有する」によって、抗体がその抗原結合ドメインによってエピトープに結合すること、およびその結合はその抗原結合ドメインとそのエピトープとの間のいくらかの相補性を伴うことが、一般的に意味される。この定義にしたがって、抗体は、抗体がその抗原結合ドメインによってエピトープに、その抗体がランダムかつ無関連なエピトープに結合するよりも容易に結合する場合に、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対的親和性を定量化するために、本明細書において使用される。例えば、抗体「A」は、所定のエピトープに対して抗体「B」よりも高い特異性を有すると考えられ得、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対してその抗体「A」が有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われ得る。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「処置する」または「処置」とは、治療的処置および予防的手段または防止的手段の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的変化または障害(例えば、がんの進行)を予防するまたは減速(減少)させることである。有益な臨床結果または望ましい臨床結果としては、検出可能であろうと検出不能であろうと、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延もしくは減速、疾患状態の好転(amelioration)もしくは緩和、および寛解(部分的であろうと完全であろうと)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較して、生存を延長させることも意味し得る。処置を必要とする者とは、その状態または障害を既に有する者、ならびにその状態または障害を有する傾向がある者、またはその状態または障害が予防されるべき者を含む。
【0026】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によって、診断、予後判定、または治療が望まれる、任意の対象(特に哺乳動物対象)が意味される。哺乳動物対象としては、ヒト、家畜動物、農場の動物、および動物園の動物、スポーツ用動物、または愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシなど)が挙げられる。
【0027】
本明細書において使用される場合、「処置を必要とする患者に」または「処置を必要とする対象」などの句は、例えば、検出、診断手順、および/または処置のために使用される本開示の抗体もしくは組成物の投与から利益を受ける対象(例えば、哺乳動物対象)を含む。
【0028】
(抗4-1BBナノボディ)
本開示は、ヒト4-1BBタンパク質に対するナノボディ(ヒト化ナノボディが挙げられる)を提供する。これらの抗体は、4-1BBに対する高い結合親和性を有し、4-1BBとそのリガンドとの間の相互作用を効果的に遮断し得る。実施例4において示されるとおり、これらの抗体は、Fc架橋の存在下でのみ、4-1BB媒介性NF-κB活性を誘導する強力な能力を示した。したがって、これらの抗体は、それら単独では4-1BBシグナル伝達を活性化しない非アゴニスト抗体である。しかし、第2の抗体と組み合わせた場合、その結果生じる二重特異性抗体は、その第2の抗体の標的抗原の存在下で4-1BBシグナル伝達を活性化し得る。換言すると、本ナノボディは、二重特異性抗体または多重特異性抗体への発展のために特に適している。
【0029】
したがって、本開示の一実施形態において、単一ドメイン抗体またはこの単一ドメイン抗体を含むポリペプチドが提供され、この単一ドメイン抗体はCDR1、CDR2およびCDR3を含み、これらのCDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ、表1中の抗体のうちのいずれか1つのCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を有する。
【0030】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-317(配列番号1)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号17のアミノ酸配列、配列番号24のアミノ酸配列および配列番号31のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号1に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0031】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-263(配列番号2)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号25のアミノ酸配列および配列番号32のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号2に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0032】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-355(配列番号3)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列および配列番号33のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号3に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0033】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-3LP-66(配列番号4)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号27のアミノ酸配列および配列番号34のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号4に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0034】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-265(配列番号5)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号5に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0035】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-2LP-13(配列番号6)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号19のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号6に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0036】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-3LP-142(配列番号7)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号20のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0037】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-3LP-83(配列番号8)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号19のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0038】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-417(配列番号9)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0039】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-422(配列番号10)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号22のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0040】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-238(配列番号11)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号11に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0041】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1LP-288(配列番号12)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号21のアミノ酸配列、配列番号29のアミノ酸配列および配列番号36のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号12に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0042】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1SP(1)-168(配列番号13)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号19のアミノ酸配列、配列番号26のアミノ酸配列および配列番号33のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0043】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1SP(1)-55(配列番号14)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号37のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0044】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1SP(1)-73(配列番号15)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号23のアミノ酸配列、配列番号30のアミノ酸配列および配列番号38のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号15に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0045】
一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2、およびCDR3は、抗体VV02-1SP(1)-358(配列番号16)のCDR1、CDR2、およびCDR3である。一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号28のアミノ酸配列および配列番号39のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号16に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0046】
ヒト化抗体(例えば、抗体VV02-1LP-263について配列番号40~48および60~62で提供されているヒト化抗体、ならびに抗体VV02-1SP(1)-73について配列番号49~57で提供されているヒト化抗体)もまた、提供される。VV02-1LP-263(配列番号18におけるCDR1、配列番号25におけるCDR2および配列番号32におけるCDR3)について、そのCDR2は、変異(Kabat番号付けのD54GおよびD61E)のいずれかまたは両方を組み込み得る。したがって、一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号58のアミノ酸配列および配列番号32のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、配列番号40~48および60~62のうちのいずれか1つを含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号40~48および60~62のうちのいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0047】
これらのヒト化配列のうち、263 huNb-1-3_1(配列番号60)、263 huNb-1-3_2(配列番号61)、および263 hnNb-1-3_3(配列番号62)が、さらに最適化されたヒト化配列であり、これらは、さらなる臨床開発のために適していることが示された(実施例7および
図6~
図7)。一部の実施形態において、その抗体は配列番号60を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号60に対する少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、その抗体は配列番号61を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号61に対する少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、その抗体は配列番号62を含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号62に対する少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0048】
VV02-1SP(1)-73(配列番号23におけるCDR1、配列番号30におけるCDR2および配列番号38におけるCDR3)について、1つの変異(Kabat番号付けのN31S)がそのCDR1に、または2つの変異(Kabat番号付けのD54SおよびD61E)のうちのいずれかがそのCDR2に、それぞれ組み込まれ得る。したがって、一部の実施形態において、そのCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、配列番号18のアミノ酸配列、配列番号59のアミノ酸配列および配列番号38のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、その抗体は、配列番号49~57のうちのいずれか1つを含む。一部の実施形態において、その抗体は、記載されたCDR1、CDR2およびCDR3を含み、配列番号49~57のうちのいずれか1つに対する少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0049】
一部の実施形態において、ナノボディまたはそのナノボディを含むポリペプチドもまた提供され、これは、配列番号17~23から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号24~30または58~59から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号31~39から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0050】
一部の実施形態において、ナノボディまたはそのナノボディを含むポリペプチドもまた提供され、これは、配列番号21~22から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR3を含む。
【0051】
一部の実施形態において、本明細書において開示されている抗体のいずれかとヒト4-1BBへの結合において競合する、抗4-1BB抗体および抗原結合性フラグメントもまた提供される。一部の実施形態において、本明細書において開示されている抗体のいずれかと同じエピトープに結合する、抗4-1BB抗体および抗原結合性フラグメントもまた提供される。一部の実施形態において、本明細書において開示されている抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、抗4-1BB抗体および抗原結合性フラグメントもまた提供される。
【0052】
その抗体またはポリペプチドと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物もまた、提供される。
【0053】
本明細書において開示されている抗体は、その由来元である天然に存在する結合性ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるように改変され得ることもまた、当業者により理解される。例えば、指定のタンパク質に由来するポリペプチド配列またはアミノ酸配列は、同様であり得、例えば、その出発配列に対して特定の同一性パーセントを有し得、例えば、それはその出発配列に対して60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であり得る。一部の実施形態において、その改変された抗体またはフラグメントは、指定のCDR配列を保持する。
【0054】
特定の実施形態において、その抗体は、抗体に通常は付随しない、アミノ酸配列または1つもしくは複数の部分を含む。例示的な改変が、以下により詳細に記載される。例えば、本開示の抗体は、可撓性リンカー配列を含み得、または機能的部分(例えば、PEG、薬物、毒素、もしくは標識)を付加するように改変され得る。
【0055】
二重特異性抗体および多重特異性抗体もまた提供され、これらは、1単位、2単位、3単位または4単位の本明細書において開示される単一ドメイン抗4-1BB抗体と、1つまたは複数の他の特異性(4-1BBではない)とを含む。
【0056】
(二重特異性抗体および多重特異性抗体、ならびにキメラ抗原レセプター(CAR))
提示されたとおり、本明細書に開示されている抗4-1BB抗体は、二重特異性抗体および多重特異性抗体、ならびにキメラ抗原レセプター(CAR)を調製するために特に有用である。これは、少なくとも、これらの抗体の増強された治療指数およびそれらの小さいサイズが原因である。
【0057】
したがって、一実施形態において、本開示の抗4-1BBナノボディまたはその抗原結合性フラグメントと、4-1BBではない標的抗原に対する結合特異性を有する第2の抗体または抗原結合性フラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。一部の実施形態において、第3または第4の特異性が、さらに含まれる。
【0058】
その4-1BBではない標的抗原は、一部の実施形態においては、腫瘍抗原である。多くの腫瘍抗原が当該分野で公知であり、新規な腫瘍抗原がスクリーニングによって容易に同定され得る。腫瘍抗原の非限定的な例としては、ABL、ALK、B4GALNT1、BAFF、BCL2、BRAF、BTK、CD19、CD20、CD30、CD38、CD52、CD73、クローディン(Claudin)18.2、CTLA-4、EGFR、FOLR1、FLT3、HDAC、HER2、IDH2、IL-1β、IL-6、IL-6R、JAK1/2、JAK3、KIT、LAG-3、MEK、ネクチン(Nectin)4、ROR1、mTOR、PARP、PD-1、PDGFR、PDGFRα、PD-L1、PI3Kδ、PIGF、PTCH、RAF、RANKL、スムーズンド(Smoothened)、VEGF、VEGFR、およびVEGFR2が挙げられる。他の例は、Her2、EpCAM、CD33、CD47、CD133、CEA、gpA33、ムチン(Mucin)、TAG-72、CIX、PSMA、GD2、GD3、GM2、インテグリン(Integrin)、αVβ3、α5β1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAPおよびテネイシン(Tenascin)である。
【0059】
本開示のナノボディを含むキメラ抗原レセプター(CAR)もまた、提供される。そのCARにおいて、そのナノボディは抗原認識ドメインとして役立ち得る。さらに、一部の実施形態において、そのCARはまた、細胞外ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。
【0060】
そのヒンジ(スペーサーとも呼ばれる)は、その抗原認識領域と細胞の外膜との間に存在する、小さい構造ドメインである。適切なヒンジは、scFvレセプターのヘッド部の可撓性を増強して、そのCARとその標的抗原との間の空間的制約を減少する。例示的なヒンジ配列は、免疫分子(例えば、IgG、CD8、およびCD28)に由来する膜近位領域をベースとする。
【0061】
その膜貫通ドメインは、細胞膜をまたぐ疎水性αヘリックスからなる構造成分である。それはCARを形質膜に固定して、その細胞外ヒンジドメインおよび抗原認識ドメインと細胞内シグナル伝達領域とに架橋する。代表的には、内部ドメインの膜近位成分に由来する膜貫通ドメイン(例えば、CD28膜貫通ドメイン)が、使用され得る。
【0062】
その細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、細胞内部のレセプターの内部ドメイン中に存在する。抗原が外部抗原認識ドメインに結合された後に、CARレセプター群が一緒になってクラスター形成し、活性化シグナルを伝達する。その後、そのレセプターの内部細胞質末端が、そのT細胞の内部のシグナル伝達を永続させる。このプロセスを模倣するために、CD3-ζの細胞質ドメインが、主要なCAR内部ドメイン成分として一般的に使用される。
【0063】
T細胞はまた、活性化後に持続するためにCD3シグナル伝達に加えて共刺激分子を必要とする。一部の実施形態において、CARレセプターの内部ドメインはまた、共刺激タンパク質(例えば、CD28、CD27、CD134(OX40)、およびCD137(4-1BB))に由来する1つまたは複数のキメラドメインを含む。
【0064】
(本抗体をコードするポリヌクレオチドおよびその抗体を調製する方法)
本開示はまた、本開示の抗体、その改変体または誘導体をコードする、単離されたポリヌクレオチドもしくは核酸分子を提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別々のポリヌクレオチド分子上に、本抗原結合性ポリペプチド、その改変体または誘導体の、重鎖可変領域全体および軽鎖可変領域全体をコードし得る。さらに、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別々のポリヌクレオチド分子上に、本抗原結合性ポリペプチド、その改変体または誘導体の、重鎖可変領域の部分および軽鎖可変領域の部分をコードし得る。
【0065】
抗体を作製する方法は、当該分野で周知であり、本明細書において記載されている。特定の実施形態において、本開示の抗原結合性ポリペプチドの可変領域および定常領域の両方は、完全にヒトのものである。完全ヒト抗体は、当該分野において記載されている技術を使用し、本明細書において記載されているとおりに、作製され得る。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原性チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されたがその内在性遺伝子座は無効化されたトランスジェニック動物にその抗原を投与することによって、調製され得る。そのような抗体を作製するために使用され得る例示的な技術は、米国特許第6,150,584号;同第6,458,592号;同第6,420,140号において記載されており、これらの米国特許は、それらの全体が参照により援用される。
【0066】
(がんの処置)
本明細書において記載されるとおり、本開示の抗体、二重特異性抗体、ポリペプチド、改変体または誘導体は、特定の処置方法および診断方法において使用され得る。
【0067】
本開示はさらに、本明細書において記載されている障害または状態のうちの1つもしくは複数を処置するための抗体ベースの治療法に関し、これは、本開示の抗体を患者(例えば、動物、哺乳動物、およびヒト)に投与する工程を含む。本開示の治療化合物としては、本開示の抗体(本明細書において記載されているその改変体および誘導体を含む)ならびに本開示の抗体(本明細書において記載されているその改変体および誘導体を含む)をコードする核酸またはポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
一部の実施形態において、それを必要とする患者においてがんを処置するための方法が提供される。その方法は、一実施形態においては、その患者に有効量の本開示の抗体を投与する工程を含む。一部の実施形態において、その患者中のがん細胞(例えば、間質細胞)のうちの少なくとも1つは、腫瘍抗原を過剰発現する。
【0069】
細胞療法(例えば、キメラ抗原レセプター(CAR)T細胞療法またはキメラ抗原レセプター(CAR)NK細胞療法)もまた、本開示において提供される。本開示の抗体もしくはCARと接触して配置された(または代替的には、本開示の抗体もしくはCARを発現するように操作された)、適切な細胞が使用され得る。そのような接触または操作をされると、その後、その細胞は、処置を必要とするがん患者に導入され得る。そのがん患者は、本明細書において開示されている型のいずれかのがんを有し得る。その細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)は、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組合せであり得るが、これらに限定されない。
【0070】
一部の実施形態において、その細胞は、そのがん患者自身から単離された。一部の実施形態において、その細胞は、ドナーによって、または細胞バンクから、提供された。その細胞がそのがん患者から単離される場合、望ましくない免疫反応は最小化され得る。
【0071】
本開示の抗体またはその改変体もしくは誘導体を用いて処置、予防、診断および/あるいは予後判定され得る、細胞生存の増加に関連するさらなる疾患または状態としては、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病が挙げられる))ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)が挙げられる)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに固形腫瘍(肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵がん、乳がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、黒色腫、前立腺がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫が挙げられるが、それらに限定されない)などの、悪性疾患および関連障害の進行ならびに転移が挙げられるが、それらに限定されない。
【0072】
(診断方法)
4-1BBの過剰発現が特定の腫瘍サンプルにおいて観察され、4-1BBを過剰発現する細胞を有する患者は、本開示の抗4-1BB抗体での処置に反応する可能性がある。したがって、本開示の抗体はまた、診断目的または予後判定目的のために使用され得る。
【0073】
細胞を好ましくは含むサンプルが患者から取得され得、その患者は、がん患者または診断を望む患者であり得る。その細胞は、その患者に由来する腫瘍組織もしくは腫瘍ブロック、血液サンプル、尿サンプル、または任意のサンプルの細胞であり得る。そのサンプルの必要に応じた事前処理を行って、そのサンプルは、本開示の抗体とともに、そのサンプル中に存在する可能性がある4-1BBタンパク質とその抗体が相互作用するのを可能にする条件下でインキュベートされ得る。ELISAなどの方法が使用されて、抗4-1BB抗体を利用して、そのサンプルにおける4-1BBタンパク質の存在が検出され得る。
【0074】
そのサンプルにおける4-1BBタンパク質の存在が(必要に応じて量または濃度とともに)、がんの診断のために、その患者がその抗体での処置のために適切であることの指標として、またはその患者ががん処置に反応した(もしくはしなかった)ことの指標として、使用され得る。予後判定方法のために、その検出は、がん処置を開始してその処置の進行を示すために、特定の段階で、1回、2回、またはそれよりも多く行われ得る。
【0075】
(組成物)
本開示はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗体と、受容可能なキャリアとを含む。一部の実施形態において、その組成物は、第2の抗がん薬(例えば、免疫チェックポイント阻害薬)をさらに含む。
【0076】
特定の実施形態において、用語「薬学的に受容可能」とは、動物(より詳細にはヒト)における使用について、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方において列挙されていることを意味する。さらに、「薬学的に受容可能なキャリア」は、一般的には、非毒性で、固体もしくは半固体もしくは液体の、任意の型の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤化助剤(formulation auxiliary)である。
【0077】
用語「キャリア」とは、治療剤がともに投与される、希釈剤、佐剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的キャリアは、滅菌した液体、例えば、水および油(石油起源、動物起源、植物起源または合成起源の油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる)であり得る。その医薬組成物が静脈内投与される場合は、水が好ましいキャリアである。食塩溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液のための液体キャリアとして、使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、フラワー、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。その組成物は、望まれる場合には、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩)もまた含み得る。抗菌薬(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);および張度調整剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)もまた、想定される。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態を採り得る。その組成物は、伝統的な結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリド)を用いて、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、標準的なキャリア(例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences(参照により本明細書に援用される)に記載されている。そのような組成物は、治療有効量の本抗原結合性ポリペプチド(好ましくは精製形態である)を、患者への適切な投与のための形態を提供するために適切な量のキャリアとともに含む。その製剤は、投与様式に適しているべきである。その非経口調製物は、ガラス製もしくはプラスティック製の、アンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアルに封入され得る。
【0078】
ある実施形態において、その組成物は、ヒトへの静脈内投与のために適合された医薬組成物として、慣用的な手順にしたがって製剤化される。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌した等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合には、その組成物はまた、可溶化剤および注射部位の痛みを緩和するための局所麻酔薬(例えば、リグノカイン)を含み得る。一般的には、それらの成分は、単位剤形で別々にかまたは一緒に混合した状態のいずれかで、例えば、活性物質の量を示す密封した容器(例えば、アンプルまたは小袋(sachette))中で凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、供給される。その組成物が注入により投与されるべき場合、その組成物は、滅菌した医薬品グレードの水または食塩水を含む輸液ボトルで分配され得る。その組成物が注射によって投与される場合、滅菌した注射用水または食塩水のアンプルが、それらの成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【実施例】
【0079】
(実施例)
(実施例1:ヒト4-1BBに対するナノボディの作製)
本実施例は、ヒト4-1BBタンパク質に対するナノボディの作製を記載する。
【0080】
ラマを、ヒト免疫グロブリンFcドメインと融合したヒト4-1BBの組換えECDで免疫化した。その血清が十分な力価の抗4-1BB抗体を含んだラマを、ファージライブラリーの作製のために選択した。簡単に述べると、免疫化したラマから収集した末梢血からリンパ球を単離した。そのリンパ球のRNAを抽出し、VHHドメインをコードするcDNAをPCRによって増幅し、M13ファージディスプレイをベースとするナノボディライブラリーの構築のために使用した。数回のパニングを適用して、抗4-1BBナノボディを発現するファージライブラリーをスクリーニングした。
【0081】
その陽性クローンすべてを、配列決定の前にELISAアッセイおよびFACSアッセイを通じてスクリーニングした。その配列の多様性に基づいて、16個の独特なクローンを選択した。それらの配列を表1に示す。C末端にN297A変異を含むヒトIgG1 Fcフラグメントと融合した抗4-1BBナノボディを、一連の機能的アッセイ(結合、リガンド競合および4-1BBシグナル活性化を含む)を通じてそれらの特異性および活性について特徴付け、その結果、さらなるヒト化のためのリードナノボディを同定した。
(表1.選択した16個の独特なクローンの配列)
【表1-1】
【表1-2】
【0082】
それらのCDR配列を以下の表1Aに要約する。
(表1A.選択した16個の独特なクローンの配列)
【表1A】
【0083】
抗体VV02-1LP-417、VV02-1LP-422、VV02-1LP-238、およびVV02-1LP-288が非常に類似したCDRを共有するように見え、一方で、残りの抗体もまた相同なCDRを有する。
【0084】
(実施例2.抗4-1BBナノボディの可溶性4-1BB結合特性)
本実施例は、生じた抗4-1BBナノボディのヒト4-1BBタンパク質およびカニクイザル4-1BBタンパク質に対する結合特性をELISAアッセイによって試験した。
【0085】
Hisタグ付き4-1BBを2μg/mlで一晩コートし、その後、PBS中2%のBSAによってブロッキングした。系列希釈した抗4-1BBナノボディを、そのコートした抗原とともに室温で1時間インキュベートし、参照抗体「参照モノクローナル抗体(Ref mAb)」を用いた。生じたプレートをPBS/Tで洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG-HRPとともに室温で1時間インキュベートした。それらのプレートをTMB基質で発色させ、分光光度計によってOD 450nmにて分析した。これらのELISAアッセイの結果を
図1および表2に示す。この表2は、ヒト4-1BBタンパク質およびカニクイザル4-1BBタンパク質への結合のEC
50を示す。
(表2.ヒト4-1BBタンパク質およびカニクイザル(Cyno)4-1BBタンパク質に関する結合EC
50(nM))
【表2】
【0086】
(実施例3.抗41BBナノボディによる4-1BB/4-1BBリガンド相互作用の遮断)
本実施例において、抗41BBナノボディを、4-1BBのそのリガンドへの結合をそれらの抗41BBナノボディが遮断する能力について調べた。
【0087】
ヒト4-1BBを過剰発現するCHO-K1細胞を、系列希釈した抗41BBナノボディの存在下でビオチン化ヒト4-1BBリガンド(0.3μg/ml)とともに4℃にて1時間インキュベートし、参照抗体として参照モノクローナル抗体(Ref mAb)を用いた。その後、細胞を、Alexa Fluor 633結合体化ストレプトアビジンとともにインキュベートした。結合を、Agilentフローサイトメーターを用いて測定した。
図2および表3に示すとおり、試験したナノボディのすべてが4-1BBへの4-1BBリガンドの結合を濃度依存的様式で遮断し得た一方で、参照モノクローナル抗体(Ref mAb)はそのような効果を有しなかった。
(表3.4-1BB/4-1BBリガンド相互作用に関する競合IC
50(nM))
【表3】
【0088】
(実施例4.Jurkat-41BB NFκBレポーターアッセイにおける抗41BBナノボディの機能的特性)
本実施例は、4-1BBレポーターアッセイにおける抗41BBナノボディの機能的特性を評価した。
【0089】
このアッセイにおいて、そのエフェクター細胞は、ヒト4-1BBを安定的に発現し、そのゲノム中に組み込まれたNFκBルシフェラーゼレポーター構築物を有する、4-1BB NFκBレポーターJurkat細胞株であった。4-1BB活性化後に、内在性NFκB転写因子がDNA応答エレメントに結合して、そのルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘導する。その後、このルシフェラーゼ遺伝子のタンパク質産物を、その発光シグナルを測定することによって定量化する。4-1BB NFκBレポーターJurkat細胞株を、標的細胞株CHO-K1またはヒトFcγレセプターII Bを過剰発現するFcγRIIB-CHO-K1細胞株とともに共培養した。抗体を系列希釈し、白色の96ウェルアッセイプレートに添加した。37℃にて16時間のインキュベーション後、ルシフェラーゼの基質を添加することによって発光を得、マイクロプレートリーダーによって測定した。
【0090】
図3および表4に示すとおり、試験した4-1BBナノボディは、Fc架橋の存在下で4-1BB媒介性NF-κB活性を誘導し、EC
50範囲は0.002nM~0.081nMであった。しかし、Fc架橋が存在しない場合は、試験した抗体はNF-κBシグナルを活性化できなかった。
(表4.Jurkat-41BB NFκBレポーターアッセイにおけるEC
50(nM))
【表4】
【0091】
(実施例5.抗41BBナノボディヒト化)
リードナノボディ(VV02-1LP-263およびVV02-1SP(1)-73)のヒト化を、CDR移植および復帰変異戦略によって行った。それらのヒト化配列を表5に示す。
(表5.ヒト化リードナノボディの配列)
【表5-1】
【表5-2】
【0092】
VV02-1LP-263について、2つの変異(Kabat番号付けのD54GおよびD61E)をCDR2に導入して、開発可能性を向上させた。VV02-1SP(1)-73について、1つの変異(Kabat番号付けのN31S)をCDR1に、2つの変異(Kabat番号付けのD54SおよびD61E)をCDR2に、それぞれ導入して、開発可能性を向上させた。それらの配列の比較を以下の表5Aに示す。
(表5A.更新したCDR)
【表5A】
【0093】
(実施例6.抗4-1BBヒト化ナノボディの細胞表面4-1BB結合特性)
細胞ベースの設定における抗原結合特性を評価するために、4-1BBヒト化ナノボディを、CHO-K1細胞上で過剰発現させた4-1BBへのそれらの4-1BBヒト化ナノボディの結合についてFACSによって分析した。
【0094】
簡単に述べると、ヒト4-1BBを過剰発現するCHO-K1細胞またはカニクイザル4-1BBを過剰発現するCHO-K1細胞を、系列希釈した抗4-1BBナノボディとともに4℃にて30分間インキュベートした。その後、それらの細胞を、Alexa Fluor 633結合体化抗ヒトFc二次抗体とともにインキュベートした。結合を、Agilentフローサイトメーターで測定した。それらの結果は、試験したヒト化ナノボディすべてが、細胞表面ヒト4-1BBおよび細胞表面カニクイザル(cyno)4-1BBに対して典型的なシグモイド型結合挙動を示したことを示した(
図4および
図5)。それらの結合EC
50を表6および表7に適宜示す。
(表6.親クローンVV02-1LP-263に由来するヒト化ナノボディの細胞表面4-1BBに関する結合EC
50(nM))
【表6】
(表7.親クローンVV02-1SP(1)-73に由来するヒト化ナノボディの細胞表面4-1BBに関する結合EC
50(nM))
【表7】
【0095】
(実施例7.部位変異による抗4-1BBナノボディの配列最適化)
これらの候補の開発可能性をさらに増大させるために、抗4-1BBナノボディVV02-1LP-263 huNb_1_3を選択して、部位変異によって最適化した。その最適化配列を表8に示す。
(表8.VV02-1LP-263 huNb_1_3の最適化配列)
【表8】
【0096】
二重特異性抗体を構築するための最適化抗4-1BB配列の実現可能性を評価するために、この最適化抗4-1BBを、Fcフラグメント中にN297A変異を有する腫瘍関連抗原(TAA)を標的化するIgG1抗体の重鎖C末端に、G4Sリンカーを介して融合させた。その後、それらの軽鎖発現ベクターおよび重鎖発現ベクターをCHO-K1細胞中に同時トランスフェクトした。一過性トランスフェクション後に、それらの二重特異性抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって培地から精製した。十分に適格な抗体をインビトロ特徴付け(細胞ベースの4-1BB結合、4-1BB活性化および開発可能性評価を含む)に適用した。
【0097】
(細胞ベースの4-1BB結合)
それらの最適化4-1BBナノボディをベースとする二重特異性抗体を、CHO-K1細胞上に過剰発現させた4-1BBへのそれらの結合について、上記のプロトコルにしたがって分析した。
図6に示すとおり、それらの最適化抗4-1BB配列は、4-1BBを保有するCHO-K1細胞に対して親配列と匹敵する結合活性を維持した。
【0098】
(TAA依存性4-1BB活性化)
抗TAA-4-1BB二重特異性抗体が4-1BBシグナル伝達を活性化する能力を評価するために、古典的なレポーター遺伝子アッセイを使用した。このアッセイにおいて、4-1BBを安定的に発現し、そのゲノム中に組み込まれたNF-κBルシフェラーゼレポーター構築物を有する、操作したJurkat細胞を、エフェクター細胞として使用した。TAAを過剰発現するように操作したCHO-K1細胞またはブランクのCHO-K1細胞を、標的細胞として使用した。これらの2種類の細胞を、5% CO2インキュベーター中で37℃にて一晩、種々の濃度の抗体とともに共インキュベートした。その後、ルシフェラーゼの基質を添加し、その発光強度をマイクロプレートリーダーによって決定した。
【0099】
図7に示すとおり、それらの最適化抗4-1BBをベースとする二重特異性抗体は、標的細胞の存在下での4-1BB活性化の誘導において、親抗体TAA-263-1-3に匹敵する効力を有した。
【0100】
(熱安定性評価)
強制分解試験を行って、TAA-4-1BB二重特異性抗体の熱安定性を評価した。それらの抗体を、20mM His、6%スクロース+0.02% PS80 pH6.0を含む緩衝液中で、40℃にて2週間インキュベートした。代表的な品質属性(特に、凝集およびフラグメント化)を、SEC-HPLCを使用して2週間でモニターした。親抗4-1BB配列に由来する二重特異性抗体は、インキュベーション中の凝集およびフラグメント化によって証明されるとおり、乏しい熱安定性を示した。対照的に、最適化4-1BB配列をベースとする新規TAA-4-1BB二重特異性抗体は、40℃にて2週間、許容可能な熱安定性を示し、これは、前進させるのに妥当な有望な開発可能性を示す(表9)。
(表9.強制分解試験におけるTAA-4-1BB二重特異性抗体のSEC-HPLC特徴付け)
【表9】
* * *
【0101】
本開示は、本開示の個別の態様の個々の例示として意図される記載された具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に同等であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内にある。種々の改変および変形が、本開示の趣旨からも範囲からも逸脱することなく、本開示の方法および組成物において実施され得ることが、当業者にとって明らかである。したがって、本開示は、本開示の改変および変形が添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にあるという条件で、それらの本開示の改変および変形を含むことが、意図される。
【0102】
本明細書において言及されたすべての公開物および特許出願は、あたかも個々の公開物または特許出願が参照によって援用されると具体的で個別に示された場合と同じ程度に、本明細書において参照によって援用される。
【配列表】
【国際調査報告】